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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169216
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】転がり軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/78 20060101AFI20221101BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
F16C33/78 D
F16C19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075099
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一弘
【テーマコード(参考)】
3J216
3J701
【Fターム(参考)】
3J216AA02
3J216AA12
3J216AB29
3J216BA30
3J216CA01
3J216CA04
3J216CB03
3J216CB12
3J216CB19
3J216CC03
3J216CC18
3J216CC35
3J216DA01
3J216GA09
3J701AA03
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA73
3J701FA13
3J701GA24
(57)【要約】
【課題】部品点数を増加することなく異物の侵入を防止すると共に、トルクの低減を図ることができる転がり軸受を提供する。
【解決手段】転がり軸受は、内外輪12,13と、これら内外輪12,13の軌道面12a,13a間に介在する複数の転動体14と、これら転動体14を保持する保持器15と、内外輪12,13間の端部環状空間を密封するシール部材16,16とを備える。シール部材16は、基端部が外輪13の内周面に取り付けられ、先端部に複数のシールリップ16a,16bを有する。複数のシールリップ16a,16bにおける軸方向外側のシールリップ16aの軸方向内側面を内輪12の面取り部12cに接触させ、且つ、他のシールリップ16bを内輪12の外周面に接触させた。軸方向外側のシールリップ16aはリップ先端部が、面取り部12cの外側縁部よりも径方向内方に突出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内外輪と、これら内外輪間に介在する複数の転動体と、前記内外輪間の端部環状空間を密封するシール部材とを備え、前記シール部材は、基端部が前記外輪の内周面に取り付けられ、先端部にシールリップを有する転がり軸受であって、
前記シールリップの軸方向内側面を、内輪外周の端部に位置する面取り部に接触させた転がり軸受。
【請求項2】
請求項1に記載の転がり軸受において、前記シールリップはこのリップ先端部が、前記面取り部の外側縁部よりも径方向内方に突出する転がり軸受。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の転がり軸受において、前記シールリップに接触する前記面取り部の表面粗さをRa3.0以下とした転がり軸受。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の転がり軸受において、転がり軸受が2個以上の組み合わせで設けられ、これら転がり軸受のうち外方に臨む転がり軸受の軸方向外側面のみに前記シール部材が設けられている転がり軸受。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の転がり軸受において、前記シール部材は先端部に複数のシールリップを有し、前記複数のシールリップにおける軸方向外側のシールリップの軸方向内側面を前記面取り部に接触させ、且つ、他のシールリップを前記内輪の外周面に接触させた転がり軸受。
【請求項6】
回転翼およびこの回転翼を回転させるモータを有する駆動部を複数備え、前記回転翼の回転によって飛行する電動垂直離着陸機に搭載される転がり軸受であって、
前記駆動部における回転軸を回転可能に支持する請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の転がり軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐水性を向上させつつトルクの増加を抑制することができるシール付きの転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
支持軸受として使用されるアンギュラ玉軸受において、軸受内部への異物侵入を防止するシール付き軸受が使用されている。通常の1リップのシールでは軸受の耐水性が劣る場合、例えば、複数のリップを有するシールを設け、シール前面にカバーを設ける対策を行っている(特許文献1,2)。
