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▶ 山下 健治の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169416
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】金具類及び金釘無し棺
(51)【国際特許分類】
   A61G 17/007 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
A61G17/007
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112583
(22)【出願日】2021-07-07
(62)【分割の表示】P 2021074959の分割
【原出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】511242498
【氏名又は名称】山下 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 桂子
(74)【代理人】
【識別番号】100216770
【弁理士】
【氏名又は名称】三品 明生
(74)【代理人】
【識別番号】100217364
【弁理士】
【氏名又は名称】田端 豊
(72)【発明者】
【氏名】山下 健治
(57)【要約】
【課題】棺を軽量化させながら、底板と側壁部との接合強度を向上させることが可能な金具類及び金釘無し棺を実現する。
【解決手段】全ての構成要素が可燃性素材で形成されている金具類及び金釘無し棺100は、底板10と、側壁部20と、側壁部20の内側面に接合されている側壁補強部材と、底板10と側壁部20とを機械的に接合する可燃性素材の釘部材1とを含む。釘部材1は、底板10に垂直な方向に対して傾斜して延びている。
【選択図】図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全ての構成要素が可燃性素材で形成されている金具類及び金釘無し棺であって、
底板と、
前記底板に接触している側壁部と、
前記側壁部の内側面に接合されている側壁補強部材であって、前記底板に接触している側壁補強部材と、
前記底板と前記側壁部及び前記側壁補強部材の少なくとも一方とを機械的に接合する可燃性素材の第1釘部材であって、前記底板から前記側壁部及び前記側壁補強部材の少なくとも一方に亘って配置される可燃性素材の第1釘部材と、を備え、
前記第1釘部材は、前記底板に垂直な方向に対して傾斜して延びている、金具類及び金釘無し棺。
【請求項2】
前記第1釘部材は、前記底板から前記側壁部のうちの前記側壁補強部材側の部分に亘って配置されている、請求項1に記載の金具類及び金釘無し棺。
【請求項3】
前記第1釘部材は、前記側壁部の面と平行で、かつ、前記底板に垂直な方向に対して傾斜して延びている、請求項1または2に記載の金具類及び金釘無し棺。
【請求項4】
前記第1釘部材は、前記側壁部の面に対して傾斜して延びている、請求項1または2に記載の金具類及び金釘無し棺。
【請求項5】
前記側壁部は、桟木と、当該桟木を両側から挟む一対の板部材とを含み、
前記第1釘部材は、前記底板から少なくとも前記桟木に亘って配置されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の金具類及び金釘無し棺。
【請求項6】
平面視で前記側壁部に直交して配置されている妻壁部と、
前記妻壁部の内側面に接合されている妻壁補強部材であって、前記底板に接触している妻壁補強部材と、
前記底板と前記妻壁部及び前記妻壁補強部材の少なくとも一方とを機械的に接合する燃性素材の第2釘部材であって、前記底板から前記妻壁部及び前記妻壁補強部材の少なくとも一方に亘って配置される可燃性素材の第2釘部材と、をさらに備え、
前記第2釘部材は、前記底板に垂直な方向に対して傾斜して延びていると共に、前記第1釘部材が傾斜する方向に直交する方向に傾斜して延びている、請求項1~5のいずれか1項に記載の金具類及び金釘無し棺。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金具類及び金釘無し棺に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遺体を納め火葬に付する棺は、主構造を木製とし可燃性材料によって箱体が製造されている。一般に、直方体に形成された棺は、2枚の側板、2枚の妻板、底板及び蓋板で構成されている。
【0003】
