(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016893
(43)【公開日】2022-01-25
(54)【発明の名称】内燃機関の吸気装置
(51)【国際特許分類】
F02M 31/13 20060101AFI20220118BHJP
F02F 1/42 20060101ALI20220118BHJP
F02M 35/10 20060101ALI20220118BHJP
H05B 3/10 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
F02M31/13 301G
F02F1/42 A
F02M35/10 311B
H05B3/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020119871
(22)【出願日】2020-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】矢野 秀任
(72)【発明者】
【氏名】山口 智広
(72)【発明者】
【氏名】石井 正人
【テーマコード(参考)】
3G024
3K092
【Fターム(参考)】
3G024AA09
3G024DA18
3G024FA00
3K092PP15
3K092QA03
3K092QA05
3K092QB43
3K092VV40
(57)【要約】
【課題】ポート用ヒータにおいて電力消費を抑制しながら、燃料の気化を確実に行うことが可能な内燃機関の吸気装置を提供する。
【解決手段】この内燃機関の吸気装置4は、ポート部4bと、ポート部4bの内表面14dに沿って設けられ、吸気通路4d内に導入された燃料21を気化させるポート用ヒータ4eとを備える。ポート用ヒータ4eは、ポート部4bの内表面14dに対するインジェクタ2の噴射口2aから噴射される燃料21の付着量の分布に応じて、異なる発熱量の領域が分布するように構成されている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インジェクタの噴射口から噴射された燃料が導入されるポート部と、
前記ポート部の内側に形成され、気筒に供給される空気および燃料を含む混合気を流す吸気通路と、
前記ポート部の内表面に沿って設けられ、前記吸気通路内に導入された燃料を気化させるポート用ヒータとを備え、
前記ポート用ヒータは、前記ポート部の前記内表面に対する前記インジェクタの前記噴射口から噴射される燃料の付着量の分布に応じて、異なる発熱量の領域が分布するように構成されている、内燃機関の吸気装置。
【請求項2】
前記ポート用ヒータでは、燃料の付着量が多い領域には発熱量が大きい第1発熱領域が配置されているとともに、燃料の付着量が少ない領域には発熱量が小さい第2発熱領域が配置されている、請求項1に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項3】
前記ポート用ヒータは、複数の折り返し部を有する電熱線を含み、
前記第1発熱領域および前記第2発熱領域は、前記複数の折り返し部により折り返された前記電熱線同士の間隔を異ならせることにより形成されている、請求項2に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項4】
前記電熱線は、前記ポート部の延びる方向に沿った前記ポート部の中心軸線回りの周方向に延びる複数の線状部をさらに有し、
前記第1発熱領域では、前記ポート部の延びる方向において、前記第1発熱領域の前記複数の線状部同士の間隔が前記第2発熱領域の前記複数の線状部同士の間隔よりも小さい、請求項3に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項5】
前記ポート用ヒータは、前記第1発熱領域に合わせた形状、および、前記第2発熱領域に合わせた形状を有する1つの前記電熱線により構成された発熱体をさらに含む、請求項3または4に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項6】
前記ポート用ヒータにおける前記複数の折り返し部の数は、前記複数の折り返し部により折り返された前記電熱線同士の間隔を同じにした場合の前記複数の折り返し部の数と比較して少ない、請求項3~5のいずれか1項に記載の内燃機関の吸気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気装置に関し、特に、インジェクタの噴射口から噴射された燃料が導入されるポート部を備える内燃機関の吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インジェクタの噴射口から噴射された燃料が導入されるポート部を備える内燃機関の吸気装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、インジェクタの噴射口から噴射された燃料が導入されるライナ部材(ポート部)を備える内燃機関の吸気ポート構造(内燃機関の吸気装置)が開示されている。この内燃機関の吸気ポート構造は、ライナ部材に巻き付けて固定された電熱線を備えている。電熱線は、ライナ部材に一定間隔で巻き付けられている。
【0004】
