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特開2022-169318ワーク受け渡しシステム及び工作機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169318
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】ワーク受け渡しシステム及び工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23B 15/00 20060101AFI20221101BHJP
   B23Q 7/04 20060101ALI20221101BHJP
   B23B 3/30 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
B23B15/00 N
B23Q7/04 A
B23Q7/04 Q
B23B3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075284
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000133593
【氏名又は名称】株式会社ツガミ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 隆行
【テーマコード(参考)】
3C033
3C045
【Fターム(参考)】
3C033HH11
3C033HH22
3C033HH23
3C033HH25
3C045BA07
3C045BA23
3C045EA11
3C045FB02
(57)【要約】
【課題】サイクルタイムを短縮することができるワーク受け渡しシステム及び工作機械を提供する。
【解決手段】ワークWを第1主軸11及び第2主軸の間で受け渡すワーク受け渡しシステムは、第1加工を行うためにワークWを第1主軸11に供給可能に構成されるワーク供給ハンド装置30Lと、第2加工を行うためにワークWを第2主軸に供給可能に構成されるワーク供給ハンド装置と、第1加工前のワークW1をワーク供給ハンド装置30Lに受け渡し、第1加工が行われたワークW2を第1主軸11から受け取り、受け取ったワークW2をワーク供給ハンド装置に搬送可能に構成されるローダハンド装置40と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを第1主軸及び第2主軸の間で受け渡すワーク受け渡しシステムであって、
第1加工を行うためにワークを前記第1主軸に供給可能に構成される第1ワーク供給ハンド装置と、
第2加工を行うためにワークを前記第2主軸に供給可能に構成される第2ワーク供給ハンド装置と、
前記第1加工前のワークを前記第1ワーク供給ハンド装置に受け渡し、前記第1加工が行われたワークを前記第1主軸から受け取り、受け取ったワークを前記第2ワーク供給ハンド装置に搬送可能に構成されるローダハンド装置と、を備える、
ワーク受け渡しシステム。
【請求項2】
前記第1主軸及び前記第2主軸は第1方向に向かい合うように位置し、
前記ローダハンド装置は、
前記第1ワーク供給ハンド装置に前記第1加工前のワークを受け渡し可能に構成される第1ハンド部と、
前記第1主軸から前記第1加工が行われたワークを受け取り可能に構成される第2ハンド部と、
前記第1ハンド部及び前記第2ハンド部を互いに異なる方向を向くように支持するハンド支持部と、
前記第1方向に交わる第2方向に延びる回転軸を中心に前記ハンド支持部を回転させるハンド回転機構と、を備える、
請求項1に記載のワーク受け渡しシステム。
【請求項3】
前記第1ワーク供給ハンド装置及び前記第2ワーク供給ハンド装置は、それぞれ、
ワークを保持可能に構成される第3ハンド部と、
前記第3ハンド部を、前記ローダハンド装置に向かい合う位置と前記第1主軸又は前記第2主軸に向かい合う位置の間で回転させるハンド回転駆動部と、を備える、
請求項1又は2に記載のワーク受け渡しシステム。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載のワーク受け渡しシステムと、
前記第1主軸及び前記第2主軸と、
