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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169016
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】画像認識用マーク
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20221101BHJP
【FI】
G06T7/00 300F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074764
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 将也
(72)【発明者】
【氏名】榎本 孝史
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA03
5L096AA06
5L096BA04
5L096CA02
5L096DA02
5L096FA14
5L096FA66
5L096FA67
5L096FA69
5L096HA08
5L096JA11
(57)【要約】
【課題】画像認識用マークにおいてマーカ全体のサイズが大きくなることを抑えつつ、高精度に認識・測定を実施する。
【解決手段】画像処理可能な画像認識用マーク10であり、この画像認識用マーク10は、カメラが認識可能な境界部1cを各々に含む複数の第1認識部1aを備え、かつ、複数の第1認識部1aが第1ピッチで配置された第1マーク部1と、境界部2cを各々に含む複数の第2認識部2aを備え、かつ、複数の第2認識部2aが上記第1ピッチとは異なる第2ピッチで配置された第2マーク部2と、を有する。そして、上記カメラと画像認識用マーク10との距離に応じて、第1マーク部1と第2マーク部2のうちの少なくともいずれか一方もしくは両方が画像処理される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理可能な画像認識用マークであって、
撮影機によって認識可能な特徴部を各々に含む複数の第1認識部を備え、かつ、前記複数の第1認識部が第1ピッチで配置された第1マーク部と、
前記特徴部を各々に含む複数の第2認識部を備え、かつ、前記複数の第2認識部が前記第1ピッチとは異なる第2ピッチで配置された第2マーク部と、
を有し、
前記撮影機と前記画像認識用マークとの距離に応じて、前記第1マーク部と前記第2マーク部のうちの少なくともいずれか一方もしくは両方が画像処理されることを特徴とする画像認識用マーク。
【請求項2】
前記特徴部は、前記第1マーク部および前記第2マーク部に形成されたマーク模様の一部からなり、
前記マーク模様の大きさは、前記第1マーク部と前記第2マーク部とで互いに異なることを特徴とする請求項1に記載の画像認識用マーク。
【請求項3】
前記第1マーク部および前記第2マーク部は、同一の用紙に印刷されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像認識用マーク。
【請求項4】
前記用紙における前記第1マーク部および前記第2マーク部のそれぞれの外側の領域は、灰色であることを特徴とする請求項3に記載の画像認識用マーク。
【請求項5】
前記マーク模様は、正方形であり、
前記第1マーク部および前記第2マーク部において、黒と白の二色の前記マーク模様が交互に配置されていることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の画像認識用マーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像認識用マークに関する。
【背景技術】
【0002】
カメラによってマーカを撮影し、この撮影した画像を画像処理することでカメラからマーカまでの距離や姿勢を測定する技術が知られている。このような技術では、認識されるマーカの外観形状や模様として様々なものが存在するが、多くはマーカ固有の線や点などの特徴部をカメラで認識し、予め入力として与えられたマーカの実際の寸法と、カメラによって撮影された画像上におけるマーカの(画像座標上の)寸法とを比較することにより、カメラからマーカまでの距離や姿勢を測定している。
【0003】
このようにカメラによって撮影された画像を演算処理してマーカを検出する技術が、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-106238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カメラによって撮影されるマーカの大きさ(マーカの特徴部の認識しやすさ)は、認識精度に直結する重要な要素であるが、設置する場所によりマーカの大きさは自然と限られ、大きなマーカを設置するために工場等のレイアウトを変更するのは現実的ではない。
