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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169209
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】フォロア軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 19/46 20060101AFI20221101BHJP
   F16C 33/58 20060101ALI20221101BHJP
   F16C 33/46 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
F16C19/46
F16C33/58
F16C33/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075088
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000229335
【氏名又は名称】日本トムソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】中村 智昭
(72)【発明者】
【氏名】川島 孝文
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA12
3J701AA14
3J701AA24
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA21
3J701BA35
3J701BA51
3J701BA54
3J701BA56
3J701DA03
3J701DA09
3J701DA14
3J701EA02
3J701EA03
3J701EA31
3J701EA34
3J701EA36
3J701EA37
3J701EA49
3J701FA01
3J701FA60
3J701GA60
(57)【要約】
【課題】動作音の抑制および他の部材への攻撃性の抑制を図ると共に、軸受の安定した動作を確保することができるフォロア軸受を提供する。
【解決手段】フォロア軸受1Aは、外輪60と、複数の転動体70と、複数の転動体70を保持する保持器80と、を備える。外輪60は、鋼からなり、円環状の第1部材40と、樹脂からなり、第1部材40の外周面を覆う円環状の第2部材50と、を含む。第1部材40は、筒状部42を含む。第2部材50は、軸方向において筒状部42の一方側に配置され、径方向において保持器80の外周面82Aと対向する第1対向面54Cを有する第1部分54Aと、軸方向において筒状部42の他方側に配置され、径方向において保持器80の外周面82Bと対向する第2対向面54Dを有する第2部分54Bと、を含む。径方向において、第1対向面54Cおよび第2対向面54Cはそれぞれ、第2軌道面41よりも外周側に配置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状の第1軌道面を外周面に有する内方部材と、
前記第1軌道面に対向する円環状の第2軌道面を内周面に有する外輪と、
前記第1軌道面および前記第2軌道面に沿う円環状の軌道上に前記第1軌道面および前記第2軌道面に接触するように配置される複数の転動体と、
前記複数の転動体を保持する保持器と、を備え、
前記外輪は、
鋼からなり、円環状の第1部材と、
樹脂からなり、前記第1部材の外周面を覆う円環状の第2部材と、を含み、
前記第1部材は、中空円筒状の形状を有し、前記第2軌道面を含む筒状部を含み、
前記第2部材は、
軸方向において前記筒状部の一方側に配置され、径方向において前記保持器の外周面と対向する第1対向面を有する第1部分と、
軸方向において前記筒状部の他方側に配置され、径方向において前記保持器の外周面と対向する第2対向面を有する第2部分と、を含み、
径方向において、前記第1対向面および前記第2対向面はそれぞれ、前記第2軌道面よりも外周側に配置される、フォロア軸受。
【請求項2】
前記フォロア軸受の回転軸を含む平面で切断した断面において、
前記保持器の外周面は、軸方向に沿って真っ直ぐに延びており、
前記第1対向面および前記第2対向面は、軸方向に沿って真っ直ぐに延びている、請求項1に記載のフォロア軸受。
【請求項3】
前記フォロア軸受の回転軸を含む平面で切断した断面において、
前記第1対向面および前記第2対向面のうちの少なくともいずれか一方は、前記保持器の外周面との間隔が、前記筒状部に近い側から前記筒状部に遠い側に向かって大きくなるよう、前記軸方向に対して傾斜している、請求項1に記載のフォロア軸受。
【請求項4】
前記第1部分および前記第2部分のうちの少なくともいずれか一方は、前記保持器と前記筒状部との間の領域に至るまで延びる舌状部を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフォロア軸受。
【請求項5】
前記筒状部は、径方向において前記保持器の外周面と対向する対向領域を有する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のフォロア軸受。
【請求項6】
前記筒状部の外周面は、軸方向に沿って真っ直ぐに延びている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のフォロア軸受。
【請求項7】
前記第1部材は、前記筒状部から径方向外側に延びる突部を含む、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のフォロア軸受。
【請求項8】
前記第2部材に対する前記第1部材の周方向の相対的な回転を抑制する回転抑制機構をさらに備える、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のフォロア軸受。
