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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168908
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】樹脂製品
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20221101BHJP
   G06K 19/02 20060101ALI20221101BHJP
   B29C 33/14 20060101ALI20221101BHJP
   A61B 17/28 20060101ALI20221101BHJP
   A61B 17/30 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
G06K19/077 160
G06K19/077 220
G06K19/077 148
G06K19/02
B29C33/14
A61B17/28
A61B17/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074587
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】519386291
【氏名又は名称】日精産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094547
【弁理士】
【氏名又は名称】岩根 正敏
(72)【発明者】
【氏名】梶山 隆啓
(72)【発明者】
【氏名】橋本 誉
(72)【発明者】
【氏名】古屋 儒英
【テーマコード(参考)】
4C160
4F202
【Fターム(参考)】
4C160GG16
4C160GG40
4F202AD19
4F202AG03
4F202AH37
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CK12
4F202CQ03
(57)【要約】
【課題】高圧蒸気滅菌程度の高温、高圧、高湿の環境下であっても繰り返し安定して使用できるRFIDを内蔵した樹脂製品を提供すること。
【解決手段】位置決めするための蓋なしのケース5内に、RFID2を、その周囲を断熱保護層6により覆った状態で固定し、これを内蔵して熱変形温度が240℃以上の樹脂にて一体成形して成る樹脂製品8とした。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置決めするための蓋なしのケース内に、RFIDを、その周囲を断熱保護層により覆った状態で固定し、これを内蔵して樹脂にて一体成形して成ることを特徴とする、樹脂製品。
【請求項2】
上記樹脂製品が、他の製品に取り付けて利用されるRFIDタグであることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂製品。
【請求項3】
他の製品との取付部が凸部であり、該取付部以外は製品との間に間隙が形成されるように設計されていることを特徴とする、請求項2に記載の樹脂製品。
【請求項4】
上記樹脂が、射出成形に使用でき、熱変形温度が240℃以上の樹脂から主として成ることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の樹脂製品。
【請求項5】
上記樹脂が、フィラーとして炭素繊維を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の樹脂製品。
【請求項6】
上記断熱保護層が、耐熱温度が300℃以上の接着剤、樹脂或いはシリコーンゴムから成ることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の樹脂製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製品に関し、特に、高温、高圧、高湿の高圧蒸気滅菌等の環境下に繰り返し晒されたり、落下による衝撃等が発生するような環境下でも使用に耐えるRFIDを内蔵する樹脂製品に関するもので、更には、無菌操作が必須とされる医薬品製造分野、理化学分野、治療、手術等の医療行為における器具、機械、150℃程度の高温環境となる工業製品やレトルト食品の製造現場等で使用する、機械及び/又は部品であるRFIDを内蔵する樹脂製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2000年代以降、急速に発展してきたRFID(radio frequency identifier)技術であるが、具体化された実施例は、特に医療現場で数多く見受けられる。例えば、実際の医療現場では、ピンセット、鉗子のような医療器具ばかりでなく、様々な医療器具の取り扱いについてトレーサビリティが求められてきており、ステンレススチールやチタン等の金属製の医療器具には、レーザーマーカー等による2次元バーコードの刻印や、RFIDタグを医療器具の側面等に取り付け、個体管理できる運用が行われ始めている。
