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特開2022-169541多峰性ポリエチレンスクリューキャップ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169541
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】多峰性ポリエチレンスクリューキャップ
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/04 20060101AFI20221101BHJP
   C08F 10/02 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
C08L23/04
C08F10/02
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022120929
(22)【出願日】2022-07-28
(62)【分割の表示】P 2019513801の分割
【原出願日】2017-09-08
(31)【優先権主張番号】16188337.6
(32)【優先日】2016-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】517301210
【氏名又は名称】タイ ポリエチレン カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】514163756
【氏名又は名称】エスシージー ケミカルズ カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】トレイシラナン,サランヤ
(72)【発明者】
【氏名】チーヴァスリラングルアン,ワチャリー
(72)【発明者】
【氏名】クロムカモル,ワラチャド
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シャルピー値、結晶化時間及びスパイラルフロー長などの改善された機械特性を有する多峰性ポリエチレン組成物並びにスクリューキャップを提供する。
【解決手段】多峰性ポリエチレン組成物は、(A)35~65重量部の、20,000~90,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する低分子量ポリエチレン;(B)5~40重量部の、150,000超~1,000,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する第1の高分子量ポリエチレン;及び(C)20~60重量部の、150,000超~1,000,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する第2の高分子量ポリエチレンを含み、分子量分布が、10~25であり;123℃の温度における多峰性ポリエチレン組成物の等温結晶化半時間が、7分又はそれ以下であり;且つ220℃の温度におけるスパイラルフロー長が、少なくとも200mmである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多峰性ポリエチレン組成物であって、
(A)35~65重量部、好ましくは45~65重量部、最も好ましくは50~60重
量部の、20,000~90,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する低分
子量ポリエチレン;
(B)5~40重量部、好ましくは5~30重量部、最も好ましくは5~20重量部の
、150,000超~1,000,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する
第1の高分子量ポリエチレン又は1,000,000超~5,000,000g/mol
の重量平均分子量(Mw)を有する第1の超高分子量ポリエチレン;及び
(C)20~60重量部、好ましくは25~60重量部、最も好ましくは35~55重
量部の、150,000超~1,000,000g/molの重量平均分子量(Mw)を
有する第2の高分子量ポリエチレン又は1,000,000超~5,000,000g/
molの重量平均分子量(Mw)を有する第2の超高分子量ポリエチレン
を含み、
ゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される前記多峰性ポリエチレン組成物の分子量
分布が、10~25、好ましくは10~20であり;
示差走査熱量測定法による123℃の温度における前記多峰性ポリエチレン組成物の等
温結晶化半時間が、7分又はそれ以下、好ましくは6分又はそれ以下、好ましくは2~6
分であり;且つ
220℃の温度におけるスパイラルフロー長が、少なくとも200mm、好ましくは2
50~400mmである、
多峰性ポリエチレン組成物。
【請求項2】
前記分子量分布が、15~25、好ましくは15~20である、請求項1に記載の多峰
性ポリエチレン組成物。
【請求項3】
220℃の温度における前記スパイラルフロー長が250~370mmである、請求項
1又は2に記載の多峰性ポリエチレン組成物。
【請求項4】
ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される、80,000~250,000g/m
ol、好ましくは80,000~200,000g/molの平均分子量を有する、請求
項1から3のいずれか一項に記載の多峰性ポリエチレン組成物。
【請求項5】
ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される、5,000~30,000g/mol
、好ましくは5,000~20,000g/molの数平均分子量を有する、請求項1か
ら4のいずれか一項に記載の多峰性ポリエチレン組成物。
【請求項6】
ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される、700,000~2,500,000
g/mol、好ましくは700,000~2,000,000g/mol、最も好ましく
