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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016917
(43)【公開日】2022-01-25
(54)【発明の名称】電子機器及び冷却モジュール
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/20 20060101AFI20220118BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20220118BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
G06F1/20 C
G06F1/20 B
H05K7/20 T
H05K7/20 H
H01L23/46 B
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020119910
(22)【出願日】2020-07-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内野 顕範
(72)【発明者】
【氏名】上村 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】山崎 央
(72)【発明者】
【氏名】天野 将之
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA11
5E322AB11
5E322BB03
5E322DB09
5E322DB10
5E322FA04
5F136CC14
5F136CC16
5F136CC20
5F136FA02
5F136FA03
(57)【要約】
【課題】部品点数を低減し、軽量化を図ることができる冷却モジュールを備えた電子機器及び冷却モジュールを提供する。
【解決手段】電子機器は、筐体と、前記筐体内に設けられた第1発熱体及び第2発熱体と、前記第1発熱体及び前記第2発熱体が発生する熱を吸熱する冷却モジュールと、を備える。前記冷却モジュールは、第1金属プレートと、該第1金属プレートよりも大きな外形を有する第2金属プレートとで挟まれた部分に密閉空間を形成し、該密閉空間に作動流体を封入したベーパーチャンバと、前記第2金属プレートの前記第1金属プレートの外形から張り出した部分に形成された金属フレームと、前記金属フレームで支持されたグラフェンを含む熱伝導プレートと、を有する。前記ベーパーチャンバは、前記第1発熱体が発生する熱を吸熱可能に配置され、前記熱伝導プレートは、前記第2発熱体が発生する熱を吸熱可能に配置されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
筐体と、
前記筐体内に設けられた第1発熱体及び第2発熱体と、
前記第1発熱体及び前記第2発熱体が発生する熱を吸熱する冷却モジュールと、
を備え、
前記冷却モジュールは、
第1金属プレートと、該第1金属プレートよりも大きな外形を有する第2金属プレートとで挟まれた部分に密閉空間を形成し、該密閉空間に作動流体を封入したベーパーチャンバと、
前記第2金属プレートの前記第1金属プレートの外形から張り出した部分に形成された金属フレームと、
前記金属フレームで支持されたグラフェンを含む熱伝導プレートと、
を有し、
前記ベーパーチャンバは、前記第1発熱体が発生する熱を吸熱可能に配置され、
前記熱伝導プレートは、前記第2発熱体が発生する熱を吸熱可能に配置されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記金属フレームは、前記第2金属プレートの前記張り出した部分に切抜き孔が形成されることで枠状又は格子状に形成されていることを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子機器であって、
前記密閉空間は、前記第2金属プレートの第1面に形成され、
前記第1発熱体は、前記第2金属プレートの前記密閉空間を形成する部分の第2面に対して受熱部材を介して接続され、
前記熱伝導プレートは、前記金属フレームの前記第2金属プレートの前記第2面に対応する面に固定され、
前記第2発熱体は、前記熱伝導プレートの前記金属フレームに対する取付面の裏面に向かって放熱するように設けられている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電子機器であって、
