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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169439
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】薬剤フィーダ及び薬剤払出し装置
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20221101BHJP
   B65B 1/30 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
A61J3/00 310F
B65B1/30 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049907
(22)【出願日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2021075383
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592246705
【氏名又は名称】株式会社湯山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】堀井 潤
【テーマコード(参考)】
3E118
4C047
【Fターム(参考)】
3E118AA07
3E118AB04
3E118BA10
3E118BB10
3E118BB12
3E118DA03
3E118DA20
3E118EA01
3E118FA04
4C047CC14
4C047JJ03
4C047JJ13
(57)【要約】
【課題】散薬を排出させる際の振動を正確に検知することが可能な薬剤フィーダを提供することを課題とする。また、そのような薬剤フィーダを備えた薬剤払出し装置を提供することを課題とする。
【解決手段】散薬が収容される薬剤容器10と、薬剤容器20を保持する容器支持部23(保持部材)を有し、薬剤容器20から散薬を排出することが可能である薬剤フィーダにおいて、薬剤容器20が、自身の振動を検知する振動検知センサ71を有するものとする。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
散薬が収容される薬剤容器と、前記薬剤容器を保持する保持部材を有し、前記薬剤容器から散薬を排出することが可能である薬剤フィーダにおいて、
前記薬剤容器が、自身の振動を検知する振動検知センサを有する、薬剤フィーダ。
【請求項2】
前記保持部材は、保持側係合部を有し、
前記振動検知センサは、センサ側係合部を備え、
前記薬剤容器を前記保持部材に保持させることで、前記保持側係合部と前記センサ側係合部が接触して電気的に接続された状態となり、前記振動検知センサと他の回路との間で信号の送受信が可能となる、請求項1に記載の薬剤フィーダ。
【請求項3】
前記薬剤容器が前記保持部材に保持されているか否かを判別する装着検知動作を実行するものであり、
前記装着検知動作は、前記振動検知センサから出力された信号が他の回路に入力されたことを条件として、前記薬剤容器が前記保持部材に保持されていると判別する、請求項2に記載の薬剤フィーダ。
【請求項4】
前記振動検知センサは、鉛直方向と、鉛直方向と交わる方向を含む複数方向の振動の検知が可能であり、
前記振動検知センサによる鉛直方向の振動の検出値を増幅して出力するものであり、検出値を増幅するオフセット電圧の値は、前記振動検知センサへの重力の影響に基づいて決定されるものであり、
鉛直方向の振動の検出値と、鉛直方向と交わる方向の振動の検出値とを増幅する前記オフセット電圧の値が同じである、請求項1乃至3のいずれかに記載の薬剤フィーダ。
【請求項5】
前記振動検知センサが加速度センサである、請求項1乃至4のいずれかに記載の薬剤フィーダ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の薬剤フィーダを備えている、薬剤払出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤を所定量計量して取り出す薬剤フィーダに関する。また、本発明は、そのような薬剤フィーダを備えた薬剤払出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大病院や、大規模の薬局では、散薬分包装置や散薬分包機能を備えた薬剤払出し装置が導入されている。
特許文献1に開示された旧来の薬剤払出し装置は、人手によって薬棚から処方された散薬が入った薬瓶を取り出し、天秤等の秤を使用して処方された特定の散薬の総重量を量り出す作業を行う必要があり、完全自動装置とは言いがたい。本出願人は、この問題に対処するため、特許文献2に開示された薬剤払出し装置を実用化した。
【0003】
特許文献2に開示された薬剤払出し装置は、薬剤容器を多数保管する容器保管装置と、薬剤容器を搬送させるロボットと、薬剤容器を振動させて薬剤容器から薬剤を排出させる容器載置装置と、分配皿とが内蔵されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-85703号公報
【特許文献2】国際公開第2015/076267号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、従来の薬剤払出し装置では、薬剤フィーダから散薬を排出させる際の振動を正確に検知するという観点から改良の余地があった。
【0006】
そこで本発明は、散薬を排出させる際の振動を正確に検知することが可能な薬剤フィーダを提供することを課題とする。また、そのような薬剤フィーダを備えた薬剤払出し装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一つの様相は、散薬が収容される薬剤容器と、前記薬剤容器を保持する保持部材を有し、前記薬剤容器から散薬を排出することが可能である薬剤フィーダにおいて、前記薬剤容器が、自身の振動を検知する振動検知センサを有する、薬剤フィーダである。
【0008】
本様相の薬剤フィーダは、散薬が収容された薬剤容器が振動検知センサを有しており、散薬を排出させる際、自身の振動検知センサで自身の振動を検知できる。すなわち、排出される散薬に近い位置で、排出させる際の振動の検知が可能となり、検知精度を高めることができる。
【0009】
上記した様相は、前記保持部材は、保持側係合部を有し、前記振動検知センサは、センサ側係合部を備え、前記薬剤容器を前記保持部材に保持させることで、前記保持側係合部と前記センサ側係合部が接触して電気的に接続された状態となり、前記振動検知センサと他の回路との間で信号の送受信が可能となることが好ましい。
