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2022-169664CD3および腫瘍抗原に結合するヘテロ二量体抗体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169664
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】CD3および腫瘍抗原に結合するヘテロ二量体抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20221101BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20221101BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221101BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221101BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20221101BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20221101BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20221101BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20221101BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221101BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221101BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221101BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20221101BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K16/46 ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N1/21
C12N1/19
C12N1/15
C12P21/08
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P35/02
C07K16/28
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130917
(22)【出願日】2022-08-19
(62)【分割の表示】P 2020076492の分割
【原出願日】2015-11-25
(31)【優先権主張番号】62/084,908
(32)【優先日】2014-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/085,027
(32)【優先日】2014-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/085,117
(32)【優先日】2014-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/159,111
(32)【優先日】2015-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/251,005
(32)【優先日】2015-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/250,971
(32)【優先日】2015-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/085,106
(32)【優先日】2014-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501154035
【氏名又は名称】ゼンコー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】XENCOR、 INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135943
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 規樹
(72)【発明者】
【氏名】ムーア,グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】デスジャルライス,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】バーネット,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】シュー,セウン
(72)【発明者】
【氏名】ラシド,ルマーナ
(72)【発明者】
【氏名】ムシャール,ウメシュ
(72)【発明者】
【氏名】リー,スン-ヒュン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】CD3および腫瘍抗原に結合するヘテロ二量体抗体を提供する。
【解決手段】a)CD3結合ドメイン、b)一価のCD123結合ドメイン、およびc)第1のFcドメインおよび第2のFcドメインを含み、前記CD123結合ドメインは、特定配列のVHCDR1、特定配列のVHCDR2および特定配列のVHCDR3を含む可変重鎖ドメイン、ならびに、特定配列のVLCDR1、特定配列のVLCDR2および特定配列のVLCDR3を含む可変軽鎖ドメインを含む、ヘテロ二量体抗体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)CD3結合ドメイン、
b)一価のCD123結合ドメイン、および
c)第1のFcドメインおよび第2のFcドメイン
を含み、前記CD123結合ドメインは、配列番号440のVHCDR1、配列番号44
1のVHCDR2および配列番号442のVHCDR3を含む可変重鎖ドメイン、ならび
に、配列番号444のVLCDR1、配列番号445のVLCDR2および配列番号44
6のVLCDR3を含む可変軽鎖ドメインを含む、ヘテロ二量体抗体。
【請求項2】
a)第1の単量体であって、
i)第1のFcドメイン、および
ii)CD3結合ドメイン
を含む第1の単量体と、
b)第2の単量体であって、
i)可変重鎖ドメイン、および
ii)第2のFcドメインを含む定常重鎖ドメイン
を含む第2の単量体と、
c)可変軽鎖ドメインおよび定常軽鎖ドメインを含む軽鎖と
を含み、前記可変軽鎖ドメインは、配列番号444のVLCDR1、配列番号445のV
LCDR2および配列番号446のVLCDR3を含み、前記可変重鎖ドメインは、配列
番号440のVHCDR1、配列番号441のVHCDR2および配列番号442のVH
CDR3を含む、ヘテロ二量体抗体。
【請求項3】
可変重鎖ドメインが配列番号439を含む、請求項1または2に記載のヘテロ二量体抗
体。
【請求項4】
可変軽鎖ドメインが配列番号443を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のヘテ
ロ二量体抗体。
【請求項5】
Fcドメインが、G236R、S239G、S239K、S239Q、S239R、V
266D、S267K、S267R、H268K、E269R、299R、299K、K
322A、A327G、A327L、A327N、A327Q、L328E、L328R
、P329A、P329H、P329K、A330L、A330S/P331S、I33
2K、I332R、V266D/A327Q、V266D/P329K、S267R/A
327Q、S267R/P329K、G236R/L328R、E233P/L234V
/L235A/G236del/S239K、E233P/L234V/L235A/G
236del/S267K、E233P/L234V/L235A/G236del/S
239K/A327G、E233P/L234V/L235A/G236del/S26
7K/A327G、E233P/L234V/L235A/G236del、S239K
/S267K、および267K/P329Kから選択される切断変異体を含む、請求項1
~4のいずれか一項に記載のヘテロ二量体抗体。
【請求項6】
第1または第2のFcドメインが、Q196K、I199T、N203D、N208D
、P217R、P228R、E269Q、E272Q、K274Q、N276K、E28
3Q、Q295E、R355Q、E357Q、N384S、N384D、K392N、V
397M、Q418E、Q419E、N421DおよびDEL447から選択されるpI
変異体を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のヘテロ二量体抗体。
【請求項7】
第1および第2のFcドメインが、以下の表1~5に示すものから選択されるアミノ酸
置換のセットを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のヘテロ二量体抗体。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】
【請求項8】
第1および第2のFcドメインが、L368D/K370S:S364K、L368D
/K370S:S364K/E357L、L368D/K370S:S364K/E35
7Q、T411E/K360E/Q362E:D401K、L368E/K370S:S
364K、K370S:S364K、L368E/K370S:S364K/E357Q
、K370S:S364K/E357Q、L368E/K370S:S364K/E35
7Q、およびK370S:S364K/E357Qからなる群から選択される、アミノ酸
置換のセットを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のヘテロ二量体抗体。
【請求項9】
第1のFcドメインが、アミノ酸置換S364K/E357Qを含み、第2のFcドメ
インが、アミノ酸置換L368D/K370Sを含む、請求項1~8のいずれか一項に記
載のヘテロ二量体抗体。
【請求項10】
第2のFcドメインが、アミノ酸置換N208D/Q295E/N384D/Q418
E/N421Dを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のヘテロ二量体抗体。
