(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169257
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】インク供給装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20221101BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
B41J2/175 503
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075179
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】佐山 晴基
(72)【発明者】
【氏名】河合 寿二
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA20
2C056EA28
2C056EB16
2C056EB30
2C056EB34
2C056EC16
2C056EC28
2C056EC29
2C056FA04
2C056FA13
2C056HA29
2C056KB08
2C056KB14
2C056KB15
(57)【要約】
【課題】電気的な手段を用いずに、過昇温したインクが流路の耐熱性の低い区間に流入することを防ぐことを目的とする。
【解決手段】インク供給装置は、インクを収容するインクコンテナと、インクコンテナに収容されたインクを供給する流路71と、流路71を流れるインクを加温するヒーターと、流路71を遮断する遮断装置30と、を備え、流路71は、ヒーターにより加温される加温区間72と、加温区間72よりも耐熱性が低い非加温区間74と、を含み、遮断装置30は、加温区間72に連結され、所定温度に昇温した場合に軟化する連結部31と、連結部31が軟化した場合に、加温区間72と非加温区間74との間のインクの流れを位置エネルギーを用いて遮断する可動部32と、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを収容するインクコンテナと、
前記インクコンテナに収容された前記インクを供給する流路と、
前記流路を流れる前記インクを加温するヒーターと、
前記流路を遮断する遮断装置と、を備え、
前記流路は、
前記ヒーターにより加温される加温区間と、
前記加温区間よりも耐熱性が低い非加温区間と、を含み、
前記遮断装置は、
前記加温区間に連結され、所定温度に昇温した場合に軟化する連結部と、
前記連結部が軟化した場合に、前記加温区間と前記非加温区間との間の前記インクの流れを位置エネルギーを用いて遮断する可動部と、を備えることを特徴とするインク供給装置。
【請求項2】
前記可動部は、
開いた状態で前記非加温区間を挟むように配置された鉗子状器具と、
前記鉗子状器具を閉じさせる方向に重力、弾性力又は磁力による荷重を付与する荷重付与手段と、を備え、
前記連結部は、軟化していない場合に前記荷重に抵抗することで前記鉗子状器具が開いた状態を維持し、軟化した場合に前記荷重に対する抵抗が弱まることで前記鉗子状器具を閉じさせることを特徴とする請求項1に記載のインク供給装置。
【請求項3】
前記荷重付与手段は、
錘と、
滑車を介して前記錘と前記連結部とをつなぐワイヤーと、を備え、
前記鉗子状器具の1対の把持部の一方が前記ワイヤーの前記錘と前記滑車との間の部分に結合されていることを特徴とする請求項2に記載のインク供給装置。
【請求項4】
前記可動部は、前記加温区間と、前記加温区間よりもインク供給方向下流側の前記非加温区間と、の間の前記インクの流れを遮断することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインク供給装置。
【請求項5】
前記可動部は、前記加温区間と、前記加温区間よりも前記インク供給方向上流側の前記非加温区間と、の間の前記インクの流れを遮断することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインク供給装置。
【請求項6】
前記連結部は、前記加温区間の前記インク供給方向下流側の端部に設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインク供給装置。