は700,000~1,500,000g/molのZ平均分子量を有する、請求項1か
ら5のいずれか一項に記載の多峰性ポリエチレン組成物。
【請求項7】
前記多峰性ポリエチレン組成物が、ASTM D1505による0.950~0.96
5g/cm3、好ましくは0.953~0.960g/cm3の密度及び/又はASTM
D1238による0.1~20g/10min、好ましくは0.3~17g/10mi
nのMIを有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリエチレン組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の多峰性ポリエチレン組成物を含むスクリューキ
ャップ。
【請求項9】
射出成形又は圧縮成形によって得ることができる、請求項8に記載のスクリューキャッ
プ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリューキャップを製造するための多峰性ポリエチレン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン樹脂の需要は、様々な用途においてますます使用されている。ポリエチレ
ンの高性能が比較的新しいプラスチックに必要であるため、重合プロセス技術が、新しい
ポリマー材料製造を支援するために開発された。加工性と、エチレンコポリマーの物理特
性のバランスをとるために、多峰性の重合プロセスにおける開発が調査された。
【0003】
先行技術では、多峰性ポリエチレン重合を用いて、別々の反応器内で各樹脂画分を生成
することによって、異なる分子量を有するポリマーを製造する。低分子量画分は、最終ポ
リマーの良好な加工性を与えるのに適したポリマーの分子量を制御するために過剰な水素
を使用して、反応器内で生成される。高分子量画分は、物理特性に影響し、低水素濃度の
重合条件下で生成される。低分子量ポリマーが第1の反応器内で好ましく製造されること
は当分野において周知である。良好な物理特性を持つ多峰性ポリマーを得るために、第1
の反応器からのすべての水素は、重合されたスラリーポリマーが、高分子量ポリマーの製
造が行われる第2の反応器に移送される前に除去されるべきである。
【0004】
目的は、先行技術の欠点を克服する、特に、改善された機械特性、例えばシャルピー値
、結晶化時間及びスパイラルフロー長を有する多峰性ポリエチレン組成物を提供すること
である。
【0005】
スクリューキャップ、例えば飲料スクリューキャップ及び他のクロージャは、飲料ボト
ル、特に炭酸清涼飲料用ボトルに蓋をするために特に使用され、当分野において公知であ
る。特に、このようなスクリューキャップを調製するための様々なポリエチレン組成物が
存在する。
国際公開第2009/077142号には、射出成形スクリューキャップ及びクロージ
ャを製造するための、特に炭酸飲料製品の容器と共に使用するためのポリエチレン成形組
成物が開示されている。
【0006】
国際公開第2007/003530号には、射出成形完成部品を製造するためのポリエ
チレン成形組成物が開示されている。この組成物は、例えば、クロージャ及びボトルの製
造に適していると記載されている。さらに記載されているのは、多峰性ポリエチレン組成
物の使用である。
【0007】
米国特許第8759448号は、多峰性の分子量分布を有するポリエチレン成形組成物
に関する。キャップ及びクロージャの調製、輸送包装、家庭用品並びに薄肉包装用途のた
めに開示の組成物を使用することが提案されている。
【0008】
欧州特許第2365995号には、多峰性ポリエチレン組成物、及びシングルピースボ
トルキャップを調製するためのその使用が開示されている。多峰性ポリエチレン組成物は
、核剤を加えてより速い結晶化速度を得て、耐応力亀裂性を変化させた。
【0009】
しかし、やはり上述の先行技術に照らして、改善されたキャップ、特にスクリューキャ
ップを提供すること、並びに先行技術の欠点を克服するキャップを調製するためのポリマ
ー組成物、特に、より良い加工性、優れた流動性、高い剛性及び高い耐環境応力亀裂性(
ESCR)を有するキャップを調製するためのポリマー組成物を提供することが依然とし
て必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2009/077142号
【特許文献2】国際公開第2007/003530号
【特許文献3】米国特許第8759448号
【特許文献4】欧州特許第2365995号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、改善されたキャップ及び多峰性ポリエチレン組成物を提
供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、独立請求項の主題による本発明にしたがって達成される。好ましい実施形
態は、従属請求項から得られる。
【0013】
この目的は、多峰性ポリエチレン組成物であって、
(A)35~65重量部、好ましくは45~65重量部、最も好ましくは50~60重
量部の、20,000~90,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する低分
子量ポリエチレン;
(B)5~40重量部、好ましくは5~30重量部、最も好ましくは5~20重量部の
、150,000超~1,000,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する
第1の高分子量ポリエチレン又は1,000,000超~5,000,000g/mol
の重量平均分子量(Mw)を有する第1の超高分子量ポリエチレン;及び
(C)20~60重量部、好ましくは25~60重量部、最も好ましくは35~55重
量部の、150,000超~1,000,000g/molの重量平均分子量(Mw)を
有する第2の高分子量ポリエチレン又は1,000,000超~5,000,000g/
molの重量平均分子量(Mw)を有する第2の超高分子量ポリエチレン
を含み、
ゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される多峰性ポリエチレン組成物の分子量分布
