(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168972
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】油圧パワーユニット
(51)【国際特許分類】
F04B 23/02 20060101AFI20221101BHJP
F04B 53/16 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
F04B23/02 E
F04B53/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074702
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 充
(72)【発明者】
【氏名】松葉 悠輝
【テーマコード(参考)】
3H071
【Fターム(参考)】
3H071AA03
3H071CC33
3H071CC34
3H071CC35
3H071DD72
3H071DD83
(57)【要約】
【課題】作動油タンクの上部にマニホールドブロックを設置しながらもコンパクトな構成としつつ、作動油タンクへの給油作業をスムーズに行うことが可能な油圧パワーユニットを提供する。
【解決手段】油圧パワーユニット100は、作動油タンク110と、作動油タンク110の上部に取り付けられるマニホールドブロック120と、マニホールドブロック120の上部に取り付けられる電動モータ140と、マニホールドブロック120の下部に取り付けられて作動油タンク110内に収容される油圧ポンプ150とを備える。マニホールドブロック120には、油圧ポンプ150から吐出された作動油が通る吐出油路133と、油圧アクチュエータから作動油タンク110に戻る作動油が通る戻り油路135と、作動油タンク110内に補給される作動油が注がれる給油口162と、給油口162に注がれた作動油を作動油タンク110内に導く給油路163とが設けられる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口部を有する容器状の作動油タンクと、
前記開口部を覆って前記作動油タンクの上部に取り付けられるマニホールドブロックと、
前記マニホールドブロックの上部に取り付けられる電動モータと、
前記マニホールドブロックの下部に取り付けられて前記作動油タンク内に設けられる油圧ポンプと、を備え、
前記油圧ポンプが前記電動モータにより駆動されて前記作動油タンク内の作動油を吸入して油圧アクチュエータに対し吐出可能に構成され、
前記マニホールドブロックに、
前記油圧ポンプから吐出された作動油が通る吐出油路と、
前記油圧アクチュエータから前記作動油タンクに戻る作動油が通る戻り油路と、
前記作動油タンク内に補給される作動油が注がれる給油口と、
前記給油口に注がれた作動油を前記作動油タンク内に導く給油路と、が設けられることを特徴とする油圧パワーユニット。
【請求項2】
前記給油口及び前記給油路は、前記マニホールドブロックと一体に形成されることを特徴とする請求項1に記載の油圧パワーユニット。
【請求項3】
前記給油口は、斜め上方を向いて開口するように構成されることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の油圧パワーユニット。
【請求項4】
前記作動油タンクの側面に、前記作動油タンク内の油面位置を確認するための油面計を有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の油圧パワーユニット。
【請求項5】
油圧作業装置を有する作業車において前記油圧作業装置への油圧供給源として用いられることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の油圧パワーユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動油タンク、油圧ポンプ及び電動モータがマニホールドブロックを介して一体的に構成された油圧パワーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の油圧パワーユニットは、例えば、油圧作業装置を有する作業車において油圧作業装置への油圧供給源として用いられる。マニホールドブロックは、油圧作業装置の油圧アクチュエータから作動油タンクに戻る作動油が通る油路等を備え、作動油タンクの上部や側部、下部等に取り付けられる。油圧ポンプが作動油タンクの外部に配置される油圧パワーユニットも知られているが、全体的にコンパクトに構成するために、作動油タンクの内部に油圧ポンプを配置した油圧パワーユニットも知られている(例えば、特許文献1~3を参照)。
【0003】