現状、軸受の耐水性を向上させる場合、図9に示すように、シール50のリップ数を増やすことで耐水性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-17264号公報
【特許文献2】特開2020-51601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、リップ数を増やす分トルクも増大してしまう。また前記カバーを設ける場合、部品点数の増加を招く。
【0005】
本発明の目的は、部品点数を増加することなく異物の侵入を防止すると共に、トルクの低減を図ることができる転がり軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の転がり軸受は、内外輪と、これら内外輪間に介在する複数の転動体と、前記内外輪間の端部環状空間を密封するシール部材とを備え、前記シール部材は、基端部が前記外輪の内周面に取り付けられ、先端部にシールリップを有する転がり軸受であって、
前記シールリップの軸方向内側面を、内輪外周の端部に位置する面取り部に接触させたことを特徴とする。
【0007】
この構成によると、シールリップの軸方向内側面を、内輪外周の端部に位置する面取り部に接触させる構造とすることで、内輪の外周面に複数のシールリップを接触させる従来構造よりもシールリップの接触面を減らし、トルクの低減を図ることができる。シール部材に対し、水圧等の外部からの圧力が加わった場合、シールリップが内輪の前記面取り部に押し付けられることになるため、この転がり軸受は外部からの異物の侵入をより防ぐことができる。また、カバー等を新たに設ける必要もないため、シール前面にカバーを設ける従来構造よりも部品点数を低減でき構造を簡単化することができる。
【0008】
前記シールリップはこのリップ先端部が、前記面取り部の外側縁部よりも径方向内方に突出してもよい。
前記面取り部の外側縁部とは、この内輪の面取り部の最小径となる部位であり、面取り部における内輪端面との境界部である。
この転がり軸受をアンギュラ玉軸受に採用した場合、予圧等で内外輪にアキシアル方向のずれが生じた場合でも、シールリップの軸方向内側面を面取り部に追従して接触させることができる。このため、シールリップは十分な緊迫力を保つことができる。
【0009】
前記シールリップに接触する前記面取り部の表面粗さをRa3.0以下としてもよい。
前記Raは中心線平均粗さであり単位はμmである。
この場合、トルクの低減をより確実に図ることができるうえ、シール部材に外部からの圧力が加わったときシールリップが前記面取り部に押し付けられるときの密封性をより高めることができる。
【0010】
転がり軸受が2個以上の組み合わせで設けられ、これら転がり軸受のうち外方に臨む転がり軸受の軸方向外側面のみに前記シール部材が設けられていてもよい。この場合、2個の転がり軸受の合わせ面に、シールリップの干渉を防止する内外輪間座等を不要とでき、部品点数を低減することができる。したがって、全体構造を簡単化することができる。
【0011】
前記シール部材は先端部に複数のシールリップを有し、前記複数のシールリップにおける軸方向外側のシールリップの軸方向内側面を前記面取り部に接触させ、且つ、他のシールリップを前記内輪の外周面に接触させてもよい。この場合、複数のシールリップを全て内輪の外周面に接触させる従来構造よりも低トルク化を図れる。
【0012】
回転翼およびこの回転翼を回転させるモータを有する駆動部を複数備え、前記回転翼の回転によって飛行する電動垂直離着陸機に搭載される転がり軸受であって、
前記駆動部における回転軸を回転可能に支持する本発明の上記いずれかの構成の転がり軸受である場合、本発明の転がり軸受につき前述した各効果が得られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の転がり軸受によれば、シールリップの軸方向内側面を、内輪外周の端部に位置する面取り部に接触させる構造とすることで、部品点数を増加することなく異物の侵入を防止すると共に、トルクの低減を図ることができる
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態に係る転がり軸受の縦断面図である。
図2】同転がり軸受のシール部材を部分的に拡大した拡大縦断面図である。
図3】同シール部材の要部の拡大縦断面図である。
図4A】本発明の他の実施形態に係る転がり軸受の縦断面図である。
図4B】同転がり軸受のシール部材を部分的に拡大した拡大縦断面図である。
図5】本発明のさらに他の実施形態に係る転がり軸受の縦断面図である。
図6】本発明のさらに他の実施形態に係る転がり軸受の縦断面図である。
図7】本発明の転がり軸受を備えた電動垂直離着陸機の斜視図である。
図8】同電動垂直離着陸機の転がり軸受およびモータ等の縦断面図である。
図9】従来例の転がり軸受の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施形態]
本発明の実施形態を図1ないし図3と共に説明する。
