(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169301
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】工作機械の精度診断装置及び精度診断方法、精度調整予約システム
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/00 20060101AFI20221101BHJP
G05B 19/18 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
B23Q17/00 A
G05B19/18 W
B23Q17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075250
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】溝口 祐司
【テーマコード(参考)】
3C029
3C269
【Fターム(参考)】
3C029EE02
3C269AB01
3C269BB12
3C269KK04
3C269MN07
3C269MN26
3C269MN27
3C269MN28
(57)【要約】
【課題】工作機械の精度調整が必要な時期を予測して予め提示することができる技術を提供する。
【解決手段】精度診断装置1は、工作機械の温度3及び傾き量4を変化量データ6として検出する変化量検出部2と、変化量データ6を記録する変化量記録部5と、変化量記録部5に記録された変化量データ6を用いて、将来の工作機械の精度変化を予測する精度変化予測部7と、精度変化予測部7によって予測された精度変化に基づいて、工作機械の精度調整タイミング14を提示する精度調整タイミング提示部13とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械及び/又は前記工作機械の周囲環境の状態の変化の大きさを変化量として検出する変化量検出部と、
前記変化量を記録する変化量記録部と、
前記変化量記録部に記録された変化量を用いて、将来の前記工作機械の精度変化を予測する精度変化予測部と、
前記精度変化予測部によって予測された精度変化に基づいて、前記工作機械の精度調整が必要なタイミングを提示する精度調整タイミング提示部と、
を備えることを特徴とする工作機械の精度診断装置。
【請求項2】
前記精度変化予測部は、前記変化量により変化する変化量依存成分と、経過時間により変化する経過時間依存成分とを含んでなる精度変化予測式を用いて、将来の前記工作機械の精度変化を予測することを特徴とする請求項1に記載の工作機械の精度診断装置。
【請求項3】
前記精度変化予測式は、周期関数を含む式として表されることを特徴とする請求項2に記載の工作機械の精度診断装置。
【請求項4】
前記精度変化予測式は、経過時間が増加するにつれて予測される精度変化の大きさが増加する関数を含む式として表されることを特徴とする請求項2又は3に記載の工作機械の精度診断装置。
【請求項5】
前記工作機械の精度を実測して得られた機械精度を測定日時とともに記録する精度記録部と、
前記精度記録部に記録された前記機械精度と前記測定日時と、前記変化量記録部に記録された前記変化量とに基づいて精度変化予測式を決定する精度変化予測式決定部とをさらに備え、
前記精度変化予測部は、前記精度変化予測式決定部で決定された前記精度変化予測式を用いて、将来の前記工作機械の精度変化を予測することを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載の工作機械の精度診断装置。
【請求項6】
前記変化量は、前記工作機械及び/又は前記周囲環境の温度であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の工作機械の精度診断装置。
【請求項7】
前記変化量は、前記工作機械の傾き量であることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の工作機械の精度診断装置。
【請求項8】
通信回線により接続された情報端末とデータの通信が可能なデータ通信部をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の工作機械の精度診断装置。
【請求項9】
前記精度調整タイミング提示部にて提示された精度調整タイミングに基づいて精度調整希望日時を決定可能な精度調整希望日時決定部をさらに備え、
前記精度調整希望日時決定部で決定された精度調整希望日時は、前記データ通信部によって前記情報端末に送信可能であることを特徴とする請求項8に記載の工作機械の精度診断装置。
【請求項10】
前記データ通信部は、前記情報端末から精度調整実施可能日時を取得可能であり、
前記精度調整タイミング提示部にて提示された精度調整タイミングと、取得した前記精度調整実施可能日時とに基づいて、精度調整実施日時を決定する精度調整実施日時決定部をさらに備え、
前記精度調整実施日時決定部で決定された精度調整実施日時は、前記データ通信部によって前記情報端末に送信可能であることを特徴とする請求項8に記載の工作機械の精度診断装置。
