(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169298
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/46 20060101AFI20221101BHJP
H01R 4/50 20060101ALI20221101BHJP
H01R 4/18 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
H01R13/46 301K
H01R4/50 A
H01R4/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075243
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 竣哉
(72)【発明者】
【氏名】原 照雄
(72)【発明者】
【氏名】松井 元
(72)【発明者】
【氏名】田端 正明
【テーマコード(参考)】
5E085
5E087
【Fターム(参考)】
5E085BB02
5E085CC03
5E085DD07
5E087EE11
5E087FF08
5E087GG17
5E087GG25
5E087MM05
5E087RR25
5E087RR36
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コネクタハウジングに収容された端子の内部への芯線の挿入を案内することができ、かつリアホルダを取り外しやすいコネクタを提供する。
【解決手段】電線11に接続されるコネクタであって、電線の芯線13に接続される端子12と、端子を内部に収容する端子収容部29を備え、コネクタハウジング30の後側部分に取り付けられるリアホルダ31とを備え、端子12は後方から芯線13が挿入される芯線挿入口と、芯線に電気的に接続される電気接続部と、芯線挿入口から挿入されて電気接続部の位置に配された芯線を電気接続部18に押圧する押圧部25とを有し、コネクタハウジングとリアホルダとにより電線が挿通される電線挿通部50が構成され、電線挿通部は端子の芯線挿入口への芯線の挿入を案内するガイド部55を備え、ガイド部はコネクタハウジングに設けられる第1内壁55Aとリアホルダ31に設けられる第2内壁55Bとにより構成されている。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線と前記芯線の外周を覆う絶縁被覆とを有し、前後方向にのびる電線に接続されるコネクタであって、
前記芯線に接続される端子と、
前記端子を内部に収容する端子収容部を備えるコネクタハウジングと、
前記コネクタハウジングの後側部分に取り付けられるリアホルダと、を備え、
前記端子は、後方から前記芯線が挿入される芯線挿入口と、前記芯線に電気的に接続される電気接続部と、前記芯線挿入口から挿入されて前後方向における前記電気接続部の位置に配された前記芯線を前記電気接続部に押圧する押圧部と、を有し、
前記コネクタハウジングと、前記リアホルダと、により、内部に前記電線が挿通される電線挿通部が構成され、
前記電線挿通部は、前記端子収容部の内部に収容された前記端子の前記芯線挿入口への前記芯線の挿入を案内するガイド部を備え、
前記ガイド部は、前記コネクタハウジングに設けられる第1内壁と、前記リアホルダに設けられる第2内壁と、により、構成されている、コネクタ。
【請求項2】
前記ガイド部の最小開口径は、前記芯線挿入口の開口径よりも小さく、前記芯線の直径よりも大きい、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記コネクタハウジングは、前記第1内壁の後方に電線受入空間を有し、
前記電線が前記電線受入空間に収容されることで、前記リアホルダが後方に移動する際に前記電線の前記絶縁被覆が前記第2内壁と干渉することが抑制される、請求項1または請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記第1内壁及び前記第2内壁のうち少なくとも一方は、前方に向かうにつれて前記ガイド部の開口径が小さくなるように配されるすり鉢状部を備える、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記第1内壁及び前記第2内壁のうち少なくとも一方は、前方に向かうにつれて前記ガイド部の開口径が小さくなるように配されるとともに、前後方向にのびる軸と交差する平面状をなす傾斜面を備え、
前記コネクタハウジング及び前記リアホルダのうち少なくとも一方は、前記端子の後端部に係止する係止面を備え、
前記傾斜面と前記係止面とは、前後方向に並んで配されている、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記端子は、前記電気接続部を備える端子本体と、前記芯線挿入口と前記押圧部とを有し、前記端子本体に対して前後方向に移動可能とされるスライド部と、を備える、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記スライド部は、前記押圧部によって前記電気接続部が前記芯線に対して押圧される押圧位置と、前記押圧部よりも後方に配され、前記押圧部が前記電気接続部と離間する離間位置と、の間を移動可能とされる、請求項6に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記リアホルダは、前記コネクタハウジングに対して前後方向に移動可能とされ、
前記リアホルダは、前記第1内壁と前記第2内壁とにより前記ガイド部が構成される仮係止位置と、前記仮係止位置よりも前方に配される本係止位置と、の間を移動可能とされ、
前記リアホルダは、前記リアホルダが前記本係止位置に配された状態で前記押圧位置に配された前記スライド部の後端部に係止する係止面を有する、請求項7に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記スライド部は前後方向にのびる筒状に形成されており、
前記スライド部の後端部寄りの位置には、前方に向かうにつれて前記スライド部の内方に突出するとともに、前記芯線と摺接することにより前記芯線を前記スライド部の内部へと案内する誘い込み部が設けられている、請求項6から請求項8のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記スライド部には外方に突出する治具当接部が設けられており、
