(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169120
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B60K 20/02 20060101AFI20221101BHJP
B60K 17/10 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
B60K20/02 H
B60K17/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074961
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(72)【発明者】
【氏名】渡部 瑞樹
(72)【発明者】
【氏名】難波 晟史
【テーマコード(参考)】
3D040
3D042
【Fターム(参考)】
3D040AA03
3D040AB04
3D040AC36
3D040AC50
3D040AE09
3D040AF07
3D040AF26
3D042AB11
3D042BA02
3D042BC07
3D042BD04
3D042BD09
(57)【要約】
【課題】前記アクチュエータを介して前記無段階変速装置を制御する作業車両において、前記制御部は、前記無段階変速装置を前進側から中立状態に操作した場合であっても後進側から中立状態に操作した場合であっても、スムーズ且つ確実に中立状態に制御可能に構成した作業車両を提供することを課題とする。
【解決手段】走行機体と、油圧式無段階変速装置と、変速操作具の操作を検出する操作検出手段と、前記油圧式無段階変速装置を操作する操作部材と、前記操作部材を操作するモータと、制御部とを備え、前記制御部は、前記走行機体が後進走行している状態で前記変速操作具によって前記油圧式無段階変速装置を中立状態に変速する操作をした場合には、前記操作部材を後進側から第1操作位置よりも前進側に予め設定した所定の第3操作位置を経由させた後に前記第1操作位置に操作する後進停止操作をすることにより前記無段階変速装置を中立状態に制御するように構成された。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレータが走行操作を行う操縦部を有する走行機体と、
前記走行機体の走行動力を変速する油圧式無段階変速装置と、
前記操縦部に設けられて前記油圧式無段階変速装置の変速操作を行うための変速操作具と、
前記変速操作具の操作を検出する操作検出手段と、
前記油圧式無段階変速装置を操作する操作部材と、
前記操作部材を操作するモータと、
前記変速操作具の操作に応じて前記モータの駆動を制御することにより、前記油圧式無段階変速装置を前進状態、中立状態、又は後進状態へ変速する制御部とを備え、
前記制御部は、前記操作部材の操作位置として、前記無段階変速装置を前進側から中立状態へと変速操作可能な第1操作位置を予め記憶し、
前記制御部は、前記走行機体が前進走行している状態で前記変速操作具によって前記油圧式無段階変速装置を中立状態に変速する操作をした場合には、前記操作部材を前進側からそのまま第1操作位置に操作する前進停止操作をすることにより前記無段階変速装置を中立状態とし、前記走行機体が後進走行している状態で前記変速操作具によって前記油圧式無段階変速装置を中立状態に変速する操作をした場合には、前記操作部材を後進側から第1操作位置よりも前進側に予め設定した所定の第3操作位置を経由させた後に前記第1操作位置に操作する後進停止操作をすることにより前記無段階変速装置を中立状態に制御するように構成された
作業車両。
【請求項2】
オペレータが走行操作を行う操縦部を有する走行機体と、
前記走行機体の走行動力を変速する油圧式無段階変速装置と、
前記操縦部に設けられて前記油圧式無段階変速装置の変速操作を行うための変速操作具と、
前記変速操作具の操作を検出する操作検出手段と、
前記油圧式無段階変速装置を操作する操作部材と、
前記操作部材を操作するモータと、
前記変速操作具の操作に応じて前記モータの駆動を制御することにより、前記油圧式無段階変速装置を前進状態、中立状態、又は後進状態へ変速する制御部とを備え、
前記制御部は、前記操作部材の操作位置として、前記無段階変速装置を前進側から中立状態へと変速操作可能な第1操作位置と、前記無段階変速装置を後進側から中立状態へと変速操作可能な第2操作位置とを予め記憶し、
前記制御部は、前記走行機体が前進走行している状態で前記変速操作具によって前記油圧式無段階変速装置を中立状態に変速する操作をした場合には、前記操作部材を前進側からそのまま第1操作位置に操作する前進停止操作をすることにより前記無段階変速装置を中立状態とし、前記走行機体が後進走行している状態で前記変速操作具によって前記油圧式無段階変速装置を中立状態に変速する操作をした場合には、前記操作部材を後進側からそのまま第2操作位置に操作する後進停止操作をすることにより前記無段階変速装置を中立状態に制御するように構成された
作業車両。
【請求項3】
前記変速操作具とは別途に前記操作部材を介して前記油圧式無段階変速装置を中立状態へ手動で切換操作する手動切換操作具と、
前記手動切換操作具の操作を検出する手動操作検出センサとを設け、
前記手動切換操作具は、前記操作部材を前記第1操作位置に操作することができるように構成され、
前記制御部は、前記無段階変速装置が後進状態の際に実行された前記手動切換操作具の切換操作の解除操作が検出された場合には、前記操作部材を後進側停止操作するように構成された
請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記手動切換操作具をブレーキ操作具とした
請求項3に記載の作業車両。
【請求項5】
前記モータと前記操作部材との間にトルクリミッタ式のクラッチを設け、
