(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169500
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】改良されたNOxトラップ
(51)【国際特許分類】
B01J 35/04 20060101AFI20221101BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20221101BHJP
B01J 23/63 20060101ALI20221101BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20221101BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20221101BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20221101BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
B01J35/04 301L
B01J35/10 301J
B01J23/63 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/28 301A
F01N3/28 301C
F01N3/28 301J
F01N3/28 301Q
F01N3/10 A
F01N3/08 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022102441
(22)【出願日】2022-06-27
(62)【分割の表示】P 2019512248の分割
【原出願日】2017-09-01
(31)【優先権主張番号】1614923.9
(32)【優先日】2016-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラー, ガイ リチャード
(72)【発明者】
【氏名】フィリップス, ポール リチャード
(72)【発明者】
【氏名】リード, スチュアート デーヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】シュトレーラウ, ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】スワロー, ダニエル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】内燃機関用排気システムのための改良されたNOxトラップを提供する。
【解決手段】NOxトラップ触媒は、貴金属、NOx吸蔵成分、担体及び第1のセリア含有材料を含む。第1のセリア含有材料はNOxトラップ触媒への組込み前にプレエージングされており、80m2/g未満の表面積を有していてもよい。本発明はNOxトラップ触媒を含む排気システム、及びNOxトラップ触媒を用いて排気ガスを処理するための方法も含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、第1の層及び第2の層を含むNOxトラップ触媒であって、
第1の層が、一又は複数の貴金属、NOx吸蔵成分、第1の担体材料及び第1のセリア含有材料を含むNOxトラップ組成物を含み、第1のセリア含有材料が、第1の層への組込み前にプレエージングされ、
第2の層が、ロジウム、第2のセリア含有材料及び第2の担体材料を含み、第2のセリア含有材料が、第2の層への組込み前にプレエージングされていない、
NOxトラップ触媒。
【請求項2】
第1のセリア含有材料が80m2/g未満の表面積を有する、請求項1に記載のNOxトラップ触媒。
【請求項3】
第1のセリア含有材料が40-75m2/gの表面積を有する、請求項1又は請求項2に記載のNOxトラップ触媒。
【請求項4】
一又は複数の貴金属が、パラジウム、白金、金、ロジウム及びその混合物からなる群より選択される、請求項1から3の何れか一項に記載のNOxトラップ触媒。
【請求項5】
NOx吸蔵成分が、アルカリ土類金属、アルカリ金属、希土類金属又はその混合物を含む、請求項1から4の何れか一項に記載のNOxトラップ触媒。
【請求項6】
NOx吸蔵成分が、バリウム、ネオジム、ランタン又はその混合物を含む、請求項1から5の何れか一項に記載のNOxトラップ触媒。
【請求項7】
NOx吸蔵成分がバリウムを含む、請求項1から6の何れか一項に記載のNOxトラップ触媒。
【請求項8】
第1の担体材料が、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、ニオビア、タンタル酸化物、モリブデン酸化物、タングステン酸化物及びそのうち任意の2つ以上の混合酸化物又は複合酸化物からなる群より選択される、請求項1から7の何れか一項に記載のNOxトラップ触媒。
【請求項9】
第1の担体材料がマグネシア-アルミナである、請求項1から8の何れか一項に記載のNOxトラップ触媒。
【請求項10】
第1のセリア含有材料が、セリウム酸化物、セリウム-ジルコニウム混合酸化物及びセリア-ジルコニア-アルミナ混合酸化物からなる群より選択される、請求項1から9の何れか一項に記載のNOxトラップ触媒。
【請求項11】
第2のセリア含有材料が80m2/gを超える表面積を有する、請求項1から10の何れか一項に記載のNOxトラップ触媒。
【請求項12】
第2のセリア含有材料が、セリウム酸化物、セリウム-ジルコニウム混合酸化物及びセリア-ジルコニア-アルミナ混合酸化物からなる群より選択される、請求項1から11の何れか一項に記載のNOxトラップ触媒。
【請求項13】
第2の担体材料が、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、ニオビア、タンタル酸化物、モリブデン酸化物、タングステン酸化物及びそのうち任意の2つ以上の混合酸化物又は複合酸化物からなる群より選択される、請求項1から12の何れか一項に記載のNOxトラップ触媒。
【請求項14】
第2の担体材料がアルミナである、請求項1から13の何れか一項に記載のNOxトラップ触媒。
【請求項15】
基材がフロースルーモノリス又はフィルタモノリスである、請求項1から14の何れか一項に記載のNOxトラップ触媒。
【請求項16】
NOxトラップが、プレエージングされていない第1のセリア含有材料を含むフレッシュなNOxトラップ触媒と比較して、40%を超えて減少した酸素吸蔵能を有する、請求項1から15の何れか一項に記載のNOxトラップ触媒。
【請求項17】
請求項1から16の何れか一項に記載のNOxトラップ触媒を含む、燃焼排気ガスの流れを処理するための排出処理システム。
【請求項18】
内燃機関がディーゼル機関である、請求項17に記載の排出処理システム。
【請求項19】
