(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169501
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】台座付きアクリルスタンド
(51)【国際特許分類】
A63H 3/16 20060101AFI20221101BHJP
A63H 9/00 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
A63H3/16
A63H9/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2022106028
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】591030488
【氏名又は名称】株式会社シェリー
(74)【代理人】
【識別番号】100086368
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 誠
(72)【発明者】
【氏名】清塚 徹
【テーマコード(参考)】
2C150
【Fターム(参考)】
2C150AA05
2C150BC02
2C150CA01
2C150EH09
2C150EH16
2C150FB43
2C150FD24
(57)【要約】
【課題】押出成形により得られるアクリルスタンドに肉厚の交差が存在しても、安定してフィットするように固定させる台座の構造を提供する。
【解決手段】台座付きアクリルスタンドは、押出成形により得られ、肉厚dと公差±Δdとを有する第1及び第2の透明アクリル板から構成され、第1の透明アクリル板は、片面又は両面にキャラクタ画像がUV印刷され、キャラクタ画像の外側を取り囲むように設定した外形線に沿って切断されて板状のアクリルスタンドとなり、第2の透明アクリル板は、一方の面上にアクリルスタンドを係合させ、略垂直に取り付け可能な溝部が形成された台座となり、溝部は、台座の周辺から内側に向かって延在し、アクリルスタンドを台座に固定した際に、ぐらつくことなく固定させるのに必要な長さLを持ち一端が開口し、他端が閉塞したスリットであり、前記スリットの根本幅をd-Δdに設定し、先端幅をわずかに根本幅より広く開口させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形により得られ、肉厚dと公差±Δdとを有する第1及び第2の透明アクリル板から構成され、
前記第1の透明アクリル板は、片面又は両面にキャラクタ画像がUV印刷され、前記キャラクタ画像の外側を取り囲むように設定した外形線に沿って切断されて板状のアクリルスタンドとなり、
前記第2の透明アクリル板は、一方の面上に前記アクリルスタンドを係合させ、略垂直に取り付け可能な溝部が形成された台座となり、
前記溝部は、前記台座の周辺から内側に向かって延在し、前記アクリルスタンドを前記台座に固定した際に、ぐらつくことなく固定させるのに必要な長さLを持ち一端が開口し、他端が閉塞したスリットであり、前記スリットの根本幅をd-Δdに設定し、先端幅をわずかに前記根本幅より広く開口させることを特徴とする台座付きアクリルスタンド。
【請求項2】
前記スリットはレーザ加工により形成されることを特徴とする請求項1に記載の台座付きアクリルスタンド。
【請求項3】
前記肉厚dと前記公差±Δdと前記根本幅とが、それぞれ3mm、±0.1mm、2.8mmであることを特徴とする請求項1に記載の台座付きアクリルスタンド。
【請求項4】
前記台座は矩形又は楕円形状であることを特徴とする請求項1に記載の台座付きアクリルスタンド。
【請求項5】
前記アクリルスタンドと前記台座との前記係合が、前記アクリルスタンドを前記スリットの前記一端から挿入し、前記他端に向かって摺動させることにより行われることを特徴とする請求項1に記載の台座付きアクリルスタンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台座付きアクリルスタンドに係り、詳しくは、キャラクタ画像が印刷された板状のアクリルスタンドとそのアクリルスタンドを係合させ、略垂直に取り付ける台座とからなる台座付きアクリルスタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビなどで放映されるアニメのキャラクタ画像などを透明アクリル板にUV印刷して作った板状のアクリルスタンドをキーホルダとして使用したり、台座に係合させて、飾りの置物として使用する種々の商品が広く市販されている。キャラクタ画像を一部に取り入れた商品は、それらに関する特許出願や実用新案登録出願も行われている。
【0003】
特許文献1には、
図5に示すように、キャラクターグッズ30は、平板からなる上半身部32と下半身部33とで構成され、水平な下半身部33の後方に上半身部32が垂直に起立したL形となっており、上半身部32と下半身部33とは、上半身部32の下端に設けたピン34を下半身部33に設けた長方形状の穴35に嵌合させることによりL形に結合している。
【0004】
特許文献2には、
図6に示すように、キャラクターグッズ40は、あらかじめ外形線(輪郭)のやや外側を外形線に沿うように成型した板状の被印刷体43にキャラクタ図柄42を印刷し、被印刷体43の底面の中央部に支持手段44と係合させるための突片状の係合片45が設けられている。
支持手段44の略中部には、係合片45が密着状態で係入する長方形状の係合孔46が形成されている。そして係合片45と支持手段44の係合孔46とを係合させることにより被印刷体43の少なくとも一部を支持することが出来る。