前記治具当接部が治具により後方から押圧されることにより、前記スライド部が前方にスライドするようになっている、請求項6から請求項9のいずれか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特開2019-145208号公報(下記特許文献1)に記載の雌端子が知られている。この雌端子は、延び方向に延びる変形可能な上側接続片及び下側接続片を備えた端子本体と、端子本体に対して延び方向に移動可能なスライド部と、を備える。上側接続片及び下側接続片の間に電線の芯線が配された状態で、スライド部を移動させることにより、スライド部に設けられた上側当接部及び下側当接部が上側接続片及び下側接続片を芯線に押圧して、端子本体と電線とを電気的に接続できるようになっている。また、下記特許文献1には、この雌端子を備えたコネクタとして、雌端子を収容するコネクタハウジングと、コネクタハウジングの延び方向の後端部に取り付けられるリアホルダと、を備えるコネクタが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のコネクタは、以下のように製造される。まず、コネクタハウジング内に雌端子を収容し、コネクタハウジングの後端部にリアホルダを組み付ける。この状態では、リアホルダはコネクタハウジングに対して仮係止位置に保持されている。次に、リアホルダの挿通孔に電線を挿通し、雌端子の内部に電線の芯線を挿入する。このとき、芯線は上側接続片と下側接続片との間に配される。続いて、端子本体に対してスライド部を前方に移動させることで、上側当接部及び下側当接部が上側接続片及び下側接続片を芯線に押圧し、雌端子と電線との接続が行われる。最後に、リアホルダを仮係止位置より前方の本係止位置に移動させ、雌端子をコネクタハウジング内に抜け止めすることで、コネクタの製造が完了する。
【0005】
上記のコネクタを製造する際、芯線を雌端子の内部に確実に挿入するためには、リアホルダの挿通孔の内壁に、雌端子内部への芯線の挿入を案内するガイド部を設けることが考えられる。例えば、ガイド部は、前方に向かうほど挿通孔の内方に位置する形状を備えて構成され、芯線に摺接することで雌端子内部に芯線を案内する。
【0006】
しかしながら、上記のガイド部を備えたコネクタにおいて、リアホルダを仮係止位置より後方に移動させようとすると、ガイド部が電線の絶縁被覆に干渉して、リアホルダを後方に移動できない場合がありうる。すなわち、コネクタからリアホルダを取り外すことができない場合がありうる。このため、例えば、雌端子のリペア作業等を行うことが困難になる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のコネクタは、芯線と前記芯線の外周を覆う絶縁被覆とを有し、前後方向にのびる電線に接続されるコネクタであって、前記芯線に接続される端子と、前記端子を内部に収容する端子収容部を備えるコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングの後側部分に取り付けられるリアホルダと、を備え、前記端子は、後方から前記芯線が挿入される芯線挿入口と、前記芯線に電気的に接続される電気接続部と、前記芯線挿入口から挿入されて前後方向における前記電気接続部の位置に配された前記芯線を前記電気接続部に押圧する押圧部と、を有し、前記コネクタハウジングと、前記リアホルダと、により、内部に前記電線が挿通される電線挿通部が構成され、前記電線挿通部は、前記端子収容部の内部に収容された前記端子の前記芯線挿入口への前記芯線の挿入を案内するガイド部を備え、前記ガイド部は、前記コネクタハウジングに設けられる第1内壁と、前記リアホルダに設けられる第2内壁と、により、構成されている、コネクタである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、コネクタハウジングに収容された端子の内部への芯線の挿入を案内することができ、かつ、リアホルダを取り外しやすいコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1にかかるコネクタの斜視図である。
【
図2】
図2は、スライド部が離間位置に配された端子の側面図である。
【
図3】
図3は、スライド部が離間位置に配された端子の背面図である。
【
図4】
図4は、スライド部が押圧位置に配された端子の側面図である。
【
図7】
図7は、コネクタハウジングの斜視図である。
【
図8】
図8は、コネクタハウジングに端子が収容された状態を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、コネクタハウジングにリアホルダが仮係止位置において保持された状態を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、コネクタハウジングにリアホルダが仮係止位置において保持された状態を示す背面図である。
【
図15】
図15は、
図10のA-A断面においてスライド部を離間位置から押圧位置に移動させる工程を示す断面図である。
【
図16】
図16は、
図10のA-A断面においてコネクタハウジングにリアホルダが本係止位置において保持された状態を示す断面図である。
【
図17】
図17は、コネクタハウジングに対してリアホルダが仮係止位置より後方に移動した状態を示す斜視図である。
【
図18】
図18は、
図10のA-A断面においてコネクタハウジングに対してリアホルダが仮係止位置より後方に移動した状態を示す断面図である。
【
図19】
図19は、実施形態2にかかるコネクタハウジングにリアホルダが仮係止位置において保持された状態を示す拡大背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。
【0011】
(1)本開示のコネクタは、芯線と前記芯線の外周を覆う絶縁被覆とを有し、前後方向にのびる電線に接続されるコネクタであって、前記芯線に接続される端子と、前記端子を内部に収容する端子収容部を備えるコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングの後側部分に取り付けられるリアホルダと、を備え、前記端子は、後方から前記芯線が挿入される芯線挿入口と、前記芯線に電気的に接続される電気接続部と、前記芯線挿入口から挿入されて前後方向における前記電気接続部の位置に配された前記芯線を前記電気接続部に押圧する押圧部と、を有し、前記コネクタハウジングと、前記リアホルダと、により、内部に前記電線が挿通される電線挿通部が構成され、前記電線挿通部は、前記端子収容部の内部に収容された前記端子の前記芯線挿入口への前記芯線の挿入を案内するガイド部を備え、前記ガイド部は、前記コネクタハウジングに設けられる第1内壁と、前記リアホルダに設けられる第2内壁と、により、構成されている。
【0012】
