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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168900
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】ノイズ吸収装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/06 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
H01F17/06 K
H01F17/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074563
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】592077121
【氏名又は名称】竹内工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】竹内 保市
(72)【発明者】
【氏名】太田 雅也
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB10
5E070BA18
5E070DA03
(57)【要約】
【課題】分割ケースのヒンジの破損や劣化にかかわらず磁性コアによるノイズ吸収効果が低下されることがない信頼性の高いノイズ吸収装置を提供する。
【解決手段】分割コア(分割フェライトコア)3A,3Bを保持する第1分割ケース2Aと第2分割ケース2Bで筒状のコアケース2を構成するノイズ吸収装置であって、第1と第2の分割ケース2A,2Bの各第1側縁部に設けられてこれらの分割ケース2A,2Bを開閉可能に連結するヒンジ片6と、第1と第2の分割ケース2A,2Bの各第2側縁部を連結状態とする主係合部4と、第1と第2の分割ケース2A,2Bの第1側縁部を連結状態とする副係合部5を備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割コアを保持する第1分割ケースと第2分割ケースを備え、これら第1と第2の分割ケースが互いに合せられたときに前記分割コアを内装する筒状のコアケースを構成するノイズ吸収装置であって、前記第1と第2の分割ケースの各第1側縁部に設けられ当該第1と第2の分割ケースを開閉可能に連結するヒンジ片と、前記第1と第2の分割ケースの各第2側縁部に設けられて当該各第2側縁部を連結状態とする主係合部と、前記第1と第2の分割ケースの各第1側縁部に設けられて当該各第1側縁部を連結状態とする副係合部を備えることを特徴とするノイズ吸収装置。
【請求項2】
前記主係合部は、前記第1と第2の分割ケースの一方の第2側縁部に設けられた係合突起と、前記第1と第2の分割ケースの他方の第2側縁部に設けられて前記係合突起に係合される係合穴を有する係合片とを備える請求項1に記載のノイズ吸収装置。
【請求項3】
前記副係合部は、前記第1と第2の分割ケースの一方の第1側縁部に設けられ、両分割ケースが合せられたときに他方の第1側縁部に対向位置される突出片を備え、この突出片に設けられた係合穴又は係合突起と、前記他方の第1側縁部に設けられて前記係合穴又は係合突起に係合される係合突起を備える請求項1又は2に記載のノイズ吸収装置。
【請求項4】
前記副係合部は、前記第1と第2の分割ケースの一方の第1側縁部に設けられた第1係合突起と、前記第1と第2の分割ケースの他方の第1側縁部に設けられて前記第1係合突起に係合される第2係合突起とを備える請求項1又は2に記載のノイズ吸収装置。
【請求項5】
前記副係合部は前記第1と第2の分割ケースの筒軸方向の両端領域に配設される請求項1ないし4のいずれかに記載のノイズ吸収装置。
【請求項6】
