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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016896
(43)【公開日】2022-01-25
(54)【発明の名称】水処理方法および水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
C02F1/44 D
C02F1/44 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020119876
(22)【出願日】2020-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶原 優子
(72)【発明者】
【氏名】中野 徹
(72)【発明者】
【氏名】中村 勇規
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA14
4D006HA01
4D006HA41
4D006HA61
4D006JA53Z
4D006JA57Z
4D006JA67Z
4D006KA52
4D006KA53
4D006KA54
4D006KA55
4D006KA56
4D006KA57
4D006KA67
4D006KE02P
4D006KE04P
4D006KE04Q
4D006KE04R
4D006KE06R
4D006KE12P
4D006KE22Q
4D006KE23Q
4D006MA01
4D006MA03
4D006MC18
4D006MC54
4D006MC63
4D006PA02
4D006PB03
4D006PB08
(57)【要約】
【課題】半透膜モジュールを用いる水の濃縮処理において、濃度分極の影響を軽減することができる水処理方法および水処理装置を提供する。
【解決手段】半透膜14で仕切られた第一空間16と第二空間18とを有する半透膜モジュール12を用いて、溶解固形成分を含む被処理水を第一空間16に通水し、第一空間16を加圧して被処理水に含まれる水を半透膜14を透過させることによって濃縮水を得るとともに、第二空間18に濃縮水の一部を通水して希釈水を得る半透膜処理工程と、濃縮水のさらに一部を半透膜モジュール12の被処理水側に返送する循環工程と、を含む、水処理方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半透膜で仕切られた第一空間と第二空間とを有する半透膜モジュールを用いて、溶解固形成分を含む被処理水を前記第一空間に通水し、前記第一空間を加圧して前記被処理水に含まれる水を前記半透膜を透過させることによって濃縮水を得るとともに、前記第二空間に前記濃縮水の一部を通水して希釈水を得る半透膜処理工程と、
前記濃縮水のさらに一部を前記半透膜モジュールの被処理水側に返送し循環する循環工程と、
を含むことを特徴とする水処理方法。
【請求項2】
半透膜で仕切られた第一空間と第二空間とを有する半透膜モジュールを用いて、溶解固形成分を含む被処理水を前記第一空間に通水し、前記第一空間を加圧して前記被処理水に含まれる水を前記半透膜を透過させることによって濃縮水を得るとともに、前記第二空間に前記被処理水の一部を通水して希釈水を得る半透膜処理工程と、
前記濃縮水の少なくとも一部を前記半透膜モジュールの被処理水側に返送し循環する循環工程と、
を含むことを特徴とする水処理方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水処理方法であって、
前記被処理水中の前記溶解固形成分の濃度が所定の濃度値を超えた場合に、前記半透膜を透過する透過水量が所定の範囲になるように、前記循環する濃縮水の流量を制御することを特徴とする水処理方法。
【請求項4】
請求項3に記載の水処理方法であって、
前記被処理水中の前記溶解固形成分の濃度が所定の濃度値を超えた場合に、前記第一空間に供給される被処理水の流量に対して、前記循環する濃縮水の流量が200%以上となるように、前記循環する濃縮水の流量を制御することを特徴とする水処理方法。
【請求項5】
請求項4に記載の水処理方法であって、
前記所定の濃度値が、前記被処理水の浸透圧が5MPa以上となる濃度値であることを特徴とする水処理方法。
【請求項6】
半透膜で仕切られた第一空間と第二空間とを有する半透膜モジュールを用いて、溶解固形成分を含む被処理水を前記第一空間に通水し、前記第一空間を加圧して前記被処理水に含まれる水を前記半透膜を透過させることによって濃縮水を得るとともに、前記第二空間に前記濃縮水の一部を通水して希釈水を得る半透膜処理手段と、
前記濃縮水のさらに一部を前記半透膜モジュールの被処理水側に返送し循環する循環手段と、
を備えることを特徴とする水処理装置。
【請求項7】
半透膜で仕切られた第一空間と第二空間とを有する半透膜モジュールを用いて、溶解固形成分を含む被処理水を前記第一空間に通水し、前記第一空間を加圧して前記被処理水に含まれる水を前記半透膜を透過させることによって濃縮水を得るとともに、前記第二空間に前記被処理水の一部を通水して希釈水を得る半透膜処理手段と、
前記濃縮水の少なくとも一部を前記半透膜モジュールの被処理水側に返送し循環する循環手段と、
を備えることを特徴とする水処理装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の水処理装置であって、
前記被処理水中の前記溶解固形成分の濃度が所定の濃度値を超えた場合に、前記半透膜を透過する透過水量が所定の範囲になるように、前記循環する濃縮水の流量を制御する制御手段をさらに備えることを特徴とする水処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の水処理装置であって、
前記制御手段は、前記被処理水中の前記溶解固形成分の濃度が所定の濃度値を超えた場合に、前記第一空間に供給される被処理水の流量に対して、前記循環する濃縮水の流量が200%以上となるように、前記循環する濃縮水の流量を制御することを特徴とする水処理装置。
【請求項10】
請求項9に記載の水処理装置であって、
前記所定の濃度値が、前記被処理水の浸透圧が5MPa以上となる濃度値であることを特徴とする水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶解固形成分(TDS)等を含む水の濃縮処理を行う水処理方法および水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場等からの排水量を減容化する方法として、エバポレーターを用いた蒸発法や、逆浸透膜を用いて透過水を回収し、排水量を減容化する逆浸透法が知られている。