【請求項11】
第1および第2のFcドメインが、E233P/L234V/L235A/G236d
el/S267Kを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のヘテロ二量体抗体。
【請求項12】
CD3結合ドメインが、配列番号133~158から選択されるリンカーを含むscF
vである、請求項1~11のいずれか一項に記載のヘテロ二量体抗体。
【請求項13】
scFvが、リンカー(GKPGS)×4を含む、請求項12に記載のヘテロ二量体抗
体。
【請求項14】
CD3結合ドメインが、以下の(a)~(y)のいずれか1つに記載の抗CD3 sc
Fvの可変重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)、VHCDR2、VHCDR3、可変
軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)、VLCDR2およびVLCDR3のセットを含
む抗CD3 scFvである、請求項1~13のいずれか一項に記載のヘテロ二量体抗体

(a)配列番号2のVHCDR1、配列番号3のVHCDR2、配列番号4のVHCDR
3、配列番号6のVLCDR1、配列番号7のVLCDR2および配列番号8のVLCD
R3、
(b)配列番号11のVHCDR1、配列番号12のVHCDR2、配列番号13のVH
CDR3、配列番号15のVLCDR1、配列番号16のVLCDR2および配列番号1
7のVLCDR3、
(c)配列番号20のVHCDR1、配列番号21のVHCDR2、配列番号22のVH
CDR3、配列番号24のVLCDR1、配列番号25のVLCDR2および配列番号2
6のVLCDR3、
(d)配列番号29のVHCDR1、配列番号30のVHCDR2、配列番号31のVH
CDR3、配列番号33のVLCDR1、配列番号34のVLCDR2および配列番号3
5のVLCDR3、
(e)配列番号38のVHCDR1、配列番号39のVHCDR2、配列番号40のVH
CDR3、配列番号42のVLCDR1、配列番号43のVLCDR2および配列番号4
4のVLCDR3、
(f)配列番号47のVHCDR1、配列番号48のVHCDR2、配列番号49のVH
CDR3、配列番号51のVLCDR1、配列番号52のVLCDR2および配列番号5
3のVLCDR3、
(g)配列番号47のVHCDR1、配列番号3のVHCDR2、配列番号4のVHCD
R3、配列番号6のVLCDR1、配列番号7のVLCDR2および配列番号8のVLC
DR3、
(h)配列番号2のVHCDR1、配列番号3のVHCDR2、配列番号453のVHC
DR3、配列番号6のVLCDR1、配列番号7のVLCDR2および配列番号8のVL
CDR3、
(i)配列番号2のVHCDR1、配列番号454のVHCDR2、配列番号4のVHC
DR3、配列番号6のVLCDR1、配列番号7のVLCDR2および配列番号8のVL
CDR3、
(j)配列番号2のVHCDR1、配列番号3のVHCDR2、配列番号455のVHC
DR3、配列番号6のVLCDR1、配列番号7のVLCDR2および配列番号8のVL
CDR3、
(k)配列番号2のVHCDR1、配列番号3のVHCDR2、配列番号456のVHC
DR3、配列番号6のVLCDR1、配列番号7のVLCDR2および配列番号8のVL
CDR3、
(l)配列番号2のVHCDR1、配列番号3のVHCDR2、配列番号457のVHC
DR3、配列番号6のVLCDR1、配列番号7のVLCDR2および配列番号8のVL
CDR3、
(m)配列番号2のVHCDR1、配列番号3のVHCDR2、配列番号458のVHC
DR3、配列番号6のVLCDR1、配列番号7のVLCDR2および配列番号8のVL
CDR3、
(n)配列番号2のVHCDR1、配列番号12のVHCDR2、配列番号40のVHC
DR3、配列番号6のVLCDR1、配列番号7のVLCDR2および配列番号8のVL
CDR3、
(o)配列番号2のVHCDR1、配列番号454のVHCDR2、配列番号40のVH
CDR3、配列番号6のVLCDR1、配列番号7のVLCDR2および配列番号8のV
LCDR3、
(p)配列番号2のVHCDR1、配列番号3のVHCDR2、配列番号459のVHC
DR3、配列番号6のVLCDR1、配列番号7のVLCDR2および配列番号8のVL
CDR3、
(q)配列番号2のVHCDR1、配列番号3のVHCDR2、配列番号460のVHC
DR3、配列番号6のVLCDR1、配列番号7のVLCDR2および配列番号8のVL
CDR3、
(r)配列番号2のVHCDR1、配列番号3のVHCDR2、配列番号461のVHC
DR3、配列番号6のVLCDR1、配列番号7のVLCDR2および配列番号8のVL
CDR3、
(s)配列番号2のVHCDR1、配列番号3のVHCDR2、配列番号462のVHC
DR3、配列番号6のVLCDR1、配列番号7のVLCDR2および配列番号8のVL
CDR3、
(t)配列番号2のVHCDR1、配列番号3のVHCDR2、配列番号463のVHC
DR3、配列番号6のVLCDR1、配列番号7のVLCDR2および配列番号8のVL
CDR3、
(u)配列番号2のVHCDR1、配列番号3のVHCDR2、配列番号464のVHC
DR3、配列番号6のVLCDR1、配列番号7のVLCDR2および配列番号8のVL
CDR3、
(v)配列番号2のVHCDR1、配列番号465のVHCDR2、配列番号4のVHC
DR3、配列番号6のVLCDR1、配列番号7のVLCDR2および配列番号8のVL
CDR3、
(w)配列番号2のVHCDR1、配列番号465のVHCDR2、配列番号466のV
HCDR3、配列番号6のVLCDR1、配列番号7のVLCDR2および配列番号8の
VLCDR3、
(x)配列番号2のVHCDR1、配列番号465のVHCDR2、配列番号456のV
HCDR3、配列番号6のVLCDR1、配列番号7のVLCDR2および配列番号8の
VLCDR3、または
(y)配列番号2のVHCDR1、配列番号465のVHCDR2、配列番号40のVH
CDR3、配列番号6のVLCDR1、配列番号7のVLCDR2および配列番号8のV
LCDR3。
【請求項15】
CD3結合ドメインが、以下の(a)~(y)のいずれか1つに記載の抗CD3 sc
FvのVHおよびVLのセットを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のヘテロ二
量体抗体。
(a)配列番号216のVHおよび配列番号217のVL、
(b)配列番号10のVHおよび配列番号14のVL、
(c)配列番号19のVHおよび配列番号23のVL、
(d)配列番号28のVHおよび配列番号32のVL、
(e)配列番号37のVHおよび配列番号41のVL、
(f)配列番号46のVHおよび配列番号50のVL、
(g)配列番号224のVHおよび配列番号225のVL、
(h)配列番号232のVHおよび配列番号233のVL、
(i)配列番号248のVHおよび配列番号249のVL、
(j)配列番号252のVHおよび配列番号253のVL、
(k)配列番号256のVHおよび配列番号257のVL、
(l)配列番号260のVHおよび配列番号261のVL、
(m)配列番号264のVHおよび配列番号265のVL、
(n)配列番号268のVHおよび配列番号269のVL、
(o)配列番号272のVHおよび配列番号273のVL、
(p)配列番号276のVHおよび配列番号277のVL、
(q)配列番号280のVHおよび配列番号281のVL、
(r)配列番号284のVHおよび配列番号285のVL、
(s)配列番号288のVHおよび配列番号289のVL、
(t)配列番号292のVHおよび配列番号293のVL、
(u)配列番号296のVHおよび配列番号297のVL、
(v)配列番号300のVHおよび配列番号301のVL、
(w)配列番号304のVHおよび配列番号305のVL、
(x)配列番号308のVHおよび配列番号309のVL、または
(y)配列番号312のVHおよび配列番号313のVL。
【請求項16】
CD3結合ドメインが、配列番号216を含むVHおよび配列番号217を含むVLを
含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のヘテロ二量体抗体。
【請求項17】
CD3結合ドメインが、配列番号215を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載
のヘテロ二量体抗体。
【請求項18】
a)請求項2~17のいずれか一項に記載のヘテロ二量体抗体の第1の単量体をコード
する第1の核酸、
b)請求項2~17のいずれか一項に記載のヘテロ二量体抗体の第2の単量体をコード
する第2の核酸、および
c)請求項2~17のいずれか一項に記載のヘテロ二量体抗体の軽鎖をコードする第3
の核酸、
を含む組成物。
【請求項19】
a)請求項18に記載の組成物の第1の核酸を含む第1の発現ベクター、
b)請求項18に記載の組成物の第2の核酸を含む第2の発現ベクター、および
c)請求項18に記載の組成物の第3の核酸を含む第3の発現ベクター、
を含む組成物。
【請求項20】
a)請求項2~17のいずれか一項に記載のヘテロ二量体抗体の第1の単量体をコード
する第1の核酸、
b)請求項2~17のいずれか一項に記載のヘテロ二量体抗体の第2の単量体をコード
する第2の核酸、および
c)請求項2~17のいずれか一項に記載のヘテロ二量体抗体の軽鎖をコードする第3
の核酸、
を含む細胞。
【請求項21】
請求項18または19に記載の組成物を含む細胞。
【請求項22】
請求項1~17のいずれか一項に記載のヘテロ二量体抗体を発現する細胞。
【請求項23】
請求項1~17のいずれか一項に記載のヘテロ二量体抗体を作製する方法であって、請
求項20~22のいずれか一項に記載の細胞を培養すること、および、前記ヘテロ二量体
抗体を単離することを含む、方法。
【請求項24】
請求項1~17のいずれか一項に記載のヘテロ二量体抗体を含む医薬組成物。
【請求項25】
がんの治療のための、請求項1~17のいずれか一項に記載のヘテロ二量体抗体または
請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
造血器腫瘍の治療のための、請求項1~17のいずれか一項に記載のヘテロ二量体抗体
または請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項27】
B細胞リンパ腫および白血病、非ホジキンリンパ腫(NHL)、バーキットリンパ腫(
BL)、多発性骨髄腫(MM)、B慢性リンパ性白血病(B-CLL)、BおよびT急性
