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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169054
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】電動作業機
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
B25F5/00 C
B25F5/00 A
B25F5/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074845
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中本 明弘
【テーマコード(参考)】
3C064
【Fターム(参考)】
3C064AA05
3C064AB02
3C064AC02
3C064BA19
3C064BB24
3C064BB55
3C064CA54
3C064CA72
3C064CA78
3C064CA80
3C064CA82
3C064CB17
3C064CB28
3C064CB61
3C064CB71
3C064CB91
3C064DA02
3C064DA07
3C064DA17
3C064DA26
3C064DA31
3C064DA59
3C064DA73
(57)【要約】
【課題】電動作業機の破損を抑制する。
【解決手段】本開示の一態様の電動作業機は、モータの駆動を制御する駆動制御処理を実行するように構成された制御部を備える。駆動制御処理は温度測定処理と第1,2制動処理とを含む。温度測定処理は、温度検出部を用いて、当該電動作業機の内部の測定対象部品の温度である部品温度を測定する。第1制動処理は、操作部が操作オン状態から操作オフ状態に切り替わり且つ部品温度が制限温度未満であるときに、駆動部に第1制動力を発生させる。第2制動処理は、操作部が操作オン状態から操作オフ状態に切り替わり且つ部品温度が制限温度以上であるときに、駆動部に、第1制動力より弱い第2制動力を発生させるか、制動力を発生させない。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動作業機であって、
電源から電力を受けて駆動するように構成されたモータと、
前記モータの駆動を制御する駆動制御処理を実行するように構成された制御部と、
前記制御部からの指示に従って、前記モータを回転させるための駆動力、および、前記モータの回転を停止させるための制動力を前記モータに対して発生させるように構成された駆動部と、
前記モータを駆動させるために使用者により操作されるように構成され、前記使用者によって操作されている操作オン状態と、前記使用者によって操作されていない操作オフ状態との間で切り替わるように構成された操作部と、
当該電動作業機の内部に収容されている複数の部品のうち予め設定された測定対象を測定対象部品として、前記測定対象部品の温度である部品温度を検出するように構成された温度検出部とを備え、
前記駆動制御処理は、
前記温度検出部を用いて前記部品温度を測定する温度測定処理と、
前記操作部が前記操作オフ状態から前記操作オン状態に切り替わり、且つ、前記部品温度が予め設定された禁止温度未満であるときに、前記駆動部に、前記モータを駆動させる操作駆動処理と、
前記操作部が前記操作オン状態から前記操作オフ状態に切り替わり、且つ、前記部品温度が、前記禁止温度より低くなるように設定された制限温度未満であるときに、前記駆動部に、第1制動力を前記モータに対して発生させる第1制動処理と、
前記操作部が前記操作オン状態から前記操作オフ状態に切り替わり、且つ、前記部品温度が前記制限温度以上であるときに、前記駆動部に、前記第1制動力より弱い第2制動力を前記モータに対して発生させるか、前記モータに対して前記制動力を発生させない第2制動処理と
を含む電動作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の電動作業機であって、
前記駆動制御処理は、更に、
前記モータの駆動中において前記部品温度が前記禁止温度以上になった場合に、前記駆動部に、前記駆動力の発生を停止させ、且つ、前記モータに対して前記制動力を発生させない駆動停止処理を含む電動作業機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電動作業機であって、
前記第2制動処理は、前記駆動部に、前記制動力を発生させない電動作業機。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の電動作業機であって、
前記駆動制御処理は、更に、
前記操作部の状態を判断する操作判断処理を含み、
前記温度測定処理は、前記操作判断処理の前に実行される電動作業機。
【請求項5】
請求項4に記載の電動作業機であって、