【請求項7】
前記加温区間の内圧が所定値に達した場合に前記加温区間から前記インクを放出する安全弁を備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインク供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加温したインクを供給するインク供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置を用いて良好な画質を得るためには、インクの粘度を適正な範囲に保つ必要がある。そのため、従来、ヒーターを用いたインクの加温が提案されている(例えば、特許文献1乃至3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-58770号公報
【特許文献2】特開2010-12637号公報
【特許文献3】特開2011-51169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクの加温は、インクを収容するインクコンテナとインクを吐出するヘッドとをつなぐ流路の一部にヒーターを設けることで行われる。流路のうち、ヒーターにより加温される加温区間には、熱伝導性と耐熱性の高い金属管が用いられるが、加温区間よりもインク供給方向上流側と下流側の区間には、配管の容易性を優先して、シリコーンチューブ等の可撓性を有するチューブが用いられる。この構成において、何らかの異常によりヒーターが過昇温した場合、上流側と下流側のチューブが耐熱温度を超えて変形又は融解するおそれがある。また、インクが揮発してチューブ内が高圧になった場合、チューブが破裂したり、抜けたりするおそれがある。また、過昇温によって性質が変化したインクがヘッドに流入した場合、ヘッドの性能を低下させるおそれがある。
【0005】
過昇温の対策としては、上流側と下流側の区間に耐熱性の高い材料を採用することが考えられるが、耐熱性と耐化学反応性を兼ね備えた材料は種類が限定され、また、可撓性を持たない材料の場合、流路の設計や組立の難易度が高くなる。また、高速機に接続される大容量のインク供給装置の場合、流路が長いため、費用が増大する。
【0006】
別の対策としては、ヒーターの温度を計測するセンサーや、インク漏れを検知するセンサーを設け、温度やインク漏れの状況に応じて電気回路又はソフトウェアでヒーターの駆動を停止することが考えられるが、センサーや接点に異物が接触した場合、正常に動作しなくなる可能性がある。
【0007】
本発明は、上記事情を考慮し、電気的な手段を用いずに、過昇温したインクが流路の耐熱性の低い区間に流入することを防ぐことのできるインク供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係るインク供給装置は、インクを収容するインクコンテナと、前記インクコンテナに収容された前記インクを供給する流路と、前記流路を流れる前記インクを加温するヒーターと、前記流路を遮断する遮断装置と、を備え、前記流路は、前記ヒーターにより加温される加温区間と、前記加温区間よりも耐熱性が低い非加温区間と、を含み、前記遮断装置は、前記加温区間に連結され、所定温度に昇温した場合に軟化する連結部と、前記連結部が軟化した場合に、前記加温区間と前記非加温区間との間の前記インクの流れを位置エネルギーを用いて遮断する可動部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
前記可動部は、開いた状態で前記非加温区間を挟むように配置された鉗子状器具と、前記鉗子状器具を閉じさせる方向に重力、弾性力又は磁力による荷重を付与する荷重付与手段と、を備え、前記連結部は、軟化していない場合に前記荷重に抵抗することで前記鉗子状器具が開いた状態を維持し、軟化した場合に前記荷重に対する抵抗が弱まることで前記鉗子状器具を閉じさせるように構成されていてもよい。
【0010】
前記荷重付与手段は、前記錘と、滑車を介して前記錘と前記連結部とをつなぐワイヤーと、を備え、前記鉗子状器具の1対の把持部の一方が前記ワイヤーの前記錘と前記滑車との間の部分に結合されていてもよい。
【0011】
