(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169167
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】非破壊検査方法及び検査システム
(51)【国際特許分類】
G01N 29/12 20060101AFI20221101BHJP
G01N 29/04 20060101ALI20221101BHJP
G01N 29/46 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
G01N29/12
G01N29/04
G01N29/46
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075025
(22)【出願日】2021-04-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
(71)【出願人】
【識別番号】520320538
【氏名又は名称】株式会社熊本機械
(74)【代理人】
【識別番号】100136180
【弁理士】
【氏名又は名称】羽立 章二
(72)【発明者】
【氏名】森 和也
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 康敬
(72)【発明者】
【氏名】徳臣 佐衣子
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA10
2G047BA04
2G047BC04
2G047BC09
2G047BC18
2G047CA03
2G047GA19
2G047GA21
2G047GG10
2G047GG20
2G047GG28
2G047GG33
2G047GG47
2G047GH13
2G047GH14
(57)【要約】
【課題】 検査対象物に水撃を与えることにより生じた音響によって非破壊検査を利用して平面的・立体的な検査を実現して検査対象物の性状を表示することに適した非破壊検査方法等を提供する。
【解決手段】 本願発明は、水撃音響法による非破壊検査を、打撃点を移動させることにより平面的・立体的に拡張するとともに、打撃点に光を照射しつつ録画することにより打撃点を特定して、平面的・立体的に拡張して把握される対象物の性状について、水流の衝突によって得られる音響の周波数領域の成分によって異なる表示態様で表示することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に水撃を与えることにより生じた音響を利用して非破壊検査を行う検査システムにおける非破壊検査方法であって、
前記検査システムは、
前記構造物の検出位置へ水流を衝突させて前記水撃を与える放水装置と、
前記音響を録音する録音部と、
情報処理装置を備え、
前記検査システムは、さらに、録画部を備え、
前記情報処理装置は、検出処理部と、表示処理部を備え、
前記検出処理部は、検出制御部を備え、
前記表示処理部は、表示制御部を備え、
前記放水装置は、前記検出位置を移動させつつ水撃を与え、
前記録音部は、前記音響を録音し、
前記録画部は、前記検出位置を録画し、
前記検出制御部が、水撃が与えられた検出位置を特定するとともに、録音された音響を処理して周波数領域の成分を求める検出ステップと、
前記表示制御部が、特定された検出位置に対応させて、周波数領域の成分の値に応じて表示態様を異にして表示する表示ステップを含む非破壊検査方法。
【請求項2】
前記検査システムは、さらに、照射装置を備え、
前記照射装置は、前記放水装置が水撃を与えるときの前記検出位置に光を照射し、
前記録画部は、前記放水装置が水撃を与えるときの前記照射位置を録画し、
前記検出ステップにおいて、前記検出制御部が、前記照射装置から照射された光が録画された位置を利用して水撃が与えられた検出位置を特定する、請求項1記載の非破壊検査方法。
【請求項3】
前記表示ステップにおいて、前記表示処理部が備える表示設定部が、利用者の指示により及び/又は複数の検出位置での周波数領域の成分の値により表示基準値を特定し、
前記表示制御部が、前記表示基準値によって周波数領域の成分の値に応じて表示態様を異にして表示する、請求項1又は2に記載の非破壊検査方法。
【請求項4】
構造物に水撃を与えることにより生じた音響を利用して非破壊検査を行う検査システムであって、
前記構造物の検出位置へ水流を衝突させて前記水撃を与える放水装置と、
前記音響を録音する録音部と、
情報処理装置と、
録画部を備え、
前記情報処理装置は、検出処理部と、表示処理部を備え、
前記検出処理部は、検出制御部を備え、
前記表示処理部は、表示制御部を備え、
