(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169475
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】縫合糸管理構造を有するノットレス式縫合糸アンカーシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/88 20060101AFI20221101BHJP
A61B 17/04 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
A61B17/88
A61B17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022072191
(22)【出願日】2022-04-26
(31)【優先権主張番号】17/241,456
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514046806
【氏名又は名称】メドス・インターナショナル・エスエイアールエル
【氏名又は名称原語表記】Medos International SARL
【住所又は居所原語表記】Chemin-Blanc 38, CH-2400 Le Locle, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・エム・ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】メフメット・ジヤ・センガン
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・アール・ホイッタカー
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・クリーブランド
(72)【発明者】
【氏名】マーク・シャインウォルド
(72)【発明者】
【氏名】アダム・ガスタフソン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ガマシュ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160BB01
4C160LL30
4C160LL42
(57)【要約】
【課題】組織を骨に固定するための方法及びシステムを提供すること。
【解決手段】縫合糸アンカーシステムが、管腔と、遠位延長部の近位にあるアンカー受容部分を有するインサータシャフトと、を有するインサータ器具を含むことができる。アンカー受容部分は駆動機構を有することができ、遠位延長部は、アンカー受容部分よりも小さい直径を有することができる。インサータ器具のアンカー受容部分の上にアンカーを配置することができ、アンカーは、アンカー受容部分の駆動部材と係合するように構成された、管腔内に配置された被駆動機構と、外面の上に配置された骨係合機構と、を有することができる。縫合糸着座部材を遠位延長部上に取り外し可能に配置することができ、縫合糸着座部材は、アンカーとは回転可能に独立していてもよく、遠位端に開口部を有する管腔を有することができ、縫合糸着座部材の遠位端は、縫合糸着座面を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫合糸アンカーシステムであって、
内部を貫通して延在する管腔と、遠位延長部の近位にあるアンカー受容部分を有する細長いインサータシャフトと、を有するカニューレ状のインサータ器具であって、前記アンカー受容部分は、前記アンカー受容部分の上に形成された少なくとも1つの駆動機構を有し、前記遠位延長部は、前記アンカー受容部分の直径よりも小さい直径を有する、カニューレ状のインサータ器具と、
前記インサータ器具の前記アンカー受容部分の上に取り外し可能に配置されたカニューレ状の縫合糸アンカー、及び、前記縫合糸アンカーの外面の上に配置された少なくとも1つの骨係合機構と、
隙間嵌めによって前記遠位延長部上に取り外し可能に配置されたカニューレ状の縫合糸着座部材であって、前記縫合糸着座部材は、前記縫合糸アンカーとは回転可能に独立しており、遠位端に開口部を有する管腔が前記縫合糸着座部材を貫通して延在しており、前記縫合糸着座部材の前記遠位部分は縫合糸着座面を有する、カニューレ状の縫合糸着座部材と、
を備える、縫合糸アンカーシステム。
【請求項2】
前記管腔及び前記縫合糸着座部材の前記開口部を貫通して延在する少なくとも1つのステー縫合糸ループを更に備える、請求項1に記載の縫合糸アンカーシステム。
【請求項3】
前記縫合糸着座面は、平坦な表面及び曲線状の表面の少なくとも一方である、請求項1に記載の縫合糸アンカーシステム。
【請求項4】
前記曲線状の表面は略凹状の表面である、請求項3に記載の縫合糸アンカーシステム。
【請求項5】
前記縫合糸着座部材は折り畳み可能な部分を更に含み、前記縫合糸着座面は前記折り畳み可能な部分の前記遠位端上に配置されている、請求項1に記載の縫合糸アンカーシステム。
【請求項6】
前記縫合糸着座部材は、前記縫合糸着座部材の対向する側面上に配置された一対の対向する縫合糸着座機構を含み、前記縫合糸着座機構は、1つ以上の手術用縫合糸ストランドの所望の配向を維持するように構成されている、請求項1に記載の縫合糸アンカーシステム。
【請求項7】
前記アンカー受容部分の長さが前記縫合糸アンカーの長さ以上である、請求項1に記載の縫合糸アンカーシステム。
【請求項8】
前記縫合糸着座部材は、前記インサータシャフトに沿って前記縫合糸アンカーからある距離だけ離間している、請求項1に記載の縫合糸アンカーシステム。
【請求項9】
前記アンカー受容部分は非円筒形の断面形状を有する、請求項1に記載の縫合糸アンカーシステム。
【請求項10】
前記アンカー受容部分は六角形の断面形状を有する、請求項9に記載の縫合糸アンカーシステム。
【請求項11】
前記縫合糸着座面は、1つ以上の手術用縫合糸を所定の配向に維持するように構成されている、請求項1に記載の縫合糸アンカーシステム。
【請求項12】
前記アンカー受容部分の遠位端は、前記縫合糸着座部材の近位端に隣接する肩部を含む、請求項1に記載の縫合糸アンカーシステム。
【請求項13】
前記縫合糸アンカーの管腔内に、前記アンカー受容部分の前記駆動部材と係合するように構成された少なくとも1つの被駆動機構が配置されている、請求項1に記載の縫合糸アンカーシステム。
【請求項14】
前記縫合糸アンカーの前記管腔は、前記アンカー受容部分の断面形状と相補的な断面形状を有する、請求項13に記載の縫合糸アンカーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、軟部組織を骨に固定するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