前記可動部は、前記加温区間と、前記加温区間よりもインク供給方向下流側の前記非加温区間と、の間の前記インクの流れを遮断してもよい。
【0012】
前記可動部は、前記加温区間と、前記加温区間よりも前記インク供給方向上流側の前記非加温区間と、の間の前記インクの流れを遮断してもよい。
【0013】
前記連結部は、前記加温区間の前記インク供給方向下流側の端部に設けられていてもよい。
【0014】
前記インキ供給装置は、前記加温区間の内圧が所定値に達した場合に前記加温区間から前記インクを放出する安全弁を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電気的な手段を用いずに、過昇温したインクが流路の耐熱性の低い区間に流入することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成システムの斜視図である。
【
図2】プリンターとインク供給装置の斜視図である。
【
図3】プリンターの内部構成を模式的に示す正面図である。
【
図4】インク供給路とインク供給装置の構成を模式的に示す図である。
【
図6】加温区間に設けられたヒーターの斜視図である。
【
図10】第1変形例に係る遮断装置の斜視図である。
【
図11】第2変形例に係る遮断装置の斜視図である。
【
図12】第2変形例に係る遮断装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態に係るインク供給装置140及び画像形成システム100について説明する。
【0018】
最初に、画像形成システム100の全体の構成について説明する。
図1は、画像形成システム100の斜視図である。
図2は、プリンター1とインク供給装置140の斜視図である。
図3は、プリンター1の内部構成を模式的に示す正面図である。
図4は、インク供給路60とインク供給装置140の構成を模式的に示す図である。以下、
図3における紙面手前側を画像形成システム100の正面側(前側)とし、左右の向きは画像形成システム100を正面から見た方向を基準として説明する。各図において、U、Lo、L、R、Fr、Rrは、それぞれ上、下、左、右、前、後を示す。
【0019】
画像形成システム100(
図1、2参照)は、給紙装置110と、プリンター1(インクジェット記録装置の一例)と、乾燥装置120と、後処理装置130と、インク供給装置140と、を含む。給紙装置110は、数千枚のシートSを収容可能な大容量の給紙デッキを備え、プリンター1にシートSを供給する。インク供給装置140は、加温したインクをプリンター1に供給する。プリンター1は、インクジェット方式でシートSに画像を形成する。乾燥装置120は、シートSに吐出されたインクを加熱して乾燥させる。後処理装置130は、シートSに穿孔、ステープル綴じ、折畳み等の後処理を施す。
【0020】
プリンター1(
図3参照)は、直方体状のハウジング3を備える。ハウジング3内の下部には、普通紙、コート紙等の枚葉のシートSが収容される給紙カセット4と、給紙カセット4からシートSを右方に送り出す給紙ローラー5が設けられている。給紙カセット4の上方には、シートSを吸着してY方向に搬送する搬送ユニット7が設けられている。搬送ユニット7の上方には、インクを吐出して画像を形成する作像ユニット6が設けられている。ハウジング3の右上部には、画像が形成されたシートSを排出する排紙ローラー8と、排出されたシートSが積載される排紙トレイ9が設けられている。
【0021】
ハウジング3の内部には、給紙ローラー5から搬送ユニット7と作像ユニット6との間隙を経て排紙ローラー8に至る搬送路10が設けられている。搬送路10は、シートSを通過させる間隙を空けて互いに対向する板状部材を主体として形成されており、シートSを挟持して搬送する搬送ローラー17が搬送方向Yの複数箇所に設けられている。作像ユニット6よりも搬送方向Y上流側には、レジストローラー18が設けられている。作像ユニット6よりも搬送方向Y下流側には、搬送路10から分岐して乾燥装置120に至る搬送路10Dが設けられている。
【0022】