リンパ性白血病(ALL)、T細胞リンパ腫(TCL)、急性骨髄性白血病(AML)、
ヘアリー細胞白血病(HCL)、ホジキンリンパ腫(HL)、慢性リンパ性白血病(CL
L)、および慢性骨髄性白血病(CML)からなる群から選択されるがんの治療のための
、請求項1~17のいずれか一項に記載のヘテロ二量体抗体または請求項24に記載の医
薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、35U.S.C.§119(e)の下で、2014年11月26日に出願され
た米国仮特許出願第62/085,117号明細書、2014年11月26日に出願され
た米国仮特許出願第62/084,908号明細書、2014年11月26日に出願され
た米国仮特許出願第62/085,027号明細書、2014年11月26日に出願され
た米国仮特許出願第62/085,106号明細書、2015年5月8日に出願された米
国仮特許出願第62/159,111号明細書、2015年11月4日に出願された米国
仮特許出願第62/251,005号明細書および2015年11月4日に出願された米
国仮特許出願第62/250,971号明細書(これらのすべては、その中の図、説明文
および特許請求の範囲に関する特定の参照とともに、その全体が参照により本明細書中に
明示的に援用される)に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
抗体に基づく治療薬は、がんおよび自己免疫/炎症性障害を含む種々の疾患を治療する
のに用いられ、奏功している。しかし、このクラスの薬剤に対して、特にそれらの臨床有
効性を増強することについて、依然として改善が必要とされている。探索されつつある1
つの手段は、追加的かつ新規な抗原結合部位を、抗体に基づく薬剤に、単一の免疫グロブ
リン分子が2つの異なる抗原に共会合するように改変することである。2つの異なる抗原
に会合するかかる非天然のまたは代替的な抗体形式は、二重特異体(bispecifi
cs)と称されることが多い。抗体可変領域(Fv)の著しい多様性により、任意の分子
を実質的に認識するFvを作製することが可能になることから、二重特異体を作製するた
めの典型的な手法は、新規な可変領域の抗体への導入である。
【0003】
二重特異性を標的とした幾つかの代替的な抗体形式が探索されている(Chames&
Baty,2009,mAbs 1[6]:1-9;Holliger&Hudson,
2005,Nature Biotechnology 23[9]:1126-113
6;Kontermann,mAbs 4(2):182(2012)、それらのすべて
が参照により本明細書中に明示的に援用される)。当初、二重特異性抗体は、各々が単一
のモノクローナル抗体を産生する2つの細胞株を融合することによって作製された(Mi
lstein et al.,1983,Nature 305:537-540)。得
られたハイブリッドハイブリドーマまたはクアドローマが二重特異性抗体を確かに産生し
たが、それらは少数集団にすぎず、所望される抗体を単離するため、大規模精製が要求さ
れた。これに対する工学的な解決策は、二重特異体を作製するための抗体断片の使用であ
った。かかる断片には全長抗体の複雑な四次構造が欠けていることから、可変軽鎖および
可変重鎖は単一の遺伝的構築物中で連結可能である。二重特異性抗体、一本鎖二重特異性
抗体、タンデムscFv型、およびFab2二重特異体を含む多くの異なる形態の抗体断
片が作製されている(Chames&Baty,2009,mAbs 1[6]:1-9
;Holliger&Hudson,2005,Nature Biotechnolo
gy 23[9]:1126-1136;参照により本明細書中に明示的に援用される)
。これらの形式が細菌中で高レベルに発現でき、それらのサイズが小型であるため、好ま
しい浸透性の利点を有し得るが、それらはインビボで迅速に排除され、それらの産生およ
び安定性に関する作製上の障害を提示し得る。これらの欠点の主因は、抗体断片が典型的
に血清中での長い半減期を維持する(すなわち新生児Fc受容体FcRn)、または精製
用の結合部位として役立つ(すなわちプロテインAおよびプロテインG)ような大きめの
サイズ、高い安定性、ならびに様々なFc受容体およびリガンドへの結合性を含む、その
関連の機能的特性を有する抗体の定常領域が欠如していることである。
【0004】
より最近の研究では、二重結合を全長抗体様形式に改変することにより、断片に基づく
二重特異体の欠点に対処する試みがなされている(Wu et al.,2007,Na
ture Biotechnology 25[11]:1290-1297;米国特許
出願第12/477,711号明細書;Michaelson et al.,2009
,mAbs 1[2]:128-141;PCT/米国特許出願公開第2008/074
693号明細書;Zuo et al.,2000,Protein Engineer
ing 13[5]:361-367;米国特許出願第09/865,198号明細書;
Shen et al.,2006,J Biol Chem 281[16]:107
06-10714;Lu et al.,2005,J Biol Chem 280[
20]:19665-19672;PCT/米国特許出願公開第US2005/0254
72号明細書;参照により本明細書中に明示的に援用される)。これらの形式は、主にF
c領域を有することから、抗体断片の二重特異体の障害の一部を克服する。これらの形式
の1つの顕著な欠点は、ホモ二量体定常鎖の最上部に新しい抗原結合部位を構築すること
から、新たな抗原への結合が常に二価である点である。
【0005】
治療用の二重特異性形式における同時標的として興味深い多数の抗原では、所望される
結合は二価ではなく一価である。多くの免疫受容体では、細胞活性化は、一価結合相互作
用の架橋により達成される。架橋の機構は、典型的には、抗体/抗原免疫複合体により、
または標的細胞の会合に対するエフェクター細胞を介して媒介される。例えば、FcγR
IIa、FcγRIIb、およびFcγRIIIaなどの低親和性Fcガンマ受容体(F
cγR)は、抗体Fc領域に一価的に結合する。一価結合は、これらのFcγRを発現す
る細胞を活性化しないが、免疫複合体形成または細胞と細胞との接触に際して、受容体は
細胞表面上で架橋およびクラスター化され、活性化を引き起こす。細胞殺滅を媒介するこ
とに関与する受容体、例えばナチュラルキラー(NK)細胞上のFcγRIIIaの場合
、受容体架橋および細胞活性化は、エフェクター細胞が標的細胞を極めて活発な形式で会
合させる場合に生じる(Bowles&Weiner,2005,J Immunol
Methods 304:88-99、参照により明示的に援用される)。同様に、B細
胞上の阻害性受容体FcγRIIbは、細胞表面B細胞受容体(BCR)との免疫複合体
に会合する場合に限ってB細胞活性化を下方制御するが、これは可溶性IgGとBCRに
よって認識される同じ抗原との免疫複合体形成によって媒介される機構である(Heym
an 2003,Immunol Lett 88[2]:157-161;Smith
and Clatworthy,2010,Nature Reviews Immu
nology 10:328-343;参照により明示的に援用される)。別の例として
、T細胞のCD3活性化は、その関連のT細胞受容体(TCR)が極めて活発な細胞間シ
ナプスにおいて抗原提示細胞上の抗原が負荷されたMHCと会合する場合に限って生じる
(Kuhns et al.,2006,Immunity 24:133-139)。
当然ながら、抗CD3抗体を用いるCD3の非特異的二価架橋により、サイトカインスト
ームおよび毒性が誘発される(Perruche et al.,2009,J Imm
unol 183[2]:953-61;Chatenoud&Bluestone,2
007,Nature Reviews Immunology 7:622-632;
参照により明示的に援用される)。したがって、実用的な臨床用途では、再指示された標
的細胞の殺滅のためのCD3の共会合の好ましい様式は、共会合される標的との会合時に
限って活性化をもたらす一価結合である。
【0006】
サイクリックADPリボースヒドラーゼとしても公知のCD38は、長いC末端細胞外
ドメインおよび短いN末端細胞質ドメインを有するII型膜貫通糖タンパク質である。造
血細胞のなかで機能的効果の種別は、リンパ球増殖、サイトカイン放出、Bおよび骨髄系
細胞の発生および生存の制御、ならびに樹状細胞成熟の誘導を含む、CD38媒介性シグ
ナル伝達に帰されている。CD38は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、バーキットリン
パ腫(BL)、多発性骨髄腫(MM)、B慢性リンパ性白血病(B-CLL)、Bおよび
T急性リンパ性白血病(ALL)、T細胞リンパ腫(TCL)、急性骨髄性白血病(AM
L)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、ホジキンリンパ腫(HL)、および慢性骨髄性白
血病(CML)を含む、多数の造血器腫瘍中および様々な造血器腫瘍由来の細胞株中で制
御されない。他方、造血系の大部分の未分化多能性幹細胞は、CD38陰性である。抗が
ん剤の発見および開発における最近の進歩にもかかわらず、CD38発現腫瘍を含む多数
の形態のがんは依然として予後不良を有する。したがって、かかる形態のがんを治療する
ための改善された方法への需要がある。
【0007】
B細胞抗原CD19(CD19、B細胞表面抗原B4、Leu-12としても公知)は
、形質細胞への末端分化を通じてプレB細胞発生の初期段階から発現されるヒトpan-
B細胞表面マーカーである。CD19は、成熟B細胞の増殖および生存を促進する。それ
は細胞表面上でCD21との複合体中で会合する。それはまた、CD81およびLeu-
13と会合し、B細胞受容体(BCR)シグナル伝達を増強する。BCRとともに、CD
19は、B細胞のクローン増殖および体液性免疫にとって重要な固有の抗原受容体誘導性
シグナル伝達閾値を調節する。CD21と共同して、それは適応免疫系と自然免疫系を関
連付ける。活性化時、CD19の細胞質側末端は、リン酸化されるに至り、Src-ファ
ミリーキナーゼによる結合およびPI-3キナーゼの動員をもたらす。それは、大多数の
NHL細胞および一部の白血病においても発現されることから、リンパ系由来のがんに対
する興味深い免疫療法の標的である。
【0008】
CD19を標的化する幾つかの抗体または抗体複合体は、がんの治療に対する前臨床試
