(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169212
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】口紅のつかない下がらないマスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20221101BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A62B18/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075094
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】303005274
【氏名又は名称】▲児▼島 博
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100093388
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 喜三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100093506
【弁理士】
【氏名又は名称】小野寺 洋二
(74)【代理人】
【識別番号】100206302
【弁理士】
【氏名又は名称】落志 雅美
(72)【発明者】
【氏名】▲児▼島 博
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA08
2E185CC32
(57)【要約】
【課題】マスク裏側の汚れによる不快感も回避して清潔で快適に使用可能とした環境に優しいマスクを提供する。
【解決手段】マスク(1)は、顔の形状に合わせて立体的に形成され、大略横長形状のマスク本体(2)の各短辺部(20a、20b)に耳掛部(2a、2b)を有する。そして、マスク本体(2)は、横方向に略4分割したエリアのうち最左端エリア及び最右端エリアにマスク本体の長手方向に伸縮する弾性部材を備えた伸縮部(9)を有する。また、マスク本体(2)の左右短辺部(20a、20b)の長さ(L)に対応した幅(W)を有して各短辺部(5a、5b)を固定して当該マスク本体(2)の内側(3)で着用者顔面の鼻孔領域と口唇領域にわたって左右に張りわたされ、その上端縁(5c)に沿って衛生シート(6)を表裏に折り返して着脱自在に掛け下げする横長矩形の幅広な衛生シート係止帯(5)も備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者顔面を横断してその鼻孔領域及び口唇領域を覆う大略横長形状のマスク本体の横方向両短辺部のそれぞれに耳掛部を設けたマスクであって、
前記マスク本体は、顔の形状に合わせて立体的に形成され、
前記マスク本体を横方向に略4分割し、前記4分割したエリアのうち最左端エリア及び最右端エリアの上辺部に、前記マスク本体の長手方向に伸縮する弾性部材を備えた伸縮部を有してなり、
前記マスク本体の各短辺部の長さに対応した幅を有して当該各短辺部に固定して、前記マスク本体の内側で着用者顔面の鼻孔領域と口唇領域に亘って左右に張り渡され、その上端縁に沿って衛生シートを表裏に折り返して着脱自在に掛け下げる、マスク本体の形状に適合するように立体的に形成された衛生シート係止帯を有することを特徴とする口紅のつかない下がらないマスク。
【請求項2】
前記マスク本体は、前記着用者顔面の鼻孔領域及び口唇領域を覆う左右で個別の部材をその中央部分で立体的に接合して中央部分が各長辺の上下に張り出した大略矩形形状を有し、
前記マスク本体の上方向長辺部は、横方向に略4分割し、前記4分割したエリアのうち最左端エリア及び最右端エリアにマスク本体の長手方向に伸縮する弾性部材を備えた伸縮部を有し、
前記マスク本体と同様にマスク本体の形状に適合するように立体的に形成し、マスク本体の内側で左短辺部と右短辺部のそれぞれに各端縁を固定すると共に、前記マスク本体との間に隙間を形成して張り渡されて略弦状となる如く取り付けられた幅広で略矩形状の衛生シート係止帯を有することを特徴とする請求項1に記載の口紅のつかない下がらないマスク。
【請求項3】
前記、マスク本体の最左端エリア及び最右端エリアの上方向長辺部の伸縮部が、前記伸縮部で縮める前の長辺部の寸法が、縮めた後の長辺部の寸法の1.1~1.25倍であることを特徴とする請求項1又は2に記載の口紅のつかない下がらないマスク。
【請求項4】
前記マスク本体は、綿や絹等の布地、不織布、伸縮性ポリウレタン、ナイロンのいずれかで構成されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の口紅のつかない下がらないマスク。
【請求項5】
前記衛生シート係止帯は、網目生地で構成され、掛け下げされた表裏の衛生シート間の透液性を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の口紅のつかない下がらないマスク。
【請求項6】
前記衛生シートは、天然繊維や合成樹脂繊維、ティッシュペーパー、消毒剤/殺菌剤あるいはアロマ剤を含浸した薄紙又は薄布のいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載の口紅のつかない下がらないマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者顔面の鼻孔領域及び口唇領域を覆う如く使用されるマスクに係り、特に口紅がマスク内側につくことがなく、マスク内側の汚れによる不快感を回避して清潔で快適に使用でき、かつマスク上辺が鼻の下に下がることのないマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
