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特開2022-169040ヒンジ及びこのヒンジを具備したヒンジセット並びに建具装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169040
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】ヒンジ及びこのヒンジを具備したヒンジセット並びに建具装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/22 20060101AFI20221101BHJP
   E05D 3/10 20060101ALI20221101BHJP
   E05D 7/10 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
E06B7/22 J
E05D3/10
E05D7/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074818
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 功明
【テーマコード(参考)】
2E030
2E036
【Fターム(参考)】
2E030AB01
2E030BB03
2E030JB01
2E036AA01
2E036AA02
2E036AA05
2E036BA01
2E036CA01
2E036CA03
2E036DA02
2E036EB07
2E036HB14
2E036HB24
2E036HB25
(57)【要約】
【課題】 建具が厚さ方向へぐらつくのを抑制する。
【解決手段】 縦方向の回転軸を中心に回動する回動部材32に装着するためのヒンジ30bであって、横方向の回転軸を構成する第一軸部材33と、一端側が第一軸部材33に対し回転可能に支持されるとともに他端側を垂下させたリンク部材34と、第一軸部材33の下方側に並ぶようにしてリンク部材34の他端側に回転可能に支持された第二軸部材35とを備え、第一軸部材33は、回動部材32に接続可能な接続基部33bを有し、第二軸部材35は、建具20に固定可能な固定部35bを有する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向の回転軸を中心に回動する回動部材に装着するためのヒンジであって、
横方向の回転軸を構成する第一軸部材と、一端側が前記第一軸部材に対し回転可能に支持されるとともに他端側を垂下させたリンク部材と、前記第一軸部材の下方側に並ぶようにして前記リンク部材の他端側に回転可能に支持された第二軸部材とを備え、
前記第一軸部材は、前記回動部材に接続可能な接続基部を有し、前記第二軸部材は、建具に固定可能な固定部を有することを特徴とするヒンジ。
【請求項2】
前記リンク部材は、前記第一軸部材の軸方向に並ぶように複数設けられていることを特徴とする請求項1記載のヒンジ。
【請求項3】
基部材に対し前記回動部材を設けてなる縦軸ヒンジと、請求項1又は2記載のヒンジとを具備したことを特徴とすることを特徴とするヒンジセット。
【請求項4】
前記縦軸ヒンジは、前記基部材に対し前記回動部材を着脱可能に設けていることを特徴とする請求項3記載のヒンジセット。
【請求項5】
前記接続基部は、前記回動部材に対し着脱可能であることを特徴とする請求項3又は4記載のヒンジセット。
【請求項6】
前記基部材を枠体に固定するとともに、前記第二軸部材を建具に固定して、前記建具を開閉回動可能かつ厚さ方向へ移動可能にしたことを特徴とする請求項3~5何れか1項記載のヒンジセットを具備した建具装置。
【請求項7】
前記第一軸部材、前記第二軸部材及び前記リンク部材の少なくとも一部を、前記建具に内在したことを特徴とする請求項6記載の建具装置。
【請求項8】
前記第一軸部材の中心部を、建具厚さ方向の閉鎖方向寄りに配置したことを特徴とする請求項6又は7記載の建具装置。
【請求項9】
