(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169144
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
B41J2/165 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074994
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】中瀬 貴文
(72)【発明者】
【氏名】林 将芳
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸昌
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 善一郎
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA20
2C056EB23
2C056EB39
2C056EB40
2C056EC07
2C056EC37
2C056EC42
2C056EC57
2C056FA10
(57)【要約】
【課題】ノイズの影響を抑えて異常ノズルであるか否かをより精度よく判定する。
【解決手段】検査用駆動が行われていない状態で信号処理回路から出力される非駆動時信号を取得する(S102)。インクジェットヘッドに検査用駆動を行わせたときに信号処理回路から出力される、異常ノズルであるか否かを判定するための判定用信号を取得する(S104)。判定用信号の値と非駆動時信号の値の差が最も小さくなるように判定用信号と非駆動時信号とを重ね、各タイミングでの判定用信号の値と非駆動時信号の値との差の信号である差分信号を生成する(S105)。そして、差分信号に基づいて、異常ノズルであるか否かを判定する(S106)。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する少なくとも1つのノズルを有する液体吐出ヘッドと、
前記ノズルが液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを確認するための検査用駆動を前記液体吐出ヘッドに行わせたときに、前記ノズルが前記異常ノズルであるか否かに応じた判定用信号を出力する信号出力部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記液体吐出ヘッドに前記検査用駆動を行わせて、前記信号出力部から出力される前記判定用信号を取得し、
前記液体吐出ヘッドに前記検査用駆動を行わせていないときに、前記信号出力部から出力される信号を、非駆動時信号として取得し、
前記判定用信号と前記非駆動時信号とを重ねて、各タイミングでの前記判定用信号の値と前記非駆動時信号の値との差の信号である差分信号を生成し、
前記差分信号に基づいて、前記ノズルが前記異常ノズルであるか否かを判定することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記判定用信号の値と前記非駆動時信号の値との差が最も小さくなるように前記判定用信号と前記非駆動時信号とを重ねて、前記差分信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記制御部は、
各タイミングにおける前記判定用信号の値と前記非駆動時信号の値との差を二乗した値の総和が最も小さくなるように前記判定用信号と前記非駆動時信号とを重ねて、前記差分信号を生成することを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記制御部は、
各タイミングにおける前記判定用信号の値と前記非駆動時信号の値との差の総和が最も小さくなるように前記判定用信号と前記非駆動時信号とを重ねて、前記差分信号を生成することを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記判定用信号は、
前記ノズルが前記異常ノズルでない場合に前記検査用駆動によって値が変動する第1信号部分と、
前記検査用駆動によって値が変動しない第2信号部分と、を有し、
前記制御部は、
前記判定用信号の前記第2信号部分の値と前記非駆動時信号との値の差が最も小さくなるように前記判定用信号と前記非駆動時信号とを重ねて、前記差分信号を生成することを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記差分信号の最大値と最小値との差が閾値以上である場合に、前記ノズルが前記異常ノズルでないと判定し、
前記差分信号の最大値と最小値との差が前記閾値未満である場合に、前記ノズルが前記異常ノズルであると判定することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記差分信号の各タイミングでの値を二乗した値の総和が閾値未満である場合に、前記ノズルが前記異常ノズルであると判定し、
前記差分信号の各タイミングでの値を二乗した値の総和が前記閾値以上である場合に、前記ノズルが前記異常ノズルでないと判定することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記差分信号の各タイミングでの値の総和が閾値未満である場合に、前記ノズルが前記異常ノズルであると判定し、
前記差分信号の各タイミングでの値の総和が前記閾値以上である場合に、前記ノズルが前記異常ノズルでないと判定することを特徴都する請求項1~5のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項9】
交流電源から電力が供給され、
前記非駆動時信号が、前記交流電源から供給される電力の周期以上の長さの信号であることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記液体吐出ヘッドに前記検査用駆動を行わせる直前に前記非駆動時信号を取得することを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記液体吐出ヘッドが複数の前記ノズルを有し、
前記制御部は、
複数の前記ノズルについて順に前記液体吐出ヘッドに前記検査用駆動を行わせて、複数の前記ノズルについての前記判定用信号を取得し、
最初に前記液体吐出ヘッドに前記検査用駆動を行わせる直前に、前記非駆動時信号を取得し、
これ以降、所定個数の前記ノズルについての前記判定用信号を取得する毎に、前記非駆動時信号を取得して、前記差分信号の生成に用いる前記非駆動時信号を更新することを特徴とする請求項10に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記制御部は、
複数の前記非駆動時信号を連続して取得し、
これら複数の前記非駆動時信号のばらつきが所定範囲内に収まっている場合には、取得した前記非駆動時信号を用いて前記差分信号を生成し、
複数の前記非駆動時信号のばらつきが前記所定範囲内に収まっていない場合には、複数の前記非駆動時信号を取得し直すことを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記制御部は、
複数の前記非駆動時信号の任意の2つの前記非駆動時信号の各タイミングでの値の差を二乗した値の総和が所定値未満の場合に、複数の前記非駆動時信号のばらつきが前記所定範囲内に収まっていると判定し、
複数の前記非駆動時信号の任意の2つの前記非駆動時信号の各タイミングでの値の差を二乗した値の総和が前記所定値以上の場合に、複数の前記非駆動時信号のばらつきが前記所定範囲内に収まっていないと判定することを特徴とする請求項12に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