【0003】
また、特許文献1のように、半透膜モジュールの半透膜で仕切られた第一空間と第二空間に被処理水またはその濃縮水を流し、第一空間を加圧することによって、水を濃縮する方法が知られている。このような半透膜を用いる濃縮方法は、一般的な逆浸透法と比較し、第一空間と第二空間との浸透圧差を小さくすることによって、より少ない消費エネルギーで排水を高濃縮し、減容化することができる。
【0004】
しかし、このような半透膜を用いる濃縮方法では、特に高濃度の被処理水を濃縮する際に、半透膜の膜面で液が濃縮され、より大きな浸透圧がかかってしまう現象(すなわち濃度分極)の影響を受け、膜の第一空間から第二空間へ透過する水量が少なくなる場合がある。また、特許文献1のように多段式の半透膜モジュールを用いる場合には、膜ユニットの後段にいくほど、膜の第一空間に通水する水が高濃度となり、濃度分極の影響が大きくなるため、膜の第一空間から第二空間へ透過する水量が少なくなる。その結果として、濃縮水を得るために高い圧力が必要になったり、濃縮に必要な膜ユニット数が増えたりして、イニシャルコストおよびランニングコストの増大につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-069198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、半透膜モジュールを用いる水の濃縮処理において、濃度分極の影響を軽減することができる水処理方法および水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、半透膜で仕切られた第一空間と第二空間とを有する半透膜モジュールを用いて、溶解固形成分を含む被処理水を前記第一空間に通水し、前記第一空間を加圧して前記被処理水に含まれる水を前記半透膜を透過させることによって濃縮水を得るとともに、前記第二空間に前記濃縮水の一部を通水して希釈水を得る半透膜処理工程と、前記濃縮水のさらに一部を前記半透膜モジュールの被処理水側に返送し循環する循環工程と、を含む、水処理方法である。
【0008】
本発明は、半透膜で仕切られた第一空間と第二空間とを有する半透膜モジュールを用いて、溶解固形成分を含む被処理水を前記第一空間に通水し、前記第一空間を加圧して前記被処理水に含まれる水を前記半透膜を透過させることによって濃縮水を得るとともに、前記第二空間に前記被処理水の一部を通水して希釈水を得る半透膜処理工程と、前記濃縮水の少なくとも一部を前記半透膜モジュールの被処理水側に返送し循環する循環工程と、を含む、水処理方法である。
【0009】
前記水処理方法において、前記被処理水中の前記溶解固形成分の濃度が所定の濃度値を超えた場合に、前記半透膜を透過する透過水量が所定の範囲になるように、前記循環する濃縮水の流量を制御することが好ましい。
【0010】
前記水処理方法において、前記被処理水中の前記溶解固形成分の濃度が所定の濃度値を超えた場合に、前記第一空間に供給される被処理水の流量に対して、前記循環する濃縮水の流量が200%以上となるように、前記循環する濃縮水の流量を制御することが好ましい。
【0011】
前記水処理方法において、前記所定の濃度値が、前記被処理水の浸透圧が5MPa以上となる濃度値であることが好ましい。
【0012】
本発明は、半透膜で仕切られた第一空間と第二空間とを有する半透膜モジュールを用いて、溶解固形成分を含む被処理水を前記第一空間に通水し、前記第一空間を加圧して前記被処理水に含まれる水を前記半透膜を透過させることによって濃縮水を得るとともに、前記第二空間に前記濃縮水の一部を通水して希釈水を得る半透膜処理手段と、前記濃縮水のさらに一部を前記半透膜モジュールの被処理水側に返送し循環する循環手段と、を備える、水処理装置である。
【0013】
本発明は、半透膜で仕切られた第一空間と第二空間とを有する半透膜モジュールを用いて、溶解固形成分を含む被処理水を前記第一空間に通水し、前記第一空間を加圧して前記被処理水に含まれる水を前記半透膜を透過させることによって濃縮水を得るとともに、前記第二空間に前記被処理水の一部を通水して希釈水を得る半透膜処理手段と、前記濃縮水の少なくとも一部を前記半透膜モジュールの被処理水側に返送し循環する循環手段と、を備える、水処理装置である。
【0014】
前記水処理装置において、前記被処理水中の前記溶解固形成分の濃度が所定の濃度値を超えた場合に、前記半透膜を透過する透過水量が所定の範囲になるように、前記循環する濃縮水の流量を制御する制御手段をさらに備えることが好ましい。
【0015】
前記水処理装置において、前記制御手段は、前記被処理水中の前記溶解固形成分の濃度が所定の濃度値を超えた場合に、前記第一空間に供給される被処理水の流量に対して、前記循環する濃縮水の流量が200%以上となるように、前記循環する濃縮水の流量を制御することが好ましい。
【0016】
前記水処理装置において、前記所定の濃度値が、前記被処理水の浸透圧が5MPa以上となる濃度値であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、半透膜モジュールを用いる水の濃縮処理において、濃度分極の影響を軽減することができる水処理方法および水処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る水処理装置の一例を示す概略構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る水処理装置の他の例を示す概略構成図である。
図3】本発明の実施形態に係る水処理装置の他の例を示す概略構成図である。
図4】本発明の実施形態に係る水処理装置の他の例を示す概略構成図である。
図5】比較例1で用いた水処理装置を示す概略構成図である。
図6】実施例2~5における、第一空間側(一次側)流量(L/min)と透過水量の増加割合(%)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0020】
本発明の実施形態に係る水処理装置の一例の概略を図1に示し、その構成について説明する。
【0021】
