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特開2022-168938セラミックス混合セメント、硬化性水混和物、およびセメント硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168938
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】セラミックス混合セメント、硬化性水混和物、およびセメント硬化物
(51)【国際特許分類】
   C04B 7/00 20060101AFI20221101BHJP
   C04B 14/02 20060101ALI20221101BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
C04B7/00
C04B14/02 B
C04B28/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074643
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000184687
【氏名又は名称】小松マテーレ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】富樫 宏介
(72)【発明者】
【氏名】大田 剛志
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PA02
4G112PC12
(57)【要約】
【課題】本発明は、モルタルやコンクリートなどのセメント硬化物の圧縮強度を、特別な設備や手間を必要とせず向上させられるセラミックス混合セメント、およびそれを硬化剤に用いた硬化性水混和物、セメント硬化物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、孔径が10nm超1000nm以下のナノメートルオーダーの第1気孔と、孔径が1μm超70μm以下のマイクロメートルオーダーの第2気孔と、を有する多孔質セラミックス粒子を含むセラミックス混合セメント、およびそれを硬化剤に用いた硬化性水混和物、セメント硬化物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔径が10nm超1000nm以下のナノメートルオーダーの第1気孔と、孔径が1μm超70μm以下のマイクロメートルオーダーの第2気孔と、を有する多孔質セラミックス粒子を含むセラミックス混合セメント。
【請求項2】
前記多孔質セラミックス粒子の篩分級による粒度が、1mm以下である、請求項1に記載のセラミックス混合セメント。
【請求項3】
前記多孔質セラミックス粒子の含有量が、7質量%~60質量%である、請求項1または請求項2に記載のセラミックス混合セメント。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のセラミックス混合セメントと、骨材と、水とを含む硬化性水混和物。
【請求項5】
前記セラミックス混合セメントの含有量が、固形分比率で20質量%~60質量%である、請求項4に記載の硬化性水混和物。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の硬化性水混和物を硬化してなるセメント硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセラミックス混合セメント、硬化性水混和物、およびセメント硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンクリートの圧縮強度を向上させる技術が提案されている。例えば、特許文献1には、練り上がったセメント混練物を真空装置に移し替え、振動を加えもしくは撹拌するとともに、空気の進入を防ぐため真空装置に接続した供給装置から水などを供給する高強度セメント硬化体の製造方法が開示されている。また、特許文献2には、水溶性エポキシ樹脂を含む液体を、セメント等に混合する工程を有する鉄筋コンクリート構造体の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/004723号公報
【特許文献2】特開2012-106889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の製造方法では、特殊な製造設備と工程が必要であるため、実用性に難がある。また、特許文献2の製造方法では、エポキシ樹脂をコンクリート成分として混和させる場合には、エポキシ樹脂の樹脂材料と硬化剤とを混ぜて調整しなければならず、手間が掛かって扱いにくい。さらに、特許文献2の製造方法において、エポキシ樹脂をセメント等に混合させた混合物は、高粘度になるため、コンクリートのフレッシュ性状を損なう。コンクリートのフレッシュ性状を損なうと、ワーカビリティーが低下したり、得られるコンクリートの均質性の低下を招いたりする。コンクリートの均質性が低下すると、コンクリートの圧縮強度に影響が出る。
