(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169155
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】フィルム被覆基板及びフィルム被覆基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/29 20060101AFI20221101BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20221101BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20221101BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
H01L23/30 D
H01L21/60 311S
H05K3/28 F
C08L63/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075007
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】305032254
【氏名又は名称】サンスター技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 祥平
【テーマコード(参考)】
4J002
4M109
5E314
5F044
【Fターム(参考)】
4J002CD031
4J002CD051
4J002DJ016
4J002FA086
4J002FD016
4J002GQ00
4M109AA01
4M109BA03
4M109EA02
4M109EB02
4M109EB12
5E314AA26
5E314AA34
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5E314EE03
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5E314GG03
5E314GG12
5F044KK01
5F044LL01
5F044RR19
(57)【要約】
【課題】高度な耐冷熱衝撃性を有し、信頼性不良を抑制できる電子部品装置を提供すること。
【解決手段】実装基板(1)、及び、前記実装基板(1)を被覆するフィルム被覆材(2)を含む、フィルム被覆基板であって、前記実装基板(1)が、基板(11)、電子部品(12)、及び前記基板(11)と前記電子部品(12)とを接続するアンダーフィル材(13)を含む、フィルム被覆基板。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装基板(1)、及び、前記実装基板(1)を被覆するフィルム被覆材(2)を含む、フィルム被覆基板であって、
前記実装基板(1)が、基板(11)、電子部品(12)、及び、前記基板(11)と前記電子部品(12)とを接続するアンダーフィル材(13)を含む、フィルム被覆基板。
【請求項2】
前記アンダーフィル材(13)が、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)及び無機充填材(C)を含む硬化性組成物又はその硬化物である、請求項1に記載のフィルム被覆基板。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂(A)がシリコーン変性エポキシ樹脂を含む、請求項2に記載のフィルム被覆基板。
【請求項4】
前記硬化剤(B)がイミダゾール系硬化剤及びイミダゾリン系硬化剤からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項2または3に記載のフィルム被覆基板。
【請求項5】
前記無機充填材(C)が球状無機粒子を含む、請求項2~4のいずれか一項に記載のフィルム被覆基板。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂(A)が、前記硬化性組成物に対して、10重量%以上60重量%以下であり、
前記アミン系硬化剤(B)が、前記硬化性組成物に対して、0.01重量%以上20重量%以下であり、
前記無機充填材(C)が、前記硬化性組成物に対して、20重量%以上80重量%以下である、
請求項2~5のいずれか一項に記載のフィルム被覆基板。
【請求項7】
前記電子部品(12)がボールグリッドアレイを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のフィルム被覆基板。
【請求項8】
前記フィルム被覆材(2)がポリアミド樹脂を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のフィルム被覆基板。
【請求項9】
前記フィルム被覆材(2)が前記アンダーフィル材(13)の一部に接触している、請求項1~8のいずれか一項に記載のフィルム被覆基板。
【請求項10】
基板(11)と電子部品(12)とをアンダーフィル材(13)により接続することを含む、実装基板(1)を得る工程(I);及び
前記実装基板(1)をフィルム被覆材(2)で被覆することを含む、被覆工程(II)
を含む、フィルム被覆基板の製造方法。
【請求項11】
前記実装基板(1)を得る工程(I)が、前記基板(11)と前記電子部品(12)との間の空隙に前記アンダーフィル材(13)を充填することを含む、請求項10に記載のフィルム被覆基板の製造方法。
【請求項12】
前記被覆工程(II)において、真空成形により、前記実装基板(1)を前記フィルム被覆材(2)で被覆する、請求項10又は11に記載のフィルム被覆基板の製造方法。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載のフィルム被覆基板を備えた装置。
【請求項14】
車載用装置である請求項13に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、特に実装基板をフィルムで被覆してなるフィルム被覆基板に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁性、防水性等の付与のために、コイル等の電子部品が実装された実装基板をフィルムを用いて被覆する技術が知られている(特許文献1)。特許文献1は、電子部品からその周囲の基板面にかけて、熱可塑性を有する被覆フィルムを、密閉空間内の一部減圧化によるオーバーレイ成形によって定着させる方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フィルム被覆を用いて電子部品装置の各種性能を向上させたとしても、車載環境のような高度な耐冷熱衝撃性が要求されるような過酷な環境においては導通性不良及び/又は絶縁性不良が発生することにより信頼性不良が生じることがあることを本願発明者らは見いだした。これは被覆フィルムを用いたとしても、過酷な環境下においては、意図しない内部応力が電子部品装置において発生しているためと推定される。本開示はかかる事情に鑑みて為されたものである。即ち、本開示の主たる目的は、高度な耐冷熱衝撃性(例えば冷熱衝撃後における導通性)を有し、信頼性不良を抑制できる製品(例えば電子部品装置)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示はかかる事情に鑑みて為されたものである。従来技術の延長線上で対応するのではなく、新たな方向で対処することによって上記目的の達成を試み、上記の主目的を達成できることを見出し、本開示に至った。本開示における好ましい一実施形態は次のとおりである:
[項1]
実装基板(1)、及び、前記実装基板(1)を被覆するフィルム被覆材(2)を含む、フィルム被覆基板であって、
前記実装基板(1)が、基板(11)、電子部品(12)、及び、前記基板(11)と前記電子部品(12)とを接続するアンダーフィル材(13)を含む、フィルム被覆基板。
[項2]
前記アンダーフィル材(13)がエポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)及び無機充填材(C)を含む硬化性組成物又はその硬化物である、項1に記載のフィルム被覆基板。
[項3]
前記エポキシ樹脂(A)がシリコーン変性エポキシ樹脂を含む、項2に記載のフィルム被覆基板。
[項4]
前記硬化剤(B)がイミダゾール系硬化剤及びイミダゾリン系硬化剤からなる群から選択される少なくとも一種である、項2または3に記載のフィルム被覆基板。
[項5]
前記無機充填材(C)が球状無機粒子を含む、項2~4のいずれか一項に記載のフィルム被覆基板。
[項6]
前記エポキシ樹脂(A)が、前記硬化性組成物に対して、10重量%以上60重量%以下であり、
前記アミン系硬化剤(B)が、前記硬化性組成物に対して、0.01重量%以上20重量%以下であり、
前記無機充填材(C)が、前記硬化性組成物に対して、20重量%以上80重量%以下である、
項2~5のいずれか一項に記載のフィルム被覆基板。
[項7]
前記電子部品(12)がボールグリッドアレイを含む、項1~6のいずれか一項に記載のフィルム被覆基板。
[項8]
前記フィルム被覆材(2)がポリアミド樹脂を含む、項1~7のいずれか一項に記載のフィルム被覆基板。
[項9]
前記フィルム被覆材(2)が前記アンダーフィル材(13)の一部に接触している、項1~8のいずれか一項に記載のフィルム被覆基板。
[項10]
基板(11)と電子部品(12)とをアンダーフィル材(13)により接続することを含む、実装基板(1)を得る工程(I);及び
前記実装基板(1)をフィルム被覆材(2)で被覆することを含む、被覆工程(II)
を含む、フィルム被覆基板の製造方法。
[項11]
前記実装基板(1)を得る工程(I)が、前記基板(11)と前記電子部品(12)との間の空隙に前記アンダーフィル材(13)を充填することを含む、項10に記載のフィルム被覆基板の製造方法。
[項12]
前記被覆工程(II)において、真空成形により、前記実装基板(1)を前記フィルム被覆材(2)で被覆する、項10又は11に記載のフィルム被覆基板の製造方法。
[項13]
項1~9のいずれか一項に記載のフィルム被覆基板を備えた装置。
[項14]
車載用装置である項13に記載の装置。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、耐冷熱衝撃性(例えば冷熱衝撃後における導通性)が実現された装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】従来技術におけるアンダーフィル材(13)を有しないフィルム被覆基板の模式的断面図を示す。
【
図2】本開示におけるアンダーフィル材(13)を有するフィルム被覆基板の模式的断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<フィルム被覆基板>
本開示におけるフィルム被覆基板は実装基板(1)、及び、前記実装基板(1)を被覆するフィルム被覆材(2)を含む。
【0009】
[実装基板(1)]
実装基板(1)が、基板(11)、電子部品(12)、及び前記基板(11)と前記電子部品(12)とを接続(又は結合)するアンダーフィル材(13)を含む。
【0010】
(基板(11))
基板(11)は、電気的導通性を有する経路を含む板(いわゆるプリント基板(ベアボード))であって、その上に電子部品を載置することにより電気回路を構成し得る板である。基板の材料は、限定されないが、例えば、ベーク、ガラス系材料、セラミック、及びシリコンが挙げられる。
【0011】
(電子部品(12))