選択的触媒還元触媒システム、微粒子フィルタ、選択的触媒還元フィルタシステム、受動的NOx吸着器、三元触媒システム又はその組合せを更に含む、請求項17又は請求項18に記載の排出処理システム。
【請求項20】
排気ガスを請求項1から16の何れか一項に記載のNOxトラップ触媒と接触させることを含む、内燃機関からの排気ガスを処理する方法。
【請求項21】
NOxトラップ触媒に第1のセリア含有材料を組み込む前に、第1のセリア含有材料をプレエージングすることを含む、NOxトラップ触媒中の第1のセリア含有材料の酸素吸蔵能を減少させる方法。
【請求項22】
プレエージングが、第1のセリア含有材料を700℃を超える温度で水の添加なしに加熱することにより実施される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
プレエージングが、セリア含有材料を750から950℃の間の温度で水の添加なしに加熱することにより実施される、請求項21又は請求項22に記載の方法。
【請求項24】
NOxトラップ触媒の酸素吸蔵能を低下させるための、プレエージングされたセリア含有材料の使用。
【請求項25】
プレエージングされたセリア含有材料が、第1のセリア含有材料を700℃を超える温度で水の添加なしに加熱することによりプレエージングされる、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
プレエージングが、第1のセリア含有材料を750から950℃の間の温度で水の添加なしに加熱することにより実施される、請求項24又は請求項25に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用排気システムのためのNOxトラップ、及び内燃機関からの排気ガスを処理するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関は炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物(「NOx」)、硫黄酸化物、粒子状物質等の様々な汚染物質を含む排気ガスを生み出す。厳しさを増す各国及び地域の立法により、そのようなディーゼル機関又はガソリン機関から排出することができる汚染物質の量が低下している。排気ガスが大気に達する前にそれを浄化するための多くの異なる技術が排気システムに適用されている。
【0003】
排気ガスを浄化するために利用される1つのこのような技術がNOx吸着体触媒(すなわち「NOxトラップ」)である。NOxトラップはリーン排気条件下でNOxを吸着し、リッチ条件下で吸着したNOxを放出し、放出されたNOxを還元してN2を形成する装置である。NOxトラップは、典型的にはNOx吸蔵のためのNOx吸着剤及び酸化/還元触媒を含む。
【0004】
NOx吸着剤成分は典型的にはアルカリ土類金属(Ba、Ca、Sr、Mg等)、アルカリ金属(K、Na、Li、Cs等)、希土類金属(La、Y、Pr、Nd等)又はその組合せである。これらの金属は典型的には酸化物の形態で見出される。酸化/還元触媒は典型的には一又は複数の貴金属、好ましくは白金、パラジウム及び/又はロジウムである。典型的には、白金は酸化機能を担うために含まれ、ロジウムは還元機能を担うために含まれている。酸化/還元触媒及びNOx吸着剤は典型的には排気システムにおいて使用するために無機酸化物等の担体材料上に担持されている。
【0005】
NOxトラップは3つの機能を担う。第1に、一酸化窒素は酸化触媒の存在下で酸素と反応してNO2を生成する。第2に、NO2は無機硝酸塩の形態でNOx吸着剤に吸着する(たとえば、BaO又はBaCO3はNOx吸着剤上でBa(NO3)2に変換される)。最後に、エンジンがリッチ条件下で作動すると、吸蔵された無機硝酸塩は分解してNO又はNO2を形成し、次いで還元触媒の存在下で一酸化炭素、水素及び/又は炭化水素との反応により、還元されてN2を形成する。典型的には、排気流中で熱、一酸化炭素及び炭化水素の存在下で、窒素酸化物は窒素、二酸化炭素及び水に変換される。
【0006】
NOxトラップ再生中、エンジンからの還元剤は触媒中の吸蔵されたNOx及び吸蔵されたO2を還元するのに消費される。新鮮なNOxトラップの酸素吸蔵能(OSC)レベルはエージングしたNOxトラップと比較してはるかに高く、結果として新鮮なトラップにははるかに長い再生期間が必要になる。
【0007】
自動車システム及び方法であればいずれも、排気ガス処理システムの更なる改善が達成されることが望ましい。本発明者らはOSCが顕著に低下しているが、エンジンで試験すると同一のNOx活性を示す、新規なNOxトラップを発見した。
【発明の概要】
【0008】
本発明の第1の態様においては、基材、第1の層及び第2の層を含み、
第1の層が一又は複数の貴金属、NOx吸蔵成分、第1の担体材料及び第1のセリア含有材料を含むNOxトラップ組成物を含み、第1のセリア含有材料が、第1の層への組込み前にプレエージングされ、
第2の層がロジウム、第2のセリア含有材料及び第2の担体材料を含み、第2のセリア含有材料が、第2の層への組込み前にプレエージングされていない、
NOxトラップ触媒が提供される。
【0009】
本発明の第2の態様においては、上に定義したようなNOxトラップ触媒を含む燃焼排気ガスの流れを処理する排出処理システムが提供される。
【0010】
本発明の第3の態様においては、排気ガスを上に定義したようなNOxトラップ触媒と接触させることを含む、内燃機関からの排気ガスを処理する方法が提供される。
【0011】
本発明の第4の態様においては、NOxトラップ触媒に第1のセリア含有材料を組み込む前に第1のセリア含有材料をプレエージングすることを含む、NOxトラップ触媒中の第1のセリア含有材料の酸素吸蔵能を低下させる方法が提供される。
【0012】
本発明の第5の態様においては、NOxトラップ触媒の酸素吸蔵能を低下させるための、事前エージングされたセリア含有材料の使用が提供される。
【0013】
定義
「ウォッシュコート」という用語は当技術分野でよく知られており、通常触媒の作製中に、基材に塗布する粘着性コーティングを指す。
【0014】
頭字語「PGM」は本明細書において、「白金族金属」を指す。「白金族金属」という用語は一般にRu、Rh、Pd、Os、Ir及びPtからなる群より選択される金属を、好ましくはRu、Rh、Pd、Ir及びPtからなる群より選択される金属を指す。一般に、「PGM」という用語は好ましくはRh、Pt及びPdからなる群より選択される金属を指す。
【0015】
本明細書において「混合酸化物」という用語は従来から当技術分野で公知となっているように、一般に単一の相における酸化物の混合物を指す。本明細書において「複合酸化物」という用語は従来から当技術分野で公知となっているように、一般に1を超える相を有する酸化物の組成を指す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のNOxトラップ触媒は基材、第1の層及び第2の層を含み、
