(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168849
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】光触媒フィルム、光触媒フィルムの製造方法、光触媒糸、撚糸、繊維構造体、およびフィルタ
(51)【国際特許分類】
B01J 35/02 20060101AFI20221031BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20221031BHJP
B01J 37/025 20060101ALI20221031BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20221031BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
B01J35/02 J
B01J37/02 301P
B01J37/025
B32B9/00 A
B32B27/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071301
(22)【出願日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2021074065
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正泰
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 裕介
(72)【発明者】
【氏名】西平 賢哉
(72)【発明者】
【氏名】田澤 秀胤
(72)【発明者】
【氏名】桑子 敦
【テーマコード(参考)】
4F100
4G169
【Fターム(参考)】
4F100AA01C
4F100AA19
4F100AA19C
4F100AA20C
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4G169HC15
4G169HD13
4G169HD14
4G169HE07
4G169HE12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】樹脂基材層と保護層との界面での剥離が抑制された光触媒フィルムを提供する。
【解決手段】樹脂基材層1と、樹脂基材層の一方の面側に配置された、無機化合物を含有する保護層2と、保護層の樹脂基材層側とは反対の面側に配置された光触媒層3と、を有し、樹脂基材層の保護層側の面1Sには、保護層との密着性を向上させる密着性向上処理層を有する、光触媒フィルムを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材層と、
前記樹脂基材層の一方の面側に配置された、無機化合物を含有する保護層と、
前記保護層の前記樹脂基材層側とは反対の面側に配置された蒸着膜である光触媒層と、を有し、
前記樹脂基材層の前記保護層側の面には、前記保護層との密着性を向上させる密着性向上処理層を有する、光触媒フィルム。
【請求項2】
前記保護層が、酸化ケイ素または酸化アルミニウムを含む、請求項1に記載の光触媒フィルム。
【請求項3】
前記保護層が蒸着膜である、請求項1または請求項2に記載の光触媒フィルム。
【請求項4】
前記保護層が、酸化アルミニウムを含む酸化アルミニウム蒸着膜であり、
前記樹脂基材層と前記酸化アルミニウム蒸着膜との密着強度を規定する、前記酸化アルミニウム蒸着膜の遷移領域が形成されており、前記遷移領域は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を用いてエッチングを行うことで検出される水酸化アルミニウムに変成する元素結合Al2O4Hを含み、TOF-SIMSを用いてエッチングを行うことで規定される酸化アルミニウム蒸着膜に対する、TOF-SIMSを用いて規定される前記変成される遷移領域の割合により定義される遷移領域の変成率が45%以下である、請求項1または請求項2に記載の光触媒フィルム。
【請求項5】
前記光触媒層が、酸化チタンを含む、請求項1または請求項2に記載の光触媒フィルム。
【請求項6】
樹脂基材層の一方の表面に密着性向上処理を施す工程と、
前記樹脂基材層の前記密着性向上処理を施した表面に、無機化合物を含有する保護層を形成する工程と、
前記保護層の前記樹脂基材層側とは反対の面側に蒸着法により光触媒層を形成する工程と、を有する光触媒フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記光触媒層は、電子線蒸着法により形成される、請求項6に記載の光触媒フィルムの製造方法。
【請求項8】
互いに対向する第1面および第2面を有する樹脂基材層と、
前記樹脂基材層の前記第1面側に配置され、無機化合物を含有する第1保護層と、
前記第1保護層の前記樹脂基材層側とは反対の面側に配置され、蒸着膜である第1光触媒層と、
前記樹脂基材層の前記第2面側に配置され、無機化合物を含有する第2保護層と、
前記第2保護層の前記樹脂基材層側とは反対の面側に配置され、蒸着膜である第2光触媒層と、を有し、
前記樹脂基材層の前記第1面に、前記第1保護層との密着性を向上させる第1密着性向上処理層と、
前記樹脂基材層の前記第2面に、前記第2保護層との密着性を向上させる第2密着性向上処理層と、をさらに有する、光触媒糸。
【請求項9】
前記第1保護層および第2保護層が、酸化ケイ素または酸化アルミニウムを含む、請求項8に記載の光触媒糸。
【請求項10】
前記第1保護層および第2保護層が、蒸着膜である、請求項8または請求項9に記載の光触媒糸。
【請求項11】
前記第1保護層および前記第2保護層が、酸化アルミニウムを含む酸化アルミニウム蒸着膜であり、
前記樹脂基材層と前記酸化アルミニウム蒸着膜との密着強度を規定する、前記酸化アルミニウム蒸着膜の遷移領域が形成されており、
前記遷移領域は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を用いてエッチングを行うことで検出される水酸化アルミニウムに変成する元素結合Al2O4Hを含み、TOF-SIMSを用いてエッチングを行うことで規定される酸化アルミニウム蒸着膜に対する、TOF-SIMSを用いて規定される前記変成される遷移領域の割合により定義される遷移領域の変成率が45%以下である、請求項8または請求項9に記載の光触媒糸。
【請求項12】
前記第1光触媒層および前記第2光触媒層が、酸化チタンを含む、請求項8または請求項9に記載の光触媒糸。
【請求項13】
請求項8または請求項9に記載の光触媒糸と、他の糸とを含む、撚糸。
【請求項14】
請求項8に記載の光触媒糸、または請求項13に記載の撚糸を含む、繊維構造体。
【請求項15】
請求項14に記載の繊維構造体を有する、フィルタ。
【請求項16】
請求項1または請求項2に記載の光触媒フィルムが、複数層積層されてなる、積層体。
【請求項17】
互いに対向する第1面および第2面を有する樹脂基材層と、前記樹脂基材層の前記第1面側に配置され、無機化合物を含有する第1保護層と、前記第1保護層の前記樹脂基材層側とは反対の面側に配置され、蒸着膜である第1光触媒層と、前記樹脂基材層の前記第2面側に配置され、無機化合物を含有する第2保護層と、前記第2保護層の前記樹脂基材層側とは反対の面側に配置され、蒸着膜である第2光触媒層と、を有し、
前記樹脂基材層の前記第1面に、前記第1保護層との密着性を向上させる第1密着性向上処理層と、前記樹脂基材層の前記第2面に、前記第2保護層との密着性を向上させる第2密着性向上処理層と、を有する光触媒フィルムが、複数層積層されてなる、積層体。
【請求項18】
請求項14に記載の繊維構造体が、複数層積層されてなる、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光触媒フィルム、光触媒フィルムの製造方法、光触媒糸、撚糸、繊維構造体、およびフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタン等の光触媒は、光エネルギーにより励起された活性(励起電子やホール電子)を利用した種々の物質の分解、抗菌、抗ウィルス又は脱臭等の機能を有する。また、光触媒は、超親水性表面を有することでも知られており、光触媒表面に付着した埃や泥などを、自然の太陽光と雨だけで自己洗浄することができる機能(セルフクリーニング機能)を有する。このため、光触媒層を有する物品は、屋内外を問わず広く使用されている。
このような光触媒層には、光触媒材料を粒子として作成し、これを樹脂バインダーと混ぜ合わせて基材上に塗布して形成された湿式コート層と、スパッタ法や蒸着法等のいわゆる乾式法により形成された乾式コート層とがある。
【0003】
特許文献1~特許文献4には、基材層上に光触媒層を形成した光触媒機能材料が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6291823号明細書
【特許文献2】特開2001-253007号公報
【特許文献3】特許第5252757号明細書
【特許文献4】特開2002-28998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂基材層上に光触媒層が形成された光触媒フィルムでは、光触媒層の光触媒活性によって樹脂基材層に含まれる有機材料が劣化することを防ぐために、樹脂基材層と光触媒層との間に、保護層が設けられる場合がある。本発明者らは、光触媒層を保護層上に形成する際に、光触媒層が上述した乾式法で形成された蒸着膜である場合、樹脂基材層と保護層との界面で剥離が生じ、保護層と光触媒層とが樹脂基材層から剥がれる場合があることを知見した。
