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特開2022-169361繊維用集束剤組成物、繊維用集束剤溶液、繊維束、繊維製品及び複合材料
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  • 特開-繊維用集束剤組成物、繊維用集束剤溶液、繊維束、繊維製品及び複合材料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169361
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】繊維用集束剤組成物、繊維用集束剤溶液、繊維束、繊維製品及び複合材料
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/53 20060101AFI20221101BHJP
   D06M 13/17 20060101ALI20221101BHJP
   B29B 15/08 20060101ALI20221101BHJP
   B29K 105/06 20060101ALN20221101BHJP
【FI】
D06M15/53
D06M13/17
B29B15/08
B29K105:06
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075349
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕文
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕志
【テーマコード(参考)】
4F072
4L033
【Fターム(参考)】
4F072AB06
4F072AB08
4F072AB09
4F072AB10
4F072AB11
4F072AC08
4F072AC15
4L033AA08
4L033AA09
4L033AA10
4L033AB01
4L033AC12
4L033BA14
4L033CA45
4L033CA48
4L033CA49
(57)【要約】
【課題】毛羽立ちを抑制しかつ、開繊性に優れた繊維用集束剤を提供する。
【解決手段】ポリエーテル含有化合物(A)及び非イオン界面活性剤(B)を含有し、ポリエーテル含有化合物(A)は1分子中に、2個以上の連続するオキシエチレン基からなるポリオキシエチレン基を1個以上有し、前記ポリオキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数は2~60個であり、非イオン界面活性剤(B)は芳香族非イオン界面活性剤(B1)及び脂肪族非イオン界面活性剤(B2)を少なくとも1種ずつ含み、非イオン界面活性剤(B)のHLB値が11~15であり、100℃での粘度が200~2,000mPa・sであり、かつ、60℃での粘度が3,000~20,000mPa・sである繊維用集束剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエーテル含有化合物(A)及び非イオン界面活性剤(B)を含有する繊維用集束剤組成物であって、
ポリエーテル含有化合物(A)は、エステル化合物(A1)、ウレタン化合物(A2)及びポリエーテルジオール(A3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であり、1分子中に、2個以上の連続するオキシエチレン基からなるポリオキシエチレン基を1個以上有し、前記ポリオキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数は2~60個であり、
非イオン界面活性剤(B)は前記ポリエーテル含有化合物(A)以外の化合物であり、芳香族非イオン界面活性剤(B1)及び脂肪族非イオン界面活性剤(B2)を少なくとも1種ずつ含み、非イオン界面活性剤(B)のHLB値が11~15であり、
前記繊維用集束剤組成物は、100℃での粘度が200~2,000mPa・sであり、かつ、60℃での粘度が3,000~20,000mPa・sである繊維用集束剤組成物。
【請求項2】
前記ポリエーテル含有化合物(A)が、ジカルボン酸若しくはその無水物(a1)及びジオール(a2)を反応させてなるエステル化合物を含み、
前記ジオール(a2)が、1分子中に2個以上の連続するオキシエチレン基からなるポリオキシエチレン基を1個以上有し、前記ポリオキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が2~60個であるジオールを含む、請求項1に記載の繊維用集束剤組成物。
【請求項3】
脂肪族非イオン界面活性剤(B2)の重量W2に対する芳香族非イオン界面活性剤(B1)の重量W1の比(W1/W2)が、20/80~90/10である請求項1または2に記載の繊維用集束剤組成物。
【請求項4】
脂肪族非イオン界面活性剤(B2)が下記一般式(1)で表される化合物である請求項1~3のいずれか1項に記載の繊維用集束剤組成物。
O(AO)H (1)
[一般式(1)中、Rはメチル基を3個以上有する炭素数8~11の脂肪族炭化水素基であり;AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり;mは3~10の数である。]
【請求項5】
更にエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂(C)を含有する請求項1~4のいずれか1項に記載の繊維用集束剤組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の繊維用集束剤組成物が水及び/又は有機溶剤に溶解または分散されてなる繊維用集束剤溶液。
【請求項7】
炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維及びスラッグ繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維を、請求項1~5のいずれか1項に記載の繊維用集束剤組成物で処理してなる繊維束。
【請求項8】
請求項7に記載の繊維束を含む繊維製品。
【請求項9】
請求項7に記載の繊維束とマトリックス樹脂とを含む複合材料。
【請求項10】
請求項8に記載の繊維製品とマトリックス樹脂とを含む複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維用集束剤組成物、繊維用集束剤溶液、繊維束、繊維製品及び複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂及びポリプロピレン樹脂等のマトリックス樹脂と各種繊維との複合材料は、スポーツ用具、レジャー用品及び航空機等の分野で広く利用されている。これらの複合材料においては、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維、岩石繊維及びスラッグ繊維等の繊維が用いられている。これらの繊維には、上記複合材料とする加工工程において、通常、集束剤が付与される(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013/146024号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
集束剤を繊維に付与して繊維束とするサイジング工程では繊維束の繊維-繊維間にサイジング液(集束剤)が浸透することが求められる。しかしながら、特許文献1に記載の集束剤では、繊維束の繊維本数が多い場合に、繊維-繊維間にサイジング液(集束剤)が十分に浸透しないことから、繊維束の毛羽立ちを十分抑制できないという問題があった。
集束剤を繊維に付与してなる繊維束については、マトリックス樹脂と組み合わせる前に繊維束の幅を広げる工程(開繊工程)が行われるが、マトリックス樹脂の含浸性の観点から、繊維束は開繊性が良いもの(繊維束幅が広いものほど開繊性回線性が良い)が求められる。上記特許文献1に記載の技術では開繊性を良好なものとすることができるが、さらなる改善が求められている。
【0005】
本発明は、毛羽立ちを抑制しかつ、開繊性に優れた繊維用集束剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、ポリエーテル含有化合物(A)及び非イオン界面活性剤(B)を含有する繊維用集束剤組成物であって、ポリエーテル含有化合物(A)は、エステル化合物(A1)、ウレタン化合物(A2)及びポリエーテルジオール(A3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であり、1分子中に、2個以上の連続するオキシエチレン基からなるポリオキシエチレン基を1個以上有し、前記ポリオキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数は2~60個であり、非イオン界面活性剤(B)は前記ポリエーテル含有化合物(A)以外の化合物であり、芳香族非イオン界面活性剤(B1)及び脂肪族非イオン界面活性剤(B2)を少なくとも1種ずつ含み、非イオン界面活性剤(B)のHLB値が11~15であり、前記繊維用集束剤組成物は、100℃での粘度が200~2,000mPa・sであり、かつ、60℃での粘度が3,000~20,000mPa・sである繊維用集束剤組成物;前記繊維用集束剤組成物が水及び/又は有機溶剤に溶解または分散されてなる繊維用集束剤溶液;炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維及びスラッグ繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維を、前記記載の繊維用集束剤組成物で処理してなる繊維束;前記繊維束を含む繊維製品;前記繊維束とマトリックス樹脂とを含む複合材料;ならびに、前記繊維製品とマトリックス樹脂とを含む複合材料である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、毛羽立ちを抑制しかつ、開繊性に優れた繊維用集束剤組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、開繊性の評価における炭素繊維束の配置を模式的に示した側面図である。
図2図2は、毛羽立ちの評価における炭素繊維束の配置を模式的に示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<繊維用集束剤組成物>
本発明の繊維用集束剤組成物は、ポリエーテル含有化合物(A)及び非イオン界面活性剤(B)を含有する。
【0010】
本発明において、ポリエーテル含有化合物(A)は、エステル化合物(A1)、ウレタン化合物(A2)及びポリエーテルジオール(A3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である。また、ポリエーテル含有化合物(A)は、1分子中に、2個以上の連続するオキシエチレン基からなるポリオキシエチレン基を1個以上有し、前記ポリオキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数は2~60個である。
ポリエーテル含有化合物(A)が、2~60個の連続するオキシエチレン基からなるポリオキシエチレン基を、1分子中に1個以上有することにより、集束剤組成物を開繊性に優れたものとすることができる。ポリエーテル含有化合物(A)が2~60個の連続するオキシエチレン基からなるポリオキシエチレン基を有していない場合、集束剤組成物の開繊性が不十分となることがある。以下において、「ポリエーテル含有化合物(A)」を「化合物(A)」と呼ぶことがある。
本発明において、「2個以上の連続するオキシエチレン基」とは、あるオキシエチレン基が別のオキシエチレン基と直接結合して2個以上のオキシエチレン基が連なって構成される基を意味する。本発明において「ポリオキシエチレン基」とは2個以上のオキシエチレン基が直接結合して構成される基を意味する。
【0011】
ポリエーテル含有化合物(A)は、エステル化合物(A1)、ウレタン化合物(A2)及びポリエーテルジオール(A3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である。エステル化合物(A1)、ウレタン化合物(A2)、ポリエーテルジオール(A3)はいずれも、2~60個の連続するオキシエチレン基からなるポリオキシエチレン基を1分子中に1個以上有する化合物である。
【0012】
エステル化合物(A1)は、ジオール(a2)とジカルボン酸又はその無水物(a1)とを反応させてなるエステル基を有する化合物である。
【0013】
エステル化合物(A1)を構成するジカルボン酸又はその無水物(a1)としては、脂肪族ジカルボン酸(a11)、芳香族ジカルボン酸(a12)及びこれらの酸無水物等が挙げられる。
【0014】
脂肪族ジカルボン酸(a11)としては、鎖式飽和ジカルボン酸、鎖式不飽和ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸及びダイマー酸等が挙げられる。
【0015】
鎖式飽和ジカルボン酸としては、炭素数2~22の直鎖又は分岐の鎖式飽和ジカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、メチルコハク酸、エチルコハク酸、ジメチルマロン酸、α-メチルグルタル酸、β-メチルグルタル酸、2,4-ジエチルグルタル酸、イソプロピルマロン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、トリデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、イコサンジカルボン酸、デシルコハク酸、ドデシルコハク酸及びオクタデシルコハク酸等)等が挙げられる。
