(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169074
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】端子
(51)【国際特許分類】
H01R 13/115 20060101AFI20221101BHJP
H01R 13/11 20060101ALN20221101BHJP
【FI】
H01R13/115 Z
H01R13/11 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074890
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】592028846
【氏名又は名称】I-PEX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【弁理士】
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】川部 英二
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼地 尚
(57)【要約】
【課題】接続対象物の破損を抑制することができる端子を提供する。
【解決手段】端子1は、本体部10と、弾性板20と、基部30と、押圧部40と、規制部としての第1突出部50とを備える。本体部10は、接続対象物90が挿入される開口部10aが形成され、開口部10aから接続対象物90が挿入方向D1に挿入可能な形状に形成されている。弾性板20は、本体部10の内部に配置されていると共に接続対象物90に接触する接触部21を有する。基部30は、接触部21との間において、接続対象物90を接触部21とで挟む。押圧部40は、挿入方向D1の奥寄りに位置する弾性板20の先端20aを基部30へ押し付ける。第1突出部50は、押圧部40から押し付けられる弾性板20の先端20aに対応する位置において、基部30に対して先端20aを非接触状態に保持するために、先端20aの押付け方向D2の移動を規制する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続対象物が挿入される開口部が形成され、前記開口部から前記接続対象物が挿入方向に挿入可能な形状に形成されていると共に、前記挿入方向に延設された本体部と、
前記本体部の内部に配置されていると共に、前記接続対象物に接触する接触部を有し、前記挿入方向に延設された弾性板と、
前記接触部との間において、前記接続対象物を前記接触部とで挟む基部と、
前記挿入方向の奥寄りに位置する前記弾性板の先端を前記基部へ押し付ける押圧部と、
前記押圧部から押し付けられる前記弾性板の前記先端に対応する位置において、前記基部に対して前記先端を非接触状態に保持するために、前記先端の押付け方向の移動を規制する規制部と、
を備える、端子。
【請求項2】
前記規制部は、前記弾性板の前記先端に向かって前記基部から突出する第1突出部として構成されている、請求項1に記載の端子。
【請求項3】
前記第1突出部の突出量は、前記接続対象物の前記押付け方向における長さよりも大きい、請求項2に記載の端子。
【請求項4】
前記挿入方向の手前寄りに位置する前記弾性板の基端に設けられると共に、前記開口部に向くように折り返される折返し部分を備え、
前記弾性板は、前記折返し部分を介して前記本体部に接続されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の端子。
【請求項5】
前記折返し部分は、丸みを帯びたアーチ部分として構成されている、請求項4に記載の端子。
【請求項6】
前記接触部は、前記弾性板にスリットが形成されることにより、片持ち状に形成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の端子。
【請求項7】
前記押圧部は、前記挿入方向における前記スリットの形成位置と重複していない位置に設けられている、請求項6に記載の端子。
【請求項8】
前記接続対象物の幅方向に対応する前記弾性板の幅方向の両端には、前記本体部に挿入されている前記接続対象物に向かって突出する第2突出部が形成されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の端子。
【請求項9】
前記基部には、前記接続対象物に係止し、前記基部に対する前記接続対象物の前記挿入方向における位置を規定する係止部が形成されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の端子。
【請求項10】