作動油タンクには、作動油を補給するための給油口が設けられる。この給油口は、作動油タンクの上部(上面部)に給油口を設けるスペースを確保できる構成の油圧パワーユニットの場合は、作動油タンクの上面部に設けられることが多いが(例えば、特許文献1、2を参照)、作動油タンクの上面部に給油口を設けるスペースを確保できない構成の油圧パワーユニットもある。例えば、特許文献3の油圧パワーユニットでは、マニホールドブロックが作動油タンクの上部に配置されており、作動油タンクの上面部に給油口を設けるスペースがないため、給油口は作動油タンクの側部(側面上部)に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-36744号公報
【特許文献2】特開2007-107445号公報
【特許文献3】特開2015-17578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作動油タンクは、油圧アクチュエータを滞りなく作動させるために必要な量の作動油を収蔵できるように構成される。作動油タンク内に必要量の作動油が収蔵された状態における作動油タンク内の油面位置(「必要油量収蔵時油面位置」とも称する)は、作動油タンクの形状や容量によって決まる。上述したように、作動油タンクの上部にマニホールドブロックが設けられる油圧パワーユニットでは、作動油タンクの側部に給油口が設けられることがあるが、その給油口の高さ位置は、必要油量収蔵時油面位置よりも高くする必要がある。また、給油口の高さ位置と必要油量収蔵時油面位置との間の高低差の距離が短いと、必要油量収蔵時油面位置を超える量の給油が行われた場合に、以下のような問題が生じる虞がある。例えば、給油後においては、油圧パワーユニットを搭載した作業車が傾いた時に作動油タンク内の油面が変化したり、作業車が走行開始した時や停止した時に慣性により作動油タンク内の油面が変化したりすることがあるが、そのような油面の変化時に、作動油が給油口の高さ位置まで達してしまって給油口から漏れ出る虞がある。また、給油中においては、必要油量収蔵時油面位置を超えて給油された作動油が給油口の高さ位置まで達して溢れ出る虞がある。そのため、給油口の高さ位置と必要油量収蔵時油面位置との間の高低差の距離を十分に確保することが好ましい。
【0006】
一方、油圧パワーユニットをコンパクトに構成するために、作動油タンクを小型化したいという要望がある。しかし、作動油タンクの上部にマニホールドブロックを配置し、作
動油タンクの側部に給油口を設ける構成の油圧パワーユニットでは、作動油タンクを小型化した場合、給油口の高さ位置と必要油量収蔵時油面位置との間の距離を十分に確保することが困難となる。そのため、作動油タンクへの給油の際には、給油中の作動油が必要油量収蔵時油面位置を超えないように、給油計等により作動油タンク内の油面位置を確認しながら給油作業を慎重に行う必要が生じるため、給油作業性が低下するという課題がある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、作動油タンクの上部にマニホールドブロックを設置しながらもコンパクトな構成としつつ、作動油タンクへの給油作業をスムーズに行うことが可能な油圧パワーユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る油圧パワーユニットは、上部に開口部を有する容器状の作動油タンクと、前記開口部を覆って前記作動油タンクの上部に取り付けられるマニホールドブロックと、前記マニホールドブロックの上部に取り付けられる電動モータと、前記マニホールドブロックの下部に取り付けられて前記作動油タンク内に設けられる油圧ポンプと、を備え、前記油圧ポンプが前記電動モータにより駆動されて前記作動油タンク内の作動油を吸入して油圧アクチュエータに対し吐出可能に構成され、前記マニホールドブロックに、前記油圧ポンプから吐出された作動油が通る吐出油路と、前記油圧アクチュエータから前記作動油タンクに戻る作動油が通る戻り油路と、前記作動油タンク内に補給される作動油が注がれる給油口と、前記給油口に注がれた作動油を前記作動油タンク内に導く給油路と、が設けられて構成される。
【0009】
本発明に係る油圧パワーユニットにおいて、前記給油口及び前記給油路は、前記マニホールドブロックと一体に形成されることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る油圧パワーユニットにおいて、前記給油口は、斜め上方を向いて開口するように構成されることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る油圧パワーユニットにおいて、前記作動油タンクの側面に、前記作動油タンク内の油面位置を確認するための油面計を有することが好ましい。