前記放水装置は、前記検出位置を移動させつつ水撃を与え、
前記録音部は、前記音響を録音し、
前記録画部は、前記検出位置を録画し、
前記検出制御部は、水撃が与えられた検出位置を特定するとともに、録音された音響を処理して周波数領域の成分を求め、
前記表示制御部は、特定された検出位置に対応させて、周波数領域の成分の値に応じて表示態様を異にして表示する、検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非破壊検査方法及び検査システムに関し、特に、検査システムにおいて、構造物への水撃により生じた音響を利用して非破壊検査を行う非破壊検査方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、構造物に水撃を与えることにより生じた音響を利用する非破壊検査を提案した(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、構造物の所定箇所に水撃を与えて得られた結果に対して、事前に閾値を定めて、これによって欠陥の有無を判断していた。しかしながら、閾値を事前に定めることは困難な場合も多い。
【0005】
よって、本発明は、検査対象物に水撃を与えることにより生じた音響によって非破壊検査を利用して平面的・立体的な検査を実現して検査対象物の性状を表示することに適した非破壊検査方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の第1の側面は、構造物に水撃を与えることにより生じた音響を利用して非破壊検査を行う検査システムにおける非破壊検査方法であって、前記検査システムは、前記構造物の検出位置へ水流を衝突させて前記水撃を与える放水装置と、前記音響を録音する録音部と、情報処理装置を備え、前記検査システムは、さらに、録画部を備え、前記情報処理装置は、検出処理部と、表示処理部を備え、前記検出処理部は、検出制御部を備え、前記表示処理部は、表示制御部を備え、前記放水装置は、前記検出位置を移動させつつ水撃を与え、前記録音部は、前記音響を録音し、前記録画部は、前記検出位置を録画し、前記検出制御部が、水撃が与えられた検出位置を特定するとともに、録音された音響を処理して周波数領域の成分を求める検出ステップと、前記表示制御部が、特定された検出位置に対応させて、周波数領域の成分の値に応じて表示態様を異にして表示する表示ステップを含む。
【0007】
本願発明の第2の側面は、第1の側面の非破壊検査方法であって、前記検査システムは、さらに、照射装置を備え、前記照射装置は、前記放水装置が水撃を与えるときの前記検出位置に光を照射し、前記録画部は、前記放水装置が水撃を与えるときの前記照射位置を録画し、前記検出ステップにおいて、前記検出制御部が、前記照射装置から照射された光が録画された位置を利用して水撃が与えられた検出位置を特定する。
【0008】
本願発明の第3の側面は、第1又は第2の側面の非破壊検査方法であって、前記表示ステップにおいて、前記表示処理部が備える表示設定部が、利用者の指示により及び/又は複数の検出位置での周波数領域の成分の値により表示基準値を特定し、前記表示制御部が、前記表示基準値によって周波数領域の成分の値に応じて表示態様を異にして表示する。
【0009】
本願発明の第4の側面は、構造物に水撃を与えることにより生じた音響を利用して非破壊検査を行う検査システムであって、前記構造物の検出位置へ水流を衝突させて前記水撃を与える放水装置と、前記音響を録音する録音部と、情報処理装置と、録画部を備え、前記情報処理装置は、検出処理部と、表示処理部を備え、前記検出処理部は、検出制御部を備え、前記表示処理部は、表示制御部を備え、前記放水装置は、前記検出位置を移動させつつ水撃を与え、前記録音部は、前記音響を録音し、前記録画部は、前記検出位置を録画し、前記検出制御部は、水撃が与えられた検出位置を特定するとともに、録音された音響を処理して周波数領域の成分を求め、前記表示制御部は、特定された検出位置に対応させて、周波数領域の成分の値に応じて表示態様を異にして表示する。
【発明の効果】
【0010】
本願発明の各側面によれば、水撃を与える位置を移動させても検査が可能であることに着目して、水撃を与える位置を移動させることにより平面的・立体的な検出を可能にするとともに、水撃により生じた音響の周波数領域の成分の値に応じて、事後にも調整しつつ表示態様を異にして表示できることにより、事前に閾値を定める必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本願発明の実施の形態に係る検査システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図1の検出システム1の具体例を説明するための図である。