第1の層が一又は複数の貴金属、NOx吸蔵成分、第1の担体材料及び第1のセリア含有材料を含むNOxトラップ組成物を含み、第1のセリア含有材料が、第1の層への組込み前にプレエージングされ、
第2の層がロジウム、第2のセリア含有材料及び第2の担体材料を含み、第2のセリア含有材料が、第2の層への組込み前にプレエージングされていない。好ましくは第1のセリア含有材料は80m2/g未満の表面積を有する。より好ましくは、第1のセリア含有材料は40-75m2/gの表面積を有する。
【0017】
貴金属は好ましくは白金、パラジウム、金、ロジウム又はその混合物であり、最も好ましくは、貴金属は白金、パラジウム又はその混合物、すなわち白金とパラジウムとの混合物である。好ましくは、NOxトラップ組成物中の貴金属の担持量は40から250g/ft3までの範囲となるであろう。NOxトラップ組成物は好ましくは0.1から10重量パーセントの貴金属、より好ましくは0.5から5重量パーセントの貴金属、最も好ましくは1から3重量パーセントの貴金属を含む。
【0018】
担体は好ましくは無機酸化物、より好ましくは2、3、4、5、13及び14族元素の酸化物を含む。最も好ましくは、担体はアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、ニオビア、タンタル酸化物、モリブデン酸化物、タングステン酸化物、その何れか2つ以上の混合酸化物又は複合酸化物(たとえば、シリカ-アルミナ、マグネシア-アルミナ、セリア-ジルコニア又はアルミナ-セリア-ジルコニア)及びその混合物である。特に好ましいのはマグネシア-アルミナ担体である。マグネシア-アルミナは好ましくはスピネル、マグネシア-アルミナ混合金属酸化物、ヒドロタルサイト又はヒドロタルサイト様材料、及びその2つ以上の組合せである。より好ましくは、マグネシア-アルミナ担体はスピネルである。
【0019】
好ましい担体材料は、好ましくは10から1500m2/gの範囲の表面積、0.1から4mL/gの範囲の細孔容積、及び約10から1000オングストロームの細孔直径を有する。80m2/gを超える表面積を有する高表面積の担体、たとえば高表面積のセリア又はアルミナが特に好ましい。他の好ましい担体材料にはマグネシア/アルミナ複合酸化物があり、任意選択的にセリウム含有成分、たとえばセリアが更に含まれる。そのような場合、セリアはマグネシア/アルミナ複合酸化物の表面に、たとえばコーティングとして存在してもよいし、ドーパントとして存在してもよい。
【0020】
NOx吸蔵成分は好ましくはアルカリ土類金属(バリウム、カルシウム、ストロンチウム、マグネシウム等)、アルカリ金属(カリウム、ナトリウム、リチウム、セシウム等)、希土類金属(ランタン、イットリウム、プラセオジム、ネオジム等)又はその組合せを含む。最も好ましくは、NOx吸蔵成分はバリウムを含む。これらの金属は典型的には酸化物の形態で見出される。
【0021】
好ましくは、NOx吸蔵成分は担体(マグネシア-アルミナ等)上に堆積される。NOx吸蔵成分は任意の公知の手段で担体に担持させてもよいが、添加方法は特に肝要であるとみなされてはいない。たとえば、バリウム化合物(酢酸バリウム等)は含浸、吸着、イオン交換、初期湿潤、沈殿、噴霧乾燥等によりマグネシア-アルミナに添加することができる。好ましくは、NOx吸蔵成分が担体に堆積する場合、担体は少なくとも0.5重量パーセントのNOx吸蔵成分を含む。
【0022】
第1のセリア含有材料は、好ましくはセリア、セリア-ジルコニア、セリア-ジルコニア-アルミナ、又はその混合物である。より好ましくは、第1のセリア含有材料はセリア、詳細には粒子状セリアである。第1のセリア含有材料は80m2/g未満、より好ましくは75m2/g未満の表面積を有する。第1のセリア含有材料は40から75m2/g、好ましくは50から70m2/gの表面積を有してもよい。第1のセリア含有材料は80m2/g未満の表面積を生み出すような方法で製造してもよく、80m2/g未満の表面積を生み出すように処理(プレエージングなど)した、より大きな表面積のセリア含有材料であってもよい。
【0023】
第1のセリア含有材料をNOxトラップ組成物への組込み前にプレエージングすることは、好ましくはNOxトラップ組成物の酸素吸蔵能を、プレエージングされたセリア含有材料を含まない新鮮なNOxトラップ組成物と比較して40%を超えて低下させるであろう。
【0024】
第2のセリア含有材料は好ましくは80m2/gを超える表面積を有する。第2のセリア含有材料は好ましくは第1のセリア含有材料より高い酸素吸蔵能を有する。第2のセリア含有材料は当技術分野で通常「高表面積」セリアとして知られているものであってよい。
【0025】
本発明のNOxトラップ触媒は、当業者に公知の更なる成分を含むことができる。たとえば、本発明の触媒は少なくとも1つのバインダ及び/又は少なくとも1つの界面活性剤を更に含んでもよい。バインダが存在する場合は、分散性アルミナバインダが好ましい。
【0026】
本発明のNOxトラップ触媒は任意の適切な手段で調製してもよい。好ましくは、一又は複数の貴金属、及び/又は第1のセリア含有材料及び/又はNOx吸蔵材料は、任意の公知の手段により担体に担持して、NOxトラップ触媒組成物を形成する。添加方法は特に肝要であるとみなされてはいない。たとえば、貴金属化合物(硝酸白金等)及びセリウム化合物(第1のセリア含有材料の前駆体として、硝酸セリウム等)は含浸、吸着、イオン交換、初期湿潤、沈殿等、又は当技術分野で公知の任意の他の手段により担体(アルミナ等)に担持されてよい。
【0027】
貴金属化合物及び/又はNOx吸蔵成分及び/又は第1のセリア含有材料を担体に添加する順序は重要であるとみなされてはいない。たとえば、白金、NOx吸蔵成分及び第1のセリア含有材料は同時に担体に添加してもよく、又は任意の順序で順番に添加してもよい。
【0028】
本発明の一部の実施態様では、第1のセリア含有材料はNOxトラップ組成物への組込み前にプレエージングする。プレエージングは好ましくは700℃を超える温度(より好ましくは750℃を超え、最も好ましくは少なくとも800℃、たとえば750から950℃の間)で水の添加なしにセリア含有材料を加熱することにより実施される。水の添加とは水を加熱工程に意図的に添加しないことを意味する。加熱は酸素含有ガス(空気等)又は不活性ガス(窒素等)中で実施してもよい。加熱は好ましくは0.25時間を超えて、より好ましくは0.5時間を超えて、最も好ましくは少なくとも1時間実施する。プレエージング後、第1のセリア含有材料の表面積は好ましくは80m2/g未満である。表面積はMicromeriticsのTristar3000システムを用いて30点分析を実行して測定する。試料は分析前に350℃で1時間脱気し、目標相対応力~2から100kPaまでで、窒素を用いて表面積を測定する。
【0029】
基材はフロースルー基材又はフィルタ基材であってよいが、好ましくはフロースルーモノリス基材である。