前記熱伝導プレートは、前記金属フレームから前記第2金属プレートの前記密閉空間を形成する部分まで延在することで、前記密閉空間と上下方向にオーバーラップしていることを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の電子機器であって、
前記冷却モジュールは、さらに、
前記第2金属プレートと熱的に接続された冷却フィンと、
前記冷却フィンに送風可能な送風ファンと、
を有することを特徴とする電子機器。
【請求項6】
電子機器であって、
筐体と、
前記筐体内に設けられた第1発熱体及び第2発熱体と、
前記第1発熱体及び前記第2発熱体が発生する熱を吸熱する冷却モジュールと、
を備え、
前記冷却モジュールは、
金属プレートと、
前記金属プレートの第1面に固定され、一部が前記金属プレートの外形から張り出すように設けられたグラフェンを含む第1熱伝導プレートと、
前記金属プレートの前記第1面又は第2面に固定されたグラフェンを含む第2熱伝導プレートと、
前記金属プレートに対する前記第1熱伝導プレートの取付面のうち、前記第1熱伝導プレートが前記金属プレートの外形から張り出した部分に対して固定された金属シートと、
前記金属シートに対して接合された冷却フィンと、
前記冷却フィンに送風可能な送風ファンと、
を有し、
前記第1熱伝導プレートは、前記第1発熱体が発生する熱を吸熱可能に配置され、
前記第2熱伝導プレートは、前記第2発熱体が発生する熱を吸熱可能に配置されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項6に記載の電子機器であって、
前記金属プレートの前記第2熱伝導プレートが固定される部分は、切抜き孔が形成されることで枠状又は格子状に形成されていることを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の電子機器であって、
前記第2熱伝導プレートは、前記金属プレートの前記第2面に固定され、
前記第1熱伝導プレートと前記第2熱伝導プレートとは、前記金属プレートを挟んで上下方向にオーバーラップしていることを特徴とする電子機器。
【請求項9】
冷却モジュールであって、
第1金属プレートと、該第1金属プレートよりも大きな外形を有する第2金属プレートとで挟まれた部分に密閉空間を形成し、該密閉空間に作動流体を封入したベーパーチャンバと、
前記第2金属プレートの前記第1金属プレートの外形から張り出した部分に形成された金属フレームと、
前記金属フレームで支持されたグラフェンを含む熱伝導プレートと、
を備えることを特徴とする冷却モジュール。
【請求項10】
請求項9に記載の冷却モジュールであって、
前記金属フレームは、前記第2金属プレートの前記張り出した部分に切抜き孔が形成されることで枠形状又は格子形状に形成されていることを特徴とする冷却モジュール。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の冷却モジュールであって、
前記密閉空間は、前記第2金属プレートの第1面に形成され、
前記熱伝導プレートは、前記金属フレームの前記第2金属プレートの第2面に対応する面に固定され、
前記熱伝導プレートは、前記金属フレームから前記第2金属プレートの前記密閉空間を形成する部分まで延在することで、前記密閉空間と上下方向にオーバーラップしている
ことを特徴とする冷却モジュール。
【請求項12】
冷却モジュールであって、
金属プレートと、
前記金属プレートの第1面に固定され、一部が前記金属プレートの外形から張り出すように設けられたグラフェンを含む第1熱伝導プレートと、
前記金属プレートの前記第1面又は第2面に固定されたグラフェンを含む第2熱伝導プレートと、
前記金属プレートに対する前記第1熱伝導プレートの取付面のうち、前記第1熱伝導プレートが前記金属プレートの外形から張り出した部分に対して固定された金属シートと、
前記金属シートに対して接合された冷却フィンと、
前記冷却フィンに送風可能な送風ファンと、
を備えることを特徴とする冷却モジュール。
【請求項13】
請求項12に記載の冷却モジュールであって、
前記金属プレートの前記第2熱伝導プレートが固定される部分は、切抜き孔が形成されることで枠形状又は格子形状に形成されている
ことを特徴とする冷却モジュール。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の冷却モジュールであって、
