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特開2022-169274超音波撮像装置、信号処理装置、および、信号処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169274
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】超音波撮像装置、信号処理装置、および、信号処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075205
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】特許業務法人 山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】広島 美咲
(72)【発明者】
【氏名】藤井 信彦
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD20
4C601EE01
4C601EE22
4C601HH21
4C601JB34
4C601JB48
4C601JB50
4C601JB53
4C601JC06
4C601JC17
4C601JC37
(57)【要約】
【課題】少ない演算量で、画素ごとに受信信号のコヒーレンス性指標を算出し、高画質な超音波画像を得る。
【解決手段】ビームフォーミング用音速を複数種類に変化させた複数種類の画像を生成する。複数種類の画像間の対応する位置の画素の信号強度をビームフォーミング用音速の順に並べることによりビームフォーミング用音速方向の信号強度の変化を求める。求めた信号強度の変化に基づいて画素のビームフォーミングに用いた複数の受信信号のコヒーレンス性を表すコヒーレンス指標を算出する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波の送信を受けた撮像対象において反射された超音波を、複数の超音波素子の列が受信し、前記超音波素子ごとに出力する受信信号を格納するメモリと、
前記メモリから複数の前記超音波素子ごとの前記受信信号を受け取って、ビームフォーミング用音速に基づいて設定した遅延時間を用いて受信ビームフォーミング処理することにより、所定の撮像範囲について画像を生成する超音波画像生成部と、
前記ビームフォーミング用音速を複数種類に変化させた複数種類の前記画像を前記超音波画像生成部に生成させるか、または、前記超音波画像生成部が生成した前記画像のデータに基づいて演算により生成する音速変化画像生成部と、
前記音速変化画像生成部が生成した複数種類の前記画像間の対応する位置の画素の信号強度を前記ビームフォーミング用音速の順に並べることによりビームフォーミング用音速方向の前記信号強度の変化を求め、求めた前記信号強度の変化に基づいて当該画素のビームフォーミングに用いた複数の前記受信信号のコヒーレンス性を表すコヒーレンス指標を算出するコヒーレンス指標算出部を有することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波撮像装置であって、平均音速推定部をさらに有し、
前記平均音速推定部は、前記コヒーレンス指標と、前記ビームフォーミング用音速が異なる複数種類の前記画像の信号強度とを用いて、前記コヒーレンス指標を求めた前記画素の位置に対応する前記撮像対象の最適なビームフォーミング音速である平均音速を推定し、推定した前記平均音速を前記超音波画像生成部に対して前記ビームフォーミング用音速として設定し、その後の撮像を実行させることを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項3】
請求項1に記載の超音波撮像装置であって、画像処理部をさらに有し、
前記画像処理部は、前記ビームフォーミング用音速が異なる複数種類の前記画像のうち1以上の画像の信号強度と、前記コヒーレンス指標とを用いて、処理後画像を生成することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項4】
請求項1に記載の超音波撮像装置であって、前記コヒーレンス指標算出部は、前記ビームフォーミング用音速を横軸とし、前記信号強度の大きさを縦軸とし、前記ビームフォーミング用音速が異なる複数種類の前記画像の対応する画素の前記信号強度の変化を表すグラフを生成し、前記信号強度の変化を表す曲線を求め、前記曲線が上向きに凸の形状か否か、前記曲線の変化量、前記曲線の予め定めた多項式への近似精度、および、前記曲線の極値のうちの少なくとも一つの特徴量を算出し、一つ以上の前記特徴量から前記コヒーレンス指標を算出することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項5】
請求項2に記載の超音波撮像装置であって、前記コヒーレンス指標算出部は、前記撮像範囲内に予め定めたROI内に含まれる複数の前記画素についてそれぞれ前記コヒーレンス指標を算出し、
前記平均音速推定部は、
前記コヒーレンス指標を算出した前記画素の信号強度と前記コヒーレンス指標との積を算出し、前記積の前記ROIの総和または平均値をフォーカス指標として算出する処理を、前記ビームフォーミング用音速の異なる複数種類の前記画像の対応する前記ROIごとにそれぞれ行い、
得られた前記フォーカス指標が最大となる前記画像を求め、求めた前記画像の前記ビームフォーミング用音速を前記平均音速と推定することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項6】
請求項2に記載の超音波撮像装置であって、最大信号強度取得音速算出部をさらに有し、
前記最大信号強度取得音速算出部は、前記ビームフォーミング用音速が異なる複数種類の前記画像の対応するROI内の前記画素の信号強度を、複数種類の前記画像の対応する位置の画素間で比べることにより、前記信号強度が最大となる前記画像を選択し、選択した前記画像の前記ビームフォーミング用音速を前記画素の位置の最大信号強度取得音速として求め、
前記コヒーレンス指標算出部は、前記ROI内の前記画素について前記コヒーレンス指標を算出し、
前記平均音速推定部は、算出した前記コヒーレンス指標により前記最大信号強度取得音速を重み付けした重み付け後最大信号強度取得音速を用いて前記平均音速を推定することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項7】
請求項6に記載の超音波撮像装置であって、前記コヒーレンス指標算出部および前記最大信号強度取得音速算出部は、前記ROI内の複数の前記画素について前記コヒーレンス指標および前記最大信号強度取得音速をそれぞれ算出し、
前記平均音速推定部は、前記ROI内の複数の前記画素について前記重み付け後最大信号強度取得音速を求め、その平均値を前記平均音速とすることを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項8】
請求項7に記載の超音波撮像装置であって、前記コヒーレンス指標算出部は、前記ROI内における前記コヒーレンス指標の分布を求め、
前記最大信号強度取得音速算出部は、前記ROI内における前記最大信号強度取得音速の分布を求め、
