IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ウエノフードテクノの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169157
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】食品添加用被覆アミノ酸
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/3526 20060101AFI20221101BHJP
   A23L 3/3508 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
A23L3/3526 501
A23L3/3508
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075011
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】516089979
【氏名又は名称】株式会社ウエノフードテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】山崎 紀子
(72)【発明者】
【氏名】古川 陽二郎
【テーマコード(参考)】
4B021
【Fターム(参考)】
4B021LA44
4B021LW01
4B021LW03
4B021LW04
4B021MK16
4B021MK20
4B021MK21
4B021MK23
4B021MP02
4B021MP10
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、アミノ酸の含有率が高く、加熱前のアミノ酸の溶出が抑制された食品添加用被覆アミノ酸を提供することにある。
【解決手段】被覆を有する酸性アミノ酸粒子を含み、被覆を構成する被覆材が硬化油を主成分とし、ポリグリセリンポリリシノレートを含有するものである、食品添加用被覆アミノ酸を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆を有する酸性アミノ酸粒子を含み、被覆を構成する被覆材が硬化油を主成分とし、ポリグリセリンポリリシノレートを含有するものである、食品添加用被覆アミノ酸。
【請求項2】
酸性アミノ酸がグルタミン酸およびアスパラギン酸からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1に記載の食品添加用被覆アミノ酸。
【請求項3】
酸性アミノ酸粒子の平均粒子径が10~50μmである、請求項1または2に記載の食品添加用被覆アミノ酸。
【請求項4】
被覆材全重量に対するポリグリセリンポリリシノレートの割合が1~20重量%である、請求項1~3のいずれかに記載の食品添加用被覆アミノ酸。
【請求項5】
被覆アミノ酸全重量に対する酸性アミノ酸粒子の割合が30~65重量%である、請求項1~4のいずれかに記載の食品添加用被覆アミノ酸。
【請求項6】
被覆アミノ酸の平均粒子径が100~400μmである、請求項1~5のいずれかに記載の食品添加用被覆アミノ酸。
【請求項7】
下記計算式で表される被覆アミノ酸の圧縮度が7%未満である、請求項1~6のいずれかに記載の食品添加用被覆アミノ酸:
圧縮度(%)=[固めかさ密度(g/cm)-ゆるめかさ密度(g/cm)]/固めかさ密度(g/cm) ×100。
【請求項8】
被覆アミノ酸のゆるめかさ密度が0.55~0.85g/cmであり、固めかさ密度が0.60~0.90g/cmである、請求項1~7のいずれかに記載の食品添加用被覆アミノ酸。
【請求項9】
25℃の水中におけるアミノ酸の溶出率が15%以下である、請求項1~8のいずれかに記載の食品添加用被覆アミノ酸。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の食品添加用被覆アミノ酸と、粉末状有機酸、その塩、アミノ酸(酸性アミノ酸を除く)および乳化剤からなる群より選ばれる1種以上を含有する、食品用日持ち向上剤。
【請求項11】