【0006】
また、大きなマーカを使用すると、カメラもしくはカメラを搭載した移動体がマーカに近づいたときにマーカがカメラの画角に収まらずに見切れてしまう。また、見切れることでマーカを認識できなくなる危険性が生じ、さらに認識可能な特徴部の数が減ることから測定結果において誤差が大きくなる虞がある。
【0007】
一方で、マークを小さくすると、カメラの解像度によっては、1画素中に複数の特徴部が入ってしまうなどで画像上の座標値が正しく測定できなくなるという虞がある。この場合、カメラの解像度を上げることが考えられるが、カメラの解像度を上げると取り込む画像サイズが大きくなるため、画像処理に時間がかかり、リアルタイムで画像の認識から測定を行うことが困難になる。
【0008】
なお、画像処理を行う電子機器の性能については、量産することを踏まえて制約があることが考えられ、むやみに電子機器の性能やカメラの性能を上げれば良いわけではない。
【0009】
以上のことから、マーカ全体のサイズが大きくなることを抑えつつ、高精度に認識・測定を実施することが可能になるマーカが求められている。
【0010】
上記特許文献1に記載されたマーカを検出する技術においては、カメラからマーカまでの距離が近距離の場合と遠距離の場合とで、演算処理部で画像処理方法を切り替える必要があり、画像処理に時間がかかることが懸念される。
【0011】
本発明の目的は、マーカ全体のサイズが大きくなることを抑えつつ、高精度に認識・測定を実施することが可能な画像認識用マークを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、画像処理可能な画像認識用マークであって、撮影機によって認識可能な特徴部を各々に含む複数の第1認識部を備え、かつ、前記複数の第1認識部が第1ピッチで配置された第1マーク部と、前記特徴部を各々に含む複数の第2認識部を備え、かつ、前記複数の第2認識部が前記第1ピッチとは異なる第2ピッチで配置された第2マーク部と、を有し、前記撮影機と前記画像認識用マークとの距離に応じて、前記第1マーク部と前記第2マーク部のうちの少なくともいずれか一方もしくは両方が画像処理される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、画像認識用マークにおいてマーカ全体のサイズが大きくなることを抑えつつ、高精度に認識・測定を実施することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態の画像認識用マークの平面図である。
図2図1に示す画像認識用マークの工場内での使用例を示す斜視図である。
図3図2に示す使用例における自動搬送車の走行状態を示す平面図である。
図4図2に示す使用例における自動搬送車の走行状態を示す平面図である。
図5図2に示す使用例における自動搬送車の停止状態を示す平面図である。
図6図1に示す画像認識用マークを用いた画像認識におけるカメラからマーク部の幅方向の距離の測定のシミュレーション結果を示すグラフである。
図7図1に示す画像認識用マークを用いた画像認識におけるカメラからマーク部の長手方向の距離の測定のシミュレーション結果を示すグラフである。
図8図1に示す画像認識用マークを用いて、マーク部の周辺色を変化させた認識を実施した際のシミュレーションによる認識精度の判定を○×で示す図である。
図9図1に示す画像認識用マークを用いて、マーク部がぼやけた状態でマーク部の周辺色を変化させた認識を実施した際のシミュレーションによる認識精度の判定を○×で示す図である。
図10】本発明の第1変形例の画像認識用マークの平面図である。
図11】本発明の第2変形例の画像認識用マークの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
本実施の形態の画像認識用マークについて説明する。図1に示す本実施の形態の画像認識用マーク10は、撮影機によって撮影することが可能なマークである。例えば、工場内において、自動搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)を所定位置まで移動させる際に、画像認識用マーク10を認識して画像処理し、上記自動搬送車から画像認識用マーク10までの距離や姿勢を測定し、上記自動搬送車の走行をガイドするためのマーク(目印)であり、壁や床等に取り付けられるものである。
【0017】