【0010】
この様相によると、薬剤容器から外部に配線部材を延ばしたりすることなく振動の検知が可能となるので、保持部材に対する薬剤容器の着脱を煩雑化することなく検知精度を高くすることができる。
【0011】
上記した好ましい様相は、前記薬剤容器が前記保持部材に保持されているか否かを判別する装着検知動作を実行するものであり、前記装着検知動作は、前記振動検知センサから出力された信号が他の回路に入力されたことを条件として、前記薬剤容器が前記保持部材に保持されていると判別することがさらに好ましい。
【0012】
この様相によると、薬剤容器が保持されたか否かを検知するセンサ等を別途設けることなく薬剤容器の装着検知動作が可能となるため、製造コストの低減を図ることができる。
【0013】
上記した様相は、前記振動検知センサは、鉛直方向と、鉛直方向と交わる方向を含む複数方向の振動の検知が可能であり、前記振動検知センサによる鉛直方向の振動の検出値を増幅して出力するものであり、検出値を増幅するオフセット電圧の値は、前記振動検知センサへの重力の影響に基づいて決定されるものであり、鉛直方向の振動の検出値と、鉛直方向と交わる方向の振動の検出値とを増幅する前記オフセット電圧の値が同じであることが好ましい。
【0014】
この様相によると、安価な構成で、精度の高い振動検知が可能となる。
【0015】
上記した様相は、前記振動検知センサが加速度センサであることが好ましい。
【0016】
本発明の他の様相は、上記した薬剤フィーダを備えている、薬剤払出し装置である。
【0017】
かかる様相においても、散薬の排出させる際の振動の検知精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、散薬を排出させる際の振動を正確に検知することが可能な薬剤フィーダを提供できる。また、そのような薬剤フィーダを備えた薬剤払出し装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る薬剤払出し装置を示す斜視図であって、上蓋を開いた状態を示す。
図2図1で示される薬剤払出し装置の分配皿周辺を示す斜視図である。
図3図1の薬剤フィーダを示す斜視図である。
図4図3の薬剤フィーダから情報読書手段を省略して示す斜視図である。
図5図4とは異なる方向から観察した薬剤フィーダを示す斜視図である。
図6】薬剤容器を保持部材から取り外した状態の薬剤フィーダ(フィーダ本体)を示す斜視図であり、コネクタ接触部を省略して示す。
図7図6の薬剤フィーダを別方向からみた様子を示す斜視図であり、コネクタピンを省略して示す。
図8図6のフィーダ本体を示す側面図である。
図9図8のフィーダ本体をモデル化して示す側面図である。
図10】(a)は、図9で示す容器支持部をさらに簡易的なモデルとして示す斜視図であり、(b)は、図9で示す薬剤容器をさらに簡易的なモデルとして示す斜視図である。
図11図10の振動検知センサの回路図である。
図12】(a)は、薬剤フィーダの振動状態を検査する際における検査モードを示す論理表であり、(b)は、振動検知センサを切り替える回路図であって検査モードがNの場合の各スイッチの接続状態を示し、(c)は、振動検知センサを切り替える回路図であって検査モードがF1の場合の各スイッチの接続状態を示す。
図13】上記した実施形態とは異なる実施形態に係る薬剤容器を示す斜視図であり、(a)は、蓋部材を閉状態とした様子を示し、(b)は、蓋部材を開状態とした様子を示す。
図14図13(a)で示す薬剤容器を示す断面図であり、蓋部材と他の部分とを異なる切断面で切断した様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る薬剤払出し装置1について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、特に断りがない限り、上下の位置関係は通常の設置状態(図1の状態)を基準に説明する。
また、理解を容易にするため、先に薬剤払出し装置1の概要と大まかな動作について説明し、その後に各部材や装置を詳細に説明する。
【0021】
本実施形態の薬剤払出し装置1は、図1で示されるように、筐体2によって囲まれており、その内部は、錠剤手撒き領域300と、散薬分割領域301と、薬剤包装領域302に分かれる。また、筐体2の上部には、揺動自在に形成された上蓋が設けられている。
【0022】
錠剤手撒き領域300には錠剤手撒き装置303が設けられている。
錠剤手撒き装置303は公知であるから、詳細な説明を省略する。この錠剤手撒き装置303は、後述する分配皿3、薬剤フィーダ5等の上方に位置する。
【0023】
薬剤包装領域302には、図2に概念的に表示した様に薬剤包装装置305が内蔵されている。薬剤包装装置305は、薬剤を一服用分ずつ包装する機械であり、分包紙供給装置306(分包紙供給部)と、分包装置308(シール部)を有する。また薬剤包装装置305には、分包装置308の上方に、薬剤を投入する散薬投入ホッパー310が設けられている。
作図の関係上、散薬投入ホッパー310を分配皿3から離れた位置に図示しているが、実際には、散薬投入ホッパー310の上端は、分配皿3の機材収納開口15にある。
【0024】
薬剤包装装置305は、分包紙供給装置306の本体(図示しない)の装着部に、ロールペーパーを装着して使用する。ロールペーパーは、帯状の分包紙(包装紙)を管状の芯部材に巻いてロール状にしたものである。なお、特に限定されるものではないが、本実施形態のロールペーパーは、二つ折りされた状態で帯状となった分包紙をロール状にしたものである。
また、薬剤包装装置305は、図示しない印刷機構(印刷部)を有している。
薬剤包装装置305では、ロールペーパーから繰り出された分包紙が印刷機構に導入され、患者名、薬剤名称、服用日時等の情報(処方に関する情報であり、提供する薬剤に関する情報)が印刷される。その後、所定の情報が印刷された分包紙は、上向きに開口された状態にされる。そして、その状態で、散薬投入ホッパー310から落下(供給)された薬剤(散薬)を受け入れる。
さらに、薬剤を受け入れた分包紙が、シール部(分包装置308)に導入され、シール部で縦方向と横方向にシールされ、受け入れた薬剤を順次包装していく。このことにより、薬剤を一服用分内包した薬剤包装が形成され、薬剤包装が装置外部まで搬送される。
このとき、薬剤包装が複数包連続した薬剤包装帯を形成し、装置外部まで搬送される。しかしながら、薬剤包装帯ではなく、一又は複数の個別の薬剤包装を形成し、装置外部まで搬送してもよい。
