(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169268
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】表面保護フィルム
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20221101BHJP
C09J 7/22 20180101ALI20221101BHJP
C09J 123/02 20060101ALI20221101BHJP
C09J 129/04 20060101ALI20221101BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20221101BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20221101BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/22
C09J123/02
C09J129/04
C09J133/00
B32B7/022
B32B27/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075197
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000106151
【氏名又は名称】株式会社サンエー化研
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】山口 和也
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK03
4F100AK03A
4F100AK05
4F100AK05A
4F100AK06
4F100AK06A
4F100AK25
4F100AK25B
4F100AK63
4F100AK63B
4F100AK69
4F100AK69B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100CB05
4F100CB05B
4F100EJ94
4F100GB41
4F100JK06
4F100JK06B
4F100JK07
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4F100JL13B
4F100YY00A
4F100YY00B
4J004AA07
4J004AA08
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA04
4J004CB03
4J004CC02
4J004CE01
4J004FA04
4J040DA021
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4J040LA06
4J040MA02
4J040MA05
4J040MA10
4J040MB03
4J040MB09
4J040NA17
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】既存の設備で対応可能であり、剥離しやすい表面保護フィルムを提供する。
【解決手段】基材層と、基材層の一方の面に設けられた粘着剤層とを備え、粘着剤層のアクリル板に対する粘着力が0.01~0.09N/25mmであり、膜厚が30~60μmである、表面保護フィルムを用いる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、前記基材層の一方の面に設けられた粘着剤層とを備え、
前記粘着剤層のアクリル板に対する粘着力が0.01~0.09N/25mmであり、
膜厚30~60μmである、表面保護フィルム。
【請求項2】
引張弾性率が100~1000MPaである、請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
前記基材層の厚みが、20~40μmである、請求項1または2に記載の表面保護フィルム。
【請求項4】
前記粘着剤層の厚みが、5~20μmである、請求項1~3のいずれか1項に記載の表面保護フィルム。
【請求項5】
前記基材層が、ポリオレフィン系樹脂およびポリエステル系樹脂の少なくともいずれかを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の表面保護フィルム。
【請求項6】
前記ポリオレフィン系樹脂が、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、およびポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項5に記載の表面保護フィルム。
【請求項7】
前記粘着剤層が、ポリオレフィン系樹脂、EVA系樹脂、およびアクリル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~6のいずれか1項に記載の表面保護フィルム。
【請求項8】
前記粘着剤層が、低密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、およびEVA系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項7に記載の表面保護フィルム。