【0030】
フロースルーモノリス基材は第1の面、及び第1の面と第2の面との間に長手方向の向きを画定する第2の面を有する。フロースルーモノリス基材は第1の面と第2の面との間に延在する複数のチャネルを有する。複数のチャネルは長手方向の向きに延在し、複数の内面(たとえば、各チャネルを画定する壁面)をもたらす。複数のチャネルはそれぞれに第1の面に1つ、第2の面に1つの開口部を有する。誤解を避けるために、フロースルーモノリス基材はウォールフローフィルタではない。
【0031】
第1の面は典型的には基材の入口端部にあり、第2の面は基材の出口端部にある。
【0032】
チャネルは一定の幅でもよく、各複数のチャネルは均一のチャネル幅を有してもよい。
【0033】
好ましくは長手方向の向きに直交する平面中に、モノリス基材は平方インチ当たり100から500までの、好ましくは200から400までのチャネルを有する。たとえば、第1の面上では、開状態の第1のチャネル及び閉状態の第2のチャネルの密度は、平方インチ当たり200から400までのチャネルである。チャネルは長方形、正方形、円形、長円形、三角形、六角形又は他の多角形の形状である断面を有することができる。
【0034】
モノリス基材は触媒材料を保持する担体として作用する。モノリス基材を形成するのに適切な材料には、コーディエライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、リシア輝石、アルミナ-シリカマグネシア又はケイ酸ジルコニウム等のセラミック様材料、又は多孔質の耐火金属等がある。そのような材料及び多孔質のモノリス基材の製造におけるその使用については当技術分野で周知である。
【0035】
本明細書で記載しているフロースルーモノリス基材は単一の成分(すなわち、単一のブロック)であることに留意されたい。しかし、排出処理システムを形成する際には、使用されるモノリスは本明細書で記載しているように、複数のチャネルを互いに接着するか、又は複数のより小さなモノリスを互いに接着することにより形成してもよい。そのような技術も、排出処理システムの適切なケーシング及び構成だけでなく、当技術分野で周知である。
【0036】
本発明の代替の態様において、NOxトラップ触媒は押出成形されてフロースルー基材又はフィルタ基材を形成する、上に記載しているようなNOxトラップ組成物を含み、本質的にそれから成り、又はそれから成る。
【0037】
NOxトラップ触媒がセラミック基材を含む実施態様において、セラミック基材は任意の適切な耐火性材料、たとえばアルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、マグネシア、ゼオライト、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩及びメタロアルミノケイ酸塩(コーディエライト及びリシア輝石等)、又はその任意の2つ以上の混合物又は混合酸化物でできていてもよい。コーディエライト、アルミノケイ酸マグネシウム、及び炭化ケイ素が特に好ましい。
【0038】
NOxトラップ触媒が金属基材を含む実施態様において、金属基材は任意の適切な金属、詳細にはチタンやステンレス鋼等の耐熱金属及び金属合金、並びに鉄、ニッケル、クロム及び/又はアルミニウムに加えて他の微量金属を含むフェライト合金からできていてもよい。
【0039】
好ましくは、上に記載しているようなNOxトラップ触媒は、ウォッシュコート手順を用いて上に記載しているようなNOxトラップ組成物を基材に堆積することにより調製する。ウォッシュコート手順を用いてNOxトラップ触媒を調製する代表的な方法が下記である。下記の方法は本発明の異なる実施態様により変動しうることを理解されたい。
【0040】
ウォッシュコーティングは好ましくはまずNOxトラップ組成物の微粉化粒子を適切な溶媒、好ましくは水の中でスラリー化してスラリーを形成することにより実施する。スラリーは好ましくは5から70重量パーセントの間、より好ましくは10から50重量パーセントの間の固形分を含む。スラリーを形成する前に、実質的に全ての固体粒子が平均径で20ミクロン未満の粒径を確実に有するようにするために、粒子を粉砕し又は他の粉砕工程に供することが好ましい。安定剤又は助触媒等の追加の成分も、水溶性又は水分散性の化合物又は錯体の混合物としてスラリーに組み込むことができる。
【0041】
次に、基材に所望の担持量のNOxトラップ組成物が堆積するように、基材に一又は複数回スラリーをコーティングしてもよい。
【0042】
好ましくは、NOxトラップ触媒は基材及び基材上の少なくとも1つの層を含む。一実施態様では、少なくとも1つの層は上に記載しているようにNOxトラップ組成物を含む。これは上記のウォッシュコート手順により生産することができる。NOxトラップ組成物の1つの層に一又は複数の追加の層を添加することができる。
【0043】
一又は複数の追加の層が存在する(すなわち、NOxトラップ組成物に加えて)実施態様において、一又は複数の追加の層はNOxトラップ組成物を含む第1の層とは異なる組成を有する。
【0044】
一又は複数の追加の層は一又は複数のゾーン、たとえば2つ以上のゾーンを含むことができる。その一又は複数の追加の層が複数のゾーンを含む場合、そのゾーンは好ましくは長手方向のゾーンである。複数のゾーン又は個々のゾーンは勾配として存在することもできる。すなわち、ゾーンが全長にわたって均一の厚さでなく勾配を形成していてもよい。或いはゾーンは全長にわたって均一の厚さであってもよい。
【0045】
一部の好ましい実施態様においては、1つの追加の層、すなわち第2の層が存在する。
【0046】
典型的には、第2の層は白金族金属(PGM)(以下で「第2の白金族金属」という)を含む。一般に第2の層は第2の白金族金属(PGM)を唯一の白金族金属として含むことが好ましい(すなわち指定があるものを除き、触媒材料に他のPGM成分が含まれない)。
【0047】
第2のPGMは白金、パラジウム、及び白金(Pt)とパラジウム(Pd)との組合せ又はその混合物からなる群より選択されうる。好ましくは、白金族金属はパラジウム(Pd)及び白金(Pt)とパラジウム(Pd)との組合せ又はその混合物からなる群より選択される。より好ましくは、白金族金属は白金(Pt)とパラジウム(Pd)との組合せ又はその混合物からなる群より選択される。
【0048】
第2の層は一酸化炭素(CO)及び/又は炭化水素(HCs)の酸化のためである(すなわちそのために配合される)ことが一般に好ましい。
【0049】
好ましくは、第2の層はパラジウム(Pd)及び任意選択的に白金(Pt)を重量比1:0(たとえばPdのみ)から1:4(これはPt:Pdの重量比4:1から0:1と同等である)を含む。より好ましくは、第2の層は白金(Pt)及びパラジウム(Pd)を<4:1、たとえば≦3.5:1の重量比で含む。
【0050】
