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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169132
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】物理量センサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/14 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
G01L1/14 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074981
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 貴志
(72)【発明者】
【氏名】太田 則一
(72)【発明者】
【氏名】藤吉 基弘
(57)【要約】
【課題】新規な物理量センサ装置を提供する。
【解決手段】物理量センサ装置は、検出対象の物理量をセンサ入力に変換する変換器と、第1固定電極と第2固定電極と可動電極を有し、自励振動を生じるように構成されている物理量センサ素子と、第1固定電極と第2固定電極の間に電圧を与える電源と、可動電極の自励振動に同期した信号を検出する検出回路と、を備えている。変換器は、(1)電源が第1固定電極と第2固定電極の間に与える電圧と、(2)第1固定電極と第2固定電極のうちの少なくとも一方と可動電極の間に存在する容量と、(3)前記可動電極が静止状態における第1固定電極と第2固定電極のうちの少なくとも一方と可動電極の間の距離である電極間ギャップと、のうちの少なくとも1つを検出対象の物理量に応じて変化させることにより物理量センサ素子にセンサ入力を入力するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の物理量をセンサ入力に変換するように構成されている変換器と、
第1固定電極と第2固定電極と可動電極を有する物理量センサ素子であって、前記可動電極は、前記センサ入力が入力したときに、前記第1固定電極に接近又は接触する第1状態と前記第2固定電極に接近又は接触する第2状態とを交互に繰り返すような自励振動を生じるように構成されている、物理量センサ素子と、
前記第1固定電極と前記第2固定電極の間に電圧を与えるように構成されている電源と、
前記可動電極の自励振動に同期した信号を検出するように構成されている検出回路と、を備えており、
前記変換器は、
(1)前記電源が前記第1固定電極と前記第2固定電極の間に与える前記電圧と、
(2)前記第1固定電極と前記第2固定電極のうちの少なくとも一方と前記可動電極の間に存在する容量と、
(3)前記可動電極が静止状態における前記第1固定電極と前記第2固定電極のうちの少なくとも一方と前記可動電極の間の距離である電極間ギャップと、
のうちの少なくとも1つを検出対象の物理量に応じて変化させることにより前記物理量センサ素子に前記センサ入力を入力するように構成されている、物理量センサ装置。
【請求項2】
前記電源は、前記第1固定電極に第1電位を出力し、前記第2固定電極に前記第1電位とは異なる第2電位を出力するように構成されている、請求項1に記載の物理量センサ装置。
【請求項3】
前記第2電位が接地電位である、請求項2に記載の物理量センサ装置。
【請求項4】
前記物理量センサ素子は、前記第1電位が与えられる第3固定電極と前記第2電位が与えられる第4固定電極をさらに有しており、
前記可動電極は、揺動可能に構成されており、
前記第1固定電極と前記第3固定電極は、前記可動電極の揺動中心に対して対向する位置関係であって、前記第1状態において前記可動電極が接近又は接触するように配置されており、
前記第2固定電極と前記第4固定電極は、前記可動電極の揺動中心に対して対向する位置関係であって、前記第2状態において前記可動電極が接近又は接触するように配置されている、請求項2又は3に記載の物理量センサ装置。
【請求項5】
前記物理量センサ素子は、前記可動電極に固定されている第1接触バネと第2接触バネのうちの少なくとも1つを有しており、
前記第1接触バネは、前記第1状態において前記可動電極が前記第1固定電極に接近したときに前記可動電極が前記第1固定電極に接触するよりも先に他の部材に接触して弾性変形するように構成されており、
前記第2接触バネは、前記第2状態において前記可動電極が前記第2固定電極に接近したときに前記可動電極が前記第2固定電極に接触するよりも先に他の部材に接触して弾性変形するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の物理量センサ装置。
【請求項6】
前記電源は、前記第1固定電極と前記第2固定電極の間にゼロ電圧を間欠的に与えるように構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の物理量センサ装置。
【請求項7】
前記変換器は、上記(2)を検出対象の物理量に応じて変化させることにより前記物理量センサ素子に前記センサ入力を入力するように構成されており、
前記電源は、前記第1固定電極と前記第2固定電極の間に与える前記電圧を変動させるように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の物理量センサ装置。