図1に示す水処理装置1は、半透膜で仕切られた第一空間(濃縮側)と第二空間(透過側)とを有する半透膜モジュールを用いて溶解固形成分(TDS)等を含む被処理水を濃縮する半透膜処理手段として、例えば、膜モジュール12を備える。膜モジュール12は、半透膜14で仕切られた第一空間16および第二空間18を有する。水処理装置1は、被処理水を貯留する被処理水槽10を備えてもよい。
【0022】
図1の水処理装置1において、被処理水槽10の被処理水入口には、配管22が接続されている。被処理水槽10の出口と膜モジュール12の第一空間入口とは、ポンプ20を介して配管24により接続されている。膜モジュール12の第一空間出口には配管26が接続されている。配管26から分岐した配管28が膜モジュール12の第二空間入口に接続されている。膜モジュール12の第二空間出口には配管30が接続されている。配管26から分岐した配管32が被処理水槽10の循環水入口に接続されている。
【0023】
図1の水処理装置1は、半透膜14で仕切られた第一空間16および第二空間18を有する膜モジュール12を用い、被処理水を膜モジュール12の第一空間入口から第一空間16に通水するとともに、膜モジュール12の第一空間16の第一空間出口から排出された濃縮水の一部を膜モジュール12の第二空間入口から第二空間18に通水し、第一空間16を加圧することによって、その第一空間16の被処理水に含まれる水を半透膜14を介して第二空間18に透過させて水を濃縮する装置である。すなわち、水処理装置1において、半透膜14を用いて被処理水が濃縮される。水処理装置1は、膜モジュール12の第一空間16に被処理水を供給し、第一空間16の出口から得られた濃縮水の一部を膜モジュール12の第二空間18に供給して濃縮処理を行う装置である。
【0024】
本実施形態に係る水処理方法および水処理装置1の動作について説明する。
【0025】
水処理装置1において、溶解固形成分(TDS)を含む被処理水は、配管22を通して、必要に応じて被処理水槽10に貯留された後、被処理水槽10からポンプ20により配管24を通して、膜モジュール12の第一空間入口から第一空間16へ加圧送液され、通水される。加圧された被処理水に含まれる水の一部は半透膜14を介して第一空間16から第二空間18に向かって透過する。このとき、溶解固形成分の大部分は半透膜14を透過することができないので、半透膜14を透過しなかった第一空間16内の水が濃縮される。一方、第二空間18では、配管28を通して通水された濃縮水の一部と、半透膜14を透過したTDS濃度の低い透過水とが合流するため、希釈効果が働く。第一空間16で得られた濃縮水は、第一空間出口から配管26を通して排出され、濃縮水の一部は、配管26から分岐した配管28を通して、膜モジュール12の第二空間入口から第二空間18へ送液され、通水される。第二空間18で得られた希釈水は、第二空間出口から配管30を通して排出される。ここで、膜モジュール12において、第一空間16が加圧されてその第一空間16の被処理水に含まれる水が半透膜14を介して第二空間18に透過され、第一空間16で濃縮水が得られる(濃縮工程)とともに、第二空間18で希釈水が得られる(希釈工程)。第一空間16で得られた濃縮水の一部は、配管26を通して系外へ排出されてもよい。濃縮水の一部は、上記の通り膜モジュール12の第二空間18へ配管26,28を通して送液、通水され、濃縮水のさらに一部は、循環水として配管32を通して膜モジュール12の被処理水側、例えば被処理水槽10に返送し循環される(循環工程)。循環水は、配管24に返送されてもよい。
【0026】
ここで、ポンプ20、配管24,26,28等が、半透膜モジュール12の第一空間16に被処理水を供給し、第一空間16の出口から得られた濃縮水の少なくとも一部を半透膜モジュール12の第二空間18に供給する供給手段として機能する。
【0027】
第二空間18で得られた希釈水は、配管30を通して系外へ排出されてもよいし、必要に応じて希釈水槽へ送液されて貯留された後、系外へ排出されてもよい。希釈水の少なくとも一部は、被処理水槽10に送液され、被処理水槽10において被処理水と混合されてもよい。希釈水の少なくとも一部は、さらに逆浸透膜処理装置へ送液され、逆浸透膜処理装置において、逆浸透膜処理が行われてもよい(逆浸透膜処理工程)。逆浸透膜処理により得られたRO透過水は、系外へ排出される。逆浸透膜処理により得られたRO濃縮水は、被処理水槽10に送液され、被処理水槽10において被処理水と混合されてもよい。
【0028】
以上のようにして、処理対象である、溶解固形成分等を含む被処理水から、溶解固形成分等の物質が濃縮された処理水(濃縮水)と、希釈水とが得られ、被処理水の減容化が行われる。
【0029】
本実施形態に係る水処理方法および水処理装置1では、濃縮水の一部を膜モジュール12の被処理水側に返送し、循環する循環手段として配管32を設けている。濃縮水の一部を膜モジュール12の被処理水側に返送、循環して、半透膜モジュール12の第一空間16に供給する水量を増やすことによって、濃度分極の影響の軽減を可能とする。その結果として、濃縮水を得るための圧力を与える運転動力を低減できるため、イニシャルコストおよびランニングコストの低減につながり、低コストな水処理方法および水処理装置を提供することができる。
【0030】
本発明の実施形態に係る水処理装置の他の例の概略を図2に示し、その構成について説明する。
【0031】
図2に示す水処理装置2は、半透膜で仕切られた第一空間(濃縮側)と第二空間(透過側)とを有する半透膜モジュールを用いて溶解固形成分(TDS)等を含む被処理水を濃縮する半透膜処理手段として、例えば、膜モジュール12を備える。膜モジュール12は、半透膜14で仕切られた第一空間16および第二空間18を有する。水処理装置2は、被処理水を貯留する被処理水槽10を備えてもよい。
【0032】
図2の水処理装置2において、被処理水槽10の被処理水入口には、配管22が接続されている。被処理水槽10の出口と膜モジュール12の第一空間入口とは、ポンプ20を介して配管24により接続され、配管24におけるポンプ20の下流側で配管24から分岐した配管34が膜モジュール12の第二空間入口に接続されている。膜モジュール12の第一空間出口には配管26が接続され、膜モジュール12の第二空間出口には配管36が接続されている。配管26から分岐した配管32が被処理水槽10の循環水入口に接続されている。
【0033】