また、従来、側板と妻板との接合部、底板と、側板又は妻板との接合部は、金釘やタッカー針などの金具類及び金釘等により固定されていた。このため、1本当たりの棺に使用される金属類及び金釘等は、金釘が45本~60本、タッカー針が45本~50本、ピンタッカーが8本~12本、飾り金具が6個~10個で、全体の平均重量は、150g~170g程度にもなる。また、年間葬儀施行数を130万件とすると、火葬による年間の金属類及び金釘等の廃棄量は、195t~221tにもなる。
【0004】
また、本出願の発明者は、全国150カ所以上の市役所と火葬場の訪問を重ねたところ、火葬場に於ける二酸化炭素、ダイオキシン群類の排出に関係する、納棺時の副葬品、ドライアイス、棺に使用される金属類及び金釘の火葬後の処理問題、火葬炉の損傷等の問題が共通していることが判明した。
【0005】
さらに、火葬炉の内部を直視し、火葬中に金釘等が肉体や遺骨に刺さる悲惨な状況や火葬後に残る無数の金属類を目にして強く心を痛めた。火葬後に残った金属類は処理業者によって仕分け整理される。火葬場は金属類による配管の損傷にも大きな問題を抱えていた。
【0006】
上述のように、多量の金具類及び金釘等の存在により、棺の火葬燃焼時に、金具類及び金釘等が飛散し、遺体や遺骨を傷つけることが遺体の尊厳上、問題となっている。また、火葬後に現場スタッフによる金具類及び金釘等を回収する手間が発生したり、最終的に残った灰などに金属類や金釘等が混ざり吸引パイプで吸い上げるときにパイプを傷つけメンテナンス等で時間と費用を要し、使用できない炉が生じたりするという問題もあった。
【0007】
また、一般に、棺の製造において金具類及び金釘を用いた場合、棺の燃焼において、有害物質(例:ダイオキシン又は二酸化炭素)が発生する。この有害物質の発生は、火葬場を管轄する役所又は火葬場の現場担当者にとって解決すべき重要な課題となっている。
【0008】
以上により、棺の製造時には、金具類及び金釘等をできるだけ使用しないことが好ましい。本出願の発明者は、土葬から火葬に代わり長い年月が経っているのにも関わらず、なぜ上記のような悲惨な事実が知られていないのかという多くの疑問を覚え、この実態を知ったからには何とかしなくてはいけないと考えた。そして、本出願の発明者は、環境改善をはじめ火葬業務の合理化とご遺体の尊厳や御霊の尊厳を守るため、従来型の棺の調査と金具類及び金釘を使わない棺の開発をはじめた。
【0009】
また、本出願の発明者以外によっても、金具類及び金釘を使わない扉付き棺の開発が開始されている。例えば、特許文献1には、底板と側板とがダボにより接合されている棺が開示されている。上記特許文献1の棺では、底板から側板に亘って、ダボが配置されている。このダボは、底板に直交する方向に延びるように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2020-44305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1に記載されているような従来の棺では、底板にご遺体を載せた場合に、ご遺体の荷重によって底板が側板から外れないようにするために、ダボの径及び側板(側壁部)の厚みが大きく設計されている。このため、従来の棺では、棺に使用される材料が増大するとともに、棺の重量が増大する。棺の重量が増大すると、筋力の弱いご遺族は棺を持ち上げることができないという問題点がある。また、棺に使用される材料が増大すると、棺の焼却(火葬)に時間がかかり、火葬に要する燃料も増大してしまう。
【0012】
本発明の一態様は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、棺を軽量化させながら、底板と側壁部との接合強度を向上させることが可能な金具類及び金釘無し棺を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明の発明者は、実際に本発明の金具類及び金釘無し棺を何度も試作を繰返して上記課題を解決した。すなわち、本発明の発明者は、鋭意研究の末、本発明の一態様に係る金具類及び金釘無し棺として、
全ての構成要素が可燃性素材で形成されている金具類及び金釘無し棺であって、
底板と、
前記底板に接触している側壁部と、
前記側壁部の内側面に接合されている側壁補強部材であって、前記底板に接触している側壁補強部材と、
前記底板と前記側壁部及び前記側壁補強部材の少なくとも一方とを機械的に接合する可燃性素材の第1釘部材であって、前記底板から前記側壁部及び前記側壁補強部材の少なくとも一方に亘って配置される可燃性素材の第1釘部材と、を備え、