前記クラッチは、前記モータにより駆動する支持軸回りに空転する爪クラッチ部と、前記爪クラッチ部と相対するとともに前記支持軸と一体回転する噛合部と、前記クラッチ部と噛合部の回転方向に沿って形成される傾斜部と、前記爪クラッチ部又は噛合部を付勢する付勢部材とを有し、前記ブレーキペダルの踏込み操作された場合には、前記前記モータと前記操作部材との間の動力伝動が切断するように構成され、
前記クラッチは、前記ブレーキ操作具の手動操作された場合に、前記傾斜部が前記操作部材を第1操作位置に操作した場合と第2操作位置に操作した場合とで生じるずれ量の範囲内に収まるように構成した
請求項4に記載の作業車両
【請求項6】
前記制御部は、前記ブレーキペダルの踏込み操作が検出された場合には、操作部材が操作される方向に向けて前記モータを駆動させるように構成された
請求項4又は5に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の変速操作を制御する制御部を備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
オペレータが走行操作を行う操縦部を有する走行機体と、前記走行機体の走行動力を変速する油圧式無段階変速装置と、前記操縦部に設けられて前記油圧式無段階変速装置の変速操作を行うための変速操作具と、前記変速操作具の操作位置を検出する操作位置検出手段と、前記変速操作具の操作位置に応じて前記油圧式無段階変速装置を前進状態、中立状態、又は後進状態へ変速制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記変速操作具を中立位置から一方側に操作した前進位置に操作された場合には前記油圧式無段階変速装置を前進側に変速し、前記変速操作具を中立位置から他方側の後進位置に操作した場合には前記油圧式無段階変速装置を後進側に変速するように構成した特許文献1に記載の作業車両が従来公知である。
【0003】
上記文献の作業車両によれば、電動アクチュエータを介した電動操作式によって前記無段階変速装置を変速操作することができるものであるが、前記油圧式無段階変速装置は前進側から中立位置に操作した場合と、後進側から中立位置に操作した場合とで油圧式無段階変速装置の操作位置にバラつきが出るため、前記変速操作具を中立位置に操作した際に前記走行機体が意図しない動作をする場合が有り得る他、これを是正するための調整に手間が掛かるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記アクチュエータを介して前記無段階変速装置を制御する作業車両において、前記制御部は、前記無段階変速装置を前進側から中立状態に操作した場合であっても後進側から中立状態に切換操作した場合であっても、スムーズ且つ確実に中立状態に切換えることができるように構成された作業車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本願発明は第1に、オペレータが走行操作を行う操縦部を有する走行機体と、前記走行機体の走行動力を変速する油圧式無段階変速装置と、前記操縦部に設けられて前記油圧式無段階変速装置の変速操作を行うための変速操作具と、前記変速操作具の操作を検出する操作検出手段と、前記油圧式無段階変速装置を操作する操作部材と、前記操作部材を操作するモータと、前記変速操作具の操作に応じて前記モータの駆動を制御することにより、前記油圧式無段階変速装置を前進状態、中立状態、又は後進状態へ変速する制御部とを備え、前記制御部は、前記操作部材の操作位置として、前記無段階変速装置を前進側から中立状態へと変速操作可能な第1操作位置を予め記憶し、前記制御部は、前記走行機体が前進走行している状態で前記変速操作具によって前記油圧式無段階変速装置を中立状態に変速する操作をした場合には、前記操作部材を前進側からそのまま第1操作位置に操作する前進停止操作をすることにより前記無段階変速装置を中立状態とし、前記走行機体が後進走行している状態で前記変速操作具によって前記油圧式無段階変速装置を中立状態に変速する操作をした場合には、前記操作部材を後進側から第1操作位置よりも前進側に予め設定した所定の第3操作位置を経由させた後に前記第1操作位置に操作する後進停止操作をすることにより前記無段階変速装置を中立状態に制御するように構成されたことを特徴としている。
【0007】
第2に、オペレータが走行操作を行う操縦部を有する走行機体と、前記走行機体の走行動力を変速する油圧式無段階変速装置と、前記操縦部に設けられて前記油圧式無段階変速装置の変速操作を行うための変速操作具と、前記変速操作具の操作を検出する操作検出手段と、前記油圧式無段階変速装置を操作する操作部材と、前記操作部材を操作するモータと、前記変速操作具の操作に応じて前記モータの駆動を制御することにより、前記油圧式無段階変速装置を前進状態、中立状態、又は後進状態へ変速する制御部とを備え、前記制御部は、前記操作部材の操作位置として、前記無段階変速装置を前進側から中立状態へと変速操作可能な第1操作位置と、前記無段階変速装置を後進側から中立状態へと変速操作可能な第2操作位置とを予め記憶し、前記制御部は、前記走行機体が前進走行している状態で前記変速操作具によって前記油圧式無段階変速装置を中立状態に変速する操作をした場合には、前記操作部材を前進側からそのまま第1操作位置に操作する前進停止操作をすることにより前記無段階変速装置を中立状態とし、前記走行機体が後進走行している状態で前記変速操作具によって前記油圧式無段階変速装置を中立状態に変速する操作をした場合には、前記操作部材を後進側からそのまま第2操作位置に操作する後進停止操作をすることにより前記無段階変速装置を中立状態に制御するように構成されたことを特徴としている。
【0008】
第3に、前記変速操作具とは別途に前記操作部材を介して前記油圧式無段階変速装置を中立状態へ手動で切換操作する手動切換操作具と、前記手動切換操作具の操作を検出する手動操作検出センサとを設け、前記手動切換操作具は、前記操作部材を前記第1操作位置に操作することができるように構成され、前記制御部は、前記無段階変速装置が後進状態の際に実行された前記手動切換操作具の切換操作の解除操作が検出された場合には、前記操作部材を後進停止操作するように構成されたことを特徴としている。
