(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169136
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】車体前部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
B62D25/08 E
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074985
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤川 剛
(72)【発明者】
【氏名】近藤 武宏
(72)【発明者】
【氏名】坂井 琢人
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BA06
3D203BC35
3D203CB24
3D203DA02
(57)【要約】
【課題】車体を軽量化することができると共に、パワートレインを支持するマウント部から車体へ伝わる振動を低減することができる車体前部構造を提供することを課題とする。
【解決手段】車体前部構造1は、車体前後方向に延設されたフロントサイドフレーム12と、フロントサイドフレーム12の車幅方向外側で車体前後方向に延設されたアッパメンバ14と、フロントサイドフレーム12とアッパメンバ14の間に配置されたマウント部3と、フロントサイドフレーム12とアッパメンバ14の間に設けられ、マウント部3を支持する複数のトラス構造2と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に延設されたフロントサイドフレームと、
前記フロントサイドフレームの車幅方向外側で車体前後方向に延設されたアッパメンバと、
前記フロントサイドフレームと前記アッパメンバの間に配置されたマウント部と、
前記フロントサイドフレームと前記アッパメンバの間に設けられ、前記マウント部を支持する複数のトラス構造と、
を備える車体前部構造。
【請求項2】
前記フロントサイドフレームと前記アッパメンバとの間に車幅方向かつ上下方向に架設された縦メンバをさらに備え、
前記マウント部は、前記マウント部の前方かつ下方に延設され前記フロントサイドフレームに連結された前側脚部と、前記マウント部の後方かつ下方に延設され前記フロントサイドフレームに連結された後側脚部と、前記後側脚部の上部から後方に延設され前記縦メンバに連結されたアーム部と、を有し、
前記複数のトラス構造は、前記前側脚部と前記後側脚部と前記フロントサイドフレームとで構成された第一トラスと、前記後側脚部と前記アーム部と前記縦メンバとで構成された第二トラスと、を有する
請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記マウント部は、パワートレインを支持する弾性支持部を有し、
前記複数のトラス構造は、前記前側脚部と前記縦メンバと前記アーム部と前記フロントサイドフレームとで構成された第三トラスをさらに備える、
請求項2に記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記マウント部の上部と前記アッパメンバとを連結する上部連結部材をさらに備え、
前記上部連結部材は、前記アッパメンバに固定される第一固定部と、前記マウント部の上部の後寄りに固定される第二固定部と、前記マウント部の上部の前寄りに固定される第三固定部と、を有し、
前記上部連結部材は、前記複数のトラス構造のうちの第四トラスを構成する
請求項3に記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記アッパメンバの前端側に固定され、前記アッパメンバの前方かつ下方に延出するロアメンバをさらに備え、
前記アッパメンバは、前記アッパメンバと前記ロアメンバの固定部から前方に延出する延出部を有し、
前記第一固定部は、前記弾性支持部と車体前後方向で重なる位置に配置されている
請求項4に記載の車体前部構造。
【請求項6】
ダンパの上端部が連結されるダンパベースと、
前記ダンパベースから前方かつ下方に延出し前記縦メンバに連結される傾斜メンバと、をさらに備え、
前記複数のトラス構造は、前記ダンパベースと前記傾斜メンバと前記縦メンバとで構成された第五トラスを有し、
前記第五トラスは、前記第二トラス及び前記第三トラスを支持している
請求項3に記載の車体前部構造。
【請求項7】
前記後側脚部、前記アーム部及び前記縦メンバは、車体前後方向で重なる位置に配置されている
請求項2に記載の車体前部構造。
