IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国電力株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-機械学習装置及び接続相判定装置 図1
  • 特開-機械学習装置及び接続相判定装置 図2
  • 特開-機械学習装置及び接続相判定装置 図3
  • 特開-機械学習装置及び接続相判定装置 図4
  • 特開-機械学習装置及び接続相判定装置 図5
  • 特開-機械学習装置及び接続相判定装置 図6
  • 特開-機械学習装置及び接続相判定装置 図7
  • 特開-機械学習装置及び接続相判定装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169162
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】機械学習装置及び接続相判定装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
H02J3/00 170
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075020
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】元吉 庸泰
(72)【発明者】
【氏名】星島 巧
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】三相交流の配電線路に新たな負荷を接続した後の三相間の電圧バランスをより効率的に予測するための学習モデルを構築できる機械学習装置及び該学習モデルを用いた接続相判定装置を提供する。
【解決手段】機械学習装置1は、三相交流の配電線路の線路特性情報と、新たな負荷を接続する前の配電線路の三相間の電圧バランスと、新たな負荷の種別情報と、新たな負荷の電力情報と、新たな負荷の位置情報と、新たな負荷の接続相情報と、を入力データとして取得する入力データ取得部11と、新たな負荷を接続した後の配電線路の三相間の電圧バランスをラベルとして取得するラベル取得部12と、入力データとラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、新たな負荷を接続した後の配電線路の三相間の電圧バランスを予測するための学習モデルを構築する学習モデル構築部14と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流の配電線路のインピーダンスを少なくとも含む線路特性情報と、新たな負荷を接続する前の前記配電線路の三相間の電圧バランスと、前記新たな負荷の種別情報と、前記新たな負荷の電力情報と、前記新たな負荷の位置情報と、前記新たな負荷の接続相情報と、を含むデータ群を入力データとして取得する入力データ取得部と、
前記新たな負荷を接続した後の前記配電線路の三相間の電圧バランスをラベルとして取得するラベル取得部と、
前記入力データと前記ラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、前記新たな負荷を接続した後の前記配電線路の三相間の電圧バランスを予測するための学習モデルを構築する学習モデル構築部と、を備える機械学習装置。
【請求項2】
前記種別情報は、前記新たな負荷が分散型電源を有するか否かを示す情報を含む請求項1に記載の機械学習装置。
【請求項3】
前記電力情報は、時間帯毎の電力情報を含む請求項1又は2に記載の機械学習装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の機械学習装置で構築した前記学習モデルを用いた接続相判定装置であって、
前記線路特性情報と、前記新たな負荷を接続する前の前記配電線路の三相間の電圧バランスと、前記新たな負荷の種別情報と、前記新たな負荷の電力情報と、前記新たな負荷の位置情報と、を含むデータ群を判定用データとして取得する判定用データ取得部と、
前記新たな負荷が接続される候補となる複数の異なる候補接続相を前記接続相情報として生成する候補接続相生成部と、
前記判定用データと、前記学習モデルと、前記候補接続相生成部によって生成された前記候補接続相のそれぞれと、に基づいて、前記新たな負荷を前記候補接続相のそれぞれに接続した後の前記配電線路の三相間の電圧バランスを予測する電圧バランス予測部と、
前記電圧バランス予測部による予測結果に基づいて、電圧不平衡率を算出する電圧不平衡率算出部と、