前記第1主軸又は前記第2主軸により保持されたワークを加工する工具ユニットと、を備える、
工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク受け渡しシステム及び工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の主軸移動型自動旋盤は、Z軸方向に対向配置され、Z軸方向に移動可能に構成される第1及び第2の主軸と、第1主軸又は第2の主軸に保持されたワークを加工する工具が取り付けられた刃物台と、を備える。第1及び第2の主軸の間でワークが受け渡される際には、刃物台が第1及び第2の主軸に干渉しない領域に移動したうえで、第1及び第2の主軸が互いに近づくようにZ軸方向に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-87144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1においては、第1及び第2の主軸、並びに刃物台が移動する必要があるため、第1及び第2の主軸間でのワークの受け渡しに時間(キッシング時間)がかかり、結果的に1つのワークの加工に要する時間であるサイクルタイムが長くなる。
【0005】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、サイクルタイムを短縮することができるワーク受け渡しシステム及び工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るワーク受け渡しシステムは、ワークを第1主軸及び第2主軸の間で受け渡すワーク受け渡しシステムであって、第1加工を行うためにワークを前記第1主軸に供給可能に構成される第1ワーク供給ハンド装置と、第2加工を行うためにワークを前記第2主軸に供給可能に構成される第2ワーク供給ハンド装置と、前記第1加工前のワークを前記第1ワーク供給ハンド装置に受け渡し、前記第1加工が行われたワークを前記第1主軸から受け取り、受け取ったワークを前記第2ワーク供給ハンド装置に搬送可能に構成されるローダハンド装置と、を備える。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る工作機械は、前記ワーク受け渡しシステムと、前記第1主軸及び前記第2主軸と、前記第1主軸又は前記第2主軸により保持されたワークを加工する工具ユニットと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、サイクルタイムを短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る工作機械の正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る工作機械の平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る工作機械の側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る(a)~(d)は、第1主軸との間でワークを授受する際のワーク供給ハンド装置及びローダハンド装置の動作を示す概略図である。
図5】本発明の一実施形態に係る(a)~(d)は、第2主軸との間でワークを授受する際のワーク供給ハンド装置及びローダハンド装置の動作を示す概略図である。
図6】本発明の一実施形態に係る(a)は第1主軸及びワーク供給ハンド装置の部分的に断面で示した正面図であり、(b)は第2主軸及びワーク供給ハンド装置の部分的に断面で示した正面図である。
図7】本発明の一実施形態に係るローダハンド装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係るワーク受け渡しシステム及び工作機械について、図面を参照して説明する。
旋盤である工作機械1は、図1に示すように、工作機械1全体の台であるベッドSと、第1主軸11を有する第1主軸ユニット10と、第2主軸21を有する第2主軸ユニット20と、複数の第1工具ユニット17と、複数の第2工具ユニット27と、第1主軸移動機構15Zと、第2主軸移動機構25Zと、ワーク受け渡しシステム2と、制御部300と、図2に示すように、第1工具移動機構16と、第2工具移動機構26と、シャッター51を有する複数の格納部52と、パレットチェンジャ55と、を備える。