【請求項9】
アクリル板に対する剥離強度が0.1~0.5N/50mmである、請求項1~8のいずれか1項に記載の表面保護フィルム。
【請求項10】
ロール状である、請求項1~9のいずれか1項に記載の表面保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤層を備えた表面保護フィルムに関する。より詳しくは、既存の設備を地用して剥離しやすい表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子用デバイスは、その製造工程において傷がついたり、ゴミや埃などが付着したりするとデバイスの不良や製品品質の低下を招くため、表面保護フィルムを使用している。表面保護フィルムは、最終製品には不要となるため、組み立て工程中に取り除かれる。これら製造工程は、オートメーション化されており、表面保護フィルムの剥離も自動で行われる。自動剥離の方法として、ロール状に巻き取る方法や、表面保護フィルムに貼り付けた剥離テープを引っ張ることで表面保護フィルムを剥離する方法などがある。
【0003】
後者の方法は、剥離時に剥離テープが表面保護フィルムから剥離してしまう場合がある。そこで、表面保護フィルムの剥離を確実かつ容易にする目的で、剥離テープの粘着部の外形形状を変更する方法(例えば、特許文献1参照)や、剥離方向に対して傾斜を設けた剥離部材を相対移動させながら剥離する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-59378号公報
【特許文献2】特開2012-148824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既存の剥離テープや機械設備を変更することは、労力を要する。したがって、既存の設備で対応可能であり、剥離しやすい表面保護フィルムの開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討の結果、基材層と、基材層の一方の面に設けられた粘着剤層とを備えた表面保護フィルムにおいて、粘着剤層のアクリル板に対する粘着力が0.01~0.09N/25mmであり、膜厚を30~60μmとすることで、表面保護フィルムが剥離しやすくなることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
【0007】
[1]基材層と、前記基材層の一方の面に設けられた粘着剤層とを備え、前記粘着剤層のアクリル板に対する粘着力が0.01~0.09N/25mm以下であり、膜厚が30~60μmである、表面保護フィルム。
[2]引張弾性率が100~1000MPaである、[1]に記載の表面保護フィルム。
[3]前記基材層の厚みが20~40μmである、[1]または[2]に記載の表面保護フィルム。
[4]前記粘着剤層の厚みが、5~20μmである、[1]~[3]のいずれかに記載の表面保護フィルム。
[5]前記基材層が、ポリオレフィン系樹脂およびポリエステル系樹脂の少なくともいずれかを含む、[1]~[4]のいずれかに記載の表面保護フィルム。
[6]前記ポリオレフィン系樹脂が、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、およびポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種である、[5]に記載の表面保護フィルム。
[7]前記粘着剤層が、ポリオレフィン系樹脂、EVA系樹脂、およびアクリル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[6]のいずれかに記載の表面保護フィルム。
[8]前記粘着剤層が、低密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、およびEVA系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、[7]に記載の表面保護フィルム。
[9]アクリル板に対する剥離強度が0.1~0.5N/50mmである、[1]~[8]のいずれかに記載の表面保護フィルム。
[10]ロール状である、[1]~[9]のいずれかに記載の表面保護フィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明の表面保護フィルムは、既存の設備で対応可能であり、剥離しやすいという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の表面保護フィルムの一実施形態を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施する好ましい形態の一例について説明する。ただし、下記の実施形態は本発明を説明するための例示であり、本発明は下記の実施形態に何ら限定されるものではない。
【0011】
[表面保護フィルム]
本発明の表面保護フィルムは、基材層と、基材層の一方の面に設けられた粘着剤層とを備える。表面保護フィルムの一実施形態を、
図1を参照しながら説明する。
図1に示すとおり、表面保護フィルム10は、基材層1と、基材層1の一方の面に設けられた粘着剤層2とを備えている。電子デバイス等の被着体(図示せず)の表面を保護するために表面保護フィルム10を適用する際は、電子デバイス表面に粘着剤層2が密着するようにして表面保護フィルム10が貼着される。