図1に示すように、実施形態に係る転がり軸受は、単列のアンギュラ玉軸受11である。このアンギュラ玉軸受11は、内外輪12,13と、これら内外輪12,13の軌道面12a,13a間に介在する複数の転動体14と、これら転動体14を円周方向一定間隔おきに保持する保持器15と、内外輪12,13間の端部環状空間を密封する一対のシール部材16,16とを備える。前記転動体14として、玉が適用される。内外輪12,13の軌道面12a,13aは、予め定める接触角αとなるように形成される。軸受空間にはグリースが封入される。内外輪12,13および転動体14は、例えば、高炭素クロム軸受鋼またはマルテンサイト系ステンレス鋼から成る。但し、これらの鋼に限定されるものではない。
【0016】
保持器15は、内部に前記玉を保持するポケットPtを、環状体の円周方向複数箇所に有する冠形状である。各ポケットPtの内面は、玉の外面に沿った凹球面状の曲面形状とされる。保持器15は、ポケット開放側を軸方向内方に向け、ポケット背面側が一方のシール部材16に所定の隙間を介して対向する。
【0017】
<シール部材16について>
一対のシール部材16,16は、左右対称となる同一構造であるため、軸方向一方のシール部材16についてのみ説明する。
図2に示すように、外輪13の内周面には、シール部材16を嵌合固定する外輪シール取付溝13bが形成されている。シール部材16は、基端部が外輪シール取付溝13bに取り付けられ、先端部に後述する複数のシールリップ16a,16bを有する。シール部材16は、複数のシールリップ16a,16bが内輪12の所定箇所にそれぞれ接触するいわゆる接触シールである。
【0018】
このシール部材16は、環状の芯金17と、この芯金17に一体に固着される弾性部材18とを有する。シール部材16の全体は、例えば、ゴム材を加硫成型して形成され、この加硫成型時に芯金17と弾性部材18とが接着される。
芯金17は、外径側から順次、断面略凹形状となる凹形状部17aと、傾斜部17bと、立板部17cとを有する。
【0019】
これら凹形状部17a、傾斜部17bおよび立板部17cは、内外輪12,13の端面12b,13cよりも軸方向内側に配置される。凹形状部17aは、凹み部となる溝底面を径方向内方に向けると共に、外径側の先端部分が外輪シール取付溝13bに近接するように配置される。
凹形状部17aの軸方向内側に位置する内周側先端には、内径側に向かうに従って軸方向外側に傾斜する傾斜部17bが繋がる。この傾斜部17bの内周側先端に、外輪端面13cと略平行な立板部17cが繋がる。
【0020】
凹形状部17aの外周面の軸方向内側に設けられる弾性部材18の弾性部材外周部18aが、外輪シール溝13bに嵌合されて固定される。前記弾性部材外周部18aおよび凹形状部17aが、このシール部材16の「基端部」に相当する。
弾性部材18は、主に、外径側から順次、前記弾性部材外周部18a、覆い部18b、および複数(この例では2つ)のシールリップ16a,16bを有する。芯金17の傾斜部17bおよび立板部17cの内表面は、覆い部18bで覆われ、この覆い部18bにおける径方向中間付近部は弾性部材18における他の部位よりも厚肉に形成されている。
【0021】
複数のシールリップ16a,16bにおける軸方向外側のシールリップ16aの軸方向内側面を内輪外周の端部に位置する面取り部12cに接触させ、且つ、他のシールリップつまり軸方向内側のシールリップ16bを内輪12の外周面12d(図3)に接触させている。軸方向内側のシールリップ16bは、覆い部18bの前記径方向中間付近部から内径側に向かうに従って軸方向内側に傾斜するように突出する。
【0022】
図3に示すように、この軸方向内側のシールリップ16bは、長手方向途中部16baが屈曲してリップ先端部16bbが内輪12の外周面12dに接触し軸方向外側に所定小距離延びる。換言すれば、軸方向内側のシールリップ16bにおいて、軸方向外側に所定小距離延びるリップ先端部16bbのみが内輪12の外周面12dに接触する。なお軸方向内側のシールリップ16bは、このシール部材16を転がり軸受に組み込む前の自然状態において、シールリップ16b全体が直線状に延びる。シール部材16は、このシール部材16をアンギュラ玉軸受に組み込んだ状態で、前記軸方向内側のシールリップ16bのリップ先端部16bbが弾性変形し内輪12の外周面12dに所定の押付力で接触する。
【0023】
軸方向外側のシールリップ16aは、覆い部18bの内径側端から内径側に向かうに従って軸方向外側に傾斜するように突出する。軸方向外側のシールリップ16aは、この軸方向内側面の長手方向途中部を前記面取り部12cに接触させた状態で、内輪端面12bに対し定められた傾斜角度βとなるように配置される。軸方向外側のシールリップ16aは、このリップ先端部16aaが、前記面取り部12cの外側縁部12caよりも径方向内方で且つ内輪端面12bよりも軸方向外側に突出する。面取り部12cの外側縁部12caとは、この内輪12の面取り部12cの最小径となる部位であり、面取り部12cにおける内輪端面12bとの境界部である。またこのシール部材16をアンギュラ玉軸受に組み込んだ状態で、軸方向外側のシールリップ16aは、軸方向内側のシールリップ16b(特にリップ先端部16bb)に干渉しないようになっている。