【0009】
第4に、前記手動切換操作具をブレーキ操作具としたことを特徴としている。
【0010】
第5に、前記モータと前記操作部材との間にトルクリミッタ式のクラッチを設け、前記クラッチは、前記モータにより駆動する支持軸回りに空転する爪クラッチ部と、前記爪クラッチ部と相対するとともに前記支持軸と一体回転する噛合部と、前記クラッチ部と噛合部のそれぞれに回転方向に沿って形成される傾斜部と、前記爪クラッチ部又は噛合部を付勢する付勢部材とを有し、前記ブレーキペダルの踏込み操作された場合には、前記前記モータと前記操作部材との間の動力伝動が切断するように構成され、前記クラッチは、前記ブレーキ操作具の手動操作された場合に、前記傾斜部が前記操作部材を第1操作位置に操作した場合と第2操作位置に操作した場合とで生じるずれ量の範囲内に収まるように構成したことを特徴としている。
【0011】
第6に、前記制御部は、前記ブレーキペダルの踏込み操作が検出された場合には、操作部材が操作される方向に向けて前記モータを駆動させるように構成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
前記制御部によれば、前記走行機体が前進走行している状態で前記変速操作具によって前記油圧式無段階変速装置を中立状態に変速する操作をした場合には、前記操作部材を前進停止操作することで前記無段階変速装置を中立状態とし、前記走行機体が後進走行している状態で前記変速操作具によって前記油圧式無段階変速装置を中立状態に変速する操作をした場合には、前記操作部材を後進停止操作することで前記無段階変速装置を中立状態とするように前記モータを制御することができるため、前進側から中立状態に操作される場合と後進側から中立状態に操作される場合とでヒステリシス特性を有する前記無段階変速装置を、確実且つ正確に中立状態へと変速制御することができる。
【0013】
また、前記変速操作具とは別途に前記操作部材を介して前記油圧式無段階変速装置を中立状態へ手動で切換操作する手動切換操作具と、前記手動切換操作具の操作を検出する手動操作検出センサとを設け、前記手動切換操作具は、前記操作部材を前記第1操作位置に操作することができるように構成され、前記制御部は、前記無段階変速装置が後進状態の際に実行された前記手動切換操作具の切換操作の解除操作が検出された場合には、前記操作部材を後進停止操作するように構成されたものによれば、前記手動切換操作具を操作した場合でも、前記油圧式無段階変速装置をより確実に中立状態に操作できる。また、前記手動切換操作具により、使用頻度の多い前進側から中立状態への切換時には機械的連係のみ前記無段階変速装置を精度良く操作することができるため安全性も向上する。
【0014】
また、前記手動切換操作具をブレーキペダルとしたものによれば、前記ブレーキペダルの踏込み操作によって、制動操作と、前記無段階変速装置の中立状態への操作とが同時に実行されるため、前記走行機体の停止をより確実に行うことができる。
【0015】
また、前記モータと前記操作部材との間にトルクリミッタ式のクラッチを設け、前記クラッチは、前記モータにより駆動する支持軸回りに空転する爪クラッチ部と、前記爪クラッチ部と相対するとともに前記支持軸と一体回転する噛合部と、前記クラッチ部と噛合部の回転方向に沿って形成される傾斜部と、前記爪クラッチ部又は噛合部を付勢する付勢部材とを有し、前記ブレーキペダルの踏込み操作された場合には、前記前記モータと前記操作部材との間の動力伝動が切断するように構成され、前記クラッチは、前記ブレーキ操作具の手動操作された場合に、前記傾斜部が前記操作部材を第1操作位置に操作した場合と第2操作位置に操作した場合とで生じるずれ量の範囲内に収まるように構成したものによれば、後進状態からブレーキ操作した場合でも、前記クラッチをスムーズに接続して前記無段階変速装置を確実に中立状態に操作できるため、安全性がより向上する。
【0016】
なお、前記制御部は、前記ブレーキペダルの踏込み操作が検出された場合には、操作部材が操作される方向に向けて前記モータを駆動させるように構成されたものによれば、オペレータによってブレーキペダルが踏込み操作された際に、前記モータが破損することを防止できるとともに、前記ブレーキ操作が解除された後に、前記クラッチがスムーズに接続されるため、変速操作具が操作された際に、クラッチが接続されるまで無駄に前記モータが回転駆動してラグが生じることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の作業車両を適用した乗用田植機(移植機)の全体側面図である。
【
図2】本発明の作業車両を適用した乗用田植機(移植機)の全体平面図である。
【
図3】操舵機構及びHST制御機構を示した要部側面図である。
【
図4】操舵機構及びHST制御機構を示した要部前方斜視図である。
【
図5】操舵機構及びHST制御機構を示した要部後方斜視図である。
【
図6】走行HSTを操作する操作アームを示した要部拡大図である。
【
図7】(A)及び(B)は、ブレーキ操作具の操作前と、操作中のブレーキ操作連係機構を示した要部側面図である。
【
図8】(A)は、HST中立変速制御において走行HSTを前進側から中立状態に切換える際のトラニオン軸の操作位置と走行HSTの出力回転との関係を示すグラフであり、(B)は、HST中立変速制御において走行HSTを後進側から中立状態に切換える際のトラニオン軸の操作位置と走行HSTの出力回転との関係を示すグラフであり、(C)は、HST中立変速制御の別実施例を示したトラニオン軸の操作位置と走行HSTの出力回転との関係を示すグラフである。
【
図10】HST中立変速制御を示した処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1及び