【請求項9】
前記回転抑制機構は、前記筒状部の外周面から丸穴状に凹む凹部を含み、
前記第2部材の一部は、前記凹部内に進入する、請求項8に記載のフォロア軸受。
【請求項10】
前記保持器は、溶接保持器である、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のフォロア軸受。
【請求項11】
前記第2部材を構成する樹脂は、エラストマーから構成されている、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のフォロア軸受。
【請求項12】
前記エラストマーは、熱可塑性エラストマーである、請求項11に記載のフォロア軸受。
【請求項13】
前記転動体は、ころである、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のフォロア軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フォロア軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外輪と樹脂製のプーリとが一体化された転がり軸受が知られている(たとえば特許文献1参照)。特許文献1によると、外輪は、一端部に径方向外向きのフランジを有する。特許文献1では、フランジの軸方向の一方側の端面を樹脂製のプーリから露出させて、外輪の放熱性を向上しているとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-191900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フォロア軸受においては、動作音の抑制、さらには、外輪と接触する他の部材への攻撃性の抑制が求められる場合がある。外輪の外周面を樹脂で覆う構成とすると、動作音の抑制および他の部材への攻撃性を抑制することができる。また、フォロア軸受においては、動作時に外輪に外周側から負荷を加えられる場合がある。そうすると、外輪の外周面が樹脂で覆われているため、軸受に変形が生じる場合がある。このような状況においても、軸受が安定した動作することが求められる。
【0005】
そこで、動作音の抑制および他の部材への攻撃性の抑制を図ると共に、軸受の安定した動作を確保することができるフォロア軸受を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従ったフォロア軸受は、円環状の第1軌道面を外周面に有する内方部材と、第1軌道面に対向する円環状の第2軌道面を内周面に有する外輪と、第1軌道面および第2軌道面に沿う円環状の軌道上に第1軌道面および第2軌道面に接触するように配置される複数の転動体と、複数の転動体を保持する保持器と、を備える。外輪は、鋼からなり、円環状の第1部材と、樹脂からなり、第1部材の外周面を覆う円環状の第2部材と、を含む。第1部材は、中空円筒状の形状を有し、第2軌道面を含む筒状部を含む。第2部材は、軸方向において筒状部の一方側に配置され、径方向において保持器の外周面と対向する第1対向面を有する第1部分と、軸方向において筒状部の他方側に配置され、径方向において保持器の外周面と対向する第2対向面を有する第2部分と、を含む。径方向において、第1対向面および第2対向面はそれぞれ、第2軌道面よりも外周側に配置される。
【発明の効果】
【0007】
上記フォロア軸受によれば、動作音の抑制および他の部材への攻撃性の抑制を図ると共に、軸受の安定した動作を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の一実施の形態におけるフォロア軸受の構造を示す概略斜視図である。
図2図2は、フォロア軸受の構造を示す概略断面図である。
図3図3は、外輪の第1部材の構造を示す概略斜視図である。
図4図4は、図2に示すフォロア軸受の一部を拡大して示す概略断面図である。
図5図5は、図2の領域Vを拡大して示す概略断面図である。
図6図6は、外輪の外周側から負荷が加えられた場合のフォロア軸受の一部を示す概略断面図である。
図7図7は、外輪の外周側から負荷が加えられた場合のフォロア軸受の一部を示す概略断面図である。
図8図8は、フォロア軸受の外周の寸法を変更した場合の負荷と変形量との関係を示すグラフである。
図9図9は、実施の形態2に係るフォロア軸受の一部を示す概略断面図である。
図10図10は、図9に示すフォロア軸受の一部を拡大して示す概略断面図である。
図11図11は、実施の形態3に係るフォロア軸受の一部を示す概略断面図である。
図12図12は、実施の形態4に係るフォロア軸受の一部を示す概略断面図である。
図13図13は、実施の形態5に係るフォロア軸受の一部を示す概略断面図である。
図14図14は、実施の形態5に係るフォロア軸受において、第2部材の図示を省略した場合の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態の概要]
本開示のフォロア軸受は、円環状の第1軌道面を外周面に有する内方部材と、第1軌道面に対向する円環状の第2軌道面を内周面に有する外輪と、第1軌道面および第2軌道面に沿う円環状の軌道上に第1軌道面および第2軌道面に接触するように配置される複数の転動体と、複数の転動体を保持する保持器と、を備える。外輪は、鋼からなり、円環状の第1部材と、樹脂からなり、第1部材の外周面を覆う円環状の第2部材と、を含む。第1部材は、中空円筒状の形状を有し、第2軌道面を含む筒状部を含む。第2部材は、軸方向において筒状部の一方側に配置され、径方向において保持器の外周面と対向する第1対向面を有する第1部分と、軸方向において筒状部の他方側に配置され、径方向において保持器の外周面と対向する第2対向面を有する第2部分と、を含む。径方向において、第1対向面および第2対向面はそれぞれ、第2軌道面よりも外周側に配置される。
【0010】
