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  • 特開-電力増幅装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169317
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】電力増幅装置
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/52 20060101AFI20221101BHJP
   H03F 3/24 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
H03F1/52
H03F3/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075282
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 祐希
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA21
5J500AA41
5J500AC56
5J500AC58
5J500AF18
5J500AF20
5J500AK17
5J500AK48
5J500AK65
5J500AK67
5J500AS14
5J500AT01
5J500PF02
5J500PF05
5J500PF06
5J500PF08
5J500PG06
5J500PG07
5J500PG08
5J500WU05
(57)【要約】
【課題】出力する電力が大きくても安全性が高い電力増幅装置を提供すること。
【解決手段】入力電力を増幅して後段へ出力する電力増幅部と、当該電力増幅部へ駆動用の電力を供給する第1の電源と、を備える電力増幅装置において、前記電力増幅装置を冷却するための冷却機構を含む付帯設備と、前記付帯設備または前記電力増幅部の異常について検出するための異常検出部と、前記異常検出部による検出結果に基づいて、少なくとも前記第1の電源からの出力が低下するように当該第1の電源に制御信号を送信する制御部と、前記制御部及び前記付帯設備に前記第1の電源とは独立して駆動用の電力を供給する第2の電源と、を備えるように電力増幅装置を構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電力を増幅して後段へ出力する電力増幅部と、当該電力増幅部へ駆動用の電力を供給する第1の電源と、を備える電力増幅装置において、
前記電力増幅装置を冷却するための冷却機構を含む付帯設備と、
前記付帯設備または前記電力増幅部の異常について検出するための異常検出部と、
前記異常検出部による検出結果に基づいて、少なくとも前記第1の電源からの出力が低下するように当該第1の電源に制御信号を送信する制御部と、
前記制御部及び前記付帯設備に前記第1の電源とは独立して駆動用の電力を供給する第2の電源と、
を備える電力増幅装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記異常検出部による検出結果に基づいて、前記第1の電源、前記第2の電源の順に出力が停止するように、当該第1の電源及び第2の電源に各々制御信号を送信する請求項1記載の電力増幅装置。
【請求項3】
前記付帯設備には、異常を報知するための報知部が含まれる請求項2記載の電力増幅装置。
【請求項4】
前記電力増幅部、前記電源部、前記異常検出部及び前記制御部を囲む筐体が設けられ、
前記異常検出部は、前記筐体内における温度、前記電力増幅部からの出力、及び前記冷却機構の動作状態のうちのいずれかの異常を検出する請求項1ないし3のいずれか一つに記載の電力増幅装置。
【請求項5】
前記第2の電源からの出力を検出する出力検出部が設けられ、
当該出力検出部の検出結果に基づいて前記第1の電源からの出力が停止する請求項1ないし4のいずれか一つに記載の電力増幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力増幅装置は、例えば各種の通信システムに搭載される。具体例を挙げると、航空機に搭載される無線通信システムに電力増幅装置が搭載され、当該電力増幅装置により増幅された信号が当該無線通信システムを構成するアンテナから送信される。航空機に搭載されるもの以外の例を示すと、特許文献1には地上デジタルテレビ放送用の送信機に含まれる電力増幅装置について記載されている。この電力増幅装置は、複数の電源モジュールを含んだ電源部を備え、故障した電源モジュールの数に応じて出力電力が変化する。
【0003】
また、特許文献2にはHF帯の送信機に搭載される電力増幅器(電力増幅装置)について示されており、電力増幅器に含まれる電力増幅部については出力端の反射電力及び消費電流の監視が行われ、当該電力増幅部への入力電力が制御されることが記載されている。特許文献3には、多数の電力増幅器(電力増幅装置)を含み、各電力増幅器からの出力が合成器により合成されて出力される送信システムについて示されており、各電力増幅器は故障時に交換可能であるようにユニット化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6711902号公報
【特許文献2】特開2017-169100号公報
【特許文献3】特開平11-41117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで電力増幅装置のうち、例えば既述した航空機の無線通信システムに含まれる電力増幅装置のように、比較的大きな電力を取り扱うものがある。そのような電力増幅装置については各部の異常が監視されると共に、異常の発生が認められた場合においては、火災防止などの観点から電力の出力を停止する他に、ユーザーに異常を報知したり、装置を冷却したりするなどの適切な対応がなされることが求められる。しかし既述した各特許文献1~3の技術については、そのような対応が可能な構成とされていない。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、出力する電力が大きくても安全性が高い電力増幅装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電力増幅装置は、入力電力を増幅して後段へ出力する電力増幅部と、当該電力増幅部へ駆動用の電力を供給する第1の電源と、を備える電力増幅装置において、