前記建具の閉鎖方向側の面に対向するように、前記枠体に弾性部材を設け、閉鎖動作した前記建具が前記弾性部材に接して密閉されるようにしたことを特徴とする請求項6~8何れか1項記載の建具装置。
【請求項10】
前記弾性部材に接触又は近接した状態の前記建具を閉鎖方向へ押込む押込み装置を設けたことを特徴とする請求項9記載の建具装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉や、窓、障子等を回動して開閉動作させるヒンジ、及びこのヒンジを具備したヒンジセット並びに建具装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、例えば特許文献1に記載されるように、扉と扉枠とに横架される連結杆と、前記扉枠側における前記連結杆を上下に貫通する第1軸と、前記扉側における前記連結杆を上下に貫通するとともに第1軸に平行する第2軸と、前記第1軸と前記第2軸のそれぞれの上下を、前記扉枠と前記扉のそれぞれに回転自在に支持するブロック状の二対の軸受体と、扉面に垂直方向から前記軸受体を貫通して前記扉と前記扉枠の閉扉時において隣り合う各取付け面に前記軸受体を螺着する締結部材とを具備した二軸蝶番がある。
この二軸蝶番によれば、扉を第1軸回りの回動により略全閉した後に、この扉を、第1軸と第2軸の二つの軸の回り回動により扉厚さ方向へ平行移動させ、扉枠内側へ押込んでパッキンに強く押し付けことができる。このため、閉鎖状態における防音性能や止水性能等の遮蔽性能を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-25274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術では、平行な二つの軸(第1軸及び第2軸)によって、扉を回動可能かつ厚さ方向移動可能にしている。このため、扉の回動途中や、扉の閉鎖状態において、この扉が、二つの軸による回動によって厚さ方向へぐらつくおそれがある。このような場合には、ぐらつきを抑制するための装置を別途具備する必要が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明は、以下の構成を具備するものである。
縦方向の回転軸を中心に回動する回動部材に装着するためのヒンジであって、横方向の回転軸を構成する第一軸部材と、一端側が前記第一軸部材に対し回転可能に支持されるとともに他端側を垂下させたリンク部材と、前記第一軸部材の下方側に並ぶようにして前記リンク部材の他端側に回転可能に支持された第二軸部材とを備え、前記第一軸部材は、前記回動部材に接続可能な接続基部を有し、前記第二軸部材は、建具に固定可能な固定部を有することを特徴とするヒンジ。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、建具が厚さ方向へぐらつくのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係るヒンジを具備した建具装置の一例を屋外側から視た正面図である。
図2】同建具装置の要部分解斜視図であり、建具の一部を切欠して内部構造を示している。なお、骨材を省略して図示している。
図3】本発明に係るヒンジの一例を建具厚方向の一方側から視た図である。
図4】同ヒンジを戸先側から視た図であり、(a)は初期状態を示し、(b)はリンク部材が回動した状態を示す。
図5図1の(V)-(V)線に沿う断面図であり、建具が閉鎖途中に位置する状態を示す。
図6図1の(V)-(V)線に沿う断面図であり、建具が全閉した状態を示す。
図7図1の(V)-(V)線に沿う断面図であり、建具が全閉し押し込まれた状態を示す。
図8図1の(VI)-(VI)線に沿う断面図であり、建具が全閉し押し込まれた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第一の特徴は、縦方向の回転軸を中心に回動する回動部材に装着するためのヒンジであって、横方向の回転軸を構成する第一軸部材と、一端側が前記第一軸部材に対し回転可能に支持されるとともに他端側を垂下させたリンク部材と、前記第一軸部材の下方側に並ぶようにして前記リンク部材の他端側に回転可能に支持された第二軸部材とを備え、前記第一軸部材は、前記回動部材に接続可能な接続基部を有し、前記第二軸部材は、建具に固定可能な固定部を有する(図2図7参照)。