風邪をはじめ各種のウイルス性疾病の罹患を防止し、周囲への咳やくしゃみ等に飛沫抑制、或いは花粉やハウスダストなどのアレルギー症状の発症抑制、緩和のために、所謂、マスクが広く使われている。
また、この種のマスクは、粉塵の多い環境での鼻への塵埃侵入の防止、呼吸器系粘膜の乾燥を予防するためなど、様々な用途に用いられている。
【0003】
この種のマスクは、長方形が一般的である矩形の織布や不織布などの帯状部材あるいは紙生地等、着用者顔面の左右両端に耳掛けを取り付けたものが大部分である。織布生地やウレタンスポンジ等の素材を用いたものの中には、2枚のシート状素材を左右対称に接合し、着用時に鼻孔領域及び口唇領域に当たる部分を外側に膨出する形状にして装着者の顔面とマスク外縁の密着性を上げると共に、呼吸を楽にし、話がし易いように鼻孔領域や口唇領域の前方に膨出部を形成する如く立体縫製したものもある。
また、不織布を素材としたものではマスク本体に複数のプリーツを形成して、密着性と呼吸のし易さを付与したものなどがある。さらに、構造が簡易なものとして、ポリウレタンなどのスポンジシートを立体的に裁断したマスクもある。
【0004】
なお、特に不織布を素材とした薄いものでは、マスク本体の上辺近傍に金属細板(メタルストリップ)を内装させ、鼻の盛り上がり形状にフィットさせて顔面との間の隙間を低減するようにしたものも一般的である。
【0005】
このように、マスクは、ウイルス、細菌、花粉や塵埃が鼻孔を経て体内に侵入するのを阻止する機能を十分に発揮できるように、着用者の顔面と密着させて外気を直接吸い込まないようにし、かつ呼気が直接外界に放出されるのを抑制するものである。
【0006】
しかしながら、マスクの内側は着用者の顔面と直接接触するものであることから、顔面に施した化粧料が付着し易く、鼻水や食事の残滓の付着で再使用をためらうことになりかねない。さらに、昨今、感染拡大防止のため、一日中、常時装着する必要が生じ、その結果、顔面の肌荒れ、かぶれ、かゆみやむくみなどの、肌のトラブルに悩まされる人が少なくない。
【0007】
不織布などの低価格なマスクでは、再度の使用よりも汚れたマスクは廃棄して、新たなマスクを使用することが多く行われている。しかしながら、このようなことは資源の浪費になると共に、近年は不法廃棄したと考えられる不織布マスクが河川や海洋の汚染の原因となり、生物の生存に悪影響を与えていることなど、環境にも大きな負荷を与えている。
【0008】
一方、布製のマスクは、飛沫拡散抑制の効果が弱いとされ、マスクの内側と口元の間に、飛沫拡散防止のため不織布フィルタを入れて効果を高めるケースも増えてきた。
しかし、立体的に縫製された布製マスクの内側に、長方形の不織布フィルタを入れても、安定はせず、会話中に唇に張り付いてしまったり、ズレてしまって、その効果は半減してしまうという問題もある。
【0009】
また、風邪引きや花粉アレルギーなどで鼻水が止まらないようなときは、マスクの内側にティッシュペーパーなどを押し込む等をして凌くケースが少なくない。
しかし、押し込んだティッシュペーパーは、マスク内の湿気で丸まってしまったり、ズレ動いてマスクの外にはみ出したりして、鼻水吸収機能を十分に発揮できないだけでなく、見た目も酷いものになりかねない。
【0010】
上記のような問題に対して、マスクの内側への汚れ対策を施す従来技術がある。
特許文献1、特許文献2を挙げることができる。特許文献1は、マスク本体の内側の上下および左右に合成繊維(ポリプロピレンやポリエステルなど)の不織布を好適とする布地(接顔布と称する)を固着して構成され、主に女性の化粧落ちや化粧直しを気にすることなく長時間の着用を可能としたマスクを開示する。
【0011】
また、特許文献2は、通気孔を有して下辺が着用者の口唇領域の前方になるように上辺をマスク上辺に重ね固着した逆梯形板状の保隔カバーを開示する。 この保隔カバーにより、発声に支障がなく、汚れにくく、口紅をさして使用できるとの記載がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2018-172804号公報
【特許文献2】実開平07-33359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記した特許文献1に開示されたマスクは、接顔布がマスク本体の上下、左右にのみ設けられて顔面の中央部分、鼻孔や口唇の領域は直接マスク本体に接する構成である。そのため、顔面中央部分の化粧や口紅がマスク本体に付着するのを回避できない。また、汚れたマスクはそのまま廃棄せざるを得ないのが現状である。
【0014】
特許文献2に開示された保隔カバーは口唇部分にはかからないため、口紅によるマスク汚染は避けられない。そして、特許文献1に開示のマスクと同様に、内側が汚染したマスクは、その全体を廃棄せざるを得ず、特に対ウイルス手段として全員がマスクの着用を要求される現下の世界状勢では、廃棄による環境への負荷は無視できず、既に環境保全の分野では大きな問題となっている。
このように、先行技術には、上記したような解決すべき大きな課題が存在する。
【0015】
また、本来マスクは、着用者顔面の鼻孔領域及び口唇領域を覆う如く使用されるものであるが、長時間着用していると次第にマスクが下がってきて、マスク上辺が鼻孔の下にまで下がり、鼻孔領域がマスクに覆われていない状態で着用している着用者がいる。さらに、飛沫が広がるのは、咳やくしゃみなど口からの飛沫だけだと勘違いし、また、マスクを装着していること自体が息苦しさを感じることから、マスク上辺を自らずらして鼻孔を露出させて呼吸しやすい状態で着用している着用者が少なくない。