験または臨床試験において評価されている。これらの抗CD19抗体または抗体複合体と
しては、限定はされないが、MT-103(一本鎖二重特異性CD19/CD3抗体;H
offman et al,2005 Int J Cancer 115:98-10
4;Schlereth et al,2006 Cancer Immunol Im
munother 55:503-514)、CD19/CD16二重特異性抗体(Sc
hlenzka et al,2004 Anti-cancer Drugs 15:
915-919;Kipriyanov et al,2002 J Immunol
169:137-144)、BU12-サポリン(Flavell et al,199
5 Br J Cancer 72:1373-1379)、および抗CD19-イダル
ビシン(Rowland et al,1993 Cancer Immunol Im
munother 55:503-514)(すべてが参照により明示的に援用される)
が挙げられる。
【0009】
CD123(インターロイキン-3受容体α(IL-3Rα)としても公知)は、樹状
細胞、単球、好酸球および好塩基球で発現される。CD123はまた、関与する造血幹細
胞/前駆細胞により、大部分の骨髄系譜(CD13+、CD14+、CD33+、CD1
5low)により、また一部のCD19+細胞により構成的に発現される。それはCD3
+細胞に不在である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、抗体断片から作製される二重特異体が生物物理学的かつ薬物動態的な障壁
の影響を受ける一方、全長抗体様形式で構築されるものの欠点は、それらが一次標的抗原
の不在下で同時標的抗原に多価的に会合することで、非特異的活性化と潜在的に毒性とを
もたらす点である。本発明は、CD3およびCD38に特異的な新規な二重特異性抗体を
導入することにより、この課題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、一態様では、本発明は、a)第1の単量体であって、i)第1の重鎖であ
って、1)第1の可変重鎖ドメイン;2)第1のFcドメインを含む第1の定常重鎖;3
)scFv可変軽鎖ドメイン、scFvリンカーおよびscFv可変重鎖ドメインを含み
、ドメインリンカーを用いて前記FcドメインのC末端に共有結合されたscFvを含む
第1の重鎖を含む第1の単量体と;b)第2の可変重鎖ドメイン、および第2のFcドメ
インを含む第2の定常重鎖を含む、第2の重鎖を含む第2の単量体と;c)可変軽鎖ドメ
インおよび定常軽鎖ドメインを含む共通軽鎖とを含む、ヘテロ二量体抗体を提供する。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、a)第1の単量体であって、i)第1の重鎖であって、
1)第1の可変重鎖ドメイン;2)第1のFcドメインを含む第1の定常重鎖ドメイン;
および3)ドメインリンカーを用いて前記第1のFcドメインのC末端に共有結合された
第1の可変軽鎖ドメインを含む第1の重鎖を含む第1の単量体と;b)第2の単量体であ
って、i)第2の可変重鎖ドメイン;ii)第2のFcドメインを含む第2の定常重鎖ド
メイン;およびiii)前記第2の可変重鎖ドメインがドメインリンカーを用いて前記第
2のFcドメインのC末端に共有結合されている、第3の可変重鎖ドメインを含む第2の
単量体と;c)可変軽鎖ドメインおよび定常軽鎖ドメインを含む共通軽鎖とを含む、ヘテ
ロ二量体抗体を提供する。
【0013】
さらなる態様では、本発明は、a)第1の単量体であって、i)第1の重鎖であって、
1)第1の可変重鎖ドメイン;2)第1のCH1ドメインおよび第1のFcドメインを含
む第1の定常重鎖;3)scFv可変軽鎖ドメイン、scFvリンカーおよびscFv可
変重鎖ドメインを含み、ドメインリンカーを用いて前記CH1ドメインのC末端と前記第
1のFcドメインのN末端との間で共有結合されたscFvを含む第1の重鎖を含む第1
の単量体と;b)第2の可変重鎖ドメイン、および第2のFcドメインを含む第2の定常
重鎖を含む、第2の重鎖を含む第2の単量体と;c)可変軽鎖ドメインおよび定常軽鎖ド
メインを含む共通軽鎖とを含む、ヘテロ二量体抗体を提供する。
【0014】
さらなる態様では、本発明は、a)第1の単量体であって、i)第1の重鎖であって、
1)第1の可変重鎖ドメイン;2)第1のFcドメインを含む第1の定常重鎖ドメイン;
および3)前記第2の可変軽鎖ドメインがドメインリンカーを用いて前記第1の定常重鎖
ドメインのCH1ドメインのC末端と前記第1のFcドメインのN末端との間で共有結合
されている、第1の可変軽鎖ドメインを含む第1の重鎖を含む第1の単量体と;b)第2
の単量体であって、i)第2の可変重鎖ドメイン;ii)第2のFcドメインを含む第2
の定常重鎖ドメイン;およびiii)前記第2の可変重鎖ドメインがドメインリンカーを
用いて前記第2のFcドメインのC末端に共有結合されている、第3の可変重鎖ドメイン
を含む第2の単量体と;c)可変軽鎖ドメインおよび定常軽鎖ドメインを含む共通軽鎖と
を含む、ヘテロ二量体抗体を提供する。
【0015】
さらなる態様では、本発明は、a)第1の単量体であって、i)第1の重鎖であって、
1)第1の可変重鎖ドメイン;2)第1のCH1ドメインおよび第1のFcドメインを含
む第1の定常重鎖;3)scFv可変軽鎖ドメイン、scFvリンカーおよびscFv可
変重鎖ドメインを含み、ドメインリンカーを用いて前記CH1ドメインのC末端と前記第
1のFcドメインのN末端との間で共有結合されたscFvを含む第1の重鎖を含む第1
の単量体と;b)第2のFcドメインを含む第2の単量体と;c)可変軽鎖ドメインおよ
び定常軽鎖ドメインを含む軽鎖とを含む、ヘテロ二量体抗体を提供する。
【0016】
一部の態様では、第1および第2のFcドメインは、S364K/E357Q:L36
8D/K370S;L368D/K370S:S364K;L368E/K370S:S
364K;T411T/E360E/Q362E:D401K;L368D/K370S
:S364K/E357LおよびK370S:S364K/E357Qからなる群から選
択されるアミノ酸置換のセットを有する。さらに、可変重鎖ドメインおよび可変軽鎖ドメ
インは第1の標的腫瘍抗原(TTA)に結合し、scFvは第2のTTAまたはヒトCD
3に結合する。一部の実施形態では、TTAは、CD19、CD20およびCD123か
らなる群から選択される。
【0017】
さらなる態様では、本発明は、H1.32_L1.47、H1.89_L1.47、H
1.90_L1.47、H1.33_L.1.47およびH1.31_L1.47につい
て図面で示されるCDRおよび/または可変ドメインおよび/またはscFv配列を有す
る抗CD3抗原結合ドメインを提供する。本発明はまた、核酸組成物、発現ベクター組成
物および宿主細胞を提供する。
【0018】
さらなる態様では、本発明は、a)第1の単量体であって、i)第1のFcドメイン;
ii)scFv可変軽鎖ドメイン、scFvリンカーおよびscFv可変重鎖ドメインを
含み、ドメインリンカーを用いて前記FcドメインのN末端に共有結合された抗CD3
scFvを含む第1の単量体と;b)第2の単量体であって、i)重可変ドメイン;およ
びii)第2のFcドメインを含む重鎖定常ドメインを含む重鎖を含む第2の単量体と;
c)可変軽鎖ドメインおよび可変軽定常ドメインを含む軽鎖とを含み、抗CD3 scF
vは、抗CD H1.32_L1.47、抗CD3 H1.89_L1.47、抗CD3
H1.90_L1.47および抗CD3 H1.33_L1.47(配列番号XX)か
らなる群から選択される、ヘテロ二量体抗体を提供する。重可変ドメインおよび軽可変ド
メインは、TTA(限定はされないが、CD19、CD20、CD38およびCD123
を含む)に結合する。
【0019】
さらなる態様では、本発明は、a)配列RASWSVSYIH(配列番号XX)を有す
るvlCDR1、配列ATSNLAS(配列番号XX)を有するvlCDR2、および配
列QQWTHNPPT(配列番号XX)を有するvlCDR3を含む可変軽鎖ドメインと
;b)配列SYNMH(配列番号XX)を有するvhCDR1、配列AIYPGNGAT
SYSQKFQG(配列番号XX)を有するvhCDR2、および配列SYYMGGDW
YFDV(配列番号XX)を有するvhCDR3を含む可変重鎖ドメインとを含む抗CD
20抗体結合ドメインを提供する。一部の実施形態では、抗CD20抗体結合ドメインは
C2B8 H1.202_L1.113配列を有する。
【0020】
さらなる態様では、本発明は、a)配列RASSSVSYIH(配列番号XX)を有す
るvlCDR1、配列ATSNLAS(配列番号XX)を有するvlCDR2、および配
列QQWTSNPPT(配列番号XX)を有するvlCDR3を含む可変軽鎖ドメインと
;b)配列SYNMH(配列番号XX)を有するvhCDR1、配列AIYPGNGDT
SYNQKFQG(配列番号XX)を有するvhCDR2、および配列STYYGGDW
YFNV(配列番号XX)を有するvhCDR3を含む可変重鎖ドメインとを含む抗CD
20抗体結合ドメインを提供する。
【0021】
一部の実施形態では、抗CD20抗体結合ドメインはC2B8_H1L1配列を有する
【0022】
さらなる態様では、本発明は、a)第1の単量体であって、i)第1のFcドメイン;
ii)scFv可変軽鎖ドメイン、scFvリンカーおよびscFv可変重鎖ドメインを
含み、ドメインリンカーを用いて前記FcドメインのN末端に共有結合された抗CD3
scFvを含む第1の単量体と;b)第2の単量体であって、i)重可変ドメイン;およ
びii)第2のFcドメインを含む重鎖定常ドメインを含む重鎖を含む第2の単量体と;
c)可変軽鎖ドメインおよび可変軽定常ドメインを含む軽鎖とを含み、可変重鎖および軽
鎖は、C2B8 H1.202_L1.113またはC2B8_H1L1結合ドメインを
形成する、ヘテロ二量体抗体を提供する。
【0023】
さらなる態様では、本発明は、a)第1の単量体であって、i)第1のFcドメイン;
ii)scFv可変軽鎖ドメイン、scFvリンカーおよびscFv可変重鎖ドメインを
含み、ドメインリンカーを用いて前記FcドメインのN末端に共有結合された抗CD3
scFvを含む第1の単量体と;b)第2の単量体であって、i)重可変ドメイン;およ
びii)第2のFcドメインを含む重鎖定常ドメインを含む重鎖を含む第2の単量体と;
c)可変軽鎖ドメインおよび可変軽定常ドメインを含む軽鎖とを含む、ヘテロ二量体抗体
を提供する。この実施形態では、可変ドメインはCD123に結合し、7G3_H1.1
09_L1.47の配列を有し得る。