【請求項11】
工作機械及び/又は前記工作機械の周囲環境の状態の変化の大きさを変化量として検出する変化量検出ステップと、
前記変化量を記録する変化量記録ステップと、
前記変化量記録ステップで記録された変化量を用いて、将来の前記工作機械の精度変化を予測する精度変化予測ステップと、
前記精度変化予測ステップで予測された精度変化に基づいて、前記工作機械の精度調整が必要なタイミングを提示する精度調整タイミング提示ステップと、
を実行することを特徴とする工作機械の精度診断方法。
【請求項12】
請求項8に記載の工作機械の精度診断装置と、
通信回線に接続された情報端末と、
前記精度診断装置及び前記情報端末と通信回線により接続され、前記精度診断装置の前記精度調整タイミング提示部により提示された精度調整タイミングと、前記情報端末から取得した精度調整実施可能日時とに基づいて精度調整実施日時を決定し予約する精度調整予約システムサーバと、
を備えることを特徴とする工作機械の精度調整予約システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工作機械の精度調整を実施する適切なタイミングを予め決定する精度診断装置及び精度診断方法と、精度診断装置で決定されたタイミングで精度調整実施日時を予約するシステムとに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械は、工場の温度変化、機械要素の摩耗、床の変形などさまざまな要因で長期的に精度が変化していく。加工精度の低下を防ぐため、定期的に精度を測定し調整することが行われている。
工作機械の精度調整を実施する従来技術として、レーザ測長器を用いる方法がある。例えば反射ターゲットを移動テーブルに、レーザ干渉測長器を主軸側に取り付けて、送り軸を動作させながら様々な位置での誤差を計測する(特許文献1参照)。この測定結果をもとに様々な位置での誤差が小さくなるように補正量を決定する。工作機械を使用する際には、決定した補正量に基づいて軸の位置を補正することで、工作機械の精度調整を行う。他には、工作機械のテーブル上に水準器を設置し、水平が出るように工作機械の基礎ボルトの高さを調整するレベル調整も広く行われている。
また、工作機械の精度状態を診断する技術として、温度情報をもとに工作機械の精度変化が大きくなる状況かどうか診断する技術もある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-85704号公報
【特許文献2】特開2019-136846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のような工作機械の精度を測定して調整する方法は、特に大型の工作機械では測定に時間がかかる。そのため、生産に使用している機械で行うには予め測定を実施する日時を計画しておく必要がある。また測定器が高価である、取り扱いが難しいなどの理由により、機械の使用者が自身で精度調整を行うのではなく、精度調整を実施する担当者に依頼する場合も多いと考えられる。特にその場合はいつ精度調整を行うかを計画し、予め依頼して日程を調整する必要がある。
精度調整のタイミングを知る方法としては、特許文献2の診断技術を用いて、精度の変化が大きいと診断された場合に精度調整を行うことが考えられる。しかし、特許文献2の診断技術では、現在の精度状態を診断することはできるが、将来の精度調整が必要な時期を予測することはできない。
【0005】
そこで、本開示は、工作機械の精度調整が必要な時期を予測して予め提示することができる技術を提供することを目的としている。
さらに本開示は、精度調整が必要な時期の予測をもとに、簡単に精度調整を依頼できるシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の第1は、工作機械の精度診断装置であって、工作機械及び/又は前記工作機械の周囲環境の状態の変化の大きさを変化量として検出する変化量検出部と、
前記変化量を記録する変化量記録部と、
前記変化量記録部に記録された変化量を用いて、将来の前記工作機械の精度変化を予測する精度変化予測部と、
前記精度変化予測部によって予測された精度変化に基づいて、前記工作機械の精度調整が必要なタイミングを提示する精度調整タイミング提示部と、を備えることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記精度変化予測部は、前記変化量により変化する変化量依存成分と、経過時間により変化する経過時間依存成分とを含んでなる精度変化予測式を用いて、将来の前記工作機械の精度変化を予測することを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記精度変化予測式は、周期関数を含む式として表されることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記精度変化予測式は、経過時間が増加するにつれて予測される精度変化の大きさが増加する関数を含む式として表されることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記工作機械の精度を実測して得られた機械精度を測定日時とともに記録する精度記録部と、