図1に示すように、ワーク受け渡しシステム2は、ワーク供給ハンド装置30L,30Rと、ローダハンド装置40と、を備える。
以下では、第1主軸11及び第2主軸21の回転軸に沿う軸線方向をZ軸方向と規定し、Z軸方向に直交する高さ方向をY軸方向と規定し、Y軸方向及びZ軸方向に直交する奥行き方向をX軸方向と規定する。本例では、工作機械1は、Y軸方向に延び、第1主軸11及び第2主軸21の間に位置する対称軸Iを中心に対称をなす構成である。特に、第1主軸ユニット10と第2主軸ユニット20、第1工具ユニット17と第2工具ユニット27、第1工具移動機構16と第2工具移動機構26、ワーク供給ハンド装置30Lとワーク供給ハンド装置30Rそれぞれが対称軸Iを中心に対称をなす構成である。
【0011】
図1に示すように、第1主軸ユニット10は、ワークWを保持しつつ回転させる。具体的には、第1主軸ユニット10は、第1主軸11と、第1主軸11を回転可能に支持する第1主軸台12と、を備える。第1主軸11は、ワークWの一端を保持する。第1主軸台12には、第1主軸11を回転させるワーク回転用モータ(図示せず)が内蔵されている。
【0012】
図6(a)に示すように、第1主軸11は、ワークWを保持する爪11aと、ワークWの位置決めをするストッパ11bと、を備える。
爪11aは、ワークWをその外周から保持する。ストッパ11bは、爪11aに囲まれた位置に設けられ、爪11aにより保持されたワークWに当接することによりワークWをZ軸方向に位置決めする。
【0013】
図1に示すように、第2主軸ユニット20は、Z軸方向に第1主軸ユニット10と相対する位置に設けられている。第2主軸ユニット20は、ワークWの他端を保持する第2主軸21と、第2主軸21を回転可能に支持する第2主軸台22と、を備える。第2主軸台22には、第2主軸21を回転させるワーク回転用モータ(図示せず)が内蔵されている。
【0014】
図6(b)に示すように、第2主軸21は、ワークWを保持する爪21aと、ワークWの位置決めをするストッパ21bと、を備える。
爪21aは、ワークWの内側柱部Wpの外径部Wqを保持する。爪21aは、ボルト等の締結部材21cにより第2主軸21の本体部に着脱可能に固定されている。ストッパ21bは、爪21aに囲まれた位置に設けられ、爪21aにより保持されたワークWに当接することによりワークWをZ軸方向に位置決めする。
【0015】
図1に示すように、第1工具ユニット17は、第1主軸11により保持されたワークWを加工する。第1工具ユニット17は、工具17aと、工具17aを保持する工具保持部17bと、を備える。工具17aは、例えば、ドリル又はバイト等である。工具17aはZ軸方向に沿って延び、工具17aの刃先は第1主軸11を向く。
図2に示すように、複数の第1工具ユニット17は、第1工具移動機構16の後述するスライドテーブル16sの上面にX軸方向に並べられている。
【0016】
図1に示すように、第2工具ユニット27は、第2主軸21により保持されたワークWを加工する。第2工具ユニット27は、工具27aと、工具27aを保持する工具保持部27bと、を備える。工具27aは、例えば、ドリル又はバイト等である。工具27aはZ軸方向に沿って延び、工具27aの刃先は第2主軸21を向く。
図2に示すように、複数の第2工具ユニット27は、第2工具移動機構26の後述するスライドテーブル26sの上面にX軸方向に並べられている。
【0017】
図1に示すように、第1主軸移動機構15Zは、第1主軸ユニット10をZ軸方向に移動させる。第2主軸移動機構25Zは、第2主軸ユニット20をZ軸方向に移動させる。
図2に示すように、第1工具移動機構16は、第1工具ユニット17をX軸方向に移動させる。詳しくは、第1工具移動機構16は、各第1工具ユニット17が設置されたスライドテーブル16sを備え、スライドテーブル16sをX軸方向に移動可能に構成される。
第2工具移動機構26は、第2工具ユニット27をX軸方向に移動させる。詳しくは、第2工具移動機構26は、各第2工具ユニット27が設置されたスライドテーブル26sを備え、スライドテーブル26sをX軸方向に移動可能に構成される。