上記特許文献1の内燃機関の吸気ポート構造では、一定間隔で巻き付けられた電熱線により、ライナ部材の全体が均一に加熱される。これにより、インジェクタから噴射されてライナ部材の内表面に付着した燃料が、気化されている。ここで、一般的に、インジェクタから噴射された燃料には、燃料が濃い部分と、燃料が薄い部分とが生じることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の内燃機関の吸気ポート構造では、インジェクタから噴射された燃料には、燃料が濃い部分と、燃料が薄い部分とが生じることに起因して、ライナ部材の内表面において、インジェクタから噴射された燃料が多く付着した部分と、インジェクタから噴射された燃料が少なく付着した部分と、インジェクタから噴射された燃料が付着しない部分とが生じると考えられる。この場合、上記特許文献1の内燃機関の吸気ポート構造では、電熱線によりライナ部材の全体が均一に加熱されるので、上記燃料が多く付着した部分と同じ発熱量により、上記燃料が少なく付着した部分と、上記燃料が付着していない部分とが加熱されるという不都合があると考えられる。また、上記特許文献1の内燃機関の吸気ポート構造では、ライナ部材の内表面に付着した燃料を確実に気化させるため、上記燃料が多く付着した部分の発熱量に合わせて、電熱線の全体を加熱する必要があると考えられる。これらにより、上記特許文献1の内燃機関の吸気ポート構造では、インジェクタから噴射されてライナ部材の内表面に付着した燃料を確実に気化させることに起因して電熱線の発熱量に無駄が生じることが考えられる。このため、上記特許文献1の内燃機関の吸気ポート構造では、電熱線(ポート用ヒータ)において消費される電力が過剰になることを抑制しながら、燃料の気化を確実に行うことができないという問題点があると考えられる。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、ポート用ヒータにおいて電力消費を抑制しながら、燃料の気化を確実に行うことが可能な内燃機関の吸気装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における内燃機関の吸気装置は、インジェクタの噴射口から噴射された燃料が導入されるポート部と、ポート部の内側に形成され、気筒に供給される空気および燃料を含む混合気を流す吸気通路と、ポート部の内表面に沿って設けられ、吸気通路内に導入された燃料を気化させるポート用ヒータとを備え、ポート用ヒータは、ポート部の内表面に対するインジェクタの噴射口から噴射される燃料の付着量の分布に応じて、異なる発熱量の領域が分布するように構成されている。
【0009】
この発明の一の局面による内燃機関の吸気装置では、上記のように、ポート用ヒータを、ポート部の内表面に対するインジェクタの噴射口から噴射される燃料の付着量の分布に応じて、異なる発熱量の領域が分布するように構成する。これにより、燃料の付着量が多い部分の発熱量と比較して、燃料の付着量が少ない部分および燃料が付着していない部分の発熱量を小さくすることができる。したがって、ポート用ヒータの発熱量の無駄を抑制することができる。また、ポート用ヒータを、燃料の付着量の分布に応じて、異なる発熱量の領域が分布するように構成することにより、ポート部の内表面に付着した燃料を確実に気化させるために、上記燃料の付着量が多い部分の発熱量と、上記燃料の付着量が少ない部分および上記燃料が付着していない部分の発熱量とを合わせる必要がない。これらの結果、ポート用ヒータにおいて電力消費を抑制しながら、燃料の気化を確実に行うことができる。また、ポート用ヒータにおいて電力消費を抑制することができるので、ポート用ヒータに供給される電力の電力効率を向上させることができる。
【0010】
上記一の局面による内燃機関の吸気装置において、好ましくは、ポート用ヒータでは、燃料の付着量が多い領域には発熱量が大きい第1発熱領域が配置されているとともに、燃料の付着量が少ない領域には発熱量が小さい第2発熱領域が配置されている。
【0011】
このように構成すれば、ポート用ヒータに第1発熱領域および第2発熱領域を配置することにより、燃料の付着量の分布に応じてポート用ヒータを発熱させることができるので、ポート用ヒータにおいて電力消費を抑制しながら、燃料の気化を確実に行うことができる。
【0012】
この場合、好ましくは、ポート用ヒータは、複数の折り返し部を有する電熱線を含み、第1発熱領域および第2発熱領域は、複数の折り返し部により折り返された電熱線同士の間隔を異ならせることにより形成されている。
【0013】
このように構成すれば、電熱線に設けた折り返し部の間隔を異ならせるだけで、電熱線に第1発熱領域および第2発熱領域を形成することができるので、電熱線において第1発熱領域および第2発熱領域を簡易な構造により実現することができる。その結果、簡易な構造によりポート用ヒータに第1発熱領域および第2発熱領域を実現することができるので、ポート用ヒータの構造の複雑化を抑制することができる。
【0014】
上記電熱線を備える内燃機関の吸気装置において、好ましくは、電熱線は、ポート部の延びる方向に沿ったポート部の中心軸線回りの周方向に延びる複数の線状部をさらに有し、第1発熱領域では、ポート部の延びる方向において、第1発熱領域の複数の線状部同士の間隔が第2発熱領域の複数の線状部同士の間隔よりも小さい。
【0015】
このように構成すれば、第1発熱領域の複数の線状部同士の間隔を第2発熱領域の複数の線状部同士の間隔よりも小さくすることにより、第1発熱領域の発熱量を第2発熱領域よりも大きくすることができるので、簡易な構造により第1発熱領域を実現することができる。
【0016】
上記電熱線を備える内燃機関の吸気装置において、好ましくは、ポート用ヒータは、第1発熱領域に合わせた形状、および、第2発熱領域に合わせた形状を有する1つの電熱線により構成された発熱体をさらに含む。
【0017】
このように構成すれば、発熱体を構成する電熱線の数を最小限にすることができるので、ポート用ヒータの部品点数の増加を抑制することができる。
【0018】
上記電熱線を備える内燃機関の吸気装置において、好ましくは、ポート用ヒータにおける複数の折り返し部の数は、複数の折り返し部により折り返された電熱線同士の間隔を同じにした場合の複数の折り返し部の数よりも少ない。
【0019】
このように構成すれば、複数の折り返し部により折り返された電熱線同士の間隔を同じにした場合と比較して複数の折り返し部の数が少ない分、電熱線同士の間隔を大きくすることができるので、電熱線において第2発熱領域を容易に形成することができる。
【0020】
なお、上記一の局面による内燃機関の吸気装置において、以下のような構成も考えられる。
【0021】
(付記項1)
すなわち、上記一の局面による内燃機関の吸気装置において、インジェクタは、ポート部の延びる方向に対して傾斜してシリンダヘッドに取り付けられており、傾斜したインジェクタの噴射口から吸気バルブの中心に向かって噴射された燃料の分布に応じて、第1発熱領域および第2発熱領域が配置されている。
【0022】
