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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169300
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20221101BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
G03G9/097 375
G03G9/087 331
G03G9/087 325
G03G9/097 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075248
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】治部 優太
(72)【発明者】
【氏名】日高 安啓
(72)【発明者】
【氏名】片山 浩平
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA09
2H500CA03
2H500CA06
2H500CA27
2H500CB12
2H500EA39B
2H500EA42D
2H500EA44B
2H500EA44D
2H500EA47D
2H500EA52D
2H500EA57A
(57)【要約】
【課題】トナー消費量が少ない状態の連続印刷においても、カブリの発生が抑制され、更に、画像濃度の安定性が高い静電荷像現像用トナーを提供することに関する。
【解決手段】円形度が0.965以上のトナー母粒子に、比表面積から換算される粒径が10nm以上30nm以下の小粒径シリカ粒子と、比表面積から換算される粒径が70nm以上190nm以下の大粒径シリカ粒子とが外添され、大粒径シリカ粒子と小粒径シリカ粒子との添加量の質量比(大粒径シリカ粒子/小粒径シリカ粒子)が7以上18以下である、静電荷像現像用トナー。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形度が0.965以上のトナー母粒子に、
比表面積から換算される粒径が10nm以上30nm以下の小粒径シリカ粒子と、
比表面積から換算される粒径が70nm以上190nm以下の大粒径シリカ粒子とが外添され、
大粒径シリカ粒子と小粒径シリカ粒子との添加量の質量比(大粒径シリカ粒子/小粒径シリカ粒子)が7以上18以下である、
静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記トナー母粒子100質量部に対する前記小粒径シリカ粒子の添加量が0.4質量部以上1.2質量部以下であり、かつ、前記大粒径シリカ粒子の添加量が5質量部以上18質量部以下である、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記トナー母粒子の円形度が0.995以下である、請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
前記トナー母粒子が、結着樹脂としてポリエステル系樹脂を含有する、請求項1~3のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
前記トナー母粒子が、結着樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル系樹脂Aを含有する、請求項1~4のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
前記非晶性ポリエステル系樹脂Aが、アルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合物であるポリエステル樹脂セグメントと、スチレン系化合物を含む原料モノマーの付加重合物である付加重合樹脂セグメントとを含む、請求項5に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
前記小粒径シリカ粒子及び前記大粒径シリカ粒子が、疎水性シリカ粒子である、請求項1~6のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置、静電記録装置、静電印刷装置等の画像形成装置には、感光体上に形成される静電潜像を、静電荷像現像用トナーにより現像することで所望の画像を形成する技術が広く用いられている。このような技術は、複写機、プリンター、ファクシミリ、及びこれらの複合機等に応用されている。
近年、より高精細、高画質である画像形成が要望される中、高い円形度を有するトナー母粒子を用いた静電荷像現像用トナーが用いられている。
特許文献1には、優れた研磨性能を発揮してクリーニング性能を向上させうるトナーを提供することを目的として、コア・シェル構造を有するトナーであって、該トナーのシェル層にはトナー100重量部に対して0.3~3.0重量部の割合で平均粒子径0.1~1.0μmの研磨剤微粒子が存在している、ことを特徴とするトナーが記載されている。
また、特許文献2には、感光体へのフィルミングが起こり難く、経時的に安定した帯電性をトナー粒子に付与し、多数枚の連続印刷を行ってもカブリ等による画質の劣化が起こり難く、特に高温高湿環境下においても画質の劣化が起こり難い静電荷像現像用トナーを提供することを目的として、外添剤として個数平均一次粒径が0.5~1.5μmである脂肪酸亜鉛粒子、固体平均一次粒子径が5~20nmのシリカ微粒子(A)、及び、個数平均一次粒径が25~80nmであるシリカ微粒子(B)を特定量含有する静電荷像現像用トナーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-187988号公報
【特許文献2】特開2011-203666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2に記載の静電荷像現像用トナーは、トナー帯電量の均一化が十分ではなく、カブリの発生が十分に抑制できないという問題があった。また、トナー搬送量の適切化についても検討されていなかった。
本発明は、トナー消費量が少ない状態の連続印刷においても、カブリの発生が抑制され、更に、画像濃度の安定性が高い静電荷像現像用トナーを提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、高い円形度を有するトナー母粒子に、特定の粒径を有する小粒径シリカ粒子と、大粒径シリカ粒子とを、特定の量比で外添することにより、上記の課題が解決されることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、次の[1]に関する。
[1] 円形度が0.965以上のトナー母粒子に、
比表面積から換算される粒径が10nm以上30nm以下の小粒径シリカ粒子と、
比表面積から換算される粒径が70nm以上190nm以下の大粒径シリカ粒子とが外添され、
大粒径シリカ粒子と小粒径シリカ粒子との添加量の質量比(大粒径シリカ粒子/小粒径シリカ粒子)が7以上18以下である、
静電荷像現像用トナー。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、トナー消費量が少ない状態の連続印刷においても、カブリの発生が抑制され、更に、画像濃度の安定性が高い静電荷像現像用トナーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[静電荷像現像用トナー]
本発明の静電荷像現像用トナー(以下、単に、「トナー」ともいう)は、円形度が0.965以上のトナー母粒子に、比表面積から換算される粒径が10nm以上30nm以下の小粒径シリカ粒子と、比表面積から換算される粒径が70nm以上190nm以下の大粒径シリカ粒子とが外添され、大粒径シリカ粒子と小粒径シリカ粒子との添加量の質量比(大粒径シリカ粒子/小粒径シリカ粒子)が7以上18以下である。
なお、以下の説明において、静電荷像現像用トナーは、トナー母粒子と、外添剤とを含有するものであり、トナー母粒子及び外添剤からなることが好ましい。また、静電荷像現像用トナーの個々の粒子を「トナー粒子」ともいうこととする。
【0009】
非磁性一成分現像方式において、現像ローラーから搬送されたトナーは、現像ブレードを通過する際に個々のトナー粒子が瞬時に均一に摩擦帯電されることが求められるが、高円形度を持つトナーでは現像ブレードとトナー粒子間の摩擦が小さくなり、均一に摩擦帯電することが難しくなるため、カブリが発生しやすいという課題があった。また、現像ローラーとトナー粒子の摩擦も小さくなるため、現像ローラーに対しトナーの引っ掛かりが少なくなり、安定した搬送量を確保することができず、画像濃度が担保できないといった課題も生じる。
本発明によれば、トナー消費量が少ない状態の連続印刷においてもカブリが抑制され、更に、画像濃度の安定性が高い静電荷像現像用トナーが提供される。
上記の効果が得られる理由は定かではないが、以下のように考えられる。
比表面積から換算される粒径が10nm以上30nm以下の小粒径シリカと、比表面積から換算される粒径が70nm以上190nm以下の大粒径シリカとを、外添剤として特定の添加量比率で組み合わせることにより、トナーの表面に外添剤による微小な表面凹凸を生み出し、現像ブレードとトナー粒子間に働く摩擦帯電の効果が向上するため、トナーの帯電均一性が向上し、カブリが抑制されると考えられる。
一方、現像ブレードとトナー粒子間に働く摩擦を向上させると、現像ローラーとトナー粒子間に働く摩擦も増加するため、現像ローラー上のトナー搬送量が増加する。過度に現像ローラーとトナー粒子間に働く摩擦が増加すると、現像ローラーと現像ブレードの隙間からトナー漏れが発生しやすくなるが、本発明では、特定の外添剤の添加量比率を適用することにより、現像ローラーとトナー粒子間に働く摩擦力が必要以上に増加しないため、トナー搬送量が適切化され、トナー漏れの発生を抑制するものと推察される。
なお、本発明の効果に関する上記のメカニズムは推定であり、これに限定されるものではない。
【0010】
本明細書における各種用語の定義等を以下に示す。
樹脂が結晶性であるか非晶性であるかについては、結晶性指数により判定される。結晶性指数は、後述する実施例に記載の測定方法における、樹脂の軟化点と吸熱の最大ピーク温度との比(軟化点(℃)/吸熱の最大ピーク温度(℃))で定義される。結晶性樹脂とは、結晶性指数が0.6以上1.4以下のものである。非晶性樹脂とは、吸熱ピークが観測されないか、観測される場合は、結晶性指数が0.6未満又は1.4超のものである。結晶性指数は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。
明細書中、ポリエステル樹脂のカルボン酸成分には、その化合物のみならず、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び各カルボン酸のアルキルエステル(アルキル基の炭素数1以上3以下)も含まれる。
「体積中位粒径(D50)」とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径である。
粒径分布の変動係数(以下、単に「CV値」ともいう)は、下記式で表される値である。下記式における体積平均粒径とは、測定された全ての粒子について、それぞれの粒径とその粒子の体積を掛けた値の合計値を、測定された粒子の総体積で除して得られる粒径である。
CV値(%)=[粒径分布の標準偏差(μm)/体積平均粒径(μm)]×100
【0011】
<トナー母粒子>
本発明において、トナー母粒子の円形度は、0.965以上である。円形度が0.965以上であると、高精細な画像が得られる。
トナー母粒子の円形度は、高精細な画像を得る観点から、0.965以上であり、好ましくは0.968以上、より好ましくは0.970以上であり、そして、カブリの発生をより抑制する観点から、好ましくは0.995以下、より好ましくは0.990以下、更に好ましくは0.985以下、より更に好ましくは0.980以下である。