本開示のフォロア軸受において、外輪は、樹脂からなる第2部材を含む。これにより、外輪と接触する他の部材への攻撃性の抑制や、動作音の抑制が達成される。また、本開示のフォロア軸受は、複数の転動体を保持する保持器を含む。したがって、軸受の動作中の転動体の姿勢の安定した保持等を確保することができる。軸受の動作中に、保持器は、転動体と共に回転する。フォロア軸受においては、外輪の外周側から負荷が加えられる場合がある。外輪に負荷が加えられた場合、樹脂からなる第2部材が内周側に変形することが考えられる。そうすると、転動体を保持する保持器と第2部材とが接触して、保持器の回転を阻害するおそれがある。
【0011】
本開示のフォロア軸受において、樹脂からなる第2部材は、軸方向において筒状部の一方側に配置される第1部分と、筒状部の他方側に配置される第2部分と、を含む。そして、径方向において、第1部分に含まれる第1対向面および第2部分に含まれる第2対向面はそれぞれ、第2軌道面よりも外周側に配置される。そうすると、第1部分の第1対向面と保持器の外周面との間および第2部分の第2対向面と保持器の外周面との間において、それぞれ隙間が形成されることになる。したがって、フォロア軸受の外輪が外周側から負荷を加えられ、樹脂からなる第2部材が内周側に変形した場合でも、第1部分の第1対向面と保持器の外周面および第2部分の第2対向面と保持器の外周面とが接触するおそれを低減することができる。その結果、外輪の第2部材と保持器とが接触して、保持器の安定した回転を阻害するおそれを低減することができる。このように、上記フォロア軸受によれば、動作音の抑制および他の部材への攻撃性の抑制を図ると共に、軸受の安定した動作を確保することができる。
【0012】
なお、本開示において、「樹脂」はゴムを含む。すなわち、第2部材はゴムからなっていてもよい。また、本開示において、「樹脂からなる第2部材」は繊維強化樹脂からなる第2部材を含む。すなわち、第2部材を構成する樹脂は強化繊維を含んでいてもよい。強化繊維としては、たとえばガラス繊維、炭素繊維などを採用することができる。
【0013】
上記フォロア軸受について、フォロア軸受の回転軸を含む平面で切断した断面において、保持器の外周面は、軸方向に沿って真っ直ぐに延びていてもよい。第1対向面および第2対向面は、軸方向に沿って真っ直ぐに延びていてもよい。このようにすることにより、第1部分および第2部分の軸方向に回転軸に設けられる鍔部が配置されていた場合に、軸方向において、この鍔部と第1部分および第2部分との接触面積を大きく確保することができる。したがって、軸受の動作時における外輪の動作を安定させると共に、スラスト荷重が発生した場合の負荷の分散を図ることができる。その結果、より軸受の安定した動作を確保することができる。なお、真っ直ぐに延びるとは、回転軸を含む断面において、回転軸を示す仮想の線と、外周面、第1対向面および第2対向面を表す直線が平行であることをいう。ここで、平行とは、幾何学的に厳密に平行であることを示すのではなく、一方に対する他方の角度が3°以下のものも含むものである。
【0014】
また、上記フォロア軸受について、フォロア軸受の回転軸を含む平面で切断した断面において、第1対向面および第2対向面のうちの少なくともいずれか一方は、保持器の外周面との間隔が、筒状部に近い側から筒状部に遠い側に向かって大きくなるよう、軸方向に対して傾斜していてもよい。このようにすることにより、外輪の外周側から負荷が加わった場合に、変形した第1対向面および第2対向面と回転軸、引いては保持器の外周面との配置関係を平行に近くなるようにすることができる。したがって、第2部材と保持器とが接触するおそれを低減することができ、軸受の安定した動作をより確保することができる。
【0015】
上記フォロア軸受において、第1部分および第2部分のうちの少なくともいずれか一方は、保持器と筒状部との間の領域に至るまで延びる舌状部を含んでもよい。このようにすることにより、この舌状部により、保持器と筒状部とが接触するおそれを大きく低減することができる。そうすると、筒状部との接触による保持器の摩耗を抑制することができる。したがって、より確実に軸受の安定した動作を確保することができる。
【0016】
上記フォロア軸受において、筒状部は、径方向において保持器の外周面と対向する対向領域を有してもよい。このようにすることにより、外輪が外周側から与えられた負荷等により内周側に変形したとしても、筒状部の対向領域で保持器と接触することになる。そうすると、保持器と第2部材とが接触するおそれを低減することができる。したがって、保持器の円滑な回転を確保することが容易となる。
【0017】
上記フォロア軸受において、筒状部の外周面は、軸方向に沿って真っ直ぐに延びていてもよい。このようにすることにより、筒状部の形状を比較的単純にすることができ、生産性を良好にすることができる。
【0018】
また、上記フォロア軸受において、第1部材は、筒状部から径方向外側に延びる突部を含んでもよい。このような構成の突部により、第1部材と第2部材とが軸方向に分離するおそれをより低減することができる。
【0019】
上記フォロア軸受において、第1部材に対する第2部材の周方向の相対的な回転を抑制する回転抑制機構をさらに備えてもよい。このようにすることにより、第1部材に対する第2部材の相対的な回転を規制することができ、より確実に軸受の安定した動作を確保することができる。
【0020】
上記フォロア軸受においては、回転抑制機構は、筒状部の外周面から丸穴状に凹む凹部を含んでもよい。第2部材の一部は、凹部内に進入してもよい。このようにすることにより、凹部および凹部内に進入する第2部材により、第1部材に対する第2部材の相対的な回転を抑制することができる。また、第1部材に対する第2部材の軸方向の移動も規制することができる。このような構成は、筒状部に上記構成の凹部を設けた後、第1部材の外周側に第2部材を設ける際に、凹部内に樹脂を流し込んで形成することができるため、容易に上記構成を形成することができる。
【0021】