前記ヒンジ片は前記第1と第2の分割ケースの筒軸方向の両端領域に配設された一対のヒンジ片として構成され、前記副係合部は当該一対のヒンジ片に挟まれた前記第1と第2の分割ケースの筒軸方向の中間領域に配設される請求項1ないし4のいずれかに記載のノイズ吸収装置。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器のケーブル(電線)に流れるノイズ(雑音電流)を吸収して当該ノイズによる電子機器の誤動作を防止するためのノイズ吸収装置に関し、特にノイズ吸収効果の信頼性を高めたノイズ吸収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のノイズ吸収装置として特許文献1に記載のノイズ吸収具が提案されている。このノイズ吸収具は、円筒状のフェライトを軸方向に半分に分割した一対のフェライトコア(分割コア)と、この分割コアをそれぞれ支持する一対の分割ケースを有しており、電子機器に接続されるケーブルをその両側から分割コアごと分割ケースで挟むようにして電線に装着する構成である。また、特許文献1のノイズ吸収装置は、一対の分割ケースはヒンジにより連結されており、このヒンジを屈曲させることによって両分割ケースは電線を囲んだ円筒容器状に組み立てられ、一対の分割コアは電線を囲んだ円筒状に形成されてコアループ(フェライトループ)が構成される。
【0003】
このノイズ吸収装置では、一対の分割ケースはヒンジと共に樹脂成形により一体に形成され、ヒンジは屈曲を可能とするために可及的に薄肉に形成されている。そのため、電線に装着する際にヒンジに加えられる応力によってヒンジにクラックが入る等の破損が生じることがある。ヒンジが破損されると、一対の分割ケースの円筒容器形状を保持することが難しくなり、支持している一対の分割コアの相互密着性が崩れる。また、ヒンジが破損されなくても、経年劣化により弾性力が低下した場合にも一対の分割コアの相互密着性が崩れることもある。一対の分割コアの相互密着性が崩れると、電線を囲むフェライトループが確保できなくなり、ノイズ吸収効果が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6761355号公報
【特許文献2】特許第2775604号公報
【特許文献3】特開2011-71263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなヒンジの破損や劣化によるノイズ吸収効果の低下を解決するために、特許文献1のノイズ吸収装置は、ヒンジを別素材で形成している。そのため、成形工程が複雑になるという課題がある。また、特許文献2のノイズ吸収装置は、一対の分割ケースを別体に構成するとともに、両分割ケースを回転中心軸と軸受で構成したヒンジで連結している。そのため、このノイズ吸収装置は一対の分割ケースを樹脂成形によって一体に構成することができず、部品点数が多くなるとともに構造が複雑になり、コスト高になる。また、ノイズ吸収装置を構成する際には回転中心軸を用いて組み立てる必要があり、組み立て作業性が悪くなる。
【0006】
さらに、特許文献3のノイズ吸収装置は、一対の分割ケースを連結するヒンジの両側に接続部を設けており、この接続部によりヒンジに加えられる応力を緩和してヒンジの破損を防止している。このノイズ吸収装置は一対の分割ケースを樹脂成形によって構成することは可能であるが、接続部を設けたことによりヒンジを屈曲するのに必要な力が増大することは避けられず、ノイズ吸収装置を装着する際の作業性が悪くなる。また、この接続部もヒンジと同様に屈曲されるのでクラックが発生し、あるいは経年劣化により劣化されることがあり、分割ケースによるフェライトコアの支持機能が低下されノイズ吸収効果が低下する。
【0007】
本発明の目的は、分割ケースのヒンジの破損や劣化にかかわらず分割コアによるノイズ吸収効果が低下されることがない信頼性の高いノイズ吸収装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、分割コアを保持する第1分割ケースと第2分割ケースを備え、これら第1と第2の分割ケースが互いに合せられたときに当該分割コアを内装する筒状のコアケースを構成するノイズ吸収装置であって、第1と第2の分割ケースの各第1側縁部に設けられ当該第1と第2の分割ケースを開閉可能に連結するヒンジ片と、第1と第2の分割ケースの各第2側縁部に設けられて当該各第2側縁部を連結状態とする主係合部と、第1と第2の分割ケースの各第1側縁部に設けられて当該各第1側縁部を連結状態とする副係合部を備える。
【0009】
