(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169492
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】熱振動発電デバイス、発電方法及び熱振動発電システム
(51)【国際特許分類】
H02N 2/18 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
H02N2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073699
(22)【出願日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2021074763
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】上野 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】貝沼 亮介
(72)【発明者】
【氏名】大森 俊洋
(72)【発明者】
【氏名】許 キョウ
(72)【発明者】
【氏名】宮川 寅矢
【テーマコード(参考)】
5H681
【Fターム(参考)】
5H681AA06
5H681BB08
5H681DD30
5H681EE10
(57)【要約】
【課題】高電圧を発生させることができる熱振動発電デバイスなどを提供する。
【解決手段】熱振動発電デバイス1は、熱源2に設けられる熱振動発電デバイス1であって、自由端部F1及び固定端部F2を有するフレーム20、並びに、磁歪素子32を有し、フレーム20に設けられる発電部30を有する発電部材70と、感温磁性体材料によって構成され、フレーム20の自由端部F1に設けられる感温磁性体部材50と、第1磁石10と、を備え、熱振動発電デバイス1の状態は、感温磁性体部材50が熱の授受を行う第1状態と、自由端部F1が自由振動を行う第2状態と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源に設けられる熱振動発電デバイスであって、
自由端部及び固定端部を有するフレーム、並びに、磁歪素子を有し前記フレームに設けられる発電部を有する発電部材と、
感温磁性体材料によって構成され、前記フレームの前記自由端部に設けられる感温磁性体部材と、
第1磁石と、を備え、
前記熱振動発電デバイスの状態は、
前記感温磁性体部材が熱の授受を行う第1状態と、
前記自由端部が自由振動を行う第2状態と、を含む
熱振動発電デバイス。
【請求項2】
前記第1磁石は、前記熱源に設けられ、
前記第1状態は、前記感温磁性体部材が前記第1磁石と接触することで前記第1磁石と熱の授受を行う状態である
請求項1に記載の熱振動発電デバイス。
【請求項3】
前記フレームは、フレーム本体部、及び、前記自由端部が設けられる連結部材を有する
請求項2に記載の熱振動発電デバイス。
【請求項4】
前記自由端部に設けられる第2磁石を、さらに備える
請求項3に記載の熱振動発電デバイス。
【請求項5】
前記連結部材は、前記熱源側を向く第1面及び前記第1面に背向する第2面を有し、
前記感温磁性体部材は、前記第1面に設けられ、
前記第2磁石は、前記第2面に設けられる
請求項4に記載の熱振動発電デバイス。
【請求項6】
前記熱源に設けられる磁性部材と、
前記自由端部に設けられ、前記感温磁性体部材と接する1個以上の前記第1磁石と、を備え、
前記第1状態は、前記感温磁性体部材が前記磁性部材と接触することで前記磁性部材と熱の授受を行う状態である
請求項1に記載の熱振動発電デバイス。
【請求項7】
前記1個以上の第1磁石は、2個の第1磁石を含み、
前記2個の第1磁石のうち一方の第1磁石は、S極で前記感温磁性体部材と接し、
前記2個の第1磁石のうち他方の第1磁石は、N極で前記感温磁性体部材と接する
請求項6に記載の熱振動発電デバイス。
【請求項8】
前記フレームは、フレーム本体部、及び、前記自由端部が設けられる連結部材を有する
請求項6に記載の熱振動発電デバイス。
【請求項9】
前記連結部材は、前記熱源側を向く第1面及び前記第1面に背向する第2面を有し
前記感温磁性体部材は、前記第1面に設けられ、
前記1個以上の第1磁石のそれぞれは、前記第1面から前記第2面まで貫通して設けられる
請求項8に記載の熱振動発電デバイス。
【請求項10】
前記連結部材は、複数の放熱フィンを含む
請求項3又は8に記載の熱振動発電デバイス。
【請求項11】
前記発電部材は、第1発電部材及び第2発電部材を含み、
前記第1発電部材が有する前記フレームは、フレーム本体部、及び、前記自由端部が設けられる連結部材を有し、
前記連結部材は、前記第2発電部材が有する前記フレームの前記自由端部に接続され、
前記感温磁性体部材及び前記1個以上の第1磁石は、前記連結部材の前記自由端部に設けられる
請求項6に記載の熱振動発電デバイス。
【請求項12】
前記フレームの形状は、U字形状を有する
請求項1、2又は6に記載の熱振動発電デバイス。
【請求項13】
断熱部材を、さらに備え、
前記固定端部は、前記断熱部材を介して前記熱源に取り付けられる
請求項1、2又は6に記載の熱振動発電デバイス。
【請求項14】
前記熱源の温度TH(℃)は、前記感温磁性体材料のキュリー温度をTc(℃)とした場合、
Tc≦ TH ≦2.0×Tc
を満たす
請求項1又は2に記載の熱振動発電デバイス。
【請求項15】
熱源に設けられる熱振動発電デバイスによる発電方法であって、
前記熱振動発電デバイスは、
自由端部及び固定端部を有するフレームと、
磁歪素子を有し、前記フレームに設けられる発電部と、
感温磁性体材料によって構成され、前記フレームの前記自由端部に設けられる感温磁性体部材と、
第1磁石と、を備え、
前記発電方法は、
前記感温磁性体部材が熱の授受を行うことで前記感温磁性体部材の磁化の増加及び減少の一方の変化が生じる第1磁化変化ステップと、
前記自由端部が自由振動することで前記発電部が発電する発電ステップと、
前記感温磁性体部材の磁化の前記増加及び前記減少の他方の変化が生じる第2磁化変化ステップと、を含む
発電方法。
【請求項16】
前記第1磁石は、前記熱源に設けられ、
前記発電方法は、
前記感温磁性体部材が前記第1磁石と接触する第1接触ステップを含み、
前記第1磁化変化ステップは、前記感温磁性体部材が前記第1磁石と熱の授受を行うことで前記感温磁性体部材の磁化の減少が生じる第1磁化減少ステップであり、
前記発電ステップでは、前記感温磁性体部材が前記第1磁石から分離して前記自由端部が自由振動することで前記発電部が発電し、
前記第2磁化変化ステップは、前記感温磁性体部材の磁化の増加が生じる第1磁化増加ステップである
請求項15に記載の発電方法。
【請求項17】
前記熱振動発電デバイスは、
前記熱源に設けられる磁性部材と、
前記自由端部に設けられ、前記感温磁性体部材と接する1個以上の前記第1磁石と、を備え、
前記発電方法は、
前記感温磁性体部材が前記磁性部材と接触する第2接触ステップを含み、
前記第1磁化変化ステップは、前記感温磁性体部材が前記磁性部材と熱の授受を行うことで前記感温磁性体部材の磁化の増加が生じる第2磁化増加ステップであり、
前記発電ステップでは、前記感温磁性体部材が前記磁性部材から分離して前記自由端部が自由振動することで前記発電部が発電し、
前記第2磁化変化ステップは、前記感温磁性体部材の磁化の減少が生じる第2磁化減少ステップである
請求項15に記載の発電方法。
【請求項18】
熱源と、
請求項1、2又は6に記載の熱振動発電デバイスと、を備える
熱振動発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱振動発電デバイス、発電方法及び熱振動発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、振動を電力に変換する技術の開発が盛んに行われている。その技術の1つとして熱及び振動を利用した熱振動発電デバイスが知られている。このような熱振動発電デバイスは、温度センサ、流量センサ、圧力センサ、電流センサなどの種々のセンサと共に生産機械又は工作機械などの機械装置に取り付けられ、機械装置の異常(例えば高温状態)などを検知するために利用されることがある。
【0003】
例えば、非特許文献1では、カンチレバーと、カンチレバーに設けられたNiMnGaフィルム及びピックアップコイルと、NiMnGaフィルムを加温する磁石とを備える熱振動発電デバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Marcel Gueltig, Frank Wendler, Hinnerk Ossmer, Makoto Ohtsuka, Hiroyuki Miki,Toshiyuki Takagi, and Manfred Kohl,“High-Performance Thermomagnetic Generators Based on Heusler Alloy Films”Adv. Energy Mater. 2016, 1601879.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1に開示される熱振動発電デバイスでは、高電圧を発生させることが難しい。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決しようとするものであり、高電圧を発生させることができる熱振動発電デバイスなどを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る熱振動発電デバイスは、熱源に設けられる熱振動発電デバイスであって、自由端部及び固定端部を有するフレーム、並びに、磁歪素子を有し前記フレームに設けられる発電部を有する発電部材と、感温磁性体材料によって構成され、前記フレームの前記自由端部に設けられる感温磁性体部材と、第1磁石と、を備え、前記熱振動発電デバイスの状態は、前記感温磁性体部材が熱の授受を行う第1状態と、前記自由端部が自由振動を行う第2状態と、を含む。
【0008】
また、本発明の一態様に係る発電方法は、熱源に設けられる熱振動発電デバイスによる発電方法であって、前記熱振動発電デバイスは、自由端部及び固定端部を有するフレームと、磁歪素子を有し、前記フレームに設けられる発電部と、感温磁性体材料によって構成され、前記フレームの前記自由端部に設けられる感温磁性体部材と、第1磁石と、を備え、前記発電方法は、前記感温磁性体部材が熱の授受を行うことで前記感温磁性体部材の磁化の増加及び減少の一方の変化が生じる第1磁化変化ステップと、前記自由端部が自由振動することで前記発電部が発電する発電ステップと、前記感温磁性体部材の磁化の前記増加及び前記減少の他方の変化が生じる第2磁化変化ステップと、を含む。
【0009】
また、本発明の一態様に係る熱振動発電システムは、熱源と、上記に記載の熱振動発電デバイスと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高電圧を発生させることができる熱振動発電デバイスなどを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る熱振動発電システムの側面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る感温磁性体部材を構成するNiMnIn合金の温度と磁化との関係を示す図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る熱振動発電デバイスの動作例のフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る熱振動発電デバイスの動作例を説明する側面図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係る熱振動発電デバイスの動作例を説明する他の側面図である。
【
図6】
図6は、実施の形態に係る熱振動発電デバイスの動作例を説明する他の側面図である。
【
図7】
図7は、実施の形態に係る発電部による発電を説明する図である。
【
図8】
図8は、実施の形態に係る発電部による発電の詳細を説明する図である。
【
図9】
図9は、変形例1に係る熱振動発電システムの側面図である。
【
図10】
図10は、変形例1に係る感温磁性体部材を構成するNiCoMnIn合金の温度と磁化との関係を示す図である。
【
図11】
図11は、変形例1に係る高温熱源と連結板との位置関係について説明するための側面図である。
【
図12】
図12は、変形例2に係る熱振動発電システムの側面図である。
【
図13】
図13は、変形例3に係る熱振動発電システムの側面図である。
【
図14】
図14は、変形例4に係る熱振動発電システムの側面図である。
【
図15】
図15は、変形例5に係る熱振動発電システムの側面図である。
【
図16】
図16は、変形例5に係る感温磁性体部材を構成するNiMnCoSn合金の温度と磁化との関係を示す図である。
【
図17】
図17は、変形例5に係る低温熱源と連結部材との位置関係について説明するための側面図である。
【
図18】
図18は、変形例6に係る熱振動発電システムの側面図である。
【
図19】
図19は、変形例6に係る熱振動発電システムにおける2個の第1磁石を説明する正面図である。
【
図20】
図20は、変形例6に係る感温磁性体部材と磁性部材とが接した状態を示す側面図である。
【
図21】
図21は、変形例6に係る感温磁性体部材の磁化が低い場合の熱振動発電デバイスを示す図である。
【
図22】
図22は、変形例6に係る感温磁性体部材の磁化が
図21が示す場合よりも強い場合の熱振動発電デバイスを示す図である。
【
図23】
図23は、変形例6に係る熱振動発電デバイスの動作例のフローチャートである。
【
図24】
図24は、変形例6に係る熱振動発電デバイスの動作例を説明する側面図である。
【
図25】
図25は、変形例6に係る熱振動発電デバイスの動作例を説明する他の側面図である。
【
図26】
図26は、変形例6の実施例に係る熱振動発電デバイスが備えるフレームの周辺の平面図である。
【
図27】
図27は、変形例6の実施例に係る熱振動発電デバイスが備えるフレームの周辺の正面図である。
【
図28】