【0016】
鎖式不飽和ジカルボン酸としては、炭素数4~22の直鎖又は分岐の鎖式不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸及びオクタデセニルコハク酸等)等が挙げられる。
【0017】
脂環式ジカルボン酸としては、炭素数7~14の脂環式ジカルボン酸(1,3-又は1,2-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-、1,3-又は1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-、1,3-又は1,4-シクロヘキサンジ酢酸及びジシクロヘキシル-4,4’-ジカルボン酸等)等が挙げられる。
【0018】
ダイマー酸としては、炭素数8~24の鎖式不飽和カルボン酸(オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸等)の二量体が挙げられる。
【0019】
芳香族ジカルボン酸としては、炭素数8~14の芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、フェニルマロン酸、フェニルコハク酸、β-フェニルグルタル酸、α-フェニルアジピン酸、β-フェニルアジピン酸、ビフェニル-2,2’-及び4,4’-ジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、5-スルホイソフタル酸ナトリウム及び5-スルホイソフタル酸カリウム等)等が挙げられる。
【0020】
ジカルボン酸の無水物としては、上記脂肪族ジカルボン酸(a11)又は芳香族ジカルボン酸(a12)の無水物、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸及び無水フタル酸等が挙げられる。
【0021】
ジカルボン酸及びその無水物は、単独でも2種以上を併用してもよい。これらのうち、集束性の観点から、鎖式飽和ジカルボン酸、鎖式不飽和ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸が好ましく、更に好ましくは、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びフタル酸、特に好ましくはアジピン酸、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びこれらのうちの2種以上の併用である。
【0022】
エステル化合物(A1)を構成するジオール(a2)は、開繊性に優れたものとすることができるという観点から、1分子中に2個以上の連続するオキシエチレン基からなるポリオキシエチレン基を1個以上有し、前記ポリオキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が2~60個であるジオール(a21)を含むことが好ましい
【0023】
前記ジオール(a21)としては、例えばエチレングリコールにエチレンオキサイド(EO)を1~59モル付加してなるポリエチレングリコール[1分子中にポリオキシエチレン基を1個有し、(ポリ)オキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が2~60個である化合物の例]、水酸基を2つ有する化合物(エチレングリコールを除く)にEOを4~120モル付加してなる化合物及び1級アミンにEOを4~120モル付加してなる化合物[1分子中にポリオキシエチレン基を2個有し、(ポリ)オキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が2~60個である化合物の例]等が挙げられる。ジオール(a21)としては上記以外に、水酸基を2つ有する化合物にEOを4~120モル付加してなる化合物にEO以外のアルキレンオキサイドを付加させた後さらにEOを付加させて得られる化合物であって、1分子中にポリオキシエチレン基を1個以上有し、(ポリ)オキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が2~60個であるジオール等を用いてもよい。上記「EO以外のアルキレンオキサイド付加物」としては、1,2-又は1,3-プロピレンオキサイド(以下、「プロピレンオキサイド」をPOと略記することがある)付加物、1,2-、1,3-、2,3-又は1,4-ブチレンオキサイド(以下、「ブチレンオキサイド」をBOと略記することがある)付加物等が挙げられる。
【0024】
水酸基を2つ有する化合物としては、脂肪族アルカンジオール、脂環式ジオール及び芳香環含有2価フェノール等があげられる。
脂肪族アルカンジオールは(エチレングリコールを除く)としては、炭素数2~16のアルカンジオール(例えば、エチレングリコール1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ヘキサデカンジオール、ネオペンチルグリコール及び2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール等)等が挙げられる。
【0025】
脂環式ジオールとしては、炭素数4~16の脂環式ジオール(例えば1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール及び水素添加ビスフェノールA等)等が挙げられる。
【0026】
芳香環含有2価フェノールとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールS、クレゾール及びヒドロキノン等が挙げられる。
【0027】
1級アミンにEOを4~120モル付加してなる化合物における1級アミンとしては、炭素数1~18の1級アミン、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、デシルアミン及びドデシルアミン等が挙げられる。
【0028】
ジオール(a21)としては、好ましくは、エチレングリコールにEOを1~59モル付加してなるポリエチレングリコール及び芳香環含有2価フェノールのEO4~120モル付加物からなる群より選ばれる少なくとも1種のジオールであり、より好ましくは、エチレングリコールにEOを3~50モル付加してなるポリエチレングリコール及びビスフェノールAのEO4~120モル付加物からなる群より選ばれる少なくとも1種のジオールである。
【0029】
エステル化合物(A1)を構成するジオール(a2)は、上記ジオール(a21)以外の他のジオール(a22)を含んでいてもよい。
他のジオール(a22)としては、1分子中にポリオキシエチレン基を1個以上有し当該ポリオキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が61個以上であるジオール(a221)、1分子中に別のオキシエチレン基と連続しないオキシエチレン基を1個または2個有するジオール(a222)、オキシアルキレン基を有さないジオール(a223)、オキシエチレン基以外のオキシアルキレン基を有するジオール(a224)等が挙げられる。
本明細書において「他のオキシエチレン基と連続しないオキシエチレン基」とは、あるオキシエチレン基が、別のオキシエチレン基と直接結合していない状態であることを意味する。
【0030】
1分子中にポリオキシエチレン基を1個以上有し当該ポリオキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が61個以上であるジオール(a221)としては、エチレングリコールにEOを60モル以上付加してなるポリエチレングリコール[1分子中にポリオキシエチレン基を1個有し、ポリオキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が61個以上である化合物の例]、水酸基を2つ有する化合物(エチレングリコールを除く)にEOを122モル以上付加してなる化合物及び1級アミンにEOを122モル以上付加してなる化合物[1分子中にポリオキシエチレン基を2個有し、ポリオキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が61個以上である化合物の例]等が挙げられる。ジオール(a221)としては上記以外に、水酸基を2つ有する化合物(エチレングリコールを除く)にEOを122モル以上付加してなる化合物にEO以外のアルキレンオキサイド(例えばPO及びBOなど)を付加させた後さらにEOを付加させて得られる化合物であって、1分子中にポリオキシエチレン基を1個以上有し、ポリオキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が61個以上であるジオール等を用いてもよい。
これらの化合物における水酸基を2個有する化合物及び1級アミンとしては上記ジオール(a21)で説明したものと同じものが挙げられる。
【0031】
1分子中に、別のオキシエチレン基と連続しないオキシエチレン基を1個または2個有するジオール(a222)としては、例えばエチレングリコール(1分子中にオキシエチレン基を1個有するジオール)、水酸基を2つ有する化合物(エチレングリコールを除く)の両末端にそれぞれEOを付加してなる化合物及び1級アミンのEO2モル付加物(1分子中にオキシエチレン基を2個有するジオール)等が挙げられる。
これらの化合物における水酸基を2個有する化合物及び1級アミンとしては上記ジオール(a21)で説明したものと同じものが挙げられる。
【0032】
オキシアルキレン基を有さないジオール(a223)としては、例えば、水酸基を2個有する化合物(エチレングリコール以外の脂肪族アルカンジオール、脂環式ジオール及び芳香環含有2価フェノール等)等が挙げられる。水酸基を2個有する化合物としては上記ジオール(a21)で説明したものと同じものが挙げられる。
【0033】
オキシエチレン基以外のオキシアルキレン基を有するジオール(a224)としては、例えば水酸基を2個有する化合物(エチレングリコールを除く)のPO及び/又はBO付加物、および1級アミンのPO及び/又はBO付加物等が挙げられる。これらの化合物におけるPOとしては、1,2-又は1,3-プロピレンオキサイドが挙げられる。またこれらの化合物におけるBOとしては、1,2-、1,3-、2,3-又は1,4-ブチレンオキサイドが挙げられる。
これらの化合物における水酸基を2個有する化合物及び1級アミンとしては上記ジオール(a21)で説明したものと同じものが挙げられる。
【0034】
他のジオール(a22)としては、好ましくは、オキシエチレン基以外のオキシアルキレン基を有するジオール(a224)及び1分子中にポリオキシエチレン基を1個以上有し当該ポリオキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が61個以上であるジオール(a221)であり、より好ましくは、ビスフェノールAのPO付加物及びエチレングリコールにEOを60~90モル付加させてなるポリエチレングリコールである。
【0035】
開繊性をより優れたものとすることができるという観点から、ジオール(a2)中の、ジオール(a21)の含有量は、ジオール(a2)の重量に基づき、45~100重量%であることが好ましく、50~100重量%であることが更に好ましい。
【0036】
ジオール(a2)及びエステル化合物(A1)における連続したオキシエチレン基の数は、例えば以下の方法により測定できる。例えば、エステル化合物(A1)を加水分解してジオール成分を取り出し、更に分取ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、分取GPC)で分画し、各分画成分をNMR測定して構造を同定し、その構造と分画成分の重量から、上記オキシエチレン基の数や重量%等を算出することができる。
分取GPCの測定条件は例えば以下の通りである。
機種:LC-09(日本分析工業(株)製)
カラム:JAIGEL-3H
+JAIGEL-2H
+JAIGEL-1H
カラム温度:25℃
溶媒:クロロホルム
流速:3ml/分
試料濃度:2重量%
注入量:3ml
【0037】
エステル化合物(A1)を製造する方法としては、例えば、ジカルボン酸若しくはその無水物(a1)とジオール(a2)とを所定モル比で仕込み、反応温度100~250℃、圧力-0.1~1.2MPaで撹拌下、水を溜去させる方法が挙げられる。エステル化合物(A1)を製造する方法においては、触媒をエステル化合物(A1)の重量に基づき0.05~0.5重量%加えることが好ましい。触媒としては、例えばパラトルエンスルホン酸、ジブチルチンオキサイド、テトライソプロポキシチタネート及びシュウ酸チタン酸カリウムが挙げられ、反応性及び環境への影響の観点からテトライソプロポキシチタネート及びシュウ酸チタン酸カリウムが好ましく、更に好ましいのはシュウ酸チタン酸カリウムである。
【0038】
ウレタン化合物(A2)は、ポリオールとジイソシアネートとを反応させてなる化合物である。
【0039】
ウレタン化合物(A2)を構成するポリオールは、開繊性に優れたものとすることができるという観点から、1分子中に2個以上の連続するオキシエチレン基からなるポリオキシエチレン基を1個以上有し、前記ポリオキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が2~60個であるジオールを含むことが好ましい。当該ジオールは、2~60個の連続するオキシエチレン基からなるポリオキシエチレン基を1分子中に1個以上有する化合物であり、エステル化合物(A1)を構成するジオール(a2)に含まれうるジオール(a21)と同様の化合物である。
