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特開2022-169130糸巻き装置、魚釣用リール及びウィンチ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169130
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】糸巻き装置、魚釣用リール及びウィンチ
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/01 20060101AFI20221101BHJP
   A01K 89/00 20060101ALI20221101BHJP
   A01K 89/012 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
A01K89/01 Z
A01K89/00 B
A01K89/00 Z
A01K89/01 E
A01K89/012
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074978
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】安田 悠
(72)【発明者】
【氏名】大井川 凌
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108AA03
2B108BE04
2B108BJ05
2B108BJ10
2B108DA04
2B108DA06
2B108DA08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】リール内に組み込み可能でかつ小型化でき、糸道を曲げる必要なく停止時も高精度で測定可能な張力検出部を有する糸巻き装置を提供することにある。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る糸巻き装置は、釣竿に固定可能な魚釣用糸巻き装置であって、該釣竿の延伸方向に概略平行な中心軸で釣糸を巻き取り可能なスプールと、釣糸を案内する案内部を有し、該スプールの周囲を回転可能なロータと、該案内手段を回転操作する操作部と、該案内部による案内可能・不能を切替える切替え部と、を備える糸巻き装置であって、該スプールを回転可能に軸支し、装置本体に対して回転可能に支持された支持軸部と、該支持軸部と該スプールとの間に復元力を与える復元部と、該支持軸の角度位置を検出する検出部と、を有するように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣竿に固定可能な糸巻き装置であって、
該釣竿の延伸方向に概略平行な中心軸で釣糸を巻き取り可能なスプールと、釣糸を案内する案内部を有し、該スプールの周囲を回転可能なロータと、該案内手段を回転操作する操作部と、該案内部による案内可能・不能を切替える切替え部と、を備える糸巻き装置であって、
該スプールの中心軸に配置され、装置本体に対して回転可能に支持された支持軸部と、該支持軸部と該装置本体との間に復元力を与える復元部と、該支持軸の角度位置を検出する検出部と、を有することを特徴とする糸巻き装置。
【請求項2】
前記支持軸部は、回転規制部によってその回転可能範囲を規制される、請求項1に記載の糸巻き装置。
【請求項3】
前記復元部は、弾性バネである、請求項1又は2に記載の糸巻き装置。
【請求項4】
前記検出部は、非接触式の位置検出手段であり、被検出部に投光する発光部と、該発光部の光を受光する受光部と、から構成される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の糸巻き装置。
【請求項5】
被検出部には永久磁石が設けられ、
前記検出部は、非接触式の位置検出手段であり、前記被検出部に設けられる永久磁石の磁気を検出する磁気検出部である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の糸巻き装置。
【請求項6】
被検出部には音波反射部が設けられ、
前記検出部は、非接触式の位置検出手段であり、前記被検出部に設けられた音波反射部からの音波を検出する音波検出部である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の糸巻き装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の糸巻き装置が、魚釣用リールである、魚釣用リール。
【請求項8】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の糸巻き装置が、ウィンチである、ウィンチ。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、停止時も含め高精度で張力を検出可能な糸巻き装置、魚釣用リール及びウィンチに関する。
【背景技術】
【0002】