このような構成によると、ガイド部によりコネクタハウジングに収容された端子の芯線挿入口への芯線の挿入を案内することができる。また、ガイド部は、コネクタハウジングに設けられる第1内壁と、リアホルダに設けられる第2内壁と、により、構成されているから、コネクタハウジングからリアホルダを取り外しやすい。
【0013】
(2)前記ガイド部の最小開口径は、前記芯線挿入口の開口径よりも小さく、前記芯線の直径よりも大きいことが好ましい。
【0014】
このような構成によると、ガイド部により芯線を芯線挿入口の内部に案内しやすい。
【0015】
(3)前記コネクタハウジングは、前記第1内壁の後方に電線受入空間を有し、前記電線が前記電線受入空間に収容されることで、前記リアホルダが後方に移動する際に前記電線の前記絶縁被覆が前記第2内壁と干渉することが抑制されることが好ましい。
【0016】
このような構成によると、リアホルダを後方に移動させて、コネクタハウジングからリアホルダを取り外しやすい。
【0017】
(4)前記第1内壁及び前記第2内壁のうち少なくとも一方は、前方に向かうにつれて前記ガイド部の開口径が小さくなるように配されるすり鉢状部を備えることが好ましい。
【0018】
このような構成によると、すり鉢状部により芯線を芯線挿入口の内部に案内しやすい。
【0019】
(5)前記第1内壁及び前記第2内壁のうち少なくとも一方は、前方に向かうにつれて前記ガイド部の開口径が小さくなるように配されるとともに、前後方向にのびる軸と交差する平面状をなす傾斜面を備え、前記コネクタハウジング及び前記リアホルダのうち少なくとも一方は、前記端子の後端部に係止する係止面を備え、前記傾斜面と前記係止面とは、前後方向に並んで配されていることが好ましい。
【0020】
このような構成によると、傾斜面と係止面とが前後方向に並んで配されているから、端子による係止面の剪断断面積を大きくしやすい。
【0021】
(6)前記端子は、前記電気接続部を備える端子本体と、前記芯線挿入口と前記押圧部とを有し、前記端子本体に対して前後方向に移動可能とされるスライド部と、を備えることが好ましい。
【0022】
このような構成によると、スライド部を前後方向に移動させることにより、電気接続部を電線に押圧し、電線と端子とを電気的に接続することができる。
【0023】
(7)前記スライド部は、前記押圧部によって前記電気接続部が前記芯線に対して押圧される押圧位置と、前記押圧部よりも後方に配され、前記押圧部が前記電気接続部と離間する離間位置と、の間を移動可能とされることが好ましい。
【0024】
このような構成によると、スライド部を端子本体に対して離間位置から押圧位置に移動させることで、電線と端子とを電気的に接続することができる。
【0025】
(8)前記リアホルダは、前記コネクタハウジングに対して前後方向に移動可能とされ、前記リアホルダは、前記第1内壁と前記第2内壁とにより前記ガイド部が構成される仮係止位置と、前記仮係止位置よりも前方に配される本係止位置と、の間を移動可能とされ、前記リアホルダは、前記リアホルダが前記本係止位置に配された状態で前記押圧位置に配された前記スライド部の後端部に係止する係止面を有することが好ましい。
【0026】
このような構成によると、リアホルダは仮係止位置と本係止位置との間で前後方向に移動可能とされるから、スライド部を前後方向に移動させることで電線に接続される端子に係止して、端子を抜け止めすることができる。
【0027】
(9)前記スライド部は前後方向にのびる筒状に形成されており、前記スライド部の後端部寄りの位置には、前方に向かうにつれて前記スライド部の内方に突出するとともに、前記芯線と摺接することにより前記芯線を前記スライド部の内部へと案内する誘い込み部が設けられていることが好ましい。
【0028】
このような構成によると、誘い込み部により、スライド部の内部に芯線を容易に挿入することができる。
【0029】
(10)前記スライド部には外方に突出する治具当接部が設けられており、前記治具当接部が治具により後方から押圧されることにより、前記スライド部が前方にスライドするようになっていることが好ましい。
【0030】
このような構成によると、治具を治具当接部に当接させてスライド部を前方に押圧することにより、電線と端子とを電気的に接続することができる。
【0031】
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態について説明する。本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0032】
<実施形態1>
本開示の実施形態1について、
図1から
図18を参照しつつ説明する。以下の説明においては、矢線Zの示す方向を上方、矢線Xの示す方向を前方、矢線Yの示す方向を左方として説明する。なお、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材の符号を省略する場合がある。
【0033】
[コネクタ]
図1に示すように、本実施形態にかかるコネクタ10は、電線11の端末に接続された端子12と、端子12を収容する端子収容部29を有するコネクタハウジング30と、コネクタハウジング30における後側部分に取り付けられるリアホルダ31と、を備える。
【0034】
[電線]
図14に示すように、電線11は、前後方向にのびて配されている。電線11は、芯線13の外周面を絶縁性の合成樹脂からなる絶縁被覆14で包囲してなる。芯線13は、導電性の金属からなり、複数の金属線を撚り合わせた撚線、または1本の金属線からなる。電線11の前端部において、絶縁被覆14が除かれ、芯線13が露出している。
【0035】
[端子]
端子12は、金属製であり、
図2及び
図4に示すように、端子本体15と、端子本体15に対して前後方向に移動可能なスライド部16と、を備える。端子本体15及びスライド部16は、プレス加工、切削加工、鋳造等、公知の手法により所定の形状に形成される。端子本体15及びスライド部16を構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。端子本体15及びスライド部16の表面にはめっき層が形成されていてもよい。めっき層を構成する金属は、スズ、ニッケル、銀等必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。
【0036】
[端子本体]
図5に示すように、端子本体15の前側部分は、前後方向に延びる角筒状の接続筒部17となっている。接続筒部17は、板状をなす相手方端子(図示せず)を前方から挿入できるようになっている。接続筒部17の内部には、図示しない弾性接触片が配されており、接続筒部17内に挿入された相手方端子が弾性接触片と接触するようになっている。接続筒部17の上壁の前側には、上方に山形状に突出してランス21が形成されている。
【0037】