【0003】
ここで、2次元バーコードは、刻印された部分の読み込みが必要なため、印字位置の検出に時間がかかり、また血液付着、摩耗、錆等により読み取りできなくなって、手術室等においては利用が困難になるケースがある。
【0004】
一方、RFIDは、読み取りの容易性と複数同時に読み取ることができる等、2次元バーコードに比べ作業効率はよいが、単体では高温、高圧、及び高湿に対する耐力がなく、そのままでは医療現場等では最も一般的な高圧蒸気滅菌に供することができないという問題があった。
【0005】
そこで、特許文献1では、セラミック製の2分割されたケース内に封入するようにして接着、また特許文献2では、合成樹脂製の蓋体を具備する外装材に封入するようにして接着し、RFIDを高温、高圧、高湿から保護することがなされている。また、特許文献3では、上記したように封入したRFIDを金属製の医療器具に後から圧入したり、張り付けたり、結束したりすることがなされている。
【0006】
高圧蒸気滅菌は、121℃以上の高温、110kPa以上の高圧、100%の湿度が滅菌できる一般条件であり、わずかな接着の間隙でも浸透する性質があるので、浸潤により電子回路が故障する原因になり得るものであった。実際に樹脂製ケースを試験製作してRFIDを接着剤だけで密封し、非特許文献5記述3.2を参考に、より条件の厳しい135℃、30分、230kPaの高圧蒸気滅菌試験に供してみると、非特許文献5記述3.6と同様に、接着だけでは十分な対応とは言えないことが知見として確認された。
【0007】
そればかりか、温度に関しては射出成形の際に5秒程度の短時間ながら300℃の高温環境下になるため、RFIDをそのまま樹脂製品に内蔵して一体成形すること自体が、実際にはできなかった。
市販されているRFIDには、セラミックで焼成したケースに封入したと思われる121℃対応のラインアップはあるものの、そのままでは射出成形しようとするとズレてしまうため、位置決めするための何らかの手段がさらに必要であること、及びクロイツフェルトヤコブ病やBSEで高圧蒸気滅菌に求められる135℃の温度設定は保証されておらず、まして射出成形の際の前記高温環境について対応も十分なものではなかった。
【0008】
また、医療器具などで再使用を繰り返す際には、洗浄、滅菌作業は一連のサイクルとして標準的に行われており、特許文献3のように嵌合や結束で取り付ける場合では、汚れを洗浄、滅菌する際の媒体となる洗剤、蒸気、ガスに晒されることが容易ではなく、洗浄プロセスを超音波洗浄で行わない場合には、結束部や嵌合部近傍等に汚れが残る懸念があった。
【0009】
特許文献4は、本出願時点では未公開の状態である本出願の発明者らが行った先行特許出願である。本出願は、この特許文献4の出願を補完することを企図して行ったものであり、特に、高温、高圧、高湿の環境下でのRFIDへの影響についての検討が不十分であったことを非特許文献1記述3.6に見い出し、実験結果に基づいて、特許文献4では全く包含できていなかった新たな知見を得て、本発明を完成させたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007-183840号公報
【特許文献2】特開2013-140465号公報
【特許文献3】特開2019-109942号公報
【特許文献4】特願2019-195364
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】電気通信普及財団研究調査報告書2008(国立国会図書館デジタルコレクション)p245.pdf、「RFIDを用いた病院内の手術器具の情報管理に関する研究」、研究代表者 山下 和彦 東京医療保健大学医療保健学部准教授