前記電圧不平衡率算出部によって算出される前記電圧不平衡率に基づいて、前記候補接続相生成部によって生成された複数の前記候補接続相から前記電圧不平衡率が低くなる前記候補接続相を選択する接続相選択部と、を備える接続相判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械学習装置及び接続相判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、三相交流の配電線路への新たな負荷の接続を支援する技術が知られている。この種の技術が記載されているものとして例えば特許文献1及び2がある。特許文献1には、電圧不平衡率が最大になっている計測時刻と線間毎の電圧の高低特定の組み合わせとに基づいて柱上変圧器の接続相を決定する技術が記載されている。特許文献2には、配電系統の複数時間断面の計測情報、系統構成と線路インピーダンス、負荷定格容量と複数時間断面の負荷需要率、及び不平衡率許容値から線間電圧変化量上下限値と負荷移動量上下限値を算出し、算出結果に基づいて、電圧不平衡の最小化を目的関数とする最適化計算により、電圧不平衡を解消する負荷移動量を求める技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-5893号公報
【特許文献2】特開2009-124913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、三相交流の配電線路に接続する新たな負荷が単相負荷である場合、三相の配電線のうち何れか二相の配電線に負荷を接続することになるので、新たな負荷の接続後の三相間の電圧バランスを考慮して接続相を選択する必要がある。しかし、三相間の電圧バランスは、各相の線路特性の差や負荷が接続される接続相の偏り、負荷の種類等の様々な要素の影響を受ける。また、配電線路には多数の変圧器を介して様々な負荷が接続されており、既設の負荷が接続される接続相や負荷の種類について把握することは困難な状況である。このため、新たな負荷を接続した後の三相間の電圧バランスを事前に予測することは容易ではない。特許文献1及び2には三相間の電圧バランスを改善するような負荷の接続相等を決定する判定が記載されているが、新たな負荷を接続した場合の三相間の電圧バランスをより効率的に予測するという点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、三相交流の配電線路に新たな負荷を接続した後の三相間の電圧バランスをより効率的に予測するための学習モデルを構築できる機械学習装置及び該学習モデルを用いた接続相判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、三相交流の配電線路のインピーダンスを少なくとも含む線路特性情報と、新たな負荷を接続する前の前記配電線路の三相間の電圧バランスと、前記新たな負荷の種別情報と、前記新たな負荷の電力情報と、前記新たな負荷の位置情報と、前記新たな負荷の接続相情報と、を含むデータ群を入力データとして取得する入力データ取得部と、前記新たな負荷を接続した後の前記配電線路の三相間の電圧バランスをラベルとして取得するラベル取得部と、前記入力データと前記ラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、前記新たな負荷を接続した後の前記配電線路の三相間の電圧バランスを予測するための学習モデルを構築する学習モデル構築部と、を備える機械学習装置に関する。
【0007】
前記種別情報は、前記新たな負荷が分散型電源を有するか否かを示す情報を含む。
【0008】
前記電力情報は、時間帯毎の電力情報を含む。
【0009】
また本発明は、前記機械学習装置で構築した前記学習モデルを用いた接続相判定装置であって、前記線路特性情報と、前記新たな負荷を接続する前の前記配電線路の三相間の電圧バランスと、前記新たな負荷の種別情報と、前記新たな負荷の電力情報と、前記新たな負荷の位置情報と、を含むデータ群を判定用データとして取得する判定用データ取得部と、前記新たな負荷が接続される候補となる複数の異なる候補接続相を前記接続相情報として生成する候補接続相生成部と、前記判定用データと、前記学習モデルと、前記候補接続相生成部によって生成された前記候補接続相のそれぞれと、に基づいて、前記新たな負荷を前記候補接続相のそれぞれに接続した後の前記配電線路の三相間の電圧バランスを予測する電圧バランス予測部と、前記電圧バランス予測部による予測結果に基づいて、電圧不平衡率を算出する電圧不平衡率算出部と、前記電圧不平衡率算出部によって算出される前記電圧不平衡率に基づいて、前記候補接続相生成部によって生成された複数の前記候補接続相から前記電圧