前記第2熱伝導プレートは、前記金属プレートの前記第2面に固定され、
前記第1熱伝導プレートと前記第2熱伝導プレートとは、前記金属プレートを挟んで上下方向にオーバーラップしている
ことを特徴とする冷却モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却モジュールを備えた電子機器及び冷却モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PC(ノートブック型パーソナルコンピュータ)のような電子機器は、CPUを含む複数の発熱体を収容している。このような電子機器は、筐体内に冷却モジュールを搭載し、発熱体が発生する熱を拡散し、外部に放熱することを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6469183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の冷却モジュールは、2枚の金属プレートの間の密閉空間に作動流体を封入したベーパーチャンバと、銅プレートで形成された熱拡散プレートと、をそれぞれ備えた構成が一般的である。このため、このような冷却モジュールは、部品点数が多く、筐体内への組付けに手間がかかる。また、金属製の熱拡散プレートは軽量化が難しく、電子機器の重量を増大させる。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、部品点数を低減し、軽量化を図ることができる冷却モジュールを備えた電子機器及び冷却モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る電子機器は、電子機器であって、筐体と、前記筐体内に設けられた第1発熱体及び第2発熱体と、前記第1発熱体及び前記第2発熱体が発生する熱を吸熱する冷却モジュールと、を備え、前記冷却モジュールは、第1金属プレートと、該第1金属プレートよりも大きな外形を有する第2金属プレートとで挟まれた部分に密閉空間を形成し、該密閉空間に作動流体を封入したベーパーチャンバと、前記第2金属プレートの前記第1金属プレートの外形から張り出した部分に形成された金属フレームと、前記金属フレームで支持されたグラフェンを含む熱伝導プレートと、を有し、前記ベーパーチャンバは、前記第1発熱体が発生する熱を吸熱可能に配置され、前記熱伝導プレートは、前記第2発熱体が発生する熱を吸熱可能に配置されている。
【0007】
本発明の第2態様に係る電子機器は、電子機器であって、筐体と、前記筐体内に設けられた第1発熱体及び第2発熱体と、前記第1発熱体及び前記第2発熱体が発生する熱を吸熱する冷却モジュールと、を備え、前記冷却モジュールは、金属プレートと、前記金属プレートの第1面に固定され、一部が前記金属プレートの外形から張り出すように設けられたグラフェンを含む第1熱伝導プレートと、前記金属プレートの前記第1面又は第2面に固定されたグラフェンを含む第2熱伝導プレートと、前記金属プレートに対する前記第1熱伝導プレートの取付面のうち、前記第1熱伝導プレートが前記金属プレートの外形から張り出した部分に対して固定された金属シートと、前記金属シートに対して接合された冷却フィンと、前記冷却フィンに送風可能な送風ファンと、を有し、前記第1熱伝導プレートは、前記第1発熱体が発生する熱を吸熱可能に配置され、前記第2熱伝導プレートは、前記第2発熱体が発生する熱を吸熱可能に配置されている。
【0008】
本発明の第3態様に係る冷却モジュールは、冷却モジュールであって、第1金属プレートと、該第1金属プレートよりも大きな外形を有する第2金属プレートとで挟まれた部分に密閉空間を形成し、該密閉空間に作動流体を封入したベーパーチャンバと、前記第2金属プレートの前記第1金属プレートの外形から張り出した部分に形成された金属フレームと、前記金属フレームで支持されたグラフェンを含む熱伝導プレートと、を備える。
【0009】