【0005】
そこで、本発明は、圧縮強度を向上させつつ、実用性を向上させたセラミックス混合セメント、硬化性水混和物、およびセメント硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の実施態様にかかるセラミックス混合セメントは、以下の構成を有する。
(1)孔径が10nm超1000nm以下のナノメートルオーダーの第1気孔と、孔径が1μm超70μm以下のマイクロメートルオーダーの第2気孔と、を有する多孔質セラミックス粒子を含むセラミックス混合セメント。
(2)前記多孔質セラミックス粒子の篩分級による粒度が、1mm以下である、上記(1)に記載のセラミックス混合セメント。
(3)前記多孔質セラミックス粒子の含有量が、7質量%~60質量%である、上記(1)または上記(2)に記載のセラミックス混合セメント。
【0007】
本発明の実施態様にかかる硬化性水混和物は、以下の構成を有する。
(4)上記(1)から(3)のいずれか一項に記載のセラミックス混合セメントと、骨材と、水とを含む硬化性水混和物。
(5)前記セラミックス混合セメントの含有量が、固形分比率で20質量%~60質量%である、上記(4)に記載の硬化性水混和物。
【0008】
本発明の実施態様にかかるセメント硬化物は、以下の構成を有する。
(6)上記(4)または上記(5)に記載の硬化性水混和物を硬化してなるセメント硬化物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、圧縮強度を向上させつつ、実用性を向上させたセラミックス混合セメント、硬化性水混和物、およびセメント硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0011】
本実施形態のセラミックス混合セメントは、孔径が10nm超1000nm以下のナノメートルオーダーの第1気孔と、孔径が1μm超70μm以下のマイクロメートルオーダーの第2気孔と、を有する多孔質セラミックス粒子を含むセラミックス混合セメントである。
【0012】
<多孔質セラミックス粒子>
多孔質セラミックス粒子(以下、単にセラミックス粒子やセラミックスという場合がある)は、孔径が10nm超1000nm以下のナノメートルオーダーの第1気孔と、孔径が1μm超70μm以下のマイクロメートルオーダーの第2気孔と、を有する。
【0013】
セラミックスの原料としては、粘土と、有機汚泥、珪藻土および発泡剤からなる群から選択される少なくとも1種と、を混合したものが用いられる。粘土に対して、有機汚泥、珪藻土および発泡剤からなる群から選択される1種を配合して焼成することにより、セラミックスを多孔質にすることができる。特に、得られるセラミックスに孔径が10nm超1000nm以下のナノメートルオーダーの第1気孔および孔径が1μm超70μm以下のマイクロメートルオーダーの第2気孔を効率的に形成させやすいとの観点から、有機汚泥を少なくとも含むとよい。
【0014】
粘土は、一般的に窯業原料として用いられる粘土状の性状を示す鉱物材料であり、珪藻土以外のものである。
粘土は、従来から、セラミックスに用いられる公知のものを用いることができ、石英、長石、又はその他の粘土系素材などの鉱物組成で構成され、構成鉱物はカオリナイトを主とし、ハロイサイト、モンモリロナイト、イライト、ベントナイト又はパイロフィライトを含むものが好ましい。中でも、蛙目粘土などが挙げられる。粘土は、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて配合できる。
【0015】
これら粘土中の鉱物が焼成される過程において、非晶質体として残存する成分、例えばカオリナイトを焼成してムライト化する過程で残存するメタカオリンと、セメント中の水酸化カルシウムとがポゾラン反応を起こし、水に不溶で強固な結晶構造を形成する。本実施形態のセメント硬化物中に存在する前記結晶構造が、セメント硬化物の圧縮強度を向上させる要因の一つであると考えられる。
【0016】
有機汚泥は、主成分として有機物を含有する汚泥である。有機汚泥は、任意のものを用いることができ、下水や工場などの排水処理に由来する活性汚泥が好ましい。活性汚泥は、活性汚泥法を用いた排水処理設備から、凝集および脱水工程を経て排出される。有機汚泥を用いることで、焼成工程にて有機汚泥中の有機物が焼失し、焼成体から気化していく際の経路により、ナノメートルオーダーの気孔およびマイクロメートルオーダーの気孔を効率的に形成できる。さらに、廃棄物の位置付けであった排水処理由来の活性汚泥を原料として再度利用することができる。