白金族金属が白金及びパラジウムの組合せ又はその混合物である場合、第2の層は白金(Pt)及びパラジウム(Pd)を重量比5:1から3.5:1、好ましくは2.5:1から1:2.5、より好ましくは1:1から2:1で含む。
【0051】
第2の層は典型的には担体材料(本明細書で以下「第2の担体材料」という)を更に含む。第2のPGMは一般に第2の担体材料上に設けられ又は担持される。
【0052】
第2の担体材料は好ましくは耐火性酸化物である。耐火性酸化物はアルミナ、シリカ、セリア、シリカアルミナ、セリア-アルミナ、セリア-ジルコニア及びアルミナ-マグネシウム酸化物からなる群より選択されることが好ましい。より好ましくは、耐火性酸化物はアルミナ、セリア、シリカ-アルミナ及びセリア-ジルコニアからなる群より選択される。より好ましくは、耐火性酸化物はアルミナ又はシリカ-アルミナ、詳細にはシリカ-アルミナである。
【0053】
特に好ましい第2の層はアルミナ担体、たとえば希土類安定化アルミナ上に、シリカ-アルミナ担体、白金、パラジウム、バリウム、モレキュラーシーブ及び白金族金属(PGM)を含む。特に好ましくは、この好ましい第2の層はシリカ-アルミナ担体、白金、パラジウム、バリウム、及びモレキュラーシーブを含む第1のゾーン、並びにアルミナ担体、たとえば希土類安定化アルミナ上に、白金族金属(PGM)を含む第2のゾーンを含む。この好ましい第2の層は酸化触媒、たとえばディーゼル酸化触媒(DOC)としての活性を有してもよい。
【0054】
もう1つの好ましい第2の層はアルミナ上の白金族金属を含み、それから成り、又は本質的にそれから成る。この好ましい第2の層は酸化触媒、たとえばNO2形成触媒としての活性を有していてもよい。
【0055】
もう1つの好ましい第2の層は白金族金属、ロジウム、及びセリウム含有成分を含む。
【0056】
特に好ましい第2の層はロジウム、セリウム含有成分、及び無機担体を含む。好ましくは無機担体はアルミナを含み、たとえばアルミナである。この好ましい第2の層を含む好ましい実施態様において、好ましい第2の層中のセリウム含有成分は層への組込み前にプレエージングされず、表面積80m2/g未満ではない。言い換えると、この好ましい第2の層を含む好ましい実施態様において、第1の層中の第1のセリア含有成分は第1の層中の第2のセリア含有成分とは異なる材料である。たとえば、第1の層中の第1のセリア含有成分の表面積は第2の層中の第2のセリア含有成分の表面積よりも小さい。
【0057】
したがって、本発明のNOxトラップ触媒の特に好ましい実施態様は80m2/g未満、たとえば40-75m2/g、好ましくは55-70m2/gの表面積を有する第1のセリア含有成分、Ba/Ce/アルミン酸マグネシウムスピネル、白金、パラジウム及びアルミナを含む第1の層、並びに第1の層に存在する第1のセリア含有成分よりも大きな表面積を有する第2のセリア含有成分、ロジウム及びアルミナを含む第2の層を含む。
【0058】
他の好ましい実施態様においては、NOxトラップ組成物に加えて上記の好ましい第2の層のうちの1を超える層が存在する。このような実施態様では、一又は複数の追加の層がゾーン別構成等の任意の構成で存在してもよい。
【0059】
NOxトラップ組成物は第2の層又は基材(たとえば、フロースルーモノリス基材の複数の内面)上に設けられ又は担持されていてもよく、好ましくは第2の層はNOxトラップ組成物上に設けられ又は担持されている。
【0060】
第2の層は基材(たとえばフロースルーモノリス基材の複数の内面)上に設けられ又は担持されていてもよい。
【0061】
第2の層は基材又はNOxトラップ組成物の全長上に設けられ又は担持されていてもよい。或いは第2の層は基材又はNOxトラップ組成物の一部分、たとえば5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は95%に設けられ又は担持されていてもよい。
【0062】
好ましくは、基材の全長にはNOxトラップ組成物がコーティングしてある。
【0063】
本発明のNOxトラップ触媒は従来技術で周知の方法で調製してもよい。好ましくは、NOxトラップはウォッシュコート手順を用いてNOxトラップ組成物を基材上に堆積することにより調製する。好ましくは、NOxトラップ組成物のウォッシュコートが基材の全表面を覆うように基材の全長をNOxトラップ組成物でコーティングする。
【0064】
ウォッシュコート手順を用いてNOxトラップ触媒を調製するための代表的な方法は下記のとおりである。以下の方法は本発明の異なる実施態様により変動させうることを理解されたい。
【0065】
NOxトラップは好ましくはウォッシュコート手順を用いて調製する。貴金属及びNOx吸蔵成分は好ましくはウォッシュコーティング工程の前に担体に添加され、次に第1のセリア含有材料と合わせられる。貴金属及びNOx吸蔵成分は任意の公知の手段により担体上に担持されていてもよく、添加方法は特に重要であるとみなされてはいない。たとえば、白金又はパラジウム化合物(硝酸白金等)を含浸、吸着、イオン交換、初期湿潤、噴霧乾燥、沈殿等により担体に添加して貴金属の担持を行い、続いてNOx吸蔵成分(酢酸バリウム等)を添加してもよい。
【0066】
本発明の他の態様は上に記載しているようにNOxトラップ触媒を含む燃焼排気ガスの流れを処理するための排出処理システムである。好ましいシステムにおいて、内燃機関はディーゼル機関、好ましくは軽量ディーゼル機関である。NOxトラップ触媒は密結合位置又は床下位置に入れてよい。
【0067】
排出処理システムは典型的には排気制御装置を更に含む。
【0068】
排気制御装置は好ましくはNOxトラップ触媒の下流にある。
【0069】
排気制御装置の例にはディーゼル微粒子フィルタ(DPF)、リーンNOxトラップ(LNT)、リーンNOx触媒(LNC)、選択的触媒還元(SCR)触媒、ディーゼル酸化触媒(DOC)、触媒化スートフィルタ(CSF)、選択的触媒還元フィルタ(SCRF(商標))触媒、アンモニアスリップ触媒(ASC)及びその2つ以上の組合せが含まれる。そのような排気制御装置は全て当技術分野で周知である。
【0070】
上述の排気制御装置のいくつかは濾過基材を有する。濾過基材を有する排気制御装置はディーゼル微粒子フィルタ(DPF)、触媒化スートフィルタ(CSF)及び選択的触媒還元フィルタ(SCRF(商標))触媒からなる群より選択してもよい。
【0071】
排出処理システムはリーンNOxトラップ(LNT)、アンモニアスリップ触媒(ASC)、ディーゼル微粒子フィルタ(DPF)、選択的触媒還元(SCR)触媒、触媒化スートフィルタ(CSF)、選択的触媒還元フィルタ(SCRF(商標))触媒、及びその2つ以上の組合せからなる群より選択される排気制御装置を含むことが好ましい。より好ましくは、排気制御装置はディーゼル微粒子フィルタ(DPF)、選択的触媒還元(SCR)触媒、触媒化スートフィルタ(CSF)、選択的触媒還元フィルタ(SCRF(商標))触媒、及びその2つ以上の組合せからなる群より選択される。より好ましくは、排気制御装置は選択的触媒還元(SCR)触媒又は選択的触媒還元フィルタ(SCRF(商標))触媒である。