図28は、変形例6の実施例に係る熱振動発電デバイスが備えるフレームの周辺の側面図である。
【
図29】
図29は、変形例6の実施例に係る磁性部材及び感温磁性体部材のそれぞれの温度の時間変化を示す図である。
【
図30】
図30は、変形例6の実施例に係る熱振動発電デバイスによる発生電圧の時間変化を示す図である。
【
図33】
図33は、変形例7に係る熱振動発電システムの側面図である。
【
図34】
図34は、変形例7に係る連結部材の周辺の平面視である。
【
図35】
図35は、その他の実施の形態に係る感温磁性体部材を構成する感温磁性体材料の温度と磁化との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0013】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化される場合がある。
【0014】
また、本明細書及び図面において、x軸、y軸及びz軸は、三次元直交座標系の三軸を示している。なお、各図において、x軸方向及びy軸方向は互いに直交する方向であり、z軸方向は、x軸及びy軸に対し垂直な方向である。
【0015】
(実施の形態)
[熱振動発電システムの構成]
本実施の形態に係る熱振動発電システム100の構成例について用いて説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態に係る熱振動発電システム100の側面図である。
【0017】
本実施の形態に係る熱振動発電システム100は、熱振動発電デバイス1と、熱源2と、を備える発電システムである。本実施の形態においては、熱振動発電システム100は常温TRの環境下に設置され使用されており、また、熱源2の温度は常温TRより高温である温度THである。ここでは一例として、常温TRは20℃、温度THは80℃である。熱振動発電システム100は、温度THと常温TRとの温度差を利用して、発電するシステムである。
【0018】
熱源2は、一例として、機械装置である。機械装置は、背景技術で記載の通り、生産機械又は工作機械などである。なお、熱源2は、上記に限られず常温TRと温度差のある物体であればよく、例えば、アスファルト舗装された道路などであってもよい。
【0019】
本実施の形態に係る熱振動発電デバイス1は、熱源2に設けられており、温度THと常温TRとの温度差を利用して発電するデバイスであり、例えば、上記センサなどの電源として利用される。
【0020】
熱振動発電デバイス1は、第1磁石10と、フレーム20及び発電部30を有する発電部材70と、断熱部材(第1断熱部材40)と、感温磁性体部材50と、第2磁石60とを備える。なお、発電部30は、コイル31と、磁歪素子32と、発電用磁石33と、を有し、振動により発電する要素である。
【0021】
なお、本実施の形態においては、発電部30が有する磁歪素子32の形状が平板形状であり、磁歪素子32の平面であって熱振動発電デバイス1が振動していない場合の当該平面と平行な面がxy平面とする。
【0022】
第1磁石10は、本実施の形態においては、熱源2に設けられる磁石であるが、第1磁石10が設けられる箇所はこれに限られない。より具体的には、第1磁石10は、高熱伝導部材11を介して熱源2に取り付けられている。
【0023】
なお、高熱伝導部材11は、高い熱伝導率を示す材料によって構成されているとよく、例えば、高い熱伝導率を示す鉄、銅、ニッケル又はアルミニウムなどの金属によって構成されているとよいが、これらの材料に限られない。高熱伝導部材11は熱源2よりもz軸正側に、第1磁石10は高熱伝導部材11よりもz軸正側に設けられている。
【0024】
また、第1磁石10は、一例として、ネオジムなどによって構成される永久磁石であるが、これに限られない。第1磁石10が高熱伝導部材11を介して熱源2に取り付けられているため、熱源2の熱は第1磁石10に移動する。よって、第1磁石10の温度は、常温TRよりも熱源2の温度THと近い温度となり易く、ここでは熱源2と同じく温度TH(80℃)である。
【0025】
フレーム20は、フレーム本体部21と、連結部材22とを有する部材である。
【0026】
また、フレーム20は、自由端部F1、屈曲部B及び固定端部F2を有する。本実施の形態においては、連結部材22が自由端部F1を、フレーム本体部21が屈曲部B及び固定端部F2を有する。フレーム20の形状はU字形状を有する部材であり、より具体的には、フレーム本体部21の形状は、側面視において、U字形状を有する。
【0027】
また、フレーム本体部21は、1枚の板形状の部材がU字形状を有するように、屈曲されて形成されている。フレーム20は、屈曲部Bを挟んで一方の端部が固定端部F2、他方の端部が自由端部F1になるような状態、いわゆる片持ち梁の状態で固定支持される。なお、熱振動発電デバイス1では、フレーム本体部21が有する固定端部F2が第1断熱部材40に固定されて設置されている。
【0028】
自由端部F1が自由振動する場合には、フレーム20自体も振動する。このとき、自由端部F1と固定端部F2とが開くようにフレーム20が変形した状態(開状態)、及び、自由端部F1と固定端部F2とが閉まるようにフレーム20が変形した状態(閉状態)が繰り返される。換言すると、自由端部F1と固定端部F2とのギャップが大きくなる状態(開状態)、及び、当該ギャップが小さくなる状態(閉状態)が繰り返される。
【0029】
フレーム本体部21には発電部30が有する磁歪素子32及び発電用磁石33が設けられており、フレーム本体部21は、これらの構成要素を支持する部材である。フレーム本体部21を構成する材料は、特に限られないが、例えば、弾性を有する材料で構成されているとよい。また、フレーム本体部21を構成する材料は、例えば、鉄を含む材料で構成されているとよい。フレーム本体部21は、例えば、バネ鋼(ベーナイト鋼)、冷間圧延鋼帯(SPCC:Steel Plate Cold Commercial)などによって構成される。
【0030】
U字形状を有するフレーム本体部21は、
図1が示すように、互いに向かい合う第1内側面211及び第2内側面212と、第1外側面213及び第2外側面214とを有している。
【0031】
連結部材22は、フレーム本体部21の第1外側面213に取り付けられている部材である。本実施の形態においては、連結部材22は、熱源2側を向く第1面221及び第1面221に背向する第2面222を有する板形状の部材である。
【0032】
また、連結部材22は、板形状に限られず、棒形状など他の形状であってもよい。連結部材22は、第1面221と第1外側面213とが接するように、フレーム本体部21に取り付けられており、例えばネジ(不図示)などにより連結部材22及びフレーム本体部21が固定されてもよい。
【0033】
フレーム本体部21と同じく、連結部材22を構成する材料は、剛性及び弾性を有する材料で構成されている。つまり、連結部材22を構成する材料は、例えば、鉄を含む材料で構成されているとよい。連結部材22は、例えば、バネ鋼、冷間圧延鋼帯などによって構成される。また、連結部材22は、リン青銅によって構成されてもよい。これにより、フレーム20が振動する場合に、連結部材22が撓ることができる。
【0034】
続いて、発電部30について説明する。
【0035】
発電部30が有する磁歪素子32は、フレーム20が有する第1外側面213に取り付けられている部材である。上記の通り、磁歪素子32の形状は、特に限られないが平板形状であり、磁歪素子32の大きさは、例えば、4mm×0.5mm×16mm程度であるがこれに限られない。本実施の形態においては、フレーム20に取り付けられている磁歪素子32の平面であって、熱振動発電デバイス1が振動していない場合の当該平面と平行な面がxy平面である。
【0036】
磁歪素子32は、磁歪材料によって構成されている。磁歪材料は、一例として、鉄ガリウム合金であるが、これに限られず、例えば、鉄アルミ合金であってもよいし、その他の材料であってもよい。
【0037】
磁歪素子32は、振動によって変形する素子である。本実施の形態においては、磁歪素子32は、フレーム20に取り付けられているためフレーム20が振動すると、磁歪素子32は変形する。
【0038】
コイル31は、フレーム本体部21が有する第1内側面211及び第1外側面213と磁歪素子32とに巻かれている。コイル31は、電磁誘導の法則により磁歪素子32を通る磁力線の時間的変化に比例して電圧を発生させる。
【0039】
コイル31の材質は、一例として、銅であるが、特に限定されない。また、コイル31の巻き数を変更することで、電圧の大きさを調整することができる。
【0040】
発電用磁石33は、フレーム本体部21の第2内側面212に設けられている。発電用磁石33は、一例として、永久磁石であるが、これに限られず電磁石であってもよい。発電用磁石33からの磁力線が磁歪素子32を通過する。
【0041】
上記のように、フレーム20において開状態と閉状態とが繰り返されて振動する場合には、フレーム本体部21に取り付けられる磁歪素子32には曲げモーメントに対応する引張応力と圧縮応力とが交互に発生し、磁歪素子32は伸長し又は収縮して変形する。
【0042】
このように、フレーム20が振動すると、磁歪素子32の磁力線は逆磁歪効果により増加又は減少し、コイル31を貫く磁束密度も増加又は減少する。この磁束密度の時間的変化により、コイル31に誘導電圧(又は誘導電流)が発生する。
【0043】
このように、発電部30は、フレーム20の振動により発電することができる。
【0044】
次に、断熱部材について説明する。なお、本実施の形態においては、断熱部材として、第1断熱部材40が用いられる。
【0045】
第1断熱部材40は、固定端部F2と熱源2との間に設けられる部材である。また、第1断熱部材40は、熱源2に固定されて設置されている。このため、フレーム本体部21の固定端部F2は、第1断熱部材40を介して熱源2に固定されて取り付けられているとも言える。
図1が示すように、第1断熱部材40は熱源2よりもz軸正側に、フレーム20は第1断熱部材40よりもz軸正側に設けられている。
【0046】
本実施の形態に係る第1断熱部材40の形状は、平板形状であるが、これに限られず、固定端部F2(より具体的には、フレーム20)と熱源2とが直接接触しないように、これらの間に挿入される形状であればよい。
【0047】
第1断熱部材40は、熱源2と熱振動発電デバイス1との間での熱の授受を抑制するための部材である。本実施の形態においては、第1断熱部材40は、より高温である熱源2から熱振動発電デバイス1(より具体的には、フレーム本体部21)への、熱の移動を抑制するための部材である。
【0048】
第1断熱部材40は、断熱材料によって構成されている。第1断熱部材40は、フレーム本体部21を構成する材料が有する熱伝導率よりも低い熱伝導率を有し、かつ、フレーム20(フレーム本体部21)を支持できる剛性を有する材料によって構成されているとよい。第1断熱部材40を構成する材料は、例えば、樹脂などを用いることができ、より具体的には、ベークライト(フェノール樹脂)を用いることができるがこれに限られない。
【0049】
さらに、感温磁性体部材50について説明する。
【0050】
感温磁性体部材50は、感温磁性体材料によって構成される部材である。ここでは、感温磁性体部材50の形状は、平板形状であるが、これに限られない。感温磁性体材料とは、磁化が温度に依存する材料である。
【0051】
より具体的には、感温磁性体材料とは、温度に依存して、磁気特性が強磁性又は常磁性に変化する材料である。感温磁性体材料は、一例として、ニッケルマンガンインジウム合金(NiMnIn合金)、ニッケルコバルトマンガンインジウム合金(NiCoMnIn合金)、ニッケルコバルトマンガンアルミニウム合金(NiCoMnAl合金)、ニッケルマンガンコバルトスズ合金(NiMnCoSn合金)などであるがこれらに限られない。
【0052】
また、感温磁性体材料は、磁気変態合金、又は、磁気相変態合金などとも呼ばれる材料である。本実施の形態においては、感温磁性体材料は、NiMnIn合金である。さらに、NiMnIn合金によって構成される感温磁性体部材50の温度と磁化との関係を
図2を用いて説明する。
【0053】
図2は、本実施の形態に係る感温磁性体部材50を構成するNiMnIn合金の温度と磁化との関係を示す図である。約-100℃~約0℃の領域においては、温度が上がると磁化がなだらかに減少する。約0℃~約10℃の領域においては、温度が上がると磁化が急峻に増加する。なお、この領域においては、NiMnIn合金にマルテンサイト変態が起こることで、磁化が急激に変化する。約10℃~約70℃の領域においては、温度が上がると磁化が減少する。なお、本実施の形態に係るNiMnIn合金は約70℃以上の温度において、常磁性になると見積もられる。ここでは、本実施の形態に係るNiMnIn合金のキュリー温度Tcを70℃と定義する。
【0054】
感温磁性体部材50は、フレーム20(より具体的には、連結部材22)の自由端部F1に設けられる。本実施の形態においては、感温磁性体部材50は、自由端部F1において、熱源2側である第1面221に、つまりは、連結部材22よりもz軸負側に設けられている。
【0055】
さらに、感温磁性体部材50と第1磁石10との位置関係について説明する。
【0056】
図2が示すように、感温磁性体部材50は温度によって磁化が変化するため、感温磁性体部材50と第1磁石10との間に発生する引力の強さが変化する。感温磁性体部材50と第1磁石10との間の引力が強い場合に、感温磁性体部材50と第1磁石10とが接するように感温磁性体部材50と第1磁石10とが配置されるとよい。
【0057】
より具体的には、感温磁性体部材50の磁化が高い場合に感温磁性体部材50と第1磁石10との間に強い引力が発生し、この引力によりフレーム20(より具体的には、フレーム本体部21)が変形することで、感温磁性体部材50と第1磁石10とが接するように感温磁性体部材50と第1磁石10とが配置されるとよい。例えば、
図1が示すように、感温磁性体部材50よりもz軸負側に、第1磁石10が配置されるとよい。なお、感温磁性体部材50の磁化が低い場合に感温磁性体部材50と第1磁石10との間に強い引力が発生しないため、
図1が示すように、感温磁性体部材50と第1磁石10とは接していない。
【0058】