【0006】
本開示は、上記問題に鑑みてなされた発明であり、樹脂基材層と保護層との界面での剥離が抑制された光触媒フィルムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示は、樹脂基材層と、上記樹脂基材層の一方の面側に配置された、無機化合物を含有する保護層と、上記保護層の上記樹脂基材層側とは反対の面側に配置された蒸着膜である光触媒層と、を有し、上記樹脂基材層の上記保護層側の面には、上記保護層との密着性を向上させる密着性向上処理層を有する、光触媒フィルムを提供する。
【0008】
また、本開示においては、樹脂基材層の一方の表面に密着性向上処理を施す工程と、上記樹脂基材層の上記密着性向上処理を施した表面に、無機化合物を含有する保護層を形成する工程と、上記保護層の上記樹脂基材層側とは反対の面側に蒸着法により光触媒層を形成する工程と、を有する、光触媒フィルムの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示においては、樹脂基材層と保護層との界面での剥離が抑制された光触媒フィルムを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の光触媒フィルムを例示する概略断面図である。
【
図2】本開示の光触媒フィルムを例示する概略断面図である。
【
図3】本開示の光触媒フィルムを製造する際に用いるローラー式連続蒸着膜成膜装置を例示する概略図である。
【
図4】本開示における光触媒糸を例示する概略断面図である。
【
図5】本開示における光触媒糸を例示する概略断面図である。
【
図6】本開示における光触媒糸を例示する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示における実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部の幅、厚み、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示における解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。また、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明する場合があるが、上下方向が逆転してもよい。
【0012】
また、本明細書において、ある部材又はある領域等のある構成が、他の部材又は他の領域等の他の構成の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限り、これは他の構成の直上(又は直下)にある場合のみでなく、他の構成の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の構成の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
【0013】
A.光触媒フィルム
図1は、本開示における光触媒フィルムを例示する概略断面図である。
図1に示す本開示における光触媒フィルム10は、樹脂基材層1と、樹脂基材層1の一方の面側に配置された、無機化合物を含有する保護層2と、保護層2の樹脂基材層1側とは反対の面側に配置された蒸着膜である光触媒層3と、を有する。本開示においては、樹脂基材層1の保護層2側の面1Sは、保護層2との密着性を向上させる密着性向上処理層を有する。
図1に示すように、樹脂基材層1は樹脂フィルム1Aであってもよいし、
図2に示すように、樹脂基材1は、樹脂フィルム1Aと樹脂フィルムの一方の面側に配置されたハードコート層1Bとを有していてもよい。
【0014】
上述したように、本発明者らは、光触媒層を保護層上に蒸着法等のいわゆる乾式法で形成する際に、保護層と光触媒層とが樹脂基材層から剥がれる場合があることを知見した。これは、蒸着法等により光触媒層を形成する場合、通常、加熱された状態で光触媒層の形成が行われるが、この際、樹脂基材層も加熱され、樹脂基材層中の水分等が表面にブリードすることが原因となり、樹脂基材層と保護層との界面で剥離が生じやすくなるためと推察される。
【0015】
このような現象を防止する方法として、本発明者等は成膜速度が速い方法、例えば電子線を用いた蒸着法であるEB蒸着法を用いて光触媒層を形成することも検討したが、このような方法だけでは、樹脂基材から保護層と光触媒層とが剥離してしまう場合があることを知見した。
【0016】
本開示によれば、樹脂基材層の保護層側の面に密着性を向上させる表面処理を施し、密着性向上処理層を配置することで、樹脂基材層と保護層との界面での剥離が抑制された光触媒フィルムとすることができる。以下、各層について詳述する。
【0017】
1.樹脂基材層
本開示における樹脂基材層は樹脂材料を含み、一方の面側に保護層が配置されている。樹脂基材層の保護層側の面には、保護層との密着性を向上させるための密着性向上処理層が形成されている。樹脂基材層は、樹脂フィルム単体であってもよいし、樹脂フィルムと樹脂フィルムの一方の面側に配置されたハードコート層とを有していてもよい。
【0018】
上記樹脂基材層が樹脂フィルムとハードコート層とを有する場合には、光触媒フィルムの耐擦傷性が向上する。この場合、ハードコート層側が保護層側となるように配置される。すなわち、ハードコート層の保護層側の表面に密着性向上処理層が形成される。このような密着性向上処理層としては、密着性向上処理として、コロナ処理、プラズマ処理等用いられて形成された層が挙げられる。中でも、後述する特殊酸素プラズマ処理が施されて形成された層であることが好ましい。
【0019】
a)樹脂フィルム
樹脂フィルムを構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、これらの共重合体、及びポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのα-オレフィンの重合体などのポリオレフィン系樹脂などを挙げることができる。本開示においては、汎用性、耐熱性等の観点から、これらのうちでも、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好適に用いられる。
【0020】
樹脂フィルムの厚さは特に限定されないが、可撓性および形態保持性の観点から、例えば4μm以上250μm以下であり、好ましくは12μm以上100μm以下である。
上記範囲であれば、ロール・ツー・ロールの成膜装置で、樹脂基材層上に保護層を形成するのに際し、曲げやすく、かつ、搬送中に破けることもないために取り扱い性が容易となる。
【0021】
b)密着性向上処理層
本開示における樹脂基材層は、その保護層側の表面に密着性向上処理層が配置されている。この密着性向上処理層は、樹脂基材層の表面にコロナ処理、プラズマ処理等が用いられて形成された層である。
【0022】
このような密着性向上処理層は、樹脂基材層と保護層との界面近傍に存在する層であり、樹脂基材層の組成および保護層の組成と異なる組成であり、特に、水酸基やカルボニル基などの官能基を多く含む層である。このような密着性向上処理層の有無は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)等を用いて確認することができる。
【0023】
特に、金属水酸化物(例えば、水酸化アルミニウム)は、その化学構造により樹脂基材との密着性がよい。そのため、保護層(例えば、酸化アルミニウム蒸着膜)と樹脂基材層との界面近傍に金属水酸化物を多く有する密着性向上処理層が配置されていることが好ましい。例えば、密着性向上処理として特殊酸素プラズマ処理が施されていることは、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を用いてエッチングを行い、後述する遷移領域の変成率を算出することで確認することができる。
【0024】
本開示においては、保護層が、酸化アルミニウムを含む酸化アルミニウム蒸着膜であり、樹脂基材層と酸化アルミニウム蒸着膜との密着強度を向上させる酸化アルミニウム蒸着膜の遷移領域が上記密着性向上処理層として形成されていることが好ましい。
この遷移領域は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を用いてエッチングを行うことで検出される水酸化アルミニウムに変成する元素結合Al2O4Hを含み、TOF-SIMSを用いてエッチングを行うことで規定される酸化アルミニウム蒸着膜に対する、TOF-SIMSを用いて規定される上記変成される遷移領域の割合により定義される遷移領域の変成率が45%以下であることが好ましい。
このように遷移領域の変成率が狭いことで、樹脂基材層と保護層との密着強度が向上し、樹脂基材層と保護層との界面での剥離を抑制することができる。
【0025】
二次イオン質量分析(SIMS:secondary Ion Mass Spectrometry)は、一次イオンビームを被分析試料表面に照射して、試料表面からスパッタリングされて放出される二次イオンを質量分析する元素濃度分布の分析方法である。
飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS法)は、一次イオン銃から一次イオン(例えば、ビスマスイオン)ビームを照射して試料から放出される二次イオンが検出器に到達するまでの飛行時間を計測し、その僅かな時間差から質量分離を行い(質量が異なると飛行半径(飛行時間)が異なる)、試料表面の分析を行う手法である。また、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS法)では、スパッタイオン銃(例えば、Arガスイオン銃やCsイオン銃等)を併用し、スパッタリング(表面エッチング)と二次イオン強度測定を交互に繰り返すことにより、試料表面の深さ方向の被検出元素の濃度分布を知ることができる。スパッタリングと二次イオン強度測定を交互に繰り返すことにより得られたスペクトル情報(被検出元素の濃度分布グラフ)は、縦軸がイオン強度、横軸がスパッタ回数となる。横軸のスパッタ回数は、スパッタ速度が一定であるとの仮定の下に、深さに相当するとみなすことができる。