前記操作判断処理は、前記操作部が前記操作オン状態であるか否かを判断する電動作業機。
【請求項6】
請求項4に記載の電動作業機であって、
前記操作判断処理は、前記操作部が前記操作オフ状態であるか否かを判断する電動作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、直流モータの制動時にモータ温度が高いほど、直流モータへ供給する制動電流を大きくしてより大きな制動力を発生させるように構成された直流モータ制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3457861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータを備える電動作業機において、モータ制御に用いられるモータ制御用回路の温度が高い状態でモータに対して制動力を発生させると、モータ制御用回路が破損する可能性が高くなる。
【0005】
本開示の一態様は、電動作業機の破損を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様における電動作業機は、モータを備える。モータは、電源から電力を受けて駆動するように構成される。電動作業機は、制御部を備える。制御部は、モータの駆動を制御する駆動制御処理を実行するように構成される。電動作業機は、駆動部を備える。駆動部は、制御部からの指示に従って、モータを回転させるための駆動力、および、モータの回転を停止させるための制動力をモータに対して発生させるように構成される。電動作業機は、操作部を備える。操作部は、モータを駆動させるために使用者により操作されるように構成され、使用者によって操作されている操作オン状態と、使用者によって操作されていない操作オフ状態との間で切り替わるように構成される。電動作業機は、温度検出部を備える。温度検出部は、当該電動作業機の内部に収容されている複数の部品のうち予め設定された測定対象を測定対象部品として、測定対象部品の温度である部品温度を検出するように構成される。
【0007】
駆動制御処理は、温度測定処理を含む。温度測定処理は、温度検出部を用いて部品温度を測定する。駆動制御処理は、操作駆動処理を含む。操作駆動処理は、操作部が操作オフ状態から操作オン状態に切り替わり、且つ、部品温度が予め設定された禁止温度未満であるときに、駆動部に、モータを駆動させる。駆動制御処理は、第1制動処理を含む。第1制動処理は、操作部が操作オン状態から操作オフ状態に切り替わり、且つ、部品温度が、禁止温度より低くなるように設定された制限温度未満であるときに、駆動部に、第1制動力をモータに対して発生させる。駆動制御処理は、第2制動処理を含む。第2制動処理は、操作部が操作オン状態から操作オフ状態に切り替わり、且つ、部品温度が制限温度以上であるときに、駆動部に、第1制動力より弱い第2制動力をモータに対して発生させるか、モータに対して制動力を発生させない。
【0008】
このような電動作業機は、部品温度が制限温度以上であり且つ禁止温度未満であるときにおいて、第1制動力より弱い第2制動力をモータに対して発生させることによって部品温度の上昇を抑制し、測定対象部品の破損を抑制することができる。これにより、本開示の電動作業機は、電動作業機の破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】電動作業機の全体構成を示す斜視図である。
図2】電動作業機の電気的構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態の電動作業機制御処理を示すフローチャートである。
図4】通常ブレーキ制御および弱ブレーキ制御における制動力および制動時間の差を示す図である。
図5】第2実施形態の電動作業機制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態の総括]
ある実施形態における電動作業機は、モータを備えてもよい。モータは、電源から電力の供給を受けて駆動するように構成されてもよい。加えて/あるいは、電動作業機は、制御部を備えてもよい。制御部は、モータの駆動を制御する駆動制御処理を実行するように構成されてもよい。加えて/あるいは、電動作業機は、駆動部を備えてもよい。駆動部は、制御部からの指示に従って、モータを回転させるための駆動力、および、モータの回転を停止させるための制動力をモータに対して発生させるように構成されてもよい。加えて/あるいは、電動作業機は、操作部を備えてもよい。操作部は、モータを駆動させるために使用者により操作されるように構成され、使用者によって操作されている操作オン状態と、使用者によって操作されていない操作オフ状態との間で切り替わるように構成されてもよい。加えて/あるいは、電動作業機は、温度検出部を備えてもよい。温度検出部は、当該電動作業機の内部に収容されている複数の部品のうち予め設定された測定対象を測定対象部品として、前記測定対象部品の温度である部品温度を検出するように構成されてもよい。
