(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168936
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】乾燥機能を備えた小型染色装置及び染色方法
(51)【国際特許分類】
D06B 3/30 20060101AFI20221101BHJP
D06B 15/09 20060101ALI20221101BHJP
D06P 7/00 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
D06B3/30
D06B15/09
D06P7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074636
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】593196609
【氏名又は名称】株式会社 オノモリ
(74)【代理人】
【識別番号】100087169
【弁理士】
【氏名又は名称】平崎 彦治
(72)【発明者】
【氏名】小野森 守
(72)【発明者】
【氏名】小野森 一寛
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 隆文
(72)【発明者】
【氏名】西村 一義
(72)【発明者】
【氏名】岩本 栄一
【テーマコード(参考)】
3B154
4H157
【Fターム(参考)】
3B154AB31
3B154BA08
3B154BA19
3B154BB12
3B154BB32
3B154BB33
3B154BB46
3B154BB49
3B154BC01
3B154BC06
3B154BC07
3B154BC26
3B154BD01
3B154BE01
3B154CA39
3B154CA42
4H157AA03
4H157DA01
4H157DA34
4H157FA01
4H157FA13
4H157FA17
4H157FA18
4H157FA20
4H157FA22
4H157GA07
4H157JA10
4H157JB02
(57)【要約】
【課題】 生地を染色液に浸して染色することが出来る染色装置の提供。
【解決手段】 染色装置は生地8を収容する回転ドラム3を有し、回転ドラム3を収容して取付ける容器2、該容器2の正面には開閉することが出来る蓋5を取付け、回転ドラム3は後方に設けた軸4に取付けられて正方向と逆方向に繰り返し回転可能に軸支され、回転ドラム3と容器2の間には隙間9を設けると共に該隙間9には電熱ヒータ10と冷却水を流す冷却管11を取付け、そして、容器2の上部には上部弁18と下部には下部弁19を設けて必要に応じて開閉可能としている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地、縫製された製品、古着を染色液に浸して染色することが出来る染色装置において、該染色装置は生地を収容する回転ドラムを有し、回転ドラムを収容して取付ける容器、該容器の正面には開閉することが出来る蓋を取付け、回転ドラムは後方に設けた軸に取付けられて正方向と逆方向に繰り返し回転可能に軸支され、回転ドラムと容器の間には隙間を設けると共に該隙間には電熱ヒータと冷却水を流す冷却管を取付け、そして、容器の上部には上部弁と下部には下部弁を設けて必要に応じて開閉可能とし、染色する場合には下部弁を閉じて上部弁から染色液を注入して上記回転ドラムを回転し、染色した生地を乾燥する場合には、上部弁と下部弁を開き、下部弁から空気を流入して電熱ヒータをONにし、上部弁から温かい空気を流出するようにしたことを特徴とする乾燥機能を備えた小型染色装置。
【請求項2】
上記回転ドラムの内周面には複数の羽根を突出して設けた請求項1記載の乾燥機能を備えた小型染色装置。
【請求項3】
乾燥時に使用する電熱ヒータは、染色時に染色液を昇温する為の電熱ヒータを兼ねている請求項1、又は請求項2記載の乾燥機能を備えた小型染色装置。
【請求項4】
回転ドラムの回転速度と正・逆回転のタイミングは自由に可変可能とした請求項1、請求項2,又は請求項3記載の乾燥機能を備えた小型染色装置。
【請求項5】
電熱ヒータは、設定温度にしたがって出力を比例制御可能とした乾燥機能を備えた小型染色装置。
【請求項6】
脱水時に回転ドラムが高速回転する場合、生地が偏ることなく回転ドラムに均等に付着するように回転制御する機構を付加した請求項1、請求項2、請求項3、請求項4,又は請求項5記載の乾燥機能を備えた小型染色装置。
【請求項7】