前記制御部は、
複数の前記非駆動時信号の任意の2つの前記非駆動時信号の各タイミングでの値の差の総和が所定値未満の場合に、複数の前記非駆動時信号のばらつきが前記所定範囲内に収まっていると判定し、
複数の前記非駆動時信号の任意の2つの前記非駆動時信号の各タイミングでの値の差の総和が前記所定値以上の場合に、複数の前記非駆動時信号のばらつきが前記所定範囲内に収まっていないと判定することを特徴とする請求項12に記載の液体吐出装置。
【請求項15】
前記制御部は、
前記差分信号の各タイミングでの値を二乗した値の総和が所定値を超えている場合には、再度前記非駆動時信号を取得し、当該非駆動時信号を用いて前記差分信号を生成することを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項16】
前記制御部は、
前記差分信号の各タイミングでの値の総和が所定値を超えている場合には、再度前記非駆動時信号を取得し、当該非駆動時信号を用いて前記差分信号を生成することを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項17】
前記制御部は、
差分信号の前記第2信号部分に対応する信号部分に、値が所定値を超える部分が所定個数以上存在する場合に、再度前記非駆動時信号を取得し、当該非駆動時信号を用いて前記差分信号を生成することを特徴とする請求項5に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから液体を吐出する液体吐出装置の一例として、特許文献1には、ノズルからインクを吐出して記録を行うプリンタが記載されている。特許文献1のプリンタでは、インクを良好に吐出できるか否かを調べる吐出検査を行う。吐出検査では、ヘッドのピエゾ素子に駆動信号を印加したときに検出される検出信号の振幅(最高電位と最低電位との差)が閾値を超えたか否かに基づいて、インクが良好に吐出できるか否かを判定する。
【0003】
また、特許文献1のプリンタでは、ノイズの有無を判定するノイズ検査を行っており、ノイズ検査でノイズがないと判定されたときに、吐出検査の結果に基づいて、インクが良好に吐出できるか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、上述したように、ノイズ検査を行い、ノイズがないと判定されたときに、吐出検査の結果に基づいて、インクが良好に吐出できるか否かを判定する。しかしながら、特許文献1のようなプリンタでは、例えば、交流電源から常にある程度のノイズが入る等、実際には、ノイズがない状態で吐出検査を行うことが難しいことがある。
【0006】
本発明の目的は、ノイズの影響を抑えて異常ノズルであるか否かをより精度よく判定することが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体吐出装置は、液体を吐出する少なくとも1つのノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記ノズルが液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを確認するための検査用駆動を前記液体吐出ヘッドに行わせたときに、前記ノズルが前記異常ノズルであるか否かに応じた判定用信号を出力する信号出力部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記液体吐出ヘッドに前記検査用駆動を行わせて、前記信号出力部から出力される前記判定用信号を取得し、前記液体吐出ヘッドに前記検査用駆動を行わせていないときに、前記信号出力部から出力される信号を、非駆動時信号として取得し、前記判定用信号と前記非駆動時信号とを重ねて、各タイミングでの前記判定用信号の値と前記非駆動時信号の値との差の信号である差分信号を生成し、前記差分信号に基づいて、前記ノズルが前記異常ノズルであるか否かを判定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、判定用信号と非駆動時信号とで、ノイズによる成分が共通している。したがって、各判定用信号の値と非駆動時信号の値との差の信号である差分信号は、判定用信号においてノイズの成分が低減された信号となる。これにより、差分信号に基づいて異常ノズルであるか否かを精度よく判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
【
図2】キャップ内に配置された検出用電極、及び、検出用電極と高電圧電源回路及び判定回路との接続関係を説明するための図である。
【
図3】(a)はノイズがない場合の、検査用駆動でノズルからインクが吐出されたときに信号処理回路から出力される信号を示す図であり、(b)はノイズがない場合の、検査用駆動でノズルからインクが吐出されなかったときに信号処理回路から出力される信号を示す図である。
【
図4】プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】検査指示信号を受信したときの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】
図5の非駆動時信号設定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】
図5の差分信号生成処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】
図5の判定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】(a)はノイズを含む実際の非駆動時信号の一例を示す図であり、(b)は検査用駆動によってインクが吐出されたときのノイズを含む実際の判定用信号の一例を示す図である。
【
図10】変形例1の非駆動時信号設定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】変形例2において検査指示信号を受信したときの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12】変形例3において検査指示信号を受信したときの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13】変形例4において検査指示信号を受信したときの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図14】変形例5の差分信号生成処理の流れを示すフローチャートである。
【
図15】(a)は変形例6の判定処理の流れを示すフローチャートであり、(b)は変形例7の判定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0011】
<プリンタの全体構成>
図1に示すように、本実施形態に係るプリンタ1(本発明の「液体吐出装置」)は、キャリッジ2、サブタンク3、インクジェットヘッド4(本発明の「液体吐出ヘッド」)、プラテン5、搬送ローラ6,7、メンテナンスユニット8、コンセント19などを備えている。
【0012】
キャリッジ2は、走査方向に延びた2本のガイドレール11,12に支持されている。キャリッジ2は、図示しないベルトなどを介してキャリッジモータ86(
図4参照)に接続されており、キャリッジモータ86を駆動させると、キャリッジ2がガイドレール11,12に沿って走査方向に移動する。なお、以下では、
図1に示すように、走査方向の右側及び左側を定義して説明を行う。