トナー母粒子の円形度は、実施例に記載の方法により測定される。
【0012】
トナー母粒子は、結着樹脂を含有し、結着樹脂に加えて、着色剤及び離型剤を含有することが好ましい。
トナー母粒子は、溶融混練法、乳化転相法、重合法、凝集融着法等の公知のいずれの方法により得られたトナー母粒子であってもよいが、所望の円形度を得る観点から、凝集融着法により得られたトナー母粒子であることが好ましく、コアシェル構造を有するトナー母粒子であることがより好ましい。
以下、トナー母粒子の好ましい態様について説明するが、本発明において、トナー母粒子は上述した円形度を有するものであれば特に限定されない。
【0013】
〔結着樹脂〕
トナー母粒子は、低温定着性に優れる観点、及び所望の円形度を得る観点から、結着樹脂として、ポリエステル系樹脂を含有することが好ましく、非晶性ポリエステル系樹脂Aを含有することがより好ましく、非晶性ポリエステル系樹脂A及び結晶性ポリエステル樹脂Cを含有することが更に好ましい。
【0014】
≪非晶性ポリエステル系樹脂A≫
本発明において、トナー母粒子は、結着樹脂として、非晶性ポリエステル系樹脂Aを含有することが好ましく、コア部が非晶性ポリエステル系樹脂Aを含有することがより好ましい。
非晶性ポリエステル系樹脂Aは、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分の重縮合物を含む非晶性ポリエステル系樹脂である。
非晶性ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、変性されたポリエステル樹脂が挙げられる。変性されたポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂のウレタン変性物、ポリエステル樹脂のエポキシ変性物、ポリエステル樹脂セグメントと付加重合樹脂セグメントとを含む複合樹脂が挙げられる。これらの中でも、アルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合物であるポリエステル樹脂セグメントと、スチレン系化合物を含む原料モノマーの付加重合物である付加重合樹脂セグメントとを含む、非晶性複合樹脂であることが好ましい。
【0015】
アルコール成分としては、例えば、芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物、直鎖又は分岐の脂肪族ジオール、脂環式ジオール、3価以上の多価アルコールが挙げられる。これらの中でも、低温定着性に優れるトナーを得る観点から、芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物が好ましい。
芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物は、好ましくはビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物であり、より好ましくは式(I):
【0016】
【化1】

(式中、OR及びROはオキシアルキレン基であり、R及びRはそれぞれ独立にエチレン基又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキシドの平均付加mol数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は1以上16以下である)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物である。
【0017】
ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物としては、例えば、ビスフェノールA〔2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〕のプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いてもよい。これらの中でも、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物が好ましい。
ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物の含有量は、アルコール成分中、好ましくは70mol%以上、より好ましくは90mol%以上、更に好ましくは95mol%以上であり、そして、100mol%以下であり、更に好ましくは100mol%である。
【0018】
直鎖又は分岐の脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが挙げられる。
脂環式ジオールとしては、例えば、水素添加ビスフェノールA〔2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン〕、水素添加ビスフェノールAの炭素数2以上4以下のアルキレンオキシド付加物(平均付加mol数2以上12以下)が挙げられる。
3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールが挙げられる。
これらのアルコール成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0019】
カルボン酸成分としては、例えば、ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸が挙げられる。
ジカルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸が挙げられる。これらの中でも、芳香族ジカルボン酸、及び、直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が挙げられる。これらの中でも、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
芳香族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは20mol%以上、より好ましくは30mol%以上、更に好ましくは40mol%以上、更に好ましくは50mol%以上であり、そして、好ましくは90mol%以下、より好ましくは85mol%以下、更に好ましくは80mol%以下である。
【0020】
直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、そして、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である。
直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、アゼライン酸、炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸が挙げられる。炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸としては、例えば、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸が挙げられる。これらの中でも、フマル酸、セバシン酸、炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸が好ましく、フマル酸、セバシン酸がより好ましい。
直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは1mol%以上、より好ましくは3mol%以上、更に好ましくは10mol%以上であり、そして、好ましくは80mol%以下、より好ましくは50mol%以下、更に好ましくは30mol%以下である。
【0021】
3価以上の多価カルボン酸としては、好ましくは3価のカルボン酸であり、例えばトリメリット酸が挙げられる。好ましくはトリメリット酸又はその無水物である。
3価以上の多価カルボン酸を含む場合、3価以上の多価カルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは3mol%以上、より好ましくは5mol%以上、更に好ましくは8mol%以上であり、そして、好ましくは30mol%以下、より好ましくは25mol%以下、更に好ましくは20mol%以下である。
これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0022】
アルコール成分の水酸基に対するカルボン酸成分のカルボキシ基の当量比〔COOH基/OH基〕は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
【0023】
付加重合樹脂セグメントは、例えば、スチレン系化合物を含む原料モノマーの付加重合物である。
スチレン系化合物としては、例えば、無置換又は置換スチレンが挙げられる。スチレンに置換される置換基としては、例えば、炭素数1以上5以下のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、スルホン酸基又はその塩が挙げられる。
スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、tert-ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸又はその塩が挙げられる。これらの中でも、スチレンが好ましい。
付加重合樹脂セグメントの原料モノマー中、スチレン系化合物の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは75質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。
【0024】
スチレン系化合物以外の原料モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸エステル;エチレン、プロピレン、ブタジエン等のオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のハロゲン化ビニリデン;N-ビニルピロリドン等のN-ビニル化合物が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルがより好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルにおけるアルキル基の炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、そして、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは20以下である。
(メタ)アクリル酸アルキルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸(イソ)プロピル、(メタ)アクリル酸(イソ又はターシャリー)ブチル、(メタ)アクリル酸(イソ)アミル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸(イソ)オクチル、(メタ)アクリル酸(イソ)デシル、(メタ)アクリル酸(イソ)ドデシル、(メタ)アクリル酸(イソ)パルミチル、(メタ)アクリル酸(イソ)ステアリル、(メタ)アクリル酸(イソ)ベヘニル等が挙げられ、好ましくは(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル又は(メタ)アクリル酸ステアリル、より好ましくはアクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、更に好ましくはメタクリル酸ステアリルである。
なお、「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」は、これらの接頭辞が存在する場合としない場合の双方を意味し、これらの接頭辞が存在しない場合には、ノルマルを示す。また、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を示す。