前記平均音速推定部は、前記ROI内の前記コヒーレンス指標の分布により前記ROI内の前記最大信号強度取得音速の分布を重み付けすることにより前記重み付け後最大信号強度取得音速の分布を求め、前記重み付け後最大信号強度取得音速の分布の平均値を平均音速とすることを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項9】
請求項3に記載の超音波撮像装置であって、前記コヒーレンス指標算出部は、撮像範囲に含まれる複数の前記画素について前記コヒーレンス指標を算出することにより、画像内の前記コヒーレンス指標の分布を求め、
前記画像処理部は、前記ビームフォーミング用音速が異なる複数種類の前記画像のうち1以上の画像について、前記コヒーレンス指標が高い第1領域の信号強度を、前記第1領域よりも前記コヒーレンス性が低い第2領域の信号強度よりも大きくなるように画像処理を行って前記処理後画像を生成することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項10】
請求項9に記載の超音波撮像装置であって、前記画像処理部は、前記音速が異なる複数種類の前記画像のうちの一つの画像について前記画像処理を行って前記処理後画像を生成することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項11】
請求項10に記載の超音波撮像装置であって、前記画像処理部が、前記画像処理を行う前記一つの画像は、前記音速が異なる複数種類の画像のうち予め定めた規定音速の画像であることを特徴とする超音波撮像措置。
【請求項12】
請求項10に記載の超音波撮像装置であって、前記画像処理部が、前記画像処理を行う前記一つの画像は、前記音速が異なる複数種類の画像のうち、予め定めたROI内について推定された平均音速の画像であることを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項13】
請求項9に記載の超音波撮像装置であって、前記画像処理部は、前記ビームフォーミング用音速が異なる複数種類の前記画像の対応する位置の前記画素の信号強度を重み付け加算することにより前記処理後画像を生成することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項14】
請求項13に記載の超音波撮像装置であって、最大信号強度取得音速算出部をさらに有し、
前記最大信号強度取得音速算出部は、前記ビームフォーミング用音速が異なる複数種類の前記画像の対応する位置の前記画素の信号強度を、複数種類の前記画像間で比べ、前記信号強度が最大となる前記画像を選択し、選択した前記画像の前記ビームフォーミング用音速を前記画素の位置の最大信号強度取得音速として求めることにより、前記最大信号強度取得音速の分布を求め、
前記画像処理部は、前記重み付けの際の前記最大信号強度取得音速を前記ビームフォーミング用音速とする前記画像の信号強度の重みを、前記コヒーレンス指標が大きい画素ほど大きくなるように設定することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項15】
請求項14に記載の超音波撮像装置であって、最小信号強度取得音速算出部をさらに有し、
前記最小信号強度取得音速算出部は、前記ビームフォーミング用音速が異なる複数種類の前記画像の対応する位置の前記画素の信号強度を、複数種類の前記画像間で比べ、前記信号強度が最小となる前記画像を選択し、選択した前記画像の前記ビームフォーミング用音速を前記画素の位置の最小信号強度取得音速として求め、
前記画像処理部は、前記重み付けの際に、所定値よりもコヒーレンス値が大きい画素は、前記最大信号強度取得音速を前記ビームフォーミング用音速とする前記画像の信号強度の重みが、前記最小信号強度取得音速を前記ビームフォーミング用音速とする前記画像の信号強度の重みよりも大きく、所定値よりもコヒーレンス値が小さい画素は、前記最小信号強度取得音速を前記ビームフォーミング用音速とする前記画像の信号強度の重みが、前記最大信号強度取得音速を前記ビームフォーミング用音速とする前記画像の信号強度の重みよりも大きくなるように設定することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項16】
請求項1に記載の超音波撮像装置であって、前記音速変化画像生成部は、前記超音波画像生成部に前記ビームフォーミング用音速を一画像ごとに設定し、複数種類に前記ビームフォーミング用音速が異なる画像を順次生成させることを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項17】
請求項1に記載の超音波撮像装置であって、前記超音波画像生成部は、前記受信信号をビームフォーミング処理する受信ビームフォーマを複数有し、
前記音速変化画像生成部は、複数の前記受信ビームフォーマに、複数種類の前記ビームフォーミング用音速の前記遅延時間をそれぞれ設定させ、同一スキャンラインについてパラレルに前記ビームフォーミング処理を行わせることによって、複数種類の前記画像をパラレルに生成させることを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項18】
請求項1に記載の超音波撮像装置であって、
前記音速変化画像生成部は、
前記超音波画像生成部が第1ビームフォーミング用音速に基づいて定めた第1遅延時間を用いて生成した第1画像のデータを波数空間における第1波数空間データに変換する変換部と、
第2ビームフォーミング用音速に基づいて定めた第2遅延時間で前記受信信号を処理した場合に得られる第2画像を変換した第2の波数空間データと等価のデータを、前記第1波数空間データを処理することにより生成するリマッピング処理部と、
前記リマッピング処理部が生成した前記第2波数空間データと等価のデータを、逆変換することにより、前記第2画像を生成する再変換部とを有することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項19】
請求項1に記載の超音波撮像装置であって、
前記音速変化画像生成部は、前記ビームフォーミング用音速を複数種類に変化させた場合の前記画像を前記ビームフォーミング用音速方向に並べて、3次元データセットを生成し、
コヒーレンス指標算出部は、前記3次元データセットにおいて、前記画像を構成する画素のうち1以上の画素について前記ビームフォーミング用音速方向の前記信号強度の変化を求め前記コヒーレンス指標を算出することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項20】
超音波の送信を受けた撮像対象において反射された超音波を、複数の超音波素子の列が受信し、前記超音波素子ごとに出力する受信信号を外部から受け取って、格納するメモリと、
前記メモリから複数の前記超音波素子ごとの前記受信信号を受け取って、ビームフォーミング用音速に基づいて設定した遅延時間を用いて受信ビームフォーミング処理することにより、所定の撮像範囲について画像を生成する超音波画像生成部と、
前記ビームフォーミング用音速を複数種類に変化させた複数種類の前記画像を前記超音波画像生成部に生成させるか、または、前記超音波画像生成部が生成した前記画像のデータに基づいて演算により生成する音速変化画像生成部と、