このように構成すれば、傾斜したインジェクタの噴射口から吸噴射された燃料の分布に応じて、第1発熱領域および第2発熱領域を配置することにより、ポート部の内表面において、燃料の付着量が多い部分の発熱量を大きくすることができるとともに、燃料の付着量が少ない部分および燃料が付着していない部分の発熱量を小さくすることができる。その結果、ポート用ヒータの発熱量の無駄を抑制することができるので、インジェクタから噴射されてポート部の内表面に付着した燃料を気化させる際、ポート用ヒータにおいて電力消費を抑制することができる。
【0023】
(付記項2)
上記一の局面による内燃機関の吸気装置において、ポート用ヒータは、面状のヒータである。
【0024】
このように構成すれば、面状のポート用ヒータにより加熱可能な面積を十分に確保することができるので、インジェクタの噴射口からポート部に導入された燃料を確実に気化させることができる。
【0025】
(付記項3)
上記一の局面による内燃機関の吸気装置において、ポート用ヒータは、櫛歯状の複数の第1櫛歯電極部と、複数の第1櫛歯電極部を接続する第1接続電極部とを含む第1電極と、隣り合う第1櫛歯電極部同士の間に各々が配置される櫛歯状の複数の第2櫛歯電極部と、複数の第2櫛歯電極部を接続する第2接続電極部とを有する第2電極と、第1電極と第2電極との間を流れる電流により発熱する複数の発熱部を含む発熱体とを含み、複数の発熱部における第1電極と第2電極との間の面積は、ポート部の内表面に対するインジェクタの噴射口から噴射される燃料の付着量の分布に応じて異なっている。
【0026】
このように構成すれば、複数の発熱部における第1電極と第2電極との間の面積を異ならせるだけで、ポート用ヒータに第1発熱領域および第2発熱領域を形成することができるので、ポート用ヒータの構造の複雑化を抑制することができる。
【0027】
(付記項4)
上記一の局面による内燃機関の吸気装置において、ポート部は、シリンダヘッド内の吸気ポートに挿入されており、ポート用ヒータは、ポート部の吸気ポートに挿入されている部分に配置されている。
【0028】
このように構成すれば、ポート部のうちインジェクタの噴射口から燃焼室に向かって噴射される燃料が付着しやすい箇所にポート用ヒータを配置することができるので、ポート部の内表面に付着した燃料をより確実に気化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本実施形態によるインテークポートをシリンダヘッドに取り付けた状態を示した断面図である。
【
図2】本実施形態によるインテークポートの斜視図である。
【
図3】本実施形態によるインテークポートの分解斜視図である。
【
図4】本実施形態によるインテークポートのA方向に直交する方向の断面図である。
【
図5】
図4の101-101線に沿った断面と温度センサと制御部とを示した模式図である。
【
図6】本実施形態によるポート用ヒータの分解斜視図である。
【
図7】本実施形態によるインテークポートにおける燃料の付着量の分布を示した模式図である。
【
図8】本実施形態によるポート用ヒータにおける燃料の付着量の分布を示した模式図である。
【
図9】本実施形態によるポート用ヒータの第1発熱領域および第2発熱領域を示した平面図である。
【
図10】本実施形態によるポート用ヒータの第1発熱領域および第2発熱領域における発熱分布を示した平面図である。
【
図11】本実施形態によるインテークポートに付着した燃料の液膜厚さと距離との関係を示したグラフである。
【
図14】本実施形態の変形例によるポート用ヒータを示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
自動車用のエンジン100(特許請求の範囲の「内燃機関」の一例)は、
図1に示すように、シリンダブロック(図示せず)のZ1方向側にシリンダヘッド1を固定させた構造となっている。シリンダヘッド1は、燃焼室15に連通する複数の排気ポート11および複数の吸気ポート12を有している。また、シリンダヘッド1は、吸気バルブ13および排気バルブ14を有している。吸気バルブ13は、燃焼室15と複数の吸気ポート12とを連通させる吸気口12aを開閉するように構成されている。排気バルブ14は、燃焼室15と複数の排気ポート11とを連通させる開口を開閉するように構成されている。
【0032】
ここで、吸気ポート12の内部を流れ、燃焼室15内に吸入される気流の流れ(以下、A方向(吸気流れ方向))に基づいて上流および下流を定義する。また、複数の気筒(
図1では1つのみ図示)を有するエンジン100が図示しない車両に搭載された状態において、気筒の延びる方向をZ方向(上下方向)とし、Z方向の一方をZ1方向(上方向)とし、Z方向の他方をZ2方向(下方向)と定義する。複数の気筒の並ぶ方向をX方向(前後方向)とし、X方向の一方をX1方向(前方向)とし、X方向の他方をX2方向(後方向)と定義する。Z方向およびX方向に直交する方向をY方向(左右方向)とし、Y方向の一方をY1方向(右方向)とし、Y方向の他方をY2方向(左方向)と定義する。
【0033】
吸気ポート12は、吸気口12aを有している。吸気口12aは、燃焼室15と吸気ポート12とを連通させる。吸気ポート12のうち吸気口12a付近の部分は、Y方向に沿った方向(水平方向)に延びている。なお、吸気ポート12では、Y1方向側の開口から吸気口12aまでの全体にわたって、Y2方向に向かうにしたがってZ2方向に傾斜する下り勾配としてもよい。
【0034】
エンジン100は、気筒の燃焼室15内に空気および燃料21を含む混合気を供給するように構成されている。具体的には、エンジン100は、インジェクタ2と、インテークマニホールド3と、インテークポート4(特許請求の範囲の「内燃機関の吸気装置」の一例)と、温度センサ5と、制御部6とを備えている。
【0035】
インジェクタ2は、A方向の上流側から下流側に向けて燃料21を噴射するように構成されている。インジェクタ2は、燃焼室15に向けて流れる空気に、霧状の燃料21を噴射するように構成されている。インジェクタ2は、インテークポート4の延びる方向に対してZ1方向(上方向)側に傾斜してシリンダヘッド1に取り付けられている。すなわち、インジェクタ2の中心軸線C1は、インテークポート4の延びる方向に対してZ1方向(上方向)側に傾斜している。また、インジェクタ2の中心軸線C1は、吸気バルブ13の燃焼室15側とは逆側の面の中心に向けて延びている。