【0026】
得られたグラフにおいて、酸化アルミニウム蒸着層と樹脂基材層との界面を特定することで、元素結合Al2O4Hを表すグラフにおけるピークの最大値が界面からどの程度の深さの位置に存在するか知ることができる。例えば、後述するように、元素C6のイオンの強度が最大値の半分になる位置を、樹脂基材層と酸化アルミニウム蒸着層との界面と定義することができる。
【0027】
樹脂基材層上に酸化アルミニウム蒸着膜が形成された積層体の状態の酸化アルミニウム蒸着膜に対し、Csイオン銃により上記した一定の速度でエッチングを繰り返しながら、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を用いて、酸化アルミニウム蒸着膜由来のイオンと、樹脂基材層に由来するイオンを測定することにより、樹脂基材層表面と酸化アルミニウム蒸着膜との密着強度を規定する遷移領域が形成されている。この遷移領域は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を用いてエッチングを行うことで検出される水酸化アルミニウムに変成する元素結合Al2O4Hを含み、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を用いてエッチングを行うことで規定される酸化アルミニウム蒸着膜に対する、飛行時間型二次イオン質量分析法を用いて規定される上記変成される遷移領域の割合により定義される水酸化アルミニウムに変成する遷移領域の変成率を規定することで、密着強度が改善された光触媒フィルムを特定できるとの知見に基づくものである。
【0028】
具体的には、Csイオン銃により一定の速度でエッチングを繰り返しながら、酸化アルミニウム蒸着膜の最表面からエッチングを行い、飛行時間型二次イオン質量分析計を用いて、酸化アルミニウム蒸着膜と樹脂基材層との界面の元素結合及び蒸着膜の元素結合を測定し、測定された元素および元素結合について、それぞれの実測グラフを得る。なお、グラフは、測定された質量数の118.93をAl2O4Hに、101.94をAl2O3に、72.00をC6になど、測定される質量数で元素および元素結合を特定して作成することができる。酸化アルミニウム蒸着膜における水酸化アルミニウムが形成する樹脂基材層と蒸着膜の界面の遷移領域を極力狭くするために、元素結合Al2O4Hに注目し、1)元素C6のグラフの強度が半分になる位置を、樹脂基材層と酸化アルミニウムの界面として、表面から界面までを酸化アルミニウム蒸着膜として求め、2)元素結合Al2O4Hを表すグラフにおけるピークを求め、そのピークから界面までを遷移領域とし、求め、3)(元素結合Al2O4Hのピークから界面までの遷移領域/酸化アルミニウム蒸着膜)×100(%)として遷移領域の水酸化アルミニウムへの変成率を求めるものである。
【0029】
c)ハードコート層
本開示における樹脂基材層は、上述したようにハードコート層を有するものであってもよい。ハードコート層を有することにより光触媒フィルムの耐傷性を向上させることが可能となる。
【0030】
上記ハードコート層は、光触媒フィルムの耐傷性を向上させることが可能なものであれば特に限定されるものではないが、上記ハードコート層を用いた場合の光学触媒フィルムの光触媒層側表面の鉛筆硬度が、JIS K5600-5-4(1999)で規定される鉛筆硬度試験で硬度が2H以上とすることが可能なものが好ましく、特に、3H以上とすることができるものであることがより好ましい。
【0031】
本開示に用いられるハードコート層の膜厚(硬化時)としては、例えば、0.2μm以上5μm以下、好ましくは0.5μm以上3μm以下である。
【0032】
上記ハードコート層としては、一般に用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、樹脂と微粒子等の任意成分とを含有するハードコート層用組成物により形成されてなるものが挙げられる。上記樹脂としては、具体的には、紫外線若しくは電子線により硬化する樹脂である電離放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂等が挙げられる。
【0033】
上記ハードコート層は、ハードコート層用組成物を、上記樹脂フィルム上に塗布して形成した塗膜を、必要に応じて乾燥し、電離放射線照射又は加熱等により硬化させることで形成することができる。
【0034】
樹脂基材層が樹脂フィルムとハードコート層とを含む場合には、樹脂フィルムとハードコート層との間に、後述する印刷層が配置されていてもよい。
【0035】
2.保護層
保護層は、樹脂基材層と光触媒層との間に配置され、光触媒層が樹脂基材層に影響を与えないように相互の接触を阻害するものである。具体的に、保護層は光触媒層の光触媒活性によって樹脂基材層に含まれる有機材料が劣化するのを防ぐように作用する。また、保護層を設けることで、光触媒フィルムを製造する際に、樹脂基材層に含まれる水分等による光触媒層の結晶性低下を抑制することができる。保護層は、樹脂基材層上に直接配置されていることが好ましい。
【0036】
保護層は、バリア機能を有することが好ましい。具体的には、(光触媒層を形成する前の)保護層と樹脂基材層との積層体の状態で、以下の酸素透過率または水蒸気透過率を有することが好ましい。また、保護層は透明であることが好ましい。
【0037】
保護層と樹脂基材層との積層体の酸素透過率は、例えば5cc/(m2・day・atm)以下、好ましくは2.5cc/(m2・day・atm)以下である。酸素透過率は、JIS K7126-2:2006法に準拠して、23℃、0%RH雰囲気下の測定条件で、測定した値である。測定器としては、酸素透過度測定装置(モダンコントロール(MOCON)社製〔機種名:オクストラン(OX-TRAN)2/21〕)を用いることができる。
【0038】
また、保護層と樹脂基材層との積層体の水蒸気透過率は、温度40℃、湿度90%RHの条件で、5.0g/(m2・day)以下とすることができ、中でも2.5g/(m2・day)以下とすることができる。水蒸気透過率は、JIS K 7129:2008 B法に準拠して測定した値である。測定器としては、水蒸気透過度測定装置(モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、パーマトラン(PERMATRAN)3/33〕)を用いることができる。保護層を有することで、このように水蒸気バリア性能が良好となる。
【0039】
保護層を構成する無機化合物としては、例えば、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、ナトリウム、チタン、ホウ素、イットリウム、ジルコニウム、セリウム、亜鉛等の金属元素または非金属元素の酸化物、酸化窒化物、窒化物、酸化炭化物、酸化炭化窒化物等が挙げられる。特に、酸化アルミニウム(AlOx)、酸化珪素(SiOx)が好ましい。無機化合物は、単独で用いてもよいし、上述の材料を任意の割合で混合して用いてもよい。
【0040】
本開示における保護層は、酸化アルミニウム(AlOx)、酸化珪素(SiOx)等の無機酸化物の蒸着膜であることが好ましい。SiOxのxは、例えば、1.5~2.0である。また、AlOxのxは、1.0~1.5である。
【0041】
なお、保護層は、樹脂基材層の表面の全体を覆うように設けられていてもよいし、樹脂基材層の表面の一部分に設けてもよい。本開示においては、特に、酸化アルミニウム蒸着膜であることが好ましい。本開示において、「酸化アルミニウム蒸着膜」とは、「酸化アルミニウムを含む蒸着膜」の意味であり、酸化アルミニウムAlOx以外の化合物、例えば窒素等も含んでもよい。
【0042】
保護層の厚さは特に限定されないが、バリア性能を十分に発揮するために、例えば5nm以上であり、好ましくは8nm以上である。一方、透明性の観点から、例えば100nm以下であり、好ましくは20nm以下である。
【0043】
3.光触媒層
光触媒層は、光触媒を含有することにより光触媒機能を発現する層であり、本開示の光触媒フィルムにおいて最表面に位置する層である。本開示における光触媒層は、蒸着膜であり、上記保護層上に直接配置されていることが好ましい。光触媒層は、保護層の全面に形成されたものであってもよく、一部に形成されたものであってもよい。
【0044】
光触媒層における、後述するような二酸化チタンに代表される光触媒の作用機構は、必ずしも明確なものではないが、光の照射によって生成したキャリアが、近傍の化合物との直接反応、あるいは、酸素、水の存在下で生じた活性酸素種によって、有機物の化学構造に変化を及し、有機物を分解し、超親水効果を発揮する。
【0045】
本開示における光触媒層中に含有される光触媒としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化ビスマスなどの公知の半導体光触媒を単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。また半導体以外としては、金属錯体や銀なども用いることができる。本発明においては、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0046】