有機汚泥の含水率は、例えば、有機汚泥の全体質量に対して水が5質量%~90質量%であることが好ましく、60質量%~90質量%であることがより好ましく、65質量%~85質量%であることがさらに好ましい。上記範囲内であれば、混合物中への混合が容易である。
【0017】
有機汚泥を用いる場合の前記混合物中の有機汚泥の含有量は、混合物の成形性などを勘案して決定することができ、例えば、前記混合物の全体質量に対して0.1質量%~30質量%が好ましく、5質量%~20質量%がより好ましく、5質量%~15質量%がさらに好ましい。前記混合物中の有機汚泥の含有量が前記範囲内であれば混合物は適度な流動性と可塑性とを備え、成形装置を閉塞することなく円滑に成形できる。
【0018】
前記混合物の混合工程に用いられる混合装置は特に限定されず、公知の混合装置を用いることができる。
混合装置としては、例えば、混練機、ニーダー、および混合機などが挙げられる。
【0019】
前記混合物は、真空土練成形機、平板プレス成形機、および平板押出し成形機などの公知の成形装置を用い、柱状、板状、粒状、ペレット状など適宜の形状にととのえ、焼成することで多孔質セラミックスを得る。
【0020】
焼成前に必要に応じ成形体を乾燥させてもよい。公知の方法を用いて乾燥操作を行うことができる。例えば、成形体を常温(例えば、目安として20℃~30℃前後)で自然乾燥させてもよいし、50℃~220℃の熱風乾燥炉で任意の時間処理して乾燥させてもよい。
【0021】
焼成工程は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、ローラーハースキルンなどの連続式焼結炉、またはシャトルキルンなどの回分式焼結炉を用い、任意の温度で焼成する方法が挙げられる。中でも、焼成操作には、生産性の観点から連続式焼結炉を用いることが好ましい。
焼成温度(最高到達温度)は、混合物の性状などに応じて決定でき、例えば、850℃~1200℃とされる。焼成温度が上記下限値以上であれば、焼成する混合物に有機汚泥を用いた場合、有機汚泥由来の臭気成分が熱分解され解消されると共に、有機汚泥中の有機物の大部分が揮発して減量する。上記上限値超であると、セラミックスの組織全体のガラス化が進み、気孔が閉塞するおそれがある。
【0022】
前記工程により、孔径が10nm超1000nm以下のナノメートルオーダーの第1気孔および孔径が1μm超70μm以下のマイクロメートルオーダーの第2気孔を有するセラミックス焼成体を効率的に得ることができる。ナノメートルオーダーの気孔により、毛細管現象にて水分を吸収する能力、マイクロメートルオーダーの気孔により、セラミックス粒子の保水率が著しく向上し、硬化性水混和物中の余分な水分をセラミックス粒子中に吸着保持するとともに、保持した水を硬化の段階にて適度に徐放する作用を発揮し、本実施形態のセメント硬化物の組織を緻密にさせ、圧縮強度を向上させる要因の一つとなると考えられる。
【0023】
なお、気孔の孔径は、走査型電子顕微鏡観察を行った画像データから縮尺に従って画像処理を行うことで測定することができる。本開示において、粒子の気孔の孔径は、粒子の気孔の最長径を電子顕微鏡を用いて測定した値である。
【0024】
多孔質セラミックスに形成されている気孔は、それぞれ独立したものであってもよいし、相互に連通した連通孔であってもよい。粒子の気孔の最長径は、それぞれ独立した気孔で測定することが好ましい。
【0025】
多孔質セラミックスの全孔隙率は、35%~85%であるとよい。全孔隙率が40%未満であると、硬化性水混和物中の余分な水分をセラミックス粒子が保持できる量が少なくなりすぎるおそれがある。全孔隙率が80%を超えると、ナノメートルオーダーの気孔の割合が少なくなり、硬化性水混和物中の余分な水分を吸着および徐放する作用が発現されにくくなるおそれがある。より好ましい全孔隙率は、45%~75%である。
ここで、全孔隙率とは、以下の式より求められる、セラミックス中の全孔隙の割合を意味する。
全孔隙率(%)={1-(見掛密度/真密度)}×100
【0026】
前記の通り得られた多孔質セラミックスは、破砕することによりセラミックス粒子とする。破砕工程は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、焼成により得られた多孔質セラミックスを、ハンマーミル、二軸回転式破砕、ジェットミル、ボールミル、またはエッジランナーミルなどで破砕する方法が挙げられる。
【0027】