この構成によれば、垂下した第二軸部材の建具固定部に建具が固定されるため、装着される建具が厚さ方向へぐらつくのを自重によって抑制することができる。
【0009】
第二の特徴としては、前記リンク部材は、前記第一軸部材の軸方向に並ぶように複数設けられている(図2図3図5図7参照)。
【0010】
第三の特徴は、基部材に対し前記回動部材を設けてなる縦軸ヒンジと、請求項1又は2記載のヒンジとを具備してヒンジセットを構成した(図1図5図7参照)。
【0011】
第四の特徴として、前記縦軸ヒンジは、前記基部材に対し前記回動部材を着脱可能に設けている(図2参照)。
【0012】
第五の特徴として、前記接続基部は、前記回動部材に対し着脱可能である(図2参照)。
【0013】
第六の特徴は、前記基部材を枠体に固定するとともに、前記第二軸部材を建具に固定して、前記建具を開閉回動可能かつ厚さ方向へ移動可能にし、建具装置を構成した(図1図2図5図8参照)。
【0014】
第七の特徴は、前記第一軸部材、前記第二軸部材及び前記リンク部材の少なくとも一部を、前記建具に内在した(図2図5図7参照)。
【0015】
第八の特徴は、前記第一軸部材の中心部を、建具厚さ方向の閉鎖方向寄りに配置した(図2図4図7参照)。
【0016】
第九の特徴は、前記建具の閉鎖方向側の面に対向するように、前記枠体に弾性部材を設け、閉鎖動作した前記建具が前記弾性部材に接して密閉されるようにした(図5図8参照)。
【0017】
第十の特徴は、前記弾性部材に接触又は近接した状態の前記建具を閉鎖方向へ押込む押込み装置を設けた(図1参照)。
【0018】
<具体的実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
本明細書中、戸先方向又は戸先側とは、開閉回動する建具20の遠心方向側を意味し、戸尻方向又は戸尻側とは、前記戸先方向に対する反対方向側を意味する。
本明細書中、建具厚さ方向とは、建具20の厚みの方向を意味する。
【0019】
本明細書中、屋外側とは、全閉状態の建具20における建具厚さ方向の一方側を意味する。図示例によれば、屋外側の空間は、全閉状態の建具20の開放方向側に位置する空間である。
これに対し、本明細書中、屋内側とは、全閉状態の建具20における建具厚さ方向の他方側を意味する。図示例によれば、屋内側の空間は、前記屋外側に対し反対側に位置する空間である。
【0020】
本明細書中、建具幅方向内側とは、建具20の横幅方向の内側を意味する。例えば、建具20の戸先部を基準にした場合、建具幅方向内側は、戸尻方向側であり、建具20の戸尻部を基準にした場合、建具幅方向内側は、戸先方向側である。
また、本明細書中、建具幅方向外側とは、前記建具幅方向内側に対する逆方向側を意味する。
【0021】
本明細書中、建具厚さ方向内側とは、建具20の厚さ方向の内側を意味する。例えば、建具20の開放方向側の面を基準にした場合、建具厚さ方向内側は、建具20の閉鎖方向側であり、建具20の閉鎖方向側の面を基準にした場合、建具厚さ方向内側は、建具20の開放方向側である。
また、本明細書中、建具厚さ方向外側とは、建具厚さ方向内側に対する逆方向側を意味する。
【0022】
本明細書中、縦方向には、鉛直方向や、鉛直方向に対し若干傾斜した方向等を含む。
また、本明細書中、横方向には、水平方向や、水平方向に対し若干傾斜した方向を含む。
【0023】
図1に示す建具装置1は、複数の枠部材から矩形枠状に構成された枠体10と、この枠体内の開口部を開閉する建具20と、建具20の戸尻側で建具20を開閉回動可能かつ厚さ方向へ移動可能にするヒンジセット30とを備え、扉装置(別表現すればドア装置)を構成している。
特に、本実施態様によれば、この建具装置1は、建具20を略全閉した後に屋内側へ押し込んで止水性能を発揮するようにした止水扉装置を構成している。
【0024】
