(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169037
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
E02F9/00 M
E02F9/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074810
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 隆明
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015CA02
2D015CA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】発熱による熱影響を小さくし、組立や保守にも優れているエンジンパワーユニットの収納構造を備えた建設機械を提供する。
【解決手段】フロアフレーム29に設けられた収納構造31は、エンジンパワーユニットのエンジン収納空間Sを規定する直方体枠状の架台フレーム32と、該架台フレームの取付枠33にそれぞれ着脱可能に取り付けられ、取付状態でフロアフレームの外縁部29aに整合する複数のカバー部材34,35,36,37,38とを備え、架台フレームには、取付枠33を兼ね、エンジンパワーユニットの熱交換装置(ラジエータR、オイルクーラC)が組み込まれる収納枠40が設けられている。また、複数のカバー部材のうちの車幅方向外側に位置するカバー部材36は、取付枠33にヒンジ39を介して回動可能に連結された開閉扉である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、該下部走行体の上部に旋回ベアリングを介して旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前部に上下動可能に設けられた作業装置とを備え、
前記上部旋回体は、下面に前記旋回ベアリングが取り付けられるメインフレームと、該メインフレームの車幅方向両側部に設けられたフロアフレームとが一体に結合されているフレーム体を有し、一方側のフロアフレームには、前記作業装置の動力源となるエンジンパワーユニットを収納する収納構造が設けられている建設機械において、
前記収納構造は、前記エンジンパワーユニットのエンジン収納空間を規定する直方体枠状の架台フレームと、該架台フレームの取付枠にそれぞれ着脱可能に取り付けられ、取付状態で前記フロアフレームの外縁部に整合する複数のカバー部材とを備え、
前記架台フレームには、前記取付枠を兼ね、前記エンジンパワーユニットの熱交換装置が組み込まれる収納枠が設けられていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記熱交換装置は、エンジンの冷却水を冷却するラジエータと、前記作業装置の作動油を冷却するオイルクーラとからなり、
前記収納枠は、前記架台フレームの2箇所に独立して設けられ、前記エンジンの冷却ファンに寄せた一方には前記ラジエータが、前記エンジンで駆動される油圧ポンプに寄せた他方には前記オイルクーラがそれぞれ組み込まれていることを特徴とする請求項1記載の建設機械。
【請求項3】
前記熱交換装置は、エンジンの冷却水を冷却するラジエータと、前記作業装置の作動油を冷却するオイルクーラとからなり、
前記収納枠には、前記ラジエータとオイルクーラとが一体的に組み込まれていることを特徴とする請求項1記載の建設機械。
【請求項4】
前記複数のカバー部材のうちの車幅方向外側に位置するカバー部材は、前記取付枠にヒンジを介して回動可能に連結された開閉扉であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関し、詳しくは、エンジンパワーユニットを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、杭打機やアースドリルなどの建設機械は、動力源となるエンジンパワーユニットや、その関連部品などを一体的に収納したハウス(収納室)を備えている。ハウスは、通常、扉のある外側面の位置が車幅(輸送幅)に対応し、収納寸法にも限界があることから、排ガス規制などの求めに応じて付属部品が増えれば、それだけ配置的な条件も厳しくなる。したがって、近年のエンジンパワーユニットに関する設計では、既存のスペースをいかにして有効に活用できるかが重要視されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された建設機械のハウスには、下端が開放した箱型のものが用いられている。これにより、エンジンパワーユニット100の組立工程では、