また、上記に記載された連結部材22は、連結部材22の自由端部F1に取り付けられる感温磁性体部材50と、第1磁石10との位置関係を調整する役割を担うとよい。換言すると、連結部材22は、感温磁性体部材50と第1磁石10とのギャップ及び角度を調整する役割を担うとよい。つまり、上記の引力が強い場合に、感温磁性体部材50と第1磁石10とが接して配置されるように、連結部材22の大きさ及び形状が選択されるとよい。このため、本実施の形態においては、連結部材22は板形状だが、これに限られない。
【0059】
第2磁石60は、フレーム20(より具体的には、連結部材22)の自由端部F1に設けられる。本実施の形態においては、第2磁石60は、自由端部F1において、第2面222に設けられている。
【0060】
第2磁石60は、一例として、ネオジムなどによって構成される永久磁石であるが、これに限られない。第2磁石60は、第1磁石10と第2磁石60との間に引力が発生するように設置されている。
【0061】
[動作例]
次に、熱振動発電デバイス1による発電方法の動作例について
図3~
図6を用いて説明する。
【0062】
図3は、本実施の形態に係る熱振動発電デバイス1の動作例のフローチャートである。
図4~
図6は、本実施の形態に係る熱振動発電デバイス1の動作例を説明する側面図である。
【0063】
まず、常温TRの環境下で、熱振動発電デバイス1が熱源2に設置される。このとき、
図4が示すように、感温磁性体部材50は、第1磁石10と接触する(S10)。常温TRの環境下では感温磁性体部材50の温度も常温TRであり、
図2が示すように、感温磁性体部材50の磁化が高い。このため、感温磁性体部材50と第1磁石10との間に強い引力が生じ、フレーム本体部21が変形して、感温磁性体部材50と第1磁石10とが接触する。
【0064】
なお、本実施の形態においては、第2磁石60が設けられているため、第1磁石10と第2磁石60との間にも引力が生じている。そのため、フレーム本体部21が変形し易く、感温磁性体部材50と第1磁石10とが接触し易い。このステップS10が第1接触ステップに相当する。
【0065】
また、第1磁石10は、高熱伝導部材11を介して、常温TRよりも高温である温度THを示す熱源2に取り付けられている。そのため、ここでは、第1磁石10の温度も、温度THである。
【0066】
ステップS10では、感温磁性体部材50が第1磁石10と接触している。そのため、高温である温度THを示す第1磁石10から感温磁性体部材50へ熱の移動が起こり、感温磁性体部材50の磁化が変化する。つまり、ここでは、感温磁性体部材50が熱の授受を行うことで感温磁性体部材50の磁化の増加及び減少の一方の変化が生じる(S20)。本実施の形態においては、感温磁性体部材50が第1磁石10と熱の授受を行うことで、感温磁性体部材50の磁化の減少が生じ、つまりは、感温磁性体部材50の磁化が減少する。
図2の矢印A1が示すように、感温磁性体部材50の温度が常温TRから温度THに上がることで、感温磁性体部材50の磁化が減少する。このステップS20が第1磁化変化ステップに相当し、より具体的には、第1磁化減少ステップに相当する。
【0067】
なお、ここで、第1磁石10が取り付けられている熱源2の温度TH(℃)は、0.8×Tc≦TH(℃)≦2.0×Tcを満たすとよい。また、温度TH(℃)は、Tc≦TH(℃)≦2.0×Tcを満たすとよく、Tc≦TH(℃)≦1.2×Tcを満たしてもよい。なお、Tcは、感温磁性体材料(NiMnIn合金)のキュリー温度Tc(℃)を示す。また、熱源2の温度THの下限値は、Tcに限られず、感温磁性体部材50の磁化が消失する温度以上であればよい。熱源2の温度THが上記であることで、ステップS20で、感温磁性体部材50の温度が上がり易くなる。
【0068】
また、ステップS10及びS20では、熱振動発電デバイス1の状態は、感温磁性体部材50が熱の授受を行う第1状態となる。より具体的には、ステップS10及びS20では、熱振動発電デバイス1の状態は、感温磁性体部材50が第1磁石10と接触することで第1磁石10と熱の授受を行う第1状態となる。
【0069】
さらに、ステップS20で、感温磁性体部材50の磁化が十分に減少すると、感温磁性体部材50と第1磁石10との間の引力が弱まる。この結果、
図5が示すように、自由端部F1が自由振動することで発電部30が発電する(S30)。より具体的には、
図5が示すように、感温磁性体部材50が第1磁石10から分離して自由端部F1が自由振動することで発電部30が発電する。この場合、自由端部F1が自由振動する場合にはフレーム20も振動する。
図5には、自由端部F1が自由振動する方向が矢印Dで示されている。フレーム20が振動することで、上記の通り、逆磁歪効果により、発電部30が発電する。このステップS30が発電ステップに相当する。
【0070】
このように、ステップS30では、熱振動発電デバイス1の状態は、自由端部F1が自由振動を行う第2状態となる。また、換言すると、第2状態とは、感温磁性体部材50が自由振動を行う状態、フレーム20が振動する状態でもある。
【0071】
ステップS30の後、感温磁性体部材50は、第1磁石10と分離している状態で、常温TRの環境下で十分に冷却される。換言すると、感温磁性体部材50は、ステップS20で熱源2から移動した熱を、放熱する。このため、感温磁性体部材50の温度は、低下し、常温TRに近づく。
図2の矢印A2が示すように、感温磁性体部材50の温度が下がることで、感温磁性体部材50の磁化の増加及び減少の他方の変化が生じる(S40)。より具体的には、感温磁性体部材50の温度が下がることで、感温磁性体部材50の磁化の増加が生じ、つまりは、感温磁性体部材50の磁化が増加する。このステップS40が第2磁化変化ステップに相当し、より具体的には、第1磁化増加減少ステップに相当する。
【0072】
なお、本実施の形態においては、フレーム20及び第1断熱部材40が設けられていることで、ステップS40において、感温磁性体部材50の温度が下がり易くなる。これについて、以下説明する。
【0073】
本実施の形態においては、上記の通り、フレーム20(より具体的には、フレーム本体部21)の形状は、U字形状を有する。
【0074】
このため、ステップS40においては、自由端部F1に取り付けられる感温磁性体部材50と、固定端部F2が第1断熱部材40を介して固定される熱源2との間には、ギャップが生じる。従って、熱源2の熱が、熱源2からフレーム20を介して感温磁性体部材50へ伝わり難くなり、感温磁性体部材50の温度が下がり易くなる。
【0075】
本実施の形態においては、第1断熱部材40が設けられている。
【0076】
このため、熱源2と熱振動発電デバイス1との間での熱の授受が抑制される。本実施の形態においては、より高温である熱源2から熱振動発電デバイス1(より具体的には、フレーム本体部21)への、熱の移動が抑制される。つまり、熱源2によってフレーム本体部21が温められ難い。よって、連結部材22を介してフレーム本体部21に取り付けられる感温磁性体部材50に、熱源2の熱が移動し難いため、ステップS40において、感温磁性体部材50の温度が下がり易くなる。
【0077】
さらに、ステップS40で、感温磁性体部材50の磁化が増加すると、
図6が示すように、感温磁性体部材50と第1磁石10との間に強い引力Pが生じ、フレーム本体部21が変形して、感温磁性体部材50と第1磁石10とが接触する。つまり、ステップS10が再度行われる。さらに、ステップS20~S40が行われる。よって、熱振動発電デバイス1による発電方法の動作例は、繰り返され、発電部30による発電が継続される。
【0078】
本実施の形態においては、ステップS10~S40が1つの発電のサイクルであり、感温磁性体部材50の温度及び磁化が繰り返し変化することで、発電のサイクルが繰り返される。
【0079】
なお、ステップS40において感温磁性体部材50の温度が下がり易いほど感温磁性体部材50の磁化が増加し易いため、発電のサイクルが速くなる。同様に、ステップS20において感温磁性体部材50の温度が上がり易いほど感温磁性体部材50の磁化が減少し易いため、発電のサイクルが速くなる。また、ステップS40において常温TRが低いほど感温磁性体部材50の温度が下がり易く、ステップS20において温度THが高いほど感温磁性体部材50の温度が上がり易い。
【0080】
さらに、ステップS30での発電について説明する。
【0081】
図7は、本実施の形態に係る発電部30による発電を説明する図である。
図7では、動作例において、発電部30に発生した誘導電圧が検出されている。
【0082】
図7には、発電のサイクルが繰り返されていることが示されている。
図7のS10及びS30はそれぞれ、
図3のステップS10のタイミング及びステップS30のタイミングに相当する。
図7では、発電のサイクルが繰り返されるごとに、発電部30に発生した誘導電圧が検出されていることが、示されている。
【0083】
なお、
図7が示すように、ステップS10でも発電部30により発電が行われている。これは、感温磁性体部材50が第1磁石10と接触したときに、フレーム20が振動することが原因である。
【0084】
また、
図8は、本実施の形態に係る発電部30による発電の詳細を説明する図である。より具体的には、
図8は、
図7の「1回目の発電サイクル」におけるS30が行われたタイミングでの発電の詳細を説明する図である。
【0085】
図8では、S30が行われたタイミングを0.05sとして、発電部30による発電が図示されている。
図8が示すように、発電部30に発生した誘導電圧は、およそ-0.6V~+0.8Vに達し、高電圧が発生したことが示されている。なお、
図8では誘導電圧の検出感度が向上されて測定されたため、
図8が示す誘導電圧は、
図7が示す誘導電圧とは、異なる値を示している。
【0086】
[まとめなど]
本実施の形態においては、熱振動発電デバイス1は、熱源2に設けられる熱振動発電デバイス1である。熱振動発電デバイス1は、自由端部F1及び固定端部F2を有するフレーム20、並びに、磁歪素子32を有し、フレーム20に設けられる発電部30を有する発電部材70を備える。熱振動発電デバイス1は、感温磁性体材料によって構成され、フレーム20の自由端部F1に設けられる感温磁性体部材50と、第1磁石10と、を備える。熱振動発電デバイス1の状態は、感温磁性体部材50が熱の授受を行う第1状態と、自由端部F1が自由振動を行う第2状態と、を含む。
【0087】
これにより、第1状態において、感温磁性体部材50が、例えば、熱源2に設けられた第1磁石10と接触した場合には、感温磁性体部材50の磁化が変化するため、感温磁性体部材50と第1磁石10との間の引力Pの強さが変化する。本実施の形態においては、感温磁性体部材50が第1磁石10と熱の授受を行うことで、感温磁性体部材50の磁化が減少する。
【0088】
より具体的には、感温磁性体部材50の温度が上がることで、感温磁性体部材50の磁化が減少する。そのため、感温磁性体部材50と第1磁石10との間の引力Pが弱められ、感温磁性体部材50が第1磁石10から分離する。この結果、第2状態において感温磁性体部材50が自由振動を行う、つまりは、フレーム20の自由端部F1が自由振動を行うため、フレーム20が振動する。
【0089】
これにより、フレーム20に設けられた発電部30が有する磁歪素子32が伸長し又は収縮して変形する。よって、磁歪素子32の磁力線が逆磁歪効果により増加又は減少し、結果として、コイル31に誘導電圧(又は誘導電流)が発生する。ここでは、
図7及び
図8が示すように、発電部30よって高電圧が発生する。つまり、高電圧を発生させることができる熱振動発電デバイス1が実現される。
【0090】
また、例えば第1磁石10は、熱源に設けられる。第1状態は、感温磁性体部材50が第1磁石10と接触することで第1磁石10と熱の授受を行う状態である。
【0091】
これにより、第1状態においては、感温磁性体部材50が、第1磁石10と接触することで、感温磁性体部材50の磁化が変化するため、感温磁性体部材50と第1磁石10との間の引力Pの強さが変化する。本実施の形態においては、感温磁性体部材50が第1磁石10と熱の授受を行うことで、感温磁性体部材50の磁化が減少する。
【0092】
より具体的には、感温磁性体部材50の温度が上がることで、感温磁性体部材50の磁化が減少する。そのため、感温磁性体部材50と第1磁石10との間の引力Pが弱められ、感温磁性体部材50が第1磁石10から分離する。この結果、第2状態において感温磁性体部材50が自由振動を行う、つまりは、フレーム20の自由端部F1が自由振動を行うため、フレーム20が振動する。
【0093】
これにより、フレーム20に設けられた発電部30が有する磁歪素子32が伸長し又は収縮して変形する。よって、磁歪素子32の磁力線が逆磁歪効果により増加又は減少し、結果として、コイル31に誘導電圧(又は誘導電流)が発生する。ここでは、
図7及び
図8が示すように、発電部30よって高電圧が発生する。つまり、高電圧を発生させることができる熱振動発電デバイス1が実現される。
【0094】
また、例えば、フレーム20の形状は、U字形状を有する。
【0095】
これにより、感温磁性体部材50が第1磁石10と分離している場合(つまりはステップS40に相当する場合)に、自由端部F1に取り付けられる感温磁性体部材50と、固定端部F2が第1断熱部材40を介して固定される熱源2との間には、ギャップが生じる。従って、熱源2の熱が、熱源2からフレーム20を介して感温磁性体部材50へ伝わり難くなる。よって、この場合に熱振動発電システム100が設置された常温TRの環境下において、感温磁性体部材50の温度が下がり易くなるため、発電のサイクルが早くなる。従って、例えば、単位時間当たりに高い頻度で、高電圧を発生させることができる。
【0096】
また、例えば、熱振動発電デバイス1は、断熱部材(第1断熱部材40)を、さらに備え、固定端部F2は、第1断熱部材40を介して熱源2に取り付けられる。
【0097】
これにより、熱源2の熱が、熱源2からフレーム20を介して感温磁性体部材50へ伝わり難くなる。このため、本実施の形態においては、感温磁性体部材50が第1磁石10と分離している場合(つまりはステップS40に相当する場合)に、熱源2と感温磁性体部材50との間で、熱の授受が行われ難くなる。よって、この場合に熱振動発電システム100が設置された常温TRの環境下において、感温磁性体部材50の温度が下がり易くなるため、発電のサイクルが早くなる。従って、例えば、単位時間当たりに高い頻度で、高電圧を発生させることができる。