【0011】
駆動制御処理は、温度測定処理を含んでもよい。温度測定処理は、温度検出部を用いて部品温度を測定してもよい。加えて/あるいは、駆動制御処理は、操作駆動処理を含んでもよい。操作駆動処理は、操作部が操作オフ状態から操作オン状態に切り替わり、且つ、部品温度が予め設定された禁止温度未満であるときに、駆動部に、モータを駆動させてもよい。加えて/あるいは、駆動制御処理は、第1制動処理を含んでもよい。第1制動処理は、操作部が操作オン状態から操作オフ状態に切り替わり、且つ、部品温度が、禁止温度より低くなるように設定された制限温度未満であるときに、駆動部に、第1制動力をモータに対して発生させてもよい。加えて/あるいは、駆動制御処理は、第2制動処理を含んでもよい。第2制動処理は、操作部が操作オン状態から操作オフ状態に切り替わり、且つ、部品温度が制限温度以上であるときに、駆動部に、第1制動力より弱い第2制動力をモータに対して発生させてもよい。あるいは、第2制動処理は、操作部が操作オン状態から操作オフ状態に切り替わり、且つ、部品温度が制限温度以上であるときに、駆動部に、モータに対して制動力を発生させなくてもよい。
【0012】
ある実施形態における電動作業機が、上記のモータ、上記の制御部および上記の操作部を備え、上記の駆動制御処理が、上記の温度測定処理、上記の操作駆動処理、上記の第1制動処理および上記の第2制動処理を含んでいるのであれば、このような電動作業機は、電動作業機の破損を抑制することができる。
【0013】
加えて/あるいは、駆動制御処理は、更に、駆動停止処理を含んでもよい。駆動停止処理は、モータの駆動中において部品温度が禁止温度以上になった場合に、駆動部に、駆動力の発生を停止させ、且つ、モータに対して制動力を発生させなくてもよい。このような電動作業機は、部品温度が禁止温度以上である場合にモータに対して制動力を発生させないため、電動作業機の破損を更に抑制することができる。
【0014】
加えて/あるいは、第2制動処理は、駆動部に、モータに対して制動力を発生させなくてもよい。このような電動作業機は、測定対象部品の破損を抑制することにより、電動作業機の破損を抑制することができる。
【0015】
加えて/あるいは、駆動制御処理は、更に、操作判断処理を含んでもよい。操作判断処理は、操作部の状態を判断してもよい。加えて/あるいは、温度測定処理は、操作判断処理の前に実行されてもよい。このような電動作業機は、操作部の状態および部品温度に応じて適切に、モータを駆動させたり、制動力を発生させたりすることができる。
【0016】
加えて/あるいは、操作判断処理は、操作部が操作オン状態であるか否かを判断してもよい。このような電動作業機は、操作部が操作オン状態であるときにおいて、部品温度に応じて適切にモータを駆動させることができる。
【0017】
加えて/あるいは、操作判断処理は、操作部が操作オフ状態であるか否かを判断してもよい。このような電動作業機は、操作部が操作オフ状態であるときにおいて、部品温度に応じて適切に制動力を発生させることができる。
【0018】
ある実施形態では、上述の特徴はどのように組み合わされてもよい。ある実施形態では、上述の特徴のいずれかは、除外されてもよい。
[特定の例示的な実施形態]
[第1実施形態]
以下に本開示の例示的な第1実施形態を図面とともに説明する。
【0019】
本実施形態の電動作業機1は、モータの駆動力で工具を駆動させる作業機である。
本実施形態の電動作業機1は、一例として草刈機の形態であり、図1に示すように、メインパイプ2と、駆動ユニット3と、回転刃4と、カバー5と、ハンドル6と、操作・表示ユニット7と、バッテリパック8と、制御ユニット9とを備える。
【0020】
メインパイプ2は、長尺かつ中空の棒状に形成されている。メインパイプ2の第1端に駆動ユニット3が取り付けられ、メインパイプ2の第2端に制御ユニット9が取り付けられている。以下、メインパイプ2に沿って、駆動ユニット3が取り付けられている側を前側、制御ユニット9が取り付けられている側を後側という。
【0021】
駆動ユニット3は、回転刃4を回転駆動させるための駆動源であるモータ20を搭載している。なお、モータ20は、図1には示しておらず、図2に示している。駆動ユニット3は、モータ20の回転軸の先端に、減速用のギヤ機構を備える。このギヤ機構の出力軸には、回転刃4が着脱可能に装着される。このため、モータ20が回転すると、その回転がギヤ機構を介して出力軸に伝達され、出力軸は回転刃4と一体に回転する。
【0022】
回転刃4は、金属刃であり、回転することにより、草および小径木などを刈り取ることができる。金属刃は、金属材料で円板状に形成されて、円板の外周に沿って複数の鋸刃状の歯が形成された部材である。
【0023】
カバー5は、メインパイプ2の前端側において、回転刃4の後側に配置されるように取り付けられる。カバー5は、回転刃4により刈り取られた草などが作業者側に飛んでくるのを阻止する。