搬送ユニット7は、無端の搬送ベルト21と、支持板23と、吸引部24と、を備える。搬送ベルト21は、多数の通気孔(図示省略)を有し、駆動ローラー22と従動ローラー25に巻き掛けられている。支持板23は、多数の通気孔を有し、上面が搬送ベルト21の内面に接触している。吸引部24は、支持板23の通気孔と搬送ベルト21の通気孔を介して空気を吸引することでシートSを搬送ベルト21に吸着させる。モーター等の駆動部(図示省略)により駆動ローラー22が反時計回り方向に駆動されることで搬送ベルト21が反時計回り方向に回転し、搬送ベルト21に吸着されたシートSがY方向に搬送される。
【0023】
作像ユニット6は、ヘッドユニット11Y、11Bk、11C、11M(ヘッドユニット11と総称する)を備え、それぞれイエロー、ブラック、シアン、マゼンタのインクを吐出する。ヘッドユニット11Y、11Bk、11C、11Mには、それぞれイエロー、ブラック、シアン、マゼンタのインクが充填されたインクコンテナ20Y、20Bk、20C、20M(インクコンテナ20と総称する)が接続されている。
【0024】
ヘッドユニット11は、1つ以上のインクジェットヘッド、例えば、千鳥に配置された複数のインクジェットヘッドを備える(図示省略)。インクジェットヘッドは、前後方向を長手方向とする直方体状の筐体と、筐体の底部に設けられたノズルプレートと、を備える。ノズルプレートは、前後方向(搬送ベルト21の搬送方向Yと交差する搬送ベルト21の幅方向)に並ぶ多数のノズルを備え(図示省略)、各ノズルの吐出口がノズルプレートの下面であるノズル面(図示省略)に設けられている。各ノズルには圧電素子(図示省略)が設けられ、筐体の内部には圧電素子を駆動する駆動回路(図示省略)が設けられている。
【0025】
プリンター1は、インク供給路60を備える(
図4参照)。同図では、1色のインクに対応するインク供給路60が示されているが、本実施形態では4色のインクを用いるため、4系統の同様のインク供給路60が設けられている。プリンター1は、インクコンテナ20が装着されるコンテナ装着部61と、インクを濾過するフィルター62と、インクコンテナ20からフィルター62を介してインクを吸引するポンプ63と、ポンプ63から送り出されたインクを貯留するサブタンク64と、サブタンク64に貯留されたインクをヘッドユニット11に供給するポンプ65と、を備える。
【0026】
インクコンテナ20とフィルター62とポンプ63とサブタンク64は、メイン配管66で接続されている。中継配管67の一端部はプリンター1のハウジング3の背面に設けられたカップリング68に接続されている。インクコンテナ20からインクを供給する場合には、メイン配管66はインクコンテナ20に接続される。インク供給装置140からインクを供給する場合には、メイン配管66は中継配管67に接続される。
【0027】
制御部2は、演算部と記憶部とを備える。演算部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。記憶部は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の記憶媒体を含む。演算部は、記憶部に記憶されている制御プログラムを読み出して実行することで各種処理を実施する。なお、制御部2は、ソフトウェアを用いない集積回路によって実現されてもよい。
【0028】
プリンター1の基本的な画像形成動作は、次のとおりである。外部のコンピューター等からプリンター1に画像形成ジョブが入力されると、給紙ローラー5が給紙カセット4から搬送路10にシートSを送り出し、回転が停止されたレジストローラー18がシートSの斜行を補正する。レジストローラー18が所定のタイミングで搬送ユニット7にシートSを送り出すと、搬送ユニット7が搬送ベルト21にシートSを吸着してY方向に搬送する。制御部2がシートSの搬送と同期させてインクジェットヘッドの各ノズルに対応する階調データを駆動回路に供給すると、駆動回路が階調データに応じた駆動信号を圧電素子に供給することでノズルからインク滴が吐出され、シートSに画像が形成される。排紙ローラー8は、画像が形成されたシートSを排紙トレイ9に排出する。
【0029】
次に、インク供給装置140について説明する。
図5は、流路71の加温区間72の斜視図である。
図6は、加温区間72に設けられたヒーター75の斜視図である。
【0030】
[インクコンテナ]
インク供給装置140(