前記第1釘部材は、前記底板に垂直な方向に対して傾斜して延びている、金具類及び金釘無し棺を想到した。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1釘部材が延びる方向と、ご遺体の荷重が底板にかかる方向とを交差させることができるので、第1釘部材の径及び側壁部の厚みを大きくすることなく、第1釘部材を側壁部又は側壁補強部材から抜けにくくすることができる。さらに、側壁部と底板との接合部分に側壁補強部材が配置されるので、側壁部全体の厚みを小さくしつつ、側壁補強部材及び第1釘部材により、側壁部と底板との接合強度を増大させることができる。この結果、棺を軽量化させながら、底板と側壁部との接合強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、第1実施形態に係る棺の外観を示す斜視図である。
図2図2は、棺の底面図である。
図3図3は、図2の1000-1000線に沿った断面図である。
図4図4は、図2の1100-1100線に沿った断面図である。
図5A図5Aは、側壁部に沿った棺の一部の断面図である。
図5B図5Bは、図5Aの部分1300の拡大図である。
図5C図5Cは、図2の部分1200の断面図である。
図6A図6Aは、妻壁部に沿った棺の一部の断面図である。
図6B図6Bは、図6Aの部分1400の拡大図である。
図7図7は、図5Aの釘部材が設けられている箇所の拡大図である。
図8図8は、図6Aの釘部材が設けられている箇所の拡大図である。
図9図9は、第2実施形態における棺の一部の断面図である。
図10図10は、第1及び第2実施形態の第1変形例による棺の構成を説明するための図である。
図11図11は、第1及び第2実施形態の第2変形例による棺の構成を説明するための図である。
図12図12は、第1及び第2実施形態の第3変形例による棺の構成を説明するための図である。
図13図13は、第1及び第2実施形態の第4変形例による棺の構成を説明するための図である。
図14図14は、第1及び第2実施形態の第5変形例による棺の構成を説明するための図である。
図15図15は、第1及び第2実施形態の第6変形例による棺の構成を説明するための図である。
図16図16は、第1及び第2実施形態の第7変形例による棺の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本開示の一実施形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、図示した構成における各部材の寸法及び部材間の寸法比率は、実際の寸法及び寸法比率を表すものではない。
【0017】
[第1実施形態]
(棺の全体構造)
図1は、棺100の外観を示す斜視図である。第1実施形態の棺100は、全ての構成要素が可燃性素材で形成されている。すなわち、図2に示す釘部材1(留め具)は、木ダボであってもよく、プラスチック釘、プラスチックタッカー、木釘、竹釘、ポリマー樹脂製ステープル・ピンネルであってもよい。また、釘部材1の材質としては、可燃性素材であれば特に限定されず、例えば、桐材、紙材等が挙げられる。また、可燃性の材料としては、上記の他、可燃性の非金属材料、可燃性のプラスチック材料や、可燃性のガラス材料(例えば、グラスファイバーなど)なども含まれる。また、貝殻のように石灰質で作られたようなものでも、釘部材1の材料として使用できる。
【0018】
図1に示すように、棺100は、直方体に構成されており、底板10と、棺100の長辺側の側面を構成する2つの側壁部20と、棺100の短辺側の側面を構成する2つの妻壁部30と、蓋板40とを備える。蓋板40は、蓋板40の拝顔窓に配置された扉41を含む。この扉41は、両開き(観音開き)するように構成されていてもよいし、スライド移動して拝顔窓が開閉されるように構成されていてもよい。
【0019】
底板10、側壁部20、妻壁部30、及び蓋板40のそれぞれの材質としては、可燃性素材であれば限定されず、例えば、桐材、檜材、樅材等が挙げられる。さらに、側壁部20、妻壁部30及び蓋板40の外面においては、外観を向上させるための装飾が施されていてもよい。
【0020】
(底板と側壁部及び妻壁部との接合に関する構成)
図2は、棺100の底面図である。なお、図2では、説明のために、側壁部20、妻壁部30、側壁補強部材50、及び妻壁補強部材60を破線により記載している。図3は、底板10と側壁部20との接合に関する構成を示す断面図であり、図2の1000-10
00線に沿った断面図である。図4は、底板10と妻壁部30との接合に関する構成を示す断面図であり、図2の1100-1100線に沿った断面図である。図5Aは、側壁部20に沿った棺100の一部の断面図である。図5Bは、図5Aの部分1300の拡大図であり、図5Cの1500―1500線に沿った断面である。図5Cは、図2の部分1200の断面図である。
【0021】