生地、縫製された製品、古着を染色液に浸して染色することが出来る染色方法において、生地を収容する回転ドラムを有し、回転ドラムを収容して取付ける容器、そして容器の正面には開閉することが出来る蓋を取付け、回転ドラムは正方向と逆方向に繰り返し回転可能に軸支され、回転ドラムと容器の間には隙間を設けると共に該隙間には電熱ヒータと冷却水を流す冷却管を取付け、そして、容器の上部には上部弁と下部には下部弁を設けて必要に応じて開閉可能とし、染色する場合には下部弁を閉じて上部弁から染色液を注入し、電熱ヒータにて染色液を加熱して上記回転ドラムを回転し、染色した生地を乾燥する場合には、上部弁と下部弁を開き、下部弁から空気を流入して電熱ヒータをONし、上部弁から温かい空気を流出するようにしたことを特徴とする染色する方法。
【請求項8】
上記回転ドラムの内周面には複数の羽根を突出し、該羽根によって収容した生地を攪拌した請求項7記載の染色する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小ロットの生地、縫製された製品、古着などを対象とし、乾燥機能を備えた小型の染色装置、及び染色方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
染色とは染料や顔料を用いて繊維生地などを着色するものであり、染料や顔料などを生地に浸透させることが出来る。ところで、染色装置にも色々な型式が存在している。
(1)ジッガー染色機
ロールに巻いた生地を他のロールに巻き取り、また巻き戻す間に染色液に浸すことを繰り返して染色することが出来る。このジッガー染色機は小ロッド生地に向いていて、高密度織物の染色に適している。
【0003】
(2)ウインス染色機
これは、染色槽の中で、ロープ状の生地を回転しながら染色することが出来る。膨らみのある風合いで染まるが、生地をリールで引っ張る為に、該生地はロープ状になり、シワに成り易い。
(3)液流染色機
生地をロープ状にし、染色液を噴射して生地を循環させながら染色することが出来る。ウインス染色機と原理的には類似しているが、長い筒の中に染料が流れているので、生地には大きなテンションがかからずに染色することが出来る。
【0004】
特開2002-309476号に係る「染色機及び染色方法」は、染色むらが生じにくい小型の染色機である。
そこで、被染対象物及び染液を密閉状態で収容するための略長筒型染色容器と、その回転軸心が略水平方向に延在して、該染色容器とともに回転する回転軸とを備え、染色容器は、回転軸に対して傾斜し且つ回転軸心と略交差するように取り付けられており、染色容器が回転軸を中心に一回転する間に、染色容器の上端が下方を向いたあと再び元の上端位置に戻る。
【0005】
特開2001-55662号に係る「繊維製品の加工処理装置」は、薬液や染色剤等の処理液の量を大幅に少なくすることができるとともに、処理液の熱交換率の高い小型の繊維製品の加工処理装置である。
そこで、横円筒状の水槽と、水槽の前方を密閉する円盤状の扉と、水槽に内蔵され繊維製品を回転させる第1の回転手段と、第1の回転手段の後方が着脱自在に取り付けられるシャフトと、シャフトを駆動させる駆動手段と、水槽の内周に沿うように区画され外周の所定箇所に設けられた出入り口から蒸気や冷却水などの加熱冷却媒体を出し入れさせる熱交換器とを備えている。
【0006】
ところで、染色装置は染色液と生地を収容する大きな筒状の水槽を備えているが、小型化する為には該水槽を小さくしなくてはならない。しかし、水槽が小さく成ると染色ムラが発生するといった問題が生じる。
【特許文献1】特開2002-309476号に係る「染色機及び染色方法」
【特許文献2】特開2001-55662号に係る「繊維製品の加工処理装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、生地を染色する方法は色々知られているが、従来の染色装置は大型であって、小ロッド・多品種に対応することは出来ない。すなわち、大型染色装置を用いるならば、染まる生地が少なくとも一定量の染色液が必要であり、また、一定の濃度を保つ為に、所定量の染料や顔料が必要となり、染色コストは高くなってしまう。
本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、小ロッド・多品種の生地であっても、また、縫製された製品や古着などを手軽に対応することが出来、染ムラやシワにならない染色装置、及び染色方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る染色装置は、容器の内部には回転ドラムを水平方向に倒して備えて配置されている。水平を成す回転ドラムは後方へ延びる軸に取付けられ、該軸は軸受けに軸支されて、正転と逆転を繰り返し回転することで回転ドラムも同じく、正・逆を繰り返し回転することが出来る。