第1主軸移動機構15Z、第2主軸移動機構25Z、第1工具移動機構16及び第2工具移動機構26は、それぞれ、モータ、ボールねじ及びナットを有する。
【0018】
図7に示すように、ローダハンド装置40は、ハンドユニット48と、ハンド回転駆動部43と、ハンド移動機構46A,46B,46Yと、ハンド回転機構47と、支持部材49と、を備える。ハンドユニット48は、第1ハンド部41と、第2ハンド部42と、ハンド支持部44と、を備える。
第1ハンド部41及び第2ハンド部42は、それぞれワークWを保持可能に構成される。第1ハンド部41及び第2ハンド部42は、図示しない流体式シリンダ等の駆動部により、ワークWを保持した保持状態とこの保持状態を解除した非保持状態の間で変位する。
ハンド支持部44は、第1ハンド部41及び第2ハンド部42を互いに異なる方向を向くように支持する。ハンド支持部44は、略L字状をなす。ハンド支持部44の第1端部には第1ハンド部41が位置し、ハンド支持部44の第2端部には第2ハンド部42が位置する。
【0019】
第1ハンド部41は中心線C1に沿って延び、第2ハンド部42は中心線C2に沿って延びる。2つの中心線C1,C2は、互いに交わり、本例では直交する。第1ハンド部41はワークWをその外径から保持する。第2ハンド部42はワークWをその内径から保持する。
ハンド回転駆動部43は、ハンドユニット48を回転軸Kを中心に回転させる。回転軸Kは、2つの中心線C1,C2がなす角度の分線、本例では二等分線に沿って延びる。ハンド回転駆動部43は、例えば、回転シリンダである。
ハンド回転駆動部43は、ハンドユニット48を回転軸Kを中心に回転させることにより、第1ハンド部41及び第2ハンド部42の一方をY軸方向に向け、第1ハンド部41及び第2ハンド部42の他方をZ軸方向に向けることが可能となる。
【0020】
ハンド回転機構47は、Y軸方向に沿って延びる回転軸Gを中心にハンドユニット48を回転させる。回転軸Gは、本例では、中心線C1,C2及び回転軸Kの交点に対応する位置に設定される。ハンド回転機構47は、例えば、回転シリンダである。
ハンド回転機構47は、回転軸Gを中心に回転する回転部47aを有する。回転部47aには、ハンド回転駆動部43を支持する支持部材49が固定されている。
図1に示すように、ハンド回転機構47は、ハンドユニット48を回転軸Gを中心に回転させることにより、ハンドユニット48をZ軸方向に反転させた向きとすることができる。例えば、ハンド回転機構47は、回転軸Gを中心にハンドユニット48を180°回転させることにより、ワーク供給ハンド装置30Lの上方に図1の実線で示す第1の向きとワーク供給ハンド装置30Rの上方に図1の一点鎖線で示す第2の向きの間でハンドユニット48の向きを変えることができる。
【0021】
図1に示すように、ハンド移動機構46Bは、ハンドユニット48、ハンド回転駆動部43及びハンド回転機構47をZ軸方向に沿うB軸方向に移動させる。ハンド移動機構46Bは、ハンドユニット48を、第1主軸11、第2主軸21及びパレットチェンジャ55の間で移動可能に構成される。
ハンド移動機構46Yは、ハンドユニット48、ハンド回転駆動部43及びハンド回転機構47をY軸方向に移動させる。
図3に示すように、ハンド移動機構46Aは、ハンドユニット48、ハンド回転駆動部43及びハンド回転機構47をX軸方向に沿うA軸方向に移動させる。
ハンド移動機構46A,46B,46Yは、それぞれ、モータ、ボールねじ及びナットを有する。
【0022】
図1に示すように、ワーク供給ハンド装置30Lは、ローダハンド装置40からワークWを受け取り、受け取ったワークWを第1主軸11に受け渡す。ワーク供給ハンド装置30Rは、ローダハンド装置40からワークWを受け取り、受け取ったワークWを第2主軸21に受け渡す。
図2に示すように、ワーク供給ハンド装置30L,30Rは、図示しない移動機構により、それぞれ、退避位置Q1と供給位置Q2の間でX軸方向に移動する。退避位置Q1は格納部52内に位置する。供給位置Q2は格納部52外であって第1主軸11又は第2主軸21に対向して位置する。この図示しない移動機構は、例えば、モータ、ボールねじ及びナットを有する。
【0023】