図5に示すように、接続筒部17の後方には角筒状をなす基部20が設けられている。基部20の側壁には、外方に突出する係止突起28が形成されている。基部20の後端部には、電気接続部18が設けられている。
【0038】
[電気接続部]
図5に示すように、電気接続部18は、基部20の上壁の後端部から後方に延出されている上側接続片18Aと、基部20の下壁の後端部から後方に延出されている下側接続片18Bと、を備える。上側接続片18Aと下側接続片18Bとは前後方向に細長い形状をなし、それらの前後方向の長さは同程度となっている。上側接続片18A及び下側接続片18Bは、基部20の後端部を支点として、上下方向に弾性変形可能に形成されている。
図16に示すように、上側接続片18Aの下面、及び下側接続片18Bの上面は、芯線13を挟み付け、電線11と端子本体15とを電気的に接続できるようになっている。
【0039】
図5に示すように、上側接続片18Aの下面には、後端部よりも前方の位置に、下方に突出する上側保持突部23Aが設けられている。下側接続片18Bの上面の後端部には、上方に突出する下側保持突部23Bが設けられている。上側保持突部23Aと、下側保持突部23Bとは、前後方向にずれた位置に設けられている。
【0040】
[スライド部]
図6に示すように、スライド部16は、前後方向にのびる角筒状をなしている。
図3に示すように、スライド部16の内部の形状の断面は、端子本体15のうち、電気接続部18が設けられた領域の外部の形状の断面と同じか、やや大きく形成されている。これにより、スライド部16は、端子本体15のうち、電気接続部18が設けられた領域に外嵌可能になっている。
【0041】
[押圧部]
図3及び
図12に示すように、スライド部16には、押圧部25が設けられている。押圧部25のうち、スライド部16の上壁の下面には、下方に突出する上側押圧部25Aが配置されており、スライド部16の下壁の上面には、上方に突出する下側押圧部25Bが配置されている。
【0042】
図2及び
図4に示すように、スライド部16の側壁には、前端部寄りの位置に、仮係止受け部26が開口されている。また、スライド部16の側壁には、仮係止受け部26よりも後方の位置に、本係止受け部27が開口されている。仮係止受け部26と本係止受け部27は、端子本体15の係止突起28と弾性的に係止可能になっている。
【0043】
[離間位置]
図2に示すように、端子本体15の係止突起28とスライド部16の仮係止受け部26とが係止した状態は、端子本体15に対してスライド部16が離間位置に保持された状態となっている。この状態においては、
図12に示すように、スライド部16の押圧部25は、端子本体15の電気接続部18の後端縁より後方に配されている。また、この状態においては、上側接続片18Aと下側接続片18Bとの間隔は、芯線13の直径よりも大きく設定されている。
【0044】
[押圧位置]
図4に示すように、端子本体15の係止突起28とスライド部16の本係止受け部27とが係止した状態は、端子本体15に対してスライド部16が押圧位置に係止された状態となっている。この状態においては、
図16に示すように、スライド部16の上側押圧部25Aは、端子本体15の上側接続片18Aの上面に対して上方から当接している。また、スライド部16の下側押圧部25Bは、端子本体15の下側接続片18Bの下面に対して下方から当接している。
【0045】
図16に示すように、スライド部16が端子本体15に対して押圧位置で保持された状態では、上側押圧部25Aが上方から上側接続片18Aを押圧することによって上側接続片18Aが下方に弾性変形するようになっている。また、下側押圧部25Bが下方から下側接続片18Bを押圧することによって下側接続片18Bが上方に弾性変形するようになっている。これにより、上側接続片18Aと下側接続片18Bとの間の空間に、芯線13が前後方向にのびた状態で配され、かつ、スライド部16が端子本体15に対して押圧位置で保持された状態では、芯線13は、弾性変形した上側接続片18Aと下側接続片18Bによって上下方向から挟持されるようになっている。
【0046】
図16に示すように、スライド部16が端子本体15に対して押圧位置で保持された状態では、上側接続片18Aの上側保持突部23Aが芯線13を上方から押圧し、下側接続片18Bの下側保持突部23Bが芯線13を下方から押圧する。このように芯線13は、上側保持突部23Aによって上方から押圧されるとともに、上側保持突部23Aと前後方向にずれた位置に配された下側保持突部23Bによって下方から押圧されることにより、上下方向について屈曲した状態に保持される。これにより、端子本体15における芯線13の保持力を向上させることができる。
【0047】
[治具当接部]
図6に示すように、スライド部16の前端部には、
図4及び
図5に示すように、上壁から上方に突出する治具当接部46が設けられている。
図15に示すように、治具当接部46に後方から治具45が当接して、治具45によってスライド部16が前方に押されることにより、スライド部16が前方に移動可能になっている。
【0048】
[芯線挿入口、誘い込み部]
図3及び
図6に示すように、角筒状のスライド部16の後端部は、芯線13をスライド部16の内部に挿入する芯線挿入口54とされている。スライド部16の後端部寄りの位置には、左右両側壁に、スライド部16の内方に突出する一対の誘い込み部47が設けられている。誘い込み部47は、後方から前方に向かうにしたがって幅狭に形成されている。芯線13が芯線挿入口54から挿入され、誘い込み部47の内面に摺接することにより、芯線13はスライド部16の内部へと案内される(
図14参照)。
【0049】
[コネクタハウジング、端子収容部]
コネクタハウジング30は、絶縁性の合成樹脂製であり、
図7及び
図8に示すように、略直方体状をなす本体部32と、本体部32の後端から後方にのびる隔壁34と、を備える。本体部32には、端子12を収容する端子収容部29が複数設けられている。端子収容部29は、前後方向にのび、左右方向に間隔を空けて配されている。また、端子収容部29は、上下方向に2段に重ねられており、上段の端子収容部29と下段の端子収容部29とは左右方向にずれた位置に配されている。なお、端子収容部29の個数は任意であり、また上下方向に重ねられる場合の段数も任意である。端子収容部29の前端は前方に開口しており、相手方端子が挿入可能になっている。
【0050】
図12に示すように、端子12が端子収容部29に収容された状態で、端子12のランス21の位置に対応するように、コネクタハウジング30には係止壁33が設けられている。係止壁33によって、ランス21が係止され、端子12が後方に抜けないようになっている。
【0051】
コネクタハウジング30の前端部には、