しかし、鼻からも飛沫はでているし、周囲の飛沫を鼻孔から吸い込むおそれがあり、感染予防の見地から非常に望ましくない着用状態となる。
【0016】
本発明の目的は、上記先行技術の課題を解決して着用者顔面の鼻孔領域及び口唇領域を覆う如く使用されるマスクに係り、特にマスク内側の汚れによる不快感も回避して清潔で快適な使用感を可能とし、かつ容易にマスクが下がることなく自然に顔面にフィットし、しっかり鼻孔領域を覆うマスク、すなわち口紅のつかない下がらないマスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明は、以下に列挙する構成としたことを特徴とする。なお、以下では、本発明の構成要素に後述する実施例で用いる参照符号を付記するが、本発明はそれら参照符号で示される具体的な構成に限定して解釈されるべきでない。
以下、本発明にかかる口紅のつかない下がらないマスクを単に「マスク」と表示する場合もある。
【0018】
本発明は、着用者顔面を横断してその鼻孔領域及び口唇領域を覆う横長矩形のマスク本体2の当該横方向短辺に耳掛部2a、2bを設けたマスク1であって、
(1)マスク本体2は、大略横長形状で顔の形状に合わせて立体的に形成され、前記マスク本体2を横方向に略4分割し、前記4分割したエリアのうち最左端エリアG1及び最右端エリアG2のそれぞれ上辺部201cに、前記マスク本体2の長手方向に伸縮する弾性部材を備えた伸縮部9を有してなり、
前記マスク本体の左右の各短辺で前記マスク本体2の左右短辺部20a、20bの長さLに対応した幅Wを有して当該各短辺部20a、20bに固定して、前記マスク本体2の内側3で着用者顔面の鼻孔領域と口唇領域に亘って左右に張り渡され、その上端縁5cに沿って衛生シート6を表裏に折り返して着脱自在に掛け下げるようマスク本体2の形状に適合するように立体的に形成された衛生シート係止帯5を備えた構成を特徴とする。
【0019】
(2)また、マスク本体2は、着用者顔面の鼻孔領域及び口唇領域を覆う左右で個別に裁断した部材を中央で立体的に縫い合わせ、あるいは接合して中央部分がマスクの外側に張り出した平面視が矩形形状を呈するものとすることもできる。
この場合も、前記マスク本体2の上方向長辺部は、横方向に略4分割し、前記4分割したエリアのうち最左端エリアG1及び最右端エリアG2にマスク本体2の長手方向に伸縮する弾性部材を備えた伸縮部9を有し、
かつ、マスク本体2の内側3で前記マスク本体2と同様にマスク本体2の形状に適合するように立体的に形成し、前記マスク本体2の内側で左短辺と右短辺のそれぞれに各端縁を固定すると共に、マスク本体2との間に隙間を形成して張り渡されて略弦状となる如く取り付けられた幅広で略矩形状の衛生シート係止帯5を備える。
【0020】
前記、マスク本体2の最左端エリアG1及び最右端エリアG2の上辺部201cに備えられた伸縮部9は、縮める前(引っ張って伸ばした状態)の上辺部201cの寸法が、縮めた後(力をかけない状態)の上辺部201cの寸法の1.1~1.25倍の長さで構成される。
【0021】
また、本発明にかかるマスク本体2は、 綿や絹等の織物の布地、不織布、伸縮性ポリウレタン、ナイロンのいずれかで構成される。また、これらを組み合わせたり、混合したものであってもよい。
【0022】
衛生シート係止帯5は、目の粗い織布又は不織布の生地や網目織生地で構成され、衛生シート係止帯5の上辺に掛け下げされた衛生シート6の表裏間に透液性を有するものであってもよい。目の粗さや網目の大きさは、その厚みにもよるが、常識的に最大で1mmもあれば十分であるが、衛生シート6の掛け下げ操作に影響を及ぼさなければ数mm、あるいはそれ以上としてもよい。
【0023】
衛生シート6は、天然繊維や合成樹脂繊維の織布又は不織布、ティッシュペーパー、消毒剤又は殺菌剤あるいはアロマ剤を含浸した薄紙又は薄布のいずれかを使用するのが好ましい。
【0024】
本発明は上記の構成、及び後述する実施の形態に記載される構成に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変更が可能ある。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る口紅のつかない下がらないマスクは、マスク本体の内側に取り付けられた衛生シート係止帯が、マスク本体の左右短片の長さに対応した幅広で、かつマスク本体の形状に対応して立体的に形成されているので、衛生シートを掛け下げても、衛生シート係止帯はマスク本体の形状に追従するので、口元が衛生シートでゴワゴワすることなく、外観上に違和感も生じない。
そして、衛生シート係止帯は、マスク本体の形状と同様に立体的に形成されているので、口元に空間ができ、口紅やファンデーション等の化粧料の付着率を下げることができ、快適にマスクを装着することができる。
【0026】
また、前記マスク本体には、マスク本体を横方向に略4分割し、前記4分割したエリアのうち最左端エリア及び最右端エリアの上辺部に、前記マスク本体の長手方向に伸縮する弾性部材を備えた伸縮部を有するので、マスクの左右の上端縁は伸縮しギャザーを形成し、そのギャザーが着用者の目の下の頬骨の膨らみにひっかかってこれらを囲い込み、マスク全体に上方に昇ろうとする力が生じ、マスクが下がって鼻孔付近が露出するのを防止することができる。
さらに、前記伸縮部により形成されるギャザーにより、鼻孔領域及び口唇領域を覆う部分が緩やかになり空間が広くなって、呼吸がしやすく、会話もしやすくなり、マスク着用時のストレスを大幅に減らすことができる。