前記音速変化画像生成部が生成した複数種類の前記画像間の対応する位置の画素の信号強度を前記ビームフォーミング用音速の順に並べることによりビームフォーミング用音速方向の前記信号強度の変化を求め、求めた前記信号強度の変化に基づいて当該画素のビームフォーミングに用いた複数の前記受信信号のコヒーレンス性を表すコヒーレンス指標を算出するコヒーレンス指標算出部を有することを特徴とする信号処理装置。
【請求項21】
超音波の送信を受けた撮像対象において反射された超音波を、複数の超音波素子の列が受信し、前記超音波素子ごとに出力する受信信号を、外部から受け取って、
前記受信信号を受け取って、ビームフォーミング用音速に基づいて設定した遅延時間を用いて受信ビームフォーミング処理することにより、所定の撮像範囲について画像を生成し、
前記ビームフォーミング用音速を複数種類に変化させた複数種類の前記画像をそれぞれ前記受信ビームフォーミング処理により生成するか、または、前記生成した前記画像のデータに基づいて演算により生成し、
複数種類の前記画像間の対応する位置の画素の信号強度を前記ビームフォーミング用音速の順に並べることによりビームフォーミング用音速方向の前記信号強度の変化を求め、求めた前記信号強度の変化に基づいて当該画素のビームフォーミングに用いた複数の前記受信信号のコヒーレンス性を表すコヒーレンス指標を算出することを特徴とする信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体中の音速は、脂肪・筋肉などの組織により異なり、また個人差も有する。超音波撮像装置は、超音波素子列から生体に向かって超音波を送信し、それより生体内で生じたエコー信号を受信し、得られた受信信号(チャンネルRF信号)を、受信焦点と各超音波素子との距離に応じた遅延時間により遅延させた後加算等する受信ビームフォーミング処理を行う。受信ビームフォーミングの際の遅延時間は、一般的には、生体内を伝搬する超音波の音速の平均値等を予め設定し、これを用いて算出されている。しかしながら、設定音速と実際の音速が異なると、各チャンネルのエコー信号間のコヒーレント性が低下し、低画質化に繋がる。
【0003】
そこで、非特許文献1に記載の技術では、撮像対象から得たチャンネルRF信号を一旦保存し、受信ビームフォーミングに用いる音速を複数種類に変化させ、音速ごとの遅延時間を算出する。算出した遅延時間を用いて受信ビームフォーミングを行って、複数種類の音速ごとに超音波画像を生成し、それらの画像のフォーカス度合を評価する。求めたフォーカス度合に基づいて、最適な遅延時間を定め、超音波画像を生成する。これにより、撮像対象に適した音速で、超音波画像を撮像することができる。このような最良の画像が得られるビームフォーミング音速は、組織の物性値としての音速と区別して平均音速などと呼ばれる。撮像対象の物性値音速が一様であれば、平均音速と物性値音速は一致するが、撮像対象が複数の物性値音速を有する場合には、超音波の伝搬経路中の平均な音速が、最適なビームフォーミング音速として推定される。
【0004】
一方、非特許文献2には、受信信号のコヒーレンス性に応じて信号に重み付けをすることで、コヒーレンス性の低いアーチファクトやノイズ成分を抑制するアダプティブビームフォーミング(Adaptive-beamforming)技術が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】David Napolitano, et.al,”Sound speed correction in ultrasound imaging, Ultrasonics”,Volume 44, p43-46(2006),ISSN 0041-624X
【非特許文献2】S. M. Hverven, O. M. H. Rindal, A. Rodriguez-Molares and A. Austeng, "The influence of speckle statistics on contrast metrics in ultrasound imaging," 2017 IEEE International Ultrasonics Symposium (IUS), Washington, DC, USA, 2017, pp. 1-4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
撮像対象は音速の異なる複数の組織が複雑な配置で含まれるため、画素単位でのフォーカス度合を評価することができれば、コヒーレンス性の高い画素を抽出でき、音速推定のロバスト性、推定精度の向上や、アーチファクト・ノイズを低減した高画質な撮像が可能になる。
【0007】
しかしながら、非特許文献1の技術は、複数種類の音速ごとに超音波画像を生成して、画像ごとにそのフォーカス度合を評価することはできるが、画素単位でのフォーカス度合を評価することはできない。
【0008】
一方、アダプティブビームフォーミング技術では、各チャンネルのエコー信号間の相関演算が用いられるため、演算量が大きく、装置のフロントエンドに、適応ビームフォーミング専用回路や専用ソフトウエア等を搭載する必要がある。
【0009】
本発明の目的は、少ない演算量で、画素ごとに受信信号のコヒーレンス性指標を算出し、高画質な超音波画像を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の超音波撮像装置は、受信信号を格納するメモリと、超音波画像生成部と、音速変化画像生成部と、コヒーレンス指標算出部とを有する。メモリは、超音波の送信を受けた撮像対象において反射された超音波を、複数の超音波素子の列が受信し、超音波素子ごとに出力する受信信号を格納する。超音波画像生成部は、メモリから複数の超音波素子ごとの受信信号を受け取って、ビームフォーミング用音速に基づいて設定した遅延時間を用いて受信ビームフォーミング処理することにより、所定の撮像範囲について画像を生成する。音速変化画像生成部は、ビームフォーミング用音速を複数種類に変化させた複数種類の画像を超音波画像生成部に生成させるか、または、超音波画像生成部が生成した画像のデータに基づいて生成する。コヒーレンス指標算出部は、音速変化画像生成部が生成した複数種類の画像間の対応する位置の画素の信号強度をビームフォーミング用音速の順に並べることによりビームフォーミング用音速方向の信号強度の変化を求め、求めた信号強度の変化に基づいて当該画素のビームフォーミングに用いた複数の前記受信信号のコヒーレンス性を表すコヒーレンス指標を算出する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、少ない演算量で、画素ごとに受信信号のコヒーレンス性指標を算出し、高画質な超音波画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1の超音波撮像装置の構成を示すブロック図。
図2】(a)最適な音速で算出した遅延時間で受信信号を遅延させた後加算した信号の波形と、それを用いて生成したB像を示す説明図、(b)最適な音速よりも遅い音速で算出した遅延時間で受信信号を遅延させた後加算した信号の波形と、それを用いて生成したB像を示す説明図。