図6(a)に示すように、ワーク供給ハンド装置30Lは、ワークWを保持するハンド部31と、ハンド部31を支持するハンド支持部32と、ハンド支持部32を回転させるハンド回転駆動部33と、を備える。
ハンド支持部32は、中心軸32Cに沿って延びる。ハンド支持部32の先端部には、ハンド部31が設けられている。
ハンド部31は、図示しない流体式シリンダ等の駆動部により、ワークWを保持した保持状態とこの保持状態を解除した非保持状態の間で変位する。本例では、ハンド部31は、拡径方向に移動することによりワークWの内周面Wiを押すことによりハンド部31を保持する。
ハンド回転駆動部33は、回転軸32Oを中心にハンド支持部32を回転させる。ハンド回転駆動部33は、例えば、回転シリンダである。回転軸32Oは、ハンド支持部32の中心軸32Cに対して交わり、本例では、中心軸32Cに対して直交する。回転軸32Oは、ハンド支持部32のハンド部31と反対側の基端部を通過する。
ハンド回転駆動部33は、ワーク供給ハンド装置30Lが供給位置Q2にあるとき、ハンド部31を第1主軸11に対向する図4(d)に示す第1の姿勢とハンド部31をハンドユニット48に対向する図4(a)に示す第2の姿勢の間で変位させる。第1の姿勢ではハンド支持部32の中心軸32CがZ軸方向に沿い、第2の姿勢ではハンド支持部32の中心軸32CがY軸方向に沿う。
【0024】
図6(b)に示すように、ワーク供給ハンド装置30Rは、ワーク供給ハンド装置30Lと同様に、ワークWを保持するハンド部31と、ハンド部31を支持するハンド支持部32と、ハンド支持部32を回転させるハンド回転駆動部33と、を備える。
ワーク供給ハンド装置30Rのハンド部31は、ワークWの外周面Woを保持する。この点を除き、ワーク供給ハンド装置30Rは、ワーク供給ハンド装置30Lと同じ構成をなす。
【0025】
図2に示すように、2つの格納部52のうち一方はワーク供給ハンド装置30Lを格納し、他方はワーク供給ハンド装置30Rを格納する。各格納部52は、それぞれ、ベッドSの上面に壁状に設けられ、ワークWの加工が行われる空間であるツーリングゾーンと隔てられた格納空間52Kを形成する。
シャッター51は、図示しない流体式シリンダ等の駆動部により、各格納部52の開口部を開閉するようにZ軸方向に移動する。各格納部52の開口部は、ツーリングゾーンに対向する位置に形成される。格納部52の格納空間52Kにワーク供給ハンド装置30L,30Rが位置している状態で、シャッター51により格納部52の開口部が閉じられる。これにより、加工に伴って生じる切り粉又はクーラント液がワーク供給ハンド装置30L,30Rに付着することが抑制される。
【0026】
図1及び図2に示すように、パレットチェンジャ55は、複数のワークWが設置されるパレット56をローダハンド装置40により受け取り可能な位置に運ぶ。パレットチェンジャ55は、ベッドSの側方であって、第1主軸ユニット10の後方に設けられている。
【0027】
制御部300は、第1主軸ユニット10、第2主軸ユニット20、第1主軸移動機構15Z、第2主軸移動機構25Z、第1工具移動機構16、第2工具移動機構26、ワーク供給ハンド装置30L,30R、ローダハンド装置40、シャッター51及びパレットチェンジャ55を制御する。制御部300は、例えば、図示しないCPU(Central Processing Unit)、CPUによる処理の手順を定義したプログラムを記憶するROM(Read Only Memory)等を備える。
【0028】
次に、制御部300により実行される加工処理について説明する。制御部300は、事前に作成されたNCプログラムに従って、この加工処理を実行する。
まず、制御部300は、図1の矢印J1に示すように、ハンド移動機構46A,46B,46Yを介してハンドユニット48を移動させて、ハンドユニット48の第1ハンド部41(図4参照)にてパレット56上の未加工のワークW1を保持する。そして、制御部300は、図1の矢印J2に示すように、ハンド移動機構46A,46B,46Yを介してハンドユニット48を退避位置Q1に位置するワーク供給ハンド装置30Lに対向する位置に移動させる。
【0029】