そして、マスク本体を横方向に略4分割した最左端エリア及び最右端エリアの上辺部の伸縮部において、前記伸縮部で縮める前の長辺部の寸法が、縮めた後の長辺部の寸法の1.1~1.25倍とすることで、伸縮して形成されるギャザーが強すぎず、弱すぎず、無駄に膨らむこともなく、かつ耳や顔面にも負担をかけることなく、鼻孔領域及び口唇領域をふんわりと覆い、マスクが下がって鼻孔がマスクの外にでることを防止できる。
【0027】
また、上記した本発明に係るマスクは、略横長の長方形のマスク本体の短辺を左右にして顔面着用準備状態に開いた上面視で弧状としたマスク本体との間に隙間が形成されて上記弧状のマスク本体に対して弦状となる如く差しわたされて取り付けられた幅広で略矩形状の衛生シート係止帯を設けた構成を特徴とする。
したがって、上記のマスク本体の内側と衛生シート係止帯の間の隙間が十分に確保されるので、この余裕のある隙間に幅広な、あるいは厚みのある衛生シートであっても容易に装入してセットすることでき、かつ取り外しも簡単である。
なお、マスク本体の左右の上辺部に備えられた伸縮部により、鼻孔領域及び口唇領域を覆う部分の空間が広くなるので、厚みのある衛生シートであっても、閉塞感や圧迫感なく着用できる。
【0028】
このように、本発明に係るマスクは、衛生シート係止帯の上端に沿って表裏に衛生シートを折り返して容易に掛け下げすることができ、衛生シート係止帯で鼻孔領域と口唇領域の全体にわたってカバーすることができる。衛生シート係止帯を幅広とすることで、衛生シート係止帯自体にしっかりコシがあり、衛生シートがきれいに収まり、使用中にマスク内部で偏ったり、まくれたり、捩れたりせずに、本来の機能を維持できる。
さらに、衛生シート係止帯が幅広なので、前記衛生シート係止帯の上端と下端で衛生シートの上下を折り返して装入しても、衛生シートの上下辺部が衛生シート係止帯とマスク本体との間に安定して抑えられるので、取れたりズレたりすることなく、安心してマスクを装着することができる。
また、鼻孔領域と口唇領域は、口元側から順に、折り返した衛生シートの内側(口元側)、衛生シート係止帯、衛生シートの外側、マスク本体というように4重になるので、吸い込み飛沫量や吐き出し飛沫量について、不織布マスクと比べると効果が低いとされる布マスク等の機能を充分に補うことができ、安心して布マスク等の非不織布マスクを使用することができる。
【0029】
さらに、この衛生シートを掛け下げる衛生シート係止帯はマスク本体と略一体に構成され、マスク本体の外形からはみ出ることもないものであるため、内部に衛生シートを装入しても見た目に違和感はない。
これにより、化粧料や鼻水、食べ物の残滓などの汚れは、衛生シートに付着するので、衛生シートのみを廃棄することで、マスク本体は繰り返し使用できる。
【0030】
本発明に係るマスクによれば、着用者の呼吸動作が楽になると共に、衛生シートのみの交換でマスク裏側の汚れによる不快感を回避して清潔で快適に繰り返し使用可能としたマスクを提供することができる。
さらに、マスク本体の再利用を促進することで、環境負荷を低減できるグリーン製品となる。
また、マスクの左右の上辺部のギャザーにより、マスクが頬骨に引っかかり、マスクが上方に向かうので、マスクが鼻より下に下がることがなく、マスクの機能を充分に発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図2】
図1に示した実施例のマスクを二つに畳んだ状態を左横から視た側面図
【
図3】マスク本体の内側に設けた衛生シート係止帯を透視して示す左横から視た模式図
【
図4】
図3に示したマスクの鼻孔領域膨出部と口唇領域膨出部の配置を示す模式図
【
図5】
図4に示した鼻孔領域膨出部と口唇領域膨出部の配置を左側面から視た模式図
【
図6】マスクを顔面装着の準備状態に左右に開いた状態で
図5の上から3分の1の位置で左右方向に切断して示す模式図
【
図8】本発明に係るマスクの左右の伸縮部の効果を説明する説明図
【
図9】本発明にかかるマスクの使用状況の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下本発明に係るマスクの実施の形態を実施例の図面を参照して詳細に説明する。
【実施例0033】
図1は本発明に係るマスクの実施例の説明図で、同図(a)はマスクの内側の平面図、同図(b)は同図(a)のX-X線の断面図、(c)はマスクの外側の平面図である。そして、
図2は、
図1に示した実施例のマスクを二つに畳んだ状態を左横から視た側面図である。図中、1はマスク、2はマスク本体、3はマスク内側、4はマスク外側、5は衛生シート係止帯、6は衛生シートである。
【0034】
本実施例のマスク1は、着用者顔面を横断してその鼻孔領域及び口唇領域を覆う大略横長形状のマスク本体2と、このマスク本体2の横方向の各短辺部20a、20bに耳掛部2a、2bを設けたものであり、前記マスク本体2は、そのマスク本体2を横方向に略4分割し、前記4分割したエリアのうち最左端エリアG1及び最右端エリアG2の上辺部201cに、前記マスク本体2の長手方向に伸縮する弾性部材を備えた伸縮部9を有する。
図1(c)に示すようにマスク本体2を横方向に略4分割すると、左から順に、A-Bが最左端エリアG1、B-Oが中央左エリア、O-Cが中央右エリア、C-Dが最右端エリアG2の4つに分解される。前記最左端エリアG1及び最右端エリアG2は、マスク1を装着した際に、着用者顔面の頬骨を覆う位置を示している。そして、前記着用者顔面の頬骨を覆う位置である最左端エリアG1及び最右端エリアG2の上辺部201cは、伸縮部9が形成される。