【0040】
ウレタン化合物(A2)を構成するポリオールは、上記ジオール(2~60個の連続するオキシエチレン基からなるポリオキシエチレン基を1分子中に1個以上有するジオール)以外の他のポリオールを含んでいてもよい。他のポリオールとしては、エステル化合物(A1)を構成するジオール(a2)に含まれうる他のジオール(a22)ならびにポリエステルポリオール(ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリネオペンチルテレフタレートジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオール及びポリヘキサメチレンカーボネートジオール等)等が挙げられる。
【0041】
ウレタン化合物(A2)を構成するポリオールとしては、好ましくは、上記ジオール(a21)(2~60個の連続するオキシエチレン基からなるポリオキシエチレン基を1分子中に1個以上有するジオール)を少なくとも一種と、上記ジオール(a222)(1分子中に、別のオキシエチレン基と連続しないオキシエチレン基を1個または2個有するジオール)とを含むものであり、より好ましくは芳香環含有2価フェノールのEO4~120モル付加物と芳香環含有2価フェノールのEO2モル付加物とを含むものであり、さらに好ましくは、ビスフェノールAのEO4~120モル付加物とビスフェノールAのEO2モル付加物を含むものである。
【0042】
ウレタン化合物(A2)を構成するジイソシアネートの具体例としては、例えば、炭素数8~30の芳香族ジイソシアネート[2,4’-又は4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,3-又は1,4-フェニレンジイソシアネート及び1,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等];炭素数4~30の脂肪族ジイソシアネート[エチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及びリジンジイソシアネート等];炭素数6~30の脂環式ジイソシアネート[イソホロンジイソシアネート(IPDI)及び4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等];ならびにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0043】
ウレタン化合物(A2)を構成するジイソシアネートとしては、好ましくは炭素数8~30の芳香族ジイソシアネートであり、より好ましくは、2,4’-又は4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)である。
【0044】
ウレタン化合物(A2)を製造する方法としては、例えば、2~60個の連続するオキシエチレン基からなるポリオキシエチレン基を1個以上有するポリオールを少なくとも1種含むポリオールとジイソシアネートとを所定モル比で仕込み、必要により鎖伸長剤及び/又は架橋剤を反応系に加え、反応温度30~130℃で、1~24時間撹拌する方法等が挙げられる。
【0045】
ポリエーテルジオール(A3)としては、1分子中に2個以上の連続するオキシエチレン基からなるポリオキシエチレン基を1個以上有し、前記ポリオキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が2~60個である化合物であれば、特に限定されない。
【0046】
ポリエーテルジオール(A3)の具体例としては、前記ジオール(a21)の具体例として説明した化合物[エチレングリコールにエチレンオキサイド(EO)を1~59モル付加してなるポリエチレングリコール、水酸基を2つ有する化合物にEOを4~120モル付加してなる化合物及び1級アミンにEOを4~120モル付加してなる化合物]及びポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール)にEOを4~120モル付加してなる化合物等が挙げられる。ポリエーテルジオール(A3)としては上記以外に、ポリエーテルグリコールにEOを3~120モル付加してなる化合物にEO以外のアルキレンオキサイドを付加させた後さらにEOを付加させて得られる化合物であって、1分子中にポリオキシエチレン基を1個以上有し、ポリオキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が2~60個である化合物を用いてもよい。前記水酸基を2つ有する化合物および前記1級アミンとしては上記ジオール(a21)で例示したものと同じものが挙げられる。
【0047】
ポリエーテルジオール(A3)としては、好ましくは、ポリエーテルグリコールのEO付加物にPOを付加し、さらにEOを付加して得られる化合物(ポリオキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が2~60個のもの)であり、より好ましくは、ポリプロピレングリコールのEO付加物にPOを付加しさらにEOを付加して得られる化合物(ポリオキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が2~60個のもの)である。
【0048】
ポリエーテル含有化合物(A)としては、好ましくは、エステル化合物(A1)を含むものであり、より好ましくは、ジカルボン酸またはその無水物(a1)と、1分子中に2個以上の連続するオキシエチレン基からなるポリオキシエチレン基を1個以上有し、前記ポリオキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が2~60個である化合物(ジオール)を含むジオール(a2)とを反応させてなるエステル化合物である。
【0049】
本発明において、ポリエーテル含有化合物(A)の数平均分子量(Mn)は、1500~10000であることが好ましい。ポリエーテル含有化合物(A)のMnが1500以上であると十分な集束性を有し、10000以下であると水に対する親和性が高く乳化安定性に優れる。なお、Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。Mnは集束性及び水に対する親和性に優れるという観点から、1800~5000がより好ましい。
化合物(A)のMnは、例えば以下の条件で測定しうる。
(測定条件)
機種:HLC-8220GPC[東ソー(株)製、液体クロマトグラフ]
カラム:TSK gel SuperH4000
TSK gel SuperH3000
TSK gel SuperH2000
(いずれも東ソー(株)製)
カラム温度:40℃
検出器:RI
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.6ml/分
試料濃度:0.25重量%
注入量:10μl
標準物質:ポリスチレン[東ソー(株)製;TSK STANDARD]
【0050】
本発明の繊維用集束剤組成物中のポリエーテル含有化合物(A)の含有量は、開繊性の観点から、繊維用集束剤組成物の固形分の重量に基づき、20重量%以上であることが好ましく、25重量%以上であることが更に好ましい。また、繊維束の集束性の観点から、ポリエーテル含有化合物(A)の含有量は、繊維用集束剤組成物の固形分の重量に基づき、90重量%以下であることが好ましく、70重量%以下であることが更に好ましい。本明細書において、固形分とは、試料1gを130℃45分間循風乾燥機で加熱乾燥した後の残渣である。
【0051】
本発明の繊維用集束剤組成物は非イオン界面活性剤(B)を含む。非イオン界面活性剤(B)は前記ポリエーテル含有化合物(A)以外の化合物である。
【0052】
本発明において、非イオン界面活性剤(B)は、芳香族非イオン界面活性剤(B1)及び脂肪族非イオン界面活性剤(B2)を少なくとも1種ずつ含む。非イオン界面活性剤(B)が、芳香族非イオン界面活性剤(B1)及び脂肪族非イオン界面活性剤(B2)を少なくとも1種ずつ含むことにより、毛羽立ちを抑制しかつ、開繊性に優れた繊維用集束剤組成物を提供することができる。非イオン界面活性剤(B)が、芳香族非イオン界面活性剤(B1)を含まないと、毛羽立ち抑制効果が不充分となることがある。また、非イオン界面活性剤(B)が脂肪族非イオン界面活性剤(B2)を含まないと、毛羽立ち抑制効果及び開繊性が不充分になることがある。
【0053】
芳香族非イオン界面活性剤(B1)としては、芳香環を有する化合物にアルキレンオキサイド(AO)を付加してなる化合物が挙げられる。具体的には、アルキル(アルキル基の炭素数が1~18)フェノールに直接AOを付加してなる化合物、スチレン化(1~10モル)フェノールに直接AOを付加してなる化合物、及びスチレン化(1~10モル)クミルフェノールに直接AOを付加してなる化合物等が挙げられる。AOとしては、炭素数2~4のもの、例えばEO、PO、BO及びこれら2種以上の併用等が挙げられる。
【0054】
芳香族非イオン界面活性剤(B1)としては、市販されているものを用いてもよい。市販されている芳香族非イオン界面活性剤としては、Soprophor 796/P[ソルベイ日華(株)製]、Soprophor TSP/724[ソルベイ日華(株)製]、Soprophor TSP/461[ソルベイ日華(株)製]等(いずれも、スチレン化フェノールのPOおよびEO付加物)が挙げられる。
芳香族非イオン界面活性剤(B1)としては、好ましくはスチレン化(1~10モル)フェノールに直接AOを付加してなる化合物であり、より好ましくは、スチレン化フェノールのPO及びEO付加物である。芳香族非イオン界面活性剤(B1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
脂肪族非イオン界面活性剤(B2)としては、炭素数8~18の脂肪族モノアルコールのAO付加物、高級脂肪酸(炭素数12~24)のAO付加物、グリコールにAO(EOを除く)を付加させて得られるポリアルキレングリコール(分子量150~Mw6,000)に高級脂肪酸などを反応させたもの[化合物(A)として用いるものを除く]、多価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビタンなどの2価~8価またはそれ以上の多価アルコール)に高級脂肪酸を反応させて得られたエステル化物にAO(EOを除く)を付加させたもの(分子量250~Mw30,000)など〕および多価アルコール(炭素数3~60)型非イオン界面活性剤〔2価~8価またはそれ以上の多価アルコールの脂肪酸(炭素数3~60)エステル等〕等が挙げられる。脂肪族非イオン界面活性剤(B2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
脂肪族非イオン界面活性剤(B2)としては、繊維用集束剤組成物を使用した際の繊維束の毛羽立ち抑制の観点から、炭素数8~18の脂肪族モノアルコールのAO付加物を含むものが好ましく、下記一般式(1)で表される脂肪族アルキレンオキサイド付加物を含むものがより好ましい。
以下において、「一般式(1)で表される脂肪族アルキレンオキサイド付加物」を「一般式(1)の化合物」ともいう。
O(AO)H (1)
【0057】
一般式(1)におけるRは、メチル基を3個以上有する炭素数8~11の脂肪族炭化水素基である。Rの炭素数が8未満、又は炭素数が11を超えると繊維用集束剤組成物を使用した際に、繊維束の毛羽立ちを十分に抑制しにくくなる。Rの炭素数は、更なる繊維束の毛羽立ち抑制の観点から、9以上であることが好ましい。また、Rの炭素数は、更なる繊維束の毛羽立ち抑制、及び、後に詳述するマトリックス樹脂への含浸性の観点から、10以下であることが好ましい。
【0058】
前記炭素数8~11の脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基でもよく、不飽和脂肪族炭化水素基でもよい。前記の炭素数8~11の脂肪族炭化水素基としては、メチル基を3個有する脂肪族炭化水素基、メチル基を4個有する脂肪族炭化水素基及びメチル基を5個以上有する脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
【0059】
前記のメチル基を3個有する脂肪族炭化水素基としては、メチル基を3個有するアルキル基(3-メチルヘプタン-3-イル基、3,5-ジメチルヘキサン-1-イル基、2-メチルノナン-3-イル基、6-メチルヘプタン-2-イル基及び2-メチルデカン-2-イル基等)、メチル基を3個有するアルケニル基(3,7-ジメチル-6-オクテン-1-イル基等)及びメチル基を3個有するシクロアルキル基(4-tert-ブチルシクロヘキサン-1-イル基)等が挙げられる。
【0060】
前記のメチル基を4個有する脂肪族炭化水素基としては、メチル基を4個有するアルキル基(2,4-ジメチルペンタン-3-イル基、3,5,5-トリメチルヘキサン-1-イル基、2,6-ジメチルヘプタン-4-イル基、2,3,5-トリメチルヘキサン-1-イル基、3,5,5-トリメチルヘプタン-1-イル基及び3,5,5-トリメチルオクタン-1-イル基等)、メチル基を4個有するアルケニル基(3,7-ジメチル-6-オクテン-2-イル基)並びにメチル基を4個有するシクロアルキル基(4-tert-ブチル-2-メチルシクロヘキサン-1-イル基)等が挙げられる。
