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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169201
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/37 20160101AFI20221101BHJP
   B25J 3/00 20060101ALI20221101BHJP
   B25J 19/06 20060101ALI20221101BHJP
   G01N 1/10 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
A61B34/37
B25J3/00 Z
B25J19/06
G01N1/10 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075074
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】国師 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】笠 秀行
(72)【発明者】
【氏名】大野 誠太
【テーマコード(参考)】
2G052
3C707
【Fターム(参考)】
2G052AA29
2G052AD06
2G052AD26
2G052BA19
2G052BA27
2G052GA29
2G052HA19
2G052HC15
2G052HC42
2G052HC44
2G052JA23
3C707DS01
3C707JS02
3C707JT04
3C707JU12
3C707KS21
3C707KT02
3C707KT04
3C707KT11
3C707KT15
3C707KX10
3C707MS27
3C707MT01
(57)【要約】
【課題】被検者から処置者への感染リスクを低減することが可能なロボットシステムを提供する。
【解決手段】このロボットシステム100は、マスタロボット20と、マスタロボット20により遠隔操作されて被検者Sから検体を採取するスレーブロボット11と、スレーブロボット11の先端に接続され、被検者Sから検体を採取する検体採取部材12aを保持するハンド12と、スレーブロボット11の先端にハンド12に対してオフセットして配置され、ハンド12に保持された検体採取部材12aおよび被検者Sを撮像する撮像部13と、撮像部13により撮像した画像が、検体採取部材12aが延びる方向に沿った方向から撮像した画像になるように、歪みを補正して出力する制御部30と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスタロボットと、
前記マスタロボットにより遠隔操作されて被検者から検体を採取するスレーブロボットと、
前記スレーブロボットの先端に接続され、被検者から検体を採取する検体採取部材を保持するハンドと、
前記スレーブロボットの先端に前記ハンドに対してオフセットして配置され、前記ハンドに保持された前記検体採取部材および被検者を撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像した画像が、前記検体採取部材が延びる方向に沿った方向から撮像した画像になるように、歪みを補正して出力する画像補正部と、を備える、ロボットシステム。
【請求項2】
前記撮像部は、前記検体採取部材が延びる方向に対して前記検体採取部材側に傾斜した方向に撮像方向が向くように配置されており、
前記画像補正部は、前記撮像部により撮像した画像が、前記検体採取部材が延びる方向に沿った方向から撮像した画像になるように、歪みを補正して出力する、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記画像補正部は、キャリブレーション用部材を前記撮像部により予め撮像し、前記キャリブレーション用部材を撮像した撮像結果に基づいて、前記撮像部により撮像した画像が、前記検体採取部材が延びる方向に沿った方向から撮像した画像になるように、歪みを補正して出力する、請求項2に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記キャリブレーション用部材は、正方形形状の図形を含み、
前記画像補正部は、前記キャリブレーション用部材の前記正方形形状の図形を前記撮像部により予め撮像し、前記正方形形状の図形が画面内において正方形となるようにキャリブレーションを行い、キャリブレーション結果に基づいて、前記撮像部により撮像した画像が、前記検体採取部材が延びる方向に沿った方向から撮像した画像になるように、歪みを補正して出力する、請求項3に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記撮像部は、前記ハンドに対して上下方向に離間するとともに、撮像方向が上下方向に傾斜するように、前記スレーブロボットの先端に配置されている、請求項2~4のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記スレーブロボットは、被検者の鼻孔から棒状の前記検体採取部材を挿入して検体を採取する、請求項1~5のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記画像補正部は、前記撮像部により撮像した画像が、棒状の前記検体採取部材を被検者の鼻孔に挿入する方向から撮像した画像になるように、歪みを補正して出力する、請求項6に記載のロボットシステム。