不平衡率が低くなる前記候補接続相を選択する接続相選択部と、を備える接続相判定装置に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、三相交流の配電線路に新たな負荷を接続した後の三相間の電圧バランスをより効率的に予測するための学習モデルを構築できる機械学習装置及び該学習モデルを用いた接続相判定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る接続相判定システムの全体構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る接続相判定システムが用いられる配電系統を示す概略図である。
図3】本発明の一実施形態に係る接続相判定システムが用いられる配電線路の夜間の電圧バランスを示すグラフである。
図4】本発明の一実施形態に係る接続相判定システムが用いられる配電線路の日中の電圧バランスを示すグラフである。
図5】本発明の一実施形態に係る機械学習装置の機能ブロック図である。
図6】本発明の一実施形態に係る接続相判定装置の機能ブロック図である。
図7】本発明の一実施形態に係る機械学習装置の動作のフローチャートを示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る接続相判定装置の動作のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、接続相判定システム100の全体構成を示す図である。図2は、本実施形態に係る接続相判定システム100が用いられる三相交流の配電系統3を示す概略図である。
【0013】
接続相判定システム100は、三相交流の配電線路30に新たな負荷6を接続した後の配電線路30の三相間の電圧バランスを予測し、新たな負荷6を接続する接続相を判定するためのシステムである。まず、接続相判定システム100について説明する前に、接続相判定システム100が用いられる配電系統3について説明する。
【0014】
配電系統3は、変電所4と、三相交流の配電線路30と、配電線路30を区分する3つの開閉器40である開閉器41,42,43と、を備える。図2に示す配電系統3では、三相交流は、変電所4から配電線路30の末端Xに向かって流れる。
【0015】
図2に示すように、開閉器41,42,43は、変電所4から末端Xに向かってこの順に所定の間隔を空けて配電線路30に設けられる。即ち、配電線路30は、開閉器41と開閉器42の間の区間Aと、開閉器42と開閉器43の間の区間Bと、開閉器43と配電線路30の末端Xの間の区間Cに分けられる。なお、開閉器40には、配電線路30を流れる電流や電圧等を計測可能な機能が設けられる。
【0016】
配電線路30は、三相の配電線である赤相配電線31、白相配電線32、青相配電線33によって構成される。区間A~Cのそれぞれの配電線路30には、多数の変圧器5が接続される。
【0017】
変圧器5は、配電線路30から負荷6に電力を供給するために三相交流を降圧する。変圧器5は、赤相配電線31、白相配電線32、及び青相配電線33のうちいずれか二相の配電線に接続される。図2に示す配電線路30の区間Bには、変圧器51及び変圧器52がそれぞれ赤相配電線31と白相配電線32に接続され、変圧器53が白相配電線32と青相配電線33に接続され、変圧器54が青相配電線33と赤相配電線31に接続される。以下、本明細書において、負荷6が変圧器5を介して接続される二相の配電線を「接続相」という。また、赤相配電線31と白相配電線32からなる接続相を「赤白相」といい、白相配電線32と青相配電線33からなる接続相を「白青相」といい、青相配電線33と赤相配電線31からなる接続相を「青赤相」という。なお、図2では、4つの変圧器5のみを示しているが、区間Bの配電線路30に接続される変圧器5は変圧器51~54以外に多数存在する。
【0018】
図2に示すように、それぞれの変圧器5には、配電線路30からの電力を消費する負荷6が接続される。負荷6は、例えば、一般住宅や多量の電力を消費する工場、太陽光発電等の分散型電源を有する設備等の様々な種類が存在する。負荷6はその種類によって電力の使用状況が異なる。
【0019】
ところで、配電線路30の三相間の電圧バランスは、配電線路30に接続される変圧器5の容量や利用率、負荷6の種別によって変化する。なお、「三相間の電圧バランス」とは、例えば、配電線路30の三相間の電圧のバラツキの度合いを示す情報である。
【0020】