前記本体部には、前記接触部が接触した前記接続対象物が、前記接触部と前記基部とで挟まれつつ配置される底壁部分が形成され、
前記底壁部分は、前記基部の一部として形成されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、接続対象物としてのフラットケーブルが接続されている端子が開示されている。特許文献1に開示の端子は、介在部を介しつつ押付力を付与して、フラットケーブルの位置ずれを規制する押付部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の端子において、押付部は、アンビル、クリンパなどの治具を用いて曲げられ、先端が介在部の上面に突き当てられることによりフラットケーブルに押付力を付与している。フラットケーブルは、導体と、絶縁樹脂製の被覆部とを有しているが、絶縁樹脂は加水分解により劣化することがある。また、加水分解による劣化の速度は、絶縁樹脂に付与される圧力や周囲の温度により変化することがある。それゆえ、押付部がフラットケーブルに押付力を付与し続けることにより、フラットケーブルは、例えば、長時間の高温・高湿環境下に曝されると破損するおそれがある。
【0005】
本発明は、上述の事情の下になされたもので、接続対象物の破損を抑制することができる端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明に係る端子は、
接続対象物が挿入される開口部が形成され、前記開口部から前記接続対象物が挿入方向に挿入可能な形状に形成されていると共に、前記挿入方向に延設された本体部と、
前記本体部の内部に配置されていると共に、前記接続対象物に接触する接触部を有し、前記挿入方向に延設された弾性板と、
前記接触部との間において、前記接続対象物を前記接触部とで挟む基部と、
前記挿入方向の奥寄りに位置する前記弾性板の先端を前記基部へ押し付ける押圧部と、
前記押圧部から押し付けられる前記弾性板の前記先端に対応する位置において、前記基部に対して前記先端を非接触状態に保持するために、前記先端の押付け方向の移動を規制する規制部と、
を備える。
【0007】
前記規制部は、前記弾性板の前記先端に向かって前記基部から突出する第1突出部として構成されていてもよい。
【0008】
前記第1突出部の突出量は、前記接続対象物の前記押付け方向における長さよりも大きくてもよい。
【0009】
前記挿入方向の手前寄りに位置する前記弾性板の基端に設けられると共に、前記開口部に向くように折り返される折返し部分を備え、
前記弾性板は、前記折返し部分を介して前記本体部に接続されていてもよい。
【0010】
前記折返し部分は、丸みを帯びたアーチ部分として構成されていてもよい。
【0011】
前記接触部は、前記弾性板にスリットが形成されることにより、片持ち状に形成されていてもよい。
【0012】
前記押圧部は、前記挿入方向における前記スリットの形成位置と重複していない位置に設けられていてもよい。
【0013】
前記接続対象物の幅方向に対応する前記弾性板の幅方向の両端には、前記本体部に挿入されている前記接続対象物に向かって突出する第2突出部が形成されていてもよい。
【0014】
前記基部には、前記接続対象物に係止し、前記基部に対する前記接続対象物の前記挿入方向における位置を規定する係止部が形成されていてもよい。
【0015】
前記本体部には、前記接触部が接触した前記接続対象物が、前記接触部と前記基部とで挟まれつつ配置される底壁部分が形成され、
前記底壁部分は、前記基部の一部として形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る端子において、規制部は、押圧部から押し付けられる弾性板の先端に対応する位置において、基部に対して先端を非接触状態に保持するために、先端の押付け方向の移動を規制する。このため、規制部は、基部と接触部とで挟まれている接続対象物に対して、弾性板の先端を介して、押圧部から押付け力が加わることを抑制する。これにより、本発明に係る端子は、接続対象物の破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係る端子の斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る端子の平面図である。
【
図3】(A)は、
図2のA-A断面図である。(B)は、
図2のA-A断面で端子の内部を示した斜視図である。
【
図4】
図3(A)のD-D断面で端子の内部を示した斜視図である。
【
図5】接続対象物を本体部に挿入する前の端子の断面図である。
【
図6】第2突出部を説明するために、端子の一部を断面で示した斜視図である。
【
図8】(A)は、
図2のB-B断面図である。(B)は、
図2のB-B断面で端子の内部を示した斜視図である。
【
図9】(A)は、
図2のC-C断面図である。(B)は、
図2のC-C断面で端子の内部を示した斜視図である。
【
図10】本発明の実施の形態に係る端子の別の使用例を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る端子1について、図を用いて説明する。なお、理解を容易にするために、相互に直交するXYZ座標を設定し、適宜参照する。XYZ座標のY軸方向における+Y方向は、
図1に示すように、端子1の本体部10に対して接続対象物90が挿入される挿入方向D1と同一の方向である。X軸方向は、端子1又はその接続対象物90の幅方向D3と同一の方向である。Z軸方向は、X軸方向とY軸方向とに直交する方向である。
【0019】
端子1は、例えば、自動車部品に装備される電子回路部品として用いられ、
図1に示すように、接続対象物90とケーブル80との接続に用いられる。端子1は、導電性の素材からなる一枚の板状部材が折り曲げられて形成されている。この板状部材は、銅、銅合金等の導電性の素材からなる。ただし、これに限らず、端子1は、複数枚の板状部材が組み合わされて形成されていてもよい。
【0020】
接続対象物90は、本実施の形態においては、例えば、平坦な形状に形成されているフラットケーブルである。接続対象物90は、樹脂素材からなるフィルム状の基部90aと、基部90aの+Z寄りの表面に導電性の素材が印刷されたペースト部91とを有する。基部90aは、例えば、ポリカーボネート材から形成されている。ペースト部91は、例えば、銀から形成されている。また、ペースト部91は、基部90aの+Z寄りの表面において、幅方向D3の両側寄りの側端部(+X寄りの端部及び-X寄りの端部)近傍には印刷されていない。当該部分においては、基部90aの表面が+Z方向に露出している。これにより、基部90aの+Z寄りの表面は、導電性の素材が印刷されたペースト部91と、導電性の素材が印刷されていない非印刷部92とが形成される。なお、基部90a及びペースト部91の素材は任意である。基部90aは、ポリカーボネート材以外の素材から形成されていてもよいし、ペースト部91は、銀以外の素材から形成されていてもよい。また、接続対象物90は、本実施の形態においてはフラットケーブルとして構成されている。しかしながら、これに限られない。接続対象物90は、フラットケーブル以外のものから構成されていてもよい。例えば、接続対象物90は、フレキシブルプリント回路基板や、その他一般的なケーブルであってもよい。
【0021】
端子1は、
図1及び
図2に示すように、本体部10と、弾性板20と、基部30と、押圧部40と、第1突出部50(規制部)と、折返し部分60とを備える。
【0022】
本体部10には、接続対象物90が挿入される開口部10aが-Y方向に開口されて形成されている。そして、本体部10は、接続対象物90がこの開口部10aから挿入方向D1(+Y方向)に挿入可能な筒形状に形成されていると共に、挿入方向D1又はY軸方向に延設されている。本実施の形態においては、本体部10は、幅方向D3を長手方向とする長方形のXZ断面を有する四角筒形状に形成されている。また、本体部10には、
図3に示すように、接続対象物90が配置される底壁部分11が形成されている。
【0023】
弾性板20は、
図3及び
図4に示すように、少なくとも一部が本体部10の内部に配置され、挿入方向D1又はY軸方向に延設されている。具体的には、弾性板20の先端20a及び基端20bが、本体部10から露出しつつ、弾性板20は、本体部10の内部に配置されている。したがって、弾性板20の先端20aは、本体部10の内部よりも挿入方向D1の奥寄りに配置されると共に、弾性板20の基端20bは、本体部10の内部よりも挿入方向D1の手前寄りに配置される。この弾性板20は、接続対象物90に接触する接触部21を有する。弾性板20と底壁部分11との間には、この接触部21によって-Z方向に押さえられつつ接続対象物90が配置される。
【0024】
接触部21は、
図4、5に示すように、弾性板20にスリット22が設けられることにより形成されている。例えば、弾性板20には、スリット22を形成するための切込みが入れられている。そして、その切り込まれた弾性板20の一部が、曲げ方向D5に起こされることにより、接触部21が、+Y寄りの端部を自由端とする片持ち状に形成される。この接触部21は、-Z方向に突出するアーチ形状を有する。接触部21のアーチ部分の頂点は、本体部10に接続対象物90が挿入された場合、接続対象物90と電気的に接触する接点として構成される。また、本実施の形態においては、