図3に示すように、フロアフレーム101上にエンジンEを搭載するとともに、油圧ポンプPやラジエータR、オイルクーラCなどの部品を組み付けた後、クレーン102で吊したハウス103を上方から被せていく手順により作業が進められる。しかし、このような組立構造は、ハウスの円滑な着脱を行うためのクリアランス(隙間)を要し、実際にはハウス103の外形状に見合った収納効果が得られていない。したがって、上述の排ガス規制対応とともに、こうした事情が重なると、収納される各種部品が集中して過密状態となり、この過密状態がもたらす熱影響の問題へと波及するおそれがあった。
【0005】
そこで本発明は、発熱による熱影響を小さくし、組立や保守にも優れているエンジンパワーユニットの収納構造を備えた建設機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の建設機械は、下部走行体と、該下部走行体の上部に旋回ベアリングを介して旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前部に上下動可能に設けられた作業装置とを備え、前記上部旋回体は、下面に前記旋回ベアリングが取り付けられるメインフレームと、該メインフレームの車幅方向両側部に設けられたフロアフレームとが一体に結合されているフレーム体を有し、一方側のフロアフレームには、前記作業装置の動力源となるエンジンパワーユニットを収納する収納構造が設けられている建設機械において、前記収納構造は、前記エンジンパワーユニットのエンジン収納空間を規定する直方体枠状の架台フレームと、該架台フレームの取付枠にそれぞれ着脱可能に取り付けられ、取付状態で前記フロアフレームの外縁部に整合する複数のカバー部材とを備え、前記架台フレームには、前記取付枠を兼ね、前記エンジンパワーユニットの熱交換装置が組み込まれる収納枠が設けられていることを特徴としている。
【0007】
また、前記熱交換装置は、エンジンの冷却水を冷却するラジエータと、前記作業装置の作動油を冷却するオイルクーラとからなり、前記収納枠は、前記架台フレームの2箇所に独立して設けられ、前記エンジンの冷却ファンに寄せた一方には前記ラジエータが、前記エンジンで駆動される油圧ポンプに寄せた他方には前記オイルクーラがそれぞれ組み込まれていることを特徴としている。なお、前記熱交換装置は、エンジンの冷却水を冷却するラジエータと、前記作業装置の作動油を冷却するオイルクーラとからなり、前記収納枠には、前記ラジエータとオイルクーラとが一体的に組み込まれていることを特徴としてもよい。加えて、前記複数のカバー部材のうちの車幅方向外側に位置するカバー部材は、前記取付枠にヒンジを介して回動可能に連結された開閉扉であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の建設機械によれば、エンジンパワーユニットの収納構造が直方体枠状の架台フレームで規定したエンジン収納空間を有し、架台フレームの取付枠に対して、複数のカバー部材をフロアフレームの外縁部に整合させて取り付けるので、従来の箱型ハウスでは必要な組立上のクリアランスをなくすことができる。これにより、機体サイズを維持したままエンジン収納空間の拡大が図れ、その分、収納枠に組み込む熱交換装置のコア形状も大きくできることから、熱交換装置の冷却性能の向上に寄与するものである。とりわけ、製造段階では、カバー部材を取付枠にあてがうだけの簡単な動作で即座に取付位置が定まり、取付後も一部の箇所のみを外すだけで対象部品に容易にアクセスできることから、保守性にも優れたエンジンパワーユニットの収納構造が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の建設機械の一形態例を示す杭打機の側面図である。
【
図2】同じくエンジンパワーユニットの収納構造の斜視図である。
【
図3】従来のエンジンパワーユニットの組立工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1及び