靱帯、腱、及び/若しくは他の軟部組織が裂傷すること、又は靱帯、腱、及び/若しくは他の軟部組織が関連付けられた骨から体内で完全に若しくは部分的に剥離することは、ありふれた外傷である。かかる外傷は、過度のストレスがこれらの組織にかかる結果として生じ得る。一例として、組織の裂傷又は剥離は、業務関連作業中に、あるいは競技大会の過程の中で、転倒、過度の行使などの事故の結果として生じ得る。裂傷又は骨からの軟部組織の部分的又は完全な剥離の場合、軟部組織(又は移植組織)を骨に再付着させるために、手術が通常必要とされる。
【0003】
そのような断裂を修復する1つの方法は、ある長さの縫合糸を組織に通し、縫合糸を結ぶことによって、断裂を縫合して閉鎖することである。縫合糸はまた、そのような組織の断裂を修復するために、1つ以上の縫合糸アンカーと共に使用され得る。縫合糸は、修復処置の間に外科医によって結ばれた結び目を用いて、あるいは、外科医が外科手術の間に結び目を結ぶことを必要とせずに、1つ以上のアンカーと1本以上の縫合糸とが接続され、かつ張力付与され得る「ノットレス(knotless)」装置及び方法を用いて、縫合糸アンカー及び組織に締結することができる。ノットレス式の固定は、内視鏡又は関節鏡による修復など、低侵襲外科手術に特に有用なものであり、低侵襲外科手術において、外科医は、小さな経皮切開、小径のカニューレ、又は内視鏡チューブを通して挿入された器具を使用して、手術部位にて縫合糸を遠隔式で操作しなければならず、これにより、結び目結びプロセスは困難でかつ時間を要するものとなり得る。
【0004】
軟部組織を再付着させるための外科手術の過程において、手術用縫合糸に対する所望の位置合わせ及び張力を維持することは、困難である場合がある。更に、骨内にアンカーを挿入するために使用される既存の縫合糸アンカーは、それらの使用を複雑にし、かつ/又はある望ましくない限界を課す特定の欠点を有することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、組織を骨に付着させるための改良された装置、システム及び方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、縫合糸アンカーシステムは、内部を貫通して延在する管腔と、遠位延長部の近位にあるアンカー受容部分を有する細長いインサータシャフトと、を有するカニューレ状のインサータ器具を含む。アンカー受容部分は、アンカー受容部分の上に形成された少なくとも1つの駆動機構を有し、遠位延長部は、アンカー受容部分の直径よりも小さい直径を有する。カニューレ状の縫合糸アンカーが、インサータ器具のアンカー受容部分の上に取り外し可能に配置されている。縫合糸アンカーは、縫合糸アンカーの外面の上に配置された少なくとも1つの骨係合機構を有する。カニューレ状の縫合糸着座部材が、隙間嵌めによって遠位延長部の上に取り外し可能に配置されている。縫合糸着座部材は、縫合糸アンカーとは回転可能に独立しており、遠位部分に開口部を有する管腔が内部を貫通して延在しており、縫合糸着座部材の遠位端は縫合糸着座面を有する。
【0007】
縫合糸アンカーシステムは、様々な構成を有することができる。例えば、少なくとも1つのステー縫合糸ループが、管腔及び縫合糸着座部材の開口部を貫通して延在することができる。
【0008】
縫合糸着座部材は、様々な構成を有することができる。例えば、縫合糸着座面は、平坦な表面及び曲線状の表面の少なくとも一方であってもよい。いくつかの実施形態では、曲線状の表面は略凹状の表面であってもよい。少なくともいくつかの実施形態では、縫合糸着座部材は、折り畳み可能な部分を更に含むことができ、縫合糸着座面は、折り畳み可能な部分の遠位端に配置されていてもよい。少なくともいくつかの実施形態では、縫合糸着座部材は、縫合糸着座部材の対向する側面上に配置された一対の対向する縫合糸着座機構を含むことができ、縫合糸着座機構は、1本以上の手術用縫合糸ストランドの所望の配向を維持するように構成されている。少なくともいくつかの実施形態では、縫合糸着座部材は、インサータシャフトに沿って縫合糸アンカーからある距離だけ離間していてもよい。少なくともいくつかの実施形態では、縫合糸着座面は、1つ以上の手術用縫合糸を所定の配向に維持するように構成することができる。
【0009】
カニューレ状のインサータ器具は、様々な構成を有することができる。例えば、アンカー受容部分の長さが、縫合糸アンカーの長さ以上であってもよい。いくつかの実施形態では、アンカー受容部分は、非円筒形の断面形状を有することができる。少なくともいくつかの実施形態では、アンカー受容部分は、六角形の断面形状を有することができる。少なくともいくつかの実施形態では、アンカー受容部分の遠位端は、縫合糸着座部材の近位端に隣接する肩部を含むことができる。
【0010】
縫合糸アンカーは、様々な構成を有することができる。例えば、縫合糸アンカーの管腔内に、アンカー受容部分の駆動部材と係合するように構成された少なくとも1つの被駆動機構が配置されていてもよい。少なくともいくつかの実施形態では、縫合糸アンカーの管腔は、アンカー受容部分の断面形状と相補的な断面形状を有することができる。
【0011】
別の一態様では、骨に軟部組織を付着させるための方法が、骨に再付着されるべき軟部組織に1つ以上の手術用縫合糸を固定することを含んでもよい。1つ以上の手術用縫合糸の自由縫合糸リムが、少なくとも1つのステー縫合糸から形成された少なくとも1つのステー縫合糸ループに通され、少なくとも1つのステー縫合糸ループは、カニューレ状の縫合糸着座部材の遠位端の開口部から延在し、縫合糸着座部材は、カニューレ状のインサータに取り外し可能に取り付けられた縫合糸アンカーの遠位に配置されている。少なくとも1つのステー縫合糸は、縫合糸着座部材上に配置された縫合糸着座面と少なくとも1つのステー縫合糸ループとの間に1つ以上の手術用縫合糸が捕捉されるように引っ張られて、少なくとも1つのステー縫合糸ループを閉じる。アンカー及び縫合糸着座部材が取り付けられたインサータを、骨に再付着されるべき軟部組織に隣接する骨孔の中に挿入することによって、1つ以上の手術用縫合糸が孔の中に配置される。1つ以上の手術用縫合糸が孔の中に配置されている間、所望の量の張力が自由縫合糸リムに付与される。縫合糸アンカーは、縫合糸着座部材の回転位置を維持し、縫合糸着座部材に対する1つ以上の手術用縫合糸の自由縫合糸リムの位置を実質的に維持しながら、1つ以上の手術用縫合糸に対する所望の張力を維持している間に、骨孔の中に埋め込まれて骨と係合し、軟部組織を骨との所望の係合に至らせる。次いで、少なくとも1つのステー縫合糸及びインサータが取り外される。
【0012】
方法は、様々な構成を有することができる。例えば、縫合糸アンカーを埋め込むことが、縫合糸アンカーを回転させることを含んでもよい。いくつかの実施形態では、インサータ及び少なくとも1つのステー縫合糸を取り外した後に、1つ以上の手術用縫合糸が縫合糸アンカーと骨孔との間にノットレス式に固定されてもよい。少なくともいくつかの実施形態では、インサータ及び少なくとも1つのステー縫合糸を取り外した後に、縫合糸アンカーが縫合糸着座部材を骨孔の底部に対して圧縮することができ、縫合糸着座部材は、縫合糸着座部材の遠位の1つ以上の手術用縫合糸の一部分を骨孔の底部に対して圧縮することができる。