上記フォロア軸受において、保持器は、溶接保持器であってもよい。溶接保持器(溶接リテーナ(retainer))は、生産性が良好であるため、このようにすることにより、生産性の向上を図ることができる。
【0022】
上記フォロア軸受において、第2部材を構成する樹脂は、エラストマーから構成されていてもよい。このようにすることにより、フォロア軸受に負荷される振動や衝撃を効率的に吸収することができる。したがって、より軸受の安定した動作を確保することができる。
【0023】
上記フォロア軸受において、エラストマーは、熱可塑性エラストマーであってもよい。このようにすることにより、例えば射出成型を利用して、生産性の向上を図ることができる。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマーおよびポリ塩化ビニル系エラストマーのうちの少なくとも一つが選択されてもよい。さらに、熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマーおよびポリエステル系エラストマーのうちの少なくとも一つが選択されてもよい。
【0024】
上記フォロア軸受において、上記転動体は、ころであってもよい。このようにすることにより、フォロア軸受の断面高さを抑制しつつ、十分な耐荷重を達成することが容易となる。
【0025】
[実施形態の具体例]
次に、本開示のフォロア軸受の具体的な実施の形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0026】
(実施の形態1)
図1は、本開示の一実施の形態である実施の形態1に係るフォロア軸受の構造を示す概略斜視図である。図2は、図1に示すフォロア軸受の構造を示す概略断面図である。図2は、フォロア軸受の回転軸を含む平面で切断した場合の断面図である。図3は、図1に示す外輪の第1部材の構造を示す概略斜視図である。図4は、図2に示すフォロア軸受の一部を拡大して示す概略断面図である。図5は、図2の領域Vを拡大して示す概略断面図である。
【0027】
図1図5を参照して、本実施の形態におけるフォロア軸受1Aは、内方部材としての軸部材30と、外輪60と、転動体としての複数のころ70と、ころ70を保持する保持器80と、を備えている。なお、図2において、軸部材30の中心軸である回転軸31は、一点鎖線で図示されている。
【0028】
軸部材30は、棒状(中実円筒状)の本体部10と、本体部10の一方の端部に形成され、本体部10よりも径の大きい鍔部12と、本体部10の外周面の一部を周方向に取り囲むように本体部10に同軸に設置されたリングである側板20と、を含んでいる。本体部10は、軸方向において一方の端部である第1端面13と、第1端面13とは反対側の他方の端部である第2端面15とを有している。第1端面13および第2端面15は、いずれも円形の平面形状を有している。
【0029】
第1端面13の、軸部材30の中心軸である回転軸31と交差する領域を含む領域には、正六角柱状の形状を有する六角穴13Aが形成されている。本体部10の、第2端面15側の端部(他方の端部)を含む領域には、らせん状のねじ溝が形成されたねじ部14が配置されている。このような構造を有することにより、フォロア軸受1Aの設置に際しては、たとえばハウジング穴に軸部材30を通してねじ部14にナットを螺合することにより、保持部材に対してフォロア軸受1Aを固定することができる。
【0030】
本体部10は、ねじ部14を含む中実円筒状の軸部17と、軸方向において軸部17と鍔部12が位置する領域との間に配置され、軸部17よりも径が大きい大径部16とを含む。大径部16の径は、鍔部12の径よりも小さい。大径部16の外周面には、円筒面状の形状を有する第1軌道面11が形成されている。すなわち、軸部材30は、円環状の第1軌道面11を外周面に有している。本実施の形態において、第1軌道面11と中心軸が一致する円環状の形状を有し、第1軌道面11に対して軸方向の一方側に配置され、本体部10の外周から径方向外側に突出する第1凸部は、鍔部12である。鍔部12が位置する領域における本体部10の外周は、図2図4および図5において破線で図示されている。
【0031】
円環状の側板20は、一方の端面である第1端面23と、他方の端面である第2端面24と、外周面21と、内周面22とを有する。第1端面23と第2端面24とは平行である。外周面21と内周面22とは、同心の円筒面である。軸方向における大径部16の軸部17側の端面(段差部)である段差面16A(図2および図4参照)に第1端面23において接触するように、側板20が配置されている。側板20は、軸部17の外周に対応する内周(内周面22の直径)を有している。側板20は、軸部17に圧入されて、軸部17に対して固定されている。本実施の形態において、第1軌道面11と中心軸が一致する円環状の形状を有し、第1軌道面11に対して軸方向の他方側に配置され、本体部10の外周から径方向外側に突出する第2凸部は、側板20である。軸部材30は、機械構造用炭素鋼、機械構造用合金鋼、軸受鋼などの鋼からなる。軸部材30のうち、本体部10の少なくとも第1軌道面11を含む領域は、焼入硬化されていてもよい。また、側板20の一部または全体が焼入硬化されていてもよい。
【0032】
外輪60は、第1軌道面11に対向する円環状の第2軌道面41を内周面に有している。外輪60は、第1部材40と、第2部材50と、を含む。第1部材40は、中空円筒状の形状を有し、第2軌道面41を含む筒状部42と、筒状部42から径方向外側に延びる突部43と、を含む。第1部材40は、鋼からなっている。第1部材40を構成する鋼としては、たとえば軟鋼、機械構造用炭素鋼、機械構造用合金鋼などを採用することができる。また、第1部材40は焼入硬化されていてもよい。第1部材40は、たとえば軟鋼からなる鋼板を利用して、プレス加工や絞り加工により成形したものであってもよい。
【0033】