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述した背景技術が有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高温、高圧、高湿の高圧蒸気滅菌のような環境に繰り返し供されても、RFIDがその性能を継続的に発揮し、落下による衝撃を受けても壊れ難い金属並みの機械強度と、金属製の1/3~1/4程度の軽さを併せ持った樹脂製品を一体成形して提供することを容易にし、医療器具だけに限らず、工業製品やレトルト食品の製造現場等で使用される機械及び/又は部品等の実施形態に依存することなく、RFIDを使用した管理の普及に資することができる樹脂製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した目的を達成するため、本発明は、次の〔1〕~〔6〕に記載した樹脂製品とした。
〔1〕位置決めするための蓋なしのケース内に、RFIDを、その周囲を断熱保護層により覆った状態で固定し、これを内蔵して樹脂にて一体成形して成ることを特徴とする、樹脂製品。
〔2〕上記樹脂製品が、他の製品に取り付けて利用されるRFIDタグであることを特徴とする、上記〔1〕に記載の樹脂製品。
〔3〕他の製品との取付部が凸部であり、該取付部以外は製品との間に間隙が形成されるように設計されていることを特徴とする、上記〔2〕に記載の樹脂製品。
〔4〕上記樹脂が、射出成形に使用でき、熱変形温度が240℃以上の樹脂から主として成ることを特徴とする、上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の樹脂製品。
〔5〕上記樹脂が、フィラーとして炭素繊維を含むことを特徴とする、上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の樹脂製品。
〔6〕上記断熱保護層が、耐熱温度が300℃以上の接着剤、樹脂或いはシリコーンゴムから成ることを特徴とする、上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の樹脂製品。
【発明の効果】
【0014】
上記した本発明によれば、作業上ではインサート成形と同じ手順で行うが、RFIDを位置決めするための蓋なしのケースを、金属等ではなく目的とする樹脂製品と同じ樹脂で形成することで、樹脂製品に溶け込むようにして一体成形することによってRFID周辺に間隙が発生せず固定できているので、高温、高圧、高湿の蒸気滅菌が繰り返された場合でも、高温、高圧、高湿の浸潤等からRFIDを保護することができる樹脂製品となる。
また、本発明によれば、耐熱性のある樹脂にフィラーとして炭素繊維を含み形成したことから、金属製品と同等の機械強度を備えることができ、落下による衝撃等が繰り返されてもRFIDを保護することができる樹脂製品となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る樹脂製品の一実施形態として、手術用医療器具である鉗子を示した斜視図である。
図2図1に示した樹脂製品に内蔵されるRFIDと一体成形する際に位置決めするための蓋なしのケースを模式的に示した平面図である。
図3図2に示した位置決めするための蓋なしのケースの縦断面図である。
図4】樹脂製品がRFIDタグである場合の取付状態を想定した透視斜視図である。
図5】樹脂製品がRFIDタグである場合の形状を模式的に示した平面図である。
図6図5に示したRFIDタグの縦断面図である。
図7】試作した鑷子について、3点曲げ試験で得られた荷重-クロスヘッド移動量線図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る樹脂製品の実施形態を、図面を示して詳細に説明するが、この実施形態の樹脂製品は、本発明の理解を容易にするために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の樹脂製品である鉗子1は、無線通信によって送受信するRFID2を、本体の樹脂で溶け込むように包囲し、一体成形されたものである。
【0018】
樹脂製品にRFID2を一体成形する際に位置決めするための蓋なしのケース5は、図2及び図3に示すように、本部品を金型に取り付けする際の位置決めガイドとなる板状の矩形部3と、RFIDの収納部となる円筒部4とを有し、前記円筒部4内に、RFID2が、その周囲を断熱保護層6により覆われた状態で固定され、樹脂製品(鉗子)1の射出成型する際の部品として形成されている。
【0019】
図4は、本発明に係る樹脂製品がRFIDタグ8である場合、RFID2によって管理される物が例えば医療器具であり、そのボディ9に切り欠き10を設け、該切り欠き10にRFIDタグ8を取付けた状態を示している。