粉末状有機酸が、酢酸、フマル酸、アジピン酸、クエン酸、コハク酸、グルコン酸、リンゴ酸、プロピオン酸およびソルビン酸から選択される1種以上であり、その塩が、酢酸、フマル酸、アジピン酸、クエン酸、コハク酸、グルコン酸、リンゴ酸、プロピオン酸およびソルビン酸のナトリウム塩、カリウム塩およびカルシウム塩から選択される1種以上であり、アミノ酸(酸性アミノ酸を除く)が、グリシンおよび/またはアラニンであり、乳化剤がグリセリン脂肪酸エステルおよび/またはショ糖脂肪酸エステルである、請求項10に記載の食品用日持ち向上剤。
【請求項12】
粉末状有機酸、その塩、アミノ酸(酸性アミノ酸を除く)および乳化剤からなる群より選ばれる1種以上の割合が、食品添加用被覆アミノ酸100重量部に対し、1~500重量部である、請求項10または11に記載の食品用日持ち向上剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品に使用されるアミノ酸を、硬化油を主成分とする被覆材で被覆した食品添加用被覆アミノ酸に関する。
【背景技術】
【0002】
ソーセージやハンバーグ等の食肉加工品や蒲鉾やはんぺん等の水産練り製品の製造においては、従来から食品添加物である有機酸を添加することによって保存性の向上が図られている。しかしながら、有機酸を食品原料に直接添加すると、pHの低下に伴い、製品の弾力が失われ、最終製品の食感が損なわれるばかりか、歩留りも低下する。そのため、有機酸を硬化油等でコーティングした被覆有機酸を用いることによって、加熱前の食品原料のpHを低下させることなく、加熱工程により有機酸が露出しpHが低下することで、食感に与える影響を最小限に留めつつ、加工食品の保存性を改善させる技術が用いられてきた。
【0003】
一方、食品添加物であるグルタミン酸等の酸性アミノ酸は、食品の調味目的以外に上記有機酸と同様に食品の保存性改善を目的として利用される場合がある。しかしながら、酸性アミノ酸の添加によっても、pHが低下するため、有機酸と同様の理由から被覆アミノ酸が求められていた。
【0004】
特許文献1には、有機酸を、硬化油を主成分とするコーティング剤中にコーティング剤の1~1/10倍の重量になるように加え、噴霧冷却法によりコーティング粒子を得る、pH低下用被覆有機酸の製法が記載されている。
【0005】
特許文献2には、被覆された固体アミノ酸を利用する魚肉および畜肉製品の保存方法が記載されている。
【0006】
しかしながら、グルタミン酸等の酸性アミノ酸を被覆有機酸の製造方法として一般的な噴霧冷却法に供すると、原料溶液(溶融した硬化油とアミノ酸粒子の混合溶液)の粘度が著しく上昇し、噴霧が困難となるため、酸性アミノ酸の含有率を上昇させることができなかった。したがって、被覆アミノ酸を用いて食品の保存性を改善するためには、多量に添加する必要があり、食品の味質への影響が避けられなかった。また、噴霧冷却法によって得られた被覆アミノ酸は、酸性アミノ酸の含有率を抑えても、溶出率が高く、食品の加熱工程前にpHを低下させないという課題を解消し得るものではなかった。
【0007】
従って、酸性アミノ酸の含有率が高く、加熱前のアミノ酸の溶出が抑制された被覆アミノ酸が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭45-32217号公報
【特許文献2】特公昭48-17065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、アミノ酸の含有率が高く、加熱前のアミノ酸の溶出が抑制された食品添加用被覆アミノ酸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、被覆材に特定の乳化剤を含有させることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち本発明は、被覆を有する酸性アミノ酸粒子を含み、被覆を構成する被覆材が硬化油を主成分とし、ポリグリセリンポリリシノレートを含有するものである、食品添加用被覆アミノ酸を提供する。
【0012】