【0012】
本発明に係る油圧パワーユニットは、油圧作業装置(例えば、実施形態における昇降装置4)を有する作業車において前記油圧作業装置への油圧供給源として用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る油圧パワーユニットによれば、作動油タンクの上部に取り付けられるマニホールドブロックに、作動油が注がれる給油口と、給油口に注がれた作動油を作動油タンク内に導く給油路とが設けられることにより、作動油タンクを小型化しても、給油口の高さ位置と必要油量収蔵時油面位置との間の高低差の距離を十分に確保することが可能となる。そのため、全体をコンパクトに構成することが可能となるとともに、作動油タンクへの給油作業をスムーズに行うことが可能となる。
【0014】
本発明に係る油圧パワーユニットにおいて、給油口及び給油路がマニホールドブロックと一体に形成される態様とすることで、給油口及び給油路の少なくとも一部がマニホールドブロックと別体に形成される態様と比較して、マニホールドブロックを構成簡易に形成することが可能となる。
【0015】
本発明に係る油圧パワーユニットにおいて、給油口が斜め上方を向いて開口するように
構成されることで、給油口から作動油を注ぐことが行いやすくなるので、給油作業性を向上させることが可能となる。
【0016】
本発明に係る油圧パワーユニットにおいて、作動油タンクの側面に作動油タンク内の油面位置を確認するための油面計を有することで、作動油タンク内の油面位置を油面計により確認しながら給油を行うことが可能となる。また、油面計を作動油タンクの側面に取り付けても油面計の高さ位置と給油口の高さ位置との間の高低差の距離を十分に確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る一実施形態の油圧パワーユニットを備えた高所作業車の側面図であって、作業台を格納した状態を示す図である。
【
図2】上記高所作業車の側面図であって、作業台を上方に移動させた状態を示す図である。
【
図3】上記油圧パワーユニットの全体構成を示す斜視図である。
【
図4】上記油圧パワーユニットの全体構成を示す側面図である。
【
図5】上記油圧パワーユニットの作動油タンクを示す斜視図である。
【
図6】上記油圧パワーユニットのマニホールドブロックを給油口の位置で切断して示す断面図である。
【
図7】上記マニホールドブロックを吐出油路の位置(
図6のA-A線の位置)で切断して示す断面図である。
【
図8】上記マニホールドブロックを戻り油路の位置(
図6のB-B線の位置)で切断して示す断面図である。
【
図9】上記給油口に装着される給油キャップの構成を示す断面図である。
【
図10】本発明に係る変形例の油圧パワーユニットを示す斜視図である。
【
図11】比較例の油圧パワーユニットを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について上記図面を参照して説明する。
図1及び
図2には、本発明に係る油圧パワーユニット100を備えた高所作業車1を示しており、まず、これらの図を参照して高所作業車1の全体構成について概要説明する。なお、以降の説明において、
図1における矢印Fの方向を前方とする。
【0019】
高所作業車1は、車体2の前後の左右両側部に前後輪3a,3bを有し、前輪3aを左右方向に操舵し、また、図示しない走行用モータにより後輪3bを駆動して走行可能に構成されている。この車体2上には、伸縮マスト式の昇降装置4が取り付けられており、さらにこの昇降装置4上には、作業者搭乗用の作業台5が取り付けられている。
【0020】
昇降装置4は、複数のマスト部材6a~6eを伸縮自在に入れ子式に組み合わせて構成された伸縮マスト6と、伸縮マスト6内に配置された伸縮機構(図示せぬ油圧アクチュエータを備える)とを有して構成される。伸縮マスト6は、1段目のマスト部材6aの下端部が車体2に固定され、5段目のマスト部材6eに作業台5が固定されている。また、マスト部材6eおよび作業台5の床面には、平面視で略U字形の形状をなした手摺7が、作業台5に搭乗した作業者を囲むように取り付けられている。
【0021】
作業台5には、操作装置8が設けられており、この作業台5に搭乗した作業者が操作装置8を操作することにより、昇降装置4の伸縮機構を作動させて伸縮マスト6を伸縮させることにより、作業台5を任意の高所に垂直昇降させて高所作業を行うことができる。また、操作装置8を操作することにより、後輪3bを駆動させるとともに前輪3aを操舵することができ、作業台5を高所に移動させた状態でもこの高所作業車1を走行させること
ができる。車体2の内部には、制御基板等を収納したコントロールボックス9(
図1を参照)が設置されている。
【0022】