【請求項8】
前記後側脚部は、パワートレインを支持する弾性支持部と高さ方向で重なる位置にリブを備えている
請求項2に記載の車体前部構造。
【請求項9】
前記後側脚部は、前記リブの下方に、前記後側脚部と前記フロントサイドフレームの接続部へ向かって延びる第二リブを備えている
請求項8に記載の車体前部構造。
【請求項10】
前記アーム部は、パワートレインを支持する弾性支持部と高さ方向で重なる位置に配置されている
請求項2に記載の車体前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車等の車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パワートレインを支持するものとしては、例えば、特許文献1に記載された車両の前部車体構造が知られている。特許文献1に記載の車両の前部車体構造は、左右のホイールハウス(28)に固定したマウントブラケット(36)にエンジンマウント(37)をそれぞれ取り付けて、エンジンマウント(37)でパワートレイン(8)を支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の車両の前部車体構造等の車体前部構造においては、燃費の向上、CO2排出量の低減等の観点から車体の軽量化が望まれている。しかしながら、エンジンマウント(3)を車体に取り付けるためのマウントブラケット(36)等を軽量化した場合は、パワートレイン(8)からの振動が増加して車体に伝わり、騒音が発生するという問題点があった。
【0005】
本発明は、前記問題点を解決するために創案されたものであり、車体を軽量化することができると共に、パワートレインを支持するマウント部から車体へ伝わる振動を低減することができる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明に係る車体前部構造は、車体前後方向に延設されたフロントサイドフレームと、前記フロントサイドフレームの車幅方向外側で車体前後方向に延設されたアッパメンバと、前記フロントサイドフレームと前記アッパメンバの間に配置されたマウント部と、前記フロントサイドフレームと前記アッパメンバの間に設けられ、前記マウント部を支持する複数のトラス構造と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車体を軽量化することができると共に、パワートレインを支持するマウント部から車体へ伝わる振動を低減することができる車体前部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る車体前部構造を示す要部概略斜視図である。
【
図4】アッパメンバとロアメンバとの連結部を示す要部斜視図である。
【
図5】トラス構造を取り外した状態の左右一対の車体前部構造を示す斜視図である。
【
図6】アーム部の締結部と後側脚部の接続部とを示す要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1~
図6を参照して、本発明の実施形態に係る車体前部構造1を説明する。
なお、車両の進行方向を「前」、後退方向を「後」、「鉛直上方側を「上」、鉛直下方側を「下」、車幅方向を「左」、「右」として説明する。
【0010】
≪車両≫
車両(図示省略)は、
図5に示すように、車体前部10にモータルームMRを有しているものであればよく、種類、形式等は特に限定されない。車両は、左右対称な形状をしており、以下、車体右側を主に説明し、車体左側の説明は適宜省略する。
【0011】
≪車体前部構造≫
図1に示すように、車体前部構造1は、フロントサイドフレーム12と、アッパメンバ14と、フロントサイドフレーム12とアッパメンバ14との間に配置されたマウント部3と、複数のトラス構造2と、を備えている。
【0012】
<フロントサイドフレーム>
図5に示すように、フロントサイドフレーム12は、車体前後方向に延設された左右一対の骨格部材である。フロントサイドフレーム12の後端部は、ダッシュボード41に沿って下方に傾斜して配置されている。左右のフロントサイドフレーム12は、車幅方向に沿って、モータルームMRの左右上側に配置されている。フロントサイドフレーム12の前端部には、連結プレート51が接合されている。
図2及び
図3に示すように、フロントサイドフレーム12の上面には、マウント部3の前側脚部32の下端部と、後側脚部34の下端部と、がボルトB1,B2によって固定されている。
【0013】
<アッパメンバ>
図4、