【0025】
付加重合樹脂セグメントの原料モノマー中、(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
付加重合樹脂セグメントの原料モノマー中における、スチレン系化合物と(メタ)アクリル酸エステルとの総量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
【0026】
非晶性ポリエステル系樹脂Aは、好ましくは、ポリエステル樹脂セグメント及び付加重合樹脂セグメントと共有結合を介して結合した両反応性モノマー由来の構成単位を有する。
「両反応性モノマー由来の構成単位」とは、両反応性モノマーの官能基、付加重合性基が反応した単位を意味する。
付加重合性基としては、例えば、炭素-炭素不飽和結合(エチレン性不飽和結合)が挙げられる。
両反応性モノマーとしては、例えば、分子内に、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する付加重合性モノマーが挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、水酸基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する付加重合性モノマーが好ましく、カルボキシ基を有する付加重合性モノマーがより好ましい。
カルボキシ基を有する付加重合性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸が挙げられる。これらの中でも、重縮合反応と付加重合反応の双方の反応性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
両反応性モノマーがカルボキシ基を有する付加重合性モノマーである場合、両反応性モノマー由来の構成単位の量は、非晶性ポリエステル系樹脂Aのポリエステル樹脂セグメントのアルコール成分100mol部に対して、好ましくは1mol部以上、より好ましくは5mol部以上、更に好ましくは8mol部以上であり、そして、好ましくは30mol部以下、より好ましくは25mol部以下、更に好ましくは20mol部以下である。
【0027】
前記非晶性ポリエステル系樹脂Aは、ポリエステル樹脂セグメント及び付加重合樹脂セグメントに加え、更に、カルボキシ基及び水酸基の少なくともいずれかを有する炭化水素ワックスに由来する構成単位(炭化水素ワックス由来の構成単位)を含んでいてもよい。
【0028】
非晶性ポリエステル系樹脂A中のポリエステル樹脂セグメントの含有量は、ポリエステル樹脂セグメント及び付加重合樹脂セグメントの合計量に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは55質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。なお、両反応性モノマー由来の構成単位は、ポリエステル樹脂セグメントとする。
【0029】
非晶性ポリエステル系樹脂A中の付加重合樹脂セグメントの含有量は、ポリエステル樹脂セグメント及び付加重合樹脂セグメントの合計量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは25質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは45質量%以下である。なお、両反応性モノマー由来の構成単位は、ポリエステル樹脂セグメントとする。
【0030】
非晶性ポリエステル系樹脂A中の両反応性モノマー由来の構成単位の量は、ポリエステル樹脂セグメント及び付加重合樹脂セグメントの合計量に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは0.8質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、更に好ましくは4質量%以下である。
【0031】
非晶性ポリエステル系樹脂A中の炭化水素ワックス由来の構成単位の量は、ポリエステル樹脂セグメント及び付加重合樹脂セグメントの合計量100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下である。
【0032】
上記量は、ポリエステル樹脂セグメント、付加重合樹脂セグメントの原料モノマー、両反応性モノマー、ラジカル重合開始剤の量の比率を基準に算出し、ポリエステル樹脂セグメント等における重縮合による脱水量は除いた質量を基準とする。なお、ラジカル重合開始剤を用いた場合、ラジカル重合開始剤の質量は、付加重合樹脂セグメントに含めて計算する。
【0033】
非晶性ポリエステル系樹脂Aは、例えば、アルコール成分及びカルボン酸成分を重縮合させる工程Aと、付加重合樹脂セグメントの原料モノマー及び両反応性モノマーを付加重合させる工程Bとを含む方法により製造してもよい。
非晶性ポリエステル系樹脂Aが、更に炭化水素ワックス由来の構成単位を有する場合、上述の工程Aでは、例えば、水酸基及びカルボキシ基の少なくともいずれかを有する炭化水素ワックスの存在下、アルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合反応を行う。
工程Aの後に工程Bを行ってもよいし、工程Bの後に工程Aを行ってもよく、工程Aと工程Bを同時に行ってもよい。
工程Aにおいて、カルボン酸成分の一部を重縮合反応に供し、次いで工程Bを実施した後に、カルボン酸成分の残部を重合系に添加し、工程Aの重縮合反応及び両反応性モノマー又は両反応性モノマーに由来する構成部位が有するカルボキシ基との重縮合反応を更に進める方法が好ましい。
【0034】
工程Aでは、必要に応じて、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)、酸化ジブチル錫、チタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)等のエステル化触媒をアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対し0.01質量部以上5質量部以下;没食子酸(3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸と同じ。)等のエステル化助触媒をアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対し0.001質量部以上0.5質量部以下用いて重縮合してもよい。
また、重縮合にフマル酸等の不飽和結合を有するモノマーを使用する際には、必要に応じてアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上0.5質量部以下のラジカル重合禁止剤を用いてもよい。ラジカル重合禁止剤としては、例えば、4-tert-ブチルカテコールが挙げられる。
重縮合反応の温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは160℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下である。なお、重縮合は、不活性ガス雰囲気中にて行ってもよい。
【0035】
工程Bの付加重合のラジカル重合開始剤としては、例えば、ジブチルパーオキシド等の過酸化物、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。
ラジカル重合開始剤の使用量は、付加重合樹脂セグメントの原料モノマー100質量部に対して、好ましくは1質量部以上20質量部以下である。
付加重合の温度は、好ましくは110℃以上、より好ましくは130℃以上であり、そして、好ましくは230℃以下、より好ましくは220℃以下、更に好ましくは210℃以下である。
【0036】
(非晶性ポリエステル系樹脂Aの物性)
非晶性ポリエステル系樹脂Aの軟化点は、好ましくは70℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下、更に好ましくは125℃以下である。
非晶性ポリエステル系樹脂Aのガラス転移温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、更に好ましくは40℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下である。
【0037】
非晶性ポリエステル系樹脂Aの酸価は、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは35mgKOH/g以下、更に好ましくは30mgKOH/g以下である。
非晶性ポリエステル系樹脂Aの軟化点、ガラス転移温度、及び酸価は、原料モノマーの種類及びその使用量、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、また、それらの値は、実施例に記載の方法により求められる。
なお、非晶性ポリエステル系樹脂Aを2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた軟化点、ガラス転移温度及び酸価の値がそれぞれ前述の範囲内であることが好ましい。
【0038】
非晶性ポリエステル系樹脂Aの含有量は、コア部の樹脂成分の合計量に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは87質量%以下である。
【0039】
≪結晶性ポリエステル樹脂C≫
本発明において、トナー母粒子は、結晶性ポリエステル樹脂Cを含有することが好ましく、トナー母粒子がコアシェル構造であり、かつ、コア部に結晶性ポリエステル樹脂Cを含有することがより好ましく、コア部のみに結晶性ポリエステル樹脂Cを含有することが更に好ましい。
【0040】
結晶性ポリエステル樹脂Cは、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分の重縮合物である結晶性ポリエステル樹脂である。
アルコール成分としては、α,ω-脂肪族ジオールが好ましい。
α,ω-脂肪族ジオールの炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
α,ω-脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオールが挙げられる。これらの中でも、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが好ましく、1,10-デカンジオールがより好ましい。
【0041】
α,ω-脂肪族ジオールの量は、アルコール成分中、好ましくは80mol%以上、より好ましくは85mol%以上、更に好ましくは90mol%以上、更に好ましくは95mol%以上であり、そして100mol%以下であり、更に好ましくは100mol%である。
【0042】
アルコール成分は、α,ω-脂肪族ジオールとは異なる他のアルコール成分を含有していてもよい。他のアルコール成分としては、例えば、1,2-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール等のα,ω-脂肪族ジオール以外の脂肪族ジオール;ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物等の芳香族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコールが挙げられる。これらのアルコール成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0043】
カルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸が好ましく、直鎖脂肪族ジカルボン酸がより好ましい。