本発明はまた、上記食品添加用被覆アミノ酸と、粉末状有機酸、その塩、アミノ酸(酸性アミノ酸を除く)および乳化剤からなる群より選ばれる1種以上を含有する、食品用日持ち向上剤を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本明細書において、「被覆材が硬化油を主成分とする」とは、被覆材が被覆材全重量に対して硬化油を80重量%以上含有することを意味する。本発明においては、被覆材全重量に対して硬化油を85重量%以上含有する被覆材を用いることが好ましい。
【0015】
本発明の食品添加用被覆アミノ酸は、グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸粒子を、硬化油を主成分とする被覆材で被覆したもの(それぞれ被覆グルタミン酸、被覆アスパラギン酸と称する)を含み得る。その中でも、保存効果、調味効果、食品の味質への影響および食品のpH調整能力の点から被覆グルタミン酸がより好ましい。酸性アミノ酸粒子は、グルタミン酸およびアスパラギン酸の混合物を含む粒子であってもよい。食品添加用被覆アミノ酸は、被覆グルタミン酸および被覆アスパラギン酸の混合物を含んでもよい。
【0016】
本発明の食品添加用被覆アミノ酸に含まれる酸性アミノ酸粒子の割合は特に限定されず、使用するアミノ酸の種類によっても異なり得るが、被覆アミノ酸全量に対する酸性アミノ酸粒子の割合は、30~65重量%であるのが好ましく、35~63重量%であるのがより好ましく、40~62重量%であるのがさらに好ましい。例えば、被覆アミノ酸に含まれる酸性アミノ酸粒子がグルタミン酸の場合であれば、被覆グルタミン酸全量に対するグルタミン酸粒子の割合は、40~60重量%であるのが好ましく、50~58重量%であるのがより好ましく、52~57重量%であるのがさらに好ましい。
【0017】
本発明の食品添加用被覆アミノ酸に含まれる酸性アミノ酸粒子の平均粒子径は、10~50μmが好ましく、15~45μmがより好ましく、20~40μmがさらに好ましい。酸性アミノ酸粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(マスターサイザー(登録商標)3000、マルバーン社製)で測定した値である。
【0018】
本発明の食品添加用被覆アミノ酸の被覆材の主成分として用いる硬化油としては、融点50~70℃程度のものが好ましく、53~65℃であるのがより好ましく、55~60℃であるのがさらに好ましい。硬化油の種類としては菜種硬化油、大豆硬化油、パーム硬化油、牛脂硬化油、やし油硬化油、ニシン油硬化油等が挙げられる。その中でも入手が容易で、融解し易く、かつ流通安定性が良いパーム硬化油または牛脂硬化油、特にパーム硬化油が好ましい。
【0019】
本発明の食品添加用被覆アミノ酸の被覆材は、被覆性を向上させるための成分として、ポリグリセリンポリリシノレートを含有する。グリセリンの重合度は、特に限定されないが、重合度3~10であるものが好ましく、重合度4~8であるものがより好ましい。被覆材全重量に対するポリグリセリンポリリシノレートの割合は、1~20重量%であるのが好ましく、2~15重量%であるのがより好ましく、3~10重量%であるのがさらに好ましく、4~8重量%であるのが特に好ましい。
【0020】
その他の補助的成分は特に必要としないが、目的に応じて、レシチン、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ミツロウ、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、第三リン酸カルシウム等の補助的成分、好ましくはミツロウを含有させてもよい。これらの補助的成分を含有させる場合、被覆材全重量に対して0.1~5重量%程度、好ましくは1~3重量%、含有させるのがよい。
【0021】
被覆アミノ酸の調製には、噴霧冷却法、コーティングパン法、気中懸濁被覆法、真空蒸着被覆法、静電的合体法、融解分散冷却法等の方法が採用される。例えば、噴霧冷却法を採用する場合、加熱溶融した硬化油に、必要によりその他の補助的成分を添加して被覆材を作製した後、該被覆材に酸性アミノ酸粒子を添加して十分に混合して均一に懸濁させた後、空気中に噴霧して冷却固化することによって調製される。
【0022】
例えば、本発明の食品添加用被覆アミノ酸の製造方法は、以下の工程:
a)硬化油を融点以上の温度で加熱溶融し、ポリグリセリンポリリシノレートを添加し、被覆材を得る工程、