昇降装置4の横には、矩形箱状のパワーユニット収納庫10が設けられており、その内部に油圧パワーユニット100(
図1を参照)が設置されている。この油圧パワーユニット100は、伸縮マスト6内に配置された伸縮機構の油圧アクチュエータへの油圧供給源として用いられる。以下、
図3~
図9を追加参照して、油圧パワーユニット100について詳述する。
【0023】
油圧パワーユニット100は、
図4に示すように、作動油タンク110と、作動油タンク110の上部に取り付けられたマニホールドブロック120と、マニホールドブロック120の上部に取り付けられた電動モータ140と、マニホールドブロック120の下部に取り付けられて作動油タンク110内に収容された油圧ポンプ150とを備えている。
【0024】
作動油タンク110は、
図5に示すように、有底円筒状のタンク基部111と、タンク基部111の上端部に設けられたフランジ部112とを有し、タンク基部111内に作動油を収蔵可能に構成されている。フランジ部112は、その四隅にネジ挿通孔113を有し、タンク基部111の上端部において上方に開口する開口部114を囲むように配置されている。また、作動油タンク110には、タンク基部111内に収蔵された作動油の量に応じて変位する油面位置(油面レベル)を作業者が確認するための油面計101が設置されている。
【0025】
マニホールドブロック120は、
図6に示すように、直方体状に形成されたブロック基部121と、ブロック基部121の下部に一体に形成された円環状の嵌合部122とを有している。ブロック基部121の内部は、水平方向に延在する隔壁部123によって、上下に区画されている。隔壁部123の上部には、上方に開放した円形状の上空間部124や、同じく上方に開放した円弧状の複数の上空間部125が形成されており、隔壁部123の下部には、下方に開放した円形状の下空間部126が形成されている。また、隔壁部123の下部には、下空間部126内に収まる大きさのブロック状のポンプ取付部127が隔壁部123と一体に形成されている。
【0026】
隔壁部123及びポンプ取付部127には、上空間部124と下空間部126とを連通する上下方向に延びた円筒状の駆動軸挿通孔128が形成されている。この駆動軸挿通孔128は、電動モータ140のモータ駆動軸(図示略)及び/又は油圧ポンプ150のポンプ駆動軸(図示略)や、それら両駆動軸を連結する軸継手(図示略)が挿通可能に構成されている。
【0027】
図3に示すように、マニホールドブロック120(ブロック基部121)の一側面部(便宜上、左側面部129Lと称する)には、油圧ポンプ150から吐出された作動油が出てくる(矢印Pを参照)作動油送出口131と、油圧アクチュエータから作動油タンク110へと戻る作動油が入っていく(矢印Tを参照)作動油戻り口132とが開口している。
【0028】
作動油送出口131は、
図7に示すように、隔壁部123の内部を水平方向に延びた水平吐出油路133に連通されており、この水平吐出油路133は、ポンプ取付部127の内部を上下方向に延びた垂直吐出油路(図示略)に連通されている。また、水平吐出油路133の途中に、カートリッジ式のチェックバルブ102が設置される。
【0029】
一方、作動油戻り口132は、
図8に示すように、隔壁部123の内部を水平方向に延びた水平戻り油路135に連通されており、この水平戻り油路135は、ポンプ取付部1
27の内部を上下方向に延びた垂直戻り油路136に連通されている。また、水平戻り油路135と垂直戻り油路136との連通部には、カートリッジ式のリリーフバルブ103(
図3も参照)が設置される。なお、垂直戻り油路136には、
図4に示すように、作動油タンク110内に作動油を戻すためのリターン管路104が接続される。
【0030】
このように構成されたマニホールドブロック120は、嵌合部122の外周に図示せぬOリングが装着された状態で、当該嵌合部122が作動油タンク110の開口部114内に嵌入されることで開口部114を塞ぐとともに、作動油タンク110のフランジ部112のネジ挿通孔113に挿通される取付けネジ(図示略)を介して、作動油タンク110の上部に取り付けられる。
【0031】
電動モータ140は、
図3に示すように、外形円柱状に形成されたモータケーシング部141と、モータケーシング部141から外方に突出する2本の電極142とを有している。また、電動モータ140は、モータケーシング部141内から下方へ突出するモータ駆動軸(図示略)と、モータケーシング部141内に設けられてモータ駆動軸を回転駆動させる駆動機構(図示略)とを有している。この電動モータ140は、マニホールドブロック120の上空間部124,125(
図6を参照)を覆うようにマニホールドブロック120の上部に取り付けられ、電極142に接続される電源ケーブル(図示略)を介して供給される電力により、モータ駆動軸を回転駆動させるように構成されている。