【0036】
インジェクタ2は、燃焼室15(下流)に向かうにしたがって周囲に拡散するように、燃料21を噴射する噴射口2aを含んでいる。インジェクタ2から噴射された燃料21では、中心側の方が外側よりも粒状の燃料21の密度が大きい。すなわち、インジェクタ2から噴射された燃料21では、中心側の方が燃料21が濃く、外側に行くほど燃料21が薄くなる。燃料21は、たとえば、ガソリン、ガス燃料またはエタノールなどである。このように、エンジン100は、燃料21が吸気ポート12内に噴射されるポート噴射式のエンジンである。
【0037】
インテークマニホールド3は、燃焼室15内に空気を供給するように構成されている。
【0038】
具体的には、インテークマニホールド3は、樹脂により形成されている。インテークマニホールド3は、サージタンク(図示せず)と、吸気管31と、取付部32とを有している。サージタンクは、空気を一時的に貯留させる。サージタンクは、インテークマニホールド3において、A方向の上流側端部に配置されている。吸気管31は、内部に形成された通路に沿って空気を流す。吸気管31は、サージタンクよりも下流側に配置されている。吸気管31は、サージタンクと取付部32とを接続する。取付部32は、インテークマニホールド3をシリンダヘッド1に固定する締結具(図示せず)を挿入するために設けられている。取付部32は、フランジ形状を有している。インテークマニホールド3は、シリンダヘッド1に取付部32を介して固定されている。
【0039】
(インテークポート)
インテークポート4は、インテークマニホールド3から燃焼室15に供給される空気に対して、シリンダヘッド1からの熱伝達を抑制する樹脂製の部材である。エンジン100は、吸気ポート12内に樹脂製のインテークポート4を挿入してシリンダヘッド1からの熱を断熱する断熱ポート構造を有している。
【0040】
具体的には、
図1~
図3に示すように、インテークポート4は、取付部4aと、複数(4個)の外側ポート部材4b(特許請求の範囲の「ポート部」の一例)と、複数(4個)の内側ポート部材4cと、複数(4個)の吸気通路4dと、複数(4個)のポート用ヒータ4eとを含んでいる。
【0041】
図1および
図2に示すように、インテークポート4の取付部4aは、インテークマニホールド3とともにインテークポート4をシリンダヘッド1に固定するように構成されている。インテークポート4の取付部4aは、インテークマニホールド3の取付部32とシリンダヘッド1の吸気ポート12の吸入口の周囲の部分との間に配置されている。取付部4aは、フランジ形状を有している。取付部4aは、インテークマニホールド3をシリンダヘッド1に固定する締結具(図示せず)を挿通させるように構成されている。
【0042】
インテークポート4の取付部4aには、ガスケット4fが配置されている。ガスケット4fは、インテークポート4の取付部4aの吸気ポート12側に配置されている。ガスケット4fは、インテークポート4の取付部4aと吸気ポート12の吸入口の周囲の部分との間から吸気ポート12内への、水などの異物の侵入を抑制するために設けられている。
【0043】
次に、
図2および
図3に示すように、外側ポート部材4bについて説明する。なお、複数(4個)の外側ポート部材4bの互いの形状は同じであるので、X2方向側の端部に配置された外側ポート部材4bの構成のみについて説明を行う。また、内側ポート部材4c、吸気通路4dおよびポート用ヒータ4eについても同様に、X2方向側の端部に配置された構成のみについて説明を行う。
【0044】
図1に示すように、外側ポート部材4bは、シリンダヘッド1から伝達される熱および燃焼室15からの熱に対する耐熱性を有するように構成されている。具体的には、外側ポート部材4bは、非発泡樹脂材を有している。たとえば、外側ポート部材4bは、耐熱性を有するポリアミド66により形成されている。これにより、外側ポート部材4bが配置されている範囲において、シリンダヘッド1から伝達される熱および燃焼室15からの熱に対する物性の変化(たとえば溶解など)を抑制することが可能である。
【0045】
外側ポート部材4bは、インジェクタ2が取り付けられたシリンダヘッド1内の吸気ポート12に挿入されている。外側ポート部材4bは、吸気ポート12の内表面12bと対向する。より詳細には、外側ポート部材4bは、A方向において、吸気ポート12の上流側端部から吸気ポート12の下流側端部の近傍まで挿入可能な長さを有している。これにより、吸気ポート12の上流側端部から吸気ポート12の下流側端部まで、シリンダヘッド1から吸気通路4d内を流れる空気への熱伝達が抑制可能である。
【0046】
また、
図1および
図2に示すように、外側ポート部材4bは、隔壁部14aと、インジェクタ用開口14bと、バルブ用開口14cとを含んでいる。
【0047】
隔壁部14aは、吸気通路4dを流れてくる空気を、1つの吸気ポート12に対して設けられた吸気バルブ13の数に合わせて分岐させる機能を有している。すなわち、隔壁部14aは、1つの吸気ポート12に対して2つの吸気バルブ13が設けられている場合には、吸気通路4dを流れてくる空気を二手に分けるように構成されている。インジェクタ用開口14bは、吸気ポート12に燃料21を供給するインジェクタ2から噴射された燃料21を導入するために形成されている。バルブ用開口14cは、吸気バルブ13と外側ポート部材4bとの干渉を防止(回避)するために形成されている。
【0048】
図4に示すように、外側ポート部材4bは、A方向の下流側から見るとC字形状を有している。すなわち、外側ポート部材4bの外表面は、A方向に直交する断面において、吸気ポート12の内表面12bに合わせた形状(内表面12bに沿った形状)を有している。
【0049】
図4および