【0013】
サブタンク3は、キャリッジ2に搭載されている。ここで、プリンタ1は、カートリッジホルダ13を備えており、カートリッジホルダ13に4つのインクカートリッジ14が取り外し可能に装着されている。4つのインクカートリッジ14は、走査方向に並んでおり、走査方向の右側に配置されたものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインク(本発明の「液体」)を貯留している。サブタンク3は、4本のチューブ15を介してカートリッジホルダ13に装着された4つのインクカートリッジ14と接続されている。これにより、4つのインクカートリッジ14からサブタンク3に上記4色のインクが供給される。
【0014】
インクジェットヘッド4は、キャリッジ2に搭載され、サブタンク3の下端部に接続されている。インクジェットヘッド4には、サブタンク3から上記4色のインクが供給される。また、インクジェットヘッド4は、その下面であるノズル面4aに形成された複数のノズル10からインクを吐出する。より詳細に説明すると、複数のノズル10は、走査方向と直交する搬送方向に配列されることによってノズル列9を形成しており、ノズル面4aにおいて、4列のノズル列9が走査方向に並んでいる。複数のノズル10からは、走査方向の右側のノズル列9を構成するものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。
【0015】
プラテン5は、インクジェットヘッド4の下方に配置され、複数のノズル10と対向している。プラテン5は、走査方向に記録用紙Pの全長にわたって延び、記録用紙Pを下方から支持する。搬送ローラ6は、インクジェットヘッド4及びプラテン5よりも搬送方向の上流側に配置されている。搬送ローラ7は、インクジェットヘッド4及びプラテン5よりも搬送方向の下流側に配置されている。搬送ローラ6,7は、図示しないギヤなどを介して搬送モータ87(
図4参照)に接続されている。搬送モータ87を駆動させると、搬送ローラ6,7が回転し、記録用紙Pが搬送方向に搬送される。
【0016】
メンテナンスユニット8は、キャップ71と、吸引ポンプ72と、廃液タンク73とを備えている。キャップ71は、プラテン5よりも走査方向の右側に配置されている。そして、キャリッジ2を、プラテン5よりも走査方向の右側のメンテナンス位置に位置させると、複数のノズル10がキャップ71と対向する。
【0017】
また、キャップ71は、キャップ昇降機構88(
図4参照)によって昇降可能となっている。そして、キャリッジ2を上記メンテナンス位置に位置させることによって複数のノズル10とキャップ71とを対向させた状態で、キャップ昇降機構88によりキャップ71を上昇させると、キャップ71の上端部がノズル面4aに密着し、複数のノズル10がキャップ71に覆われる。なお、キャップ71はノズル面4aに密着することで複数のノズル10を覆うものであることには限られない。キャップ71は、例えば、インクジェットヘッド4のノズル面4aの周囲に配置される図示しないフレーム等に密着することで、複数のノズル10を覆うものであってもよい。
【0018】
吸引ポンプ72はチューブポンプなどであり、キャップ71及び廃液タンク73と接続されている。そして、メンテナンスユニット8では、上述したように複数のノズル10がキャップ71によって覆われた状態で吸引ポンプ72を駆動させると、複数のノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させる、いわゆる吸引パージを行うことができる。吸引パージによって排出されたインクは廃液タンク73に貯留される。
【0019】
なお、ここでは、便宜上、キャップ71が全てのノズル10をまとめて覆い、吸引パージにおいて、全てのノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させるものとして説明を行ったが、これには限られない。例えば、キャップ71が、ブラックインクを吐出する最も右側のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分と、カラーインク(イエロー、シアン、マゼンタのインク)を吐出する左側3列のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分とを別々に備えており、吸引パージにおいて、インクジェットヘッド4内のブラックインク及びカラーインクのいずれかを選択的に排出させることができるようになっていてもよい。あるいは、例えば、キャップ71が、ノズル列9毎に個別に設けられ、吸引パージにおいて、ノズル列9毎に個別に、ノズル10からインクを排出させることができるようになっていてもよい。
【0020】
また、
図2に示すように、キャップ71内には、矩形の平面形状を有する検出用電極76が配置されている。検出用電極76は、抵抗79を介して高電圧電源回路77に接続されている。そして、検出用電極76には、後述する検査用駆動の際に、高電圧電源回路77により所定の電位(例えば600V程度)が付与される。一方で、インクジェットヘッド4は、グランド電位に保持されている。これにより、インクジェットヘッド4と検出用電極76との間に所定の電位差が生じる。検出用電極76には、信号処理回路78が接続されている。信号処理回路78は、微分回路などを含み、検出用電極76から出力される電位の信号に対して、微分処理を含む処理を行った信号を出力する。すなわち、信号処理回路78から出力される信号は、検出用電極76の電圧に応じた電圧信号である。ただし、信号処理回路78から出力される信号は、電流の信号であってもよい。なお、本実施形態では、検出用電極76と高電圧電源回路77と信号処理回路78と抵抗79とを合わせたものが、本発明の「信号出力部」に相当する。
【0021】
キャリッジ2を上記メンテンナンス位置に位置させたうえで、高電圧電源回路77により検出用電極76に電圧を印加させ、且つ、後述する検査用駆動を行わせていない状態では、信号処理回路78から出力される信号(非駆動時信号)の電圧は、仮にノイズの影響がないとした場合、
図3(a)、(b)に示す電圧V0となる。
【0022】
そして、本実施形態では、キャリッジ2を上記メンテンナンス位置に位置させたうえで、高電圧電源回路77により検出用電極76に電圧を印加させた状態で、ノズル10から検出用電極76に向けてインクを吐出させるようにインクジェットヘッド4を駆動させる検査用駆動を行わせる。
【0023】
ノズル10が、インクの吐出に異常のある異常ノズルでなければ、検査用駆動を行ったときに、ノズル10から帯電したインクが吐出される。これにより、帯電したインクが検出用電極76に近づき、検出用電極76にインクが着弾するまで、検出用電極76の電位が変化する。そして、帯電したインクが検出用電極76に着弾した後、検出用電極76の電位が減衰しながらインクの吐出前の電位に戻る。
【0024】
このとき、信号処理回路78から出力される信号は、仮にノイズの影響がないとすると、
図3(a)に示すように、電圧V0から、電圧V0よりも大きい電圧V1まで上昇し、その後、電圧V0よりも小さい電圧V2まで低下し、その後、減衰しながら上昇と低下とを繰り返して電圧V0に戻る。これにより、信号処理回路78から出力される信号は、最大値が電圧V1、最小値が電圧V2の信号となる。
【0025】
一方、ノズル10が異常ノズルである場合には、検査用駆動を行っても、ノズル10からインクが吐出されない。そのため、信号処理回路78から出力される信号は、
図3(b)に示すように、電圧V0から変化しない。
【0026】