本発明における副係合部は、例えば、第1と第2の分割ケースの一方の第1側縁部に設けられ、両分割ケースが合せられたときに第1と第2の分割ケースの他方の第1側縁部に対向位置される突出片を備え、この突出片に設けられた係合穴又は係合突起と、他方の第1側縁部に設けられて係合穴又は係合突起に係合される係合突起を備える構成とされる。あるいは、副係合部は、第1と第2の分割ケースの一方の第1側縁部に設けられた第1係合突起と、第1と第2の分割ケースの他方の第1側縁部に設けられて第1係合突起に係合される第2係合突起とを備える構成とされる。
【0010】
本発明において、副係合部は第1と第2の分割ケースの筒軸方向の両端領域に配設される。あるいは、ヒンジ片は第1と第2の分割ケースの筒軸方向の両端領域に配設された一対のヒンジ片として構成され、副係合部は当該一対のヒンジ片に挟まれた第1と第2の分割ケースの筒軸方向の中間領域に配設される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ヒンジ片の屈曲性が低下され、あるいはヒンジ片が破損された場合でも、副係合部により第1と第2の分割ケースの各第1側縁部の連結状態が保持されるので、コアケースの容器形状が保持され、分割コアによるコアループが確保されてノイズ吸収効果が保持される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態1のノイズ吸収装置の外観斜視図。
図2】実施形態1のノイズ吸収装置のコアケースを開いた状態の斜視図。
図3】実施形態1のノイズ吸収装置の、(a)は正面図、(b)は左側面図。
図4】実施形態1のノイズ吸収装置の、(a)と図4(b)のa-a線断面図、(b)は図4(a)のb1-b1線拡大断面図。
図5】実施形態2のノイズ吸収装置のコアケースを開いた状態の斜視図。
図6】実施形態2のノイズ吸収装置の、(a)は外観斜視図、(b)はそのb2-b2線に沿った拡大部分断面図。
図7】実施形態3のノイズ吸収装置のコアケースを開いた状態の斜視図。
図8】実施形態3のノイズ吸収装置の、(a)は外観斜視図、(b)はそのb3-b3線に沿った拡大部分断面図。
図9】実施形態4のノイズ吸収装置のコアケースを開いた状態の斜視図。
図10】実施形態4のノイズ吸収装置の、(a)は外観斜視図、(b)はそのb4-b4線に沿った拡大部分断面図。
図11】実施形態5のノイズ吸収装置のコアケースを開いた状態の斜視図。
図12】(a),(b)はそれぞれ実施形態5のノイズ吸収装置を異なる方向から見た外観斜視図。
図13図12(b)のb5-b5線拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態1)
次に本発明の実施形態1を説明する。図1は実施形態1のノイズ吸収装置1を仮想線で示すケーブルCに装着した状態の外観斜視図である。開閉が可能で、閉じたときに円筒状に組み立てられるコアケース2は樹脂成形により形成されており、その内部にフェライトコア3が内装されている。ノイズ吸収装置は、このコアケース2の中心に設けられたケーブル挿通孔にケーブルCが挿通され、このケーブルCを通流する電流中のノイズをフェライトコア3によって吸収するようになっている。
【0014】
図2は前記コアケース2を開いた状態の斜視図である。コアケース2は半円筒容器状をした一対の分割ケース2A,2Bを備えている。この分割ケースについて、図2における左側の分割ケース2Aを第1分割ケースと称し、右側の分割ケース2Bを第2分割ケースと称する。各分割ケース2A,2Bは軸方向に所要の間隔で対峙される半円環状をした一対の端壁21と、これら端壁21で挟まれ、かつ両端壁21の周縁に沿って延長された半円筒の周壁22とで構成されている。また、コアケース2は内部にフェライトコア3が内装されている。このフェライトコア3は、円筒型のフェライトコアを径方向に2分割した半円筒状をした一対の分割コア3A,3Bとして構成されており、それぞれ第1と第2の分割ケース2A,2Bに内装支持されている。
【0015】