枠体10は、閉鎖状態の建具20の戸尻部に対向する戸尻側枠部材11と、同建具20の戸先部に対向する戸先側枠部材12と、同建具20の上下端部にそれぞれ対向する上側枠部材13及び下側枠部材14とを具備して、中央部を開口した一体の矩形枠状に構成される(図1参照)。この枠体10は、建物等の躯体開口部に不動に固定される。
【0025】
戸尻側枠部材11は、上下方向へ長尺状に連続する部材であり、図5に示すように、枠内側の面に段部を有する横断面略枠状に形成される。この戸尻側枠部材11には、溝部11aが設けられ、この溝部11aには、全閉状態の建具20の屋内側面に圧接されるように弾性部材40が装着される(図5図7参照)。
【0026】
戸先側枠部材12は、戸尻側枠部材11と左右対称に形成される。この戸先側枠部材12には、溝部12aが設けられ、この溝部12aには、全閉状態の建具20の屋内側面に圧接されるように弾性部材40が装着される(図8参照)。
【0027】
上側枠部材13と下側枠部材14は、それぞれ、左右方向へ連続する部材である。図示を省略するが、これら上側枠部材13及び下側枠部材14にも、全閉状態の建具20の屋内側面に圧接されるように弾性部材40が装着される。
【0028】
弾性部材40は、建具20の閉鎖方向側の面に対向するようにして枠体10に装着される。
この弾性部材40は、ゴムやエラストマー樹脂、弾性発泡樹脂等からなる単数又は複数の長尺状部材であり、枠体10内の開口部を囲む矩形枠状に構成される。
閉鎖動作した際の建具20は、この弾性部材40に接することで密閉される。
【0029】
なお、本実施態様によれば、戸尻側枠部材11、戸先側枠部材12、上側枠部材13、又は下側枠部材14に対し、弾性部材40を単数列設けるようにしたが、他例としては、弾性部材40を複数列設けるようにしてもよい。
より具体的に説明すれば、戸尻側枠部材11について、弾性部材40よりも建具幅方向内側で、全閉状態の建具20に当接する弾性部材を設けるようにしてもよい。この構成には、例えば、特許文献1の図2に開示された構造を適用することが可能である。
【0030】
建具20は、正面視矩形板状に構成され、内部に空間を有する。
この建具20は、厚み方向に間隔を置いた表板21及び裏板22(図5図8参照)と、これらを内側から支持する複数の骨材23,24,25と、閉鎖位置にある当該建具20を閉鎖方向(図示例によれば屋内側)へ押し込むための押込み装置50,50(図1参照)とを具備している。
【0031】
表板21と裏板22は、金属製板材を適宜加工することで、左右端部及び上下端部が建具厚方向内側へ曲げられた正面視矩形状に形成される。
これら表板21及び裏板22は、単数の板材から構成したり、3枚以上の板材から構成したりすることが可能である。
【0032】
複数の骨材23,24,25は、それぞれ、上下方向へ連続する溝形鋼状(横断面凹状)の金属製部材である。これらのうち、骨材23は、最も戸尻側に位置する。また、骨材24は、骨材23に対し戸先側に間隔を置いて位置する。
表板21と裏板22の間には、図示する骨材23,24,25以外に、上下方向へわたる他の縦骨材や、建具20の上端側と下端側で左右方向へわたる横骨材等が適宜に設けられる。
【0033】
押込み装置50は、建具20の左寄り部分と右寄り部分に対応して複数(図示例によれば二つ)設けられる。
各押込み装置50は、レバー51の回転操作により係合部材(図示せず)を横方向へ出没させ、この係合部材を、戸尻側枠部材11側又は戸先側枠部材12側の被係合部(図示せず)のカム斜面(図示せず)に摺接させることで、建具20を屋内側へ略平行に移動して弾性部材40に押し付ける。
【0034】
また、図示を省略するが、建具20の下端側にも、押込み装置50と略同構造の押込み装置を設けるようにしてもよい。この押込み装置は、例えば、建具20面の下端側に設けられるレバー(図示せず)の回転操作により、係合部(図示せず)を下方向へ出没させ、この係合部を、下側枠部材14側の被係合部(図示せず)のカム斜面(図示せず)に摺接することで、建具20を屋内側へ略平行に移動して弾性部材40に押し付ける。
なお、押込み装置50及び前記押込み装置には、例えば、特開2018-59369公報に開示される構造を適用することが可能である。