b)得られた被覆材に酸性アミノ酸粒子を混合し、スラリーを得る工程、
c)得られたスラリーを噴霧冷却することにより、酸性アミノ酸粒子を被覆する工程、および
d)得られた被覆アミノ酸を、硬化油の融点より低い温度で加温する工程
を含み得る。
【0023】
一つの好ましい態様において、本発明の食品添加用被覆アミノ酸の製造方法は、以下の工程:
a)融点50~70℃の硬化油を融点以上の温度で加熱溶融し、ポリグリセリンポリリシノレートを添加し、被覆材を得る工程、
b)得られた被覆材に酸性アミノ酸粒子を混合し、スラリーを得る工程、
c)得られたスラリーを回転数3500~7000rpmのディスクに滴下し、45℃以下の雰囲気中に噴霧且つ冷却することにより、酸性アミノ酸粒子を被覆する工程、および
d)得られた被覆アミノ酸を、該油脂の温度が40~47℃に達するまで加温する工程
を含む方法である。
【0024】
さらに、上記の製造方法をより具体的に説明する。まず、工程a)において、融点50~70℃の硬化油を融点以上の温度、例えば75~95℃で加熱溶融し、ポリグリセリンポリリシノレートを添加し、被覆材とする。
【0025】
工程b)において、a)工程で得られた被覆材に、例えばグルタミン酸粒子を混合し、スラリーとする。
【0026】
次いで、工程c)において、スラリーを噴霧冷却装置(ロータリーアトマイザ方式)のディスクに滴下する。噴霧冷却装置のディスク回転数は、3500~7000rpmが好ましく、3700~6800rpmがより好ましく、3900~6600rpmがさらに好ましい。ディスク回転数が3500rpmより遅い場合、安定して球状に噴霧できない傾向があり、7000rpmより速い場合、粒子径が小さくなる傾向がある。噴霧冷却装置内の温度は45℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましい。温度が45℃を超える場合、被覆が不十分となるおそれがある。
【0027】
工程d)において、工程c)で得られた被覆アミノ酸を、その温度が40~47℃、好ましくは41~46℃、より好ましくは42~45℃に達するまで加温する。被覆アミノ酸の全体がかかる温度に到達すればよく、該温度で一定時間保持することを要するものではない。また、一度加温処理を行えば、食品添加用被覆アミノ酸を溶融させない限り、該処理の効果(耐ケーキング性等の所望の粉体特性)が失われることはない。加温の温度および時間は、被覆アミノ酸の量に応じて適宜設定し得る。例えば、20kg程度の量の被覆アミノ酸を一まとまりとして加温する場合、45℃の温度条件下に24時間程度おくことにより、被覆アミノ酸の温度を上記の範囲内にすることができる。被覆アミノ酸の温度が47℃を超える場合、加温中に油脂が溶融するおそれがあり、40℃未満の場合、ケーキングが生じやすい食品添加用被覆アミノ酸となる傾向がある。
【0028】
本発明の食品添加用被覆アミノ酸は、平均粒子径が100~400μmとなるように調製され、平均粒子径が130~370μmであるのが好ましく、平均粒子径が150~350μmであるのがより好ましい。本発明の食品添加用被覆アミノ酸の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(マスターサイザー(登録商標)3000、マルバーン社製)で測定した値である。
【0029】
本発明の食品添加用被覆アミノ酸の安息角は、25~55°であり、好ましくは27~50°であり、より好ましくは30~45°である。安息角が25°未満の場合、該被覆アミノ酸の飛散性が高くなる傾向がある。55°を超える場合、流動性が低くなりハンドリングが悪くなる傾向がある。
【0030】
本発明の食品添加用被覆アミノ酸の圧縮度は、7%未満であり、好ましくは6.5%未満であり、より好ましくは4~6%である。圧縮度が7%以上の場合、該被覆アミノ酸の飛散性が高くなる傾向がある。圧縮度は、下記計算式により、算出された数値である。
圧縮度(%)=[固めかさ密度(g/cm)-ゆるめかさ密度(g/cm)]/固めかさ密度(g/cm) ×100
【0031】