【0013】
カニューレ状の縫合糸アンカーは、様々な構成を有することができる。例えば、カニューレ状の縫合糸アンカーは、カニューレ状の縫合糸アンカーの外面の上に配置された少なくとも1つの骨係合機構を含んでもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの骨係合機構は、ねじ山及び骨係合棘のうちの1つであってもよい。
【0014】
カニューレ状の縫合糸着座部材は、様々な構成を有することができる。例えば、縫合糸アンカーが回転する時に縫合糸着座部材が回転しなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本開示は、以下の詳細な説明を添付図面と併せ読むことで、より完全に理解されるであろう。
【
図1】縫合糸アンカーシステムの一実施形態の断面図である。
【
図2】
図1の縫合糸アンカーシステムに含まれる縫合糸着座部材の断面図である。
【
図3A】非圧縮状態の縫合糸着座部材の別の一実施形態の正面図及び斜視図である。
【
図3B】非圧縮状態の縫合糸着座部材の別の一実施形態の正面図及び斜視図である。
【
図4】縫合糸着座部材の別の一実施形態の断面図である。
【
図5】縫合糸着座部材の別の一実施形態の斜視図である。
【
図6】縫合糸着座部材の別の一実施形態の斜視図である。
【
図7】縫合糸着座部材の別の一実施形態の斜視図である。
【
図8A】縫合糸着座部材の別の一実施形態の断面図である。
【
図8B】展開位置にある
図8Aの縫合糸着座部材の断面図である。
【
図9A】
図6の縫合糸着座部材を含む縫合糸アンカーシステムの別の一実施形態の斜視図である。
【
図9B】
図6の縫合糸着座部材を含む縫合糸アンカーシステムの別の一実施形態の斜視図である。
【
図9C】
図9A及び
図9Bの外科用アンカーシステムを使用して軟部組織を骨に再付着させる方法における工程を概略的に示す。
【
図9D】
図9A及び
図9Bの外科用アンカーシステムを使用して軟部組織を骨に再付着させる方法における工程を概略的に示す。
【
図9E】
図9A及び
図9Bの外科用アンカーシステムを使用して軟部組織を骨に再付着させる方法における工程を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで、本明細書で開示する装置及び方法の構造、機能、製造、及び使用の原理の全体的な理解が得られるように、特定の例示的な実施形態を説明する。これらの実施形態のうちの1つ以上の実施例が、添付の図面に例解される。当業者であれば、本明細書で具体的に説明され、かつ添付の図面に図示される装置及び方法が、非限定的な例示的な実施形態であること、並びに本発明の範囲が、特許請求の範囲によってのみ定義されることを理解するであろう。例示的な一実施形態に関連して例解又は記載される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。このような改変及び変形は、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0017】
更に、本開示においては、実施形態の同様の名称の構成要素は概して同様の特徴を有するものであり、したがって、特定の実施形態において、同様の名称の各構成要素の各特徴については必ずしも完全に詳しく述べることはしない。追加的に、開示されるシステム、デバイス、及び方法の説明で直線寸法又は円寸法が使用される範囲において、かかる寸法は、かかるシステム、デバイス、及び方法と組み合わせて使用することができる形状の種類を限定しようとするものではない。当業者には、任意の幾何学的形状についてかかる直線寸法及び円寸法に相当する寸法を容易に決定することができる点が認識されるであろう。システム及びデバイス、並びにその構成要素のサイズ及び形状は、少なくとも、システム及びデバイスが内部で使用される対象の解剖学的構造、システム及びデバイスが使用される構成要素のサイズ及び形状、並びにシステム及びデバイスが使用される方法及び手術に依存し得る。更に、「約」及び「実質的」という用語は、製造のばらつきや、温度などのパラメータの変動に基づく範囲として定義される。
【0018】
回旋腱板修復などの軟部組織修復手術を成功させるためには、縫合糸アンカーが骨内にしっかりと係合されてずれ及び/又は抜けが回避されること、並びに軟部組織に取り付けられ、縫合糸アンカーによって骨に接触維持される手術用縫合糸が、負荷を受けた時のずれに抵抗することが必要とされる。最も典型的な失敗は、縫合糸のずれ又は滑りによるものであり、そのような滑り又はずれに対する抵抗力を手術用縫合糸に加えられた負荷が超えると起こる。この抵抗力は、縫合糸アンカーが手術用縫合糸を縫合糸アンカーが埋め込まれている骨に対して圧縮することから生じる。縫合糸自体が適切に位置合わせされずに骨孔の中で重なり合っている場合、縫合糸のずれはより低い負荷で起こる。このことは、1本以上の縫合糸ストランドに隣接する骨の領域がより柔らかく、かつ/又はより不健康な場合に、特に不利益となり得る。本明細書に記載の縫合糸アンカーシステムは、骨内へのアンカーの確実な係合を維持しながら、縫合糸のずれ及び重なり合いを回避するために、縫合糸アンカーの挿入中及び挿入後に(例えば、縫合糸を所望の位置又は手術用縫合糸ストランド間の所望の間隔で維持することによって)手術用縫合糸の位置合わせを維持するように最適化されたアンカー埋め込みシステム設計を提供する。
【0019】
記載された実施形態のうちの少なくともいくつかにおいては、縫合糸の過度の重なり合いを防止する一方で、アンカーが骨内に挿入され、手術用縫合糸を使用して軟部組織を骨に固定できるようにするのに十分な間隔をおいて、手術用縫合糸のストランドをアンカーの周りの所望の位置に離隔して維持することを可能にする縫合糸着座部材を含む縫合糸アンカーシステムが提供される。典型的には関節鏡視下で行われる、本明細書に記載の縫合糸アンカーシステムを利用した外科手術の過程で、縫合糸アンカーは、インサータ器具の細長いインサータシャフト上に取り外し可能に配置されて、その埋め込み部位へ送達され、そこで手術用縫合糸に係合し、手術用縫合糸を張力下に維持して、軟部組織を骨に再付着させる。縫合糸アンカーシステムは、縫合糸アンカーの遠位のインサータ装置に取り外し可能に取り付けられた縫合糸着座部材を更に含む。縫合糸着座部材は、縫合糸アンカー及びインサータ器具とは回転可能に独立するように取り付けられる。以下でより詳細に説明するように、縫合糸着座部材は、縫合糸ストランドを所望の位置かつ/又は適切な離隔度に維持するのを助ける縫合糸着座面をその遠位端に含む。
【0020】
縫合糸着座部材の縫合糸着座面は、手術用縫合糸ストランドの離隔、間隔、又は位置の維持を補助することの可能な任意の種類の遠位に配向された表面であってもよい。本明細書に記載及び図示する一実施形態では、縫合糸着座部材の縫合糸着座面は、縫合糸着座部材の遠位に面する表面に設けられた平坦な表面、曲線状の表面、及び/又は他の表面形状であってもよい。このようにして、手術用縫合糸は、縫合糸アンカーが挿入されている間に縫合糸着座面によって捕捉されて、手術用縫合糸を適切な位置合わせかつ/又はストランド間の十分な間隔で維持し、アンカーが骨内へと回転されるか又は埋め込まれる時の縫合糸ストランドの望ましくない位置ずれ又は重なり合いを防止することができる。