ここにおいて、医療器具のボディ9との接触面積を極力減らした円筒形の凸部7が重要な役割を果たし、該RFIDタグ8と医療器具のボディ9との間に間隙11が形成されている。また、円筒形の凸部7を介して錆びない金属製締結金具、超音波溶着等により医療器具のボディ9に該RFIDタグ8が固定されている。RFIDタグ8と医療器具のボディ9との間に形成される間隙11の存在により、洗浄や滅菌の際に媒体となる洗剤、蒸気、ガスに晒されることが容易になり、これらに要する手間を省力化できるばかりでなく、洗浄、滅菌が確実に行われ、RFID2による管理も容易になる。例示では、凸部7が形成された2か所でRFIDタグ8を医療器具のボディ9に固定しているが、近年RFID2は小型化されており、RFIDタグ8の平面積は2平方センチメートル程度にしかならない現状に鑑み、円筒形の凸部7の数は、1個であっても十分取付強度は確保できる。
【0020】
図5は、RFID2を一体成形したRFIDタグ8の形状を例示した平面図である。RFIDタグ8に形成された円筒形凸部7の数は、上記したように取付強度が確保できることを条件に少ない方が洗浄、滅菌の確実性が上昇し、形状については要件を満足すように金型が製作可能であればこれに限定されるものではない。図6は、位置決めするための蓋なしのケース5内に、RFID2が、その周囲を断熱保護層6により覆われた状態で固定された部品を内蔵し、樹脂にて一体成形して成ることを示す、図5に示したRFIDタグ8の縦断面図である。
【0021】
本発明に係る樹脂製品(例えば上記した鉗子1、RFIDタグ8)を形成する樹脂、また上記一体成形する際に位置決めするための蓋なしのケース5を形成する樹脂は、同一の樹脂であることが好ましく、素材技術の進歩により金属並みの機械強度を有する樹脂の出現もあり、射出成形に使用でき、熱変形温度が高圧蒸気滅菌の一般温度の2倍相当の240℃以上の樹脂であれば良く、これらに限定されないが、熱可塑性樹脂等のポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリエーテルスルホン樹脂(PESU)及びポリエーテルイミド樹脂(PEI)等を用いることができる。または、これらの混合物を使用することができる。
本実施形態では、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)をその材料として、上記した鉗子1、RFIDタグ8を形成した。
【0022】
上記樹脂は、手術器具として機械強度をさらに強化するため、これに限定されないが、フィラーとして炭素繊維を用いることができる。炭素繊維を含める場合、強度を増すためのその含有量は基材樹脂を100重量部として、通常10~50重量%程度、好ましくは25~45重量%程度である。種々の試験結果として、一般的にフィラーとして使用されているガラス繊維では、靭性(粘り)が不足するものであった。
【0023】
本発明における要件のうち、位置決めするための上記蓋なしのケース5と断熱保護層6について、以下に詳しく説明する。
【0024】
本発明に係る樹脂製品を、射出成形で溶け込むようにRFID2と一体成形するには、インサート成形と同様の手順で行うこととなるので、RFID2を固定した位置決めするための蓋なしのケース5は、十分に乾燥、硬化させて予め部品として準備する必要がある。
【0025】
少数ロットの場合には手加工も考えられるが、多数ロットの場合にはロボット等による自動化を企図することは、現在の工業生産技術では当然である。その際、空隙の発見、歩留まりの低下防止のためには、光学顕微鏡による検査やカメラ拡大映像等の光学的手法による検査は常識的であること、定置式か通過式かにかかわらず恒温装置で乾燥、硬化を促進することも生産性を考慮すると常識的に行われており、これらの実施が容易となるよう、位置決めするためのケースを蓋なし構造としておくことは、本発明においては合理的で重要である。
【0026】
また、RFID2と一体成形する際に、位置決めするための蓋なしのケース5と接着し、周囲を覆う断熱保護層6を形成する材料は、樹脂製品(例えば鉗子1、RFIDタグ8)に組み込んで一体で射出成形にて形成する際に、300℃、5秒程度の高温に晒されるため、該断熱保護層6が溶融しないように、高温に耐えられる材料である必要があり、耐熱温度が300℃以上の接着剤、樹脂或いはシリコーンゴム等が用いられる。
【0027】
接着剤の場合は、無機系や有機系を使用することができ、具体的には、スリーボンド社製のThree Bond #3732、ヘンケル社製のLOCTITE ABLESTIK A316が挙げられる。また、樹脂の場合には、熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂等、またはこれらの混合物を使用することができる。シリコーンゴムとしては、具体的には、信越化学工業社製の防湿コーティング用シリコーンRTVゴムが挙げられる。