上記圧縮度を算出するためのゆるめかさ密度および固めかさ密度は、好ましくは、ゆるめかさ密度が0.55~0.85g/cm、固めかさ密度が0.60~0.90g/cmであり、より好ましくは、ゆるめかさ密度が0.60~0.80g/cm、固めかさ密度が0.65~0.85g/cmであり、さらに好ましくは、ゆるめかさ密度が0.65~0.78g/cm、固めかさ密度が0.70~0.83g/cmである。
【0032】
上記、安息角、ゆるめかさ密度および固めかさ密度は、パウダテスタ(登録商標)(PT-X、ホソカワミクロン株式会社製)により測定した数値である。
【0033】
本発明の食品添加用被覆アミノ酸は、25℃の水中におけるアミノ酸の溶出率が15%以下であるのが好ましく、14.5%以下であるのがより好ましく、1~14%であるのがさらに好ましい。溶出率が15%を超える場合、食品の味質と物性に与える影響が増大する傾向がある。
【0034】
本発明の食品添加用被覆アミノ酸の25℃の水中におけるアミノ酸の溶出率は、下記の方法により測定した数値である。
【0035】
(溶出率の測定)
食品添加用被覆アミノ酸0.1gをイオン交換水30mlに加え、80℃で溶解させた後、イオン交換水を30ml加え、25℃になるまで冷却する。冷却後、自動滴定装置(COM-1700、株式会社HIRANUMA)を用いて0.1mol/l水酸化ナトリウムで中和滴定することにより、アミノ酸全量を測定する。
次に、イオン交換水500mlにラウリル硫酸ナトリウム1gを溶解させ、三枚翼プロペラを用いて25℃、400rpmの条件で攪拌しながら、食品添加用被覆アミノ酸1gを加え、10分間撹拌する。撹拌後の懸濁液60mlを濾紙で濾過した後、濾液40gを正確に量りとり、自動滴定装置を用いて0.01mol/l水酸化ナトリウムで中和滴定することにより、アミノ酸の溶出量を測定する。
アミノ酸全量と溶出量から、下記計算式により溶出率を算出する。溶出率はアミノ酸全量から溶出したアミノ酸量の割合を表す。
溶出率(%)=(食品添加用被覆アミノ酸1g当たりのアミノ酸溶出量)/(食品添加用被覆アミノ酸1g当たりのアミノ酸全量)×100
【0036】
本発明の食品添加用被覆アミノ酸は、粉末状有機酸、その塩、アミノ酸(酸性アミノ酸を除く)および乳化剤からなる群より選ばれる1種以上と混合することにより、食品用日持ち向上剤とすることができる。
【0037】
本発明の食品添加用被覆アミノ酸と混合し得る粉末状有機酸およびその塩としては、食品に使用可能なものであれば、特に限定されないが、例えば、酢酸、フマル酸、アジピン酸、クエン酸、コハク酸、グルコン酸、リンゴ酸、プロピオン酸、ソルビン酸およびこれらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩が挙げられる。
【0038】
本発明の食品添加用被覆アミノ酸と混合し得るアミノ酸としては、中性アミノ酸または塩基性アミノ酸、特に、グリシン、アラニンが挙げられる。
【0039】
本発明の食品添加用被覆アミノ酸と混合し得る乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルが挙げられる。
【0040】
食品用日持ち向上剤における、粉末状有機酸、その塩、アミノ酸(酸性アミノ酸を除く)、乳化剤からなる群より選ばれる1種以上の割合は、上記食品添加用被覆アミノ酸100重量部に対し、1~500重量部が好ましく、5~450重量部がより好ましく、10~400重量部がさらに好ましい。
【0041】
食品用日持ち向上剤を調製する場合、本発明の食品添加用被覆アミノ酸、粉末状有機酸および/またはその塩、アミノ酸(酸性アミノ酸を除く)、乳化剤以外に、目的に応じて、他の粉末成分を配合してもよい。配合可能な粉末成分としては、食品に添加可能なものであれば特に限定されないが、例えば、チアミンラウリル硫酸塩、リゾチーム等の抗菌剤、澱粉、デキストリン等の賦形剤、第三リン酸カルシウム、微粒二酸化ケイ素、プルラン、乳酸カルシウム、炭酸カルシウム等の固結防止剤が例示される。
【0042】
本発明の食品添加用被覆アミノ酸が適用可能な食品としては、加熱工程を含む加工食品であればいずれにも適用可能であるが、例えば、ソーセージ、ハンバーグ、肉団子、餃子、シュウマイ、コロッケ、トンカツ、フライドチキン、唐揚げ等の食肉加工品類や、蒲鉾、竹輪、はんぺん、魚肉ハム、魚肉ソーセージなどの水産練り製品類、うどん、そば、中華麺等の麺類、食パン、フランスパン等のパン類、フィリング類等が例示される。