【0061】
前記のメチル基を5個以上有する脂肪族炭化水素基としては、メチル基を5個有するアルキル基(2,2-ジメチル-5-メチルヘキサン-4-イル基等)、メチル基を5個有するアルケニル基(4,7,7-トリメチル-5-オクテン-2-イル基)及びメチル基を5個有するシクロアルキル基(4-tert-ブチル-2,6-ジメチルシクロヘキサン-1-イル基)等が挙げられる。
【0062】
前記炭素数8~11の脂肪族炭化水素基のうち、好ましいのはアルキル基及びアルケニル基であり、更に好ましいのはアルキル基である。
【0063】
本発明の繊維用集束剤組成物が含有する全ての一般式(1)の化合物におけるR中のメチル基の個数は、一般式(1)の化合物1分子当たり3.5以上であることが好ましい。3.5以上であると、繊維用集束剤組成物を使用した際に、繊維束の毛羽立ちを更に抑制できる。また、後に詳述するマトリックス樹脂への繊維用集束剤組成物の含浸性を向上させることができる。一般式(1)の化合物1分子当たりのR中のメチル基の個数は5個以下であることが好ましい。一般式(1)の化合物1分子当たりのR中のメチル基の個数は、小数の場合がある。
当該R中のメチル基の個数は、例えば、一般式(1)の化合物を合成する際(合成方法については後に詳述)に用いた原料のRに水酸基が結合したアルコールについて、H-NMR測定及びガスクロマトグラフィー分析を行うことにより、算出することができる。
【0064】
一般式(1)におけるAOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、具体的にはエチレンオキシ基、1,2-又は1,3-プロピレンオキシ基及び1,2-、1,3-、2,3-又は1,4-ブチレンオキシ基が挙げられる。これらのうちエチレンオキシ基が好ましい。一般式(1)の化合物はAOをm個(mは3~10)有するが、m個のAOは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0065】
一般式(1)におけるmは脂肪族アルコールアルキレンオキサイド付加物1分子当たりのアルキレンオキサイド付加モル数を表し、3~10の数である。アルキレンオキサイドの付加モル数が3未満の場合、繊維束の毛羽立ち抑制が不十分となり及び繊維用集束剤組成物の水に対する溶解性が不十分となる。また、アルキレンオキサイドの付加モル数が10を超える場合も、繊維束の毛羽立ちが不十分となる。
一般式(1)の化合物1分子当たりのアルキレンオキサイドの付加モル数mは、更なる繊維束の毛羽立ち抑制、及び、後に詳述するマトリックス樹脂への繊維用集束剤組成物の含浸性の観点から4以上であることが好ましい。また、一般式(1)の化合物1分子当たりのアルキレンオキサイドの付加モル数は、更なる毛羽立ち抑制の観点から、好ましくは7以下である。
【0066】
一般式(1)の化合物は、有するアルキレンオキシ基が3~10個である分子を含有することが好ましい。また、更なる繊維束の毛羽立ち抑制、及び、後に詳述するマトリックス樹脂への繊維用集束剤組成物の含浸性の観点から、有するアルキレンオキシ基が4個以上である分子を含有することが好ましい。また、更なる毛羽立ち抑制の観点から、有するアルキレンオキシ基が7個以下である分子を含有することが好ましい。
【0067】
一般式(1)の化合物の具体例としては、炭素数8~11の脂肪族アルコールのエチレンオキサイド(以下、EOと略記することがある)付加物、1,2-又は1,3-プロピレンオキサイド(以下、POと略記することがある)付加物、1,2-、1,3-、2,3-又は1,4-ブチレンオキサイド(以下、BOと略記することがある)付加物、EOとPOのランダム付加物、EO-POブロック付加物、PO-EOブロック付加物、EOとBOのランダム付加物、EO-BOブロック付加物及びBO-EOブロック付加物等が挙げられる。
【0068】
一般式(1)の化合物は、繊維用集束剤組成物を使用した際の繊維束の毛羽立ち抑制の観点から、炭素数8~11の脂肪族アルコールのEO付加物及び炭素数8~11の脂肪族アルコールのPO-EOブロック付加物を含むことがより好ましい。また、繊維束の毛羽立ちを更に抑制し、また、後に詳述するマトリックス樹脂への繊維用集束剤組成物の含浸性の観点からは、炭素数8~11の脂肪族アルコールのEO単独付加物であることが好ましい。
また、一般式(1)の化合物が有するエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基とのモル比率[エチレンオキシ基のモル数:プロピレンオキシ基のモル数]は、繊維束の毛羽立ち抑制及びマトリックス樹脂への繊維用集束剤組成物の含浸性の観点から、100:0~70:30であることが好ましく、100:0~80:20であることが更に好ましい。
一般式(1)の化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
一般式(1)の化合物の数平均分子量は、繊維束の毛羽立ちを抑制する観点から、260~892であることが好ましく、更に好ましくは300~500である。数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPC)によって、ポリエチレンオキサイドを基準物質として、40℃で測定することができる。
GPCの測定条件は以下の通りである。
(GPCの測定条件)
機種:HLC-8120(東ソー(株)製)
カラム:TSK gel SuperH4000
TSK gel SuperH3000
TSK gel SuperH2000
(いずれも東ソー(株)製)
カラム温度:40℃
検出器:RI
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.6ml/分
試料濃度:0.25重量%
注入量:10μl
標準物質:ポリオキシエチレングリコール
(東ソー(株)製;TSK STANDARD
POLYETHYLENE OXIDE)
データ処理装置:SC-8020(東ソー(株)製)
【0070】
一般式(1)の化合物の製造方法としては、触媒として後述の酸性触媒及びアルカリ触媒等を用い、炭素数8~11の脂肪族アルコールに炭素数2~4のアルキレンオキサイドを付加する方法等が挙げられる。炭素数8~11の脂肪族アルコールとしては、脂肪族炭化水素基を有する前記のRに水酸基が結合したアルコールが挙げられる。
【0071】
一般式(1)の化合物を構成する炭素数8~11の脂肪族アルコールとしては、メチル基を3個有する脂肪族アルコール(3-メチルヘプタノール、3,5-ジメチルヘキサノール、2-メチルノナノール、6-メチルヘプタノール、2-メチルデカノール、3,7-ジメチル-6-オクテノール及び4-tert-ブチルシクロヘキサノール等)、メチル基を4個有する脂肪族アルコール(2,4-ジメチルペンタノール、3,5,5-トリメチルヘキサノール、2,6-ジメチルヘプタノール、2,3,5-トリメチルヘキサノール、3,5,5-トリメチルヘプタノール、3,5,5-トリメチルオクタノール、3,7-ジメチル-6-オクタノール及び4-tert-ブチル-2-メチルシクロヘキサノール等)、メチル基を5個以上有する脂肪族アルコール(2,2-ジメチル-5-メチルヘキサノール、4,7,7-トリメチル-5-オクタノール及び4-tert-ブチル-2,6-ジメチルシクロヘキサノール等)等が挙げられる。
【0072】
炭素数2~4のアルキレンオキサイドは、具体的にはEO、PO及びBO等が挙げられる。
【0073】
上記炭素数8~11の脂肪族アルコールに炭素数2~4のアルキレンオキサイドを付加する方法としては一般的な方法を用いることができるが、臭気を抑制する観点から、好ましいものとしては、以下のように2段階で反応させる方法等が挙げられる。
炭素数9~10の脂肪族アルコールを加圧反応容器に仕込み、酸性触媒の存在下に炭素数2~4のアルキレンオキサイドを吹き込み[脂肪族アルコール1モルに対して0.5~5モル]、常圧又は加圧下で反応を行なう。反応温度は50~200℃であることが好ましく、反応時間は2~20時間であることが好ましい。
アルキレンオキサイドの付加反応終了後は、触媒を中和し、吸着剤で処理して触媒を除去・精製し、一般式(1)の化合物(脂肪族アルコールアルキレンオキサイド付加物)の前駆体であるアルキレンオキサイド付加物を得ることができる。このようにして得られた前記アルキレンオキサイド付加物に、アルカリ触媒を添加し、上記と同一又は異なるアルキレンオキサイドを上記と同様の方法で更に付加反応させて、目的の脂肪族アルコールアルキレンオキサイド付加物[一般式(1)の化合物]を得る。
【0074】
酸性触媒としては、過ハロゲン酸(塩)、硫酸(塩)、燐酸(塩)、硝酸(塩)、パーフルオロアルキルスルホン酸金属塩等が挙げられる。塩を形成する場合の金属は、特に限定されるものではないが、2~3価の金属が好ましい。2~3価の金属としては、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Co、Ni、Cu、Al、Cd、Ti、Hf、Cr、Mo、Mn、Fe、Pd及び希土類原子であり、更に好ましいのは、Mg、Zn、Ca、Sr、Ba、Al、Cu、Cd、Ti、Cr、Fe及び希土類原子であり、特に好ましいのは、Mg、Zn、Al、Ti、Fe、Scである。
過ハロゲン酸(塩)のハロゲンとしては塩素、臭素、沃素が挙げられ、塩素が好ましい。パーフルオロアルキルスルホン酸金属塩としては、トリフルオロメタンスルホン酸塩、ペンタフルオロエタンスルホン酸塩が好ましい。更に好ましいのは、スカンジウムトリフラートである。
酸性触媒として好ましいのは、2~3価の金属の過塩素酸塩及びパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩であり、更に好ましいのは、Mg、Zn及びAlから選ばれる金属の過塩素酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩及びペンタフルオロエタンスルホン酸塩であり、特に好ましいのは、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸亜鉛、過塩素酸アルミニウム及びスカンジウムトリフラートである。
上記のように2段階で反応させる場合、酸性触媒の使用量としては、反応速度と経済性の点から、前記アルキレンオキサイド付加物[一般式(1)の化合物の前駆体]の重量に基づいて、0.001~1重量%が好ましい。更に好ましくは0.003~0.8重量%、特に好ましくは0.005~0.5重量%である。
【0075】
アルカリ触媒としては、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム等)の水酸化物又はアルコキシド(メトキシド、エトキシド、プロポキシド及びブトキシド等)、3級アミン(トリエチルアミン、トリメチルアミン等)及び4級アンモニウム塩(テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド等)等が挙げられる。これらの中で好ましいのは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウムである。
上記のように2段階で反応させる場合、アルカリ触媒の使用量としては、反応速度と経済性の点から、脂肪族アルコールアルキレンオキサイド付加物[一般式(1)の化合物]の重量に基づいて、0.0001~1重量%が好ましい。更に好ましくは0.001~0.5重量%である。
【0076】
本発明において、非イオン界面活性剤(B)のHLB(Hydrophile-Lipophile Balance)値は11~15である。非イオン界面活性剤(B)のHLB値が11~15であることにより、毛羽立ちを抑制しかつ、開繊性に優れた繊維用集束剤組成物を提供することができる。非イオン界面活性剤(B)のHLB値が、11未満の場合及び15を超える場合は、毛羽立ち抑制効果が不充分なものとなることがある。非イオン界面活性剤(B)のHLB値は、好ましくは11.3~13.5である。
【0077】
本発明において、HLB値とは親水性と親油性とのつり合いを表す数値であり、単一の化合物の場合、下記の式(2)から求められる(「界面活性剤の合成と其応用」、501頁、1957年槇書店刊;「界面活性剤入門」、212-213頁、2007年三洋化成工業刊、等参照)。
HLB値=10×(無機性/有機性) (2)
式(2)中、括弧内は有機化合物の無機性と有機性との比率を表し、該比率は上記文献に記載されている値から計算することができる。
【0078】
非イオン界面活性剤(B)のHLB値は、使用する界面活性剤の種類および配合量を調整することにより調整することができる。本発明では、非イオン界面活性剤(B)として、芳香族非イオン界面活性剤(B1)及び脂肪族非イオン界面活性剤(B2)を少なくとも1種ずつ含むものを用いるので、二種以上の界面活性剤を用いる。二種以上の界面活性剤を用いて非イオン界面活性剤(B)を調製する場合、非イオン界面活性剤(B)のHLB値は加重平均により算出することができる。例えば、非イオン界面活性剤(B)が、HLB値がh1の芳香族非イオン界面活性剤(B1)をM1重量部とHLB値がh2の脂肪族非イオン界面活性剤(B2)をM2重量部含む場合、非イオン界面活性剤(B)のHLB値は下記式により算出できる。
非イオン界面活性剤(B)のHLB値=(h1×M1+h2×M2)/(M1+M2)
【0079】
本発明の繊維用集束剤組成物中の非イオン界面活性剤(B)の含有量は、毛羽立ち抑制の観点から、繊維用集束剤組成物の固形分の重量に基づき、5~90重量%であることが好ましい。
【0080】