この伸縮部9がギャザーを形成し、そのギャザーのヒダが頬骨に引っかかり、上方向へ力が働くのでマスク1がずり落ちるのを抑止する。
このように、伸縮部9は、マスク1がずり落ちて鼻孔が露出するのを防止するものであり、前記マスク本体2の横方向の4分割は、厳密に4分割する必要はなく、着用者顔面の頬骨の位置に相当するエリアであればよい。
なお、前記伸縮部9は、縮める前、すなわち上方向長辺部20cを長手方向に引っ張って伸ばした状態の上辺部201cの寸法が、縮めた後、すなわち長手方向に力をかけない状態の上辺部201cの寸法の1.1~1.25倍程度で構成される。
【0035】
そして、本発明にかかるマスク1は、その内側に略矩形状の衛生シート係止帯5を備えている。前記衛生シート係止帯5は、大略横長形状のマスク本体2の短辺(左短辺部20a、右短辺部20b)の長さLに対応した幅Wを有し、その左右の短辺部5a、5bをマスク本体1の各短辺部(20a、20b)に固定している。
前記衛生シート係止帯5は、少なくとも、マスク本体2の短辺部(20a、20b)の長さをLとしたとき、衛生シート係止帯5の幅Wとすると、W<Lあるいは「衛生シート係止帯5の幅」≒Lである。すなわち、衛生シート係止帯5の幅Wは、マスク本体2の短辺部20a、20bの長さLとほぼ変わらない長さを備える、あるいは、マスク本体2のほぼ全域に重なる程度の幅広であり、マスク1の大きさにもよるが、幅Wは、長さLに対し、85~98%程度で構成される。
そして、前記衛生シート係止帯5はその両端の短辺部(5a、5b)が、それぞれマスク本体2の左短辺部20aと右短辺部20bに固定され、マスク本体2の内側3で着用者顔面の鼻孔領域と口唇領域を覆うように左右に張りわたされている。
【0036】
図1に示す本発明にかかるマスク1の実施例において、マスク本体2は、着用者顔面の鼻孔領域及び口唇領域を覆う左右で個別の部材をその中央部分で立体的に接合して中央部分が各長辺の上下に張り出した大略横長形状を有する。
この場合、衛生シート係止帯5は、前記マスク本体2と同様に、すなわち、左右で個別の部材をその中央部分で立体的に接合して形成し、前記マスク本体2の形状に適合するように立体的に形成される。
そして、前記衛生シート係止帯5は、マスク本体2の内側3で左短辺部20aと右短辺部20bのそれぞれに、右短辺部5a、左短辺部5bの各端縁を固定すると共に、前記マスク本体2との間に隙間を形成して張り渡されて略弦状となる如く取り付けられる。
【0037】
前記マスク本体2は、綿や絹等の布地、不織布、伸縮性ポリウレタン、ナイロンのいずれかで構成されることが好ましいが、同様の立体的形状であれば、特に素材を限定するものではない。
例えば、
図7に示す本発明に係るマスクの他の実施例において、マスク1xは、マスク本体2xが不織布又は織布であり、鼻頭領域を覆う羽根部200aと顎部領域を覆う羽根部200bが一体に形成され、金属ストリップ21xを備え、全体に立体的な形状となっている。
このような立体形状のマスク1xの場合、衛生シート係止帯5xは、マスク本体2xの左短辺部20ax、20bxの長さLxに対応し、耳掛部2axの上下の取付部22x、22xの間に収まる幅Wxで構成され、鼻孔領域と口唇領域にわたって左右に張り渡されて固着される。
そして、衛生シート係止帯5xは、マスク本体2xの形状と同様の形状で構成され、安定して衛生シート6xを掛け下げられる構成となっている。
このように、本発明は、マスク1の素材は特に限定されず、マスク1の立体的な形状に合わせて、衛生シート係止帯5も同様の形状に形成し、取り付けられる。
【0038】
本発明にかかるマスク1は、前記衛生シート係止帯5の上端縁5cに沿って衛生シート6を係止する。
前記衛生シート6は、衛生シート係止帯5の上端縁20に沿って、その表裏に折り返して掛け下げされる。掛け下げされた衛生シート6はその表裏のシート部分の下端位置は装着者の好みで調整でき、かつ簡単に取り去ることができる。
【0039】
衛生シート係止帯5は、衛生シート6を掛け下げるだけの強度があれば、その素材は限定されないが、マスク本体2と同素材であれば、衛生シート6を掛け下げないときでも、違和感なく装着できる。
一方、衛生シート係止帯5を、目の粗い織布/不織布の生地や網目織生地で構成すると、衛生シート係止帯5の上端縁5cに掛け下げされた衛生シート6の表裏間で鼻水などが鼻孔側の衛生シート部分から本体内側の衛生シート部分に移動でき、透液性が高く、より衛生シート6の効果を高めることができる。
【0040】
この場合、衛生シート係止帯5の目の粗さや網目の大きさは、その厚みにもよるが、常識的に最大で1mmもあれば十分であるが、衛生シート6の掛下げ操作に影響を及ぼさなければ数mm、あるいはそれ以上としてもよい。
衛生シート係止帯5の素材は、用途や効果によって適宜選択可能なものである。
【0041】
本発明のマスク1は、衛生シート係止帯5も、マスク本体2と同様に立体的に形成されているので、マスク本体2の内側と着用者の鼻孔・口唇との間に空間的な裕度を持たせることができ、衛生シート6を掛け下げても、息苦しくなく快適に装着できる。
【0042】
なお、衛生シート6は、天然繊維や合成樹脂繊維の織布/不織布、ティッシュペーパー、消毒剤/殺菌剤あるいはアロマ剤を含浸した薄紙又は薄布、不織布。その他、任意の用途や効果に合わせて選択して使用できる。
【0043】
本実施例によれば、衛生シート6のみの交換でマスク裏側の汚れによる不快感を回避して清潔で快適に繰り返し使用可能としたマスクを提供することができる。