【0032】
油圧ポンプ150は、
図4に示すように、外形円柱状に形成されたポンプケーシング部151を有している。このポンプケーシング部151の下部には、作動油を吸い込むポンプ吸込口(図示略)が設けられており、ポンプケーシング部151の上部には、作動油を吐出するポンプ吐出口(図示略)が設けられている。また、油圧ポンプ150は、ポンプケーシング部151内から上方へ突出するポンプ駆動軸(図示略)と、ポンプケーシング部151内に設けられてポンプ駆動軸により駆動されるポンプ駆動機構(図示略)とを有している。この油圧ポンプ150は、マニホールドブロック120のポンプ取付部127の下部に図示せぬ取付ボルトを介して取り付けられ、マニホールドブロック120が作動油タンク110に取り付けられることにより、作動油タンク110内に収容される。
【0033】
油圧ポンプ150がマニホールドブロック120(ポンプ取付部127)に取付けられる際には、ポンプ駆動軸が軸継手を介して電動モータ140のモータ駆動軸と連結され、ポンプ吐出口は、マニホールドブロック120の垂直吐出油路と接続される。また、ポンプ吸込口には、
図4に示すように、先端部(下端部)にフィルタ105を備えた吸込管路106が取り付けられる。油圧ポンプ150は、電動モータ140により駆動されると、吸込管路106を通してポンプ吸込口から作動油を吸い込み、ポンプ吐出口から作動油を吐出する。吐出された作動油は、マニホールドブロック120内の垂直吐出油路及び水平吐出油路133を通って作動油送出口131から送出される。なお、油圧ポンプ150は、歯車ポンプやベーンポンプなど、適宜な形式のポンプを用いることが可能である。
【0034】
図3に示すように、マニホールドブロック120(ブロック基部121)の一側面部(便宜上、前側面部129Fと称する)には、作動油タンク110内に作動油を補給するための給油部160が設けられている。この給油部160は、前側面部129Fから斜め上方に延出した円筒状の給油筒部161を備え、この給油筒部161の先端部に斜め上方を向いて開口する円形の給油口162を有している。また、給油部160は、
図6に示すように、給油筒部161の内側及びマニホールドブロック120内を、給油口162から斜め下方に延びるように形成された給油路163を備えている。このように構成された給油部160は、給油口162から注がれた作動油を給油路163が作動油タンク110内に導くようになっている。なお、給油筒部161、給油口162及び給油路163は、削り出しやダイキャスト等により、マニホールドブロック120と一体に形成されている。
【0035】
図3に示すように給油口162には、給油口キャップ170が着脱可能に取り付けられるようになっている。この給油口キャップ170は、円筒状のキャップ本体部171と、外周に雄ネジ173(
図9を参照)が形成された円筒状の螺合部172とを有し、螺合部172の雄ネジ173が、給油筒部161の内周に形成された雌ネジ(図示略)と螺合することにより、給油口162を塞ぐように給油部160に取り付けられるように構成されている。また、給油口キャップ170は、エアブリーザとしても機能するものであり、
図9に示すように、キャップ本体部171に形成された通気孔174を有するとともに、キャップ本体部171内に空気濾過用のエアフィルタ175を保持している。
【0036】
以上のように構成された油圧パワーユニット100においては、油圧アクチュエータを滞りなく作動させるために必要な量の作動油が、作動油タンク110内に収蔵されているか否かが油面計101を用いてチェックされる。この作動油収蔵量のチェックは、油圧アクチュエータが停止し、油圧アクチュエータからの作動油が作動油タンク110内に戻ってきている状態において、作動油タンク110内の油面位置を油面計101により確認して行われる。そして、作動油タンク110内の油面位置が、必要油量収蔵時油面位置(作動油タンク110内に必要量の作動油が収蔵された状態における油面位置)よりも規定以上下がっている場合は、給油部160(給油口162)から作動油が補給される。
【0037】
この給油時の作用効果について、
図4を参照して説明する。必要油量収蔵時油面位置は、作動油タンク110の形状や容量によって決まるが、油圧パワーユニット100では、作動油タンク110を小型化して容量を抑えており、
図4に示すように、必要油量収蔵時油面位置H1が、作動油タンク110(タンク基部111)の上端部に近い位置に設定されている。油面計101は、必要油量収蔵時油面位置H1に応じてその取り付けられる高さ位置が決まるが、ここでは、必要油量収蔵時油面位置H1と合致する高さ位置に油面計101が取り付けられるとする。油圧パワーユニット100では、給油部160がマニホールドブロック120に設けられているので、給油口162(