【0024】
さらなる態様では、本発明は、XENP15049、XENP15051;XENP1
5050、XENP13676、XENP14696、XENP15629、XENP1
5053、XENP15630、XENP15631、XENP15632、XENP1
5633、XENP15634、XENP15635、XENP15636、XENP1
5638、XENP15639、XENP13677、XENP14388、XENP1
4389、XENP14390、XENP14391、XENP14392、XENP1
4393、XENP16366、XENP16367、XENP16368、XENP1
6369、XENP16370、XENP16371、XENP16372、XENP1
6373、XENP16375、XENP16376およびXENP16377からなる
群から選択されるヘテロ二量体抗体を提供する。核酸、発現ベクターおよび宿主細胞はす
べて、これらのタンパク質を作製し、それらを有する患者を治療する方法に加えて同様に
提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】本発明の幾つかの形式を表す。「ボトルオープナー」形式の2つの形態、すなわちscFvを含む抗CD3抗原結合ドメインおよびFabを含む抗TTA抗原結合ドメインを有するものと、これらを逆にして有するものとが表される。mAb-Fv、mAb-scFv、Central-scFvおよびCentral-Fv形式がすべて表される。さらに、1つの単量体が単にFcドメインを含む場合の「単一アーム」形式、すなわち単一アームCentral-scFvおよび単一アームCentral-Fvの両方が示される。二重scFv形式も示される。
図1B】本発明の幾つかの形式を表す。「ボトルオープナー」形式の2つの形態、すなわちscFvを含む抗CD3抗原結合ドメインおよびFabを含む抗TTA抗原結合ドメインを有するものと、これらを逆にして有するものとが表される。mAb-Fv、mAb-scFv、Central-scFvおよびCentral-Fv形式がすべて表される。さらに、1つの単量体が単にFcドメインを含む場合の「単一アーム」形式、すなわち単一アームCentral-scFvおよび単一アームCentral-Fvの両方が示される。二重scFv形式も示される。
図1C】同上
図2】可変重および可変軽鎖ドメイン(CDRに下線)、ならびに個別のvlCDRおよびvhCDR、ならびに荷電リンカー(二重下線)を有するscFv構築物を含む、「High CD3」抗CD3_H1.30_L1.47構築物の配列を表す。この荷電リンカーは、図面に表されるすべての配列に当てはまるように、必要に応じて非荷電リンカーまたは異なる荷電リンカーと交換してもよい。
図3】可変重および可変軽鎖ドメイン(CDRに下線)、ならびに個別のvlCDRおよびvhCDR、ならびに荷電リンカー(二重下線)を有するscFv構築物を含む、「High-Int#1」抗CD3_H1.32_L1.47構築物の配列を表す。この荷電リンカーは、図面に表されるすべての配列に当てはまるように、必要に応じて非荷電リンカーまたは異なる荷電リンカーと交換してもよい。
図4】可変重および可変軽鎖ドメイン(CDRに下線)、ならびに個別のvlCDRおよびvhCDR、ならびに荷電リンカー(二重下線)を有するscFv構築物を含む、「High-Int#2」抗CD3_H1.89_L1.47構築物の配列を表す。この荷電リンカーは、図面に表されるすべての配列に当てはまるように、必要に応じて非荷電リンカーまたは異なる荷電リンカーと交換してもよい。
図5】可変重および可変軽鎖ドメイン(CDRに下線)、ならびに個別のvlCDRおよびvhCDR、ならびに荷電リンカー(二重下線)を有するscFv構築物を含む、「High-Int#3」抗CD3_H1.90_L1.47構築物の配列を表す。この荷電リンカーは、図面に表されるすべての配列に当てはまるように、必要に応じて非荷電リンカーまたは異なる荷電リンカーと交換してもよい。
図6】可変重および可変軽鎖ドメイン(CDRに下線)、ならびに個別のvlCDRおよびvhCDR、ならびに荷電リンカー(二重下線)を有するscFv構築物を含む、「Int」抗CD3_H1.90_L1.47構築物の配列を表す。この荷電リンカーは、図面に表されるすべての配列に当てはまるように、必要に応じて非荷電リンカーまたは異なる荷電リンカーと交換してもよい。
図7】可変重および可変軽鎖ドメイン(CDRに下線)、ならびに個別のvlCDRおよびvhCDR、ならびに荷電リンカー(二重下線)を有するscFv構築物を含む、「Low」抗CD3_H1.31_L1.47構築物の配列を表す。この荷電リンカーは、図面に表されるすべての配列に当てはまるように、必要に応じて非荷電リンカーまたは異なる荷電リンカーと交換してもよい。
図8】可変重および可変軽鎖ドメイン(CDRに下線)、ならびに個別のvlCDRおよびvhCDR、ならびに荷電リンカー(二重下線)を有するscFv構築物を含む、High CD38:OKT10_H1.77_L1.24構築物の配列を表す。
図9】可変重および可変軽鎖ドメイン(CDRに下線)、ならびに個別のvlCDRおよびvhCDR、ならびに荷電リンカー(二重下線)を有するscFv構築物を含む、intermediate CD38:OKT10_H1L1.24構築物の配列を表す。
図10】可変重および可変軽鎖ドメイン(CDRに下線)、ならびに個別のvlCDRおよびvhCDR、ならびに荷電リンカー(二重下線)を有するscFv構築物を含む、Low CD38:OKT10_H1L1構築物の配列を表す。
図11】XENP15331の配列を表す。
図12】XENP13243の配列を表す。
図13】XENP14702の配列を表す。
図14】XENP15426の配列を表す。
図15】XENP14701の配列を表す。
図16】XENP14703の配列を表す。
図17】XENP13243の配列を表す。
図18】XENP18967の配列を表す。
図19】XENP18971の配列を表す。
図20】XENP18969の配列を表す。
図21】XENP18970の配列を表す。
図22】XENP18972の配列を表す。
図23】XENP18973の配列を表す。
図24】XENP15055の配列を表す。
図25】XENP13544の配列を表す。
図26】XENP13694の配列を表す。
図27】ヒトCD3εの配列を表す。
図28】ヒトCD38タンパク質の全長(配列番号130)および細胞外ドメイン(ECD;配列番号131)を表す。
図29A】(歪曲(skew)およびpI変異体を含む)ヘテロ二量体化変異体セットの有用な対を表す。
図29B】(歪曲およびpI変異体を含む)ヘテロ二量体化変異体セットの有用な対を表す。
図29C】(歪曲およびpI変異体を含む)ヘテロ二量体化変異体セットの有用な対を表す。
図29D】(歪曲およびpI変異体を含む)ヘテロ二量体化変異体セットの有用な対を表す。
図29E】(歪曲およびpI変異体を含む)ヘテロ二量体化変異体セットの有用な対を表す。
図30】同種立体変異体抗体の定常領域およびそれら各々の置換のリストを表す。pI_(-)はより低いpI変異体を示す一方、pI_(+)はより高いpI変異体を示す。これらは、任意選択的かつ独立的に本発明の他のヘテロ二量体化変異体(および同様に本明細書で概説されるような他の変異体型)と結合され得る。
図31】FcγR結合を切断する有用な切断変異体(「ノックアウト」または「KO」変異体と称される場合がある)を表す。
図32】本発明の2つの特に有用な実施形態を示す。
図33A】成分として1つ以上のscFvを利用するヘテロ二量体抗体のpIを増加または低下させる場合に用途が見出される幾つかの荷電scFvリンカーを表す。単一電荷を有する単一の先行技術のscFvリンカーは、Whitlow et al.,Protein Engineering 6(8):989-995(1993)から「Whitlow」として参照される。このリンカーがscFvにおける凝集を低減し、タンパク質分解安定性を増強するために用いられたことは注目されるべきである。
図33B】同上
図34】ヘテロ二量体収率(HPLC-CIEXにより測定)および熱安定性(DSCにより測定)とともに改変されたヘテロ二量体歪曲Fc変異体のリストを表す。測定されなかった熱安定性は「n.d.」で表示される。
図35】プロテインAアフィニティー精製後の二重特異体の発現収率である。
図36】陽イオン交換精製クロマトグラムである。
図37】再誘導されたT細胞細胞傷害性アッセイ(24時間のインキュベーション、10kのRPMI8226細胞、400kのT細胞)である。被験物は抗CD38×抗CD3二重特異体である。LDHにより検出がなされた。
図38】再誘導されたT細胞細胞傷害性アッセイ(24時間のインキュベーション、10kのRPMI8226細胞、500kのヒトPBMC)である。被験物は抗CD38×抗CD3二重特異体である。LDHにより検出がなされた。
図39】XENP14419の配列を表す。
図40】XENP14420の配列を表す。
図41】XENP14421の配列を表す。
図42】XENP14422の配列を表す。
図43】XENP14423の配列を表す。
図44】再誘導されたT細胞細胞傷害性アッセイ(96時間のインキュベーション、40kのRPMI8226細胞、400kのヒトPBMC)である。被験物は抗CD38×抗CD3 Fab-scFv-Fcである。フローサイトメトリー、具体的にはCD38+細胞の消失により検出がなされた。
図45図1に記載される再誘導されたT細胞細胞傷害性アッセイのさらなる分析である。1行目は、フローサイトメトリーにより検出された、CD4+およびCD8+T細胞に対する活性化マーカーCD69の平均蛍光強度(MFI)を示す。2行目は、細胞増殖の尺度としての、Ki-67+であるCD4+およびCD8+T細胞の百分率を示す。3行目は、フローサイトメトリーにより検出された、CD4+およびCD8+T細胞に対するグランザイムB阻害剤PI-9の細胞内平均蛍光強度(MFI)を示す。
図46】抗CD38×抗CD3 Fab-scFv-Fc二重特異体の抗腫瘍活性を検討するためのマウス試験の設計である。
図47】時間および処理の関数としてのIVIS(登録商標)によって測定された腫瘍サイズである。
図48】IVIS(登録商標)生物発光画像(10日目)である。
図49】カニクイザルにおける表示される被験物の単回投与後のCD38+細胞の枯渇である。
図50】カニクイザルにおけるCD69の平均蛍光強度(MFI)によって測定されたT細胞活性化(図49のように色分けしている)である。
図51】表示される被験物の単回投与後のIL-6の血清レベルである。
図52】XENP15427の配列を表す。