図4に示すように、弾性板20には、2つの接触部21が設けられている。ただし、これに限らず、弾性板20が有する接触部21の数は、端子1の用途や本体部10の形状に応じて、適宜、変更されてもよい。例えば、接触部21は、弾性板20に1つ設けられていてもよいし、3つ以上設けられていてもよい。
【0025】
また、
図6及び
図7に示すように、弾性板20には、第2突出部23R、23Lと、線状突出部24とが形成されている。
【0026】
第2突出部23R、23Lは、接続対象物90の幅方向D3に対応する弾性板20の幅方向D3における両端(+X寄りの端部及び-X寄りの端部)に形成されている。この第2突出部23R、23Lは、弾性板20の幅方向D3の両端から突出してから、Y軸を中心軸として湾曲することで、本体部10に挿入されている接続対象物90に向かって突出して設けられている。詳しくは、第2突出部23R、23Lは、本体部10に挿入されている接続対象物90の非印刷部92に向かって突出して設けられている。また、第2突出部23R、23Lは、弾性板20の幅方向D3の両端に沿って、Y軸方向に延設されている。
【0027】
線状突出部24は、幅方向D3に沿って比較的長く形成されている弾性板20の剛性を高めるために形成されている。線状突出部24は、弾性板20の+Z寄りの面において+Z方向に突出すると共に、弾性板20の幅方向D3の中央においてY軸方向に延設されている。この線状突出部24は、一対の接触部21の間に形成されている。
【0028】
基部30は、
図3及び
図4に示すように、接触部21との間において、接続対象物90を接触部21とで挟む部分である。また、本実施の形態においては、上述した本体部10の底壁部分11が、この基部30の一部として形成されている。ただし、これに限られない。本体部10の底壁部分11は、この基部30の一部ではなく、別体であってもよい。基部30は、
図2及び
図4に示すように、+Y方向に幅方向D3の寸法が徐々に小さくなる先細り形状に形成されている。基部30の+Y寄りの端部には、導体かしめ部32と被覆固定部33とが形成されている。導体かしめ部32は、かしめにより、ケーブル80の導電性の芯線に圧着され、電気的に接続される。被覆固定部33は、かしめにより、ケーブル80の絶縁性の被覆部の端部を押さえて、導体かしめ部32と芯線との接続を引抜き力から保護する。
【0029】
また、基部30には、導体かしめ部32及び被覆固定部33に加えて、
図8に示すように、係止部31が形成されている。
【0030】
係止部31は、接続対象物90に係止し、基部30に対する接続対象物90の挿入方向D1又はY軸方向における位置を規定されるために設けられている。係止部31は、例えば、係止部31の形状に対応したスリットが基部30に切り込まれて形成されて、切り込まれた部分がスリットから引き起こされることにより、片持ち状に形成されている。本実施の形態において、係止部31は、接続対象物90に形成されているZ軸方向に貫通する被係止孔93の縁に係止する。係止部31が被係止孔93の縁に係止することにより、基部30に対する接続対象物90の位置を規定できるため、端子1に対する接続対象物90の接続作業の効率を向上させることができる。
【0031】
押圧部40は、
図1及び
図3に示すように、治具などによって折り曲げられることで、弾性板20の先端20aを基部30の方向へ押し付ける。これにより、押圧部40は、基端20bを基点に弾性板20を撓ませて、その結果、弾性板20の接触部21を接続対象物90に接触させて、弾性板20と接続対象物90とを電気的に接続させる。本実施の形態においては、押圧部40は、基部30の幅方向D3の両側の端部(+X寄りの端部及び-X寄りの端部)に1つずつ、計2つ設けられている。しかしながら、これに限られない。押圧部40は、1つのみ設けられていてもよいし、3つ以上設けられていてもよい。ただし、本実施の形態では、接続対象物90がフラットケーブルであり、接続対象物90を基部30に安定して固定できる観点から、押圧部40は、基部30の幅方向D3の両側の端部(+X寄りの端部及び-X寄りの端部)に1つずつ設けられていることが好ましい。また、押圧部40は、挿入方向D1におけるスリット22の形成位置と重複していない位置に設けられている。具体的には、押圧部40は、弾性板20におけるスリット22の形成位置よりも挿入方向D1の奥寄り(+Y寄り)に設けられている。
【0032】