筒状部42は、内周面である第2軌道面41と、外周面44Aと、軸方向の一方の端面である第1端面45Aと、軸方向の他方の端部46と、を有している。第1部材40は、第2軌道面41を含む。第1部材40の第1端面45Aと鍔部12とは向かい合っている。すなわち、鍔部12と第1部材40とは軸方向において向かい合っている。
【0034】
筒状部42の厚さと突部43の厚さとは、同じである。本実施形態においては、外周面44Aは、軸方向に沿って真っ直ぐに延びる形状である。すなわち、外周面44Aには、肉厚を減ずるような凹部は設けられていない。このようにすることにより、筒状部42の形状を比較的単純にすることができ、生産性を良好にすることができる。第1部材40は、例えば、円環状の部材を準備し、一方の端部を外周側に折り曲げて鍔状に突部43を形成し、それ以外の部分をそのまま維持して筒状部42とすることにより製造される。
【0035】
突部43は、筒状部42の軸方向の他方の端部46に接続されている。突部43は、板状である。突部43は、第1部材40の周方向の全域にわたって連続する円環状の形状を有する。突部43は、軸方向の他方の端面である第2端面45Bと、外周面44Bと、第2端面45Bと軸方向の反対側に位置する側面45Cと、を有している。端部46と突部43との境界は、図2および図4において破線で図示されている。第2端面45Bと側板20の第1端面23とは向かい合っている。すなわち、側板20と第1部材40とは軸方向において向かい合っている。
【0036】
突部43には、径方向内側に凹む切り欠き47が形成されている(特に図3参照)。切り欠き47は、周方向に間隔をおいて複数形成されている。切り欠き47は、板状の突部43の厚み方向に貫通するように形成されている。
【0037】
第2部材50は、円環状の形状を有する。第2部材50は、樹脂からなっている。具体的には、第2部材50は、ウレタンゴムから構成されている。第2部材50を構成する樹脂は、たとえばポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリウレタン群から選択される少なくとも1つの樹脂であってもよい。また、第2部材50を構成する樹脂は、エラストマーから構成されていてもよい。このようにすることにより、フォロア軸受1Aに負荷される振動や衝撃を効率的に吸収することができる。したがって、より軸受の安定した動作を確保することができる。エラストマーは、熱可塑性エラストマーであってもよい。このようにすることにより、例えば射出成型を利用して、生産性の向上を図ることができる。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマーおよびポリ塩化ビニル系エラストマーのうちの少なくとも一つが選択されてもよい。さらに、熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマーおよびポリエステル系エラストマーのうちの少なくとも一つが選択されてもよい。以下の実施の形態に示す場合も同様である。第2部材50は、第1部材40と同軸に配置されている。第2部材50は、第1部材40の外周面44A,44Bを全域にわたって覆っている。第2部材50は、第1部材40の第1端面45A、第2端面45Bおよび側面45Cをも覆っている。すなわち、軸方向において突部43の両側は、第2部材50によって充填されている。
【0038】
第2部材50は、内周面51と、外周面52と、第1端面53Aと、第2端面53Bと、を有している。第1軌道面11と中心軸が一致する円環状の形状を有し、第1凸部である鍔部12と第1部材40との間に進入する第1部分54Aを、第2部材50は含む。第1部分54Aは、軸方向において筒状部42の一方側に配置される。第1部分54Aは、内周面51の全周にわたって形成されている。また、第1軌道面11と中心軸が一致する円環状の形状を有し、第2凸部である側板20と第1部材40との間に進入する第2部分54Bを、第2部材50は含む。第2部分54Bは、軸方向において筒状部42の他方側に配置される。第2部分54Bは、内周面51の全周にわたって形成されている。さらに、図示はしないが、第2部材50は、上記した切り欠き47内にも進入する。なお、この切り欠き47および切り欠き47内に侵入した第2部材50は、第1部材40に対する第2部材50の周方向の相対的な回転を抑制する回転抑制機構として機能する。
【0039】
第2部材50の外周面52は、軸方向の中央が最も突出するよう凸状となるように構成されている。第2部材の外周面52は、軸方向の中央から軸方向の両端部に向かって徐々にその径が小さくなるように構成されている。すなわち、外輪60の外周Dは、軸方向の中央が最も大きく構成されている。
【0040】
保持器80は、円環状の形状を有する。本実施の形態において、保持器80は、溶接保持器である。保持器80として溶接保持器を用いることにより、生産性の向上を図ることができる。保持器80は鋼からなるが、樹脂製の保持器を採用することもできる。保持器80は、軸部材30と外輪60とに挟まれる空間に、軸部材30および外輪60と同心に配置されている。保持器80には、周方向において等間隔に複数のポケット81が配置されている。複数のポケット81の各々には、ころ70が1つずつ配置されている。このように保持器80によって保持されることにより、複数のころ70は、第1軌道面11および第2軌道面41に沿う円環状の軌道上に第1軌道面11および第2軌道面41に接触するように配置されている。ころ70は、中実円筒状の形状を有している。ころ70は、円筒面状の外周面71と、球面状の一対の端面72とを有している。ころ70の端面72は、平坦状でもよい。ころ70は、外周面71において第1軌道面11および第2軌道面41に接触している。ころ70は、たとえば軸受鋼などの鋼からなっている。ころ70は、焼入硬化されていてもよい。
【0041】