【
図3】周波数領域の成分に関する処理の一例を示す第1図である。
【
図4】周波数領域の成分に関する処理の一例を示す第2図である。
【
図5】発明者による実験を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本願発明の実施例について述べる。なお、本願発明の実施の形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例0013】
図1は、本願発明の実施の形態に係る検査システムの構成の一例を示すブロック図である。
図1を参照して検査システム1の構成を説明する。
【0014】
図1の検査システム1は、検査対象物3(例えばビルなどの建造物、道路や橋梁、トンネルなどの土木構造物などの大型コンクリート構造物であり、コンクリートやタイルを張ったもの、など。)の検出位置4に対して水流を衝突させ、その打撃によって振動を与え、水流が衝突したことにより生じる音響から検査対象物3の検出位置4の性状(例えば、しっかりと固定されているか、浮いているなどの欠陥があるか、など)を判定するものである。
【0015】
図1の検査システム1は、特許文献1と同様に、情報処理装置2と、検査対象物3の検出位置4に対して水流を衝突させる放水装置5と、水流が検出位置4に衝突することにより生じた音響を録音する録音部9を備える。
【0016】
図1の検査システム1は、さらに、検出位置4にレーザーを照射する照射装置7と、検出位置4を含む検査対象物3を撮影して録画する録画部11を備える。なお、照射装置7は、光を照射して検出位置4を特定する位置情報が録画されるようにするものであり、本願発明では、レーザー光に限らず、例えば可視光などを照射するものであってもよい。また、スポットレーザーで衝撃点を照射してもよく、また、しぶきで隠れる可能性を考慮してクロスラインレーザーにより交点の位置で特定してもよい。
【0017】
情報処理装置2は、検出処理部21と、表示処理部23を備える。検出処理部21は、位置設定部31と、検出制御部33と、放水制御部35を備える。検出制御部33は、音処理部37と、画像処理部39を備える。表示処理部23は、表示設定部41と、検出結果記憶部43と、表示制御部45と、表示部47を備える。情報処理装置2は、例えば、コンピュータとプログラムなどによって実現することができる。
【0018】
図1(b)及び(c)を参照して、検査システム1の動作の一例を説明する。
【0019】
図1(b)は、検出処理部21に関する処理の一例を示すフロー図である。
【0020】
図1(b)を参照して、位置設定部31は、検査対象物3において検出位置4が位置する図形を設定する(ステップSTA1)。検出位置4が位置する図形は、検査対象物3の表面において平面的又は空間的な広がりのあるものである。例えば、らせん状でもよく、幾何学的な形状を位置を変えつつ繰り返したものでもよく、ランダムに生成されたものであってもよい。通常、一筆書きのように、連続して途切れずに描かれる線図形である。この図形は、検出位置4の軌跡である。
【0021】
検出制御部33は、位置設定部31が設定した図形において、水流を衝突させる検出位置4を決定する(ステップSTA2)。
【0022】
放水制御部35は、検出制御部33が決定した検出位置4に対して、照射装置7を制御してレーザーを照射しつつ、放水装置5を制御して水流を衝突させる(ステップSTA3)。
【0023】
録音部9は、水流が衝突したことにより生じた音響を録音する。録画部11は、照射装置7によりレーザーが照射された検査対象物3を録画する。録音部9による録音と録画部11による録画は、同期して行われる(ステップSTA4)。
【0024】
音処理部37は、録音部9により録音された音響に対して、所定の時間間隔で分割し、所定の時間間隔ごとの周波数スペクトルを算出する。時間間隔は、一定間隔でも、可変の間隔でもよい。画像処理部39は、録画部11により録画された画像を処理して修正して検出位置4を特定する(ステップSTA5)。検出位置は、例えば、レーザーが照射された位置を基準にして検出することができる。ここで、検出制御部33は、放水制御部35の制御の下での検出位置4及び放水が行われたタイミングを把握することができる。検出制御部33は、放水制御部35により行われた制御に関する情報を利用してもよい。また、画像処理によって水流が実際に衝突した位置が特定できるならば、この情報を利用してもよい。検出制御部33は、検出結果記憶部43に対して、音処理部37の処理結果である検出音情報及び画像処理部39の処理結果である検出位置情報を関連させて記憶する(ステップSTA6)。