【請求項8】
前記マスタロボット側に設けられ、前記撮像部により撮像されて前記画像補正部により補正された画像を表示する表示部をさらに備える、請求項1~7のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項9】
マスタロボットと、
前記マスタロボットにより遠隔操作されて被検者に対して処置を行うスレーブロボットと、
前記スレーブロボットの先端に接続され、被検者に対して処置を行う処置部材を保持するハンドと、
前記スレーブロボットの先端に前記ハンドに対してオフセットして配置され、前記ハンドに保持された前記処置部材および被検者を撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像した画像が、前記処置部材が延びる方向に沿った方向から撮像した画像になるように、歪みを補正して出力する画像補正部と、を備える、ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボットシステムに関し、特に、被検者から検体を採取するなどの処置を行うロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検者から検体を採取するための検体採取用ボックスが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1には、検体採取用本体ボックスと、検体採取用本体ボックスに設けられた保護グローブと、を備える検体採取用ボックスが開示されている。この検体採取用ボックスでは、検体を採取する処置者が検体採取用本体ボックス内に入った状態で、保護グローブを介して、被検者から検体を採取する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3228999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、処置者が検体採取用本体ボックス内に入った状態で保護グローブを介して被検者から検体を採取するため、処置者は被検者に対して近接して位置する必要がある。また、処置者が検体採取用本体ボックスの中に入るため、検体採取用本体ボックス内に空気を取り込む必要がある。したがって、被検者から検体を採取する際に、処置者が感染するリスクが高いという問題点がある。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、本開示の1つの目的は、被検者から処置者への感染リスクを低減することが可能なロボットシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1の局面によるロボットシステムは、マスタロボットと、マスタロボットにより遠隔操作されて被検者から検体を採取するスレーブロボットと、スレーブロボットの先端に接続され、被検者から検体を採取する検体採取部材を保持するハンドと、スレーブロボットの先端にハンドに対してオフセットして配置され、ハンドに保持された検体採取部材および被検者を撮像する撮像部と、撮像部により撮像した画像が、検体採取部材が延びる方向に沿った方向から撮像した画像になるように、歪みを補正して出力する画像補正部と、を備える。
【0007】
第1の局面によるロボットシステムでは、上記のように、マスタロボットと、マスタロボットにより遠隔操作されて被検者から検体を採取するスレーブロボットとを設ける。これにより、マスタロボットを操作する処置者は、被検者に対して近接して位置する必要がないので、被検者から処置者への感染リスクを低減することができる。また、撮像部により撮像した画像が、検体採取部材が延びる方向に沿った方向から撮像した画像になるように、歪みを補正して出力する画像補正部を設ける。これにより、出力される画像が検体採取部材が延びる方向に見えるように補正されるので、出力される画像を見ながら処置者がマスタロボットによりスレーブロボットを遠隔操作する場合に、処置者が違和感なく操作を行うことができる。その結果、検体採取部材を保持するハンドに対してオフセットした位置に撮像部が配置されている場合にも、撮像画像を見ながらマスタロボットを操作する際の操作性が低下するのを抑制することができる。
【0008】
第2の局面によるロボットシステムは、マスタロボットと、マスタロボットにより遠隔操作されて被検者に対して処置を行うスレーブロボットと、スレーブロボットの先端に接続され、被検者に対して処置を行う処置部材を保持するハンドと、スレーブロボットの先端にハンドに対してオフセットして配置され、ハンドに保持された処置部材および被検者を撮像する撮像部と、撮像部により撮像した画像が、処置部材が延びる方向に沿った方向から撮像した画像になるように、歪みを補正して出力する画像補正部と、を備える。
【0009】
第2の局面によるロボットシステムでは、上記のように、マスタロボットと、マスタロボットにより遠隔操作されて被検者に対して処置を行うスレーブロボットとを設ける。これにより、マスタロボットを操作する処置者は、被検者に対して近接して位置する必要がないので、被検者に対して処置を行う際に、処置者の感染リスクを低減することができる。また、撮像部により撮像した画像が、処置部材が延びる方向に沿った方向から撮像した画像になるように、歪みを補正して出力する画像補正部を設ける。これにより、出力される画像が処置部材が延びる方向に見えるように補正されるので、出力される画像を見ながら処置者がマスタロボットによりスレーブロボットを遠隔操作する場合に、処置者が違和感なく操作を行うことができる。その結果、処置部材を保持するハンドに対してオフセットした位置に撮像部が配置されている場合にも、撮像画像を見ながらマスタロボットを操作する際の操作性が低下するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