また、衛生シート係止帯5を立体的に形成することで、マスク本体2と着用者の鼻孔領域や口唇領域の間のスペースを拡大できるため呼吸が楽になる。
さらに、マスク本体2の再利用を促進することで、環境負荷を低減できるグリーン製品となる。
【0044】
以下に、本発明にかかるマスク1を詳細に説明する。
図3はマスク本体の内側に設けた衛生シート係止帯を透視して示す左横から視た模式図、
図4は
図3に示したマスクに有する鼻孔領域膨出部と口唇領域膨出部の配置を示す模式図、
図5は
図4に示した鼻孔領域膨出部と口唇領域膨出部の配置を左側面から視た模式図、
図6はマスクを顔面装着の準備状態に左右に開いた状態で
図5に示すマスクの上から3分の1の位置で左右方向に切断して示す模式図である。
【0045】
本発明に係るマスク1は、
図1に示すように着用者顔面の鼻孔領域膨出部10及び口唇領域膨出部11(
図3参照)を含めて目の下を覆う着用準備時の左右展開状態では、当該着用者顔面左右に渡る上方向長辺部20cと下方向長辺部20dの各中央部分(20e、20f)が外方に若干張り出た略矩形をなす。この張り出しは、顔面で最も突出した鼻梁の盛り上がり及び顎の形状に対応させたもので、マスク本体2の形状は基本的には横長形状である。
【0046】
そして、マスク1は、当該マスク1を着用者の顔面に装着する際の準備状態に左右(着用者顔面に対する左右:横方向、以下同じ)に開いたとき、図に向かって紙面の上下(着用者顔面に対する上側と下側:縦方向、以下同じ)に盛り上り湾曲した略矩形のマスク本体2と、このマスク本体2の左短辺部20a、右短辺部20bにそれぞれ設けられた耳掛部2a、2bを備える。
マスク1は、マスク本体2を横方向に略4分割し、前記4分割したエリアのうち最左端エリアG1及び最右端エリアG2の上辺部201cに、前記マスク本体2の長手方向に伸縮する弾性部材を備えた伸縮部9を備え、マスク本体2は、伸縮部9によりその左右が伸縮しギャザーを形成する。
前記ギャザーは、着用者の目の下の頬骨の膨らみにひっかかってこれらを囲い込み、マスク全体に上方に昇ろうとする力が生じ、マスク1がずり落ちて鼻孔付近が露出するのを防止する。
【0047】
図8は、本発明に係るマスクの伸縮部の効果を説明する説明図であり、マスク本体2を横方向にA、B、O、C、Dに略4分割し、前記4分割したエリアのうち頬骨Hを覆う最左端エリアG1及び最右端エリアG2の上辺部201cに、前記マスク本体2の長手方向に伸縮する弾性部材を備えた伸縮部9を有し上辺部201cにギャザーを形成している状態が示されている。
そして、前記伸縮部9の形成されたギャザーが、左右の目の下の頬骨Hを覆い、頬骨Hに引っかかるようにマスク1が装着され、またギャザーの収縮によりマスク1全体は上方へ昇ろうとする力が生まれ、頬骨Hを超えてずり落ちることはなく、マスク1から鼻Jが露出するのを防止している。
【0048】
また、マスク本体2は、伸縮部9のギャザーがない場合より多めの生地が使われており、前記ギャザーによる細かいヒダが鼻孔領域及び口唇領域を覆う部分に大きな空間を形成し、呼吸や会話がしやすいものとなっている。
なお、伸縮部9は、マスク本体2と、一本の紐状の弾性部材(ゴム紐)に印を付けておき、マスク本体2の上方向長辺部20cに、前記紐状の弾性部材(ゴム紐)を当て、ギャザーを形成したい最左端エリアG1及び最右端エリアG2を縫う時は、弾性部材を引っ張って伸ばして縫い込み、それ以外の中央左右エリアN1、N2では、弾性部材を伸ばすことなく(引っ張らず)縫い込むことで、容易に形成することができる。
このように製造すると、中央左右エリアN1、N2の上辺部にはギャザーが形成されないが、伸張していない弾性部材がそのまま縫い込まれ、中央左右エリアN1、N2の上辺部に弾性部材が芯材のごとく配置され、上方向長辺部20cの強度が増す。そして、一本の弾性部材で構成されるので段落ちがなく芯材としての効果をより発揮できる。
このように、本発明にかかるマスク1は、上方向長辺部20cがしっかりしているので、マスク本体2の生地に、腰のない絹生地や、薄い綿布を採用しても安定して着用することができる。
【0049】
前記伸縮部9は、縮める前、すなわち、弾性部材による伸縮がない状態、要するに長手方向に引っ張って伸ばした状態での上方向長辺部20cの寸法が、縮めた後の上方向長辺部20cの寸法の1.1~1.25倍程度になるように構成することが好ましい。
これより伸縮率が低いと、ギャザーの形成が小さく、頬骨に引っかからずにずり落ちてしまう。また、これより伸縮率が高いと、伸縮により形成されるギャザーが寄りすぎて、ギャザーの凹凸が大きくなり、上方向長辺部20cと顔面の間に多数の隙間ができ、マスクの機能を損なう。上記1.1~1.25倍程度とすることで、伸縮して形成されるギャザーが強すぎず、弱すぎず、耳や顔面に負担をかけることなく、鼻孔領域及び口唇領域をふんわりと覆い、マスクが下がって鼻孔がマスクの外にでることを防止できる。
さらに、上記の数値による伸縮により前記伸縮部9により形成されるギャザーは、鼻孔領域及び口唇領域を覆う部分の空間を広くすることになり、呼吸や会話がしやすく、マスク着用時の最大のストレスである息苦しさを大幅に減らす。
【0050】
本発明にかかるマスク1は、マスク本体2の着用者顔面側(内側)で、前記マスク本体2の左短辺部20aと右短辺部20bのそれぞれには、衛生シート係止帯5の右短辺部5a、左短辺部5bの各端縁が固定される。
衛生シート係止帯5は、マスク本体2との間に隙間を形成して差しわたされ、上面視(
図1(b))で略弦状となる如く取り付けられる。
そして、前記衛生シート係止帯5は、幅広でマスク本体2と同様に中央部分が前方に張り出た矩形状で構成される。前記衛生シート係止帯5は、余計な生地がなくすっきりと安定して衛生シート6をかけられるようにするため、伸縮部は設けない。