図4参照)は、インクコンテナ82が装着されるコンテナ装着部81を備える。インクコンテナ82は、プリンター1に装着されるインクコンテナ20よりも大きな容積を有する。本実施形態では4色のインクを用いるため、4つのインクコンテナ82が設けられ、それぞれイエロー、ブラック、シアン、マゼンタのインクが充填されている。
【0031】
[ヒーターユニット]
インクコンテナ82の各々に対して1つのヒーターユニット70が設けられている(
図5、6参照)。ヒーターユニット70は、流路71の加温区間72と、金属板73を挟んで加温区間72に沿って設けられ、金属板73と接触する線状のヒーター75と、を備える。筐体77は、金属板73と流路71とヒーター75とを収容する。
【0032】
[流路]
流路71(
図4参照)は、ヒーター75により加温される加温区間72と、ヒーター75により加温されない非加温区間74と、を含む。非加温区間74は、加温区間72よりもインク供給方向A上流側及び下流側に設けられている。以下では、インク供給方向A上流側、下流側を単に上流側、下流側と記載する場合がある。
【0033】
[加温区間]
加温区間72(
図5参照)は、2枚の金属板73の間に設けられ、2枚の金属板73に接触する。加温区間72は、ステンレス鋼等で形成されたパイプである。加温区間72は、直線状に形成された複数の直線部と、複数の直線部を直列に接続するU字形の複数の曲線部と、を備える。この例では、10本の直線部が設けられている。複数の直線部は、互いに平行に設けられており、加温区間72は、全体として規則的に蛇行した形状に形成されている。加温区間72の断面は、円形でもよく、円形以外でもよい。
【0034】
[非加温区間]
非加温区間74(
図4参照)は、加温区間72とインクコンテナ82との間、及び、加温区間72とプリンター1のカップリング68との間に設けられている。非加温区間74は、シリコーン樹脂等で形成されたチューブであり、可撓性を有する。加温区間72と非加温区間74とは、カップリング78を用いて連結されている。
【0035】
[ヒーター]
ヒーター75(
図6参照)は、2枚の金属板73の各々を挟んで加温区間72に沿って設けられ、金属板73と接触している。前側の金属板73の前方と、後側の金属板73の後方とに、同数のヒーター75が設けられている。この例では、前後にそれぞれ5個、合計10個のヒーター75が設けられている。ヒーター75は、例えば電熱線をシリコーン樹脂で被覆したコードヒーターであり、円形の断面を有する。ヒーター75は、直線状に形成された2つの直線部と、2つの直線部をつなぐU字形の曲線部と、を備え、金属や樹脂等で形成されたケーシングに収容されている。複数のヒーター75は、給電線76により電源(図示省略)に並列に接続されている。
【0036】
[遮断装置]
次に、遮断装置30について説明する。
図7、8は、遮断装置30の斜視図である。インク供給装置140は、インクを収容するインクコンテナ82と、インクコンテナ82に収容されたインクを供給する流路71と、流路71を流れるインクを加温するヒーター75と、流路71を遮断する遮断装置30と、を備え、流路71は、ヒーター75により加温される加温区間72と、加温区間72よりも耐熱性が低い非加温区間74と、を含み、遮断装置30は、加温区間72に連結され、所定温度に昇温した場合に軟化する連結部31と、連結部31が軟化した場合に、加温区間72と非加温区間74との間のインクの流れを位置エネルギーを用いて遮断する可動部32と、を備える。
【0037】
[連結部]
連結部31は、加温区間72のインク供給方向A下流側の端部に設けられている。連結部31は、加温区間72のパイプの外周面に接触する環状の部材である。連結部31は、所定温度に昇温した場合に軟化する材料で形成されている。所定温度は、流路71の非加温区間74の耐熱温度よりも低い温度である。すなわち、連結部31は、非加温区間74の耐熱温度よりも低い温度で軟化する。連結部31の材料としては、例えば、非加温区間74と異なる組成のシリコーン樹脂が用いられてもよく、シリコーンを含まない樹脂が用いられてもよい。
【0038】
[可動部]