また、信号処理回路78から出力される信号は、ノズル10が異常ノズルでない場合(正常なノズルである場合)に検査用駆動によって値が変化する第1信号部分R1と、第1信号部分の後に続く、ノズル10が異常ノズルであるか否かによらず検査用駆動によっては値が変化しない第2信号部分R2とを有するものとなる。
【0027】
このように、本実施形態では、ノズル10が異常ノズルであるか否かによって、検査用駆動を行ったときに信号処理回路78から出力される信号が異なる。そして、本実施形態では、このことを利用して、後述するようにノズル10が異常ノズルであるか否かを判定する。
【0028】
コンセント19は、図示しない交流電源に接続可能である。そして、プリンタ1では、コンセント19が挿されて交流電源に接続されているときには、コンセント19から電力が供給される。コンセント19が抜かれると、コンセント19からの電力の供給が途絶える。
【0029】
<プリンタの電気的構成>
次に、プリンタ1の電気的構成について説明する。
図4に示すように、プリンタ1は、制御部80を備えている。制御部80は、CPU(Central Processing Unit)81、ROM(Read Only Memory)82、RAM(Random Access Memory)83、フラッシュメモリ84、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)85などからなる。制御部80は、キャリッジモータ86、インクジェットヘッド4、搬送モータ87、キャップ昇降機構88、吸引ポンプ72、高電圧電源回路77等の動作を制御する。また、制御部80は、信号処理回路78から信号を受信する。
【0030】
なお、制御部80は、CPU81のみが各種処理を行うものであってもよいし、ASIC85のみが各種処理を行うものであってもよいし、CPU81とASIC85とが協働して各種処理を行うものであってもよい。また、制御部80は、1つのCPU81が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のCPU81が処理を分担して行うものであってもよい。また、制御部80は、1つのASIC85が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のASIC85が処理を分担して行うものであってもよい。
【0031】
<検査指示信号の受信時の処理>
次に、ノズル10が異常ノズルであるか否かを検査することを指示する検査指示信号を受信したときの制御部80の処理の流れについて説明する。例えば、ユーザが、プリンタ1の図示しない操作部、プリンタに接続されたPC等を操作して、ノズル10が異常ノズルであるか否かを検査することを指示したときに、操作部、PC等から検査指示信号が送信され、制御部80がこの検査指示信号を受信する。あるいは、例えば、プリンタ1が時刻を示す信号を出力する時計部を有し、所定時刻になる毎に異常ノズルであるか否かの検査を行うように設定されている場合に、時計部から所定時刻となったことを示す信号が送信されたときに、制御部80がこの信号を検査指示信号として受信する。
【0032】
検査指示信号を受信したときに、制御部80は、
図5のフローに沿って処理を行う。より詳細に説明すると、制御部80は、まず、インクジェットヘッド4の複数のノズル10のうちいずれかのノズル10を、異常ノズルであるか否かの検査の対象となる対象ノズルに設定する(S101)。
【0033】
続いて、制御部80は、非駆動時信号設定処理を実行し(S102)、変数Nの値を0にリセットする(S103)。非駆動時信号設定処理では、制御部80は、検査用駆動が行われていない状態で信号処理回路78から出力される信号に基づいて、非駆動時信号を設定する。非駆動時信号設定処理の詳細については後程説明する。また、変数Nは、非駆動時信号が設定されてからの、異常ノズルであるか否かが判定されたノズル10の数に対応する。
【0034】
続いて、制御部80は、検査用駆動処理を実行する(S104)。検査用駆動処理では、制御部80は、高電圧電源回路77により検出用電極76に電圧を印加させた状態で、インクジェットヘッド4に、対象ノズルについての検査用駆動を行わせ、このときに信号処理回路78から出力される判定用信号を取得する。
【0035】
続いて、制御部80は、差分信号生成処理を実行する(S105)。差分信号生成処理では、制御部80は、S102の非駆動時信号設定処理で設定した非駆動時信号と、S104で取得した判定用信号とを重ね、各タイミングでの判定用信号の値と非駆動時信号の値との差の信号である差分信号を生成する。ここで、上記のタイミングとは、2つの信号を時間軸上のある位置で重ね合わせたときに、それら2つの信号が持つ値が重複する時間軸上の各位置のことである。以降は、単にタイミングとだけ記す。ここで、S102の非駆動時信号設定処理で設定した非駆動時信号、及び、S104で取得した判定用信号には、ノイズの成分が含まれているが、S105の差分信号生成処理によって得られる差分信号は、判定用信号からノイズの成分が低減されたものとなっている。差分信号生成処理の詳細については後程説明する。
【0036】
続いて、制御部80は、判定処理を実行し(S106)、変数Nの値を1増加させる(S107)。S106の判定処理では、制御部80は、差分信号に基づいて対象ノズルが異常ノズルであるか否かを判定する。判定処理の詳細については、後程説明する。
【0037】
続いて、制御部80は、異常ノズルであるか否かの判定を行っていない未判定のノズル10が存在するか否かを判定する(S108)。未判定のノズル10が存在する場合には(S108:YES)、制御部80は、対象ノズルを、未判定のノズル10のうちのいずれかに変更する(S109)。そして、変数Nが所定値Nt未満の場合には(S110:NO)、S104に戻る。変数Nが所定値Nt以上の場合には(S110:YES)、S102に戻る。これにより、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々について順に、S104~S106に処理によって異常ノズルであるか否かが判定される。また、変数Nが所定値Ntに達する毎、すなわち、Nt個のノズル10について異常ノズルであるか否かが判定される毎に、非駆動時信号設定処理が実行される。
【0038】
未判定のノズル10が存在しない場合には(S108:NO)、制御部80は、インクジェットヘッド4の複数のノズル10についてのS106の判定処理の結果に基づいて、異常ノズルが存在するか否かを判定する(S111)。異常ノズルが存在しない場合には(S111:NO)、そのまま処理を終了する。異常ノズルが存在する場合には(S111:YES)、制御部80は、パージ処理を実行してから(S112)、処理を終了する。パージ処理では、制御部80は、吸引ポンプ72などを制御して、吸引パージを行わせて異常ノズルを回復させる。
【0039】
<非駆動時信号設定処理>
次に、S102の非駆動時信号設定処理について詳細に説明する。非駆動時信号設定処理では、制御部80は、
図6のフローに沿って処理を行う。
【0040】
より詳細に説明すると、非駆動時信号設定処理では、制御部80は、検査用駆動が行われていない状態で信号処理回路78から出力される信号に基づいて、連続して複数(例えば3~5個程度)の非駆動時信号を取得する(S201)。
【0041】
ここで、非駆動時信号は、コンセント19を介して交流電源から供給される電力の影響によるノイズを含み、例えば
図9(a)に示すように、交流電源から供給される電力の周期Tで繰り返される信号を含んでいる。周期Tは、例えば、交流電源が60Hzのものである場合に(1/60)秒であり、交流電源が50Hzのものである場合に(1/50)秒である。また、S201で取得する各非駆動時信号は、周期Tよりも長い時間の信号である。