【0072】
本発明の排出処理システムがSCR触媒又はSCRF(商標)触媒を含む場合、排出処理システムはアンモニア、又は尿素若しくはアンモニウムギ酸塩、好ましくは尿素等のアンモニア前駆体等の窒素還元剤をNOxトラップ触媒の下流及びSCR触媒若しくはSCRF(商標)触媒の上流の排気ガスに注入するための注入器を更に含んでもよい。
【0073】
そのような注入器は流動的に窒素還元剤前駆体の供給源(たとえばタンク)と連結していてもよい。前駆体を排気ガス中に弁制御により投与することは、適切にプログラムされたエンジン管理手段、及び排気ガスの組成をモニターしているセンサーにより提供される閉ループ又は開ループフィードバックにより調整してもよい。
【0074】
アンモニアはカルバミン酸アンモニウム(固体)を加熱することにより生成することもでき、生成したアンモニアは排気ガスに注入することができる。
【0075】
或いは、又は注入器に加えてアンモニアはin situに(たとえばSCR触媒又はSCRF(商標)触媒の上流に設けられたLNTのリッチ再生中に)、たとえば本発明のNOxトラップ組成物を含むNOxトラップ触媒中に作り出すことができる。したがって、排出処理システムは排気ガスを炭化水素でリッチ化するためのエンジン管理手段を更に含むことができる。
【0076】
SCR触媒又はSCRF(商標)触媒はCu、Hf、La、Au、In、V、ランタニドの少なくとも1つ及び第VIII族遷移金属(たとえばFe)からなる群より選択される金属であって、この金属が耐火性酸化物又はモレキュラーシーブ上に担持されている金属を含むことができる。この金属は好ましくはCe、Fe、Cu及びその任意の2つ以上の組合せから選択され、より好ましくは金属はFe又はCuである。
【0077】
SCR触媒又はSCRF(商標)触媒のための耐火性酸化物は、Al2O3、TiO2、CeO2、SiO2、ZrO2及びその2つ以上を含む混合酸化物からなる群より選択してもよい。非ゼオライト触媒はタングステン酸化物(たとえばV2O5/WO3/TiO2、WOx/CeZrO2、WOx/ZrO2又はFe/WOx/ZrO2)も含むことができる。
【0078】
SCR触媒、SCRF(商標)触媒又はそのウォッシュコートがアルミノケイ酸塩ゼオライト又はSAPO等の少なくとも1つのモレキュラーシーブを含む場合は特に好ましい。この少なくとも1つのモレキュラーシーブは小細孔、中細孔又は大細孔とすることができる。「小細孔モレキュラーシーブ」により本明細書で本発明者らが意味するものはCHA等、最大環サイズ8を含むモレキュラーシーブであり、「中細孔モレキュラーシーブ」により本明細書で本発明者らが意味するものはZSM-5等、最大環サイズ10を含むモレキュラーシーブであり、「大細孔モレキュラーシーブ」により本明細書で本発明者らが意味するものはベータ等、最大環サイズ12を有するモレキュラーシーブである。小細孔モレキュラーシーブがSCR触媒での使用に潜在的に有利である。
【0079】
本発明の排出処理システムにおいて、SCR触媒又はSCRF(商標)触媒のための好ましいモレキュラーシーブはAEI、ZSM-5、ZSM-20、ZSM-34を含むERI、モルデン沸石、苦土沸石、ベータを含むBEA、Y、CHA、Nu-3を含むLEV、MCM-22及びEU-1、好ましくはAEI又はCHAからなる群より選択され、シリカのアルミナに対する比が約10から約50、たとえば約15から約40である、合成のアルミノケイ酸塩ゼオライトモレキュラーシーブである。
【0080】
第1の排出処理システム実施態様において、排出処理システムは本発明のNOxトラップ触媒及び触媒化スートフィルタ(CSF)を含む。NOxトラップ触媒は典型的には触媒化スートフィルタ(CSF)の前に(たとえば、上流に)ある。したがって、たとえば、NOxトラップ触媒の出口は触媒化スートフィルタの入口と連結している。
【0081】
第2の排出処理システム実施態様は、本発明のNOxトラップ触媒を含む排出処理システム、触媒化スートフィルタ(CSF)及び選択的触媒還元(SCR)触媒に関する。
【0082】
NOxトラップ触媒は典型的には触媒化スートフィルタ(CSF)の前に(たとえば、上流に)ある。触媒化スートフィルタは典型的には選択的触媒還元(SCR)触媒の前に(たとえば、上流に)ある。窒素還元剤注入器を触媒化スートフィルタ(CSF)と選択的触媒還元(SCR)触媒との間に配置することができる。したがって、触媒化スートフィルタ(CSF)は窒素還元剤注入器の前に(たとえば、上流に)あってもよく、窒素還元剤注入器は選択的触媒還元(SCR)触媒の前に(たとえば、上流に)あってもよい。
【0083】
第3の排出処理システム実施態様において、排出処理システムは本発明のNOxトラップ触媒、選択的触媒還元(SCR)触媒、及び触媒化スートフィルタ(CSF)又はディーゼル微粒子フィルタ(DPF)のどちらかを含む。
【0084】
第3の排出処理システム実施態様において、本発明のNOxトラップ触媒は典型的には選択的触媒還元(SCR)触媒の前に(たとえば、上流に)ある。窒素還元剤注入器を酸化触媒と選択的触媒還元(SCR)触媒との間に配置することができる。したがって、触媒付きモノリス基材は窒素還元剤注入器の前(たとえば、上流)にあり、窒素還元剤注入器は選択的触媒還元(SCR)触媒の前(たとえば、上流)にあってもよい。選択的触媒還元(SCR)触媒は触媒化スートフィルタ(CSF)又はディーゼル微粒子フィルタ(DPF)の前に(たとえば、上流に)ある。
【0085】
第4の排出処理システム実施態様は、本発明のNOxトラップ触媒及び選択的触媒還元フィルタ(SCRF(商標))触媒を含む。本発明のNOxトラップ触媒は典型的には選択的触媒還元フィルタ(SCRF(商標))触媒の前に(たとえば、上流に)ある。
【0086】
窒素還元剤注入器をNOxトラップ触媒と選択的触媒還元フィルタ(SCRF(商標))触媒との間に配置することができる。したがって、NOxトラップ触媒は窒素還元剤注入器の前に(たとえば、上流に)あり、窒素還元剤注入器は選択的触媒還元フィルタ(SCRF(商標))触媒の前に(たとえば、上流に)あってもよい。
【0087】
上に記載した第2から第4の排気システム実施態様におけるように、排出処理システムが選択的触媒還元(SCR)触媒又は選択的触媒還元フィルタ(SCRF(商標))触媒を含む場合、ASCをSCR触媒又はSCRF(商標)触媒の下流に設けることができ(すなわち、別個のモノリス基材として)、又はより好ましくはSCR触媒を含むモノリス基材の下流又は終端のゾーンをASCの担体として使用することができる。
【0088】
本発明の他の態様は、車両に関する。車両は内燃機関、好ましくはディーゼル機関を含む。内燃機関、好ましくはディーゼル機関は本発明の排出処理システムに接続される。
【0089】