例えば、図2に示す配電系統3において、変圧器51の容量が50kVA、利用率が70%、変圧器52の容量が20kVA、利用率が60%、変圧器53の容量が20kVA、利用率が100%、変圧器54の容量が30kVA、利用率が120%とする。そして、仮に区間Bの配電線路30に変圧器51~54のみが接続されているとすると、赤白相に接続される変圧器5の電力使用量の合計が47kVA、白青相に接続される変圧器5の電力使用量の合計が20kVAとなり電力使用量の差が大きくなる。この場合、変圧器52の接続相を白青相に変更することで、赤白相に接続される変圧器5の電力使用量が35kVA、白青相に接続される変圧器5の電力使用量を32kVA、青赤相に接続される変圧器5の電力使用量を36kVAとなり、三相間の電圧バランスをより平衡化できる。しかしながら、各区間A~Cに配置される全ての変圧器5の接続相等の情報を把握することは困難であり、三相間の電圧バランスの改善に費用や労力がかかる。
【0021】
次に、配電線路30の三相間の電圧バランスの一例について図3及び図4を参照しながら説明する。図3図2に示す配電線路30の夜間の電圧バランスを示すグラフである。図4図2に示す配電線路30の日中の電圧バランスを示すグラフである。図3及び図4において、紙面左側の縦軸は電圧(V)を示し、紙面右側の縦軸は電圧不平衡率(%)を示し、横軸は変電所4からの距離(km)を示している。変電所4からの距離0kmから6kmの間は区間A、変電所4からの距離6kmから14kmの間は区間B、変電所4からの距離14kmから末端Xの間は区間Cである。また、図3及び図4において、赤相配電線31と白相配電線32の間の線間電圧(以下、赤白相の線間電圧)を実線で示し、白相配電線32と青相配電線33の間の線間電圧(以下、白青相の線間電圧)を一点鎖線で示し、青相配電線33と赤相配電線31の間の線間電圧(以下、青赤相の線間電圧)を二点鎖線で示し、電圧不平衡率(%)を破線で示している。
【0022】
図3及び図4に示すように、配電線路30の夜間の電圧は、電圧不平衡率が低く抑えられている。一方で、配電線路30の日中の電圧は、区間Bにおいて目標電圧の範囲を超え、電圧不平衡率も上昇している。このように、配電線路30に接続される負荷6の種類によって電力の使用状況が異なるので、時間帯毎に三相間の電圧バランスが変化すると考えられる。
【0023】
次に、接続相判定システム100の構成について説明する。図1に示すように、接続相判定システム100は、機械学習装置1及び接続相判定装置2を備える。
【0024】
ここで、機械学習装置1と接続相判定装置2とは1対1の組とされて、通信可能に接続されている。なお、図1では図示しないが、機械学習装置1と接続相判定装置2とはネットワークを介して、互いに接続されていてもよい。ネットワークは、例えば、LAN(Local Area Network)や、インターネット、公衆電話網、あるいは、これらの組み合わせである。ネットワークにおける具体的な通信方式や、有線接続及び無線接続のいずれであるか等については、特に限定されない。あるいは、機械学習装置1と接続相判定装置2とは、ネットワークを用いた通信ではなく、コネクタを介して直接接続してもよい。
【0025】
機械学習装置1について図5を参照しながら説明する。図5は機械学習装置10の機能ブロックを示す図である。
【0026】
機械学習装置1は、教師あり学習により、接続相判定装置2で用いる学習モデルを構築する。機械学習装置1によって構築される学習モデルは、新たな負荷6を接続した場合の電圧バランスを予測するために用いられる。図5に示すように、機械学習装置1は、入力データ取得部11と、ラベル取得部12と、記憶部13と、学習モデル構築部14を備える。
【0027】
入力データ取得部11は、配電線路30及び新たに接続する負荷6の各種情報を入力データとして取得する。図5に示すように、入力データ取得部11が取得する入力データとしては、配電線路30の線路特性情報と、新設前の三相間の電圧バランスと、新たな負荷6の種別情報と、新たな負荷6の電力情報と、新たな負荷6の位置情報と、新たな負荷6の接続相情報を含むデータ群が挙げられる。
【0028】
線路特性情報は、少なくとも配電線路30のインピーダンスを含む。配電線路30のインピーダンスは、例えば、赤相配電線31、白相配電線32、青相配電線33のそれぞれのインピーダンスである。
【0029】
新設前の三相間の電圧バランスは、新たな負荷6を接続する前の配電線路30の三相間の電圧のバラツキの度合いを示す情報である。三相間の電圧バランスは、例えば、区間A~Cそれぞれの配電線路30を流れる電流や電圧を計測する開閉器40から取得される。三相間の電圧バランスとしては、例えば、赤白相の線間電圧、白青相の線間電圧、青赤相の線間電圧等が挙げられる。この他の三相間の電圧バランスとして、電圧不平衡率等を含んでいてもよい。