酸化チタン(TiOx xは例えば0~2である)は、活性が比較的高く、安全性にも優れ、入手も容易であることから、光触媒層を形成する光触媒として好ましい。酸化チタンの形態としては、非晶質、結晶質のいずれでもよく、これらが混合したものでもよい。また、結晶質の場合は、アナターゼ型、ルチル型、あるいはそれらが混在したもののいずれであってもよい。
【0047】
本開示における光触媒層は、蒸着膜である。蒸着膜は、光触媒粒子とバインダーを用いたいわゆる湿式法で形成された膜の場合と比較して、効率的に光触媒性能を得ることが可能となる。また、光触媒単独で形成されたものは、光触媒とバインダーとを混合して形成されたものに比べ、全光線透過率を高くすることができる。また、ヘーズ値を低減することができる。
【0048】
本開示において、蒸着膜とは、いわゆる乾式法により形成された膜であれば特に限定されず、PVD法(物理蒸着法:Physical Vapor Deposition)で形成されたものであってもよく、CVD法(化学蒸着法:Chemical Vapor Deposition)で形成されたものであってもよい。
【0049】
本開示においては、中でも、EB蒸着法で形成された蒸着膜であることが好ましい。EB蒸着法で形成された蒸着膜である光触媒層は、他の方法の蒸着膜と比較して、短時間で形成が可能であることから、形成時の加熱時間を短くすることが可能となり、本開示の課題である、樹脂基材層と保護層との剥離が生じる可能性をより抑えることができるからである。
【0050】
本開示における光触媒層の厚さは、特に限定されないが、例えば、20nm以上400nm以下の範囲内であり、好ましくは50nm以上200nm以下の範囲内である。上記値未満であると、光触媒機能が発現しないことがあり、上記値より厚いと、成膜時間を要し、生産性が低下する。
【0051】
なお、「光触媒」とは、太陽光の光エネルギーにより、有機物の汚れを分解したり、細菌を不活化したりする材料である。1967年、当時、東京大学大学院生だった藤嶋昭東京理科大学学長/東京大学特別栄誉教授が、後に「本多・藤嶋効果」と呼ばれることになる、水から水素をつくる研究で発見した酸化チタン(TiO2)が、世界初の「光触媒」である。
【0052】
4.その他の構成
(1)接着層
本開示の光触媒フィルムは、樹脂基材層の保護層側とは反対の面側に、接着層を有していてもよい。接着層は、光触媒フィルムを対象物に貼付するための層である。接着層に含有される接着剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、感圧接着剤を用いることができる。感圧接着剤としては、一般的な感圧接着剤を用いることができ、例えば、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系等が挙げられる。
接着層の厚さとしては、所望の接着性を得ることが可能であれば特に限定されるものではなく、例えば、0.5μm以上100μm以下とすることができる。接着層の形成方法としては、例えば、樹脂基材層上に接着層をコーティングにより成膜する方法が挙げられる。
【0053】
本開示の光触媒フィルムは、樹脂基材層の保護層側とは反対の面側に接着層を有している場合、接着層の樹脂基材層側とは反対の面側に、剥離性シートを有することが好ましい。剥離性シートは、光触媒フィルムを使用するまでの間の取扱性を考慮して設けられるものであり、光触媒フィルムの使用時に、対象物に光触媒フィルムを貼り合わせる際に剥離される。剥離性シートとしては、従来公知の離型フィルム、セパレート紙、セパレートフィルム、剥離フィルム、剥離紙等と呼称される各種形態のものを適宜使用できる。
【0054】
(2)印刷層
本開示の光触媒フィルムは、意匠性を高めること等を目的として、印刷層を有していてもよい。印刷層は、保護層の光触媒層側とは反対側に配置することが好ましい。保護層により、光触媒層の光触媒活性によって印刷層が劣化するのを抑制することができるためである。具体的には、樹脂基材層が樹脂フィルムである場合には、保護層と樹脂フィルムとの間、樹脂基材層がハードコート層を含む場合には、保護層とハードコート層との間に配置されることが好ましい。印刷層としては、絵柄印刷層及び地色印刷層が挙げられる。
【0055】
5.その他
(1)全光線透過率
本開示における光触媒フィルムは、特に光触媒糸、撚糸、繊維構造体、およびフィルタとして使用する場面においては、深部での光触媒機能を発現すること等の観点から、上述の各層を積層してなる光触媒フィルムにおける全光線透過率が70%以上であることが好ましく、特には80%以上であることが好ましい。
【0056】
(2)ヘーズ値
本開示における光触媒フィルムは、上述の各層を積層してなる光触媒フィルムにおけるヘーズ値は、5%以下であることが好ましく、特には2%以下であることが好ましい。
【0057】
本開示において、全光線透過率およびヘーズ値は、それぞれ、JIS-K-7361およびJIS-K-7136に準拠して、ヘーズメーターNDH 7000(日本電色工業製)で測定した値である。
【0058】
(3)密着強度
本開示の光触媒フィルムは、樹脂基材層と保護層との密着性が従来の光触媒フィルムより高いものである。樹脂基材層と保護層との密着強度は、例えば2N/15mm以上であり、好ましくは4N/15mm以上である。密着強度の測定方法は以下の通りである。
【0059】
(測定方法)
光触媒フィルムの光触媒層側に2液硬化型ポリウレタン系接着剤を塗工し、乾燥処理したものと、厚さ70μmの無延伸ポリプロピレンフィルムに2液硬化型ポリウレタン系接着剤と厚さ15μmの延伸ナイロンフィルムと貼り合わせたフィルムとをドライラミネートした積層複合フィルムを作製する。上記積層複合フィルムを48時間エージング処理した後、15mm巾の短冊状にカットしたサンプルについて、引張試験機(株式会社オリエンテック社製[機種名:テンシロン万能材料試験機])を用いてJIS K6854-2に準拠し、下記測定方法で密着強度を測定する。
【0060】
測定は、測定のために事前に剥離したポリプロピレンフィルム側と光触媒フィルム側をそれぞれ測定器のつかみ具で把持し、ポリプロピレンフィルムと光触媒フィルムとがまだ積層されている部分の面方向に対して直交する方向において互いに逆向きに(180°剥離:T字剥離法)、50mm/minの速度で引っ張り、安定領域における引張応力の平均値を測定する。積層複合フィルムで密着強度が最も弱い樹脂基材層と保護層(アルミニウム蒸着膜)との間で剥離が生じ、この場合の上記の測定値を、樹脂基材層と保護層との密着強度とする。
【0061】
6.用途
本開示における光触媒フィルムは、種々の物質の分解、防汚、抗菌、抗ウィルス、脱臭機能などを有しており、種々の用途に適用することができる。
昨今、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症(COVID-19)が世界的に流行していることから、抗菌製品や抗ウイルス製品が強く求められている。本開示における光触媒フィルムは、抗菌製品、抗ウィルス製品を得るための抗菌フィルム、抗ウィルスフィルムとして用いることができる。
【0062】
また、防汚用光触媒フィルムとしても用いることができる。具体的には、屋外にて用いられ、家屋の壁やガードレール、道路標識等に貼着して用いられる防汚用光触媒フィルムであることが好ましい。この場合、外部からのエネルギーを使用しない自己洗浄機能を有するため、環境負荷が小さい防汚フィルムとして、屋内外を問わず広く使用することができる。
【0063】
B.光触媒フィルムの製造方法
本開示においては、樹脂基材層の一方の表面に密着性向上処理を施す工程と、上記樹脂基材層の上記密着性向上処理を施した表面に、無機化合物を含有する保護層を形成する工程と、上記保護層の上記樹脂基材層側とは反対の面側に蒸着法により光触媒層を形成する工程と、を有する、光触媒フィルムの製造方法を提供する。
【0064】
本開示の製造方法であれば、樹脂基材層と保護層との界面での剥離が抑制された光触媒フィルムを製造することができる。
【0065】
1. 密着性向上処理工程
本工程は、樹脂基材層の一方の表面に密着性向上処理を施す工程である。密着性向上処理としては、例えば、プラズマ処理、コロナ処理等が挙げられる。密着性向上処理は、特殊酸素プラズマ処理であることが好ましい。これにより、樹脂基材層と保護層の密着性をより向上させることができる。
【0066】
このような特殊酸素プラズマ処理は、樹脂基材層にバイアス電圧を持った状態で行う酸素プラズマ処理である。このような酸素プラズマ処理は、後述する保護層形成工程と連続して行うことができる。
【0067】
2.保護層形成工程
保護層の形成方法としては、上記した保護層を樹脂基材層上に形成できる方法であれば、特に限定されない。具体的には、乾式法であることが好ましく、例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の方法を挙げることができる。
【0068】
本開示においては、中でも、抵抗加熱方式、または、エレクトロンビーム(EB)加熱方式による真空蒸着法が好ましく、特に、EB蒸着法を用いることが好ましい。
【0069】
EB蒸着法は、スパッタリング法と比較し成膜速度が速く、生産性が高いという利点がある。そのため、樹脂基材層の劣化を抑制することができる。蒸着源としては、酸化アルミニウムの蒸着膜を形成する場合には、例えば、金属アルミニウム、あるいは、酸化アルミニウム、その他等を使用することができ、また、酸化硅素の蒸着膜の場合には、一酸化硅素と硅素との混合物、一ないし二酸化硅素、その他等を使用することができる。
【0070】
3.光触媒層形成工程