一方向に多数回連続回転すると、生地はシワに成り、染ムラになり易いが、本発明はこれを防止するために正・逆を繰り返し回転するように制御している。
本体の内部には駆動モータを取付け、上記軸は該駆動モータにて回転駆動されるが、回転速度及び正・逆転のタイミングは可変することが出来るようにしている。
ように成っている。
【0009】
上記回転ドラムは筒状を成して外周面には複数の穴が形成され、正面は開口しているが、開口を閉じて密閉状態とする為に容器には蓋が取付けられている。
そして、容器の上部と下部には弁が設けられ、上部の弁から液を注入し、染料や顔料を入れることが出来、染色が完了したならば、下部の弁から排水することが出来る。
【0010】
回転ドラムと容器の間には適度な隙間が設けられ、この隙間に電熱ヒータと冷却管を収容している。
一方、染色が完了したならば、容器の上部と下部に設けた弁を開いて空気を送るならば、電熱ヒータで熱風が作られ、染色された生地は素早く乾燥することが出来る。ただし、生地が過乾燥にならないように電熱ヒータは温度調整されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る染色装置は容器内部に回転ドラムを備え、回転ドラム内に生地を入れて正・逆回転を行うならば、該生地は攪拌されて染色液にて染色される。
容器を収容した本体は縦・横・奥行寸法が1000mm前後となって、従来の染色装置に比較して非常に小さくすることが出来る。その為に、必要な染色液及び染料や顔料は少なくて済み、僅かな生地であっても手軽に染色することが可能であり、染色コストも安くなる。そして、排水量は少なく、処理に要するコストも軽減される。
【0012】
染色液を加熱する手段として蒸気を使用せず、その為にボイラーは不要となり、電熱ヒータにて加熱することが出来、また、冷却水を用いて冷やすことが出来る。したがって、電熱ヒータと冷却水によって、染色液の温度を最適にコントロールすることが出来る。
回転ドラムの内周面には羽根を設けていることで生地は攪拌され、しかも回転ドラムは一定方向の連続回転ではなく、所定の間隔をおいて正・逆回転することで、生地はシワにならず、染色ムラを生じることはない。
本発明の染色装置は、常温染色、高圧染色、及び乾燥を1台で行うことを可能としている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】本発明に係る染色装置であって、(a)は正面図、(b)は側面図をそれぞれ表わしている。
【
図3】本発明に係る染色装置を示す実施例であり、(a)は正面からの内部構造、(b)は側面からの内部構造。
【
図4】回転ドラムと容器の間に形成される隙間に取付けられる電熱ヒータと冷却管を示す実施例。
【
図5】同じ染色装置を用いて染色した生地を乾燥する工程を示す具体例。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明に係る染色装置を示す外観図であり、
図2は該染色装置を示す正面図と側面図を表している。同図の1は本体、2は容器、3は回転ドラムを夫々示している。本体1の正面4には蓋5を設け、該蓋5を開くならば、上記容器2と回転ドラム3の開口が表面化する。
ところで、回転ドラム3には染色する為の生地が収容され、また、染色液が収容されていて、該回転ドラム3は正方向と逆方向に繰り返し回転することが出来る。
【0015】
図3は容器2及び回転ドラム3の構造を示す実施例である。回転ドラム3は筒状をなして筒状の容器2と同芯を成して内部に収容されている。そして、回転ドラム3は後方端から延びている軸4に取付けられ、該軸4の回転に伴って回転することが出来る。軸4は所定の間隔をおいて設けた軸受け20,20によって支持され、軸4の先端には駆動モータ6が設けられていて、該駆動モータ6からの動力を得て回転することが出来る。
【0016】
ここで、軸4は容器2に設けた軸穴から延びて軸受け20,20にて支持されているが、軸穴には軸シール21が設けられて該容器2に内圧が作用しても水漏れしない構造としている。容器20は圧力容器として機能し、140℃までの染色を行うことが出来る。
【0017】
上記回転ドラム3の内周面には複数の羽根7,7・・・が突出して設けられ、回転ドラム3が回転することで、内部に収容されている生地8,8・・・は攪拌される。そして、回転ドラム3は容器2に収容され、間に形成される隙間9には電熱ヒータ10と冷却管11を取付けている。