上記のように、被検者から処置者への感染リスクを低減することができる。また、ハンドに対してオフセットした位置に撮像部が配置されている場合にも、撮像画像を見ながらマスタロボットを操作する際の操作性が低下するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態によるロボットシステムの概要を示した図である。
図2】一実施形態によるロボットシステムの制御的な構成を示したブロック図である。
図3】一実施形態によるロボットシステムの検体の採取を説明するための図である。
図4】一実施形態によるロボットシステムのキャリブレーション用部材を示した図である。
図5】一実施形態によるロボットシステムのキャリブレーション用部材の撮像を説明するための図である。
図6】一実施形態によるロボットシステムの撮像画像の歪みの補正を説明するための図である。
図7】一実施形態によるロボットシステムのキャリブレーション処理を説明するためのフローチャートである。
図8】一実施形態によるロボットシステムの被検者の撮像および表示処理を説明するためのフローチャートである。
図9】一実施形態の変形例によるロボットシステムの制御的な構成を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1図8を参照して、一実施形態によるロボットシステム100の構成について説明する。
【0013】
図1に示すように、ロボットシステム100は、被検者Sから検体を採取するために設けられている。また、ロボットシステム100は、ブース10と、スレーブロボット11と、マスタロボット20と、制御部30(図2参照)と、を備えている。なお、制御部30は、特許請求の範囲の「画像補正部」の一例である。
【0014】
ブース10では、図1に示すように、被検者Sからスレーブロボット11により検体が採取される。ブース10は、側面が壁により覆われている。ブース10には、スレーブロボット11が配置されている。ブース10のスレーブロボット11が配置される領域は、被検者Sが入る領域に対して隔離壁により仕切られている。
【0015】
スレーブロボット11は、マスタロボット20により遠隔操作されて被検者Sから検体を採取する。また、スレーブロボット11は、検体採取部材12aによって被検者Sから検体を採取する。検体採取部材12aは、棒状に形成されている。検体採取部材12aは、たとえば、滅菌綿棒(スワブ)である。スレーブロボット11は、図3に示すように、たとえば、被検者Sの鼻孔から棒状の検体採取部材12aを挿入し、挿入した検体採取部材12aによって被検者Sの鼻咽頭から検体(鼻咽頭ぬぐい液)を採取する。なお、スレーブロボット11は、被検者Sの口腔内に検体採取部材12aを挿入して検体を採取してもよい。採取された検体に対しては、たとえば、PCR(Polymerase Chain Reaction)検査などのウイルス検査が行われる。
【0016】
スレーブロボット11は、垂直多関節ロボットを含んでいる。スレーブロボット11は、先端にハンド12が設けられている。スレーブロボット11は、複数(たとえば、7つ)の関節を有している。スレーブロボット11の複数の関節の各々には、図2に示すように、サーボモータなどの駆動部113と、駆動部113の駆動位置を検出するエンコーダ112とが設けられている。
【0017】
図3に示すように、スレーブロボット11の先端には、取付部11bが接続されている。具体的には、取付部11bは、先端関節11aに接続されている。先端関節11aは、取付部11bを第1軸線A1回りに回転させる。
【0018】
ハンド12は、スレーブロボット11の先端に接続されている。具体的には、ハンド12は、取付部11bに接続されている。ハンド12は、検体採取部材12aを保持する。ハンド12は、たとえば、一対の把持部材を有し、一対の把持部材によって検体採取部材12aを把持して保持する。
【0019】
また、スレーブロボット11には、スレーブロボット11の動作を制御する制御部111が設けられている。制御部111は、CPU(Central Processing Unit)111aと、メモリ111bとを含んでいる。CPU111aは、メモリ111bに格納されたプログラムに基づいて、スレーブロボット11の動作を制御する。
【0020】
スレーブロボット11は、処置者Oがマスタロボット20の先端を操作した方向に対応する方向に動作される。たとえば、処置者Oがマスタロボット20を上下方向(Z方向)に動かした場合、スレーブロボット11のハンド12(およびハンド12が保持する検体採取部材12a)が上下方向に移動される。また、処置者Oがマスタロボット20を左右方向(Y方向)に動かした場合、スレーブロボット11のハンド12(およびハンド12が保持する検体採取部材12a)が左右方向に移動される。また、処置者Oがマスタロボット20を前後方向(X方向)に動かした場合、スレーブロボット11のハンド12(およびハンド12が保持する検体採取部材12a)が前後方向に移動される。なお、検体採取部材12aによって被検者Sから検体を採取する際には、処置者Oがマスタロボット20を前方向(X1方向)に動かしてスレーブロボット11のハンド12(およびハンド12が保持する検体採取部材12a)を前方向(挿入方向)に移動させることによって、被検者Sの鼻腔内に検体採取部材12aが挿入される。