本開示において上記光触媒層は、蒸着法により形成される。このような蒸着法としては、真空蒸着法、スパッタリング法等の真空成膜法を用いる方法を挙げることができる。真空成膜法により光触媒層を形成することにより、均一な光触媒層とすることが可能である。中でも、エレクトロンビーム(EB)加熱方式による真空蒸着法(EB蒸着法)等を用いることが好ましい。EB蒸着法は、スパッタリング法と比較し成膜速度が速く、生産性が高いという利点がある。そのため、樹脂基材層の劣化を抑制することができる。また、成膜速度が速いため、光触媒層形成の際に、層の温度を厚さ方向に均一に高温とすることができるため、光触媒層の結晶性が良好となる。
【0071】
蒸着源としては、酸化チタンの蒸着膜を形成する場合には、例えば、金属チタン、酸化チタン、その他等を使用することができる。
【0072】
本開示においては、保護層形成工程および光触媒層形成工程のいずれも、EB蒸着法により行うことが好ましい。生産性良く光触媒フィルムを製造することができ、より短時間で保護層および光触媒層を形成することができるため、樹脂基材層の劣化を抑制することができるからである。
【0073】
4.その他工程
その他の工程として、光触媒層を活性化させるための活性化処理等を挙げることができる。光触媒層への活性化処理は、光触媒層を形成した後に行う。活性化処理方法としては、例えば、アニール用紫外線照射処理等を挙げることができる。
【0074】
5.好ましい製造方法
本開示において、上記密着性向上処理工程および上記保護層形成工程は、例えば、WO2019/087960号公報、特開2019-182353号公報に記載のローラー式連続蒸着膜成膜装置を使用することができる。
【0075】
図3に、本開示における上記密着性向上処理工程および上記保護層形成工程を行うための、ローラー式連続蒸着膜成膜装置100の一例を示す。ローラー式連続蒸着膜成膜装置100は、
図3に示すように、減圧チャンバ12内に隔壁35a~35cが形成されている。隔壁35a~35cにより、基材搬送室12A、プラズマ前処理室12B、成膜室12Cが形成され、特に、隔壁と隔壁35a~35cで囲まれた空間としてプラズマ前処理室12B及び成膜室12Cが形成され、各室は、必要に応じて、さらに内部に排気室が形成される。本開示における上記密着性向上処理工程はプラズマ前処理室で行い、保護層形成工程は成膜室で行うことができる。具体的には、ローラー式連続蒸着膜成膜装置100を用いる場合、密着性向上処理工程は特殊酸素プラズマ処理工程であり、保護層形成工程は蒸着膜形成工程となる。
【0076】
プラズマ前処理室12B内には、前処理が行われる樹脂基材Sを搬送し、かつプラズマ処理を可能にするプラズマ前処理ローラー20の一部が基材搬送室12Aに露出するように設けられており、巻き出しローラー13から巻き出された樹脂基材Sは巻き取られながらプラズマ前処理室12Bに移動するようになっている。プラズマ前処理室12B及び成膜室12Cは、基材搬送室12Aと接して設けられており、樹脂基材Sを大気に触れさせないままに移動可能である。基材搬送室12Aは、成膜ローラー23により再度基材搬送室12Aに移動させられた、片面に蒸着膜が成膜された樹脂基材Sをロール状に巻き取るため、巻取り手段としての巻き取りローラー15が設けられ、蒸着膜が成膜された樹脂基材Sを巻き取り可能とするようになっている。
【0077】
プラズマ前処理室12Bは、プラズマが生成する空間を他の領域と区分し、対向空間を効率よく真空排気できるように構成されることで、プラズマガス濃度の制御が容易となり、生産性が向上する。その減圧して形成する前処理圧力は、0.1Pa~100Pa程度に設定、維持することができ、特に、上述した酸化アルミニウム蒸着膜の好ましい遷移領域の変成率とするため、特殊酸素プラズマ前処理の処理圧力としては、1~20Paが好ましい。
【0078】
樹脂基材Sの搬送速度は、特に限定されないが、生産効率の観点から、少なくとも200~1000m/minにすることができ、特に、上述した酸化アルミニウム蒸着膜の好ましい遷移領域の変成率とするため特殊酸素プラズマ前処理の搬送速度としては、300~800m/minが好ましい。プラズマ前処理手段は、プラズマ供給手段及び磁気形成手段を含むものである。プラズマ前処理手段はプラズマ前処理ローラー20と協働し、樹脂基材S表面近傍に酸素プラズマPを閉じ込める。
【0079】
プラズマ前処理手段は、前処理ローラー20の一部を覆うように設けられている。具体的には、前処理ローラー20の外周近傍の表面に沿ってプラズマ前処理手段を構成するプラズマ供給手段と磁気形成手段を配置して、前処理ローラー20とプラズマ原料ガスを供給するとともにプラズマPを発生させる電極ともなるプラズマ供給ノズル22a~22cとプラズマPの発生を促進するためマグネット21等を有する磁気形成手段とにより挟まれた空隙を形成するように設置する。それにより、空隙の空間にプラズマ供給ノズル22a~22cを開口させてプラズマを基材表面に向かって噴射し、空隙内をプラズマ形成領域とし、さらに、前処理ローラー20と樹脂基材Sの表面近傍にプラズマ密度の高い領域を形成することで、樹脂基材Sの片面にプラズマ処理面を形成する特殊酸素プラズマ前処理が行えるように構成されている。
【0080】
プラズマ前処理手段のプラズマ供給手段は、減圧チャンバ12の外部に設けたプラズマ供給ノズルに接続された原料揮発供給装置18と、装置から原料ガス供給を供給する原料ガス供給ラインを含むものである。供給されるプラズマ原料ガスは、酸素単独又は酸素ガスとアルゴン、ヘリウム、窒素及びそれらの1種以上のガスとの混合ガスが、ガス貯留部から流量制御器を介することでガスの流量を計測しつつ供給される。
【0081】
これら供給されるガスは、必要に応じて所定の比率で混合されて、プラズマ原料ガス単独又はプラズマ形成用混合ガスに形成され、プラズマ供給手段に供給される。その単独又は混合ガスは、プラズマ供給手段のプラズマ供給ノズル22a~22cに供給され、プラズマ供給ノズル22a~22cの供給口が開口する前処理ローラー20の外周近傍に供給される。そのノズル開口は前処理ローラー20上の樹脂基材Sに向けられ、樹脂基材Sの表面全体に均一に酸素プラズマPを拡散、供給させることが可能となるように配置、構成され、樹脂基材Sの大面積の部分に均一なプラズマ前処理が可能となる。
【0082】
本開示において、酸化アルミニウム蒸着膜の遷移領域の変成率とするため特殊酸素プラズマ前処理としては、酸素ガスとアルゴンまたはヘリウムとの混合比率は、2:1~5:1、好ましくは、2:1~3:1である。このような混合比率であれば、樹脂基材上での蒸着アルミニウムの膜形成エネルギーが増加し、水酸化アルミニウムが基材の界面近傍で形成される、すなわち遷移領域の変成率が低下する。
【0083】
プラズマ供給ノズル22a~22cは、前処理ローラー20の対向電極として機能するもので、電極機能を有するようにできているものであり、前処理ローラー20との間に供給される高周波電圧、低周波電圧等による電位差によって供給されたプラズマ原料ガスが励起状態になり、プラズマPが発生し、供給される。
【0084】
具体的には、プラズマ前処理手段のプラズマ供給手段は、プラズマ電源としてプラズマ前処理ローラー20を設置し、対向電極との間に周波数が10Hzから2.5GHzの交流電圧を印加し、投入電力制御または、インピーダンス制御等を行い、プラズマ前処理ローラー20との間に任意の電圧を印加した状態にすることができるものであり、基材の表面物性を物理的ないしは化学的に改質する処理ができる酸素プラズマPを正電位にするバイアス電圧を印加できる電源32を備えている。
【0085】
本発明で採用する単位面積あたりのプラズマ強度として50~8000W・sec/m2であり、50W・sec/m2以下では、プラズマ前処理の効果がみられず、また、8000W・sec/m2以上では、基材の消耗、破損着色、焼成などプラズマによる基材の劣化が起きる傾向にある。特に、上述した酸化アルミウム蒸着膜の好ましい遷移領域の変成率とするため、特殊酸素プラズマ前処理のプラズマ強度としては、100~1000W・sec/m2が好ましい。樹脂基材Sに垂直にバイアス電圧を持ち上記プラズマ強度を与えることにより、安定的に保護層(例えば酸化アルミニウム蒸着層)との密着性等を向上させることができる。
【0086】
プラズマ前処理手段は、磁気形成手段を有している。磁気形成手段として、マグネットケース内に絶縁性スペーサ、ベースプレートが設けられ、このベースプレートにマグネット21が設けられる。マグネットケースに絶縁性シールド板が設けられ、この絶縁性シールド板に電極が取り付けられる。したがって、マグネットケースと電極は電気的に絶縁されており、マグネットケースを減圧チャンバ12内に設置、固定しても電極は電気的にフローティングレベルとすることが可能である。
【0087】
電極には電力供給配線31が接続され、電力供給配線31は電源32に接続される。また、電極内部には電極及びマグネット21の冷却のための温度調節媒体配管が設けられる。マグネット21は、電極兼プラズマ供給手段であるプラズマ供給ノズル22a~22cからの酸素プラズマPが基材Sに集中して適用するために設けられる。マグネット21を設けることにより、基材表面近傍での反応性が高くなり、良好なプラズマ前処理面を高速で形成することが可能となる。
【0088】
マグネット21は、樹脂基材Sの表面位置での磁束密度が10ガウスから10000ガウスである。樹脂基材S表面での磁束密度が10ガウス以上であれば、基材表面近傍での反応性を十分高めることが可能となり、良好な前処理面を高速で形成することができる。
【0089】