図3】(a)および(b)実施形態1の音速変化画像生成部54が生成した3次元データセットと、コヒーレンス指標算出部55の処理を示す説明図、(c)コヒーレンス指標算出部55が抽出した対応する画素の輝度の音速cによる変化を示すグラフ。
図4】(a)実施形態1のコヒーレンス性の高い画素の輝度と音速との関係を示すグラフ、(b)実施形態1のコヒーレンス性の低い画素の輝度と音速との関係を示すグラフ。
図5】実施形態1の平均音速推定部56の処理を示す説明図であり、(a)ROI71内のコヒーレンス指標の分布を示す図、(b)ROI内の信号強度の分布を示す図、(c)平均音速推定部56が求めた、ROI内のコヒーレンス指標と信号強度の積の総和または平均値(フォーカス指標)と、音速との関係を示すグラフ。
図6】実施形態1の超音波撮像装置の動作を示すフローチャート。
図7】実施形態2の超音波撮像装置の構成を示すブロック図。
図8】実施形態2の平均音速推定部56の処理を示す説明図であり、(a)ROI71内のコヒーレンス指標の分布を示す図、(b)最大信号強度が取得される音速のROI内の信号強度の分布を示す図。
図9】実施形態2の超音波撮像装置の動作を示すフローチャート。
図10】実施形態3の超音波撮像装置の構成を示すブロック図。
図11】実施形態3の画像処理部59の処理を示す説明図であり、(a)画像内のコヒーレンス指標の分布を示す図、(b)画像内の信号強度の分布を示す図、(c)コヒーレンス指標で重み付け後の信号強度の分布を示す図。
図12】実施形態3の超音波撮像装置の動作を示すフローチャート。
図13】実施形態4の超音波撮像装置の構成を示すブロック図。
図14】実施形態4の超音波撮像装置の動作を示すフローチャート。
図15】実施形態5の超音波撮像装置の音速変化画像生成部54の構成を示すブロック図。
図16】実施形態5の音速変化画像生成部54の処理を示す説明図。
図17】実施形態4の音速変化画像生成部54の処理動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0014】
本発明では、撮像対象に超音波を送信し、反射波等を超音波素子列で受信し、複数の異なる音速で受信ビームフォーミングを行った複数種類の画像を生成する。画素ごとの信号強度の音速に対する変化の特徴量から、画素ごとの信号強度を構成する受信ビームフォーミング後受信信号について、その生成に用いられた各チャンネル(超音波素子)の受信信号のコヒーレンス性指標を算出する。これによりチャンネルドメインデータ(各チャンネルの受信信号)内の相関性を算出することなく、コヒーレンス性の高い受信信号から生成された画素を抽出できる。
【0015】
これにより、超音波画像の画素ごとに、その画素位置に対応する最適なビームフォーミング音速(平均音速)について、音速推定を行うことが可能である。また、平均音速推定のロバスト性および推定精度の向上を図ることできる。推定した平均音速を用いて受信ビームフォーミング処理を行うことにより、アーチファクト・ノイズを低減した高画質な画像の撮像が可能になる。なお、最適なビームフォーミング音速は、組織の物性値としての音速と区別して、ここでは平均音速と呼ぶ。撮像対象の物性値音速が一様であれば、平均音速と物性値音速は一致するが、通常、撮像対象が複数の物性値音速を有するため、超音波の伝搬経路中の平均な音速が、最適なビームフォーミング音速として推定される。本実施形態では、超音波画像の画素ごとに平均音速推定を行うことができる。
【0016】
また、画素ごとのコヒーレンス性を用いて、異なる音速で受信ビームフォーミングを行った複数種類の画像を合成することにより、高画質な画像を生成することができる。
【0017】
<<実施形態1>>
以下、実施形態1の超音波撮像装置について説明する。図1は、本実施形態の超音波撮像装置の全体構成を示すブロック図である。
【0018】
実施形態1では、画素ごとのコヒーレンス指標を算出した後、撮像対象の平均音速を推定し、推定した平均音速により以降の受信ビームフォーミングを行う。
【0019】
本実施形態の超音波撮像装置30は、図1に示すように、送信ビームフォーマ31と、送受切り替え部(T/R)33と、信号処理装置50と、入力部35と、制御部36と、表示部37とを備えて構成される。超音波撮像装置30には、探触子20が接続されている。探触子20内には、超音波素子21の列(アレイ)が備えられている。
【0020】
信号処理装置50は、超音波画像を生成するための構成として、チャンネルメモリ32と、超音波画像生成部52を備えている。また、信号処理装置50は、コヒーレンス指標を算出するための構成として、音速変化画像生成部54と、コヒーレンス指標算出部55を、3次元データセットメモリ58とを備えている。さらに、信号処理装置50は、コヒーレンス指標から平均音速を推定するための構成として、平均音速推定部56とを備えている。
【0021】
送信ビームフォーマ31は、送信信号を生成して、送受切り替え部(T/R)33を介して1以上の超音波素子21に受け渡す。送信信号を受け取った超音波素子21は、送信信号を超音波に変換して撮像対象10へ送信する。撮像対象10で反射等した超音波は、複数の超音波素子21の列に到達し、複数の超音波素子21はそれぞれ、超音波を受信信号(チャンネルRF信号)に変換し、時系列に出力する。
【0022】
複数の超音波素子21がそれぞれ出力する時系列な受信信号は、チャンネルメモリ51に格納される。
【0023】
超音波画像生成部52は、受信ビームフォーマ53を含む。受信ビームフォーマ53は、チャンネルメモリ51から複数の超音波素子21ごとの受信信号を受け取って、予め設定した遅延時間ずつ遅延させた後加算することにより、予め定めたスキャンライン(受信走査線)上の受信焦点にそれぞれ受信焦点を合わせる。この受信ビームフォーミングをスキャンライン上に所定の間隔で設定された複数の受信焦点について、順次行うことにより、受信ビームフォーミング後受信信号を得る。
【0024】
超音波画像生成部52は、予め定められたスキャンライン毎に受信ビームフォーマ53に受信ビームフォーミング処理を実行させる。超音波画像生成部52は、受信ビームフォーマ53により生成されたスキャンラインごとの受信ビームフォーミング後受信信号を並べることにより、超音波画像を生成する。
【0025】
なお、遅延時間は、その受信焦点と超音波素子21との距離を、設定した受信ビームフォーミング用音速により除した時間であり、スキャンラインの受信焦点ごとに超音波画像生成部52により生成され、受信ビームフォーマ53に設定される。
【0026】
このとき、ビームフォーミング用音速が、撮像対象の組織の音速に一致している場合、その音速に基づいて設定された遅延時間により、受信ビームフォーマ53が遅延させた各超音波素子21の受信信号は、図2(a)に示すように、位相がそろっている(コヒーレンス性が高い)。このため、受信ビームフォーマ53により加算後の受信信号の振幅は大きくなる。この受信ビームフォーミング後受信信号を用いて生成された超音波画像(B像)は、輝度が大きく、しかも像の広がりが小さい。
【0027】