各分割コア3A,3Bは、図には表れないが、各分割ケース2A,2Bに設けられた支持構造によってそれぞれ分割ケース2A,2Bからの脱落が防止された状態で支持されている。また、分割ケース2A,2Bの周壁22には、図1には分割ケース2Aについてのみ示されるように、軸方向に対峙された一対のスリット23で挟まれる領域が径方向内方に向けて弾性力を発揮するコア押圧片24が形成されており、このコア押圧片24の弾性力によって、一対の分割コア3A,3Bはコアケース2内において相互に密接され、ケーブルCの周りにフェライトループが構成される。
【0016】
これら第1及び第2の分割ケース2A,2Bは互いに周壁22の対向する部位、すなわち図2において第1分割ケース2Aの右側の側縁部と第2分割ケース2Bの左側の側縁部(以下、第1側縁部)において、薄肉片からなる可撓性のあるヒンジ片6によって互いに連結されており、両分割ケース2A,2Bは当該ヒンジ片6の可撓性によってそれぞれの他方の側縁部(以下、第2側縁部)がヒンジ片6を支点にして回動され、この回動により両分割ケース2A,Bが開閉されるように構成されている。
【0017】
図3(a)はノイズ吸収装置の正面図、図3(b)はその左側面図である。また、図4(a)は図3(b)のa-a線断面図、図4(b)は図3(a)のb1-b1線に沿った拡大断面図である。前記第1分割ケース2Aの第2側縁部には、周壁22の周面から突出した係合突起40が設けられ、第2分割ケース2Bの第2側縁部には、前記係合突起40に係合する係合穴を有する枠状の係合片41が設けられている。これにより、両分割ケース2A,2Bがヒンジ片6を支点にして閉じた状態に回動したときには、係合片41の係合穴が係合突起40に係合され、両分割ケース2A,2Bは円筒状容器として組み立てられる。これら係合突起40と係合片41は本発明の主係合部4として構成される。
【0018】
前記第1と第2の分割ケース2A,2Bの各両側の端壁21には、それぞれ第1側縁部と第2側縁部に対応する部位に、所要の寸法で縁部が円弧状に突出された突出片25,26が一体に形成されている。これら突出片25,26のうち、第1分割ケース2Aの突出片25は端壁21の外面よりも板厚方向の内側に所要寸法だけ変位された状態で形成されている。この変位により当該端壁21の外面には厚み方向の凹所21aが形成されている。一方、第2分割ケース2Bの突出片26は端壁21の外面に沿った位置に形成されている。したがって、第1と第2の分割ケース2A,2Bの各突出片25,26は互いに筒軸方向の異なる位置に配置され、第1分割ケース2Aの突出片25は第2分割ケース2Bの突出片26よりも筒軸方向の内側に配置されることになり、両分割ケース2A,2Bが閉じられたときには、第2分割ケース2Bの突出片26は第1分割ケース2Aの凹所21aに沿って進入位置される。
【0019】
第2分割ケース2Bの第1側縁部側の突出片26には、所要位置に板厚方向、すなわち筒軸方向に貫通した係合穴51が開口されている。ここでは円形の係合穴51が開口されている。一方、第1分割ケース2Aの端壁21の第1側縁部側の外面に形成されている凹所21aには、筒軸方向の外面方向に突出されたフック状をした円形の係合突起50が突設されている。この係合突起50は、突起高さが徐々に高くなるテーパ状(三角形状)をした係合突起50として形成されており、前記係合穴51に係合されることが可能である。これらが係合されたときには第2分割ケース2Bの突出片26と第1分割ケース2Aの端壁21を互いに連結することが可能であり、これら係合突起50と係合穴51は本発明における副係合部5として構成されている。
【0020】
なお、実施形態1のノイズ吸収装置は、図1図2に示されるように、第1分割ケース2Aの一方の端壁21の外面に周壁に向けて開口する袋状をした一対の嵌合溝部27が形成されており、この嵌合溝部27は、図示は省略するが当該ノイズ吸収装置1をシャーシ等に固定支持する際に用いる固定具が嵌合される。この固定具は本発明との関連が少ないので詳細な説明は省略する。また、第2分割ケース2Bの端壁21の外面には軸方向に突出したバンド挿通部28が設けられており、図示は省略するが、ノイズ吸収装置1をケーブルCに対して固定するためのバンドが挿通されるようになっている。このバンドについても本発明との関連が少ないので詳細な説明は省略する。
【0021】