【0021】
縫合糸着座部材は、縫合糸着座部材が縫合糸アンカーに対して独立に回転して、埋め込み可能な縫合糸アンカー構造体を形成することが可能であるように、インサータ器具及び/又は縫合糸アンカーに取り付けることができる。すなわち、縫合糸アンカーの回転は、縫合糸着座部材の回転をもたらさない。縫合糸着座部材の独立した回転は、様々な方法で達成することができる。例えば、縫合糸着座部材は、縫合糸アンカーに取り付けられる必要はない。このように、縫合糸アンカーのいかなる回転も、縫合糸着座部材の回転をもたらさないので、縫合糸着座面によって確立される縫合糸ストランドの所望の位置が維持される。
【0022】
当業者は、本明細書に記載の縫合糸アンカーシステムを、軟部組織を骨に固定及び/又は再付着させるための様々な外科技術で使用できることを理解するであろう。外科手術は、切開外科手術として、又は関節鏡視下手術などの低侵襲の外科手術として行うことができる。患者の準備に続いて、手術部位にアクセスするために適切な切開を行う。軟部組織を固定するために使用されるべき1つ以上のアンカーを受け入れるために、組織修復部位に近接して、特定の外科手術によって必要とされる1つ以上の孔を骨に形成する。次いで、1本以上の手術用縫合糸のストランドを剥離した組織に通し、次いでステー縫合糸に通すか、又は手術で使用される1つ以上の縫合糸アンカーに隣接して配置する。次いで、剥離した組織を骨に近接させるために手術用縫合糸を適切に引っ張る際に、1つ以上の縫合糸アンカーを、適切なインサータ器具を使用して、対応する骨孔の中に埋め込む。その際、手術用縫合糸は、骨孔内で、アンカーと骨孔を画定する壁との間で圧縮される。次いで、余分な縫合糸を除去し、切開部を閉じる。
【0023】
図1~
図2は、ノットレス式縫合糸アンカーの挿入中に縫合糸ストランドの所望の位置を維持するのを助けるために使用される縫合糸アンカーシステム100の一実施形態を示す。縫合糸アンカーシステム100は、一般に、カニューレ状の縫合糸アンカー102が取り外し可能に取り付けられたカニューレ状のインサータ器具121と、インサータ器具121の遠位端に取り外し可能に取り付けられたカニューレ状の縫合糸着座部材112とを含む。縫合糸アンカー102及び縫合糸着座部材112は、軟部組織を骨に固定するために骨孔に埋め込まれるアンカー構造体を形成する。インサータ器具121は、アンカー構造体の位置合わせ及び挿入を補助し、アンカー構造体が骨孔の中に完全に挿入されると取り外される。
【0024】
カニューレ状の縫合糸アンカー102は、軟部組織を骨に再付着させるために、骨孔の中でアンカーの外面と骨自体との間に手術用縫合糸ストランドを固定するように構成されている。縫合糸アンカー102は、一般に、近位端102pと、遠位端102dと、一連の骨係合機構106を有する外面104とを含む。この実施形態では、縫合糸アンカー102の長さの少なくとも一部分にわたる外面104上に、複数の長手方向に離間した骨係合機構106の各々を、少なくとも部分的に周方向に形成することができる。更に、縫合糸アンカー102は、縫合糸アンカー102を近位端102pから遠位端102dまで貫通して延在する管腔108を含むことができ、管腔108は、以下で詳細に説明するように、アンカー102をインサータ装置に取り外し可能に固定するように構成されている。
【0025】
縫合糸アンカー102がねじ山付き骨係合機構106を含む実施形態では、管腔108の内面は、管腔内に形成された被駆動機構110を含む。被駆動機構110は、当業者によって理解される様々な形態をとることができるが、
図1に示す実施形態では、被駆動機構110は、アンカー102の管腔108によって形成された雌六角形の断面形状である。被駆動機構110の代替設計は、楕円形、正方形、五角形などを含む、アンカーに回転運動を伝達する能力を有する様々な他の形状を含むことができるが、これらに限定されない。被駆動機構110は、縫合糸アンカー102を回転させるために回転運動がアンカー102に付与されることを可能にするように構成され、これにより、縫合糸アンカーシステム100を使用する外科手術中に骨係合機構106のねじ山が骨孔に切り込まれる。
【0026】
アンカー102の適切な保持力を確保するために、一連の骨係合機構106を、アンカー102の外面104の長さの少なくとも一部分、一般には大部分にわたって配置することができる。更に、一連の骨係合機構106は、集合的にアンカー102の周囲の約360°を包含することができる。骨係合機構106は、当業者によって理解される様々な形態をとることができるが、
図1に示す実施形態では、骨係合機構106は、螺旋ねじ山形である。例示されている実施形態に示すように、ねじ山の形状は、縫合糸アンカー102の長さに沿って変化してもよい。骨係合機構106の代替設計は、複数の棘などを含むことができるが、これらに限定されない。
【0027】
インサータ装置は、縫合糸アンカーに力(例えば、回転力)を加えてアンカー102を骨内に押し込むために使用される。この実施形態では、インサータ器具121は、縫合糸アンカー102を骨孔の中へと回転させるように構成されてもよい。インサータ器具121は、一般に、管腔128が間に延在する遠位端122d及び近位端122pを有する細長いインサータシャフト122を含む。いくつかの実施形態では、管腔128は、インサータ器具121の回転中に回転運動が縫合糸着座部材に伝達されるのを防止するのを助けるために、滑らかな内面を有する。
【0028】
インサータシャフト122は、遠位端122dのやや近位に配置されたアンカー受容部分125を含む。アンカー102は、インサータシャフト122上のアンカー受容部分125の上に取り外し可能に配置されるように構成することができ、インサータシャフト122は、アンカー102の管腔108内に配置されている。インサータシャフト122は、インサータシャフト122のアンカー受容部分125の外面124の上に配置された駆動機構126を有することができる。駆動機構126は、インサータシャフト122から縫合糸アンカー102に回転運動を伝達するために、縫合糸アンカー102の被駆動機構110の形状と相補的な形状を有する。駆動機構126は、当業者によって理解される様々な形態をとることができるが、
図1に示す実施形態では、駆動機構126は、アンカー受容部分125の外面124によって形成された雄六角形の断面形状である。駆動機構126の代替設計は、楕円形、正方形、五角形などを含む、アンカーに回転運動を伝達する能力を有する様々な他の形状を含むことができるが、これらに限定されない。
【0029】
インサータシャフト122は、アンカー受容部分125に加えて、縫合糸アンカー102を越えて遠位に延在する遠位延長部123を遠位端122dに含むことができる。遠位延長部123は、縫合糸着座部材112を縫合糸アンカー102の遠位に取り外し可能に着座させるように構成されている。一例では、