前記電力増幅装置を冷却するための冷却機構を含む付帯設備と、
前記付帯設備または前記電力増幅部の異常について検出するための異常検出部と、
前記異常検出部による検出結果に基づいて、少なくとも前記第1の電源からの出力が低下するように当該第1の電源に制御信号を送信する制御部と、
前記制御部及び前記付帯設備に前記第1の電源とは独立して駆動用の電力を供給する第2の電源と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電力増幅装置によれば、冷却機構を含む付帯設備と電力増幅部とに対して独立して電力が供給され、異常の検出により電力増幅部への供給電力を低下させても、それに影響されずに付帯設備を運用することができる。従って、出力する電力が大きくても電力増幅装置の安全性を十分に担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態に係る電力増幅装置のブロック図である。
図2】前記第2の実施形態に係る電力増幅装置のブロック図である。
図3】前記電力増幅装置の電源部の構成をより詳細に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
本発明の電力増幅装置についての第1の実施形態について、図1を参照しながら説明する。この実施形態における電力増幅装置は電力増幅モジュール1として、例えば背景技術の項目で述べた航空機に搭載される無線通信システムに組み込まれている。従って、電力増幅モジュール1で増幅された電力は当該システムを構成するアンテナ10に供給され、当該アンテナ10から無線信号としてシステムの外部に送信される。電力増幅モジュール1からアンテナ10に供給される電力は、例えば100W以上である。
【0011】
電力増幅モジュール1は、筐体11、電源部2、電力増幅部3、制御部4、報知部5及びファン51を備えている。筐体11内に電源部2、電力増幅部3及び制御部4が格納されている。そして、冷却機構であるファン51が筐体11に設けられており、電力増幅モジュール1の動作中はファン51の回転によって筐体11外の空気が筐体11内へ取込まれ、筐体11内に設けられる上記の各部が冷却される。ファン51には図示しない回転数検出部が設けられており、ファン51の回転数(即ち、冷却機構の動作状態)に対応する検出信号を、制御部4に送信する。
【0012】
また、筐体11には報知部5が設けられており、当該報知部5はLED52及びブザー53を含む。後述するように電力増幅モジュール1において異常有りと判定された際に、LED52が点灯すると共にブザー53から警告音が発することで、無線通信システムのユーザーに異常が報知される。つまり異常有りと判定されていないときには、LED52は消灯しており、ブザー53は警告音を発していない。この報知部5及び上記のファン51は、電力増幅モジュール1の付帯設備をなす。
【0013】
電源部2は、互いに独立して電力を供給可能な第1の電源21、第2の電源22により構成されており、第1の電源21は電力増幅部3に、当該電力増幅部3が駆動するための電力を供給する。つまり第1の電源21から電力増幅部3に供給される電力は、増幅されることを目的として電力増幅部3に供給される電力とは異なる。第2の電源22は、制御部4、ファン51及び報知部5にこれらの各部が駆動するための電力を供給する。なお、図中のハッチングを付した矢印は第1の電源21、第2の電源22の各々による電力の供給ラインを示している。第1の電源21から電力増幅部3への供給電力は、第2の電源22から制御部4、ファン51、ブザー53の各々への供給される電力の合計よりも大きい。
【0014】
続いて、電力増幅部3について説明すると、例えば電力増幅部3は、複数の電力増幅器31と、各電力増幅器31の後段に設けられる合成器32と、を含む。なお、図中では電力増幅器31を3つ示しているが、その数は任意であり3つには限られない。無線通信システムを構成している外部機器から電力が各電力増幅器31に供給されて増幅され、合成器32で合成されることにより、上記のアンテナ10に供給される。また電力増幅部3は、例えば電圧監視用のICにより構成される電圧検出部33を含み、アンテナ10へ供給される電圧レベルに対応する検出信号が当該電圧検出部33から制御部4に出力される。
【0015】
電力増幅部3は、合成器32の近傍に位置する温度センサ54を備えている。合成器32における電力の合成の損失が大きい場合に、当該合成器32における発熱量が比較的大きくなる。温度センサ54はその異常を検出するために設けられており、検出温度に対応する検出信号を制御部4に送信する。
【0016】
制御部4は、FPGA(field-programmable gate array)あるいはマイクロコントローラにより構成されており、電力増幅モジュール1の各部の動作の制御、状態の監視、異常の判定を行う。上記の状態の監視及び異常の判定として、具体的にはファン51、温度センサ54、電圧検出部33から各々送信される検出信号のモニターと、当該検出信号に基づいたファン51の回転数、電力増幅部3の温度、出力電力の電圧レベルについての異常の有無の判定と、が行われる。検出信号を出力する上記の各部は異常検出部に相当し、各検出信号の信号ラインについて図中では白抜きの矢印で示している。
【0017】
そして制御部4は、第1の電源21、第2の電源22、報知部5の各々に接続されている。上記した制御部4が行う各部の動作の制御としては、既述した各判定事項のいずれかに異常有りと判定されたときに、第1の電源21、第2の電源22を順番に落とすこと、及び第2の電源22を落とす前に報知部5を動作させることが含まれる。これらの各動作を行うために制御部4から出力される制御信号のラインについて多数のドットを付して示している。また各ラインの近傍に示した数字は、異常時における上記の各動作を行うための制御信号が出力される順番を示している。