図2は、本発明を建設機械の一例である杭打機に適用した一形態例を示している。杭打機11は、
図1に示すように、クローラを備えた下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回ベアリング13を介して旋回可能に設けられた上部旋回体14とで構成されたベースマシン15と、上部旋回体14の前部に立設したリーダ16と、該リーダ16を後方から支持するリーダ起伏シリンダ17とを備えている。また、上部旋回体14の前部には、リーダ16を起伏可能に支持するリーダサポート18が設けられ、上部旋回体14の前部上方には、配管を支持する配管案内アーム19が設けられている。さらに、上部旋回体14の前後左右の4箇所に安定用のジャッキ20が設けられるとともに、上部旋回体14の後端部に杭打機11のバランスをとるためのカウンタウエイト21が搭載されている。
【0011】
リーダ16は、複数のリーダ部材を互いに着脱可能に連結したもので、上端部にはトップシーブ22が、下端部には下部ガイド23がそれぞれ装着されており、リーダ16の前面には作業装置の一例であるオーガ24が昇降可能に装着されている。オーガ24は、油圧で回転駆動され、出力軸に連結した施工部材(例えば鋼管杭)に回転力を付与するものである。
【0012】
オーガ24の上下には、リーダ16の下端部に設けられた駆動スプロケット25と、上端部に設けられた従動スプロケット26との間に架け渡された昇降用チェーン27の両端がそれぞれ取り付けられ、チェーン式の昇降装置を構成する。昇降装置は、駆動スプロケット25を油圧で回転駆動し、該駆動スプロケット25と従動スプロケット26とに掛け回された昇降用チェーン27を上下方向に移動させることにより、リーダ16の前面に沿ってオーガ24を昇降させる。
【0013】
上部旋回体14は、下面に旋回ベアリング13が取り付けられる矩形箱状のメインフレーム28と、該メインフレーム28の車幅方向両側部に枠組みされたフロアフレーム29(反対側は図示せず)とが一体に結合されているフレーム体を有している。右側のフロアフレーム上の前部には、オーガ24や上部旋回体14、下部走行体12などを駆動させる操作がなされる運転室30が設置されている。また、右側のフロアフレーム上の後部には、作動油タンクなどの油圧機器を収納する機器収納室(図示せず)が設けられている。一方、左側のフロアフレーム29上には、エンジンの駆動を受けて圧油を供給するための油圧源装置として、エンジンパワーユニットや、これに付属する排ガス浄化装置などの複数の関連機器を収納する収納構造31が設けられている。
【0014】
エンジンパワーユニットの構成は、基本的に従来のものと同様であるが、後述の収納構造31について理解を容易にするために、
図3の従来のものを参照して説明する。エンジンパワーユニットは、主に、防振状態で搭載されたディーゼルエンジン(以下、エンジンという)Eと、該エンジンEの前部側(
図3の左側)の出力軸に連結された冷却ファンFRと、エンジンEの後部側(
図3の右側)の出力軸に連結された油圧ポンプPとを有している。また、冷却ファンFRの位置に寄せた位置(近傍位置)、つまり冷却ファンFRによる冷却風(外気)の流れ方向の上流側には、冷却ファンFRと対面し、エンジンEの冷却水を冷却するラジエータRが設けられている。
【0015】
一方、油圧ポンプPの位置に寄せた位置(近傍位置)、つまり油圧ポンプPを跨いで設置した架台上において、作動油(戻り油)を冷却するオイルクーラCが設けられている。ラジエータR及びオイルクーラCは、エンジンパワーユニットの熱交換装置として機能するもので、放熱用のフィンが取り付けられたチューブからなる冷却コアを有し、チューブ内に冷却水や作動油などの被冷却流体が流れる構造である。そして、対応する冷却ファンFR,FCの作動で発生した冷却風が冷却コアを通過することで、被冷却流体が冷却される。
【0016】
また、図示は省略するが、エンジンEの排気管には、高次の排ガス規制に対応する排ガス浄化装置が設けられている。排ガス浄化装置は、例えば、尿素水を還元剤とするSCR(Selective Catalytic Reduction:選択還元型触媒)や、排気管のSCRに対して上流側に配置されるとともに、排気管内の排ガスに向けて尿素水を噴射する噴射ノズルなどを有している。これにより、燃焼後の排ガスは、排ガス浄化装置で浄化処理がなされた後、排気管に案内されて排気口から外部に排出される。