本発明において、脂肪族非イオン界面活性剤(B2)の重量W2に対する芳香族非イオン界面活性剤(B1)の重量W1の比(W1/W2)は、貯蔵安定性の観点から好ましくは20/80~90/10であり、より好ましくは50/50~85/15である。
【0081】
本発明の繊維用集束剤組成物は、ポリエーテル含有化合物(A)及び非イオン界面活性剤(B)以外の成分として、更に、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂(C)を含有していることが好ましい。
【0082】
エポキシ樹脂としては、ジエポキシド、フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びエポキシ化不飽和脂肪酸トリグリセリド(エポキシ化大豆油及びエポキシ化ナタネ油等)等が挙げられる。
【0083】
ジエポキシドとしては、ジグリシジルエーテル、ジグリシジルエステル、ジグリシジルアミン及び脂環式ジエポキシド等が挙げられる。
【0084】
ジグリシジルエーテルとしては、2価フェノールのジグリシジルエーテル及び2価アルコールのジグリシジルエーテルが挙げられる。2価フェノールのジグリシジルエーテルとしては、炭素数6~30の2価フェノールとエピクロルヒドリンとの縮合物(重縮合物を含む)で両末端がグリシジルエーテルであるもの等が挙げられる。2価フェノールとしては、ビスフェノール(ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールAD、ビスフェノールS及びハロゲン化ビスフェノールA等)、カテキン、レゾルシノール、ヒドロキノン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシビフェニル、オクタクロロ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、テトラメチルビフェニル及び9,9’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フロオレン等が挙げられる。2価アルコールのジグリシジルエーテルとしては、炭素数2~100のジオールとエピクロルヒドリンとの縮合物(重縮合物を含む)で両末端がグリシジルエーテルであるもの等が挙げられる。2価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ネオペンチルグリコール及びビスフェノールAのAO(1~20モル)付加物等が挙げられる。AOとしては、上記の炭素数2~4のAOが挙げられる。
【0085】
ジグリシジルエーテルに含まれる2価フェノール単位又は2価アルコール単位と、エピクロルヒドリン単位とのモル比{(2価フェノール単位又は2価アルコール単位):(エピクロルヒドリン単位)}は、n:n+1で表される。nは1~10が好ましく、更に好ましくは1~8、特に好ましくは1~5である。ジグリシジルエーテルは、n=1~10の混合物(重縮合度の異なる混合物等)でもよい。
【0086】
ジグリシジルエステルとしては、芳香族ジカルボン酸のジグリシジルエステル及び脂肪族ジカルボン酸のジグリシジルエステル等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸のジグリシジルエステルとしては、芳香族ジカルボン酸とエピクロルヒドリンとの縮合物(重縮合物を含む)であって、グリシジル基を2個有するもの等が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸のジグリシジルエステルとしては、芳香族ジカルボン酸の芳香核水添加物(ヘキサヒドロフタル酸及び4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸等)又は直鎖若しくは分岐の脂肪族ジカルボン酸(アジピン酸及び2,2-ジメチルプロパンジカルボン酸等)とエピクロルヒドリンとの縮合物(重縮合物を含む)であって、グリシジル基を2個有するもの等が挙げられる。ジグリシジルエステルは、芳香族ジカルボン酸単位又は脂肪族ジカルボン酸単位と、エピクロルヒドリン単位とのモル比{(芳香族ジカルボン酸単位又は脂肪族ジカルボン酸単位):(エピクロルヒドリン単位)}は、n:n+1で表される。nは1~10が好ましく、更に好ましくは1~8、特に好ましくは1~5である。ジグリシジルエステルは、n=1~10の混合物でもよい。
【0087】
ジグリシジルアミンとしては、炭素数6~20で、2~4個の活性水素原子をもつ芳香族アミン(アニリン及びトルイジン等)とエピクロルヒドリンとの反応で得られるN-グリシジル化物(N,N-ジグリシジルアニリン及びN,N-ジグリシジルトルイジン等)等が挙げられる。ジグリシジルアミンは、芳香族アミン単位とエピクロルヒドリン単位とのモル比{(芳香族アミン単位):(エピクロルヒドリン単位)}は、n:n+1で表される。nは1~10が好ましく、更に好ましくは1~8、特に好ましくは1~5である。ジグリシジルアミンは、n=1~10の混合物でもよい。
【0088】
脂環式ジエポキシドとしては、炭素数6~50で、エポキシ基の数2の脂環式エポキサイド{ビニルシクロヘキセンジオキサイド、リモネンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジオキサイド、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、エチレングリコールビスエポキシジシクロペンチルエーテル、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート及びビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)ブチルアミン等}が挙げられる。
【0089】
またエポキシ樹脂としては、市販されているものを用いてもよい。市販されているエポキシ樹脂としては、jER834[三菱ケミカル(株)製]及びjER1001[三菱ケミカル(株)製]等(ともにビスフェノールAのジグリシジルエーテルとエピクロルヒドリンとの縮合物)が挙げられる。
【0090】
エポキシ樹脂としては、ジグリシジルエーテル及びジグリシジルエーテルとエピクロルヒドリンとの縮合物が好ましく、更に好ましくは2価フェノールのジグリシジルエーテルとエピクロルヒドリンとの縮合物であり、特に好ましくはビスフェノールAのジグリシジルエーテルとエピクロルヒドリンとの縮合物(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)である。
【0091】
ビニルエステル樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂(メタ)アクリレート変性物{ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ基と(メタ)アクリル酸のカルボキシル基とが反応して得られる末端(メタ)アクリレート変性樹脂等}等が挙げられる。ビニルエステル樹脂としては、市販の樹脂を用いることができる。市販の樹脂としては、エポキシエステル3000A[共栄社化学(株)製](ビスフェノールAジグリシジルエーテルのアクリル酸2モル付加物)等が挙げられる。
【0092】
不飽和ポリエステル樹脂は、エステル化合物(A1)以外のポリエステル樹脂である。不飽和ポリエステル樹脂としては、不飽和二塩基酸(無水マレイン酸、フマル酸、イアタコン酸など)または飽和二塩基酸(無水フタル酸、イソフタル酸、ヘット酸、アジピン酸など)とグリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコールなど)とを重縮合させたもの、および、さらにスチレン、クロルスチレン、t-ブチルスチレン、メチルメタクリレートなどの重合性モノマーで架橋したものなどが挙げられる。
【0093】
樹脂(C)としては、一種類を用いてもよいし二種類以上を用いてもよい。樹脂(C)としては、集束性に優れるという観点からエポキシ樹脂が好ましく、より好ましくはビスフェノールAのジグリシジルエーテルとエピクロルヒドリンとの縮合物が好ましい。
【0094】
本発明の繊維用集束剤組成物中の樹脂(C)の含有量は、貯蔵安定性及び集束性に優れるという観点から、繊維用集束剤組成物が含有する固形分の重量に基づき、0~60重量%が好ましく、5~60重量%がより好ましい。
【0095】
本発明の繊維用集束剤組成物は、脂肪族アルコールアルキレンオキサイド付加物(A)、非イオン界面活性剤(B)及び樹脂(C)以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては非イオン界面活性剤以外の他の界面活性剤(D)および添加剤(E)等が挙げられる。
【0096】
非イオン界面活性剤以外の他の界面活性剤(D)としては、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤および両性界面活性剤が挙げられる。
カチオン界面活性剤としては、例えば第4級アンモニウム塩型〔テトラアルキル(炭素数1~30)アンモニウム塩(ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド及びステアリルトリメチルアンモニウムブロマイド等);ポリオキシアルキレン(炭素数2~4)トリアルキル(炭素数1~30)アンモニウム塩(ポリオキシエチレントリメチルアンモニウムクロライド等)等〕及びアミン塩型〔脂肪族高級(炭素数12~60)アミン(ラウリルアミン、ステアリルアミンなど)の無機酸塩または有機酸塩;ならびに脂肪族アミン(炭素数1~30)のEO付加物などの無機酸塩または有機酸塩など〕などが挙げられる。
【0097】
アニオン界面活性剤としては、カルボン酸(炭素数8~22の飽和または不飽和脂肪酸)またはその塩(ナトリウム、カリウム、アンモニウム、アルカノールアミンなどの塩)、硫酸エステル塩〔高級アルコール(炭素数8~18)硫酸エステル塩など〕、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩〔炭素数8~18の脂肪族アルコールのEO(1~10モル)付加物の硫酸エステル塩など〕、スルホン酸塩〔アルキル(炭素数1~20)ベンゼンスルホン酸塩、アルキル(炭素数1~20)ナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸ジアルキル(炭素数1~20)エステル、及びα-オレフィン(炭素数12~18)スルホン酸塩など〕ならびにリン酸エステル塩〔高級アルコール(炭素数8~60)リン酸エステル塩及び高級アルコール(炭素数8~60)EO付加物リン酸エステル塩など〕などが挙げられる。
【0098】
両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤〔高級アルキルアミン(炭素数12~18)のプロピオン酸ナトリウムなど〕、ベタイン型両性界面活性剤〔アルキル(炭素数12~18)ジメチルベタインなど〕、硫酸エステル塩型両性界面活性剤〔高級アルキル(炭素数8~18)アミンの硫酸エステルナトリウム塩、ヒドロキシエチルイミダゾリン硫酸エステルナトリウム塩など〕、スルホン酸塩型両性界面活性剤〔ペンタデシルスルホタウリン、イミダゾリンスルホン酸など〕及びリン酸エステル型両性界面活性剤〔グリセリン高級脂肪酸(炭素数8~22)エステル化物のリン酸エステルアミン塩〕などが挙げられる。
【0099】
他の界面活性剤(D)としては、アニオン界面活性剤が好ましく、アルキルフェノールのAO付加物の硫酸エステル塩、アリールアルキルフェノールのAO付加物の硫酸エステル塩及びこれらの混合物がより好ましい。
【0100】
本発明の繊維用集束剤組成物中の他の界面活性剤(D)の含有量は、貯蔵安定性及び集束性に優れるという観点から、繊維用集束剤組成物が含有する固形分の重量に基づき、0~15重量%が好ましく、0~10重量%がより好ましい。
【0101】
添加剤(E)としては、平滑剤、防腐剤及び酸化防止剤等が挙げられる。
平滑剤としては、ワックス類(ポリエチレン、ポリプロピレン、酸化ポリエチレン、酸化ポリプロピレン、変性ポリエチレン及び変性ポリプロピレン等)、高級脂肪酸アルキル(炭素数1~24)エステル類(メチルステアレート、エチルステアレート、プロプルステアレート、ブチルステアレート、オクチルステアレート及びステアリルステアレート等)、高級脂肪酸(ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸等)、天然油脂(ヤシ油、牛脂、オリーブ油及びナタネ油等)及び流動パラフィン等が挙げられる。
防腐剤としては、安息香酸類、サリチル酸類、ソルビン酸類及び第4級アンモニウム塩類イミダゾール類等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール類(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール等)、チオジプロピオネート類(ジラウリル 3,3’-チオジプロピオネート等)及びホスファイト類(トリフェニルホスファイト等)等が挙げられる。
【0102】
本発明の繊維用集束剤組成物中の添加剤(E)の含有量は、貯蔵安定性及び集束性に優れるという観点から、繊維用集束剤組成物が含有する固形分の重量に基づき、0~5重量%が好ましく、0~2重量%がより好ましい。
【0103】
本発明の繊維用集束剤組成物の製造方法に特に制限はないが、例えば、混合容器に、化合物(A)及び非イオン界面活性剤(B)並びに、必要により、樹脂(C)、他の界面活性剤(D)及び添加剤(E)を投入し、好ましくは20~150℃、更に好ましくは50~120℃で均一になるまで撹拌して製造する方法等が挙げられる。組成物を構成する成分[(A)~(E)]の投入順序は特に制限はない。