脂肪族ジカルボン酸の炭素数は、好ましくは4以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上であり、そして、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸が挙げられる。これらの中でも、セバシン酸、テトラデカン二酸が好ましく、セバシン酸がより好ましい。これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0044】
脂肪族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは80mol%以上、より好ましくは85mol%以上、更に好ましくは90mol%以上、更に好ましくは95mol%以上であり、そして、100mol%以下であり、更に好ましくは100mol%である。
【0045】
カルボン酸成分は、脂肪族ジカルボン酸とは異なる他のカルボン酸成分を含有していてもよい。他のカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;3価以上の多価カルボン酸が挙げられる。これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0046】
アルコール成分の水酸基に対するカルボン酸成分のカルボキシ基の当量比〔COOH基/OH基〕は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
【0047】
結晶性ポリエステル系樹脂Cは、例えば、アルコール成分及びカルボン酸成分を重縮合させる方法により製造される。
重縮合の際には、必要に応じて、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)、酸化ジブチル錫、チタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)等のエステル化触媒をアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対し0.01質量部以上5質量部以下;没食子酸(3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸と同じ。)等のエステル化助触媒をアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対し0.001質量部以上0.5質量部以下用いて重縮合してもよい。
また、重縮合にフマル酸等の不飽和結合を有するモノマーを使用する際には、必要に応じてアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上0.5質量部以下のラジカル重合禁止剤を用いてもよい。ラジカル重合禁止剤としては、例えば、4-tert-ブチルカテコールが挙げられる。
重縮合反応の温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは160℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下である。なお、重縮合は、不活性ガス雰囲気中にて行ってもよい。
【0048】
(結晶性ポリエステル樹脂Cの物性)
結晶性ポリエステル樹脂Cの軟化点は、トナーの保存性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは100℃以下、更に好ましくは95℃以下である。
結晶性ポリエステル樹脂Cの融点は、トナーの保存性の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは85℃以下、更に好ましくは80℃以下である。
【0049】
結晶性ポリエステル樹脂Cの酸価は、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは35mgKOH/g以下、より好ましくは25mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下である。
【0050】
結晶性ポリエステル樹脂Cの軟化点、融点、及び酸価は、原料モノマーの種類及びその使用量、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、後述の実施例に記載の方法により求められる。なお、結晶性ポリエステル樹脂Cを2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた軟化点、融点、及び酸価の値がそれぞれ前記範囲内であることが好ましい。
【0051】
非晶性ポリエステル系樹脂Aと結晶性ポリエステル樹脂Cとを併用する場合、非晶性ポリエステル系樹脂Aと結晶性ポリエステル樹脂Cの質量比〔非晶性ポリエステル系樹脂A/結晶性ポリエステル樹脂C〕は、好ましくは40/60以上、より好ましくは50/50以上、更に好ましくは60/40以上、更に好ましくは65/35以上であり、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下、更に好ましくは85/15以下、更に好ましくは75/25以下である。
【0052】
〔コアシェル構造〕
本発明のトナーは、コアシェル構造を有し、コア部が前記結晶性ポリエステル樹脂C及び非晶性ポリエステル系樹脂Aを含有することが好ましい。また、コア部が、前記結晶性ポリエステル樹脂C及び非晶性ポリエステル系樹脂Aに加え、着色剤、離型剤を含有することが好ましい。
【0053】
本発明において、トナー粒子中のシェルの含有量は、高精細な画像を得る観点から、トナー母粒子100質量部に対し、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは7質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であり、そして、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。
トナー中のシェルは、好ましくは、後述する非晶性ポリエステル系樹脂Bを含み、より好ましくはシェルが非晶性ポリエステル系樹脂Bからなる。
トナーの結着樹脂100質量部中のシェルの結着樹脂の量は、高精細な画像を得る観点から、5質量部以上であり、好ましくは7質量部以上、より好ましくは10質量部以上であり、そして、30質量部以下であり、好ましくは25質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。
【0054】
≪非晶性ポリエステル系樹脂B≫
本発明において、トナー母粒子は、結着樹脂として、上記結晶性ポリエステル樹脂C及び非晶性ポリエステル樹脂Aに加え、非晶性ポリエステル系樹脂Bを含有することが好ましく、シェルが非晶性ポリエステル系樹脂Bを含有することがより好ましい。
非晶性ポリエステル系樹脂Bは、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分の重縮合物を含む非晶性ポリエステル系樹脂であることが好ましい。
ポリエステル系樹脂としては、ポリエステル樹脂、変性されたポリエステル樹脂が挙げられる。変性されたポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂のウレタン変性物、ポリエステル樹脂のエポキシ変性物、ポリエステル樹脂セグメントと付加重合樹脂セグメントとを含む複合樹脂が挙げられる。これらの中でも、アルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合物である非晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0055】
アルコール成分は、上述した非晶性ポリエステル樹脂Aのポリエステル樹脂セグメントのアルコール成分と同様の芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物、直鎖又は分岐の脂肪族ジオール、脂環式ジオール、3価以上の多価アルコールが挙げられ、これらの中でも、低温定着性に優れるトナーを得る観点から、芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物が好ましく、より好ましくはビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、更に好ましくはビスフェノールA〔2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〕のプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物である。これらは1種又は2種以上を用いてもよい。これらの中でも、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物がより好ましい。
【0056】
カルボン酸成分としては、上述した非晶性ポリエステル樹脂Aのポリエステル樹脂セグメントのカルボン酸成分と同様のジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸が挙げられる。
ジカルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸が挙げられる。これらの中でも、芳香族ジカルボン酸、及び、直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
芳香族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは40mol%以上、より好ましくは50mol%以上、更に好ましくは60mol%以上、更に好ましくは70mol%以上であり、そして、好ましくは95mol%以下、より好ましくは90mol%以下、更に好ましくは85mol%以下である。
【0057】
直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは1mol%以上、より好ましくは3mol%以上、更に好ましくは5mol%以上であり、そして、好ましくは60mol%以下、より好ましくは30mol%以下、更に好ましくは20mol%以下、更に好ましくは15mol%以下である。
【0058】
3価以上の多価カルボン酸を含む場合、3価以上の多価カルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは3mol%以上、より好ましくは5mol%以上、更に好ましくは8mol%以上であり、そして、好ましくは30mol%以下、より好ましくは25mol%以下、更に好ましくは20mol%以下である。
これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0059】
アルコール成分の水酸基に対するカルボン酸成分のカルボキシ基の当量比〔COOH基/OH基〕は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
【0060】
ポリエステル系樹脂Bは、例えば、アルコール成分及びカルボン酸成分を重縮合させる工程Aにより製造してもよい。
工程Aは、非晶性ポリエステル系樹脂Aの製造方法において記載した工程Aと同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0061】
(非晶性ポリエステル系樹脂Bの物性)
非晶性ポリエステル系樹脂Bの軟化点は、好ましくは70℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下、更に好ましくは125℃以下である。
非晶性ポリエステル系樹脂Bのガラス転移温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは50℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下である。
【0062】