【0028】
図3或いは図6に示したように、形成する断熱保護層6は、RFID2が露出しないことを確実にするように、外周を均一に包囲することが好ましい。また、形成する断熱保護層6は、一層でもよいが、高温、高圧、高湿に耐えるようにするため複数の層からなってもよい。
【0029】
本発明に係る樹脂製品の機械強度については、素材技術の進歩により金属並みの機械強度を有する樹脂の出現もあり、射出成形に使用でき、上記したように熱変形温度が高圧蒸気滅菌の一般温度の2倍相当の240℃以上あるものを選択し、フィラーを炭素繊維とした前記樹脂で試作した鑷子の試作品を用い、外部機関に試験依頼した結果によれば、高圧蒸気滅菌で121℃、20分を70サイクル後、さらに追加で加速劣化試験9年相当実施後でも、機械強度の低下は殆ど見られないことが確認できた。
【0030】
機械強度については、具体的には、鑷子の試作品における室温3点曲げ物性において、先端部3.0cmをあけて、6cm間隔で支点を作り、その中央、即ち端部から6cmの部分を、1cm/分の速度で押し込んだとき、最大荷重が200N以上であることが好ましく、さらに好ましくは240N以上である。また短いピンセット等では、先端部1.5cmをあけて、4cm間隔で支点を作り、その中央、即ち端部から3.5cmの部分を、1cm/分の速度で押し込んだとき、同様にして測定した。この場合も最大荷重が200N以上であることが好ましく、さらに好ましくは240N以上である。この最大荷重の上限値は特に限定されないが、通常、手術器具における上限値は300N程度であれば破断することはない。
【0031】
ここで、室温3点曲げ物性における最大荷重は、次のようにして測定される。

測定装置: Instron社製 精密材料試験機 Model 5848
測定方法: クロスヘッド移動量法
測定環境: 室温大気中
試験片形状: 先端部を切り出し供試した
支点間距離: 60 mm
試験速度: 10mm/min
圧子・支点半径: 2.5mm
データ処理: Instron社製データ処理システム"Bluehill 2"
データ取得間隔・・・0.01s
算出方法: 最大荷重

3点曲げ試験で得られた荷重-クロスヘッド移動量線図より最大荷重を読みとった。
代表的な測定結果を、図7に示す。
【0032】
さらに、試作品の鑷子について、生物学的安全性試験として、細胞毒性、皮膚感作性、皮内反応について実施した結果のいずれも問題なく、光学顕微鏡での検査では成形した鑷子表面は樹脂で覆われており、フィラーの炭素繊維は完全に内部に閉じ込められて毛羽立ちがないことも確認された。
【0033】
手術器具等に応用した場合には、確実にトレーサビリティが可能となり、手術器具の体内への置き忘れ等の重大なミスを防止することが可能になる。また、同一形状で比較すると、金属製手術器具の1/4~1/3の重量になるため、手術用医療器具の中でもその重量が看護師、医師の負担となっている開胸器、開創器等にあっては、長時間に及ぶ手術でも肉体的な疲労の軽減に資することができる。
【0034】
さらに、前記樹脂製品が上記したRFIDタグ8である場合には、金型によって形状を自在に変形して一体成形できるので、高圧蒸気滅菌を行って再使用する医療機器のボディに取り付けたとしても、間隙確保を目的とする凸部7が最少で1個さえあれば、それ以外は間隙を設け易い設計を容易に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る樹脂製品は、特に、高温、高圧、高湿の高圧蒸気滅菌等の環境下に繰り返し晒されたり、落下による衝撃等が発生するような環境下で使用されるRFIDを内蔵する樹脂製品として利用することができ、更には、無菌操作が必須とされる医薬品製造分野、理化学分野、治療、手術等の医療行為における器具、機械、150℃程度の高温環境となる工業製品やレトルト食品の製造現場等で使用する機械及び/又は部品である樹脂製品として利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1・・・鉗子(樹脂製品)
2・・・RFID
3・・・板状の矩形部
4・・・円筒部
5・・・蓋なしのケース
6・・・断熱保護層
7・・・凸部
8・・・RFIDタグ(樹脂製品)
9・・・ボディ
10・・・切り欠き
11・・・間隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7