図5に示すように、アッパメンバ14は、フロントサイドフレーム12の車幅方向外側で車体前後方向に延設された左右一対の骨格部材である。アッパメンバ14は、車幅方向外側の左右のフロントサイドフレーム12の上方に配置されている。アッパメンバ14の前端部には、アッパメンバ14とロアメンバ18との固定部14aから前方に延出した延出部14cを有している(
図4参照)。アッパメンバ14の固定部14aの上部先端部には、アッパメンバ14と、バルクヘッドサポート部材19と、を連結する連結部14bが設けられている。このようにアッパメンバ14の前端部には、ロアメンバ18と、バルクヘッドサポート部材19とが連結されている。アッパメンバ14の車幅方向内側には、上部連結部材26と、縦メンバ16と、ダンパベース11と、ダンパハウジング15と、ホイールハウス17と、ダッシュボード41と、が連結されている。
【0014】
<ロアメンバ>
図5に示すように、ロアメンバ18は、フロントサイドフレーム12の前端部と、アッパメンバ14の前端部と、を連結するための左右一対の骨格部材である。ロアメンバ18の上端部は、アッパメンバ14の前側端部の固定部14aに接合されている。ロアメンバ18は、固定部14aから前方かつ下方に延出している。ロアメンバ18の下端部は、フロントサイドフレーム12の前端部に設けられた連結プレート51に接合されている。
【0015】
<連結プレート>
連結プレート51は、ロアメンバ18の前端部と、フロントサイドフレーム12の前端部と、を連結するための金属製板部材である。連結プレート51の前面には、バンパビームエクステンション(図示省略)がボルト締結されている。
【0016】
<縦メンバ>
図5に示すように、縦メンバ16は、ホイールハウス17に沿って、フロントサイドフレーム12とアッパメンバ14との間に車幅方向かつ上下方向に架設された補強部材である。縦メンバ16は、車幅方向に水平に延設された横設部16aと、横設部16aの車幅方向内側から下方向に延設された立設部16bと、で正面視して略逆L字状(略くの字状)に形成されている。縦メンバ16は、断面ハット状に形成され、ホイールハウス17との間で閉断面を構成している。
【0017】
横設部16aの車幅方向外側端部は、アッパメンバ14の車幅方向内側側面に接合されている。横設部16aの車幅方向内端部には、アーム部固定用のボルトB3を設置するためのボルト挿設孔(図示省略)が形成されている。
【0018】
立設部16bは、アーム部36の下側からフロントサイドフレーム12に亘って下方に延設されている。立設部16bの上部には、傾斜メンバ13の下端部が連結されている。
【0019】
<ダンパベース及びダンパハウジング>
図5に示すように、ダンパベース11は、ダンパ(図示省略)の上端部が連結される金属製板部材である。ダンパベース11は、平面視して半長円状を呈し、扇形状膨出部が放射状に延びる複数の補強用のビード部を有している。ダンパベース11は、ダンパハウジング15の上端に固定されている。ダンパベース11の車外側端部は、縦メンバ16の上端部の近傍でフロントサイドフレーム12に固定されている。
ダンパハウジング15は、フロントダンパ(図示省略)を上方から覆う筐体である。ダンパハウジング15は、ホイールハウス17に接合されている。
【0020】
<ホイールハウス及びダッシュボード>
図5に示すように、ホイールハウス17は、タイヤと車体との間にタイヤを配置する設置空間を形成するための金属製板部材である。ホイールハウス17は、フロントサイドフレーム12とアッパメンバ14との間に掛け渡されている。
ダッシュボード41は、モータルームMRと車室とを仕切る隔壁部材である。ダッシュボード41は、車幅方向及び上下方向に延設されている。
【0021】
<傾斜メンバ>
図5に示すように、傾斜メンバ13は、ダンパベース11からダンパハウジング15の表面に沿って下方に延出して、縦メンバ16に連結された補強部材である。傾斜メンバ13の上端は、ダンパベース11の車両前方の内側角部に接合され、傾斜メンバ13の下端は、立設部16bの上端部と交差するように接合されている。
【0022】
傾斜メンバ13は、軸線方向に沿った両側の外周縁に形成された固定フランジ13aと、軸直方向の断面がハット断面から成るハット断面部13bと、を有している。固定フランジ13aは、ダンパハウジング15の表面に接合するための接合箇所である。ハット断面部13bは、固定フランジ13aがダンパハウジング15に接合されて傾斜メンバ13の外周縁が閉じられていることによって、ダンパハウジング15とで閉断面を形成している。
【0023】
≪マウント部≫