以上の構成のノイズ吸収装置1は、図2に示したように第1分割ケース2Aと第2分割ケース2Bにそれぞれ分割コア3A,3Bを内装させ、かつ支持させた上で、ケーブルCを挟むように第1分割ケース2Aと第2分割ケース2Bを閉じて円筒容器状のコアケース2として組み立てる。このとき、ヒンジ片6を屈曲させながら、例えば、第2分割ケース2Bを第1分割ケース2Aに対して図2の反時計方向に回動させる。そして、両分割ケース2A,2Bを閉じて両分割ケース2A,2Bを対面させ、係合突起40と係合片41の係合穴を係合する。これにより、両分割ケース2A,2Bはそれぞれの第2側縁部が主係合部4により連結され、図1に示したように、両分割ケース2A,2BはケーブルCの周りに円筒容器状に組み立てられる。
【0022】
この状態では、図4(a)に示したように、各分割ケース2A、2Bに内装されている各分割コア3A,3Bは互いに対向面が密接されて円筒状態となり、ケーブルCの周囲を取り囲むフェライトループが形成される。なお、このとき、両分割ケース2A,2Bを閉じて行くのに従って各突出片25,26が互いに重ねられて行くので、各突出片25,26の円弧に近い形状をした縁部がケーブルCに当接されることになり、密着される両分割コア3A,3Bの間にケーブルCを挟み込むことが防止される。このことは本件出願人の特許第6472977号に記載の通りであるので詳細な説明は省略する。
【0023】
第1と第2の分割ケース2A,2Bでコアケース2が組み立てられると、ヒンジ片6を支点として回動された第2分割ケース2Bの突出片26は第1分割ケース2Aの凹所21aに進入位置される。この突出片26が第1分割ケース2Aの凹所21aに進入位置されると、突出片26において副係合部5による係合が行なわれる。すなわち、図4(b)に示されるように、第1分割ケース2Aの係合突起50と、第2分割ケース2Bの突出片26の係合穴51が係合される。この係合は各分割ケース2A,2Bの第1側縁部の筒軸方向の両端位置において行なわれる。これにより、両分割ケース2A,2Bは第1側縁部において互いに筒軸周り方向に連結された状態となり、この連結によって第1分割ケース2Aと第2分割ケース2Bの各第1側縁部、すなわちヒンジ片6が設けられている側縁部は周方向に相対移動が規制された状態になる。
【0024】
このように組み立てられたノイズ吸収装置1は、経年劣化によりヒンジ片6の屈曲性が低下されたとき、あるいは外力や内部応力によってヒンジ片6が破損されたときには、第1側縁部における両分割ケース2A,2Bの連結状態が劣化ないし破損される状況になる。そのため、第1分割ケース2Aと第2分割ケース2Bは第2側縁部において主係合部4による連結状態が保持されている場合でも、第1側縁部においては第1分割ケース2Aと第2分割ケース2Bが互いに離間される方向に相対移動ないし相対変位される状態になる。したがって、コアケース2内に支持されている一対の分割コア3A,3Bの相互密着性が保持されなくなり、ケーブルCを囲むフェライトループが形成されなくなり、ノイズ吸収効果が低下されることになる。
【0025】
この実施形態1では、副係合部5による第1と第2の分割ケース2A,2Bの第1側縁部での係合により、両分割ケース2A,2Bの第1側縁部での連結状態、すなわちヒンジ片6が存在する側縁部での連結状態が保持される。したがって、ヒンジ片6の劣化や破損に伴う第1と第2の分割ケース2A,2Bにおける相対移動や相対変位が防止されることになり、コアケース2の円筒容器形状が保持されてノイズ吸収効果が保持される。特に、副係合部5による係合はコアケース2の筒軸方向の両側において行なわれるので円筒容器形状の形状保持効果が高められる。
【0026】
なお、ノイズ吸収装置1の組み立て状態を解消する際には、適宜な治具や工具を利用して第2分割ケース2Aの突出片26を筒軸方向の外面側に弾性変形させれば、係合突起50と係合穴51の係合を解除して副係合部5における連結状態を解除することができる。したがって、従来のコアケースと同様に、主係合部4における係合を解除すれば、第1と第2の分割ケース2A,2Bを開いた状態に戻すことができ、リユースが可能になる。
【0027】
(実施形態2)