【請求項8】
前記電源は、前記第1固定電極と前記第2固定電極の間にのこぎり波の前記電圧を与えるように構成されている、請求項7に記載の物理量センサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、物理量センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1及び非特許文献2は、一対の固定電極と可動電極を有するアクチュエーターを開示する。このアクチュエーターは、一方の固定電極に接触する第1状態と他方の固定電極に接触する第2状態とを交互に繰り返すような自励振動を可動電極に生じさせることにより、可動電極が揺動運動するように構成されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Z.Liu, et.al., “The electromechanical response of a self-exited MEMS Franklin oscillator”, Proc. of IEEE Int. conf. MEMS 2018, pp. 588-591
【非特許文献2】S.Shmullevich, et.al, “Asymmetric charge transfer phenomenon and its mechanism in self-exited electrostatic acutuator”, Proc. of IEEE Int. conf. MEMS 2015, pp. 41-44
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1及び非特許文献2が開示する技術は、可動電極が自励振動する現象を能動的に生じさせることにより、可動電極に揺動運動をさせることを特徴としている。本発明者らは、可動電極が自励振動する現象が他の用途にも適用でき得ることを見出した。本願明細書は、新規な物理量センサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する物理量センサ装置は、変換器と、物理量センサ素子と、電源と、検出回路と、を備えることができる。前記変換器は、検出対象の物理量をセンサ入力に変換するように構成されている。ここでいう物理量は、特に限定されるものではないが、例えば、圧力、加速度、角速度、温度、光等であってもよい。前記物理量センサ装置は、第1固定電極と第2固定電極と可動電極を有している。前記物理量センサ素子では、前記可動電極が、前記センサ入力が入力したときに、前記第1固定電極に接近又は接触する第1状態と前記第2固定電極に接近又は接触する第2状態とを交互に繰り返すような自励振動を生じるように構成されている。前記電源は、前記第1固定電極と前記第2固定電極の間に電圧を与えるように構成されている。前記検出回路は、前記可動電極の自励振動に同期した信号を検出するように構成されている。前記検出回路は、前記可動電極の自励振動に同期した信号の有無を検出するように構成されていてもよい。さらに、前記検出回路は、前記可動電極の自励振動の周波数を検出するように構成されていてもよい。前記変換器は、(1)前記電源が前記第1固定電極と前記第2固定電極の間に与える前記電圧と、(2)前記第1固定電極と前記第2固定電極のうちの少なくとも一方と前記可動電極の間に存在する容量と、(3)前記可動電極が静止状態における前記第1固定電極と前記第2固定電極のうちの少なくとも一方と前記可動電極の間の距離である電極間ギャップと、のうちの少なくとも1つを検出対象の物理量に応じて変化させることにより前記物理量センサ素子に前記センサ入力を入力するように構成されている。この物理量センサ装置では、前記センサ入力が入力すると、前記可動電極が自励振動を開始する。この物理量センサ装置は、前記センサ入力に応じて前記可動電極を受動的に自励振動させることにより、物理量を検出するセンサとして機能することができる。
【0006】
上記物理量センサ装置では、前記電源が、前記第1固定電極に第1電位を出力し、前記第2固定電極に前記第1電位とは異なる第2電位を出力するように構成されていてもよい。また、前記第2電位が接地電位であってもよい。
【0007】
上記物理量センサ装置では、前記物理量センサ素子が、前記第1電位が与えられる第3固定電極と前記第2電位が与えられる第4固定電極をさらに有していてもよい。この場合、前記可動電極は、揺動可能に構成されている。前記第1固定電極と前記第3固定電極は、前記可動電極の揺動中心に対して対向する位置関係であって、前記第1状態において前記可動電極が接近又は接触するように配置されている。前記第2固定電極と前記第4固定電極は、前記可動電極の揺動中心に対して対向する位置関係であって、前記第2状態において前記可動電極が接近又は接触するように配置されている。この物理量センサ装置では、前記可動電極が前記固定電極に付着するスティッキング現象が抑えられる。
【0008】
上記物理量センサ装置では、前記物理量センサ素子が、前記可動電極に固定されている第1接触バネと第2接触バネのうちの少なくとも1つを有していてもよい。この場合、前記第1接触バネは、前記第1状態において前記可動電極が前記第1固定電極に接近したときに前記可動電極が前記第1固定電極に接触するよりも先に他の部材に接触して弾性変形するように構成されている。前記第2接触バネは、前記第2状態において前記可動電極が前記第2固定電極に接近したときに前記可動電極が前記第2固定電極に接触するよりも先に他の部材に接触して弾性変形するように構成されている。この物理量センサ装置では、接触ばねの復元力を利用することにより、前記可動電極が固定電極に付着するスティッキング現象が抑えられる。