図2の水処理装置2は、半透膜14で仕切られた第一空間16および第二空間18を有する膜モジュール12を用い、被処理水を膜モジュール12の第一空間入口から第一空間16と第二空間入口から第二空間18とに通水し、第一空間16を加圧することによって、その第一空間16の被処理水に含まれる水を半透膜14を介して第二空間18に透過させて水を濃縮する装置である。すなわち、水処理装置2において、半透膜14を用いて被処理水が濃縮される。水処理装置2は、膜モジュール12の第一空間16と第二空間18の両方に被処理水を供給して濃縮処理を行う装置である。
【0034】
水処理装置2において、溶解固形成分(TDS)を含む被処理水は、配管22を通して、必要に応じて被処理水槽10に貯留された後、被処理水槽10からポンプ20により配管24を通して、膜モジュール12の第一空間入口から第一空間16へ加圧送液され、通水される。また、被処理水は、配管24から分岐した配管34を通して、膜モジュール12の第二空間入口から第二空間18へ送液され、通水される。第一空間16で得られた濃縮水は、第一空間出口から配管26を通して排出され、第二空間18で得られた希釈水は、第二空間出口から配管36を通して排出される。ここで、膜モジュール12において、第一空間16が加圧されてその第一空間16の被処理水に含まれる水が半透膜14を介して第二空間18に透過され、第一空間16で濃縮水が得られる(濃縮工程)とともに、第二空間18で希釈水が得られる(希釈工程)。第一空間16で得られた濃縮水の一部は、配管26を通して系外へ排出されてもよい。濃縮水の少なくとも一部は、循環水として配管32を通して膜モジュール12の被処理水側、例えば被処理水槽10に返送される(循環工程)。循環水は、配管24における配管34との分岐点の上流側において返送されてもよい。
【0035】
ここで、ポンプ20、配管24,34等が、半透膜モジュール12の第一空間16と第二空間18の両方に被処理水を供給する供給手段として機能する。
【0036】
第二空間18で得られた希釈水は、配管36を通して系外へ排出されてもよいし、必要に応じて希釈水槽へ送液されて貯留された後、系外へ排出されてもよい。希釈水の少なくとも一部は、被処理水槽10に送液され、被処理水槽10において被処理水と混合されてもよい。希釈水の少なくとも一部は、さらに逆浸透膜処理装置へ送液され、逆浸透膜処理装置において、逆浸透膜処理が行われてもよい(逆浸透膜処理工程)。逆浸透膜処理により得られたRO透過水は、系外へ排出される。逆浸透膜処理により得られたRO濃縮水は、被処理水槽10に送液され、被処理水槽10において被処理水と混合されてもよい。
【0037】
以上のようにして、処理対象である、溶解固形成分等を含む被処理水から、溶解固形成分等の物質が濃縮された処理水(濃縮水)と、希釈水とが得られ、被処理水の減容化が行われる。
【0038】
本実施形態に係る水処理方法および水処理装置2では、濃縮水の少なくとも一部を膜モジュール12の被処理水側に返送し、循環する循環手段として配管32を設けている。濃縮水の少なくとも一部を膜モジュール12の被処理水側に返送、循環して、半透膜モジュール12の第一空間16に供給する水量を増やすことによって、濃度分極の影響の軽減を可能とする。その結果として、濃縮水を得るための圧力を与える運転動力を低減できるため、イニシャルコストおよびランニングコストの低減につながり、低コストな水処理方法および水処理装置を提供することができる。
【0039】
本実施形態に係る水処理方法および水処理装置において、膜モジュール12の第一空間16の入口の被処理水のTDS濃度を測定し、測定したTDS濃度が所定の濃度値を超えた場合に、第一空間16から第二空間18へ半透膜14を透過する透過水量が所定の範囲になるように、循環する濃縮水(循環水)の流量を制御することが好ましい。このような構成の水処理装置の一例を図3に示す。
【0040】
図3に示す水処理装置3は、図2に示す水処理装置2と同様の構成に加えて、配管24におけるポンプ20の上流側に、膜モジュール12の第一空間16の入口における被処理水の溶解固形成分の濃度を測定する濃度測定手段として、濃度測定装置44と、膜モジュール12の第一空間16の入口における被処理水の流量(FI1)を測定する第一空間被処理水流量測定手段として、被処理水流量測定装置46と、を備える。配管32に、循環する濃縮水(循環水)の流量(FI2)を測定する循環流量測定手段として、循環流量測定装置56を備える。配管26における配管32との分岐点の下流側に、膜モジュール12の第一空間16の出口におけるブローする濃縮水の流量(FI3)を測定するブロー流量測定手段として、ブロー流量測定装置54を備える。図1に示す水処理装置1に、水処理装置3と同様の追加の構成を加えてもよい。
【0041】
ポンプ20は、例えば、入力された駆動周波数に応じた回転速度で駆動され、被処理水を吸入して膜モジュール12に吐出する加圧ポンプである。ポンプ20には、例えば、入力された指令信号に対応する駆動周波数をポンプ20に出力するインバーター42が設置されている。バルブ60が、配管26における配管32との分岐点の下流側であって、ブロー流量測定装置54の上流側に設けられている。バルブ60は、例えば、被処理水流量測定装置46およびブロー流量測定装置54の測定値に基づいて開度を調節する比例制御バルブである。配管24におけるポンプ20の下流側には、第一空間16の入口における圧力を測定する入口圧力測定手段として、入口圧力測定装置48が設置され、配管26における配管32との分岐点の上流側には、第一空間16の出口における圧力を測定する出口圧力測定手段として、出口圧力測定装置58が設置されていてもよい。配管24から分岐した配管34は、ポンプ52を介して膜モジュール12の第二空間18の入口と接続され、ポンプ52の上流側には、膜モジュール12の第二空間18の入口における被処理水の流量(FI4)を測定する第二空間被処理水流量測定手段として、被処理水流量測定装置50が設置されていてもよい。
【0042】
水処理装置3は、溶解固形成分の濃度が所定の濃度値を超えた場合に、透過水量が所定の範囲になるように循環する濃縮水の流量を制御する制御手段として、制御装置40を備えてもよく、制御装置40は、インバーター42、濃度測定装置44、被処理水流量測定装置46、ブロー流量測定装置54、循環流量測定装置56と、バルブ62と、電気的接続等によって接続されていてもよい。制御装置40は、バルブ60と電気的接続等によって接続されていてもよい。制御装置40は、例えば、プログラムを演算するCPU等の演算手段、プログラムや演算結果を記憶するROMおよびRAM等の記憶手段等から構成されるマイクロコンピュータと電子回路等で構成され、ポンプ20の流量、バルブ62の開閉度等を制御する機能を有するものである。