図5は実施形態2のノイズ吸収装置1Aを開いた状態の斜視図であり、図6(a)は組み立てた状態の斜視図、図6(b)は図6(a)のb2-b2線に沿った拡大部分断面図である。実施形態2は実施形態1の変形例に相当するものであり、実施形態1と等価な部分には同一符号を付して説明は省略する。実施形態2は、第1と第2の各分割ケース2A,2Bの基本的な構造は実施形態1と同じである。また、各分割ケース2A,2Bにそれぞれ突出片25,26が設けられており、第2分割ケース2Bの突出片26に関して副係合部5が設けられていることも同じである。一方、この実施形態2では、副係合部5の構成として、第2分割ケース2Bの突出片26には内面にフック状をした第2係合突起53が形成されており、第1分割ケース2Aの端壁21に設けられた凹所21aの外面にはフック状をした第1係合突起52が形成されている。
【0028】
実施形態2のノイズ吸収装置1Aは、両分割ケース2A,2Bの第1側縁部を連結しているヒンジ片6が屈曲され、かつ両分割ケース2A,2Bの各第2側縁部が主係合部4により連結されることによりコアケース2が組み立てられる。このとき第2分割ケース2Bの突出片26は第1分割ケース2Aの端壁21の凹所21aに進入されることにより、第1分割ケースの第1係合突起52と第2分割ケース2Bの第2係合突起53は互いに筒軸周り方向に係合される。これにより、第2分割ケース2Bの突出片26と第1分割ケース2Aの端壁21は筒軸周りの円周方向に連結された状態となり、この連結によって第1分割ケース2Aと第2分割ケース2Bの第1側縁部、すなわちヒンジ片6が設けられている側縁部は周方向に相対移動が規制された状態になる。なお、詳細は省略するが、このとき第1係合突起52と第2係合突起53はそれぞれ相手方に設けられた凹部に内挿されるので、突出片26と端壁21の筒軸方向の位置は保たれる。
【0029】
これにより、実施形態1と同様に、ノイズ吸収装置1Aが組み立てられた状態において、ヒンジ片6が劣化され、あるいは破損された場合でも、副係合部5での係合によって、第1分割ケース2Aと第2分割ケース2Bの第1側縁部における相対移動や相対変位が防止され、コアケース2の円筒容器形状が保持される。したがって、内装されている一対の分割コア3A,3Bの相互密着性が保持されてケーブルを囲むフェライトループが確保され、ノイズ吸収効果が維持される。
【0030】
実施形態2は、実施形態1のような突出片26に係合穴51が存在していないので、コアケース2を樹脂成形する際に係合穴51を成形するためのスライダー等が不要になり、成形用の金型構造が簡易化できるという利点がある。また、実施形態1のように係合穴51や係合突起50が外部に露呈されることがないので、外観上の見栄えが改善できる。
【0031】
(実施形態3)
図7は実施形態3のノイズ吸収装置1Bを開いた状態の斜視図であり、図8(a)は組み立てた状態の斜視図、図8(b)は図8(a)のb3-b3線に沿った拡大部分断面図である。実施形態1と等価な部分には同一符号を付して説明は省略する。実施形態3は第1分割ケース2Aと第2分割ケース2Bでコアケース2が構成されているが、このコアケース2は、実施形態1,2のコアケースよりも筒軸方向の寸法が長く形成されている。したがって、一対の分割コア3A,3Bもこれに対応する筒軸方向の寸法に形成されている。
【0032】
このように筒軸方向の寸法が長くされたことに伴い、第1と第2の分割ケース2A,2Bの第1側縁部を連結しているヒンジ片6は、筒軸方向に離間した2箇所に設けられており、ヒンジ片6に加わる応力を一対のヒンジ片6で分散させることによりヒンジ片6の耐久性等の信頼性が高められている。また、主係合部4も筒軸方向の2箇所に設けられている。すなわち、第1分割ケース2Aの第2側縁部に一対の係合突起40が設けられ、第2分割ケース2Bの第2側縁部に一対の係合片41が設けられ、これら係合片41に設けられた係合穴に係合突起40が係合して主係合部4が構成されている。これにより、第1と第2の分割ケース2A,2Bの第2側縁部における連結強度の信頼性が高められる。
【0033】
実施形態3のコアケース2は、第1分割ケース2Aの両端の端壁21の外面に、第1側縁部に沿った位置に細幅の凹溝21bが形成されており、この凹溝21bの内底面、すなわち当該端壁21の外面にはフック状をした係合突起54が筒軸方向の外側に向けて突出した状態で形成されている。凹溝21bは係合突起54を成形する際に金型を逃がすために利用される。