【0104】
本発明の繊維用集束剤組成物の100℃での粘度は、200mPa・s~2000mPa・sであり、かつ、60℃での粘度が3,000mPa・s~20,000mPa・sである。100℃での粘度及び60℃での粘度が前記範囲内であることにより、毛羽立ちを抑制しかつ、開繊性に優れた繊維用集束剤組成物を提供することができる。
繊維集束剤組成物の100℃での粘度が、200mPa未満であると毛羽立ち抑制効果が不充分なものとなり、前記粘度が2000mPaを超えると開繊性が不充分となることがある。繊維集束剤組成物の60℃での粘度が、3000mPa未満であると毛羽立ち抑制効果が不充分なものとなり、前記粘度が2000mPaを超えると開繊性が不充分となることがある。
繊維用集束剤組成物の100℃での粘度および60℃での粘度は、JIS K7117-1:1999(ISO2555:1990に対応)に準拠して、ブルックフィールド型粘度計(BL型)により測定することができる。
【0105】
毛羽立ち抑制効果に優れ、開繊性に優れるという観点から、繊維用集束剤組成物の100℃での粘度は、好ましくは300mPa・s~1800mPa・s、より好ましくは、400mPa・s~1500mPa・sである。
毛羽立ち抑制効果に優れ、開繊性に優れるという観点から、繊維用集束剤組成物の60℃での粘度は、好ましくは4000mPa・s~19,000mPa・s、より好ましくは、4500mPa・s~18,500mPa・sである。
【0106】
繊維用集束剤組成物を、2~60個の連続するオキシエチレン基からなるポリオキシエチレン基を有するポリエーテル含有化合物(A)及びHLB値が11~15の非イオン界面活性剤(B)を含有し、かつ非イオン界面活性剤(B)が芳香族非イオン界面活性剤(B1)及び脂肪族非イオン界面活性剤(B2)を少なくとも1種ずつ含む態様とすることにより、繊維用集束剤組成物の100℃での粘度を、200mPa・s~2000mPa・sであり、かつ、60℃での粘度が3,000mPa・s~20,000mPa・sとすることができる。
繊維用集束剤組成物の上記温度における粘度を上記範囲に調整できるという観点から、繊維用集束剤組成物は、ポリエーテル含有化合物(A)が、ジカルボン酸若しくはその無水物(a1)及びジオール(a2)を反応させてなるエステル化合物(A1)である態様、脂肪族非イオン界面活性剤(B2)の重量W2に対する芳香族非イオン界面活性剤(B1)の重量W1の比(W1/W2)が、40/60~90/10である態様、脂肪族非イオン界面活性剤(B2)が上記一般式(1)で表される化合物である態様またはこれらの態様の組み合わせが好ましい。
【0107】
<繊維用集束剤溶液>
本発明の繊維用集束剤溶液は、本発明の繊維用集束剤組成物が水及び/又は有機溶剤に溶解または分散されてなるものである。水及び有機溶剤を「溶剤」ともいう。
本発明の繊維用集束剤組成物を溶剤に溶解又は分散することにより、繊維束への繊維用集束剤組成物の付着量を適量にすることが容易になる。
【0108】
溶剤としては、水及び有機溶剤等が挙げられる。
有機溶剤としては、例えば、炭素数1~4の1価のアルコール(メタノール、エタノール及びイソプロパノール等)、炭素数3~6のケトン(アセトン、エチルメチルケトン及びメチルイソブチルケトン等)、炭素数2~6のグリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコール等)、そのモノ低級アルキル(アルキルの炭素数は1~4)エーテル、ジメチルホルムアミド、芳香族炭化水素(トルエン及びキシレン等)、炭素数3~5の酢酸アルキルエステル(酢酸メチル及び酢酸エチル等)等が挙げられる。
前記の溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記の溶剤のうち、火気などの安全性等の観点から好ましいのは、水、及び、水混和性有機溶剤(25℃において、水と、体積比1:1で混合した場合に、均一に混合しうる有機溶剤)と水との混合溶剤であり、更に好ましいのは水である。
【0109】
本発明の繊維用集束剤溶液は、コスト等の観点から、流通時は高濃度であって、繊維束の製造時は低濃度であることが好ましい。すなわち、高濃度で流通することで輸送コスト及び保管コスト等を低下させ、低濃度で繊維を処理することで、優れた集束性と開繊性とを両立した繊維束を製造することができる。
繊維用集束剤溶液が高濃度の場合の濃度(溶剤以外の成分の重量割合)は、保存安定性等の観点から、好ましくは30~80重量%であり、更に好ましくは40~70重量%である。
繊維用集束剤溶液が低濃度の場合の濃度は、繊維束の製造時に繊維用集束剤の付着量を適量にすることができるという観点等から、好ましくは0.5~15重量%であり、更に好ましくは1~10重量%である。
【0110】
本発明の繊維用集束剤溶液の製造方法に特に制限はないが、例えば、本発明の繊維用集束剤組成物に溶剤を投入して、繊維用集束剤組成物を溶剤中に溶解又は乳化分散させる方法が挙げられる。
繊維用集束剤組成物を溶剤中に溶解又は乳化分散する際の温度は、混合し易さの観点から、好ましくは20~90℃であり、更に好ましくは40~90℃である。繊維用集束剤組成物を溶剤中に溶解又は乳化分散する時間は、好ましくは1~20時間であり、更に好ましくは1~10時間である。
繊維用集束剤組成物を溶剤中に溶解又は乳化分散する際には、公知の混合装置、溶解装置及び乳化分散装置を使用することができ、具体的には、撹拌羽根(羽根形状:カイ型及び三段パドル等)、ナウタミキサー[ホソカワミクロン(株)製等]、リボンミキサー、コニカルブレンダー、モルタルミキサー、万能混合機{万能混合撹拌機「5DM-L」[(株)三英製作所製]等}及びヘンシエルミキサー[日本コークス工業(株)等]及びオートクレーブ等が使用できる。
【0111】
本発明の繊維用集束剤組成物または繊維用集束剤溶液を適用できる繊維としては、無機繊維(炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維及びスラッグ繊維等)並びに有機繊維(アラミド繊維等)などが挙げられる。繊維用集束剤組成物及び繊維を用いた複合材料の成形体の強度の観点から、これらの中では炭素繊維が好ましい。
【0112】
<繊維束>
本発明の繊維束は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維及びスラッグ繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維を、本発明の繊維用集束剤組成物で処理してなる繊維束である。
【0113】
本発明の繊維束の製造方法としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維及びスラッグ繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維を、本発明の繊維用集束剤組成物又は、本発明の繊維用集束剤溶液で処理して繊維束を得る方法等が挙げられる。
本発明の繊維束は、3,000~50,000本の繊維が束ねられていることが好ましい。本発明の繊維用集束剤組成物又は本発明の繊維用集束剤溶液によれば、繊維束の繊維の本数が多い(20,000本以上)場合でも、十分毛羽立ちを抑制することができる。
【0114】
繊維の処理方法としては、スプレー法及び浸漬法等が挙げられる。繊維上への繊維用集束剤組成物の付着量は、繊維の重量に基づいて、好ましくは0.05~5重量%であり、更に好ましくは0.2~2.5重量%である。繊維用集束剤組成物の付着量がこの範囲であると、集束性に優れる。
【0115】
<繊維製品>
本発明の繊維製品は、本発明の繊維束を含む。繊維製品には、本発明の繊維束を加工して繊維製品としたものが含まれ、織物、編み物、不織布(フェルト、マット及びペーパー等)、チョップドファイバー及びミルドファイバー等が含まれる。
【0116】
<複合材料>
本発明の複合材料は、本発明の繊維束及び/又は本発明の繊維製品と、マトリックス樹脂とを含む。本発明の複合材料は、必要により、触媒を含有してもよい。
マトリックス樹脂として後述の熱硬化性樹脂を含有する場合、本発明の複合材料は、熱硬化性樹脂と、本発明の繊維束及び繊維製品に含まれる成分(例えば[樹脂(C)として用いるエポキシ樹脂等]との反応物)を含有していても良い。
【0117】
マトリックス樹脂としては、熱可塑性樹脂(ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート及びポリフェニレンスルフィド等)及び熱硬化性樹脂[(C)成分で説明したエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂と同様のもの、ならびにフェノール樹脂(特許第3723462号に記載のもの等)等]等が挙げられる。
【0118】
エポキシ樹脂用の触媒としては、公知(特開2005-213337号公報に記載のもの等)のエポキシ樹脂用硬化剤及び硬化促進剤等が挙げられる。また、不飽和ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂用の触媒としては、過酸化物(ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーベンゾエイト、t-ブチルクミルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等)及びアゾ系化合物(アゾビスイソバレロニトリル等)等が挙げられる。
【0119】
本発明の複合材料において、マトリックス樹脂と繊維束との重量比(マトリックス樹脂/繊維束)は、複合材料の成形体の強度等の観点から、好ましくは10/90~90/10であり、更に好ましくは20/80~70/30であり、特に好ましくは30/70~60/40である。
複合材料が触媒を含有する場合、触媒の含有割合は、複合材料の成形体の強度等の観点から、マトリックス樹脂に対して好ましくは0.01~10重量%であり、更に好ましくは0.1~5重量%であり、特に好ましくは1~3重量%である。
【0120】
複合材料は、熱溶融(好ましい溶融温度:60~350℃)したマトリックス樹脂、又は溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン及び酢酸エチル等)で希釈したマトリックス樹脂を、繊維束及び/又は繊維製品に含浸させることで製造できる。溶剤を使用した場合、プリプレグを乾燥させて溶剤を除去することが好ましい。
【0121】
本発明の複合材料では、マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂である場合、プリプレグを加熱成形し、常温で固化することで成形体とすることができる。
本発明の複合材料では、マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂である場合、プリプレグを加熱成形し、硬化することで成形体とすることができる。
これらの樹脂は完全に硬化している必要はないが、成形体が形状を維持できる程度に硬化していることが好ましい。成形後、更に加熱して完全に硬化させてもよい。
加熱成形の方法は特に限定されず、フィラメントワインディング成形法(回転するマンドレルに張力をかけながら巻き付け、加熱成形する方法)、プレス成形法(プリプレグシートを積層して加熱成形する方法)、オートクレーブ法(プリプレグシートを型に圧力をかけ押しつけて加熱成形する方法)及びチョップドファイバー又はミルドファイバーをマトリックス樹脂と混合して射出成形する方法等が挙げられる。
【実施例0122】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0123】
<製造例1:ビスフェノールAのEO16モル付加物(a2-5)の製造>
撹拌機、加熱冷却装置及び滴下ボンベを備えた耐圧反応容器に、ビスフェノールA228部(1モル部)、トルエン200部及び水酸化カリウム2部を仕込み、圧力を-0.08MPaとした。130℃に昇温し、EO704重量部(16モル部)を圧力が0.5MPaG以下になるように調整しながら6時間かけて滴下した後、130℃で3時間熟成した。次いで100℃に冷却後、吸着処理剤「キョーワード600」[協和化学工業(株)製]30重量部を投入し、100℃で1時間撹拌して処理した後、吸着処理剤をろ過し、ビスフェノールAのEO16モル付加物(a2-5)を得た。(a2-5)はポリオキシエチレン基を2個有し、(ポリ)オキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数は8個であった。
【0124】
<製造例2:ポリエチレングリコール(a2-6)の製造>
撹拌機、加熱冷却装置及び滴下ボンベを備えた耐圧反応容器に、エチレングリコール62部(1モル部)及び水酸化カリウム1部を仕込み、圧力を-0.08MPaとした。100℃に昇温し、EO176重量部(4モル部)を圧力が0.5MPaG以下になるように調整しながら6時間かけて滴下した後、100℃で3時間熟成した。次いで吸着処理剤「キョーワード600」[協和化学工業(株)製]30重量部を投入し、100℃で1時間撹拌して処理した後、吸着処理剤をろ過してポリエチレングリコール(a2-6)を得た。(a2-6)はポリオキシエチレン基を1個有し、(ポリ)オキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が5個であった。
【0125】