図2に示すように、Z1方向に見て、底板10のうちの2つの側壁部20と重なる位置において、Y1方向及びY2方向に等間隔で複数の釘部材1が配置されている。また、Z1方向に見て、底板10のうちの2つの妻壁部30と重なる位置において、X1方向及びX2方向に等間隔で複数の釘部材2が配置されている。なお、本開示では、釘部材1及び2の各々の数は、図2の例に限られない。
【0022】
図3に示すように、底板10は、板部材23よりも桟木21側に突出する突部11を含む。また、側壁部20は、Y1方向及びY2方向に延びる桟木21と、側壁部20の外側面22aを構成する板部材22と、側壁部20の内側面23aを構成する板部材23と、Z1方向及びZ2方向に延びる複数の桟木24及び25(図5A参照)とを含む。桟木21は、側壁部20のうちの下端20aに配置されており、板部材22と板部材23とにより挟まれている。
【0023】
図5Aに示すように、複数の桟木24は、それぞれ、桟木21と同様に、板部材22と板部材23とにより挟まれており、Y1方向及びY2方向に間隔を隔てて並んで配置されている。桟木25は、2つ設けられている。2つの桟木25は、桟木21と同様に、板部材22と板部材23とにより挟まれている。そして、2つの桟木25のうちの一方は、側壁部20のY1方向の端部に配置され、他方は、側壁部20のY2方向の端部に配置されている。また、図5Aでは、桟木24を5本記載しているが、桟木24の本数はこれに限られない。
【0024】
上記のように側壁部20を構成することにより、側壁部を中実の1つの板部材により形成する場合に比べて、側壁部20を軽量化することができる。また、側壁部20の内部(板部材22及び23の間)に空間が形成されるので、火葬場での燃焼時間が短縮することができ、火葬における燃料を削減することができる。また、図3に示すように、側壁部20(桟木21及び板部材22)の下端20aと底板10の下面10aとは、面一に形成されている。また、図5Bに示すように、側壁部20(桟木25)の下端20aと底板10の下面10aとは、面一に形成されている。ここで、「面一」とは、側壁部20の下端20aから底板10の下面10aに亘って、段差及び凹凸形状が形成されていないことを意味する。これにより、霊柩車や火葬炉への棺100の移動を円滑にすることができる。なお、図示しないが、桟木21は、側壁部20のうちの下端20aではなく、下端20aよりも上方の位置(下端20a近傍の位置)に配置されていてもよい。
【0025】
図3に示すように、側壁部20の桟木21及び板部材23には、側壁部20の外側面22a側に窪み、かつ、下端20aから上方に窪んだ段差部21aが形成されている。段差部21aに突部11が配置されることより、桟木21及び板部材23と突部11とが接触している。また、図5Bに示すように、側壁部20の桟木25には、Y1方向に窪み、かつ、下端20aから上方に窪んだ段差部25aが形成されている。底板10には、桟木21よりもY1方向に突出する突部13を含む。そして、段差部25aに突部13が配置されることより、桟木25と突部13とが接触している。
【0026】
図4に示すように、底板10は、板部材33よりも桟木31側に突出する突部12を含む。また、妻壁部30は、桟木31と、妻壁部30の外側面32aを構成する板部材32と、妻壁部30の内側面33aを構成する板部材33とを含む。桟木31は、妻壁部30
のうちの下端30aに配置されており、板部材32と板部材33とにより挟まれている。図6Aは、妻壁部30に沿った棺100の一部の断面図である。図6Bは、図6Aの部分1400の拡大図であり、図5Cの1600-1600線に沿った断面図である。図6Aに示すように、妻壁部30は、一方が妻壁部30のX1方向の端部に配置され、他方が妻壁部30のX2方向の端部に配置されている2つの桟木34を含む。また、妻壁部30のX1方向及びX2方向の両側は、2つの側壁部20(桟木25、板部材22及び23)により挟まれている。すなわち、図5Cに示すように、平面視で棺100の角部において、側壁部20と妻壁部30とは接触している。また、妻壁部30の構成は、側壁部20と同様に、棺100を軽量化させることができるとともに、火葬場での燃焼時間が短縮させること、及び火葬における燃料を削減することができる。また、妻壁部30の下端30aと底板10の下面10aとは、面一に形成されている。なお、桟木31は、図示しないが、妻壁部30の下端30aよりも上方の位置に配置されていてもよい。
【0027】