が、10~25、好ましくは10~20であり;
示差走査熱量測定法による123℃の温度における多峰性ポリエチレン組成物の等温結
晶化半時間が、7分又はそれ以下、好ましくは6分又はそれ以下、好ましくは2~6分で
あり;且つ
220℃の温度におけるスパイラルフロー長が、少なくとも200mm、好ましくは2
50~400mmである、
多峰性ポリエチレン組成物によって達成される。
【0014】
好ましい実施形態において、多峰性ポリエチレン組成物は、ゲル浸透クロマトグラフィ
ーにより測定される、80,000~250,000g/mol、好ましくは80,00
0~200,000g/molの重量平均分子量を有する。
【0015】
さらに、多峰性ポリエチレン組成物が、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される
、5,000~30,000g/mol、好ましくは5,000~20,000g/mo
lの数平均分子量を有することが好ましい。
【0016】
好ましくは、多峰性ポリエチレン組成物は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定さ
れる、700,000~2,500,000g/mol、好ましくは700,000~2
,000,000g/mol、より好ましくは700,000~1,500,000g/
molのZ平均分子量を有する。
【0017】
好ましくは、多峰性ポリエチレン組成物は、ASTM D1505による0.950~
0.965g/cm、好ましくは0.953~0.960g/cmの密度及び/又は
ASTM D1238による0.1~20g/10min、好ましくは0.3~17g/
10minのMIを有する。
【0018】
好ましくは、多峰性ポリエチレン組成物は、15~25、好ましくは15~20の分子
量分布を有する。
【0019】
好ましくは、220℃の温度におけるスパイラルフロー長は250~370mmである
【0020】
この目的はさらに、本発明による多峰性ポリエチレン組成物を含むスクリューキャップ
によって達成される。
【0021】
この点に関して、スクリューキャップ(又はスクリュークロージャ)は、容器の「仕上
げ(finish)」をねじって開け閉めする機械的デバイスである。これは、効果的なシール
(及びバリヤ)を与え、内容物と適合し、消費者が容易に開けられ、多くの場合、再び閉
じることができて、製品及びパッケージに適合するように設計されなければならない。ス
クリューキャップは、ボトル、ジャー及びチューブのための一般的なタイプのクロージャ
である。
【0022】
最も好ましくは、スクリューキャップは、射出成形又は圧縮成形により得られる。
【0023】
本発明のスクリューキャップに関して、スクリューキャップが、本発明の多峰性ポリエ
チレン組成物を主に含むことが好ましく、これは、スクリューキャップが別の成分を、加
工性(特にサイクルタイム)、流動性、剛性及び耐応力亀裂性に関してキャップ性能に影
響を与えない量でのみ含むことを意味する。最も好ましくは、スクリューキャップは、本
発明の多峰性ポリエチレン組成物からなる。
【0024】
本発明の反応器システム、本発明のプロセス及び本発明の多峰性ポリエチレン組成物の
好ましい実施形態において、「を含む(comprising)」は「からなる(consisting of)
」である。
【0025】
好ましい実施形態において、「重量部」は「重量パーセント」である。
【0026】
この目的はさらに、本発明の反応器システム内で多峰性ポリエチレン組成物を製造する
ためのプロセスであって、
(a)第1の反応器内で、チーグラー・ナッタ触媒又はメタロセンから選択される触媒
系の存在下、及び第1の反応器内の気相中に存在する全気体に対して0.1~95mol
%の量の水素の存在下で、不活性炭化水素媒体中のエチレンを重合して、低分子量ポリエ
チレン又は中分子量ポリエチレンを得る工程;
(b)水素除去ユニット内で、103~145kPa(abs)の範囲内の圧力の第1
の反応器から得られたスラリー混合物に含まれる98.0~99.8重量%の水素を除去
し、且つ得られた残留混合物を第2の反応器に移送する工程;
(c)第2の反応器内で、チーグラー・ナッタ触媒又はメタロセンから選択される触媒
系の存在下、及び工程(b)において得られた量の水素の存在下で、エチレン及び任意選
択でC4~12α-オレフィンコモノマーを重合して、第1の高分子量ポリエチレン又は
ホモポリマー若しくはコポリマーの形態の第1の超高分子量ポリエチレンを得、且つ得ら
れた混合物を第3の反応器に移送する工程;及び
(d)第3の反応器内で、チーグラー・ナッタ触媒又はメタロセンから選択される触媒
系の存在下、及び第3の反応器内の水素の量が、第3の反応器内の気相中に存在する全気
体に対して0.1~70mol%、好ましくは0.1~60mol%の範囲内である水素
の存在下で、又は任意選択で水素の実質的な不在下で、エチレン及び任意選択でC4~1
α-オレフィンコモノマーを重合して、第2の高分子量ポリエチレン又は第2の超高分
子量ポリエチレンホモポリマー若しくはコポリマーを得る工程
を(この順番で)含む、プロセスによって達成される。
【0027】
「実質的な不在」はこの点に関して、水素が第3の反応器に、技術的手段によって避け
ることができない量でわずかに含まれることを意味する。
【0028】
第1の反応器から得られ、水素除去ユニット内で水素を除去する工程が施されたスラリ
ー混合物は、第1の反応器内で得られた固体成分及び液体成分、特に低分子量ポリエチレ
ン又は中分子量ポリエチレンのすべてを含む。さらに、第1の反応器から得られたスラリ
ー混合物は、第1の反応器内で使用される水素の量に関わらず、水素で飽和している。
【0029】
好ましくは、除去は、98.0~99.8重量%、より好ましくは98.0~99.5
重量%、最も好ましくは98.0~99.1の水素の除去である。
【0030】
好ましくは、第2の反応器及び/又は第3の反応器に含まれるα-コモノマーは、1-
ブテン及び/又は1-ヘキセンから選択される。
【0031】
好ましくは、水素除去ユニットの運転圧力は、103~145kPa(abs)、より