魚釣用リール等の糸巻き装置では、糸の張力を検出することで、糸フケ発生の有無を検知して糸絡みを未然に防止したり、魚信の有無を検知することで魚釣りを効率的に行うことができるようにしている。従来より、糸の張力を検出するための方法として、種々の方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、魚釣りに用いる釣竿を構成する筒状の竿体であって、炭素繊維に合成樹脂を含浸させたプリプレグ素材を焼成してなる筒状の本体部と、前記本体部の周面に配置された軸方向に伸びる圧電素子帯と、前記本体部の竿元側端部に脱着自在に装着される底栓と、前記底栓に配置された前記圧電素子帯からの入力電圧を昇圧する昇圧手段とを備え、前記本体部の周面には前記本体部の周面から順に、第1電極層、絶縁層、発光層、第2電極層、表面層とが積層されており、前記昇圧手段からの電圧が前記第1電極層と前記第2電極層との間を加圧する竿体について開示している。
【0004】
また、特許文献2では、魚の当りにより魚釣り用の釣り糸に加えられた振動を検出する検出部とその信号を電気信号に変換処理して後、信号処理回路に入力し、その処理信号のアナログ的変化を異なる種類の音、或は光に変換する手段を具えた魚釣り用センサについて開示している。
【0005】
さらに、特許文献3では、釣り糸を巻取る回転体を備え、この回転体からの釣り糸に作用する張力に対応した回転体の変位を許容する支承部を備え、この回転体の変位に基づき釣り糸に作用する張力を計測するセンサを備え、このセンサからの計測結果が出力される報知装置夫々を備えると共に、この報知装置、及び、センサ夫々を単一の防水ケースに収めて成る釣り用リールについて開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-008005号公報
【特許文献2】特開昭64-037238号公報
【特許文献3】特開平5-184271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に係る竿体では、竿体を検出対象とし、竿体のたわみや振動を検出するが、竿体と釣糸が真っ直ぐな状態になると検出できなくなるなど、竿体が特定の位置にあるときのみに検出可能となるに過ぎないという問題があった。
【0008】
また、特許文献2に係る魚釣り用センサでは、釣糸を検出対象とし、プーリー等の案内部を設けることで釣糸を曲げ、その屈曲点で張力が外部に与える力を検出しているが、張力検出のために糸道を曲げる必要があるため、キャスト時など釣糸を高速で繰出したい時に抵抗となり得、またタックル全体を小型化しにくいといった問題があった。
【0009】
また、特許文献3に係る釣り用リールでは、回転体が張力以外の外力によっても変位し得るため、回転体の変位から正確な張力を検出するのが実際上難しいという問題があった。
【0010】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、リール内に組み込み可能でかつ小型化でき、糸道を曲げる必要なく停止時も高精度で測定可能な張力検出部を有する糸巻き装置を提供することにある。本発明のこれら以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置は、釣竿に固定可能な魚釣用糸巻き装置であって、該釣竿の延伸方向に概略平行な中心軸で釣糸を巻き取り可能なスプールと、釣糸を案内する案内部を有し、該スプールの周囲を回転可能なロータと、該案内手段を回転操作する操作部と、該案内部による案内可能・不能を切替える切替え部と、を備える糸巻き装置であって、該スプールの中心軸に配置され、装置本体に対して回転可能に支持された支持軸部と、該支持軸部と該装置本体との間に復元力を与える復元部と、該支持軸の角度位置を検出する検出部と、を有するように構成される。また、本発明の一実施形態に係る糸巻き装置において、前記支持軸部は、回転規制部によってその回転可能範囲を規制されるよう構成される。
【0012】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置において、前記復元部は、弾性バネ(例えば、コイルバネやトーションバネ等)である。
【0013】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置において、前記検出部は、非接触式の位置検出手段であり、被検出部に投光する発光部と、該発光部の光を受光する受光部と、から構成される。
【0014】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置において、被検出部には永久磁石が設けられ、前記検出部は、非接触式の位置検出手段であり、前記被検出部に設けられる永久磁石の磁気を検出する磁気検出部であるように構成される。
【0015】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置において、被検出部には音波反射部が設けられ、前記検出部は、非接触式の位置検出手段であり、前記被検出部に設けられた音波反射部からの音波を検出する音波検出部であるように構成される。
【0016】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、魚釣用リールは上記いずれかの糸巻き装置である。