【0042】
続いて、制御部80は、S201で取得した複数の非駆動時信号における、全ての2つの非駆動時信号の組み合わせについて、それぞれ二乗和Aを算出する(S202)。S202では、制御部80は、2つの非駆動時信号の互いの時間軸上の位置を少しずつずらして重ね、それぞれの場合について、2つの非駆動時信号の各タイミングでの値の差を二乗した値の総和である二乗和A0を算出する。そして、算出した複数の上記二乗和A0のうち最小のものを二乗和Aとする。
【0043】
S201で取得した複数の非駆動時信号に対し、全ての組み合わせの2つの非駆動時信号についてそれぞれ算出した二乗和Aの中に、所定値At以上のものがない場合には(S203:NO)、制御部80は、S201で取得した複数の非駆動時信号のうちいずれかの非駆動時信号を、差分信号の生成に使用する非駆動時信号に設定し(S204)、
図5のフローに戻る。算出した二乗和Aの中に、所定値At以上のものがある場合には(S203:YES)、S201に戻る。これにより、全ての組み合わせについて算出した二乗和Aが全て所定値At未満となるまで、複数の非駆動時信号の取得が繰り返される。このとき、複数の非駆動時信号の取得を所定回数繰り返しても、算出した二乗和Aの中に所定値At以上となるものがある場合に、エラーであることを報知させて処理を終了してもよい。
【0044】
<差分信号生成処理>
次に、S105の差分信号生成処理について説明する。差分信号生成処理では、制御部80は、
図7のフローに沿って処理を行う。
【0045】
より詳細に説明すると、制御部80は、まず、変数Kの値を0にリセットする(S301)。変数Kは、後述する二乗和B0を算出した回数に対応する。続いて、制御部80は、判定用信号と非駆動時信号とを重ねる互いの時間軸上の位置に関する初期設定に基づいて、判定用信号と非駆動時信号とを重ねる(S302)。上記初期設定は、例えば、予めフラッシュメモリ84に記憶されている。続いて、S302で重ねた判定用信号の第2信号部分R2、及び、非駆動時信号の第2信号部分R2に対応する部分について、各タイミングでの判定用信号の値と非駆動時信号の値との差を二乗した値の総和である二乗和B0を算出し(S303)、この二乗和B0を二乗和Bとしてフラッシュメモリ84に記憶させ(S304)、変数Kの値を1増加させる(S305)。
【0046】
続いて、制御部80は、判定用信号と非駆動時信号とを時間ΔTずらして重ね(S306)、S306で重ねた判定用信号の第2信号部分R2、及び、非駆動時信号の第2信号部分R2に対応する部分について、各タイミングでの、判定用信号の値と非駆動時信号の値との差を二乗した値の総和である二乗和B0を算出し(S307)、変数Kの値を1増加させる(S308)。ここで、時間ΔTは、周期Tよりも短い時間である。
【0047】
S307で算出した二乗和B0が、フラッシュメモリ84に記憶されている二乗和B以上の場合には(S309:NO)、そのままS311に進む。S307で算出した二乗和B0が、フラッシュメモリ84に記憶されている二乗和B未満の場合には(S309:YES)、制御部80は、フラッシュメモリ84に記憶されている二乗和BをS307で算出した二乗和B0に更新するとともに、フラッシュメモリ84に記憶されている判定用信号と非駆動時信号とを重ねる互いの時間軸上の位置に関する設定を、S307の二乗和B0の算出時のものに更新してから(S310)、S311に進む。
【0048】
S311では、(K×ΔT)が周期T以上であるか否かを判定する。(K×ΔT)が周期T未満の場合には(S311:NO)、S306に戻る。(K×ΔT)が周期T以上の場合には(S311:YES)、制御部80は、フラッシュメモリ84に記憶されている、判定用信号と非駆動時信号とを重ねる互いの時間軸上の位置に関する設定に基づいて、判定用信号と非駆動時信号とを重ねて差分信号を生成し(S312)、
図5のフローに戻る。
【0049】
ここで、対象ノズルが異常ノズルである場合、判定用信号は、
図9(a)に示すように、非駆動時信号と同様の信号となる。一方、対象ノズルが異常ノズルでない場合、判定用信号は、
図9(b)に示すように、
図9(a)の信号から検査用駆動時の検出用電極76の電圧の変化に応じて変化した信号となる。したがって、上記のように判定用信号と非駆動時信号とを、二乗和B0が最小となる時間軸上の位置で合わせて重ねて、各タイミングでの判定用信号の値と非駆動時信号の値との差の信号である差分信号は、対象ノズルが異常ノズルでない場合、
図3(a)とほぼ同じ信号となり、対象ノズルが異常ノズルである場合、
図3(b)とほぼ同じ信号となる。ただし、差分信号では、
図3(a)、(b)の電圧V0は、ほぼ0となる。
【0050】
<判定処理>
次に、S106の判定処理について説明する。判定処理では、制御部80は、
図8のフローに沿って処理を行う。
【0051】
より詳細に説明すると、制御部80は、S105の差分信号生成処理で生成した差分信号の最大値Mと最小値mとの差[M-m]が閾値Jt以上であるか否かを判定する(S401)。[M-m]が閾値Jt以上の場合には(S401:YES)、制御部80はフラッシュメモリ84に対象ノズルが異常ノズルでないことを記憶させ(S402)、
図5のフローに戻る。[M-m]が閾値Jt未満の場合には(S501:NO)、制御部80はフラッシュメモリ84に対象ノズルが異常ノズルであることを記憶させ(S403)、
図5のフローに戻る。
【0052】
<効果>
本実施形態では、判定用信号と非駆動時信号とで、ノイズによる成分が共通している。したがって、各タイミングでの判定用信号の値と非駆動時信号の値との差の信号である差分信号は、判定用信号においてノイズの成分が低減された信号となる。これにより、差分信号に基づいて異常ノズルであるか否かを精度よく判定することができる。
【0053】
また、本実施形態では、判定用信号の値と非駆動時信号の値との差が最も小さくなるように判定用信号と非駆動時信号とを時間軸上で重ねて差分信号を生成する。これにより、差分信号をノイズ影響の小さい信号とすることができる。
【0054】
また、本実施形態では、各タイミングにおける判定用信号の値と非駆動時信号の値との差を二乗した値の総和が最も小さくなるように判定用信号と非駆動時信号を時間軸上で重ねて差分信号を生成する。これにより、判定用信号の値と非駆動時信号の値との差を最も小さくすることができる。
【0055】
ここで、本実施形態では、判定用信号の値と非駆動時信号の値との差を二乗している。二乗することにより、差の値が小さい場合よりも、差の値が大きい場合の方が、より重みづけされて総和の値に影響を及ぼすこととなる。これにより、大きく外れた値があるものをより抽出しやすくすることができる。
【0056】
また、ノイズの成分が同じであれば、判定用信号の第2信号部分と、非駆動時信号の第2信号部分に対応する部分とはほぼ同じ信号となる。そこで、本実施形態では、判定用信号の第2信号部分と非駆動時信号との差が最も小さくなるように判定用信号と非駆動時信号とを重ねて、差分信号を生成する。これにより、差分信号をノイズ影響の小さいものとすることができる。
【0057】
また、本実施形態では、差分信号は、判定用信号においてノイズの成分が低減された信号であるため、差分信号の最大値Mと最小値mとの差[M-m]が閾値Jt未満であるか否かに基づいて、異常ノズルであるか否かを精度よく判定することができる。
【0058】
非駆動時信号におけるノイズは交流電源から供給される電力の周期Tで変化する。そこで、本実施形態では、非駆動時信号を周期Tよりも長い信号とする。これにより、非駆動時信号を、交流電源から供給される電力の周期Tに応じて、判定用信号と非駆動時信号とを重ねる互いの時間軸上の位置を調整するのに十分に長いものとすることができる。