図4に示すように、妻壁部30の桟木31及び板部材33には、妻壁部30の外側面32a側に窪み、かつ、下端30aから上方に窪んだ段差部31aが形成されている。段差部31aに突部12が配置されることにより、桟木31及び板部材33と突部12とが接触している。また、図6Bに示すように、側壁部20の桟木25には、X2方向に窪み、かつ、下端から上方に窪んだ段差部25bが形成されている。底板10には、桟木31よりもX2方向に突出する突部14を含む。そして、段差部25bに突部14が配置されることにより、桟木25と突部14とが接触している。また、桟木34の下面34aと突部14とが接触している。
【0028】
また、図3及び図4に示すように、棺100は、可燃性素材からなる側壁補強部材50及び可燃性素材からなる妻壁補強部材60を含む。図3に示すように、側壁補強部材50は、側壁部20の内側面23a及び底板10の上面10bの各々に、可燃性素材からなる接着剤51により接合されている。図4に示すように、妻壁補強部材60は、妻壁部30の内側面33a及び底板10の上面10bの各々に、可燃性素材からなる接着剤61により接合されている。側壁補強部材50及び妻壁補強部材60は、図3及び図4に示すように、例えば、直方体(四角柱状)に形成されているが、この例に限られない。例えば、側壁補強部材50及び妻壁補強部材60が、三角柱状に形成されていてもよいし、側壁補強部材50及び妻壁補強部材60の棺100内側方向の角部が面取りされていてもよい。また、図5Cに示すように、平面視で棺100の角部において、側壁補強部材50と妻壁補強部材60とは接触している。
【0029】
図3に示すように、第1実施形態では、釘部材1は、底板10と側壁部20及び側壁補強部材50とを機械的に接合する。また、図4に示すように、釘部材2は、底板10と妻壁部30及び妻壁補強部材60とを機械的に接合する。釘部材1及び2は、例えば、円柱形状、円錐状、多角柱形状、多角錐形状、又はこれらが組み合わされた形状を有する。図3及び図4では、釘部材1及び2の径を一定に図示しているが、釘部材1及び2は、先細り形状を有してもよい。
【0030】
図3に示すように、釘部材1は、底板10から側壁部20と側壁補強部材50とに亘って配置されている。具体的には、釘部材1は、底板10の突部11に形成された孔部11aを貫通するとともに、側壁部20と側壁補強部材50との境界部分に打ち込まれている。これにより、釘部材1は、桟木21の凹部21bと側壁補強部材50の側面50aとに挟まれている。また、釘部材1は、桟木21の厚み方向の中心C1及びC2よりも、側壁補強部材50側に配置されている。図4に示すように、釘部材2は、底板10から妻壁部30と妻壁補強部材60とに亘って配置されている。また、釘部材2は、桟木31の厚み方向の中心C3及びC4よりも、妻壁補強部材60側に配置されている。
【0031】
ここで、側壁部20のうちの中心C1よりも板部材22側の部分に、釘部材1を打ち込む場合、側壁部20の板部材22に割れが生じることや、板部材22に変形が生じる場合があるが、上記の構成によれば、底板10から側壁部20のうちの中心C1よりも側壁補強部材50側の部分に釘部材1が配置される(打ち込まれる)ので、側壁部20の板部材22(外側面22a)に割れが生じること、及び板部材22(外側面22a)に変形が生じるのを防止することができる。そして、側壁部20のうちの側壁補強部材50側の部分では、側壁補強部材50により補強されているので、側壁部20のうちの側壁補強部材50側の部分においても、割れが生じるのを防止することができる。また、側壁部20と同様に、妻壁部30の板部材32(外側面32a)に割れが生じること、及び板部材32(外側面32a)に変形が生じるのを防止することができる。そして、妻壁部30のうちの妻壁補強部材60側の部分においても、妻壁補強部材60により割れが生じるのを防止することができる。また、釘部材1は、底板10から桟木21に亘って配置される(桟木21に打ち込まれる)ので、板部材22又は23のみに釘部材1を打ち込む場合に比べて、底板10と側壁部20との接合強度を向上させることができる。
【0032】
図3に示すように、釘部材1は、側壁部20の板部材22及び板部材23と平行に延びている。図4に示すように、釘部材2は、妻壁部30の板部材32及び板部材33と平行に延びている。これらの構成によれば、側壁部20の厚み及び妻壁部30の厚みの各々を増大させることなく、下記のように釘部材1を底板10に垂直な方向(Z1方向)に対して傾斜するように配置することができる。
【0033】
図7は、図5Aの釘部材1が設けられている箇所の拡大図である。図8は、図6Aの釘部材2が設けられている箇所の拡大図である。図5Aに示すように、複数の釘部材1は、それぞれ、底板10に垂直な方向(Z1方向)に対して傾斜して配置されている。第1実施形態では、複数の釘部材1は、例えば、互いに平行に延びている。図6Aに示すように、複数の釘部材2は、それぞれ、底板10に垂直な方向(Z1方向)に対して傾斜して配置されている。第1実施形態では、複数の釘部材2は、互いに平行に延びている。