【0017】
ところで、エンジンパワーユニットの収納に関して、
図3に示すような、従来からある箱型のハウスを用いた場合、ハウスの円滑な着脱を行うためのクリアランス、例えば、収納物との間で片側30mm程度の隙間を必要としており、ハウスの外形状に見合った収納効果が得られていないのが実情である。したがって、排ガス規制対応に伴う部品点数の増加や部品形状の大型化が進むと、収納される各種部品が集中して過密状態となり、この過密状態がもたらす熱影響の問題へと波及するおそれがある。そこで、杭打機11には、過密状態がもたらす機器相互間の熱影響を小さくするとともに、組立や保守にも優れたエンジンパワーユニットの収納構造31が設けられている。
【0018】
収納構造31は、
図2に示すように、矩形枠(コ字状断面)のフロアフレーム29と一体化したフレーム構造及び外装を担う板金構造によって概略構成され、エンジンパワーユニットのエンジン収納空間Sを規定する直方体枠状の架台フレーム32と、該架台フレーム32の前後左右面及び上面の各面をなす取付枠33にそれぞれ着脱可能に取り付けられる複数のカバー部材34,35,36,37,38とを備えている。
【0019】
架台フレーム32は、フロアフレーム29の上面6箇所にそれぞれ鉛直に設けられた6本の縦フレーム(支柱)32aと、該縦フレーム32aの上端部間に水平に渡された7本の横フレーム(梁)32bとで枠組みされている。縦フレーム32a及び横フレーム32bは、それぞれL字状断面の形鋼あるいは曲げ鋼板からなり、エンジン搭載後においてフロアフレーム29上に組み付けることが可能なボルト締結構造を有している。
【0020】
各カバー部材34,35,36,37,38は、外装として必要な大きさと形状をそれぞれ有し、対応する取付枠33に当接した状態で、複数の取付ボルトにより固定される。また、車幅方向外側(車両左側面)に位置する2枚のカバー部材36,36は、取付枠33にヒンジ39を介して回動可能に連結された開閉扉である。さらに、前後面のカバー部材34,35は、比較的小さい孔を多数備えたパンチングメタル形状の開口を有しており、エンジンパワーユニットの運転中において、前面の吸気口34aから外気を導入してラジエータRに通し、冷却済み空気(排風)の流れをオイルクーラCからの流れと合流させて後面の排風口35aから外へ排出するようになっている。
【0021】
エンジン収納空間Sの前後長と左右幅の各寸法は、ラジエータRのある前側部に配置された左右2本の縦フレーム32a,32aと、フロアフレーム29の後端部に配置された左右2本の縦フレーム32a,32aとがなす四隅部内面の対面寸法(内寸)により規定され、この収納空間Sに対してエンジンEや付属の油圧ポンプP、ラジエータR、オイルクーラCなどの占有スペースが割り当てられる。また、前後の縦フレーム32a,32a同士の中間部には、取付枠33の一部をなす縦フレーム32a及び横フレーム32bがそれぞれ設けられている。
【0022】
ここで、縦フレーム32a及び横フレーム32bからなる取付枠33は、対象のカバー部材34,35,36,37,38を、その取付状態でフロアフレーム29の外縁部29aに整合させる位置、すなわち、各カバー部材34~38の厚みや幅などを考慮して外縁部29aよりも内側(車幅方向でいえば片側数ミリ程度内側)に配置される。換言すれば、取付状態でフロアフレーム29と各カバー部材34~38との互いの外側面が面一に揃えられ、この状態で、各カバー部材34~38は、架台フレーム32内において最大限に広くしたエンジン収納空間Sを覆うように配置される。
【0023】
また、架台フレーム32は、前面の取付枠33と、後部上面の取付枠33とにそれぞれ開口方向の奥行きをもたせ、その枠内にラジエータRとオイルクーラCとがそれぞれ独立に組み込まれる収納枠40,40を構成している。これにより、取付枠33と収納枠40とは、互いの一部においてカバー部材34~38の取付機能とラジエータR及びオイルクーラCの収納機能とを兼ねる兼用部材となる。
【0024】
このように形成された杭打機11では、製造現場においてエンジンパワーユニットを搭載する際、フロアフレーム29上に、エンジンEなどの大物部品から順に各種部品が搭載され、その後、燃料タンクや作動油タンクなどに対して配管が接続される。ここで、架台フレーム32の組立は、作業指示に基づいて種々の態様で行われるが、例えば、ラジエータR及びオイルクーラCは、あらかじめ収納枠40,40に組み込まれた状態(サブアセンブリ状態)でフレーム上の定位置にそれぞれ吊り込まれる。そして、これらを仮組み状態の縦横フレーム32a,32bと一体的に組み上げることで架台フレーム32が完成する(