【0043】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例0044】
試験例1
酸性アミノ酸粒子の調製
グルタミン酸(四川同晟生物医葯有限公司製)をピンミル(コロプレックスミル160Z、ホソカワミクロン株式会社製)により、5000rpmで粉砕し、グルタミン酸粒子を得た。
【0045】
粉砕前のグルタミン酸および粉砕後のグルタミン酸粒子の平均粒子径(D50)をレーザー回折式粒度分布測定装置(マスターサイザー(登録商標)3000、マルバーン社製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
実施例1~5および比較例1~6
食品添加用被覆アミノ酸の調製
表2-1および表2-2に示す割合の材料を被覆アミノ酸の調製に供した。尚、各被覆アミノ酸の調製には、上記試験例で得られたグルタミン酸粒子の他、下記材料を用いた。
【0048】
・パーム硬化油(融点:58℃、横関油脂工業株式会社製)
・ミツロウ(融点:60~67℃、三木化学工業株式会社製)
・乳化剤1(ヘキサグリセリンポリリシノレート ポエムPR-300、理研ビタミン株式会社製)
・乳化剤2(モノグリセリン脂肪酸エステル ポエムM200、理研ビタミン株式会社製)
【0049】
90℃で加熱溶融したパーム硬化油にミツロウおよび乳化剤を添加した被覆材に、グルタミン酸粒子を加え、回転円盤型噴霧冷却装置(ロータリーアトマイザ方式)を用いて回転数6000rpm、直径75mmのディスクに、流量500g/mにて滴下し、送風温度10℃、庫内温度16~20℃の装置内に噴霧し、被覆グルタミン酸A~Gを得た。尚、比較例2、3、5および6は、原料溶液の粘度が高く、噴霧することができず、被覆グルタミン酸が得られなかった。
【0050】
【表2-1】

【0051】
【表2-2】

【0052】
平均粒子径(D50)の測定
本発明の食品添加用被覆アミノ酸における平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(マスターサイザー(登録商標)3000、マルバーン社製)で測定した値である。
【0053】
安息角、ゆるめかさ密度、固めかさ密度および圧縮度の測定
パウダテスタ(登録商標)(PT-X、ホソカワミクロン株式会社製)により測定した。安息角は、目開き710μmの篩を用い、振動時間180秒間の条件で測定した。ゆるめかさ密度は、目開き710μmの篩を用い、静置した100mL容円筒形容器に、直上からサンプルを振幅1.5mm、動作時間30秒間の条件で供給し、過剰サンプルは摺り切り、内容量を精秤することにより求めた。固めかさ密度は、ストローク幅18mmで180回タッピングした後の比重として求めた。圧縮度は、下記計算式により算出した。結果を表3に示す。
圧縮度(%)=[固めかさ密度(g/cm)-ゆるめかさ密度(g/cm)]/固めかさ密度(g/cm) ×100
【0054】
溶出率の測定
被覆グルタミン酸A~G0.1gにイオン交換水を30mL加えた後、80℃で溶解させた。イオン交換水を30mL加え、室温になるまで冷却(約30分間)した。自動滴定装置(COM-1700、株式会社HIRANUMA)を用いて0.1mol/l 水酸化ナトリウムを用いた中和滴定によりグルタミン酸全量を測定した。次いで1Lのビーカーにイオン交換水を500ml入れ、ラウリル硫酸ナトリウム1gを溶解させ、室温で三枚翼プロペラ(穴径×羽根径:6×45mm)を用いて400rpmで攪拌した。これに被覆グルタミン酸A~G約1gを投入し、10分間撹拌した。撹拌後の懸濁液60mlを採取し、濾紙で濾過した後、濾液40gを正確に量りとり、自動滴定装置を用いて0.01mol/L水酸化ナトリウムで中和滴定することによりグルタミン酸の溶出量を測定した。グルタミン酸全量と溶出量から、下記計算式により溶出率を算出した。結果を表3に示す。
溶出率(%)=(被覆グルタミン酸1g当たりのグルタミン酸溶出量)/(被覆グルタミン酸1g当たりのグルタミン酸全量)×100
【0055】
【表3】
【0056】
本発明の被覆グルタミン酸は溶出率および圧縮度が低く、酸性アミノ酸であるグルタミン酸が十分に被覆されていることが確認された。