電子部品(12)は、アンダーフィル材(13)により基板(11)と接続される電子部品である。電子部品(12)の例としては、ICパッケージ(挿入型パッケージ、表面実装型パッケージ)、コネクタ、スイッチ、トランジスタ、LED、ソケット、リレー、抵抗器、コンデンサ、キャパシタ、コイルボビン、電池等が挙げられるが、表面実装型パッケージであることが好ましく、中でもBGA(ボールグリッドアレイ Ball Grid Array)であってよい。本開示によれば、BGAのように、外部からの応力に対して結合強度の信頼性が問題となる電子部品を用いた場合であっても優れた信頼性を得られる。なお、基板上には電子部品(12)以外に、アンダーフィル材(13)を備えないその他の電子部品を含んでもよい。
【0012】
(アンダーフィル材(13))
アンダーフィル材(13)は、基板(11)と電子部品(12)とを接続する。ここで、「接続」とは基板(11)と電子部品(12)とがアンダーフィル材(13)を介して直接的に物理的に接続されることを意味する。本開示におけるアンダーフィル材(13)は硬化前の浸透性に優れるため、作業性に優れる。また、本開示における硬化後のアンダーフィル材(13)は良好な絶縁性を有するため、導通性不良や絶縁性不良の問題の発生を抑制することができる。さらに、本開示におけるアンダーフィル材(13)は硬化後の熱膨張が抑制されているため、装置の信頼性不良の発生も抑制できる。アンダーフィル材(13)は、キャピラリーアンダーフィル材であっても、先置き型アンダーフィル材であってもよいが、好ましくはキャピラリーアンダーフィル材である。なお、通常、アンダーフィル材(13)による接続に加えて、電気的接続のために基板(11)と電子部品(12)とがはんだを介して接続されている。
【0013】
アンダーフィル材(13)は、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、及び無機充填材(C)を含む硬化性組成物又はその硬化物であってよい。アンダーフィル材(13)が硬化することにより、補強された実装基板(1)を得ることができ、製品の信頼性を向上し得る。
【0014】
○エポキシ樹脂(A)
本開示における硬化性組成物はエポキシ樹脂を含む。本明細書において、「エポキシ樹脂」とは、硬化前(例えば、硬化剤と反応する前)の状態のエポキシ樹脂のことをいう。エポキシ樹脂は、常温で液状又は固体であってよく、常温で液状であることが好ましい。エポキシ樹脂は、モノマー型エポキシ樹脂、プレポリマー型エポキシ樹脂又はモノマー型エポキシ樹脂とプレポリマー樹脂(例えば、重合度2~5又は2~3)との混合物であってもよい。
【0015】
エポキシ樹脂(A)の例としては、ナフタレン型エポキシ樹脂(A1)、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(A2)、シリコーン変性エポキシ樹脂(A3)、その他エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0016】
・ナフタレン型エポキシ樹脂(A1)
本開示における硬化性組成物は、ナフタレン型エポキシ樹脂(A1)を含む。「ナフタレン型エポキシ樹脂」とは、ナフタレン骨格を分子内に有するエポキシ樹脂である。ナフタレン型エポキシ樹脂(A1)は、脂肪族基及び芳香族基等のその他の基を含んでいてもよい。エポキシ基含有基としてグリシジル基(例えば、グリシジルエーテル基又はグリシジルアミノ基)が用いられてよい。ナフタレン型エポキシ樹脂(A1)はグリシジルアミノ基を有していなくてもよい。
【0017】
エポキシ樹脂(A1)を用いることにより得られる硬化物の線膨張係数が低くなりやすい。また、エポキシ樹脂(A1)を用いることで、硬化性組成物中の充填材(例えばシリカ)の量が増加しても、硬化物の低い線膨張係数と絶縁性とを維持しやすい。これはエポキシ樹脂(A1)の占有体積が小さいために、エポキシ樹脂中で充填材粒子同士が衝突することを防止できることに基づくと推定される。エポキシ樹脂(A1)を用いることで、フィルム被覆材(2)(特にポリアミド樹脂を用いたフィルム被覆材(2))との接着性が良好になる。
【0018】
エポキシ樹脂(A1)のモノマー構造における窒素原子の数は0~2個、好ましくは0~1個、より好ましくは0個である。エポキシ樹脂(A1)が有する窒素原子の数を少なくすることで、耐熱性を維持しつつ、硬化物の絶縁性を向上させ得る。
【0019】
エポキシ樹脂(A1)は、モノマー型(重合度1)又はプレポリマー型(例えば重合度2~5又は2~3)であってよい。エポキシ樹脂(A1)はモノマー型を含むことが好ましい。エポキシ樹脂(A1)の平均重合度は、1~2.5であってよく、好ましくは1~1.5である。エポキシ樹脂の重合度が低いことにより、低粘度となりやすく取り扱い性に優れ得る。
【0020】
エポキシ樹脂(A1)のモノマー型が有するナフタレン基の数は1、2又は3であってよく、好ましくは1又は2である。
【0021】
エポキシ樹脂(A1)のモノマー型が有するエポキシ基数は、1~6、2~5、2~4、2~3又は2(ジエポキシ)であってよく、好ましくは2~3又は2である。
【0022】
エポキシ樹脂(A1)の重量平均分子量は、100~1200、150~900又は200~600であってよく、好ましくは180~750である。重量平均分子量はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値であってよい。
【0023】
エポキシ樹脂(A1)のエポキシ当量は、50~500、60~400又は100~300であってよく、好ましくは80~350である。エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方として、例えばJISK7236:2001を参照できる。
【0024】
エポキシ樹脂(A1)の例としては、1-グリシジルオキシナフタレン、2-グリシジルオキシナフタレン等のモノエポキシナフタレン;1,2-ジグリジジルオキシナフタレン、1,5-ジグリシジルオキシナフタレン、1,6-ジグリシジルオキシナフタレン(例えばDIC社製 EPICLON HP-4032D)、1,7-ジグリシジルオキシナフタレン、2,7-ジグリシジルオキシナフタレン等のジエポキシナフタレン;トリグリシジルオキシナフタレン、1,2,5,6-テトラグリシジルオキシナフタレン;2個のナフタレン基が有機基(例えば炭化水素基)を介して結合した構造を有するビスナフタレン型エポキシ樹脂(例えばDIC社製 EPICLON HP-4700);及びこれらのプレポリマー、並びにこれらの変性物が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0025】
・グリシジルアミン型エポキシ樹脂(A2)
本開示における硬化性組成物は、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(A2)を含む。「グリシジルアミン型エポキシ樹脂」とは、グリシジルアミノ基を分子内に有するエポキシ樹脂である。エポキシ樹脂(A1)とエポキシ樹脂(A2)とを併用することで、浸透性及び耐熱性が好適となる。
【0026】
エポキシ樹脂(A2)は、芳香族基を有することが好ましい。例えば、エポキシ樹脂(A2)はベンゼン骨格、ビフェニル骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格及びフェナントレン骨格等の芳香族炭化水素骨格;及び/又はピリジン及びトリアジン等の窒素基含有芳香族炭化水素骨格を有していてよい。エポキシ樹脂(A2)が芳香族基を有することで、耐熱性を向上させ得る。また、エポキシ樹脂(A2)が芳香族基を有することで、吸湿性を低下させ、絶縁性を向上させ得る。さらに、フィルム被覆材(2)(特にポリアミド樹脂を含むフィルム被覆材(2))との接着性が良好になる。
【0027】
エポキシ樹脂(A2)のモノマー構造は、少なくともグリシジルアミノ基由来の窒素原子を1個有するが、それ以外の窒素原子の数は0~2個、好ましくは0~1個、より好ましくは0個である。すなわち、エポキシ樹脂(A2)のモノマー構造は窒素原子を1個のみ有することが好ましい。エポキシ樹脂(A2)が有する窒素原子の数が少ないことで、耐熱性を維持しつつ、吸湿性を低下させ、硬化物の絶縁性を向上させ得る。
【0028】
エポキシ樹脂(A2)の窒素含有率(14×エポキシ樹脂(A2)のモノマー構造分子内の窒素原子数/エポキシ樹脂(A2)のモノマー構造の分子量×100)は、30%以下、20%以下、10%以下、又は7.5%以下であってよく、好ましくは15%以下、より好ましくは6%以下である。
【0029】
エポキシ樹脂(A2)は、モノマー型(重合度1)又はプレポリマー型(例えば、重合度2~5又は2~3)であってよい。エポキシ樹脂(A2)はモノマー型を含むことが好ましい。エポキシ樹脂(A2)の平均重合度は、1~2.5であってよく、好ましくは1~1.5である。エポキシ樹脂の重合度が低いことにより、低粘度となりやすく取り扱い性に優れ得る。
【0030】
エポキシ樹脂(A2)のモノマー型が有するグリシジルアミノ基の数は1、2又は3であってよく、好ましくは1又は2である。
【0031】
エポキシ樹脂(A2)のモノマー構造が有するエポキシ基数は、耐熱性の観点から、1~7、2~5、2~4又は2~3であってよく、好ましくは3~4、特に3(トリエポキシ)である。グリシジルアミノ基に含まれるエポキシ基以外のエポキシ基は、グリシジルエーテル基に含まれるエポキシ基であってよい。
【0032】
エポキシ樹脂(A2)のモノマー構造の重量平均分子量は、100~1200、150~900又は200~600であってよく、好ましくは180~750である。重量平均分子量はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値であってよい。
【0033】
エポキシ樹脂(A2)のエポキシ当量は、50~450、60~350又は100~250であってよく、好ましくは80~300である。エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方として、例えばJISK7236:2001を参照できる。
【0034】
エポキシ樹脂(A2)の例としては、N,N-ジグリシジル-4-(グリシジルオキシ)アニリン、4,4'-メチレンビス[N,N-ビス(オキシラニルメチル)アニリン]、トリグリシジル-o-アミノフェノール、トリグリシジル-p-アミノフェノール等の芳香族型;1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等の脂肪族型;モノグリシジルイソシアヌレート、ジグリシジルイソシアヌレート及びトリグリシジルイソシアヌレート等のイソシアヌレート型;ジグリシジルヒダントイン等のヒダントイン型;及びこれらのプレポリマー、並びにこれらの変性物が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。エポキシ樹脂(A2)はジグリシジルアミノ基を有していることが好ましい。
【0035】
・シリコーン変性エポキシ樹脂(A3)
シリコーン変性エポキシ樹脂(A3)は、エポキシ基と反応する官能基を有するオルガノシロキサンとエポキシ樹脂との反応物として得ることができる。ここでエポキシ基と反応する官能基を有するオルガノシロキサンを例示すれば、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、フェノール性水酸基、メルカプト基等を1分子中に1個以上有するジメチルシロキサン、ジフェニルシロキサン、メチルフェニルシロキサン等が挙げられる。オルガノシロキサンの重量平均分子量としては300~5000の範囲であってよい。シリコーン変性エポキシ樹脂(A3)を得るためのエポキシ樹脂としては特に限定はなく、種々のエポキシ樹脂を選択することができる。