図1に示すように、画像認識用マーク10は、図2に示すカメラ(撮影機)3が認識可能な特徴部を各々に含む複数の第1認識部1aを備え、かつ、複数の第1認識部1aが第1ピッチで配置された第1マーク部1と、前記特徴部を各々に含む複数の第2認識部2aを備え、かつ、複数の第2認識部2aが前記第1ピッチとは異なる第2ピッチで配置された第2マーク部2と、を有している。
【0018】
なお、画像認識用マーク10は、第1マーク部1および第2マーク部2のそれぞれの外側の領域として外周部4aを備えている。
【0019】
そして、カメラ3と画像認識用マーク10との実際の距離に応じて、第1マーク部1と第2マーク部2のうちの少なくともいずれか一方もしくは両方が画像処理される。
【0020】
図1に示す本実施の形態の画像認識用マーク10においては、マーク模様1b,2bは、正方形である。具体的には、第1マーク部1には、それぞれ正方形からなる黒色と白色の二色の複数のマーク模様1bが交互に配置されている。別の言い方をすれば、正方形からなる黒色と白色の二色の複数のマーク模様1bが格子状に配置されている。
【0021】
一方、第2マーク部2には、第1マーク部1と同様に、それぞれ正方形からなる黒色と白色の二色の複数のマーク模様2bが交互に配置されている。別の言い方をすれば、第1マーク部1と同様に、正方形からなる黒色と白色の二色の複数のマーク模様2bが格子状に配置されている(これらのマーク模様1b,2bは、市松模様とも呼ばれる)。
【0022】
なお、第1マーク部1および第2マーク部2のそれぞれにおいて、カメラ3が認識可能な特徴部は、黒色と白色のマーク模様1b,2bの境目である境界部1c,2cである。ここで、上記特徴部は、第1マーク部1および第2マーク部2に形成されたマーク模様1b,2bの一部からなり、マーク模様1b,2bの大きさは、第1マーク部1と第2マーク部2とで互いに異なっている。具体的には、第1マーク部1におけるマーク模様1bの正方形の大きさは、第2マーク部2におけるマーク模様2bの正方形の大きさより大きい。
【0023】
また、第1マーク部1における複数のマーク模様1bの配置ピッチであるP1は、第2マーク部2における複数のマーク模様2bの配置ピッチであるP2より大きい(P1>P2)。
【0024】
なお、第1マーク部1においては、黒色のマーク模様1bが基準線Kを基にX方向(画像認識用マーク10における幅方向)に複数個設けられており、さらにY方向(画像認識用マーク10における長手方向)にも複数個設けられている。そして、第1マーク部1と第2マーク部2とでマーク模様1b,2bの数が異なっている。図1に示す画像認識用マーク10では、第1マーク部1において黒色の大きな正方形のマーク模様1bが18個設けられている。一方、第2マーク部2においては、黒色の小さな正方形のマーク模様2bが20個設けられている。
【0025】
以上により、本実施の形態の画像認識用マーク10では、第1マーク部1と第2マーク部2とで大小のマーク模様1b,2bを複数個設けて、これら複数の大小のマーク模様1b,2bにより第1マーク部1と第2マーク部2とで条件を変えた特徴部の数を増やし、これらの複数のマーク模様1b,2bをカメラ3で同時に認識する。これにより、マーカ全体の大きさを小さくしつつ、画像認識用マーク10の認識精度を高めることができる。
【0026】
なお、画像認識用マーク10では、カメラ3と画像認識用マーク10との距離に応じて、第1マーク部1と第2マーク部2のうちの少なくともいずれか一方もしくは両方がカメラ3によって認識可能となる。例えば、カメラ3と画像認識用マーク10との距離が遠距離の場合には、第2マーク部2の正方形のマーク模様2bは、第1マーク部1の正方形のマーク模様1bに比べて大きさが小さいため、カメラ3で認識しづらくなることが考えられる。そこで、遠距離の場合には、第1マーク部1の正方形のマーク模様1bの一部からなる第1認識部1aのみをカメラ3によって認識することを可能にしている。
【0027】
また、カメラ3と画像認識用マーク10との距離が近距離の場合には、第1マーク部1の正方形のマーク模様1bは、第2マーク部2の正方形のマーク模様2bに比べて大きさが大きいため、カメラ3での認識において第1マーク部1が画角からはみ出て認識精度が低くなる可能性がある。そこで、近距離の場合には、第2マーク部2の正方形のマーク模様2bの一部からなる第2認識部2aのみをカメラ3によって認識することを可能にしている。
【0028】
さらに、近距離と遠距離の間の距離である中間距離の場合には、第1マーク部1と第2マーク部2の両方をカメラ3によって撮影し、第1マーク部1の第1認識部1aおよび第2マーク部2の第2認識部2aの両方をカメラ3によって同時に認識することが可能である。
【0029】