図2)。こうした直方体枠状のフレーム構造により、フロアフレーム29上において、エンジン収納空間Sが規定される。
【0025】
続いて、用意したカバー部材34,35,36,37,38を架台フレーム32の対応する取付枠33に順次取り付けていくことにより、一連の作業が完了する。こうしたカバー部材34~38の取付作業は、取付枠33の外面にあてがってボルト止めする作業であることから、エンジン収納空間Sにある収納物に対して特段の注意を払う必要がないほど、部品干渉への影響度が小さくなっている。その後、組立や調整に関する複数の工程を経て車両完成状態となる(
図1)。こうして、杭打機11は、エンジンパワーユニットを駆動することよって必要な動力が得られ、杭打ち機能を発揮できる状態となる。
【0026】
このように、本発明の建設機械によれば、エンジンパワーユニットの収納構造31が直方体枠状の架台フレーム32で規定したエンジン収納空間Sを有し、架台フレーム32の取付枠33に対して、複数のカバー部材34~38をフロアフレーム29の外縁部29aに整合させて取り付けるので、従来の箱型ハウスでは必要な組立上のクリアランスをなくすことができる。これにより、機体サイズを維持したままエンジン収納空間Sの実質的な拡大が図れ、その分、収納枠40に組み込む熱交換装置(ラジエータR、オイルクーラC)のコア形状も大きくできることから、熱交換装置の冷却性能の向上に寄与するものである。とりわけ、製造段階では、カバー部材34~38を取付枠33にあてがうだけの簡単な動作で即座に取付位置が定まり、取付後も一部の箇所のみを外すだけで対象部品に容易にアクセスできることから、保守性にも優れたエンジンパワーユニットの収納構造31が達成される。
【0027】
また、フロアフレーム29の幅に対応して大きくした収納枠40,40を2箇所に独立させているので、架台フレーム32が有する枠形状の長所をうまく活かして、ラジエータR及びオイルクーラCを対応するエンジン冷却ファンFR及び油圧ポンプPにそれぞれ寄せることが可能となる。これにより、コア形状の最大化による放熱効果と、油圧回路の集約による発熱量の抑制効果とが同時に得られる。一方、ラジエータRとオイルクーラCとを一体的に組み込むことが可能なユニット型の熱交換装置(図示せず)に適用すれば、同様に優れた放熱効果が期待されるとともに、エンジンEの仕様などに応じて、高い設計の自由度を確保することができる。
【0028】
さらに、車幅方向外側に位置するカバー部材36を開閉扉とし、これを架台フレーム32の取付枠33にヒンジ39を介して連結しているので、従来の箱型ハウスでは必要とされた扉開閉部特有の構造(折り板構造)をなくすことができ、極めてシンプルで、かつ、耐久性にも優れたエンジンパワーユニットの収納構造が達成される。
【0029】
なお、本発明は、建設機械として杭打機を例示したが、これに限られず、アースドリルやクレーンなど、掘削装置や荷役装置の動力源としてエンジンパワーユニットを備えた各種建設機械に適用することができる。この場合、フロアフレームと一体化したフレーム構造及び外装を担う板金構造により、車両寸法の変更を伴わずに高い放熱効果が得られるため、モデルチェンジや新型開発を円滑に進めることが可能となる。とりわけ、建設機械の中でも杭の埋設や地盤改良などを行う杭打機は、施工位置にジャッキを接地して長時間その場に止まることから、ヒートバランスの向上対策として特に有効である。
【符号の説明】
【0030】
11…杭打機、12…下部走行体、13…旋回ベアリング、14…上部旋回体、15…ベースマシン、16…リーダ、17…リーダ起伏シリンダ、18…リーダサポート、19…配管案内アーム、20…ジャッキ、21…カウンタウエイト、22…トップシーブ、23…下部ガイド、24…オーガ、25…駆動スプロケット、26…従動スプロケット、27…昇降用チェーン、28…メインフレーム、29…フロアフレーム、29a…外縁部、30…運転室、31…収納構造、32…架台フレーム、32a…縦フレーム、32b…横フレーム、33…取付枠、34…カバー部材、34a…吸気口、35…カバー部材、35a…排風口、36,37,38…カバー部材、39…ヒンジ、40…収納枠