好ましくは104~130kPa(abs)、最も好ましくは105~115kPa(a
bs)の範囲内である。
【0032】
好ましくは、工程(a)は、低分子量ポリエチレン又は中分子量ポリエチレンを生じ、
工程(c)は、高分子量ポリエチレン又は超高分子量ポリエチレンを生じ、工程(d)は
、高分子量ポリエチレン又は超高分子量ポリエチレンを生じる。
【0033】
本明細書に記載の低分子量ポリエチレン、中分子量ポリエチレン、高分子量ポリエチレ
ン及び超高分子量ポリエチレンの重量平均分子量(Mw)は、それぞれ20,000~9
0,000g/mol(低)、90,000超~150,000g/mol(中)、15
0,000超~1,000,000g/mol(高)及び1,000,000超~5,0
00,000g/mol(超高)の範囲内である。
【0034】
本発明のスクリューキャップに関して、スクリューキャップが、本発明の多峰性ポリエ
チレン組成物を主に含むことが好ましく、これは、スクリューキャップが別の成分を、加
工性(特にサイクルタイム)、流動性、剛性及び耐応力亀裂性に関してキャップ性能に影
響を与えない量でのみ含むことを意味する。最も好ましくは、スクリューキャップは、本
発明の多峰性ポリエチレン組成物からなる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の反応器システム、本発明のプロセス及び本発明の多峰性ポリエチレン組成物の
好ましい実施形態において、「を含む(comprising)」は「からなる(consisting of)
」である。
【0036】
好ましい実施形態において、「重量部」は「重量パーセント」である。
【0037】
好ましいと述べた上の実施形態は、得られた多峰性ポリエチレン組成物のさらにいっそ
う改善された機械特性及びそれから調製されるスクリューキャップをもたらした。最良の
結果は、2つ又はそれ以上の上述の好ましい実施形態を組み合わせることによって得られ
た。同じく、より好ましい、又は最も好ましいと上述した実施形態は、機械特性を最も良
く改善した。
【0038】
驚くべきことに、特定の多峰性ポリエチレン組成物を使用すると、スクリューキャップ
及びクロージャの優れた特性、特に、加工性(速いサイクルタイム)、流動性、剛性及び
耐応力亀裂性が向上することが明らかになった。
【0039】
本発明の多峰性ポリエチレン樹脂を製造するための触媒は、チーグラー・ナッタ触媒、
メタロセン系触媒及び非メタロセン系触媒を含むシングルサイト触媒、又はクロム系から
選択され、好ましくは従来のチーグラー・ナッタ触媒又はシングルサイト触媒が使用され
得る。触媒は、典型的には、当分野において周知の共触媒と共に使用される。
【0040】
不活性(innert)炭化水素は、好ましくは、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、イソ
ブタンを含む脂肪族炭化水素である。好ましくは、ヘキサン(最も好ましくはn-ヘキサ
ン)が使用される。配位触媒、エチレン、水素及び任意選択でα-オレフィンコモノマー
が、第1の反応器内で重合される。第1の反応器から得られた全生成物は、次いで、98
.0~99.8重量%の水素、未反応のガス及び一部の揮発物を除去するために水素除去
ユニットに移送された後、重合を継続するために第2の反応器に供給される。第2の反応
器から得られたポリエチレンは、第1の反応器から得られた生成物及び第2の反応器の生
成物の組み合わせである二峰性ポリエチレンである。この二峰性ポリエチレンは、次いで
、重合を継続するために第3の反応器に供給される。第3の反応器から得られた最終的な
多峰性(三峰性)ポリエチレンは、第1、第2及び第3の反応器からのポリマーの混合物
である。
【0041】
第1、第2及び第3の反応器における重合は、異なるプロセス条件下で実施される。こ
れらは、気相中のエチレン及び水素の濃度の変化、各反応器に供給されるコモノマーの温
度又は量であり得る。所望の特性の、特に所望の分子量の各ホモポリマー又はコポリマー
を得るための適切な条件は、当分野において周知である。当業者は、その一般的な知識に
基づいて、これに基づく各条件を選ぶことができる。その結果、各反応器内で得られたポ
リエチレンは、異なる分子量を有する。好ましくは、低分子量ポリエチレン又は中分子量
ポリエチレンは、第1の反応器内で製造され、一方、高分子量ポリエチレン又は超高分子
量ポリエチレンは、第2及び第3の反応器内でそれぞれ製造される。
第1の反応器という用語は、低分子量ポリエチレン(LMW)又は中分子量ポリエチレ
ン(MMW)が製造される段階を指す。第2の反応器という用語は、第1の高分子量又は
超高分子量ポリエチレン(HMW1)が製造される段階を指す。第3の反応器という用語
は、第2の高分子量ポリエチレン又は超高分子量(HMW2)が製造される段階を指す。
【0042】
LMWという用語は、第1の反応器内で重合された、20,000~90,000g/
molの重量平均分子量(Mw)を有する低分子量ポリエチレンポリマーを指す。
【0043】
MMWという用語は、第1の反応器内で重合された、90,000超~150,000
g/molの重量平均分子量(Mw)を有する中分子量ポリエチレンポリマーを指す。
【0044】
HMW1という用語は、第2の反応器内で重合された、150,000超~5,000
,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する高分子量又は超高分子量ポリエチ
レンポリマーを指す。
【0045】
HMW2という用語は、第3の反応器内で重合された、150,000超~5,000
,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する高分子量又は超高分子量ポリエチ
レンポリマーを指す。
【0046】
LMW又はMMWは、ホモポリマーを得るために、第1の反応器内でコモノマーの不在
下で製造される。
【0047】
本発明の改善されたポリエチレン特性を得るために、エチレンは、0.965g/cm
以上の密度、及びLMWについては10~1000g/10min、MMWについては
0.1~10g/10minの範囲内のMIを有する高密度LMWポリエチレン又はM