【0098】
フレーム20は、フレーム本体部21、及び、自由端部F1が設けられる連結部材22を、有する。
【0099】
剛性及び弾性を有する材料で構成されている連結部材22が撓ることで、例えばステップS30で、自由端部F1が自由振動する際に、磁歪素子32に力が伝わりやすくなる。このため、コイル31により大きな誘導電圧(又は誘導電流)が発生する。つまり、より高電圧を発生させることができる熱振動発電デバイス1が実現される。
【0100】
また、例えば、熱振動発電デバイス1は、自由端部F1に設けられる第2磁石60を、さらに備える。
【0101】
これにより、第1磁石10と第2磁石60との間にも引力Pが生じている。そのため、フレーム本体部21が変形し易く、感温磁性体部材50と第1磁石10とが接触し易く、発電のサイクルが早くなる。従って、例えば、単位時間当たりに高い頻度で、高電圧を発生させることができる。
【0102】
また、例えば、連結部材22は、熱源2側を向く第1面221及び第1面221に背向する第2面222を有し、感温磁性体部材50は、第1面221に設けられ、第2磁石60は、第2面222に設けられる。
【0103】
これにより、本実施の形態においては、感温磁性体部材50が第1磁石10と接触し易くなる。よって、感温磁性体部材50の温度が上がり易くなるため、発電のサイクルが早くなる。従って、例えば、単位時間当たりに高い頻度で、高電圧を発生させることができる。
【0104】
また、例えば、熱源2の温度TH(℃)は、感温磁性体材料のキュリー温度をTc(℃)とした場合、Tc≦ TH ≦2.0×Tcを満たす。
【0105】
これにより、本実施の形態においては、感温磁性体部材50が第1磁石10と熱の授受を行う場合(つまりはステップS20に相当する場合)に、感温磁性体部材50の温度が上がり易くなる。このため、発電のサイクルが早くなる。従って、例えば、単位時間当たりに高い頻度で、高電圧を発生させることができる。
【0106】
本実施の形態に係る発電方法は、熱源2に設けられる熱振動発電デバイス1による発電方法である。熱振動発電デバイス1は、自由端部F1及び固定端部F2を有するフレーム20と、磁歪素子32を有し、フレーム20に設けられる発電部30とを備える。熱振動発電デバイス1は、感温磁性体材料によって構成され、フレーム20の自由端部F1に設けられる感温磁性体部材50と、第1磁石10と、を備える。発電方法は、感温磁性体部材50が熱の授受を行うことで感温磁性体部材50の磁化の増加及び減少の一方の変化が生じる第1磁化変化ステップを含む。また、発電方法は、自由端部F1が自由振動することで発電部30が発電する発電ステップと、感温磁性体部材50の磁化の増加又は減少の他方の変化が生じる第2磁化変化ステップと、を含む。
【0107】
これにより、本実施の形態においては、感温磁性体部材50が例えば、熱源2に設けられた第1磁石10と接触した場合には、感温磁性体部材50が第1磁石10と熱の授受を行うことで、感温磁性体部材50の磁化の増加及び減少の一方の変化が生じる。本実施の形態においては、感温磁性体部材50が第1磁石10と熱の授受を行うことで、感温磁性体部材50の磁化が減少する。より具体的には、感温磁性体部材50の温度が上がることで、感温磁性体部材50の磁化が減少する。そのため、感温磁性体部材50と第1磁石10との間の引力Pが弱められる。この結果、例えば、感温磁性体部材50が第1磁石10から分離した場合には、感温磁性体部材50が自由振動を行う、つまりは、フレーム20の自由端部F1が自由振動を行うため、フレーム20が振動する。これにより、フレーム20に設けられた発電部30が有する磁歪素子32が伸長し又は収縮して変形する。よって、磁歪素子32の磁力線が逆磁歪効果により増加又は減少し、結果として、コイル31に誘導電圧(又は誘導電流)が発生する。さらに、感温磁性体部材50の磁化の増加及び減少の他方の変化が生じる。本実施の形態においては、感温磁性体部材50の磁化が増加すると、フレーム本体部21が変形して、感温磁性体部材50と第1磁石10とが接触する。つまり、熱振動発電デバイス1による発電は繰り返され、発電部30による発電が継続される。
【0108】
また、例えば、第1磁石10は、熱源2に設けられる。発電方法は、感温磁性体部材50が第1磁石10と接触する第1接触ステップを含む。第1磁化変化ステップは、感温磁性体部材50が第1磁石10と熱の授受を行うことで感温磁性体部材50の磁化の減少が生じる第1磁化減少ステップである。発電ステップでは、感温磁性体部材50が第1磁石10から分離して自由端部F1が自由振動することで発電部30が発電する。第2磁化変化ステップは、感温磁性体部材50の磁化の増加が生じる第1磁化増加ステップである。
【0109】
これにより、本実施の形態においては、感温磁性体部材50が第1磁石10と熱の授受を行うことで、感温磁性体部材50の磁化が減少する。より具体的には、感温磁性体部材50の温度が上がることで、感温磁性体部材50の磁化が減少する。そのため、感温磁性体部材50と第1磁石10との間の引力Pが弱められ、感温磁性体部材50が第1磁石10から分離する。この結果、感温磁性体部材50が自由振動を行う、つまりは、フレーム20の自由端部F1が自由振動を行うため、フレーム20が振動する。これにより、フレーム20に設けられた発電部30が有する磁歪素子32が伸長し又は収縮して変形する。よって、磁歪素子32の磁力線が逆磁歪効果により増加又は減少し、結果として、コイル31に誘導電圧(又は誘導電流)が発生する。さらに、感温磁性体部材50の磁化が増加すると、フレーム本体部21が変形して、感温磁性体部材50と第1磁石10とが接触する。つまり、熱振動発電デバイス1による発電は繰り返され、発電部30による発電が継続される。
【0110】
本実施の形態に係る熱振動発電システム100は、熱源2と、熱振動発電デバイス1と、を備える。
【0111】
つまり、熱振動発電システム100は、高電圧を発生させることができる熱振動発電デバイス1を備えるため、高電圧を発生させることができる発電システムである。
【0112】
(変形例1)
[熱振動発電システムの構成]
以下、実施の形態の変形例1に係る熱振動発電システム100aの構成例について
図9を用いて説明する。
【0113】
図9は、本変形例に係る熱振動発電システム100aの側面図である。
【0114】
本変形例に係る熱振動発電システム100aは、主に、以下の4点を除いては、実施の形態に係る熱振動発電システム100と同じ構成を有する。具体的に4点とは、連結部材22ではなく連結部材22aが用いられる点、第2磁石60が設けられていない点、感温磁性体部材50にかえて感温磁性体部材50aが用いられている点、及び、熱源として高温熱源2aと低温熱源3aとが用いられる点である。
【0115】
本変形例に係る熱振動発電システム100aは、熱振動発電デバイス1aと熱源とを備える。熱振動発電デバイス1aは、第1磁石10と、フレーム20a及び発電部30を有する発電部材70aと、第1断熱部材40と、感温磁性体部材50aとを備える。
【0116】
フレーム20aは、フレーム本体部21と、連結部材22aとを有する部材である。連結部材22aは、連結部材22とは異なり、上記の高い熱伝導率を示す材料と同程度の熱伝導率を有し、かつ、フレーム本体部21を構成する材料と同程度の剛性及び弾性を有する材料によって構成されていてもよい。なお、連結部材22aは、構成する材料以外は、連結部材22と同じ構成であり、第1面221及び第2面222を有する板形状の部材である。
【0117】
感温磁性体部材50aは、構成する材料以外は、実施の形態に係る感温磁性体部材50と同じ構成である。感温磁性体部材50aは、NiCoMnIn合金によって構成されている。
【0118】
図10は、本変形例に係る感温磁性体部材50aを構成するNiCoMnIn合金の温度と磁化との関係を示す図である。約-80℃~約20℃の領域においては、温度が上がると磁化がなだらかに減少する。約20℃~約40℃の領域においては、温度が上がると磁化が急峻に増加する。なお、この領域においては、NiCoMnIn合金にマルテンサイト変態が起こることで、磁化が急激に変化する。約40℃~約70℃の領域においては、温度が上がると磁化が減少する。
【0119】
また、本変形例に係る熱振動発電システム100aは、熱源として高温熱源2a及び低温熱源3aを備える。本変形例においては、熱振動発電システム100aは常温TR(20℃)の環境下に設置され使用されており、また、高温熱源2aの温度は常温TRより高温である温度TH1であり、低温熱源3aの温度は常温TRより低温である温度TH2である。ここでは一例として、常温TRは20℃、温度TH1は40℃、温度TH2は0℃である。
【0120】
また、本変形例においては、第1磁石10は、実施の形態に係る高熱伝導部材11などを介さずに、低温熱源3aに取り付けられている。第1磁石10は、低温熱源3aによって冷却されるため、第1磁石10の温度は、常温TRよりも低温熱源3aの温度TH2と近い温度となり易く、ここでは低温熱源3aと同じく温度TH2(0℃)である。
【0121】
さらに、高温熱源2aと連結部材22aとの位置関係について説明する。
【0122】
実施の形態と同じく、感温磁性体部材50aは温度によって磁化が変化し、感温磁性体部材50aと第1磁石10との間に発生する引力の強さが変化する。
図9が示すように、感温磁性体部材50aと第1磁石10との間の引力が弱い場合には、つまりは、感温磁性体部材50aと第1磁石10とが接していない場合には、高温熱源2aと連結部材22aとは接触する。このとき、高温熱源2aの熱が連結部材22aを介して感温磁性体部材50aに移動することで、感温磁性体部材50aの温度が上がる。
【0123】
ここで、
図11は、本変形例に係る高温熱源2aと連結部材22aとの位置関係について説明するための側面図である。
図11が示すように、感温磁性体部材50aと第1磁石10との間の引力が強い場合には、つまりは、感温磁性体部材50aと第1磁石10とが接している場合には、高温熱源2aと連結部材22aとは接触しない。またこのとき、感温磁性体部材50aは、低温熱源3aに取り付けられている第1磁石10と熱の授受を行う。つまりは、感温磁性体部材50aの温度が下がる。
【0124】
[動作例]
次に、熱振動発電デバイス1aによる発電方法の動作例について説明する。
【0125】
まず、常温TRの環境下で、熱振動発電デバイス1aが設置される。このとき、高温熱源2aの熱が感温磁性体部材50aに移動することで、感温磁性体部材50aの温度が上がり、感温磁性体部材50aの磁化が増加する。これにより、感温磁性体部材50aと第1磁石10との間の引力が強くなり、感温磁性体部材50aは、第1磁石10と接触する。つまり、第1接触ステップが行われる。
【0126】
また、本変形例においては、第1磁石10の温度は、常温TRより低い温度TH2である。そのため、第1磁石10に接触する感温磁性体部材50aの温度が下がる。つまりは、感温磁性体部材50aが第1磁石10と熱の授受を行い、これにより、感温磁性体部材50aの磁化が減少する。つまり、第1磁化変化ステップ(第1磁化減少ステップ)が行われる。
【0127】
このように、本変形例においても、熱振動発電デバイス1aの状態は、感温磁性体部材50aが第1磁石10と接触することで第1磁石10と熱の授受を行う第1状態となる。
【0128】
続いて、熱の授受により、感温磁性体部材50aの磁化が十分に減少すると、感温磁性体部材50aと第1磁石10との間の引力が弱まる。この結果、感温磁性体部材50aが第1磁石10から分離して自由端部F1が自由振動することで発電部30が発電する。つまり、発電ステップが行われる。
【0129】
このように、本変形例においても、熱振動発電デバイス1aの状態は、自由端部F1が自由振動を行う第2状態となる。
【0130】
さらに、感温磁性体部材50aが第1磁石10と分離している状態、つまりは、高温熱源2aと連結部材22aとが接触している状態となる。このとき、高温熱源2aの熱が感温磁性体部材50aに移動することで、感温磁性体部材50aの温度が上がり、感温磁性体部材50aの磁化が増加する。つまり、第2磁化変化ステップ(第1磁化増加ステップ)が行われる。
【0131】
さらに、感温磁性体部材50aの磁化が増加すると、感温磁性体部材50aと第1磁石10との間の引力が強くなり、感温磁性体部材50aは、第1磁石10と接触する。つまり、第1接触ステップが行われる。
【0132】
このように、本変形例に係る熱振動発電デバイス1aにおいても、発電のサイクルが繰り返される。
【0133】
ここまで示したように、第1状態においては、感温磁性体部材50aが第1磁石10と接触することで、感温磁性体部材50aの磁化が変化するため、感温磁性体部材50aと第1磁石10との間の引力の強さが変化する。本変形例においては、感温磁性体部材50aが第1磁石10と熱の授受を行うことで、感温磁性体部材50aの磁化が減少する。より具体的には、感温磁性体部材50aの温度が下がることで、感温磁性体部材50aの磁化が減少する。そのため、感温磁性体部材50aと第1磁石10との間の引力が弱められ、感温磁性体部材50aが第1磁石10から分離する。
【0134】
この結果、第2状態において感温磁性体部材50aが自由振動を行う、つまりは、フレーム20aの自由端部F1が自由振動を行うため、フレーム20aが振動する。これにより、コイル31に誘導電圧(又は誘導電流)が発生する。この結果、実施の形態と同じく、高電圧を発生させることができる熱振動発電デバイス1aが実現される。
【0135】
また、実施の形態とは異なり、本変形例で示したように感温磁性体材料のマルテンサイト変態する温度領域を利用して、発電部30による発電が行われてもよい。
【0136】
また、上記実施の形態では、常温TRよりも高温である温度THを示す熱源2が用いられたがこれに限られない。本変形例が示すように、常温TRよりも低温である温度TH2を示す低温熱源3aが用いられた熱振動発電デバイス1aにおいても、高電圧を発生させることができる。
【0137】
(変形例2)