ディーゼル機関は、≦50ppmの硫黄、より好ましくは≦15ppmの硫黄、たとえば≦10ppmの硫黄、より好ましくは≦5ppmの硫黄を含む燃料、好ましくはディーゼル燃料で作動するように構成又は適合されていることが好ましい。
【0090】
車両は米国又は欧州の立法に規定されているように軽量ディーゼル車(LDV)であってもよい。軽量ディーゼル車は、典型的には<2,840kg、より好ましくは<2,610kgの重量を有する。米国では、軽量ディーゼル車(LDV)は総重量≦8,500ポンド(米国ポンド)を有するディーゼル車両を指す。欧州では、軽量ディーゼル車(LDV)という用語は(i)運転手の席に加えて8つ以下の席を含み、最大質量が5トン以下の乗用車、及び(ii)最大質量が12トン以下の貨物輸送車両を指す。
【0091】
或いは、車両は米国の立法に規定されているような、総重量>8,500ポンド(米国ポンド)のディーゼル車両等の大型ディーゼル車両(HDV)であってもよい。
【0092】
本発明の他の態様は、上に記載しているように排気ガスをNOxトラップ触媒と接触させることを含む、内燃機関からの排気ガスを処理する方法である。好ましい方法において、排気ガスはリッチガスの混合物である。更なる好ましい方法において、排気ガスはリッチガスの混合物とリーンガスの混合物との間を循環する。
【0093】
内燃機関からの排気ガスを処理する一部の好ましい方法において、排気ガスは約180から300℃の温度である。
【0094】
内燃機関からの排気ガスを処理する更なる好ましい方法において、排気ガスを上に記載しているようなNOxトラップ触媒に加えて一又は複数の更なる排気制御装置と接触させる。排気制御装置(一又は複数)は好ましくはNOxトラップ触媒の下流にある。
【0095】
更なる排気制御装置の例にはディーゼル微粒子フィルタ(DPF)、リーンNOxトラップ(LNT)、リーンNOx触媒(LNC)、選択的触媒還元(SCR)触媒、ディーゼル酸化触媒(DOC)、触媒化スートフィルタ(CSF)、選択的触媒還元フィルタ(SCRF(商標))触媒、アンモニアスリップ触媒(ASC)及びその2つ以上の組合せが含まれる。そのような排気制御装置は全て当技術分野で周知である。
【0096】
上述の排気制御装置のいくつかは濾過基材を有する。濾過基材を有する排気制御装置はディーゼル微粒子フィルタ(DPF)、触媒化スートフィルタ(CSF)及び選択的触媒還元フィルタ(SCRF(商標))触媒からなる群より選択してもよい。
【0097】
この方法は、好ましくは排気ガスをリーンNOxトラップ(LNT)、アンモニアスリップ触媒(ASC)、ディーゼル微粒子フィルタ(DPF)、選択的触媒還元(SCR)触媒、触媒化スートフィルタ(CSF)、選択的触媒還元フィルタ(SCRF(商標))触媒、及びその2つ以上の組合せからなる群より選択される排気制御装置と接触させることを含む。より好ましくは、排気制御装置はディーゼル微粒子フィルタ(DPF)、選択的触媒還元(SCR)触媒、触媒化スートフィルタ(CSF)、選択的触媒還元フィルタ(SCRF(商標))触媒、及びその2つ以上の組合せからなる群より選択される。より好ましくは、排気制御装置は選択的触媒還元(SCR)触媒又は選択的触媒還元フィルタ(SCRF(商標))触媒である。
【0098】
本発明の方法が排気ガスをSCR触媒又はSCRF(商標)触媒と接触させることを含む場合、この方法はアンモニア、又は尿素若しくはアンモニウムギ酸塩、好ましくは尿素等のアンモニア前駆体等の窒素還元剤をNOxトラップ触媒の下流及びSCR触媒又はSCRF(商標)触媒の上流の排気ガス中に注入することを更に含んでもよい。
【0099】
そのような注入は注入器で行ってもよい。注入器は窒素還元剤前駆体の供給源(たとえばタンク)と流動的に連結していてもよい。前駆体を排気ガス中に弁制御により投与することは適切にプログラムされたエンジン管理手段、及び排気ガスの組成をモニターしているセンサーにより提供される閉ループ又は開ループフィードバックにより調整してもよい。
【0100】
アンモニアはカルバミン酸アンモニウム(固体)を加熱することにより生成することもでき、生成したアンモニアは排気ガス中に注入することができる。
【0101】
或いは、又は注入器に加えてアンモニアはin situに(たとえばSCR触媒又はSCRF(商標)触媒の上流に設けられたLNTのリッチ再生中に)生成することができる。したがって、この方法は排気ガスを炭化水素でリッチ化することを更に含んでもよい。
【0102】
SCR触媒又はSCRF(商標)触媒はCu、Hf、La、Au、In、V、ランタニドの少なくとも1つ及び第VIII族遷移金属(たとえばFe)からなる群より選択される金属であって、この金属が耐火性酸化物又はモレキュラーシーブ上に担持されている金属を含んでもよい。この金属は好ましくはCe、Fe、Cu及びその任意の2つ以上の組合せから選択され、より好ましくはこの金属はFe又はCuである。
【0103】
SCR触媒又はSCRF(商標)触媒のための耐火性酸化物は、Al2O3、TiO2、CeO2、SiO2、ZrO2及びその2つ以上を含む混合酸化物からなる群より選択してもよい。非ゼオライト触媒はタングステン酸化物(たとえばV2O5/WO3/TiO2、WOx/CeZrO2、WOx/ZrO2又はFe/WOx/ZrO2)も含むことができる。
【0104】
SCR触媒、SCRF(商標)触媒又はそのウォッシュコートがアルミノケイ酸塩ゼオライト又はSAPO等の少なくとも1種のモレキュラーシーブを含む場合は特に好ましい。この少なくとも1種のモレキュラーシーブは小細孔、中細孔又は大細孔モレキュラーシーブとすることができる。「小細孔モレキュラーシーブ」により本明細書で本発明者らが意味するものはCHA等、最大環サイズ8を含むモレキュラーシーブであり、「中細孔モレキュラーシーブ」により本明細書で本発明者らが意味するものはZSM-5等、最大環サイズ10を含むモレキュラーシーブであり、「大細孔モレキュラーシーブ」により本明細書で本発明者らが意味するものはベータ等、最大環サイズ12を有するモレキュラーシーブである。小細孔モレキュラーシーブがSCR触媒での使用に潜在的に有利である。
【0105】
本発明の排気ガス処理方法において、SCR触媒又はSCRF(商標)触媒のための好ましいモレキュラーシーブはAEI、ZSM-5、ZSM-20、ZSM-34を含むERI、モルデン沸石、苦土沸石、ベータを含むBEA、Y、CHA、Nu-3を含むLEV、MCM-22及びEU-1、好ましくはAEI又はCHAからなる群より選択され、シリカのアルミナに対する比が約10から約50、たとえば約15から約40である、合成のアルミノケイ酸塩ゼオライトモレキュラーシーブである。
【0106】
第1の実施態様において、この方法は排気ガスを本発明のNOxトラップ触媒及び触媒化スートフィルタ(CSF)と接触させることを含む。NOxトラップは典型的には触媒化スートフィルタ(CSF)の前に(たとえば、上流に)ある。したがって、たとえばNOxトラップ触媒の出口は触媒化スートフィルタの入口と連結している。