【0043】
水処理装置3において、水処理装置2と同様にして、処理対象である、溶解固形成分等を含む被処理水から、溶解固形成分等の物質が濃縮された処理水(濃縮水)と、希釈水とが得られ、被処理水の減容化が行われる。
【0044】
ここで、例えば、濃度測定装置44によって、膜モジュール12の第一空間16の入口における被処理水の溶解固形成分の濃度が測定され(濃度測定工程)、被処理水流量測定装置46によって、膜モジュール12の第一空間16の入口における被処理水の流量(FI1)が測定され(第一空間被処理水流量測定工程)、循環流量測定装置56によって、循環する濃縮水の流量(FI2)が測定され(循環流量測定工程)、ブロー流量測定装置54によって、膜モジュール12の第一空間16の出口におけるブローする濃縮水の流量(FI3)が測定される(ブロー流量測定工程)。そして、濃度測定工程で測定された溶解固形成分の濃度が所定の濃度値を超えた場合に、例えば、第一空間被処理水流量測定工程、循環流量測定工程、ブロー流量測定工程で測定された各流量(FI1,FI2,FI3)から求められる、第一空間16から第二空間18へ透過する透過水量=FI1-(FI2+FI3)が所定の範囲になるように、循環する濃縮水の流量を制御する(制御工程)。
【0045】
例えば、制御装置40は、濃度測定装置44によって測定された溶解固形成分の濃度が所定の濃度値を超えた場合に、被処理水流量測定装置46、循環流量測定装置56、ブロー流量測定装置54により測定された各流量(FI1,FI2,FI3)から求められる透過水量=FI1-(FI2+FI3)が所定の範囲になるように、任意の演算式を用いて駆動周波数を演算し、この演算値に対応する指令信号をインバーター42に出力してポンプ20を制御し、バルブ62の開閉度を制御して、循環する濃縮水の流量を制御すればよい。なお、透過水量の求め方は「FI1,FI2,FI3から透過水量=FI1-(FI2+FI3)として求める方法」に限らない。例えば、第二空間18の出口である配管36に透過水流量測定手段として透過水流量測定装置51を設置して、第二空間18の入口における被処理水の流量(FI4)が測定され(第二空間被処理水流量測定工程)、第二空間18の出口における透過水の流量(FI5)が測定され(透過水流量測定工程)、各流量(FI4,FI5)から求められる透過水量=FI5-FI4が所定の範囲になるように、循環する濃縮水の流量を制御してもよい。
【0046】
本実施形態に係る水処理方法および水処理装置3では、膜モジュール12の第一空間16の入口における被処理水のTDS濃度を測定し、所定の濃度値を超えた場合に、バルブ62の開度を調節し、濃縮水の少なくとも一部を、TDS濃度が所定の濃度値を超えた膜モジュール12の被処理水側に返送、循環して、半透膜モジュール12の第一空間16に供給する水量を増やす。その結果として、半透膜モジュールを用いる水の濃縮処理において、被処理水の溶解固形成分の濃度が所定の濃度値を超えた場合であっても濃度分極の影響を軽減することができる。
【0047】
例えば、被処理水のTDS濃度が所定の濃度値を超えた場合に、膜モジュール12の第一空間16に供給される被処理水の流量に対して、循環する濃縮水の流量が200%以上となるように循環する濃縮水の流量を制御することが好ましく、循環する濃縮水の流量が250%以上となるように循環する濃縮水の流量を制御することがより好ましい。循環する濃縮水の流量が200%未満であると、濃度分極の影響を軽減することができない場合がある。
【0048】
例えば、ポンプ20を起動し、被処理水槽10から膜モジュール12の第一空間16に被処理水を通水する。このとき、バルブ62を全閉状態とし、バルブ60を開状態として、装置の運転を行う。被処理水のTDS濃度が所定の濃度値(例えば、6%)を超えた場合、インバーター42の出力値を所定の割合(例えば、10%)上げる。ブロー流量測定装置54による測定値(FI3)と透過水量(FI1-(FI2+FI3))が増加するので、透過水量が所定の範囲になるように、バルブ60を開状態、バルブ62を開状態とし、バルブ60とバルブ62の開度を調整する。循環流量測定装置56による測定値(FI2)が第一空間16の供給流量に対し、循環量が所定の値(例えば、200%以上)となるまで、動作を繰り返せばよい。被処理水のTDS濃度が所定の濃度値以下の場合は、バルブ62を閉じていき、循環する濃縮水の流量を調節して徐々に減らしていってもよいし、バルブ62を全閉状態とし、濃縮水の循環を行わなくてもよい。
【0049】
被処理水のTDS濃度の「所定の濃度値」は、例えば、被処理水の浸透圧が5MPa以上となる濃度値であることが好ましく、被処理水の浸透圧が8MPa以上となる濃度値であることがより好ましい。被処理水の浸透圧が5MPa未満となる濃度値である場合、濃度分極の影響が小さく、透過水量の減少はわずかである。例えば、溶解固形成分が塩化ナトリウム(NaCl)である場合、被処理水のTDS濃度の「所定の濃度値」は、「6質量%」となる。なお、浸透圧は、下記式によって計算される。
浸透圧(MPa)=モル濃度(mol/L)×気体定数(Pa・L/(mol・K))×絶対温度(K)×10-6
【0050】
本実施形態に係る水処理方法および水処理装置において、多段式の半透膜モジュールを用いてもよい。このような構成の水処理装置の一例を図4に示す。
【0051】
図4に示す水処理装置4は、半透膜で仕切られた第一空間(濃縮側)と第二空間(透過側)とを有する半透膜モジュールを用いて溶解固形成分(TDS)等を含む被処理水を濃縮し、その濃縮水をさらに半透膜モジュールを用いて濃縮する半透膜処理手段として、例えば、1段目膜モジュール12a、2段目膜モジュール12b、3段目膜モジュール12cを備える。それぞれの膜モジュールは、半透膜14で仕切られた第一空間16および第二空間18を有する。水処理装置4は、2段目膜モジュール12bからの濃縮水、すなわち3段目膜モジュール12cの被処理水を貯留する被処理水槽10を備えてもよい。水処理装置4は、第1段の膜モジュールの第一空間に被処理水を供給し、その濃縮水が最終段の半透膜モジュールの第一空間を通過した後に最終段の濃縮水の一部を最終段の半透膜モジュールの第二空間に供給して濃縮処理を行う装置である。
【0052】