【0009】
上記物理量センサ装置では、前記電源が、前記第1固定電極と前記第2固定電極の間にゼロ電圧を間欠的に与えるように構成されていてもよい。この物理量センサ装置では、前記第1固定電極と前記第2固定電極の間にゼロ電圧を間欠的に与えることにより、自励振動のヒステリシスの影響を抑えることができる。
【0010】
上記物理量センサ装置では、前記変換器が、上記(2)、即ち、前記第1固定電極と前記第2固定電極のうちの少なくとも一方と前記可動電極の間に存在する容量を検出対象の物理量に応じて変化させることにより前記物理量センサ素子に前記センサ入力を入力するように構成されていてもよい。この場合、前記電源は、前記第1固定電極と前記第2固定電極の間に与える前記電圧を変動させるように構成されている。例えば、前記第1固定電極と前記第2固定電極の間に与える前記電圧を一定にすると、検出対象の物理量に応じて前記容量を変動させても、前記可動電極の自励振動の周波数は概ね一定である。このため、前記第1固定電極と前記第2固定電極の間に与える前記電圧を一定にすると、検出対象の物理量の入力の有無は検出できるものの、検出対象の物理量の大きさを検出することが難しい。しかしながら、前記第1固定電極と前記第2固定電極の間に与える前記電圧を変動させれば、与えられる前記電圧と前記可動電極の自励振動の有無から、前記容量の大きさが特定できる。前記容量の大きさから検出対象の物理量の大きさを推定できる。
【0011】
上記物理量センサ装置では、前記電源は、前記第1固定電極と前記第2固定電極の間にのこぎり波の電圧を与えるように構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】物理量センサ装置の構成を概略的に示す図である。
図2】物理量センサ素子の構成を概略的に示す図である。
図3】押圧力に応じて直流電圧(V1-V2)の電圧値を変動させる変換器の一例を示す図である。
図4】押圧力に応じて直流電圧(V1-V2)の電圧値を変動させる変換器の他の一例を示す図である。
図5】光に応じて直流電圧(V1-V2)の電圧値を変動させる変換器の一例を示す図である。
図6】押圧力に応じて電極間ギャップを変動させる変換器の一例を示す図である。
図7】温度に応じて電極間ギャップを変動させる変換器の一例を示す図である。
図8】温度に応じて電極間ギャップを変動させる変換器の一例を示す図である。
図9】押圧力に応じて電極間容量を変動させる変換器の一例を示す図である。
図10】位置検出回路の一例を示す図である。
図11】位置検出回路の他の一例を示す図である。
図12】変形例の物理量センサ素子の構成を概略的に示す図である。
図13】物理量センサ素子の具体例の構成を概略的に示す斜視図である。
図14】物理量センサ素子の具体例の構成を概略的に示す図であり、図13のXIV-XIV線に対応した断面図である。
図15】物理量センサ素子の具体例の構成を概略的に示す図であり、図13のXV-XV線に対応した断面図である。
図16図13図15に示す物理量センサ素子の直流電圧と自励振動周波数の関係を計算した結果を示す図である。
図17図13図15に示す物理量センサ素子の電極間ギャップと自励振動周波数の関係を計算した結果を示す図である。
図18図13図15に示す物理量センサ素子の電極間容量と自励振動周波数の関係を計算した結果を示す図である。
図19】電圧源が第1固定電極と第2固定電極の間に与える直流電圧の一例を示す図である。
図20】電圧源が第1固定電極と第2固定電極の間に与える直流電圧の他の一例を示す図である。
図21】変形例の物理量センサ素子の具体例の構成を概略的に示す斜視図である。
図22図21の物理量センサ素子が自励振動したときの挙動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(物理量センサ装置1の構成)
図1に示されるように、物理量センサ装置1は、物理量センサ素子2と、電圧源3A,3Bと、変換器4と、位置検出回路5と、物理量検出回路6と、を備えている。
【0014】
(物理量センサ素子2の構成)
物理量センサ素子2は、可動電極10と、第1固定電極11と、第2固定電極12と、可動電極10を支持する支持部15と、を有している。物理量センサ素子2は、自励振動型の物理量センサ素子であり、検出対象の物理量に対応したセンサ入力が入力したときに、可動電極10が自励振動するように構成されている。物理量の例としては、特に限定されるものではないが、例えば、圧力、加速度、角速度、温度、光等が例示される。後述するように、物理量センサ装置1は、変換器4を介してこのような物理量を物理量センサ素子2にセンサ入力として作用させることにより、物理量センサ素子2の各種パラメータの変動に基づいて可動電極10の自励振動を開始させることができる。
【0015】