図1及び
図2に示すように、縫合糸着座部材112は、縫合糸着座部材112の一部分が管腔128内に配置されているなど、遠位延長部123に取り付け可能であるように構成されている。いくつかの実施形態では、遠位延長部123は、アンカー受容部分125の直径よりも小さい直径を有することができる。
【0030】
インサータシャフトは、様々な構成を有することができる。例えば、インサータシャフト122は、関節鏡視下手術に適した長さを有することができる。すなわち、インサータシャフト122の長さは、インサータシャフトの近位端122pが身体外へと延在し、外科医によって操作可能である一方で、アンカー構造体が骨に穿孔された孔にアクセスできるように、アンカー構造体を形成する縫合糸アンカー102及び縫合糸着座部材112を着座させる遠位端を有するのに十分である。インサータシャフト122の遠位端122dは、縫合糸着座部材112をその最遠位端に着座させ、縫合糸着座部材112の近位に縫合糸アンカー102を着座させるのに十分であるべきである。縫合糸着座部材112は、
図1では縫合糸アンカー102から離間しているように示されているが、縫合糸着座部材112が縫合糸アンカー102に直接隣接してもよいことが理解される。図示のように、インサータシャフト122は、インサータシャフト122の近位端122pに配置されたハンドル130を更に含むことができ、ハンドル130は、回転運動などの力をインサータシャフト122に、したがって縫合糸アンカー102に伝達するように構成されている。
【0031】
カニューレ状の縫合糸着座部材112は、縫合糸アンカー102の骨孔の中への回転挿入などによる埋め込み中に、手術用縫合糸の位置及び位置合わせ、並びに手術用縫合糸に対する適切な量の張力を維持するのに役立つカニューレ状の部材である。
【0032】
縫合糸着座部材112は、様々な形態をとることができるが、
図1及び
図2に示す実施形態では、実質的に逆「T」字形状であり、遠位端112dに配置された半径方向延長部112a、112bを有する中央ステムを有する。縫合糸着座部材112は、近位端112pから遠位端112dまで内部を完全に貫通して延在して、ステー縫合糸を内部に容易に通せるようにする管腔114を有するカニューレ状であってもよい。半径方向延長部112a、112bは、縫合糸着座部材112に対して垂直に外向きに延在し、延長部112a、112bが骨孔に挿入された時に骨孔の縁部に接触できるのに十分な長さまで延在するように構成されている。骨孔の中に埋め込まれた時の延長部112a、112bと骨孔の境界との係合は、手術用縫合糸が延長部112a、112bの側面に回り込むことによって位置ずれが防止されるため、縫合糸着座部材112を通る手術用縫合糸の位置合わせを補助するのに役立つ。
【0033】
延長部112a、112bが半径方向外向きに延在することにより、遠位に面する縫合糸着座面116が延長部112a、112bによって形成される。この実施形態では、延長部112a、112bが縫合糸着座部材112の中央ステムに対して垂直であるため、縫合糸着座面は実質的に平坦な表面である。縫合糸着座面116の配置により、手術用縫合糸は、縫合糸着座部材112の前側に沿って遠位端112dに向かって遠位に延び、縫合糸着座面116に沿って通過してこれに接触し、次いで縫合糸着座部材112の後側に沿って縫合糸アンカー102に向かって再び近位に延びることができる。このようにして、手術用縫合糸を縫合糸アンカー102の挿入中に引っ張ることができる一方で、縫合糸着座面116が手術用縫合糸を縫合糸着座部材112上の所望の位置に維持する。
【0034】
上述のように、縫合糸着座部材112は、縫合糸着座部材112が縫合糸アンカー102に対して独立に回転可能であるように、縫合糸アンカー102に対して配置することができる。縫合糸着座部材112の独立した回転は、様々な方法で達成することができる。
図1に示す実施形態では、縫合糸着座部材112の一部分がインサータシャフト122の遠位端122dの管腔128内に配置され、縫合糸着座部材112の近位端112pは、縫合糸アンカー102の遠位端112dから離間している。締まり嵌めをもたらさないように、管腔128の内面は滑らかな表面とすることができ、管腔128の内径は、管腔128内に着座している縫合糸着座部材112の中央ステム部分の外径よりも大きい。この配置は、インサータシャフト122が縫合糸着座部材112を回転させることなく、縫合糸アンカー102に回転運動を伝達することを可能にする。したがって、縫合糸着座部材112が回転していない間に縫合糸アンカー102を骨孔にねじ込むことができ、手術用縫合糸を骨孔への挿入時にそれらの意図された位置に保つことができる。
【0035】
縫合糸アンカーシステム100は、縫合糸着座部材112の縫合糸着座面に加えて、アンカー構造体の挿入中に手術用縫合糸を捕捉し、次いで位置合わせするのを助けるためのステー縫合糸を更に含むことができる。ステー縫合糸140は、ループ142及び自由縫合糸リム144を含む。いくつかの実施形態では、ステー縫合糸140は、縫合糸のループ142がインサータシャフト122の遠位端122dから延び、2つの自由縫合糸リム144がインサータシャフト122の近位端122pから延びるように、インサータシャフト122の管腔128内に取り外し可能に配置される。ループ142は、自由縫合糸リム144の一方又は両方を引っ張ることによって、ループ内を通る手術用縫合糸を選択的に締め付けるように構成されている。
【0036】
図1及び
図2は、縫合糸着座部材の一実施形態を示す。しかしながら、縫合糸着座部材は、様々な形態をとることができる。非限定的な例として、
図3~
図8Bは、縫合糸アンカーシステム100と共に使用することができる縫合糸着座部材の更なる実施形態を示す。各例において、縫合糸着座部材はカニューレ状であり、縫合糸アンカー102の骨孔の中への回転挿入中に、手術用縫合糸の位置及び位置合わせ、並びに手術用縫合糸に対する適切な量の張力を維持するのに役立つ。
【0037】
縫合糸着座部材112と同様に、
図3A~
図3Dに示す実施形態では、縫合糸着座部材212は、中央ステムと、中央ステムから遠位に延在する折り畳み可能な部分とを有し、折り畳み可能な部分は、非圧縮状態では実質的に菱形形状であり、圧縮状態では実質的に逆「T」字形状である。縫合糸着座部材212は、近位端212pから間隙227まで中央ステムの内部を完全に貫通して延在する管腔214aと、間隙227から遠位端212dまで内部を完全に貫通して延在して、ステー縫合糸を内部に容易に通せるようにする管腔214bとを有するカニューレ状であってもよい。
【0038】
上述のように、折り畳み可能な延在部分217は、非圧縮状態及び圧縮状態の両方で配向されるように構成されている。
図3A~