次に、制御部300は、図4(a)に示すように、ハンド回転駆動部33を介してハンド部31を第2の姿勢として第1ハンド部41に向ける。そして、制御部300は、ハンド移動機構46A,46B,46Yを介して第1ハンド部41をワーク供給ハンド装置30Lのハンド部31に対向させて、第1ハンド部41からハンド部31に未加工のワークW1を受け渡す。
上記のように、ローダハンド装置40により未加工のワークW1がパレット56からワーク供給ハンド装置30Lに運ばれる際、シャッター51は閉じられた状態にあり、第1主軸11により保持されたワークW2(図4(b)参照)について第1加工が行われている。制御部300は、この第1加工が完了するまで、ハンドユニット48を第1主軸11の上方で待機させる。
【0030】
制御部300は、ワークW2の第1加工が完了すると、第1主軸11の上方に位置する図示しないシャッターを開き、図4(b)の矢印J3に示すように、第2ハンド部42が第1主軸11に対向するようにローダハンド装置40をY軸方向に移動(下降)させ、第2ハンド部42にて第1主軸11から第1加工済みのワークW2を受け取る。
なお、加工処理の開始直後においては、第1主軸11により第1加工済みのワークW2が保持されていない。この場合、第2ハンド部42にて第1主軸11から第1加工済みのワークW2を受け取る処理は省略されてもよい。
【0031】
そして、制御部300は、図4(c)の矢印J4に示すように、ハンドユニット48を第1主軸11の先端側からY軸方向に退避(上昇)させるとともに、ワーク供給ハンド装置30Lに対応するシャッター51を開き、ワーク供給ハンド装置30Lを退避位置Q1から供給位置Q2に移動させる。
この際、制御部300は、図4(c)の矢印J5に示すように、ハンド回転駆動部33を介してハンド支持部32を回転させてハンド部31を第1主軸11に対向する第1の姿勢とする。そして、制御部300は、図4(d)に示すように、ハンド部31から第1主軸11に未加工のワークW1を受け渡す。
なお、ワーク供給ハンド装置30Lは、上述したローダハンド装置40の下降と同時又は下降の前後に、退避位置Q1から供給位置Q2への移動を開始して供給位置Q2に近い待機位置で待機していてもよい。この待機位置は、ローダハンド装置40に干渉しない位置である。これにより、サイクルタイムを短縮できる。
【0032】
そして、制御部300は、図2の矢印J6に示すように、ワーク供給ハンド装置30Lを退避位置Q1に位置させた後に、シャッター51を閉じる。その後、制御部300は、第1主軸11により保持したワークW1の第1加工を開始する。
【0033】
また、図4(c)の矢印J4に示すように、ハンドユニット48を上昇させた後、直ぐに、制御部300は、図1の矢印J7,J8,J9に示すように、ハンド移動機構46A,46B,46Yを介してハンドユニット48を退避位置Q1に位置するワーク供給ハンド装置30Rに対向する位置に移動させる。なお、このワークW2の搬送中においても、第1加工及び第2加工の両方が実施可能である。
また、制御部300は、このハンドユニット48の移動中、移動前、又は移動後に、図7のJ10に示すように、ハンド回転機構47を介して回転軸Gを中心にハンドユニット48を180°回転させ、図7のJ11に示すように、ハンド回転駆動部43を介して回転軸Kを中心にハンドユニット48を180°回転させる。これにより、図5(a)に示すように、第2ハンド部42がY軸方向を向き、第1ハンド部41がZ軸方向を向く。この際、制御部300は、ワーク供給ハンド装置30Rのハンド回転駆動部33を介してハンド部31がハンドユニット48を向いた第2の姿勢とする。
【0034】
次に、図5(a)~(d)に示すように、図4(a)~(d)と同様に、ローダハンド装置40及びワーク供給ハンド装置30Rが協働することにより第2主軸21との間でワークWを授受する。
詳しくは、制御部300は、図5(a)に示すように、第2ハンド部42をワーク供給ハンド装置30Rのハンド部31に対向させて、第2ハンド部42から第1加工済みのワークW2を退避位置Q1に位置するワーク供給ハンド装置30Rのハンド部31に受け渡す。
上記のように、ローダハンド装置40により第1加工済みのワークW2が第1主軸11からワーク供給ハンド装置30Rに運ばれる際、ワーク供給ハンド装置30Rに対応するシャッター51は閉じられた状態にあり、第2主軸21により保持されたワークW3(図5(b)参照)について第2加工が行われている。制御部300は、第2加工が完了するまで、ハンドユニット48を第2主軸21の上方で待機させる。