電極のマグネット21の配置構造によりプラズマ前処理時に形成されるイオン、電子がその配置構造に従って運動するため、例えば、1m2以上の大面積の樹脂基材Sに対してプラズマ前処理をする場合においても電極表面全体にわたり、電子やイオン、基材の分解物が均一に拡散され、樹脂基材Sが大面積の場合にも所望のプラズマ強度で、均一かつ安定した目的の前処理が可能となるものである。
【0090】
特殊酸化プラズマ処理された樹脂基材Sは、次の成膜室12Cに導くためのガイドロール14a~14dにより基材搬送室12Aから成膜室12Cに移動し、成膜区画で蒸着膜(例えば酸化アルミニウム蒸着膜)が形成される。
【0091】
蒸着膜成膜装置は、減圧された成膜室12C内に配置され、プラズマ前処理装置で前処理された樹脂基材Sの処理面を外側にして樹脂基材Sを巻きかけて搬送し、成膜処理する成膜ローラー23と、該成膜ローラーに対向して配置された成膜源24のターゲットを蒸発させて樹脂基材表面に蒸着膜を成膜する蒸着膜成膜手段24とを有し、回収ロール15によって回収する。蒸着膜成膜手段24は、例えば、抵抗加熱方式、又はEB加熱方式が挙げられる。
【0092】
C.光触媒糸
本開示における光触媒糸は、互いに対向する第1面および第2面を有する樹脂基材層と、上記樹脂基材層の上記第1面側に配置され、無機化合物を含有する第1保護層と、上記第1保護層の上記樹脂基材層側とは反対の面側に配置され、蒸着膜である第1光触媒層と、上記樹脂基材層の上記第2面側に配置され、無機化合物を含有する第2保護層と、上記第2保護層の上記樹脂基材層側とは反対の面側に配置され、蒸着膜である第2光触媒層と、を有し、上記樹脂基材層の上記第1面に、上記第1保護層との密着性を向上させる第1密着性向上処理層と、上記樹脂基材層の上記第2面に、上記第2保護層との密着性を向上させる第2密着性向上処理層と、をさらに有する。
【0093】
図4は、本開示における光触媒糸を例示する概略断面図である。
図4に例示するように、光触媒糸30は、互いに対向する第1面S1および第2面S2を有する樹脂基材層1と、樹脂基材層1の第1面S1側に配置され、無機化合物を含有する第1保護層2aと、第1保護層2aの樹脂基材層1側とは反対の面側に配置され、蒸着膜である第1光触媒層3aと、樹脂基材層1の第2面S2側に配置され、無機化合物を含有する第2保護層2bと、第2保護層2bの樹脂基材層1側とは反対の面側に配置され、蒸着膜である第2光触媒層3bと、を有する。また、図示しないが、光触媒糸30は、樹脂基材層1の第1面S1に、第1保護層2aとの密着性を向上させる第1密着性向上処理層と、樹脂基材層1の第2面S2に、第2保護層2bとの密着性を向上させる第2密着性向上処理層と、をさらに有する。
【0094】
ここで、例えば特開2003-73972号公報に示されているような光触媒糸は、糸本体部分と、糸本体部分の表面を覆う光触媒被膜とを有しており、光触媒被膜は、光触媒粒子とバインダーと溶剤とを含有する組成物を糸本体部分の表面に付着させることにより形成される。このように湿式法で光触媒被膜を形成する場合には、成膜のためにバインダーが必要であり、光触媒被膜中の光触媒粒子の含有量には制限がある。そのため、光触媒機能が不十分になることがある。
【0095】
これに対し、本開示における光触媒糸は、上記のような層構成を有する光触媒フィルムを糸状に断裁することによって得ることができる。本開示における光触媒糸は、樹脂基材層の両面に第1光触媒層および第2光触媒層を有しており、第1光触媒層および第2光触媒層が蒸着膜である。そのため、第1光触媒層および第2光触媒層にバインダーを含有させる必要がなく、第1光触媒層および第2光触媒層における光触媒の含有量を多くすることができる。したがって、光触媒性能を向上させることが可能である。
【0096】
また、本開示における光触媒糸においては、樹脂基材層と第1光触媒層との間に第1保護層が配置され、樹脂基材層と第2光触媒層との間に第2保護層が配置されていることにより、樹脂基材層を第1光触媒層および第2光触媒層から保護することができる。さらに、本開示における光触媒糸においては、樹脂基材層の両面に第1光触媒層および第2光触媒層が配置されているため、光触媒糸同士が接した場合には、各光触媒糸において樹脂基材層の端面は露出しているものの、一の光触媒糸の樹脂基材層に、他の光触媒糸の第1光触媒層または第2光触媒層が接する面積を極力少なくすることができる。そのため、第1光触媒層および第2光触媒層の光触媒活性によって、樹脂基材層に含まれる有機材料が劣化するのを抑制することができる。
【0097】
さらに、本開示の光触媒糸は、上述した「A.光触媒フィルム」において説明したように、樹脂基材層と、第1および第2光触媒層との間に、それぞれ第1および第2保護層を有することにより、樹脂基材層と第1保護層および第2保護層との界面での剥離を抑制できるという効果を奏する。そのため、光触媒フィルムを糸状に断裁する際や、光触媒糸を用いた繊維製品の使用時に、第1光触媒層および第2光触媒層の剥離を抑制し、光触媒機能の低下を抑えることができる。
【0098】
以下、本開示における光触媒糸の各構成について説明する。
【0099】
1.樹脂基材層
本開示における樹脂基材層は、互いに対向する第1面および第2面を有し、樹脂材料を含む部材である。
【0100】
樹脂基材層は、少なくとも樹脂フィルムを有することができる。樹脂基材層は、例えば、1つの樹脂フィルムを有していてもよく、2つの樹脂フィルムを有していてもよい。樹脂基材層が2つの樹脂フィルムを有する場合は、第1面側から順に、第1樹脂フィルムと、接着層と、第2樹脂フィルムとを有することができる。
【0101】
上記樹脂フィルムは、上記樹脂フィルムの少なくとも一方の面に配置されたハードコート層を有していてもよい。
【0102】
具体的には、
図5(a)に示す例では、樹脂基材層1は、樹脂フィルム1a単体である。また、例えば
図5(b)においては、樹脂基材層1は、第1面S1側から順に、第1ハードコート層4aと樹脂フィルム1aと第2ハードコート層4bとを有する。
【0103】
また、例えば
図6(a)においては、樹脂基材層1は、第1面S1側から順に、第1樹脂フィルム1bと接着層5と第2樹脂フィルム1cとを有する。また、例えば
図6(b)においては、樹脂基材層1は、第1面S1側から順に、第1ハードコート層4aと第1樹脂フィルム1bと接着層5と第2樹脂フィルム1cと第2ハードコート層4bとを有する。
【0104】
これらの場合において、樹脂基材層1が第1面側に第1ハードコート層4aを有する場合、第1ハードコート層4aの第1保護層2a側の面に第1密着性向上処理層が配置される。また、樹脂基材層1が第2面側にハードコート層4bを有する場合、ハードコート層4bの第2保護層2b側の面に第2密着性向上処理層が配置される。
【0105】
本開示における樹脂基材層の材料等は、「A.光触媒フィルム」において説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0106】
2.第1密着性向上処理層および第2密着性向上処理層
本開示における光触媒糸においては、樹脂基材層の第1面に第1密着性向上処理層が配置され、樹脂基材層の第2面に第2密着性向上処理層が配置されている。
【0107】
本開示における第1密着性向上処理層および第2密着性向上処理層については、「A.光触媒フィルム」において、密着性向上処理層として説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0108】
3.第1保護層および第2保護層
本開示における光触媒糸においては、第1保護層は、樹脂基材層と第1光触媒層との間に配置され、第2保護層は、樹脂基材層と第2光触媒層との間に配置されている。第1保護層および第2保護層はそれぞれ、第1光触媒層および第2光触媒層が樹脂基材層に影響を与えないように相互の接触を阻害するものである。
【0109】
本開示における第1保護層および第2保護層については、「A.光触媒フィルム」において、保護層として説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0110】
4.第1光触媒層および第2光触媒層
本開示における第1光触媒層および第2光触媒層は、光触媒を含有することにより光触媒機能を発現する層であり、本開示における光触媒糸において最表面に位置する層である。
【0111】
本開示における第1光触媒層および第2光触媒層については、「A.光触媒フィルム」において、光触媒層として説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0112】
5.その他の構成
本開示における光触媒糸は、「A.光触媒フィルム」において説明したものと同様に、意匠性を高めること等を目的として、印刷層を有していてもよい。
【0113】
6.その他
本開示における光触媒糸の幅は、例えば、50μm以上10mm以下であってもよく、
中でも80μm以上5mm以下、特に100μm以上3mm以下であってもよい。
【0114】
7.特性
本開示における光触媒糸は、上記「A.光触媒フィルム」において説明したものと同様の特性、具体的には、同様の全光線透過率、ヘーズ値、および密着強度を有する。
【0115】
8.光触媒糸の製造方法
本開示における光触媒糸の製造方法は、例えば、光触媒糸と同様の層構成を有する光触媒フィルムを製造する光触媒フィルム製造工程と、光触媒フィルムを糸状に断裁する断裁工程とを有することができる。
【0116】
(1)光触媒フィルム製造工程
光触媒フィルム製造工程は、樹脂基材層の構成によって異なる。
【0117】
例えば、樹脂基材層が1つの樹脂フィルムを有する場合、光触媒フィルム製造工程は、樹脂基材層の第1面および第2面にそれぞれ密着性向上処理を施す工程と、樹脂基材層の密着性向上処理を施した面に、無機化合物を含有する第1保護層および第2保護層をそれぞれ形成する工程と、第1保護層上および第2保護層上にそれぞれ、蒸着法により第1光触媒層および第2光触媒層を形成する工程と、を有することができる。