【0034】
上記の構成によれば、釘部材1及び2が延びる方向A1及びA2と、ご遺体の荷重が底板にかかる方向(Z2方向)とを交差させることができる。これにより、釘部材1及び2の径及び側壁部20の厚み及び妻壁部30の厚みを大きくすることなく、釘部材1及び2を側壁部20及び妻壁部30から抜けにくくすることができる。さらに、側壁部20と底板10との接合部分に側壁補強部材50が配置されるので、側壁部20全体の厚みを小さくしつつ、側壁補強部材50及び釘部材1により、側壁部20と底板10との接合強度を増大させることができる。妻壁補強部材60によっても、側壁補強部材50と同様に、妻壁部30全体の厚みを小さくしつつ、妻壁補強部材60及び釘部材2により、妻壁部30と底板10との接合強度を増大させることができる。この結果、棺100を軽量化させながら、底板10と側壁部20及び妻壁部30との接合強度を向上させることができる。
【0035】
また、図7に示すように、釘部材1が延びる方向A1と、底板10に垂直な方向(Z1方向)とのなす角度θ1は、例えば、30度以上60度以下の角度であり、具体的には、45度である。また、釘部材1は、Z1方向に対してY2方向に傾斜している。図8に示すように、釘部材2が延びる方向A2と、底板10に垂直な方向(Z1方向)とのなす角度θ2は、例えば、30度以上60度以下の角度であり、具体的には、45度である。また、釘部材2は、釘部材1が傾斜する方向(Y2方向)に直交する方向であるX2方向に傾斜している。なお、「Y2方向(X2方向)に傾斜している」とは、釘部材1の先端(棺100の内部側の端部)が底板10に配置された部分よりもY2方向(X2方向)の位置に配置されていることを意味する。
【0036】
[第2実施形態]
図9を参照して、第2実施形態における金具類及び金釘無し棺200(以下、「棺200」という)の構成について説明する。図9は、第2実施形態における棺200の一部の断面図である。第2実施形態では、釘部材201は、側壁部220の板部材23に対して傾斜して配置されている。なお、第1実施形態と同様の構成には、第1実施形態と同じ符号を用い説明を省略する。
【0037】
図9に示すように、第2実施形態による棺200は、釘部材201と、底板210と、側壁部220と、側壁補強部材250とを含む。そして、釘部材201は、底板210に直交する方向であるZ1方向に対して傾斜し、かつ、側壁部220の板部材223に対して側壁部220の外側面22a(X1方向)に向かって傾斜している。そして、釘部材201は、底板210から側壁補強部材250を通過して側壁部220に亘って配置されている(打ち込まれている)。具体的には、釘部材201は、根元部分201aと、先端部分201bと、根元部分201aと先端部分201bとの間の部分201cとを含む。根元部分201aは、底板210に形成された孔部211aに配置されている。先端部分201bは、桟木221に形成された孔部221aに嵌っている。部分201cは、側壁補強部材250の面250aに当接している。また、部分201cは、側壁部220と側壁補強部材250との境界部分に配置されている。なお、図示しないが、底板210と妻壁部とを接合する釘部材が、妻壁部の外側面に向かって傾斜するように配置されていてもよい。また、第1実施形態の釘部材1のように、釘部材201が、Z1方向に対してX1方向のみならずY2方向にも傾斜して配置されていてもよい。
【0038】
第2実施形態の構成によれば、底板210と側壁補強部材250と側壁部220とが釘部材201により固定されるので、底板210と側壁補強部材250との接合強度、及び側壁補強部材250と側壁部220との接合強度の両方を向上させることができる。ここで、棺に、側壁補強部材を設けずに、釘部材を、側壁部の板部材に対して傾斜するように(X1方向に傾斜するように)、底板及び側壁部に打ち込む場合、底板と側壁部とにより形成される棺の内側の角部において、釘部材が露出してしまう場合がある。これを防ぐためには、底板の厚み及び側壁部の厚みを増大する必要があるが、厚みを増大させると棺の重量が増加してしまう。これに対して、第2実施形態では、棺200には、側壁補強部材250が設けられているので、底板210から側壁部220に向かって、X1方向に釘部材201を打ち込む場合に、釘部材201を側壁補強部材250のうちの底板210側の面又は側壁部220側の面(面250a)に沿って通過させることができる。この結果、釘部材201を、底板210から側壁部220に亘って打ち込む場合でも、底板210の厚み及び側壁部220の厚みを増大させることなく、釘部材201(部分201c)が、棺200の内側に露出しない。これにより、棺200を軽量化しながら、底板210と側壁部220との接合強度を向上させることができる。なお、その他の構成及び効果は、第1実施形態の構成及び効果と同様である。