【0025】
検出処理部21は、すべての検出位置4に対して検出処理が行われたか否かを判断する(ステップSTA7)。すべての検出位置4に対して検出処理が終わったならば、処理を終了する。検出処理が行われていない検出位置4が存在するならば、ステップSTA2に戻り、検出制御部33は、検出処理が行われていない新たな検出位置4に対して検出処理を行う。
【0026】
図1(c)は、表示処理部23に関する処理の一例を示すフロー図である。表示処理部23は、検出結果記憶部43に記憶された検出結果について、特定された検出位置に対応させて、周波数領域の成分に応じて、表示設定部41により設定された表示基準値に応じて表示態様を異にして表示部47に表示する処理を行う。
【0027】
図1(c)を参照して、表示設定部41は、表示態様(例えば、色、太さ、濃淡など)を異にして表示する表示基準値を設定する(ステップSTB1)。表示基準値は、利用者による指示に従ってもよく、検出結果記憶部43に記憶された検出結果から生成してもよい。一般に、正常箇所で得られる周波数領域の成分と、異常箇所で得られる周波数領域の成分とは、大きな違いが生じる。そのため、表示設定部41は、例えば、検出結果記憶部43における周波数領域の成分を複数のグループに分け、これらを分けて表示するように表示基準値を設定してもよい。
【0028】
表示制御部45は、検出結果記憶部43から、検出音情報及び検出位置情報を読み出す(ステップSTB2)。この処理は、検出処理部21による処理が行われている状態で並行して行ってもよく、検出処理部21による処理が行なわれた後に行ってもよい。
【0029】
表示制御部45は、表示設定部41が設定した表示基準値を用いて、周波数領域の成分に応じて、検出音情報の表示態様を決定する(ステップSTB3)。
【0030】
表示制御部45は、表示部47(ディスプレイなど)に対して、検出位置情報により特定される位置に、検出音情報の表示態様にて表示を行う(ステップSTB4)。
【0031】
表示設定部41は、表示基準振幅を調整するか否かを判定する(ステップSTB5)。調整するならば、ステップSTB1に戻る。調整しないならばステップSTB6に戻る。
【0032】
表示制御部45は、すべての検出結果が表示されたか否かを判定する(ステップSTB6)。表示されていない検出結果があるならば、ステップSTB2に戻る。すべての検出結果が表示されたならば処理を終了する。
【0033】
図2は、
図1の検出システム1の具体例を説明するための図である。
図2(a)は、構成の具体例を示す。検出対象物51はコンクリート壁であり、検出対象範囲53において、検出位置4が位置する図形を設定する。情報処理装置61により制御機器63を制御して、照射装置57により検出位置55をレーザー照射しつつ、ウォーターガン59により検出位置55にウォータージェットを衝突させて、ビデオカメラ65により検出対象範囲53を録画しつつマイクロフォンで録音レベルを固定して衝突により生じた音響を録音する。
【0034】
図2(b)は、情報処理装置61のディスプレイにおける表示例を示す。検出結果において周波数領域の成分によって濃淡を生じさせて表示している。このとき、薄く表示される部分71と、濃く表示される部分73が生じる。作業者は、この表示の違いによって、欠陥範囲75を把握することができる。この濃淡の表示は、検出後に調整することができる。そのため、事前に閾値を決定する必要はない。
【0035】
図3及び
図4は、周波数領域の成分に関する処理の一例を示す。
【0036】
図3(a)は、検出する図形を示す。図の左側のt
Sの側からスタートしてらせん状に検出処理を行い、図の右側のt
Eで終了する。これを所定の時間間隔で分割する。区間81は、時間間隔の一つである。
【0037】
図3(b)は、時間に沿って録音された音の振幅を示すグラフである。
図3(a)の区間81は、区間83に対応するとする。
【0038】
図3(c)は、
図3(b)の区間83に対して算出した周波数スペクトルを示す。横軸は周波数であり、縦軸は振幅を示す。Sは、
図3(c)の周波数スペクトルにおいて、第1周波数f
1と第2周波数f
2の間の振幅の大きさを積算した値である。これを他の区間でも同様に計算する。これにより、Sは、時間の関数S(t)として計算することができる。打撃点の軌跡は線を描く。ディスプレイでは、打撃点の軌跡に沿って、それぞれの打撃点でのS(t)の大きさに応じて、線の色、濃さなどを変化させて表示する。
【0039】
図4(a)は、
図3(b)の各区間に対して得られたSの値を示す。区間91と区間93で大きな値となり、他の区間では比較的小さな値となる。表示設定部41は、表示基準値S