非晶性ポリエステル系樹脂Bの酸価は、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは25mgKOH/g以下である。
非晶性ポリエステル系樹脂Bの軟化点、ガラス転移温度、及び酸価は、原料モノマーの種類及びその使用量、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、また、それらの値は、実施例に記載の方法により求められる。
なお、非晶性ポリエステル系樹脂Bを2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた軟化点、ガラス転移温度及び酸価の値がそれぞれ前述の範囲内であることが好ましい。
【0063】
非晶性ポリエステル系樹脂Bの含有量は、シェル層用の樹脂粒子Yの樹脂成分の合計量に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、更に好ましくは100質量%である。
【0064】
〔着色剤〕
本発明において、トナー母粒子は、着色剤を含有することが好ましく、コア部に着色剤を含有することが好ましい。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等の全てを使用することができる。
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー(例えば、ピグメントブルー15:3)、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン-Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾイエローが挙げられる。トナーは、黒トナー、黒以外のカラートナーのいずれであってもよい。
着色剤の含有量は、トナー粒子中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
【0065】
〔離型剤〕
本発明において、トナー母粒子は、離型剤を含有することが好ましく、コア部に離型剤を含有することがより好ましい。
離型剤としては、例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス;マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス等の炭化水素系ワックス又はそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス又はそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いてもよい。
【0066】
離型剤の融点は、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは160℃以下、より好ましくは140℃以下、更に好ましくは120℃以下、更に好ましくは100℃以下である。
離型剤の含有量は、トナー粒子中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
【0067】
<トナー母粒子の製造方法>
トナー母粒子の製造方法は特に限定されず、所望の円形度のトナー母粒子が得られればよい。0.965以上の所望の円形度を得る観点から、乳化重合法、懸濁法等のケミカル法を採用することが好ましい。更に、低温定着性等の優れたトナー物性を有するトナーを得る観点から、トナー母粒子は、以下の工程1~工程3を有する乳化凝集により得ることが好ましい。
工程1:水系媒体中で、結晶性ポリエステル樹脂C及び非晶性ポリエステル系樹脂Aを同一又は異なる粒子中に含有する樹脂粒子Xを凝集させて、凝集粒子1を得る工程、
工程2:工程1で得られた凝集粒子1に対して、非晶性ポリエステル系樹脂Bを含有する樹脂粒子Yを凝集させて、凝集粒子2を得る工程、
工程3:工程2で得られた凝集粒子2を昇温して融着し、融着粒子を得る工程
工程1~3によりトナー母粒子を製造する方法としては、例えば、特開2021-012242号公報に記載の工程1、工程1’、及び工程2、特開2021-026129号公報に記載の工程1、工程1’、及び工程2が参照される。
【0068】
なお、上記工程1では、樹脂粒子Xと共に、着色剤を含む着色剤粒子、及び離型剤を含む離型剤粒子を凝集させることが好ましい。
樹脂粒子Xの分散液は、転相乳化法により得ることが好ましい。
また、着色剤粒子は、着色剤粒子の分散液として、樹脂粒子と混合し、凝集させることで、凝集粒子に含有させることが好ましく、着色剤と水系媒体とを、ホモジナイザー、超音波分散機等の分散機を用いて分散して得ることが好ましい。当該分散は、着色剤の分散安定性を向上させる観点から、付加重合体(以下、着色剤の分散に使用する付加重合体を、「付加重合体E」ともいう)又は界面活性剤の存在下で行うことが好ましい。
当該界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤が挙げられる。
付加重合体Eは芳香族基を有する付加重合性モノマーaに由来する構成単位を有することが好ましく、更に、イオン性基を有する付加重合性モノマーb、ポリアルキレンオキシド基を有する付加重合性モノマーc、及びマクロモノマーd選ばれる少なくとも1種を更に含有することが好ましい。着色剤粒子分散液及び付加重合体Eについては、特開2021-026129に記載の付加重合体Eが参照される。
更に、離型剤粒子は、離型剤粒子の分散液として、樹脂粒子分散液及び着色剤粒子分散液と混合し、凝集させることで、凝集粒子に含有させることが好ましい。
離型剤粒子の分散液は、界面活性剤を用いて得ることも可能であるが、離型剤と樹脂粒子Zとを混合して得ることが好ましい。離型剤と樹脂粒子Zを用いて離型剤粒子を調製することで、樹脂粒子Zにより離型剤粒子が安定化され、界面活性剤を使用しなくても離型剤を水系媒体中に分散させることが可能となる。離型剤粒子の分散液中では、離型剤粒子の表面に樹脂粒子Zが多数付着した構造を有していると考えられる。
離型剤を分散する樹脂粒子Zを構成する樹脂は、好ましくはポリエステル系樹脂であり、ポリエステル樹脂セグメントと付加重合樹脂セグメントを有する複合樹脂Dを用いることがより好ましい。離型剤粒子分散液及び複合樹脂Dについては、特開2021-026129が参照される。
また、上記工程3の後に、後処理工程を行ってもよく、単離することによってトナー母粒子を得ることが好ましい。工程3で得られた粒子は、水系媒体中に存在するため、まず、固液分離を行った後に、必要に応じて洗浄を行い、乾燥を行うことが好ましい。
【0069】
〔トナー母粒子の体積平均粒径〕
乾燥等を行うことによって得られたトナー母粒子の表面に後述する外添剤を添加したものを静電荷像現像用トナーとして用いることが好ましい。
トナー母粒子の体積中位粒径(D50)は、トナーの生産性を向上させる観点、所望の円形度を得る観点、及びトナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは6μm以下である。
トナー母粒子のCV値は、トナーの生産性を向上させる観点から、好ましくは12%以上、より好ましくは14%以上、更に好ましくは16%以上であり、そして、高画質の画像を得る観点から、好ましくは32%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは29%以下である。
【0070】
<外添剤>
本発明において、静電荷像現像用トナーは、円形度が0.965以上のトナー母粒子に、比表面積から換算される粒径が10nm以上30nm以下の小粒径シリカ粒子と、比表面積から換算される粒径が70nm以上190nm以下の大粒径シリカ粒子とが外添されてなる。また、大粒径シリカ粒子と小粒径シリカ粒子との添加量の質量比(大粒径シリカ粒子/小粒径シリカ粒子)は、7以上18以下である。
前記質量比が7以上であると、トナーの表面凹凸が適切であり、現像ブレードとの摩擦が適度に生じ、トナーが均一に帯電するため、カブリの発生が抑制される。また、現像ローラーに対する摩擦が適度に生じ、必要な搬送量が得られるため、良好な画像濃度が得られる。また、18以下であると、現像ローラーと静電荷像現像用トナーとの摩擦が過度に大きくならず、搬送されるトナー量が増大しすぎないため、現像ブレードにより掻き取られるトナー量が適切な範囲となり、現像ローラー端部からのトナー漏れの発生が抑制される。
大粒径シリカ粒子と小粒径シリカ粒子との添加量の質量比(大粒径シリカ粒子/小粒径シリカ粒子)は、7以上であり、好ましくは8以上、より好ましくは9以上、更に好ましくは10以上であり、そして、18以下であり、好ましくは16以下、より好ましくは15以下、更に好ましくは14以下である。
【0071】
トナー母粒子100質量部に対する小粒径シリカ粒子の添加量は、転写性を向上させ、カブリの発生を抑制し、更に、画像濃度の安定性を向上させる観点から、好ましくは0.4質量部以上、より好ましくは0.45質量部以上であり、そして、好ましくは1.2質量部以下、より好ましくは1.0質量部以下、更に好ましくは0.7質量部以下、より更に好ましくは0.65質量部以下、より更に好ましくは0.6質量部以下である。
また、トナー母粒子100質量部に対する大粒径シリカ粒子の添加量は、同様の観点から、好ましくは5質量部以上、より好ましくは6質量部以上であり、そして、好ましくは18質量部以下、より好ましくは14質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
トナー母粒子100質量部に対する大粒径シリカ粒子及び小粒径シリカ粒子の添加量の合計は、同様の観点から、好ましくは5.5質量部以上、より好ましくは6質量部以上、更に好ましくは6.5質量部以上であり、そして、好ましくは19質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは12質量部以下である。
【0072】
小粒径シリカ粒子は、比表面積から換算される粒径が10nm以上であり、好ましくは12nm以上、より好ましくは14nm以上、更に好ましくは16nm以上、より更に好ましくは20nm以上であり、そして、30nm以下であり、好ましくは28nm以下である。
また、大粒径シリカ粒子は、比表面積から換算される粒径が70nm以上であり、好ましくは90nm以上、より好ましくは100nm以上であり、そして、190nm以下であり、好ましくは150nm以下、より好ましくは140nm以下、更に好ましくは125nm以下である。
なお、小粒径シリカ粒子及び大粒径シリカ粒子における「比表面積から換算される粒径」とは、実施例に記載の方法により測定される。
【0073】
上記の小粒径シリカ粒子と大粒径シリカ粒子とを外添したトナーは、外添剤全体としては、横軸に粒径、縦軸に当該粒径を有する粒子質量とをプロットすると、粒径10nm以上30nm以下と、粒径70nm以上190nm以下に2つのピークを有する。
また、外添剤中の比表面積から換算される粒径が10nm以上70nm以下の粒子の質量比率をW、比表面積から換算される粒径が70nmを超え400nm以下の粒子の質量比率をWとしたとき、W/Wは、好ましくは7以上であり、より好ましくは8以上、更に好ましくは9以上、より更に好ましくは10以上であり、そして、好ましくは18以下であり、より好ましくは16以下、更に好ましくは15以下、より更に好ましくは14以下である。
【0074】
小粒径シリカ粒子及び大粒径シリカ粒子は、トナー転写性を向上させる観点から、疎水化処理された疎水性シリカであることが好ましい。
シリカ粒子の表面を疎水化する疎水化処理剤としては、シランカップリング剤及びシリコーンオイルが例示される。