【0030】
新たな負荷6の種別情報は、配電線路30に新たなに接続する負荷6の種類を示す情報である。負荷の種別情報としては、例えば、住宅、商店、事務所、工場等の電力需要設備の種類に関する情報が挙げられる。負荷6は、その種別によって電力の使用状況が異なる。例えば、負荷6が工場の場合、他の負荷6と比較して電力使用量が多く、平日の日中に電力使用量がピークとなる傾向である。商店や事務所の場合、日中に電力使用量がピークとなり、住宅の場合、朝夕に電力使用量のピークとなる傾向である。また、電気給湯器付き設備の場合、深夜に電力使用量のピークとなる傾向である。
【0031】
また、新たな負荷6の種別情報には、新たな負荷6が太陽光発電等の分散型電源を有するか否かを示す情報が含まれることが好ましい。分散型電源を有する負荷6の場合は配電線路30から送られる電力を消費するだけでなく、日中に分散型電源が電力、配電線路30へ逆潮流を行うので、夜間と日中における電力使用量が大きく異なる。このため、負荷6の分散型電源の有無を入力データとして取得することで、新たな負荷6の接続後の三相関の電圧バランスをより正確に予測することができる。
【0032】
新たな負荷6の電力情報は、配電線路30に新たに接続された負荷6の電力情報である。電力情報としては、例えば、負荷6による電力使用量、配電線路への逆潮流される分散型電源等の負荷6からの送電量等が挙げられる。また、電力情報は、例えば日負荷曲線等の時間帯毎の電力情報を含むことが好ましい。新たな負荷6の電力情報は、機械学習装置1のユーザ等が負荷6の種別情報等に基づいて予測した値であってもよく、新たな負荷6を配電線路30に接続した後にスマートメータ等から取得した新たな負荷6による電力使用量や送電量等の実測値であってもよい。
【0033】
新たな負荷6の位置情報は、配電線路30に新たに接続された負荷6の位置情報である。位置情報としては、例えば、新たな負荷6が接続された変圧器5が配置される電柱番号、該変圧器5の容量等の情報が挙げられる。
【0034】
新たな負荷6が接続される接続相情報は、新たな負荷6が接続された配電線路30の接続相を示す情報である。具体的には、接続相情報は、赤白相と、白青相と、青赤相の3種類存在する。
【0035】
ラベル取得部12は、新たな負荷6を接続した後の配電線路30の三相間の電圧バランスをラベルとして取得する。新たな負荷6を接続した後の配電線路30の三相間の電圧バランスは、新たな負荷6の接続から所定の期間経過後の配電線路30の三相間の電圧のバラツキの度合いを示す情報である。三相間の電圧バランスは、例えば、区間A~Cそれぞれの配電線路30を流れる電流や電圧を計測する開閉器40から取得される。電圧バランスとしては、例えば、赤白相の線間電圧、白青相の線間電圧、青赤相の線間電圧、電圧不平衡率等が挙げられる。
【0036】
記憶部13は、入力データ取得部11によって取得された配電線路30の線路特性情報と、新設前の三相間の電圧バランスと、新たな負荷6の種別情報と、新たな負荷6の電力情報と、新たな負荷6の位置情報と、新たな負荷6の接続相情報を互いに紐づけられた1組のデータ群として記憶する。そして、記憶部13は、1組のデータ群である入力データと、該入力データに対する新たな負荷6を接続した後の配電線路30の三相間の電圧バランスであるラベルを互いに紐づけて1組の教師データとして記憶する。また、記憶部13は、学習モデル構築部14が構築した学習モデルも記憶する。
【0037】
学習モデル構築部14は、記憶部13に記憶された入力データと、ラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、新たな負荷6を接続した後の配電線路30の三相間の電圧バランスを予測するための学習モデルを構築する。そして、学習モデル構築部14は、構築した学習モデルを接続相判定装置2に送信する。
【0038】
学習モデル構築部14は、例えば、サポート・ベクター・マシン(Support Vector Machine、以下SVMともいう)を用いて実現することが可能である。
【0039】
接続相判定装置2について図6を参照しながら説明する。図6は、接続相判定装置2の機能ブロック図である。接続相判定装置2は、制御部20と、記憶部27と、通信部28と、表示部29と、を備える。
【0040】
制御部20は、接続相判定装置2の全体を制御する部分であり、各種プログラムを、ROM、RAM、フラッシュメモリ又はハードディスク(HDD)等の記憶領域から適宜読み出して実行することにより、本実施形態における各種機能を実現している。制御部20は、CPUであってよい。制御部20は、判定用データ取得部21と、候補接続相生成部22と、電圧バランス予測部23と、電圧不平衡率算出部24と、接続相選択部25と、出力部26とを備える。