なお、上記した横方向は、分包紙の繰出方向(送出方向)であり、縦方向は、分包紙の繰出方向と交差する(直交する)方向である。
【0025】
また、上記したロールペーパーの芯部材は、識別子が装着されていてもよい。識別子は、ロールペーパーを個別に識別可能な情報(製造メーカー等に関する情報(メーカー名等)や、製造年月日等に関する情報、当該芯に巻かれたロールペーパーの種類、受注No.、出荷日、納品先の顧客情報、当該ロールペーパーが装着される分包機の機種名、機種コード、その他ID等)が記憶された記憶手段であり、例えば、ICタグ等のメモリであってもよい。また、一次元コード(バーコード)や二次元コードのようなコードであってもよく、コードを採用する場合、ラベルに付されていてもよい。
そして、ロールペーパーを分包紙供給装置306に装着するとき、装着しようとする装置との照合、すなわち、所定のロールペーパーが正しく装置に装着されようとしているか否かを判別する動作を実行してもよい。また、識別子にロールペーパーが未使用であることを識別するための情報を記憶させ、装着する際に、ロールペーパーが未使用か否かを判別する動作を実行してもよい。さらに、ロールペーパー(分包紙ロール)を分包紙供給装置306の本体に装着したときの分包紙の残量に関する情報を記憶させてもよい。また、薬剤を包装する分包動作が実行されたとき、分包動作中の適宜な時点での残量を記憶させてもよい。この残量に関する情報は、例えば、分包動作中に記憶させてもよい。この他、分包動作後に分包動作の終了時の残量を記憶させてもよい。すなわち、薬剤払出し装置1を運用する際、適宜なタイミングで残量に関する情報を記憶させていってもよい。
【0026】
散薬分割領域301は、図2の様に、分配皿3が設置された領域であり、その周辺に薬剤フィーダ5と、清掃装置7が配置されている。また散薬分割領域301には、掻出装置8が設けられている。
分配皿3及び掻出装置8は公知であり、簡単に説明する。
分配皿3は、「凹溝」とも称され薬剤投入溝13が設けられた円板状の部材である。薬剤投入溝13は、分配皿3の外縁を環状に取り巻いている。分配皿3は、中央に機材収納開口15が設けられている。なお図2ではその大部分が蓋で覆われている。
機材収納開口15に、前記した散薬投入ホッパー310が設置されている。
分配皿3は、一定速度で回転させることができる。また所定の角度だけ回転させることもできる。
【0027】
掻出装置8は、掻出用アームの先端に回転板12を有する。具体的には、掻出用アームの先端にモータによって回転駆動可能な取付基台(図示しない)が設けられており、この取付基台に掻き板等(図示しない)を有する回転板12が取り付けられている。すなわち、回転板12は、モータの動力によって回転する。
掻出装置8の根本部分は、分配皿3の機材収納開口15内のターンテーブル(図示しない)の上に設置されている。この掻出装置8は、ターンテーブルが回転することで全体が旋回可能であり、掻出用アームが上下方向に揺動可能である。なお、掻出装置8は、ターンテーブルを設けず、全体が旋回しないものであって、掻出用アームが揺動可能であるものでもよい。
【0028】
ここで、本実施形態の薬剤払出し装置1は、図2で示されるように、散薬投入ホッパー310の薬剤投入口となる上部開口が分配皿3の内側に位置する。すなわち、散薬投入ホッパー310の外側で分配皿3が環状(円環状)に連続しており、平面視において分配皿3で囲まれた領域に散薬投入ホッパー310が位置する。そして、掻出装置8もまた、分配皿3の内側に位置させている。
そして、掻出装置8によって分配皿3上の散薬を掻き出して散薬投入ホッパー310に投入する際、散薬を分配皿3の内側に向かって掻き出している。すなわち、分配皿3上の散薬を分配皿3の内側に移動させるように、回転板12を回転させて掻き板を移動させている(掻き板が分配皿3の外縁側から内縁側に向かって横断する方向で移動するように、回転板12を回転させている)。
本実施形態では、分配皿3の内側に掻出装置8を設け、分配皿3の内側に向かって散薬を掻き出すことで、分配皿3の外側の部材数を少なくしている。すなわち、分配皿3の外側であり、薬剤フィーダ5の周辺に広いスペースを確保し、フィーダ本体10に対する薬剤容器20の着脱を手作業で行う際に作業をやり易くすると共に、薬剤払出し装置1の装置全体の小型化に寄与している。
【0029】
薬剤フィーダ5は、図3図4図5の様に、フィーダ部22に重量校正部21が設けられたものである。また、薬剤フィーダ5は、後述する情報記憶手段65(図4参照)に対して情報の読み取り及び書き込みが可能な情報読書手段66(図3参照)を有する。フィーダ部22は、図6図8の様に、散薬が収容される薬剤容器20と、薬剤容器20を保持するフィーダ本体10とを有している。
フィーダ本体10は、図9の様に、機構上、容器支持部23(保持部材)と、重量測定部24と、土台部26に分けられる。
容器支持部23は、支持台27と、振動部材16及び加振手段30a,30bを有している。加振手段30a,30bは、圧電素子であり、板状を呈している。
【0030】
支持台27及び振動部材16は、共に側面形状が「L」型の部材であり、水平部と垂直壁部を有している。即ち支持台27は、図8図9の様に、支持側水平部30と、支持側垂直壁部31を有している。振動部材16は、容器保持部としても機能するものであり、振動側水平部32と、振動側垂直壁部33を有している。振動側垂直壁部33には、薬剤容器20と係合する係合部(溝状の係合部48(台形の係合部47)と、係合片50の2つであり、図7参照)が設けられている。
【0031】
係合部47は、図7で示されるように、正面視が長方形に近い台形であり、一方の斜辺の下部には膨らみ部58がある。また、この台形形状の斜辺に相当する辺に溝状の係合部48が形成される。
また、係合部47の正面であって、その下部には、略四角形の開口51が設けられている。そして開口51内に係合片50が収容されている。係合片50は、出し入れ機構に接続されており、開口51から出没する。
また、振動側水平部32の一方の辺部には、図7で示されるように、シャッター開閉機構55が設けられている。シャッター開閉機構55は、薬剤容器20から散薬を定量排出するための開閉機構である。
【0032】
支持台27と、振動部材16の間が、二枚の加振手段30a,30bによって接続されている。振動側水平部32と支持側水平部30との間は実質的に非接触である。従って、加振手段30a,30bに通電すると、振動部材16が振動する。
【0033】
容器支持部23の下部に重量測定部24が配されている。重量測定部24は、重量測定手段25と防振手段18を備えている。重量測定手段25は、公知のロードセルである。防振手段18は防振部材28を有している。