シランカップリング剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)等のジシラザン;環状シラザン;トリメチルシラン;トリメチルクロロシラン;ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシランアリルジメチルクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n-オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、及びビニルトリアセトキシシラン等のアルキルシラン化合物、並びにγ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン化合物;等が挙げられる。
上記シリコーンオイルとしては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルハイドロジェンシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、及びアミノ変性シリコーンオイル等が挙げられる。
これらの中でも、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、ポリジメチルシロキサン、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、ポリジメチルシロキサンが好ましい。
これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0075】
トナー母粒子と外添剤との混合には、ヘンシェルミキサー等の混合機を用いることができる。
【0076】
トナー母粒子には、上述した小粒径シリカ粒子及び大粒径シリカ粒子に加えて、帯電粒子(帯電助剤)を添加してもよい。
なお、トナー母粒子の帯電極性と異なる帯電極性を有する帯電粒子を外添することが好ましく、トナー母粒子が正帯電性の場合には、負帯電性の帯電粒子を外添することが好ましく、トナー母粒子が負帯電性の場合には、正帯電性の帯電粒子を外添することが好ましい。
ここで、トナー母粒子が、上述したようなポリエステル系樹脂を結着樹脂として有するトナー母粒子である場合には、トナー母粒子が負帯電性であるので、正帯電性の帯電粒子を外添することが好ましい。
帯電粒子の個数平均一次粒径は、0.10μm以上1.50μm以下が好ましい。より好ましくは0.150μm以上1.00μm以下である。
このような帯電粒子を有すると、連続使用を通して転写効率が良好であるため、好ましい。当該粒径の帯電粒子であることで、トナー粒子表面で転がり可能であり、トナー帯電が促進され、結果的に転写バイアス印加による帯電の減少を抑制しているためと考えられる。
【0077】
正帯電性の帯電粒子としては、ハイドロタルサイト粒子、酸化チタン粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン-メラミン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂粒子等が例示される。この中でも特にメラミン-ホルムアルデヒド樹脂粒子が好ましい。
また、負帯電性の帯電粒子としては、ポリテトラフルオロエチレン粒子、トリフルオロエチレン粒子、ビニリデンフルオライド粒子、フルオロエチレン樹脂粒子等が例示される。
【0078】
トナー母粒子100質量部に対する帯電粒子の添加量は、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上、更に好ましくは0.03質量部以上であり、そして、好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以下である。
【0079】
≪静電荷像現像用トナー≫
上述のようにして得られた静電荷像現像用トナーは、一成分系現像剤として、又はキャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。これらの中でも、一成分系現像剤として好適であり、非磁性一成分現像剤としてより好適である。
【実施例0080】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。各性状値は、次の方法により、測定、評価した。
なお、「アルキレンオキシド(X)」等の表記において、かっこ内の数値Xは、アルキレンオキシドの平均付加モル数を意味する。
【0081】
[測定]
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070:1992に従って測定した。但し、測定溶媒をクロロホルムとした。
【0082】
〔樹脂の軟化点、結晶性指数、融点、ガラス転移温度〕
(1)軟化点
フローテスター「CFT-500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
【0083】
(2)結晶性指数
示差走査熱量計「Q100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで試料をそのまま1分間静止させ、その後、昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度(1)として、(軟化点(℃))/(吸熱の最大ピーク温度(1)(℃))により、結晶性指数を求めた。
【0084】
(3)融点及びガラス転移温度
示差走査熱量計「Q100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度(2)とした。結晶性樹脂の時には該ピーク温度を融点とした。
また、非晶性樹脂の場合にピークが観測されるときはそのピークの温度を、ピークが観測されずに段差が観測されるときは該段差部分の曲線の最大傾斜を示す接線と該段差の低温側のベースラインの延長線との交点の温度をガラス転移温度とした。
【0085】
〔付加重合体の重量平均分子量〕
N,N-ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲル浸透クロマトグラフィー法〔GPC装置「HLC-8320GPC」(東ソー株式会社製)、カラム「TSKgel SuperAWM-H」、「TSKgel SuperAW3000」、「TSKgel guardcolum Super AW-H」(東ソー株式会社製)、流速:0.5mL/min〕により、標準物質として分子量が既知の単分散ポリスチレンキット〔PStQuick B(F-550、F-80、F-10、F-1、A-1000)、PStQuick C(F-288、F-40、F-4、A-5000、A-500)、東ソー株式会社製〕を用いて測定した。
【0086】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「Q100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定し、吸熱の最大ピーク温度を融点とした。
【0087】
〔樹脂粒子、離型剤粒子、着色剤粒子の体積中位粒径D50及びCV値〕
(1)測定装置:レーザー回折型粒径測定機「LA-920」(株式会社堀場製作所製)
(2)測定条件:測定用セルに蒸留水を加え、吸光度を適正範囲になる濃度で体積中位粒径D50及び体積平均粒径を測定した。また、CV値(粒径分布の変動係数、%)は下記の式に従って算出した。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積平均粒径)×100
【0088】
〔樹脂粒子分散液、離型剤粒子分散液、着色剤粒子分散液の固形分濃度〕
赤外線水分計「FD-230」(株式会社ケツト科学研究所製)を用いて、測定試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5min/変動幅0.05%)にて、水分(質量%)を測定した。固形分濃度は下記の式に従って算出した。
固形分濃度(質量%)=100-水分(質量%)
【0089】
〔凝集粒子の体積中位粒径D50及びCV値〕
凝集粒子の体積中位粒径D50は以下の通り測定した。
・測定機:「コールターマルチサイザー(登録商標)III」(ベックマンコールター株式会社製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:「マルチサイザー(登録商標)IIIバージョン3.51」(ベックマンコールター株式会社製)
・電解液:「アイソトン(登録商標)II」(ベックマンコールター株式会社製)
・測定条件:試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径D50及び体積平均粒径を求めた。また、CV値(粒径分布の変動係数、%)は下記の式に従って算出した。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積平均粒径)×100
【0090】
〔融着粒子及びトナー母粒子の円形度〕
次の条件で、融着粒子及びトナー母粒子の円形度を測定した。
・測定装置:フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス株式会社製)
・分散液の調製:融着粒子又はトナー母粒子の分散液を固形分濃度が0.001~0.05質量%になるように脱イオン水で希釈して調製した。
・測定モード:HPF測定モード
【0091】
〔トナー粒子の体積中位粒径D50及びCV値〕
トナー粒子の体積中位粒径D50は以下の通り測定した。
測定機、アパチャー径、解析ソフト、電解液は、凝集粒子の体積中位粒径D50と同様のものを用いた。
・分散液:ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン(登録商標)109P」(花王株式会社製、HLB:13.6)を前記電解液に溶解させ、濃度5質量%の分散液を得た。
・分散条件:前記分散液5mLにトナー測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を作製した。
・測定条件:前記試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径D50及び体積平均粒径を求めた。
また、CV値(粒径分布の変動係数、%)は下記の式に従って算出した。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積平均粒径)×100
【0092】
〔外添剤の粒径〕
外添剤の粒径は、外添剤の粒子形状を完全球形とみなし、また、外添剤であるシリカ粒子の密度は2.2g/cmとし、比表面積から下記の式に従って算出した。
粒径(m)=6/(比表面積(m/g)×密度(g/m))
上記の式に用いた比表面積の値(m/g)は、比表面積測定装置でBET多点法を用いて得た。BET多点法では吸着気体(窒素)の平衡相対圧が0.05~0.30の範囲内で吸着量を3点以上測定し、比表面積を計算した。具体的には下記測定条件で分析を実施する。
・測定器:多検体高性能比表面積/細孔分布測定装置 3Flex-3MP(micromeritics社製)
・分散吸着質:窒素
・前処理:40℃、4時間以上
・平衡相対圧:0.05~0.30(0.05毎)
・平衡インターバル:10秒
【0093】
[評価方法]
〔カブリの試験条件〕
市販のプリンタ「COREFIDO C712dnw」(株式会社沖データ製)にトナーを実装し、上質紙「エクセレントホワイト紙A4サイズ」(株式会社沖データ製)に、温度25℃湿度50%環境(NN環境)下において、印字濃度0.3%の画像で2,000枚連続印刷を行った後、温度27℃湿度80%環境(HH環境)下に12時間静置させ、そのままHH環境で更に1,000枚連続印刷を行い、NN環境、HH環境下で合計3,000枚印刷した。カブリの測定は、印刷枚数が1枚目の時に測定し、続けて、500枚ごとに測定を行った。また、NN環境からHH環境に変えたときの1枚目の時についても測定を行った。
【0094】
〔カブリの測定〕
カブリは以下のように測定した。
まず、白紙印字を行い、その際、白紙印字の途中でプリンタを停止させた。プリンタより現像ユニットを取り出し、その感光体上に「Scotch(登録商標)メンディングテープ810」(スリーエムジャパン株式会社製、幅:18mm)を貼り付け、感光体上のトナーをテープ剥離した。