【0035】
なお、図1において、符号61は、建具20の開閉操作を行うための開閉用ノブであり、この枠体10の回転操作により、建具20の戸先面にてラッチ(図示せず)が出没するようになっている。また、戸先側枠部材12には、前記ラッチに嵌り合うラッチ受け(図示せず)が設けられる。
また、図1において、符号62は、建具20側のサムターン又はキーの操作によりデッドボルト(図示せず)を出没させて、戸先側枠部材12の凹状の受座(図示せず)に嵌脱する施錠機構である。
【0036】
また、建具20の戸尻面(詳細に説明すれば、表板21及び裏板22における戸尻側端部、及び骨材23)には、後述するヒンジ30bを挿入するための貫通孔20aが形成される。
この貫通孔20aは、ヒンジ30bの第一軸部材33、第二軸部材35、及びリンク部材34等を遊挿可能な形状および大きさを有し、図示例によれば、平面視矩形状に形成される。
【0037】
ヒンジセット30は、枠体10側に装着される縦軸ヒンジ30aと、建具20側に装着されるヒンジ30b(横軸ヒンジ)とを具備して構成される(図2参照)。
【0038】
縦軸ヒンジ30aは、回転軸を縦方向に向けて使用可能なヒンジである。
この縦軸ヒンジ30aは、枠体10に固定される基部材31と、基部材31に対し縦方向(図示例によれば、鉛直方向)の回転軸を中心にして回動するように支持された回動部材32とを具備し、基部材31に対し回動部材32を着脱可能に接続している。
【0039】
基部材31は、戸尻側枠部材11に止着固定される枠体固定部31aと、枠体固定部31aの幅方向端部に接続された支持部31bとを有し、金属等の硬質材料から一体に構成される。
【0040】
枠体固定部31aは、戸尻側枠部材11の枠内側の面に重ね合わせられるように平板状に形成され、止着具36(例えば、ネジ、ボルト又はリベット等)を挿通するための貫通孔を複数有する。
支持部31bは内部に鉛直状の軸孔31b1を有する円筒状に形成される。
【0041】
回動部材32は、第一軸部材33の接続基部33bに重ね合わせられ止着具36によって止着される平板状の止着片部32aと、この止着片部32aの幅方向端部に接続された略円柱状の被支持部32bとを具備し、金属等の硬質材料から一体に構成される。
被支持部32bは、下方へ突出する鉛直状の軸部32b1を有し、この軸部32b1を、基部材31の軸孔31b1に回転自在かつ抜き差し可能に嵌め合わせる。
【0042】
なお、図示例の縦軸ヒンジ30aには、周知構造の旗蝶番や抜き差し丁番を用いることが可能である。また、この縦軸ヒンジ30aは、基部材31と回動部材32について、上下を逆にして用いることが可能である。
【0043】
また、ヒンジ30bは、回転軸を横方向へ向けて使用可能な横軸ヒンジを構成している。
このヒンジ30bは、回動部材32に固定されて横方向(図示例によれば、水平方向)の回転軸を構成する第一軸部材33と、一端側が第一軸部材33に対し回転自在に支持されるとともに他端側を自重により垂下させたリンク部材34と、第一軸部材33に対し間隔を置いて略平行に並ぶようにしてリンク部材34の他端側に回転自在に支持された第二軸部材35とを具備する。
このヒンジ30bは、少なくともその一部(図示例によれば、接続基部33bの戸尻側部分を除く略全部)が、建具20に内在される(図5図7参照)。
【0044】
第一軸部材33は、建具20の幅方向に沿って延設された第一軸本体部33aと、縦軸ヒンジ30aの回動部材32に接続可能な接続基部33bとを一体に有する。
【0045】
第一軸本体部33aは、金属等の硬質材料から円柱状又は円筒状に形成される。この第一軸本体部33aの外周部には、リンク部材34の軸方向への移動を阻むために、図示しない凸部又は凹部等が設けられる。
この第一軸本体部33aの基端側(図示例によれば、戸尻側)には、接続基部33bが不動に連結される。この連結の具体的手段は、溶接や、嵌合、ねじ止め等とすればよい。
【0046】
接続基部33bは、金属等の硬質材料によって第一軸部材33に交差(図示例によれば直交)する板状に形成さる。