第1突出部50は、押圧部40から押し付けられる弾性板20の先端20aに対応する位置において、基部30に対して先端20aを非接触状態に保持するためのものである。これにより、第1突出部50は、先端20aの押付け方向D2の移動を規制する規制部として機能する。第1突出部50は、本実施の形態においては、第1突出部50の形状に対応したスリット50aが基部30に切り込まれて形成されている。そして、第1突出部50は、切り込まれた部分がスリット50aから、
図9の折曲げ方向D4に概ね直角に折り曲げられることで、+Z方向に突出して形成されている。しかしながら、これに限られない。第1突出部50は、例えば、基部30とは別体に形成し、基部30に接着などにより固定するようにしてもよい。ただし、端子1の製造において、製造コストを抑制する観点からは、第1突出部50は、基部30の一部が切り起こされて形成されている方が好ましい。また、第1突出部50は、
図9に示すように、そのZ軸方向の長さである突出量が、接続対象物90の押付け方向D2における長さである厚みよりも大きく形成されている。
【0033】
折返し部分60は、
図1及び
図3に示すように、挿入方向D1の手前寄り(-Y寄り)に位置する弾性板20の基端20bに設けられると共に、開口部10aを向くように折り返されている。折返し部分60は、本体部10と弾性板20とを接続する部分である。これにより、弾性板20は、折返し部分60を介して、本体部10に接続されている。本実施の形態においては、折返し部分60は、丸みを帯びたアーチ部分を有する。しかしながら、これに限られない。折返し部分60は、丸みを帯びた形状を有していなくてもよい。また、折返し部分60には、折返し部分60を形成するために折り曲げやすくするための間隙61が部分的に形成されている。
【0034】
以上、説明したように、本実施の形態に係る端子1では、
図1及び
図3に示すように、第1突出部50が、押圧部40から押し付けられる弾性板20の先端20aに対応する位置において、基部30に対して先端20aを非接触状態に保持する。そして、第1突出部50は、先端20aの押付け方向D2の所定以上の移動を規制する規制部として機能する。このため、第1突出部50は、基部30と接触部21とで挟まれている接続対象物90に対して、弾性板20の先端20aを介して、押圧部40から押付け力が加わることを抑制できる。これにより、本実施の形態に係る端子1は、接続対象物90に対して押付け力が加えられた場合と比較して加水分解による基部90aの劣化を抑制することができる。また、本実施の形態に係る端子1は、接続対象物90に対して押付け力が継続して加わることによる基部90aの破損を抑制することができる。以上により、本実施の形態に係る端子1は、接続対象物90の破損を抑制することができる。
【0035】
また、本実施の形態においては、第1突出部50は、
図3及び
図9に示すように、そのZ軸方向の長さである突出量が、接続対象物90の押付け方向D2における長さである厚みよりも大きく形成されている。このため、第1突出部50は、弾性板20の先端20aへの押圧部40の押付けを確実に規制することができる。ひいては、第1突出部50は、基部30と接触部21とで挟まれている接続対象物90に対して、弾性板20の先端20aを介して、押圧部40から押付け力が加わることを抑制できる。これにより、本実施の形態に係る端子1は、接続対象物90の破損を抑制することができる。
【0036】
また、本実施の形態に係る端子1は、
図1及び
図3に示すように、丸みを帯びたアーチ部分を有する折返し部分60を備える。このため、例えば、外部からの力が加わり、接続対象物90が基部30から捲れた場合において、この捲れた部分が、端子1に干渉することを抑制することができる。具体的には、折返し部分60を備えない端子の場合、基部30から捲れた部分は、端子1の本体部10の天壁部分12に干渉することが懸念される。そして、基部30から捲れた部分が、天壁部分12に干渉すると、天壁部分12の角部分によって、接続対象物90のペースト部91が剥がれたり、摩耗したりし、この結果、接続対象物90が破損するおそれがある。これに対して、端子1は、アーチ部分を有する折返し部分60を備える。これにより、端子1は、接続対象物90が基部30から捲れた場合においてもアーチ部分の丸みにより、接続対象物90のペースト部91が剥がれたり、摩耗したりするなどの接続対象物90の破損を抑制することができる。
【0037】
また、本実施の形態に係る端子1では、
図3に示すように、押圧部40は、挿入方向D1におけるスリット22の形成位置と重複していない位置に設けられている。このため、押圧部40は、弾性板20においてスリット22が形成されていない部分である先端20aを確実に押さえることができる。これにより、第1突出部50は、弾性板20の先端20aへの押圧部40の押付けを確実に規制することができる。ひいては、第1突出部50は、基部30と接触部21とで挟まれている接続対象物90に対して、弾性板20の先端20aを介して、押圧部40から押付け力が加わることを抑制できる。結果として、本実施の形態に係る端子1は、接続対象物90の破損を抑制することができる。