一方、ビームフォーミング用音速が、撮像対象の組織の音速よりも遅い場合、その音速に基づいて設定された遅延時間により、受信ビームフォーマ53が遅延させた各超音波素子21の受信信号は、図2(b)に示すように、図2(a)の場合よりも位相が揃わない(コヒーレンス性が低い)。このため、受信ビームフォーマ53により加算後の受信信号の振幅は、図2(a)の場合よりも小さくなり、かつ、信号の広がりが大きくなる。この図2(b)の受信ビームフォーミング後受信信号を用いて生成された超音波画像(B像)は、図2(a)と比較して輝度が小さく、しかも像の広がりが大きい。
【0028】
本実施形態では、図2(a),(b)のようにビームフォーミング用音速によって画素の輝度が変化することに着目し、その画素の生成に用いた受信信号の遅延後のコヒーレンス性を評価する。
【0029】
まず、音速変化画像生成部54は、ビームフォーミング用音速を複数種類に変化させた複数種類の画像を超音波画像生成部52に生成させる。具体的には、音速変化画像生成部54は、超音波画像生成部52に、予め定めておいた範囲および間隔のビームフォーミング用音速(例えば1400~1650m/sの範囲の音速を10m/s間隔で選択した音速)を順次設定し、ビームフォーミング用音速ごとに画像を順次生成させる。超音波画像生成部52は、設定されたビームフォーミング用音速ごとに遅延時間を算出し、受信ビームフォーマ53に設定する。これにより、超音波画像生成部52は、ビームフォーミング用音速の異なる複数種類の画像61,62,63・・・を順次生成する。
【0030】
ここでは、画像61,62、63・・・は、図1に示すように、超音波素子21の列方向(x方向)と、撮像対象10の深度方向(z方向)の2次元平面の画像である。音速変化画像生成部54は、複数種類の画像61,62,63・・・をビームフォーミング用音速方向(c方向)に並べて、3次元データセットを生成し、生成した画像を3次元データセットメモリ58に格納する。
【0031】
図3(a)~(c)に示すように、コヒーレンス指標算出部55は、複数種類の画像61,62,62・・・の対応する位置(例えば、座標(x,z)=(3,7))の画素61a,62a、63aの信号強度を、ビームフォーミング用音速cの順に並べる。信号強度とは具体的には、検波後の振幅値を用いてもよく、またはログ圧縮後の振幅値を用いてもよい。これによりビームフォーミング用音速方向(c方向)の信号強度の変化を求め、求めた信号強度の変化に基づいて画素61a,62a、63aの受信ビームフォーミングに用いた複数の受信信号のコヒーレンス性を表すコヒーレンス指標を算出する。
【0032】
具体的には、図3(c)に示すようにコヒーレンス指標算出部55は、ビームフォーミング用音速cを横軸とし、信号強度の大きさを縦軸とし、ビームフォーミング用音速が異なる複数種類の画像61,62、63・・・の対応する画素61a,62a、63a・・・の信号強度の変化を表すグラフを生成する。コヒーレンス指標算出部55は、このグラフにおいて、信号強度の変化を表す曲線70を求める。
【0033】
図4(a)に示すように、曲線70は、画素61a,62a、63a等が、撮像対象10内の構造物等のようにコヒーレンス性の高い実信号を画像化した画素の場合、最適音速(撮像対象10の当該画素位置の組織の音速)で振幅が最大となり、上向きに凸の形状(山型)であり、2次の多項式で比較的よく近似できるという特徴があることを発明者らは見出した。すなわち、曲線70は、2次の多項式で近似した場合、2次の係数が負値であり、かつ、重回帰分析における決定係数Rが高い。決定係数Rは式(1)により算出される。
【数1】
【0034】
一方、図4(b)に示すように、画素61a,62a、63a等が、サイドローブなどのアーチファクト成分やノイズ成分のようにコヒーレンス性の低い信号を画像化した画素の場合、最適音速(撮像対象10の当該画素位置の組織の音速)で振幅が低く、下向きに凸の形状(谷型)であり、くびれをもつなど、複雑な変化パターンがみられる。そのため、曲線70は、2次の多項式でうまく近似できない。すなわち、曲線70は、2次の多項式で近似した場合、2次の係数が正値であり、かつ、重回帰分析における決定係数Rが低い。
【0035】
そこで、コヒーレンス指標算出部55は、曲線70が上向きに凸の形状か否か、曲線の変化量、曲線の予め定めた多項式への近似精度、および、曲線の極値のうちの少なくとも一つの特徴量を算出し、一つ以上の特徴量からコヒーレンス指標を算出する。
【0036】
一例としては、コヒーレンス指標算出部55は、下記(式2)および(式3)により、コヒーレンス指標を算出する。(式2)では、変数hを用意し、2次の多項式近似における2次の係数が0以上のとき変数hは0とし、2次の多項式近似における2次の係数が負のとき、即ち上に凸の形状(山型)のときは、2次の多項式近似において(式1)で算出される決定係数Rを変数hの値とする。そして変数hを用いて(式3)のように、変数hが0から1に大きくなるほど、出力が0から1に大きくなるような重み付け関数を用いてコヒーレンス指標WCFを算出する。
【数2】
【数3】
平均音速推定部56は、コヒーレンス指標算出部55が算出したコヒーレンス指標と、ビームフォーミング用音速cが異なる複数種類の画像61,62、63等の画素61a,62a、63a・・・の信号強度とを用いて、画素61a,62a、63aの位置に対応する撮像対象10の平均音速、即ち最適なビームフォーミング音速を推定する。
【0037】
平均音速の推定方法について説明する。
【0038】
図1に示すように、コヒーレンス指標算出部55は、撮像対象10の撮像範囲(画像61,62、63の範囲)内の予め定めたROI71内に含まれる複数の画素についてそれぞれコヒーレンス指標を算出する。これにより、例えば図5(a)のようにROI71内のコヒーレンス指標の分布が得られる。
【0039】
平均音速推定部56は、一つの画像61のROI71内の画素61a等ごとに、信号強度と、その画素のコヒーレンス指標との積を算出し、算出した積のROI71の総和または平均値を算出する。この総和または平均値をフォーカス指標と呼ぶ。平均音速推定部56は、ビームフォーミング用音速cの異なる他の画像62,63等の対応するROI71についてもそれぞれフォーカス指標を算出する。
【0040】
平均音速推定部56は、得られたフォーカス指標と、それが得られた画像のビームフォーミング用音速cを図5(c)のようにプロットし、フォーカス指標が最大となるビームフォーミング用音速cを、ROI71に対応する撮像対象10の領域の平均音速と推定する。
【0041】
平均音速推定部56は、推定した平均音速を超音波画像生成部52に対してビームフォーミング用音速cとして設定する。これにより平均音速推定部56は、超音波画像生成部52のその後の撮像の受信ビームフォーミングを、ROI71の平均音速に一致したビームフォーミング用音速cを用いて実行させる。
【0042】
以下、本実施形態の信号処理装置50を含む超音波撮像装置の各部の動作を、図6のフローチャートに基づいて説明する。
【0043】