この接続基部33bの戸尻方向側の面は、止着片部32aに重なり合う平坦状に形成される。そして、この接続基部33bには、止着片部32aを貫通した止着具36を止着するための止着孔(例えばネジ穴等)が設けられる。
この接続基部33bは、止着具36の脱着により、回動部材32に対し着脱可能であり、ヒンジ30bのメンテナンス性を良好にしている。
この接続基部33bは、止着片部32aに対向する端面を、建具20の戸尻面から若干突出させるようにして、建具20の貫通孔20a内に位置する。
【0047】
リンク部材34は、第一軸部材33の軸方向に間隔を置いて略平行に並ぶように複数(図示例によれば二つ)設けられる。
各リンク部材34は、金属等の硬質材料によって上下方向へわたる片状に形成される。このリンク部材34の上端側には軸孔が形成され、この軸孔に、第一軸部材33が回転自在に挿通される。また、リンク部材34の下端側にも軸孔が形成され、この軸孔に、第二軸部材35が回転自在に挿通される。
【0048】
第二軸部材35は、第一軸本体部33aに対し下方に間隔を置いて略平行する第二軸本体部35aと、建具20に固定可能な固定部35bとを一体に有する。
【0049】
第二軸本体部35aは、金属等の硬質材料から円柱状又は円筒状に形成され、複数のリンク部材34に対し回転自在に挿入される。この第二軸本体部35aの外周部には、リンク部材34の軸方向への移動を阻むために、図示しない凸部又は凹部等が設けられる。
この第二軸本体部35aの戸先側端部は、第一軸本体部33aよりも戸先側端部よりも戸先側へ突出しており、その突端部に、固定部35bが不動に連結される。この連結の具体的手段は、溶接や、嵌合、ねじ止め、リベット止め等とすればよい。
【0050】
なお、第一軸本体部33a、リンク部材34及び第二軸本体部35aの構成には、自転車やバイク等のチェーン構造や、グリルシャッター(パイプシャッター)におけるパイプとリンク部材の接続構造、ピン継手の接続構造等を適用することが可能である。
【0051】
固定部35bは、金属等の硬質材料によって第二軸本体部35aに交差(図示例によれば直交)する板状に形成さる。
この固定部35bは、建具20を構成する骨材24に対し不動に接続される。この接続の具体的手段は、溶接や、嵌合、ねじ止め、リベット止め等とすればよい。なお、図示例以外の他例としては、この固定部35bが接続される部位を、建具20における骨材24以外の部位とすることが可能である。
【0052】
そして、本実施形態の好ましい一例によれば、第一軸本体部33aの中心部が、建具厚さ方向の閉鎖方向寄り(図示例によれば、屋内側)に偏って配置される。この構成によれば、全閉状態において建具20を弾性部材40に押し付ける際の押し付け力を比較的大きく確保することができる。
なお、図示例以外の他例としては、第一軸本体部33aの中心部を建具20の厚さ方向の中心部に一致させた構成や、同中心部を建具20の厚さ方向の開放方向寄りに配置した構成等とすることも可能である。
【0053】
そして、上記構成の建具装置1は、建具20を開閉するための一方(図示例によれば縦方向)の回転軸(具体的には軸部32b1及び軸孔31b1等)と、建具20を押込むための他方(図示例によれば横方向)の回転軸(具体的には第一軸本体部33a)とを、所定の角度をもって交差(図示例によれば、正面から視て直交又は略直交)するように配置している。
なお、前記一方(縦方向)の回転軸と前記他方(横方向)の回転軸とは、図示例によれば建具厚さ方向にずれているが、他例としては、これら二つの回転軸を建具厚さ方向に一致するように構成することも可能である。
【0054】
また、上記構成によれば、貫通孔20aの内縁部と接続基部33bの周縁部との間には、固定部35bに連結された建具20を押し込み回動する際の動作量を許容可能な寸法のクリアランス(隙間)が確保される。そして、このクリアランス及び建具20内の空間等により、建具20は、停止中及び動作中において、ヒンジセット30に干渉しないようになっている。
なお、本クリアランスには、建具20に相対する接続基部33bの動きを妨げないようにすれば、軟質材(例えば軟質のゴムや樹脂、軟質充填剤等)からなるすき間隠し部材を設けるようにしてもよい。この構成によれば、前記クリアランスから建具20内へ異物や害虫、水等が侵入するのを防ぐことができる。