本発明の第4態様に係る冷却モジュールは、冷却モジュールであって、金属プレートと、前記金属プレートの第1面に固定され、一部が前記金属プレートの外形から張り出すように設けられたグラフェンを含む第1熱伝導プレートと、前記金属プレートの前記第1面又は第2面に固定されたグラフェンを含む第2熱伝導プレートと、前記金属プレートに対する前記第1熱伝導プレートの取付面のうち、前記第1熱伝導プレートが前記金属プレートの外形から張り出した部分に対して固定された金属シートと、前記金属シートに対して接合された冷却フィンと、前記冷却フィンに送風可能な送風ファンと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、部品点数を低減し、軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態に係る電子機器を上から見下ろした模式的な平面図である。
図2図2は、筐体の内部構造を模式的に示す底面図である。
図3図3は、冷却モジュールの斜視図である。
図4図4は、冷却モジュール及びマザーボードの模式的な側面断面図である。
図5図5は、変形例に係る金属フレームを備えた冷却モジュールの模式的な平面図である。
図6図6は、変形例に係る冷却モジュール及びマザーボードの模式的な側面断面図である。
図7図7は、図6に示す冷却モジュールの冷却フィン及びその周辺部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る電子機器及び冷却モジュールについて好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした模式的な平面図である。図1に示すように、電子機器10は、ディスプレイ筐体12と筐体14とをヒンジ16で相対的に回動可能に連結したクラムシェル型のノート型PCである。本発明に係る電子機器は、ノート型PC以外、携帯電話、スマートフォン、又は携帯用ゲーム機等でもよい。
【0014】
ディスプレイ筐体12は、筐体14よりも薄い扁平な箱体である。ディスプレイ筐体12には、ディスプレイ18が搭載されている。ディスプレイ18は、映像を表示するディスプレイ部18aと、タッチ操作のためのタッチパネル部18bと、を有する。ディスプレイ部18aは、例えば有機EL(OLED:Organic Light Emitting Diode)や液晶で構成される。タッチパネル部18bは、省略されてもよい。
【0015】
以下、筐体14及びこれに搭載された各構成要素について、図1に示すようにディスプレイ筐体12を所定角度に開いてディスプレイ18を視認する状態を基準とし、手前側を前、奥側を後、幅方向を左右、厚み方向を上下、と呼んで説明する。
【0016】
筐体14は、扁平な箱体である。筐体14は、その後端部にヒンジ16が連結されている。筐体14は、上面及び四周側面を形成する上カバー材14aと、下面を形成する下カバー材14bとで構成されている。筐体14の上面には、キーボード20及びタッチパッド21が設けられている。筐体14の内部には、本実施形態に係る冷却モジュール22が搭載されている。
【0017】
図2は、筐体14の内部構造を模式的に示す底面図である。図2は、下カバー材14bを取り外して上カバー材14aの内面側から筐体14内を見た図である。図2に示すように、筐体14の内部には、マザーボード24と、バッテリ装置26と、ディスプレイ基板28やタッチパネル基板29等の各種電子部品と、冷却モジュール22と、が搭載されている。
【0018】
バッテリ装置26は、当該電子機器10の電源となる充電池である。ディスプレイ基板28は、ディスプレイ部18aでの映像表示を制御するためのサブボードである。ディスプレイ基板28は、筐体12,14間に亘るフレキシブル基板28aを介してディスプレイ部18aと電気的に接続されている。タッチパネル基板29は、タッチパネル部18bの制御用のサブボードである。タッチパネル基板29は、筐体12,14間に亘るフレキシブル基板29aを介してタッチパネル部18bと電気的に接続されている。ディスプレイ基板28及びタッチパネル基板29は、マザーボード24の後側に配置され、マザーボード24と接続されている。
【0019】
マザーボード24は、CPU(Central Processing Unit)30、通信モジュール31、DC/DCコンバータ32、SSD(Solid State Drive)33等が実装されたPCB(プリント基板)である。マザーボード24は、キーボード20の下に配置され、上カバー材14aにねじ止めされている。マザーボード24は、上面24aが上カバー材14aに対する取付面となり、下面24bがCPU30や通信モジュール31等の電子部品の実装面となる。電子部品の一部は、上面24aに実装されていてもよい。マザーボード24は、平面視略T字形状を成し、筐体14の後部で左右に亘って延在している。
【0020】