なお、信号処理装置50は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサーと、メモリとを備えたコンピュータ等によって構成され、CPUが、メモリに格納されたプログラムを読み込んで実行することにより、信号処理装置50の各部52~56の機能をソフトウエアにより実現する。また、信号処理装置50は、その一部または全部をハードウエアによって実現することも可能である。例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)のようなカスタムICや、FPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなプログラマブルICを用いて信号処理装置50を構成し、信号処理装置50の各部の機能を実現するように回路設計を行えばよい。
【0044】
まず、ユーザは、入力部35を介して撮像を指示するとともに、コヒーレンス指標を算出し、平均音速を推定し、推定した平均音速を受信ビームフォーマ53に設定する場合にはボタン35aを押下する。制御部36は、ボタン35aが押下された場合、図6のフローを各部に実行させる。
【0045】
(ステップ201)
まず、送信ビームフォーマ31は、超音波素子21から撮像対象10へ向かって超音波を送信させる。撮像対象10で反射等した超音波は、超音波素子21の列によって受信信号(チャンネルRF信号)に変換される。チャンネルメモリ51には、複数の超音波素子21からの受信信号がそれぞれ格納される。
【0046】
(ステップ202)
受信ビームフォーマ53は、チャンネルメモリ51から超音波素子21ごとの受信信号(チャンネルRF信号)を読み出して、予め設定されている音速cから算出された遅延時間を用いて、遅延加算法やフーリエ整相法等の公知の受信ビームフォーミング手法により整相加算する。これにより、撮像範囲に設定した1以上のスキャンラインに沿った複数の受信焦点についてビームフォーミング後信号を得る。
【0047】
(ステップ203)
受信ビームフォーマ53は、上記ステップ202を、1フレームの画像の生成に必要なすべてのビームフォーミング後信号が得られるまで繰り返す。
【0048】
(ステップ204)
超音波画像生成部52は、1フレーム分のスキャンラインのビームフォーミング後信号を並べて画像を生成する。音速変化画像生成部54は、生成された画像を受け取って、3次元データセットメモリ58に格納する。
【0049】
(ステップ205)
音速変化画像生成部54は、受信ビームフォーミング用音速cを変更し、超音波画像生成部52に設定する。超音波画像生成部52は、変更された受信ビームフォーミング用音速cを用いて遅延時間を算出し、受信ビームフォーマ53に設定する。
【0050】
(ステップ206)
受信ビームフォーマ53は、変更された受信ビームフォーミング用音速cを用いてステップ202~204を繰り返すことにより、変更後の受信ビームフォーミング用音速cを用いて画像を生成する。音速変化画像生成部54は、生成された画像を受け取って、3次元データセットメモリ58に格納する。これを、全種類の受信ビームフォーミング用音速cが設定されるまで繰り返す。これにより、超音波画像生成部52は、受信ビームフォーミング用音速cが異なる複数種類の画像61,62,63・・・を生成する。
【0051】
音速変化画像生成部54は、生成された複数種類の画像61,62,63・・・を超音波画像生成部52から受け取って、受信ビームフォーミング用音速方向(c方向)に並べて、3次元データセットを生成し、生成した画像を3次元データセットメモリ58に格納する。
【0052】
(ステップ207)
コヒーレンス指標算出部55は、ROI71内の3次元データセットの音速方向に並ぶ画素61a,62a、63aの信号強度の変化を表す曲線70を図3(c)のように生成し、式(1)を用いてコヒーレンス指標を算出する。
(ステップ208)
平均音速推定部56は、各画像61、62,63等ごとに、ROI71内の画素61aの信号強度とコヒーレンス指標との積の総和または平均値をフォーカス指標として算出する。
(ステップ209)
平均音速推定部56は、フォーカス指標が最大となるビームフォーミング用音速cが、ROI71に対応する撮像対象10の領域の平均音速であると推定する。平均音速推定部56は、推定した平均音速を超音波画像生成部52に対してビームフォーミング用音速cとして設定する。
【0053】
上記ステップ201~209により、ROI71の平均音速に一致したビームフォーミング用音速cが超音波画像生成部52に設定される。超音波撮像装置は、その後の撮像を最適な音速で実行することができる。これにより、アーチファクト・ノイズを低減した高画質な画像の撮像が可能になる。
【0054】
本実施形態では、図6のように、受信ビームフォーミング用音速cを変更して、一画像ずつ生成する構成について説明したが、本発明は、この構成に限られるものではなく。超音波画像生成部52が、受信ビームフォーマ53を複数有する構成である場合、音速変化画像生成部54は、複数の受信ビームフォーマ53に、複数種類のビームフォーミング用音速cの遅延時間をそれぞれ設定し、同一スキャンラインについてパラレルにビームフォーミング処理を行わせてもよい。これにより、受信ビームフォーム音速cが複数種類に異なる画像をパラレルに生成することができる。
【0055】
<<実施形態2>>
実施形態2の超音波撮像装置について説明する。図7は、本実施形態の超音波撮像装置の全体構成を示すブロック図である。図8は、本実施形態の平均音速推定部56の処理を示す説明図である。図9は、本実施形態の超音波撮像装置の動作を示すフローチャートである。
【0056】
実施形態2の超音波撮像装置は、実施形態1の超音波撮像装置と同様の構成および動作であるが、図7のように最大信号強度取得音速算出部57をさらに備える点と、平均音速推定部56が撮像対象の最適なビームフォーミング音速である平均音速を推定する際の処理が、実施形態1とは異なっている。以下、異なる点を中心に以下説明する。
【0057】
図9に示すように、実施形態2の超音波撮像装置の処理は、ステップ201~207までは実施形態1の図6のフローと同様である。これにより、ステップ207において、コヒーレンス指標算出部55は、ROI71内の各画素についてコヒーレンス指標を算出する。これにより、図8(a)に示すように、コヒーレンス指標のROI71内の分布が得られる。
【0058】
(ステップ210)
ステップ210において、最大信号強度取得音速算出部57は、ビームフォーミング用音速が異なる複数種類の画像61,62,63・・・の対応するROI71内の画素(例えば画像61の画素61a)の信号強度と、他の画像62,63・・・の対応する位置の画素62a,63a・・・とを比較する。これにより、信号強度が最大となる画像を画像61,62,63・・・の中から選択する。選択した画像の生成時に用いたビームフォーミング用音速cを、画素61aの位置の最大信号強度取得音速とする。
【0059】
これをROI71内の各画素について行うことにより、最大信号強度取得音速算出部57は、図5(b)に示すように、最大信号強度取得音速のROI71内の分布を得る。
【0060】
(ステップ211)
平均音速推定部56は、画素ごとに、そのコヒーレンス指標により最大信号強度取得音速を重み付けした重み付け後最大信号強度取得音速を用いて平均音速を推定する。具体的には例えば、図8に示すように、平均音速推定部56は、ROI71内の各画素について重み付け後最大信号強度取得音速を求め、その平均値を平均音速とする。
【0061】
これにより、平均音速推定部56は、推定した平均音速を超音波画像生成部52に対してビームフォーミング用音速cとして設定する。