図12に示すように、端子12の前端部に当接する前止め部40が形成されている。前止め部40は、端子12を端子収容部29の内部に挿入する際に、端子12がコネクタハウジング30の前方に抜けないように当接する。
【0052】
図7に示すように、コネクタハウジング30の本体部32の左右両側壁には、仮係止ロック部36と本係止ロック部37とが外方に突出して設けられている。仮係止ロック部36は本体部32の後端部寄りの位置に配され、本係止ロック部37は仮係止ロック部36より前方に配されている。
【0053】
[リアホルダ]
リアホルダ31は、絶縁性の合成樹脂製であり、
図1、
図9、及び
図10に示すように、前後方向に開口する箱状をなしている。リアホルダ31は、コネクタハウジング30の後半部分に外嵌されるようになっている。リアホルダ31の左右両側壁の前端部寄りの位置には、ロック受け部38が設けられている。ロック受け部38は、概ね門形状をなしている。ロック受け部38は、コネクタハウジング30の仮係止ロック部36及び本係止ロック部37と係止するようになっている。
【0054】
[仮係止位置、本係止位置]
図9に示すように、コネクタハウジング30の仮係止ロック部36と、リアホルダ31のロック受け部38とが係止することにより、リアホルダ31はコネクタハウジング30に対して仮係止位置に保持される。また、
図1に示すように、コネクタハウジング30の本係止ロック部37と、リアホルダ31のロック受け部38とが係止することにより、リアホルダ31はコネクタハウジング30に対して本係止位置に保持される。
【0055】
[係止面]
図12に示すように、リアホルダ31には、コネクタハウジング30が嵌入されるフード部41が、前方に開口している。フード部41の前端部は、コネクタハウジング30内に配された端子12を外側から覆うようになっている。フード部41の前側には、
図16に示すように、端子12の後端部と係止する係止面43が設けられている。
【0056】
[電線挿通部、ガイド部]
図14に示すように、端子収容部29の後方には、電線11が内部に挿通される電線挿通部50が形成されている。電線挿通部50は、開口径の大きい大径部51と、大径部51よりも開口径が小さい小径部52と、大径部51と小径部52との間を連続的に接続する縮径部53と、を有する。小径部52は電線挿通部50の前端部に配されている。縮径部53は電線挿通部50の前端部寄りの位置に配され、前方に向かうほど開口径が小さくなるように形成されている。大径部51は縮径部53の後端から電線挿通部50の後端までの部分に設けられている。大径部51の内部には、電線11の絶縁被覆14が収容可能とされている。小径部52の内部には、電線11の芯線13が収容可能とされている。縮径部53と小径部52とから、端子12の芯線挿入口54への芯線13の挿入を案内するガイド部55が構成されている。
【0057】
図10に示すように、電線挿通部50は、コネクタハウジング30側に設けられる第1電線挿通部50Aと、リアホルダ31側に設けられる第2電線挿通部50Bと、から構成されている。リアホルダ31はコネクタハウジング30の外側を覆うように配されているため、上段では上側に第2電線挿通部50Bが、下側に第1電線挿通部50Aが配され、下段では上側に第1電線挿通部50Aが、下側に第2電線挿通部50Bが配されるようになっている。以下では、特に断らない限り、上段の位置関係に基づいて電線挿通部50の構成について説明する。
【0058】
本実施形態では、リアホルダ31はコネクタハウジング30に対して前後方向に移動可能であるから、
図16及び
図18に示すように、第1電線挿通部50Aと第2電線挿通部50Bとは相対的に前後方向にずれて配されうることに留意する。特に電線挿通部50のうちガイド部55は、
図14に示すように、リアホルダ31が仮係止位置に保持されるとともにスライド部16が離間位置に配された状態においてのみ、電線11の芯線13を端子12の芯線挿入口54内へと案内するガイド機能を発揮する。一方、リアホルダ31が仮係止位置に保持されていない場合には、ガイド部55は構成されない(
図16及び
図18参照)。
【0059】
図7に示すように、第1電線挿通部50Aは、隔壁34の上側及び下側に複数設けられている。第1電線挿通部50Aは、前後方向にのびる溝状をなし、左右方向に等間隔に並んで配されている。各第1電線挿通部50Aは、各端子収容部29に連なって形成されている。
【0060】
図12に示すように、第1電線挿通部50Aは、後側に配される第1大径部51Aと、前端部に配される第1小径部52Aと、第1大径部51Aと第1小径部52Aとを連結する第1縮径部53Aと、を備える。第1大径部51A及び第1小径部52Aは、それぞれ略U字状の一定の断面形状を有する。
【0061】
[すり鉢状部、第1内壁]
図13に示すように、第1縮径部53Aは、略U字状の断面形状を有する。
図12に示すように、第1縮径部53Aは、前方に向かうにつれて左右方向及び上下方向の寸法が小さくなるように形成されている。すなわち、第1縮径部53Aは前方に向かうにつれて第1小径部52Aに近づくように配されるすり鉢状部56とされている。第1小径部52Aと第1縮径部53A(すり鉢状部56)とにより、コネクタハウジング30の第1内壁55Aが構成されている。
【0062】
図12に示すように、リアホルダ31は、リアホルダ31が仮係止位置に配された状態で第1電線挿通部50Aと上下方向に向かい合う位置に、第2電線挿通部50Bを備える。第2電線挿通部50Bは、後側に配される第2大径部51Bと、前端部に配される第2小径部52Bと、第2大径部51Bと第2小径部52Bとを連結する第2縮径部53Bと、を備える。第2大径部51Bは、略U字状の一定の断面形状を有し、前後方向にのびている。第2小径部52Bは、上下方向にのびる軸に直交する平面とされている。第2小径部52Bは、第2縮径部53Bと係止面43とを接続するように配されている。
【0063】
[傾斜面、第2内壁]
図12に示すように、第2縮径部53Bは、前後方向にのびる軸と交差する平面状をなし、前方に向かうほど下側(下段では上側)に位置する傾斜面57とされている。したがって、
図13に示すように、第1縮径部53A(すり鉢状部56)の断面形状がU字状であるのに対し、第2縮径部53B(傾斜面57)の断面形状は直線状となる。
図12に示すように、第2小径部52Bと第2縮径部53B(傾斜面57)とにより、リアホルダ31の第2内壁55Bが構成されている。
【0064】
図12に示すように、第1内壁55Aと第2内壁55Bとは、リアホルダ31が仮係止位置に保持された状態で、ガイド部55を構成する。ガイド部55は、前方に向かうにつれて幅狭とされる縮径部53と、小径部52と、を備える。
図11に示すように、ガイド部55の最小開口径は芯線挿入口54の開口径よりも小さく、背面から見てガイド部55は芯線挿入口54の大部分を覆い隠すように配される。また、