【0005】
特許文献3には、
図7に示すように、台座51,54,57上に複数の長方形状の溝52,55,58を設け、アクリル板に人物像がUV印刷された人物板59,60,61を溝52、55,58の位置を選択して係合させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3220227号公報
【特許文献2】実用新案登録第3232949号公報
【特許文献3】特開2016-42947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
キャラクタ画像が印刷されるアクリルスタンドやそのアクリルスタンドを係合させて取付ける台座となる透明アクリル板は、通常、アクリル樹脂の押出成形によって作製される。設備は、通常、押出機、ダイ(サイジングダイ)、冷却装置、引取装置、切断装置から構成されている。
【0008】
ホッパーから投入された材料樹脂は、加熱シリンダ内のスクリューで可塑化され、押出口(ダイ)から押し出され、冷却装置で冷却され、シート状に固化されて成形され、所望のサイズに切断される。押出成形では押出口(ダイ)の形状で賦形するが、樹脂が固化する過程で圧力をかけることが出来るので、肉厚製品でも、固化する際の体積収縮による表面の収縮の痕や凹み(「ヒケ」)の発生を防止することができる。
【0009】
押出成形は、押出口(ダイ)の形状や構造を変えることにより、断面形状が変化しない成形物を連続的に成形するのに適している。
しかし、成形材料のバラツキや、成形条件のバラツキ(保圧、射出速度、射出圧、保圧時間 etc.)により、シート状の成形物を作製した場合に、ダイから押し出された樹脂が均一に収縮しないことや、また、サイズが大きい場合には板面の「ソリ」の影響で設計通りの肉厚dが得られず、±Δdの公差を伴う。
したがって、板状のアクリルスタンドの肉厚は、肉厚dが、
d-Δd≦d≦d+Δd
の範囲で公差を持って作製される。
【0010】
この板状のアクリルスタンドを係合させる台座となるアクリル板には、係合用の溝部を形成する必要がある。この溝部の形状は、特許文献1~3に示されるように、従来は両端が閉塞した長方形状の溝(35,46,52,55,58)である。このような両端が閉塞した長方形状の溝は、通常レーザ加工により形成されるので、その溝幅は、かなり正確に一律dに設計して、形成することが出来る。
【0011】
そうすると、押出成形により得られ、肉厚dと公差±Δdとを有するアクリルスタンドを溝幅dの台座の係合穴に係合させようとした場合、肉厚がd+Δdであった場合係合出来なかったり、肉厚がd-Δdであった場合、係合出来てもぐらついてしまうという問題が発生するか、またはアクリルスタンドの肉厚d±Δdに応じて、その都度係合穴の溝幅を設定しようとすると、その作業量が附加され、生産性が阻害されるという問題が発生する。
【0012】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、押出成形により得られる板状のアクリルスタンドに肉厚の公差±Δdが存在しても、台座にフィットするよう容易に固定させることの出来る台座付きアクリルスタンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の台座付きアクリルスタンドは、押出成形により得られ、肉厚dと公差±Δdとを有する第1及び第2の透明アクリル板から構成され、前記第1の透明アクリル板は、片面又は両面にキャラクタ画像がUV印刷され、前記キャラクタ画像の外側を取り囲むように設定した外形線に沿って切断されて板状のアクリルスタンドとなり、前記第2の透明アクリル板は、一方の面上に前記アクリルスタンドを係合させ、略垂直に取り付け可能な溝部が形成された台座となり、前記溝部は、前記台座の周辺から内側に向かって延在し、前記アクリルスタンドを前記台座に固定した際に、ぐらつくことなく固定させるのに必要な長さLを持ち一端が開口し、他端が閉塞したスリットであり、前記スリットの根本幅をd-Δdに設定し、先端幅をわずかに前記根本幅より広く開口させることを特徴とする。
【0014】
また、前記スリットはレーザ加工により形成され、前記肉厚dと前記公差±Δdと前記根本幅とが、それぞれ3mm、±0.1mm、2.8mmであり、前記台座は矩形又は楕円形状であることを特徴とする。
さらに、本発明の台座付きアクリルスタンドは、前記アクリルスタンドと前記台座との前記係合が、前記アクリルスタンドを前記スリットの前記一端から挿入し、前記他端に向かって摺動させることにより行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、アクリルスタンドを係合させ、略垂直に取り付け可能な溝部を台座に設け、この溝部の形状を、溝幅をd-Δdとし、周辺から内側に向かって延在する長さLを持ち一端が開口し、他端が閉塞したスリットとし、一端がわずかに溝幅d-Δdより広くしたことにより、アクリルスタンドの肉厚dに公差±Δdがあったとしても、台座にしっかりと固定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態の一例に係る台座付きアクリルスタンドの構成図。
【
図2】本発明の実施の形態の他の例に係る台座付きアクリルスタンドの構成図。
【
図5】特許文献1に記載されたアクリルスタンドと台座との係合を説明する図。
【
図6】特許文献2に記載されたアクリルスタンドと台座との係合を説明する図。
【
図7】特許文献3に記載されたアクリルスタンドと台座との係合を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態の一例に係る台座付きアクリルスタンドの構成図である。