【0055】
次に、上記構成のヒンジ30b及びヒンジセット30並びに建具装置1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
初期状態において、リンク部材34、第二軸部材35及び建具20等は、第一軸部材33に対し自由垂下状に吊持され、図4(a)に示すように、鉛直状に保持される。
【0056】
この状態で、開閉用ノブ61を閉鎖方向へ押す操作等により、建具20を開放状態から閉鎖方向へ回動させると(図5図6参照)、この回動中、リンク部材34、第二軸部材35及び建具20等は、自重によって上述した鉛直状態を保つ。
【0057】
上記閉鎖動作によって、建具20が枠体10内の開口部を略塞いだ閉鎖位置になると、左右端側及び上下端側にて、建具20の屋内側面が、弾性部材40に略接する(図6参照)。
【0058】
次に、押込み装置50の操作等により、建具20を屋内側へ押圧すると、建具20は略平行に屋内側へ押込まれる。そして、建具20の左右端側及び上下端側にて、建具20の屋内側面が弾性部材40に強く押し付けられて、弾性部材40が弾性的に収縮する。そして、建具20は、屋外側から屋内側への水の侵入を阻む止水位置(図7及び図8参照)となる。
【0059】
前述した建具20の押込み動作中、第二軸部材35及び建具20等は、第一軸本体部33aを中心にして屋内側へ円弧状に移動する(図4(a)(b)参照。
【0060】
また、前記止水位置にて、押込み装置50等を解除操作した場合には、第二軸部材35及び建具20が、自重によって逆方向(屋外側)へ円弧状に移動し、この円弧運動に伴って、建具20が枠体10から引き離され、止水状態が解除される。
【0061】
このように、本実施態様によれば、建具20等の自重によって、第一軸部材33の真下に第二軸部材35を保持しようとするため、この保持力によって、開閉動作中や閉鎖位置において、建具20が厚さ方向へぐらつくのを抑制することができる。
【0062】
また、止水位置においても、ラッチ及びラッチ受け等によって係止された状態で、自重による開放方向の力が作用するため、ラッチとラッチ受け間の隙間により、建具20が厚さ方向へぐらついたりばたついたりするのを防ぐことができる。
【0063】
また、止水位置にある建具20を開放する際は、前述した自重による開放方向の力により、建具20を容易に開放動作させることができる。
【0064】
なお、上記実施態様によれば、建具20が上記閉鎖位置から上記止水位置になる際、この建具20は、戸先側から視て円弧状に移動するため(図4(a)(b)参照)、若干上昇するが、その上昇量は建具20全高に相対しわずかな量であり、全閉時の建具20が左右上下の弾性部材40全部に対し接するようにしているため、前記上昇によって建具装置1の閉鎖性が損なわれるようなことを防ぐことができる。
【0065】
<変形例>
上記実施態様によれば、特に好ましい一例として、接続基部33bの戸尻側部分を除いて、ヒンジ30bのほとんどの部分を建具20内に配置したが、他例としては、接続基部33b全体を建具20外に配置した態様や、接続基部33b、第一軸本体部33a、リンク部材34及び第二軸部材35の一部を建具20外に配置した態様とすることも可能である。
【0066】
また、上記実施態様によれば、特に好ましい一例として、ヒンジ30bを建具20内に配置したが、他例としては、第一軸部材33、リンク部材34及び第二軸部材35の少なくとも一部を、建具20の表面又は裏面よりも建具厚さ方向の外側に配置することも可能である。この場合、回動部材32も建具20の表面側又は裏面側に位置するように設ける。また、必要に応じて、ヒンジ30b全体を覆うカバー部材等を設ける。
【0067】
また、図示例によれば、縦軸ヒンジ30aとして旗蝶番を用いているが、この縦軸ヒンジ30aは、基部材に対し回動部材を回動可能に設けた装置であればよい。すなわち、この縦軸ヒンジ30aは、ピボットヒンジや、平蝶番、長蝶番、スプリング蝶番、スライドヒンジ、隠し蝶番、トルクヒンジ、ダンパーヒンジ、パワーアシストヒンジ等、旗蝶番以外の蝶番やヒンジ等に置換することが可能である。