上記実施の形態及び変形例1では、フレーム20及び20aの形状は、U字形状であったがこれに限られない。本変形例では、フレームの形状が、上記実施の形態及び変形例1とは異なる。
【0138】
[熱振動発電システムの構成]
以下、実施の形態の変形例2に係る熱振動発電システム100bの構成例について
図12を用いて説明する。
【0139】
図12は、本変形例に係る熱振動発電システム100bの側面図である。
【0140】
本変形例に係る熱振動発電システム100bは、主に、以下の1点を除いては、実施の形態に係る熱振動発電システム100と同じ構成を有する。具体的に1点とは、フレーム20bの形状が異なる点である。
【0141】
本変形例に係る熱振動発電システム100bは、熱振動発電デバイス1bと熱源2とを備える。
【0142】
熱振動発電デバイス1bは、第1磁石10と、フレーム20b及び発電部30を有する発電部材70bと、感温磁性体部材50と、第2磁石60とを備える。なお、熱振動発電デバイス1bは、第1断熱部材40を備えない。
【0143】
フレーム20bは、実施の形態に係るフレーム本体部21に相当する部材である。
【0144】
フレーム20bは、板形状の部材であり、
図12が示すように、2つ以上の屈曲部B1及びB2が設けられている。また、フレーム20bは、1枚の板形状の部材が屈曲部B1及びB2が設けられるように、折り曲げられて形成されている。なお、フレーム20bには屈曲部B1及びB2が設けられていなくてもよく、この場合、フレーム20bは平板形状の部材であってもよい。
【0145】
フレーム20bは、一方の端部が固定端部F2b、他方の端部が自由端部F1bになるような状態、いわゆる片持ち梁の状態で固定支持される。なお、熱振動発電デバイス1bでは、フレーム20bが有する固定端部F2bが支持固定台200に固定されて設置されている。
【0146】
自由端部F1bが自由振動する場合には、フレーム20b自体も振動する。また、自由端部F1bに取り付けられる感温磁性体部材50と第1磁石10との間に強い引力が生じた場合には、フレーム20bが変形して、感温磁性体部材50と第1磁石10とが接触する。
【0147】
フレーム20bを構成する材料は、特に限られないが、例えば、弾性を有する材料で構成されているとよい。また、フレーム20bを構成する材料は、例えば、鉄を含む材料で構成されているとよい。フレーム20bは、例えば、バネ鋼、冷間圧延鋼帯などによって構成される。
【0148】
フレーム20bには発電部30が有する磁歪素子32が設けられている。なお、本変形例においては、発電部30が有する発電用磁石33は、磁歪素子32に取り付けられている。
【0149】
本変形例においては、第1磁石10は、実施の形態に係る高熱伝導部材11などを介さずに、熱源2に取り付けられている。このため、熱源2の熱は第1磁石10に移動する。よって、第1磁石10の温度は、常温TR(20℃)よりも熱源2の温度THと近い温度となり易く、ここでは熱源2と同じく温度TH(80℃)である。
【0150】
[動作例]
次に、熱振動発電デバイス1bによる発電方法の動作例について説明する。なお、本動作例は、熱振動発電デバイス1による発電方法の動作例と類似しているため、簡単に説明する。
【0151】
まず、常温TRの環境下で、熱振動発電デバイス1bが設置される。常温TRの環境下では感温磁性体部材50の温度も常温TRであり、上記の
図2が示すように、感温磁性体部材50の磁化が高い。このため、感温磁性体部材50と第1磁石10との間に強い引力が生じ、フレーム20bが変形して、感温磁性体部材50と第1磁石10とが接触する。つまり、第1接触ステップが行われる。
【0152】
また、本変形例においては、感温磁性体部材50が接触する第1磁石10の温度は、常温TRより高い温度THである。そのため、高温である温度THを示す第1磁石10から感温磁性体部材50へ熱の移動が起こり、感温磁性体部材50の温度が上がる。このように、感温磁性体部材50が第1磁石10と熱の授受を行うことで感温磁性体部材50の磁化が減少する。つまり、第1磁化変化ステップ(第1磁化減少ステップ)が行われる。
【0153】
続いて、熱の授受により、感温磁性体部材50の磁化が十分に減少すると、感温磁性体部材50と第1磁石10との間の引力が弱まる。この結果、感温磁性体部材50が第1磁石10から分離して自由端部F1bが自由振動することで発電部30が発電する。つまり、発電ステップが行われる。
【0154】
さらに、感温磁性体部材50は、第1磁石10と分離している状態で、常温TRの環境下で十分に冷却される。このため、感温磁性体部材50の温度は、低下し、常温TRに近づく。これにより、感温磁性体部材50の磁化が増加する。つまり、第2磁化変化ステップ(第1磁化増加ステップ)が行われる。
【0155】
このように、本変形例に係る熱振動発電デバイス1bにおいても、発電のサイクルが繰り返される。
【0156】
(変形例3)
上記実施の形態及び変形例2では、第2磁石60が設けられていたがこれに限られない。本変形例では、熱振動発電デバイス1cは、第2磁石60を有さない。
【0157】
以下、実施の形態の変形例3に係る熱振動発電システム100cの構成例について
図13を用いて説明する。
【0158】
図13は、本変形例に係る熱振動発電システム100cの側面図である。
【0159】
本変形例に係る熱振動発電システム100cは、主に、以下の1点を除いては、変形例2に係る熱振動発電システム100bと同じ構成を有する。具体的に1点とは、熱振動発電デバイス1cが第2磁石60を有さない点である。
【0160】
本変形例に係る熱振動発電システム100cは、熱振動発電デバイス1cと熱源2とを備える。
【0161】
なお、熱振動発電デバイス1cは、第2磁石60を有さない点を除いては、熱振動発電デバイス1bと同じ構成である。このように、第2磁石60を有していない熱振動発電デバイス1cにおいても、発電のサイクルが繰り返される。
【0162】
(変形例4)
変形例2及び3では、常温TRよりも高温である温度THを示す熱源2が用いられていたが、これに限られない。本変形例では、低温熱源が用いられる点が変形例2及び3とは異なる。
【0163】
[熱振動発電システムの構成]
以下、実施の形態の変形例4に係る熱振動発電システム100dの構成例について
図14を用いて説明する。
【0164】
図14は、本変形例に係る熱振動発電システム100dの側面図である。
【0165】
本変形例に係る熱振動発電システム100dは、主に、以下の1点を除いては、変形例3に係る熱振動発電システム100cと同じ構成を有する。具体的に1点とは、低温熱源3dが用いられる点である。
【0166】
本変形例に係る熱振動発電システム100dは、熱振動発電デバイス1cと低温熱源3dとを備える。
【0167】
また、低温熱源3dの温度は常温TRより低温である温度TH3である。ここでは一例として、常温TRは20℃、温度TH3は-30℃である。
【0168】
また、本変形例においては、第1磁石10は、実施の形態に係る高熱伝導部材11などを介さずに、低温熱源3dに取り付けられている。第1磁石10は、低温熱源3dによって冷却されるため、第1磁石10の温度は、常温TRよりも低温熱源3dの温度TH3と近い温度となり易く、ここでは低温熱源3dと同じく温度TH3(-30℃)である。
【0169】
[動作例]
次に、本変形例に係る熱振動発電デバイス1cによる発電方法の動作例について説明する。なお、本動作例は、熱振動発電デバイス1aによる発電方法の動作例と類似しているため、簡単に説明する。
【0170】
まず、常温TRの環境下で、熱振動発電デバイス1cが設置される。常温TRの環境下では感温磁性体部材50の温度も常温TRであり、上記の
図2が示すように、感温磁性体部材50の磁化が高い。このため、感温磁性体部材50と第1磁石10との間に強い引力が生じ、フレーム20bが変形して、感温磁性体部材50と第1磁石10とが接触する。つまり、第1接触ステップが行われる。
【0171】
また、本変形例においては、第1磁石10の温度は、常温TRより低い温度TH3である。よって、第1磁石10に接触する感温磁性体部材50の温度が下がることで、つまりは、感温磁性体部材50が第1磁石10と熱の授受を行うことで感温磁性体部材50の磁化が減少する。つまり、第1磁化変化ステップ(第1磁化減少ステップ)が行われる。
【0172】
続いて、熱の授受により、感温磁性体部材50の磁化が十分に減少すると、感温磁性体部材50と第1磁石10との間の引力が弱まる。この結果、感温磁性体部材50が第1磁石10から分離して自由端部F1bが自由振動することで発電部30が発電する。つまり、発電ステップが行われる。
【0173】
さらに、感温磁性体部材50は、第1磁石10と分離している状態で、常温TRの環境下で十分に加温される。このため、感温磁性体部材50の温度が上がり、常温TRに近づく。これにより、感温磁性体部材50の磁化が増加する。つまり、第2磁化変化ステップ(第1磁化増加ステップ)が行われる。
【0174】
このように、本変形例に係る熱振動発電デバイス1cにおいても、発電のサイクルが繰り返される。
【0175】
(変形例5)
[熱振動発電システムの構成]
さらに、実施の形態の変形例5に係る熱振動発電システム100fの構成例について
図15を用いて説明する。
【0176】
図15は、本変形例に係る熱振動発電システム100fの側面図である。
【0177】
本変形例に係る熱振動発電システム100fは、主に、以下の4点を除いては、実施の形態に係る熱振動発電システム100と同じ構成を有する。
【0178】
具体的に4点とは、連結部材22ではなく連結部材22aが用いられる点、第2磁石60が設けられていない点、感温磁性体部材50にかえて感温磁性体部材50fが用いられる点を構成する材料が異なる点、及び、熱源として高温熱源2fと低温熱源3fとが用いられる点である。
【0179】
本変形例に係る熱振動発電システム100fは、熱振動発電デバイス1fと熱源とを備える。熱振動発電デバイス1fは、第1磁石10と、フレーム20a及び発電部30を有する発電部材70aと、第1断熱部材40と、感温磁性体部材50fとを備える。本変形例においては、熱源として高温熱源2fと低温熱源3fとが用いられており、熱振動発電デバイス1fは、高温熱源2fに設けられている。
【0180】
フレーム20aは、変形例1にて説明された部材である。本変形例においては、フレーム20aが有する連結部材22aは、高温熱源2f側を向く第1面221及び第1面221に背向する第2面222を有する板形状の部材である。連結部材22aよりもz軸正側に、第2面222に接するように感温磁性体部材50fが設けられている。
【0181】
感温磁性体部材50fは、構成する材料以外は、実施の形態に係る感温磁性体部材50と同じ構成である。感温磁性体部材50fは、ニッケルマンガンコバルトスズ合金(NiMnCoSn合金)によって構成されている。より具体的には、感温磁性体部材50fは、Ni50-xCoxMn50-ySny(7<x<9かつ10<y<11、原子比)を満たす合金であるとよい。
【0182】
図16は、本変形例に係る感温磁性体部材50fを構成するNiMnCoSn合金の温度と磁化との関係を示す図である。約0℃~約30℃の領域においては、温度が上がると磁化がなだらかに増加する。約30℃~約50℃の領域においては、温度が上がると磁化が急峻に増加する。なお、この領域においては、NiMnCoSn合金にマルテンサイト変態が起こることで、磁化が急激に変化する。約50℃~約70℃の領域においては、温度が上がると磁化が減少する。
【0183】
また、このNiMnCoSn合金は、切断加工などが可能である。NiMnCoSn合金は、マルテンサイト変態が起こる温度が容易に制御され、つまりは、変態温度が自由に設定される。また、NiMnCoSn合金は、温度による磁化変化が大きい。
【0184】
また、本変形例に係る熱振動発電システム100fは、熱源として高温熱源2f及び低温熱源3fを備える。本変形例においては、熱振動発電システム100fは常温TR(20℃)の環境下に設置され使用されており、また、高温熱源2fの温度は常温TRより高温である温度TH1であり、低温熱源3fの温度は常温TRより低温である温度TH2である。
【0185】
ここでは一例として、常温TRは20℃、温度TH1は60℃、温度TH2は10℃であるが、これに限られない。別の例としては、常温TRと温度TH2とは同じ温度であってもよく一例として20℃であり、温度TH1は60℃であってもよい。この別の例の場合には、低温熱源3fを冷却する必要がなくなる。
【0186】
また、本変形例においては、第1磁石10は、実施の形態に係る高熱伝導部材11などを介さずに、低温熱源3fに取り付けられている。第1磁石10は、低温熱源3fによって冷却されるため、第1磁石10の温度は、常温TRよりも低温熱源3fの温度TH2と近い温度となり易く、ここでは低温熱源3fと同じく温度TH2(10℃)である。
【0187】
また、本変形例においては、高熱伝導部材11のかわりに高熱伝導部材11fが用いられている。高熱伝導部材11fは、形状以外は、実施の形態に係る高熱伝導部材11と同じ構成である。高熱伝導部材11fは、高温熱源2fに接して設けられ、かつ、連結部材22aよりもz軸負側に設けられている。高熱伝導部材11fが高温熱源2fに接して設けられているため、高温熱源2fの熱は高熱伝導部材11fに移動する。よって、高熱伝導部材11fの温度は、常温TRよりも高温熱源2fの温度TH1と近い温度となり易く、ここでは高温熱源2fと同じく温度TH1である。また、高熱伝導部材11fは、
図15が示すように熱振動発電デバイス1fの状態によっては、連結部材22aの第1面221に接することがある。
【0188】
さらに、低温熱源3fと連結部材22aとの位置関係について説明する。
【0189】
第1磁石10及び低温熱源3fは、第2面222側に設けられている。つまり、第1磁石10及び低温熱源3fは、連結部材22aよりもz軸正側に設けられている。
図15においては、第1磁石10と感温磁性体部材50fとは接していないが、熱振動発電デバイス1fの状態によっては、第1磁石10と感温磁性体部材50fとは接する場合がある。例えば、自由端部F1と固定端部F2とが開くようにフレーム20aが変形した状態(開状態)においては、第1磁石10と感温磁性体部材50fとは接する。