第1部分54Aは、径方向において保持器80の外周面82Aと対向する第1対向面54Cを有する。径方向において、第1対向面54Cは、第2軌道面41よりも外周側に配置される。また、第2部分54Bは、径方向において保持器80の外周面82Bと対向する第2対向面54Dを有する。径方向において、第2対向面54Dは、第2軌道面41よりも外周側に配置される。すなわち、径方向において、第1対向面54Cおよび第2対向面54Dはそれぞれ、第2軌道面41よりも外周側に配置される。このように構成することにより、保持器80の外周面82Aと第1対向面54Cとの間に、径方向の隙間91Aを形成することができる。また、保持器80の外周面82Bと第2対向面54Dとの間に、径方向の隙間91Bを形成することができる。また、フォロア軸受1Aの回転軸31を含む平面で切断した断面において、保持器80の外周面82A,82Bはそれぞれ、軸方向に沿って真っ直ぐに延びている。第1対向面54Cおよび第2対向面54Dは、軸方向に沿って真っ直ぐに延びている。すなわち、保持器80の外周面82Aを表す線と第1対向面54Cを表す線とは、平行となっている。また、保持器80の外周面82Bを表す線と第2対向面54Dを表す線とは、平行となっている。
【0042】
上記実施の形態のフォロア軸受1Aは、軸部材30、外輪60、保持器80および複数のころ70が上記のように配置されることにより、軸部材30に対して外輪60が相対的に周方向に回転可能となっている。
【0043】
上記実施の形態のフォロア軸受1Aにおいては、外輪60は、樹脂からなる第2部材50を含んでいる。これにより、外輪60と接触する他の部材への攻撃性の抑制や、動作音の抑制が達成される。また、本開示のフォロア軸受1Aは、複数の転動体としてのころ70を保持する保持器80を含む。したがって、軸受の動作中のころ70の姿勢の安定した保持等を確保することができる。軸受の動作中に、保持器80は、ころ70と共に回転する。
【0044】
ここで、フォロア軸受1Aにおいては、外輪60の外周側から負荷が加えられる場合がある。外輪60に負荷が加えられた場合、樹脂からなる第2部材50が内周側に変形することが考えられる。そうすると、ころ70を保持する保持器80と第2部材50とが接触して、保持器の回転を阻害するおそれがある。
【0045】
これについて説明する。図6および図7は、外輪の外周側から負荷が加えられた場合のフォロア軸受1Aの一部を示す概略断面図である。図7は、図2の領域VIIを拡大して示す概略断面図である。
【0046】
図6および図7を参照して、外輪60の外周側、この場合、第2部材50の外周側から矢印で示す負荷92が加えられる場合がある。そうすると、第2部材50は、ウレタンゴムから構成されているため、変形する。具体的には、第2部材50の外周面52は、軸方向の中央が最も突出した形状であるため、外周面52は、平らに押しつぶされた形状となる。そして、第2部材50の内周側においても、加えられた負荷92により変形する。この場合、筒状部42は、鋼からなっているため、第1対向面54Cのうち、筒状部42に近い側は、内周側への変形量は小さく、軸方向の外側、すなわち、軸方向において筒状部42から遠ざかるにつれ、内周側への変形量が大きくなっていく。すなわち、軸方向において筒状部42から遠ざかるにつれ、第1対向面54Cの内周が小さくなっていく。第2対向面54Dについても同様の傾向である。
【0047】
ここで、本開示のフォロア軸受1Aにおいて、径方向において、第1対向面54Cおよび第2対向面54Dはそれぞれ、第2軌道面41よりも外周側に配置される。そして、保持器80の外周面82Aと第1対向面54Cとの間には、径方向の隙間91Aが形成されている。また、保持器80の外周面82Bと第2対向面54Dとの間に、径方向の隙間91Bが形成されている。したがって、フォロア軸受1Aの外輪60が外周側から負荷92を加えられ、樹脂からなる第2部材50が内周側に変形した場合でも、第1部分54Aの第1対向面54Cと保持器80の外周面82Aおよび第2部分54Bの第2対向面54Dと保持器80の外周面82Bとが接触するおそれを低減することができる。その結果、外輪60の第2部材50と保持器80とが接触して、保持器80の安定した回転を阻害するおそれを低減することができる。このように、上記フォロア軸受1Aによれば、動作音の抑制および他の部材への攻撃性の抑制を図ると共に、軸受の安定した動作を確保することができる。
【0048】
上記実施の形態のフォロア軸受1Aについては、フォロア軸受1Aの回転軸31を含む平面で切断した断面において、保持器80の外周面82A,82Bは、軸方向に沿って真っ直ぐに延びている。また、第1対向面54Cおよび第2対向面54Dは、軸方向に沿って真っ直ぐに延びている。よって、軸方向において、鍔部12と第1部分54Aおよび側板20と第2部分54Bとの接触面積を大きく確保することができる。したがって、軸受の動作時における外輪60の鍔部12および側板20への乗り上げの抑制等、動作を安定させると共に、ミスアライメント等に起因してスラスト荷重が発生した場合の負荷の分散を図ることができる。その結果、このような構成のフォロア軸受1Aは、より軸受の安定した動作を確保することができるフォロア軸受となっている。なお、例えば、鍔部12および側板20の径方向の寸法やフォロア軸受の使用される環境等に応じて、上記した実施の形態1の構成を採用するか、実施の形態2の構成を採用するかが定められる。
【0049】
上記実施の形態のフォロア軸受1Aにおいて、第1部材40は、中空円筒状の形状を有し、第2軌道面41を含む筒状部42と、筒状部42から径方向外側に延びる突部43と、を含む。軸方向において突部43の両側は、第2部材50によって充填されている。よって、第1部材40と第2部材50とが軸方向に分離するおそれを低減することができる。したがって、このようなフォロア軸受1Aは、信頼性の向上を図ることができるフォロア軸受となっている。
【0050】