つまり、本実施の形態の画像認識用マーク10では、カメラ3と画像認識用マーク10との距離に応じて、第1マーク部1と第2マーク部2のうちの少なくともいずれか一方もしくは両方をカメラ3によって認識することが可能である。そして、カメラ3によって画像認識用マーク10を撮影し、この撮影画像により画像処理を行うことで、カメラ3から画像認識用マーク10までの距離、もしくは、カメラ3または画像認識用マーク10の姿勢を測定することが可能になる。
【0030】
また、画像認識用マーク10では、例えば、工場等で設置される場合、第1マーク部1と第2マーク部2とが同一平面上に配置されることが好ましい。これにより、画像認識用マーク10のカメラ3による認識精度を高めることができる。
【0031】
また、第1マーク部1および第2マーク部2は、同一の用紙4に印刷されていることが好ましい。つまり、画像認識用マーク10では、第1マーク部1および第2マーク部2は、同一の用紙4に印刷されている。その際、第1マーク部1および第2マーク部2とは、Y方向に対して距離Qの間隔を空けて設けられているとともに、互いのマーク模様1b,2bのそれぞれの一端が基準線Kを基準としてX方向にそれぞれ複数個設けられている。
【0032】
これにより、画像認識用マーク10の設置の際に、第1マーク部1と第2マーク部2の間で設置ずれが発生することを防止できる。さらに、第1マーク部1および第2マーク部2のX方向の基準がずれることも防止できる。
【0033】
また、画像認識用マーク10の用紙4において、第1マーク部1および第2マーク部2のそれぞれの外側の領域である外周部4aは、灰色であることが好ましい。外周部4aの色を灰色にすることで、周囲の明るさ等の環境の変化による認識率、測定精度への影響を低減することができる。
【0034】
次に、本実施の形態の画像認識用マーク10の使用例を説明する。図2図5に示すように、ここでは、工場内において、自動搬送車5を所定位置に移動させる際に、設備6の壁に貼り付けられた画像認識用マーク10を、自動搬送車5に設けられたカメラ3によって撮影する。そして、カメラ3によって撮影された画像を図示しない画像処理装置等で画像処理することで、自動搬送車5から画像認識用マーク10までの距離や姿勢を測定し、これによって自動搬送車5の走行を所定位置まで案内する場合を説明する。
【0035】
図2に示すように、進入経路9に沿って設備6の横の通路7を走行する自動搬送車5は、カメラ3により画像認識用マーク10を撮影する。そして、上記画像処理装置等を用いて、認識された画像認識用マーク10の画像処理を開始する。これにより、自動搬送車5から画像認識用マーク10までの距離や姿勢が測定される。具体的には、図3に示すように、カメラ3の撮影範囲3aに画像認識用マーク10を捉えた自動搬送車5は、画像処理が行われて自動搬送車5から画像認識用マーク10までの距離や姿勢が測定される。これにより、自動搬送車5は案内され、図4に示すように徐々に停止位置8に近づいていく。そして、画像認識用マーク10を撮影しつつ画像処理を行って、自動搬送車5から画像認識用マーク10までの距離や姿勢を測定しながら、図5に示すように自動搬送車5を停止位置8に停止させる。
【0036】
以上により、工場内の自動搬送車5の移動に際し、カメラ3によって画像認識用マーク10を認識して画像処理を行い、自動搬送車5から画像認識用マーク10までの距離や姿勢を測定することで、自動搬送車5を所定の位置まで移動させることができる。
【0037】
次に、図6図7に示すグラフについて説明する。図6は、画像認識用マーク10を用いた画像認識におけるカメラ3からマーク部の幅方向(X方向)の距離の測定をシミュレーションした結果を示すものである。また、図7は、画像認識用マーク10を用いた画像認識におけるカメラ3からマーク部の長手方向(Y方向)の距離の測定をシミュレーションした結果を示すものである。また、図6図7において、数値Lは、第1マーク部1を単独で認識した際のシミュレーション結果であり、数値Mは、第2マーク部2を単独で認識した際のシミュレーション結果であり、数値Nは、第1マーク部1と第2マーク部2の両方を同時認識した際のシミュレーション結果である。
【0038】
なお、図6および図7は、カメラ3と画像認識用マーク10の位置を固定して30フレーム(30回)撮影した結果を示しており、縦軸が距離である。図6および図7では、数値L、数値M、数値Nのそれぞれの数値が、常に一定の値になることが理想的である。シミュレーションによれば、第1マーク部1および第2マーク部2をそれぞれ単独で認識した結果(数値L、数値M)より、第1マーク部1と第2マーク部2の両方を同時認識した方(数値N)が数値のばらつきが少ないという結果が得られた。
【0039】