【0041】
判定用データ取得部21は、新たな負荷6を接続する配電線路30の接続相を判定するための判定用データを取得する。判定用データ取得部21は、線路特性情報取得部211と、新設前電圧バランス取得部212と、負荷種別情報取得部213と、負荷電力情報取得部214と、負荷位置情報取得部215を有する。
【0042】
線路特性情報取得部211は、機械学習した際に用いた教師データに含まれる線路特性情報とは別個に、配電線路30の線路特性情報を取得する。
【0043】
新設前電圧バランス取得部212は、機械学習した際に用いた教師データに含まれる新設前の三相間の電圧バランスとは別個に、新たな負荷6を接続する前の配電線路30の電圧バランスを取得する。新設前電圧バランス取得部212は、例えば、新設前の三相間の電圧バランスの情報を区間A~Cそれぞれの配電線路30を流れる電流や電圧を計測する開閉器40から取得してもよい。
【0044】
負荷種別情報取得部213は、機械学習した際に用いた教師データに含まれる新たな負荷の種別情報とは別個に、新たな負荷の種別情報を取得する。新たな負荷6の種別情報としては、例えば、住宅、商店、事務所、工場等の電力需要設備の種類に関する情報や負荷6が分散型電源を有するか否かを示す情報等が挙げられる。負荷種別情報取得部213によって取得される新たな負荷6の種別情報は、例えば、ユーザが接続相判定装置2に備わる入力デバイスを介して入力した情報であってもよい。
【0045】
負荷電力情報取得部214は、機械学習した際に用いた教師データに含まれる新たな負荷6の電力情報とは別個に、新たな負荷6の電力情報を取得する。負荷電力情報取得部214によって取得される新たな負荷6の電力情報は、例えば、ユーザが負荷6の種別情報や過去の類似の負荷の実績に基づいて予測し、接続相判定装置2に備わる入力デバイスを介して入力した電力量であってもよい。
【0046】
負荷位置情報取得部215は、機械学習した際に用いた教師データに含まれる新たな負荷6の位置情報とは別個に、新たな負荷6の位置情報を取得する。負荷位置情報取得部215によって取得される負荷6の位置情報は、例えば、ユーザが接続相判定装置2に備わる入力デバイスを介して入力した電柱番号、変圧器5の容量等の情報であってもよい。
【0047】
候補接続相生成部22は、新たな負荷6が接続される候補となる複数の候補接続相を接続相情報として生成する。具体的には、候補接続相生成部22は、赤白相と、白青相と、青赤相の3つの候補接続相を生成する。
【0048】
電圧バランス予測部23は、判定用データと、学習モデルと、候補接続相生成部22によって生成された3つの候補接続相のそれぞれに基づいて、新たな負荷6を3つの候補接続相のそれぞれに接続した場合の三相間の電圧バランスを予測する。即ち、電圧バランス予測部23は、新たな負荷6の接続相が異なる3通りの三相間の電圧バランスを予測する。
【0049】
電圧不平衡率算出部24は、電圧バランス予測部23による予測結果に基づいて、電圧不平衡率を算出する。電圧不平衡率算出部24が電圧不平衡率を算出する方法は特に限定されない。例えば、電圧不平衡率算出部24は、電圧バランス予測部23によって予測された赤白相の線間電圧と、白青相の線間電圧と、青赤相の線間電圧から正相電圧及び逆相電圧を求め、正相電圧に対する逆相電圧の比から電圧不平衡率を算出できる。電圧不平衡率算出部24は、新たな負荷6の候補接続相が赤白相、白青相、又は青赤相の場合の電圧不平衡率を算出する。
【0050】
接続相選択部25は、電圧不平衡率算出部24によって算出される電圧不平衡率に基づいて、候補接続相生成部22によって生成された複数の候補接続相から配電線路30の電圧不平衡率が低くなる候補接続相を選択する。例えば、接続相選択部25は、電圧不平衡率算出部24によって算出される候補接続相が赤白相、白青相、又は青赤相の場合の電圧不平衡率のうち最も電圧不平衡率が低くなる候補接続相を選択する。
【0051】
出力部26は、接続相選択部25によって選択された新たな負荷6の接続相を表示部29に出力する。また、出力部26は、新たな負荷6の接続相の他に、該接続相に新たな負荷6を接続した後の配電線路30の三相間の電圧バランスを表示部29に出力してもよい。
【0052】
記憶部27は、機械学習装置1から取得した学習モデルを記憶する。また、記憶部27は、判定用データ取得部21によって取得されたデータ群を1組の入力データとし、該入力データに対して判定された新たな負荷6を接続した後の配電線路30の三相間の電圧バランスをラベルとして記憶してもよい。