CPU30は、当該電子機器10の主たる制御や処理に関する演算を行う。CPU30は、筐体14内に搭載された電子部品中で最大級の発熱体である。通信モジュール31は、ディスプレイ筐体12や筐体14に搭載された図示しないアンテナを介して送受信される無線通信の情報処理を行うデバイスである。通信モジュール31は、例えば第5世代移動通信システムに対応している。DC/DCコンバータ32は、バッテリ装置26から供給される直流電力の電圧をCPU30等の各電子部品に要求される電圧に変換する。SSD33は、ディスクドライブの代わりに半導体メモリを用いた記憶装置である。これら通信モジュール31、DC/DCコンバータ32、及びSSD33は、CPU30に次ぐ発熱体である。
【0021】
本実施形態のマザーボード24は、CPU30、DC/DCコンバータ32、SSD33が略横一列に並んで配置され、通信モジュール31がCPU30の前側に配置されている。これらCPU30等の配置は適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0022】
冷却モジュール22は、CPU30、通信モジュール31、DC/DCコンバータ32、及びSSD33等の発熱体が発生する熱を吸熱及び拡散し、さらに筐体14外へと放熱する冷却装置である。冷却モジュール22の冷却対象となる電子部品は、CPU30、通信モジュール31、DC/DCコンバータ32、SSD33以外であっても勿論よく、例えばGPU(Graphics Processing Unit)等の各種演算装置、カメラ用の画像チップや部品等、電子機器10の動作中に発熱する各種発熱体を例示できる。
【0023】
図3は、冷却モジュール22の斜視図である。図4は、冷却モジュール22及びマザーボード24の模式的な側面断面図である。図4は、冷却モジュール22の機能を明示するため、通信モジュール31をCPU30の左側に並べて図示している。図3及び図4に示すように、冷却モジュール22は、ベーパーチャンバ34と、金属フレーム35が一体形成された金属プレート36と、熱伝導プレート37と、冷却フィン38と、送風ファン39と、を備える。
【0024】
図2図4に示すように、ベーパーチャンバ34は、平面視略クランク形状を成している。ベーパーチャンバ34は、CPU30と冷却フィン38との間に亘って延在し、CPU30からの熱を冷却フィン38へと輸送する。図4に示すように、ベーパーチャンバ34は、金属プレート41と金属プレート36とで挟まれた部分に密閉空間34aを形成し、この密閉空間34aに作動流体を封入したものである。
【0025】
金属プレート41は、アルミニウム、銅、又はステンレスのような熱伝導率が高い金属によって形成されたプレートである。金属プレート41は、ベーパーチャンバ34の蓋板(上板)であり、略バスタブ形状を有する。金属プレート36は、アルミニウム、銅、又はステンレスのような熱伝導率が高い金属によって形成されたプレートである。金属プレート36は、金属プレート41よりも大きな外形(表面積)を有する。金属プレート36は、ベーパーチャンバ34の底板(下板)であり、当該冷却モジュール22の略全体に亘って広がっている。
【0026】
金属プレート41,36間は、金属プレート41の外周縁部が金属プレート36の第1面36aに対して溶接等によって接合されて封止されることで、内部に密閉空間34aが形成される。金属プレート41は、金属プレート36よりも小さい外形であるため、金属プレート36の第1面36aの一部のみを覆うように設けられる。図4は、金属プレート41,36間の接合部として、金属プレート41の外周縁部の端面を金属プレート36に突き当てて接合したように模式的に図示している。実際の接合部は、例えば金属プレート41の外周縁部を板厚方向に潰して第1面36aに接合することで、薄いフランジ形状を成す。
【0027】
ベーパーチャンバ34は、ヒートパイプの一種類であるプレート型の熱輸送装置である。密閉空間34aは、封入された作動流体が相変化を生じながら流通する流路となる。作動流体としては、例えば水、代替フロン、アセトン又はブタン等を例示できる。本実施形態の作動流体は水である。密閉空間34a内には、凝縮した作動流体を毛細管現象で送液するウィック(図示せず)が配設されている。ウイックは、例えば金属製の細線を綿状に編んだメッシュや微細流路等で形成される。
【0028】