可動部32は、開いた状態で非加温区間74を挟むように配置された鉗子状器具33と、鉗子状器具33を閉じさせる方向に重力による荷重を付与する荷重付与手段34と、を備え、連結部31は、軟化していない場合に荷重に抵抗することで鉗子状器具33が開いた状態を維持し、軟化した場合に荷重に対する抵抗が弱まることで鉗子状器具33を閉じさせる。
【0039】
[鉗子状器具]
鉗子状器具33は、非加温区間74のうち、加温区間72と非加温区間74とを連結するカップリング78の近傍に設けられている。鉗子状器具33は、医療用鉗子又はそれに類似した構造の器具であれば、いかなるものでもよい。鉗子状器具33は、ヒンジ結合された棒状の第1部材33Aと第2部材33Bとを有し、互いの先端部が上下方向に離間した姿勢で非加温区間74を挟む状態に配置されている。第1部材33Aの先端部が上方に位置し、第2部材33Bの先端部が下方に位置する。第1部材33Aの把持部(先端部の反対側の端部)が下方に位置し、第2部材33Bの把持部が上方に位置する。第1部材33Aは、ブラケット33Cを介して筐体77に固定されている。
【0040】
[荷重付与手段]
荷重付与手段34は、錘34Aと、滑車34Cを介して錘34Aと連結部31とをつなぐワイヤー34Bと、を備え、鉗子状器具33の1対の把持部の一方(この例では、第2部材33Bの把持部)がワイヤー34Bの錘34Aと滑車34Cとの間の部分に固定されている。錘34Aに働く重力により、ワイヤー34Bに張力が発生し、連結部31にワイヤー34Bの張力に相当する荷重が作用する。
【0041】
[安全弁]
安全弁79は、加温区間72の内圧が所定値に達した場合に加温区間72からインクを放出する。この例では、安全弁79はカップリング78に設けられているが、安全弁79は加温区間72に設けられていてもよい。安全弁79は、インク供給方向A上流側と下流側の2箇所に設けられることが望ましい。
【0042】
次に、遮断装置30の動作について説明する。加温区間72の温度が正常であり、連結部31が軟化していない場合、連結部31が荷重(ワイヤー34Bの張力)に抵抗し、
図7に示されるように、鉗子状器具33が開いた状態が維持される。この場合、インクの流れは遮断されない。
【0043】
一方、何らかの異常によりヒーター75が過昇温し、連結部31が軟化した場合、
図8に示されるように、連結部31に伸びが発生し、荷重(ワイヤー34Bの張力)に対する抵抗が弱まる。そのため、錘35の下降により、鉗子状器具33の第2部材33Bの把持部が引き下げられ、鉗子状器具33が閉じることで非加温区間74が押しつぶされる。その結果、インクの流れが遮断される。
【0044】
図7の状態は、
図8の状態と比べて錘34Aが高い位置に位置する。換言すれば、
図7の状態は、
図8の状態と比べて、錘34Aの位置エネルギーが大きい状態である。連結部31が軟化すると、連結部31の荷重に対する抵抗が弱まるため、錘34Aの位置エネルギーが錘34Aを下降させる運動エネルギーに変換され、錘34Aに働く重力により鉗子状器具33が閉じられる。要するに、可動部32は、連結部31が軟化した場合に、加温区間72と非加温区間74との間のインクの流れを位置エネルギーを用いて遮断するように構成されている。
【0045】
以上説明した本実施形態に係るインク供給装置140によれば、インクを収容するインクコンテナ82と、インクコンテナ82に収容されたインクを供給する流路71と、流路71を流れるインクを加温するヒーター75と、流路71を遮断する遮断装置30と、を備え、流路71は、ヒーター75により加温される加温区間72と、加温区間72よりも耐熱性が低い非加温区間74と、を含み、遮断装置30は、加温区間72に連結され、所定温度に昇温した場合に軟化する連結部31と、連結部31が軟化した場合に、加温区間72と非加温区間74との間のインクの流れを位置エネルギーを用いて遮断する可動部32と、を備える。この構成によれば、加温区間72の過昇温により連結部31が軟化した場合に、加温区間72と非加温区間74との間のインクの流れを位置エネルギーを用いて遮断する。よって、本実施形態によれば、電気的な手段を用いずに、過昇温したインクが流路71の耐熱性の低い区間に流入することを防ぐことができる。
【0046】