【0018】
電力増幅モジュール1の動作中において、ファン51の回転数が閾値よりも低いか、温度センサ54による検出温度が閾値よりも高いか、あるいは電圧検出部33による検出電圧が閾値よりも高いときに、制御部4は異常有りと判定する。そのように判定されると、先ず制御部4により第1の電源21が落とされ、電力増幅部3への電力供給が停止する。従って、電力増幅モジュール1よるアンテナ10への電力供給が停止する。続いて、LED52が点灯すると共にブザー53により警告音が鳴る。なお、このときアンテナ10への電力供給時と同様にファン51の回転は続けられ、筐体11内の各部の冷却が行われている。そして、LED52の点灯及び警告音の発生開始から所定の時間が経過すると、第2の電源22が落とされ、ファン51、LED52、ブザー53への電力供給が停止する。従ってファン51の回転及びLED51の点灯が停止し、ブザー53も消音する。
【0019】
このように電力増幅モジュール1については、電力増幅部3についての電力系統と、制御部4及びファン51を含む付帯設備についての電力系統とが分かれており、電力増幅部3と、制御部4及び付帯設備とに個別に電力が供給される。このような構成により、電力増幅モジュール1にて異常が検出された際に、電力増幅部3の動作状態によらず、制御部4及びファン51を動作させて筐体11内を冷却することができるため、電力増幅モジュール1について高い安全性が担保される。また、当該電力増幅モジュール1においては、電力増幅部3への電力供給を停止した後、自動で制御部4及び付帯設備への電力供給も停止される。従って余計な電力消費を防止することができ、そのように不要な電力供給を行わないことで、より確実に安全性を担保することができる。
【0020】
なお、上記の異常が発生した場合には制御部4は図示しない上位のコントローラに対して異常が発生した旨の情報を送信することができる。このように通信によりユーザーに異常が報知されるので、LED52及びブザー53については設けられなくてもよい。また、ファン51について既述の例では異常有りの判定後、回転を続けた後に自動で停止するものとしたが、そのような停止がなされず、ユーザーがシステムに対して所定の操作を行うまで回転が続けられてもよい。
【0021】
ところで温度センサ54については、既述した位置に設けることには限られない。電力増幅器31は電力増幅用のトランジスタを備えている。このトランジスタに異常が発生し、それにより電力増幅器31の発熱が大きくなることが考えられる。従って、このトランジスタの近傍、具体的には例えば当該トランジスタが搭載される基板に温度センサ54も搭載し、検出温度に基づいて異常の判定を行ってもよい。なお、上記の例では第1の電源21、第2の電源22を各々オフにする、即ち各電源からの供給電力を0Wになるように低下させているが、0Wではない値となるように低下させてもよい。また、電圧検出部33については合成器32の後段の電圧を検出するように設けたが、電力増幅器31と合成器32間の電圧を検出し、その検出結果に基づいて異常について判定してもよい。
【0022】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る電力増幅モジュール1Aについて図2を参照しながら、電力増幅モジュール1との差異点を中心に説明する。電力増幅モジュール1Aの第1の電源21は第1の実施形態で述べた各事項の異常時に落とされる他に、第2の電源22の出力が異常となった場合も落とされる。図2では模式的に第2の電源22から第1の電源21に直接検出信号が送信されるように示しているが、実際には図3に示すように、例えばICにより構成される電圧検出部35から第1の電源21に検出信号が出力される。
【0023】
出力検出部である電圧検出部35は、第2の電源22から既述した制御部4、ファン51、報知部5の各々への電力を供給するラインにおける電圧レベルを検出し、検出される電圧に応じて、第1の電源21のENABLE端子にH信号またはL信号を出力する。検出される電圧レベルが閾値以上であれば、電圧検出部35はH信号を出力し、このH信号が入力される間、第1の電源21は電力増幅部3への電力供給を続ける。検出されるレベルが閾値より小さくなると、電圧検出部35はL信号を出力する。このL信号が入力されると第1の電源21については落ちるように構成されており、従って電力増幅部3への電力供給が停止する。
【0024】
このように第2の実施形態の電力増幅モジュール1Aによれば、第2の電源22からの出力が低下することで当該第2の電源22から電力が供給されている各部の動作に異常が発生する見込みとなった場合においても電力増幅部3の動作が停止する。従って、さらに確実にモジュールの安全性が担保される。
【0025】
なお第2の実施形態において、第2の電源22からの出力として検出するパラメータは、電圧であることに限られず、電流であってもよい。具体的には例えば電圧検出部35の代わりに電流検出部を設け、電流値に基づいてH信号またはL信号が電流検出部から第1の電源21に出力される構成であってもよい。また、第1の実施形態において電力増幅部3からの出力として検出するパラメータとしても電圧の代わりに電流であってもよい。またこのように第2の電源22からの出力、電力増幅部3からの出力として検出するパラメータは電力であってもよい。そして、第1の電源21、第2の電源22は既述のように個別に電力を供給できればよく、同じ筐体内に含まれていてもよいし、別々の筐体を備えていてもよい。
【0026】
なお、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更、組み合わせが行われてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 電力増幅モジュール
21 第1の電源
22 第2の電源
3 電力増幅部
4 制御部
33 電圧検出部
51 ファン
54 温度センサ
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2021-05-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
図2
図3