具体的には、幅方向の距離測定では、第1マーク部1および第2マーク部2それぞれを単独認識した場合にばらつきが1mmであったのに対して、第1マーク部1と第2マーク部2の両方を同時認識した場合、ばらつきを0.25mm程度にすることができた。さらに、長手方向の距離測定では、第1マーク部1および第2マーク部2それぞれを単独認識した場合にばらつきが4mmであったのに対して、第1マーク部1と第2マーク部2の両方を同時認識した場合、ばらつきを1mm程度にすることができ、測定精度を向上させることができた。
【0040】
また、画像認識用マーク10を撮影しながらカメラ3が近づいていくような状況等で、マーカ全体が画角に収まらなくなる、つまり、第1マーク部1および第2マーク部2のうちの片方しか認識できない場合においても測定を続けることが可能であることが分かった。具体的には、片方のマーク部が画角に収まらないほどカメラ3が近い状況であれば、第1マーク部1および第2マーク部2のうちの片方のみの認識であっても、図6および図7に示すように、測定結果のばらつきを小さくして精度良く測定が可能である。例えば、マーカ全体の大きさが同じで単に認識部の数を増やした1つの大きなマーカを使用する場合に比べ、本実施の形態の画像認識用マーク10を用いることで、近距離や遠距離の測定距離に応じて柔軟な対応を可能にすることができる。
【0041】
次に、図8図9について説明する。図8は、画像認識用マーク10を用いてマーク部の周辺色を変化させた認識を実施した際のシミュレーションによる認識精度の判定を○×で示す図であり、図9は、画像認識用マーク10を用いてマーク部がぼやけた状態でマーク部の周辺色を変化させた認識を実施した際のシミュレーションによる認識精度の判定を○×で示す図である。なお、図8は、マーク部11の外周部4aの色を白(A部)、黒(B部)、灰色(B部、輝度128)とした時に認識可能かをシミュレーションしており、また、図9は、マーク部11の外周部4aの色を図8と同様に白(D部)、黒(E部)、灰色(F部、輝度128)とし、かつ、マーク部11の認識状況が悪くぼやけてしまった時に認識可能かをシミュレーションしている。どちらの結果も外周部4aの色を灰色にした場合に認識可能となっている。灰色の輝度について(白に近い灰、黒に近い灰)は、同様の実験を繰り返した結果、黒と白の中間である輝度128が良い。また、カメラ3の取り込み範囲をマーク部11の周囲のみに限定する(画角全体を取り込まない)ことで、シミュレーションと同様の効果が得られると推察される。
【0042】
本実施の形態の画像認識用マーク10によれば、第1マーク部1と第2マーク部2とで大小のマーク模様1b,2bを複数個設けて、これら複数の大小のマーク模様1b,2bにより第1マーク部1と第2マーク部2とで条件を変えた特徴部の数を増やし、これらの複数のマーク模様1b,2bをカメラ3で同時に認識する。これにより、画像認識用マーク10におけるマーカ全体のサイズが大きくなることを抑えつつ、高精度に認識・測定を実施することが可能になる。
【0043】
また、本実施の形態の画像認識用マーク10では、カメラ3と画像認識用マーク10との距離に応じて、第1マーク部1と第2マーク部2のうちの少なくともいずれか一方もしくは両方をカメラ3によって認識することが可能になる。そして、カメラ3によって画像認識用マーク10を撮影し、この撮影画像により画像処理を行うことで、カメラ3から画像認識用マーク10までの距離、もしくは、カメラ3または画像認識用マーク10の姿勢を測定することが可能になる。
【0044】
また、画像認識用マーク10では、例えば、工場等で設置される場合、第1マーク部1と第2マーク部2とが同一平面上に配置されることが好ましい。これにより、画像認識用マーク10のカメラ3による認識精度を高めることができる。
【0045】
また、第1マーク部1と第2マーク部2とで、マーク模様1b,2bの大きさが異なるようにする。例えば、マーク模様1bの大きさをマーク模様2bの大きさより大きくすることで、カメラ3と画像認識用マーク10との距離が遠距離であっても画像認識用マーク10を認識しやすくすることができる。
【0046】
また、画像認識用マーク10における横方向(X方向)のマーク模様2bの数を増やすことで、横方向の特徴部を増やすことができ、測定精度を向上させることができる。
【0047】
また、1枚の用紙4に第1マーク部1と第2マーク部2とを印刷で配置することにより、画像認識用マーク10の設置時にマーク部間の設置ズレが発生しないようにすることができる。
【0048】
また、画像認識用マーク10において、第1マーク部1と第2マーク部2のそれぞれの外周部4aの色を灰色とすることで、周囲の明るさ等の環境の変化による認識率、測定精度への影響を少なくすることができる。
【0049】