【0012】
表面保護フィルムの厚みは、30~60μmであり、30~50μmであることが好ましい。表面保護フィルムの厚みが、30~60μmであると、表面保護フィルムが電子デバイス等の被着体から剥離しやすい。また、表面保護フィルムに必要な強度が得られやすい。さらに、表面保護フィルムをロール状に巻き取る際、折れやしわの発生を低減できる。
「表面保護フィルムが被着体から剥離しやすい」とは、電子デバイス等の被着体から、剥離テープを用いて表面保護フィルムを剥がす際、剥離テープが剥がれるという不具合を生じにくいことをいう。
【0013】
表面保護フィルムのアクリル板に対する剥離強度は、0.1~0.5N/50mmであることが好ましい。表面保護フィルムのアクリル板に対する剥離強度が、0.1N/50mm以上であると、表面保護フィルムが電子デバイス等の被着体から意図せずに剥離することを低減できる。表面保護フィルムのアクリル板に対する剥離強度が、0.5N/50mm以下であると、表面保護フィルムが電子デバイス等の被着体から剥離やすい。
ここで、アクリル板に対する剥離強度は、次の測定方法で測定した値である。表面保護フィルムを50mm幅×60mm長になるように裁断し、2kgローラーを用いてアクリル板に貼り合わせて試験片を得る。試験片を23℃×相対湿度65%の条件下に一昼夜静置する。その後、表面保護フィルムに剥離テープ(日東電工製NO.31Bポリエステル粘着テープ)を貼り付ける。引張り試験機で剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で剥離し、表面保護フィルムが剥離した瞬間の強度を剥離強度とする。
【0014】
表面保護フィルムの引張弾性率は、100~1000MPaが好ましく、100~800MPaがより好ましく、250~800MPaがさらに好ましい。引張弾性率が100MPa以上であると、表面保護フィルムを電子デバイス等の被着体から剥離する際、表面保護フィルムが破断することを低減できる。引張弾性率が100~800MPaであると、表面保護フィルムをロール状に巻き取る際、折れやシワが発生することを低減できる。
ここで、表面保護フィルムの引張弾性率は、JIS K7127に準拠して測定した値である。より詳細には、引張弾性率は、次の測定方法で測定した値である。幅15mm、長さ100mmに切断したマスキングフィルムを、チャック間距離50mmの装置にセットする。引張速度300mm/min、23℃×相対湿度65%の条件下で引張試験を行い、荷重-伸び曲線を得る。荷重-伸び曲線の立ち上がり部(3%伸長時)の接線から引張弾性率を求める。
以下、表面保護フィルムを構成する各層について説明する。
【0015】
(基材層)
基材層は、電子デバイス等の被着体に、傷がついたり、ゴミ、埃等が付着したりすることから保護する機能を担うものである。基材層としては、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、加工しやすいことから、熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂およびポリエステル系樹脂の少なくともいずれかを含むことが好ましく、ポリオレフィン系樹脂を含むことがより好ましく、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂は市販品を用いても良い。市販品としては、例えば、中密度ポリエチレン(商品名「T401AL」、旭化成製)、低密度ポリエチレン(商品名「LF580」、日本ポリエチレン製)、ポリプロピレン(商品名「F107A」、プライムポリマー製)が挙げられる。
熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
熱可塑性樹脂には、酸防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤、着色剤(顔料や染料等)等の各種添加剤を配合してもよい。これら添加剤は、基材層を作製する際に、熱可塑性樹脂と混合して押出成形するか、あるいは予め添加剤を熱可塑性樹脂に練り込んだマスターバッチを押出成形することで、熱可塑性樹脂に配合することができる。
【0017】
基材層の厚みは、表面保護フィルムの膜厚が30~60μmになる範囲であればよい。基材層の厚みとしては、10~55μmが好ましく、20~50μmがより好ましく、20~40μmがさらに好ましい。基材層の厚みが10μm以上であると、被着体を保護するという表面保護フィルムの機能を確保できる。基材層の厚みが55μm以下であると、表面保護フィルムが電子デバイス等の被着体から剥離しやすい。
【0018】
(粘着剤層)
粘着剤層は、基材層の一方の面に設けられて、電子デバイス等の被着体に表面保護フィルムを密着させる役割を担うものである。粘着剤層は、アクリル板に対する粘着力が0.01~0.09N/25mmである。アクリル板に対する粘着力が0.01~0.09N/25mmであると、表面保護フィルムが電子デバイス等の被着体から剥離しやすい。また、表面保護フィルムと電子デバイス等の被着体の密着性を確保でき、表面保護フィルムが、意図せずに剥離することを低減できる。
【0019】