【0107】
排気ガス処理方法の第2の実施態様は、排気ガスを本発明のNOxトラップ触媒、触媒化スートフィルタ(CSF)及び選択的触媒還元(SCR)触媒と接触させることを含む方法に関する。
【0108】
NOxトラップ触媒は典型的には触媒化スートフィルタ(CSF)の前に(たとえば、上流に)ある。触媒化スートフィルタは典型的には選択的触媒還元(SCR)触媒の前に(たとえば、上流に)ある。窒素還元剤注入器を触媒化スートフィルタ(CSF)と選択的触媒還元(SCR)触媒との間に配置することができる。したがって、触媒化スートフィルタ(CSF)は窒素還元剤注入器の前に(たとえば、上流に)あってもよく、窒素還元剤注入器は選択的触媒還元(SCR)触媒の前に(たとえば、上流に)あってもよい。
【0109】
排気ガス処理方法の第3の実施態様において、この方法は排気ガスを本発明のNOxトラップ触媒、選択的触媒還元(SCR)触媒、及び触媒化スートフィルタ(CSF)又はディーゼル微粒子フィルタ(DPF)のどちらかと接触させることを含む。
【0110】
排気ガス処理方法の第3の実施態様において、本発明のNOxトラップ触媒は典型的には選択的触媒還元(SCR)触媒の前に(たとえば、上流に)ある。窒素還元剤注入器を酸化触媒と選択的触媒還元(SCR)触媒との間に配置することができる。したがって、NOxトラップ触媒は窒素還元剤注入器の前に(たとえば、上流に)あってもよく、窒素還元剤注入器は選択的触媒還元(SCR)触媒の前に(たとえば、上流に)あってもよい。選択的触媒還元(SCR)触媒は触媒化スートフィルタ(CSF)又はディーゼル微粒子フィルタ(DPF)の前に(たとえば、上流に)ある。
【0111】
排気ガス処理方法の第4の実施態様は、本発明のNOxトラップ触媒及び選択的触媒還元フィルタ(SCRF(商標))触媒を含む。本発明のNOxトラップ触媒は典型的には選択的触媒還元フィルタ(SCRF(商標))触媒の前に(たとえば、上流に)ある。
【0112】
窒素還元剤注入器はNOxトラップ触媒と選択的触媒還元フィルタ(SCRF(商標))触媒との間に配置してもよい。したがって、NOxトラップ触媒は窒素還元剤注入器の前に(たとえば、上流に)あり、窒素還元剤注入器は選択的触媒還元フィルタ(SCRF(商標))触媒の前に(たとえば、上流に)あってもよい。
【0113】
上記の第2から第4の方法の実施態様にあるように、排出処理システムが選択的触媒還元(SCR)触媒又は選択的触媒還元フィルタ(SCRF(商標))触媒を含む場合、ASCはSCR触媒又はSCRF(商標)触媒(すなわち、別個のモノリス基材として)、又はより好ましくはSCR触媒を含むモノリス基材の下流又は終端のゾーンをASCの担体として使用することができる。
【0114】
本発明の他の態様はセリア含有材料をNOxトラップ組成物に組み込む前に、それをプレエージングすることを含む、NOxトラップ組成物中のセリア含有材料の酸素吸蔵能を減少させる方法である。好ましくはプレエージングは700℃を超える、たとえば750から950℃の間の温度で、水を添加せずにセリア含有材料を加熱することにより実施される。
【0115】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、セリア含有材料の酸素吸蔵能を低下させることにより、NOxを還元するのに利用できる還元剤の量がより多くなるので、リッチパージ中にNOxが放出され還元される際、この材料を含むNOxトラップ触媒がN2生成に対してより高い選択性をもつことになる。
【0116】
本発明の他の態様は、NOxトラップ組成物の酸素吸蔵能を低下させるためにプレエージングしたセリア含有材料を使用することである。好ましくはセリア含有材料は700℃を超える、たとえば750から950℃の間の温度で、水を添加せずにセリア含有材料を加熱することによりプレエージングされる。
【0117】
以下の例は本発明を例示するにすぎない。当業者は本発明の趣旨及び特許請求の範囲内に多くの変形例を認識するであろう。
【実施例0118】
実施例1:NOxトラップ(LNT)の調製
LNT1A:プレエージングされたセリアを含むNOxトラップ
400セル毎平方インチ(cpsi)のフロースルーコーディエライト基材モノリスに2つの層を含むNOxトラップ触媒配合物をコーティングする。下層のウォッシュコートはPt、Pd、37%のBa/Ce/アルミン酸マグネシウムスピネル及び53%のセリア(全セリア担持量の93%に粒子状セリアを含む)を含む。800℃で水の添加なしに1時間大気中でプレエージングした後、使用されるセリアの表面積は70m2/gである。プレエージング前に粒子状セリアの表面積は120m2/gであった。WO99/47260に開示されている方法を用いて未使用の基材モノリス上にウォッシュコートをコーティングし、次いで100℃で30分間通風乾燥機内で乾燥させた後、500℃で2時間焼成する。
【0119】
スラリー化した粒子状セリアから成る第2のスラリーを調製し、次いで適切な量の可溶性ロジウム塩を添加する。次にNH3を添加してセリア上にRhを加水分解し、次いでアルミナバインダを添加することにより、pHは7.5に上昇する。第2のスラリーを入口チャネル及び出口チャネルを介して、か焼した下層に塗布する。次にその部分を乾燥させ、500℃でか焼する。
【0120】
比較用LNT1B:プレエージングセリアなしのNOxトラップ
比較用LNT1Bを、下層中のウォッシュコートに使用される粒子状セリアがプレエージングに供されておらず、>120m2/gの表面積を有することを除き、LNT1Aと完全に同じ方法により調製する。
【0121】
実施例2:酸素吸蔵試験
LNT1A及び比較用LNT1B(直径1.38インチ、長さ5インチのコア)の新鮮な試料を以下の手順により酸素吸蔵試験に供する。LNT1A及び比較用LNT1Bの5インチのコアを試験前に大気中で600℃で1時間予備調整する。試験は合成ガソリン穿孔機上で実施し、全ての試験をGHSV17,700hr-1で行った。次いでN2下で温度を200℃に低下させ、30秒のリーン(1vol%のO2、バランスN2)及び30秒のリッチ(2vol%のCO、バランスN2)を10サイクル実施して酸素吸蔵能(OSC)を評価した。次いで温度を窒素下で280℃につり上げ、試験を繰り返し、次いで窒素下で400℃につり上げ、再度試験を繰り返す。次に30秒のリーン操作の最後の6サイクルにわたって入口気相から触媒により除去される平均O2の計算により酸素吸蔵能を求める。
【0122】
次いで20%のO
2、10%のH
2O、バランスN
2の水熱ガス混合物中で800℃で5時間エージングした後、同一手順を用いてLNT1A及び比較用のLNT1Bを再試験する。280℃での結果を表1に示す。
【0123】
表1の結果からLNT1Aは比較用LNT1Bと比較して著しく低いOSCを有することが分かり、このことからみてLNT1Aは比較用LNT1Bと比較して再生期間がずっと短くて済むと考えられる。