図53】XENP15428の配列を表す。
図54】XENP15429の配列を表す。
図55】XENP15430の配列を表す。
図56】XENP15431の配列を表す。
図57】XENP15432の配列を表す。
図58】XENP15433の配列を表す。
図59】XENP15434の配列を表す。
図60】XENP15435の配列を表す。
図61】XENP15436の配列を表す。
図62】XENP15437の配列を表す。
図63】XENP15438の配列を表す。
図64】ビアコアアッセイにおける結合親和性を示す。
図65】変動する軽鎖、Fab-Fc、およびscFv-Fc比を用いて安定なプールを作製する間でのヘテロ二量体の純度を示す。
図66】huPBMCマウスモデルにおける抗CD38×抗CD3二重特異体によるヒトIgMおよびIgG2の枯渇である。
図67A】安定性が最適化されたヒト化抗CD3変異体scFvを表す。置換は、H1_L1.4 scFv配列に対して与えられる。アミノ酸付番はKabat付番である。
図67B】同上
図68A】安定性が最適化されたヒト化抗CD3変異体scFvのアミノ酸配列である。CDRに下線が引かれる。各重鎖/軽鎖の組み合わせについては、4つの配列:(i)C末端6xHisタグを有するscFv、(ii)scFv単独、(iii)VH単独、(iv)VL単独が列挙される。
図68B】同上
図68C】同上
図68D】同上
図68E】同上
図68F】同上
図68G】同上
図68H】同上
図68I】同上
図68J】同上
図68K】同上
図68L】同上
図68M】同上
図68N】同上
図68O】同上
図68P】同上
図68Q】同上
図68R】同上
図68S】同上
図68T】同上
図68U】同上
図68V】同上
図68W】同上
図68X】同上
図68Y】同上
図68Z】同上
図69】再誘導されたT細胞細胞傷害性アッセイ(24時間のインキュベーション、10kのRPMI8226細胞、500kのPBMC)である。被験物は、抗CD38(OKT10_H1L1、OKT10_H1.77_L1.24)×抗CD3 Fab-scFv-Fcである。LDHにより検出がなされた。
図70】huPBL-SCID Ig枯渇試験である。被験物は、PBMCの移植後8日目に0.03、0.3、もしくは3mg/kgで投与された。投与経路は腹腔内であった。血液試料は、PBMCの移植後14日目に採取され、血清に加工され、ヒトIgMおよびIgG2についてアッセイされた。
図71】XENP15049の配列を表す。
図72】XENP15051の配列を表す。
図73】XENP15050の配列を表す。
図74】XENP13676の配列を表す。
図75】XENP14696の配列を表す。
図76】XENP15629の配列を表す。
図77】XENP15053の配列を表す。
図78】XENP15630の配列を表す。
図79】XENP15631の配列を表す。
図80】XENP15632の配列を表す。
図81】XENP15633の配列を表す。
図82】XENP15634の配列を表す。
図83】XENP15635の配列を表す。
図84】XENP15636の配列を表す。
図85】XENP15638の配列を表す。
図86】XENP15639の配列を表す。
図87】XENP13677の配列を表す。
図88】XENP14388の配列を表す。
図89】XENP14389の配列を表す。
図90】XENP14390の配列を表す。
図91】XENP14391の配列を表す。
図92】XENP14392の配列を表す。
図93】XENP14393の配列を表す。
図94】XENP16366の配列を表す。
図95】XENP16367の配列を表す。
図96】XENP16368の配列を表す。
図97】XENP16369の配列を表す。
図98】XENP16370の配列を表す。
図99】XENP16371の配列を表す。
図100】XENP16372の配列を表す。
図101】XENP16373の配列を表す。
図102】XENP16374の配列を表す。
図103】XENP16375の配列を表す。
図104】XENP16376の配列を表す。
図105】XENP16377の配列を表す。
図106】CD20およびCD123抗原の配列を表す。
図107】CD3親和性の表面プラズモン共鳴測定である。被験物は、抗CD20(C2B8_H1.202_L1.113)×抗CD3 Fab-scFv-Fcである。ヒトCD3δε-Fc(Sino Biological)はチップ表面に共有結合された。被験物は、3.125、12.5、50、および200nMで通過させた。
図108】CD3親和性の表面プラズモン共鳴測定である。被験物は、抗CD20(C2B8_H1.202_L1.113)×抗CD3 Fab-scFv-Fcである。カニクイザルCD3δε-Fc(Sino Biological)はチップ表面に共有結合された。被験物は、3.125、12.5、50、および200nMで通過させた。
図109】CD3親和性の表面プラズモン共鳴測定である。被験物は、抗CD20(C2B8_H1.202_L1.113)×抗CD3 Fab-scFv-Fcである。ヒトCD3δε-Fc(Sino Biological)はチップ表面に共有結合された。被験物は、31.25、125、500、および2000nMで通過させた。
図110】CD3親和性の表面プラズモン共鳴測定である。被験物は、抗CD20(C2B8_H1.202_L1.113)×抗CD3 Fab-scFv-Fcである。カニクイザルCD3δε-Fc(Sino Biological)はチップ表面に共有結合された。被験物は、31.25、125、500、および2000nMで通過させた。
図111】CD3親和性の表面プラズモン共鳴測定である。被験物は、抗CD20(C2B8_H1.202_L1.113)×抗CD3 Fab-scFv-Fcである。カニクイザルCD3δε-Fc(Sino Biological)はチップ表面に共有結合された。被験物は、31.25、125、500、および2000nMで通過させた。
図112】再誘導されたT細胞細胞傷害性アッセイ(24時間のインキュベーション、10kのRamos細胞、250kのPBMC)である。被験物は、抗CD20(C2B8_H1.202_L1.113)×抗CD3 Fab-scFv-Fcである。LDHにより検出がなされた。
図113】再誘導されたT細胞細胞傷害性アッセイ(24時間のインキュベーション、20kのJeko細胞、200kのPBMC(CD19が枯渇))である。被験物は、抗CD20(C2B8_H1.202_L1.113)×抗CD3 Fab-scFv-Fcである。フローサイトメトリー、具体的にはCD19+細胞の消失により検出がなされた。
図114図113に記載の実験における24時間後のIL-6産生である。
図115A】再誘導されたT細胞細胞傷害性アッセイ(5時間のインキュベーション、20kのJeko細胞、500kのPBMC(CD19が枯渇))である。被験物は、抗CD20(C2B8_H1L1)×抗CD3 Fab-scFv-Fcである。フローサイトメトリー、具体的にはCD19+細胞の消失により検出がなされた。
図115B】同上
図116A】再誘導されたT細胞細胞傷害性アッセイ(24時間のインキュベーション、20kのJeko細胞、500kのPBMC(CD19が枯渇))である。被験物は、抗CD20(C2B8_H1.202_L1.113)×抗CD3 Fab-scFv-Fcである。フローサイトメトリー、具体的にはCD19+細胞の消失により検出がなされた。
図116B】同上
図117図113に記載の実験における24時間後のIL-6産生である。
図118】再誘導されたT細胞細胞傷害性アッセイ(24時間のインキュベーション、10kのRPMI8226細胞、500kのPBMC)である。被験物は、抗CD38(OKT10_H1L1、OKT10_H1.77_L1.24)×抗CD3 Fab-scFv-Fcである。LDHにより検出がなされた。
図119】huPBL-SCID Ig枯渇試験である。被験物は、PBMCの移植後1日目および8日目に5mg/kgで投与された。投与経路は腹腔内であった。血液試料は、PBMCの移植後14日目に採取され、血清に加工され、ヒトIgMおよびIgG2についてアッセイされた。
図120】huPBL-SCID Ig枯渇試験である。被験物は、PBMCの移植後8日目に0.03、0.3、もしくは3mg/kgで投与された。投与経路は腹腔内であった。血液試料は、PBMCの移植後14日目に採取され、血清に加工され、ヒトIgMおよびIgG2についてアッセイされた。
図121】High CD20 C2B8_H1.202_L1.113の配列を表す。
図122】Low CD20 C2B8_H1L1の配列を表す。
図123】CD123 7G3_H1.109_L1.57の配列を表す。
図124】本発明における可能な組み合わせのマトリックスを示す。「A」は、参照されるCD3配列のCDRが右側のTTAのCDRと組み合わされ得ることを意味する。すなわち、可変重鎖CD3 H1.30配列からのvhCDRおよびCD3 L1.57配列の可変軽鎖からのvlCDRは、CD38 OKT10 H1.77配列からのvhCDRおよびOKT10L1.24配列からのvlCDRと組み合わされ得る。「B」は、CD3構築物からのCDRがTTAからの可変重および可変軽鎖ドメインと組み合わされ得ることを意味する。すなわち、可変重鎖CD3 H1.30配列からのvhCDRおよびCD3 L1.57配列の可変軽鎖からのvlCDRは、可変重鎖ドメインCD38 OKT10 H1.77配列およびOKT10L1.24配列と組み合わされ得る。「C」を逆にすることで、CD3配列からの可変重鎖ドメインおよび可変軽鎖ドメインがTTAのCDRとともに用いられる。「D」は、各々からの可変重鎖および可変軽鎖の両方が組み合わされる場合である。「E」は、CD3のscFvがTTAのCDRとともに用いられる場合であり、また「F」は、CD3のscFvがTTA抗原結合ドメインの可変重および可変軽鎖ドメインとともに用いられる場合である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
I.定義
本願がより十分に理解され得るように、幾つかの定義が以下に示される。かかる定義は
、文法的均等物を包含することが意図される。
【0027】
本明細書中の「切断」は、活性の低下または除去を意味する。したがって、例えば「F
cγR結合を切断する」は、Fc領域のアミノ酸変異体が特定の変異体を有しないFc領
域と比べて50%低い開始結合を有することを意味するが、70~80~90~95~9
8%より低い活性低下が好ましく、また一般的に活性はビアコアアッセイにおける検出可
能な結合レベルを下回る。FcγR結合の切断における特定用途は、図16に示されるも