多孔質セラミックス粒子の粒径は、篩分級による粒度が1mm以下であることが好ましい。篩分級による粒度が1mm以下の多孔質セラミックス粒子を用いることで、セメントや他の骨材との間に入り込んで隙間を埋め、セメント硬化物中の空気量を減らし圧縮強度を向上させる効果、および水混和物としたときのダイラタンシー性を弱めワーカビリティーを向上させると同時に骨材が分離しにくくなる効果を発揮する。
【0028】
篩分級による粒度が1mm以下のセラミックス粒子は、前記の通り破砕したセラミックス粒子を目開きが1mmの篩を用いた篩分けによる分級をして得られる。また、篩分けし、粒子径が1mm以上の大きな粒状物を再度破砕し、篩分けしてもよい。
【0029】
<セラミックス混合セメント>
本実施形態に用いるセメントは特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、JIS R5210に規定されるポルトランドセメントの他、JIS R5211~R5213に規定される混合セメント、JIS R5214に規定されるエコセメント、これらのセメントの複数成分の混合物などが挙げられる。
【0030】
前記多孔質セラミックス粒子と前記セメントの混合割合は、前記セラミックス粒子が、全質量に対して7質量%~60質量%の割合で混合されているとよい。前記セラミックス粒子の割合が7質量%未満であると、セメント硬化物の圧縮強度向上の機能が十分に発現されないおそれがある。また、前記セラミックス粒子の割合が60質量%を超えると、セメントが本来発揮する結合強度を低下させてしまうおそれがある。より好ましい多孔質セラミックス粒子の割合は、15質量%~45質量%である。
【0031】
<硬化性水混和物>
本実施形態の硬化性水混和物は、前記セラミックス混合セメントと、骨材と、水とを含む硬化性水混和物である。
本実施形態において、骨材には、上述したセラミックス混合セメントは含まれないものとする。
【0032】
硬化性水混和物とは、一般的にフレッシュコンクリートや生コンなどと呼ばれる、セメントと骨材と水の混和物のことを指すものである。本明細書中において、硬化性水混和物は、コンクリート(フレッシュコンクリートや生コンなど)に限定されず、粗骨材を含まないモルタル用の混和物も含む。
【0033】
骨材としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、細骨材としては、川砂、山砂、海砂、砕砂、珪砂、石灰石骨材、高炉スラグ細骨材、銅スラグ細骨材、電気炉酸化スラグ細骨材、カオリナイトやマイカなどの鉱物粒子、およびこれらを複数組み合わせたものが挙げられ、粗骨材としては、例えば、砂利、砕石、石灰石骨材、高炉スラグ粗骨材、電気炉酸化スラグ粗骨材、瓦やガラスなどの破砕物、およびこれらを複数組み合わせたものが挙げられる。モルタルを得るためには前記細骨材のみを、コンクリートを得るためには前記細骨材と粗骨材を併用すればよい。
【0034】
硬化性水混和物には、本発明の目的を逸脱しない範囲で、減水材、消泡材、混和剤、樹脂、強化繊維、顔料などの添加物を混和してもよい。
【0035】
硬化性水混和物は、前記セラミックス混合セメント、骨材および水、必要に応じて添加剤を混和することにより得られる。混和工程は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、回転式ミルやミキサーなどで混和する方法が挙げられる。混和の際には、まず固形分のみを配合してから撹拌(空練り)し、その後水を添加して練り混ぜると、固形分が硬化性水混和物中に均一に分散し、骨材の分離や出来上がりのセメント硬化物の強度バラつきを抑制することができる。
【0036】
硬化性水混和物中の前記セラミックス混合セメントの割合は、固形分比率で20質量%~60質量%であることが好ましい。前記セラミックス混合セメントの固形分比率とは、硬化性水混和物中の水以外の成分に対する前記セラミックス混合セメントの質量比のことである。前記セラミックス混合セメントの割合が20質量%未満であると、セメント硬化物が十分に結合されず、強度が低下するおそれがあり、60質量%を超えると、硬化性水和物の流動挙動のダイラタンシー性が強く発現され、ワーカビリティーが低下するおそれがある。より好ましい前記セラミックス混合セメントの割合は、25質量%~50質量%である。
【0037】
硬化性水混和物中の水の割合は、併用する減水材の種類や量も考慮し、適宜調整すればよい。例えば、コンクリートの場合の好ましい硬化性水混和物のスランプ値は15cm~23cmである。
【0038】
<セメント硬化物>
本実施形態のセメント硬化物は、前記硬化性水混和物を養生して硬化することにより得られる。
【0039】