第1固定電極11と第2固定電極12は、特に限定されるものではないが、例えば基板上に固定して配置されていてもよい。可動電極10は、第1固定電極11と第2固定電極12との相対的な位置関係が変動するように構成されており、特に限定されるものではないが、例えば支持部15を介して基板に支持されていてもよい。可動電極10は、支持部15によって並進運動、揺動運動、又は、それらを組合せた運動によって、第1固定電極11に接近又は接触する第1状態(第2固定電極12からは離反する状態)と、前記第2固定電極12に接近又は接触する第2状態(第1固定電極11からは離反する状態)と、の間で動くことが可能となるように構成されている。可動電極10は、固定電極11,12に対して電位がフローティング状態又は高インピーダンス状態である。この例では、可動電極10が静止している状態において、可動電極10と第1固定電極11の間の距離、及び、可動電極10と第2固定電極12の間の距離は等しい。本明細書では、この距離を電極間ギャップD1という。また、可動電極10と第1固定電極11の間に存在する容量を電極間容量C1という。
【0016】
電圧源3A,3Bは、第1電圧源3Aと、第2電圧源3Bと、を有している。第1電圧源3Aは、第1固定電極11に接続されており、第1固定電極11に正の第1直流電位V1を出力する。第2電圧源3Bは、第2固定電極12に接続されており、第2固定電極12に正の第2直流電位V2を出力する。第1直流電位V1は、第2直流電位V2よりも大きい電位である。このため、第1固定電極11と第2固定電極12の間には、直流電圧(V1-V2)が与えられている。なお、第2直流電位V2は、典型的には接地電位であってもよい。
【0017】
物理量センサ素子2の可動電極10は、直流電圧(V1-V2)の電圧値と、電極間ギャップD1と、電極間容量C1と、の3つのパラメータに依存する周波数で自励振動をすることができる。なお、電極間容量C1は、可動電極10と第1固定電極11の間の容量に代えて、可動電極10と第2固定電極12の間の容量であってもよい。
【0018】
可動電極10が自励振動して第1固定電極11に接触すると(第1状態)、可動電極10は電荷を充電し、可動電極10の電位が上昇する。可動電極10の電位が上昇すると、可動電極10は第1固定電極11から斥力を受けるとともに第2固定電極12から引力を受ける。これにより、可動電極10は、第2固定電極12側へ移動を開始する。可動電極10が第2固定電極12に接触すると(第2状態)、可動電極10は電荷を放電し、可動電極10の電位が低下する。可動電極10の電位が低下すると、可動電極10は第2固定電極12から斥力を受けるとともに第1固定電極11から引力を受ける。これにより、可動電極10は第1固定電極11側へ移動を開始する。このように、物理量センサ素子2は、第1状態と第2状態を交互に繰り返すように自励振動することにより、可動電極10を介して第1固定電極11から第2固定電極12に電荷を搬送することができる。なお、可動電極10と固定電極11,12は、必ずしも接触する必要はない。例えば、物理量センサ素子2は、可動電極10と固定電極11,12の間をトンネル現象によって電荷が移動できるように構成されていてもよい。この場合でも、可動電極10は自励振動をすることができる。
【0019】
図2に、物理量センサ素子2の一例を示す。この物理量センサ素子2は、可動電極10が揺動可能に構成されている例である。このような物理量センサ素子2では、可動電極10と第1固定電極11と第2固定電極12は、基板上にMEMS技術を利用して形成されてもよい。可動電極10は、第1固定電極11と第2固定電極12の各々の近傍に配置されており、静止状態において、第1固定電極11と第2固定電極12の各々に対して所定距離、即ち、電極間ギャップD1を隔てて対向するように配置されている。可動電極10の両先端部の下方には、第1固定電極11と第2固定電極12が配置されている。物理量センサ素子2では、基板に対して揺動可能となるように、可動電極10が支持部15を介して基板に固定されている。このため、可動電極10は、支持部15を揺動中心としてシーソーのように揺動することができる。これにより、可動電極10は、第1固定電極11に接近又は接触する第1状態(第2固定電極12からは離反する状態)と、前記第2固定電極12に接近又は接触する第2状態(第1固定電極11からは離反する状態)と、の間で動くことが可能となるように構成されている。
【0020】
(変換器4の構成)
変換器4は、直流電圧(V1-V2)の電圧値と、電極間ギャップD1と、電極間容量C1と、のうちの少なくとも1つを検出対象の物理量に応じて変化させるように構成されている。
【0021】
(直流電圧(V1-V2)の電圧値を変動させる変換器4の構成例)
例えば、電極間ギャップD1と電極間容量C1を固定した状態で直流電圧(V1-V2)の電圧値を変動させると、所定の電圧値以上となったときに可動電極10が自励振動を開始し、その振動周波数は直流電圧(V1-V2)の電圧値に依存する。このため、変換器4によって検出対象の物理量に応じて直流電圧(V1-V2)の電圧値が変動するように構成すると、物理量センサ素子2は、センサ入力が入力していないときに可動電極10の自励振動を停止し、センサ入力が入力したときに可動電極10に自励振動を生じさせることができる。
【0022】