図1に示すように、マウント部3は、パワートレイン(図示省略)を弾性支持するマウント装置である。マウント部3は、モータルームMR内の左右にそれぞれ配置されて、左右外側からパワートレイン(図示省略)を分担して支持している。マウント部3は、フロントサイドフレーム12とアッパメンバ14の間に配置されている。
マウント部3は、マウント本体30と、パワートレイン締結部31と、前側脚部32と、後側脚部34と、アーム部36と、弾性支持部38と、防振装置39(
図2参照)と、を有している。
【0024】
<マウント本体>
図2及び
図3に示すように、マウント本体30は、マウント部3の骨格を形成する部材である。マウント本体30は、例えば、アルミ鋳物等によって形成されている。マウント本体30の下端部には、フロントサイドフレーム12上にボルトB1,B2によって固定された前側脚部32及び後側脚部34が一体形成されている。マウント本体30の上端部には、アッパメンバ14に固定された上部連結部材26がボルトB5,B6によって連結されている。マウント本体30の上部側面には、縦メンバ16上にボルトB3によって固定されたアーム部36が一体形成されている。マウント本体30は、複数のトラス構造2によって車体にしっかりと支持されている。
【0025】
<パワートレイン締結部>
図1及び
図3に示すように、パワートレイン締結部31は、パワートレイン(図示省略)をボルトB7によってマウント部3に固定するための締結部位である。パワートレイン締結部31は、弾性支持部38から車幅方向内側に突設されている。
【0026】
<弾性支持部>
図2に示すように、弾性支持部38は、パワートレイン締結部31を介在してパワートレイン(図示省略)を支持する部位である。弾性支持部38は、マウント部3の上部中央部配置されている。
【0027】
<防振装置>
防振装置39は、パワートレイン(図示省略)からフロントサイドフレーム12及びアッパメンバ14(
図1参照)側に伝達される振動を抑制するための装置である。防振装置39は、パワートレイン(図示省略)を支持する弾性支持部38から振動が伝達されると、内設された緩衝材によって緩衝することで、振動がフロントサイドフレーム12、アッパメンバ14、縦メンバ16等の車体側に伝達されないように減衰する(
図1参照)。防振装置39は、マウント部3の上部中央に設置されている。
【0028】
<前側脚部>
前側脚部32は、マウント本体30の上部から前側下方に延設された脚部である。前側脚部32の下端には、ボルトB1によってフロントサイドフレーム12上に連結される接続部33が設けられている。前側脚部32は、横断面視して略L字状に形成されている。
【0029】
<後側脚部>
図2に示すように、後側脚部34は、マウント本体30の上部から後側下方に延設された脚部である。後側脚部34の下端には、ボルトB2によってフロントサイドフレーム12上に締結される接続部35が設けられている。後側脚部34は、横断面視して略L字状に形成されている。
図2及び
図3に示すように、後側脚部34の上側後端部には、パワートレイン(図示省略)を支持する弾性支持部38と高さ方向で重なる位置にリブ3aが形成されている。リブ3aは、パワートレイン(図示省略)から弾性支持部38を介して振動が入力される入力位置の高さまで形成されている。後側脚部34の上側後端部のリブ3aの下方には、後側脚部34とフロントサイドフレーム12の接続部35へ向かって延びる第二リブ3bが形成されている。また、
図1または
図6に示すように、後側脚部34、アーム部36及び縦メンバ16は、車体前後方向で重なる位置に配置されている。
【0030】
<リブ及び第二リブ>
図2及び
図3に示すように、リブ3aは、後側脚部34及び締結部が折れ曲がるのを抑制するための補強部である。第二リブ3bは、後側脚部34、前側脚部32及び締結部が折れ曲がるのを抑制するための補強部である。リブ3a及び第二リブ3bは、後側脚部34の後端部に突出形成されて、その後端部に沿って上下方向に延設された四角柱形状の補強用の凸部から成る。また、第二リブ3bは、後側脚部34の後端部と、前側脚部32の前端部とにそれぞれ突出形成されて、後側脚部34の後端部及び前側脚部32の前端部に沿ってそれぞれ上下方向に延設された四角柱形状の補強用の凸部から成る。第二リブ3bは、マウント本体30が荷重によって車体前後方向にお辞儀をするように揺れる部位を支える機能がある。
【0031】
<アーム部>
アーム部36は、マウント本体30の後端部から車幅方向外側後方に水平に突出形成された角柱状の突起である。換言すると、アーム部36は、後側脚部34の上方から後方に延設されている。アーム部36の先端部には、アーム部36を縦メンバ16(