重量測定手段25の検知部に容器支持部23(支持台27、振動部材16、加振手段30a,30b)が接続されている。また土台部26は、重量測定部24の防振部材28を介して、上部の部材(支持台27、振動部材16、加振手段30a,30b)を支持している。
容器支持部23の重量は、重量測定手段25で検知される。防振手段18の重量は、土台部26に掛かるが、重量測定手段25には掛からない。従って、容器支持部23(支持台27、振動部材16、加振手段30a,30b)の重量は、重量測定手段25によって検知される(測定可能である)。
【0034】
薬剤容器20は、散薬が充填される容器であり、その形状は、側面形状が略正方形の直方体である。
薬剤容器20は、図6図8図9の様に、正面壁35と、背面壁36と、左右側面壁37と、天面壁38及び底面壁40によって囲まれている。
薬剤容器20の底面壁40であって、正面壁35近傍に開閉可能な散薬排出部がある。
また背面壁36の縦辺と、下部に係合部(係合溝130、係合凹部131、図6参照)がある。
【0035】
詳細には、背面壁36には、図6で示されるように、一対の係合溝130と、一つの係合凹部131が設けられている。係合溝130は、背面壁36の左右の縦辺に沿って設けられた内側に向かって開く縦溝である。係合凹部131は、背面壁36の下部に設けられた窪みである。
係合溝130は、係合部48(図7参照)と係合する部分である。すなわち、薬剤容器20の背面壁36をフィーダ本体10の振動側垂直壁部33に沿って上部から差し込むことにより、係合溝130と係合部48が係合する。
係合凹部131は、係合片50(図7参照)と係合する部分である。詳細には、係合片50は、薬剤容器20をフィーダ本体10に取り付ける(フィーダ本体10の振動側垂直壁部33に沿って上部から差し込む)とき、開口51に退入した状態となる。そして、薬剤フィーダ5が駆動するとき、開口51から外部に突出し、係合片50が係合凹部131に挿入され、係合片50と係合凹部131が係合する。
【0036】
さらに、2つの左右側面壁37の一方には、情報記憶手段65(情報記録部材であり、本実施形態ではRFIDタグ)が取り付けられている(図4参照)。この情報記憶手段65には、薬剤容器20に関する情報(薬剤容器20に収容されている散薬に関する情報)が記憶されている。例えば、収容された薬剤を特定する識別情報(薬剤名や各種コード等の情報)や、収容された薬剤の現在の残量に関する残量情報が記憶されている。情報記憶手段65に記憶された情報は、処方データ等と関連付けて使用可能な情報であり、情報記憶手段65に記憶された情報を取得することで、薬剤容器20に収容された散薬の種類を特定する動作等が可能となる。この情報記憶手段65は、ICタグ等のメモリであってもよい。また、一次元コード(バーコード)や二次元コードのようなコードであってもよく、コードを採用する場合、ラベルに付されていてもよい。
【0037】
なお、薬剤フィーダ5は、上記したように、情報記憶手段65に対して情報の読み取り及び書き込みが可能な情報読書手段66(図3参照)を有する。本実施形態では、この情報読書手段66としてRFIDリーダライタを採用しており、無線通信によって情報記憶手段65に対する情報の読書が可能である。そして、情報記憶手段65からカセット情報を読み取る動作と、薬剤容器20から散薬を払い出した後に残量を書き込む(書き換える)動作が可能となっている。なお、カセット情報は、上記した薬剤容器20に関する情報であり、例えば、薬剤名と残量が挙げられる。
この情報読書手段66は、フィーダ本体10に薬剤容器20が取り付けられた状態において、情報記憶手段65の外側となる位置であり、情報記憶手段65からやや離れた位置に配される(図3図4参照)。なお、情報読書手段66に替わって、情報の読取と書き込みのそれぞれが可能な情報読取手段、情報書込手段等を設けることも考えられる。
【0038】
また、薬剤容器20は、図7で示されるように、シャッター構造部60を有する。シャッター構造部60は、シャッター部材61と、伝動部材62を有する。薬剤容器20をフィーダ本体10に保持させることで、伝動部材62とシャッター開閉機構55が係合する。そして、シャッター開閉機構55によって伝動部材62が直線移動することで、シャッター部材61が直線移動し、薬剤容器20の下方側に設けられた開口(散薬排出部)外部と連通した開状態となる。また、開状態に移行するときとは逆側にシャッター部材61を移動させることで、開口(散薬排出部)外部と連通しない閉状態となる。そして、薬剤容器20から散薬を排出させる際には、薬剤容器20を閉状態から開状態に移行する。
【0039】
薬剤容器20には散薬が充填され、図5の様に、フィーダ本体10に固定される。即ち、薬剤容器20の背面壁36(図6参照)が容器保持部たる振動部材16の振動側垂直壁部33と接し、薬剤容器20の底面壁40の背面壁36側(図6参照)が振動側水平部32と接し、薬剤容器20の大部分が片持ち状に張り出した状態で、フィーダ本体10に固定される。また薬剤容器20の係合部(係合溝130、係合凹部131であり、図6参照)が、それぞれ振動部材16の二か所の係合部(溝状の係合部48(台形の係合部47)と、係合片50の2つであり、図7参照)と係合している。そのため、薬剤容器20は、振動部材16と一体化されており、振動部材16と共に振動する。
【0040】
重量校正部21は、重量測定手段25が正常であるか否かを検知するものである。重量校正部21は、図4の様に、分銅42と、分銅42が載置される分銅載置部材43と、分銅42を中空に持ち上げる分銅支持部材を有している。
分銅載置部材43は、フィーダ本体10の容器支持部23に取付用部材を介して固定されている。従って、分銅載置部材43の重量は、重量測定手段25に付加される。
一方、分銅支持部材は、フィーダ本体10の土台部26に荷重が付加されるように配されている。従って分銅支持部材の重量は、重量測定手段25に付加されない。
【0041】
本実施形態では、図2で示されるように、分配皿3の周囲に、薬剤フィーダ5が6基、固定されている。薬剤容器20は、正面壁35側(図6等参照)が分配皿3に向かって突き出しており、散薬排出部は、薬剤投入溝13の真上の位置にある。
【0042】
本実施形態の薬剤払出し装置1では、あらかじめ各薬剤フィーダ5の薬剤容器20に異なる薬剤が充填されている。
そして処方箋(処方に関する情報である処方データ)に基づき、特定の薬剤フィーダ5が駆動され、散薬が分配皿3に投入される。具体的には、図示しない制御装置の信号によって、特定の薬剤フィーダ5の加振手段30a,30bに一定周波数の電流を通電して振動を発生させ、この振動によって振動部材16を振動させる。