図3Bに示すように、縫合糸着座部材212は、非圧縮状態では実質的に菱形形状である。縫合糸着座部材212は、遠位端212d上に配置された半径方向延長部218a、218b、220a、220bを有し、折り畳み可能な部分217を形成する。半径方向延長部218a、220aは、縫合糸着座部材212の中央ステムに対して半径方向外向きに延在する。半径方向延長部218a、220aは、半径方向延長部218a、220aから縫合糸着座部材212の長手方向軸に向かって半径方向内向きに延在する半径方向延長部218b、220bに移行する。半径方向延長部218b、220bは、それらが間隙214bで交わり、非圧縮状態で折り畳み可能な部分217の菱形形状を形成することを可能にするのに十分な長さにわたって延在するように構成されている。
【0039】
延長部218b、220bが半径方向内向きに延在することにより、遠位に面する縫合糸着座面216が延長部218b、220bによって形成される。この実施形態では、折り畳み可能な部分217が非圧縮状態にあるため、縫合糸着座面216は実質的に傾斜した表面である。
【0040】
圧縮力が折り畳み可能な部分217に加えられると、延長部218a、220aは延長部218b、220bに向かって枢動し、その結果、
図3C~
図3Dに示すように、縫合糸着座部材212の間隙227が圧縮されていない間隙227と比較して実質的により幅広の菱形形状になるように、間隙227を縮小する。この実施形態では、折り畳み可能な部分217が圧縮状態にあるため、縫合糸着座面216は、非圧縮状態よりも実質的に平坦な表面である。加えて、圧縮状態では、延長部218a、220bは、縫合糸着座部材212の時に延長部218a、220aが骨孔の縁部に接触することを可能にするのに十分な幅まで延びるように構成されている。
【0041】
縫合糸着座部材112と同様に、
図4に示す実施形態では、縫合糸着座部材312は、中央ステム及び湾曲した半径方向延長部を有し、実質的に逆「Y」字形状である。縫合糸着座部材312は、近位端312pから遠位端312dまで完全に中央ステムの内部を貫通して延在して、ステー縫合糸を内部に容易に通せるようにする管腔314を有するカニューレ状であってもよい。上述のように、縫合糸着座部材312は、遠位端312d上に配置された湾曲した半径方向延長部312a、312bを有する。湾曲した半径方向延長部312a、312bは、延長部312a、312bが骨孔に挿入された時に骨孔の縁部に接触できるように十分に長い距離だけ、縫合糸着座部材312の中央ステムに対して半径方向外向きに延在する。
【0042】
湾曲した延長部312a、312bが半径方向外向きに延在することにより、凹状の遠位に面する縫合糸着座面316が延長部312a、312bによって形成される。この実施形態では、縫合糸着座面316は実質的に湾曲した表面であり、このことは、手術用縫合糸が引っ張られて縫合糸着座面316から外れるのを防止するのに役立つ。
【0043】
縫合糸着座部材112と同様に、
図5に示す実施形態では、縫合糸着座部材412は、中央ステム及び実質的に台形形状の本体411を有する。縫合糸着座部材412は、近位端412pから遠位端412dまで完全に中央ステムの内部を貫通して延在して、ステー縫合糸を内部に容易に通せるようにする管腔(図示せず)を有するカニューレ状であってもよい。上述のように、縫合糸着座部材412は、対向する側部縫合糸着座面417(そのうちの1つのみが
図5に示されている)に隣接する対向する側壁412a、412bによって画定される本体411を有する。側壁412a、412bは、中央ステムから斜めに外向きに延在し、骨孔に挿入された時に側壁412a、412bが骨孔の縁部に接触するのに十分な長さまで延在するように構成されている。
【0044】
側壁412a、412b及び側部縫合糸着座面417が半径方向外向きに延在することにより、遠位に面する縫合糸着座面416が本体411によって形成される。この実施形態では、縫合糸着座面416は平坦な表面であるが、当業者は、縫合糸着座面416が凹面を含む他の形状を有することができることを理解するであろう。
図5に示すように、側部縫合糸着座面417は、中央ステムから縫合糸着座面416まで延在するわずかに凹状の面であってもよい。手術用縫合糸は、埋め込まれると、対向する側部縫合糸着座面417及び縫合糸着座面416に接触する。
【0045】
縫合糸着座部材412と同様に、
図6に示す実施形態では、縫合糸着座部材512は、中央ステム及び実質的に台形形状の本体511を有する。縫合糸着座部材512は、近位端512pから遠位端512dまで完全に中央ステムの内部を貫通して延在して、ステー縫合糸を内部に容易に通せるようにする管腔(図示せず)を有するカニューレ状であってもよい。上述のように、縫合糸着座部材512は、対向する側部縫合糸着座面517(そのうちの1つのみが
図6に示されている)に隣接する対向する側壁512a、512bによって画定される本体511を有する。側壁512a、512bは、縫合糸着座部材512に対して斜めに外向きに延在し、骨孔に挿入された時に側壁512a、512bが骨孔の縁部に接触することを可能にするのに十分な長さまで延在するように構成されている。
【0046】
側壁512a、512b、及び側部縫合糸着座面517が半径方向外向きに延在することにより、遠位に面する縫合糸着座面516が本体511によって形成される。この実施形態では、縫合糸着座面516は平坦な表面であるが、当業者は、縫合糸着座面516が凹面を含む他の形状を有することができることを理解するであろう。
図6に示すように、側部縫合糸着座面517は、中央ステムから縫合糸着座面516まで延在する凹面であってもよい。手術用縫合糸は、埋め込まれると、対向する側部縫合糸着座面517及び縫合糸着座面516に接触する。
【0047】
図7は、縫合糸着座部材612が中央ステム及び実質的に逆「Y」字形状の本体611を有する別の一実施形態を示す。縫合糸着座部材612は、近位端612pから遠位端612dまで完全に中央ステムの内部を貫通して延在して、ステー縫合糸を内部に容易に通せるようにする管腔(図示せず)を有するカニューレ状であってもよい。縫合糸着座部材612は、本体611の側壁を画定する対向する延長部612a、612bを含む本体611を有する。延長部612a、612bは、中央ステムから斜めに外向きに延在し、骨孔に挿入された時に延長部612a、612bが骨孔の縁部に接触するのに十分な寸法まで延在するように構成されている。
【0048】
湾曲した遠位に面する縫合糸着座面616が、延長部612a、612bの間の間隙に形成され、図示の実施形態では、縫合糸着座面616は湾曲面である。更に、一対の対向する凹状の縫合糸着座面617が、延長部612a、612bに隣接する本体611の側面上に配置されている。したがって、対向する表面617及び縫合糸着座面616は協働して、手術用縫合糸を着座させる表面を形成し、手術用縫合糸の位置を維持すると共に、それらが縫合糸着座部材612から外れるのを防止するように作用する。
【0049】
図8A~
図8Bに示すような縫合糸着座部材のいくつかの実施形態では、縫合糸着座部材を、骨孔への挿入後に最初の送達配向(
図8A)から展開配向(