前記精度記録部に記録された前記機械精度と前記測定日時と、前記変化量記録部に記録された前記変化量とに基づいて精度変化予測式を決定する精度変化予測式決定部とをさらに備え、
前記精度変化予測部は、前記精度変化予測式決定部で決定された前記精度変化予測式を用いて、将来の前記工作機械の精度変化を予測することを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記変化量は、前記工作機械及び/又は前記周囲環境の温度であることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記変化量は、前記工作機械の傾き量であることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、通信回線により接続された情報端末とデータの通信が可能なデータ通信部をさらに備えることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記精度調整タイミング提示部にて提示された精度調整タイミングに基づいて精度調整希望日時を決定可能な精度調整希望日時決定部をさらに備え、
前記精度調整希望日時決定部で決定された精度調整希望日時は、前記データ通信部によって前記情報端末に送信可能であることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記データ通信部は、前記情報端末から精度調整実施可能日時を取得可能であり、
前記精度調整タイミング提示部にて提示された精度調整タイミングと、取得した前記精度調整実施可能日時とに基づいて、精度調整実施日時を決定する精度調整実施日時決定部をさらに備え、
前記精度調整実施日時決定部で決定された精度調整実施日時は、前記データ通信部によって前記情報端末に送信可能であることを特徴とする。
上記目的を達成するために、本開示の第2は、工作機械の精度診断方法であって、
工作機械及び/又は前記工作機械の周囲環境の状態の変化の大きさを変化量として検出する変化量検出ステップと、
前記変化量を記録する変化量記録ステップと、
前記変化量記録ステップで記録された変化量を用いて、将来の前記工作機械の精度変化を予測する精度変化予測ステップと、
前記精度変化予測ステップで予測された精度変化に基づいて、前記工作機械の精度調整が必要なタイミングを提示する精度調整タイミング提示ステップと、を実行することを特徴とする。
上記目的を達成するために、本開示の第3は、工作機械の精度調整予約システムであって、
上記精度診断装置と、
通信回線に接続された情報端末と、
前記精度診断装置及び前記情報端末と通信回線により接続され、前記精度診断装置の前記精度調整タイミング提示部により提示された精度調整タイミングと、前記情報端末から取得した精度調整実施可能日時とに基づいて精度調整実施日時を決定し予約する精度調整予約システムサーバと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、工作機械又は周囲環境の状態の変化の大きさを検出し、それに基づいて工作機械の将来の精度変化を予測して精度調整が必要な時期を提示することにより、工作機械の使用者は予め工作機械の精度を維持するための精度調整の計画を立てることができる。
特に、工作機械や情報端末をつないだサーバを設けることで、複数の工作機械の精度調整に対応可能な工作機械の精度調整予約システムを構築することができる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、変化量により変化する変化量依存成分と、経過時間により変化する経過時間依存成分からなる精度変化予測式を用いることにより、検出可能な要因だけでなく、検出不可能な要因による精度変化が生じる場合においても、適切な頻度で精度調整の必要な時期を提示することができる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、精度変化予測式は周期関数を含む式として表されるため、例えば1年周期の変化として精度変化を予測し、精度調整が必要な時期を提示することができる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、精度変化予測式は経過時間が大きくなるにつれて予測される精度変化が大きくなる関数を含む式として表されるため、検出不可能な要因による精度変化が生じる場合においても、適切な頻度で精度調整の必要な時期を提示することができる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、測定された工作機械の機械精度を変化量や日時とともに記録し、これらのデータをもとに精度変化予測式を決定することにより、精度変化の予測精度を高めることができる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、変化量として温度を検出することにより、温度変化が原因で生じる精度変化を予測することができる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、変化量として傾きを検出することにより、傾きの変化が原因で生じる精度変化を予測することができる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、通信回線により接続された情報端末とデータの通信を行うデータ通信部を備えることにより、容易に外部と情報を共有することができる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、提示された精度調整タイミングをもとに精度調整希望日時を決定して、通信回線により送信することにより、簡単に精度調整の実施者に精度調整を依頼することができる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、さらに通信回線を介して取得した精度調整実施可能日時に基づいて、精度調整実施日時を決定することにより、確実に精度調整を実施可能な日を実施日として決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】精度調整希望日時を決定して送信する精度診断装置の構成図である。
【
図2】精度調整実施可能日時を取得して、精度調整実施日時を決定して送信する精度診断装置の構成図である。
【
図3】精度調整予約システムサーバにおいて精度調整実施日時を決定して送信する精度調整予約システムの構成図である。
【
図4】精度調整タイミングの決定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本開示の精度診断装置の構成の一例を表した図である。
精度診断装置1は、後述する精度診断方法により工作機械の精度変化を診断し、精度調整のタイミングを提示する。本開示で診断する工作機械の精度変化としては、工作機械の各直進軸や各回転軸の位置決め精度、真直度、直角度、主軸や回転軸の振れ、テーブルの平面度、空間誤差など任意の精度変化の指標を対象とすることができる。単一の指標ではなく、以上のうち複数の指標を組み合わせて用いてもよい。
まず、変化量検出部2では、工作機械に取り付けられた各種センサにより、工作機械又は周囲環境の状態の変化の大きさを変化量として検出する(変化量検出ステップ)。この実施例では、状態の変化として、温度センサにより温度3、傾斜センサにより傾き量4をそれぞれ検出する。
次に、変化量記録部5では、検出した変化量を時刻とともに変化量データ6として記録していく(変化量記録ステップ)。
【0010】
そして、精度変化予測部7では、予め設定された精度変化予測式8により、精度変化を予測する(精度変化予測ステップ)。例えば、精度変化予測式8は、以下の式1のように表される。
【0011】
【0012】
式1は、変化量θにより変化する変化量依存成分を関数fで求め、経過時間t-t0により変化する経過時間依存成分を関数gで求め、それぞれを足し合わせることにより、精度変化ΔXを求めている。
変化量依存成分は、変化量データ6に基づいて精度変化を予測する。一方、経過時間依存成分を表す関数gは、時間が多く経過するにつれて予測される精度変化が大きくなるような関数として設定される。これにより、検出された変化量以外の要因で精度変化した場合にもある程度時間が経過したら精度調整が必要であると診断されることになるため、精度を維持することができるようになる。ただし、経過時間依存成分を使用せず、変化量依存成分のみで精度変化ΔXを求めてもよい。
また、式1では、精度変化を予測したい時点での変化量は時間の関数θ(t)で求める。例えば1年周期で変わると予想される場合、関数θ(t)は、以下の式2のような周期関数として表される。
【0013】
【0014】
関数θ(t)は、式2のように数式で表してもよいし、日時と変化量の数値の関係を対応させた点群として表してもよい。また周期は1年周期でなく、例えば1週間周期など他の期間でもよい。関数θ(t)は、過去の変化量のデータからフィッティングするなどして予め決定しておく。
さらに、精度変化予測式8の予測精度を高める方法として、実際の機械精度変化の情報を用いて学習させる方法が考えられる。そのためには精度記録部9に、測定された機械精度10及び測定日時11を記録していく。これと、測定日時における変化量データ6を用い、精度変化予測式決定部12にて精度変化予測式8を決定する。例えば、最小二乗法を用いて以下の式3の値が最小となるように、関数fと関数gを決定する。
但し、式3の最小二乗法ではなく、公知のパラメータ同定方法や機械学習の方法を用いて精度変化予測式8を決定してもよい。
【0015】
【0016】
次に、精度調整タイミング提示部13では、精度変化予測部7で予測された精度変化に基づいて、精度調整が必要となる時期を予測し、精度調整タイミング14を決定して提示する(精度調整タイミング提示ステップ)。例えば
図4のように精度変化ΔX(t-t
0)が予測されたとする。このとき、基準時点t
0からの精度変化ΔX(t-t
0)の絶対値が許容値±ΔX
maxを上回る時点、すなわち
図4の斜線領域を外れる時点を精度調整タイミングt