【0036】
・その他エポキシ樹脂
硬化性組成物はナフタレン型エポキシ樹脂(A1)、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(A2)、シリコーン変性エポキシ樹脂(A3)以外のエポキシ樹脂を含んでいることが好ましい。エポキシ基と反応する官能基を有するオルガノシロキサンを例示すれば、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、フェノール性水酸基、メルカプト基等を1分子中に1個以上有するジメチルシロキサン、ジフェニルシロキサン、メチルフェニルシロキサン等が挙げられる。
【0037】
その他エポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールE(AD)型及びビスフェノールS型等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂及びビスフェノールA等のノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型、トリフェニルメタン型、ジシクロペンタジエン型、フルオレン型及びアントラセン型等の芳香族型エポキシ樹脂;ノルボルネン型エポキシ樹脂及びアダマンタン型エポキシ樹脂等の脂環式エポキシ樹脂;脂肪族鎖状エポキシ樹脂;リン含有エポキシ樹脂;及びアルキルフェノール型エポキシ樹脂、並びにこれらの変性物が挙げられる。耐熱性の観点から、その他エポキシ樹脂として芳香族エポキシ樹脂を含んでいてもよい。また、耐熱性の観点から、その他エポキシ樹脂として脂肪族エポキシ樹脂を含んでいなくてもよい。その他エポキシ樹脂の好適な例として、ビスフェノールエポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂は、エポキシ基以外の活性水素含有基及び活性水素反応性基を有していなくてもよい。これらは、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。その他エポキシ樹脂は脂肪族エポキシ樹脂を含んでいなくてよい。
【0038】
その他エポキシ樹脂のモノマー構造における窒素原子の数は0~2個、好ましくは0~1個、より好ましくは0個である。
【0039】
○硬化剤(B)
硬化性組成物は、硬化剤(B)を含むことが好ましい。硬化剤(B)はアミン系硬化剤であることが好ましい。本開示において、アミン系硬化剤とは、熱硬化性樹脂に加えたときに硬化反応を進行又は促進させる作用を有するものであって、分子内にアミノ基を有するものをいう。ここで、「アミノ基」とは、当業者がアミノ基と認識するものであって、イミダゾール骨格又はイミダゾリン骨格に含まれるアミノ基を含む。また、本明細書における「硬化剤」とは、硬化促進剤も含む広義の概念であってよい。
【0040】
硬化性組成物をアンダーフィル材として用いる場合、作業性の観点から、ある一定温度以下では硬化が十分に進行せず、それ以上の温度で速やかに硬化が進行することができる硬化性を硬化性組成物に付与できる硬化剤を選択することが重要である。このような硬化剤(B)として、高融点であって、分子内に窒素原子を複数個有するものが好適である。窒素原子の存在は、硬化剤(B)とエポキシ樹脂(A1)及びエポキシ樹脂(A2)との反応活性を向上させ、好適な硬化性に寄与していると推定される。
【0041】
アンダーフィル材として用いる場合の硬化性の観点から、硬化剤(B)の融点は、50℃以上、75℃以上、100℃以上、120℃以上、150℃以上、175℃以上又は200℃以上であってよく、好ましくは70℃以上、100℃以上、より好ましくは150℃以上、より好ましくは180℃以上、さらに好ましくは210℃以上、よりさらに好ましくは240℃以上である。また、硬化剤(B)の融点は400℃以下、350℃以下、300℃以下、280℃以下であってよい。
【0042】
アンダーフィル材として用いる場合の硬化性の観点から、硬化剤(B)の分子内窒素原子の数は2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上又は8個以上であってよく、好ましくは2個以上である。硬化剤(B)の分子内窒素原子の数は8個以下、6個以下、又は4個以下であってよい。
【0043】
アンダーフィル材として用いる場合の硬化性の観点から、硬化剤(B)の窒素含有率(14×硬化剤(B)分子内の窒素原子数/硬化剤(B)の分子量×100)は10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上又は42重量%以上であってよく、例えば18重量%以上、好ましくは28重量%以上、特に38重量%以上である。また、硬化剤(B)の窒素含有率は80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、50重量%以下であってよい。
【0044】
硬化剤(B)は、例えば、脂肪族モノアミン、脂肪族ポリアミン、芳香族モノアミン又は芳香族ポリアミンを用いることができる。硬化剤(B)は、エポキシ樹脂とのアミンアダクト体等でなくてもよい。硬化性の観点から、硬化剤(B)は水酸基を有していなくてよい。
【0045】
硬化剤(B)は、イミダゾール系硬化剤及びイミダゾリン系硬化剤からなる群から選択される少なくとも一種であってよい。硬化剤(B)はこれらのうち一種だけを用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0046】
「イミダゾール系硬化剤」とは、分子内にイミダゾール骨格を有する硬化剤である。イミダゾール系硬化剤の例としては、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-アミノエチル-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール及び1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウム・トリメリテート、並びにこれらの変性物が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。硬化性の観点から、イミダゾール系硬化剤は水酸基を有していなくてよい。
【0047】
「イミダゾリン系硬化剤」とは、分子内にイミダゾリン骨格を有する硬化剤である。イミダゾリン系硬化剤の例としては、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-フェニルイミダゾリン、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-メチルイミダゾリン、2-メチルイミダゾリン、2,4-ジメチルイミダゾリン、2-エチルイミダゾリン、2-エチル-4-メチルイミダゾリン、2-ベンジルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン、2-(o-トリル)-イミダゾリン、テトラメチレン-ビス-イミダゾリン、1,1,3-トリメチル-1,4-テトラメチレン-ビス-イミダゾリン、1,3,3-トリメチル-1,4-テトラメチレン-ビス-イミダゾリン、1,1,3-トリメチル-1,4-テトラメチレン-ビス-4-メチルイミダゾリン、1,3,3-トリメチル-1,4-テトラメチレン-ビス-4-メチルイミダゾリン、1,2-フェニレン-ビス-イミダゾリン、1,3-フェニレン-ビス-イミダゾリン、1,4-フェニレン-ビス-イミダゾリン及び1,4-フェニレン-ビス-4-メチルイミダゾリン、並びにこれらの変性物が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。硬化性の観点から、イミダゾリン系硬化剤は水酸基を有していなくてよい。
【0048】
硬化剤(B)は分子内にトリアジン骨格(特に1,3,5-トリアジン骨格)を含有するトリアジン骨格含有アミン系硬化剤、即ちトリアジン骨格含有イミダゾール系硬化剤及びトリアジン骨格含有イミダゾリン系硬化剤からなる群から選択される少なくとも一種であってよい。
【0049】
硬化剤(B)がトリアジン骨格を含有することで、良好な浸透性が得られるとともに、良好な反応促進も可能となる。この理由は必ずしも定かではないが、トリアジン骨格を含有することで硬化剤の融点が適度に上昇することに加えて3個の環窒素原子の存在により他成分との適度な相互作用が実現したことによるものと考えられる。また、同様の理由でフィルム被覆材(2)(特にポリアミド樹脂を含むフィルム被覆材(2))との接着性が良好になる。
【0050】
トリアジン骨格含有アミン系硬化剤は、トリアジン骨格に直接結合したアミノ基を少なくとも1個(例えば1個、2個及び3個)有していてよく、好ましくは2個有する。硬化性の観点から、トリアジン骨格含有アミン系硬化剤は、トリアジン骨格に直接結合した水酸基を有していなくてよい。トリアジン骨格含有アミン系硬化剤は下記一般式(1)で表される化合物であってよい。
【0051】
(式(1)中、R
1、R
2及びR
3はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~25の一価の有機基であり、R
1、R
2及びR
3の少なくとも1個がイミダゾール骨格又はイミダゾリン骨格を含有する基である。)
【0052】
R1
、R2及びR3における一価の有機基は、脂肪族基及び芳香族基であってよい。R1、R2及びR3の少なくとも1個(好ましくは1個)がイミダゾール骨格又はイミダゾリン骨格を含有する基である。R1、R2及びR3の少なくとも1個、好ましくは2個がアミノ基(アルキルアミノ基、-NH2基、好ましくは-NH2基)であることが好ましい。R1、R2及びR3は分子量10~750であってよく、例えば(特にイミダゾール骨格又はイミダゾリン骨格を含有する基である場合)200~400である。R1、R2及びR3が有する炭素数は0~20であってよく、例えば1~15である。
【0053】
R2及びR3がアミノ基である場合、R1がイミダゾール骨格又はイミダゾリン骨格を含有する基であってよく、好ましくはイミダゾール基を含有する基である。ここで、R1は、水酸基を有していても有していなくてもよい。
【0054】
トリアジン骨格含有アミン系硬化剤は、下記一般式(2)で表される化合物であってよい。
【0055】
(式(2)中、R
4はイミダゾール骨格又はイミダゾリン骨格を含有する炭素数3~25の有機基であり、R
5、R
6、R
7及びR
8はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~25の一価の有機基である。)
【0056】
R4におけるイミダゾール骨格又はイミダゾリン骨格と、トリアジン骨格とは、スペーサー基(例えば、脂肪族炭化水素基及び含窒素脂肪族炭化水素基)を介して結合されていてよく、直接結合していてもよい。R4の炭素数は3~20であってよく、例えば3~15である。
【0057】
R5、R6、R7及びR8における有機基はそれぞれ独立して、脂肪族基又は芳香族基であってよく、好ましくは脂肪族基(例えば脂肪族炭化水素基)であり、例えばアルキル基、アルケニル基、アリール基又はヒドロキシアルキル基であり、より好ましくはアルキル基又はアルケニル基である。R5、R6、R7及びR8における有機基の炭素数は1~20であってよく、例えば1~15である。R5、R6、R7及びR8のうち少なくとも一個(例えば、一個、二個、又は三個)が水素原子であってよく、全てが水素原子であってよい。
【0058】
トリアジン骨格含有イミダゾール系硬化剤は下記一般式(3)で表される化合物であってよい。
【0059】
(式(3)中、R
9、R
10及びR
11はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~25の有機基であり、L
1は直接結合又は炭素数1~25の有機基である。)
【0060】
R9、R10及びR11における有機基はそれぞれ独立して、脂肪族基又は芳香族基であってよく、好ましくは脂肪族基(例えば脂肪族炭化水素基)であり、例えばアルキル基、アルケニル基、アリール基又はヒドロキシアルキル基であり、より好ましくはアルキル基又はアルケニル基である。R9、R10及びR11における有機基の炭素数は1~20であってよく、例えば1~15である。R9、R10及びR11のうち少なくとも一個(例えば、一個又は二個、特にR9及びR10の一方又は両方)が水素原子であってよく、全てが水素原子であってよい。
【0061】
L1における有機基は二価の脂肪族基又は二価の芳香族基であってよく、好ましくは脂肪族基(例えば、脂肪族炭化水素基、含酸素脂肪族炭化水素基又は含窒素脂肪族炭化水素基)である。L1における有機基は、1個又は複数の窒素原子又は酸素原子を有していてもよいし、有していなくてもよい。L1における有機基の炭素数は1~20であってよく、例えば1~15である。
【0062】
トリアジン骨格含有イミダゾリン系硬化剤は下記一般式(4)で表される化合物であってよい。
(式(4)中、R
12、R
13及びR
14はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~25の有機基であり、L
2は直接結合又は炭素数1~25の有機基である。)
【0063】
R12、R13及びR14における有機基はそれぞれ独立して、脂肪族基又は芳香族基であってよく、好ましくは脂肪族基(例えば脂肪族炭化水素基)であり、例えばアルキル基、アルケニル基、アリール基又はヒドロキシアルキル基であり、より好ましくはアルキル基又はアルケニル基である。R12、R13及びR14における有機基の炭素数は1~20であってよく、例えば1~15である。R12、R13及びR14のうち少なくとも一個(例えば、一個又は二個、特にR12及びR13の一方又は両方)が水素原子であってよく、全てが水素原子であってよい。
【0064】
L2における有機基は二価の脂肪族基又は二価の芳香族基であってよく、好ましくは脂肪族基(例えば、脂肪族炭化水素基、含酸素脂肪族炭化水素基又は含窒素脂肪族炭化水素基)である。L2における有機基は、1個又は複数の窒素原子又は酸素原子を有していてもよいし、有していなくてもよい。L2における有機基の炭素数は1~20であってよく、例えば1~15である。
【0065】
上記のトリアジン骨格含有硬化剤としては市販品を利用してもよいし、当業者に公知の方法で製造することが可能である。例えば、国際公開2014/142035、特開2015-140394及び特開2019-6972等を参照することができる。
【0066】
トリアジン骨格含有硬化剤の例としては、1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ブチル-2-ウンデシルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)プロピルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)プロピル-2-メチルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)プロピル-2-ウンデシルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)プロピル-2-ヘプタデシルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)プロピル-2-エチル-4-メチルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)プロピル-2-フェニルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)プロピル-2-フェニル-4-メチルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)プロピル-2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)プロピル-2-フェニル-4-ヒドロキシメチル-5-メチルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ブチルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ブチル-2-メチルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ブチル-2-ウンデシルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ブチル-2-ヘプタデシルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ブチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ブチル-2-フェニルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ブチル-2-フェニル-4-メチルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ブチル-2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ブチル-2-フェニル-4-ヒドロキシメチル-5-メチルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ペンチルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ペンチル-2-メチルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ペンチル-2-ウンデシルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ペンチル-2-ヘプタデシルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ペンチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ペンチル-2-フェニルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ペンチル-2-フェニル-4-メチルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ペンチル-2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ペンチル-2-フェニル-4-ヒドロキシメチル-5-メチルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ヘキシルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ヘキシル-2-メチルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ヘキシル-2-ウンデシルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ヘキシル-2-ヘプタデシルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ヘキシル-2-エチル-4-メチルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ヘキシル-2-フェニルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ヘキシル-2-フェニル-4-メチルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ヘキシル-2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ヘキシル-2-フェニル-4-ヒドロキシメチル-5-メチルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ヘプチルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ヘプチル-2-メチルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ヘプチル-2-ウンデシルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ヘプチル-2-ヘプタデシルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ヘプチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ヘプチル-2-フェニルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ヘプチル-2-フェニル-4-メチルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ヘプチル-2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール;1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)ヘプチル-2-フェニル-4-ヒ;ドロキシメチル-5-メチルイミダゾール;及びこれらのイミダゾール骨格をイミダゾリン骨格に置換した化合物、並びにこれらの変性物が挙げられる。具体的な製品の例としては、四国化成社製2MZ-A、2MZA-PW、C11Z-A及び2E4MZ-A等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。硬化性の観点から、イミダゾリン系硬化剤は水酸基を有していなくてよい。
【0067】
硬化剤(B)が固形の場合、硬化剤(B)は所定の中心粒径まで粉砕されたものを用いてもよい。硬化剤(B)の中心粒径の例は、10μm以下、5μm以下、2.5μm以下及び1.5μm以下である。粉砕にはジェットミル等の気流式粉砕機;振動ボールミル、連続式回転ボールミル、バッチ式ボールミル等のボールミル;湿式ポットミル、遊星ポットミル等のポットミル;ローラーミ等の粉砕機を用いることができる。
【0068】
・その他硬化剤
本開示の硬化性組成物は、アミン系硬化剤以外のその他硬化剤を含んでもよい。その他硬化剤の例としては、アミン系化合物(例えば、脂肪族アミン類、脂環式及び複素環式アミン類、芳香族アミン類及び変性アミン類)、イミダゾール系化合物、イミダゾリン系化合物、アミド系化合物、エステル系化合物、フェノール系化合物、アルコール系化合物、チオール系化合物、エーテル系化合物、チオエーテル系化合物、尿素系化合物、チオ尿素系化合物、ルイス酸系化合物、リン系化合物、酸無水物系化合物、オニウム塩系化合物(又はカチオン重合開始剤)及び活性珪素化合物-アルミニウム錯体が挙げられる。絶縁性の観点から、本開示の硬化性組成物は酸無水物型の硬化剤を用いなくてもよい。硬化性組成物は常温で液体の硬化剤を含まなくてもよい。
【0069】
○無機充填材(C)
硬化性組成物は、
本開示における硬化性組成物は、無機充填材(C)を含有する。無機充填材(C)は、硬化性組成物に一般に使用される無機充填材であってよく、好ましくはシリカ粒子及びアルミナ粒子からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0070】