【0051】
マスク本体2の下端は、マスク1の左右方向中心を通る直線に垂直でマスク本体1の上端を通る直線Y-Yから、着用者の下顎側に寸法dだけ後退している(
図3参照)。
この寸法dは、顎の下端に掛ってマスク本体の顔面上方へのズレを抑制できる程度に設定される。寸法dは、マスクサイズ(子供用、大人用、女性用、男性用、あるいはS,M,L,LL等)で任意に設定すればよい。
【0052】
本実施例では、
図5と
図6に示したように、マスク本体2は、着用者顔面の鼻孔領域膨出部10及び口唇領域膨出部11を覆う左右で個別の部材を中央で縫い合わせ、あるいは接合した中央接続線2gを有する。前記左右個別の部材は、織布、不織布、伸縮性ポリウレタン、ナイロン、プラスチックスポンジ地等で構成される。
前記中央接続線2gは、鼻孔領域膨出部10を覆う部分と口唇領域膨出部11の部分を立体的に縫い合わせあるいは接合により形成している。
本実施例では、個別の部材として2枚の部材を中央で縫い合わせ又は接合したマスク1で説明しているが、伸縮性ポリウレタンやプラスチック不織布の場合には、左右個別の部材でなく、一枚の材料で、低温プレス打ち抜き時に鼻孔領域膨出部10と口唇領域膨出部11を立体成型してもよい。また、織布、不織布の場合には、タックを形成して一枚で立体的に形成したものであってもよい。
【0053】
なお、本実施例は、マスク本体2に天然繊維や合成繊維の織布を用いることを想定したものであるので、裁断縁のほつれ防止のための縫い目を有するマスクを例としている。そのため、上縁と下縁に縫い目2e、2fがある。
当然ながら、縫い目2e、2fはマスク本体2の外縁から内側にわずかに後退した位置となる。伸縮部9を形成する弾性部材を、この縫い目2eを利用して縫い込んでもよい。
鼻孔領域膨出部10におけるマスク本体2と衛生シート係止帯5の間の立体空間(スペース)は口唇領域膨出部11の部分のそれより大きい。これにより、呼気時の吐出圧、吸気時の吸入圧が低減されて、呼吸が楽になる。
【0054】
図4に示す図において、符号2hと2i、2jと2kは、それぞれ鼻孔領域膨出部10、口唇領域膨出部11を形成するための余裕布地部分を示す。鼻孔領域膨出部10はマスク本体2の最大長さLを3分割した上3分の1の範囲D1内に、口唇領域膨出部11は同じく下3分の1の範囲D2内に位置している(
図5参照)。
口唇領域膨出部11は会話時の口唇の動きを楽にし、発言する言葉の籠りが抑制され、明瞭な発言が可能となる。
中間の3分の1の範囲D3は、鼻孔領域膨出部10と口唇領域膨出部11を形成する弧を接続するための緩和曲線領域になる。
【0055】
また、衛生シート係止帯5は、マスク本体2に形成された鼻孔領域膨出部10、口唇領域膨出部11と合うように、同様に鼻孔領域膨出部10a、口唇領域膨出部11aが形成されている。
そして、衛生シート係止帯5の上端縁5cに沿って表裏に衛生シート6を折り返して、必要な位置まで容易に、かつ安定して掛け下げできるようにマスク本体2と衛生シート係止帯5の間に隙間が形成されている。
図3~
図6に示したX-Xはマスク本体2の上下端を通る直線Y-Yと直交する左右方向の直線を示す。
なお、衛生シート6は、衛生シート係止帯5に掛け下げるだけでなく、衛生シート係止帯5の上端と下端で衛生シート6の上下を折り返して、衛生シート6の上下辺部を衛生シート係止帯5とマスク本体2との間に装入して抑えるように配置することもできる。
【0056】
図9は、本発明にかかるマスクの使用状況の例を示す断面図である。
図9(a)に示す例では、衛生シート係止帯5の上端縁5cに沿って表裏に衛生シート6が折り返して掛け下げて装着されている。
一方、
図9(b)に示す例では、衛生シート係止帯5の上端縁5cと下端縁5dで衛生シート6の上下を折り返して、衛生シート6の上下辺部60、60を衛生シート係止帯5とマスク本体2との間に装入して抑えるように配置されている。
例えば、衛生シート6としてティッシュペーパーを利用する場合、素材自体にコシがなく湿気に弱いため、長時間使用していると、ティッシュペーパーがずれたり、乱れたりし、丸まってしまうことがある。
そのような場合、衛生シート6を衛生シート係止帯5に掛け下げるにあたり、まずティッシュペーパーを2枚折りにして、中央から衛生シート係止帯5に当接して、前記衛生シート係止帯5の幅分を越えた上下部分を衛生シート係止帯5とマスク本体2の間に折って挟み込む。
そうすると、ティッシュペーパーの上方、下方を衛生シート係止帯5とマスク本体2との間に挟み込むことになり、より安定して外れにくく、クシャクシャになりにくくなる。
【0057】
また、綿製の衛生シート6の場合は、製品によってサイズが様々であり、衛生シート係止帯5に掛け下げて係止するという使い方の他、衛生シート係止帯5の上下で衛生シート6を折りまげてマスク本体2側に挟み込むことで、より多様な使い方が可能となる。
前記ティッシュペーパーを衛生シート6にする場合で、病院や高齢施設などより抗菌効果を高めたい場合、1枚のティッシュペーパーを衛生シート係止帯5に上下を挟み込み、さらにもう1枚ティッシュペーパーを重ね、衛生シート6を二重にすれば、より高い抗菌作用を発揮できる。
これは、衛生シート係止帯5を幅広にし、その左右をしっかりマスク本体2に固定していることから、衛生シート6の厚みや重さに十分に耐えうることから可能となる。
【0058】
図1、3に示したように、衛生シート係止帯5の左短辺部5aと右短辺部5bの端縁に沿う幅Wは、マスク本体2の左短辺部20aと右短辺部20bの端縁に沿う長さLに対し、若干狭小としてある。幅Wは、長さLに対し、85~98%程度狭くすることが好ましい。なお、