図3に、第1電圧源3Aが変換器4として機能する例を示す。この第1電圧源3Aは、直列接続された固定抵抗素子R10と可変抵抗素子R20を有する分圧回路である。この分圧回路に直流電圧VDが与えられている。固定抵抗素子R10と可変抵抗素子R20の接続点が第1電圧源3Aの出力端子に接続されている。即ち、分圧回路の出力が第1直流電位V1として第1固定電極11に入力する。可変抵抗素子R20は、特に限定されるものではないが、例えば歪みによって電気抵抗値が変動する導電性ゴムであってもよい。この可変抵抗素子R20に、検出対象の物理量である押圧力が作用する。可変抵抗素子R20に押圧力が作用すると、固定抵抗素子R10と可変抵抗素子R20の分圧比に応じて第1電圧源3Aの出力である第1直流電位V1が変動する。固定抵抗素子R10と可変抵抗素子R20を有する第1電圧源3Aは、検出対象の押圧力に応じて直流電圧(V1-V2)の電圧値を変動させる変換器4として動作することができる。なお、このような分圧回路は、第1電圧源3Aに代えて第2電圧源3Bに設けられていてもよい。
【0023】
図4に、第1電圧源3Aが変換器4として機能する他の例を示す。この第1電圧源3Aは、直列接続された固定容量素子C10と可変容量素子C20を有する分圧回路である。この分圧回路に直流電圧VDが与えられている。固定容量素子C10と可変容量素子C20の接続点が第1電圧源3Aの出力端子に接続されている。即ち、分圧回路の出力が第1直流電位V1として第1固定電極11に入力する。可変容量素子C20は、特に限定されるものではないが、例えば導電体の間に弾性材料(例えばゴム)からなる誘電体が挟まれた構造であり、例えば歪みによって容量値が変動するような構造であってもよい。この可変容量素子C20に、検出対象の物理量である押圧力が作用する。可変容量素子C20に押圧力が作用すると、固定容量素子C10と可変容量素子C20の分圧比に応じて第1電圧源3Aの出力である第1直流電位V1が変動する。固定容量素子C10と可変容量素子C20を有する第1電圧源3Aは、検出対象の押圧力に応じて直流電圧(V1-V2)の電圧値を変動させる変換器4として動作することができる。なお、このような分圧回路は、第1電圧源3Aに代えて第2電圧源3Bに設けられていてもよい。
【0024】
図5に、第1電圧源3Aが変換器4として機能する他の例を示す。この第1電圧源3Aは、フォトダイオードD10と容量素子C30を有する受光素子である。フォトダイオードD10は、第1固定電極11と電源線の間に接続されており、アノードが第1固定電極11に接続されており、カソードが電源線に接続されている。容量素子C30は、フォトダイオードD10のアノードと第1固定電極11の間のラインとグランドの間に接続されている。フォトダイオードD10に、検出対象の物理量である光が入力する。フォトダイオードD10に光が入力すると、フォトダイオードD10を介して電源線から容量素子C30に電流が流れ、容量素子C30に電荷が蓄積する。これにより、第1電圧源3Aの出力である第1直流電位V1が変動する。フォトダイオードD10と容量素子C30を有する第1電圧源3Aは、検出対象の光に応じて直流電圧(V1-V2)の電圧値を変動させる変換器4として動作することができる。なお、このような受光素子は、第1電圧源3Aに代えて第2電圧源3Bに設けられていてもよい。
【0025】
(電極間ギャップD1を変動させる変換器4の構成例)
例えば、直流電圧(V1-V2)の電圧値と電極間容量C1を固定した状態で電極間ギャップD1を変動させると、電極間ギャップD1が所定距離以下となったときに可動電極10が自励振動を開始し、その振動周波数は電極間ギャップD1に依存する。このため、変換器4によって検出対象の物理量に応じて電極間ギャップD1が変動するように構成すると、物理量センサ素子2は、センサ入力が入力していないときに可動電極10の自励振動を停止し、センサ入力が入力したときに可動電極10に自励振動を生じさせることができる。
【0026】
図6に示す物理量センサ素子2は、受圧板20と並進運動部材22を有している。物理量センサ素子2では、受圧板20に対して揺動可能となるように、可動電極10が支持部15を介して受圧板20に固定されている。受圧板20は、並進運動部材22を介して基板に固定されている。並進運動部材22は、特に限定されるものではないが、例えば弾性部材であってもよい。並進運動部材22は、受圧板20が並進運動することが可能となるように構成されている。受圧板20に、検出対象の物理量である押圧力が作用する。受圧板20に押圧力が作用すると、受圧板20が並進運動し、電極間ギャップD1が変動する。このように、受圧板20と並進運動部材22は、検出対象の押圧力に応じて電極間ギャップD1を変動させる変換器4として動作することができる。
【0027】
図7及び図8に示す物理量センサ素子2は、多層構造で構成された可動電極10を有している。可動電極10は、固定電極11,12側に配置されている導電体の第1層10Aと、第1層10Aとは異なる線膨張係数を有する第2層10Bと、を有している。第2層10Bは、導電体であってもよく、絶縁体であってもよい。この例では、第2層10Bの線膨張係数は、第1層10Aの線膨張係数よりも大きい。
【0028】
図7及び図8に、検出対象の物理量である温度が可動電極10に作用したときの挙動を示す。第2層10Bの線膨張係数が第1層10Aの線膨張係数よりも大きいので、温度が増加すると、可動電極10は熱応力差によって第2層10B側が凸となるように変形し、電極間ギャップD1が小さくなるように変動する。なお、第1層10Aの線膨張係数が第2層10Bの線膨張係数よりも大きければ、温度が増加すると、可動電極10は熱応力差によって第1層10A側が凸となるように変形し、電極間ギャップD1が大きくなるように変動する。このように、可動電極10は、検出対象の温度に応じて電極間ギャップD1を変動させる変換器4として動作することができる。