【0021】
ハンド12は、第1軸線A1と平行な第2軸線A2回りに検体採取部材12aを回転させる回転部12bを含んでいる。たとえば、ハンド12は、検体採取部材12aを被検者Sの鼻腔の奥に当接させた状態で、第2軸線A2周りに検体採取部材12aを回転させて、被検者Sから検体を採取する。
【0022】
図3に示すように、撮像部13は、ハンド12に保持された検体採取部材12aおよび被検者Sを撮像する。撮像部13は、スレーブロボット11の先端に配置されている。また、撮像部13は、ハンド12に対してオフセットした状態で配置されている。また、撮像部13は、取付部11bに、接続されている。また、撮像部13は、ハンド12に対して上下方向に離間するとともに、撮像方向が上下方向に傾斜するように、スレーブロボット11の先端に配置されている。
【0023】
また、撮像部13は、検体採取部材12aが延びる方向に対して検体採取部材12a側に傾斜した方向に撮像方向が向くように配置されている。
【0024】
図1に示すように、マスタロボット20は、スレーブロボット11を遠隔操作する。具体的には、マスタロボット20は、医師などの処置者Oによって操作されることによって、スレーブロボット11を遠隔操作する。マスタロボット20は、処置者Oの操作に基づいた操作信号を出力する。スレーブロボット11は、マスタロボット20の操作信号に基づいて、処置者Oの操作に対応する動作を行う。スレーブロボット11とマスタロボット20とは、有線または無線によって互いに通信可能に接続されている。
【0025】
マスタロボット20は、図2に示すように、制御部21と、エンコーダ22と、駆動部23とを含んでいる。また、マスタロボット20側には、図1に示すように、表示部24が設けられている。
【0026】
制御部21は、マスタロボット20の動作を制御するとともに、処置者Oのマスタロボット20に対する操作を取得する。制御部21は、CPU21aと、メモリ21bとを含んでいる。CPU21aは、メモリ21bに格納されたプログラムに基づいて、マスタロボット20の動作を制御する。
【0027】
エンコーダ22は、サーボモータなどの駆動部113の駆動位置を検出する。駆動部23は、マスタロボット20の各関節を駆動させる。
【0028】
表示部24は、被検者Sの画像(映像)を表示する。表示部24は、被検者Sを撮像する撮像部13(図3参照)に基づく映像、および、被検者Sを側方から撮像するカメラ(図示せず)の映像などを表示する。表示部24は、撮像部13により撮像されて制御部30により補正された画像を表示する。処置者Oは、表示部24に表示されたリアルタイムの被検者Sの映像を確認しながら、マスタロボット20を用いてスレーブロボット11の遠隔操作を行う。表示部24は、たとえば、液晶モニタを含んでいる。
【0029】
制御部30は、図2に示すように、CUP31と、メモリ32とを含んでいる。CPU31は、メモリ32に格納されたプログラムに基づいて、制御を行う。
【0030】
制御部30は、マスタロボット20から遠隔操作を行うための操作信号を受信し、遠隔操作を行うスレーブロボット11に対して、操作信号に基づく動作指令信号を送信する。
【0031】
ここで、本実施形態では、制御部30は、撮像部13により撮像した画像が、検体採取部材12aが延びる方向に沿った方向から撮像した画像になるように、歪みを補正して出力する。制御部30は、撮像部13により撮像した画像を取得し、取得した画像を補正して、表示部24に出力する。
【0032】
また、制御部30は、撮像部13により撮像した画像が、検体採取部材12aが延びる方向に沿った方向から撮像した画像になるように、歪みを補正して出力する。具体的には、制御部30は、キャリブレーション用部材14を撮像部13により予め撮像し、キャリブレーション用部材14を撮像した撮像結果に基づいて、撮像部13により撮像した画像が、検体採取部材12aが延びる方向に沿った方向から撮像した画像になるように、歪みを補正して出力する。
【0033】
キャリブレーション用部材14は、図4に示すように、正方形形状の図形を含んでいる。具体的には、キャリブレーション用部材14は、中心位置が同じで、かつ、大きさが互いに異なる複数の正方形を含む図形を備えている。キャリブレーション用部材14は、図5に示すように、上下方向に立てた状態で、撮像部13により撮像される。つまり、上下方向に立てた状態のキャリブレーション用部材14が、上下方向に傾斜した撮像方向を有する撮像部13により撮像される。
【0034】
図6に示すように、制御部30は、キャリブレーション用部材14の正方形形状の図形を撮像部13により予め撮像し、正方形形状の図形が画面内において正方形となるようにキャリブレーションを行い、キャリブレーション結果に基づいて、撮像部13により撮像した画像が、検体採取部材12aが延びる方向に沿った方向から撮像した画像になるように、歪みを補正して出力する。
【0035】
図6(A)に示すように、歪みが補正される前の画像13aでは、撮像部13の撮像方向(光軸)が上下方向に傾斜した状態の画像となる。図6(B)に示すように、歪みが補正された後の画像13bでは、検体採取部材12aが延びる方向と同じ方向から見た画像となる。