図2は、本発明の作業車両を適用した乗用田植機(移植機)の全体側面図及び全体平面図である。本乗用田植機は、左右一対の前輪1,1及び後輪2,2によって支持される走行機体3と、前記走行機体3の後方に昇降リンク4を介して昇降自在に連結された植付作業機6とを備えている。
【0019】
前記走行機体3を支持する機体フレーム8は、前方にボンネット9で囲繞されたエンジン(図示しない)と、前記エンジンから入力されたエンジン動力を無段階で変速する走行HST(油圧式無段階変速装置、油圧式変速装置)10と、前記走行HST10から出力された動力が入力されるミッションケース11とを備え、前記エンジンの後方側には、オペレータ(作業者)が乗込んで操向操作等を行う操縦部7が設けられている。
【0020】
前記操縦部7は、オペレータが着座する座席12と、後述する操舵機構20を介して前記走行機体3(前輪1)の操向操作を行うステアリングハンドル13と、前記ステアリングハンドル13の左右一方側に設けられて少なくとも前後揺動操作される主変速レバー(変速操作具、前後進切換レバー)14と、前記走行機体3のギヤ変速を操作する副変速レバー16と、前記ステアリングハンドル13の下側のフロアステップ17と、該フロアステップの17の前側に踏込み操作可能に設けられて前記走行機体3のブレーキ作動(制動)を操作するブレーキペダル(手動切換操作具)18とが配置されている。
【0021】
上記主変速レバー14は、上端側の把持部にオペレータが握った状態で押操作可能に配置されたスイッチ操作具14aが設けられている。該スイッチ操作具14aは、前記主変速レバー14により操作される前記走行機体3の変速量を少なくする低速モードに切換える切換スイッチ(切換操作具)である。
【0022】
また、上記主変速レバー14は、若干前方傾斜した基本位置(中立位置)から前後揺動可能に構成されるとともに、該主変速レバー14の前後揺動操作が解除されると(主変速レバー14から手を離すと)該主変速レバー14が自動的に中立位置に復帰するように構成されている(
図3等参照)。また、前記主変速レバー14は、操作位置検出ポテンショ(操作検出手段、操作位置検出センサ)46によって、前記主変速レバー14による変速操作の有無や、中立位置からの揺動操作量等を検出することができるように構成されている。
【0023】
これにより、後述する前記制御部50は、前記主変速レバー14を中立位置から前後揺動操作をした後に予め定めた所定時間内に中立位置に復帰する操作(以下、有段変速操作)が検出された場合には、前記走行HST10を有段階で変速操作するとともに、前記主変速レバー14を中立位置から所定時間以上の前後揺動操作(以下、無段階変速操作)したことが検出された場合には、前記主変速レバー14の操作量と操作時間に応じて前記走行HST10を無段階で変速操作する、HST変速制御が実行可能に構成されている。なお、該HST変速制御は、有段階又は無段階の一方のみに対応する構成であっても良い。
【0024】
これに伴い、前記走行HST10には、該主変速レバー14の操作に応じて、前記走行HST10を変速操作するトラニオン軸35を制御することにより、前記走行HST10を前進状態と、停止状態と、後進状態とを切換えることができるHST制御機構30が設けられている。前記HST制御機構30の具体的な構成については後述する。
【0025】
上記ブレーキペダル18は、オペレータが踏込み操作を行う踏板部18aと、該踏板部18aから下方及び後方に向けてU字状に延設された棒状の延設部18bと、該延設部18bの後端側を前記フロアステップの下方に配置された左右方向の支持軸15に軸支する軸支部18cとを有し、前記踏板部18aが情報揺動された初期位置に付勢されている(
図5等参照)。なお、前記ブレーキペダル18(の軸支部18c)には、前記HST制御機構30を介して、前記走行HST10をニュートラル状態(中立状態)へと切換操作するブレーキ操作連係機構40が設けられている。詳しくは後述する。
【0026】
前記植付作業機6は、圃場へ植付けられる苗が載置される苗載台22と、該苗載台22に載置された苗を圃場へ植付ける植付作業を行う植付部23とを有し、前記昇降シリンダ4を介して前記走行機体3に対して昇降作動されるとともに、前記エンジンから伝動された動力が植付クラッチ(図示しない)を介して断続伝動される。
【0027】
次に、
図3乃至6に基づき、前記操舵機構と、前記HST制御機構について説明する。
図3乃至5は、操舵機構及びHST制御機構を示した要部側面図、要部前方斜視図及び、要部後方斜視図であり、
図6は、走行HSTを操作する操作アームを示した要部拡大図である。
【0028】
前記操舵機構20は、上下方向に延設された前記ステアリング軸と、エンジン動力を各部に変速する変速ギヤが内装されて左右の前輪1,1の間に配置された前記ミッションケース11と、該ミッションケース11の下面側で左右揺動自在に支持されたピットマンアーム(図示しない)と、前記ステアリング軸19の下方側で且つ前記ミッションケース11の上面側に配置されるパワーステアリング装置32と、前記ステアリング軸19が挿通された筒状のステアリングコラム31とを備え、前記パワーステアリング装置32の上部側には、上方が開放されたコ字状に形成された支持ブラケット33が設けられている。
【0029】
前記HST制御機構30は、前記支持ブラケット33の左側面と右側面とを左右方向に貫通するようにして支持される支持軸36と、前記支持軸36を軸に上下方向に揺動可能に取付けられるとともに前記支持ブラケット33の左側面外側に配置された揺動アーム37と、前記走行HST10を変速操作するトラニオン軸35と一体回動するように軸支された操作アーム38と、上端側が前記揺動アーム37側に連結されて下端側が前記操作アーム38側に連結された上下方向の操作ロッド39と、後述するクラッチ41を介して前記支持軸36を軸回転可能に設置されるモータ42と、前記制御部50とを備え、前記支持軸36の左端側には、トルクリミッタ式の前記クラッチ41が設けられている(