・球状無機粒子
本開示における硬化性組成物は、充填材として球状無機粒子を含有することが好ましい。球状無機粒子はシリカ粒子及びアルミナ粒子からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。球状無機粒子は各種表面処理剤(例えば、シランカップリング剤)で処理されていてもよい。本明細書において、球状とは真球状、楕円球状などに限られず、当業者が球状であると認識する程度に球状であれば足りる。例えば、表面に多少の凸凹が存在する粒子も球状粒子であってよい。
【0071】
球状無機粒子は粒度分布の異なる複数(例えば、2種、3種又は4種)の粒子を含んでいてよい。球状無機粒子は中心粒径が0.5~20μmの範囲にある異なる粒子分布を有する複数(例えば、2種、3種又は4種)の粒子を含んでいてよい。球状無機粒子は、中心粒径の小さい球状無機粒子(Cs)と、中心粒径の大きい球状無機粒子(Cl)とを含んでいてよい。球状無機粒子(Cs)の中心粒径は、0.5~5μm、0.5~4.5μm又は0.5~3μmであってよく、好ましくは0.5~4μmである。中心粒径の大きい球状無機粒子(Cl)の中心粒径は、5~20μm、7~20μm又は9~20μmであってよく、好ましくは7.5~20μmである。球状無機粒子(Cs)と球状無機粒子(Cl)との中心粒径の差は少なくとも1μm、少なくとも2.5μm、少なくとも5μm、又は少なくとも10μmであってよい。中心粒径及び粒度分布は、例えば、レーザー回折/散乱式粒子分布測定装置を用いて測定できる。具体的にはレーザー回折/散乱式粒子分布測定装置(堀場製作所社製 Partica LA-950V2)により、分散媒としてメタノールを用いて、湿式法にて行うことができる。なお、「中心粒径」とは体積基準粒度分布測定におけるd50の値を意味する。
【0072】
球状無機粒子の体積基準粒度分布測定において、横軸を粒径、縦軸を粒子の存在比率としてプロットして得られる粒子の存在比率のチャートにおいて、粒径0.5~20μmの範囲において複数(例えば、2個、3個又は4個)のピーク又はショルダーピーク(ここで、ショルダーピークとは、二つ以上のピークが存在し、一方のピークが他方のピークよりも顕著に小さい場合、それらが重なると、大きいピーク上にショルダー状で現れるピークのことをいう)を有することが好ましい。複数のピークのいずれか2個のピークの粒径差は少なくとも1μm、少なくとも2.5μm、少なくとも5μm、又は少なくとも10μmであってよい。
【0073】
・その他無機充填材
その他無機充填材の例は、上記球状無機粒子以外であって、ガラス、炭酸カルシウム、脂肪酸処理炭酸カルシウム、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、カーボンブラック、タルク、マイカ、クレー、ガラスビーズ、シラスバルーン、ガラスバルーン、シリカバルーン、プラスチックバルーン、ガラス繊維、金属繊維などの無機繊維、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸カリウム、グラファイト、針状結晶性炭酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、二ホウ化チタン、クリソタイル、ワラストナイト等の針状結晶性フィラー等が挙げられる。
【0074】
無機充填材は、樹脂と無機充填材との結合強度を強くするため、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等のカップリング剤で予め表面処理されていてよい。このようなカップリング剤の例としては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン及びβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン;N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールとγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランの反応物、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン及びN-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;γ-メルカプトシラン及びγ-エピスルフィドキシプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
【0075】
○その他添加剤
本開示の硬化性組成物は、その他添加剤を含んでいてよい。その他の添加剤の例として、有機染料及び有機顔料等の着色剤;有機粒子及び有機繊維等の有機充填材;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アミノシラン、メルカプトシラン、エポキシシラン及びシリコーンオイル(例えばアミノ変性シリコーンオイル及びエポキシ変性シリコーンオイル)等のシリコン系添加剤;ポリオキシアルキレン骨格を有するグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;ヒンダードフェノール類、メルカプタン類、スルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類及びチオアルデヒド類等の老化防止剤/酸化防止剤;ベンゾトリアゾール類及びヒンダードアミン類等の紫外線吸収剤・光安定剤;コロイダルシリカ、有機ベントナイト、脂肪酸アマイド及び水添ひまし油等の揺変剤;熱可塑性エラストマー、NR(天然ゴム)、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等の変性剤等が挙げられる。例えば、エポキシシラン等のシランカップリング剤と、シリコーンオイルとを組み合わせて添加してもよい。
【0076】
○アンダーフィル材(13)の組成
アンダーフィル材の組成は以下のとおりであってよい。なお、下記組成は、硬化前における組成を意味する。
【0077】
・エポキシ樹脂の総量
エポキシ樹脂の総量は組成物に対して、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上又は35重量%以上であってよく、好ましくは18重量%以上、より好ましくは28重量%以上である。また、エポキシ樹脂の総量は組成物に対して、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下又は35重量%以下であってよく、好ましくは58重量%以下、より好ましくは48重量%以下である。
【0078】
・ナフタレン型エポキシ樹脂(A1)の量
エポキシ樹脂(A1)の量は、組成物中の有機物量に対して、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、又は40重量%以上であってよく、好ましくは22重量%以上、より好ましくは28重量%以上、さらに好ましくは33重量%以上である。また、エポキシ樹脂(A1)の量は、組成物中の有機物量に対して、75重量%以下、65重量%以下、55重量%以下、45重量%以下又は40重量%以下であってよく、好ましくは67重量%以下、より好ましくは57重量%以下又は52重量%以下である。なお、本明細書において「組成物中の有機物量」とは、組成物中の無機粒子以外の量であってよく、組成物中のエポキシ樹脂の総量と読み替えてもよい。
【0079】
・エポキシ樹脂(A1)の有するナフタレン骨格が占める重量
エポキシ樹脂(A1)の有するナフタレン骨格が占める重量は組成物に対して、1重量%以上、2.5重量%以上、4.5重量%以上、6重量%以上又は7.5重量%以上であってよく、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5.5重量%以上、さらに好ましくは6.5重量%以上である。また、エポキシ樹脂(A1)の有するナフタレン骨格が占める重量は組成物に対して、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下又は10重量%以下であってよく、好ましくは26重量%以下、より好ましくは16重量%以下である、さらに好ましくは11重量%以下である。
【0080】
・グリシジルアミン型エポキシ樹脂(A2)の量
エポキシ樹脂(A2)の量は、組成物中の有機物量に対して、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上又は35重量%以上であってよく、好ましくは21重量%以上、より好ましくは28重量%以上、さらに好ましくは35重量%以上である。また、エポキシ樹脂(A2)の量は、組成物中の有機物量に対して、75重量%以下、65重量%以下、55重量%以下、45重量%以下又は40重量%以下であってよく、好ましくは65重量%以下、より好ましくは45重量%以下である。
【0081】
・シリコーン変性エポキシ樹脂(A3)の量
シリコーン変性エポキシ樹脂(A3)の量は、組成物中の有機物量に対して、1重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上又は7.5重量%以上であってよく、好ましくは2.5重量%以上又は5重量%以上である。また、シリコーン変性エポキシ樹脂(A3)の量は、組成物中の有機物量に対して、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、又は7.5重量%以下であってよく、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
【0082】
・その他エポキシ樹脂の量
その他エポキシ樹脂の量は、組成物中の有機物量に対して、0.5重量%以上、1重量%以上、2重量%以上、3重量%以上又は5重量%以上であってよく、好ましくは0.7重量%以上、又は2重量%以上である。また、その他エポキシ樹脂の量は、組成物中の有機物量に対して、75重量%以下、65重量%以下、55重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、25重量%以下又は15重量%以下であってよく、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下又は20重量%以下である。
【0083】
・窒素原子が占める重量
組成物における窒素原子が占める重量は、組成物に対して、0.5重量%以上、0.8重量%以上又は1.0重量%以上であってよい。また、組成物における窒素原子が占める重量は、組成物に対して、15重量%以下、12重量%以下、9重量%以下、6重量%以下、3重量%以下又は1.5重量%以下であってよく、好ましくは7.5重量%以下、より好ましくは2.5重量%以下である。
【0084】
・硬化剤(B)の量
硬化剤(B)の量は、組成物に対して、0.01重量%以上、0.2重量%以上、0.4重量%以上、0.6重量%以上、0.8重量%以上又は1.0重量%以上であってよく、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは0.7重量%以上である。また、硬化剤(B)の総量は、組成物に対して、30重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、5重量%以下、4.5重量%以下、3.5重量%以下、3重量%以下、2.5重量%以下又は2重量%以下であってよく、好ましくは3.6重量%以下、より好ましくは2.2重量%以下である。
【0085】