【0035】
制御部300は、ワークW3の第2加工が完了すると、第2主軸21の上方に位置する図示しないシャッターを開き、第1ハンド部41が第2主軸21に対向するようにローダハンド装置40をY軸方向に移動(下降)させ、第1ハンド部41にて第2主軸21から第2加工済みのワークW3を受け取る。
なお、加工処理の開始直後においては、第2主軸21により第2加工済みのワークW3が保持されていない。この場合、第1ハンド部41にて第2主軸21から第2加工済みのワークW3を受け取る処理は省略されてもよい。
【0036】
そして、制御部300は、ハンドユニット48を第2主軸21の先端側からY軸方向に退避(上昇)させるとともに、ワーク供給ハンド装置30Rに対応するシャッター51を開き、ワーク供給ハンド装置30Rを退避位置Q1から供給位置Q2に移動させる。なお、上記同様に、ワーク供給ハンド装置30Rは、供給位置Q2に近い待機位置で待機していてもよい。
この際、制御部300は、図5(c)に示すように、ハンド回転駆動部33を介してハンド支持部32を回転させてハンド部31を第2主軸21に対向する第1の姿勢とする。そして、制御部300は、図5(d)に示すように、ハンド部31から第2主軸21に第1加工済みのワークW2を受け渡す。
【0037】
そして、制御部300は、ワーク供給ハンド装置30Rを退避位置Q1に位置させた後に、シャッター51を閉じる。その後、制御部300は、第2主軸21により保持したワークW2の第2加工を開始する。
【0038】
また、上述のように、第2加工済みのワークW3を受け取ったハンドユニット48を上昇させた後、直ぐに、制御部300は、ハンド移動機構46A,46B,46Yを介してハンドユニット48をパレット56に対向する位置まで移動させ、第2加工済みのワークW3をパレット56における未加工のワークW1があった位置に戻す。
上述した加工処理は、ワークWが供給される毎に繰り返し実行される。
以上で、加工処理の説明を終了する。
【0039】
(効果)
以上、説明した一実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)ワークWを第1主軸11及び第2主軸21の間で受け渡すワーク受け渡しシステム2は、第1加工を行うためにワークWを第1主軸11に供給可能に構成される第1ワーク供給ハンド装置の一例であるワーク供給ハンド装置30Lと、第2加工を行うためにワークWを第2主軸21に供給可能に構成される第2ワーク供給ハンド装置の一例であるワーク供給ハンド装置30Rと、第1加工前のワークW1をワーク供給ハンド装置30Lに受け渡し、第1加工が行われたワークW2を第1主軸11から受け取り、受け取ったワークW2をワーク供給ハンド装置30Rに搬送可能に構成されるローダハンド装置40と、を備える。
この構成によれば、ローダハンド装置40により第1主軸11から第2主軸21にワークW2を搬送している間にも、ワーク供給ハンド装置30Lにより第1主軸11にワークWを供給すること、又はワークWの加工(第1加工及び第2加工)を行うことが可能となる。これにより、サイクルタイムを短縮することができる。
【0040】
(2)第1主軸11及び第2主軸21は第1方向の一例であるZ軸方向に向かい合うように位置する。ローダハンド装置40は、ワーク供給ハンド装置30LにワークW1を受け渡し可能に構成される第1ハンド部41と、第1主軸11から第1加工済みのワークW2を受け取り可能に構成される第2ハンド部42と、第1ハンド部41及び第2ハンド部42を互いに異なる方向を向くように支持するハンド支持部44と、Z軸方向に交わる第2方向の一例であるY軸方向に延びる回転軸Gを中心にハンド支持部44を回転させるハンド回転機構47と、を備える。
この構成によれば、ワークWをその軸方向に反転させるワーク反転装置を利用することなく、ローダハンド装置40が第1主軸11から受け取ったワークW2をワーク供給ハンド装置30Rを介して第2主軸21に供給することが可能となる。