また振動開始と前後して分配皿3を回転させる。
【0043】
また振動開始と前後して、薬剤容器20の重量が測定される。薬剤容器20の重量は、重量測定手段25の検知重量から、一定値を引いたものである。より具体的には、薬剤容器20の重量は、重量測定手段25の検知重量から、容器支持部23及び重量校正部21の一部を含む部材(重量測定手段25に対して荷重が付加される部材)の重量を引いたものである。散薬排出前の薬剤容器20の重量は、原重量Gとして記憶される。また薬剤容器20の重量は、常時監視される。即ち薬剤容器20の現在の重量は、現重量gとして監視される。
【0044】
振動部材16が振動を開始すると、薬剤容器20が共に振動する。ここで、本実施形態では、薬剤容器20は、二か所に設けられた係合部(係合溝130、係合凹部131であり、図6参照)によって強固に振動部材16に接合されており、且つ、振動部材16との密着度合いも高いので、薬剤容器20は、振動部材16と同一周波数で振動する。その結果、薬剤容器20に貯留された散薬が、底面壁40に設けられた散薬排出部側(シャッター構造部60側であり、図7参照)に向かってゆっくりと移動する。
そして散薬は、薬剤容器20の下方側に設けられた開口である散薬排出部から落下し、下の分配皿3の薬剤投入溝13に入る。
【0045】
散薬が落下中であることは、薬剤容器20の重量が減少することによって確認される。即ち本実施形態では、散薬が薬剤容器20から落下中においても、薬剤容器20の現在の重量が、現重量gとして監視され続けている。そして振動部材16に設置直後の薬剤容器20の原重量Gと、現重量gとを比較し、散薬の落下量H(散薬の排出量であり、Gマイナスg)を常時演算している。そして散薬の総落下量H(総排出量)が所望の重量となったところで、振動部材16の振動を停止する。
【0046】
その後の動作は、掻出装置8の回転板12を分配皿3の薬剤投入溝13内に落とす。さらにその後、分配皿3を分配個数に応じた角度だけ回転させ、一服用分の散薬を回転板12の前面側に集める。そして回転板12を回転し、図示しない掻き板によって散薬を分配皿3の外に掻き出して、散薬投入ホッパー310に一服用分ずつ投入する。散薬投入ホッパー310から落下した散薬は、薬剤包装装置305に導入される。
このように、本実施形態の薬剤払出し装置1は、公知の薬剤払い出し装置と同様に、薬剤を一服用分ずつ包装する分包動作が可能となっている。また、容器支持部23は、薬剤容器20から散薬を排出させる散薬排出手段として機能する。
【0047】
上記した一連の薬剤排出動作は、重量校正部21の分銅支持部材によって分銅42が持ち上げられた状態で行われる。そのため、分銅42の重量は、重量測定手段25に検知されない。
重量測定手段25が正常であるか否かを判別する際には、分銅支持部材を動作させて分銅42を分銅載置部材43に載せる。その結果、分銅42の重量が、重量測定手段25に掛かり、分銅42の重量が検知される。
ここで分銅42の重量は既知であるから、分銅42を載せたことによる検知重量の増加分が、分銅42の重量と等しければ、重量測定手段25が正常であると言える。逆に、分銅42を載せたことによる検知重量の増加分が、分銅42の重量と異なっていれば、重量測定手段25が故障していると言える。
【0048】
本実施形態の薬剤フィーダ5は、特徴的な構成として、図10で示されるように、薬剤容器20の振動を検知する振動検知手段70が設けられている。この振動検知手段70は、薬剤容器20と一体に設けられた振動検知センサ71を有している。そして、薬剤容器20を容器支持部23に保持させることで薬剤容器20の振動を電気信号として検出可能となっている。
【0049】
本実施形態では、振動検知センサ71として、3軸の振動を検知可能な加速度センサを採用している。詳細には、水平面と平行な方向に延びる軸であって互いに直角となる2つの軸をX軸、Y軸とし、その2つの軸に対して垂直な方向に延びる軸をZ軸として、X軸、Y軸、Z軸からなる3軸の検知を可能としている。つまり、本実施形態では、3軸加速度センサにおいて、1つの軸を鉛直方向(上下方向)の検知が可能な状態とし、他の軸を水平面と平行な方向の検知が可能な状態としている。
【0050】
この振動検知センサ71は、振動部材16(フィーダ本体10)に設けられたコネクタピン72(保持側係合部、図10(a)参照)と接触するコネクタ接触部71aを有する。コネクタ接触部71a(センサ側係合部)は、金属製で外形が平板状となる部分であり、本実施形態では、複数(3つ)設けられている。
振動検知センサ71は、センサを構成する基板のうち、コネクタ接触部71aが外部に露出し、他の大半の部分が外部から視認できない状態で取り付けられている。詳細には、薬剤容器20の背面壁36に設けられた複数の貫通孔のそれぞれからコネクタ接触部71aが外部に露出し、他の部分が外部に露出しない状態で取り付けられている。
【0051】
以上のことから、薬剤容器20を容器支持部23に正しく保持させることで、振動検知センサ71のコネクタ接触部71aとコネクタピン72が接触し、これらが電気的に接続された状態となる。すなわち、コネクタ接触部71aとコネクタピン72は、電気的に接続が可能な対となる係合部として機能する。
そして、コネクタ接触部71aとコネクタピン72が電気的に接続されることで、振動検知センサ71と図示しない制御装置(以下容器支持部23側の回路(通信回路、給電回路、信号処理回路等を含む回路)という)が電気的に接続された状態となる。このことから、振動検知センサ71への給電や、振動検知センサ71と容器支持部23側の回路との間での信号の送受信が可能となる。つまり、振動検知センサ71が容器支持部23側に設けられた外部の回路と信号線及び給電線となる部材を介して接続された状態となる。
【0052】
なお、コネクタピン72は、一部又は全体が内外に出退可能な状態で振動部材16(容器支持部23)に取り付けてもよい。例えば、振動側水平部32に内外に出退可能なトリガー片を設け、薬剤容器20を振動側水平部32に載置したとき、トリガー片が下方側に押し込まれ、それと連動してコネクタピン72が突出する構造としてもよい。すなわち、薬剤容器20を保持させたときに外部に突出するようにしてもよい。
また、本実施形態では、保持側係合部としてコネクタピン72を採用したが、本発明はこれに限るものではない。外形が突起状(棒状や針状)となる端子に限らず、例えば、平板状の部分であってもよい。すなわち、振動検知センサ71の端子部分(コネクタ接触部71a)と対となる端子部分であって、電気的な接触が可能であればよい。