【0017】
本発明の一実施形態に係るウィンチにおいて、ウィンチは上記いずれかの糸巻き装置である。
【発明の効果】
【0018】
上記実施形態によれば、リール内に組み込み可能でかつ小型化でき、糸道を曲げる必要なく停止時も高精度で測定可能な張力検出部を有する糸巻き装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る糸巻き装置100の構成の中心軸を通る断面で破断した断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る糸巻き装置の復元部を支持軸と直交する平面で破断した断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る糸巻き装置100の構成の中心軸を通る断面で破断した断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る糸巻き装置100の構成の中心軸を通る断面で破断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る糸巻き装置の実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。複数の図面において共通する構素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0021】
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る糸巻き装置100の構成について説明する。なお、説明の簡略化のため、以下の説明では張力検出機構の箇所のみを扱い、従来の糸巻き装置と同様の箇所は説明を省略する。まず、図1は、糸巻き装置100の構成の中心軸を通る断面で破断した断面図を示す。
【0022】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る糸巻き装置100は、スプール1と、支持軸部(支持軸)2と、ラインガイド(案内部)3を有するロータ4と、ロータ4を操作する操作部5(例えば、ハンドル)と、復元部(復元手段)6と、被検出部(被検出手段)7、検出部(検出手段)8とから構成される。スプール1は、円筒形状に形成され、その外周部により釣糸を巻き取ることが可能に構成される。なお、以下の説明ではスプール1の中心軸方向を軸方向、その回転方向を回転方向と定義する。
【0023】
支持軸部2は、概略円柱状に形成され、本発明の一実施形態では、支持軸部2とスプール1とは同軸上に固定される。また、支持軸部2は、リール本体に対して回転可能に支持される。
【0024】
ラインガイド3は、釣糸を案内することが可能な公知のものであり、ロータ4上に図示しない従来公知のベールアームを介して支持される。ベールアームの開閉により、ラインガイド3による釣糸の案内の可否を切替え手段(ベール)により切り替えることができ、開状態ではスプール1に巻かれた釣糸を放出可能であり、閉状態ではスプール1に釣り糸を巻き取り可能に構成される。
【0025】
ロータ4は、スプール1と同軸上の回転軸でリール本体に対して回転可能に支持される。ハンドル5は、ユーザの操作に応じてロータ4を回転操作することができ、本発明の一実施形態において操作手段を構成する。なお、必要に応じてギヤ等の伝達機構を用いて、回転方向やギヤ比を変換してもよい。また、ラチェットやワンウェイクラッチ等を用いて、ロータ4の逆転を防止することで釣糸の不意な放出を防ぐようにしてもよい。操作手段としては、ハンドルを用いる以外に、モータやエンジン等の動力源を用いてもよい。本発明の一実施形態では、従来公知の操作手段を用いることができるため、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0026】
復元部(復元手段)6は、支持軸部2が回転方向に移動した際に復元力を発生させるための手段であり、本発明の一実施形態においては、バネ部材(例えば、トーションバネ)によって構成することができる。図2は、その詳細構造を説明するためのものであり、支持軸と直交する平面で破断した断面図である。
【0027】
復元部6は、一端を可動側バネ端12と接し、他端は固定側バネ端13と接している。可動側バネ端12は、Dカット形状等の回転どめ形状によって、支持軸部2と回転方向に同期して移動する。また、可動側バネ端12は、リール本体に設けられた回転規制部11によって、移動可能な範囲が所定の範囲の角度(例えば、0°から60°)に規制される。以後、この角度をθとする。復元部6としてトーションバネを用いた場合、バネのコイル部中心軸を支持軸部2と同軸とすることで、支持軸部2の回転移動量θと、支持軸部2に働くトルクを比例関係とすることができる。また、トーションバネを用いることで、所定の復元力を小型で低コストにより発生させることが可能となる。なお、復元部6はトーションバネに限らず、圧縮コイルバネや引張コイルバネ、渦巻きバネ、板バネ等、復元力として物体の弾性力を用いる弾性バネや、復元力として磁力を用いる磁気バネ等を利用することができる。