図4の水処理装置4において、1段目膜モジュール12aの第一空間入口にはポンプ66を介して配管68が接続されている。1段目膜モジュール12aの第一空間出口と2段目膜モジュール12bの第一空間入口とは、配管70により接続されている。2段目膜モジュール12bの第一空間出口と被処理水槽10の濃縮水入口とは、配管72により接続されている。被処理水槽10の出口と3段目膜モジュール12cの第一空間入口とは、ポンプ20を介して配管24により接続されている。3段目膜モジュール12cの第一空間出口には、バルブ60を介して配管26が接続されている。配管26におけるバルブ60の上流側から分岐した配管28が、バルブ64を介して3段目膜モジュール12cの第二空間入口に接続されている。配管26におけるバルブ60の上流側であって配管28の分岐点の下流側から分岐した配管32がバルブ62を介して被処理水槽10の循環水入口に接続されている。3段目膜モジュール12cの第二空間出口と2段目膜モジュール12bの第二空間入口とは、配管74により接続されている。2段目膜モジュール12bの第二空間出口と1段目膜モジュール12aの第二空間入口とは、配管76により接続されている。1段目膜モジュール12aの出口には、配管78が接続されている。
【0053】
図4に示す水処理装置4は、配管24におけるポンプ20の下流側に、3段目膜モジュール12cの第一空間16の入口における被処理水の溶解固形成分の濃度を測定する濃度測定手段として、濃度測定装置44と、3段目膜モジュール12cの第一空間16の入口における被処理水の流量(FI1)を測定する第一空間被処理水流量測定手段として、被処理水流量測定装置46と、を備える。配管32に、循環する濃縮水(循環水)の流量(FI2)を測定する循環流量測定手段として、循環流量測定装置56を備える。配管26におけるバルブ60の下流側に、3段目膜モジュール12cの第一空間16の出口におけるブローする濃縮水の流量(FI3)を測定するブロー流量測定手段として、ブロー流量測定装置54を備える。配管28におけるバルブ64の下流側に、分岐した濃縮水の流量を測定する分岐濃縮水流量測定手段として、分岐濃縮水流量測定装置53を備える。これらの構成を、第1段の半透膜モジュールの第一空間と第二空間の両方に被処理水を供給する装置や、最終段の半透膜モジュールの第一空間と第二空間の両方にその前段の濃縮水を供給する装置に適用してもよい。
【0054】
ポンプ20は、例えば、入力された駆動周波数に応じた回転速度で駆動され、2段目膜モジュール12bからの濃縮水、すなわち3段目膜モジュール12cの被処理水を吸入して3段目膜モジュール12cに吐出する加圧ポンプである。ポンプ20には、例えば、入力された指令信号に対応する駆動周波数をポンプ20に出力するインバーター42が設置されている。バルブ60は、例えば、被処理水流量測定装置46およびブロー流量測定装置54の測定値に基づいて開度を調節する比例制御バルブである。
【0055】
水処理装置4は、溶解固形成分の濃度が所定の濃度値を超えた場合に、透過水量が所定の範囲になるように循環する濃縮水の流量を制御する制御手段として、制御装置40を備えてもよく、制御装置40は、インバーター42、濃度測定装置44、被処理水流量測定装置46、分岐濃縮水流量測定装置53、ブロー流量測定装置54、循環流量測定装置56と、バルブ62と、電気的接続等によって接続されていてもよい。制御装置40は、バルブ60と電気的接続等によって接続されていてもよい。制御装置40は、例えば、プログラムを演算するCPU等の演算手段、プログラムや演算結果を記憶するROMおよびRAM等の記憶手段等から構成されるマイクロコンピュータと電子回路等で構成され、ポンプ20の流量、バルブ62の開閉度等を制御する機能を有するものである。
【0056】
水処理装置4は、半透膜14で仕切られた第一空間16および第二空間18を有する多段式の膜モジュールを用い、被処理水を多段式の膜モジュールの第一空間16に直列的に通水し、最終段の膜モジュールユニット(図4の例では、3段目膜モジュール12c)の第二空間18にその最終段の膜モジュールユニットの濃縮水を送液し、最終段の膜モジュールの希釈水をその前段の膜モジュールの第二空間18に直列的に通水し、第一空間16を加圧することによってその第一空間16に含まれる水を半透膜14を介して第二空間18に透過させて水を濃縮する装置である。すなわち、水処理装置4において、半透膜14を用いて被処理水が濃縮され、その濃縮水がさらに次の段の半透膜14を用いて濃縮される。第1段の膜モジュールユニット(図4の例では、1段目膜モジュール12a)の第一空間16に被処理水が供給され、最終段の膜モジュールの第一空間16にその前段(図4の例では、2段目膜モジュール12b)の濃縮水が供給される。そして、最終段の膜モジュールの第二空間18を通過した希釈水を、各段の膜モジュールの第二空間18に供給していき、各段の膜モジュールの第一空間16を加圧してその第一空間16に含まれる水を第二空間18に透過させる。
【0057】
具体的には、水処理装置4において、溶解固形成分(TDS)を含む被処理水は、ポンプ66により配管68を通して、1段目膜モジュール12aの第一空間16へ送液される。一方、後述する3段目膜モジュール12cの第二空間18、2段目膜モジュール12bの第二空間18を経由して送液された希釈水が配管76を通して、1段目膜モジュール12aの第二空間18へ送液される。1段目膜モジュール12aにおいて、第一空間16が加圧されてその第一空間16に含まれる水が第二空間18に透過される(濃縮工程(1段目))。
【0058】
1段目膜モジュール12aの第一空間16で得られた濃縮水は、配管70を通して、2段目膜モジュール12bの第一空間16へ送液される。一方、後述する3段目膜モジュール12cの第二空間18を経由して送液された希釈水が配管74を通して、2段目膜モジュール12bの第二空間18へ送液される。1段目と同様にして、2段目膜モジュール12bにおいて、第一空間16が加圧されてその第一空間16に含まれる水が第二空間18に透過される(濃縮工程(2段目))。
【0059】