感光体上から剥離したテープと未使用のテープを、上質紙「エクセレントホワイト紙A4サイズ」(株式会社沖データ製)に貼り付け、感光体上から剥離したテープと未使用のテープをそれぞれ測色計「SpectroEye」(GretagMacbeth社製、光射条件;標準光源D50、観察視野2°、濃度基準DINNB、絶対白基準)にて測定した。感光体上から剥離したテープと未使用のテープの色差(ΔE)をカブリとした。カブリの値が小さいほど、カブリのない良好な画像である。結果を表5に示す。カブリの値については、印刷枚数が1枚目の時の測定値、NN環境、HH環境下で合計3,000枚になるまでの500枚ごとの測定値、加えて、NN環境からHH環境に変えた時の1枚目の測定値の平均値とした。
【0095】
〔搬送量の試験条件〕
市販のプリンタ「COREFIDO C712dnw」(株式会社沖データ製)にトナーを実装し、上質紙「エクセレントホワイト紙A4サイズ」(株式会社沖データ製)に、温度25℃湿度50%環境(NN環境)下において、印字濃度0.3%の画像で2,000枚連続印刷を行った後、温度27℃湿度80%環境(HH環境)下に12時間静置させ、そのままHH環境で更に1,000枚連続印刷を行い、NN環境、HH環境下で合計3,000枚印刷した。搬送量の測定は、印刷枚数が1枚目を測定した後、1,000枚ごとに測定を行った。また、NN環境からHH環境に環境を変えた際の1枚目も搬送量の測定を行った。
【0096】
〔搬送量の測定〕
まず、ベタ画像を印字し、A4の半分まで転写した時点でプリンタを停止させ、現像ローラー上の両端から3cmの部分及び現像ローラー上中央部分の3箇所に1cm×2cmの冶具をそれぞれ取り付け、Q/mメーター「210HS」(Trek社製)を用いて現像ローラー上のトナーを吸い取った。吸引したートナー量から吸引した面積で割ることにより現像ローラー上の単位面積当たりのトナー量を算出し、搬送量とした。搬送量の値については、0.20mg/cm以上あれば、印刷後の画像濃度を担保でき、加えて、0.30mg/cm以上では、現像ユニットの端部よりトナー漏れが発生するため、それ以下の搬送量が望ましい。また、印刷枚数及び印刷環境によらず搬送量が安定していることが望ましい。結果を表5に示す。搬送量の値については、印刷枚数が1枚目の時の測定値、NN環境、HH環境下で合計3,000枚になるまでの1,000枚ごとの測定値、加えて、NN環境からHH環境に変えた時の1枚目の測定値の平均値とした。搬送量が安定しているのか判断するため、標準偏差についても表5に記載する。
【0097】
[樹脂の製造]
〔非晶性樹脂の製造〕
製造例A1(樹脂A-1の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ビスフェノールAのプロピレンオキシド(2.2)付加物3356g、テレフタル酸955g、パラコール6490(日本精蝋製)385g、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)25g、及び3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸2.5gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、235℃に昇温し、235℃で5時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、160℃まで冷却し、160℃に保持した状態で、スチレン2198g、メタクリル酸ステアリル550g、アクリル酸110g、及びジブチルパーオキシド330gの混合物を1時間かけて滴下した。その後、30分間160℃に保持した後、200℃まで昇温し、更にフラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、190℃まで冷却し、フマル酸200g、セバシン酸194g、トリメリット酸無水物184g、及び4-tert-ブチルカテコール2.5gを加え、210℃まで10℃/hrで昇温し、その後、4kPaにて所望の軟化点まで反応を行って、樹脂A-1を得た。物性を表1に示す。
【0098】
製造例A2(樹脂B-1の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ビスフェノールAのエチレンオキシド(2.2)付加物3265g、テレフタル酸1334g、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)25g、及び3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸2.5gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、235℃に昇温し、235℃で6時間保持した後、更にフラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、180℃まで冷却し、アジピン酸73g、ドデセニルコハク酸無水物135g、トリメリット酸無水物193gを入れ、220℃まで10℃/hrで昇温し、その後、フラスコ内の圧力を下げ、10kPaにて所望の軟化点まで反応を行って、樹脂B-1を得た。物性を表1に示す。
【0099】
製造例A3(樹脂A-2の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ビスフェノールAのプロピレンオキシド(2.2)付加物3558g、ビスフェノールAのエチレンオキシド(2.2)付加物1416g、テレフタル酸1229g、ドデセニルコハク酸無水物1518g、及びジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)40gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、230℃に昇温し、230℃で6時間保持した後、更にフラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて1時間保持した。その後、215℃まで冷却し、大気圧に戻した後、トリメリット酸無水物279gを入れ、215℃で1時間保持した後、更にフラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて3時間保持させて、樹脂A-2を得た。物性を表1に示す。
【0100】
製造例A4(樹脂D-1の製造)
原料組成を表1に示すように変更した以外は製造例A1と同様にして、樹脂D-1を得た。物性を表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
〔結晶性ポリエステル樹脂の製造〕
製造例C1(樹脂C-1の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、1,10-デカンジオール3416g及びセバシン酸4084gを入れ、撹拌しながら、135℃に昇温し、135℃で3時間保持した後、135℃から200℃まで10時間かけて昇温した。その後、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)23gを加え、更に200℃にて1時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaの減圧下にて1時間保持し、樹脂C-1を得た。物性を表2に示す。
【0103】
【表2】
【0104】
[樹脂粒子分散液の製造]
製造例X1(樹脂粒子分散液X-1の製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた内容積3Lの容器に、樹脂A-1を210g、樹脂C-1を90g、及びメチルエチルケトン360gを入れ、73℃にて2時間かけて樹脂を溶解させた。得られた溶液に、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を、樹脂の酸価に対して中和度60mol%になるように添加して、30分撹拌した。
次いで、73℃に保持したまま、280r/min(周速度88m/min)で撹拌しながら、脱イオン水600gを60分かけて添加し、転相乳化した。継続して73℃に保持したまま、メチルエチルケトンを減圧下で留去し水系分散体を得た。その後、280r/min(周速度88m/min)で撹拌を行いながら水系分散体を30℃に冷却した後、固形分濃度が20質量%になるように脱イオン水を加えることにより、樹脂粒子分散液X-1を得た。得られた樹脂粒子の体積中位粒径D50及びCV値を表3に示す。
【0105】
製造例X2(樹脂粒子分散液X-2の製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた内容積3Lの容器に、樹脂A-2を300g、メチルエチルケトン360g、及び脱イオン水59gを入れ、73℃にて2時間かけて樹脂を溶解させた。得られた溶液に、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を、樹脂の酸価に対して中和度60モル%になるように添加して、30分撹拌した。
次いで、73℃に保持したまま、280r/min(周速度88m/min)で撹拌しながら、脱イオン水600gを60分かけて添加し、転相乳化した。継続して73℃に保持したまま、メチルエチルケトンを減圧下で留去し水系分散液を得た。その後、280r/min(周速度63m/min)で撹拌を行いながら水系分散液を30℃に冷却した後、固形分濃度が20質量%になるように脱イオン水を加えることにより、樹脂粒子分散液X-2を得た。得られた樹脂粒子の体積中位粒径D50及びCV値を表3に示す。
【0106】
製造例Y1(樹脂粒子分散液Y-1の製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた内容積3Lの容器に、樹脂B-1を300g、及びメチルエチルケトン360gを入れ、40℃にて2時間かけて樹脂を溶解させた。得られた溶液に、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を、樹脂の酸価に対して中和度60モル%になるように添加して、30分撹拌した。
次いで、40℃に保持したまま、280r/min(周速度88m/min)で撹拌しながら、脱イオン水600gを60分かけて添加し、転相乳化した。73℃まで昇温し、メチルエチルケトンを減圧下で留去し水系分散体を得た。その後、280r/min(周速度88m/min)で撹拌を行いながら水系分散体を30℃に冷却した後、固形分濃度が20質量%になるように脱イオン水を加えることにより、樹脂粒子分散液Y-1を得た。得られた樹脂粒子の体積中位粒径D50及びCV値を表3に示す。
【0107】
製造例Z1(樹脂粒子分散液Z-1の製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた内容積3Lの容器に、樹脂D-1を200g及びメチルエチルケトン200gを入れ、73℃にて2時間かけて樹脂を溶解させた。得られた溶液に、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を、樹脂D-1の酸価に対して中和度60モル%になるように添加して、30分撹拌した。
次いで、73℃に保持したまま、280r/min(周速度88m/min)で撹拌しながら、脱イオン水700gを50分かけて添加し、転相乳化した。継続して73℃に保持したまま、メチルエチルケトンを減圧下で留去し水系分散液体を得た。その後、280r/min(周速度88m/min)で撹拌を行いながら水系分散液体を30℃に冷却した後、固形分濃度が20質量%になるように脱イオン水を加えることにより、樹脂粒子分散液Z-1を得た。得られた樹脂粒子の体積中位粒径D50は0.09μm、CV値は23%であった。
【0108】
【表3】
【0109】
[離型剤粒子分散液の製造]
製造例W1(離型剤粒子分散液W-1の製造)