図1参照)に連結するためのボルトB3が締結されている。アーム部36は、パワートレイン(図示省略)を支持する弾性支持部38と高さ方向で重なる位置に配置されている。換言すると、アーム部36は、パワートレイン(図示省略)からの振動が入力される弾性支持部38と同じ高さの位置に配置されている。
【0032】
アーム部36固定用のボルトB3は、マウント部3にねじれ方向の回転力が加わるのを抑制するために、
図2及び
図6に示すように、後側脚部34固定用のボルトB2に対して、側面視して車幅方向に一致した箇所に配置されている。
【0033】
≪上部連結部材≫
図1または
図3に示すように、上部連結部材26は、マウント本体30の上部をアッパメンバ14に連結するための取付ブラケットである。上部連結部材26は、平面視して略三角形の金属製板部材から成る。上部連結部材26は、複数のトラス構造2のうちの第四トラス24を構成している。上部連結部材26は、第一固定部26aと、第二固定部26bと、第三固定部26cと、を有する。また、
図3に示すように、上部連結部材26は、当該上部連結部材26の車幅方向内側前端部から車幅方向外側端部を介して車幅方向内側後端部に亘って、外周部を上方向に折り曲げて形成した補強部26dを有している。
【0034】
第一固定部26aは、ボルトB4でアッパメンバ14の車幅方向内側側面に固定されている。
第二固定部26bは、ボルトB5でマウント本体30の上部後端部上に固定されている。
第三固定部26cは、ボルトB6でマウント本体30の上部前端部に固定されている。
【0035】
≪トラス構造≫
図1に示すように、トラス構造2は、マウント部3を支持するための三角形状の骨組を構成するトラス構造体である。トラス構造2は、フロントサイドフレーム12とアッパメンバ14の間に設けられている。トラス構造2は、第一トラス21と、第二トラス22と、第三トラス23と、第四トラス24と、第五トラス25と、を備えて構成されている。このようにトラス構造2は、複数のトラスから成ることで、強度が強く、荷重に対する安定性に優れている。
【0036】
<第一トラス>
図1に示すように、第一トラス21は、マウント本体30の上部と、前側脚部32と、後側脚部34と、フロントサイドフレーム12と、で三角形のトラス体を構成している。第一トラス21は、マウント本体30の上部中央部からマウント本体30の前側下端部及び後側下端部に亘って配置されている。
【0037】
<第二トラス>
第二トラス22は、後側脚部34と、マウント本体30の上部と、アーム部36と、縦メンバ16(立設部16b)と、で三角形のトラス体を構成している。
【0038】
<第三トラス>
図1に示すように、第三トラス23は、前側脚部32と縦メンバ16の立設部16bとアーム部36とフロントサイドフレーム12とで三角形のトラス体を構成している。第三トラス23は、アーム部36からマウント本体30の前側下端部及び後側下端部に亘って配置されている。第三トラス23は、前側脚部32と後側脚部34とがフロントサイドフレーム12にボルトB1,B2で固定され、アーム部36が縦メンバ16の立設部16bにボルトB3で固定されて、車体にしっかりと固定されている。
【0039】
<第四トラス>
第四トラス24は、平面視して略三角形状の上部連結部材26によって主に構成されている。第四トラス24は、マウント部3の上部と、アッパメンバ14との間に設置されている。
【0040】
<第五トラス>
図1に示すように、第五トラス25は、ダンパベース11と傾斜メンバ13と縦メンバ16とで、で三角形のトラス体を構成している。第五トラス25は、アーム部36からダンパベース11及びアッパメンバ14に亘って配置されている。第五トラス25は、第二トラス22と、第三トラス23と、アーム部36の先端部と、を支持している。
【0041】
≪車体前部構造の作用≫
本実施形態に係る車体前部構造1は、基本的に以上のように構成されるものであり、次に、
図1~
図6を参照しながらその作用効果について説明する。
【0042】
図1に示すように、パワートレイン(図示省略)を支持するマウント部3は、第一トラス21と、第二トラス22と、第三トラス23と、第四トラス24と、第五トラス25との5つのトラスによって支持されている。このため、マウント部3は、パワートレイン(図示省略)をしっかりと支えることができると共に、パワートレイン(図示省略)からの上下前後左右方向の大きな荷重や振動に対しても抑制することができる。
【0043】