図14に示すように、ガイド部55の最小開口径は、芯線13の直径よりも大きい。よって、ガイド部55は、芯線13に摺接することで芯線13を芯線挿入口54の内部へと案内することができる。
【0065】
より詳細には、曲面状のすり鉢状部56(第1縮径部53A)が芯線13に摺接して芯線13を第1小径部52Aの内部へと案内する(
図11参照)。
図11において、第2縮径部53Bは前方(紙面垂直方向奥方)に向かうにつれて下側に配される傾斜面57であるから、芯線13に摺接して芯線13を下方に案内する。ここで、第2縮径部53Bは、芯線13を下方にのみ案内し、左右方向には案内できないが、背面から見て縮径部53の大部分(4分の3程度)がすり鉢状部56(第1縮径部53A)となっているから、ガイド部55全体では、芯線13を芯線挿入口54の内部へと案内するガイド機能は十分に発揮されるようになっている。さらに、スライド部16には誘い込み部47が設けられているから、誘い込み部47によっても芯線13は端子12の内部へと案内される。
【0066】
図16に示すように、スライド部16が押圧位置に配されて端子12が電線11に接続されるとともに、リアホルダ31が本係止位置に保持された状態では、第2縮径部53Bは、端子12の後端部に係止する係止面43と前後方向に並んで配されている。このため、例えば電線11が後方に引っ張られた場合には、端子12の後端部によって、係止面43から第2縮径部53Bまでのリアホルダ31の部分が剪断応力を受けることとなる。本実施形態では、第2縮径部53Bは平面状の傾斜面57とされているから、第1縮径部53Aのような曲面とされる場合に比べて、剪断断面積を大きくしやすい。
【0067】
[電線受入空間]
図11に示すように、大径部51の上下方向の寸法は、左右方向の寸法に比べて大きくなっている。特にコネクタハウジング30側の第1大径部51Aの上下方向の寸法は、電線11(絶縁被覆14を有する部分)の外径と同一かやや大きく設定されている。よって、
図18に示すように、コネクタハウジング30は、第1大径部51A内に電線11を受け入れることができる電線受入空間58を有する。電線受入空間58に電線11が配されることで、リアホルダ31がコネクタハウジング30から取り外されても、第2内壁55Bが電線11の絶縁被覆14に干渉しないようになっている。
【0068】
[コネクタ10の製造方法]
以下、本実施形態にかかるコネクタ10の製造方法の一例を示す。
公知の手法により、端子本体15と、スライド部16とを形成する。端子本体15に対して、後方からスライド部16を組み付ける。端子本体15の係止突起28に後方からスライド部16の前端縁が当接し、スライド部16の側壁が拡開変形する。さらにスライド部16を前方に押し込むと、スライド部16の側壁が復帰変形し、端子本体15の係止突起28に、スライド部16の仮係止受け部26が係止する。これにより、端子本体15に対してスライド部16が離間位置に保持される。これにより端子12が得られる(
図2参照)。
【0069】
合成樹脂を射出成形することにより、コネクタハウジング30及びリアホルダ31を形成する。コネクタハウジング30の端子収容部29内に、後方から端子12を挿入した後(
図8参照)、コネクタハウジング30の後端部に、後方からリアホルダ31を組み付ける。すると、リアホルダ31のロック受け部38が弾性変形しながら、コネクタハウジング30の仮係止ロック部36に乗り上げる。さらにリアホルダ31を前方に押し込むと、ロック受け部38が復帰変形し、コネクタハウジング30の仮係止ロック部36に、ロック受け部38が弾性的に係止する。これにより、リアホルダ31が、コネクタハウジング30に対して仮係止位置に保持される(
図9及び
図12参照)。
【0070】
電線11の端部において、所定の長さ寸法の芯線13を露出させる。電線挿通部50の内部に、芯線13の前端部を後方から挿入する。電線11はまず電線挿通部50の大径部51に配され、電線11をさらに前方に押し込むと、芯線13の前端部が縮径部53に到達する。芯線13の前端部は縮径部53に摺接することで、小径部52の内部へと案内される。さらに電線11を前方に押し込むと、芯線13の前端部は小径部52の前端からスライド部16の芯線挿入口54の内部に挿入される。すなわち、ガイド部55(縮径部53及び小径部52)によって、芯線13は芯線挿入口54の内部に案内される。芯線13はスライド部16の誘い込み部47と当接することによっても、スライド部16の内部へと案内される。
【0071】
さらに電線11を前方に押し込むと、
図14に示すように、芯線13は端子本体15の内部へと進入して前後方向における電気接続部18の位置に配される。すなわち、芯線13は上側接続片18Aと下側接続片18Bとの間の空間内を通過した状態となる。この状態で、電線挿通部50の大径部51の内部には電線11の絶縁被覆14が位置している。
【0072】
次に、
図15に示すように、後方から治具45を治具当接部46に押し当てて、スライド部16を端子本体15に対して相対的に前方に移動させる。このとき、端子本体15の係止突起28と、スライド部16の仮係止受け部26との係止が外れ、スライド部16の側壁が係止突起28に乗り上げて拡開変形する。
【0073】
さらに治具45で治具当接部46を前方に押圧すると、スライド部16の側壁が復帰変形して端子本体15の係止突起28と、スライド部16の本係止受け部27とが弾性的に係止する。これによりスライド部16が端子本体15に対して押圧位置に保持される。
【0074】
スライド部16が端子本体15に対して押圧位置に移動するとき、スライド部16の上側押圧部25Aが、端子本体15の上側接続片18Aに上方から当接して下方へと押圧する。また、スライド部16の下側押圧部25Bが、端子本体15の下側接続片18Bに下方から当接して上方へと押圧する。これにより、芯線13が、上側接続片18Aと下側接続片18Bに上下から挟持され、電線11と端子12とが電気的に接続される(
図16参照)。
【0075】
芯線13が上側接続片18Aと下側接続片18Bに上下から挟持された状態においては、芯線13は、上側接続片18Aの上側保持突部23Aと、下側接続片18Bの下側保持突部23Bとに挟まれることにより、前後方向にのびた状態で、かつ、上下方向に屈曲した状態で保持される。これにより、端子12は芯線13を強固に保持することができる(
図16参照)。
【0076】
次に、リアホルダ31を前方に押圧すると、リアホルダ31のロック受け部38がコネクタハウジング30の本係止ロック部37に乗り上げて弾性変形する。さらにリアホルダ31を前方に押圧すると、本係止ロック部37と、ロック受け部38とが係止する。これにより、リアホルダ31がコネクタハウジング30に対して本係止位置に保持される(