【0053】
本実施形態の薬剤フィーダ5は、薬剤容器20が容器支持部23に正しく取り付けられているか否か(正しく保持されているか否か)を判別する装着判別動作が可能である。
装着判別動作は、振動検知センサ71から容器支持部23側の回路に入力電圧(入力信号)が入力されたことを条件として、薬剤容器20が容器支持部23に正しく取り付けられていると判別する。反対に、容器支持部23側の回路に入力電圧(入力信号)が入力されなかった場合、コネクタ接触部71aとコネクタピン72が正しく接触していない可能性が高い。そこで、この場合には、薬剤容器20が正しく取り付けられていないものと判別する。
【0054】
ここで、振動検知センサ71からの出力電圧(出力信号)が入力電圧(入力信号)として外部の回路に入力されるとき、採用した加速度センサの種類によっては、入力電圧を増幅する必要が生じる。例えば、振動検知センサ71にスケールが大きい(検知感度が低い)アナログ出力式の加速度センサを採用した場合等では、薬剤容器20が最大の振動をした場合でも、入力電圧が僅かな変化しかしない可能性がある。この場合、入力電圧を増幅しないと正確な振動の検知が困難となる。
ところが、3軸の各軸にオフセット電圧(オフセット調整用の回路)を設けて入力電圧を増幅したのでは、回路構成が高価になってしまうという問題が生じる。また、この場合、各軸を補正するオフセット電圧にはバラつきがあり、温度特性や重力等の周辺環境からも影響を受けるおそれがある。オフセット電圧が設定値からずれて増幅波形が測定レンジから振り切れてしまうことを防止する方法として、振動検知センサ71のセンサ基板をボリューム調整が可能なものとする方法が考えられるが、出荷時に調整が必要となるので好ましくない。
この課題を解決する方策として、3軸の振動検知センサ71の信号を増幅する際のオフセット電圧を同じ電圧とし、さらにオフセット電圧を、増幅波形が測定レンジから振り切らない程度に設定することが推奨される。
ここで、振動検知センサ71からの出力電圧が最大となるのは、3軸のセンサ軸の内、鉛直方向(上下方向)の振動を検知するものである。そのため、振動検知センサ71を増幅する際のオフセット電圧を、3軸のセンサ軸の内、鉛直方向(上下方向)の振動を検知する振動検知センサ71の増幅信号が、測定レンジに収まる範囲で高いものとする。
【0055】
そこで、本実施形態の薬剤フィーダ5では、3軸のセンサ軸の1つであるZ軸を鉛直方向(上下方向)の検知が可能な状態とし、検知時における重力の影響を低減させている。すなわち、重力の影響による検出値の誤差を少なくすることで、誤差分を含めて増幅した際の影響を小さくしている。
さらに、Z軸での検出値を補正するオフセット電圧の値に重力の影響を反映している。
【0056】
詳細には、予め薬剤容器20を振動させない状態とし、Z軸を鉛直方向の検知が可能な状態として、所定の温度範囲(例えば、0℃乃至40℃)で測定を行う。この測定により、所定の電源電圧(例えば3V)でのZ軸の検出値における重力1g当たりの影響(発生する誤差の大きさであり、出力電圧の変化)を取得する。本発明者が薬剤フィーダ5を振動させない静止時において、それぞれ重力1g、0g、-1gの影響下でZ軸の検出値の測定(電圧測定)を行った結果、下記表1のような結果が得られた。
このように、それぞれの重力の影響下で、Z軸の増幅前の検出値と、増幅後の検出値を測定することで、所定の重力の影響により発生する検出値の誤差の大きさ、誤差の大きさに対する増幅後の影響が取得できる。なお、「誤差の大きさに対する増幅後の影響」は、増幅後の検出値の誤差の大きさであり、増幅後の検出値(出力電圧)の変化量である。本発明者が行った測定では、増幅後の検出値が重力1g当たり最大で0.2V程度変化してしまうことが判明した。
【表1】
【0057】
そして、取得した増幅後の検出値の変化量と、入力された回路における測定レンジに基づき、Z軸の検出値を補正する(出力電圧に含ませる)オフセット電圧の値を決定する。具体的には、図11におけるR1、R2の抵抗値を調整し、バイアス電圧を調整することで、オフセット電圧の値を決定する。
【0058】
さらに、本実施形態では、X軸、Y軸の検出値をオフセット電圧で補正するとき、図11で示されるように、X軸、Y軸の検出値を補正するオフセット電圧の値を、上記したZ軸の検出値を補正するオフセット電圧の値に合わせた値とする。すなわち、図11で示されるように、本実施形態では、X軸、Y軸、Z軸からなる3軸それぞれの検出値を補正(増幅)する増幅回路(オペアンプ)を備えている。そして、3軸それぞれの検出値の補正に同様のオフセット調整用の回路(オフセット調整用のオペアンプ)を使用する。
ここで、検出値を補正するオフセット電圧の値は、上記したように、重力の影響を反映した値である。X軸、Y軸の検出値は、重力の影響を受けないので、Z軸の検出値と同じオフセット電圧で補正すると、Z軸の補正時よりも設定値がずれてしまう。しかしながら、X軸、Y軸方向の振幅は、Z軸方向の振幅よりも少ないため、Z軸に合わせたオフセット電圧としても(Z軸と同様のバイアス電圧を基準にしても)測定レンジを外れてしまう等の問題が発生する可能性は低い。
つまり、本実施形態の振動検知センサ71は、出力電圧を増幅する増幅回路を有しており、3軸それぞれの検出値を補正するオフセット電圧をZ軸の検出値を補正する上で適切なオフセット電圧に合わせている。このように、オフセット電圧を最も振動することが予測される軸(Z軸)に合わせることで最大振動を精度よく検出できる。なお、X軸の検出値とY軸の検出値もまた、それぞれ別に、上記したZ軸のように予め行った測定等に基づいて補正することが検知精度を向上させる上で好ましい。しかしながら、上記したように、3軸それぞれを別途補正すると製造コストが増加してしまうという問題が生じる。そこで、上記したように、X軸、Y軸の検出値をZ軸に合わせて補正しても問題の発生する可能性が低く、十分な検知精度を発揮させることが可能であると考えられたため、X軸、Y軸の検出値をZ軸に合わせて補正している。
以上のことから、本実施形態によると、安価な回路構成で精度の高い振動検知が可能となる。
【0059】
振動検知手段70による振動状態の監視は、全ての振動軸(X軸、Y軸、Z軸)に対して常時行ってもよいが、代表的な振動軸に対してのみ常時監視し、何らかの異常が検知された場合や、始業前等の定期的な時刻に、全ての振動軸を対象として振動状態を確認してもよい。
【0060】
例えば図12(a)に示すように、検査モードとしてN、F1、F2、F3があってもよい。なお、説明を容易にするために、図12は、薬剤フィーダ5が3台の場合を想定しているが、薬剤フィーダ5の数は任意である。