【0190】
実施の形態と同じく、感温磁性体部材50fは温度によって磁化が変化し、感温磁性体部材50fと第1磁石10との間に発生する引力の強さが変化する。
図15が示すように、感温磁性体部材50fと第1磁石10との間の引力が弱い場合には、つまりは、感温磁性体部材50fと第1磁石10とが接していない場合には、高温熱源2fに接する高熱伝導部材11fと連結部材22aとは接触する。このとき、高温熱源2fの熱が連結部材22aを介して感温磁性体部材50fに移動することで、感温磁性体部材50fの温度が上がる。
【0191】
ここで、
図17は、本変形例に係る低温熱源3fと連結部材22aとの位置関係について説明するための側面図である。
図17が示すように、感温磁性体部材50fと第1磁石10との間の引力が強い場合には、つまりは、感温磁性体部材50fと第1磁石10とが接している場合には、高熱伝導部材11fと連結部材22aとは接触しない。またこのとき、感温磁性体部材50fは、低温熱源3fに取り付けられている第1磁石10と熱の授受を行う。つまりは、感温磁性体部材50fの温度が下がる。
【0192】
[動作例]
次に、熱振動発電デバイス1fによる発電方法の動作例について説明する。
【0193】
まず、常温TRの環境下で、熱振動発電デバイス1fが設置される。
図16が示すように、感温磁性体部材50fの磁化は低いため、感温磁性体部材50fと第1磁石10との間の引力が弱く、高温熱源2fに接する高熱伝導部材11fと連結部材22aとは接触する。このとき、高温熱源2fの熱が感温磁性体部材50fに移動することで、感温磁性体部材50fの温度が上がり、感温磁性体部材50fの磁化が増加する。これにより、感温磁性体部材50fと第1磁石10との間の引力が強くなり、感温磁性体部材50fは、第1磁石10と接触する。つまり、第1接触ステップが行われる。
【0194】
また、本変形例においては、第1磁石10の温度は、常温TRより低い温度TH2である。そのため、第1磁石10に接触する感温磁性体部材50fの温度が下がる。つまりは、感温磁性体部材50fが第1磁石10と熱の授受を行い、これにより、感温磁性体部材50fの磁化が減少する。つまり、第1磁化変化ステップ(第1磁化減少ステップ)が行われる。
【0195】
このように、本変形例においても、熱振動発電デバイス1fの状態は、感温磁性体部材50fが第1磁石10と接触することで第1磁石10と熱の授受を行う第1状態となる。
【0196】
続いて、熱の授受により、感温磁性体部材50fの磁化が十分に減少すると、感温磁性体部材50fと第1磁石10との間の引力が弱まる。この結果、感温磁性体部材50fが第1磁石10から分離して自由端部F1が自由振動することで発電部30が発電する。つまり、発電ステップが行われる。
【0197】
このように、本変形例においても、熱振動発電デバイス1fの状態は、自由端部F1が自由振動を行う第2状態となる。
【0198】
さらに、感温磁性体部材50fが第1磁石10と分離している状態、つまりは、高熱伝導部材11fと連結部材22aとが接触している状態となる。このとき、高温熱源2fの熱が感温磁性体部材50fに移動することで、感温磁性体部材50fの温度が上がり、感温磁性体部材50fの磁化が増加する。つまり、第2磁化変化ステップ(第1磁化増加ステップ)が行われる。
【0199】
さらに、感温磁性体部材50fの磁化が増加すると、感温磁性体部材50fと第1磁石10との間の引力が強くなり、感温磁性体部材50fは、第1磁石10と接触する。つまり、第1接触ステップが行われる。
【0200】
このように、本変形例に係る熱振動発電デバイス1fにおいても、発電のサイクルが繰り返される。
【0201】
ここまで示したように、第1状態においては、感温磁性体部材50fが第1磁石10と接触することで、感温磁性体部材50fの磁化が変化するため、感温磁性体部材50fと第1磁石10との間の引力の強さが変化する。本変形例においては、感温磁性体部材50fが第1磁石10と熱の授受を行うことで、感温磁性体部材50fの磁化が減少する。より具体的には、感温磁性体部材50fの温度が下がることで、感温磁性体部材50fの磁化が減少する。そのため、感温磁性体部材50fと第1磁石10との間の引力が弱められ、感温磁性体部材50fが第1磁石10から分離する。
【0202】
この結果、第2状態において感温磁性体部材50fが自由振動を行う、つまりは、フレーム20aの自由端部F1が自由振動を行うため、フレーム20aが振動する。これにより、コイル31に誘導電圧(又は誘導電流)が発生する。この結果、実施の形態と同じく、高電圧を発生させることができる熱振動発電デバイス1fが実現される。
【0203】
なお、本変形例においては、低温熱源3fは、例えば金属などで構成される放熱部材であってもよく、この場合の低温熱源3fの温度は常温TRと同じ温度である。
【0204】
(変形例6)
[熱振動発電システムの構成]
さらに、実施の形態の変形例6に係る熱振動発電システム100gの構成例について
図18及び
図19を用いて説明する。
【0205】
図18は、本変形例に係る熱振動発電システム100gの側面図である。
図19は、本変形例に係る熱振動発電システム100gにおける2個の第1磁石10を説明する正面図である。なお、正面図とは、x軸正方向から熱振動発電システム100gを見た図である。
【0206】
本変形例に係る熱振動発電システム100gは、主に、以下の4点を除いては、実施の形態に係る熱振動発電システム100と同じ構成を有する。具体的に4点とは、第2磁石60が設けられていない点、感温磁性体部材50にかえて感温磁性体部材50fが用いられている点、高熱伝導部材11にかえて磁性部材12gが設けられている点、及び、2個の第1磁石10のそれぞれが自由端部F1に設けられている点である。
【0207】
本変形例に係る熱振動発電システム100gは、熱振動発電デバイス1gと、熱源2とを備える。熱振動発電デバイス1fは、2個の第1磁石10と、フレーム20及び発電部30を有する発電部材70と、第1断熱部材40と、感温磁性体部材50fと、磁性部材12gとを備える。本変形例においては、熱振動発電デバイス1gは、熱源2に設けられている。
【0208】
本変形例に係る熱振動発電システム100gは、熱源として熱源2を備える。本変形例においては、熱振動発電システム100gは常温TR(25℃)の環境下に設置され使用されており、また、熱源2の温度は常温TRより高温である温度THである。一例として、本変形例においては、常温TRは25℃、温度THは55℃である。
【0209】
感温磁性体部材50fは、変形例5で説明された部材であり、本変形例においては、連結部材22の第1面221に設けられており、つまり、連結部材22よりもz軸負側に設けられている。
【0210】
次に、
図18及び
図19を用いて2個の第1磁石10について説明する。
【0211】
2個の第1磁石10は、連結部材22の自由端部F1に設けられ、感温磁性体部材50fと接する。2個の第1磁石10のそれぞれは、第1面221から第2面222まで貫通して設けられており、このため、2個の第1磁石10は、感温磁性体部材50fと接する。
図18及び
図19が示すように、2個の第1磁石10は、第2面222よりもz軸正側に突出している。また、本変形例においては、2個の第1磁石10は、熱源2及び熱源2に接して設けられる磁性部材12gのそれぞれと、直接接触することはない。
【0212】
さらに、2個の第1磁石10のうち一方の第1磁石10(ここでは、y軸負側の第1磁石10)はS極で感温磁性体部材50fと接する。また、2個の第1磁石10のうち他方の第1磁石10(ここでは、y軸正側の第1磁石10)はN極で感温磁性体部材50fと接する。
【0213】
なお、熱振動発電デバイス1gは、1個以上の第1磁石10を有していればよく、本変形例が示すように、1個以上の第1磁石10は、2個の第1磁石10を含むとよい。
【0214】
また、本変形例においては、高熱伝導部材11のかわりに磁性部材12gが用いられている。磁性部材12gは、磁性体材料によって構成されており、より具体的には、強磁性体材料によって構成されている。磁性部材12gは、例えば、Fe、Ni、Coなどの金属材料を含むとよい。また、磁性部材12gは、これらの金属材料を含むため、熱伝導性も高い。
【0215】
磁性部材12gは、熱源2に接して設けられ、かつ、連結部材22よりもz軸負側に設けられている。磁性部材12gは、温度THを示す熱源2に取り付けられている。そのため、ここでは、上記の磁性部材12gの温度も、温度THである。
図18が示すように熱振動発電デバイス1gの状態によっては、磁性部材12gと感温磁性体部材50fとは、接していない。
【0216】
さらに、感温磁性体部材50fと2個の第1磁石10と磁性部材12gとの位置関係について説明する。
【0217】
図16が示すように、感温磁性体部材50fは温度によって磁化が変化するため、熱振動発電デバイス1gにおける磁場が変化する。この磁場の変化により、磁性部材12gと2個の第1磁石10との間に発生する引力の強さが変化する。
【0218】
図20は、本変形例に係る感温磁性体部材50fと磁性部材12gとが接した状態を示す側面図である。磁性部材12gと2個の第1磁石10との間の引力が強い場合に、感温磁性体部材50fと磁性部材12gとが接するように感温磁性体部材50fと2個の第1磁石10と磁性部材12gとが配置されるとよい。
【0219】
本変形例においては、感温磁性体部材50fの磁化が低い場合に2個の第1磁石10と磁性部材12gとの間に強い引力が発生し、この引力によりフレーム20(より具体的には、フレーム本体部21)が変形する。このとき、
図20が示すように、感温磁性体部材50fと磁性部材12gとが接するように感温磁性体部材50fと2個の第1磁石10とが配置されるとよい。
【0220】
また、
図18~
図20に示されるように、本変形例においては、磁性部材12gよりもz軸正側に感温磁性体部材50fが配置され、感温磁性体部材50fよりもz軸正側に2個の第1磁石10が配置される。
【0221】
さらに、上記の引力について、
図21及び
図22を用いて説明する。
図21は、本変形例に係る感温磁性体部材50fの磁化が低い場合の熱振動発電デバイス1gを示す図である。
図22は、本変形例に係る感温磁性体部材50fの磁化が
図21が示す場合よりも強い場合の熱振動発電デバイス1gを示す図である。
【0222】
図21が示すように、感温磁性体部材50fの磁化が低い場合には、熱振動発電デバイス1gにおいて磁力線は、2個の第1磁石10、感温磁性体部材50f及び磁性部材12gを通る。磁力線が磁性部材12gにまで到達するため、2個の第1磁石10と磁性部材12gとの間に強い引力が発生し、感温磁性体部材50fと磁性部材12gとが接触する。
【0223】
続いて、
図22を用いて、感温磁性体部材50fの磁化が、
図21が示す場合よりも強くなった場合について説明する。この場合には、熱振動発電デバイス1gにおいて磁力線は、2個の第1磁石10及び感温磁性体部材50fを通り、磁性部材12gを通らない。感温磁性体部材50fの磁性が強まることで、磁界が短絡し、閉磁路となるため、磁力線が磁性部材12gにまで到達しない。よって、
図22が示す場合では2個の第1磁石10と磁性部材12gとの間に強い引力が発生しないため、
図22が示す場合よりもさらに感温磁性体部材50fの磁化が強くなると、フレーム20の弾性により感温磁性体部材50fが磁性部材12gから分離する。
【0224】
[動作例]
次に、熱振動発電デバイス1gによる発電方法の動作例について
図18~
図22及び
図23~
図25を用いて説明する。
【0225】
図23は、本変形例に係る熱振動発電デバイス1gの動作例のフローチャートである。
図24及び
図25は、本変形例に係る熱振動発電デバイス1gの動作例を説明する側面図である。
【0226】
まず、常温TRの環境下で、熱振動発電デバイス1gが熱源2に設置される。このとき、
図20が示すように、感温磁性体部材50fは、磁性部材12gと接触する(S10g)。常温TRの環境下では感温磁性体部材50fの温度も常温TRであり、
図16が示すように、感温磁性体部材50fの磁化が低い。このため、
図21で説明したように、感温磁性体部材50fの磁化が低いため、2個の第1磁石10と磁性部材12gとの間に強い引力が発生し、感温磁性体部材50fが磁性部材12gと接触する。このステップS10gが第2接触ステップに相当する。
【0227】
また、磁性部材12gは、常温TRよりも高温である温度THを示す熱源2に取り付けられている。そのため、ここでは、磁性部材12gの温度も、温度THである。
【0228】
ステップS10gでは、感温磁性体部材50fが磁性部材12gと接触している。そのため、高温である温度THを示す磁性部材12gから感温磁性体部材50fへ熱の移動が起こり、感温磁性体部材50fの温度が上がり、感温磁性体部材50fの磁化が変化する。つまり、ここでは、感温磁性体部材50fが熱の授受を行うことで感温磁性体部材50fの磁化の増加及び減少の一方の変化が生じる(S20g)。本変形例においては、感温磁性体部材50fが磁性部材12gと熱の授受を行うことで、感温磁性体部材50fの磁化の増加が生じ、つまりは、感温磁性体部材50fの磁化が増加する。このステップS20gが第1磁化変化ステップに相当し、より具体的には、第2磁化増加ステップに相当する。
【0229】
また、ステップS10g及びS20gでは、熱振動発電デバイス1gの状態は、感温磁性体部材50fが熱の授受を行う第1状態となる。より具体的には、ステップS10g及びS20gでは、熱振動発電デバイス1gの状態は、感温磁性体部材50fが磁性部材12gと接触することで磁性部材12gと熱の授受を行う第1状態となる。
【0230】
さらに、ステップS20gで、感温磁性体部材50fの磁化が十分に増加すると、磁性部材12gと2個の第1磁石10との間の引力が弱まる。より具体的には、
図21が示す状態から、
図22が示す状態まで、熱振動発電デバイス1gの磁界が変化し、2個の第1磁石10と磁性部材12gとの間に強い引力が発生しなくなる。この結果、
図24が示すように、自由端部F1が自由振動することで発電部30が発電する(S30g)。より具体的には、