MWポリエチレンを得るために、第1の反応器内でコモノマーの不在下で重合される。目
標密度及びMIを第1の反応器内で得るために、重合条件が制御及び調節される。第1の
反応器内の温度は、70~90℃、好ましくは80~85℃の範囲である。水素が、ポリ
エチレンの分子量を制御するように、第1の反応器に供給される。第1の反応器は、25
0~900kPaの間、好ましくは400~850kPaの圧力で運転される。第1の反
応器の気相中に存在する水素の量は、0.1~95mol%、好ましくは0.1~90m
ol%の範囲内である。
【0048】
第2の反応器に供給される前に、好ましくはヘキサン中のLMW又はMMWポリエチレ
ンを含む第1の反応器から得られたスラリーは、水素除去ユニットに移送され、この水素
除去ユニットは、揮発物、未反応のガス及び水素がスラリー流から除去されるように、フ
ラッシュドラム内の圧力が下げられる真空ポンプ、圧縮機、ブロワ及びエジェクタのうち
の1つ又は組み合わせを好ましくは含む減圧装置と接続されたフラッシュドラムを有して
もよい。水素除去ユニットの運転圧力は、典型的には、98.0~99.8重量%、好ま
しくは98.0~99.5重量%、最も好ましくは98.0~99.1重量%の水素を除
去できる、103~145kPa(abs)、好ましくは104~130kPa(abs
)の範囲である。
【0049】
本発明において、これらの水素含有量の条件下で98.0~99.8重量%の水素が除
去され、重合が起こるとき、非常に高分子量のポリマーがこのようにして得られ、シャル
ピー衝撃及び曲げ弾性率が改善される。驚くべきことに、98.0~99.8重量%の水
素除去の範囲外で運転すると、非常に高分子量のポリマーを得て、シャルピー衝撃及び曲
げ弾性率を改善する本発明の効果は同程度に観察されないことが明らかになった。効果は
、好ましいと述べた範囲内でより顕著であった。
【0050】
第2の反応器の重合条件は、第1の反応器の重合条件とは著しく異なる。第2の反応器
内の温度は、65~90℃、好ましくは68~80℃の範囲である。エチレンに対する水
素のモル比は、この反応器内では制御されないが、その理由は、水素が第2の反応器内に
供給されないからである。第2の反応器内の水素は、水素除去ユニットにおいてフラッシ
ングされた後にスラリー流内に残る第1の反応器からの残留水素である。第2の反応器内
の重合圧力は、100~3000kPa、好ましくは150~900kPa、より好まし
くは150~400kPaの範囲である。
【0051】
水素除去は、水素除去ユニット通過前後のスラリー混合物中に存在する水素の量の比較
結果である。水素除去の計算は、ガスクロマトグラフィーによる第1及び第2の反応器内
のガス組成の測定にしたがって実施される。
【0052】
相当量の水素が除去された後、水素除去ユニットからの濃縮、スラリーは、重合を継続
するために第2の反応器に移送される。この反応器内で、エチレンをα-オレフィンコモ
ノマーあり、又はなしで重合して、第1の反応器から得られたLMWポリエチレン又はM
MWポリエチレンの存在下でHMW1ポリエチレンを生成できる。共重合に有用であるα
-オレフィンコモノマー(comomer)には、C4-12、好ましくは1-ブテン及び1-
ヘキセンが含まれる。
【0053】
第2の反応器内の重合後、得られたスラリーは、重合を継続するために第3の反応器に
移送される。
【0054】
HMW2は、第1及び第2の反応器から得られるLMW又はMMW及びHWM1の存在
下、エチレンを任意選択でα-オレフィンコモノマーと共重合することによって第3の反
応器内で製造される。共重合に有用であるα-オレフィンコモノマーには、C4-12
好ましくは1-ブテン及び/又は1-ヘキセンが含まれる。
【0055】
目標密度及び目標MIを第3の反応器内で得るために、重合条件が制御及び調節される
。しかし、第3の反応器の重合条件は、第1及び第2の反応器とは著しく異なる。第3の
反応器内の温度は、68~90℃、好ましくは68~80℃の範囲である。水素は、ポリ
エチレンの分子量を制御するように、第3の反応器に供給される。第3の反応器内の重合
圧力は、150~900kPa、好ましくは150~600kPaの範囲であり、不活性
ガス、例えば窒素の添加によって制御される。
【0056】
本発明の多峰性ポリエチレン組成物中に存在するLMW又はMMWの量は30~65重
量部である。本発明のポリエチレン中に存在するHMW1は5~40重量部であり、本発
明のポリエチレン中に存在するHMW2は10~60重量部である。用いられる重合条件
に応じて、HMW1>HMW2又はHMW1<HMW2が可能である。
【0057】
最終的な(自由流動)多峰性ポリエチレン組成物は、第3の反応器から排出されたスラ
リーからヘキサンを分離することによって得られる。
【0058】
得られたポリエチレン粉末は、次いで、押し出され、ペレットに造粒される前に、酸化
防止剤及び任意選択で添加剤と混合されてもよい。
【0059】
定義及び測定方法
メルトフローインデックス:ポリマーのメルトフローインデックス(MI)を、190
℃、荷重2.16kg(MI)、5kg(MI)及び21.6kg(MI21)の試
験条件下でのポリマーの流動性を測定するASTM D1238にしたがって測定し、g
/10minで表した。
【0060】
密度:ペレットが液柱勾配管に沈むレベルを公知の密度の標準と比べて観察することに
よって、ポリエチレンの密度を測定した。この方法は、ASTM D1505にしたがっ
た、120℃でアニーリングした後の固体プラスチックの測定である。
【0061】
分子量及び多分散性指数(PDI):重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)
及びZ平均分子量(M)(g/mol)をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で分
析した。多分散性指数はMw/Mnにより計算した。約8mgのサンプルを8mlの1,
2,4-トリクロロベンゼンに160℃で90分間溶解した。次いで、サンプル溶液20
0μlを、IR5、赤外線検出器(Polymer Char(スペイン))を備えた高