【0118】
また、例えば、樹脂基材層が、第1樹脂フィルムと、接着層と、第2樹脂フィルムとを有する場合、光触媒フィルム製造工程は、第1樹脂フィルムと第1密着性向上処理層と第1保護層と第1光触媒層とを有する第1光触媒フィルムを作製する工程と、第2樹脂フィルムと第2密着性向上処理層と第2保護層と第2光触媒層とを有する第2光触媒フィルムを作製する工程と、第1光触媒フィルムおよび第2触媒フィルムを接着層を介して接着する工程と、を有することができる。
【0119】
第1光触媒フィルムを作製する工程は、第1樹脂フィルムの一方の面に密着性向上処理を施す工程と、第1樹脂フィルムの密着性向上処理を施した面に、無機化合物を含有する第1保護層を形成する工程と、第1保護層上に蒸着法により第1光触媒層を形成する工程と、を有することができる。第2光触媒フィルムを作製する工程は、第2樹脂フィルムの一方の面に密着性向上処理を施す工程と、第2樹脂フィルムの密着性向上処理を施した面に、無機化合物を含有する第2保護層を形成する工程と、第2保護層上に蒸着法により第2光触媒層を形成する工程と、を有することができる。
【0120】
なお、通常、上記第1光触媒フィルムを作製する工程と第2光触媒フィルムを作製する工程とは、同一の工程であり、それぞれの工程が含む上述した密着性向上処理を施す工程、保護層を形成する工程、および光触媒層を形成する工程は、同様の方法で行われる。
【0121】
本開示における光触媒フィルム製造工程の詳細は、上記「B.光触媒フィルムの製造方法」で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0122】
(2)断裁工程
上記光触媒フィルムを糸状に断裁する方法としては、特に限定されず、スリッターで所定の幅に断裁する方法が挙げられる。
【0123】
9.用途
本開示における光触媒糸は、光触媒フィルムを断裁することにより得られる糸であり、平糸である。本開示における光触媒糸は、平糸として用いてもよく、後述するように、他の糸との撚糸として用いてもよい。
【0124】
本開示における光触媒糸は、後述の繊維構造体に加工して使用することができる。
【0125】
本開示における光触媒糸は、種々の物質の分解、防汚、抗菌、抗ウィルス、脱臭、防カビ、防藻、防苔等の様々な機能等を有しており、種々の用途に適用することができる。本開示における光触媒糸は、例えば、生地、衣料品、フィルタ、セパレータ、衛生材料、農業資材、建築資材、土木資材、車輌資材、生活資材等の繊維製品に使用することができる。
【0126】
ここで、昨今、新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)による感染症(COVID-19)が世界的に流行していることから、抗菌性や抗ウイルス性の繊維製品が強く求められている。本開示における光触媒糸は、抗菌糸や抗ウィルス糸として用いることができ、繊維製品に抗菌性や抗ウィルス性を付与することができる。
【0127】
また、本開示における光触媒糸は、植物栽培用シートに用いることができる。光触媒糸を含む植物栽培用シートは、カビ、藻、苔等の発生を抑制することができる。
【0128】
D.撚糸
本開示における撚糸は、上述の光触媒糸と、他の糸とを含む。
【0129】
本開示における撚糸は、上述の光触媒糸を含むことにより、光触媒性能を向上させることが可能である。
【0130】
撚糸を構成する光触媒糸は、光触媒フィルムを断裁することにより得られる平糸である。光触媒糸については、上記「C.光触媒糸」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
【0131】
撚糸を構成する他の糸は、光触媒糸からなる平糸と撚ることで撚糸を得ることが可能な糸であれば特に限定されない。他の糸は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0132】
撚糸方法としては、フィルムを断裁することにより得られる平糸と他の糸とを撚ることが可能な方法であれば特に限定されず、例えば、丸撚り、蛇腹撚り、羽衣撚り、たすき撚り、ブリヤン撚り等の方法が挙げられる。
【0133】
本開示における撚糸の用途は、上述の光触媒糸の用途と同様である。
【0134】
E.繊維構造体
本開示における繊維構造体は、上述の光触媒糸または撚糸を含む。
【0135】
本開示における繊維構造体は、上述の光触媒糸、または光触媒糸を含む撚糸を含むことにより、光触媒性能を効率的に発揮することができる。
【0136】
繊維構造体としては、例えば、織物、編物、不織布、メッシュ状物、ネット状物等が挙げられる。
本開示における不織布とは、繊維を織らずに絡み合わせたシート状のものを示すものである。
【0137】
本開示における繊維構造体は、上述の光触媒糸および撚糸の少なくともいずれかを含んでいればよく、例えば、光触媒糸および撚糸の少なくともいずれかのみを含んでいてもよく、光触媒糸および撚糸の少なくともいずれかと、他の糸または繊維とを含んでいてもよい。
【0138】
本開示における繊維構造体の用途は、上述の光触媒糸の用途と同様とすることができる。
【0139】
F.フィルタ
本開示におけるフィルタは、上述の繊維構造体を有するものであり、繊維構造体に特定成分を濾過、もしくは付着させて取り除く通常のフィルタの機能に加えて、繊維構造体を有することによる効率的な光触媒の機能を発揮することができる。
【0140】
具体的には、上記繊維構造体をフィルタとして用いることにより、フィルタを通過する流体(気体もしくは液体)中の不要な有機物を分解する等の効果、さらにはフィルタに付着した上記特定成分を分解し、上記フィルタ自身でフィルタ機能を再生することが可能となるといった効果を奏するものである。
【0141】
本開示におけるフィルタは、上述の繊維構造体を少なくとも有していればよく、フィルタの構成は、用途に応じて適宜選択される。本開示におけるフィルタは、例えば、単層の繊維構造体から構成されていてもよく、あるいは、2層以上の繊維構造体の積層体から構成されていてもよい。また、本開示におけるフィルタは、例えば、上述の繊維構造体と、他の繊維構造体とを有していてもよい。また、本開示におけるフィルタは、上述の繊維構造体と、多孔質フィルム等の樹脂フィルムとを有していてもよい。
【0142】
本開示におけるフィルタは、例えば、エアフィルタ、液体フィルタ等に用いることができる。エアフィルタとしては、具体的には、エアコン、空気清浄機、加湿機、除湿機等の空調機器に用いられる空調用エアフィルタ等が挙げられる。一方、液体フィルタとしては、工業用水、海水用のろ過装置に用いられる液体フィルタ等が挙げられる。フィルタに接触した種々の物質を分解し、目詰まり抑制等の効果がある。
【0143】
G.積層体
本開示の積層体は、上記「A.光触媒フィルム」で説明した光触媒フィルムが積層された態様(以下、第1態様とする。)、樹脂基材層の両面に光触媒が配置された光触媒フィルムが積層された態様(以下、第2態様とする。)、および上記「E.繊維構造体」で説明した繊維構造体が積層された態様(以下、第3態様とする。)の3つの態様を有する。
【0144】
本開示の積層体は、液体に浸漬して用いることにより、液体との接触面積を拡大することが可能となる。したがって、本開示の積層体を液体に対して用いることにより、液体中の種々の物質の分解機能、液体に対する防汚、抗菌、抗ウィルス、脱臭機能などを効果的に向上させることが可能となる。
【0145】
本開示の積層体を液体に対して用いる方法としては、例えば水槽中の底に配置する方法や、水耕栽培における水の流路に積層体を配置する方法、積層体が第3態様の場合は、積層体を液体のフィルタとして用いる方法等を挙げることができる。
以下、各態様について説明する。
【0146】
1.第1態様
本態様の積層体は、上記「A.光触媒フィルム」で説明した光触媒フィルムが積層されたものである。
本態様に用いられる光触媒フィルムは、上記「A.光触媒フィルム」で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0147】
本態様の積層体は、上記光触媒フィルムが、2層以上積層されていれば、特に限定されるものではないが、3層以上であることが好ましく、特に、10層以上であることが好ましい。一方、通常は50層以下、特に30層以下であることが好ましい。
【0148】
上記積層体において、特に限定されるものではないが、各層は所定の間隔をあけて配置されていることが好ましい。液体との接触を効果的に行うことができるからである。
上記間隔としては、例えば3mm以上であることが好ましく、特に5mm以上であることが好ましい。一方、30mm以下であることが好ましく、特に15mm以下であることが好ましい。
【0149】
このように間隔をおいて光触媒フィルムを配置する方法としては、例えば、光触媒フィルムを把持する把持手段が所定の間隔で配置された支持部材を用い、この支持部材の把持手段を用いて、所定の間隔で各光触媒フィルムを配置する方法、または光触媒フィルムがある程度の自己支持性を有するものである場合は、各光触媒フィルム間に所定の厚みを有するスペーサを配置する方法等を挙げることができる。
【0150】
上記積層体は、積層して用いた際に、各光触媒フィルムの光触媒機能を効果的に得るために、積層体を構成する光触媒フィルムは、上記光触媒フィルムに用いられている光触媒を活性化させる波長の光に対して、光透過性を有するものであることが好ましい。
【0151】