のである。
【0028】
「ADCC」または「抗体依存性細胞傷害」は、本明細書で用いられるとき、FcγR
を発現する非特異的細胞傷害性細胞が標的細胞上の結合抗体を認識し、続いて標的細胞の
溶解を引き起こす細胞媒介性反応を意味する。ADCCはFcγRIIIaへの結合と相
関し、FcγRIIIaへの結合の増加はADCC活性の増加をもたらす。
【0029】
「ADCP」または抗体依存性細胞食作用は、本明細書で用いられるとき、FcγRを
発現する非特異的細胞傷害性細胞が標的細胞上の結合抗体を認識し、続いて標的細胞の食
作用を引き起こす細胞媒介性反応を意味する。
【0030】
本明細書中の「修飾」は、ポリペプチド配列内のアミノ酸置換、挿入、および/もしく
は欠失またはタンパク質に化学的に連結された部分に対する改変を意味する。例えば、修
飾は、改変された炭水化物またはタンパク質に付着されたPEG構造であってもよい。本
明細書中の「アミノ酸修飾」は、ポリペプチド配列内のアミノ酸置換、挿入、および/ま
たは欠失を意味する。明確にするため、特に断りのない限り、アミノ酸修飾は常に、DN
Aによってコードされるアミノ酸、例えばDNAおよびRNA中にコドンを有する20の
アミノ酸を対象とする。
【0031】
本明細書中の「アミノ酸置換」または「置換」は、親ポリペプチド配列内の特定の位置
にあるアミノ酸を異なるアミノ酸で置き換えることを意味する。特に、一部の実施形態で
は、置換は、特定の位置に天然に存在しない、その生物または任意の生物のいずれにも天
然に存在しないアミノ酸を対象とする。例えば、置換E272Yは、272位のグルタミ
ン酸がチロシンと置き換えられた変異体ポリペプチド、この場合にはFc変異体を指す。
明確にするため、核酸コード配列を変化させても開始アミノ酸を変化させない(例えば、
宿主生物の発現レベルを高めるため、CGG(アルギニンをコードする)をCGA(やは
りアルギニンをコードする)と交換する)ように設計されているタンパク質は、「アミノ
酸置換」ではない、すなわち、同じタンパク質をコードする新たな遺伝子の創出にもかか
わらず、タンパク質が、それが開始する特定の位置に同じアミノ酸を有する場合、それは
アミノ酸置換ではない。
【0032】
「アミノ酸挿入」または「挿入」は、本明細書で用いられるとき、親ポリペプチド配列
内の特定の位置でのアミノ酸配列の付加を意味する。例えば、-233Eまたは233E
は、233位の後および234位の前でのグルタミン酸の挿入を指す。加えて、-233
ADEまたはA233ADEは、233位の後および234位の前でのAlaAspGl
uの挿入を指す。
【0033】
「アミノ酸欠失」または「欠失」は、本明細書で用いられるとき、親ポリペプチド配列
内の特定の位置でのアミノ酸配列の除去を意味する。例えば、E233-またはE233
#またはE233()は、位置233でのグルタミン酸の欠失を指す。加えて、EDA2
33-またはEDA233#は、位置233で開始する配列GluAspAlaの欠失を
指す。
【0034】
「変異体タンパク質」または「タンパク質変異体」、または「変異体」は、本明細書で
用いられるとき、少なくとも1つのアミノ酸修飾のために親タンパク質と異なるタンパク
質を意味する。タンパク質変異体は、タンパク質自体、タンパク質を含む組成物、または
それをコードするアミノ配列を指し得る。好ましくは、タンパク質変異体は、親タンパク
質と比べて少なくとも1つのアミノ酸修飾、例えば親タンパク質と比べて、約1~約70
のアミノ酸修飾、また好ましくは約1~約5つのアミノ酸修飾を有する。下記のように、
一部の実施形態では、親ポリペプチド、例えばFc親ポリペプチドは、ヒト野生型配列、
例えばIgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4由来のFc領域であるが、変異体
を有するヒト配列、例えば図19のIgG1/2ハイブリッドは、「親ポリペプチド」と
しても役立ち得る。本明細書中のタンパク質変異体配列は、親タンパク質配列と、好まし
くは少なくとも約80%の同一性、また最も好ましくは少なくとも約90%の同一性、よ
り好ましくは少なくとも約95~98~99%の同一性を有することになる。変異体タン
パク質は、変異体タンパク質自体、タンパク質変異体を含む組成物、またはそれをコード
するDNA配列を指し得る。したがって、「抗体変異体」または「変異体抗体」は、本明
細書で用いられるとき、少なくとも1つのアミノ酸修飾のために親抗体と異なる抗体を意
味し、「IgG変異体」または「変異体IgG」は、本明細書で用いられるとき、少なく
とも1つのアミノ酸修飾のために親IgG(再び多くの場合、ヒトIgG配列由来)と異
なる抗体を意味し、また「免疫グロブリン変異体」または「変異体免疫グロブリン」は、
本明細書で用いられるとき、少なくとも1つのアミノ酸修飾のために親免疫グロブリン配
列の場合と異なる免疫グロブリン配列を意味する。「Fc変異体」または「変異体Fc」
は、本明細書で用いられるとき、Fcドメイン内にアミノ酸修飾を含むタンパク質を意味
する。本発明のFc変異体は、それらを構成するアミノ酸修飾に従って定義される。した
がって、例えば、N434Sまたは434Sは、親Fcポリペプチドに対して434位に
置換基セリンを有するFc変異体であり、ここで付番はEUインデックスに従う。同様に
、M428L/N434Sは、親Fcポリペプチドに対する置換M428LおよびN43
4Sを有するFc変異体を規定する。WTアミノ酸の同一性は不特定であってもよく、こ
の場合、上記の変異体は428L/434Sと称される。置換が提供される順序が任意で
ある、すなわち、例えば428L/434SがM428L/N434Sと同じFc変異体
であるなどが認められる。抗体に関して本発明で考察されるあらゆる位置については、特
に断りのない限り、アミノ酸位置の付番はEUインデックスに従う。EUインデックスま
たはKabatもしくはEU付番スキームなどのEUインデックスは、EU抗体の付番を
指す(Edelman et al.,1969,Proc Natl Acad Sc
i USA63:78-85、本明細書で全体として参照により援用される)。修飾は、
付加、欠失、または置換であり得る。置換は、天然アミノ酸、また場合により合成アミノ
酸を含み得る。例として、米国特許第6,586,207号明細書;国際公開第98/4
8032号;国際公開第03/073238号;米国特許出願公開第2004-0214
988A1号明細書;国際公開第05/35727A2号;国際公開第05/74524
A2号;J.W.Chin et al.,(2002)、Journal of th
e American Chemical Society124:9026-9027
;J.W.Chin,&P.G.Schultz、(2002)、ChemBioChe
m 11:1135-1137;J.W.Chin, et al.,(2002)、P
ICAS United States of America 99:11020-1
1024;およびL.Wang,&P.G.Schultz、(2002)、Chem.
1-10(すべてが全体として参照により援用される)が挙げられる。
【0035】
本明細書で用いられるとき、本明細書中の「タンパク質」は、少なくとも2つの共有結
合されたアミノ酸を意味し、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチドおよびペプチド
を含む。ペプチジル基は、天然アミノ酸およびペプチド結合、または合成ペプチド模倣薬
構造、すなわち「類似体」、例えばペプトイドを含んでもよい(Simon et al
.,PNAS USA 89(20):9367(1992)、全体として参照により援
用される)。アミノ酸は、当業者によって理解されるように、天然または合成(例えば、
DNAによってコードされるアミノ酸ではない)のいずれかであってもよい。例えば、ホ
モフェニルアラニン、シトルリン、オルニチンおよびノレロイシンは、本発明を意図から
して合成アミノ酸と考えられ、D-およびL-(RまたはS)で設計されたアミノ酸の両
方を用いてもよい。本発明の変異体は、例えばSchultzおよび同僚らによって開発
された技術、例えば限定はされないが、Cropp&Shultz,2004,Tren
ds Genet.20(12):625-30,Anderson et al.,2
004,Proc Natl Acad Sci USA101(2):7566-71
,Zhang et al.,2003,303(5656):371-3、およびCh
in et al.,2003,Science 301(5635):964-7(す
べてが全体として参照により援用される)によって記載された方法を用いて組み込まれた
合成アミノ酸の使用を含む修飾を含んでもよい。さらに、ポリペプチドは、1つ以上の側
鎖または末端の合成誘導体化、グリコシル化、PEG化、環状変異(circular
permutation)、環化、他の分子へのリンカー、タンパク質もしくはタンパク
質ドメインへの融合、およびペプチドタグもしくは標識の付加を含んでもよい。
【0036】
「残基」は、本明細書で用いられるとき、タンパク質における位置およびその関連する
アミノ酸の識別を意味する。例えば、アスパラギン297(Asn297もしくはN29
7とも称される)は、ヒト抗体IgG1における297位の残基である。
【0037】
「Fab」または「Fab領域」は、本明細書で用いられるとき、VH、CH1、VL
、およびCL免疫グロブリンドメインを含むポリペプチドを意味する。Fabは、この領
域を単独で指してもよいか、または全長抗体、抗体断片もしくはFab融合タンパク質と
関連してこの領域を指してもよい。「Fv」または「Fv断片」または「Fv領域」は、
本明細書で用いられるとき、単一抗体のVLおよびVHドメインを含むポリペプチドを意
味する。当業者によって理解されるように、これらは一般に2つの鎖からなる。
【0038】
「IgGサブクラス修飾」または「アイソタイプ修飾」は、本明細書で用いられるとき
、1つのIgGアイソタイプの1つのアミノ酸を異なる整列されたIgGアイソタイプ中
の対応するアミノ酸に変換するアミノ酸修飾を意味する。例えば、IgG1がチロシンお
よびIgG2を含むことから、IgG2におけるF296Y置換であるEU位置296の
フェニルアラニンは、IgGサブクラス修飾と考えられる。
【0039】
「非天然修飾」は、本明細書で用いられるとき、アイソタイプでないアミノ酸修飾を意
味する。例えば、IgGのいずれも434位にセリンを含まないことから、IgG1、I
gG2、IgG3、またはIgG4(またはそのハイブリッド)における置換434Sは