<製造例3:ビスフェノールAのEO40モル付加物(a2-7)の製造>
製造例1において、トルエン200部をトルエン400部に変更したこと及びEO704部を1760部(40モル部)に変更したこと以外は製造例1と同様にして、ビスフェノールAのEO40モル付加物(a2-7)を得た。(a2-7)はポリオキシエチレン基を2個有し、(ポリ)オキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が20個であった。
【0126】
<製造例4:ビスフェノールAのEO80モル付加物(a2-8)の製造>
製造例1において、トルエン200部をトルエン1000部に変更したこと及びEO704部を3520部(80モル部)に変更したこと以外は製造例1と同様にして、ビスフェノールAのEO80モル付加物(a2-8)を得た。(a2-8)はポリオキシエチレン基を2個有し、(ポリ)オキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が40個であった。
【0127】
<製造例5:ビスフェノールAのEO120モル付加物(a2-9)の製造>
製造例1において、トルエン200部をトルエン1500部に変更したこと及びEO704部を5280部(120モル部)に変更したこと以外は製造例1と同様にして、ビスフェノールAのEO120モル付加物(a2-9)を得た。(a2-9)はポリオキシエチレン基を2個有し、(ポリ)オキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が60個であった。
【0128】
<製造例6:ポリエーテル含有化合物(A-1)の製造>
ビスフェノールAのEO2モル付加物(水酸基1個当たりのオキシエチレン基の数は1個)「ニューポールBPE-20」[三洋化成工業(株)製](a2-2)632部(2モル部)、ビスフェノールAのEO40モル付加物(a2-7)795部(0.40モル部)、テレフタル酸(a1-1)498部(3モル部)及びシュウ酸チタン酸カリウム3部を、ガラス反応容器中、230℃で0.001MPaまで減圧し、水を留去しながら15時間反応させ、数平均分子量(Mn)が1850のポリエーテル含有化合物(A-1)を得た。当該化合物はエステル基を有する化合物(エステル化合物)である。
【0129】
<製造例7~18および比較製造例1:ポリエーテル含有化合物(A-2)~(A-13)、ポリエーテル含有化合物(A’-1)の製造>
製造例6において、用いるジカルボン酸若しくはその無水物(a1)の種類及び量、並びにジオール(a2)の種類及び量を表1に記載のものしたこと以外は製造例6と同様にしてポリエーテル含有化合物(A-2)~(A-13)及びポリエーテル含有化合物(A’-1)を得た。これらの化合物はエステル基を有する化合物(エステル化合物)である。
【0130】
<製造例19:ポリエーテル含有化合物(A-14)の製造>
撹拌機、加熱冷却装置及び滴下ボンベを備えた耐圧反応容器に、ポリプロピレングリコール「PP-1000」[三洋化成工業(株)製]1000重量部(1モル部)、水酸化カリウム(東亞合成社製)の50%水溶液10部を仕込み、窒素置換後120℃にて60分間、真空脱水し水分を0.1wt%以下とした。次いで、105~130℃でEO3000重量部(68モル部)を3時間掛けて圧入し同温度で反応させ、ポリプロピレングリコールのEO付加物を得た[ポリオキシエチレン基を2個有し、(ポリ)オキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が34個]。揮発分が0.1%以下となった後、更にPO3000重量部(51.7モル部)を3時間掛けて圧入し同温度で反応させた。揮発分が0.1%以下となった後、更にEO3000重量部(68モル部)を3時間掛けて圧入し同温度で揮発分が0.1%以下となるまで反応させた。
得られた反応物に水とアルカリ吸着剤(キョーワード600、協和化学工業社製)とを加え、ろ過した後、加熱脱水することにより、数平均分子量10000であるポリエーテル含有化合物(A-14)(ポリエーテルジオール)を得た。ポリエーテル含有化合物(A-14)はポリオキシエチレン基を4個有し、(ポリ)オキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が34個であった。
【0131】
<製造例20:ポリエーテル含有化合物(A-15)の製造>
撹拌機及び加熱冷却装置を備えた反応容器に、(a2-2)1896部(6モル部)及び(a2-7)1988部(1モル部)を仕込み、30℃で均一になるまで攪拌した後、ジフェニルメタンジイソシアネート「ミリオネートMT」[東ソー(株)製]1500部(6モル部)を仕込み、80℃まで昇温し10時間攪拌してウレタン化反応させ、数平均分子量5100であるポリエーテル含有化合物(A-15)(ウレタン化合物)を得た。
【0132】
ポリエーテル含有化合物(A-1)~(A-15)及びポリエーテル含有化合物(A’-1)の製造に用いた材料は以下の通りである。
<ジカルボン酸もしくはその無水物(a1)>
(a1-1):テレフタル酸
(a1-2):フマル酸
<ジオール(a2)>
(a2-1):ビスフェノールAのPO3モル付加物[1分子中のオキシエチレン基の数は0個、つまり(ポリ)オキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数は0個、商品名:「ニューポールBP-3P」、三洋化成工業(株)製]
(a2-2):ビスフェノールAのEO2モル付加物[(ポリ)オキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が1個、商品名:「ニューポールBPE-20」、三洋化成工業(株)製]
(a2-3):ポリエチレングリコール[三洋化成工業(株)製、商品名「PEG-4000S」、(ポリ)オキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が90個]
(a2-4):ビスフェノールAのEO4モル付加物((ポリ)オキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が2個)、商品名:「ニューポールBPE-40」、三洋化成工業(株)製
(a2-5):製造例1で製造したビスフェノールAのEO16モル付加物((ポリ)オキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が8個)
(a2-6):製造例2で製造したポリエチレングリコール[(ポリ)オキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が5個]
(a2-7):製造例3で製造したビスフェノールAのEO40モル付加物[(ポリ)オキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が20個]
(a2-8):製造例4で製造したビスフェノールAのEO80モル付加物[(ポリ)オキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が40個]
(a2-9):製造例5で製造したビスフェノールAのEO120モル付加物[(ポリ)オキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が60個]
(a2-10):ポリエチレングリコール[三洋化成工業(株)製、商品名「PEG-2000」、(ポリ)オキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数が45個]
【0133】
【表1】
【0134】
<製造例21:3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノールのEO4モル付加物(B2-1)の製造>
撹拌機、加熱冷却装置及び滴下ボンベを備えた耐圧反応容器に、3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール144部(1モル部)、及び過塩素酸アルミニウム九水和物1部(0.002モル部)を投入し、窒素置換後密閉し、70℃に昇温し、1時間減圧下で脱水を行った。80℃に昇温し、エチレンオキサイド88部(2モル部)を圧力が0.2MPaG以下になるように調整しながら10時間かけて滴下した後、95℃で5時間熟成した。次いで70℃に冷却後、吸着処理剤「キョーワード600」[協和化学工業(株)製]10部を投入し、70℃で1時間撹拌して処理した後、吸着処理剤をろ過して3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノールのEO2モル付加物を得た。
得られた3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノールのEO2モル付加物に水酸化カリウム0.1部を追加後、窒素置換後密閉し、70℃に昇温し、1時間減圧下で脱水を行った。140℃に昇温し、エチレンオキサイド88部(2モル部)を圧力が0.5MPaG以下になるように調整しながら3時間かけて滴下した後、140℃で2時間熟成した(2回目のEO付加)。次いで70℃に冷却後、吸着処理剤「キョーワード600」[協和化学工業(株)製]10部を投入し、70℃で1時間撹拌して処理した後、吸着処理剤をろ過して3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノールのEO4モル付加物(B2-1)を得た。
3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノールのEO4モル付加物(B2-1)は、一般式(1)で表される化合物であり、Rは3,5,5-トリメチルヘキサン-1-イル基(R中のメチル基は4個)であり、AOはエチレンオキシ基、mは4であった。
【0135】
<製造例22:3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノールのEO6モル付加物(B2-2)の製造>
製造例21において、2回目に付加したエチレンオキサイド(EO)88部(2モル部)をEO176部(4モル部)に変更した以外は製造例1と同様にして、3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノールのEO6モル付加物(B2-2)を得た。
3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノールのEO6モル付加物(B2-2)は、一般式(1)で表される化合物であり、Rは3,5,5-トリメチルヘキサン-1-イル基(R中のメチル基は4個)であり、AOはエチレンオキシ基、mは6であった。
【0136】
<製造例23:デカノールのEO6モル付加物(B2-3)の製造>
撹拌機、加熱冷却装置及び滴下ボンベを備えた耐圧反応容器に、「デカノール」[KHネオケム(株)製]158部(1モル部)、及び水酸化カリウム0.5部(0.009モル部)を投入し、窒素置換後密閉し、70℃に昇温し、1時間減圧下で脱水を行った。160℃に昇温し、EO264部(6モル部)を圧力が0.5MPaG以下になるように調整しながら5時間かけて滴下した後、160℃で2時間熟成した。次いで70℃に冷却後、吸着処理剤「キョーワード600」[協和化学工業(株)製]10部を投入し、70℃で1時間撹拌して処理した後、吸着処理剤をろ過してデカノールのEO6モル付加物(B2-3)を得た。
本製造例で使用した原料化合物のKHネオケム(株)製のデカノールを、H-NMR及びガスクロマトグラフィーにより分析し、デシル基(炭素数が10の脂肪族炭化水素基)に水酸基が結合したアルコールであること、当該化合物1分子当たりのR中のメチル基の個数は3.5であることを確認した。
よって本製造例で得られたデカノールのEO5モル付加物(B2-3)は、一般式(1)で表される化合物であり、Rはデシル基(R中のメチル基は3.5個)であり、AOはエチレンオキシ基、mは6である。
【0137】
<製造例24:6-メチル-2-ヘプタノールのEO5モル付加物(B2-4)の製造>
製造例23において、「デカノール」158部(1モル部)に代えて6-メチル-2-ヘプタノール130部(1モル部)を用いたこと、および、EO264部(6モル部)をEO220部(5モル部)に変更したこと以外は製造例23と同様にして、6-メチル-2-ヘプタノールのEO5モル付加物(B2-4)を得た。
6-メチル-2-ヘプタノールのEO5モル付加物(B2-4)は、一般式(1)で表される化合物であり、Rは6-メチルヘプタン-2-イル基(R中のメチル基は3個)であり、AOはエチレンオキシ基、mは5であった。
【0138】
<製造例25:3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノールのEO2モル付加物(B2-5)の製造>
製造例23において、「デカノール」158部(1モル部)に代えて3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール144部(1モル部)を用いたこと、及びEO264部(6モル部)をEO88部(2モル部)に変更したこと以外は製造例23と同様にして、3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノールのEO2モル付加物(B2-5)を得た。
3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノールのEO2モル付加物(B2-5)は、一般式(1)で表される化合物であり、Rは3,5,5-トリメチルヘキサン-1-イル基(Rのメチル基の数は4個)であり、AOはエチレンオキシ基であり、mは2であった。