図24が示すように、感温磁性体部材50fが磁性部材12gから分離して自由端部F1が自由振動することで発電部30が発電する。この場合、自由端部F1が自由振動する場合にはフレーム20も振動する。
図24には、自由端部F1が自由振動する方向が矢印Dで示されている。フレーム20が振動することで、上記の通り、逆磁歪効果により、発電部30が発電する。このステップS30gが発電ステップに相当する。
【0231】
このように、ステップS30gでは、熱振動発電デバイス1gの状態は、自由端部F1が自由振動を行う第2状態となる。また、換言すると、第2状態とは、感温磁性体部材50fが自由振動を行う状態、フレーム20が振動する状態でもある。
【0232】
ステップS30gの後、感温磁性体部材50fは、磁性部材12gと分離している状態で、常温TRの環境下で十分に冷却される。換言すると、感温磁性体部材50fは、ステップS20gで熱源2から移動した熱を、放熱する。このため、感温磁性体部材50fの温度は、低下し、常温TRに近づく。感温磁性体部材50fの温度が下がることで、感温磁性体部材50fの磁化の増加及び減少の他方の変化が生じる(S40g)。より具体的には、感温磁性体部材50fの温度が下がることで、感温磁性体部材50fの磁化の減少が生じ、つまりは、感温磁性体部材50fの磁化が減少する。このステップ40gが第2磁化変化ステップに相当し、より具体的には、第2磁化減少ステップに相当する。
【0233】
なお、本変形例においては、フレーム20及び第1断熱部材40が設けられていることで、ステップS40gにおいて、感温磁性体部材50fの温度が下がり易くなる。これについて、以下説明する。
【0234】
本変形例においては、上記の通り、フレーム20(より具体的には、フレーム本体部21)の形状は、U字形状を有する。
【0235】
このため、ステップS40gにおいては、自由端部F1に取り付けられる感温磁性体部材50fと、固定端部F2が第1断熱部材40を介して固定される熱源2との間には、ギャップが生じる。従って、熱源2の熱が、熱源2からフレーム20を介して感温磁性体部材50fへ伝わり難くなり、感温磁性体部材50fの温度が下がり易くなる。
【0236】
本変形例においては、第1断熱部材40が設けられている。
【0237】
このため、熱源2と熱振動発電デバイス1gとの間での熱の授受が抑制される。本変形例においては、より高温である熱源2から熱振動発電デバイス1g(より具体的には、フレーム本体部21)への、熱の移動が抑制される。つまり、熱源2によってフレーム本体部21が温められ難い。よって、連結部材22を介してフレーム本体部21に取り付けられる感温磁性体部材50fに、熱源2の熱が移動し難いため、ステップS40gにおいて、感温磁性体部材50fの温度が下がり易くなる。
【0238】
さらに、ステップS40gで、感温磁性体部材50fの磁化が減少すると、
図25が示すように、磁性部材12gと2個の第1磁石10との間に強い引力Pが生じ、フレーム本体部21が変形して、感温磁性体部材50fと磁性部材12gとが接触する。つまり、ステップS10gが再度行われる。さらに、ステップS20g~S40gが行われる。よって、熱振動発電デバイス1gによる発電方法の動作例は、繰り返され、発電部30による発電が継続される。
【0239】
本変形例においては、ステップS10g~S40gが1つの発電のサイクルであり、感温磁性体部材50fの温度及び磁化が繰り返し変化することで、発電のサイクルが繰り返される。
【0240】
なお、ステップS40gにおいて感温磁性体部材50fの温度が下がり易いほど感温磁性体部材50fの磁化が減少し易いため、発電のサイクルが速くなる。同様に、ステップS20gにおいて感温磁性体部材50fの温度が上がり易いほど感温磁性体部材50fの磁化が増加し易いため、発電のサイクルが速くなる。また、ステップS40gにおいて常温TRが低いほど感温磁性体部材50fの温度が下がり易く、ステップS20gにおいて温度THが高いほど感温磁性体部材50fの温度が上がり易い。
【0241】
さらに以下では、変形例6のより詳細な実施例について説明する。変形例6のより詳細な実施例では、フレーム20にかえてフレーム20hが用いられ、さらにボルト80及び補助ヨーク部材90が用いられている熱振動発電デバイス1gについて説明する。
【0242】
図26は、本実施例に係る熱振動発電デバイス1gが備えるフレーム20hの周辺の平面図である。
図27は、本実施例に係る熱振動発電デバイス1gが備えるフレーム20hの周辺の正面図である。
図28は、本実施例に係る熱振動発電デバイス1gが備えるフレーム20hの周辺の側面図である。
【0243】
本実施例に係る熱振動発電デバイス1gは、2個の第1磁石10と、フレーム20h及び発電部30を有する発電部材と、第1断熱部材40と、感温磁性体部材50fと、磁性部材12gと、ボルト80と、補助ヨーク部材90とを備える。
【0244】
図26が示すように、本実施例に係るフレーム20hは、フレーム本体部21hと、連結部材22hとを有する。
【0245】
フレーム本体部21hと連結部材22hとは、ボルト80によって固定されている。
【0246】
フレーム本体部21hは二股に分岐した領域を有している。また、連結部材22hも二股に分岐した領域を有している。フレーム本体部21hの二股に分岐した領域と、連結部材22hの二股に分岐した領域とが、平面視で重なる領域に、ボルト80が設けられることで、連結部材22hがフレーム本体部21hに取り付けられている。
【0247】
連結部材22hは、複数の放熱フィン223を含む。本実施例においては、複数の放熱フィン223のそれぞれはy軸方向に向かって延びており、複数の放熱フィン223のそれぞれの形状は、櫛の歯状である。
【0248】
補助ヨーク部材90は、例えばFeなどにより構成される部材であり、2個の第1磁石10と接して設けられている。補助ヨーク部材90は、2個の第1磁石10のz軸正側に設けられている。
【0249】
2個の第1磁石10と接する補助ヨーク部材90が設けられることで、例えば、
図21及び
図22が示す磁力線が補助ヨーク部材90も通り、2個の第1磁石10と磁性部材12gとの間に強い引力Pが発生しやすくなる。
【0250】
本実施例に係る熱振動発電デバイス1gにおいても、
図23が示すフローチャートと同様の動作が繰り返される。つまりは、感温磁性体部材50fの温度及び磁化が繰り返し変化することで、発電のサイクルが繰り返される。
【0251】
また、連結部材22hは、複数の放熱フィン223を含む。
【0252】
これにより、本実施例においても、
図23が示すステップS40gの処理が行われる際に、連結部材22hの複数の放熱フィン223を介して、感温磁性体部材50fはより冷却されやすくなる。換言すると、感温磁性体部材50fは、熱源2から移動した熱を、放熱し易くなる。
【0253】
[発電部による発電]
ここで、さらに
図29~
図32を用いて本実施例に係る熱振動発電デバイス1gが、
図23に示されるフローチャートと同様の動作を行ったときの、発電について説明する。
【0254】
図29は、本実施例に係る磁性部材12g及び感温磁性体部材50fのそれぞれの温度の時間変化を示す図である。
図30は、本実施例に係る熱振動発電デバイス1gによる発生電圧の時間変化を示す図である。
図31は、
図30が示す第1時間の発生電圧の時間変化を示す図である。
図32は、
図30が示す第2時間の発生電圧の時間変化を示す図である。
【0255】
【0256】
本実施例に係る熱源及び感温磁性体部材50fのそれぞれは、温度センサによって温度がセンシングされている。
図29が示すように、時間0secから第1時間までは、感温磁性体部材50fの温度が低下しており、
図23が示すステップS40gに相当する。
【0257】
十分に感温磁性体部材50fの温度が低下しおよそ39℃となると、つまりは感温磁性体部材50fの磁化が十分に減少すると、第1時間において、磁性部材12gと2個の第1磁石10との間に強い引力Pが生じる。この結果、フレーム本体部21hが変形して、感温磁性体部材50fと磁性部材12gとが接触する。つまり、ステップS10gが再度行われる。
【0258】
なお、感温磁性体部材50fと磁性部材12gとが接触することで、フレーム20hが振動する。フレーム20hが振動することで、上記の通り、逆磁歪効果により、発電部が発電する。つまり、ステップS10gにおいても、本実施例に係る熱振動発電デバイス1gは発電する。
図31が示すように、ステップS10gにおいては、およそ-1.5V~+1.8Vに達し、高電圧が発生した。
【0259】
さらに、
図29が示すように、第1時間から第2時間までは、感温磁性体部材50fの温度が上昇しており、
図23が示すステップS20gに相当する。
【0260】
十分に感温磁性体部材50fの温度が上昇しおよそ47℃となると、つまりは感温磁性体部材50fの磁化が十分に増加すると、第2時間において、磁性部材12gと2個の第1磁石10との間に強い引力Pが発生しなくなる。この結果、感温磁性体部材50fが磁性部材12gから分離して自由端部F1が自由振動することで発電部30が発電する。つまり、ステップS30gが行われる。
図32が示すように、ステップS30gにおいては、およそ-0.5V~+0.5Vに達し、高電圧が発生した。
【0261】
さらに、
図29が示すように、第2時間を過ぎると、感温磁性体部材50fの温度が低下しており、この期間は
図23が示すステップS40gに相当する。このように、本実施例に係る熱振動発電デバイス1gにおいても、発電のサイクルが繰り返される。
【0262】
[まとめなど]
本変形例においては、熱振動発電デバイス1gは、熱源2に設けられる熱振動発電デバイス1gである。熱振動発電デバイス1gは、自由端部F1及び固定端部F2を有するフレーム20、並びに、磁歪素子32を有し、フレーム20に設けられる発電部30を有する発電部材70を備える。熱振動発電デバイス1gは、感温磁性体材料によって構成され、フレーム20の自由端部F1に設けられる感温磁性体部材50fと、第1磁石10と、を備える。熱振動発電デバイス1gの状態は、感温磁性体部材50fが熱の授受を行う第1状態と、自由端部F1が自由振動を行う第2状態と、を含む。
【0263】
これにより、第1状態において、感温磁性体部材50fが、例えば、熱源2に設けられた磁性部材12gと接触した場合には、感温磁性体部材50fの磁化が変化するため、磁性部材12gと第1磁石10との間の引力Pの強さが変化する。本変形例においては、感温磁性体部材50fが磁性部材12gと熱の授受を行うことで、感温磁性体部材50fの磁化が増加する。
【0264】
より具体的には、感温磁性体部材50fの温度が上がることで、感温磁性体部材50fの磁化が増加する。そのため、磁性部材12gと第1磁石10との間の引力Pが弱められ、感温磁性体部材50fが磁性部材12gから分離する。この結果、第2状態において感温磁性体部材50fが自由振動を行う、つまりは、フレーム20の自由端部F1が自由振動を行うため、フレーム20が振動する。
【0265】
これにより、フレーム20に設けられた発電部30が有する磁歪素子32が伸長し又は収縮して変形する。よって、磁歪素子32の磁力線が逆磁歪効果により増加又は減少し、結果として、コイル31に誘導電圧(又は誘導電流)が発生する。ここでは、
図30~
図32が示すように、発電部30よって高電圧が発生する。つまり、高電圧を発生させることができる熱振動発電デバイス1gが実現される。
【0266】
また、例えば、熱振動発電デバイス1gは、熱源2に設けられる磁性部材12gと、自由端部F1に設けられ感温磁性体部材50fと接する1個以上の第1磁石10と、を備える。第1状態は、感温磁性体部材50fが磁性部材12gと接触することで磁性部材12gと熱の授受を行う状態である。
【0267】
これにより、第1状態においては、感温磁性体部材50fが、磁性部材12gと接触することで、感温磁性体部材50fの磁化が変化するため、磁性部材12gと第1磁石10との間の引力Pの強さが変化する。本実施の形態においては、感温磁性体部材50fが磁性部材12gと熱の授受を行うことで、感温磁性体部材50fの磁化が増加する。
【0268】
より具体的には、感温磁性体部材50fの温度が上がることで、感温磁性体部材50fの磁化が増加する。そのため、磁性部材12gと第1磁石10との間の引力Pが弱められ、感温磁性体部材50fが磁性部材12gから分離する。この結果、第2状態において感温磁性体部材50fが自由振動を行う、つまりは、フレーム20の自由端部F1が自由振動を行うため、フレーム20が振動する。
【0269】
これにより、フレーム20に設けられた発電部30が有する磁歪素子32が伸長し又は収縮して変形する。よって、磁歪素子32の磁力線が逆磁歪効果により増加又は減少し、結果として、コイル31に誘導電圧(又は誘導電流)が発生する。ここでは、
図30~
図32が示すように、発電部30よって高電圧が発生する。つまり、高電圧を発生させることができる熱振動発電デバイス1gが実現される。
【0270】
また、例えば、1個以上の第1磁石10は、2個の第1磁石10を含む。2個の第1磁石10のうち一方の第1磁石10は、S極で感温磁性体部材50fと接し、2個の第1磁石10のうち他方の第1磁石10は、N極で感温磁性体部材50fと接する。
【0271】
これにより、熱振動発電デバイス1gが
図21が示す状態であるときに、より多くの磁力線が2個の第1磁石10、感温磁性体部材50f及び磁性部材12gを通る。このため、引力Pが強くなる。そのため、フレーム本体部21が変形し易く、感温磁性体部材50fと磁性部材12gとが接触し易く、発電のサイクルが早くなる。従って、例えば、単位時間当たりに高い頻度で、高電圧を発生させることができる。
【0272】
また、例えば、フレーム20は、フレーム本体部21、及び、自由端部F1が設けられる連結部材22を有する。
【0273】
剛性及び弾性を有する材料で構成されている連結部材22が撓ることで、例えばステップS30gで、自由端部F1が自由振動する際に、磁歪素子32に力が伝わりやすくなる。このため、コイル31により大きな誘導電圧(又は誘導電流)が発生する。つまり、より高電圧を発生させることができる熱振動発電デバイス1gが実現される。
【0274】
また、例えば、連結部材22は、熱源2側を向く第1面221及び第1面221に背向する第2面222を有する。感温磁性体部材50fは、第1面221に設けられ、1個以上の第1磁石10のそれぞれは、第1面221から第2面222まで貫通して設けられる。