図1参照)。以上により、コネクタ10の製造が完了する。
【0077】
[端子のリペア作業]
続いて、本実施形態のコネクタ10における端子12のリペア作業の一例を示す。なお、端子12のリペアとは、コネクタ10において不具合が生じた端子12を新しい端子12に取り替えることである。
まず、コネクタハウジング30からリアホルダ31を取り外す。リアホルダ31のロック受け部38を外方に撓ませることで本係止ロック部37及び仮係止ロック部36との係止を解除し、リアホルダ31を後方に移動させる(
図17参照)。
【0078】
図18に示すように、リアホルダ31が仮係止位置より後方に移動した状態では、端子収容部29の後側の空間を利用できるから、リペア対象の端子12から導出された芯線13を切断し、リペア対象の端子12を端子収容部29内から取り出すことができる。続いて、新しい端子12が端子収容部29内に収容され、上記の製造方法と同様にして、再びコネクタ10が構成される。
【0079】
本実施形態では、
図14に示すように、開口径が電線11の外径よりも小さい部分を有するガイド部55が、コネクタハウジング30側の第1内壁55Aと、リアホルダ31側の第2内壁55Bと、から構成されている。このため、
図18に示すように、コネクタハウジング30に対してリアホルダ31を後方に移動させた場合、第2内壁55Bは後方に移動するが、第1内壁55Aの位置は変わらない。すなわち、ガイド部55全体が電線11に対して移動する構成ではなく、ガイド部55の一部である第2内壁55Bのみが移動する構成とされているから、電線11の絶縁被覆14がガイド部55に干渉しにくくなっている。
【0080】
さらに、
図18に示すように、本実施形態では、コネクタハウジング30の第1内壁55Aの後方には、電線受入空間58が設けられているから、リアホルダ31が後方に移動しても、電線11が電線受入空間58内に逃げることで、第2内壁55Bと電線11の絶縁被覆14との干渉が一層抑制されるようになっている。したがって、コネクタ10においては、リアホルダ31をコネクタハウジング30から取り外すことが容易となっており、例えば上記した端子12のリペア作業等を首尾よく行うことができる。
【0081】
[実施形態1の作用効果]
実施形態1によれば、以下の作用、効果を奏する。
実施形態1にかかるコネクタ10は、芯線13と芯線13の外周を覆う絶縁被覆14とを有し、前後方向にのびる電線11に接続されるコネクタ10であって、芯線13に接続される端子12と、端子12を内部に収容する端子収容部29を備えるコネクタハウジング30と、コネクタハウジング30の後側部分に取り付けられるリアホルダ31と、を備え、端子12は、後方から芯線13が挿入される芯線挿入口54と、芯線13に電気的に接続される電気接続部18と、芯線挿入口54から挿入されて前後方向における電気接続部18の位置に配された芯線13を電気接続部18に押圧する押圧部25と、を有し、コネクタハウジング30と、リアホルダ31と、により、内部に電線11が挿通される電線挿通部50が構成され、電線挿通部50は、端子収容部29の内部に収容された端子12の芯線挿入口54への芯線13の挿入を案内するガイド部55を備え、ガイド部55は、コネクタハウジング30に設けられる第1内壁55Aと、リアホルダ31に設けられる第2内壁55Bと、により、構成されている。
【0082】
上記の構成によれば、ガイド部55によりコネクタハウジング30に収容された端子12の芯線挿入口54への芯線13の挿入を案内することができる。また、ガイド部55は、コネクタハウジング30に設けられる第1内壁55Aと、リアホルダ31に設けられる第2内壁55Bと、により、構成されているから、コネクタハウジング30からリアホルダ31を取り外しやすい。
【0083】
実施形態1では、ガイド部55の最小開口径は、芯線挿入口54の開口径よりも小さく、芯線13の直径よりも大きい。
【0084】
上記の構成によれば、ガイド部55により芯線13を芯線挿入口54の内部に案内しやすい。
【0085】
実施形態1では、コネクタハウジング30は、第1内壁55Aの後方に電線受入空間58を有し、電線11が電線受入空間58に収容されることで、リアホルダ31が後方に移動する際に電線11の絶縁被覆14が第2内壁55Bと干渉することが抑制される。
【0086】
上記の構成によれば、リアホルダ31を後方に移動させて、コネクタハウジング30からリアホルダ31を取り外しやすい。
【0087】
実施形態1では、第1内壁55Aは、前方に向かうにつれてガイド部55の開口径が小さくなるように配されるすり鉢状部56を備える。
【0088】
上記の構成によれば、すり鉢状部56により芯線13を芯線挿入口54の内部に案内しやすい。
【0089】
実施形態1では、第2内壁55Bは、前方に向かうにつれてガイド部55の開口径が小さくなるように配されるとともに、前後方向にのびる軸と交差する平面状をなす傾斜面57を備え、リアホルダ31は、端子12の後端部に係止する係止面43を備え、傾斜面57と係止面43とは、前後方向に並んで配されている。
【0090】
上記の構成によれば、傾斜面57と係止面43とが前後方向に並んで配されているから、端子12による係止面43の剪断断面積を大きくしやすい。
【0091】
実施形態1では、端子12は、電気接続部18を備える端子本体15と、芯線挿入口54と押圧部25とを有し、端子本体15に対して前後方向に移動可能とされるスライド部16と、を備える。
【0092】
上記の構成によれば、スライド部16を前後方向に移動させることにより、電気接続部18を電線11に押圧し、電線11と端子12とを電気的に接続することができる。
【0093】
実施形態1では、スライド部16は、押圧部25によって電気接続部18が芯線13に対して押圧される押圧位置と、押圧部25よりも後方に配され、押圧部25が電気接続部18と離間する離間位置と、の間を移動可能とされる。
【0094】
上記の構成によれば、スライド部16を端子本体15に対して離間位置から押圧位置に移動させることで、電線11と端子12とを電気的に接続することができる。
【0095】
実施形態1では、リアホルダ31は、コネクタハウジング30に対して前後方向に移動可能とされ、リアホルダ31は、第1内壁55Aと第2内壁55Bとによりガイド部55が構成される仮係止位置と、仮係止位置よりも前方に配される本係止位置と、の間を移動可能とされ、リアホルダ31は、リアホルダ31が本係止位置に配された状態で押圧位置に配されたスライド部16の後端部に係止する係止面43を有する。
【0096】
上記の構成によれば、リアホルダ31は仮係止位置と本係止位置との間で前後方向に移動可能とされるから、スライド部16を前後方向に移動させることで電線11に接続される端子12に係止して、端子12を抜け止めすることができる。