モードNは、通常運転中の監視モードである。モードF1、F2、F3より慎重に行われる検知モードであり、各薬剤フィーダ5の全ての振動軸(X軸、Y軸、Z軸)の振動状態を個別に検査するモードである。
図12(b)(c)は、検査モードに応じて振動検知センサを切り替える回路図である。図12(b)(c)に示す回路は、入力部100と、スイッチ群101と、出力部102を有している。
入力部100には、各薬剤フィーダ(F1)、(F2)、(F3)のそれぞれのX軸、Y軸、Z軸の振動検知センサ71からの出力電圧(出力信号)が直接又は増幅されて入力される。
すなわち、X1は、薬剤フィーダ(F1)のX軸の振動検知センサの出力であり、Y1は、薬剤フィーダ(F1)のY軸の振動検知センサの出力であり、Z1は、薬剤フィーダ(F1)のZ軸の振動検知センサの出力が入力される端子である。同様に、X2、Y2、Z2は、薬剤フィーダ(F2)の振動検知センサの出力が入力される端子である。同様に、X3、Y3、Z3は、薬剤フィーダ(F3)の振動検知センサの出力が入力される端子である。
【0061】
検査モードNは、図12(b)に示す接続状態であり、各薬剤フィーダ(F1)、(F2)、(F3)のZ軸の入力端子が、出力端子に接続される様になっている。
図12(b)に示す接続状態においては、出力端子S1に薬剤フィーダ(F1)のZ軸の振動検知センサ71からの出力電圧(出力信号)が出力される。また出力端子S2に薬剤フィーダ(F2)のZ軸の振動検知センサ71からの出力電圧(出力信号)が出力される。出力端子S3に薬剤フィーダ(F3)のZ軸の振動検知センサ71からの出力電圧(出力信号)が出力される。
【0062】
検査モードF1は、図12(c)に示す接続状態であり、薬剤フィーダ(F1)のX軸、Y軸、Z軸の入力端子が、出力端子に接続される様になっている。
図12(c)に示す接続状態においては、出力端子S1に薬剤フィーダ(F1)のX軸の振動検知センサ71からの出力電圧(出力信号)が出力される。また出力端子S2に薬剤フィーダ(F1)のY軸の振動検知センサ71からの出力電圧(出力信号)が出力される。出力端子S3に薬剤フィーダ(F1)のZ軸の振動検知センサ71からの出力電圧(出力信号)が出力される。
他の検査モードにおけるスイッチの接続状況の図示は省略するが、検査モードF2では、薬剤フィーダ(F2)のX軸、Y軸、Z軸の入力端子が、出力端子に接続される。また検査モードF3では、薬剤フィーダ(F3)のX軸、Y軸、Z軸の入力端子が、出力端子に接続される。
【0063】
なお、本発明の薬剤フィーダは、上記した薬剤容器20に替わって、図13で示される薬剤容器380を採用してもよい。この薬剤容器380は、上記した薬剤容器20と同様に、フィーダ本体10に対して着脱可能な構造となっている。つまり、上記したフィーダ本体10と共に薬剤フィーダを構成する。
【0064】
この薬剤容器380もまた、正面壁391と、背面壁392と、2つの側面壁393と、天面壁394及び底面壁395に囲まれている。ここで、2つの側面壁393は、正面壁391と背面壁392よりも面積が大きい大面積側側面となる。対して、正面壁391と背面壁392は、小面積側側面となる。つまり、薬剤容器380は、正面壁391側からみると、細長い箱状の部材である。つまり、薬剤容器380は、幅に対して高さが高い(幅が狭く高さが高い)縦長の容器である。また、側面形状が略正方形の直方体である。
また、薬剤容器380は、底面壁395のうちで正面壁391の近傍となる位置には、開閉可能な薬剤排出部397(散薬排出部、図13参照)がある。そして、薬剤容器380は、シャッター構造部412を有している。
【0065】
シャッター構造部412は、閉鎖壁を有するシャッター部材412aと、伝動部材(図示しない)を有している。上記した実施形態と同様に、伝動部材が直線移動することで、シャッター部材412aが移動し、薬剤排出部397を開閉する。すなわち、上記した実施形態と同様に、伝動部材の背面壁392側の一部分が外部に露出した状態となっており(詳細な図示を省略する)、薬剤容器380をフィーダ本体10に保持させることで、シャッター開閉機構55と係合する。
【0066】
本実施形態の薬剤容器380は、図13で示されるように、蓋部材401が各壁のうちで天面壁394を構成している点が、上記した薬剤容器20とは異なる。つまり、上記した薬剤容器20は、蓋部材が左右側面壁37を構成しており、大面積側側面を開放することで散薬の充填が可能となっている。これに対し、薬剤容器380は、上面が開口した箱体に対して蓋部材401が取り付けられ、蓋部材401がヒンジによって揺動可能となっている。そして、蓋部材401を開状態とすることで上側から散薬の充填が可能であり、閉状態とすることで薬剤容器380を密閉することが可能である。なお、本実施形態の薬剤容器380は、フィーダ本体10に保持させた状態のまま散薬の充填が可能となる。
【0067】
なお、本実施形態の蓋部材401は、図13で示されるように、蓋本体部402と小蓋部403を有している。そして、小蓋部403が蓋本体部402の下側(閉状態としたときの下側)に取り付けられ、ヒンジによって揺動可能となっている。
ここで、蓋部材401は、乾燥剤等を収容可能な蓋内収容部404を有している。本実施形態の蓋内収容部404は、調湿剤を配置する空間となっている。そして、小蓋部403を揺動させることで蓋内収容部404の開閉が可能となる。すなわち、蓋内収容部404は、蓋本体部402と小蓋部403の間に形成される空間である。詳細には、蓋部材401を閉状態とし、小蓋部403を閉状態としたとき、小蓋部403の大部分の上方に位置する空間である。
【0068】
この薬剤容器380は、図14で示されるように、内部に仕切板部410(仕切り部材)を有する。仕切板部410は、散薬を貯留する貯留空間439と、散薬通過路440の境界に配された平板状の部分である。なお、散薬通過路440は、散薬を排出する際に散薬が通過する部分であり、仕切板部410の下側に位置する空間であって、仕切板部410と底面壁395の間の部分を含む空間である。
【0069】
仕切板部410は、薬剤容器380をフィーダ本体10に保持させたとき、水平姿勢となる部分である。この仕切板部410には、複数の小孔が設けられており、これらの小孔が仕切板部410を上下方向(厚さ方向)に貫通している。また、仕切板部410と隣接する部分に、大傾斜部415と小傾斜部416を有している。
【0070】
大傾斜部415と、小傾斜部416は、薬剤容器380をフィーダ本体10に保持させた際、共に仕切板部410に向かって傾斜する傾斜面を形成する。大傾斜部415は、小傾斜部416よりも長く、それぞれの傾斜角度は同等である。つまり、大傾斜部415と小傾斜部416の間の空間(貯留空間439の下側部分)は、仕切板部410に向かって収斂する。