温GPCに、カラムゾーン内は145℃、検出器ゾーン内は160℃で、0.5ml/m
inの流量で注入した。データは、GPC One(登録商標)ソフトウェア(Poly
mer Char(スペイン))により処理した。
【0062】
固有粘度(IV):この試験方法は、135℃のポリエチレン又は150℃の超高分子
量ポリエチレン(UHMWPE)の希薄溶液粘度の測定を対象とする。ポリマー溶液は、
0.2%wt/vol安定剤(Irganox 1010又は同等物)を含むデカリンに
ポリマーを溶解させることによって調製した。詳細は、ASTM D2515によるIV
の測定について記述されている。
【0063】
コモノマー含有量:コモノマー含有量は、高分解能13C-NMRにより求めた。13
C-NMRスペクトルは、500MHz ASCEND(商標)(Bruker)により
、極低温10mmプローブを用いて記録した。TCBを主溶媒として、TCE-d2をロ
ック剤として、4:1の体積比で使用した。NMR実験は120℃で実施し、パルスプロ
グラムの逆ゲート13C(zgig)をパルス角90°で用いた。フルスピン回復(full
-spin recovery)のための遅延時間(D1)は10秒に設定した。
【0064】
結晶化度:結晶化度はしばしば、ASTM D3418にしたがった示差走査熱量測定
法(DSC)による特性評価に使用される。サンプルをピーク温度及びエンタルピーによ
って同定すると共に、%結晶化度をピーク面積から計算した。
【0065】
シアシニングインデックス(SHI):これは、材料の分子量分布としての指標を与え
る。一般的な測定は、動的レオメータを使用し、直径25mmのプレート及びギャップ1
mmのプレート形状を使用して190℃の粘度で行う。SHI(1/100)を、1kP
a及び100kPaの一定の剪断応力で粘度により計算した。一般に材料が高いSHIを
有することは、材料のより良い流動性を意味する。
【0066】
角周波数0.01[1/s]における粘度(η 0.01 :レオロジーパラメータは、
Anton-Paar製の応力制御レオメータモデルMCR-301を用いて測定される
。形状は、測定ギャップ1mmのプレート-プレート25mm径である。動的振動剪断は
、角周波数(ω)0.01~600rad/sで、190℃で窒素雰囲気下実施する。サ
ンプル調製は、190℃での圧縮成形による25mm円板に対して実施する。0.01[
1/s](η0.01)における粘度は、特定の剪断速度0.01[1/s]における複
素粘度から得られる。
【0067】
等温結晶化半時間(ICHT)及び結晶成長速度定数(K):示差走査熱量測定法(D
SC)により123℃における等温結晶化半時間を測定し、サンプルの結晶化速度を求め
た。サンプルを50℃/minの加熱速度で30℃から200℃まで加熱し、5分間保持
した。次いで、サンプルを冷却速度50℃/minで123℃まで冷却し、60分間保持
した。アブラミ式の対数表示のデータをあてはめて、結晶成長速度定数(K)及びnを決
定した。
【0068】
スパイラルフロー長:スパイラルフロー試験は、Fanuc Roboshot S2
000i 100B射出成形機(スクリュー径36mm)により、スパイラル金型を用い
て、温度220℃及び一定の射出圧力1000barで行った。試験片の厚さは1mmで
ある。サンプルを24時間コンディショニングした後、スパイラルフロー長(mm)を測
定した。
【0069】
シャルピー衝撃強さ:ISO 293による圧縮試験片を調製した。シャルピー衝撃強
さは、ISO179にしたがって23℃で測定され、単位kJ/mで示される。
【0070】
曲げ弾性率:ISO 1872-2による圧縮試験片を調製し、ISO 178にした
がった試験を実施した。曲げ試験は、3点曲げ治具を備えた万能試験機を用いて行った。
【0071】
全周ノッチ式クリープ試験(FNCT):ISO 16770による全周ノッチ式クリ
ープ試験は、ポリマーの耐応力亀裂性を6MPaの一定応力、50℃で、2%Arkop
al溶液中で測定(N=100)する好ましい方法であった。ISO 1872-2にし
たがった圧縮成形による厚さ6mmのプラーク(plaque)からサンプルを切り出した。試
験片(タイプC)寸法は90mm×6mm×6mm、切欠き深さは1mmであった。破壊
時間は時間で記録される。
【実施例0072】
組成物に関する実施例
中密度又は高密度ポリエチレンの調製を、直列の3つの反応器内で実施した。エチレン
、水素、ヘキサン、触媒及びTEA(トリエチルアルミニウム)共触媒を第1の反応器内
に表1に示した量で供給した。市販のチーグラー・ナッタ触媒を使用した。触媒の調製は
、例えば、ハンガリー特許出願第0800771r号に記載されている。
【0073】
第1の反応器内の重合を実施して、低分子量ポリエチレン又は中分子量ポリエチレンを
調製した。第1の反応器からの重合されたスラリーポリマーのすべてを、次いで、水素除
去ユニットに移送して、未反応のガス及びヘキサンの一部をポリマーから除去した。水素
除去ユニット内の運転圧力を100~115kPa(abs)の範囲内で変化させ、第2
の重合反応器に移送する前に、残留水素が、ヘキサンから98重量%を超えて、ただし9
9.8重量%を超えずに除去された。いくらかの新たなヘキサン、エチレン及び/又はコ
モノマーを第2の反応器内に供給して、第1の高分子量ポリエチレン(HMW1)を製造
した。第2の反応器からの重合されたポリマーのすべてを、第2の高分子量ポリエチレン
(HMW2)を製造する第3の反応器内に供給した。エチレン、コモノマー、ヘキサン及
び/又は水素を第3の反応器内に供給した。
【0074】
スクリューキャップに関する実施例
多峰性ポリエチレンに関する、スクリューキャップに関する本発明のポリマー組成物の
実施例を、表1、2、3及び4に示す通り重合した。
【0075】
比較例1(CE1)
ホモポリマーを第1の反応器内で製造して、このようなポリマーを水素除去ユニットに
移送する前に、低分子量部分を得た。反応混合物を水素除去ユニットに導入して、未反応
の混合物をポリマーから分離した。水素除去ユニットを150kPa(abs)の圧力で
運転したとき、残留水素が97.6重量%除去された。低分子量ポリマーを、次いで、第