【0036】
また、制御部30は、撮像部13により撮像した画像が、棒状の検体採取部材12aを被検者Sの鼻孔に挿入する方向から撮像した画像になるように、歪みを補正して出力する。
【0037】
(キャリブレーション処理)
図7を参照して、ロボットシステム100によるキャリブレーション処理について説明する。
【0038】
図7のステップS1において、制御部30は、キャリブレーション用部材14の正方形形状を撮像部13により撮像する制御を行う。ステップS2において、制御部30は、撮像部13により撮像したキャリブレーション用部材14の正方形形状の各頂点位置に基づいて正対視補正変換を行う。つまり、制御部30は、各正方形の4つの辺が等距離になるように撮像画像を変形させる制御を行う。また、制御部30は、撮像画像を変形させることにより補正する。そして、制御部30は、撮像画像を変形させる際のパラメータを記憶する。その後、キャリブレーション処理が終了される。
【0039】
(被検者の撮像および表示処理)
図8を参照して、ロボットシステム100による被検者Sの撮像および表示処理について説明する。
【0040】
図8のステップS3において、制御部30は、検体採取の作業開始の指令を受け付ける。ステップS4において、制御部30は、被検者Sを撮像部13により撮像する制御を行う。
【0041】
ステップS5において、制御部30は、撮像部13により撮像した画像を、キャリブレーション結果に基づいて、正対視補正を行う。つまり、制御部30は、キャリブレーション時に記憶した画像を変形させるパラメータを用いて、撮像した画像を変形させる。これにより、撮像部13により撮像した画像が、検体採取部材12aが延びる方向に沿った方向から撮像した画像になるように、歪みが補正される。
【0042】
ステップS6において、制御部30は、補正後の画像を表示部24に出力する。そして、ステップS7において、表示部24により、補正された画像を表示する。
【0043】
ステップS8において、制御部30は、終了の指令があるか否かを判断する。終了の指令があれば、処理が終了される。終了の指令がなければ、ステップS4に戻る。
【0044】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0045】
本実施形態では、上記のように、マスタロボット20と、マスタロボット20により遠隔操作されて被検者Sから検体を採取するスレーブロボット11とを設ける。これにより、マスタロボット20を操作する処置者Oは、被検者Sに対して近接して位置する必要がないので、被検者Sから処置者Oへの感染リスクを低減することができる。また、撮像部13により撮像した画像が、検体採取部材12aが延びる方向に沿った方向から撮像した画像になるように、歪みを補正して出力する制御部30を設ける。これにより、出力される画像が検体採取部材12aが延びる方向に見えるように補正されるので、出力される画像を見ながら処置者Oがマスタロボット20によりスレーブロボット11を遠隔操作する場合に、処置者Oが違和感なく操作を行うことができる。その結果、検体採取部材12aを保持するハンド12に対してオフセットした位置に撮像部13が配置されている場合にも、撮像画像を見ながらマスタロボット20を操作する際の操作性が低下するのを抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態では、上記のように、撮像部13は、検体採取部材12aが延びる方向に対して検体採取部材12a側に傾斜した方向に撮像方向が向くように配置されている。これにより、撮像部13が検体採取部材12aを保持するハンド12に対してオフセットした位置に配置されている場合にも、撮像部13により容易に検体採取部材12aを撮像することができる。また、制御部30は、撮像部13により撮像した画像が、検体採取部材12aが延びる方向に沿った方向から撮像した画像になるように、歪みを補正して出力する。これにより、撮像部13の撮像方向が検体採取部材12aの延びる方向に対して角度差がある場合でも、出力される画像は検体採取部材12aが延びる方向となるように補正されているので、処置者Oは補正された画像を見ながら、検体採取部材12aの延びる方向に沿った操作を容易に行うことができる。
【0047】
また、本実施形態では、上記のように、制御部30は、キャリブレーション用部材14を撮像部13により予め撮像し、キャリブレーション用部材14を撮像した撮像結果に基づいて、撮像部13により撮像した画像が、検体採取部材12aが延びる方向に沿った方向から撮像した画像になるように、歪みを補正して出力する。これにより、撮像部13の撮像方向に個体差がある場合でも、キャリブレーション用部材14を用いてキャリブレーションを行うことにより、撮像部13により撮像した画像が、検体採取部材12aが延びる方向に沿った方向から撮像した画像になるように容易に補正することができる。
【0048】