【0024】
軸方向外側のシールリップ16aに接触する内輪12の面取り部12cは、トルクの低減を図るため、R面取りであることが望ましいが角面取りとすることも可能である。前記R面取りの半径Rは、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切な値を求めて定められる。
また面取り部12cの表面粗さをRa0.2以上でRa3.0以下、好ましくはRa0.2以上でRa2.5以下としている。面取り部12cの前記表面粗さは、例えば、研摩加工により実現し得る。
【0025】
<作用効果>
以上説明したアンギュラ玉軸受によれば、複数のシールリップ16a,16bにおける軸方向外側のシールリップ16aを、内輪外周の端部に位置する面取り部12cに接触させる構造とすることで、内輪の外周面に複数のシールリップを接触させる従来構造よりも3割程度低トルク化を実現することができる。シール部材16に対し、水圧等の外部からの圧力が加わった場合、軸方向外側のシールリップ16aが内輪12の面取り部12cに押し付けられることになるため、このアンギュラ玉軸受は外部からの異物の侵入をより防ぐことができる。また、カバー等を新たに設ける必要もないため、シール前面にカバーを設ける従来構造よりも部品点数を低減でき構造を簡単化することができる。
【0026】
軸方向外側のシールリップ16aは、このリップ先端部16aaが、面取り部12cの外側縁部12caよりも径方向内方に突出している。このため、予圧等で内外輪12,13(図1)に軸方向のずれが生じた場合でも、シールリップ16aの軸方向内側面を面取り部12cに追従して接触させることができる。このため、シールリップ16aは十分な緊迫力を保つことができる。
シールリップ16aに接触する面取り部12cの表面粗さをRa3.0以下としたため、トルクの低減をより確実に図ることができるうえ、シール部材16に外部からの圧力が加わったときシールリップ16aが面取り部12cに押し付けられるときの密封性をより高めることができる。
【0027】
<他の実施形態について>
以下の説明においては、各実施形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。同一の構成は同一の作用効果を奏する。各実施形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0028】
[第2の実施形態:図4A図4B
図4Aに示すように、内輪両側面が外輪両側面よりも幅広に設けられるアンギュラ玉軸受11Aに以下のシール部材16Aを適用してもよい。
図4Bは、図4AのIVB部の部分拡大図である。図4Aに示すように、内輪12の軸方向幅が外輪13の軸方向幅よりも大きい。したがって、内輪端面12bは外輪端面13cよりも軸方向外側に位置している。シール部材16Aは、図4Bに示すように、軸方向外側のシールリップ16aの軸方向内側面を面取り部12cに接触させ、軸方向内側の2つのシールリップ16b,16cを内輪12の外周面12dにそれぞれ接触させている。これら2つのシールリップ16b,16cは軸方向に所定間隔を空けて並ぶ。この構成によると、前述の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0029】
[第3の実施形態:図5
図5に示すように、転がり軸受であるアンギュラ玉軸受11が2個以上の組み合わせで設けられてもよい。この例では、2個のアンギュラ玉軸受11,11が背面合わせで設けられている。これらアンギュラ玉軸受11,11のうち外方に臨むアンギュラ玉軸受の軸方向外側面のみに、第1の実施形態と同様のシール部材16が設けられている。2個のアンギュラ玉軸受11,11における互いに対向する軸方向内側面には、内輪12の外周面12dに1つのシールリップ19aを接触させるシール部材19がそれぞれ設けられている。
この場合、2個のアンギュラ玉軸受11,11の合わせ面に、シールリップの干渉を防止する内外輪間座等を不要とでき、部品点数を低減することができる。したがって、全体構造を簡単化することができる。
【0030】
[第4の実施形態:図6
図6に示すように、実施形態に係る転がり軸受は深溝玉軸受11Bであってもよい。この場合にも第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0031】
転がり軸受の一側面のみに、いずれかの実施形態に係るシール部材を設けることも可能である。
転がり軸受が2個以上の組み合わせで設けられる場合に、外方に臨む転がり軸受の軸方向外側面にいずれかの実施形態のシール部材を備え、互いに対向する軸方向内側面に、非接触式のシールリップを備えたシール部材を設けてもよい。なお互いに対向する軸方向内側のシール部材を省略することも可能である。
2個のアンギュラ玉軸受は正面合わせで配置されてもよい。
転がり軸受の保持器は、冠形状に限定されるものではない。
転がり軸受は複列アンギュラ玉軸受であってもよい。
【0032】
<電動垂直離着陸機への適用例:図7図8
転がり軸受を電動垂直離着陸機に適用してもよい。