【0068】
また、図示例によれば、リンク部材34は間隔を置いて二つ設けたが、他例としては、このリンク部材34を3以上設けた態様や、リンク部材34を複数重ね合わせて設けた態様、このリンク部材34を単数のブロック状の部材により構成した態様等とすることも可能である。
【0069】
また、図示例によれば、接続基部33b及び固定部35bを板状に形成したが、これらは、例えば直方体状等、板状以外の形状であってもよい。
【0070】
また、上記実施態様によれば、第一軸本体部33aの端部に板状の接続基部33bを設けたが、他例としては、第一軸本体部33aの端部を止着片部32aに対し直接接続される接続基部とし、図示例の接続基部33bを省くことも可能である。
【0071】
同様に、上記実施態様によれば、第二軸本体部35aの端部に板状の固定部35bを設けたが、他例としては、第二軸本体部35aの端部を骨材24に対し直接接続される固定部とし、図示例の固定部35bを省くことも可能である。
別表現すれば、図示例の固定部35bを省いて、第二軸本体部35aの端部を骨材24に直接接続し、骨材24が固定部35bの役割を果たすようにしてもよい。
【0072】
また、上記実施態様では、縦軸ヒンジ30aは回転軸が鉛直になるように設けたが、この縦軸ヒンジ30aの他例として、建具20の開閉動作性に支障がなければ、縦軸ヒンジ30aの回転軸が鉛直方向に対し若干傾いてもよい。
同様に、ヒンジ30bの回転軸も、建具20の押込み動作性に支障がなければ、水平方向に対し若干傾いていてもよい。
【0073】
また、上記実施態様では、特に好ましい一例として、左右の押込み装置50,50を具備したが、水圧などの圧力が掛かった場合に押込み装置50を弾性部材40に押し付ける構成とすればよく、他例としては、二つの押込み装置50,50のうちの一方又は双方を省いた態様とすることも可能である。さらに、他例としては、図示例よりも多くの押込み装置を具備した態様とすることも可能である。
【0074】
また、上記実施態様では、建具装置1を片開式の扉装置(止水扉装置)として構成したが、建具装置1の基本構造は、親扉と子扉を具備した両開き式扉装置や、その他の両開き式扉装置等において、各扉体の戸尻側の回転軸部分に適用することが可能である。
【0075】
また、上記実施態様では、好ましい一例として、建具装置1を止水扉装置として構成したが、この建具装置1の基本構造は、止水扉装置以外の気密扉装置や、防音扉装置、窓装置等に適用することが可能である。
また、建具20は、開動する窓や、障子等、扉やドア以外として構成することが可能である。
【0076】
また、上記実施態様では、開放方向側を屋外側、閉鎖方向側を屋内側としているが、これとは逆に、開放方向側を屋内側、閉鎖方向側を屋外側とすることも可能である。
【0077】
また、上記実施態様では、建具20を左右に開閉回動する際の回転軸(軸部32b1及び軸孔31b1)が縦方向になり、建具20を押し込み動作する際の回転軸(第一軸本体部33a)が横方向になるようにヒンジセット30を用いたが、このヒンジセット30の応用的な使用態様としては、建具20を上下に開閉回動する際の回転軸が横方向になり、建具20を押込む際の回転軸が縦方向になるように用いることも可能である。すなわち、この使用態様は、上記建具装置1を横に90度回転させた構成、別表現すれば、図2の紙面を横に90度回転させて視たような構成とすることが可能である。
【0078】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0079】
1:建具装置
10:枠体
11:戸尻側枠部材
20:建具
30:ヒンジセット
30a:縦軸ヒンジ
30b:ヒンジ(横軸ヒンジ)
31:基部材
32:回動部材
33:第一軸部材
33a:第一軸本体部
33b:接続基部
34:リンク部材
35:第二軸部材
35a:第二軸本体部
35b:固定部
40:弾性部材
50:押込み装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8