【0024】
ハンドル6は、作業者が電動作業機1を用いて草刈り作業を行う際に把持するための部材である。ハンドル6は、メインパイプ2の長さ方向における中間位置付近でメインパイプ2に接続されている。ハンドル6は、U字状に形成されており、U字の両端部分にグリップが設けられている。
【0025】
操作・表示ユニット7は、作業者が指で電動作業機1を操作する機能と、電動作業機1の動作状態を表示する機能とを備える。操作・表示ユニット7は、ハンドル6における一方のグリップ部分に、取り付けられている。
【0026】
操作・表示ユニット7は、電動作業機1の動作状態を表示する表示部11と、トリガスイッチ12と、ロックオフスイッチ13とを備える。トリガスイッチ12は、モータ20の駆動指令を入力するための操作スイッチである。トリガスイッチ12は、作業者が押し下げ操作をしているときにだけオン状態となるタクトスイッチを備える。ロックオフスイッチ13は、トリガスイッチ12を操作可能とするための操作スイッチである。
【0027】
バッテリパック8は、制御ユニット9に着脱自在に装着されて制御ユニット9に直流電力を供給する。
図2に示すように、制御ユニット9は、駆動回路32、ゲート回路34、制御回路36およびレギュレータ40を備える。制御ユニット9は、バッテリパック8内のバッテリ18から電力を受けてモータ20を駆動制御する。本実施形態では、モータ20は、3相ブラシレスモータである。
【0028】
駆動回路32は、バッテリ18から電力を受けて、モータ20の各相巻線に電流を流すための回路である。本実施形態では、駆動回路32は、第1,2,3,3,4,5,6スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6を備える3相フルブリッジ回路として構成されている。本実施形態では、第1~6スイッチング素子Q1~Q6はMOSFETの形態である。
【0029】
駆動回路32において、第1~3スイッチング素子Q1~Q3は、モータ20の各端子U,V,Wと、バッテリ18の正極側に接続された電源ラインとに接続されている。第4~6スイッチング素子Q4~Q6は、モータ20の各端子U,V,Wと、バッテリ18の負極側に接続されたグランドラインとに接続されている。
【0030】
ゲート回路34は、制御回路36から出力された制御信号に従い、駆動回路32内の各第1~6スイッチング素子Q1~Q6をオン/オフさせることで、モータ20の各相巻線に電流を流し、モータ20を回転させる回路である。
【0031】
制御回路36は、CPU36a、ROM36bおよびRAM36c等を備えたマイクロコンピュータを含む。マイクロコンピュータの各種機能は、CPU36aが非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、ROM36bが、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムの実行により、プログラムに対応する方法が実行される。なお、CPU36aが実行する機能の一部または全部を、一つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、制御回路36は、1つまたは複数のマイクロコンピュータを備えてもよい。
【0032】
制御ユニット9は、電流検出回路42と、温度センサ44とを備える。電流検出回路42は、モータ20に流れた電流を検出する。温度センサ44は、駆動回路32の温度を検出する。
【0033】
また電動作業機1は、モータ20の回転位置および回転数を検出する回転センサ50を備える。
操作・表示ユニット7は、更に、主電源スイッチ14を備える。
【0034】
主電源スイッチ14は、作業者が押し下げ操作をしているときにだけオン状態となるタクトスイッチを備える。なお、本実施形態では、主電源スイッチ14の操作方法が2種類ある。1つは長押しであり、もう1つは短押しである。長押しは、主電源スイッチ14を押し下げた状態を所定時間(例えば2秒)以上維持させる操作であり、短押しは、主電源スイッチ14を押し下げた状態を上記所定時間未満維持させる操作である。
【0035】
このため、制御回路36は、主電源スイッチ14が長押しされる毎に、主電源のオン状態とオフ状態とが切り替わったことを認識する。
上述した表示部11、トリガスイッチ12、主電源スイッチ14、電流検出回路42、温度センサ44および回転センサ50は、制御回路36に接続される。
【0036】
レギュレータ40は、バッテリ18から電力を受けて、制御回路36を動作させるための電源電圧Vccを生成し、制御ユニット9の内部回路に電源電圧Vccを供給する。
レギュレータ40は、主電源スイッチ14がオン状態になると起動し、制御回路36への電源供給を開始する。これにより、制御回路36は、起動して、電動作業機制御処理を実行する。
【0037】