【0028】
また、固定側バネ端13は、リール本体に設けられる。これにより、復元部6は、支持軸部とリール本体との間に、復元力を発生させることができる。本発明の一実施形態においては、スプールに働くトルクが10gcm以下のときにθ=0°となり、100gcm以上のときにθ=60°となるように、その間ではトルク増加に従って線形に角度変化が発生するように構成される。
【0029】
被検出部(被検出手段)7は、Dカット形状等の回転どめ形状によって、支持軸部と回転方向に同期して移動する。なお、可動側バネ端と一体で構成してもよい。被検出部7は、検出部8によって回転方向の変位が検出可能である。本発明の一実施形態では、被検出部7として所定の角度ごとに反射率の異なる反射板を用い、検出部8として反射型のフォトセンサを用いている。検出部8の実現方法は従来公知の角度センサが利用可能で、電気抵抗を測定する方式や、磁石と磁気センサの組あわせ等でも同様の効果が実現できる。なお、磁気センサやフォトセンサ、超音波センサ等の被接触式の検出手段を用いることで、検出部での摩擦力発生を抑えることができ、トルク測定の精度を向上することができる。
【0030】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置100は、釣竿に固定可能な魚釣用糸巻き装置であって、該釣竿の延伸方向に概略平行な中心軸で釣糸を巻き取り可能なスプールと、釣糸を案内する案内部を有し、該スプールの周囲を回転可能なロータと、該案内手段を回転操作する操作部と、該案内部による案内可能・不能を切替える切替え部と、を備える糸巻き装置であって、該スプールの中心軸に配置され、装置本体に対して回転可能に支持された支持軸部と、該支持軸部と該装置本体との間に復元力を与える復元部と、該支持軸の角度位置を検出する検出部と、を有するように構成される。ここで、装置本体とは、魚釣用糸巻き装置の構造部材(釣竿に固定可能な部分)を指す。なお、糸巻き装置は魚釣用のものに限らず、同様の構造であれば荷揚げ用のウインチであっても構わない。また、本発明の一実施形態に係る糸巻き装置において、前記支持軸部は、回転規制部によってその回転可能範囲を規制されるよう構成される。
【0031】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置100により、リール内に組み込み可能でかつ小型化でき、糸道を曲げる必要なく停止時も高精度で測定可能な張力検出部を有する糸巻き装置を提供することが可能となる。また、本発明の一実施形態に係る糸巻き装置100により、検出部8をリール本体に配置することができる。検出部8をスプール付近に設ける場合、検出部8はリール本体に対して無限回転するロータ4の内側に配置される。このため、検出部8への給電や通信が難しくなるという課題がある。一方、本発明の一実施形態のように、検出部8をリール本体に配置することで、検出部8への配線が容易となり、給電や、マイコンへの通信が可能となる。
【0032】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置100において、当該復元力生成部(復元部)4は、トーションバネである。
【0033】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置100において、当該検出部7は、非接触式の位置検出手段であり、当該被検出部6に投光する発光部と、該発光部の光を受光する受光部と、から構成される。
【0034】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置100において、当該被検出部6には永久磁石が設けられ、当該検出部7は、非接触式の位置検出手段であり、当該被検出部6に設けられる永久磁石の磁気を検出する磁気検出部である。
【0035】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置100において、当該被検出部6には音波反射部が設けられ、当該検出部7は、非接触式の位置検出手段であり、当該被検出部6に設けられた音波反射部からの音波を検出する音波検出部である。
【0036】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置は、魚釣用リールである。また、本発明の一実施形態に係る糸巻き装置は、ウィンチである。
【0037】
次に、本発明の一実施形態に係る糸巻き装置100によって糸に働く張力を検出する方法について説明する。既述のように、本発明の一実施形態に係る糸巻き装置100において、スプール1にトルクが働くと、その大きさに応じてスプール1は支持軸部2に対して、回転方向に移動する。本発明の一実施形態では、トルクの大きさが10gcm以下ではθ=0°であり、100gcm以上ではθ=60°であり、その間ではトルクの変化量に対して移動量θが比例して変化するような特性を持つように、復元部(復元手段)6を構成している。
【0038】