また、本実施形態では、上記のように、キャリブレーション用部材14は、正方形形状の図形を含んでいる。また、制御部30は、キャリブレーション用部材14の正方形形状の図形を撮像部13により予め撮像し、正方形形状の図形が画面内において正方形となるようにキャリブレーションを行い、キャリブレーション結果に基づいて、撮像部13により撮像した画像が、検体採取部材12aが延びる方向に沿った方向から撮像した画像になるように、歪みを補正して出力する。これにより、比較的単純な図形である正方形形状の図形を用いてキャリブレーションを行うことができるので、キャリブレーションの処理負担が増大するのを抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態では、上記のように、撮像部13は、ハンド12に対して上下方向に離間するとともに、撮像方向が上下方向に傾斜するように、スレーブロボット11の先端に配置されている。これにより、撮像部13をハンド12に対して左右方向を揃えた状態で配置することができるので、撮像した画像の左右方向に対する補正を行う必要がない。これにより、画像補正の処理負担が増大するのを抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態では、上記のように、スレーブロボット11は、被検者Sの鼻孔から棒状の検体採取部材12aを挿入して検体を採取する。これにより、鼻孔から棒状の検体採取部材12aを挿入することに起因して、被検者Sが咳やくしゃみをする場合でも、処置者Oが飛沫に接触することを抑制することができるので、処置者Oの感染リスクを低減することができる。また、小さい孔である鼻孔に検体採取部材12aを挿入する際にも、処置者Oが補正された撮像画像を見ながら違和感なく容易に挿入操作を行うことができる。
【0051】
また、本実施形態では、上記のように、制御部30は、撮像部13により撮像した画像が、棒状の検体採取部材12aを被検者Sの鼻孔に挿入する方向から撮像した画像になるように、歪みを補正して出力する。これにより、検体採取部材12aを挿入する方向と、補正された画像により見える方向とが同じ方向になるので、処置者Oは補正された画像を見ながら容易に検体採取部材12aを挿入する操作を行うことができる。
【0052】
また、本実施形態では、上記のように、マスタロボット20側に設けられ、撮像部13により撮像されて制御部30により補正された画像を表示する表示部24を設ける。これにより、処置者Oは、表示部24に表示された補正された画像を見ながら、マスタロボット20によりスレーブロボット11を遠隔操作して、検体の採取を容易に行うことができる。
【0053】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0054】
たとえば、上記実施形態では、マスタロボットおよびスレーブロボットとは別個に設けられた制御部により、撮像画像を補正する構成の例を示したが、本開示はこれに限られない。本開示では、図9に示す変形例のように、スレーブロボットを制御する制御部により撮像画像を補正してもよい。また、マスタロボットを制御する制御部により撮像画像を補正してもよい。また、スレーブロボットおよびマスタロボットの制御とは独立した別個の制御部(コンピュータ)により撮像画像を補正してもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、ロボットシステムにより遠隔操作により被検者から検体を採取する構成の例を示したが、本開示はこれに限られない。本開示では、ロボットシステムにより遠隔操作により処置者が被検者に対して検体採取以外の処置を行ってもよい。たとえば、診察を行ってもよい。この場合、診察に用いられる処置部材は、たとえば、棒状の診察道具であってもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、キャリブレーション用部材が正方形形状の図形を含む構成の例を示したが、本開示はこれに限られない。本開示では、キャリブレーション用部材は、正方形以外の図形を含んでいてもよい。たとえば、キャリブレーション用部材は、長方形、円形、多角形などの図形を含んでいてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、スレーブロボットが垂直多関節ロボットである例を示したが、本開示はこれに限られない。本開示では、スレーブロボットが、水平多関節ロボットおよび双腕ロボットなどの垂直多関節ロボット以外のロボットであってもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、1つのスレーブロボットが設けられている構成の例を示したが、本開示はこれに限られない。本開示では、1つのマスタロボットに対して複数のスレーブロボットが設けられていてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、スレーブロボットの先端に設けられた撮像部がハンドの下方に設けられている構成の例を示したが、本開示はこれに限られない。本開示では、スレーブロボットの先端に設けられた撮像部がハンドの上方または側方に設けられていてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローを用いて説明したが、本開示はこれに限られない。本開示では、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0061】
11 スレーブロボット
12 ハンド
12a 検体採取部材
13 撮像部
14 キャリブレーション用部材
20 マスタロボット
24 表示部
30 制御部(画像補正部)
100 ロボットシステム
111 制御部(画像補正部)
S 被検者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9