フロントサイドフレーム12上に載設されたマウント本体30は、当該マウント本体30の上部を、上部連結部材26を介在してアッパメンバ14に固定すると共に、アーム部36を縦メンバ16上に固定している。このため、マウント本体30は、車体にしっかりと支持させて、車体全体でマウント本体30の揺れを抑制することができる。マウント本体30は、該マウント本体30の上部を、上部連結部材26とアーム部36とで車体に固定していることで、左右方向の揺れを抑制することができる。
【0044】
図3に示すように、マウント本体30と上部連結部材26とは、ボルトB5,B6によって一体化されている。一体化されたマウント本体30と上部連結部材26とは、四つのボルトB1,B2,B3,B4によって車体(フロントサイドフレーム12、アッパメンバ14及び縦メンバ16(
図1参照))に四点支持されている。
【0045】
また、アーム部36は、マウント本体30にかかった後方向への荷重を後方向に流すように支持することができる。また、上部連結部材26は、マウント本体30にかかった横方向の荷重に対して支えることができる。
【0046】
このように、本発明の実施形態に係る車体前部構造1は、
図1に示すように、車体前後方向に延設されたフロントサイドフレーム12と、フロントサイドフレーム12の車幅方向外側で車体前後方向に延設されたアッパメンバ14と、フロントサイドフレーム12とアッパメンバ14の間に配置されたマウント部3と、フロントサイドフレーム12とアッパメンバ14の間に設けられ、マウント部3を支持する複数のトラス構造2と、を備える。
【0047】
かかる構成によれば、マウント部3は、軽量化したとしても、複数のトラス構造2で支持されているので、マウント部3の剛性、及び、車体への固定強度を向上させることができる。このため、マウント部3は、パワートレイン(図示省略)が揺れても振動を抑制することができるので、軽量化することができると共に、パワートレインを支持するマウント部3から車体へ伝わる振動を低減することができる。したがって、マウント部3は、軽量化させることで、車体全体の軽量化に寄与させることが可能である。
【0048】
また、
図1に示すように、フロントサイドフレーム12とアッパメンバ14との間に車幅方向かつ上下方向に架設された縦メンバ16をさらに備え、マウント部3は、マウント部3の前方かつ下方に延設されフロントサイドフレーム12に連結された前側脚部32と、マウント部3の後方かつ下方に延設されフロントサイドフレーム12に連結された後側脚部34と、後側脚部34の上部から後方に延設され縦メンバ16に連結されたアーム部36と、を有し、複数のトラス構造2は、前側脚部32と後側脚部34とフロントサイドフレーム12とで構成された第一トラス21と、後側脚部34とアーム部36と縦メンバ16とで構成された第二トラス22と、を有する。
【0049】
かかる構成によれば、複数のトラス構造2のうちの第一トラス21は、三角形のトラスを形成して強度及び剛性が向上されているので、車体前後方向及び上下方向の振動を抑制することができる。また、第二トラス22も、三角形のトラスを形成して強度及び剛性が向上されているので、車幅方向の振動を抑制することができる。このため、第一トラス21と第二トラス22により、パワートレイン(図示省略)等による三次元の振動に対して振動を抑制することができる。
【0050】
また、
図1、
図2あるいは
図3に示すように、マウント部3は、パワートレイン(図示省略)を支持する弾性支持部38を有し、複数のトラス構造2は、前側脚部32と縦メンバ16とアーム部36とフロントサイドフレーム12とで構成された第三トラス23をさらに備える。
【0051】
かかる構成よれば、複数のトラス構造2のうちのマウント部3は、第三トラス23を形成するように車体に対して固定されることで、弾性支持部38が前後左右上下の三次元的な拘束を受ける。このため、マウント部3は、パワートレイン(図示省略)等による振動を低減させることができる。
【0052】
また、
図1に示すように、マウント部3の上部とアッパメンバ14とを連結する上部連結部材26をさらに備え、上部連結部材26は、アッパメンバ14に固定される第一固定部26aと、マウント部3の上部の後寄りに固定される第二固定部26bと、マウント部3の上部の前寄りに固定される第三固定部26cと、を有し、上部連結部材26は、複数のトラス構造2のうちの第四トラス24を構成する。
【0053】
かかる構成によれば、複数のトラス構造2のうちのマウント部3の上部とアッパメンバ14との間に第四トラス24を形成しているので、アーム部36と共に左右及び車体前後方向の振動を抑制することができる。
【0054】
また、