2段目膜モジュール12bの第一空間16で得られた濃縮水は、配管72を通して、必要に応じて被処理水槽10に貯留された後、被処理水槽10からポンプ20により配管24を通して、3段目膜モジュール12cの第一空間入口から第一空間16へ送液され、通水される。第一空間16で得られた濃縮水は、第一空間出口から配管26を通して排出され、濃縮水の一部は、配管26から分岐した配管28を通して、3段目膜モジュール12cの第二空間入口から第二空間18へ送液され、通水される。第二空間18で得られた希釈水は、第二空間出口から配管74を通して2段目膜モジュール12bの第二空間18へ送液される。ここで、3段目膜モジュール12cにおいて、第一空間16が加圧されてその第一空間16に含まれる水が第二空間18に透過され、第一空間16で濃縮水が得られる(濃縮工程(3段目))とともに、第二空間18で希釈水が得られる(希釈工程(3段目))。バルブ60,64が開状態、バルブ62が全閉状態で、第一空間16で得られた濃縮水の一部は、配管26を通して系外へ排出され、濃縮水の一部は、上記の通り3段目膜モジュール12cの第二空間18へ配管26,28を通して送液、通水される。バルブ60,64が開状態、バルブ62が開状態で、濃縮水の一部は、循環水として配管32を通して膜モジュール12の被処理水側、例えば被処理水槽10に返送し循環される(循環工程)。循環水は、配管24に返送されてもよい。
【0060】
ここで、ポンプ20、配管24,26,28等が、3段目膜モジュール12cの第一空間16に被処理水を供給し、第一空間16の出口から得られた濃縮水の少なくとも一部を3段目膜モジュール12cの第二空間18に供給する供給手段として機能する。
【0061】
3段目膜モジュール12cの第二空間18で得られた希釈水は、配管74を通して、2段目膜モジュール12bの第二空間18へ送液される。上記の通り、2段目膜モジュール12bにおいて、第一空間16が加圧されてその第一空間16に含まれる水が第二空間18に透過される(濃縮工程(2段目))。
【0062】
2段目膜モジュール12bの第二空間18で得られた希釈水は、配管76を通して、1段目膜モジュール12aの第二空間18へ送液される。上記の通り、1段目膜モジュール12aにおいて、第一空間16が加圧されてその第一空間16に含まれる水が第二空間18に透過される(濃縮工程(1段目))。
【0063】
1段目膜モジュール12aの第二空間18で得られた希釈水は、配管78を通して系外へ排出されてもよいし、必要に応じて希釈水槽へ送液されて貯留された後、系外へ排出されてもよい。希釈水の少なくとも一部は、1段目膜モジュール12aの被処理水と混合されてもよい。希釈水の少なくとも一部は、さらに逆浸透膜処理装置へ送液され、逆浸透膜処理装置において、逆浸透膜処理が行われてもよい(逆浸透膜処理工程)。逆浸透膜処理により得られたRO透過水は、系外へ排出される。逆浸透膜処理により得られたRO濃縮水は、1段目膜モジュール12aの被処理水と混合されてもよい。
【0064】
以上のようにして、処理対象である、溶解固形成分等を含む被処理水から、溶解固形成分等の物質が濃縮された処理水(最終段の濃縮水)と、希釈水(第1段の希釈水)とが得られ、被処理水の減容化が行われる。
【0065】
ここで、例えば、濃度測定装置44によって、3段目膜モジュール12cの第一空間16の入口における被処理水の溶解固形成分の濃度が測定され(濃度測定工程)、被処理水流量測定装置46によって、3段目膜モジュール12cの第一空間16の入口における被処理水の流量(FI1)が測定され(被処理水流量測定工程)、循環流量測定装置56によって、循環する濃縮水の流量(FI2)が測定され(循環流量測定工程)、ブロー流量測定装置54によって、3段目膜モジュール12cの第一空間16の出口におけるブローする濃縮水の流量(FI3)が測定され(ブロー流量測定工程)、分岐濃縮水流量測定装置53によって、3段目膜モジュール12cの第二空間18の入口における分岐濃縮水の流量(FI6)が測定される(分岐濃縮水流量測定工程)。そして、例えば、濃度測定工程で測定された溶解固形成分の濃度が所定の濃度値を超えた場合に、被処理水流量測定工程、循環流量測定工程、ブロー流量測定工程、分岐濃縮水流量測定工程で測定された各流量(FI1,FI2,FI3,FI6)から求められる、第一空間16から第二空間18へ透過する透過水量=FI1-(FI2+FI3+FI6)が所定の範囲になるように、循環する濃縮水の流量を制御する(制御工程)。
【0066】
例えば、制御装置40は、濃度測定装置44によって測定された溶解固形成分の濃度が所定の濃度値を超えた場合に、被処理水流量測定装置46、循環流量測定装置56、ブロー流量測定装置54、分岐濃縮水流量測定装置53により測定された各流量(FI1,FI2,FI3,FI6)から求められる透過水量=FI1-(FI2+FI3+FI6)が所定の範囲になるように、任意の演算式を用いて駆動周波数を演算し、この演算値に対応する指令信号をインバーター42に出力してポンプ20を制御し、バルブ62の開閉度を制御して、循環する濃縮水の流量を制御すればよい。
【0067】
本実施形態に係る水処理方法および水処理装置4では、3段目膜モジュール12cの第一空間16の入口における被処理水のTDS濃度を測定し、所定の濃度値を超えた場合に、バルブ62の開度を調節し、濃縮水の少なくとも一部を、TDS濃度が所定の濃度値を超えた3段目膜モジュール12cの被処理水側に返送、循環して、3段目膜モジュール12cの第一空間16に供給する水量を増やす。その結果として、多段式の半透膜モジュールを用いる水の濃縮処理において、膜の第一空間に通水する水が高濃度となり、濃度分極の影響が大きくなりやすい最終段の膜モジュールで被処理水の溶解固形成分の濃度が所定の濃度値を超えた場合であっても濃度分極の影響を軽減することができる。
【0068】
多段式の膜モジュールを用いる場合、膜モジュールの段数は、目的の処理水の濃度等によって決めればよい。例えば、より薄い濃度の被処理水からより濃い濃度の処理水を得たい場合には、膜モジュールユニットの段数を増やせばよい。本実施形態に係る水処理方法および水処理装置は、多段式の膜モジュールを用いる場合に好適に適用することができる。
【0069】
各段の膜モジュールとして、並列的に接続された複数本の膜モジュールを備える膜モジュールユニットを用いてもよい。各膜モジュールユニットにおける膜モジュールの本数は、被処理水の流量等によって決めればよい。
【0070】
各段の膜モジュールに、第一空間16からの濃縮水を第二空間18へ送液する配管を設けてもよい。
【0071】
各段の膜モジュールに、処理水槽や希釈水槽を設けてもよい。
【0072】
膜モジュールが備える半透膜14としては、例えば、逆浸透膜(RO膜)、正浸透膜(FO膜)、ナノろ過膜(NF膜)等の半透膜が挙げられる。半透膜は、逆浸透膜、正浸透膜、ナノろ過膜が好ましい。なお、半透膜として逆浸透膜または正浸透膜、ナノろ過膜を用いる場合、第一空間16の被処理水の圧力は、好ましくは0.5~10.0MPaである。
【0073】