【0039】
[変形例]
以上、上述した実施の形態は本開示を実施するための例示に過ぎない。よって、本開示は、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0040】
(1)例えば、上記第1実施形態では、釘部材が底板から側壁部と側壁補強部材との境界部分に亘って配置される例を、上記第2実施形態では、釘部材が底板から側壁補強部材を貫通して側壁部に亘って配置される例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、図10に示す第1変形例による金具類及び金釘無し棺300のように、釘部材301が、側壁補強部材50には接触しないで、底板10から側壁部20に亘って配置されていてもよい。また、図11に示す第2変形例による金具類及び金釘無し棺400のように、釘部材401が、側壁部20には接触しないで、底板10から側壁補強部材50に亘って配
置されていてもよい。
【0041】
(2)また、上記第1及び第2実施形態では、底部と側壁部とを接合する複数の釘部材の傾斜する方向を互いに平行にする例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、図12に示す第3変形例による金具類及び金釘無し棺500のように、釘部材501の傾斜する方向が、Y1方向とY2方向とで交互になるように、複数の釘部材501が並んで配置されていてもよいし、図13に示す第4変形例による金具類及び金釘無し棺600のように、複数の釘部材601のうち底板10の中心C11よりもY1方向の部分に配置された釘部材601がY1方向(又はY2方向)に傾斜し、底板10の中心C11よりもY2方向の部分に配置された釘部材601がY2方向(又はY1方向)に傾斜するように、複数の釘部材601が配置されていてもよい。
【0042】
(3)また、上記第1及び第2実施形態では、底板の突部が側壁部の桟木の段差部に配置されるように、底板と側壁部とを構成する例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、図14に示す第5変形例による金具類及び金釘無し棺700のように、底板710の突部711は、側壁部720の桟木721に形成され、板部材22側に窪む穴部721aに嵌められていてもよい。
【0043】
(4)また、上記第1及び第2実施形態では、側壁部及び妻壁部を、それぞれ、桟木と2つの板部材とにより構成される例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、図15に示す第6変形例による金具類及び金釘無し棺800のように、側壁部820は、1つの板部材から構成されていてもよい。また、図示しないが、妻壁部が1つの板部材から構成されていてもよい。
【0044】
(5)また、上記第1及び第2実施形態では、側壁部の下端と底板の下面とを面一に形成する例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、底板の下面を、側壁部の下端よりも上方に配置して、底板の下面に桟木を配置してもよい。
【0045】
(6)また、上記第1及び第2実施形態では、底板と側壁部とを接合する釘部材及び底板と妻壁部とを接合する釘部材の両方を、底板と垂直な方向に対して傾斜させる例を示したが、本開示はこれに限られない。すなわち、棺に設けられている複数の釘部材のうちの、底板と側壁部とを接合する釘部材の少なくとも1つが底板と垂直な方向に対して傾斜されていればよい。
【0046】
(7)また、上記第1及び第2実施形態では、図3及び図9に示すように、底板よりもX1方向に配置される側壁部に対して、釘部材がZ1方向に延びるように配置されるか(第1実施形態)、または、釘部材がZ1方向に対してX1方向(外側面側)に傾斜して延びるように配置される(第2実施形態)例を示したが、本開示はこれに限られない。図16に示す第7変形例による棺900のように、釘部材901がZ1方向に対してX2方向(内側面23a側)に傾斜して延びるように配置されていてもよい。この場合、釘部材901が、側壁部20の内側面23aを越えて、側壁部20と側壁補強部材50との境界部分に亘って配置されてもよいし、釘部材901が、当該境界部分をさらに越えて、側壁補強部材50の内部に配置され(打ち込まれ)てもよい。
【0047】
なお、本開示の金具類及び金釘無し棺は、以下のように説明することもできる。
【0048】