この移動量θを検出部8によって検出し、検出部8の出力を見ることで、スプール1に働くトルクを算出することが可能となる。なお、スプール1に働くトルクは、糸に働く張力Tに、釣糸の巻き取り半径Rを乗じたものとなる。釣糸の巻き取り半径Rは、スプール1の回転量に応じて変化し得るが、別の手段によって糸の巻き取り半径Rを得ることで、釣糸に働く張力Tを算出することができる。
【0039】
釣糸の巻き取り半径Rを得るためには従来公知の方法が利用可能である。例えば、超音波式距離計などによって糸巻き装置本体からスプール外周部に巻き取られた釣糸までの距離を測定する方法や、あらかじめ初期状態における糸巻き半径Rmax、釣糸の太さΔDをあらかじめ入力しておき、初期状態からのスプール1の回転量を常時測定することで、糸巻き半径Rを算出する方法、糸巻き半径の変化が無視できるような、浅溝形状のスプールを用いる方法などがあるが、特定の方法に限定することを意図するものではない。
【0040】
また、検出した張力の利用法として、上述の方法により得られた、スプール1に働くトルクや釣糸に働く張力情報は、LCD等の表示装置やスピーカーなどの音情報発生装置に出力することで、ユーザに伝えることができる。これにより、魚信の有無や糸フケの有無を判断したり、糸巻き装置の状態を把握したりすることができる。
【0041】
また、履歴の記録方法として、張力情報をマイコンに送り、メモリやスマートフォン等の外部機器等にその履歴を記憶してもよい。これにより、視認が難しい短周期の変化や長周期の変化を把握することができる。また、制御対象として、該張力情報を利用して、操作手段のモータやドラグ装置などの外部装置をフィードバック制御する際の制御対象としてもよい。これにより、一定張力での巻き取りを行うなど、種々の制御を実現することができる。
【0042】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置によれば、検出部8をリール本体に配置することができ、これにより、検出部8への給電が行い易く、また、マイコン等を有する基板をリール本体に配置した場合にあっては、検出した情報を有線により送信できる等の利点がある。
【0043】
次に、本発明の一実施形態に係る糸巻き装置によれば、糸を曲げる方式と比較して、糸道を曲げることなく糸に働く張力を測定することができる。これにより、糸道を曲げるための機構が不要であり、装置全体の大型化を避けることができる。また、糸道に余計な屈曲点が無いため、キャスト時などの高速に糸が出ていく際の障害になることを避けることができる。
【0044】
また、本発明の一実施形態に係る糸巻き装置によれば、リール構成部材のひずみ・変位を検出する方法と比較して、スプールに加わるトルクに応じて直進部材が軸方向に移動するように構成しており、その軸方向の移動量を検出することで、トルクを得ることができる。スプールに張力を加えるには、糸巻き装置の構造上、糸張力を増やす以外の方法で行うには実現しにくいことが多く、糸巻き装置本体に外力が加わった際でもスプールにはトルクが掛からない。このようなことから、スプールを軸支する本体フレーム等のひずみを検出する方法に比べて、外乱に対して安定したトルク測定および張力測定を実現することが可能となる。
【0045】
次に、本発明の一実施形態に係る魚釣用糸巻き装置200について、図3を参照しながら説明する。なお、上記実施形態と同じ部品・部材に関しては、同じ番号を付すことにより説明を省略する。
【0046】
図3にあるように、本発明の一実施形態に係る魚釣用糸巻き装置200は、スプール1と、支持軸部(支持軸)2と、ラインガイド3を有するロータ4と、該ロータ4を操作するハンドル5と、復元部(復元手段)6と、被検出部(被検出手段)7、検出部(検出手段)8、レベルワインド装置21と、スプール側ドラグ部材22と本体側ドラグ部材23とから構成されるフロントドラグ装置24と、から構成される。
【0047】
レベルワインド装置21は、ロータ4の回転に応じて、支持軸部(支持軸)2を軸方向に往復運動させることで、釣糸をスプール1に均等に巻き付ける。操作部(操作手段)4によってウォームギヤを回転させるなど、従来公知の方法で実現できるため、詳細な説明は省略する。
【0048】
フロントドラグ装置23は、スプール1に所定以上のトルクが掛かった際にスプール1を空転させることができる従来公知のドラグ装置である。スプール1と一体回転をするスプール側ドラグ部材22と、支持軸2と一体回転をする本体側ドラグ部材23により構成される。本発明の一実施形態では、スプール側ドラグ部材22と本体側ドラグ部材23との間に摩擦トルクを生じさせている。その摩擦力を発生するドラグバネ、ドラグバネのチャージ量を調整するドラグネジにより構成される。なお、本発明の一実施形態におけるドラグ装置はこの摩擦方式に限定せず、磁気粘性流体と磁力発生手段を用いる方法によりドラグ力を発生させるなど、従来公知の他の手段を用いてもよく、特定の態様に限定されるものではない。
【0049】