Mとして提示する。精度調整タイミング14の提示は、図示しない表示部に表示する、又はメール等により情報を転送することにより行う。許容値±ΔX
maxの値は、表示部の画面等から工作機械の使用者が設定できるようにしても良い。また、精度調整タイミング14は、単一の時点ではなく、期間として表してもよい。
最後に、精度調整希望日時決定部15Aでは、精度調整タイミング14に基づいて精度調整希望日時16Aを決定する。精度調整希望日時16Aを決定する方法は、アルゴリズムにより精度調整タイミング14の日付に近い日付を自動的に決定するようにしても良いし、表示部の画面に精度調整タイミング14を表示し、精度診断装置1の使用者がそれを参考にして都合の良い日を入力するようにしてもよい。精度調整希望日時16Aを決定したら、データ通信部17により、外部の情報端末に送信する。
図1では、精度調整実施者の情報端末(以下単に「情報端末」という。)18に送信している。これにより簡単に精度調整希望日時を連絡することができる。送信する外部の情報端末をサーバとして、サーバに送られた情報を精度調整実施者が確認するようにしても良い。
【0017】
上記形態の精度診断装置1は、工作機械の温度3及び傾き量4(状態の変化の大きさ)を変化量データ6(変化量)として検出する変化量検出部2と、変化量データ6を記録する変化量記録部5と、変化量記録部5に記録された変化量データ6を用いて、将来の工作機械の精度変化を予測する精度変化予測部7と、精度変化予測部7によって予測された精度変化に基づいて、工作機械の精度調整タイミング14(精度調整が必要なタイミング)を提示する精度調整タイミング提示部13とを備えて上記各ステップによる精度診断方法を実行する。
このように、工作機械の状態の変化の大きさを検出し、それに基づいて工作機械の将来の精度変化を予測して精度調整が必要な時期を提示することにより、工作機械の使用者は、予め工作機械の精度を維持するための精度調整の計画を立てることができる。
【0018】
特に、精度変化予測部7は、変化量データ6により変化する変化量依存成分と、経過時間により変化する経過時間依存成分とを含んでなる精度変化予測式8を用いて、将来の工作機械の精度変化を予測する。よって、検出可能な要因だけでなく、検出不可能な要因による精度変化が生じる場合においても、適切な頻度で精度調整の必要な時期を提示することができる。
精度変化予測式8は、周期関数を含む式として表される。よって、例えば1年周期の変化として精度変化を予測し、精度調整が必要な時期を提示することができる。
精度変化予測式8は、経過時間が増加するにつれて予測される精度変化の大きさが増加する関数gを含む(式1)として表される。よって、検出不可能な要因による精度変化が生じる場合においても、適切な頻度で精度調整の必要な時期を提示することができる。
【0019】
工作機械の精度を実測して得られた機械精度10を測定日時11とともに記録する精度記録部9と、精度記録部9に記録された機械精度10と測定日時11と変化量記録部5に記録された変化量データ6とに基づいて精度変化予測式8を決定する精度変化予測式決定部12とをさらに備え、精度変化予測部7は、精度変化予測式決定部12で決定された精度変化予測式8を用いて、将来の工作機械の精度変化を予測する。
よって、測定された工作機械の機械精度10を変化量データ6や測定日時11とともに記録し、これらのデータをもとに精度変化予測式8を決定することにより、精度変化の予測精度を高めることができる。
変化量データ6は、工作機械の温度3である。よって、温度変化が原因で生じる精度変化を予測することができる。
変化量データ6は、工作機械の傾き量4である。よって、傾きの変化が原因で生じる精度変化を予測することができる。
【0020】
通信回線により接続された情報端末18とデータの通信が可能なデータ通信部17をさらに備える。よって、容易に外部と情報を共有することができる。
精度調整タイミング提示部13にて提示された精度調整タイミング14に基づいて精度調整希望日時16Aを決定可能な精度調整希望日時決定部15Aをさらに備え、精度調整希望日時決定部15Aで決定された精度調整希望日時16Aは、データ通信部17によって情報端末18に送信可能である。
よって、簡単に精度調整の実施者に精度調整を依頼することができる。
【0021】
以下、本開示の変更例を説明する。
外部との通信の別の例として
図2を示す。
図2は、精度調整実施可能日時を外部から取得して、精度調整タイミング14と精度調整実施可能日時とに基づいて精度調整実施日時を決定して送信する場合の構成図である。
符号1~14については
図1と同じ構成であり、精度調整タイミング14を決定する。
図2では
図1と異なり、情報端末18から、精度調整実施可能日時19をデータ通信部17を介して取得する。精度調整実施日時決定部15Bでは、精度調整タイミング14と、精度調整実施可能日時19とに基づいて、精度調整実施日時16Bを決定する。精度調整実施日時16Bを決定する方法は、アルゴリズムにより精度調整実施可能日時19の中から精度調整タイミング14の日付に近い日付を自動的に決定するようにしても良いし、