図3を参照)の高さ位置H2(ここでは、給油筒部161の先端下部の高さ位置とする)と、必要油量収蔵時油面位置H1(油面計101高さ位置)との間に、高低差L1の距離を確保することができる。また、給油部160がマニホールドブロック120に設けられていることにより、作動油タンク110内の、必要油量収蔵時油面位置H1よりも上側のスペース全体を、作動油の収蔵スペースとして利用することが可能となっている。
【0038】
給油は、油面計101により作動油タンク110内の油面位置の変位を確認しながら行われ、変位する油面位置が必要油量収蔵時油面位置H1に達した時点で停止されるが、給油を停止するタイミングが遅れ、必要油量収蔵時油面位置H1を超える量の給油が行われる場合がある。しかし、油圧パワーユニット100では、給油口162の高さ位置H2と必要油量収蔵時油面位置H1との間に高低差L1の距離が確保されるとともに、作動油タンク110内の、必要油量収蔵時油面位置H1よりも上側のスペース全体を作動油の収蔵スペースとして利用できるようになっているので、給油停止のタイミングが多少遅れて、必要油量収蔵時油面位置H1を超える量の給油が行われた場合でも、給油された作動油が給油口162から溢れ出る可能性は低くなっている。また、給油後においては、高所作業車1が傾いた時や走行開始時及び停止時に作動油タンク110内の油面が変化しても、作動油が給油口162の位置まで達する可能性は低くなっており、作動油が給油口162から漏れ出る可能性も低い。したがって、給油停止のタイミングを過度に気に掛ける必要がなく、給油作業をスムーズに行うことが可能である。
【0039】
このような油圧パワーユニット100における給油時の作用効果をより明確とするために、
図11に示す比較例の油圧パワーユニット100Kを参照する。
図11に示す比較例の油圧パワーユニット100Kは、給油部160Kの設置位置が上記油圧パワーユニット
100とは異なり、これによりマニホールドブロック120K(ブロック基部121K)及び作動油タンク110K(タンク基部111K)の構成が上記油圧パワーユニット100とは異なっている。他の構成及び機能は油圧パワーユニット100と同じである。
図11では、油圧パワーユニット100と同様の構成要素については、
図3~
図9で用いたのと同じ符号を用いている。
【0040】
油圧パワーユニット100Kでは、給油部160Kが作動油タンク110Kの側面部に設けられている。この給油部160Kは、「く」の字状に屈曲した筒状の給油筒部161Kを有し、この給油筒部161Kの先端部に円形の給油口(図示略)を有している。また、給油筒部161Kの内部に給油路(図示略)が形成されている。給油筒部161Kは、作動油タンク110K(タンク基部111K)とは別体(別部材)で形成され、その根元部分が作動油タンク110Kの側面部に取り付けられている。また、給油筒部161Kは、根元部分よりも先端部の方が太く形成されており、その先端部に設けられた給油口を塞ぐように、エアブリーザ機能付きの給油口キャップ170Kが取り付けられるようになっている。
【0041】
この油圧パワーユニット100Kでは、給油部160Kが作動油タンク110Kの側面部に設けられているので、給油口の高さ位置H3(給油筒部161Kの先端下部の高さ位置)と、必要油量収蔵時油面位置H1との間に、高低差L2(<L1)の距離しか確保することができない。また、給油部160Kが作動油タンク110の側面部に設けられていることにより、作動油タンク110K内の、給油部160K(給油筒部161K)が取り付けられた位置よりも上方に位置するスペースは、作動油の収蔵スペースとして利用することができない。そのため、必要油量収蔵時油面位置H1を超える量の給油が行われた場合、給油された作動油が給油口から溢れ出る事態が生じる可能性は高くなる。また、給油後においては、高所作業車1が傾いた時や走行開始時及び停止時に作動油タンク110K内の油面が変化すると、作動油が給油口の位置まで達してしまい、作動油が給油口から漏れ出る可能性も高まる。したがって、必要油量収蔵時油面位置H1を超えないように、給油作業を慎重に行う必要性があり、油圧パワーユニット100に比較して給油の作業性が低くなっている。
【0042】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態の態様に限定されるものではなく、適宜変更可能である。例えば、上述の実施形態では、給油筒部161、給油口162及び給油路163が、マニホールドブロック120(ブロック基部121)と一体に形成されているが、これらをマニホールドブロック120と別体に形成してもよい。例えば、給油筒部をマニホールドブロック120とは別部材で形成し、その別部材である給油筒部に給油口及び給油路を形成してもよい。そのような例として、