粘着剤層のアクリル板に対する粘着力は、0.01~0.09N/25mmであり、0.02~0.05N/25mmであることが好ましい。アクリル板に対する粘着力が0.01N/25mm以上であると、表面保護フィルムが、電子デバイス等の被着体との密着性を確保でき、表面保護フィルムが、意図せずに剥離することを低減できる。アクリル板に対する粘着力が0.09N/25mm以下であると、表面保護フィルムが電子デバイス等の被着体から剥離しやすい。
ここで、アクリル板に対する粘着力は、JIS Z0237を参考にした次の測定方法で測定した値である。表面保護フィルムを25mm幅×200mm長になるように裁断し、2kgローラーを用いてアクリル板に貼り合わせて試験片を得る。試験片を23℃×相対湿度65%の条件下に一昼夜静置する。その後、引張り試験機で剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で剥離し、得られた剥離強度を粘着力とする。
【0020】
粘着剤層は、主成分として樹脂成分を含有し、必要に応じて、粘着付与剤や軟化剤等を含有してもよい。これらの各成分の種類や配合量を適宜調整することによって、粘着剤層の粘着力および引張弾性率を調整することができる。以下、粘着剤層を構成する各成分についてより詳細に説明する。
【0021】
粘着剤層の樹脂成分としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、EVA系樹脂、およびアクリル系樹脂が挙げられる。これらの中でも、加工しやすいことから、樹脂成分は、ポリオレフィン系樹脂、EVA系樹脂、およびアクリル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、低密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、およびEVA系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。樹脂成分は市販品を用いても良い。市販品としては、例えば、ポリエチレン(商品名「KS560T」、日本ポリエチレン製)が挙げられる。
樹脂成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
粘着剤層の任意成分である粘着付与剤は、粘着剤層に粘着性を向上する機能を有する。粘着付与剤を含有することにより、凝集力の低下による糊残りの発生を抑制しつつ、粘着力を適度に高めることができる。但し、粘着付与剤を含有すると粘着剤層の引張弾性率が増加する傾向にあるため、粘着剤層の引張弾性率が上記した範囲内になるように樹脂成分に添加する必要がある。
粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族石油系樹脂、脂環族石油系樹脂、芳香族系樹脂等の公知の粘着付与剤が挙げられる。これらの粘着付与剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
粘着付与剤の配合量は、樹脂成分100質量部に対して、1~50質量部であることが好ましく、1~30質量部であることがより好ましく、1~20質量部であることがさらに好ましい。
【0024】
粘着剤層の任意成分である軟化剤は、上記した粘着付与剤と併用して用いることにより、粘着剤層の粘着力を調整することができる。
軟化剤としては、例えば、低分子量のゴム系材料、プロセルオイル(パラフィン系オイル)、石油系軟化剤、エポキシ系化合物が挙げられる。これらの軟化剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
軟化剤の配合量は、樹脂成分100質量部に対して、1~25質量部であることが好ましく、5~25質量部であることがより好ましく、5~15質量部であることがさらに好ましい。
【0026】
粘着剤層には、上記した成分以外にも、必要に応じて、紫外線防止剤、酸化防止剤、充填剤、滑剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0027】
粘着剤層を作製する際に、樹脂成分と上記樹脂成分以外の成分(以下、「他の成分」ともいう)を混合して押出成形するか、あるいは予め他の成分を樹脂成分に練り込んだマスターバッチを押出成形することで、樹脂成分に配合することができる。
【0028】
粘着剤層の厚みは、表面保護フィルムの膜厚が30~60μmになる範囲であればよい。粘着剤層の厚みとしては、5~20μmが好ましく、7~18μmがより好ましく、9~15μmがさらに好ましい。粘着剤層の厚みが5μm以上であると、電子デバイス等の被着体との密着性を確保し得る。粘着剤層の厚みが15μm以下であると、表面保護フィルムを電子デバイス等の被着体から剥離しやすい。
【0029】
[表面保護フィルムの製造方法]
次に、表面保護フィルムの製造方法の一例について説明する。先ず、粘着剤層を構成する成分(以下、「粘着剤層成分」ともいう)と、基材層を構成する成分(以下、「基材層成分」ともいう)とを別個に押出成形機に供給する。具体的には、粘着剤層を作製するための押出成形機に粘着剤層成分を供給し、基材層を作製するための押出成形機に基材層成分を供給し、2台の押出機から各々の材料を一つのダイスから共押出しする二層共押出法により一体に成形する。このような製造方法を採用することにより、
図1に示したような、基材層1と基材層1の一方の面に設けられた粘着剤層2とを備えた表面保護フィルム10が得られる。