(a)は、野球の捕手を表わすキャラクタ画像12
1がUV印刷された板状の透明アクリル板スタンド10
1を台座14
1に係合させる前の状態を、(b)は係合後の状態をそれぞれ示している。アクリル板スタンド10
1と台座14
1とは、アクリル樹脂の押出成形によって作製されるので前述したようにその肉厚dは公差±Δdを伴っている。出願人は、アクリル板スタンド10
1と台座14
1とを通常、肉厚d=3.0mmに設定して作製しているが、その場合の交差Δdは、±0.1mmの範囲におさまる。
【0018】
本発明に係るアクリル板スタンド10
1は
図5や
図6に示すような台座に係合させるための突片状の係合片34(
図5参照)や係合片45(
図6参照)を必要とせず、アクリル板スタンド10
1の一部を係合片として用いて、台座14
1に係合させることが出来る。
図1に示す実施の形態では、捕手の足の部分を係合片として用いて台座14
1との係合を行っているが、これに限定されるものではなく、キャラクタ画像に応じて、アクリル板スタンド10
1の任意の部分を係合片として用いて係合させてもよい。
【0019】
台座141にはアクリル板スタンド101を係合させ、略垂直に取付けるための溝部161が形成されている。溝部161の形状は、台座141の周辺から内側に向かって延在するスリットであって、アクリル板スタンド101を台座141に固定した際に、ぐらつくことなく固定させるのに必要な長さLを持ち、一端181が溝幅d-Δdよりわずかに広く開口している。
【0020】
このようなスリットはレーザ加工により形成するため、溝幅(スリット幅)はかなり正確に制御できる。
図1に示す実施の形態の場合、台座14
1の形状は一辺l
1が45mmの矩形である。この場合、スリット幅を2.8mmとすると、固定に必要な長さL
1を15mm~42mmの範囲に設定することが可能となる。この長さL
1の値は、アクリルスタンド10
1の係合部の長さに応じて、15mm~42mmの範囲で適切に設定することが出来る。
【0021】
図2は、本発明の他の実施の形態に係る台座付きアクリルスタンドの構成図である。本実施の形態では、アクリル板スタンド10
2を100mm×10mmサイズのアクリル板を使用してUV印刷された野球の打者のキャラクタ画像12
2の外側を取り囲むように設定した外形線に沿って切断して作製したこと、及び台座14
2を楕円形状にしたことを除いて、他の構成は
図1に示す実施の形態と同様である。
【0022】
出願人は、台座に形成するスリットについて、アクリルスタンドをぐらつくことなく固定させるのに必要な長さL、先端幅A、根本幅B、残り代(l-L)Cをどのように定めれば良いかについて、鋭意実験を繰り返した(実験1)。また、アクリルスタンドをぐらつくことなく固定させるには、スリットがアクリルスタンドを保持する保持力が必要であるので、この必要な保持力を得るために必要な長さL、先端幅A、根本幅Bの関係についても実験を行った(実験2)。
【0023】
以下、それらの実験について説明する。
図3は、台座に形成されるスリットに必要とされるスリット長L、根本幅B、先端幅A、保持力の値を定めるために使用したアクリル板を使った実験の説明図である。
図3(a)に示すように台座には肉厚dが3mmで、一辺の長さlが45mmの矩形のアクリル板Pを使用した。
そして、
図3(b)に示すように、根本幅Bが2.8mm、公差±0.02のスリットを設ける。
図3(c)は、スリットの長さLを15mm~40mmに可変させながら、先端に約5kg重の荷重で印加したときに広がる先端幅Aの大きさと残り代C(=45mm-L)とを測定した(実験1)。
【0024】
図3(d)は保持力テスト(実験2)を説明するもので、板厚が2.9mmと3.1mmの100mm角のアクリル板Qをアクリル板Pの背端部に挟んで垂直に持ち上げて保持力を調べた。挟んだまま持ち上げ可能であれば保持力有(○)、持ち上げられず落ちてしまう場合は、保持力無(×)と判定した。
【0025】
図4は、上述した実験1及び実験2の結果をまとめた図である。
保持力の観点から考察すると、板厚2.9mmの場合には、スリットの長さLは15mm~36mmあればアクリル板は保持可能であり、板厚3.1mmの場合には、21mm~37mmで保持可能なことが分かる。
【0026】
ここで注意すべきは、残り代Cが8mmより小さくなると、アクリル板Pの強度が弱くなり、5kg重の荷重をかけると破損してしまう。
したがって、残り代Cは9mm以上が条件となる。
結局スリットの長さLは21mm~36mmが必要となり、先端幅Aは3.11mm~3.77mmの範囲で、根本幅Bより広く開口させる必要があることが分かる。
【0027】
実験1,2では台座の形状が厚さ3mmで45mm×45mmのアクリル板について100mm角のアクリル板を挟んだ場合について、必要とされるスリットの長さLと、先端幅Aとを計測しているが、
図1又は
図2に示すような実施の形態では、台座14
1,14
2やアクリル板スタンド10
1,10
2の肉厚は通常3mmであり、アクリル板スタンド10
1,10
2は100mm×100mmのアクリル板から切断されて作製されるので、上述したスリットの長さLと先端幅Aとを有していれば実用上問題はない。
【符号の説明】
【0028】
101,102・・・アクリル板スタンド
121,122・・・キャラクタ画像
141,142・・・台座
161,162・・・溝部
181,182・・・一端(先端)
L1,L2・・・固定に必要な長さ
A・・・先端幅
B・・・根本幅
C・・・残り代