【0029】
(電極間容量C1を変動させる変換器4の構成例)
例えば、直流電圧(V1-V2)の電圧値と電極間ギャップD1を固定した状態で電極間容量C1を変動させると、電極間容量C1が所定値以上となったときに可動電極10が自励振動を開始し、その振動周波数は電極間容量C1に依存する。このため、変換器4によって検出対象の物理量に応じて電極間容量C1が変動するように構成すると、物理量センサ素子2は、センサ入力が入力していないときに可動電極10の自励振動を停止し、センサ入力が入力したときに可動電極10に自励振動を生じさせることができる。
【0030】
図9に示す物理量センサ素子2は、可動電極10と第1固定電極11の間に接続されている可変容量素子C40を有している。可変容量素子C40は、特に限定されるものではないが、例えば導電体の間に弾性材料(例えばゴム)からなる誘電体が挟まれた構造であり、例えば歪みによって容量値が変動するような構造であってもよい。この可変容量素子C40に、検出対象の物理量である押圧力が作用する。可変容量素子C40に押圧力が作用すると、可変容量素子C40の容量が変動する。このように、可変容量素子C40は、検出対象の押圧力に応じて電極間容量C1を変動させる変換器4として動作することができる。
【0031】
(位置検出回路5及び物理量検出回路6の構成)
図1に戻る。位置検出回路5は、可動電極10の位置に応じた信号、即ち、可動電極10の自励振動に同期した信号を出力するように構成されている。図10に、位置検出回路5の一例であるトランスインピーダンスアンプを示す。入力端子は、第2固定電極12に接続されている。上記したように、可動電極10が自励振動を開始すると、第1固定電極11から第2固定電極12に電荷の搬送が行われる。このため、第2固定電極12からは可動電極10の自励振動に同期した電流が流れる。図10のトランスインピーダンスアンプは、第2固定電極12から流れてくる電流を電圧変換して出力する。このように、図10のトランスインピーダンスアンプは、可動電極10の自励振動に同期したアナログ信号を出力することができる。図11に、位置検出回路5の他の一例である二値化回路を示す。入力端子は、第2固定電極12に接続されている。図11の二値化回路は、第2固定電極12から流れてくる電流を電圧変換した後に、コンパレータを利用して閾値電圧と比較して二値化する。このように、図11の二値化回路は、可動電極10の自励振動に同期したパルス信号を出力することができる。
【0032】
物理量検出回路6は、位置検出回路5の出力信号の有無を検出するように構成されていてもよい。これにより、物理量検出回路6は、可動電極10の自励振動の有無、即ち、検出対象の物理量の入力の有無を検出することができる。物理量検出回路6はさらに、位置検出回路5の出力信号の周波数を検出するように構成されていてもよい。これにより、物理量検出回路6は、可動電極10の自励振動の周波数、即ち、検出対象の物理量の大きさを検出することができる。
【0033】
(物理量センサ装置1の動作)
物理量センサ装置1の動作を説明する。物理量センサ素子2の直流電圧(V1-V2)の電圧値と電極間ギャップD1と電極間容量C1の各々の初期値は、検出対象の物理量の入力がないときに、可動電極10が自励振動しない値に設定されている。このため、物理量センサ素子2では、検出対象の物理量の入力がないときに、可動電極10の自励振動が停止している。したがって、物理量センサ素子2は、センサ入力が入力しないときは静止状態であり、電力を消費しない。
【0034】
検出対象の物理量が入力すると、変換器4は、直流電圧(V1-V2)の電圧値と、電極間ギャップD1と、電極間容量C1と、のうちの少なくとも1つを検出対象の物理量に応じて変化させる。これにより、物理量センサ素子2では、可動電極10の自励振動が開始する。位置検出回路5及び物理量検出回路6によって可動電極10の自励振動が検出され、検出対象の物理量の入力の有無、又は、検出対象の物理量の入力の大きさを検出することができる。
【0035】
ここで、直流電圧(V1-V2)の電圧値と自励振動周波数の間に、ヒステリシスの関係が存在することがある。具体的には、電極間ギャップD1と電極間容量C1を一定とし、直流電圧(V1-V2)の電圧値を変動させる場合、直流電圧(V1-V2)の電圧値を増加させるモードで自励振動が開始するときの電圧値と、直流電圧(V1-V2)の電圧値を減少させるモードで自励振動が停止するときの電圧値が異なっている。このようなヒステリシスの関係があると、直流電圧(V1-V2)が両者の電圧値の間にある場合、自励振動の有無と物理量の入力の有無は、電圧値を増加させるモードと電圧値を減少させるモードで異なる。このため、物理量の正確な検出が困難となる。
【0036】
このようなヒステリシスの関係による影響を回避するために、電圧源3A,3Bは、ゼロ電圧を間欠的に与えるように構成されていてもよい。具体的には、電圧源3A,3Bは、一定周波数の方形波を与えるように構成されていてもよい。これにより、間欠的に直流電圧(V1-V2)がゼロとなってリセットされるので、常に直流電圧(V1-V2)が増加するモードで自励振動の開始を検出することができる。
【0037】