具体的には、300nmから550nmの範囲内の光に対して、少なくとも50%以上、好ましくは75%以上の透過率を有することが好ましい。このような透過率は、例えば、日立分光光度計U-4100、U-4000等の一般的な紫外可視分光光度計を用いることにより測定することができる。
【0152】
2.第2態様
本態様の積層体は、樹脂基材層の両面に光触媒が配置された光触媒フィルムが積層されたものであって、上記光触媒フィルムは、互いに対向する第1面および第2面を有する樹脂基材層と、上記樹脂基材層の上記第1面側に配置され、無機化合物を含有する第1保護層と、上記第1保護層の上記樹脂基材層側とは反対の面側に配置され、蒸着膜である第1光触媒層と、上記樹脂基材層の上記第2面側に配置され、無機化合物を含有する第2保護層と、上記第2保護層の上記樹脂基材層側とは反対の面側に配置され、蒸着膜である第2光触媒層と、を有し、上記樹脂基材層の上記第1面に、上記第1保護層との密着性を向上させる第1密着性向上処理層と、上記樹脂基材層の上記第2面に、上記第2保護層との密着性を向上させる第2密着性向上処理層と、を有する光触媒フィルムである。
【0153】
このような両面に光触媒層が形成された光触媒フィルムは、上記「C.光触媒糸」の項で説明した断裁前の光触媒フィルムと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0154】
また、積層体としての他の点については、上記「1.第1態様」で説明したものと同様とすることができる。
【0155】
3.第3態様
本態様の積層体は、上記「E.繊維構造体」で説明した繊維構造体が積層されたものである。
【0156】
本態様に用いられる繊維構造体は、上記「E.繊維構造体」で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略するが、本態様の積層体に用いられる繊維構造体は、積層体とする関係上、好ましくは厚みの薄いものを用いることが好ましい。
具体的には、20μm以上2000μm以下のものであることが好ましい。
【0157】
積層体としての他の点については、上記「1.第1態様」で説明したものと同様とすることができる。
【0158】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
【実施例0159】
(実施例1)
まず、樹脂基材としての厚さ12μmのポリエチレンテレフタラートフィルム(以下、PETフィルム)の保護層を設ける面に、プラズマ前処理装置を有する巻取り式蒸着機を用いて下記プラズマ条件下でプラズマ供給ノズルからプラズマを導入し、搬送速度400m/minで特殊酸素プラズマ前処理を施した。
【0160】
(特殊酸素プラズマ前処理条件)
・プラズマ出力:150W・sec/m2
・プラズマ形成ガス導入量:Arガス 1200sccm、O2ガス3000sccm
・前処理ドラムとプラズマ供給ノズル間の印加電圧:340V
・プラズマ前処理区画の真空度:3.8Pa
【0161】
次いで、連続搬送した成膜区画内で反応性抵抗加熱方式により、PETフィルムの特殊酸素プラズマ前処理を施した表面に、厚さ10nmの酸化アルミニウム蒸着膜(保護層)を形成した。
【0162】
次に、酸化アルミニウム蒸着膜の上面に反応性EB蒸着機を用いて200nmの酸化チタン膜(光触媒層)を成膜し、光触媒フィルムを得た。
【0163】
(実施例2)
酸化チタン蒸着膜の厚みを100nmに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、光触媒フィルムを得た。
【0164】
(比較例)
特殊酸素プラズマ前処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法で、PETフィルム上に、酸化アルミニウム蒸着膜および酸化チタン層を形成した。
【0165】
[遷移領域の変成率]
「A.光触媒フィルム 1.樹脂基材層 b)密着性向上処理層」に記載の方法で、遷移領域の変成率を算出した。結果を表1に示す。
【0166】
[密着性評価]
実施例1および実施例2で得られた光触媒フィルムでは、剥離が観察されなかった(表1 密着性〇)が、比較例では、酸化チタン層形成中に、PETフィルムおよびアルミニウム蒸着膜の界面で剥離が生じた(表1 密着性×)。
【0167】
[初期接触角および限界接触角の測定]
光触媒層表面に対する水の初期接触角および限界接触角をJIS R 1703-1:2007に準拠して求めた。限界接触角が小さいほど、光触媒体層の光触媒活性が高いといえる。
【0168】
【0169】
なお、表1中、「-」は不実施を示す。
【0170】
表1に示すように、実施例1および実施例2では、酸化アルミニウム蒸着膜の遷移領域の変成率は45%以下であり、酸化アルミニウム蒸着膜とPETフィルムの界面での剥離が発生しなかった。一方で、比較例は、酸化アルミニウム蒸着膜の遷移領域の変成率は52%であり、酸化アルミニウム蒸着膜とPETフィルムの界面での剥離が発生した。
【0171】
すなわち、本開示においては、以下の発明を提供できる。
[1]樹脂基材層と、前記樹脂基材層の一方の面側に配置された、無機化合物を含有する保護層と、前記保護層の前記樹脂基材層側とは反対の面側に配置された蒸着膜である光触媒層と、を有し、前記樹脂基材層の前記保護層側の面には、前記保護層との密着性を向上させる密着性向上処理層を有する、光触媒フィルム。
[2]前記保護層が、酸化ケイ素または酸化アルミニウムを含む、[1]に記載の光触媒フィルム。
[3]前記保護層が蒸着膜である、[1]または[2]に記載の光触媒フィルム。
[4]前記保護層が、酸化アルミニウムを含む酸化アルミニウム蒸着膜であり、前記樹脂基材層と前記酸化アルミニウム蒸着膜との密着強度を規定する、前記酸化アルミニウム蒸着膜の遷移領域が形成されており、前記遷移領域は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を用いてエッチングを行うことで検出される水酸化アルミニウムに変成する元素結合Al2O4Hを含み、TOF-SIMSを用いてエッチングを行うことで規定される酸化アルミニウム蒸着膜に対する、TOF-SIMSを用いて規定される前記変成される遷移領域の割合により定義される遷移領域の変成率が45%以下である、[1]から[3]までのいずれかに記載の光触媒フィルム。
[5]前記光触媒層が、酸化チタンを含む、[1]から[4]までのいずれかに記載の光触媒フィルム。
[6]樹脂基材層の一方の表面に密着性向上処理を施す工程と、前記樹脂基材層の前記密着性向上処理を施した表面に、無機化合物を含有する保護層を形成する工程と、前記保護層の前記樹脂基材層側とは反対の面側に蒸着法により光触媒層を形成する工程と、を有する光触媒フィルムの製造方法。
[7]前記光触媒層は、電子線蒸着法により形成される、[6]に記載の光触媒フィルムの製造方法。
[8]互いに対向する第1面および第2面を有する樹脂基材層と、前記樹脂基材層の前記第1面側に配置され、無機化合物を含有する第1保護層と、前記第1保護層の前記樹脂基材層側とは反対の面側に配置され、蒸着膜である第1光触媒層と、前記樹脂基材層の前記第2面側に配置され、無機化合物を含有する第2保護層と、前記第2保護層の前記樹脂基材層側とは反対の面側に配置され、蒸着膜である第2光触媒層と、を有し、前記樹脂基材層の前記第1面に、前記第1保護層との密着性を向上させる第1密着性向上処理層と、前記樹脂基材層の前記第2面に、前記第2保護層との密着性を向上させる第2密着性向上処理層と、をさらに有する、光触媒糸。
[9]前記第1保護層および第2保護層が、酸化ケイ素または酸化アルミニウムを含む、[8]に記載の光触媒糸。
[10]前記第1保護層および第2保護層が、蒸着膜である、[8]または[9]に記載の光触媒糸。
[11]前記第1保護層および前記第2保護層が、酸化アルミニウムを含む酸化アルミニウム蒸着膜であり、前記樹脂基材層と前記酸化アルミニウム蒸着膜との密着強度を規定する、前記酸化アルミニウム蒸着膜の遷移領域が形成されており、前記遷移領域は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を用いてエッチングを行うことで検出される水酸化アルミニウムに変成する元素結合Al2O4Hを含み、TOF-SIMSを用いてエッチングを行うことで規定される酸化アルミニウム蒸着膜に対する、TOF-SIMSを用いて規定される前記変成される遷移領域の割合により定義される遷移領域の変成率が45%以下である、[8]から[10]までのいずれかに記載の光触媒糸。
[12]前記第1光触媒層および前記第2光触媒層が、酸化チタンを含む、[8]から[11]までのいずれかに記載の光触媒糸。
[13][8]から[12]までのいずれかに記載の光触媒糸と、他の糸とを含む、撚糸。
[14][8]から[12]までのいずれかに記載の光触媒糸、または[13]に記載の撚糸を含む、繊維構造体。
[15][14]に記載の繊維構造体を有する、フィルタ。
[16][1]から[5]までのいずれかに記載の光触媒フィルムが、複数層積層されてなる、積層体。
[17]互いに対向する第1面および第2面を有する樹脂基材層と、前記樹脂基材層の前記第1面側に配置され、無機化合物を含有する第1保護層と、前記第1保護層の前記樹脂基材層側とは反対の面側に配置され、蒸着膜である第1光触媒層と、前記樹脂基材層の前記第2面側に配置され、無機化合物を含有する第2保護層と、前記第2保護層の前記樹脂基材層側とは反対の面側に配置され、蒸着膜である第2光触媒層と、を有し、前記樹脂基材層の前記第1面に、前記第1保護層との密着性を向上させる第1密着性向上処理層と、前記樹脂基材層の前記第2面に、前記第2保護層との密着性を向上させる第2密着性向上処理層と、を有する光触媒フィルムが、複数層積層されてなる、積層体。
[18][14]に記載の繊維構造体が、複数層積層されてなる、積層体。