半透膜14を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、酢酸セルロース系樹脂等のセルロース系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂等のポリスルホン系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられる。半透膜14を構成する材料は、酢酸セルロース系樹脂であることが好ましい。
【0074】
半透膜14の形状としては、平膜、中空糸膜、スパイラル膜等が挙げられる。
【0075】
濃度測定手段としては、例えば、導電率計、密度計、イオン濃度計等を用いることができる。
【0076】
被処理水は、溶解固形成分(TDS)等の物質を含む水であればよく、特に制限はないが、例えば、工場排水、塩水、海水、薬品廃液、逆浸透膜処理後の濃縮排水等が挙げられる。
【0077】
TDS(溶解固形成分)は、例えば、塩化ナトリウム等の塩化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム等の硫酸塩等を成分とする。
【実施例0078】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0079】
<実施例1>
図3に示す水処理装置3を用いて、処理を実施した。膜モジュールは、東洋紡株式会社製 5インチ膜(HP5255SI)を1本用いた。TDS成分として、塩化ナトリウム(NaCl)を使用した。純水に塩化ナトリウムを添加してTDS濃度6質量%の試験水を調製した。ポンプ20,52を起動し、膜モジュール12の第一空間入口における流量(FI1)が5L/min、第二空間入口における流量(FI4)が1L/minとなるように運転を開始した。第一空間入口における圧力(PI1)と第一空間出口における圧力(PI2)の測定値ができるだけ一定となるように、ポンプ20のインバーター42の値とバルブ62の開度を調節し(インバーター42の値を上げると圧力が上昇するので、バルブ62の開度を大きくして圧力を下げる)、第一空間入口における流量(FI1)が10L/minとなるまで濃縮水を循環した。このときの第一空間入口における流量(FI1)、循環水の流量(FI2)、ブローする濃縮水の流量(FI3)の値から、濃縮倍率(FI1/FI3)と透過水量(FI1-(FI2+FI3))を算出した。結果を表1に示す。
【0080】
<比較例1>
図5に示す水処理装置5を用いて、処理を実施した。水処理装置5は、循環手段である配管32、循環流量測定装置56、バルブ62を有さない点で水処理装置3と異なる。TDS成分として、塩化ナトリウム(NaCl)を使用した。純水に塩化ナトリウムを添加してTDS濃度6質量%の試験水を調製した。ポンプ20,52を起動し、膜モジュール12の第一空間入口における流量(FI1)が10L/min、第二空間入口における流量(FI4)が1L/minとなるように運転した。このときの第一空間入口における流量(FI1)、ブローする濃縮水の流量(FI3)の値から、濃縮倍率(FI1/FI3)と透過水量(FI1-FI3)を算出した。結果を表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
このように、実施例1のように濃縮水を循環させて第一空間側の流量を増やすことによって、比較例1のように濃縮水を循環しなかったときに比べて、濃度分極の影響を軽減することができ、高い濃縮倍率を保ちながら運転することができた。
【0083】
<実施例2>
図3に示す水処理装置3を用いて、処理を実施した。TDS成分として、塩化ナトリウム(NaCl)を使用した。純水および塩化ナトリウムを被処理水槽10に添加して導電率計で測定、換算されるNaCl濃度が6質量%となるように試験水を逐次調製した。ポンプ20,52を起動し、膜モジュール12の第一空間入口における流量(FI1)が5L/min、第二空間入口における流量(FI4)が1L/minとなるように運転を開始した。第一空間入口における圧力(PI1)と第一空間出口における圧力(PI2)の測定値ができるだけ一定となるように、ポンプ20のインバーター42の値とバルブ62の開度を調節し、第一空間入口における流量(FI1)が10L/minとなるまで濃縮水を循環した。このときの第一空間入口における流量(FI1)、循環水の流量(FI2)、ブローする濃縮水の流量(FI3)の値から、透過水量(FI1-(FI2+FI3))を算出した。さらに同様の操作を第一空間入口における流量(FI1)が20L/minとなるまで行い、このときの第一空間入口における流量(FI1)、循環水の流量(FI2)、ブローする濃縮水の流量(FI3)の値から、透過水量を算出した。結果を図6に示す。
【0084】
<実施例3>
NaCl濃度が3質量%であることを除いて、実施例2と同様の要領で運転を実施した。結果を図6に示す。
【0085】
<実施例4>
NaCl濃度が10質量%であることを除いて、実施例2と同様の要領で運転を実施した。結果を図6に示す。
【0086】
<実施例5>
NaCl濃度が15質量%であることを除いて、実施例2と同様の要領で運転を実施した。結果を図6に示す。
【0087】
図6は、第一空間入口における流量(FI1)を5L/minとしたときの透過水量(100%)に対する、透過水量の増加割合を示したものである。特に被処理水のTDS濃度が6質量%以上の場合、濃縮水を循環することによって、濃度分極の影響を軽減し、より多くの透過水量を得ることができた。NaCl濃度が3質量%のときは、濃縮水を循環することによる濃度分極の影響の軽減効果は得られたもののわずかであった。
【0088】
このように、実施例の水処理装置および水処理方法によって、半透膜モジュールを用いる水の濃縮処理において、濃度分極の影響を軽減することができた。
【符号の説明】
【0089】
1,2,3,4,5 水処理装置、10 被処理水槽、12 膜モジュール、12a 1段目膜モジュール、12b 2段目膜モジュール、12c 3段目膜モジュール、14 半透膜、16 第一空間、18 第二空間、20,52,66 ポンプ、22,24,26,28,30,32,34,36,68,70,72,74,76,78 配管、40 制御装置、42 インバーター、44 濃度測定装置、46,50 被処理水流量測定装置、48 入口圧力測定装置、51 透過水流量測定装置、53 分岐濃縮水流量測定装置、54 ブロー流量測定装置、56 循環流量測定装置、58 出口圧力測定装置、60,62,64 バルブ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6