2の反応器に移送して、第1の高分子量ポリマーを製造した。第2の反応器からの最終的
な製造されたポリマーを第3の反応器に移送して、第2の高分子量ポリマーを生成した。
第3に、1-ブテンをコモノマーとして供給することによって共重合を実施した。表2及
び3に見られるように、CE1の最終的なメルトフローレートは、E1の最終的なメルト
フローレートによく似ていた。シャルピー衝撃及び曲げ弾性率の低下が、CE1において
E1と比べて示されたが、さらに、E1のより低い密度が示された。
【0076】
本発明の実施例1(E1)
実施例1(E1)を、比較例1(CE1)と同じように実施した。ただし、水素除去ユ
ニットを115kPa(abs)の圧力で運転したことを除く。第1の反応器からの水素
の残留分を98.5重量%の程度まで除去した。このプロセス運転によって得られたポリ
マーのメルトフローレートは、CE1から得られるような値よりも低い48g/10mi
n(荷重5kg)であった。表2に見られるように、除去された水素残留分の割合が比較
例1の特性と比べて増加するとき、剛性-衝撃バランスの改善が明らかになった。
【0077】
本発明の実施例E1による本発明の特性を、比較例CE1の特性と比べた。
【0078】
比較例2(CE2)
比較例2(CE2)は、チーグラー・ナッタ触媒により製造された二峰性ポリエチレン
である。エチレンホモポリマーとエチレンコポリマーの間の重量比は45:55~55:
45の範囲内である。ポリマー組成物は、少なくとも0.40mol%の量のコモノマー
を含む。
【0079】
比較例3(CE3)
比較例3(CE3)は、市販の多峰性高密度ポリエチレンHostalen(登録商標
)ACP5331 UVB plusである。
【0080】
本発明の実施例2及び3(E2及びE3)
本発明2及び3(E2及びE3)の多峰性ポリエチレン組成物を、表3に示す重合条件
の本発明のプロセスにしたがって製造した。各反応器内で異なる重量分率を定義し、1-
ブテンを第2及び第3の反応器成分中のコモノマー(comomoner)として適用した。本発
明の実施例2及び3(E2及びE3)による本発明の特性を、比較例2及び3(CE2及
びCE3)の特性と比べた。
【0081】
これらの多峰性ポリエチレンの特徴及び特性を表4に示した。多峰性ポリマーであるが
重合プロセスが異なる間での比較を示した。驚くべきことに、より高いMz及びより高い
シアシニングを持つ本発明による多峰性ポリエチレンは、比較例2及び3(CE2、CE
3)と比べた本発明の実施例2及び3(E2及びE3)、並びに比較例1(CE1)と比
べた本発明の実施例1(E1)それぞれの加工性及び剛性において著しい改善を示す。
【0082】
より良い加工性は、より速いサイクルタイム及びより高い流動性の両方の点から調査で
きる。より速いサイクルタイムは、より低い結晶化半時間(haft time)(ICHT)及
びより高い結晶成長速度(K)により判断した。本発明の実施例1、2及び3(E1、E
2及びE3)は、比較例1、2及び3(CE1、CE2及びCE3)より低いICHT及
びより高い結晶成長速度(K)を示す。本発明のプロセスにしたがって第2の構成要素内
で生じる超高分子量は、より容易な核生成の幹として働き、より速い結晶化速度が得られ
ることが推測される。流動性は、温度220℃におけるスパイラルフロー長により通常判
断される。本発明の実施例E1のスパイラルフロー長は、比較例1(CE1)より高く、
本発明の実施例2及び3(E2及びE3)は、比較例2及び3(CE2及びCE3)より
高く、さらに、本発明の実施例は、比較例より低いMIを有する。
【0083】
CE2及びCE3と比べた剛性の改善も調査した。これらの本発明の実施例2(E2)
の多峰性ポリエチレン組成物は、比較例2及び3(CE2及びCE3)よりも良い曲げ弾
性率を有し、さらに、本発明の実施例1(E1)は、比較例(CE1)よりも高い曲げ弾
性率を有する。より高いMzを持つ本発明による多峰性ポリエチレンは、剛性の著しい改
善を示す。
【0084】
これは、本発明の多峰性ポリエチレン組成物が、先行技術を越えるより良い加工性及び
より高い剛性、並びに耐応力亀裂性に対する良好なバランスをもたらすことを示した。本
発明は、スクリューキャップ及びクロージャの特性の改善を著しく強化した。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
【表4】
【手続補正書】
【提出日】2022-08-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0071
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0071】
全周ノッチ式クリープ試験(FNCT):ISO 16770による全周ノッチ式クリープ試験は、ポリマーの耐応力亀裂性を6MPaの一定応力、50℃で、2%Arkopal溶液中で測定(N=100)する好ましい方法であった。ISO 1872-2にしたがった圧縮成形による厚さ6mmのプラーク(plaque)からサンプルを切り出した。試験片(タイプC)寸法は90mm×6mm×6mm、切欠き深さは1mmであった。破壊時間は時間で記録される。
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
多峰性ポリエチレン組成物であって、
(A)35~65重量部、好ましくは45~65重量部、最も好ましくは50~60重量部の、20,000~90,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する低分子量ポリエチレン;
(B)5~40重量部、好ましくは5~30重量部、最も好ましくは5~20重量部の、150,000超~1,000,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する第1の高分子量ポリエチレン又は1,000,000超~5,000,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する第1の超高分子量ポリエチレン;及び