図5に示すように、内側ポート部材4cは、ポート用ヒータ4eからの熱の伝達を抑制する断熱材として機能するように構成されている。具体的には、内側ポート部材4cは、発泡樹脂材を有している。すなわち、内側ポート部材4cは、ポリアミドを発泡成形することにより形成されている。内側ポート部材4cは、外側ポート部材4bの内側に配置されている。詳細には、内側ポート部材4cは、外側ポート部材4bに埋め込まれている。ここで、内側ポート部材4cは、外側ポート部材4bの内表面14dに直接接触した状態で設けられている。
【0050】
内側ポート部材4cは、A方向の下流側から見るとC字形状を有している。すなわち、内側ポート部材4cは、外側ポート部材4bをA方向の下流側から見たときの形状に合わせた形状により形成されている。
【0051】
吸気通路4dは、外側ポート部材4bの内側に形成され、気筒に供給される空気および燃料21を含む混合気を流すように構成されている。つまり、吸気通路4dは、外側ポート部材4bおよび内側ポート部材4cの内部空間である。具体的には、吸気通路4dは、A方向において、外側ポート部材4bおよび内側ポート部材4cを貫通している。このよに、外側ポート部材4bには、インジェクタ2の噴射口2aから噴射された燃料21が導入される。
【0052】
(ポート用ヒータ)
ポート用ヒータ4eは、周囲温度が低い場合であっても、インテークポート4の内表面4gに気化せず付着した燃料21を強制的に加熱して気化させるように構成されている。すなわち、ポート用ヒータ4eは、外側ポート部材4bの内表面14dおよび内側ポート部材4cの内表面に沿って設けられ、吸気通路4d内に導入された燃料21を加熱して気化させるように構成されている。このように、ポート用ヒータ4eは、インジェクタ2から吸気通路4d内に導入される燃料21を気化するヒータとして用いられている。
【0053】
ポート用ヒータ4eは、外側ポート部材4bの吸気ポート12に挿入されている部分に配置されている。詳細には、ポート用ヒータ4eは、外側ポート部材4bの先端側部分(A方向の下流側部分)に配置されている。ポート用ヒータ4eは、Z方向において、中心軸線C1(
図1参照)よりもZ2方向側に配置されている。
【0054】
また、ポート用ヒータ4eは、インテークポート4の内表面4gに拡散して付着する燃料21に確実に熱を与えるように構成されている。具体的には、ポート用ヒータ4eは、A方向に直交する断面において、外側ポート部材4bの内表面14dおよび内側ポート部材4cの内表面の略全体にわたって設けられている。つまり、ポート用ヒータ4eは、外側ポート部材4bの内表面14dおよび内側ポート部材4cの内表面に沿った湾曲形状または屈曲形状を有している。
【0055】
図5および
図6に示すように、ポート用ヒータ4eは、屈曲および湾曲可能なフィルム状に形成されている。すなわち、ポート用ヒータ4eは、面状のヒータである。
【0056】
具体的には、ポート用ヒータ4eは、第1保護シート41および第2保護シート42と、発熱体43とを含んでいる。このように、ポート用ヒータ4eは、第1保護シート41と、第2保護シート42とにより挟み込まれた3層構造を有している。すなわち、ポート用ヒータ4eはZ1方向側から順に、第1保護シート41、発熱体43および第2保護シート42の順に積層されている。
【0057】
第1保護シート41および第2保護シート42は、ポート用ヒータ4eを流れる電流の絶縁のために設けられている。第1保護シート41は、Z1方向側(吸気通路4d側)に配置されている。第1保護シート41は、発熱体43をZ1方向側から覆う。第2保護シート42は、Z2方向側(内側ポート部材4c側)に配置されている。第2保護シート42は、発熱体43をZ2方向側から覆う。
【0058】
第1保護シート41および第2保護シート42は、インテークポート4のA方向に直交する断面形状の全体にわたって設けられている。このように、第1保護シート41および第2保護シート42は、外側ポート部材4bの内表面14dおよび内側ポート部材4cの内表面の形状に沿って設けられている。具体的には、第1保護シート41および第2保護シート42は、Z1方向側から見て、略Y字状に形成されている。すなわち、第1保護シート41および第2保護シート42には、A方向側の端部からA方向とは逆方向に窪んだ切り欠きが形成されている。
【0059】
第1保護シート41および第2保護シート42は、外側ポート部材4bの内表面14dおよび内側ポート部材4cの内表面に沿わせやすい材質により形成されている。詳細には、第1保護シート41および第2保護シート42は、樹脂製フィルムにより構成されている。ここで、第1保護シート41および第2保護シート42は、耐熱・耐油・耐薬品の性質を有する樹脂材であることが好ましい。たとえば、第1保護シート41および第2保護シート42としては、ポリイミドなどが好適に用いられる。
【0060】
第1保護シート41は、発熱体43からの熱を伝達しやすいように構成されている。具体的には、第1保護シート41は、発熱体43からの放熱を妨げない厚みを有する薄膜の樹脂製フィルムであることが好ましい。第1保護シート41の厚みは、発熱体43から第2保護シート42よりも第1保護シート41に熱伝達しやすいように、第2保護シート42の厚みよりも小さい。
【0061】
〈発熱体〉
図5および
図6に示すように、発熱体43は、インテークポート4のA方向に直交する断面形状の全体にわたって設けられている。このように、発熱体43は、外側ポート部材4bの内表面14dおよび内側ポート部材4cの内表面の形状に沿って設けられている。具体的には、発熱体43は、Z1方向側から見て、略V字状に形成されている。すなわち、発熱体43には、A方向側の端部からA方向とは逆方向に窪んでいる。
【0062】
発熱体43は、線状に延びた銅により形成されている。発熱体43は、電熱線143である。電熱線143は、Z1方向側から見て、交互に折り返した蛇行形状を有している。電熱線143は、複数の折り返し部143aと、複数の線状部143bとを有している。複数の線状部143bは、E方向(外側ポート部材4bの延びる方向)に沿った外側ポート部材4bの中心軸線C2(
図1参照)回りのR方向(周方向)に延びている。複数の折り返し部143aは、R方向の一方側から他方側に向けて延びる線状部143bと、R方向の他方側から一方側に向けて延びる線状部143bとを繋いでいる。ここで、E方向は、A方向に平行な方向である。
【0063】