【0053】
通信部28は、機械学習装置1との間でデータを送受信する。例えば、接続相判定システム100は、機械学習装置1から接続相判定装置2に通信部28を介して学習モデル構築部14によって構築された学習モデルを送信できる。反対に接続相判定システム100は、接続相判定装置2から機械学習装置1に通信部28を介して判定用データ取得部21によって取得されたデータ群や接続相選択部25によって選択された新たな負荷6の接続相及び該接続相に新たな負荷6を接続した後の配電線路30の三相間の電圧バランスの予想結果等を送信できる。
【0054】
表示部29は、制御部20の出力部26から出力された新たな負荷6の接続相と該接続相に新たな負荷6を接続した後の配電線路30の三相間の電圧バランスの予測結果を表示するモニタである。
【0055】
次に、本実施形態に係る接続相判定システム100における機械学習時の動作について説明する。図7は、この機械学習時の機械学習装置1の動作を示すフローチャートである。
【0056】
ステップS11において、機械学習装置1の入力データ取得部11は、配電線路30の線路特性情報と、新設前の三相間の電圧バランスと、新たな負荷6の種別情報と、新たな負荷6の電力情報と、新たな負荷6の位置情報と、新たな負荷6の接続相情報を含む1組のデータ群を入力データとして取得する。
【0057】
ステップS12において、機械学習装置1のラベル取得部12は、新たな負荷6を接続した後の配電線路30の三相間の電圧バランスをラベルとして取得する。
【0058】
ステップS13において、機械学習装置1の学習モデル構築部14は、入力データとラベルとの組を教師データとして受け付ける。
【0059】
ステップS14において、機械学習装置1の学習モデル構築部14は、この教師データを用いて機械学習を実行する。
【0060】
ステップS15において、学習モデル構築部14は、機械学習を終了するか機械学習を繰り返すかを判定する。学習モデル構築部14は、機械学習を繰り返すと判定した場合(ステップS15でNo)、処理をステップS11に戻す。そして、機械学習装置1は同じ動作を繰り返す。一方、学習モデル構築部14は、機械学習を終了すると判定した場合(ステップS15でYes)、処理をステップS16に進める。なお、機械学習を終了させる条件は任意に定めることができる。例えば、予め定められた回数だけ機械学習を繰り返した場合に、機械学習を終了させるようにしてもよい。
【0061】
ステップS16において、機械学習装置1は、その時点までの機械学習により構築した学習モデルを、ネットワーク等を介して接続相判定装置2に送信する。
【0062】
また、機械学習装置1の記憶部13は、この学習モデルを記憶する。これにより、接続相判定装置2から学習モデルを要求された場合に、その接続相判定装置2に学習モデルを送信することができる。また、新たな教師データを取得した場合に、学習モデルに対して更なる機械学習を行うこともできる。これにより、例えば、同一の配電線路30や同一の区間A~Cにおいて、定期的に機械学習装置1による機械学習を繰り返すことで、学習モデルによる三相間の電圧バランスの予測精度を向上させることができる。
【0063】
次に、接続相判定装置2による新たな負荷の接続相を判定する処理の一例について図7を参照しながら説明する。図7は、接続相判定装置2による新たな負荷の接続相を判定する処理の流れを示すフローチャートである。
【0064】
ステップS21において、判定用データ取得部21が配電線路30の各相のインピーダンスを含む線路特性情報と、新設前の配電線路30の線間電圧等の電圧バランスと、新たな負荷6の種別情報と、新たな負荷6の電力情報と、新たな負荷6の位置情報等の判定用データを取得する。
【0065】
ステップS22において、候補接続相生成部22が新たな負荷6が接続される候補となる3つの候補接続相を生成する。
【0066】
ステップS23において、電圧バランス予測部23がステップS21で取得された判定用データと、ステップS22で生成された3つの候補接続相のそれぞれと、機械学習装置1から送信された学習モデルとに基づいて、新たな負荷6を3つの候補接続相のそれぞれに接続した場合の三相間の電圧バランスを予測する。
【0067】
ステップS24において、電圧不平衡率算出部24がステップS23で予測された赤白相の線間電圧、白青相の線間電圧、青赤相の線間電圧等に基づいて、新たな負荷6の候補接続相が赤白相、白青相、又は青赤相の場合の電圧不平衡率を算出する。
【0068】
ステップS25において、接続相選択部25がステップS24で算出された候補接続相が赤白相、白青相、青赤相の場合の電圧不平衡率のうち最も電圧不平衡率が低くなる候補接続相を選択する。