【0071】
薬剤容器380から薬剤を排出する際には、フィーダ本体10に薬剤容器380を保持させた状態で薬剤排出部397を開状態とし、薬剤容器380を振動させる。このとき、薬剤容器380内の散薬は、散薬通過路440の散薬が排出によって少なくなると、仕切板部410の上側の空間である貯留空間439から散薬通過路440に移動し、薬剤排出部397に向かって進む。そして、薬剤排出部397から排出される。
ここで、薬剤容器380を振動させると、薬剤容器380内の散薬は、仕切板部410の上側の空間である貯留空間439内で攪拌される。この際、貯留された散薬の一部が大傾斜部415を上る方向に移動し、仕切板部410よりも上方向で、仕切板部410側へと移動することとなる。このため、仕切板部410の小孔(スリット)上において、散薬による上方から下方に押し付ける力が掛かり難く、攪拌によって流れる散薬が適切に小孔(スリット)から落下するので、散薬の円滑な排出が可能となる。
【0072】
上記したフィーダ部22は、電気的な構成機器として、加振手段30a,30bと、ポテンショメータ(図示しない)と、アクチュエータ(図示しない)と、重量測定部24と、振動検知センサ71を有している。
なお、ポテンショメータは、移動量や回転角を検知可能なセンサであり、所定の部材(例えば、シャッター開閉機構55を構成する部材)の移動量を検知可能となっている。アクチュエータは、所定の部材(シャッター開閉機構55を構成する部材)を駆動させる駆動装置として機能する部材であり、具体的には、DCモータである。
なお、加振手段30a,30b、ポテンショメータ、アクチュエータ(図示しない)は、重量測定部24に荷重が負荷されるように配されている。そして、これら加振手段30a,30b、ポテンショメータ、アクチュエータ(図示しない)に加え、重量測定部24、振動検知センサ71は、防振手段18(防振部材28)に荷重が負荷されるように配されている。
【0073】
ここで、上記したフィーダ部22の電気的な構成機器は、上位の制御装置(薬剤払出し装置1の筐体2内に配された本体の制御装置、図示しない)と接続するとき、配線部材を介して接続してもよい。このとき、アクチュエータは、上位の制御装置との間にモータドライバを介してもよい。
この他、上記したフィーダ部22の電気的な構成機器の少なくとも一部は、配線部材を介さずに上位の制御装置と接続してもよい。例えば、ポテンショメータ、アクチュエータを無線給電、無線通信方式によって上位の制御装置と接続してもよい。
このように、配線部材を介さずに上位の制御装置と接続する構成とした場合、重量測定部24による重量測定動作の際に配線による影響を無くす(低減させる)ことが可能となり、精度の高い重量測定動作が可能となる。したがって、少量の散薬を分配皿3に投入する(少量の散薬を分包する)動作を実行する場合等において、より精度の高い動作が可能となる。
【0074】
薬剤フィーダ5は、図4等で示されるように、振動部材16を有するフィーダ部22と、中板部分(分配皿3の外側に位置する土台となる板部分、図2等参照)に固定されて振動しない重量校正部21を有する。ここで、上記したフィーダ部22の電気的な構成機器と上位の制御装置とを配線を介して接続する場合、FFC(フレキシブルフラットケーブル)のような薄く扁平な帯状の配線部材(以下、帯状配線部材と称す)を採用することが好ましい。また、帯状配線部材は、丸みを帯びた軌道で延びた状態(姿勢)として配することが好ましい。すなわち、下方に向かって直線的に延ばすのではなく、円弧を描きつつ延ばすことが好ましい。このとき、円弧をなす部分は、一旦上方に延びる部分と、上方からフィーダ部22から離れる方向に延びつつ下方に延びる部分と、フィーダ部22に近づく方向に延びつつ下方に延びる部分とを含んで構成されていてもよい。
このように、円弧状に(ループして)延びた部分が形成された状態とすると、振動部材16を振動させつつ重量測定部24による重量測定動作を実行するとき、重量測定動作の精度の向上を図ることが可能となる。すなわち、振動による配線部材の張力の変化や、配線部材の一部の移動等の影響を無くす(低減させる)ことが可能となり、重量測定動作の精度の向上を図ることが可能となる。
【0075】
上記したように、フィーダ部22は、圧電素子(加振手段30a,30b)を備えている。ここで、この圧電素子の振動回路には、D級アンプを採用してもよく、AB級アンプを採用してもよい。しかしながら、AB級アンプを採用することが、振動動作をより適切に制御する上で好ましい。すなわち、AB級アンプを採用することで、散薬を分配皿3に投入する動作の精度を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本願発明は、薬剤を調剤する装置であり、「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する」という持続可能な開発目標(SDGs)の第3の目標を達成し得るものである。
本発明の薬剤払出し装置や、本発明の薬剤フィーダを採用した薬剤払出し装置は、薬剤師のような有資格者が実施すべき散薬秤量等の散薬監査作業を無くすことで、テクニシャン等の非薬剤師においても実施できる装置である。具体的には、作業者は薬剤であることを意識することなく、処方情報に基づいて指定された薬剤容器の番号、または棚等に配置されている場合はランプ等で指定された薬剤容器を取り出して、薬剤払出し装置に載置するだけで、処方に必要な分包作業を確実に実行し完了できるものである。これにより、有資格者である薬剤師は調剤作業という対物業務から、患者と向き合う対人業務にシフトできると共に、必要な調剤作業を非薬剤師等で実施できることから、「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する」という持続可能な開発目標(SDGs)の第3の目標を達成し得るものである。
また本発明は、人件費を低減し、経済生産性を向上させることができる。これによっても、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献できる。
【符号の説明】
【0077】
1;薬剤払出し装置、5;薬剤フィーダ、20;薬剤容器、23;容器支持部(保持部材)、71;振動検知センサ、71a;コネクタ接触部(センサ側係合部)、72;コネクタピン(保持側係合部)
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