図4に示すように、本実施形態のベーパーチャンバ34は、金属プレート36の密閉空間34aを形成する部分、つまり金属プレート41と対向する部分の第2面36bに対してCPU30が熱的に接続される。CPU30は、第2面36bに対して受熱部材30aを介して接続される。受熱部材30aは、アルミニウムや銅のような熱伝導率が高い金属によって形成されたプレートである。ベーパーチャンバ34は、金属プレート36の第2面36bに対してさらに冷却フィン38が熱的に接続される。CPU30は、密閉空間34aの一端部(金属フレーム35側の端部)に配置されている。冷却フィン38は、密閉空間34aの他端部(金属フレーム35側とは逆側の端部)に配置されている。これによりベーパーチャンバ34は、作動流体が発熱体であるCPU30からの熱で蒸発して拡散移動し、冷却フィン38に対して放熱して凝縮した後に再びCPU30に対する吸熱位置まで戻る相変化を繰り返して熱輸送を行う。
【0029】
図2図4に示すように、金属フレーム35は、平面視略クランク形状を成している。金属フレーム35は、金属プレート36の一部であり、金属プレート36が金属プレート41の外形(外周縁部)から張り出した部分に形成されている。金属フレーム35は、熱伝導プレート37を支持するためのものである。
【0030】
金属フレーム35は、金属プレート36の各所に矩形状等の切抜き孔35aを形成することで、外枠部35bと内枠部35cとを有する格子状を成している。外枠部35bは、金属フレーム35の外周縁部を縁取るように延在した帯状の板部である。内枠部35cは、外枠部35bの内周側に梁状に設けられた帯状の板部である。本実施形態の金属フレーム35は、格子状に形成されることで、軽量化と高い剛性とを両立している。これにより金属フレーム35は、冷却モジュール22の重量増を最小限に抑えつつ、熱伝導プレート37を安定して支持することができる。
【0031】
図2図4に示すように、熱伝導プレート37は、略クランク形状を成している。熱伝導プレート37は、金属プレート36の第2面36bのうち、密閉空間34aと重なる部分の金属フレーム35側の縁部から金属フレーム35の略全面に亘って延在している。熱伝導プレート37は、グラフェンを含むプレートであり、高い熱伝導率を有する。熱伝導プレート37は、例えばグラフェンを含む炭素同位体(例えば、グラファイト、カーボンナノチューブ、フラーレン等を含む)が配合された樹脂を溶融させ、この樹脂を加熱圧縮してプレート状に硬化させたものである。熱伝導プレート37を構成するグラフェンのプレートとしては、例えば「GHP200」(Ying Shun社の製品名)を例示できる。
【0032】
このように熱伝導プレート37は炭素系の薄いプレートである。そこで、熱伝導プレート37は、十分な取付剛性を担保するため、金属フレーム35で支持している。熱伝導プレート37は、取付面37aが両面テープ、粘着剤、又は接着剤等で金属フレーム35の枠部35b,35cに固定されている。
【0033】
熱伝導プレート37は、CPU30に次ぐ発熱体である通信モジュール31、DC/DCコンバータ32、及びSSD33等と重なるように配置される。図4に示す構成例では、熱伝導プレート37は、金属フレーム35に対する取付面37aの裏面37bが、通信モジュール31等の発熱体の頂面との間に僅かな隙間を介して対向している。熱伝導プレート37の裏面37bと通信モジュール31等の発熱体との間は、CPU30と同様な受熱部材30aやサーマルラバー等を介在させてもよい。
【0034】
本実施形態の熱伝導プレート37は、一部が金属フレーム35から金属プレート36の密閉空間34aを形成する部分まで延在することで、密閉空間34aと上下方向にオーバーラップしている(図4参照)。これにより熱伝導プレート37は、ベーパーチャンバ34へと直接的に伝熱可能である。
【0035】
図2図4に示すように、冷却フィン38は、筐体14の外壁(本実施形態では後壁)に形成された排気口に面して配置される。冷却フィン38は、アルミニウム、銅、又はステンレスのような熱伝導率が高い金属のブロックに筐体14の内外方向に貫通する複数のスリットを形成したものである。冷却フィン38は、金属プレート36の密閉空間34aを形成する部分の第2面36bに対して溶接等によって接合されている。
【0036】
図2図4に示すように、送風ファン39は、冷却フィン38と受熱部材30a(CPU30)との間となる位置で、金属プレート36の第2面36bに取り付けられている。送風ファン39は、冷却フィン38と近接し、筐体14内から吸い込んだ空気を冷却フィン38のスリットを通して筐体14外へと排気する。
【0037】