【0097】
実施形態1では、スライド部16は前後方向にのびる筒状に形成されており、スライド部16の後端部寄りの位置には、前方に向かうにつれてスライド部16の内方に突出するとともに、芯線13と摺接することにより芯線13をスライド部16の内部へと案内する誘い込み部47が設けられている。
【0098】
上記の構成によれば、誘い込み部47により、スライド部16の内部に芯線13を容易に挿入することができる。
【0099】
実施形態1では、スライド部16には外方に突出する治具当接部46が設けられており、治具当接部46が治具45により後方から押圧されることにより、スライド部16が前方にスライドするようになっている。
【0100】
上記の構成によれば、治具45を治具当接部46に当接させてスライド部16を前方に押圧することにより、電線11と端子12とを電気的に接続することができる。
【0101】
<実施形態2>
本開示の実施形態2について、
図19から
図23を参照しつつ説明する。実施形態2にかかるコネクタ110は、コネクタハウジング130と、リアホルダ131と、から構成される電線挿通部150の構成を除いて、実施形態1と略同様に構成されているため、実施形態1と同一の部材、作用効果については、説明を省略する。なお、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材の符号を省略する場合がある。
【0102】
図19及び
図20に示すように、電線挿通部150の大径部151のうち後側部分は、リアホルダ131のみから構成される貫通孔の内壁であって後側大径部160とされる。
図21に示すように、大径部151の前側部分は、コネクタハウジング130の隔壁134と、リアホルダ131に設けられた仕切り部161と、から構成される前側大径部162とされている。コネクタハウジング130の隔壁134の上面及び下面は、溝状の形状を有しておらず、平坦になっている。
図23に示すように、隔壁134は、リアホルダ131が本係止位置に配された状態では、リアホルダ131に設けられた隔壁収容凹部163の内部に収容されるようになっている。
【0103】
図20に示すように、前側大径部162(
図21参照)は、後側大径部160(
図19参照)に比べて下方に広がった内空間を有する。すなわち、
図21に示すように、前側大径部162の下側部分を構成するコネクタハウジング130は、隔壁134上に電線受入空間158を有する。
【0104】
図19に示すように、電線挿通部150の小径部152は、背面視において略四角形状をなしており、コネクタハウジング130側に設けられる第1小径部152Aと、リアホルダ131側に設けられる第2小径部52Bと、から構成される。第1小径部152Aは、門形状となっている。
【0105】
図20に示すように、電線挿通部150の縮径部153は、コネクタハウジング130側に設けられる第1縮径部153Aと、リアホルダ131側に設けられる第2縮径部53B(傾斜面57)と、を備える。第1小径部152Aと第1縮径部153Aとによって、第1内壁155Aが構成されている。第2小径部52Bと第2縮径部53Bとによって、第2内壁55Bが構成されている。リアホルダ131が仮係止位置にあるとき、第1内壁155Aと第2内壁55Bとによって、ガイド部155が構成されている。
【0106】
実施形態1の第1縮径部53Aは曲面状のすり鉢状部56であったが(
図13参照)、実施形態2にかかる第1縮径部153Aは、
図22に示すように、複数の傾斜面164A,164B,164Cを備えて構成される。複数の傾斜面164A,164B,164Cは、それぞれ前方に向かうにつれて小径部152の中心部に近づくように傾斜している。例えば、左右中央に位置する傾斜面164Aは、前方へ向かうほど上側に位置して傾斜している。傾斜面164Aの右側の傾斜面164Bは、前方に向かうにつれて左側に位置して傾斜している。
【0107】
このように複数の傾斜面164A,164B,164Cを備えて第1縮径部153Aを構成することにより、例えば1つの(平面状の)傾斜面から第1縮径部を構成した場合と比較して、芯線13をより小径部152内(ひいては芯線挿入口54内)へと案内しやすくなっている。
【0108】
<他の実施形態>
(1)上記実施形態では、ガイド部55,155は、小径部52,152と、縮径部53,153と、を備える構成としたが、これに限られることはなく、ガイド部は小径部を備えず、縮径部のみを備える構成としてもよい。
(2)上記実施形態では、リアホルダ31,131はコネクタハウジング30,130に仮係止位置と本係止位置とで保持される構成としたが、これに限られることはなく、リアホルダはコネクタハウジングに一つの係止位置で保持される構成としてもよい。
(3)上記実施形態では、スライド部16が端子本体15に対して前後方向に移動することで、電気接続部18が芯線13に押圧される構成としたが、これに限られることはない。例えば、端子は、端子本体と、端子本体に対して上方から組み付けられるカバー部と、を備え、カバー部の押圧部と電気接続部とにより芯線が挟み付けられる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0109】
10,110: コネクタ
11: 電線
12: 端子
13: 芯線
14: 絶縁被覆
15: 端子本体
16: スライド部
17: 接続筒部
18: 電気接続部
18A: 上側接続片
18B: 下側接続片
20: 基部
21: ランス
23A: 上側保持突部
23B: 下側保持突部
25: 押圧部
25A: 上側押圧部
25B: 下側押圧部
26: 仮係止受け部
27: 本係止受け部
28: 係止突起
29: 端子収容部
30,130: コネクタハウジング
31,131: リアホルダ
32: 本体部
33: 係止壁
34,134: 隔壁
36: 仮係止ロック部
37: 本係止ロック部
38: ロック受け部
40: 前止め部
41: フード部
43: 係止面
45: 治具
46: 治具当接部
47: 誘い込み部
50,150: 電線挿通部
50A: 第1電線挿通部
50B: 第2電線挿通部
51,151: 大径部
51A: 第1大径部
51B: 第2大径部
52,152: 小径部
52A,152A: 第1小径部
52B: 第2小径部
53,153: 縮径部
53A,153A: 第1縮径部
53B: 第2縮径部
54: 芯線挿入口
55,155: ガイド部
55A,155A: 第1内壁
55B: 第2内壁
56: すり鉢状部
57: 傾斜面
58,158: 電線受入空間
160: 後側大径部
161: 仕切り部
162: 前側大径部
163: 隔壁収容凹部
164A,164B,164C: 複数の傾斜面