次に、本実施の形態の変形例について説明する。図10に示す第1変形例の画像認識用マーク10は、マーク模様1b,2bをそれぞれ黒色の円形のドット柄としたものである。なお、第1マーク部1および第2マーク部2のそれぞれにおいて、カメラ3が認識可能な特徴部として、黒色のマーク模様1b,2bとその周辺の白地部分との境目部分を境界部1c,2cとすることを採用している。なお、第1マーク部1におけるマーク模様1bの円形のドットの大きさは、第2マーク部2におけるマーク模様2bの円形のドットの大きさより大きい。さらに、図1に示す画像認識用マーク10と同様に、第1マーク部1における複数のマーク模様1bの配置ピッチであるP1は、第2マーク部2における複数のマーク模様2bの配置ピッチであるP2より大きい(P1>P2)。なお、第1マーク部1および第2マーク部2のそれぞれにおいて、左端部列の円形のマーク模様1b,2bの中心を基準線Kとし、この基準線Kを基にX方向(幅方向)に複数個の円形のマーク模様1b,2bが設けられている。
【0050】
以上により、第1変形例の画像認識用マーク10においても、図1に示す画像認識用マーク10と同様に、カメラ3と画像認識用マーク10との距離に応じて、第1マーク部1と第2マーク部2のうちの少なくともいずれか一方もしくは両方をカメラ3によって認識することが可能になる。そして、カメラ3によって画像認識用マーク10を撮影し、この撮影画像により画像処理を行うことで、カメラ3から画像認識用マーク10までの距離、もしくは、カメラ3または画像認識用マーク10の姿勢を測定することが可能になる。
【0051】
図11に示す第2変形例の画像認識用マーク10は、図10と同様に、マーク模様12a,12bをそれぞれ黒色の円形のドット柄としたものである。図10のマーク模様1b,2bと異なる点は、図11の第2変形例では、図10のマーク模様1b,2bの配列に対して45°角度を傾けてマーク模様12a,12bを配列させている。なお、第1マーク部1および第2マーク部2のそれぞれにおいて、カメラ3が認識可能な特徴部として、図10と同様に、黒色のマーク模様12a,12bとその周辺の白地部分との境目部分を境界部1c,2cとすることを採用している。
【0052】
なお、第1マーク部1におけるマーク模様12aの円形のドットの大きさは、第2マーク部2におけるマーク模様12bの円形のドットの大きさより大きい。さらに、図1に示す画像認識用マーク10と同様に、第1マーク部1における複数のマーク模様12aの配置ピッチであるP1は、第2マーク部2における複数のマーク模様12bの配置ピッチであるP2より大きい(P1>P2)。そして、第1マーク部1および第2マーク部2のそれぞれにおいて、左端部列の円形のマーク模様12a,12bの中心を基準線Kとし、この基準線Kを基にX方向(幅方向)に複数個の円形のマーク模様12a,12bが設けられている。
【0053】
以上により、第2変形例の画像認識用マーク10においても、図1に示す画像認識用マーク10と同様に、カメラ3と画像認識用マーク10との距離に応じて、第1マーク部1と第2マーク部2のうちの少なくともいずれか一方もしくは両方をカメラ3によって認識することが可能になる。そして、カメラ3によって画像認識用マーク10を撮影し、この撮影画像により画像処理を行うことで、カメラ3から画像認識用マーク10までの距離、もしくは、カメラ3または画像認識用マーク10の姿勢を測定することが可能になる。
【0054】
なお、図10図11に示す画像認識用マーク10において、基準線Kの設定については、円形のマーク模様1b,2b,12a,12bの左端の位置に基準線Kを設定してもよい。
【0055】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態において、画像認識用マーク10における第1マーク部1と第2マーク部2は、長手方向(Y方向)に沿って並べるだけでなく、設置個所の状況に応じた配置で自由に配置することが可能である。
【0056】
また、画像認識用マーク10は、平面的な設置に限定されるものではなく、立体物のように高さや角度を変化させた場所に設置することも可能である。
【0057】
また、マーク模様1b,2bは、市松模様やドット柄模様に限定されるものではなく、カメラ3によって認識することが可能な模様であればよい。
【符号の説明】
【0058】
1:第1マーク部,1a:第1認識部,1b:マーク模様,1c:境界部(特徴部),2:第2マーク部,2a:第2認識部,2b:マーク模様,2c:境界部(特徴部),3:カメラ(撮影機),3a:撮影範囲,4:用紙,4a:外周部,5:自動搬送車,6:設備,7:通路,8:停止位置,9:進入経路,10:画像認識用マーク,11:マーク部,12a,12b:マーク模様
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11