(C)20~60重量部、好ましくは25~60重量部、最も好ましくは35~55重量部の、150,000超~1,000,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する第2の高分子量ポリエチレン又は1,000,000超~5,000,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する第2の超高分子量ポリエチレン
を含み、
ゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される前記多峰性ポリエチレン組成物の分子量分布が、10~25、好ましくは10~20であり;
示差走査熱量測定法による123℃の温度における前記多峰性ポリエチレン組成物の等温結晶化半時間が、7分又はそれ以下、好ましくは6分又はそれ以下、好ましくは2~6分であり;且つ
220℃の温度におけるスパイラルフロー長が、少なくとも200mm、好ましくは250~400mmである、
多峰性ポリエチレン組成物。
項2.
前記分子量分布が、15~25、好ましくは15~20である、項1に記載の多峰性ポリエチレン組成物。
項3.
220℃の温度における前記スパイラルフロー長が250~370mmである、項1又は2に記載の多峰性ポリエチレン組成物。
項4.
ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される、80,000~250,000g/mol、好ましくは80,000~200,000g/molの平均分子量を有する、項1から3のいずれか一項に記載の多峰性ポリエチレン組成物。
項5.
ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される、5,000~30,000g/mol、好ましくは5,000~20,000g/molの数平均分子量を有する、項1から4のいずれか一項に記載の多峰性ポリエチレン組成物。
項6.
ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される、700,000~2,500,000g/mol、好ましくは700,000~2,000,000g/mol、最も好ましくは700,000~1,500,000g/molのZ平均分子量を有する、項1から5のいずれか一項に記載の多峰性ポリエチレン組成物。
項7.
前記多峰性ポリエチレン組成物が、ASTM D1505による0.950~0.965g/cm、好ましくは0.953~0.960g/cmの密度及び/又はASTM D1238による0.1~20g/10min、好ましくは0.3~17g/10minのMIを有する、項1から6のいずれか一項に記載のポリエチレン組成物。
項8.
項1から7のいずれか一項に記載の多峰性ポリエチレン組成物を含むスクリューキャップ。
項9.
射出成形又は圧縮成形によって得ることができる、項8に記載のスクリューキャップ。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多峰性ポリエチレン組成物であって、
(A)35~65重量部の20,000~90,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する低分子量ポリエチレン;
(B)5~40重量部の150,000超~1,000,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する第1の高分子量ポリエチレン;及び
(C)20~60重量部の150,000超~1,000,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する第2の高分子量ポリエチレン
を含み、
前記第1の高分子量ポリエチレンと前記第2の高分子量ポリエチレンとは異なり、
ゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される前記多峰性ポリエチレン組成物の分子量分布が10~25であり;
示差走査熱量測定法による123℃の温度における前記多峰性ポリエチレン組成物の等温結晶化半時間が、7分又はそれ以下であり;且つ
220℃の温度におけるスパイラルフロー長が少なくとも200mmである、
多峰性ポリエチレン組成物。
【請求項2】
前記分子量分布が15~25である、請求項1に記載の多峰性ポリエチレン組成物。
【請求項3】
220℃の温度における前記スパイラルフロー長が250~370mmである、請求項1又は2に記載の多峰性ポリエチレン組成物。
【請求項4】
ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される、80,000~250,000g/molの平均分子量を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の多峰性ポリエチレン組成物。
【請求項5】
ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される、5,000~30,000g/molの数平均分子量を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の多峰性ポリエチレン組成物。
【請求項6】
ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される700,000~2,500,000g/molのZ平均分子量を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の多峰性ポリエチレン組成物。
【請求項7】
前記多峰性ポリエチレン組成物が、ASTM D1505による0.950~0.965g/cm の密度及び/又はASTM D1238による0.1~20g/10minのMI を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリエチレン組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の多峰性ポリエチレン組成物を含むスクリューキャップ。
【請求項9】
射出成形又は圧縮成形によって得ることができる、請求項8に記載のスクリューキャップ。
【外国語明細書】