【0059】
また、本実施形態では、検査用駆動処理の直前に非駆動時信号設定処理を実行している。すなわち、検査用駆動の直前に非駆動時信号を取得している。これにより、判定用信号と非駆動時信号とで、含まれるノイズの成分を近いものにすることができる。
【0060】
また、時間の経過によって信号処理回路78から出力される信号におけるノイズ成分が変化することがある。本実施形態では、所定個数(Nt個)のノズル10について異常ノズルであるか否かを判定する毎に、非駆動時信号を取得して、差分信号の生成に用いる非駆動時信号を更新している。これにより、時間の経過によって信号処理回路78から出力される信号におけるノイズの成分が変化しても、ノイズ影響の小さい差分信号を取得することができる。
【0061】
また、プリンタ1には、外部から突発的なノイズが入ることがある。このとき、非駆動時信号に突発的なノイズの成分が含まれ、判定用信号に突発的なノイズの成分が含まれないことがある。この場合、突発的なノイズの成分を含む非駆動時信号を用いて差分信号を生成すると、差分信号が、上記突発的なノイズ成分の影響が大きく残る信号となってしまう。そこで、本実施形態では、複数の非駆動時信号を連続して取得し、これらの非駆動時信号のばらつきが大きく、所定範囲内に収まっていない場合には、非駆動時信号を取得し直す。これにより、突発的なノイズを含まない非駆動時信号に基づいて差分信号を生成することができ、差分信号を上記突発的なノイズの影響を受けないものとすることができる。
【0062】
また、本実施形態では、複数の非駆動時信号における全ての2つの非駆動時信号の組み合わせについて算出した二乗和Aの中に、所定値At以上のものがあるか否かに基づいて、複数の非駆動時信号のばらつきが所定範囲内に収まっているか否かを判定することができる。
【0063】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態には限られず、特許請求の範囲に記載の限りにおいて様々な変更が可能である。
【0064】
上述の実施形態では、連続して複数の非駆動時信号を取得し、これら複数の非駆動時信号うち、全ての2つの非駆動時信号の組み合わせについて二乗和Aを算出する。そして、所定値At以上となる二乗和Aがない場合に、取得した非駆動時信号を用いて差分信号を生成する。所定値At以上となる二乗和Aがある場合に、非駆動時信号を取得し直す。しかしながら、これには限られない。
【0065】
変形例1では、非駆動時信号設定処理において、制御部80が
図10のフローに沿って処理を行う。
図10のフローは、
図6のフローにおいてS202,S203を、それぞれ、S501,S502に置き換えたものである。
【0066】
S501では、制御部80は、S201で取得した複数の非駆動時信号における、全ての2つの非駆動時信号の組み合わせについて、それぞれ総和Cを算出する。このとき、制御部80は、2つの非駆動時信号の互いの時間軸上の位置を少しずつずらして重ね、それぞれの場合について、2つの非駆動時信号の各タイミングでの値の差の総和C0を算出する。そして、算出した複数の総和C0のうち最小のものを総和Cとする。
【0067】
そして、S201で取得した複数の非駆動時信号に対し、全ての組み合わせの2つの非駆動時信号についてそれぞれ算出した総和Cの中に、所定値Ct以上のものがない場合には(S502:NO)、制御部80は、S201で取得した複数の非駆動時信号のうちいずれかの非駆動時信号を、差分信号の生成に使用する非駆動時信号に設定し(S803)、
図5のフローに戻る。全ての組み合わせについて算出した総和Cの中に、所定値Ct以上のものある場合には(S203:YES)、S201に戻る。
【0068】
変形例1では、複数の非駆動時信号における全ての組み合わせの2つの非駆動時信号の中に、各タイミングでの値の差の総和Cが所定値Ct以上のものがあるか否かに基づいて、複数の非駆動時信号のばらつきが所定範囲内に収まっているか否かを判定することができる。
【0069】
また、上述の実施形態及び変形例1以外の方法によって、複数の非駆動時信号のばらつきが所定の範囲内に収まっているか否かを判定してもよい。例えば、複数の非駆動時信号における全ての組み合わせの2つの非駆動時信号の中に、各タイミングでの値の差の平均値が所定値以上のものがあるか否かに基づいて上記判定を行ってもよい。あるいは、例えば、複数の非駆動時信号における全ての組み合わせの2つの非駆動時信号の中に、各タイミングでの値の差の最大値が所定値以上ものがあるか否かに基づいて上記判定を行ってもよい。
【0070】
また、複数の非駆動時信号を取得し、これら複数の非駆動時信号のばらつきが所定の範囲内に収まっている場合に、取得した非駆動時信号を用いて差分信号を生成することにも限られない。例えば、変形例2では、制御部80は、検査指示信号を受信したときに、
図11のフローに沿って処理を行う。
【0071】
より詳細に説明すると、変形例2では、制御部80は、上述の実施形態と同様に、対象ノズルを設定した後(S101)、信号処理回路78から出力される非駆動時信号を取得する(S601)。この後、制御部80は、上述の実施形態と同様のS103~S105の処理を実行する。
【0072】
続いて、制御部80は、S105で生成した差分信号の第2信号部分R2に対応する部分の各タイミングにおける値を二乗した値の総和である二乗和Xを算出する(S602)。そして、二乗和Xが所定値Xtを超えている場合には(S603:YES)、制御部80は、S601と同様にして非駆動時信号を再取得し(S604)、変数Nの値を0にリセットしてから(S605)、S105に戻る。また、二乗和Xが所定値Xt以下の場合には(S603:NO)、上述の実施形態と同様、S106~S112の処理を実行する。
【0073】
非駆動時信号の取得時と判定用信号の取得時とで、信号処理回路78から出力される信号におけるノイズの成分が同じであれば、差分信号の第2信号部分R2に対応する部分における上記二乗和Xはほぼ0になる。これに対して、非駆動 時信号の取得時と判定用信号の取得時とで、信号処理回路78から出力される信号におけるノイズの成分が大きく異なっている場合、差分信号の第2信号部分R2に対応する部分における上記二乗和Xが大きくなる。そこで、変形例2では、上記二乗和Xが所定値Xtを超えている場合に、再度非駆動時信号を取得し、この非駆動時信号を用いて差分信号を生成する。
【0074】
変形例3では、制御部80は、検査指示信号を受信したときに、
図12のフローに沿って処理を行う。
図12のフローは、
図11のフローにおいてS602,S603を、それぞれ、S701,S702に置き換えたものである。
【0075】
S701では、S105で生成した差分信号の第2信号部分R2に対応する部分の各タイミングにおける値の総和Yを算出する。そして、総和Yが所定値Ytを超えている場合には(S702:YES)、制御部80は、S604,S605の処理を実行し、S105に戻る。また、総和Yが所定値Yt以下の場合には(S702:NO)、上述の実施形態と同様、S106~S112の処理を実行する。
【0076】
非駆動時信号の取得時と判定用信号の取得時とで、信号処理回路78から出力される信号におけるノイズの成分が同じであれば、差分信号の第2信号部分R2に対応する部分における上記総和Yはほぼ0になる。これに対して、非駆動時信号の取得時と判定用信号の取得時とで、信号処理回路78から出力される信号におけるノイズの成分が大きく異なっている場合、差分信号の第2信号部分R2に対応する部分における上記総和Yが大きくなる。そこで、変形例3では、上記総和Yが所定値Ytを超えている場合に、再度非駆動時信号を取得して差分信号を生成する。