【0062】
上記ステップ201~207,210,211により、ROI71の平均音速に一致したビームフォーミング用音速cが超音波画像生成部52に設定されるため、超音波撮像装置は、その後の撮像を最適な音速で実行することができる。これにより、アーチファクト・ノイズを低減した高画質な画像の撮像が可能になる。
【0063】
なお、実施形態2では、ステップ207、210において、ROI71内のすべての画素について、コヒーレンス指標と、最大信号強度取得音速とを求めたが、必ずしもすべての画素について求めなくてもよい。一部の画素についてのみ、コヒーレンス指標と、最大信号強度取得音速と求め、重み付け後最大信号強度取得音速を算出し、その平均値を平均音速としてもよい。
【0064】
また、ROI内の一部の画素についてのみコヒーレンス指標と、最大信号強度取得音速とを求めた後、補間演算等により、ROI内のコヒーレンス指標の分布および最大信号強度取得音速の分布を算出してもよい。そして、コヒーレンス指標の分布によりROI内の最大信号強度取得音速の分布を重み付けし、重み付け後最大信号強度取得音速の分布を求め、重み付け後最大信号強度取得音速の分布の平均値を平均音速としてもよい。
【0065】
<<実施形態3>>
実施形態3の超音波撮像装置について説明する。図10は、本実施形態の超音波撮像装置の全体構成を示すブロック図である。図11は、本実施形態の画像処理部59の処理を示す説明図である。図12は、本実施形態の超音波撮像装置の動作を示すフローチャートである。
【0066】
実施形態3では、画素ごとのコヒーレンス性を用いて、画像を重みづけすることにより、ノイズやアーチファクトを抑制した高画質な画像を生成する。
【0067】
実施形態3の超音波撮像装置は、実施形態1の超音波撮像装置と同様の構成および動作であるが、平均音速推定部56の代わりに、図10のように画像処理部59を備える点が、実施形態1とは異なっている。以下、異なる点を中心に以下説明する。
【0068】
図12に示すように、実施形態3の超音波撮像装置の処理は、ステップ201~207までは実施形態1の図6のフローと同様である。これにより、ステップ207において、コヒーレンス指標算出部55は、画像内の各画素についてコヒーレンス指標を算出する。ただし、実施形態2では、コヒーレンス指標算出部55は、ROI71内の各画素についてコヒーレンス指標を算出することにより、ROI内のコヒーレンス指標の分布を求めたが、実施形態3では、画像全体の各画素についてコヒーレンス指標を算出する。これにより、図11(a)に示すように、コヒーレンス指標の画像内の分布が得られる。
【0069】
(ステップ212、213)
ステップ212において、画像処理部59は、ビームフォーミング用音速が異なる複数種類の画像61,62,63・・・のうち1以上の画像の信号強度(図11(b))と、ステップ207で得た画像全体のコヒーレンス指標の分布とを用いて、処理後画像を生成する。具体的には、画像処理部59は、複数種類の画像61,62,63・・・のうち1つの画像について、画像内のコヒーレンス指標が高い第1領域71aの信号強度を、第1領域71aよりもコヒーレンス性が低い第2領域71bの信号強度よりも大きくなるように重み付けを行って、画像を生成する(図11(c))。生成した画像は、表示部37に表示する。
【0070】
本実施形態によれば、図11(c)に示したように、コヒーレンス性の低い信号を抑制し、また逆にコヒーレンス性の高い信号を増強することができ、サイドローブやグレーティングローブなどのアーチファクト起因の信号強度が抑制される。よって、撮像対象10内の構造物の実信号の視認性が向上した高画質画像を生成することができる。
【0071】
なお、画像処理部59が画像処理を行う一つの画像は、複数種類の画像61,62,63・・・のうち例えば1540m/sなどの一般的な規定音速の画像を用いることができる。または実施形態1または実施形態2の方法で、予め定めたROI71内について推定した平均音速の画像を用いることができる。
【0072】
<<実施形態4>>
実施形態4の超音波撮像装置について説明する。図13は、本実施形態の超音波撮像装置の全体構成を示すブロック図である。図14は、本実施形態の超音波撮像装置の動作を示すフローチャートである。
【0073】
実施形態4では、画素ごとのコヒーレンス性を用いて、複数の画像を重みづけした後加算することにより、ノイズやアーチファクトを抑制した高画質な画像を生成する。
【0074】
実施形態4の超音波撮像装置は、実施形態3の超音波撮像装置と同様の構成および動作であるが、実施形態2で説明した最大信号強度取得音速算出部57をさらに備える点が、実施形態3とは異なっている。以下、異なる点を中心に以下説明する。
【0075】
図14に示すように、実施形態4の超音波撮像装置の処理は、ステップ201~207までは実施形態1の図6のフローと同様である。これにより、ステップ207において、コヒーレンス指標算出部55は、画像内の各画素についてコヒーレンス指標を算出する。これにより、コヒーレンス指標の分布が得られる。
【0076】
(ステップ210)
ステップ210において、最大信号強度取得音速算出部57は、ビームフォーミング用音速が異なる複数種類の画像61,62,63・・・の対応する画素(例えば画像61の画素61a)の信号強度と、他の画像62,63・・・の対応する位置の画素62a,63a・・・とを比較する。これにより、信号強度が最大となる画像を画像61,62,63・・・の中から選択する。選択した画像の生成時に用いたビームフォーミング用音速cを、画素61aの位置の最大信号強度取得音速とする。
【0077】
これを画像の各画素について行うことにより、最大信号強度取得音速算出部57は、最大信号強度取得音速の分布を得る。
【0078】
(ステップ212)
画像処理部59は、ビームフォーミング用音速が異なる複数種類の画像61,62,63・・・内の対応する位置の画素61a,62a,63a・・・の信号強度を重み付け加算する。このとき、画像処理部59は、重み付けの際に最大信号強度取得音速をビームフォーミング用音速とする画像の信号強度の重みが、コヒーレンス指標が大きい画素ほど大きくなるように設定する。これにより、最大信号強度取得音速の画素の重みを大きく、かつ、その中でもコヒーレンス指標が大きい画素の重みを大きく設定して、複数の画像61,62,63・・・の対応する画素61a,62a,63a・・・の信号強度を加算することができる。
【0079】
これにより、複数の画像の信号強度を加算できるため、1枚の画像を処理する場合よりもロバスト性が向上する。また、コヒーレンス性の低い信号を抑制し、また逆にコヒーレンス性の高い信号を増強することができ、サイドローブやグレーティングローブなどのアーチファクト起因の信号強度が抑制され、撮像対象10内の構造物の実信号の視認性が向上した高画質画像を生成することができる。
【0080】
なお、実施形態4において、最大信号強度取得音速算出部57に加えて、さらに、最小信号強度取得音速算出部を備える構成としてもよい。
最小信号強度取得音速算出部は、ビームフォーミング用音速が異なる複数種類の画像61,62,63・・・内の対応する位置の画素61a,62a,63a・・・の信号強度を、複数種類の画像61,62,63・・・間で比べ、信号強度が最小となる画像を選択する。最小信号強度取得音速算出部は、選択した画像のビームフォーミング用音速を画素の位置の最小信号強度取得音速として求める。