エポキシ樹脂と硬化剤の配合比は、硬化速度の観点からは、エポキシ樹脂と硬化剤との比(エポキシ樹脂の重量/硬化剤の重量)が100未満、50未満、又は25未満となるように設定されてもよい。
【0086】
・無機充填材(C)の総量
無機充填材(C)の総量は、組成物に対して、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、又は65重量%以上であってよく、好ましくは43重量%以上、より好ましくは53重量%以上である。また、無機充填材(C)の総量は、組成物に対して、80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下又は60重量%以下であってよく、好ましくは70重量%以上、好ましくは66重量%以下、さらに好ましくは63重量%以下である。無機充填材の量が上記範囲にあることで、硬化性組成物の浸透性及び/又は線膨張係数が向上し得る。
【0087】
無機充填材(C)の総量は、組成物に対して、30容積%以上、33容積%以上、36容積%以上、39容積%以上、41容積%以上又は43容積%以上であってよく、好ましくは35容積%以上、より好ましくは40容積%以上である。また、無機充填材(C)の総量は、組成物に対して、80容積%以下、65容積%以下、50容積%以下、45容積%以下、40容積%以下又は35容積%以下であってよく、好ましくは76容積%以下、より好ましくは66容積%以下である。
【0088】
・球状無機粒子の量
球状無機粒子の量は、無機充填材(C)の総量に対して、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、90重量%以上又は95重量%以上であってよく、好ましくは85重量%以上、より好ましくは95重量%以上である。また、球状無機粒子の量は、充填材の総量に対して、100重量%以下、97重量%以下、93重量%以下、90重量%以下、85重量%以下又は80重量%以下であってよい。
【0089】
・球状無機粒子(Cl)の量
球状無機粒子(Cl)の量は、組成物に対して、30重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上であってよく、好ましくは42重量%以上、より好ましくは45重量%以上である。また、無機充填材(Cl)の総量は、組成物に対して、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下、48重量%以下又は45重量%以下であってよく、好ましくは65重量%以下、より好ましくは55重量%以下である。無機充填材の量が上記範囲にあることで、硬化性組成物の浸透性及び/又は線膨張係数が向上し得る。
【0090】
・球状無機粒子(Cs)の量
球状無機粒子(Cs)の量は、組成物に対して、3重量%以上、5重量%以上、7.5重量%以上、15重量%以上又は17.5重量%以上であってよく、好ましくは4.5重量%以上、より好ましくは8重量%以上である。また、無機充填材(C)の総量は、組成物に対して、40重量%以下、25重量%以下、又は15重量%以下であってよく、好ましくは18重量%以下、より好ましくは13重量%以下である。無機充填材の量が上記範囲にあることで、硬化性組成物の浸透性が向上し得る。
【0091】
・その他添加剤の総量
その他添加剤の総量は、各成分に応じて適宜選択されればよい。例えば、その他添加剤の量は、組成物に対して、0.01重量%以上、0.05重量%以上、0.1重量%以上、0.3重量%以上、0.5重量%以上又は0.8重量%以上であってよい。また、その他添加剤の総量は、組成物に対して、5重量%以下、4.5重量%以下、3.5重量%以下、3重量%以下、2.5重量%以下又は2重量%以下であってよい。
【0092】
○硬化性組成物の調製方法
硬化性組成物の調製方法は、各種成分を均一に分散混合できるのであればよい。プラネタリーミキサー等のミキサーを用いて成分を混練することによって得ることができる。調製に際して必要に応じて脱泡してもよい。
【0093】
硬化性組成物は一液型または多液型(例えば二液型)であってもよいが、作業性の観点からは一液型が好ましい。保存安定性の観点からは、多液型であることが好ましい。
【0094】
○硬化物
【0095】
硬化性組成物は、加熱により硬化し、硬化物となる。加熱温度は、50~250℃であってよく、例えば100℃~175℃である。加熱時間は、通常120分以内であり、例えば60分以内、好ましくは30分以内、より好ましくは15分以内、さらに好ましくは10分以内である。アンダーフィル材として硬化性組成物を用いる場合、硬化温度は、電子部品の耐熱性も考慮した温度設定であり、通常50~200℃、例えば80℃~150℃である。
【0096】
硬化物のガラス転移温度は、125℃以上、130℃以上、135℃以上、又は140℃以上であってよい。また、硬化物のガラス転移温度は、250℃以下、200℃以下、175℃以下、又は150℃以下であってよい。硬化物のガラス転移温度が高くなることにより、耐熱性が向上し得る。
【0097】
硬化によって、生成される結合の例としては、エーテル結合、エステル結合又は三級アミノ結合がある。生成されるエーテル結合の比率は、生成した結合100mol%に対して、50mol%以上、60mol%以上、70mol%以上又は80mol%以上であっってよい。生成されるエステル結合の比率は、生成した結合100mol%に対して、20mol%以下、15mol%以下、10mol%以下、又は7mol%以上であっってよく、好ましくは12mol%以下、より好ましくは8mol%以下である。生成される三級アミノ結合の比率は、生成した結合100mol%に対して、12mol%以下、9mol%以下、6mol%以下、又は3.5mol%以上であっってよく、好ましくは7.5mol%以下、より好ましくは2.5mol%以下である。生成される結合の同定は、NMR、IR等の各種分光法を用いることにより行うことができる。
【0098】
硬化物の線膨張係数は、31ppm以下、29ppm以下、25ppm以下又は23ppm以下であってよく、好ましくは30ppm以下、より好ましくは29ppm以下である。硬化物の線膨張係数が低いことにより、装置の不良発生が低減され得る。
【0099】
[フィルム被覆材(2)]
フィルム被覆材(2)は電子部品が実装されたプリント基板などのデバイス(又は電子デバイス)を被覆するのに適したフィルム被覆材である。なお、フィルム状封止剤は、1枚のシート状であってもよく、デバイスを挟み込み可能な折り曲がったシート状、デバイスを収容可能な袋状などの形態であってもよい。
【0100】
フィルム被覆材(2)はアンダーフィル材(13)の一部に接触していてよい。アンダーフィル材(13)の一部は、基板(11)と電子部品(12)とにより形成される空隙部分からはみ出てもよい(
図2参照)。フィルム被覆材(2)と当該はみ出たアンダーフィル材とが接触することにより、基板(11)、電子部品(12)、及びアンダーフィル材(13)間の接着性が向上し、電子部品の信頼性を向上し得る。
【0101】
フィルム被覆材(2)は、未延伸フィルム又は延伸フィルム(一軸又は二軸延伸フィルム)であってもよく、延伸又は配向により熱収縮性が付与されていてもよい。フィルムの延伸倍率は、例えば、1つの方向について、1.2倍以上、1.5倍以上、又は2倍以上であってよく、10倍以下、7倍以下、又は5倍以下であってよい。
【0102】
フィルム被覆材(2)の厚みは、例えば、1μm以上、5μm以上、10μm以上、25μm以上、50μm以上、又は75μm以上であってよく、1000μm以下、500μm以下、300μm以下、250μm以下、200μm以下、又は150μm以下であってよい。厚みが小さいことにより、デバイスの表面の凹凸に沿いやすくなる。厚みか大きいことにより、角部などを十分に被覆しやすくなる。
【0103】
フィルム被覆材(2)の水蒸気透過度(40℃、90%RH)は、厚み1mm換算で、例えば、100g/m2/day以下、50g/m2/day以下、30g/m2/day以下、10g/m2/day以下、5g/m2/day以下、2.5g/m2/day以下、1g/m2/day以下、0.5g/m2/day以下であってよい。好ましくは50g/m2/day以下である。特にフィルム被覆材(2)がポリアミドを含むことで、水蒸気バリア性に優れ得る。水蒸気透過度は、慣用の方法、例えば、JIS Z0208のカップ法により、測定できる。
【0104】
(熱可塑性樹脂)
フィルム被覆材(2)は、好ましくは樹脂を含み、より好ましくは熱可塑性樹脂を含む。
【0105】
熱可塑性樹脂は、非晶性であってもよく、結晶性を有していてもよい。熱可塑性樹脂の結晶化度は、20%以下、又は10%以下であってよく、好ましくは10%以下である。なお、結晶化度は、慣用の方法、例えば、密度や融解熱に基づく測定法、X線回折法、赤外吸収法などにより、測定できる。なお、非晶性共重合ポリアミド系樹脂の熱溶融性は、示差走査熱量計により軟化温度として測定でき、結晶性の共重合ポリアミド系樹脂の融点は、示差走査熱量計(DSC)により測定できる。
【0106】
熱可塑性樹脂の融点又は軟化点は、80℃以上、90℃以上、105℃以上、115℃以上、又は125℃以上であってよく、160℃以下、150℃以下、140℃以下、135℃以下、又は130℃以下であってよい。この範囲に融点又は軟化点があることで、車載装置の耐久性が向上し得る。熱可塑性樹脂が比較的低い融点又は軟化点を有するため、溶融してデバイス表面の凹凸部(段差のコーナー部など)などの表面形状に追従させるのに有用である。なお、熱可塑性樹脂の融点は、各成分が相溶し、DSCで単一のピークが生じる場合、単一のピークに対応する温度を意味し、各成分が非相溶であり、DSCで複数のピークが生じる場合、複数のピークのうち高温側のピークに対応する温度を意味する。
【0107】
熱可塑性樹脂は、実装基板表面の凹凸部などの表面形状に追従するとともに、隙間などに流動又は侵入可能とするため、高い溶融流動性を有するのが好ましい。熱可塑性樹脂のメルトフローレート(MFR)は、温度160℃及び荷重2.16kgにおいて、1g/10分以上、3g/10分以上、又は5g/10分以上、であってよく、350g/10分以下、300g/10分以下、又は250g/10分以下であってもよい。
【0108】
熱可塑性樹脂の例としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、及びポリウレタン等が挙げられるが、ポリアミドを含むことが好ましい。
【0109】
(ポリアミド)
以下、熱可塑性樹脂の好ましい例であるポリアミドについて詳しく説明する。
【0110】
ポリアミドは、脂肪族又は芳香族であってよく、脂肪族であることが好ましい。ポリアミドは直鎖状、分岐状、環状であってもよい。ポリアミドは、少量のポリカルボン酸成分及び/又はポリアミン成分を用い、分岐鎖構造を導入したポリアミドであってもよい。
【0111】
ポリアミドは、アミド形成成分の多元共重合体、例えば、二元共重合体~五元共重合体、二元共重合体~四元共重合体、又は二元共重合体又は三元共重合体であってよい。
【0112】
ポリアミドの数平均分子量は、3000以上、5000以上、7500以上、10000以上、30000以上、50000以上、100000以上、又は250000以上であってよく、好ましくは5000以上である。ポリアミドの数平均分子量は、1000000以下、750000以下、500000以下、250000以下、100000以下、50000以下、又は30000以下であってよく、好ましくは100000以下である。共重合ポリアミド系樹脂の分子量は、HFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール)を溶媒とし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより、ポリメタクリル酸メチル換算で測定してもよい。