比較例として、ワーク供給ハンド装置30L,30Rがハンド部31に並ぶように設けられたワークWを受け取る排出用ハンド部を有する構成では、第1主軸11に保持されたワークWは、排出用ハンド部→ローダハンド装置40→ワーク反転装置→ローダハンド装置40→ワーク供給ハンド装置30R→第2主軸21の順で供給される。この比較例に係る構成では、ローダハンド装置40からワークWをワーク反転装置に供給し、ワーク反転装置にてワークWを反転させたうえでローダハンド装置40に供給する必要があり、ワークWを掴み替える動作が増え、チャッキング不良の確率も高くなる。この点、上記構成では、ワーク反転装置が不要となるために構成の簡易化を図ることができる。また、ワークWを掴み替える動作を減らせて、チャッキング不良の確率も低くなる。
【0041】
(3)ワーク供給ハンド装置30L,30Rは、それぞれ、ワークWを保持可能に構成される第3ハンド部の一例であるハンド部31と、ハンド部31を、ローダハンド装置40の第1ハンド部41又は第2ハンド部42に向かい合う位置と第1主軸11又は第2主軸21に向かい合う位置の間で回転させるハンド回転駆動部33と、を備える。
この構成によれば、ワーク供給ハンド装置30L,30Rは、ローダハンド装置40から受け取ったワークWの姿勢を変えたうえでワークWを第1主軸11又は第2主軸21に受け渡すことができる。
【0042】
(4)工作機械1は、ワーク受け渡しシステム2と、第1主軸11及び第2主軸21と、第1主軸11及び第2主軸21により保持されたワークWを加工する工具ユニットの一例である第1工具ユニット17及び第2工具ユニット27と、を備える。
この構成によれば、工作機械1において、上述したようにサイクルタイムを短縮することができる。
【0043】
なお、本開示は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本開示の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に、変形の一例を説明する。
【0044】
(変形例)
上記実施形態におけるワーク供給ハンド装置30L,30R、ハンドユニット48、第1主軸ユニット10、第2主軸ユニット20、第1工具ユニット17及び第2工具ユニット27の移動方向は適宜変更可能である。
例えば、ワーク供給ハンド装置30L,30Rは、それぞれ、X軸方向に移動可能に構成されていたが、これに限らず、X軸方向に移動不能とし、代わりに、第1主軸ユニット10及び第2主軸ユニット20をX軸方向に移動可能に構成されてもよい。
【0045】
上記実施形態においては、第1主軸ユニット10及び第2主軸ユニット20は、Z軸方向に向かい合うように位置していたが、これに限らず、X軸方向に並べられていてもよい。この場合、ハンド回転機構47が省略されてもよい。
また、上記実施形態における格納部52は省略可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…工作機械、2…ワーク受け渡しシステム、10…第1主軸ユニット、11…第1主軸、11a,21a…爪、11b,21b…ストッパ、12…第1主軸台、15Z…第1主軸移動機構、16…第1工具移動機構、16s,26s…スライドテーブル、17…第1工具ユニット、17a,27a…工具、17b,27b…工具保持部、20…第2主軸ユニット、21…第2主軸、21c…締結部材、22…第2主軸台、25Z…第2主軸移動機構、26…第2工具移動機構、27…第2工具ユニット、30L,30R…ワーク供給ハンド装置、31…ハンド部、32,44…ハンド支持部、32C…中心軸、32O…回転軸、33,43…ハンド回転駆動部、40…ローダハンド装置、41…第1ハンド部、42…第2ハンド部、46A,46B,46Y…ハンド移動機構、47…ハンド回転機構、47a…回転部、48…ハンドユニット、49…支持部材、51…シャッター、52…格納部、52K…格納空間、55…パレットチェンジャ、56…パレット、300…制御部、C1,C2…中心線、G,K…回転軸、I…対称軸、Q1…退避位置、S…ベッド、Q2…供給位置、W,W1,W2,W3…ワーク、Wi…内周面、Wo…外周面、Wp…内側柱部、Wq…外径部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7