上記実施の形態のフォロア軸受1Aにおいて、突部43は、筒状部42の軸方向の端部46に接続されている。よって、このような構成の突部43を有する第1部材40は、プレス加工や絞り加工等を利用して、容易に製造することができる。なお、突部43の形状は上記実施の形態に限定されず、たとえば径方向外側に折り曲げられた後に筒状部42の外周面44A側に向けて突部43を折り返した形状等を適宜選択できる。なお、突部43は、筒状部42の軸方向の両端部に形成されていてもよい。
【0051】
上記実施の形態のフォロア軸受1Aにおいて、突部43は、第1部材40の周方向の全域にわたって連続する円環状の形状を有する。このような構成の第1部材40を含むフォロア軸受1Aは、第1部材40と第2部材50とが軸方向に分離するおそれをより低減することができるフォロア軸受となっている。
【0052】
上記実施の形態のフォロア軸受1Aにおいて、突部43には、径方向内側に凹む切り欠き47が形成されている。よって、第2部材50を切り欠き47の内部に進入させることができる。したがって、このようなフォロア軸受1Aは、第2部材50に対する第1部材40の相対的な回転を規制することができるフォロア軸受となっている。
【0053】
上記実施の形態のフォロア軸受1Aにおいて、切り欠き47は、周方向に間隔をおいて複数形成されている。よって、このようなフォロア軸受1Aは、第2部材50に対する第1部材40の相対的な回転をより規制することができるフォロア軸受となっている。
【0054】
上記実施の形態のフォロア軸受1Aにおいて、軸部材30は、第1軌道面11を含む本体部10と、第1軌道面11と中心軸が一致する円環状の形状を有し、第1軌道面11に対して軸方向の一方側に配置され、本体部10の外周から径方向外側に突出する第1凸部としての鍔部12を含む。そして、第1軌道面11と中心軸が一致する円環状の形状を有し、鍔部12と第1部材40との間に進入する第1部分54Aを、第2部材50は含む。よって、このようなフォロア軸受1Aは、鍔部12と第1部材40とが軸方向において接触することを回避することができるフォロア軸受となっている。
【0055】
上記実施の形態のフォロア軸受1Aにおいて、第1軌道面11と中心軸が一致する円環状の形状を有し、第1軌道面11に対して軸方向の他方側に配置され、本体部10の外周から径方向外側に突出する第2凸部としての側板20を、軸部材30は含む。第1軌道面11と中心軸が一致する円環状の形状を有し、側板20と第1部材40との間に進入する第2部分54Bを、第2部材50は含む。よって、このようなフォロア軸受1Aは、側板20と第1部材40とが軸方向において接触することを回避することができるフォロア軸受となっている。
【0056】
ここで、隙間91A,91Bの径方向の長さについては、変位量と想定される負荷に応じて調整するとよい。図8は、フォロア軸受1Aの外周の寸法を変更した場合の負荷と変形量との関係を示すグラフである。図8において、縦軸は、変形量(mm)を示し、横軸は、負荷(N)を示す。外周Dの寸法をそれぞれ、16mm、19mm、22mm、30mmとした場合について示している。図8を参照して、例えば、外周Dの寸法が16mmであって、100Nの負荷が想定される場合、変形量は、0.3mmよりも若干小さい値を示す。また、外周Dの寸法が30mmであって、100Nの負荷が想定される場合、変形量は、0.1mmよりも若干大きい値を示す。これらの値を考慮して、隙間91A,91Bの径方向の寸法、すなわち、第1対向面54Cおよび第2対向面54Dの径方向の位置を規定するとよい。
【0057】
(実施の形態2)
次に、他の実施の形態である実施の形態2について説明する。図9は、実施の形態2に係るフォロア軸受の一部を示す概略断面図である。図10は、図9に示すフォロア軸受の一部を拡大して示す概略断面図である。実施の形態2のフォロア軸受は、第1対向面および第2対向面の形状が異なる点において、実施の形態1の場合と異なっている。
【0058】
図9および図10を参照して、実施の形態2に係るフォロア軸受1Bの回転軸を含む平面で切断した断面において、第1対向面54Cは、保持器80の外周面82Aとの間隔が、筒状部42に近い側から筒状部42に遠い側に向かって大きくなるよう、軸方向に対して傾斜している。また、上記フォロア軸受1Bにおいて、第1部分54Aは、保持器80と筒状部42との間の領域に至るまで延びる舌状部54Eを含む。舌状部54Eは、径方向内側に延びるように形成されている。また、舌状部54Eは、環状に連なって形成されている。
【0059】
ここで、外輪60の外周側から負荷が加わった場合に、第2部材50、具体的には第2部材50の第1部分54Aにおいては、鍔部12に近い軸受外側の領域の方が、鍔部12から遠い軸受内側の領域よりも内周側へ凹む変形量が大きくなる。本実施形態においては、第1対向面54Cは、上記したように筒状部42に近い側から筒状部42に遠い側に向かって大きくなるよう軸方向に対して傾斜しているため、外輪60の外周側から負荷が加わった場合に、変形した第1対向面54Cと回転軸31、引いては保持器80の外周面82Aとの配置関係を平行に近くなるようにすることができる。したがって、第2部材50と保持器80とが接触するおそれを低減することができ、軸受の安定した動作をより確保することができる。
【0060】
また、本実施形態によると、舌状部54Eにより、保持器80と筒状部42とが接触するおそれを大きく低減することができる。そうすると、筒状部42との接触による保持器80の摩耗を抑制することができる。したがって、より確実に軸受の安定した動作を確保することができる。
【0061】
なお、上記の実施の形態においては、第1対向面54Cは、保持器80の外周面82Aとの間隔が、筒状部42に近い側から筒状部42に遠い側に向かって大きくなるよう構成したが、これに限らず、第1対向面54Cおよび第2対向面54Dのうちの少なくともいずれか一方は、保持器80の外周面82A,82Bとの間隔が、筒状部42に近い側から筒状部42に遠い側に向かって大きくなるよう、軸方向に対して傾斜していてもよい。