【0034】
一方、第2分割ケース2Bの両端の端壁21には、それぞれ所要の寸法で突出された係合片55が形成されている。これらの係合片55は第2分割ケース2Bの第1側縁部側の領域において所要幅寸法の板片状に形成されており、その突出方向の先端側の部位に板厚方向に貫通する係合穴55aが開口されている。また、端壁21の外面には、係合穴55aにつながる凹溝21cが形成されているが、これは係合穴55aを成形する際に金型を逃がすためのものである。これら係合突起54と係合片55(係合穴55a)とで副係合部5が構成されている。
【0035】
なお、実施形態3のコアケース2は、第1分割ケース2Aの筒軸方向の両端部にそれぞれ対をなすケーブル挟持片29が立設されており、このケーブル挟持片29によりケーブルをコアケース2の筒軸位置に規制する構成がとられている。このケーブル挟持片29については本件出願人の特許第5526007号に記載の通りであるので詳細な説明は省略する。
【0036】
実施形態3のノイズ吸収装置1Bは、ヒンジ片6が屈曲され、かつ両分割ケース2A,2Bの各第2側縁部が一対の主係合部4により連結されて第1と第2の分割ケース2A,2Bでコアケース2が組み立てられる。組み立てられた状態では、第2分割ケース2Bの係合片55は第1分割ケース2Aの凹溝21bに内挿され、これと同時に係合穴55aが係合突起54に係合される。これにより、第1及び第2の両分割ケース2A,2Bの各第1側縁部は筒軸方向の両端位置において副係合部5において連結される。すなわち、コアケース2の両端位置において第2分割ケース2Bの係合片55の係合穴55aは第1分割ケース2Aの係合突起54に係合され、第1と第2の分割ケース2A,2Bの第1側縁部は連結されて筒軸方向の両端において相対移動が規制された状態になる。
【0037】
これにより、実施形態1と同様に、ヒンジ片6が破損された場合、あるいは経年劣化により屈曲性が低下して第1と第2の両分割ケース2A,2Bの第1側縁部が離間される方向に相対移動ないし相対変位される状況になっても、このような相対移動や相対変位が防止される。したがって、コアケース2の円筒容器形状が保持され、内装支持している一対の分割コア3A,3Bの相互密着性が保持されてフェライトループが確保され、ノイズ吸収効果が維持される。
【0038】
(実施形態4)
図9は実施形態4のノイズ吸収装置1Cを開いた状態の斜視図であり、図10(a)は組み立てた状態の斜視図、図10(b)は図10(a)のb4-b4線に沿った拡大部分断面図である。実施形態4は実施形態3の変形例に相当するものであり、実施形態3と等価な部分には同一符号を付して説明は省略する。特に、コアケース2の筒軸方向の寸法が長くされたことに伴い、ヒンジ片6は筒軸方向に離間した2箇所に設けられ、また主係合部4も筒軸方向の2箇所に設けられている。
【0039】
実施形態4では、第2分割ケース2Bには、実施形態3の係合片54及び係合穴55aに代えて凹溝21cに臨む外面にフック状の第2係合突起57が形成されている。一方、第1分割ケース2Aには、端壁21の内面側に凹所21dが形成されており、コアケース2が閉じられたときに第2分割ケース2Bの前記係合突起57がこの凹所21dに進入されるように構成されている。その上で、当該凹所21dの内面にフック状の第1係合突起56が形成されており、前記第2係合突起57と係合可能とされている。これら第1係合突起56と第2係合突起57とで副係合部5が構成されている。
【0040】
実施形態4のノイズ吸収装置1Cは、両分割ケース2A,2Bの第1側縁部を連結している一対のヒンジ片6が屈曲され、かつ両分割ケース2A,2Bの各第2側縁部が主係合部4により連結されてコアケース2が組み立てられる。このとき、第2分割ケース2Bの第2係合突起57は第1分割ケースの端壁21の内側の凹所21dに進入される、そして、進入された第2係合突起57と、凹所21d内の第1係合突起56が互いに係合される。すなわち副係合部5によって第1分割ケース2Aと第2分割ケース2Bの各第1側縁部は互いに連結された状態となる。したがって、第1と第2の各分割ケース2A,2Bの第1側縁部は筒軸方向の両端において相対移動が規制された状態になる。