【0139】
<比較製造例2:ポリエーテル含有化合物(A’-2)の製造]
製造例20において、(a2-2)1896部に代えて(a2-1)を2400部用いたこと、(a2-7)1988部に代えて(a2-11)を2000部用いたこと、及びジフェニルメタンジイソシアネート1500部を1375部に変更したこと以外は製造例20と同様にして、数平均分子量5200であるポリエーテル含有化合物(A’-2)(ウレタン化合物)を得た。
【0140】
<実施例1~21及び比較例1~11>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び滴下ロートを備えた反応容器に、表2または表3に記載の種類および量のポリエーテル含有化合物(A)、芳香族非イオン界面活性剤(B1)、脂肪族非イオン界面活性剤(B1)及び樹脂(C)を投入し、加温しながら5分間撹拌して繊維用集束剤組成物を得た。繊維用集束剤組成物の一部を粘度測定に供した。
次に、繊維用集束剤組成物に、水を滴下ロートから1時間かけて滴下し、固形分濃度40%の繊維用集束剤組成物の分散液である繊維用集束剤溶液(X-1)~(X-21)、(X’-1)~(X’-11)を作製した。ここで、固形分とは、試料1gを130℃45分間循風乾燥機で加熱乾燥した後の残渣である。
【0141】
実施例及び比較例での繊維用集束剤溶液の製造において用いた材料は下記の通りである。
<ポリエーテル含有化合物(A)>
(A-1)~(A-13):製造例6~18で製造したエステル化合物
(A-14):製造例19で製造したポリエーテルジオール
(A-15):製造例20で製造したウレタン化合物
<比較のポリエーテル含有化合物>
(A’-1):比較製造例1で製造したエステル化合物
(A’-2):比較製造例2で製造したウレタン化合物
(A’-3):ポリエチレングリコール(1分子中にポリオキシエチレン基を1個有し、当該ポリオキシエチレン基は連続するオキシエチレン基227個からなる)[商品名:「PEG-10000」、三洋化成工業(株)製]
(A’-4):ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロックポリマー(ポリオキシエチレン基1個当たりのオキシエチレン基の数は80個)[商品名:「ニューポールPE-78」、三洋化成工業(株)製]
<芳香族非イオン界面活性剤(B1)>
(B1-1):スチレン化フェノールのプロピレンオキサイドエチレンオキサイド付加物 [商品名:「Soprophor 796/P」、ソルベイ日華(株)製、HLB値は13.7)、フェノール1モルに対しスチレン3モル]
(B1-2):スチレン化フェノールのプロピレンオキサイドエチレンオキサイド付加物[商品名:「Soprophor TSP/724」、ソルベイ日華(株)製、HLB値は11.9]
(B1-3):スチレン化フェノールのプロピレンオキサイドエチレンオキサイド付加物 [商品名:「Soprophor TSP/461」、ソルベイ日華(株)製、HLB値は9.2]
<脂肪族非イオン界面活性剤(B2)>
(B2-1):製造例21で製造した3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノールのEO4モル付加物
(B2-2):製造例22で製造した3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノールのEO6モル付加物
(B2-3):製造例23で製造したデカノールのEO6モル付加物
(B2-4):製造例24で製造した6-メチル-2-ヘプタノールのEO5モル付加物
(B2-5):製造例25で製造した3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノールのEO2モル付加物
<樹脂(C)>
(C-1):エポキシ樹脂[ビスフェノールAジグリシジルエーテルとエピクロルヒドリンとの縮合物、三菱ケミカル(株)製、商品名:「jER834」]
(C-2):エポキシ樹脂[ビスフェノールAジグリシジルエーテルとエピクロルヒドリンとの縮合物、三菱ケミカル(株)製、商品名:「jER1001」]
(C-3):ビニルエステル樹脂[ビスフェノールAジグリシジルエーテルのアクリル酸2モル付加物、共栄社化学(株)製、商品名「エポキシエステル3000A」]
【0142】
実施例1~21及び比較例1~11の繊維用集束剤組成物の60℃での粘度および100℃での粘度、実施例1~21及び比較例1~11で得た繊維用集束剤溶液(X-1)~(X-21)、(X’-1)~(X’-11)の貯蔵安定性、ならびに、前記繊維用集束剤溶液(X-1)~(X-21)、(X’-1)~(X’-11)を用いて作製した炭素繊維束の集束性、開繊性及び毛羽立ちを下記の方法により評価した。結果を表2及び3に示す。
【0143】
[繊維用集束剤組成物の粘度測定]
実施例1~21および比較例1~11の繊維用集束剤組成物の60℃での粘度及び100℃での粘度は、以下の条件で2回測定し、平均値を算出した。
(粘度測定条件)
測定機器:BL型粘度計(東機産業社製)
ローター回転数:60rpm(粘度10Pa・s未満)
6rpm(粘度10Pa・s以上)
測定温度:100℃および60℃
ローター:No.4
【0144】
[繊維用集束剤溶液の評価試験]
<評価試験用の炭素繊維束の製造>
実施例および比較例で得た繊維用集束剤溶液に、固形分濃度が1.5%となるように水を加えて分散液とし、未処理炭素繊維(フィラメント数24,000本)を浸漬して繊維用集束剤組成物の分散液を含浸させた。その後、炭素繊維を繊維用集束剤組成物の分散液から取り出し、180℃で3分間熱風乾燥させて炭素繊維束を得た。なお、繊維用集束剤組成物の分散液に含まれる固形分の繊維への付着量(浸漬前炭素繊維重量に基づく百分率)は、1.5%となるように、炭素繊維束を作製した。当該炭素繊維束を集束性、開繊性および毛羽立ちの評価試験に供した。
【0145】
<集束性の評価試験>
試験用の炭素繊維束を用いて、集束性を、JIS L1096-2010 8.21.1 A法(45°カンチレバー法)に準じて評価した。前記JISで規定する処理条件で得られた炭素繊維束をカンチレバーで評価した。測定値(cm)が大きいほど集束性に優れることを意味する。本評価方法で測定した集束性の値は、14cm以上が好ましい。
【0146】
<開繊性の評価試験>
上記試験用の炭素繊維束をロールに巻回したものを用意し以下の方法により開繊性の評価試験を行った。
(1)評価用装置の説明
図1に示すように、25℃に温度調整した表面が平滑な直径10mmのステンレス棒5本(図示1A,1B,1C,1D,1E)を、隣り合うステンレス棒同士の水平方向の間隔が50mmとなるようにそれぞれ平行に、かつ、炭素繊維束4がステンレス棒1A,1B,1C,1D,1Eと接触しながらジグザグに通過するように配置した。水平方向は図中X-X’で示す矢線の示す方向であり、水平面HLと平行な方向である。
なお、炭素繊維束4が1番目と3番目と5番目に通過するステンレス棒1A,1C及び1Eの中心を結ぶ直線、及び、炭素繊維束4が2番目と4番目に通過するステンレス棒1B及び1Dの中心を結ぶ直線は、水平面と平行になるように配置した。また、前記の2~4番目のステンレス棒1B及び1Dの通過前後で、通過前の炭素繊維束の進行方向となる直線と、通過後の炭素繊維束の進行方向となる直線とが、120度の角度をなすように(例えば、前記の1番目のステンレス棒1Aと2番目のステンレス棒1Bとの間を通過する炭素繊維束の進行方向と平行な直線と、2番目のステンレス棒1Bと3番目のステンレス棒1Cとの間を通過する炭素繊維束の進行方向と平行な直線とのなす角が、120度の角度をなすように)配置した。
(2)炭素繊維束の拡がり幅の測定
試験用の炭素繊維束が巻回された巻き出しロールを2つ用意し、当該2つの巻き出しロール2A及び2Bから繰り出した炭素繊維束4を、ステンレス棒1A,1B,1C,1D,1E間にジグザグにかけ、巻取ロール3と巻出ロール2A,2Bとの間の張力を14.7N(1500gf)とし、速度3m/分で、各炭素繊維束を巻出ロール2A,2Bから巻取ロール3へ巻き取る。炭素繊維束の巻取りは、2つの巻き出しロール2A及び2Bから引き出した2つの炭素繊維束4を1番目のステンレス棒1A上で上下にピッタリ重ね合わせた後、5本のステンレス棒1A,1B,1C,1D,1Eを通過させる。開繊性の評価は5本のステンレス棒を通過した後巻取りロール3に至るまでの領域5の、炭素繊維束4の拡がり幅(cm)を測定することにより行った。炭素繊維束の拡がり幅の測定は(株)浅野機械製作所製の糸走行試験装置を使用して行った。この条件で測定した炭素繊維束の拡がり幅は2cm以上が好ましい。
【0147】
<毛羽立ちの評価試験>
(1)評価用装置の説明
図2に示すように、25℃に温度調整した表面が平滑な直径10mmのステンレス棒5本(図示1A,1B,1C,1D,1E)を、隣り合うステンレス棒同士の水平方向の間隔が50mmとなるようにそれぞれ平行に、かつ、炭素繊維束4がステンレス棒1A,1B,1C,1D,1Eと接触しながらジグザグに通過するように配置した。水平方向は図中X-X’で示す矢線の示す方向であり、水平面HLと平行な方向である。
なお、炭素繊維束4が1番目と3番目と5番目に通過するステンレス棒1A,1C及び1Eの中心を結ぶ直線、及び、炭素繊維束4が2番目と4番目に通過するステンレス棒1B及び1Dの中心を結ぶ直線は、水平面と平行になるように配置した。また、前記の2~4番目のステンレス棒1B及び1Dの通過前後で、通過前の炭素繊維束の進行方向となる直線と、通過後の炭素繊維束の進行方向となる直線とが、120度の角度をなすように(例えば、前記の1番目のステンレス棒1Aと2番目のステンレス棒1Bとの間を通過する炭素繊維束の進行方向と平行な直線と、2番目のステンレス棒1Bと3番目のステンレス棒1Cとの間を通過する炭素繊維束の進行方向と平行な直線とのなす角が、120度の角度をなすように)配置した。
巻出ロール2及び巻取ロール3は各ロールの近傍に描かれている矢印の方向に回転するようセットした。
(2)毛羽の重量の測定
炭素繊維束4を、ステンレス棒1A,1B,1C,1D,1E間にジグザグにかけ、ステンレス棒1Eを通過後、巻取ロール3に巻き取られる直前の領域(巻取りロール3の巻取り開始点3Aから10cm上流側の領域5A)において、1kg重の荷重をかけた10cm×10cmの方形状のウレタンフォーム2枚で、炭素繊維束4を、当該繊維束の厚み方向(図示上下方向)から挟んだ。本例において、炭素繊維束は巻出しロール2から巻取ロール3へと搬送されるので、「上流側」とは搬送方向の上流、つまり巻き出しロール2側を意味する。
炭素繊維束4は、ウレタンフォームで挟んだ状態での単位繊維束4の巻取りは、巻出しの張力を9.8N(1kgf)とし、1m/分の速度で5分間、炭素繊維束4を巻出ロール2から巻取ロール3へ巻き取った。この間に上記の2枚のウレタンフォームに付着した毛羽の重量を測定した。数値が小さいほど毛羽立ちを抑制できていることを示す。
【0148】
<貯蔵安定性(5℃)の評価>
実施例および比較例で製造した繊維用集束剤溶液(X-1)~(X-21)、(X’-1)~(X’-11)を30g、スクリュー菅瓶[50mL(胴径35mm×高さ78mm)]に入れて、5℃で14日間貯蔵した。貯蔵前後のメジアン径(μm)を測定し、測定結果を用いて、下記の式(2)により、5℃での貯蔵安定性を算出した。
5℃での貯蔵安定性は以下の評価基準で評価した。
5℃での貯蔵安定性(%)=100×(貯蔵後のメジアン径)/(貯蔵前のメジアン径) (2)
(評価基準)
A:110%未満
B:110%以上、115%未満
C:115%以上、120%未満
D:120%以上
【0149】
<貯蔵安定性(40℃)の評価>
実施例および比較例で製造した繊維用集束剤溶液(X-1)~(X-21)、(X’-1)~(X’-11)を30g、スクリュー菅瓶[50mL(胴径35mm×高さ78mm)]に入れて、40℃で14日間貯蔵した。貯蔵前後のメジアン径(μm)を測定し、測定結果を用いて、下記の式(3)により40℃での貯蔵安定性を算出した。
40℃での貯蔵安定性は以下の評価基準で評価した。
40℃での貯蔵安定性(%)=100×(貯蔵後のメジアン径)/(貯蔵前のメジアン径) (3)
(評価基準)
A:110%未満
B:110%以上、115%未満
C:115%以上、120%未満
D:120%以上
【0150】
【表2】
【0151】
【表3】
【0152】
表2及び表3に示すように、実施例の繊維用集束剤溶液を用いると、毛羽立ちを抑制しかつ、集束性および開繊性を優れたものとすることができるということがわかった。
前記実施例の繊維用集束剤溶液を構成する繊維用集束剤組成物は、本願発明で規定するポリエーテル含有化合物(A)と、芳香族非イオン界面活性剤(B1)及び脂肪族非イオン界面活性剤(B2)を少なくとも一種ずつ含む非イオン界面活性剤(B)とを含有し、非イオン界面活性剤のHLBが11~15である。また前記実施例の繊維用集束剤溶液は、100℃での粘度が200~2,000mPa・sであり、かつ、60℃での粘度が3,000~20,000mPa・sの集束剤組成物を水に溶解または分散されてなるものである。したがって、本発明によれば、毛羽立ちを抑制しかつ、開繊性を優れた繊維用集束剤を提供できることがわかる。
【符号の説明】
【0153】
1A,1B,1C,1D,1E…ステンレス棒
2,2A,2B…巻出ロール
3…巻取ロール
3A…巻き取り開始点
4…炭素繊維束
5…5本のステンレス棒を通過した後巻取りロールに至るまでの領域
5A…3Aから10cm上流側の領域
HL…水平面
図1
図2