また、本実施形態に係るインク供給装置140によれば、可動部32は、開いた状態で非加温区間74を挟むように配置された鉗子状器具33と、鉗子状器具33を閉じさせる方向に重力による荷重を付与する荷重付与手段34と、を備え、連結部31は、軟化していない場合に荷重に抵抗することで鉗子状器具33が開いた状態を維持し、軟化した場合に荷重に対する抵抗が弱まることで鉗子状器具33を閉じさせる。この構成によれば、鉗子状器具33を用いた簡潔な構成でインクの流れを遮断することができる。
【0047】
また、本実施形態に係るインク供給装置140によれば、荷重付与手段34は、錘34Aと、滑車34Cを介して錘34Aと連結部31とをつなぐワイヤー34Bと、を備え、鉗子状器具33の1対の把持部の一方がワイヤー34Bの錘34Aと滑車34Cとの間の部分に結合されている。この構成によれば、錘34Aとワイヤー34Bと滑車34Cを用いた簡潔な構成で荷重を与えることができる。
【0048】
また、本実施形態に係るインク供給装置140によれば、可動部32は、加温区間72と、加温区間72よりもインク供給方向A下流側の非加温区間74と、の間のインクの流れを遮断する。加温区間72においては、インク供給方向A下流側ほど、インクが受ける熱量が多くなり、インクの温度が高くなるから、本実施形態によれば、温度の高い側のインクが非加温区間74へ流入することを防ぐことができる。また、インクジェットヘッドを熱から保護することができる。
【0049】
また、本実施形態に係るインク供給装置140によれば、可動部32は、加温区間72と、加温区間72よりもインク供給方向A上流側の非加温区間74と、の間のインクの流れを遮断する。加温区間72とインク供給方向A下流側の非加温区間74との間のインクの流れのみを遮断した場合、膨張したインクが加温区間72からインクコンテナ82側の非加温区間74に逆流する可能性があるが、本実施形態によれば、インクコンテナ82側の非加温区間74を保護することができる。
【0050】
また、本実施形態に係るインク供給装置140によれば、連結部31は、加温区間72のインク供給方向A下流側の端部に設けられている。加温区間72においてはインク供給方向A下流側ほどインクの温度が高くなるから、本実施形態によれば、インクの流れを早期に遮断することができる。
【0051】
また、本実施形態に係るインク供給装置140によれば、加温区間72の内圧が所定値に達した場合に加温区間72からインクを放出する安全弁79を備えるから、加温区間72の内圧の上昇を緩和することができる。
【0052】
上記実施形態が以下のように変形されてもよい。
【0053】
[第1変形例]
図9、10は、第1変形例に係る遮断装置40の斜視図である。この例では、可動部42は、非加温区間74の上方に設けられた錘44Aと、滑車44Cを介して錘44Aと連結部31とをつなぐワイヤー44Bと、非加温区間74の下部を支持する支持部43と、を備え、連結部31は、軟化していない場合に錘44Aに働く重力による荷重に抵抗することで錘44Aと非加温区間74との間隔が開いた状態を維持し、軟化した場合に荷重に対する抵抗が弱まることで錘44Aを下降させる。
【0054】
非加温区間74側においてワイヤー44Bが2本に分岐しており、それぞれのワイヤー44Bに吊り下げられた楔形の錘44Aが、インク供給方向A上流側及び下流側の非加温区間74の上方に配置されている。錘44Aは、錘44Aの上方に設けられた滑車45によって位置決めされている。非加温区間74の下方には、非加温区間74を支持する支持部43が設けられている。支持部43は、筐体77に固定されており、平坦な上面を有し、上面が非加温区間74の下部に接触している。
【0055】
加温区間72の温度が正常であり、連結部31が軟化していない場合、連結部31が荷重(ワイヤー44Bの張力)に抵抗し、
図9に示されるように、錘44Aと非加温区間74との間に間隔が開いた状態が維持される。この場合、インクの流れは遮断されない。
【0056】
一方、何らかの異常によりヒーター75が過昇温し、連結部31が軟化した場合、
図10に示されるように、連結部31に伸びが発生し、荷重(ワイヤー44Bの張力)に対する抵抗が弱まる。そのため、錘44Aの下降により、非加温区間74が押しつぶされ、インクの流れが遮断される。
【0057】
図9の状態は、
図10の状態と比べて錘44Aが高い位置に位置する。換言すれば、
図9の状態は、