【0062】
また、上記の実施の形態において、第1部分54Aは、保持器80と筒状部42との間の領域に至るまで延びる舌状部54Eを含むこととしたが、これに限らず、第1部分54Aおよび第2部分54Bのうちの少なくともいずれか一方は、保持器80と筒状部42との間の領域に至るまで延びる舌状部を含んでもよい。舌状部は、周方向に間隔をあけて複数設けられていてもよく、周方向に一か所だけ設けられていてもよい。
【0063】
(実施の形態3)
次に、さらに他の実施の形態である実施の形態3について説明する。図11は、実施の形態3に係るフォロア軸受の一部を示す概略断面図である。実施の形態3のフォロア軸受は、筒状部が径方向において保持器の外周面と対向する対向領域を有する点において、実施の形態1の場合と異なっている。
【0064】
図11を参照して、実施の形態3に係るフォロア軸受1Cの回転軸を含む平面で切断した断面において、筒状部42の軸方向の長さは、実施の形態1の筒状部42の軸方向の長さよりも長く構成されている。そして、筒状部42は、径方向において、保持器80の外周面82Aと対向する対向領域48を有する。対向領域48は、第2軌道面41に連なって形成されている。
【0065】
本実施形態によると、外輪60が外周側から与えられた負荷等により内周側に変形したとしても、筒状部42の対向領域48で保持器80と接触することになる。そうすると、保持器80と第2部材50とが接触するおそれを低減することができる。したがって、保持器80の円滑な回転を確保することが容易となる。
【0066】
(実施の形態4)
次に、さらに他の実施の形態である実施の形態4について説明する。図12は、実施の形態4に係るフォロア軸受の一部を示す概略断面図である。実施の形態4のフォロア軸受は、保持器が鋼製の打ち抜き保持器となっている点において、実施の形態1の場合と異なっている。
【0067】
図12を参照して、実施の形態4に係るフォロア軸受1Dに含まれる保持器80は、鋼製の打ち抜き保持器である。このように構成することによっても、軸受の安定した動作を確保することができる。
【0068】
(実施の形態5)
次に、さらに他の実施の形態である実施の形態5について説明する。図13は、実施の形態5に係るフォロア軸受の一部を示す概略断面図である。図14は、実施の形態5に係るフォロア軸受において、第2部材の図示を省略した場合の概略斜視図である。実施の形態5のフォロア軸受は、第1部材に対する第2部材の周方向の相対的な回転を抑制する回転抑制機構として、第1部材に凹部が設けられている点において、実施の形態1の場合と異なっている。
【0069】
図13および図14を参照して、実施の形態4に係るフォロア軸受1Eは、第1部材40に対する第2部材50の周方向の相対的な回転を抑制する回転抑制機構としての凹部49A,49Bおよび凹部49B,49B内に侵入する第2部材59を含む。凹部49A,49Bは、筒状部42の外周面44Aから丸穴状に凹んでいる。凹部49A,49Bは、周方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0070】
本実施形態によると、凹部49A,49Bおよび凹部49A,49B内に進入する第2部材59により、第1部材40に対する第2部材50の相対的な回転を抑制することができる。また、第1部材40に対する第2部材50の軸方向の移動も規制することができる。このような構成は、筒状部42に上記構成の凹部49A,49Bを設けた後、第1部材40の外周側に第2部材50を設ける際に、凹部49A,49B内に樹脂を流し込んで形成することができるため、容易に上記構成を形成することができる。
【0071】
(他の実施の形態)
上記フォロア軸受において、第2部材50を構成する樹脂は強化繊維を含んでいてもよい。強化繊維としては、たとえばガラス繊維、炭素繊維などを採用することができる。
【0072】
なお、上記実施の形態においては、フォロア軸受の転動体としてころ70が採用される場合について説明したが、転動体として玉が採用されてもよい。また、上記実施の形態においては、転動体が単列に配置される場合について説明したが、複列に配置されてもよい。また、上記実施の形態においては、内方部材として中実の軸部材30が採用される場合について説明したが、内方部材として、たとえば軌道輪(内輪)が採用されてもよい。さらに第2部材50は、中空円筒状に形成されるものや、外周面が球面状に形成されるもの等、適宜選択できる。
【0073】
本開示において、フォロア軸受とは、軸部材が固定された状態で外輪が他の部材と接触しつつ周方向に軸部材に対して相対的に回転する軸受をいう。上記他の部材は、特に限定されるものではなく、たとえばカムであってもよいし、レールであってもよいし、ベルトであってもよい。
【0074】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0075】
この発明に係るフォロア軸受は、軸受の安定した動作の確保が要求される場合に、特に有効に利用される。
【符号の説明】
【0076】
1A,1B,1C,1D,1E フォロア軸受,10 本体部、11 第1軌道面、12 鍔部、13,23,45A,53A 第1端面、13A 六角穴、14 ねじ部、15,24,45B,53B 第2端面、16 大径部、16A 段差面、17 軸部、20 側板、21,44A,44B,52,71,82A,82B 外周面、22,51 内周面、30 軸部材、31 回転軸、40 第1部材、41 第2軌道面、42 筒状部、43 突部、45C 側面、46 端部、48 対向領域、49A,49B 凹部、50,59 第2部材、54A 第1部分、54B 第2部分、54C 第1対向面、54D 第2対向面、54E 舌状部、60 外輪、70 ころ、72 端面、80 保持器、81 ポケット、91A,91B 隙間、92 負荷。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14