本開示の第1の構成に係る金具類及び金釘無し棺は、全ての構成要素が可燃性素材で形成されている金具類及び金釘無し棺であって、底板と、底板に接触している側壁部と、側壁部の内側面に接合されている側壁補強部材であって、底板に接触している側壁補強部材と、底板と側壁部及び側壁補強部材の少なくとも一方とを機械的に接合する可燃性素材の
第1釘部材であって、底板から側壁部及び側壁補強部材の少なくとも一方に亘って配置される可燃性素材の第1釘部材と、を備え、第1釘部材は、底板に垂直な方向に対して傾斜して延びている(第1の構成)。
【0049】
上記第1の構成によれば、第1釘部材が延びる方向と、ご遺体の荷重が底板にかかる方向とを交差させることができるので、第1釘部材の径及び側壁部の厚みを大きくすることなく、第1釘部材を側壁部又は側壁補強部材から抜けにくくすることができる。さらに、側壁部と底板との接合部分に側壁補強部材が配置されるので、側壁部全体の厚みを小さくしつつ、側壁補強部材及び第1釘部材により、側壁部と底板との接合強度を増大させることができる。この結果、棺を軽量化させながら、底板と側壁部との接合強度を向上させることができる。
【0050】
第1の構成において、第1釘部材は、底板から側壁部のうちの側壁補強部材側の部分に亘って配置されていてもよい(第2の構成)。
【0051】
ここで、側壁部のうちの外側面側の部分に第1釘部材を打ち込む場合、側壁部の外側面に割れが生じることや、外側面に変形が生じる場合があるが、上記第2の構成によれば、底板から側壁部のうちの側壁補強部材側の部分に第1釘部材が配置される(打ち込まれる)ので、側壁部の外側面に割れが生じること、及び外側面に変形が生じるのを防止することができる。そして、側壁部のうちの側壁補強部材側の部分では、側壁補強部材により補強されているので、側壁部のうちの側壁補強部材側の部分においても、割れが生じるのを防止することができる。
【0052】
第1または第2の構成において、第1釘部材は、側壁部の面と平行で、かつ、底板に垂直な方向に対して傾斜して延びるように配置されていてもよい(第3の構成)。
【0053】
上記第3の構成によれば、側壁部の厚みを増大させることなく、第1釘部材を底板に垂直な方向に対して傾斜するように配置することができる。
【0054】
第1または第2の構成において、第1釘部材は、側壁部の面に対して傾斜して延びるように配置されていてもよい(第4の構成)。
【0055】
上記第4の構成によれば、底板と側壁補強部材と側壁部とが第1釘部材により固定されるので、底板と側壁補強部材と側壁部との各々の接合強度を向上させることができる。
【0056】
第1~第4のいずれか1つの構成において、側壁部は、桟木と、当該桟木を両側から挟む一対の板部材とを含むように構成されてもよく、第1釘部材は、底板から少なくとも桟木に亘って配置されていてもよい(第5の構成)。
【0057】
上記第5の構成によれば、側壁部を中実の1つの板部材により形成する場合に比べて、側壁部を軽量化することができる。また、側壁部の内部に空間が形成されるので、火葬場での燃焼時間が短縮、及び火葬における燃料を削減することができる。そして、第1釘部材は、底板から桟木に亘って配置される(桟木に打ち込まれる)ので、一対の板部材のみに第1釘部材を打ち込む場合に比べて、底板と側壁部との接合強度を向上させることができる。
【0058】
第1~第5のいずれか1つの構成において、棺は、平面視で側壁部に直交して配置されている妻壁部と、妻壁部の内側面に接合されている妻壁補強部材であって、底板に接触している妻壁補強部材と、底板と妻壁部及び妻壁補強部材の少なくとも一方とを機械的に接合する燃性素材の第2釘部材であって、底板から妻壁部及び妻壁補強部材の少なくとも一
方に亘って配置される可燃性素材の第2釘部材と、をさらに備えてもよく、第2釘部材は、底板に垂直な方向に対して傾斜して延びていると共に、第1釘部材が傾斜する方向に直交する方向に傾斜して延びるように構成されていてもよい(第6の構成)。
【0059】
上記第6の構成によれば、第1釘部材と第2釘部材とが異なる方向に傾斜するので、同一の方向に傾斜する場合に比べて、底板が側壁部及び妻壁部に対する接合強度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0060】
1,2,201,301,401,501,601,701,801,901…釘部材、10,210…底板、20,220,720,820…側壁部、21,721…桟木、22…板部材、22a…外側面、23,223…板部材、23a…内側面、30…妻壁部、33a…内側面、50,250…側壁補強部材、60…妻壁補強部材、100,200,300,400,500,600,700,800,900…棺
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16