【0077】
変形例2,3では、差分信号の第2信号部分R2に対応する部分についての二乗和X及び総和Yが、それぞれ、所定値Xt,Ytを超えているか否かを判定したが、これには限られない。変形例2,3において、差分信号の第1信号部分R1及び第2信号部分R2に対応する部分全体についての二乗和及び総和が、閾値を超えているか否かを判定してもよい。この場合、算出される二乗和及び総和は、変形例2,3の場合よりも大きくなるが、非駆動時信号と判定用信号とでノイズの成分の差が小さければ、この差が大きい場合と比較して、上記二乗和及び上記総和が小さくなる。したがって、所定値を変形例2,3の場合よりも多少大きい値に設定すれば、非駆動時信号と判定用信号とでノイズの成分の差が小さい状態で差分信号を生成することができる。
【0078】
変形例4では、制御部80は、検査指示信号を受信したときに、
図13のフローに沿って処理を行う。
図13のフローは、
図11のフローにおいてS602,S603を、それぞれ、S801,S802に置き換えたものである。
【0079】
S801では、制御部80は、S105で生成した差分信号の第2信号部分R2に対応する部分について、値が所定値を超える箇所の個数Zをカウントする。そして、個数Zが所定個数Ztを超えている場合には(S802:YES)、S604,S605の処理を実行し、S105に戻る。個数Zが所定個数Zt以下の場合には、上述の実施形態と同様にS106~S112の処理を実行する。
【0080】
非駆動時信号の取得時と判定用信号の取得時とで、信号処理回路78から出力される信号におけるノイズの成分が同じであれば、判定用分信号の第2信号部分R2と、非駆動時信号の第2信号部分R2に対応する部分との値の差はほぼ0になる。これに対して、非駆動時信号の取得時と判定用信号の取得時とで、信号処理回路78から出力される信号におけるノイズの成分が大きく異なっている場合、判定用分信号の第2信号部分R2と、非駆動時信号の第2信号部分R2に対応する部分との値の差が大きくなり、差分信号の第2信号部分R2に対応する信号部分において、値の大きくなる部分の数が多くなる。そこで、変形例4では、差分信号の第2信号部分に対応する信号部分に、値が所定値を超える部分の個数Zが所定個数Ztを超えている場合に、再度非駆動時信号を取得して差分信号を生成する。
【0081】
また、上述の実施形態では、差分信号生成処理において、非駆動時信号と判定用信号の互いの時間軸上の位置をΔTずつずらして重ね、それぞれの場合について二乗和B0を算出する。そして、二乗和B0が最小となるように非駆動時信号と判定用信号とを重ねて差分信号を生成する。しかしながら、これには限られない。
【0082】
変形例5では、差分信号生成処理において、制御部80が、
図14のフローに沿って処理を行う。
図14のフローは、
図7のフローにおいて、S303,S304,S307,S309,S310を、それぞれ、S901,S902,S903,S904,S905に置き換えたものである。
【0083】
S901では、初期設定で重ねた判定用信号の第2信号部分R2と、非駆動時信号の第2信号部分R2に対応する部分について、各タイミングでの、判定用信号の値と非駆動時信号の値との差の総和E0を算出する。S902では、S901で算出した総和E0を総和Eとしてフラッシュメモリ84に記憶させる。S903では、直前のS306で互いの時間軸上の位置をΔTずらした後の設定で重ねた判定用信号の第2信号部分R2と、非駆動時信号の第2信号部分R2に対応する部分について、各タイミングでの、判定用信号の値と非駆動時信号の値との差の総和E0を算出する。S904では、S903で算出した総和E0が、フラッシュメモリ84に記憶されている総和Eよりも小さいか否かを判定する。
【0084】
総和E0が総和E以上の場合には(S904:NO)、そのままS311に進む。総和E0が総和Eよりも小さい場合には(S904:YES)、制御部80は、フラッシュメモリ84に記憶されている総和Eを、S903で算出した総和E0に更新するとともに、フラッシュメモリ84に記憶されている判定用信号と非駆動時信号とを重ねる互いの時間軸上の位置に関する設定を、S903の総和E0の算出時のものに更新してから(S905)、S311に進む。
【0085】
変形例5では、各タイミングにおける判定用信号の値と非駆動時信号の値との差の総和E0が最も小さくなるように判定用信号と非駆動時信号とを重ねて差分信号を生成する。これにより、判定用信号の値と非駆動時信号の値との差を最も小さくすることができる。
【0086】
また、差分信号を生成する際に、判定用信号の値と非駆動時信号の値との差が最も小さくなるように判定用信号と非駆動時信号とを重ねる方法は、上述の実施形態及び変形例5で説明したものには限られない。別の方法によって、判定用信号の値と非駆動時信号の値との差が最も小さくなるように判定用信号と非駆動時信号とを重ねてもよい。
【0087】
例えば、非駆動時信号と判定用信号の互いの時間軸上の位置をΔTずつずらして重ね、判定用信号の第2信号部分の値と非駆動時信号の値との差の平均値を算出し、この平均値が最も小さくなるように、判定用信号と非駆動時信号とを重ねる互いの時間軸上の位置を設定してもよい。
【0088】
あるいは、例えば、非駆動時信号と判定用信号の互いの時間軸上の位置をΔTずつずらして重ね、判定用信号の第2信号部分の値と非駆動時信号の値との差の最大値を算出し、この最大値が最も小さくなるように、判定用信号と非駆動時信号とを重ねる互いの時間軸上の位置を設定してもよい。
【0089】
また、判定用信号の第2信号部分の値と非駆動時信号との値の差が最も小さくなるように判定用信号と非駆動時信号とを重ねて差分信号を生成することにも限られない。例えば、第1信号部分R1に対応する部分及び第2信号部分R2に対応する部分を含めた判定用信号全体について、判定用信号の値と非駆動時信号の値との差が最も小さくなるように、判定用信号と非駆動時信号とを重ねて差分信号を生成してもよい。
【0090】
また、判定用信号の値と非駆動時信号の値との差が最も小さくなるように判定用信号と非駆動時信号とを重ねて差分信号を生成することにも限られない。例えば、判定用信号の値と非駆動時信号の互いの時間軸上の位置が、判定用信号の値と非駆動時信号の値との差が最も小さくなる時間軸上の位置から若干ずれた時間軸上の位置となるように判定用信号と非駆動時信号とを重ねて差分信号を生成してもよい。
【0091】
また、上述の実施形態では、差分信号の最大値Mと最小値mとの差[M-m]が閾値Jt以上であるか否かに基づいて、対象ノズルが異常ノズルであるか否かを判定したが、これには限られない。
【0092】
変形例6では、判定処理において、制御部80が
図15(a)のフローに沿って処理を行う。より詳細に説明すると、判定処理では、制御部80は、まず、差分信号の各タイミングでの値の二乗和Fを算出する(S1001)。そして、二乗和Fが閾値Ft未満の場合には(S1002:YES)、制御部80は、フラッシュメモリ84に対象ノズルが異常ノズルであることを記憶させる(S1003)。二乗和Fが閾値Ft以上の場合には(S1002:NO)、制御部80は、フラッシュメモリ84に対象ノズルが異常ノズルでないことを記憶させる(S1004)。
【0093】
ノズル10が異常ノズルである場合、判定用信号と非駆動時信号はほぼ同じ信号となるため、差分信号は値がほぼ0の信号となる。したがって、差分信号の上記二乗和Fが閾値Ft未満であるか否かにに基づいて、異常ノズルであるか否かを判定することができる。
【0094】