【0081】
この場合、画像処理部59は、重み付けの際に、所定値よりもコヒーレンス値が大きい画素は、最大信号強度取得音速をビームフォーミング用音速とする画像の信号強度の重みが、最小信号強度取得音速をビームフォーミング用音速とする画像の信号強度の重みよりも大きくなるよう重みを設定する。また、画像処理部59は、所定値よりもコヒーレンス値が小さい画素は、最小信号強度取得音速を前記ビームフォーミング用音速とする画像の信号強度の重みが、最大信号強度取得音速を前記ビームフォーミング用音速とする画像の信号強度の重みよりも大きくなるように重みを設定する。
【0082】
このように、最小信号強度取得音速をさらに重み付けに用いることにより、最小信号強度取得音速のみを用いる場合よりも、より的確に重み付けを設定して、ノイズ等を抑制できる。
【0083】
<<実施形態5>>
実施形態5の超音波撮像装置について説明する。図15は、本実施形態の超音波撮像装置の音速変化画像生成部54のブロック図である。図16は、音速変化画像生成部54の処理を説明する図である。図17は、音速変化画像生成部54の画像を演算で生成する処理を示すフローである。
【0084】
実施形態1~4においては、音速変化画像生成部54が、超音波画像生成部52にビームフォーミング用音速を複数種類に変化させた複数種類の画像61,62,63・・・を生成させる構成であった。実施形態5では、音速変化画像生成部54が、超音波画像生成部52が生成した1種類のビームフォーミング用音速の画像のデータに基づいて、演算により、ビームフォーミング用音速を複数種類に変化させた複数種類の画像61,62,63・・・を生成する。
【0085】
そのため、実施形態5では、図15に示すように、音速変化画像生成部54が、変換部41と、リマッピング処理部42と、再変換部43とを備えている。
【0086】
図17のフローを用いて、音速変化画像生成部54の演算処理について説明する。音速変化画像生成部54の演算処理は、公知の技術であるので、ここでは簡単に説明する。
【0087】
(ステップ301)
音速変化画像生成部54は、超音波画像生成部52から、ビームフォーミング用第1音速Cに基づいて定めた第1遅延時間を用いて生成した第1画像のデータを受け取る(図16(a))。
【0088】
(ステップ302)
変換部41は、第1画像のデータを、波数空間における第1波数空間データに変換する(図16(b))。
【0089】
第1画像は、超音波素子21の列方向をx方向とし、撮像対象10の深さ方向をz方向とするx-z平面の2次元画像である。変換部41は、これをx方向の波数(kx)方向とz方向の波数(kz)方向を2軸とする2次元波数空間のデータに変換する。
【0090】
(ステップ303)
リマッピング処理部42は、第2ビームフォーミング用音速に基づいて定めた第2遅延時間で前記受信信号を処理した場合に得られる第2画像を変換した第2の波数空間データと等価のデータを、第1波数空間データを処理することにより生成する。
【0091】
第2の波数空間データは、受信信号(チャンネルRFデータ)を、受信焦点と超音波素子21との間の距離Lと、第2の音速Cとに基づいて定めた第2の遅延時間T(例えば、T=L/C)で処理した場合に得られる波数空間データである。
【0092】
第2の波数空間データの座標(kx,kz)は、第1の波数空間データを構成するデータの座標(kx,kz)と、音速C、Cとを用いて表される所定の関係にある。音速変化画像生成部54は、第1の波数空間のデータの座標(kx,kz)と、音速Cの第2の遅延時間T2で整相した場合のデータの座標に変化させた場合の対応する座標(kx,kz)との関係を、例えばテーブルの形式により、テーブル格納部44に予め格納している(図15参照)。
【0093】
リマッピング処理部42は、第1の波数空間データ(図16(b))を構成するデータのサンプリング座標(kx,kz)から、第1音速Cおよび第2音速Cに基づいて予め求めておいた距離だけずれたサンプリング座標(kx,kz)(図16(c)の丸印の座標)のデータ値を補間演算等により求める。補間演算等により求めたデータを、第2音速(C)における波数空間に表すと、等間隔のサンプリングとなる(図16(d))。
【0094】
よって、リマッピング処理部42は、テーブル格納部44を参照することにより、座標(kx,kz)と座標(kx,kz)とを読み出して、第1の波数空間データの座標(kx,kz)のデータ値を補間処理により算出し(図16(c))、音速Cに対応する第2の波数空間データ(図16(d))を生成する。
【0095】
(ステップ304)
再変換部43は、リマッピング処理部42が生成した第2波数空間データと等価のデータを、逆変換することにより、第2音速Cに対応する第2画像を生成する(図16(e))。得られた第2画像は、第2音速Cに基づいて定めた第2の遅延時間T2により、受信信号(チャンネルRFデータ)を整相して得られた画像と等価なデータである。
【0096】
(ステップ305)
音速変化画像生成部54は、予め定めておいたすべての音速C、C・・について画像が生成されるまでステップ303,304を繰り返す。なお、テーブル格納部44に、第2の音速C以外の複数の音速C、C・・についても、第1の波数空間データにおける補間により演算すべき座標の情報が格納されている。
【0097】
音速変化画像生成部54は、生成された各音速に対応する画像を3次元データセットメモリ58に格納する。
【0098】
上述してきたように、実施形態5の超音波撮像装置によれば、生成した画像を処理することにより、受信ビームフォーミング時の音速を変更したのと等価な画像を、少ない演算量で生成することができる。よって、その後の処理を実施形態1~4と同様に行うことにより、平均音速の推定または画像処理により、サイドローブやグレーティングローブなどのアーチファクトが抑制され、撮像対象10内の構造物の実信号の視認性が向上した高画質画像を生成することができる。
【0099】
上述してきたように、本発明の実施形態1~5によれば、チャンネル間の受信信号の相間演算を行うことなく、コヒーレンス性の高い画素を画素単位で抽出できるため、音速推定のロバスト性、推定精度の向上や、アーチファクト・ノイズを低減した高画質な撮像が可能になる。
【符号の説明】
【0100】
10…撮像対象、20…探触子、21…超音波素子、30…超音波撮像装置、31…送信ビームフォーマ、32…チャンネルメモリ、35…入力部、35a…ボタン、36…制御部、37…表示部、41…変換部、42…リマッピング処理部、43…再変換部、44…テーブル格納部、50…信号処理装置、51…チャンネルメモリ、52…超音波画像生成部、53…受信ビームフォーマ、54…音速変化画像生成部、55…コヒーレンス指標算出部、56…平均音速推定部、57…最大信号強度取得音速算出部、58…3次元データセットメモリ、59…画像処理部、61,62,63…画像、61a,62a,63a…画素、70…曲線、71…ROI、71a…第1領域、71b…第2領域
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