図4及び5に示すように、アッパメンバ14の前端側に固定され、アッパメンバ14の前方かつ下方に延出するロアメンバ18をさらに備え、アッパメンバ14は、アッパメンバ14とロアメンバ18の固定部14aから前方に延出する延出部14cを有し、第一固定部26aは、弾性支持部38と車体前後方向で重なる位置に配置されている。
【0055】
かかる構成によれば、第四トラス24の第一固定部26aを配置するアッパメンバ14は、ロアメンバ18との固定部14aよりも前方に延長しているので、第四トラス24の第一固定部26aを弾性支持部38と車体前後方向に一致するように配置することが容易となる。したがって、前後及び左右方向の振動をさらに抑制することができる。
【0056】
また、
図1に示すように、ダンパの上端部が連結されるダンパベース11と、ダンパベース11から前方かつ下方に延出し縦メンバ16に連結される傾斜メンバ13と、をさらに備え、複数のトラス構造2は、ダンパベース11と傾斜メンバ13と縦メンバ16とで構成された第五トラス25を有し、第五トラス25は、第二トラス22及び第三トラス23を支持している。
【0057】
かかる構成によれば、第五トラス25は、縦メンバ16と傾斜メンバ13とダンパベース11とで三角形のトラスを構成しているので、マウント本体30の支持強度を向上させることができる。このため、第五トラス25は、軽量構造にしても、第二トラス22及び第三トラス23をしっかりと支持することができる。
【0058】
また、
図1または
図6に示すように、後側脚部34、アーム部36及び縦メンバ16は、車体前後方向で重なる位置に配置されている。
【0059】
かかる構成によれば、後側脚部34、アーム部36及び縦メンバ16は、車体前後方向で重なる位置に配置されているので、振動がサイドマウントに入力された際に、連結部を支点に回転するモーメントが発生するのを防止することができる。このため、マウント部3は、パワートレイン(図示省略)等からの三次元の振動に対して振動をさらに抑制することができる。
【0060】
また、
図3に示すように、後側脚部34は、パワートレイン(図示省略)を支持する弾性支持部38と高さ方向で重なる位置にリブ3aを備えている。
【0061】
かかる構成によれば、後側脚部34は、弾性支持部38と高さ方向で重なる位置にリブ3aを備えているので、弾性支持部38から入力される振動をリブ3aによって補強された後側脚部34でフロントサイドフレーム12に流すことができる。このため、車体への支持剛性を向上させることができる。
【0062】
また、
図3に示すように、後側脚部34は、リブ3aの下方に、後側脚部34とフロントサイドフレーム12の接続部35へ向かって延びる第二リブ3bを備えている。
【0063】
かかる構成によれば、後側脚部34は、リブ3aの下方に、後側脚部34とフロントサイドフレーム12の接続部35へ向かって延びる第二リブ3bを備えているので、後側脚部34とフロントサイドフレーム12との接続部35を補強することができる。このため、後側脚部34で、トラス構造2による振動を抑制する効果を高めることができる。
【0064】
また、
図2に示すように、アーム部36は、パワートレイン(図示省略)を支持する弾性支持部38と高さ方向で重なる位置に配置されている。
【0065】
かかる構成によれば、アーム部36は、弾性支持部38と高さ方向で重なる位置に配置されているので、弾性支持部38から入力される振動をアーム部36で支え易くなるため、車体全体で揺れを支えることができる。
【0066】
[変形例]
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。
【0067】
例えば、マウント部3には、マウント本体30の上部前端部から斜め車幅方向外側前方に突出してアッパメンバ14に連結した第二アームを形成してもよい。
このようにマウント部3は、第二アームを設けることで、第二アームとアッパメンバ14と上部連結部材26とで、三角形のトラスを構成するため、さらに、マウント本体30の強度及び剛性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0068】
1 車体前部構造
2 トラス構造
3 マウント部
3a リブ
3b 第二リブ
11 ダンパベース
12 フロントサイドフレーム
13 傾斜メンバ
14 アッパメンバ
14a 固定部
16 縦メンバ
18 ロアメンバ
21 第一トラス
22 第二トラス
23 第三トラス
24 第四トラス
25 第五トラス
26 上部連結部材
26a 第一固定部
26b 第二固定部
26c 第三固定部
30 マウント本体
32 前側脚部
34 後側脚部
35 接続部
36 アーム部
38 弾性支持部