図3乃至5等参照)。
【0030】
なお、前記HST制御機構30は、前記ブレーキペダル18を介して前記走行HST10を手動操作するブレーキ操作連係機構40が設けられており、前記走行HST10をオペレータによる手動操作によって直接操作することもできるように構成されている(
図5乃至7等参照)。該ブレーキ操作連係機構40の具体的な構成については後述する。
【0031】
該構成によれば、前記HST制御機構30は、前記モータ42の駆動力によって前記支持軸36を軸回転させ、該支持軸36の軸回転によって前記揺動アーム37を上下揺動させ、前記揺動アーム37の上下揺動作動によって前記操作ロッド39を上下移動させ、前記操作ロッド39の上下移動によって、前記トラニオン軸35を操作する前記操作アーム38の操作位置を操作することができるように構成されている(
図4乃至6等参照)。
【0032】
このとき、前記操作アーム38側には、前記操作アーム38の操作位置を検出する操作アーム検出ポテンショ47が設けられており、前記制御部50は、前記操作アーム38の操作位置を検出することによって、前記走行HST10の変速状態を確認することができるように構成されている(
図6等参照)。
【0033】
上述の構成によれば、前記制御部50は、前記操作位置検出ポテンショ46により検出された前記主変速レバー14の変速操作(前後揺動操作)と、前記操作アーム検出ポテンショ47により検出された現在の前記走行機体3(走行HST10)の変速状態とに基づいて、前記モータ42の駆動を制御することにより、前記走行HST10の変速操作を制御する前記HST変速制御が実行可能に構成されている。
【0034】
ちなみに、上述のHST制御機構30を介して操作される前記走行HST10は、後述の
図8(C)に示されるように、前記操作アーム38(トラニオン軸35)の操作位置と、前記走行HST10の出力回転との関係において、ヒステリシス特性を有している。具体的に説明すると、前記走行HST10は、前進出力状態(前進状態)から中立状態に切換える場合の前記操作アーム38(トラニオン軸35)の操作位置である前進側停止位置(第1操作位置)P1と、後進出力状態(後進状態)から中立状態に切換える場合の前記操作アーム38(トラニオン軸35)の操作位置である後進側停止位置(第2操作位置)P2とが異なっている(
図8参照)。
【0035】
これに対応するため、前記制御部50は、前記走行機体3が前進走行中に前記変速レバー14によって前記走行HST10を中立状態に切換える変速操作がされた場合と、前記走行機体3が後進走行中に前記変速レバー14によって前記走行HST10を中立状態に切換える変速操作がされた場合との何れも、前記走行HST10が確実に中立状態に切換えられるように前記操作アーム38(トラニオン軸35)の操作を制御するHST中立変速制御が実行可能に構成されている。前記HST中立変速制御の具体的な制御内容については後述する。
【0036】
前記クラッチ41は、前記支持ブラケット33の左側面外側で、前記支持軸36と一体回転するように該支持軸36の左端側に設けられており、前記モータ42の出力ギヤ42aと噛合うことによって前記支持軸36回りに空転する駆動ギヤ41Aと、該駆動ギヤ41Aと前記支持軸36との間で動力の伝動を断続するトルクリミッタ式のクラッチ部41Bと、前記クラッチ部41Bを前記駆動ギヤ41A側に付勢する弾性部材(付勢部材)41Cとを有している(
図3等参照)。
【0037】
これにより、前記クラッチ41は、前記支持軸36(駆動ギヤ41A)が前記モータ42の駆動力(弾性部材の付勢力)よりも強いトルクで軸回転した場合に、前記モータ42と前記支持軸36との間の動力伝動が切断されるように構成されている。
【0038】
言い換えると、前記クラッチ41は、前記モータ42が駆動した場合には、前記支持軸36を介して前記揺動アーム37(操作アーム38)を操作することができる一方で、前記ブレーキ操作連係機構40を介して、前記支持軸36(操作アーム37)側が、前記モータ42の駆動力よりも大きな力(トルク)で操作された場合には、該操作力が前記モータ42に伝動することを防止することができるように構成されている。
【0039】
さらに具体的に説明すると、前記クラッチ41の伝動上流側は、前記モータ42が配置される一方で、前記クラッチ41の伝動下流側には、前記支持軸36→前記揺動アーム37→前記操作ロッド39→前記操作アーム38→前記トラニオン軸35の順番で動力が伝わって前記走行HST10と連係する。なお、後述する前記ブレーキ操作連係機構40は、前記ブレーキペダル18を踏込み操作した操作力によって前記支持軸36を操作することによって、前記トラニオン軸35を中立状態に操作する。以下、具体的に説明する。
【0040】
次に、
図3乃至7に基づき、前記ブレーキ操作連係機構の構成について具体的に説明する。
図7(A)及び(B)は、ブレーキ操作具の操作前と、操作中のブレーキ操作連係機構を示した要部側面図である。
【0041】
前記ブレーキ操作連係機構40は、前記ブレーキペダルの軸支部18cに設けられた揺動片51と、前記揺動片51から前方に延設されて前記ブレーキペダル18の操作に応じて前後方向に押引き操作される連係ロッド52と、前記連係ロッド52の前端側に連結されて前後揺動する第1連係アーム53と、前記第1連係アーム53の揺動操作に応じて上下方向に揺動する第2連係アーム54と、前記第1連係アームと前記第2連係アーム54とを軸支する連係アーム支持軸56と、前記支持軸36の右端側で該支持軸36と一体回動する菱形状のブレーキ操作連係アーム57と、前記ブレーキ操作連係アーム57の前端側と前記第2連係アーム54とを連係させる上下方向の第1連係部材58と、前記ブレーキ操作連係アーム57の後端側と前記第2連係アーム54とを連係させる上下方向の第2連係部材59とを備えている(
図7等参照)。
【0042】