図8B)まで回転させて、縫合糸着座部材を骨孔の中に更に固定することができる。
図8A及び
図8Bに示すように、縫合糸着座部材712は、中央ステム及び本体711を有し、実質的に台形形状である。縫合糸着座部材712は、中央ステムを通って実質的に長手方向に延び、次いで表面716aに対して横方向に延びる管腔714を有するカニューレ状であってもよい。更に、チャネル715が、表面716aから本体711を通って表面716bまで延在する。チャネル715は、表面716aに向かって曲がる管腔714の部分と連通するように形成されている。管腔714及びチャネル715は、以下に説明するように、ステー縫合糸を内部に容易に通せるように構成されている。縫合糸着座部材712は、本体611の縁部上に配置された側壁713、716a、及び716bを含む本体711を有する。側壁713、716aは、縫合糸着座部材712に対して斜めに内向きに延在して、遠位端712dに点を形成する。更に、側壁716aは、骨孔に挿入された時に側壁716が骨孔の縁部に接触し、次いで展開配向に回転するのに十分な長さまで延在するように構成されている。
【0050】
図8Bは、遠位に面する縫合糸着座面が側壁716aによって形成されるように展開配向に回転された後の縫合糸着座部材712を示す。
図8A及び
図8Bは、表面716aが平坦な表面であることを示しているが、当業者は、表面716aが凹面を含む他の形状も同様に有することができることを理解するであろう。縫合糸着座部材712の送達配向から展開配向への移行は、中央ステムを遠位延長部123から外し、次いで、例えば遠位延長部123によって中央ステムを回転位置に押し込むことによって行うことができる。縫合糸着座部材712が回転している間に、ステー縫合糸140は管腔715から外れ、チャネル714内で軸方向に位置合わせされる。縫合糸着座部材712の設計は、側壁713、716a、及び716bのテーパ状の設計により、縫合糸着座部材712を骨孔の中に容易に設置し、次いで回転させて骨孔の中にしっかりと係合させることを可能にする。
【0051】
図9A~
図9Bは、
図6の縫合糸着座部材を含む外科用アンカーシステムの別の一実施形態を示し、
図9C~
図9Eは、本明細書に記載のタイプのアンカー構造体が軟部組織10を骨12に固定する一方で、縫合糸着座面が手術用縫合糸の位置決めを促し、かつ/又は重なり合いを防止する手順を順次示している。
【0052】
図9A及び
図9Bに示すように、縫合糸アンカー102は、インサータシャフト222に取り付けられ、インサータシャフトの遠位延長部223は、縫合糸着座部材の管腔内を通過することによって縫合糸着座部材412に着座する。縫合糸アンカー102及び縫合糸着座部材412が上述のようにインサータシャフト222に取り外し可能に取り付けられていることにより、インサータシャフトを貫通して延在する管腔の中を捕捉縫合糸ループ142が通る。
【0053】
図9Bに示すアセンブリ全体が、手術の開始前に滅菌包装で完全に組み立てられてもよい。手術を開始するにあたり、患者は通常の方法で準備され、手術部位は、切開外科手術又は関節鏡視下手術などの低侵襲の技術のいずれかによって適切な方法でアクセスされる。骨12に固定されている軟部組織10に近接して骨に孔が形成される。1本以上の手術用縫合糸のストランド152が、骨12に再付着されるべき軟部組織10に通される。次いで、手術用縫合糸ストランド152は、ステー縫合糸ループ142に通される。手術用縫合糸150がステー縫合糸140のループ142内に配置されると、
図9Cに示すように、ループ142が引っ張られて、縫合糸着座面416とステー縫合糸ループ142との間に手術用縫合糸150を捕捉することができる。
【0054】
次いで、
図9Cに示すように、インサータシャフト222が先に穿孔された骨孔14内に配置され、手術用縫合糸150は、自由端154を引っ張ることによって所望の程度まで引っ張られる。
図9C及び9Dに示すように、インサータシャフト222を回転させることによって、縫合糸アンカー102が骨孔14に挿入され、縫合糸アンカーは骨内に更に前進して縫合糸着座部材412に近接する。縫合糸アンカーが回転して骨内に前進する間、手術用縫合糸の自由縫合糸リム154は、回転しない縫合糸着座部材412上に形成された遠位に面する縫合糸着座面416によって拘束され、したがって、手術用縫合糸ストランドの位置を維持する。
【0055】
アンカー構造体230が適切に着座すると、
図9Eに示すように、ステー縫合糸140が管腔228から取り外され、引き出される。更に、インサータシャフト222が取り外され、縫合糸アンカー102及び縫合糸着座部材412から形成されたアンカー構造体230を骨孔14内に残す。当業者は、骨孔の壁とアンカー構造体230との間に手術用縫合糸150を位置決めすることで、手術用縫合糸に対する十分な張力が維持されると共に、本明細書に記載の縫合糸着座面が縫合糸の重なり合いの可能性を低減させることを理解するであろう。
【0056】
本明細書に記載される方法及びシステムは、異なる変形形態を有し得る。例えば、実施形態の各々において、複数の縫合糸を使用して組織を骨に連結することができる。また、外科手術の前又は間に、1つ以上の手術用縫合糸をアンカー内に装填することができる。例えば、いくつかの実施形態では、縫合糸アンカーが縫合糸を含むように、縫合糸アンカーに少なくとも1つの手術用縫合糸が事前に装填されていてもよい。更に、いくつかの実施形態では、アンカーがインサータシャフト上に予め装填されていてもよい。
【0057】
本明細書に開示される装置は、1回の使用後に廃棄されるように設計することができ、又は複数回使用されるように設計することができる。しかしながら、いずれの場合も、デバイスは、少なくとも1回の使用後に、再使用のために再調整することができる。再調整には、装置の分解工程、それに続く特定の部品の洗浄工程又は交換工程、及びその後の再組立工程の任意の組み合わせを含むことができる。特に、装置は分解することができ、装置の任意の数の特定の部分又は部品、例えばシャフトを、任意の組み合わせで選択的に交換するか又は取り外すことができる。特定の部分を洗浄及び/又は交換した後、デバイスを後の使用のために、再調整施設で、又は外科手術の直前に外科チームによってのいずれかで再度組み立てることができる。当業者であれば、装置の再調整が、分解、洗浄/交換、及び再組み立てのための様々な技術を利用できることを理解するであろう。かかる技術の使用、及び結果として得られる再調整された装置は、全て本出願の範囲内にある。
【0058】
好ましくは、本明細書に記載された構成部品は、手術の前に処理される。最初に、新しい又は使用済みの器具を入手し、必要であれば洗浄する。次いで、器具を滅菌することができる。1つの滅菌技術では、器具は、プラスチックバッグ又はTYVEKバッグなどの閉鎖され密封された容器に入れられる。次に、容器及び器具を、γ線、X線、又は高エネルギ電子など、容器を透過することができる放射線照射野に置く。放射線は、器具上又は容器内の細菌を死滅させる。この後、滅菌された器具を滅菌容器内で保管することができる。密封された容器は、医療設備において開封されるまで器具を滅菌状態に保つ。