【0069】
ステップS26において、出力部26がステップS25で選択された候補接続相を表示部29に出力する。また、出力部26はステップS25で選択された候補接続相に新たな負荷6が接続された場合の電圧不平衡率を表示部29に出力する。この結果、電圧不平衡率が低くなる候補接続相と該候補接続相に新たな負荷6を接続した場合の電圧不平衡率が表示部29に表示される。
【0070】
以上説明した本実施形態に係る接続相判定システム100の機械学習装置1又は接続相判定装置2によれば、以下のような効果を奏する。
【0071】
本実施形態に係る機械学習装置1は、三相交流の配電線路30のインピーダンスを少なくとも含む線路特性情報と、新たな負荷6を接続する前の配電線路30の三相間の電圧バランスと、新たな負荷6の種別情報と、新たな負荷6の電力情報と、新たな負荷6の位置情報と、新たな負荷6の接続相情報と、を含むデータ群を入力データとして取得する入力データ取得部11と、新たな負荷6を接続した後の配電線路30の三相間の電圧バランスをラベルとして取得するラベル取得部12と、入力データとラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、新たな負荷6を接続した後の配電線路30の三相間の電圧バランスを予測するための学習モデルを構築する学習モデル構築部14と、を備える。
【0072】
これにより、配電線路30の線路特性や接続する負荷6の種別、電力使用量等の様々な要素が反映され、より効率的に新たな負荷6を接続した後の三相間の電圧バランスを予測するための学習モデルを構築できる。よって、該学習モデルを用いることで、新たな負荷6を実際に配電線路30に接続する前に該負荷6を接続した後の三相間の電圧バランスの予測結果を効率的に得ることができ、配電線路30への負荷6の新設のシミュレーションを容易に行うことができる。
【0073】
本実施形態に係る機械学習装置1において、種別情報は、新たな負荷6が分散型電源を有するか否かを示す情報を含む。
【0074】
これにより、新たな負荷6から配電線路30への送電の可否も考慮して新たな負荷6を接続した後の三相間の電圧バランスを予測できるより予測精度の高い学習モデルを構築できる。
【0075】
本実施形態に係る機械学習装置1において、電力情報は、時間帯毎の電力情報を含む。
【0076】
これにより、時間帯毎の新たな負荷6と配電線路30の間の電力の変動を考慮して新たな負荷6を接続した後の三相間の電圧バランスを予測できるより予測精度の高い学習モデルを構築できる。
【0077】
また本実施形態に係る接続相判定装置2は、機械学習装置1で構築した学習モデルを用いた接続相判定装置2であって、線路特性情報と、新たな負荷6を接続する前の配電線路30の三相間の電圧バランスと、新たな負荷6の種別情報と、新たな負荷6の電力情報と、新たな負荷6の位置情報と、を含むデータ群を判定用データとして取得する判定用データ取得部21と、新たな負荷6が接続される候補となる複数の異なる候補接続相を接続相情報として生成する候補接続相生成部22と、判定用データと、学習モデルと、候補接続相生成部22によって生成された候補接続相のそれぞれと、に基づいて、新たな負荷6を候補接続相のそれぞれに接続した後の配電線路30の三相間の電圧バランスを予測する電圧バランス予測部23と、電圧バランス予測部23による予測結果に基づいて、電圧不平衡率を算出する電圧不平衡率算出部24と、電圧不平衡率算出部24によって算出される電圧不平衡率に基づいて、候補接続相生成部22によって生成された複数の候補接続相から電圧不平衡率が低くなる候補接続相を選択する接続相選択部25と、を備える。
【0078】
これにより、本実施形態の学習モデルに新たな負荷6を接続する配電線路30の線路特性情報や三相間の電圧バランスや新たな負荷6の情報を入力し、新たな負荷6の候補接続相毎の接続後の三相間の電圧バランスを予測しながら、電圧不平衡率が低くなる接続相を選択できる。よって、より効率的に新たな負荷6を接続した後の配電線路30の三相間の電圧バランスが良好になる接続相を判定できる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に制限されるものではなく適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 機械学習装置
6 負荷
11 入力データ取得部
12 ラベル取得部
14 学習モデル構築部
30 配電線路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8