【0038】
また、本実施の形態に係る端子1において、接続対象物90の幅方向D3に対応する弾性板20の幅方向D3における両端には、
図6及び
図7に示すように、本体部10に挿入されている接続対象物90の非印刷部92に向かって突出する第2突出部23R、23Lが形成されている。このため、接続対象物90が基部30から捲れることを防止できる。また、接続対象物90が基部30から捲れた場合であっても、第2突出部23R、23Lは、接続対象物90の非印刷部92に干渉し、ペースト部91には干渉しないため、接続対象物90の破損を抑制することができる。
【0039】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態によって限定されるものではない。
【0040】
例えば、本発明の実施の形態では、
図3に示すように、規制部として機能する第1突出部50は、弾性板20の先端20aに向かって基部30から突出している。しかしながら、これに限られない。第1突出部50は、弾性板20の先端20aを基部30に対して非接触状態に保持できれば、突出する形状以外のものであってもよい。
【0041】
また、本発明の実施の形態では、第1突出部50の突出量は、
図3及び
図9に示すように、接続対象物90の押付け方向D2における長さよりも大きい。しかしながら、これに限られない。例えば、第1突出部50の突出量は、接続対象物90の押付け方向D2における長さと同等であってもよい。この場合においても、第1突出部50は、基部30と接触部21とで挟まれている接続対象物90に対して、押圧部40から押付け力が加わることを抑制できる。これにより、本実施の形態に係る端子1は、接続対象物90の破損を抑制することができる。しかしながら、接続対象物90に対して押圧部40から押付け力が加わることを確実に抑制できる観点からは、発明の実施の形態のように、第1突出部50の突出量は、接続対象物90の押付け方向D2における長さよりも大きい方が好ましい。
【0042】
また、本発明の実施の形態に係る端子1は、
図1及び
図3に示すように、折返し部分60を有し、弾性板20は、この折返し部分60を介して本体部10に接続されている。これにより、弾性板20は本体部10に対して一体的に形成されている。しかしながら、これに限られない。例えば折返し部分60を有さずに、弾性板20は本体部10とは別体に形成されていてもよい。
【0043】
また、本発明の実施の形態では、
図3及び
図4に示すように、接触部21は、弾性板20にスリット22が切り込まれ、この切り込まれた部分がスリット22から引き起こされることにより、片持ち状に形成されている。しかしながら、これに限られない。接触部21は、両持ち状に形成されていてもよい。しかしながら、製造の容易さの観点から、接触部21は、片持ち状に形成されている方が好ましい。また、接触部21の弾性力や撓みやすさを確保して、接続対象物90への電気的接続能力の観点からも、接触部21は、片持ち状に形成されている方が好ましい。
【0044】
また、本発明の実施の形態では、
図1に示すように、端子1が接続する接続対象物90は、幅方向D3の両側寄りの側端部近傍に、導電性の素材が印刷されていない非印刷部92が形成され、それらの間にペースト部91が形成されているものである。しかしながら、端子1の接続の対象は、接続対象物90の形状、仕様に限定されるものではない。例えば、
図10に示す接続対象物90-2のように、2つのペースト部91の間に、非印刷部94が形成され、接続対象物90よりもさらに幅方向D3に長いフラットケーブルであってもよい。この接続対象物90-2には、2つの端子1が接続される。
【0045】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【符号の説明】
【0046】
1:端子、10:本体部、10a:開口部、11:底壁部分、12:天壁部分、20:弾性板、20a:先端、20b:基端、21:接触部、22:スリット、23R,23L:第2突出部、24:線状突出部、30:基部、31:係止部、32:導体かしめ部、33:被覆固定部、40:押圧部、50:第1突出部、50a:スリット、60:折返し部分、61:間隙、80:ケーブル、90,90-2:接続対象物、90a:基部、91:ペースト部、92,94:非印刷部、93:被係止孔、D1:挿入方向、D2:押付け方向、D3:幅方向、D4:折曲げ方向、D5:曲げ方向。