図4は上記容器内部の隙間9に電熱ヒータ10と冷却管11を取付けた場合の詳細図を表している。
【0018】
電熱ヒータ10はジグザグ状をなして湾曲し、ジグザグを成していることで表面積は大きくなり、パイプには電線12を挿通して表面13が加熱される。そして、冷却管11もジグザグ状に湾曲して表面積は大きくなり、パイプには冷却水15が流れて表面14は冷やされる。冷却水15は一方から流入し、他方から流出するように成っている。
【0019】
上記電熱ヒータ10と冷却管11は容器2と回転ドラム3の間に形成される隙間9の下側に配置され、容器2に入れた染色液16によって覆われるようにしている。すなわち、容器2に入れた染色液16は、回転ドラム3に収容した生地8、及び隙間9に取付けた電熱ヒータ10,冷却管11の殆どが染色液面17の下側に位置するように成っている。
【0020】
容器2の上部には上部弁18を設け、下部には下部弁19を設けていて、これら上部弁18及び下部弁19は容器内部と連通している。
そこで、容器内に染色液16を入れる場合には上部弁18から注入し、容器内の染色液16を流す場合には下部弁19から排出することが出来る。したがって、染色液16を注入する際には、下部弁19は閉じられ、回転ドラム3が回転する場合には、上部弁18も閉じられる。
【0021】
そして、所定の時間、回転ドラム3を回転して生地8が染色されたならば、駆動モータ6を停止して下部弁19を開き、容器2の染色液16は流れ出る。この際、回転ドラム3内の染色液16は、外周面に貫通した複数の穴を通して容器内に流れ落ち、下部弁19から流出することが出来る。
容器内の染色液16が流れ出たならば、同じ容器2と回転ドラム3を使って乾燥することが出来る。
【0022】
そこで、駆動モータ6は徐々に速度を上げ、生地の水分を遠心力で脱水し、下部弁19から排出する。この際、遠心力にて回転ドラム3が振動しないように振動防止回転制御を備えている。すなわち、生地8が回転ドラム3に偏って付着するならば、高速回転することで振動するが、該生地8が均等に付着するように回転制御機構を付加している。
【0023】
図5は乾燥工程を示す実施例である。容器2の上部弁18及び下部弁19を共に開き、下部弁19から空気を送り、上部弁18から排気することが出来る。この場合、冷却管15は止水しておき、電熱ヒータ10をONすることで、下部弁19から流入する空気は熱せられ、回転ドラム3は加熱される。
回転ドラム3は駆動モータ6によって正・逆方向に繰り返し回転し、回転ドラム3の内部に収容されている生地8は乾燥する。
【0024】
すなわち、本発明の染色装置は生地8を染色することが出来ると共に、生地8を取出すことなくそのままの状態で乾燥することが出来る。生地8の乾燥には電熱ヒータ10が使用されるが、該電熱ヒータ10は染色の場合の電熱ヒータと兼ねている。
一方、乾燥に用いる熱源としては、上記電熱ヒータ10以外に外部ヒータを使用することが可能であり、下部弁19から送風できる。
【符号の説明】
【0025】
1 本体
2 容器
3 回転ドラム
4 正面
5 蓋
6 駆動モータ
7 羽根
8 生地
9 隙間
10 電熱ヒータ
11 冷却管
12 電線
13 表面
14 表面
15 冷却水
16 染色液
17 染色液面
18 上部弁
19 下部弁
20 軸受け
21 軸シール
【手続補正書】
【提出日】2021-05-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明に係る染色装置は、容器の内部には回転ドラムを水平方向に倒して備えて配置されている。水平を成す回転ドラムは後方へ延びる軸に取付けられ、該軸は軸受けに軸支されて、正転と逆転を繰り返し回転することで回転ドラムも同じく、正・逆を繰り返し回転することが出来る。
一方向に多数回連続回転すると、生地はシワに成り、染ムラになり易いが、本発明はこれを防止するために正・逆を繰り返し回転するように制御している。
本体の内部には駆動モータを取付け、上記軸は該駆動モータにて回転駆動されるが、回転速度及び正・逆転のタイミングは可変することが出来るようにしている。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
ここで、軸4は容器2に設けた軸穴から延びて軸受け20,20にて支持されているが、軸穴には軸シール21が設けられて該容器2に内圧が作用しても水漏れしない構造としている。容器2は圧力容器として機能し、140℃までの染色を行うことが出来る。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】