電熱線143の一方側端部143c(
図8参照)および他方側端部143d(
図8参照)は、E方向において、外側ポート部材4bの先端側とは逆側に配置されている。電熱線143の一方側端部143cおよび他方側端部143dは、R方向において、対向している。電熱線143の一方側端部143cおよび他方側端部143dは、それぞれ、正極および負極である。このように、電熱線143において、電熱線143の一方側端部143cから電熱線143の他方側端部143dに向けて電流が流れる。
【0064】
(第1発熱領域および第2発熱領域)
ここで、
図7に示すように、インジェクタ2から噴射された燃料21は、噴射方向に直交する方向において、中心が濃く、外側に行くほど薄くなるため、外側ポート部材4bの内表面14dへの付着にむらがある。すなわち、外側ポート部材4bの内表面14dへの燃料21は、外側ポート部材4bの先端に向かうほど付着量が多くなるように分布している。詳細には、外側ポート部材4bの内表面14dへの燃料21は、E方向において吸気バルブ13付近において最も多くなる。
【0065】
これにより、
図8に示すように、インジェクタ2から噴射された燃料21は、ポート用ヒータ4eにおいても、E方向において先端に向かうほど付着量が多くなるように分布している。すなわち、外側ポート部材4bの内表面14dに直交する方向の燃料21の厚み(液膜厚さ)は、ポート用ヒータ4eのE方向における先端側に向かうほど厚くなる。したがって、ポート用ヒータ4eでは、E方向における先端側に向かうほど発熱量が大きくなることにより、ポート用ヒータ4eに付着した燃料21を効率よく気化させることが可能となる。
【0066】
そこで、
図9および
図10に示すように、本実施形態のポート用ヒータ4eは、ポート用ヒータ4eに付着した燃料21の分布に合わせて、発熱むらを生じさせるように構成されている。すなわち、ポート用ヒータ4eは、外側ポート部材4bの内表面14dに対するインジェクタ2の噴射口2aから噴射される燃料21の付着量の分布に応じて、異なる発熱量の領域が分布するように構成されている。
【0067】
具体的には、ポート用ヒータ4eでは、第1発熱領域U1と、第1発熱領域U1とは発熱量が異なる第2発熱領域U2とが設定されている。第1発熱領域U1の発熱量は、第2発熱領域U2の発熱量よりも大きい。ここで、第1発熱領域U1と、第2発熱領域U2とは、境界部分Dvにおいて隣接している。すなわち、第1発熱領域U1と、第2発熱領域U2とは、境界部分Dvにおいてポート用ヒータ4eを区切ることにより、設定されている。
【0068】
境界部分Dvは、たとえば、
図11に示すようなグラフを参照して、外側ポート部材4bの内表面14dに付着する燃料21の液膜厚みにより設定される。
図11では、外側ポート部材4bの先端側からA方向(吸気流れ方向)の上流側に離れるにしたがって、外側ポート部材4bの内表面14dに付着する燃料21の液膜厚みが減少することが示されている。境界部分Dvは、一例として、液膜厚みが他の箇所よりも急激に減少している液膜厚みThに対応する位置に設定することが考えられる。
【0069】
このように、
図10および
図11に示すように、第1発熱領域U1および第2発熱領域U2は、傾斜したインジェクタ2の噴射口2aから吸気バルブ13の中心に向かって噴射された燃料21の分布に応じて、配置されている。
【0070】
詳細には、ポート用ヒータ4eでは、燃料21の付着量が多い領域では発熱量が大きい第1発熱領域U1が配置されているとともに、燃料21の付着量が少ない領域では発熱量が小さい第2発熱領域U2が配置されている。ここで、第1発熱領域U1では、燃料21の液膜厚みが、第2発熱領域U2の燃料21の液膜厚みよりも大きい。また、第1発熱領域U1に配置される電熱線143の全長は、第2発熱領域U2に配置される電熱線143の全長よりも大きい。第1発熱領域U1では、第2発熱領域U2よりも電熱線143が密集している。第2発熱領域U2では、第1発熱領域U1よりも電熱線143がまばらに(粗に)配置されている。
【0071】
すなわち、
図12および
図13に示すように、第1発熱領域U1および第2発熱領域U2は、複数の折り返し部143aにより折り返された電熱線143同士の間隔T1および間隔T2を異ならせることにより形成されている。具体的には、第1発熱領域U1では、E方向(外側ポート部材4bの延びる方向)において、第1発熱領域U1の複数の線状部143b同士の間隔T1が第2発熱領域U2の複数の線状部143b同士の間隔T2よりも小さい。なお、第1発熱領域U1では、複数の線状部143b同士の間隔T1の全てが、一定の間隔T1に設定されている。また、同様に、第2発熱領域U2では、複数の線状部143b同士の間隔T2の全てが、一定の間隔T2に設定されている。
【0072】
ここで、電熱線143における線状部143bの幅Wは、第1発熱領域U1および第2発熱領域U2において同じである。電熱線143における線状部143bの幅Wは、間隔T1および間隔T2の両方よりも小さい。これにより、第1発熱領域U1における電熱線143は、線状部143bの幅Wを間隔T1よりも小さくすることにより、密に配置しやすくなる。
【0073】
このように構成することで、第1発熱領域U1および第2発熱領域U2に同じ電流を流して発熱体43の全体を発熱させる際に、第1発熱領域U1の発熱と、第2発熱領域U2の発熱とに差が生じることになる。
【0074】
また、
図10に示すように、ポート用ヒータ4eの面積は、電熱線143を粗に配置した分だけ大きくならないように構成されている。すなわち、ポート用ヒータ4eの面積は、複数の折り返し部143aにより折り返された電熱線143同士の間隔を同じにした場合のポート用ヒータの面積と比較して、略同じである。
【0075】
具体的には、ポート用ヒータ4eにおける第1発熱領域U1の折り返し部143aの数は、第2発熱領域U2の折り返し部143aの数より多い。また、ポート用ヒータ4eにおける複数の折り返し部143aの数は、複数の折り返し部143aにより折り返された電熱線143同士の間隔を同じにした場合の複数の折り返し部143aの数よりも少ない。これらにより、ポート用ヒータ4eの電熱線143の全長は、複数の折り返し部143aにより折り返された電熱線143同士の間隔を同じにした場合の電熱線143の全長よりも短い。