図12に、変形例の物理量センサ素子8を示す。この物理量センサ素子8は、第3固定電極13と第4固定電極をさらに備えていることを特徴としている。これら第3固定電極13と第4固定電極も、半導体基板上にMEMS技術を利用して形成されてもよい。第3固定電極13は、第1電圧源3Aに接続されており、第1固定電極11と同じ第1直流電位V1が入力している。第4固定電極14は、第2電圧源3Bに接続されており、第2固定電極12と同じ第2直流電位V2が入力している。第1固定電極11と第3固定電極13は、可動電極10の揺動中心に対して対向する位置関係に配置されている。第2固定電極12と第4固定電極14も、可動電極10の揺動中心に対して対向する位置関係に配置されている。第1固定電極11と第4固定電極14は、可動電極10を間に置いて対向する位置関係に配置されている。第2固定電極12と第3固定電極13も、可動電極10を間に置いて対向する位置関係に配置されている。これにより、第1状態において、第1固定電極11と第3固定電極13は可動電極10に接近又は接触するように、第2固定電極12と第4固定電極14は可動電極10から離れるように配置されている。一方、第2状態において、第1固定電極11と第3固定電極13は可動電極10から離れるように、第2固定電極12と第4固定電極14は可動電極10に接近又は接触するように配置されている。
【0038】
ここで、図2の物理量センサ素子2と図12の物理量センサ素子8を対比する。図2の物理量センサ素子2では、支持部15の構造によっては、可動電極10が揺動運動だけでなく、その両端部において若干の並進運動を伴うことがある。このため、可動電極10が第1固定電極11及び第2固定電極12に引き込まれるように平行移動し、可動電極10が第1固定電極11及び第2固定電極12に付着するスティッキング現象が懸念される。一方、図12の物理量センサ素子8では、例えば第1状態において、可動電極10の一端が第1固定電極11に接近又は接触するときは、可動電極10の他端が第3固定電極13にも接近又は接触する。このため、可動電極10の一端が第1固定電極11に引き込まれる力の向きと可動電極10の他端が第3固定電極13に引き込まれる力の向きが逆である。この結果、可動電極10の両端部の並進運動が抑えられ、スティッキング現象が抑えられる。
【実施例0039】
図13図15に、具体的な物理量センサ素子102の一例を示す。物理量センサ素子102は、半導体基板100上にMEMS技術を利用して形成されており、可動電極110と、第1固定電極111と、第2固定電極112と、支持部115と、を備えている。可動電極110は、板状部材であり、一方向(この例では、x方向)に沿って長く伸びている。可動電極110の一端の下方には第1固定電極111が半導体基板100上に配置されており、可動電極110の他端の下方には第2固定電極112が半導体基板100上に配置されている。支持部115は、可動電極110の側面の各々からy方向に伸びる一対のトーションビーム式のバネを有している。その一対のトーションビーム式のバネの各々が、対応する固定部115A,115Bを介して半導体基板100に固定されている。これにより、可動電極110は、y軸回りに揺動可能に構成されている。
【0040】
可動電極110の揺動中心から端部までの長さ(図14のL110)は50μmであり、可動電極の厚み(図14のT110)は0.5μmであり、可動電極の幅(図15のW110)は10μmである。可動電極110の長手方向において、可動電極110の端部と第1固定電極111の重複する長さ(図14のL110-111)は、10μmである。なお、可動電極110の端部と第2固定電極112の重複する長さも、これと同じである。支持部115のトーションビーム式のバネの幅(図13のW115)は2μmであり、支持部115のトーションビーム式のバネの厚み(図15のT115)は50nmであり、可動電極110と固定部115Aの間のトーションビーム式のバネの長さ(図15のL115)は20μmである。なお、可動電極110と固定部115Bの間のトーションビーム式のバネの長さも、これと同じである。
【0041】
図16は、物理量センサ素子102において、第1固定電極111と第2固定電極112の間に与えられる直流電圧を変動させたときの可動電極110の自励振動の周波数を計算した結果である。第1固定電極111と第2固定電極112の間に与えられる直流電圧が所定値以上(この例では、約2.3V以上)のときに可動電極110は自励振動をしており、その振動周波数は直流電圧の電圧値に依存している。このため、検出対象の物理量に応じて第1固定電極111と第2固定電極112の間に与えられる直流電圧が変動するように構成すれば、物理量センサ素子102が検出対象の物理量を検出するセンサとして機能できることが示唆された。
【0042】
図17は、物理量センサ素子102において、電極間ギャップD1を変動させたときの可動電極110の自励振動の周波数を計算した結果である。電極間ギャップD1が所定距離以下(この例では、約0.75μm以下)のときに可動電極110が自励振動をしており、その振動周波数は電極間ギャップD1に依存している。このため、検出対象の物理量に応じて電極間ギャップD1が変動するように構成すれば、物理量センサ素子102が検出対象の物理量を検出するセンサとして機能できることが示唆された。
【0043】
図18は、物理量センサ素子102において、第1固定電極111と可動電極110の間の電極間容量を変動させたときの可動電極110の自励振動の周波数を計算した結果である。電極間容量が所定値以上(この例では、約4fF以上)のときに可動電極110が自励振動をしており、その振動周波数は電極間容量に依存している。このため、検出対象の物理量に応じて電極間容量が変動するように構成すれば、物理量センサ素子102が検出対象の物理量を検出するセンサとして機能できることが示唆された。