上記第1連係部材58の上端側と、上記第2連係部材の上端側とは、上下方向に沿った長孔である融通孔58a、59aが形成されており、該融通孔58a、59aを介して、上記ブレーキ操作連係アーム57の前後端側とそれぞれ連結されている(
図7(A)参照)。
【0043】
このとき、各融通孔58a、59aは、前記ブレーキペダル18が踏込み操作されていない状態(
図7(A)参照)で、前記モータ42を介して前記支持軸36が軸回転操作された場合には、前記ブレーキ操作連係アーム57が、前記融通孔58a、59aの範囲内で揺動するように構成されている。
【0044】
その一方で、各融通孔58a、59aは、前記ブレーキペダル18が踏込み操作された状態(
図7(B)参照)場合には、前記ブレーキペダル18→前記揺動片51→前記連係ロッド52→前記第1連係アーム53→前記連係アーム支持軸56→前記第2連係アーム54→前記第1連係部材58→前記ブレーキ操作連係アーム57の順番で連係することによって、前記支持軸36を所定方向に軸回転させることができるように構成されている。
【0045】
これにより、前記ブレーキ操作連係機構40は、前記ブレーキペダル18が踏込み操作された場合に、機械的な連係によって前記支持軸36を軸回転させることにより、前記HST制御機構30を作動させ、前記操作アーム38(トラニオン軸35)を第1操作位置P1に操作することができるように構成されている。
【0046】
該構成によれば、前記ブレーキ操作連係機構40は、前記走行機体3(走行HST10)が前進状態の際に、前記ブレーキペダル18が踏込み操作された場合には、前記制御部50によって制御される前記モータ42の駆動状態に関わらず、前記走行HST10を強制的に中立状態(停止状態)に操作して前記走行機体3をより確実に停車させることができる。なお、前記HST中立変速制御は、前記走行機体3(走行HST10)が後進状態の際に、前記ブレーキペダル18が踏込み操作(ブレーキ操作)された場合には、ブレーキ操作の解除時に、前記走行HST10が確実に中立状態に切換えられるように前記操作アーム38を制御するように構成されている。前記HST中立変速制御の具体的な制御内容については後述する。
【0047】
ちなみに、前記ブレーキペダル18が踏込み操作されたことによって、前記ブレーキ操作連係機構40を介して、前記支持軸36(走行HST10)が操作された場合には、前記クラッチ41によって、前記支持軸36の軸回転が前記モータ42側に伝動することを確実に防止することができるように構成されている。該クラッチ41の作用によれば、オペレータによるブレーキ操作(手動操作)によって前記走行HST10を強制的に変速操作した場合であっても、前記モータ42を無理やり回転駆動させることがないため、前記モータ42に不要の負荷を掛けて故障する事態を防止することができる。
【0048】
また、前記クラッチ41は、前記駆動ギヤ部41Aと、前記クラッチ部41Bと、前記駆動ギヤ部41Aとクラッチ部41Bのそれぞれに回転方向に沿って形成される傾斜部60A、60Bと、前記前記弾性部材(付勢部材)41Cとを有しているが(
図5参照)、前記クラッチ41は、前記ブレーキペダル18によるブレーキ操作がされた場合に、前記傾斜部60A,60Bが、前記操作アーム38が第1操作位置に操作された場合と第2操作位置に操作された場合のずれ量の範囲内に収まるように構成しても良い。
【0049】
該構成によれば、後進状態でブレーキ操作された場合あっても、ブレーキ操作後に前記付勢部材41Cの付勢力によって前記クラッチがスムーズに接続されるため、前記HST中立変速制御によるブレーキ操作解除後の前記後進停止操作をラグなく行うことができる。
【0050】
また、前記制御部50は、前記ブレーキペダル18によるブレーキ操作が検出された場合には、前記ブレーキ操作連係機構40によって前記支持軸36が操作される回転方向に沿って前記モータ42を駆動させ、前記クラッチ41が接続位置とするように構成されている。すなわち、前記走行機体3が前進している際にブレーキ操作された場合と、前記走行機体3が後進している際にブレーキ操作された場合とで、前記モータ42の駆動方向が異なる。
【0051】
該構成によれば、ブレーキ操作時に前記ブレーキ操作連係機構40を介して前記支持軸36の軸回転が操作される方向と同じ方向に、前記モータ42を駆動させることができるため、前記モータ42に逆回転方向の余分な負荷を加えて故障する事態を防止することができる。
【0052】
さらに、前記制御部50(HST変速制御)は、前記ブレーキペダル18によるブレーキ操作が検出された場合には、前記ブレーキ操作の解除後に前記主変速レバー14を一旦中立位置に操作したことが検出されない限りは、前記主変速レバー14の揺動操作による前記走行機体3(走行HST10)を前後進作動が規制されるように構成されている。
【0053】
該構成によれば、前記ブレーキペダル18によるブレーキ操作を解除した際に、前記主変速レバー14の操作位置が中立位置以外に操作されていたことにより、前記走行機体3が急発進する事態を確実に防止することができる。
【0054】
次に、
図8乃至10に基づき、前記制御部によるHST中立変速制御の制御内容について説明する。
図8(A)は、HST中立変速制御において走行HSTを前進側から中立状態に切換える際のトラニオン軸の操作位置と走行HSTの出力回転との関係を示すグラフであり、
図8(B)は、HST中立変速制御において走行HSTを後進側から中立状態に切換える際のトラニオン軸の操作位置と走行HSTの出力回転との関係を示すグラフであり、
図8(C)は、HST中立変速制御の別実施例を示したトラニオン軸の操作位置と走行HSTの出力回転との関係を示すグラフである。
【0055】
前記HST中立変速制御は、前記主変速レバー14の変速操作によって前記走行HST10を前進状態から中立状態に切換える(前進走行中の走行機体を停車させる)場合には、前記走行HST10を前進側から中立状態に切換えるために、前記操作アーム38(トラニオン軸35)を、前進側から前進側停止位置(第1操作位置)P1に向けてそのまま操作する「前進停止操作」を実行する(