図10の状態と比べて、錘44Aの位置エネルギーが大きい状態である。連結部31が軟化すると、連結部31の荷重に対する抵抗が弱まるため、錘44Aの位置エネルギーが錘44Aを下降させる運動エネルギーに変換され、錘44Aに働く重力により非加温区間74が押しつぶされる。要するに、本変形例においても、可動部42は、連結部31が軟化した場合に、加温区間72と非加温区間74との間のインクの流れを位置エネルギーを用いて遮断するように構成されている。本変形例によっても、電気的な手段を用いずに、過昇温したインクが流路71の耐熱性の低い区間に流入することを防ぐことができる。
【0058】
[第2変形例]
図11、12は、第2変形例に係る遮断装置50の斜視図である。同図では、インク供給方向A下流側のカップリング78付近を示しているが、インク供給方向A上流側のカップリング78付近にも、同様のバタフライバルブ53が設けられている。可動部52は、加温区間72に設けられたバタフライバルブ53と、バタフライバルブ53を閉じさせる方向に重力による荷重を付与する荷重付与手段54と、を備え、連結部31は、軟化していない場合に荷重に抵抗することでバタフライバルブ53が開いた状態を維持し、軟化した場合に荷重に対する抵抗が弱まることでバタフライバルブ53を閉じさせる。荷重付与手段54は、錘54Aと、滑車54Cを介して錘54Aと連結部31とをつなぐワイヤー54Bと、を備え、バタフライバルブ53の軸53Aに設けられたレバー53Bがワイヤー54Bの錘54Aと滑車54Cとの間の部分に結合されている。安全弁79は、下流側のバタフライバルブ53の上流側と、上流側のバタフライバルブ53の下流側と、に設けられている。
【0059】
加温区間72の温度が正常であり、連結部31が軟化していない場合、連結部31が荷重(ワイヤー54Bの張力)に抵抗し、
図11に示されるように、バタフライバルブ53が開いた状態が維持される。この場合、インクの流れは遮断されない。
【0060】
一方、何らかの異常によりヒーター75が過昇温し、連結部31が軟化した場合、
図12に示されるように、連結部31に伸びが発生し、荷重(ワイヤー54Bの張力)に対する抵抗が弱まる。そのため、錘54Aの下降により、バタフライバルブ53が閉じられ、インクの流れが遮断される。
【0061】
図11の状態は、
図12の状態と比べて錘54Aが高い位置に位置する。換言すれば、
図11の状態は、
図12の状態と比べて、錘54Aの位置エネルギーが大きい状態である。連結部31が軟化すると、連結部31の荷重に対する抵抗が弱まるため、錘54Aの位置エネルギーが錘54Aを下降させる運動エネルギーに変換され、錘54Aに働く重力によりバタフライバルブ53が閉じられる。要するに、本変形例においても、可動部52は、連結部31が軟化した場合に、加温区間72と非加温区間74との間のインクの流れを位置エネルギーを用いて遮断するように構成されている。本変形例によっても、電気的な手段を用いずに、過昇温したインクが流路71の耐熱性の低い区間に流入することを防ぐことができる。
【0062】
[他の変形例]
上記実施形態では、荷重付与手段34が鉗子状器具33を閉じさせる方向に重力による荷重を付与する例が示されたが、荷重付与手段34は、重力に代えて弾性力又は磁力による荷重を付与するように構成されていてもよい。弾性力による荷重は、例えば、錘34Aの代わりに引張コイルばねを設けることで付与されてもよい。磁力による荷重は、例えば、錘34Aの代わりに磁性体を設け、磁性体の下方に永久磁石を設けることで付与されてもよい。また、第2変形例においても、荷重付与手段54は、重力に代えて弾性力又は磁力による荷重を付与するように構成されていてもよい。
【0063】
上記実施形態では、連結部31が所定温度に昇温した場合に軟化する例が示されたが、連結部31は、所定温度に昇温した場合に融解するものであってもよい。
【0064】
上記実施形態のインク供給装置140と同様の構成がプリンター1に内蔵されていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
30 遮断装置
31 連結部
32 可動部
33 鉗子状器具
34 荷重付与手段
34A 錘
34B ワイヤー
34C 滑車
71 流路
72 加温区間
74 非加温区間
75 ヒーター
79 安全弁
82 インクコンテナ
140 インク供給装置