【0275】
これにより、1個以上の第1磁石10のそれぞれが連結部材22に貫通されて保持されるため、自由端部F1が自由振動を行う際に、連結部材22から1個以上の第1磁石10が離脱し難くなる。つまり、連結部材22から1個以上の第1磁石10が外れて、熱振動発電デバイス1gが発電できなくなることが抑制されるため、信頼性の高い熱振動発電デバイス1gが実現される。
【0276】
また、例えば、実施例で示したように、連結部材22hは、複数の放熱フィン223を含む。
【0277】
これにより、本実施例においても、
図23が示すステップS40gの処理が行われる際に、連結部材22hの複数の放熱フィン223を介して、感温磁性体部材50fはより冷却されやすくなる。換言すると、感温磁性体部材50fは、熱源2から移動した熱を、放熱し易くなる。
【0278】
(変形例7)
[熱振動発電システムの構成]
さらに、実施の形態の変形例7に係る熱振動発電システム100jの構成例について
図33及び
図34を用いて説明する。
【0279】
図33は、本変形例に係る熱振動発電システム100jの側面図である。
図34は、本変形例に係る連結部材22jの周辺の平面視である。
【0280】
図33及び
図34が示すように、本変形例に係る熱振動発電システム100jは、熱振動発電デバイス1jと、熱源2とを備える。熱振動発電デバイス1jは、4個の第1磁石10と、第1発電部材71jと、第2発電部材72jと、2個の第1断熱部材40と、感温磁性体部材50fと、磁性部材12gと、2個のボルト80と、補助ヨーク部材90とを備える。
【0281】
第2発電部材72jは、発電部30と、フレーム21jとを有する。
【0282】
フレーム21jは、フレーム本体部212jによって構成される部材である。フレーム本体部212jは、フレーム本体部212jに自由端部F12が設けられる点、及び、変形例6の
図26などの説明と同様に、フレーム本体部212jが二股に分岐した領域を有している点を除いて、フレーム本体部21と同じ構成を有する。なお、自由端部F12は、二股に分岐した領域である。
【0283】
また、第1発電部材71jは、発電部30と、フレーム20jとを有する。
【0284】
フレーム20jは、フレーム本体部211jと、自由端部F11が設けられた連結部材22jとを含む部材である。フレーム本体部211jは二股に分岐した領域を有している。フレーム本体部211jは、上記の二股に分岐した領域を有している点を除いては、フレーム本体部21と同じ構成を有する。
【0285】
また、連結部材22jは、
図34が示すように、x軸正側及び負側のそれぞれに、二股に分岐した領域を有している。フレーム本体部211jの二股に分岐した領域と、連結部材22jの二股に分岐した領域の一方とが、平面視で重なる領域に、ボルト80が設けられることで、連結部材22jがフレーム本体部211jに取り付けられている。
【0286】
連結部材22jは、
図34は示すように、複数の放熱フィン223を含む。本変形例においては、複数の放熱フィン223の一部はy軸方向に向かって延び、複数の放熱フィン223の一部はx軸方向に向かって延びている。複数の放熱フィン223のそれぞれの形状は、櫛の歯状である。
【0287】
連結部材22jは、第2発電部材72jが有するフレーム21j(より具体的には、フレーム本体部212j)の自由端部F12に接続される。本変形例においては、連結部材22jの二股に分岐した領域の他方と自由端部F12(二股に分岐した領域)とが、ボルト80によって接続される。
【0288】
4個の第1磁石10及び感温磁性体部材50fは、連結部材22jの自由端部F11に設けられる。4個の第1磁石10は、感温磁性体部材50fと接する。感温磁性体部材50fは、連結部材22jのz軸負側に設置されている。4個の第1磁石10のそれぞれは、第1面221から第2面222まで貫通して設けられており、このため、4個の第1磁石10は、感温磁性体部材50fと接する。
【0289】
4個の第1磁石10はy軸に沿って配置されており、y軸正方向からy軸負方向に向かう方向の順に、それぞれがN極、S極、N極、S極で、感温磁性体部材50fと接する。つまり、隣り合う2個の第1磁石10は、それぞれ異なる極で感温磁性体部材50fと接する。
【0290】
本変形例においては、補助ヨーク部材90は、4個の第1磁石10のz軸正側に設けられている。このため、4個の第1磁石10と磁性部材12gとの間に強い引力が発生しやすくなる。
【0291】
本変形例に係る熱振動発電デバイス1jにおいても、
図23が示すフローチャートと同様の動作が繰り返される。つまりは、感温磁性体部材50fの温度及び磁化が繰り返し変化することで、発電のサイクルが繰り返される。
【0292】
[まとめなど]
本変形例においては、発電部材は、第1発電部材71j及び第2発電部材72jを含む。第1発電部材71jが有するフレーム20jは、フレーム本体部211j、及び、自由端部F11が設けられる連結部材22jを有する。連結部材22jは、第2発電部材72jが有するフレーム21jの自由端部F12に接続される。感温磁性体部材50f及び1個以上の第1磁石10(より具体的には、4個の第1磁石10)は、連結部材22jの自由端部F11に設けられる。
【0293】
これにより、2個の発電部材(つまりは、第1発電部材71j及び第2発電部材72j)によって発電する熱振動発電デバイス1jが実現される。
【0294】
(その他の実施の形態)
以上、本発明に係る熱振動発電デバイス等について、実施の形態及び変形例に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態及び変形例に限定されるものではない。本発明の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を実施の形態に施したものや、実施の形態及び変形例における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本発明の範囲に含まれる。
【0295】
なお、感温磁性体部材に用いられる感温磁性体材料は、上記に限られない。
図35は、その他の実施の形態に係る感温磁性体部材を構成する感温磁性体材料(NiCoMnAl合金)の温度と磁化との関係を示す図である。このように、マルテンサイト変態が起きない感温磁性体材料が用いられてもよい。
【0296】
なお、実施の形態及び変形例1~7に係る熱振動発電システムは、公知の熱電発電素子(いわゆるペルチェ素子)に比べて、より高い電圧を発生させることができ、また、設計の自由度が高い。
【0297】
公知の熱電発電素子が電圧を発生させるためには、この熱電発電素子の薄い板厚の両面の間(狭いギャップの間)に、温度差が必要となる。そのため、当該両面の一方に高温の熱源が密接され、さらに当該両面の他方には冷却のためのヒートシンクなどが設けられることが多い。
【0298】
ところで、例えば、実施の形態に係る熱振動発電システム100においては、
図1が示すように熱源2(より具体的には、第1磁石10)と離れて感温磁性体部材50が配置され、ステップS40において常温TR(ここでは低温)の環境下で感温磁性体部材50の温度が下がる。
【0299】
このように、狭いギャップの間に温度差が必要ではなく、例えば、
図1においては、熱源2と同じ温度である第1磁石10と感温磁性体部材50との間には、適切なギャップ(数mm以上数cm以下のギャップ)があることで熱振動発電システム100が動作する。このように、狭いギャップの間に温度差が必要ではないため、実施の形態及び変形例1~7に係る熱振動発電システムは、設計の自由度が高い。
【0300】
さらに、実施の形態及び変形例1~7に係る熱振動発電デバイスは、熱源に設置されるが、上記の通り、低温として常温TRが用いられる環境下で、動作することができる。特に実施の形態及び変形例1~5に係る熱振動発電デバイスでは、動作がキュリー温度Tcに依存する。感温磁性体部材を構成する材料の特性次第で、例えば、熱源の温度が80℃程度であっても、実施の形態及び変形例1~7に係る熱振動発電デバイスは動作する。
【0301】
熱エネルギーを電気エネルギーに変換するデバイスにおいて、利用する熱源の温度である80℃程度とは、比較的低温である。つまり、実施の形態及び変形例1~7に係る熱振動発電デバイスは、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する他のデバイスに比べて、優位な温度環境下で動作することが示されている。
【0302】
また、例えば、実施の形態に係る連結部材22のかわりに第2断熱部材が設けられてもよい。この場合の熱振動発電デバイスが備えるフレームは、フレーム本体部21、及び、自由端部F1が設けられる第2断熱部材を有していてもよい。また、第2断熱部材は、熱源2側を向く第1面221及び第1面221に背向する第2面222を有し、感温磁性体部材50は第1面221に設けられ、第2磁石60は第2面222に設けられるとよい。
【0303】
この第2断熱部材は、フレーム本体部21を構成する材料が有する熱伝導率よりも低い熱伝導率を有する材料によって構成されているとよい。第2断熱部材を構成する材料は、例えば、樹脂などを用いることができ、より具体的には、ベークライト(フェノール樹脂)を用いることができるがこれに限られない。
【0304】
なお、この第2断熱部材は、構成する材料を除いて、連結部材22と同様の形状及び構成を有する。このため、フレーム本体部21と、第2断熱部材の自由端部F1に取り付けられる感温磁性体部材50との間での熱の授受を抑制することができる。
【0305】
このような第2断熱部材は、フレーム本体部21から感温磁性体部材50への、熱の移動を抑制する。より具体的には、熱源2からフレーム20を介する感温磁性体部材50への熱の移動を、さらに抑制し易くなる。これにより、ステップS40において、感温磁性体部材50の温度が下がり易くなる。このため、発電のサイクルが早くなる。従って、例えば、単位時間当たりに高い頻度で、高電圧を発生させることができる。
【0306】
実施の形態においては、熱振動発電デバイス1は、第1断熱部材40及び上記の第2断熱部材の少なくとも一方を備えているとよい。つまり例えば、第1断熱部材40が設けられない場合又は第1断熱部材40のかわりに断熱性を示さない部材が設けられた場合には、第2断熱部材が設けられるとよい。これにより、感温磁性体部材50が第1磁石10と分離している場合(つまりはステップS40に相当する場合)に、熱源2と感温磁性体部材50との間で、熱の授受が行われ難くなる。よって、この場合に熱振動発電システム100が設置された常温TRの環境下において、感温磁性体部材50の温度が下がり易くなるため、発電のサイクルが早くなる。従って、例えば、単位時間当たりに高い頻度で、高電圧を発生させることができる。
【0307】
また、実施の形態、変形例1及び変形例5においては、連結部材は、複数の放熱フィンを含んでいなかったが、これに限られない。実施の形態、変形例1及び変形例5に係る連結部材は、変形例6で示したような、複数の放熱フィンを含んでいてもよい。
【0308】
例えば、実施の形態に係る連結部材22が複数の放熱フィンを有する場合には、例えばステップS40において、感温磁性体部材50の温度が下がりやすくなる。
【0309】
また、変形例7が示すように、感温磁性体部材50fと接する第1磁石10が設けられた熱振動発電デバイス1jは、発電部材として第1発電部材71j及び第2発電部材72jを備える。なお、実施の形態が示すように、熱源2に設けられた第1磁石10が設けられた熱振動発電デバイス1においても、発電部材として第1発電部材及び第2発電部材を備えてもよい。つまり例えば、以下のような熱振動発電デバイスが実現されてもよい。
【0310】
このような熱振動発電デバイスは、熱源に設けられる熱振動発電デバイスである。当該熱振動発電デバイスは、自由端部及び固定端部を有するフレーム、並びに、磁歪素子を有しフレームに設けられる発電部を有する発電部材を備える。当該熱振動発電デバイスは、感温磁性体材料によって構成されフレームの自由端部に設けられる感温磁性体部材と、第1磁石と、を備える。当該熱振動発電デバイスの状態は、感温磁性体部材が熱の授受を行う第1状態と、自由端部が自由振動を行う第2状態と、を含む。該熱振動発電デバイスにおいては、第1磁石は熱源に設けられ、第1状態は、感温磁性体部材が第1磁石と接触することで第1磁石と熱の授受を行う状態である。さらに、当該熱振動発電デバイスにおいては、発電部材は、第1発電部材及び第2発電部材を含み、第1発電部材が有するフレームは、フレーム本体部、及び、自由端部が設けられる連結部材を有している。連結部材は、第2発電部材が有するフレームの自由端部に接続され、感温磁性体部材は、連結部材の自由端部に設けられる。
【0311】
また、上記の実施の形態は、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0312】
本発明は、高電圧を発生させることができる熱振動発電デバイスとして、センサなどと共に機械装置などに取り付けられ、機械装置の異常などを検知するための電源として利用することができる。
【符号の説明】
【0313】
1、1a、1b、1c、1f、1g、1j 熱振動発電デバイス
2 熱源
2a、2f 高温熱源
3a、3d、3f 低温熱源
10 第1磁石
11、11f 高熱伝導部材
12g 磁性部材
20、20a、20b、20h、20j、21j フレーム
21、21h、211j、212j フレーム本体部
22、22a、22h、22j 連結部材
30 発電部
31 コイル
32 磁歪素子
33 発電用磁石
40 第1断熱部材
50、50a、50f 感温磁性体部材
60 第2磁石
70、70a、70b 発電部材
71j 第1発電部材
72j 第2発電部材
80 ボルト
90 補助ヨーク部材
100、100a、100b、100c、100d、100f、100g、100j 熱振動発電システム
200 支持固定台
211 第1内側面
212 第2内側面
213 第1外側面
214 第2外側面
221 第1面
222 第2面
223 放熱フィン
A1、A2、D 矢印
B、B1、B2 屈曲部
F1、F1b、F11、F12 自由端部
F2、F2b 固定端部
P 引力