次に、制御回路36が実行する電動作業機制御処理の手順を説明する。電動作業機制御処理は、制御回路36に電源電圧Vccが供給されて制御回路36が起動した後に繰り返し実行される処理である。
【0038】
電動作業機制御処理が実行されると、制御回路36は、図3に示すように、まずS10にて、駆動回路32の温度を測定する。具体的には、制御回路36は、温度センサ44から出力される温度検出信号を取得し、温度検出信号の電圧に基づいて、駆動回路32の温度(以下、駆動回路温度Tdc)を算出する。
【0039】
そして制御回路36は、S20にて、トリガスイッチ12がオン状態であるか否かを判断する。ここで、トリガスイッチ12がオン状態でない場合には、制御回路36は、S10に移行する。
【0040】
一方、トリガスイッチ12がオン状態である場合には、制御回路36は、S30にて、駆動回路温度Tdcが予め設定されたブレーキ禁止温度T1以上であるか否かを判断する。本実施形態では、ブレーキ禁止温度T1は、例えば100℃である。
【0041】
ここで、駆動回路温度Tdcがブレーキ禁止温度T1未満である場合には、制御回路36は、S50に移行する。一方、駆動回路温度Tdcがブレーキ禁止温度T1以上である場合には、制御回路36は、S40にて、駆動回路32が過熱状態である旨を表示部11に表示し、S10に移行する。
【0042】
S50に移行すると、制御回路36は、モータ20を駆動させる。具体的には、制御回路36は、回転センサ50から出力される回転検出信号に基づいてモータ20の電気角を特定し、特定した電気角に応じて、駆動回路32内の各第1~6スイッチング素子Q1~Q6をオン状態またはオフ状態にすることで、モータ20の各相巻線に電流を流し、モータ20を回転させる。
【0043】
次に制御回路36は、S60にて、S10と同様にして、駆動回路32の温度を測定する。そして制御回路36は、S70にて、駆動回路温度Tdcがブレーキ禁止温度T1未満であるか否かを判断する。ここで、駆動回路温度Tdcがブレーキ禁止温度T1以上である場合には、制御回路36は、S80にて、S40と同様にして、駆動回路32が過熱状態である旨を表示部11に表示する。
【0044】
そして制御回路36は、S90にて、モータ駆動を停止し、モータ20の回転が停止するまで待機する。すなわち、制御回路36は、フリーランでモータ20の回転を停止させる。そして、モータ20の回転が停止すると、制御回路36は、電動作業機制御処理を終了する。
【0045】
またS70にて、駆動回路温度Tdcがブレーキ禁止温度T1未満である場合には、制御回路36は、S100にて、トリガスイッチ12がオフ状態であるか否かを判断する。ここで、トリガスイッチ12がオン状態である場合には、制御回路36は、S50に移行する。
【0046】
一方、トリガスイッチ12がオフ状態である場合には、制御回路36は、S110にて、駆動回路温度Tdcが予め設定されたブレーキ制限温度T2未満であるか否かを判断する。本実施形態では、ブレーキ制限温度T2は、例えば80℃である。
【0047】
ここで、駆動回路温度Tdcがブレーキ制限温度T2未満である場合には、制御回路36は、S120にて、後述する通常ブレーキ制御をモータ20の回転が停止するまで実行する。そして、モータ20の回転が停止すると、制御回路36は、電動作業機制御処理を終了する。
【0048】
一方、駆動回路温度Tdcがブレーキ制限温度T2以上である場合には、制御回路36は、S130にて、後述する弱ブレーキ制御をモータ20の回転が停止するまで実行する。そして、モータ20の回転が停止すると、制御回路36は、電動作業機制御処理を終了する。
【0049】
S120,S130では、例えば、3相ブラシレスモータの各端子間を短絡することで制動力を発生させるブレーキ(以下、短絡ブレーキ)が用いられる。そして、全相短絡ブレーキ、2相短絡ブレーキ、および、2相短絡ブレーキで使用されるスイッチング素子数等によりブレーキ電流が異なるように予め設定された複数種類の短絡ブレーキの中から、通常ブレーキ制御または弱ブレーキ制御に適した短絡ブレーキが予め設定されている。
【0050】
図4の線L1は、通常ブレーキ制御におけるブレーキ電流の時間変化を示す。図4の線L2は、弱ブレーキ制御におけるブレーキ電流の時間変化を示す。図4に示すように、トリガスイッチ12がオン状態からオフ状態に切り替わった時点(以下、ブレーキ開始時)では、通常ブレーキ制御のブレーキ電流値Ib1のほうが弱ブレーキ制御のブレーキ電流値Ib2よりも大きい。すなわち、通常ブレーキ制御の制動力は弱ブレーキ制御の制動力より大きい。
【0051】
また、通常ブレーキ制御においてブレーキ開始時からモータ20が停止するまでの制動時間Tb1は、弱ブレーキ制御においてブレーキ開始時からモータが停止するまでの制動時間Tb2より短い。
【0052】