【0076】
ここで、ポート用ヒータ4eの電熱線143の全長を短くすることにより、電熱線143の抵抗が抑制されるので、電熱線143にかかる電流が流れやすくなるとともに、電熱線143が昇温しやすくなる。この結果、電熱線143を所望の温度まで上昇させるために必要な熱量を抑制可能となる。
【0077】
また、発熱体43は、第1発熱領域U1に合わせた形状、および、第2発熱領域U2に合わせた形状を有する1つの電熱線143により構成されている。具体的には、発熱体43は、1つの電熱線143を第1発熱領域U1において複数回折り返すとともに、1つの電熱線143を第2発熱領域U2において複数回折り返すことにより形成されている。
【0078】
上記したポート用ヒータ4eは、温度センサ5(
図5参照)により計測された温度に基づいて、制御部6(
図5参照)により温度が制御されている。
【0079】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0080】
本実施形態では、上記のように、ポート用ヒータ4eを、外側ポート部材4bの内表面14dに対するインジェクタ2の噴射口2aから噴射される燃料21の付着量の分布に応じて、異なる発熱量の領域が分布するように構成する。これにより、燃料21の付着量が多い部分の発熱量と比較して、燃料21の付着量が少ない部分および燃料21が付着していない部分の発熱量を小さくすることができる。したがって、ポート用ヒータ4eの発熱量の無駄を抑制することができる。また、ポート用ヒータ4eを、燃料21の付着量の分布に応じて、異なる発熱量の領域が分布するように構成することにより、外側ポート部材4bの内表面14dに付着した燃料21を確実に気化させるために、上記燃料21の付着量が多い部分の発熱量と、上記燃料21の付着量が少ない部分および上記燃料21が付着していない部分の発熱量とを合わせる必要がない。これらの結果、ポート用ヒータ4eにおいて電力消費を抑制しながら、燃料21の気化を確実に行うことができる。また、ポート用ヒータ4eにおいて電力消費を抑制することができるので、ポート用ヒータ4eに供給される電力の電力効率を向上させることができる。
【0081】
また、本実施形態では、上記のように、ポート用ヒータ4eに、燃料21の付着量が多い領域には発熱量が大きい第1発熱領域U1を配置するとともに、燃料21の付着量が少ない領域には発熱量が小さい第2発熱領域U2を配置する。これにより、ポート用ヒータ4eに第1発熱領域U1および第2発熱領域U2を配置することにより、燃料21の付着量の分布に応じてポート用ヒータ4eを発熱させることができるので、ポート用ヒータ4eにおいて電力消費を抑制しながら、燃料21の気化を確実に行うことができる。
【0082】
また、本実施形態では、上記のように、ポート用ヒータ4eに、複数の折り返し部143aを有する電熱線143を設ける。第1発熱領域U1および第2発熱領域U2を、複数の折り返し部143aにより折り返された電熱線143同士の間隔を異ならせることにより形成する。これにより、電熱線143に設けた折り返し部143aの間隔を異ならせるだけで、電熱線143に第1発熱領域U1および第2発熱領域U2を形成することができるので、電熱線143において第1発熱領域U1および第2発熱領域U2を簡易な構造により実現することができる。この結果、簡易な構造によりポート用ヒータ4eに第1発熱領域U1および第2発熱領域U2を実現することができるので、ポート用ヒータ4eの構造の複雑化を抑制することができる。
【0083】
また、本実施形態では、上記のように、電熱線143に、外側ポート部材4bの延びる方向に沿った外側ポート部材4bの中心軸線C2回りのR方向(周方向)に延びる複数の線状部143bを設ける。第1発熱領域U1では、E方向(外側ポート部材4bの延びる方向)において、第1発熱領域U1の複数の線状部143b同士の間隔T1が第2発熱領域U2の複数の線状部143b同士の間隔T2よりも小さい。これにより、第1発熱領域U1の複数の線状部143b同士の間隔T1を第2発熱領域U2の複数の線状部143b同士の間隔T2よりも小さくすることにより、第1発熱領域U1の発熱量を第2発熱領域U2よりも大きくすることができるので、簡易な構造により第1発熱領域U1を実現することができる。
【0084】
また、本実施形態では、上記のように、ポート用ヒータ4eに、第1発熱領域U1に合わせた形状、および、第2発熱領域U2に合わせた形状を有する1つの電熱線143により構成された発熱体43を設ける。これにより、発熱体43を構成する電熱線143の数を最小限にすることができるので、ポート用ヒータ4eの部品点数の増加を抑制することができる。
【0085】
また、本実施形態では、上記のように、ポート用ヒータ4eにおける複数の折り返し部143aの数を、複数の折り返し部143aにより折り返された電熱線143同士の間隔を同じにした場合の複数の折り返し部143aの数よりも少なくする。これにより、複数の折り返し部143aにより折り返された電熱線143同士の間隔を同じにした場合と比較して複数の折り返し部143aの数が少ないことにより、電熱線143同士の間隔を大きくすることができるので、電熱線143において第2発熱領域U2を容易に形成することができる。
【0086】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0087】