【0041】
これにより、一対のヒンジ片6の少なくとも一方が破損された場合、あるいは経年劣化により屈曲性が低下して第1と第2の各分割ケース2A,2Bの第1側縁部が離間される方向に移動ないし変位される状況になっても、第1と第2の分割ケース2A,2Bの相対移動や相対変位が防止され、コアケース2の円筒容器形状が保持される。これにより、内装支持している一対の分割コア3A,3Bの相互密着性が保持されて電線を囲むフェライトループが確保され、ノイズ吸収効果が維持される。
【0042】
(実施形態5)
図11は実施形態5のノイズ吸収装置1Dを開いた状態の斜視図であり、図12(a)と図12(b)は組み立てた状態を異なる方向から見た斜視図である。また、図13図12(a)のb5-b5線拡大断面図である。実施形態5において実施形態4と等価な部分には同一符号を付して説明は省略する。実施形態5では、第1と第2の分割ケース2A,2Bを連結しているヒンジ片6は、実施形態4と同様に筒軸方向に離間した一対のヒンジ片6で構成されており、ヒンジ片6の耐久性等の信頼性が高められている。また、主係合部4についても実施形態4と同様に筒軸方向の2箇所に設けられている。
【0043】
一方、実施形態5の副係合部5は、これら一対のヒンジ片6の筒軸方向の中間位置に配設されている。すなわち、第1分割ケース2Aの第1側縁部には、一対のヒンジ片6で挟まれた筒軸方向の中央位置に係合突起58が突出状態に形成されている。また、第2分割ケース2Bの第1側縁部には係合突起58に係合可能な係合穴59aを有する係合片59が突出状態に形成されている。これら係合突起58と係合片59(係合穴59a)とで副係合部5が構成されている。
【0044】
実施形態5のノイズ吸収装置1Dでは、両分割ケース2A,2Bの第1側縁部を連結しているヒンジ片6が屈曲され、かつ両分割ケース2A,2Bの各第2側縁部が主係合部4により連結されて第1と第2の分割ケース2A,2Bでコアケース2が組み立てられると、これに伴って第1分割ケース2Aの係合突起58は第2分割ケース2Bの係合片59の係合穴59aに係合される。すなわち、副係合部5が係合状態となり、第1分割ケース2Aと第2分割ケース2Bの各第1側縁部は互いに連結された状態となる。したがって、第1と第2の両分割ケース2A,2Bの各第1側縁部は筒軸方向のほぼ中央位置において相対移動が規制された状態になる。
【0045】
これにより、一対のヒンジ片6の一方あるいは両方が破損された場合、あるいは経年劣化により屈曲性が低下して第1と第2の分割ケース2A,2Bの各第1側縁部が離間される方向に移動ないし変位される状況になっても、第1と第2の分割ケース2A,2Bの相対移動や相対変位が防止され、コアケース2の円筒容器形状が保持され、一対の分割コア3A,3Bの相互密着性が保持されて電線を囲むフェライトループが確保され、ノイズ吸収効果が維持される。
【0046】
実施形態5では、副係合部5はコアケース2の筒軸方向の中間位置に一箇所だけ設けられているので、副係合部5の構成が簡略化できる。一方、副係合部5が一箇所とされることにより筒軸方向の両端に副係合部を備える実施形態1~4の構成に比較して第1と第2の分割ケース2A,2Bの連結力は相対的に低くなることが考えられるが、係合突起58と係合穴59aが係合する筒軸方向の寸法を実施形態1~4に比較して大きな寸法に設計できるので、全体としての連結力は実施形態1~4と同程度にすることができる。
【0047】
以上説明した実施形態1~5において、特に、副係合部を構成している係合穴や係合突起は種々の変形が可能である。例えば、実施形態1,3,5における係合片や係合穴は第1分割ケースに設けられ、係合突起は第2分割ケースに設けられてもよい。また、実施形態5において第1分割ケースと第2分割ケースのそれぞれに係合突起が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1,1A~1D ノイズ吸収装置
2 コアケース
2A 第1分割ケース
2B 第2分割ケース
3 フェライトコア
3A,3B 分割コア
4 主係合部
5 副係合部
6 ヒンジ片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13