内容積1Lのビーカーに、脱イオン水120g、樹脂粒子分散液Z-1 86g、及びパラフィンワックス「HNP-9」(日本精蝋株式会社製、融点75℃)40gを添加し、90~95℃に温度を保持して溶融させ、撹拌し、溶融混合物を得た。
得られた溶融混合物を更に90~95℃に温度を保持しながら、超音波ホモジナイザー「US-600T」(株式会社日本精機製作所製)を用いて、20分間分散処理した後に室温(20℃)まで冷却した。脱イオン水を加え、固形分濃度を20質量%に調整し、離型剤粒子分散液W-1を得た。分散液中の離型剤粒子の体積中位粒径D50は0.47μm、CV値は27%であった。
【0110】
製造例W2(離型剤粒子分散液W-2の製造)
使用する離型剤種をフィッシャートロプシュワックス「FNP-0090」(日本精蝋株式会社製、融点90℃)に変更した以外は、製造例W1と同様にして離型剤粒子分散液W-2を得た。分散液中の離型剤粒子の体積中位粒径D50は0.45μm、CV値は28%であった。
【0111】
[付加重合体の製造]
製造例E1(付加重合体E-1の合成)
メタクリル酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)16質量部、スチレン(富士フイルム和光純薬株式会社製)44質量部、スチレンマクロモノマー「AS-6S」(東亞合成株式会社製、数平均分子量6,000、固形分50%)30質量部(固形分として15質量部)、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート「ブレンマーPME-200」(日油株式会社)25質量部を混合し、モノマー混合液115質量部を調製した。
反応容器内に、メチルエチルケトン18質量部及び連鎖移動剤である2-メルカプトエタノール0.03質量部、及び前記モノマー混合液の10%(11.5質量部)を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行った。
一方、モノマー混合液の残りの90%(103.5質量部)と前記連鎖移動剤0.27質量部、メチルエチルケトン42質量部及び重合開始剤2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)「V-65」(富士フイルム和光純薬株式会社製)3質量部を混合した混合液を滴下ロートに入れ、窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を撹拌しながら75℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了から75℃で2時間経過後、前記重合開始剤3質量部をメチルエチルケトン5質量部に溶解した溶液を加え、更に75℃で2時間、80℃で2時間熟成させた。その後、減圧乾燥下にてメチルエチルケトンを留去して、付加重合体E-1を得た。得られた付加重合体の重量平均分子量を表4に示す。
【0112】
【表4】
【0113】
[着色剤粒子分散液の製造]
製造例F1(着色剤粒子分散液F-1の製造)
ディスパー翼を備えた撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた内容積5Lの容器に、付加重合体E-1 75gをメチルエチルケトン620gに溶解させた後、中和剤として5質量%の水酸化ナトリウム水溶液96g、脱イオン水を942g添加し、ディスパー翼で20℃にて10分撹拌した。その後、銅フタロシアニン顔料「ECB-301」(大日精化工業株式会社製、ピグメントブルー15:3)300gを加え、ディスパー翼で6400rpmにて20℃にて2時間撹拌を行った。その後、200メッシュのフィルターを通し、ホモジナイザー「Microfluidizer M-110EH」(Microfluidics社製)を用いて150MPaの圧力で15パス処理した。得られた分散液を撹拌しながら、減圧下70℃でメチルエチルケトンと一部の水を除去した。その後200メッシュのフィルターを通し、固形分濃度が20質量%になるように脱イオン水を加えることにより着色剤粒子分散液F-1を得た。分散液中の着色剤粒子の体積中位粒径D50は0.12μm、CV値は21%であった。
【0114】
[トナーの製造]
製造例1(トナー母粒子1の作製)
脱水管、撹拌装置及び熱電対を装備した内容積3Lの4つ口フラスコに、樹脂粒子分散液X-1を500g、離型剤粒子分散液W-1を35g、離型剤粒子分散液W-2を35g、着色剤粒子分散液F-1を63g、ポリオキシエチレン(50)ラウリルエーテル「エマルゲン150」(花王株式会社製、非イオン性界面活性剤)の10質量%水溶液を10g、及び15質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液「ネオペレックスG-15」(花王株式会社製、アニオン性界面活性剤)を10g、温度25℃で混合した。次に、当該混合物を撹拌しながら、硫酸アンモニウム35gを脱イオン水519gに溶解した水溶液に、4.8質量%水酸化カリウム水溶液26gを添加した溶液を、25℃で10分かけて滴下した後、65℃まで2時間かけて昇温し、凝集粒子の体積中位粒径D50が5.9μmになるまで、65℃で保持し、凝集粒子1の分散液を得た。
続いて、凝集粒子1の分散液を59℃に冷却し、59℃で保持しながら、樹脂粒子分散液Y-1 75gを90分かけて添加し、凝集粒子1に樹脂粒子が凝集した凝集粒子2の分散液を得た。
得られた凝集粒子2の分散液に、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム「エマールE-27C」(花王株式会社製、アニオン性界面活性剤、有効濃度27質量%)41g、脱イオン水1396g、及び0.1mol/Lの硫酸水溶液26gを混合した水溶液を添加した。その後、75℃まで1時間かけて昇温し、75℃で30分保持した後、0.1mol/Lの硫酸水溶液75gを添加し、更に75℃で15分保持した。その後、再度0.1mol/Lの硫酸水溶液25gを添加し、円形度が0.970になるまで75℃で保持することにより、凝集粒子が融着した融着粒子の分散液を得た。
得られた融着粒子の分散液を30℃に冷却し、吸引濾過して固形分を分離した後、25℃の脱イオン水で洗浄し、30℃で48時間真空乾燥を行って、トナー母粒子1を得た。得られたトナー母粒子1の物性を表5に示す。
【0115】
製造例2、3(トナー母粒子2、3の作製)
融着工程時の円形度が表5に示すように変更した以外は、製造例1と同様にしてトナー母粒子2、3を作製した。得られたトナー母粒子2、3の物性を表5に示す。
【0116】
製造例4(トナー母粒子4の作製)
脱水管、撹拌装置及び熱電対を装備した内容積3Lの4つ口フラスコに、樹脂粒子分散液X-2を500g、離型剤粒子分散液W-1を84g、着色剤粒子分散液F-1を72g、ポリオキシエチレン(50)ラウリルエーテル「エマルゲン150」(花王株式会社製、非イオン性界面活性剤)の10質量%水溶液15g、及び15質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液「ネオペレックスG-15」(花王株式会社製、アニオン性界面活性剤)17gを温度25℃で混合した。次に、当該混合物を撹拌しながら、硫酸アンモニウム40gを脱イオン水568gに溶解した水溶液に4.8質量%水酸化カリウム水溶液を添加してpH8.6に調整した溶液を、25℃で10分かけて滴下した後、63℃まで2時間かけて昇温し、凝集粒子の体積中位粒径D50が5.9μmになるまで、63℃で保持し、凝集粒子3の分散液を得た。
続いて、凝集粒子3の分散液を59℃に冷却し、59℃で保持しながら、樹脂粒子分散液Y-1 75gを90分かけて添加し、凝集粒子3に樹脂粒子が凝集した凝集粒子4の分散液を得た。
得られた凝集粒子4の分散液に、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム「エマールE-27C」(花王株式会社製、アニオン性界面活性剤、有効濃度27質量%)48g、脱イオン水600g、及び0.1mol/Lの硫酸水溶液50gを混合した水溶液を添加した。その後、75℃まで1時間かけて昇温し、75℃で30分保持した後、0.1mol/Lの硫酸水溶液10gを添加し、更に75℃で15分保持した。その後、再度0.1mol/Lの硫酸水溶液10gを添加し、円形度が0.970になるまで75℃で保持することにより、凝集粒子が融着した融着粒子の分散液を得た。
得られた融着粒子の分散液を30℃に冷却し、吸引濾過して固形分を分離した後、25℃の脱イオン水で洗浄し、30℃で48時間真空乾燥を行って、トナー母粒子4を得た。得られたトナー母粒子4の物性を表5に示す。
【0117】
実施例1(トナー1の作製)
トナー母粒子1を100質量部に対して、疎水性大粒径シリカ「RY50」(日本アエロジル株式会社製、疎水化処理剤:ポリジメチルシロキサン、比表面積から換算される粒径;119nm)6.4質量部、及び疎水性小粒径シリカ「R972」(日本アエロジル株式会社製、疎水化処理剤:ジメチルジクロロシラン、比表面積から換算される粒径;25nm)0.5質量部をヘンシェルミキサーに入れて撹拌し、150メッシュの篩を通過させてトナー1を得た。得られたトナー1の評価結果を表5に示す。
【0118】
実施例2~5、8、10、11(トナー2~5、8、10、11の作製)
使用する外添剤の種類及び添加量を表5に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー2~5を作製した。得られたトナーの評価結果を表5に示す。
【0119】
実施例6(トナー6の作製)
トナー母粒子2を100質量部に対して、疎水性大粒径シリカ「RY50」(日本アエロジル株式会社製、疎水化処理剤:ポリジメチルシロキサン、比表面積から換算される粒径;119nm)6.4質量部、及び疎水性小粒径シリカ「R972」(日本アエロジル株式会社製、疎水化処理剤:ジメチルジクロロシラン、比表面積から換算される粒径;25nm)0.5質量部をヘンシェルミキサーに入れて撹拌し、150メッシュの篩を通過させてトナー6を得た。得られたトナー6の評価結果を表5に示す。
【0120】
実施例7(トナー7の作製)
トナー母粒子3を100質量部に対して、疎水性大粒径シリカ「RY50」(日本アエロジル株式会社製、疎水化処理剤:ポリジメチルシロキサン、比表面積から換算される粒径;119nm)6.4質量部、及び疎水性小粒径シリカ「R972」(日本アエロジル株式会社製、疎水化処理剤:ジメチルジクロロシラン、比表面積から換算される粒径;25nm)0.5質量部をヘンシェルミキサーに入れて撹拌し、150メッシュの篩を通過させてトナー7を得た。得られたトナー7の評価結果を表5に示す。
【0121】
実施例9(トナー9の作製)
トナー母粒子4を100質量部に対して、疎水性大粒径シリカ「RY50」(日本アエロジル株式会社製、疎水化処理剤:ポリジメチルシロキサン、比表面積から換算される粒径;119nm)6.4質量部、及び疎水性小粒径シリカ「R972」(日本アエロジル株式会社製、疎水化処理剤:ジメチルジクロロシラン、比表面積から換算される粒径;25nm)0.5質量部をヘンシェルミキサーに入れて撹拌し、150メッシュの篩を通過させてトナー9を得た。得られたトナー9の評価結果を表5に示す。
【0122】
比較例1、2(トナー14、15の作製)
使用する外添剤の種類及び添加量を表5に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー14、15を作製した。得られたトナーの評価結果を表5に示す。
【0123】
【表5】
【0124】
実施例及び比較例の結果から、本発明の静電荷像現像用トナーを使用することにより、カブリの発生が抑制され、更に、得られる画像の画像濃度の安定性が高いことが分かる。
帯電粒子を有する実施例8では、よりカブリが抑制されていた。
大粒径シリカ粒子と小粒径シリカ粒子との添加率の質量比が7未満である比較例1では、カブリが発生し、また、搬送量が低下していた。また、前記添加率の質量比が18を超える比較例2では、トナー漏れが生じた。