たとえば、上記実施形態では、発熱体43は、線状に延びた銅により形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、発熱体は、ニクロムおよびステンレスなどの他の金属により形成されてもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、インジェクタ2がシリンダヘッド1に取り付けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、インジェクタは、インテークマニホールドなどの他の部分に取り付けられてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、ポート用ヒータ4eは、外側ポート部材4b(ポート部)の先端部に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ポート用ヒータは、ポート部の先端部よりも上流側(たとえば、インテークマニホールド)に配置されていてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、電熱線143は、外側ポート部材4b(ポート部)の中心軸線C2回りのR方向(周方向)に延びる線状部143bを有している例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、電熱線は、ポート部の中心軸線の延びる方向に平行に延びる線状部を有していてもよいし、渦巻き形状の電熱線などを有していてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、ポート用ヒータ4eは、外側ポート部材4b(ポート部)において燃料21の液膜厚みが大きい先端部分に第1発熱領域U1を有するとともに、第1発熱領域U1のA方向(吸気流れ方向)の上流側に第2発熱領域U2を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ポート用ヒータは、ポート部において燃料の液膜厚みが中心側の領域に多く、燃料の液膜厚みが中心側よりも外側の領域に少ない場合には、中心側に第1発熱領域を有するとともに、外側に第2発熱領域を有していてもよい。また、ポート用ヒータは、ポート部において燃料の液膜厚みが中心側の領域に少なく、燃料の液膜厚みが中心側よりも外側の領域に多い場合には、中心側に第2発熱領域を有するとともに、外側に第1発熱領域を有していてもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、ポート用ヒータ4eの面積は、複数の折り返し部143aにより折り返された電熱線143同士の間隔を同じにした場合のポート用ヒータの面積と比較して、略同じである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ポート用ヒータの面積は、複数の折り返し部により折り返された電熱線同士の間隔を同じにした場合のポート用ヒータの面積と同じでなくてもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、発熱体43は、電熱線143である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、発熱体は、カーボンを主成分とする発熱素子(カーボングラファイトまたはカーボンナノチューブなど)により構成されていてもよい。すなわち、
図14に示す変形例のように、ポート用ヒータ204eは、櫛歯状の複数の第1櫛歯電極部241と、複数の第1櫛歯電極部241を接続する第1接続電極部242とを含む第1電極243と、隣り合う第1櫛歯電極部241同士の間に各々が配置される櫛歯状の複数の第2櫛歯電極部244と、複数の第2櫛歯電極部244を接続する第2接続電極部245とを有する第2電極246と、第1電極243と第2電極246との間を流れる電流により発熱する複数の発熱部247を含む発熱体248とを含む。そして、複数の発熱部247における第1電極243と第2電極246との間の面積は、外側ポート部材4bの内表面14dに対するインジェクタ2の噴射口2aから噴射される燃料21の付着量の分布に応じて異なっていてもよい。なお、複数の発熱部247には、第1櫛歯電極部241および第2櫛歯電極部244のそれぞれの先端部の近傍に配置され、第1櫛歯電極部241と第2櫛歯電極部244とが並ぶ方向に沿って延びるように形成された複数の電流集中抑制孔249が形成されていることが好ましい。
【0094】
また、上記実施形態では、ポート用ヒータ4eでは、第1発熱領域U1と、第1発熱領域U1とは発熱量が異なる第2発熱領域U2とが設定されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ポート用ヒータでは、3個以上の発熱領域が設定されることにより、徐々に電熱線を密に配置してもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、インテークマニホールド3と、外側ポート部材4b(ポート部)とは、別体である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、インテークマニホールドと、ポート部とは、一体的に設けられてもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、ポート用ヒータ4eにおける複数の折り返し部143aの数は、複数の折り返し部143aにより折り返された電熱線143同士の間隔を同じにした場合の複数の折り返し部143aの数よりも少ない例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ポート用ヒータにおける複数の折り返し部の数は、複数の折り返し部により折り返された電熱線同士の間隔を同じにした場合の複数の折り返し部の数よりも小さくてもよいし、同じ数であってもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、ポート用ヒータ4eは、第1発熱領域U1に合わせた形状、および、第2発熱領域U2に合わせた形状を有する1つの電熱線143により構成された発熱体43をさらに含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ポート用ヒータは、複数の電熱線により構成された発熱体であってもよい。
【符号の説明】
【0098】
2 インジェクタ
2a 噴射口
4 インテークポート(内燃機関の吸気装置)
4b 外側ポート部材(ポート部)
4d 吸気通路
4e ポート用ヒータ
14d 内表面
21 燃料
43 発熱体
100 エンジン(内燃機関)
143 電熱線
143a 折り返し部
143b 線状部
T1、T2 間隔
U1 第1発熱領域
U2 第2発熱領域