図8(A)参照)。
【0056】
また、前記HST中立変速制御は、前記主変速レバー14の変速操作によって前記走行HST10を後進状態から中立状態に切換える場合には、前記操作アーム38(トラニオン軸35)を、後進側から後進側停止位置(第2操作位置)P2よりも前進側に設定した所定の後進停止用の経由操作位置(第3操作位置)P3まで前進側に操作した後、前記前進側停止位置(第1操作位置)P1に戻す操作(以下「後進停止操作」)を実行するように構成されている(
図8(B)参照)。
【0057】
このとき、前記操作アーム38の操作位置である後進側操作位置(第2操作位置)P2は、前記走行HST10を後進状態から中立状態にそのまま切換えることのできる操作位置であって(
図8参照)、後進停止用の経由操作位置(第3操作位置)P3は、前記走行HST10が中立状態から前進側への出力が開始された直後(前記走行機体3が前進走行し始めた直後)となる操作位置に設定されている(
図8(B)参照)。
【0058】
該構成によれば、前記走行HST10を前進側から中立状態に操作する場合も、後進側から中立状態に操作する場合も、最終的には前記操作アーム38(トラニオン軸35)を前進側から第1操作位置P1へと操作する制御が実行される。これにより、前記主変速レバー14によって、前記走行HST10を前進状態から中立状態に操作する場合も、後進状態から中立状態に操作する場合も、前記走行機体3を確実に停車させて意図せずに前進又は後進する事態をより確実に防止できる。
【0059】
また、前記制御部50によるHST中立変速制御は、前記走行HST10が後進側に操作された状態でブレーキ操作されたことが検出された場合には、上述のブレーキ操作連係機構によって、前記操作アーム38が後進側から第1操作位置P1に操作されるため、その後、ブレーキ操作の解除操作が検出された場合には、前記モータ42を介して、前記操作アーム38(トラニオン軸35)を第1操作位置P1→(第2操作位置P2)→第3操作位置P3→(第2操作位置P2)→第1操作位置P1へと操作する前記後進停止操作することによって、前記走行HST10を確実に中立状態に切換えるように構成されている(
図8(B)参照)。
【0060】
該構成によれば、前記走行機体3が後進している状態でブレーキ操作した場合でも、前記走行機体3を確実に停車させるとともに、ブレーキ操作を解除した際に前記走行機体3が意図せず前後進することを防止することができる。
【0061】
上述の構成によれば、前記ブレーキペダル18によるブレーキ操作によって、前記主変速レバー14を操作することなく、前記走行HST10を中立状態に切換え、前記走行機体3を確実に停車することができるものである。また、比較的頻度の多い前進状態からのブレーキ操作時には、機械的連係(ブレーキ操作連係機構40)のみで前記操作アーム38の前進停止操作を行うことで前記走行HST10を中立状態に操作できるため、安全性も向上する。
【0062】
次に、
図8(C)に基づいて、HST中立変速制御の別実施例について説明する。
【0063】
前記HST中立変速制御は、前記主変速レバー14の変速操作によって前記走行HST10を前進状態から中立状態に切換える場合に実行される前記「前進停止操作」は、上述の実施例と同様に、前記操作アーム38を前進側から前進側停止位置(第1操作位置)P1に向けてそのまま操作する一方で、前記主変速レバー14の変速操作によって前記走行HST10を後進状態から中立状態に切換える場合に実行される前記「後進停止操作」は、前記操作アーム38を後進側から後進側停止位置(第2操作位置)P2に向けてそのまま操作する操作としても良い(
図8(C)参照)。
【0064】
該構成によれば、前記主変速レバー14の変速操作によって前記走行HST10を後進状態から中立状態に切換える際に、走行HST10を余分に操作することなくスムーズに中立状態に切換えることができるため、走行機体3が若干動く挙動がなくなる他、前記モータ42や前記走行HST10への負担も軽減される。
【0065】
上述の前記HST中立制御によれば、製品出荷前に予め、前記操作アーム38(トラニオン軸35)の操作位置として、前記走行HST10を前進側から中立状態に切換える場合の第1操作位置と、前記走行HST10を後進側から中立状態に切換える場合の前記操作アーム38の操作位置(第2操作位置)と(、第2操作位置よりも前進側の第3操作位置と)を前記制御部50に記憶することにより、従前では、主変速レバー14の操作ガイド等によって機械的に調整していた走行HST10のヒステリシス特性への対応をスムーズ且つ正確に制御によって調整することができるようになる。
【0066】
図9は、制御部のブロック図であり、
図10は、HST中立変速制御を示した処理フロー図である。
【0067】
前記制御部50の入力側には、前記主変速レバー14の操作位置を検出する前記操作位置検出ポテンショ46と、前記操作アーム38(トラニオン軸35)の操作位置を検出する操作アーム検出ポテンショ47と、前記ブレーキペダル18の操作位置を検出することによりブレーキ操作とブレーキ解除操作とを検出可能なブレーキ操作検出センサ(ブレーキ操作検出ポテンショ、手動操作検出センサ)48とが接続されており、前記制御部50の出力側には、前記モータ42が接続されている(
図9参照)。
【0068】
図10に基づいて、前記HST中立変速制御の処理フローについて説明する。前記HST中立変速制御の処理フローが開始されると、ステップS1に進む。
【0069】
ステップS1では、前記操作位置検出ポテンショ46と前記操作アーム検出ポテンショ47により、前記変速レバー14によって前記走行HST10を前進側から中立状態に切換える操作がされたか否かが確認され、前記変速レバー14によって前記走行HST10を前進状態から中立状態に切換える変速操作が検出された場合には、ステップS2に進む。