【0113】
ポリアミドは、長鎖脂肪族基(長鎖アルキレン基又はアルケニレン基)を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。長鎖脂肪族基を有する繰り返し単位は、長鎖成分から誘導された繰り返し単位であってよく、長鎖成分としては、炭素数8~36程度の長鎖脂肪族基(好ましくはC8-16アルキレン基、さらに好ましくはC10-14アルキレン基)を有する成分が含まれる。長鎖成分の例としては、C8-18アルカンジカルボン酸(好ましくはC10-16アルカンジカルボン酸、さらに好ましくはC10-14アルカンジカルボン酸など)、C9-17ラクタム(好ましくはラウロラクタムなどのC11-15ラクタム)及びアミノC9-17アルカンカルボン酸(好ましくはアミノウンデカン酸、アミノドデカン酸などのアミノC11-15アルカンカルボン酸)等が挙げられる。これらの成分は単独で又は二以上を併用して用いてもよい。このような成分由来の単位を含むポリアミドは、耐水性、電子デバイスに対する密着性、耐摩耗性及び耐衝撃性に優れ得る。
【0114】
ポリアミドは、ジアミン成分、ジカルボン酸成分、ラクタム成分、及びは、アミノカルボン酸成分からなる群から選択される少なくとも一を共重合して形成されてよい。すなわちポリアミドはジアミン成分から誘導された繰り返し単位、ジカルボン酸成分から誘導された繰り返し単位、ラクタム成分から誘導された繰り返し単位、及び/又は、アミノカルボン酸成分から誘導された繰り返し単位から選択される少なくとも一を有してよい。例えば、ジアミン成分とジカルボン酸成分とでポリアミドのアミド結合を形成してもよいし、ラクタム成分及びアミノカルボン酸成分のそれぞれ単独でポリアミドのアミド結合を形成してもよい。
【0115】
・ジアミン成分
ジアミン成分の例としては、脂肪族ジアミン又はアルキレンジアミン成分(例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ドデカンジアミンなどのC4-16アルキレンジアミンなど)等が挙げられる。これらのジアミン成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましいジアミン成分は、少なくともアルキレンジアミン(好ましくはC6-14アルキレンジアミン、さらに好ましくはC6-12アルキレンジアミン)を含んでいる。
【0116】
なお、必要であれば、ジアミン成分として、脂環族ジアミン成分(ジアミノシクロヘキサンなどのジアミノシクロアルカン(ジアミノC5-10シクロアルカンなど);ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4’-アミノシクロヘキシル)プロパンなどのビス(アミノシクロアルキル)アルカン[ビス(アミノC5-8シクロアルキル)C1-3アルカンなど];水添キシリレンジアミンなど)、芳香族ジアミン成分(メタキシリレンジアミンなど)を併用してもよい。ジアミン成分(例えば、脂環族ジアミン成分)は、アルキル基(メチル基、エチル基などのC1-4アルキル基)などの置換基を有していてもよい。
【0117】
・ジカルボン酸成分
ジカルボン酸成分の例としては、脂肪族ジカルボン酸又はアルカンジカルボン酸成分(例えば、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸又はその水素添加物などの炭素数4~36程度のジカルボン酸又はC4-36アルカンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのジカルボン酸成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましいジカルボン酸成分の例としては、C6-36アルカンジカルボン酸(例えば、C6-16アルカンジカルボン酸、好ましくはC8-14アルカンジカルボン酸など)が挙げられる。さらに、必要であれば、脂環族ジカルボン酸成分(シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸などのC5-10シクロアルカン-ジカルボン酸など)、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸など)を併用してもよい。なお、ジアミン成分及びジカルボン酸成分として、脂環族ジアミン成分及び/又は脂環族ジカルボン酸成分と共に、前記例示の脂肪族ジアミン成分及び/又は脂肪族ジカルボン酸成分を併用して得られた脂環族ポリアミド樹脂は、いわゆる透明ポリアミドとして知られており、透明性に優れ得る。
【0118】
・ラクタム成分及びアミノカルボン酸成分
ラクタム成分としては、例えば、δ-バレロラクタム、ε-カプロラクタム、ω-ヘプタラクタム、ω-オクタラクタム、ω-デカンラクタム、ω-ウンデカンラクタム、ω-ラウロラクタム(又はω-ラウリンラクタム)などのC4-20ラクタム等が挙げられる。アミノカルボン酸成分としては、例えば、ω-アミノデカン酸、ω-アミノウンデカン酸、ω-アミノドデカン酸などのC6-20アミノカルボン酸などが挙げられる。これらのラクタム成分及びアミノカルボン酸成分は単独で又は二以上を併用して用いてもよい。
【0119】
好ましいラクタム成分の例としては、C6-19ラクタム、C8-17ラクタム、又はC10-15ラクタム(ラウロラクタムなど)が挙げられ、好ましいアミノカルボン酸の例としては、アミノC6-19アルカンカルボン酸、アミノC8-17アルカンカルボン酸、アミノC10-15アルカンカルボン酸又は(アミノウンデカン酸、アミノドデカン酸など)が挙げられる。
【0120】
ポリアミドは、例えば、ポリアミド11モノマー,ポリアミド12モノマー、ポリアミド610モノマー、ポリアミド612モノマー及びポリアミド1010モノマーから選択されたすくなくとも一のモノマーから誘導された繰り返し単位を有してもよい。ポリアミドは、これらの複数のモノマーの共重合体であってもよく、上記と、ポリアミド6モノマー及びポリアミド66モノマーから選択された少なくとも一つのモノマーから誘導された繰り返し単位を有してもよい。
【0121】
・ブロック共重合体ポリアミド
ポリアミドは、ハードブロックとしてのポリアミドとソフトブロックとを含むブロック共重合体ポリアミドであってよい。ブロック共重合体ポリアミドの例としては、例えば、ポリアミド-ポリエーテルブロック共重合体、ポリアミド-ポリエステルブロック共重合体、ポリアミド-ポリカーボネートブロック共重合体などが挙げられる。
【0122】
ハードブロックを構成するポリアミドとしては、1又は複数の前記アミド形成成分の単独又は共重合体(ホモポリアミド、コポリアミド)であってもよい。ハードブロックとしてのホモポリアミドは、前記例示の長鎖成分を構成単位として含んでいてもよく、好ましい長鎖成分は前記と同様である。代表的なホモポリアミドは、ポリアミド11,ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド1012などが挙げられる。また、ハードブロックとしてのコポリアミドは、前記例示のコポリアミドと同様である。これらのポリアミドのうち、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1010、ポリアミド1012などのホモポリアミドが好ましい。
【0123】
代表的なブロック共重合体ポリアミドは、ポリアミド-ポリエーテルブロック共重合体である。ポリアミド-ポリエーテルブロック共重合体において、ポリエーテル(ポリエーテルブロック)としては、例えば、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリC2-6アルキレングリコール、好ましくはポリC2-4アルキレングリコール)などが挙げられる。
【0124】
ポリアミド-ポリエーテルブロック共重合体としては、例えば、反応性末端基を有するポリアミドブロックと反応性末端基を有するポリエーテルブロックとの共重縮合により得られるブロック共重合体、例えば、ポリエーテルアミド[例えば、ジアミン末端を有するポリアミドブロックとジカルボキシル末端を有するポリアルキレングリコールブロック(又はポリオキシアルキレンブロック)とのブロック共重合体、ジカルボキシル末端を有するポリアミドブロックとジアミン末端を有するポリアルキレングリコールブロック(又はポリオキシアルキレンブロック)とのブロック共重合体など]、ポリエーテルエステルアミド[ジカルボキシル末端を有するポリアミドブロックとジヒドロキシ末端を有するポリアルキレングリコールブロック(又はポリオキシアルキレンブロック)とのブロック共重合体など]などが挙げられる。なお、ブロック共重合体ポリアミドは、エステル結合を有していてもよいが、耐酸性を向上させるため、エステル結合を有していなくてもよい。ブロック共重合体ポリアミドは、アミノ基をほとんど有していなくてもよい。
【0125】
ブロック共重合体ポリアミドにおいて、ソフトブロック(ポリエーテルブロック、ポリエステルブロック、ポリカーボネートブロックなど)の数平均分子量は、例えば、100~10000程度の範囲から選択でき、好ましくは300~6000(例えば、300~5000)、さらに好ましくは500~4000(例えば、500~3000)、特に1000~2000程度であってもよい。
【0126】
・ポリアミドの組成
ポリアミドのアミド結合含有量は、ポリアミド当たり、30ユニット以上、40ユニット以上、50ユニット以上、又は60ユニット以上であってよい。ポリアミドのアミド結合含有量は、ポリアミド当たり、200ユニット以下、150ユニット以下、100ユニット以下、75ユニット以下、又は50ユニット以上であってよい。アミド結合含有量は、例えば、数平均分子量を繰り返し単位(1ユニット)の分子量で除することにより、算出できる。
【0127】
ポリアミドのアミノ基濃度は、10mmol/kg以上、10mmol/kg以上、15mmol/kg以上、20mmol/kg以上、又は25mmol/kg以上であってよい。ポリアミドのアミノ基濃度は、500mmol/kg以下、400mmol/kg以下、300mmol/kg以下、又は250mmol/kg以下であってよい。アミノ基濃度が高いと、フィルム被覆材(2)の接着性が向上し得る。
【0128】
ポリアミドのカルボキシ基濃度は、10mmol/kg以上、10mmol/kg以上、15mmol/kg以上、20mmol/kg以上、又は25mmol/kg以上であってよい。ポリアミドのカルボキシ基濃度は、500mmol/kg以下、400mmol/kg以下、300mmol/kg以下、又は250mmol/kg以下であってよい。カルボキシル基濃度が高いと、熱安定性及び/又は長期安定性(連続加工性)に優れ得る。
【0129】
長鎖成分から誘導された繰り返し単位の量は、ポリアミドに対して、10モル%以上、30モル%以上、50モル%以上、又は75モル%以上であってよく、好ましくは50モル%以上である。長鎖成分から誘導された繰り返し単位の量は、ポリアミドに対して、100モル%以下、95モル%以下、90モル%以下、又は85モル%以下であってよい。
【0130】
ジアミン成分から誘導された繰り返し単位の量は、ジカルボン酸成分から誘導された繰り返し単位1モルに対して、0.7モル以上、0.8モル以上、0.9モル以上、0.95モル以上であってよく、1.3モル以下、1.2モル以下、1.1モル以下、又は1.05以下であってよい。
【0131】