図11に示した給油筒部161Kと同様な構成の別部材の給油筒部(「口金状給油筒部」とも称する)を、マニホールドブロック120の側面部に取り付けるようにしてもよい。その場合、マニホールドブロック120には、口金状給油筒部を取り付けるための取付孔と、当該取付孔と連通する給油路を形成すればよい。
【0043】
また、上述の実施形態では、給油口162が斜め上方を向いて開口するように形成されているが、給油口が水平方向を向いて開口するように形成してもよい。例えば、マニホールドブロック120(ブロック基部121)の前側面部129Fから水平方向に延出するように給油筒部を設け、その先端部に水平方向を向いて開口する給油口を設けてもよい。或いは、給油筒部は設けずに、マニホールドブロック120の前側面部129Fに給油口が直接開口するようにしてもよい。
【0044】
また、上述の実施形態では、マニホールドブロック120(ブロック基部121)の前側面部129Fに給油部160が設けられているが、給油部をマニホールドブロックの上
面部に設けてもよい。このような態様の油圧パワーユニットを、変形例の油圧パワーユニット100Aとして、
図10に示している。
図10に示す変形例の油圧パワーユニット100Aは、マニホールドブロック120A(ブロック基部121A)及び給油部160Aが上記油圧パワーユニット100とは異なり、他の構成は油圧パワーユニット100と同じである。
図10では、油圧パワーユニット100と同じ構成要素については、
図3~
図9で用いたのと同じ符号を用いている。
【0045】
図10に示すように、変形例の油圧パワーユニット100Aでは、マニホールドブロック120A(ブロック基部121A)の上面部129Uに給油部160Aが設けられている。この給油部160Aは、上面部129Uから斜め上方に延出した円筒状の給油筒部161A(マニホールドブロック120Aと一体に形成されている)を備え、この給油筒部161Aの先端部に斜め上方を向いて開口する円形の給油口162を有している。また、給油部160Aは、給油筒部161Aの内側及びマニホールドブロック120A内を、給油口162から斜め下方に延びるように形成された給油路(図示略)を備えている。この変形例では、給油口162が斜め上方を向いて開口するように形成されているが、給油口が上方を向いて開口するように形成してもよい。例えば、マニホールドブロック120A(ブロック基部121A)の上面部129Uから上方に延出するように給油筒部を設け、その先端部に上方を向いて開口する給油口を設けてもよい。或いは、給油筒部は設けずに、マニホールドブロック120Aの上面部129Uに給油口が直接開口するようにしてもよい。
【0046】
なお、この変形例では、給油筒部161A(給油口162及び給油路を含む)がマニホールドブロック120A(ブロック基部121A)と一体に形成されているが、これらをマニホールドブロック120Aと別体に形成してもよい。例えば、給油筒部をマニホールドブロック120Aとは別部材で形成し、その別部材である給油筒部に給油口及び給油路を形成してもよい。そのような例として、
図11に示した給油筒部161Kと同様な構成の口金状給油筒部(但し、全体の形状や給油口の向きは適宜設定する)を、マニホールドブロック120Aの上面部129Uに取り付けるようにしてもよい。その場合、マニホールドブロック120Aには、口金状給油筒部を取り付けるための取付孔と、当該取付孔と連通する給油路を形成すればよい。
【0047】
また、上述の実施形態では、本発明に係る油圧パワーユニットを用いる高所作業車として、伸縮マスト式の高所作業車を例示して説明したが、高所作業車としてはこれに限定されるものではなく、例えば、シザースリンク式の自走式高所作業車やブーム式の自走式高所作業車であってもよい。また、本発明に係る油圧パワーユニットは、高所作業車に適用が限定されるものではなく、油圧作業装置を備えた任意の作業車において、油圧作業装置への油圧供給源として用いることが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 高所作業車
2 車体
4 伸縮装置
5 作業台
6 伸縮マスト
8 操作装置
9 コントロールボックス
10 パワーユニット収容庫
100 油圧パワーユニット(実施形態)
100A 油圧パワーユニット(変形例)
100K 油圧パワーユニット(比較例)
101 油面計
102 チェックバルブ
103 リリーフバルブ
104 リターン管路
106 吸込管路
110,110K 作動油タンク
114 開口部
120,120A マニホールドブロック
131 作動油送出口
132 作動油戻り口
140 電動モータ
150 油圧ポンプ
160,160A,160K 給油部
161,161A,161K 給油筒部
162 給油口
163 給油路
170,170K 給油口キャップ