なお、図4の線L3に示すように、トリガスイッチ12がオン状態からオフ状態に切り替わると、モータ駆動を停止してモータ20をフリーラン状態にすることでモータ20を徐々に減速させ、フリーラン時間Tfが経過した後に制動力を発生させる制御を弱ブレーキ制御として採用してもよい。
【0053】
このような電動作業機1は、駆動回路温度Tdcがブレーキ制限温度T2以上であり且つブレーキ禁止温度T1未満であるときにおいて、通常ブレーキ制御の制動力より弱い弱ブレーキ制御の制動力をモータ20に対して発生させることによって駆動回路温度Tdcの上昇を抑制し、駆動回路32の破損を抑制することができる。これにより、電動作業機1は、電動作業機1の破損を抑制することができる。
【0054】
このような電動作業機1は、駆動回路温度Tdcがブレーキ禁止温度T1以上である場合にモータ20に対して制動力を発生させないため、電動作業機1の破損を更に抑制することができる。
【0055】
このような電動作業機1は、トリガスイッチ12がオン状態であるときにおいて、駆動回路温度Tdcに応じて適切にモータ20を駆動させることができ、トリガスイッチ12がオフ状態であるときにおいて、駆動回路温度Tdcに応じて適切に制動力を発生させることができる。
【0056】
以上説明した実施形態において、バッテリ18は本開示における電源の一例に相当し、制御回路36は本開示における制御部の一例に相当し、駆動回路32は本開示における駆動部の一例に相当し、トリガスイッチ12は本開示における操作部の一例に相当し、温度センサ44は本開示における温度検出部の一例に相当する。
【0057】
また、電動作業機制御処理は本開示における駆動制御処理の一例に相当し、オン状態は本開示における操作オン状態の一例に相当し、オフ状態は本開示における操作オフ状態の一例に相当する。
【0058】
また、S10,S60は本開示における温度測定処理の一例に相当し、S50は本開示における操作駆動処理の一例に相当し、S120は本開示における第1制動処理の一例に相当し、S130は本開示における第2制動処理の一例に相当する。
【0059】
また、駆動回路32は本開示における測定対象部品の一例に相当し、駆動回路温度Tdcは本開示における部品温度の一例に相当し、ブレーキ禁止温度T1は本開示における禁止温度の一例に相当し、ブレーキ制限温度T2は本開示における制限温度の一例に相当する。
【0060】
また、通常ブレーキ制御の制動力は本開示における第1制動力の一例に相当し、弱ブレーキ制御の制動力は本開示における第2制動力の一例に相当し、S90は本開示における駆動停止処理の一例に相当し、S20,S100は本開示における操作判断処理の一例に相当する。
【0061】
[第2実施形態]
以下に本開示の第2実施形態を図面とともに説明する。なお第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分を説明する。共通する構成については同一の符号を付す。
【0062】
第2実施形態の電動作業機1は、電動作業機制御処理が変更された点が第1実施形態と異なる。
第2実施形態の電動作業機制御処理は、図5に示すように、S130の処理の代わりにS135の処理を実行する点が第1実施形態と異なる。
【0063】
すなわち、S110にて、駆動回路温度Tdcがブレーキ制限温度T2以上である場合には、制御回路36は、S135にて、モータ駆動を停止し、モータ20の回転が停止するまで待機する。すなわち、制御回路36は、フリーランでモータ20の回転を停止させる。そして、モータ20の回転が停止すると、制御回路36は、電動作業機制御処理を終了する。
【0064】
このような電動作業機1は、駆動回路温度Tdcがブレーキ制限温度T2以上であり且つブレーキ禁止温度T1未満であるときにおいて、モータ20に対して制動力を発生させないことによって駆動回路温度Tdcの上昇を抑制し、駆動回路32の破損を抑制することができる。これにより、電動作業機1は、電動作業機1の破損を抑制することができる。
【0065】
以上説明した実施形態において、S135は本開示における第2制動処理の一例に相当する。
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
【0066】
上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加または置換してもよい。
【0067】
上述した電動作業機1の他、当該電動作業機1を構成要素とするシステム、当該電動作業機1としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体、制御方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0068】
1…電動作業機、12…トリガスイッチ、18…バッテリ、20…モータ、32…駆動回路、36…制御回路、44…温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5