本発明の一実施形態において、フロントドラグ装置23を用いた場合でも、上記実施形態と同様にスプール1に発生するトルク情報や張力情報を検出することができる。すなわち、支持軸部2は、回転規制部11によって、リール本体に対して所定角度範囲内を回転可能に支持されている。スプール1に働くトルクがドラグ装置の設定値以下の場合は、スプール側ドラグ部材22と本体側ドラグ部材23は一体となって動作するため、上述の実施形態と同様の関係になる。スプール1に働くトルクがドラグ装置の設定値以上の場合は、スプール1は空転を始めるが、本体側ドラグ部材23にはドラグ装置の設定値分のトルクが働く。このトルクは復元部6にも伝わり、その値に応じて支持軸2はθ°回転する。この値を回転検出部8によって検出できる。
【0050】
また、本発明の一実施形態において、レベルワインド装置21を有する場合でも、上記実施形態と同様にスプール1に発生するトルク情報や張力情報を検出することができる。この場合、レベルワインド装置21によって支持軸部2が上下方向に移動してしまう。したがって、検出部8は、支持軸部2の回転方向の移動のみを検出できるようにするとよい。例えば、被検出部7をレベルワインド装置21による上下移動量よりも長くするという対策や、支持軸2の回転方向の移動のみを被検出部7に伝え、軸方向には摺動させるという対策が有用となり得る。
【0051】
本発明の一実施形態では、ドラグ装置をスプール内に配置し、検出部8を装置本体のリア部に配置している。これにより、それぞれの機能を独立して配置できる。ドラグが伝達できるトルク容量を高めるためには、摩擦トルクを発生するドラグ部材の枚数や外径を増やす必要があり、所定の体積が必要である。本発明の一実施形態のように、スプール内にドラグ装置を配置することで、所定のトルク容量を持つドラグ装置を、スペース面で効率よく配置することが可能となる。また、検出部8をリール本体に配置することで、ドラグ装置の大きさの影響を受けることを回避できるため、装置全体の大型化を最小限なものとすることが可能となる。
【0052】
次に、本発明の一実施形態に係る魚釣用糸巻き装置300について、図4を参照しながら説明する。なお、上記実施形態と同じ部品・部材に関しては、同じ番号を付すことにより説明を省略する。
【0053】
図4にあるように、本発明の一実施形態に係る魚釣用糸巻き装置300は、スプール1と、支持軸部(支持軸)2と、ラインガイド3を有するロータ4と、該ロータ4を操作する操作部5(例えば、ハンドル)と、復元部(復元手段)36と、被検出部(被検出手段)37と、検出部(検出手段)38と、レベルワインド装置21と、スプール側ドラグ部材32と本体側ドラグ部材33とから構成されるリアドラグ装置34と、から構成される。
【0054】
本発明の一実施形態における支持軸2は、上記第1の実施形態と同様、スプール1と同期して回転する。スプール1に過度なトルクが掛かった場合、リール本体と支持軸部の間に設けられたリアドラグ装置34により、スプール1および支持軸部2を空転させる。
【0055】
リアドラグ装置34は、スプール1および支持軸部2と一体で回転するスプール側ドラグ部材32と、リール本体と概略一体で回転する本体側ドラグ部材33と、から構成される。スプール側ドラグ部材32と本体側ドラグ部材33との間には、上述した実施形態と同様、従来公知の手段にて所定のドラグ力を設定でき、所定値以上のトルクになると相対回転をする。
【0056】
本発明の一実施形態においては、スプール側ドラグ部材32は、レベルワインド装置21によって往復運動しないよう、支持軸から回転方向のみの伝達を受け、軸方向の動きは伝達しないように構成される。そして本体側ドラグ部材33は、リール本体に対して回転可能に支持される。リール本体に設けられた回転規制部により、本体側ドラグ機構は設定した角度範囲(例えば、θ=0°から60°の範囲)において回転可能となっている。そして、復元部(復元手段)36により、回転方向の復元力を受ける。被検出部37は、本体側ドラグ機構33に設けられ、検出部8によって本体側ドラグ部材33のリール本体に対する角度移動量θを検出可能としている。
【0057】
上記構成により、上述の実施形態と同様の効果が実現できる。すなわち、スプール1に働くトルクがドラグ装置の設定値以下の場合、スプール1と本体側ドラグ部材33とは一体で回転するため、上記第1の実施形態の場合と同様の機構となり検出可能となる。スプール1に働くトルクがドラグ装置の設定値以上の場合は、スプール1と、支持軸部2と、スプール側ドラグ部材32とは一体となって本体側ドラグ部材33に対して相対回転をする。この時も、本体側ドラグ部材33にはドラグ装置の設定トルク分のトルクが伝わり、復元部(復元手段)との釣り合い位置まで移動をする。この釣り合い位置を検出部8によって検出することで、スプール1に働くトルクおよび張力を検出可能である。
【0058】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0059】
1 スプール
2 支持軸部(支持軸)
3 ラインガイド(案内部)
4 ロータ
5 操作部
6 復元部(復元手段)
7 被検出部(被検出手段)
8 検出部(被検出部)
11 回転規制部
12 可動側バネ端
13 固定側バネ端
22 スプール側ドラグ部材
23 本体側ドラグ部材
32 スプール側ドラグ部材
33 本体側ドラグ部材
36 復元部(復元手段)
37 被検出部
38 検出部
100 糸巻き装置
200 糸巻き装置
300 糸巻き装置
図1
図2
図3
図4