【0044】
図18に示されるように、電極間容量を変動させたときの可動電極110の自励振動周波数は、概ね一定である。このため、第1固定電極111と第2固定電極112の間に与えられる直流電圧及び電極間ギャップD1を一定とし、検出対象の物理量に応じて電極間容量が変動するように構成した場合、検出対象の物理量の入力の有無を検出できるものの、その物理量の大きさを高精度に検出することが難しい。
【0045】
この場合、検出対象の物理量の大きさを検出するために、第1固定電極111と第2固定電極112の間に与えられる直流電圧を変動させて、検出対象の物理量の大きさを検出する方法を採用してもよい。
【0046】
図19に、第1固定電極111と第2固定電極112の間に与えられる直流電圧を変動させる一例を示す。この直流電圧は、一定周波数の方形波であるとともに、各方形波の大きさが増加する例である。この検出方法では、特定の直流電圧(Va、Vb,Vc)を印加したときに可動電極110が自励振動するときの電極間容量の最小値を予め求めておく。例えば、直流電圧(Va)を印加したときに可動電極110が自励振動するときの電極間容量の最小値をCaとする。同様に、直流電圧(Vb)のときの電極間容量の最小値がCbであり、直流電圧(Vc)のときの電極間容量の最小値がCcである。このような直流電圧と電極間容量の最小値の対応表は、物理量検出回路6(図1参照)に記憶されている。また、物理量検出回路6には、電極間容量(Ca、Cb、Cc)と検出対象の物理量の対応表も記憶されている。
【0047】
例えば、直流電圧(Va)を印加したときに可動電極110は自励振動をせず、直流電圧(Vb)及び直流電圧(Vc)を印加したときに可動電極110が自励振動したとすると、電極間容量はCbであると特定できる。これにより、電極間容量Cbから検出対象の物理量の大きさを推定することができる。
【0048】
図20に示すように、第1固定電極111と第2固定電極112の間に与えられる直流電圧がのこぎり波であってもよい。図19に示す例では、検出対象の物理量の推定値は、離散的な値となる。一方、図20に示す例では、例えばのこぎり波を印加してからの経過時間と電極間容量の対応を示す関数を予め求めておけば、可動電極110が自励振動を開始した時間から電極間容量を求めることができ、検出対象の物理量の推定値は連続的な値となる。
【0049】
図21に、具体的な物理量センサ素子104の他の一例を示す。なお、図13図15に示す物理量センサ素子102と共通する構成要素には共通の符号を付す。この物理量センサ素子104は、一対の第1接触バネ110aと一対の第2接触バネ110bを備えていることを特徴としている。一対の第1接触バネ110aは、可動電極110の一方の端部に対応して設けられている。一対の第1接触バネ110aの各々は、可動電極110の長手方向、即ち、x方向に沿って伸びた板バネであり、その一端が可動電極110の一方の端部付近に位置するとともに自由端であり、その他端が可動電極110の側面に固定されている。一対の第2接触バネ110bは、可動電極110の他方の端部に対応して設けられている。一対の第2接触バネ110bの各々は、可動電極110の長手方向、即ち、x方向に沿って伸びた板バネであり、その一端が可動電極110の他方の端部付近に位置するとともに自由端であり、その他端が可動電極110に固定されている。
【0050】
物理量センサ素子104はさらに、半導体基板100がその表面に突出部100aを有している。突出部100aは、後述するように、可動電極110が自励振動をして固定電極111,112に接近したときに、可動電極110が固定電極111,112に接触するよりも先に接触バネ110a,110bに接触する部材である。
【0051】
図22に、物理量センサ素子104の可動電極110が自励振動するときの挙動を示す。図22は、可動電極110が第1固定電極111に接近又は接触する第1状態の挙動を示している。図22の(A)は、可動電極110が静止状態である。図22(B)に示すように、可動電極110が第1固定電極111に接近すると、可動電極110が第1固定電極111に接触するよりも先に第1接触バネ110aが突出部100aに接触する。これにより、図22の(C)に示すように、第1接触バネ110aは弾性変形する。第1接触バネ110aが弾性変形することにより、可動電極110は第1固定電極111に接触することができる。図22の(D)に示すように、第1接触バネ110aの復元力により、可動電極110は第1固定電極111から離反する。このように、接触バネ110a,110bが設けられていると、可動電極110が固定電極111,112に付着するスティッキング現象が抑えられる。
【0052】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0053】
1:物理量センサ装置
2:物理量センサ素子
3A、3B:電圧源
4:変換器
5:位置検出回路
6:物理量検出回路
10:可動電極
11、12:固定電極
15:支持部
C1:電極間容量
D1:電極間ギャップ
V1:第1直流電位
V2:第2直流電位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22