Cを、区間91と区間93におけるSの値よりも小さく、他の領域よりも大きく設定する。表示基準値S
Cは、新たなSの値に応じてリアルタイムに変更してもよい。
【0040】
図4(b)は、S
Cを利用した表示例を示す。SがS
Cよりも大きな値である位置99を、SがS
Cよりも小さな値である位置95とは区別して表示することにより、SがS
Cよりも大きな値である領域97を把握することができる。このように、欠陥部分では、正常部分とは異なる態様で表示され、作業者は、特定の欠陥領域を推定することができる。これは、ビデオモニター上でリアルタイムに行うことが可能であるため、欠陥が疑われる個所を集中して検査することができる。
【0041】
図4(c)は、図形をランダムな点の集合によって検出位置の図形を生成した場合を示す。撮影された映像101に重ねて検出結果を表示している。SがS
Cよりも大きな値である位置105を、SがS
Cよりも小さな値である位置103とは区別して表示することにより、SがS
Cよりも大きな値である領域107を把握して、対象物の性状が異なる箇所を特定することができる。例えば、検査範囲において欠陥のない一つ又は複数の場所を予め調査して、基準となる音の分析結果S
0を得ておく。そして、位置を変えつつ水撃を与えて発生した音に対してリアルタイムにSの値を分析して、事前の分析結果S
0に対する違いによって色や濃淡などの結果表示を変えることにより、欠陥が疑われる個所をリアルタイムに表示することができる。
【0042】
出願人は、水撃に対する音響を使って遠隔非破壊検査を行うことを提案した(特許文献1参照)。発明者は、水撃音響法において打撃点を移動させることにより平面的・空間的に拡張するとともに、これによって把握される性状の異なる箇所を適切に表示できるように工夫した。
【0043】
なお、他のコンクリート構造物の遠隔非破壊検査法として、レーザー法、赤外線サーモグラフィー法、などが知られている。
【0044】
レーザー法は、強力なレーザービームのパルスを検査面に照射し、検査面及び近接した空気の熱膨張によって壁面を加振する。しかしながら、振動計測にレーザー・ドップラー振動計を用いる。レーザー・ドップラー振動計はドップラー効果を用いているため、安定した反射光が必要である。移動計測では、安定した反射光を得ることができない。そのため、移動しながらの検査が困難である。よって、レーザー法は、照射点を移動させて検査を行うことは困難である。
【0045】
また、赤外線サーモグラフィー法は、欠陥部分が熱的に欠陥背後と分離していることを利用する。太陽光などで検査面が加熱されると、欠陥部分の温度が周囲よりも上昇し、その温度変化を赤外線サーモグラフィーで測定して、欠陥部分を同定する。この手法は、太陽光などの熱源が必要であるため、太陽光が当たらない、トンネルや橋梁の床板の下面などは適用できない。本願発明は加熱が不要であり、検査対象に対する平面的・立体的な全体的な検査が可能になる。
【0046】
図5は、発明者による実験を説明するための図である。
図5(a)を参照して、位置111は、照射装置によるレーザー光の照射位置の初期位置を示す。複数のタイルを貼った壁の検査を行う。ここで、枠113内のタイルは浮いており、枠113外のタイルは固定されている。
図5(b)にあるように、らせん状に右に移動させながらウォーターガンで水撃を与えつつ、水撃を与えた位置及び発生した音を分析して、水撃を与えた位置に、音の分析結果に応じて色を変更させてリアルタイムに表示している。
図5(c)は、時間が経過した後の状態であり、
図5(d)は実験が終了した段階での表示を示す。枠113内では音が変化しており、タイルの浮いた範囲を把握することができる。欠陥領域をリアルタイムに特定できるため、欠陥が疑われる個所を集中して検査することができる。
図5(e)は、2色で表現したものであり、同様に、枠113内で音が変化した結果を得た。
1 検査システム、2 情報処理装置、3 検査対象物、4 検出位置、5 放水装置、7 照射装置、8 録音録画装置、9 録音部、11 録画部、21 検出処理部、23 表示処理部、31 位置設定部、33 検出制御部、35 放水制御部、37 音処理部、39 画像処理部、41 表示設定部、43 検出結果記憶部、45 表示制御部、47 表示部、51 検出対象物、53 検出対象範囲、55 検出位置、57 照射装置、59 ウォーターガン、61 情報処理装置、63 制御機器、65 ビデオカメラ、71 薄く表示される部分、73 濃く表示される部分、75 欠陥範囲、81,83,91,93 区間、95,103 SがSCよりも小さな値である位置、97,107 SがSCよりも大きな値である領域、99,105 SがSCよりも大きな値である位置、101 撮影された映像,111 照射位置、113 枠