図7のように、耳掛部2a、2bがマスク本体2に熱圧着されているタイプのマスクの場合には、耳掛部2a、2bの間に収まる程度の幅Wに形成する。
これにより、衛生シート係止帯5に掛け下げた衛生シート6がマスク本体2からはみ出ることがなく、また幅広に形成されるため、衛生シート係止帯5がねじれにくく、口元でゴワゴワすることなく見た目に違和感を生じさせず、安定して衛生シート6を掛け下げることが可能となっている。
すなわち、本発明にかかるマスク1は、マスク本体2の左右短片部の長さLに対応した幅Wを備える衛生シート係止帯5、すなわち、マスク1の内側に、マスク本体2の外縁から若干後退した位置に配置される程度の幅Wを備えた衛生シート係止帯5が設けられていると理解すべきである。
【0059】
図4と
図5において、上記の中央接続線2gに沿った鼻孔領域膨出部10の曲率半径をR1、口唇領域膨出部11の曲率半径をR2としたときR1>R2とし、鼻孔領域膨出部10と口唇領域膨出部11とを緩和曲線(例えば、クロソイド曲線、など)で接続してある。これにより、鼻孔領域膨出部10と口唇領域膨出部11とが自然な連続形状となり、皺や畳まれの発生が緩和される。
【0060】
そして、本発明にかかるマスク1は、着用者の顔面の鼻孔領域膨出部10及び口唇領域膨出部11を覆う着用時の展開状態で、マスク本体2の中央接続線2gに沿った上方3分の1(D1)に鼻孔領域膨出部10が位置し、中央接続線2gに沿った下方3分の1(D2)に口唇領域膨出部11が位置する。
【0061】
図6はマスクを顔面装着の準備状態で左右に開いた状態を上から3分の1の位置で左右方向(X―X)に切断して示す模式図である。
図6において、鼻孔領域膨出部10におけるZ―Z方向湾曲部の平均的曲率半径7をR3とし、衛生シート係止帯5のZ―Z方向平均的曲率半径8をR4としたとき、R3<R4とした。なお、直線Z―Zは、直線X―Xおよび直線Y-Yに直交する直線(顔面に対して前後方向)を示す。
【0062】
R3<R4としたことで、例えば、マスク本体2をX―X方向(左右方向)に引っ張って衛生シート係止帯5の曲率半径R4を無限大(∞)としたときでも、マスク本体2の曲率半径R3は有限であり、両者の間のスペースは無くならない。
これにより、衛生シート係止帯5への衛生シート6の折り掛けがきわめて容易になり、鼻孔領域膨出部10と口唇領域膨出部11を十分に覆うように衛生シート6を簡単にセットできる。また、マスク本体2と衛生シート係止帯5の間に形成される呼吸のための空間に余裕ができ、かつ、衛生シート係止帯5及び掛け下げる衛生シート6と、口元にも空間が形成され、呼吸が楽になる。
【0063】
本実施例では、マスク本体2の素材は好ましくは織布であり、当該マスク本体2の左短辺部20aと右短辺部20bは当該マスク本体2の布と連続する部分、当該マスク本体2の共布、当該マスク本体2とは異なる他の生地の端切れ、のうちの何れかとすることが好ましい。
【0064】
衛生シート係止帯5は、マスク本体2と同素材の他、目の粗い織布/不織布の生地や網目織生地等、衛生シート6を掛け下げるだけの強度のある任意の素材が選択できる。
【0065】
また、衛生シート6は、洗濯可能で繰り返し使える綿布、衛生的な不織布、ティッシュペーパー、消毒剤/殺菌剤あるいはアロマ剤を含浸したティッシュペーパー、フィルターなどの紙生地や布地など、適宜選択して使用することができる。
これにより、環境への負荷を低減でき、マスク本体2の再使用と共に、グリーン製品を構成できる。
【0066】
上記した本発明に係るマスクによれば、弧状マスク本体2の内側と弦状の衛生シート係止帯5の間の隙間(呼吸空間)が十分に確保されると共に、この余裕のある隙間に幅広の衛生シート6でも容易に装入してセットすることができる。
また、衛生シート係止帯5は、マスク本体2に対応する立体形状で形成されるので、鼻孔、口元の空間が確保され、着用時の呼吸が楽であり、また外観に違和感もないものとなる。
【0067】
そして、衛生シート係止帯5の上端縁5cに沿って表裏に衛生シート6を折り返して容易に掛け下げすることができるため、衛生シート6で鼻孔領域と口唇領域の全体に亘って十分にカバーすることができる。これにより、口紅やファンデーション等の化粧料や鼻水などの汚れは、衛生シート6に付着するので、衛生シート6のみを廃棄することで、マスク本体2は繰り返し使用できる。
【0068】
さらに、衛生シート係止帯5が上記のように幅広であることから、衛生シート係止帯5自体がしっかりとマスク本体2に固定され、衛生シート6を掛け下げても踏ん張りが効き安定していて、マスク本体2の中で撚れたり、はみ出したりすることが防止される。
また、衛生シート係止帯5は、マスク本体2と同様に立体的に形成されるので、装着したときに鼻梁により押し出されて、マスク本体2と同様に中央部分が外方に張り出た矩形状となる。これにより、装着時に違和感や抵抗感がない。
【0069】
このように、本発明に係るマスクによれば、着用時にずり落ちて鼻が出てしまうことがなく、かつ、着用者の呼吸動作が楽になると共に、衛生シート交換でマスク裏側の汚れによる不快感を回避して清潔で快適に使用可能で、廃棄部分の低減で環境に優しいマスクを提供することができる。
本発明に係るマスクは、マスクがずり落ちて鼻が露出するようなことがなく、かつ、マスク内側の汚れによる不快感を減少させ、清潔で快適な使用ができるものであり、一般人の使用する衛生マスクのみならず、医療現場、工事現場、その他の粉塵環境下での使用も可能である。
また、プリーツタイプのマスクや、複数枚の綿布を重ねた布マスクにおいても応用できる。