以上のように、本実施形態の冷却モジュール22は、最大級の発熱体であるCPU30を吸熱対象とするベーパーチャンバ34と、CPU30に次ぐ発熱体である通信モジュール31等を吸熱対象とする熱伝導プレート37と、を一体にモジュール化したものである。
【0038】
ベーパーチャンバ34の板厚は、例えば0.3mmであり、このうち金属プレート36の板厚が0.1mmであり、金属プレート36の第1面36aから金属プレート41の外面までの板厚が0.2mmである。金属フレーム35は、金属プレート36の一部であるため、その板厚は0.1mmである。熱伝導プレート37の板厚は、例えば0.2mmである。送風ファン39及び冷却フィン38の板厚は、例えば2.7mmである。従って、冷却モジュール22は、全体として極めて薄い板厚を有する。
【0039】
冷却モジュール22は、最も厚みのある送風ファン39の側方に熱伝導プレート37を配置している。そして、送風ファン39と熱伝導プレート37との間に形成されるスペースにCPU30及び受熱部材30aを配置して金属プレート36と熱的に接続し、その側方に形成されるスペースに通信モジュール31等を配置して熱伝導プレート37と熱的に接続している。その結果、冷却モジュール22は、筐体14内でのスペース効率がよく、筐体14全体の板厚に対する影響も最小限でありながらも高い冷却性能を確保できる。
【0040】
図4中に1点鎖線で示す矢印は、熱の移動を模式的に示したものである。冷却モジュール22において、ベーパーチャンバ34の熱伝導率は、5000~10000(W/mK)程度である。熱伝導プレート37を形成するグラフェンプレートの熱伝導率は、1600(W/mK)程度である。金属プレート36が銅である場合の熱伝導率は、400(W/mK)程度である。
【0041】
従って、CPU30が発生した熱は、受熱部材30aからベーパーチャンバ34へと伝達され、極めて高効率に冷却フィン38へと伝達される。一方、通信モジュール31等が発生した熱は、銅プレートよりも4倍程度の熱伝導率を持つ熱伝導プレート37に伝達され、高効率に拡散して放熱される。この際、熱伝導プレート37は、一部が金属プレート36を挟んで密閉空間34aと上下方向にオーバーラップしている。このため、通信モジュール31等の熱は、一部がベーパーチャンバ34を介して冷却フィン38へと高効率に輸送されるため、一層高い放熱性能が得られる。
【0042】
しかもグラフェンを含む熱伝導プレート37の密度は、例えば1.5(g/cm)程度であり、銅プレートの密度、例えば8.9(g/cm)程度に比べて大幅に軽い。すなわち、当該冷却モジュール22は、グラフェンを含む熱伝導プレート37で熱拡散プレートを形成している。このため、当該冷却モジュール22は、銅プレートで熱拡散プレートを形成した構成に対し、金属フレーム35の重量分を考慮しても大幅な軽量化が可能となっている。
【0043】
図5は、変形例に係る金属フレーム35Aを備えた冷却モジュール22の模式的な平面図である。上記した金属フレーム35は、格子状であった。これに対し、図5に示す金属フレーム35Aは、内枠部35cを持たず、外枠部35bのみで枠状に形成されている。これにより金属フレーム35Aは、金属フレーム35よりもさらなる軽量化を図りつつ、必要な剛性を確保できる。
【0044】
以上のように、本実施形態の電子機器10は、筐体14内に、第1発熱体であるCPU30と、第2発熱体である通信モジュール31等と、冷却モジュール22と、を備える。冷却モジュール22は、ベーパーチャンバ34と、ベーパーチャンバ34を構成する金属プレート36に形成された金属フレーム35と、金属フレーム35で支持されたグラフェンを含む熱伝導プレート37と、を有する。そして、ベーパーチャンバ34がCPU30が発生する熱を吸熱可能に配置され、熱伝導プレート37が通信モジュール31等が発生する熱を吸熱可能に配置されている。
【0045】
従って、当該冷却モジュール22は、1枚の金属プレート36に対して、異なる発熱体の吸熱に対応するベーパーチャンバ34と熱伝導プレート37とを設けることで、2種類の熱輸送部材が一体にモジュール化されている。その結果、当該冷却モジュール22は、部品点数を低減し、筐体14内への組付けが容易となる。しかも熱伝導プレート37は、グラフェンを含むプレートで形成されることで、従来の銅等の金属製の熱拡散プレートよりも大幅な軽量化が可能となる。また、このように炭素系材料で形成された熱伝導プレート37は、金属フレーム35で支持されるため、剛性や取付安定性の問題を生じることもない。