ジアミン成分及びジカルボン酸成分から誘導された繰り返し単位の合計量は、ジアミン成分、ジカルボン酸成分、ラクタム成分及びアミノカルボン酸成分から誘導された繰り返し単位の合計量に対して、0モル%以上、5モル%以上、10モル%以上、15モル%以上、20モル%以上、又は、25モル%以上であってよい。ジアミン成分及びジカルボン酸成分から誘導された繰り返し単位の合計量は、ジアミン成分、ジカルボン酸成分、ラクタム成分及びアミノカルボン酸成分から誘導された繰り返し単位の合計量に対しては、100モル%以下、95モル%以下、90モル%以下、85モル%以下、80モル%以下、75モル%以下、70モル%以下、又は60モル%以下であってよく、好ましくは75モル%以下である。
【0132】
ポリアミドがブロック共重合体ポリアミドである場合、ポリアミドブロックの量は、ハードブロックとソフトブロックとの合計に対して、5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上であってよい。ポリアミドブロックの量は、ハードブロックとソフトブロックとの合計に対して、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、又は50重量%以下であってよい。
【0133】
(フィルム被覆材(2)の組成)
フィルム被覆材(2)は、ポリアミドに加えてさらに熱可塑性樹脂、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体などを含んでいてもよい。他の樹脂の割合は、例えば、ポリアミド100重量部に対して、100重量部以下(例えば、1~80重量部程度)、好ましくは2~70重量部、さらに好ましくは2~50重量部、特に30重量部以下(例えば、3~20重量部程度)であってもよい。
【0134】
フィルム被覆材(2)は、必要により、種々の添加剤、例えば、フィラー、安定剤(耐熱安定剤、耐候安定剤など)、着色剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、熱伝導剤などを含んでいてもよい。添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0135】
フィルム被覆材(2)は、上記熱可塑性樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層の他に、基板側の表面に接着層を有していてもよい。接着層は熱可塑性樹脂層の基板側の面の一部又は全部に設けられていればよい。接着層における成分は、慣用の接着剤又は粘着剤の成分であってよく、例えば、塩化ビニル系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、オレフィン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤等が挙げられる。
【0136】
フィルム被覆材(2)は、上記熱可塑性樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層の他に、耐熱性樹脂を主成分とする保護層、熱可塑性樹脂層と保護層との間の接着層を有していてもよい。接着層は保護層との間の界面の一部又は全部に設けられていればよい。保護層における耐熱性樹脂の例としては、フッ素樹脂、オレフィン系樹脂(環状オレフィン系樹脂を含む)、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂(ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドなど)、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂(例えば、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)など)、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、セルロース誘導体、芳香族エポキシ樹脂などが挙げられる。接着層における成分は、慣用の接着剤又は粘着剤の成分であってよく、例えば、塩化ビニル系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、オレフィン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤等が挙げられる。
【0137】
<フィルム被覆基板の製造方法>
本開示におけるフィルム被覆基板の製造方法は、基板(11)と電子部品(12)とをアンダーフィル材(13)により接続させることを含む、実装基板(1)を得る工程(I);及び
前記実装基板(1)をフィルム被覆材(2)で被覆することを含む。
【0138】
[実装基板(1)を得る工程(I)]
実装基板(1)を得る工程(I)は、基板(11)と電子部品(12)とをアンダーフィル材(13)により接続させることを含む。実装基板(1)を得る工程(I)は、基板(11)と電子部品(12)との間の空隙にアンダーフィル材(13)を充填することを含んでもよい。ここで、電子部品(12)は基板に実装されていてよい。実装とは基板に電子部品を載置することを意味し、部品は基板にはんだ付け(例えばクリームはんだ付け)されていてもよい、及び/またはプリント基板のリード線用の穴に部品のリード線が挿入されていてもよい。
【0139】
キャピラリーアンダーフィル材としてのアンダーフィル材(13)の充填は、基板(11)と電子部品(12)との間の空隙にアンダーフィル材(13)を充填することにより行われてよい。基板(11)と電子部品(12)とにより形成される空隙の入り口(例えば、電子部品の縁部分)に硬化前のアンダーフィル材(13)を塗布し、基板(11)と電子部品(12)との間の空隙へ毛細管現象により硬化前のアンダーフィル材(13)を浸透させることにより、アンダーフィル材の充填が行われ得る。当該充填はディスペンサー等を用いて機械的に行われてもよい。その後、充填されたアンファーフィル材(13)を含む実装基板を例えば所定の温度で所定時間加熱させたり、アンダーフィル材(13)に光照射を行ったりすることにより、アンダーフィル材(13)を硬化させ、電子部品と基板とを結合し得る。本開示におけるアンダーフィル材は浸透性に優れ得るため、キャピラリーアンダーフィル材として電子部品実装後の狭ギャップに充填することが可能である。
【0140】
[被覆工程(II)]
被覆工程(II)においては、実装基板(1)をフィルム被覆材(2)で被覆することを含む。被覆することとは、実装基板(1)の少なくとも一部をフィルム被覆材(2)で被覆すればよく、例えば、実装基板(1)両面を被覆しても(又は包み込んで)もよく、実装基板(1)の一方の面全体をしてもよく、実装基板(1)の少なくとも一方の面の一部(例えば所定部分(電子部品の搭載領域、配線領域など))を被覆してもよい。フィルム被覆材(2)がアンダーフィル材(13)の一部に接触するように被覆されていることが好ましい。実装基板(1)の(実装部を含む)一方の面又は両方の面をフィルム被覆材(2)で覆い、加熱軟化又は加熱溶融すると、フィルム被覆材(2)全体に亘り緊密に被覆でき、実装基板(1)を有効に保護できる。フィルム被覆材(2)が基板側の表面に接着層を有している場合、真空成形技術(ホットメルト法)を用いてもよいが、真空成形技術(ホットメルト法)を用いずとも、接着層を介してフィルム被覆材(2)と実装基板(1)の少なくとも一部とが接着することでフィルム被覆基板を得ることができる。
【0141】
実装基板(1)とフィルム被覆材(2)との密着性を高めるために、実装基板(1)をフィルム被覆材(2)(例えば、加熱軟化したフィルム被覆材(2))で被覆した後、減圧下で実装基板(1)とフィルム被覆材(2)との間の気体を排出して密着させてもよい。実装基板(1)とフィルム被覆材(2)との密着性を高めるために、差圧を利用する真空成形により、実装基板(1)をフィルム被覆材(2)(例えば、加熱軟化したフィルム被覆材(2))で被覆してもよい。真空成形の例としては、布施真空社のTOM (Three-dimension Over-lay Method)又はneo-TOM、ナビタス社のNATS(Navitas Air-heat Transfer System)、浅野研究所社のTFH等が挙げられる。
【0142】
<フィルム被覆基板の用途>
上記フィルム被覆基板は、種々の装置に備えることができる。上記フィルム被覆基板は、優れた耐冷熱衝撃性(例えば冷熱衝撃後の導通性)を有するため、車載用装置のような過酷な環境(例えば高温環境及び/又は低温環境)に置かれ得る装置の用途に適している。そのような装置、特に車載用装置の例としては、制御ECU、各種センサー、車載用二次電池、スピーカー、ディスプレイ、カメラ、その他各種モジュール等が挙げられる。
【実施例0143】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、特に特記がない限り、部及び%は重量基準である。
【0144】
[アンダーフィル]
下記表1に示す原料を混合して硬化前のアンダーフィル材(UF)1~3を得た。
【表1】
【0145】
[フィルム被覆材]
用いたフィルム被覆材を下記表2に示す。
【表2】
【0146】
[フィルム被覆基板]
(実施例1)
BGA(Ball Grid Array)実装基板において、半導体素子(サイズ:20×20mm)と基板との隙間にアンダーフィル材(UF1)を塗布、浸透させた。その後、150℃で3分間加熱硬化させ、アンダーフィル材(UF1)で封止した実装基板を得た。その後、真空成型装置(加熱温度120~170℃、圧力70kPa以下)を用いて、得られた実装基板をフィルム被覆材(ポリアミド1)で被覆して、フィルム被覆基板を作製した。なお、得られたフィルム被覆基板において、半導体素子と基板との隙間からはみ出たアンダーフィル材と、フィルム被覆材とが接触していた。
【0147】
(実施例2~6、比較例1)
用いるアンダーフィル材と及びフィルム被覆材を表3に記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして、フィルム被覆基板を作製した。比較例1においてはアンダーフィル材を用いずに、フィルム被覆基板を作製した。
【0148】
(耐水性)
作製したフィルムフィルム被覆基板を23℃の水に100時間浸漬し、目視によりフィルムの剥がれの有無を評価した。異常がないものを〇、部分的にフィルムの剥がれが確認されたものを△とした。結果を表3に示す。
【0149】
(導通性)
デジタルマルチメーターを用いて回路基板の導通確認を行った。導通が確認されたものを〇、断線していたものを×とした。結果を表3に示す。
【0150】
(耐久性評価条件)
フィルム被覆基板に冷熱衝撃(-40~125℃各30分×3500サイクル)を加えた後、回路基板の導通性と耐水性を評価した。結果を表3に示す。
【表3】
【0151】
比較例1の結果から、アンダーフィル材を用いないフィルム被覆基板は冷熱衝撃後、断線されており耐冷熱衝撃性を有しないことがわかった。耐冷熱衝撃性を発現するためにはアンダーフィル材が必要であることがわかった。
実施例1、2及び3の結果から、UF1を用いたフィルム被覆基板が冷熱衝撃後の接着性に優れていることがわかった(実施例2及び3は実施例1より少し低いレベルであった)。これはUF1の組成が好適に寄与しているためと考えられる。
実施例1、4、5及び6の結果から、ポリアミド1又はポリアミド2を用いたフィルム被覆基板が冷熱衝撃後の接着性に優れていることがわかった(実施例5及び6は実施例1及び4より少し低いレベルであった)。これはポリアミド1及びポリアミド2の組成及び高融点(冷熱衝撃試験の温度以上)が好適に寄与しているためと考えられる。
本開示のフィルム被覆基板は、電子部品装置の一部として利用することができ、特に車載用装置のような過酷な環境(例えば高温環境及び/又は低温環境)に置かれ得る装置の用途に適している。