図5に示すような表示部の画面に精度調整タイミングと精度調整実施可能日時とを表示し、精度診断装置1の使用者がそれを参考にして都合の良い日を入力するようにしてもよい。
図5の表示内容については後に説明する。精度調整実施日時16Bを決定したら、データ通信部17により、情報端末18に送信する。これにより精度調整実施の予約が確定する。
【0022】
このように、データ通信部17は、情報端末18から精度調整実施可能日時19を取得可能であり、精度調整タイミング提示部13にて提示された精度調整タイミング14と、取得した精度調整実施可能日時19とに基づいて、精度調整実施日時16Bを決定する精度調整実施日時決定部15Bをさらに備え、精度調整実施日時決定部15Bで決定された精度調整実施日時16Bは、データ通信部17によって情報端末18に送信可能である。
よって、確実に精度調整を実施可能な日を実施日として決定することができる。
【0023】
外部との通信のさらに別の例として
図3を示す。
図3は、精度調整予約システムサーバ(以下単に「サーバ」という。)20において精度調整実施日時を決定して送信する場合の精度調整予約システムの構成図である。
符号1~14については
図1及び
図2と同じ構成であり、精度調整タイミング14を決定する。精度調整タイミング14は、データ通信部17を介して、サーバ20に設けられた精度調整実施日時決定部15Cにデータとして送られる。同様に情報端末18からは、精度調整実施可能日時19のデータが精度調整実施日時決定部15Cに送られる。精度調整実施日時決定部15Cでは、これらの情報に基づいて、精度調整実施日時16Cを決定する。精度調整実施日時16Cを決定する方法は、アルゴリズムにより精度調整実施可能日時19の中から精度調整タイミング14の日付に近い日付を自動的に決定するようにしても良いし、
図5に示す画面に精度調整タイミングと精度調整実施可能日時とを表示し、精度診断装置1の使用者がそれを参考にして都合の良い日を入力するようにしてもよい。
ついでサーバ20は、決定された精度調整実施日時16Cを、精度診断装置1及び情報端末18にそれぞれ送信する。これにより精度調整実施の予約が確定する。このとき、メールなどで精度調整日時を直接通知してもよいし、工作機械の精度診断装置1の使用者と精度調整実施者とがそれぞれアカウントを持ち、サーバ20にログインすることで表示される画面上で精度調整日時を確認できるようにしてもよい。
【0024】
このように、上記精度調整予約システムは、精度診断装置1と、通信回線に接続された情報端末18と、精度診断装置1及び情報端末18と通信回線により接続され、精度診断装置1の精度調整タイミング提示部13により提示された精度調整タイミング14と、情報端末18から取得した精度調整実施可能日時19とに基づいて精度調整実施日時16Cを決定し予約するサーバ20と、を備える。
よって、複数の工作機械の精度調整に対応可能な工作機械の精度調整予約システムを構築することができる。
【0025】
次に、精度調整実施日時決定部15B及び15Cで表示する画面の例を
図5に示す。精度調整予約画面101では、精度調整が必要となる日102、精度調整実施日103、日付を表示するカレンダー104、予約ボタン105が表示されている。まず、精度調整タイミング14に基づいて精度調整が必要となる日102が表示され、カレンダー104に精度調整が必要となる期間が斜線で表示される。カレンダー104には、予約可能日、すなわち精度調整実施可能日時19が○で表示される。精度診断装置1の使用者は、予約可能日19と精度調整が必要となる日102とを考慮して精度調整実施日103を選択することができる。この例では、精度調整が必要となる日が1月19日と予想され、それよりも前の日付で予約可能日である1月14日を精度調整実施日として選択している。精度調整実施日103を決定した後、予約ボタン105を押すことで、情報端末18及びサーバ20に送信され、精度調整の予約をすることができる。
【0026】
その他、上記各例では、変化量データとして工作機械の温度を検出、記録しているが、工作機械の周囲環境の温度を変化量データとしてもよい。工作機械と周囲環境との双方の温度を変化量データとしてもよい。
精度記録部を省略して、変化量データのみに基づいて精度変化予測部が精度変化を予測するようにしてもよい。
精度調整実施日時決定部及びデータ通信部を省略して、精度診断装置に設けた表示部に精度調整希望日時や精度調整実施日時を表示するにとどめてもよい。
精度診断装置は、工作機械のNC装置で形成してもよいし、NC装置と通信可能な外部装置で形成してもよい。
【符号の説明】
【0027】
1・・精度診断装置、2・・変化量検出部、3・・温度、4・・傾き量、5・・変化量記録部、6・・変化量データ、7・・精度変化予測部、8・・精度変化予測式、9・・精度記録部、10・・機械精度、11・・測定日時、12・・精度変化予測式決定部、13・・精度調整タイミング提示部、14・・精度調整タイミング、15A・・精度調整希望日時決定部、15B,15C・・精度調整実施日時決定部、16A・・精度調整希望日時、16B,16C・・精度調整実施日時、17・・データ通信部、18・・精度調整実施者の情報端末、19・・精度調整実施可能日時(予約可能日)、20・・精度調整予約システムサーバ。