変形例7では、判定処理において、制御部80が
図15(b)のフローに沿って処理を行う。より詳細に説明すると、判定処理では、制御部80は、まず、差分信号の各タイミングでの値の総和Gを算出する(S1101)。そして、総和Gが閾値Gt未満の場合には(S1102:YES)、制御部80は、フラッシュメモリ84に対象ノズルが異常ノズルであることを記憶させる(S1103)。総和Gが閾値Gt以上の場合には(S1102:NO)、制御部80は、フラッシュメモリ84に対象ノズルが異常ノズルでないことを記憶させる(S1104)。
【0095】
ノズル10が異常ノズルである場合、判定用信号と非駆動時信号はほぼ同じ信号となるため、差分信号は値がほぼ0の信号となる。したがって、差分信号の上記総和Gが閾値Gt未満であるか否かにに基づいて、異常ノズルであるか否かを判定することができる。
【0096】
また、上述の実施形態、変形例6,7とは別の方法によって、差分信号に基づいてノズル10が異常ノズルであるか否かを判定してもよい。
【0097】
また、上述の実施形態では、所定個数のノズル10について異常ノズルであるか否かの判定を行う毎に非駆動時信号を設定したが、これには限られない。例えば、最初に設定した非駆動時信号に基づいて、全てのノズル10についての差分信号を生成して、異常ノズルであるか否かを判定してもよい。
【0098】
また、以上の例では、検査用駆動を行わせる直前に非駆動時信号を取得したが、これには限られない。例えば、検査用駆動を行わせた後、検査用駆動による検出用電極76の電圧の変化が十分に減衰するのに必要な時間が経過してから非駆動時信号を取得してもよい。あるいは、例えば、時間の変動によってノイズが大きく変動しない場合には、予め非駆動時信号を取得し、非駆動時信号の情報をフラッシュメモリ84に保存しておいてもよい。
【0099】
また、以上の例では、非駆動時信号が、交流電源から供給される電力の周期T以上の長さ信号であったが、これには限られない。非駆動時信号は、交流電源から供給される電力の周期Tよりも若干短い信号であってもよい。
【0100】
また、以上の例では、異常ノズルが存在する場合に、一律に吸引パージを行わせたが、これには限られない。例えば、異常ノズルの数が多いほど吸引パージにおけるインクの排出量を多くするなどしてもよい。
【0101】
また、パージは、吸引パージであることにも限られない。例えば、サブタンク3とインクカートリッジ14とを接続するチューブ15の途中部分に加圧ポンプが設けられていてもよい。あるいは、プリンタにインクカートリッジと接続された加圧ポンプが設けられていてもよい。そして、複数のノズル10がキャップ71で覆われた状態で、上記加圧ポンプを駆動させることで、インクジェットヘッド4内のインクを加圧してノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させる、いわゆる加圧パージを行ってもよい。
【0102】
さらには、パージにおいて、吸引ポンプ72による吸引と加圧ポンプによる加圧の両方を行わせてもよい。また、パージの代わりに、インクジェットヘッド4に少なくとも異常ノズルからインクを排出させるフラッシングを行わせてもよい。また、パージとフラッシングの両方を行わせてもよい。
【0103】
また、異常ノズルが存在する場合に、制御部80が自動的に吸引パージなどを行わせることにも限られない。例えば、異常ノズルが存在する場合に、ユーザへの報知を行って、ユーザに吸引パージを行うか否かを選択させ、吸引パージを行うことが選択されたときに吸引パージを行わせてもよい。
【0104】
また、上述の実施形態では、インクジェットヘッド4の全てのノズル10について、検査用駆動を行わせたが、これには限られない。例えば、各ノズル列9における1つおきのノズル10等、インクジェットヘッド4の一部のノズル10についてのみ、検査用駆動を行わせ、それ以外のノズル10については、上記一部のノズル10についての判定結果に基づいて異常ノズルであるか否かを推定してもよい。
【0105】
また、上述の実施形態では、ノズル10から検出用電極76に向けてインクを吐出させたときの検出用電極76の電圧の変化に応じて、信号処理回路78が異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力したが、これには限られない。
【0106】
例えば、鉛直方向に延びた検出用電極を配置し、ノズル10から検出用電極と対向する領域を通過するようにインクを吐出させたときの検出用電極の電圧の変化に応じて、判定回路から、異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力してもよい。あるいは、ノズル10から吐出されたインクを検出する光センサ(本発明の「信号出力部」)を設け、光センサから、異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力してもよい。
【0107】
あるいは、例えば、特許第4929699号公報に記載されているのと同様に、インクジェットヘッドのノズルが形成されたプレートに、ノズルからインクが吐出されたときの電圧の変化を検出する電圧検出回路(本発明の「信号出力部」)を接続して、電圧検出回路から制御部80に、異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力するようにしてもよい。
【0108】
あるいは、例えば、特許第6231759号公報に記載されているのと同様に、インクジェットヘッドの基板を、温度検知素子(本発明の「信号出力部」)を備えたものとしてもよい。そして、インクの吐出のために第1印加電圧を印加してヒータを駆動した後に、インクが吐出されないように第2印加電圧を印加してヒータを駆動し、第2印加電圧を印加してから、その後、所定時間が経過するまでの間の、温度検知素子で検知された温度の変化に基づいて、ノズル10が異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力するようにしてもよい。
【0109】
また、以上の例では、信号出力部が、ノズル10からインクが吐出されたか否かに応じた信号を出力するものであったが、これには限られない。信号出力部は、インクが吐出されないこと以外の異常がある異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力するものであってもよい。インクが吐出されないこと以外の異常とは、例えば、インクの吐出方向に異常があることである。
【0110】
また、以上では、キャリッジとともに走査方向に移動しつつ複数のノズルからインクを吐出する、いわゆるシリアルヘッドを備えたプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。例えば、走査方向に記録用紙の全長にわたって延びたいわゆるラインヘッドを備えたプリンタに本発明を適用することも可能である。
【0111】
また、以上では、ノズルからインクを吐出して記録用紙Pに記録を行うプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。Tシャツ、屋外広告用のシート、スマートフォン等の携帯端末のケース、段ボール、樹脂部材など、記録用紙以外の被記録媒体に画像を記録するプリンタにも適用され得る。また、インク以外の液体、例えば、液体状にした樹脂や金属を吐出する液体吐出装置にも適用され得る。
【符号の説明】
【0112】
1 プリンタ
4 インクジェットヘッド
8 メンテナンスユニット
10 ノズル
76 検出用電極
77 高電圧電源回路
78 信号処理回路
79 抵抗
80 制御部
84 フラッシュメモリ