近年では、自動車に代わる移動手段として飛行可能な自動車、いわゆる空飛ぶクルマが注目されている。空飛ぶクルマは、地域内移動、地域間移動、観光・レジャー、救急医療、災害救助など、様々な場面での活用が期待されている。
【0033】
空飛ぶクルマとしては、垂直離着陸機(VTOL;Vertical Take-Off and Landing aircraft)が注目されている。垂直離着陸機は、空と離発着場を垂直に昇降できることから、滑走路が必要とならず、利便性に優れる。特に、近年ではCOの削減に向けた社会的要請などからバッテリとモータで飛行するタイプの電動垂直離着陸機(eVTOL)が開発の主流となっている。
【0034】
図7に示すように、電動垂直離着陸機1は、機体中央に位置する本体部2と、前後左右に配置された4つの駆動部3を有するマルチコプターである。駆動部3は、電動垂直離着陸機1の揚力および推進力を発生させる装置であり、駆動部3の駆動によって電動垂直離着陸機1が飛行する。電動垂直離着陸機1において駆動部3は複数あればよく、4つに限定されない。
【0035】
本体部2は乗員(例えば1~2名程度)が搭乗可能な居住空間を有している。この居住空間には、進行方向および高度などを決めるための操作系、高度、速度、飛行位置などを示す計器類などが設けられている。本体部2からは4本のアーム2aがそれぞれ放射状に延び、各アーム2aの先端に駆動部3が設けられている。図7において、アーム2aには、回転翼4を保護するため、回転翼4の回転周囲を覆う円環部が一体に設けられている。また、本体部2の下部には、着陸時に機体を支えるスキッド2bが設けられている。
【0036】
駆動部3は、回転翼4と、この回転翼4を回転させるモータ5とを有する。駆動部3において、回転翼4はモータ5を挟んで軸方向両側に一対設けられている。各回転翼4は、径方向外方へ延びる2枚の羽根をそれぞれ有する。
【0037】
図8は、駆動部におけるモータ5の一部断面図を示している。モータ5の回転軸7の一端側(図8上側)には前記回転翼4(図7)が取り付けられ、他端側(図8下側)にはモータ5のロータ5aが取り付けられる。モータ5は、ハウジング6に固定されたステータ5bにロータ5aが対向配置され、このロータ5aがステータ5bに対して回転可能なインナーロータ型でダイレクトドライブ形式である。なお、モータ5は、アウターロータ型のブラシレスモータまたはインナーロータ型のブラシレスモータの構成を採用できる。
【0038】
図8において、モータ5は、ハウジング6と、ロータ5aと、ステータ5bと、前述の実施形態に係る2個のアンギュラ玉軸受11,11とを備える。ハウジング6は外筒6aと内筒6bを有し、これら外筒6aと内筒6bとの間には冷却媒体を流す流路6cが設けられている。この流路6cに冷却媒体を流すことにより、モータ5の過度の温度上昇を防止できる。
【0039】
アンギュラ玉軸受11は、ハウジング6内で回転軸7を回転可能に支持している。アンギュラ玉軸受11の外輪13の外径形状は、ハウジング内周の嵌合部と同一の形状であり、ハウジング6に対して、軸受ハウジングなどを介さずに直接嵌合される。2個のアンギュラ玉軸受11,11は、この例では内外輪間座8,9を介して背面組み合わせで配置され、予圧が印加されている。
【0040】
<制御系について>
本体部2には、複数のモータ5等を制御する制御装置31と、各モータ5および制御装置31に電力を供給するバッテリ32とが設けられている。制御装置31は、バッテリ32の直流電力を交流電圧に変換するインバータと、操作系に応じて生成されるトルク指令により前記インバータの出力をPWM制御等で制御する制御部とを有する。
前記制御部は、現姿勢と目標姿勢の差から揚力を調整すべきモータ5に回転数変更の指令を出力することで、モータ5および回転翼4(図7)の回転数が変更される。モータ5の回転数の調整は、複数のモータ5に対して同時に実施され、それによって機体の姿勢が決まる。
【0041】
図8では、モータ5の回転軸と回転翼4(図7)の回転軸とを同一の回転軸としたが、モータの回転軸と回転翼の回転軸とが伝達機構を介して接続された構成であってもよい。この場合、駆動部における回転軸を支持するアンギュラ玉軸受は、モータの回転軸を支持するアンギュラ玉軸受でもよく、回転翼の回転軸を支持するアンギュラ玉軸受でもよい。
アンギュラ玉軸受を電動垂直離着陸機以外の用途に適用することも可能である。
【0042】
以上、実施形態に基づいて本発明を実施するための形態を説明したが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0043】
1…電動垂直離着陸機、3…駆動部、4…回転翼、5…モータ、7…回転軸、11,11A…アンギュラ玉軸受(転がり軸受)、11B…深溝玉軸受(転がり軸受)、12…内輪、12c…面取り部、12ca…外側縁部、12d…外周面、13…外輪、14…転動体、16,16A…シール部材、16a,16b,16c…シールリップ、16bb…リップ先端部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9