硬化性水混和物の養生工程は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、打設後に室温で放置したり、真空引きや加圧による脱気および脱水を行ったり、水和反応を促進させるために水を含んだ養生シートをかぶせる、蒸気を当てる、水に浸漬する、これらに加えて昇温するなどの工程を行ってもよい。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【実施例0041】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0042】
(多孔質セラミックス粒子の使用原料)
実施例に用いた多孔質セラミックスの原料は、次の通りである。
【0043】
<粘土>
粘土としては、蛙目粘土(岐阜県産)を用いた。
<有機汚泥>
有機汚泥としては、染色工場(小松マテーレ株式会社)の活性汚泥法による排水処理設備から凝集および脱水工程を経て排出された活性汚泥を用いた。この活性汚泥の有機物含有量(対固形分)は83質量%、含水率は85質量%、平均粒子径は2.6μmであった。
<珪藻土>
珪藻土としては、住宅用の瓦として使用された後、廃棄されたものを破砕したもの(粒子径0.1mm~1.2mm)を用いた。
<発泡剤>
発泡剤としては、鋳鉄スラグを用いた。この鋳鉄スラグは、SiO、Al、CaO、Fe、FeO、MgO、MnO、KOおよびNaOを主成分とする粒子状(篩い分けし、直径10mm以下)のダクタイル鋳鉄スラグである。
【0044】
(多孔質セラミックス粒子の製造)
以下の割合で原料を混合し、可塑状態の混合物を得た。
粘土: 22.5質量%、
有機汚泥: 10.0質量%、
珪藻土: 22.5質量%、
発泡剤: 45.0質量%
次いで、得られた混合物を真空土練成形機で直径1.5cmの円柱状に押し出したものを長さ3cmに切断し、円柱状の成形体を得た。
【0045】
得られた成形体を、連続式焼結炉を用いて、焼成温度990℃、焼成温度での滞留時間10分間の焼成条件にて焼成した。得られたセラミックス焼成体を1辺20mmの立方体に切り出し、質量を測定して見掛密度を、密度測定装置(Macpycno(登録商標)、株式会社マウンテック製)にて真密度を測定し、以下の式にて全孔隙率を測定した。得られたセラミックス焼成体の全孔隙率は64%であった。
全孔隙率(%)={1-(見掛密度/真密度)}×100
【0046】
焼成後、得られた多孔質セラミックスの塊状物をハンマーミルで最大粒子径が10mm以下となるまで破砕した。次に篩を用い、目開きが1mmの篩を通過したものを多孔質セラミックス粒子として用いた。
【0047】
得られた多孔質セラミックス粒子のナノメートルオーダーの気孔およびマイクロメートルオーダーの気孔を、走査型電子顕微鏡(SEMEDX Type H形、株式会社日立ハイテク製)を用い、100倍~10000倍で観察して確認した。得られた粒子には、孔径が10nm超1000nm以下のナノメートルオーダーの第1気孔、および孔径が1μm超70μm以下のマイクロメートルオーダーの第2気孔を含む気孔が多数観察され、多孔質であることが確認された。なお、気孔の孔径は、観察された気孔の長径を測定した値とした。
【0048】
(セラミックス混合セメントの製造)
前記得られた多孔質セラミックス粒子と、普通ポルトランドセメント(宇部三菱セメント株式会社製)を所定量配合し、ミキサーで撹拌してセラミックス混合セメントを製造した。
【0049】
(硬化性水混和物の製造)
前記得られたセラミックス混合セメントと、細骨材として珪砂5号(トーヨーマテラン株式会社製)を所定量配合し、ミキサーで空練りした後、所定量の水を加え撹拌して硬化性水混和物を製造した。
【0050】
(セメント硬化物の製造)
前記得られた硬化性水和物を型枠内に打設し、24時間室温で気中養生した。次いで、脱型して水に浸漬し、室温で27日間水中養生することでセメント硬化物を得た。
【0051】
(圧縮試験)
前記得られた材齢28日のセメント硬化物を、JIS A 1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準じて行った。
【0052】
(実施例1~6、比較例1~2)
前記多孔質セラミックス粒子と普通ポルトランドセメントから得られたセラミックス混合セメントの配合量、および前記セラミックス混合セメントと細骨材と水とから得られた硬化性水混和物の配合量、さらに前記硬化性水混和物を硬化して得られたセメント硬化物の圧縮試験の結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表1からわかるとおり、本発明を適用した実施例1~6のセメント硬化物の圧縮強度は、セメントにセラミックスを混合しなかった比較例1~2と比較して圧縮強度が向上していた。
【0055】
本発明を適用した実施例1~6は、特別な設備や手間を掛けずに作成することができたので、実用性を向上させることができた。