基材層成分は、熱可塑性樹脂と添加剤を混合して押出成形機に供給してもよく、予め添加剤を熱可塑性樹脂に練り込んだマスターバッチを押出成形機に供給してもよい。また、粘着剤層成分は、樹脂成分と他の成分を混合して押出成形機してもよく、予め他の成分を樹脂成分に練り込んだマスターバッチを押出成形機に供給してもよい。
【0030】
また、二層共押出法以外に、基材層をなす長尺状のフィルムの一方の面状に、押出成形法により粘着剤層を作製してもよい。また、基材層を構成するフィルムと、上記のようにして作製した粘着剤層(フィルム)とをラミネートして表面保護フィルムを製造してもよい。表面保護フィルムの膜厚を制御しやすいという観点から、表面保護フィルムは、二層共押出法により一体に成形することが好ましい。
【0031】
表面保護フィルムの膜厚は、30~60μmとする。したがって、表面保護フィルムにおける基材層の厚みは、例えば、5~55μmとすることができる。表面保護フィルムにおける粘着剤層の厚みは、例えば、5~15μmとすることができる。
【0032】
得られた表面保護フィルムは、使用の便宜のため通常はロール状に巻回された状態とされる。ロール状で表面保護フィルムを保管すると、内層側にある粘着剤層が外層側にある基材層と密着し、表面保護フィルムがロールから展開しにくくなる場合がある。したがって、表面保護フィルムは、図示はしないけれども、粘着剤層が設けられた面とは反対側の面に離型層を備えていてもよい。
【0033】
離型層としては、離型性を有する材料であればよく、例えば、シリコーン樹脂、有機樹脂変性シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アミノアルキド樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。また、離型性を向上させるために、粘着剤層に剥離助剤を添加してもよい。剥離助剤としては、例えば、シリコーン系剥離助剤、パラフィン系剥離助剤、ポリエチレンワックス、アクリル系重合体が挙げられる。
【実施例0034】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、各種物性値の測定方法は、別途記載がない限り、上記した方法による。
【0035】
[アクリル板に対する剥離強度(N/50mm)]:表面保護フィルムを50mm幅×60mm長になるように裁断し、2kgローラーを用いてアクリル板に貼り合わせて試験片を得た。得られた試験片を23℃×相対湿度65%の条件下に一昼夜静置した。その後、表面保護フィルムに剥離テープを貼り付けた。引張り試験機で剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で剥離し、表面保護フィルムが剥離した瞬間の強度を剥離強度とした。剥離強度が0.5N/50mm以下であった場合を「〇」と判定し、剥離強度が0.5N/50mm超であった場合を「×」と判定した。
【0036】
[アクリル板に対する粘着力(N/25mm)]:表面保護フィルムを25mm幅×200mm長になるように裁断し、2kgローラーを用いてアクリル板に貼り合わせて試験片を得た。得られた試験片を23℃×相対湿度65%の条件下に一昼夜静置した。その後、引張り試験機で剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で剥離し、得られた剥離強度を粘着力とした。
【0037】
[引張弾性率(MPa)]:幅15mm、長さ100mmに切断したマスキングフィルムを、チャック間距離50mmの装置にセットした。引張速度300mm/min、23℃×相対湿度65%の条件下で引張試験を行い、荷重-伸び曲線を得た。得られた荷重-伸び曲線の立ち上がり部(3%伸長時)の接線から引張弾性率を求めた。
【0038】
(実施例1)
基材層成分として、中密度ポリエチレン(旭化成、T401AL)を用い、粘着剤層成分としては、ポリエチレン(日本ポリエチレン、KS560T)を用いた。ダイ温度を200℃に設定したTダイ法により、基材層の厚みが20μm、粘着剤層の厚みが10μm、膜厚が30μmである表面保護フィルムを得た。得られた表面保護フィルムについて、上記の測定試験を行った。測定結果を表1に記す。
【0039】
(実施例2~4、比較例1~3)
表1に示すよう変更したこと以外は、実施例1と同じ方法で表面保護フィルムを得た。得られた表面保護フィルムについて、上記の測定試験を行った。測定結果を表1に記す。
表1中の各成分の詳細は以下のとおりである。
(基材層)
・中密度エチレン:商品名「T401AL」、旭化成製
・低密度エチレン:商品名「LF580」、日本ポリエチレン製
・ポリプロピレン:商品名「F107A」、プライムポリマー製
(粘着剤層)
・ポリエチレン:商品名「KS560T」、日本ポリエチレン製
・EVA樹脂:商品名「P1007」、三井ダウ製
【0040】
【0041】
【0042】
表1、2に示すように、粘着剤層のアクリル板に対する粘着力が0.01~0.09N/25mmであり、かつ、膜厚が30~60μmの表面保護フィルムは、アクリル板に対する剥離強度が0.5N/50mm以下であった。したがって、表面保護フィルムは、剥離しやすいものである。
一方で、粘着剤層のアクリル板に対する粘着力が0.10N/25mmであるか、あるいは膜厚が70μmの表面保護フィルムは、アクリル板に対する剥離強度が0.6N/50mmであった。したがって、表面保護フィルムは、剥離しにくいものである。