【0046】
図6は、変形例に係る冷却モジュール22A及びマザーボード24の模式的な側面断面図である。図7は、図6に示す冷却モジュール22Aの冷却フィン38及びその周辺部の拡大図である。図6に示す冷却モジュール22Aにおいて、図1図5に示される参照符号と同一の参照符号は同一又は同様な構成を示し、このため同一又は同様な機能及び効果を奏するものとして詳細な説明を省略する。
【0047】
図6に示す冷却モジュール22Aは、図4に示す冷却モジュール22と比べて、ベーパーチャンバ34の代わりに熱伝導プレート44及び金属シート45を備える点が相違する。
【0048】
熱伝導プレート44は、上記したベーパーチャンバ34の金属プレート41と略同一の平面形状を有する。熱伝導プレート44は、金属プレート36の第1面36aに取り付けられている。熱伝導プレート44は、上記した熱伝導プレート37と同一又は同様な構造でよく、グラフェンを含むプレートである。熱伝導プレート44は、取付面44aが両面テープ、粘着剤、又は接着剤等で金属プレート36の第1面36aに固定されている。図6に示すように、冷却モジュール22Aの金属プレート36は、図4に示す構成例よりも外形が小さい。熱伝導プレート44は、金属プレート36の第1面36aに固定された状態で、金属フレーム35側とは逆側の一部が金属プレート36の外形から張り出した部分(突出部分44b)を有する。冷却モジュール22Aにおいても、熱伝導プレート37の一部が金属プレート36を挟んで熱伝導プレート44と上下方向にオーバーラップしている。
【0049】
金属シート45は、アルミニウム又は銅のような熱伝導率の高い金属で形成されたシートである。本実施形態の金属シート45は、銅シートである。金属シート45は、熱伝導プレート44の金属プレート36に対する取付面44aのうち、金属プレート36から突出した突出部分44bに対して固定されている。金属シート45は、炭素系材料で形成された熱伝導プレート44に対して、金属製で表面に凹凸形状を持った冷却フィン38を強固に固定するための中間部材である。金属シート45の板厚は、例えば12μm程度である。
【0050】
図7に示すように、金属シート45は、両面テープ、粘着剤、又は接着剤等の固定部材46を用いて熱伝導プレート44の取付面44aに固定されている。本実施形態の固定部材46は、高い熱伝導率を持った両面粘着テープである。固定部材46の板厚は、例えば15μm程度である。金属シート45は、上下両面が高い平面度を持ったシート状或いはホイル状の部材であり、固定部材46を介して強固に熱伝導プレート44に固着できる。
【0051】
冷却フィン38は、その頂面が金属シート45に対して接合部47によって強固に接合されている。接合部47は、例えばスズを含む溶接による接合部である。接合部47の厚みは、例えば10μm程度である。冷却フィン38の頂面は、上記したように凹凸形状を有する。しかしながら、冷却フィン38は、溶接による接合部47により強固に金属シート45に接合され、結果として熱伝導プレート44に冷却フィン38が強固に固定される。
【0052】
図6中に1点鎖線で示す矢印は、熱の移動を模式的に示したものである。冷却モジュール22Aでは、ベーパーチャンバ34に比べると熱伝導率が劣るが、その分、大幅な軽量化が図られた熱伝導プレート44を用いている。このため、冷却モジュール22Aは、上記した冷却モジュール22よりもさらなる軽量化が可能である。しかも冷却モジュール22Aにおいても、CPU30の熱は、受熱部材30aから熱伝導プレート44へと伝達され、高効率に冷却フィン38へと伝達される。一方、通信モジュール31等の熱は、熱伝導プレート37内で高効率に拡散して放熱され、一部が金属プレート36から熱伝導プレート44へと伝達されて、冷却フィン38へと高効率に輸送される。
【0053】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0054】
10 電子機器
14 筐体
22,22A 冷却モジュール
30 CPU
31 通信モジュール
32 DC/DCコンバータ
33 SSD
34 ベーパーチャンバ
34a 密閉空間
35,35A 金属フレーム
36,41 金属プレート
37,44 熱伝導プレート
38 冷却フィン
39 送風ファン
45 金属シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7