【0059】
本構成部品は滅菌されることが好ましい。これは、β線又はγ線放射、酸化エチレン、蒸気、及び液浴(例えば、低温浸漬)などの当業者には既知の様々な方法によって行うことができる。
【0060】
当業者は、上述の実施形態に基づいて、記載された主題の更なる特徴及び利点を理解するであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲によって示される場合を除き、具体的に示され、かつ説明されている内容によって限定されるものではない。本明細書で引用される全ての刊行物及び参考文献は、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0061】
〔実施の態様〕
(1) 縫合糸アンカーシステムであって、
内部を貫通して延在する管腔と、遠位延長部の近位にあるアンカー受容部分を有する細長いインサータシャフトと、を有するカニューレ状のインサータ器具であって、前記アンカー受容部分は、前記アンカー受容部分の上に形成された少なくとも1つの駆動機構を有し、前記遠位延長部は、前記アンカー受容部分の直径よりも小さい直径を有する、カニューレ状のインサータ器具と、
前記インサータ器具の前記アンカー受容部分の上に取り外し可能に配置されたカニューレ状の縫合糸アンカー、及び、前記縫合糸アンカーの外面の上に配置された少なくとも1つの骨係合機構と、
隙間嵌めによって前記遠位延長部上に取り外し可能に配置されたカニューレ状の縫合糸着座部材であって、前記縫合糸着座部材は、前記縫合糸アンカーとは回転可能に独立しており、遠位端に開口部を有する管腔が前記縫合糸着座部材を貫通して延在しており、前記縫合糸着座部材の前記遠位部分は縫合糸着座面を有する、カニューレ状の縫合糸着座部材と、
を備える、縫合糸アンカーシステム。
(2) 前記管腔及び前記縫合糸着座部材の前記開口部を貫通して延在する少なくとも1つのステー縫合糸ループ(stay suture loop)を更に備える、実施態様1に記載の縫合糸アンカーシステム。
(3) 前記縫合糸着座面は、平坦な表面及び曲線状の表面の少なくとも一方である、実施態様1に記載の縫合糸アンカーシステム。
(4) 前記曲線状の表面は略凹状の表面である、実施態様3に記載の縫合糸アンカーシステム。
(5) 前記縫合糸着座部材は折り畳み可能な部分を更に含み、前記縫合糸着座面は前記折り畳み可能な部分の前記遠位端上に配置されている、実施態様1に記載の縫合糸アンカーシステム。
【0062】
(6) 前記縫合糸着座部材は、前記縫合糸着座部材の対向する側面上に配置された一対の対向する縫合糸着座機構を含み、前記縫合糸着座機構は、1つ以上の手術用縫合糸ストランドの所望の配向を維持するように構成されている、実施態様1に記載の縫合糸アンカーシステム。
(7) 前記アンカー受容部分の長さが前記縫合糸アンカーの長さ以上である、実施態様1に記載の縫合糸アンカーシステム。
(8) 前記縫合糸着座部材は、前記インサータシャフトに沿って前記縫合糸アンカーからある距離だけ離間している、実施態様1に記載の縫合糸アンカーシステム。
(9) 前記アンカー受容部分は非円筒形の断面形状を有する、実施態様1に記載の縫合糸アンカーシステム。
(10) 前記アンカー受容部分は六角形の断面形状を有する、実施態様9に記載の縫合糸アンカーシステム。
【0063】
(11) 前記縫合糸着座面は、1つ以上の手術用縫合糸を所定の配向に維持するように構成されている、実施態様1に記載の縫合糸アンカーシステム。
(12) 前記アンカー受容部分の遠位端は、前記縫合糸着座部材の近位端に隣接する肩部を含む、実施態様1に記載の縫合糸アンカーシステム。
(13) 前記縫合糸アンカーの管腔内に、前記アンカー受容部分の前記駆動部材と係合するように構成された少なくとも1つの被駆動機構が配置されている、実施態様1に記載の縫合糸アンカーシステム。
(14) 前記縫合糸アンカーの前記管腔は、前記アンカー受容部分の断面形状と相補的な断面形状を有する、実施態様13に記載の縫合糸アンカーシステム。
(15) 骨に軟部組織を付着させるための方法であって、
骨に再付着されるべき軟部組織に1つ以上の手術用縫合糸を固定することと、
少なくとも1つのステー縫合糸から形成された少なくとも1つのステー縫合糸ループに1つ以上の手術用縫合糸の自由縫合糸リムを通すことであって、前記少なくとも1つのステー縫合糸ループは、カニューレ状の縫合糸着座部材の遠位端の開口部から延在し、前記縫合糸着座部材は、カニューレ状のインサータに取り外し可能に取り付けられた縫合糸アンカーの遠位に配置されている、ことと、
前記1つ以上の手術用縫合糸が前記縫合糸着座部材上に配置された縫合糸着座面と前記少なくとも1つのステー縫合糸ループとの間に捕捉されるように、前記少なくとも1つのステー縫合糸を引っ張って、前記少なくとも1つのステー縫合糸ループを閉じることと、
前記アンカー及び前記縫合糸着座部材が取り付けられた前記インサータを、骨に再付着されるべき前記軟部組織に隣接する骨孔の中に挿入することによって、前記1つ以上の手術用縫合糸を前記孔の中に配置することと、
前記1つ以上の手術用縫合糸が前記孔の中に配置されている間、所望の量の張力を前記自由縫合糸リムに付与することと、
前記縫合糸着座部材の回転位置を維持し、前記縫合糸着座部材に対する前記1つ以上の手術用縫合糸の前記自由縫合糸リムの位置を実質的に維持しながら、前記1つ以上の手術用縫合糸に対する前記所望の張力を維持している間に、前記縫合糸アンカーを前記骨孔の中に埋め込んで骨と係合させ、前記軟部組織を骨との所望の係合に至らせることと、
前記少なくとも1つのステー縫合糸及び前記インサータを取り外すことと、
を含む、方法。
【0064】
(16) 前記カニューレ状の縫合糸アンカーは、前記カニューレ状の縫合糸アンカーの外面の上に配置された少なくとも1つの骨係合機構を含む、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記少なくとも1つの骨係合機構は、ねじ山及び骨係合棘のうちの1つである、実施態様15に記載の方法。
(18) 前記縫合糸アンカーを埋め込むことは、前記縫合糸アンカーを回転させることを含む、実施態様15に記載の方法。
(19) 前記縫合糸アンカーが回転する時に前記縫合糸着座部材は回転しない、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記インサータ及び前記少なくとも1つのステー縫合糸を取り外した後に、前記1つ以上の手術用縫合糸が前記縫合糸アンカーと前記骨孔との間にノットレス式に固定される、実施態様15に記載の方法。
【0065】
(21) 前記インサータ及び前記少なくとも1つのステー縫合糸を取り外した後に、前記縫合糸アンカーが前記縫合糸着座部材を前記骨孔の底部に対して圧縮し、前記縫合糸着座部材は、前記縫合糸着座部材の遠位の前記1つ以上の手術用縫合糸の一部分を前記骨孔の前記底部に対して圧縮する、実施態様15に記載の方法。
【外国語明細書】