【0070】
ステップS2では、前記モータ42によって、前記操作アーム38(トラニオン軸35)を前進側から第1操作位置P1にそのまま操作する前進停止操作を実行することによって、前記走行HST10を中立状態へと切換え、その後、リターンする。
【0071】
該構成によれば、前記走行HST10が前進状態、すなわち、前記走行機体3が前進走行している状態で、前記主変速レバー14による変速操作によって前記走行HST10を中立状態に切換える操作が検出された場合には、前記モータ42を介して、前記トラニオン軸35を前進側からそのまま第1操作位置に操作する前進停止操作を行うため、前記走行HST10を確実に中立状態へと切換えることができる。
【0072】
なお、ステップS1において、前記変速レバー14によって前記走行HST10を前進状態から中立状態に切換える操作が検出されなかった場合には、ステップS3に進む。
【0073】
ステップS3では、前記操作位置検出ポテンショ46と前記操作アーム検出ポテンショ47により、前記変速レバー14によって前記走行HST10を後進側から中立状態に切換える操作がされたか否かが確認され、前記変速レバー14によって前記走行HST10を後進状態から中立状態に切換える変速操作が検出された場合には、ステップS4に進む。
【0074】
ステップS4では、前記モータ42によって、前記操作アーム38(トラニオン軸35)を、後進側から前進側となる経由操作位置(第3操作位置)P3まで操作し、その後、第3操作位置P3から第1操作位置P1に戻す操作する後進停止操作を行うことによって、前記走行HST10を中立状態へと切換え、その後、リターンする。
【0075】
該構成によれば、前記走行HST10が後進状態、すなわち、前記走行機体3が後進走行している状態で、前記主変速レバー14による変速操作によって前記走行HST10を中立状態に切換える操作が検出された場合には、前記モータ42を介して、前記トラニオン軸35を後進側から一旦前進側となる第3操作位置P3まで操作した後に、第1操作位置に戻す後進停止操作を行うため、前記走行HST10を確実に中立状態へと切換えることができる。
【0076】
なお、ステップS3において、前記変速レバー14によって前記走行HST10を後進側から中立状態に切換える操作が検出されなかった場合には、ステップS5に進む。
【0077】
ステップS5では、前記ブレーキ操作検出センサ48により、前記ブレーキペダル18によるブレーキ操作がされたか否かが確認され、前記ブレーキペダル18の踏込み操作が検出された場合には、ステップS6に進む。なお、ステップS5において、前記ブレーキペダル18によるブレーキ操作が検出されなかった場合は、その後、リターンする。
【0078】
ステップS6では、前記ブレーキ操作が検出された際に、前記走行機体3(走行HST10)が後進走行していたか否かが確認され、前記走行機体3が後進走行していたことが検出された場合には、ステップS7に進む。なお、ステップS6において、前記走行機体3の後進走行が検出されなかった場合、すなわち、前記走行機体3が前進走行又は停車中であった場合には、その後、リターンする。
【0079】
該構成によれば、前記走行HST10が前進状態の際(前進走行時)に前記ブレーキ操作が行われた場合には、前記ブレーキ操作連係機構40によって、前記ブレーキ操作と連動して前記操作アーム38(トラニオン軸35)が第1操作位置P1へと操作されるため、前記モータ42を介して前記操作アーム38を制御しなくとも前記走行HST10を確実に中立状態へと変速操作することができる。
【0080】
ステップS7では、前記ブレーキ操作検出センサ48によって前記ブレーキペダル18によるブレーキ操作が解除されたか否かが確認され、前記ブレーキ操作の解除が検出された場合には、ステップS8に進む。なお、ステップS7において、前記ブレーキ操作の解除操作が検出されなかった場合には、再度ステップS7に戻る。
【0081】
ステップS8では、前記モータ42によって、前記操作アーム38(トラニオン軸35)を、第1操作位置P1から第3操作位置P3に操作し、その後、第3操作位置P3から第1操作位置P1に操作する後進停止操作を実行ことによって、前記走行HST10を中立状態へと切換え、その後、リターンする。
【0082】
該構成によれば、前記走行HST10が後進状態の際(後進走行時)に前記ブレーキ操作が行われた場合には、前記ブレーキ操作連係機構40により、前記操作アーム38(トラニオン軸35)が後進側からそのまま第1操作位置P1へと操作されるため、前記走行HST10が中立状態より若干後進出力側にずれた位置に操作された状態となるところ、前記ブレーキ操作の解除が検出された際に、前記モータ42を介して、前記操作アーム38が後進停止操作(第2操作位置よりも前進側の第3操作位置に操作した後に、第1操作位置に戻す操作)されるため、前記走行HST10を確実に中立状態へと切換えることができる。
【0083】
すなわち、前記走行機体3の前進走行中に前記ブレーキ操作が検出された場合には、前記ブレーキ操作連係機構40による機械的な構成によって前記走行HST10も自動的に中立状態へと変速操作され、前記走行機体3の後進走行中に前記ブレーキ操作が検出された場合には、ブレーキ操作解除時に、前記トラニオン軸35を後進停止操作することにより、前記走行HST10を中立状態へと確実に切換えることができる。
【符号の説明】
【0084】
3 走行機体
10 走行HST(油圧式無段階変速装置)
14 主変速レバー(変速操作具)
18 ブレーキペダル(手動切換操作具)
35 トラニオン軸(操作部材)
38 操作アーム(操作部材)
41 クラッチ
41A 駆動ギヤ部(爪クラッチ部)
41B クラッチ部(噛合部)
41C 弾性部材(付勢部材)
42 モータ
47 操作位置検出ポテンショ(操作検出手段)
48 ブレーキ操作検出センサ(手動操作検出センサ)
50 制御部
60 傾斜部