非天然修飾と考えられる。
【0040】
「アミノ酸」および「アミノ酸識別」は、本明細書で用いられるとき、DNAおよびR
NAによってコードされる天然に存在する20個のアミノ酸のうちの1つを意味する。
【0041】
「エフェクター機能」は、本明細書で用いられるとき、抗体のFc領域とFc受容体ま
たはリガンドとの相互作用に起因する生化学的事象を意味する。エフェクター機能は、限
定はされないが、ADCC、ADCP、およびCDCを含む。
【0042】
「IgG Fcリガンド」は、本明細書で用いられるとき、Fc/Fcリガンド複合体
を形成する、IgG抗体のFc領域に結合する任意の生物に由来する分子、好ましくはポ
リペプチドを意味する。Fcリガンドは、限定はされないが、FcγRI、FcγRII
、FcγRIII、FcRn、C1q、C3、マンナン結合レクチン、マンノース受容体
、ブドウ球菌プロテインA、連鎖球菌プロテインG、およびウイルスFcγRを含む。F
cリガンドはまた、FcγRに対して相同性のFc受容体のファミリーであるFc受容体
相同体(FcRH)を含む(Davis et al.,2002,Immunolog
ical Reviews 190:123-136、全体として参照により援用される
)。Fcリガンドは、Fcに結合する未発見分子を含んでもよい。特定のIgG Fcリ
ガンドは、FcRnおよびFcγ受容体である。「Fcリガンド」は、本明細書で用いら
れるとき、Fc/Fcリガンド複合体を形成する、抗体のFc領域に結合する任意の生物
に由来する分子、好ましくはポリペプチドを意味する。
【0043】
「Fcγ受容体」、「FcγR」または「FcqammaR」は、本明細書で用いられ
るとき、IgG抗体Fc領域に結合するタンパク質のファミリーの任意のメンバーを意味
し、FcγR遺伝子によってコードされる。ヒトでは、このファミリーは、限定はされな
いが、FcγRI(CD64)、例えばアイソフォームFcγRIa、FcγRIb、お
よびFcγRIc;FcγRII(CD32)、例えばアイソフォームFcγRIIa(
アロタイプH131およびR131を含む)、FcγRIIb(FcγRIIb-1およ
びFcγRIIb-2を含む)、およびFcγRIIc;ならびにFcγRIII(CD
16)、例えばアイソフォームFcγRIIIa(アロタイプV158およびF158を
含む)およびFcγRIIIb(アロタイプFcγRIIb-NA1およびFcγRII
b-NA2を含む)(Jefferis et al.,2002,Immunol L
ett 82:57-65、全体として参照により援用される)とともに、任意の未発見
のヒトFcγRまたはFcγRアイソフォームもしくはアロタイプを含む。FcγRは、
限定はされないが、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、およびサルを含む任意の生物に由来
してもよい。マウスFcγRは、限定はされないが、FcγRI(CD64)、FcγR
II(CD32)、FcγRIII(CD16)、およびFcγRIII-2(CD16
-2)とともに、任意の未発見のマウスFcγRまたはFcγRアイソフォームもしくは
アロタイプを含む。
【0044】
「FcRn」または「新生児Fc受容体」は、本明細書で用いられるとき、IgG抗体
Fc領域に結合するタンパク質を意味し、少なくとも一部にはFcRn遺伝子によってコ
ードされる。FcRnは、限定はされないが、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、およびサ
ルを含む任意の生物に由来してもよい。当該技術分野で公知であるように、機能的FcR
nタンパク質は、重鎖および軽鎖と称されることが多い2つのポリペプチドを含む。軽鎖
はβ-2-ミクログロブリンであり、重鎖はFcRn遺伝子によってコードされる。本明
細書で特に断りのない限り、FcRnまたはFcRnタンパク質は、FcRn重鎖とβ-
2-ミクログロブリンの複合体を指す。FcRn受容体への結合を増強する、また場合に
より血清半減期を延ばすために用いられる種々のFcRn変異体が図83の説明文中に示
される。
【0045】
「親ポリペプチド」は、本明細書で用いられるとき、変異体を作製するために後に修飾
される開始ポリペプチドを意味する。親ポリペプチドは、天然に存在するポリペプチド、
または天然に存在するポリペプチドの変異体もしくは改変版であってもよい。親ポリペプ
チドは、ポリペプチド自体、親ポリペプチドを含む組成物、またはそれをコードするアミ
ノ酸配列を指してもよい。したがって、「親免疫グロブリン」は、本明細書で用いられる
とき、変異体を作製するために修飾される未修飾免疫グロブリンポリペプチドを意味し、
また「親抗体」は、本明細書で用いられるとき、変異体抗体を作製するために修飾される
未修飾抗体を意味する。「親抗体」が下記に概説されるような公知の市販の組換え産生抗
体を含むことは注目されるべきである。
【0046】
「Fc」または「Fc領域」または「Fcドメイン」は、本明細書で用いられるとき、
最初の定常領域免疫グロブリンドメインを除く抗体の定常領域を含むポリペプチド、また
場合によりヒンジの一部を意味する。したがって、Fcは、IgA、IgD、およびIg
Gの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、ならびにIgEおよびIgMの最後
の3つの定常領域免疫グロブリンドメイン、ならびにこれらのドメインのN末端の柔軟な
ヒンジを意味する。IgAおよびIgMの場合、FcはJ鎖を含み得る。IgGの場合、
Fcドメインは、免疫グロブリンドメインCガンマ2およびCガンマ3(Cγ2およびC
γ3)、ならびにCガンマ1(Cγ1)とCガンマ2(Cγ2)との間の下側ヒンジ領域
を含む。Fc領域の境界は異なり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、残基C226
またはP230からそのカルボキシル末端までを含むと定義され、付番は、Kabatに
記載されるようなEUインデックスに従う。一部の実施形態では、後により十分に記載さ
れるように、アミノ酸修飾は、例えば1つ以上のFcγR受容体またはFcRn受容体へ
の結合を改変するため、Fc領域に対してなされる。
【0047】
本明細書中の「重定常領域」は、抗体のCH1-ヒンジ-CH2-CH3部分を意味す
る。
【0048】
本明細書中の「Fc融合タンパク質」または「イムノアドヘシン」は、本明細書に記載
の通り、標的タンパク質に対する結合部分など、一般に異なるタンパク質に(本明細書に
記載の通り、任意選択的にリンカー部分を介して)連結されたFc領域を含むタンパク質
を意味する。場合により、ヘテロ二量体抗体の一方の単量体は抗体重鎖を含み(scFv
を含むかまたはさらに軽鎖を含むかのいずれか)、他方の単量体は変異体Fcドメインお
よびリガンドを含むFc融合物である。一部の実施形態では、これらの「半分抗体-半分
融合タンパク質」は「融合体(Fusionbodies)」と称される。
【0049】
「位置」は、本明細書で用いられるとき、タンパク質の配列における位置を意味する。
位置は、順に番号付けされてもよいか、確立された形式、例えば抗体を付番する場合のE
Uインデックスに従ってもよい。
【0050】
「標的抗原」は、本明細書で用いられるとき、所与の抗体の可変領域によって特異的に
結合される分子を意味する。標的抗原は、タンパク質、炭水化物、脂質、または他の化合
物であってもよい。極めて多数の好適な標的抗原が以下に記載される。
【0051】
「鎖状態(strandedness)」は、本明細書における本発明のヘテロ二量体
抗体の単量体との関連では、「一致する」DNAの2本の鎖と同様、ヘテロ二量体化変異
体が、ヘテロ二量体を形成するための「一致する」能力を保存するように、各単量体中に
組み込まれることを意味する。例えば、一部のpI変異体が単量体A(例えばpIを高め
る)を改変される場合、同様に利用可能である「電荷対」である立体変異体は、pI変異
体に干渉しない、例えばpIを高める荷電変異体は、同じ「鎖」または「単量体」上に置
かれることで両方の機能性を保存する。同様に、後により十分に概説されるような対のセ
ット中に存在する「歪曲」変異体の場合、当業者は、その対の1セットが組み込まれるい
ずれの鎖または単量体であるかで、pI分離が歪曲のpIを用いて同様に最大化されるか
を判定する点でpIを検討することになる。
【0052】
「標的細胞」は、本明細書で用いられるとき、標的抗原を発現させる細胞を意味する。
【0053】
「可変領域」は、本明細書で用いられるとき、それぞれ、κ遺伝子座、λ遺伝子座、お
よび重鎖免疫グロブリン遺伝子座を構成するVk、Vλ、および/またはVH遺伝子のい
ずれかによって実質的にコードされる、1つ以上のIgドメインを含む免疫グロブリンの
領域を意味する。
【0054】
本明細書中の「野生型またはWT」は、対立遺伝子バリエーションを含む、天然に見出
されるアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を意味する。WTタンパク質は、意図的に修
飾されていないアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を有する。
【0055】
本発明の抗体は、一般に単離されるかまたは組み換えられる。「単離された」は、本明
細書に開示される様々なポリペプチドを説明するために用いられる場合、特定および分離
され、かつ/またはそれが発現された細胞もしくは細胞培養物から回収されている、ポリ
ペプチドを意味する。通常、単離されたポリペプチドは、少なくとも1つの精製ステップ
によって調製されることになる。「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の
抗体を実質的に含まない抗体を指す。「組換え」は、抗体が外来性宿主細胞内で組換え核
酸技術を用いて作製されることを意味する。
【0056】
特定の抗原またはエピトープに対する「特異的結合」または「特異的に結合する」また
は「特異的である」とは、非特異的な相互作用とは測定可能な程度に異なる結合を意味す
る。特異的結合は、例えば、一般に結合活性を有しない類似する構造の分子である対照分
子の結合と比べて分子の結合を確認することにより測定することができる。例えば、特異
的結合は、標的に類似する対照分子との競合によって確認することができる。
【0057】
特定の抗原またはエピトープに対する特異的結合は、例えば、少なくとも約10-4M
、少なくとも約10-5M、少なくとも約10-6M、少なくとも約10-7M、少なく
とも約10-8M、少なくとも約10-9M、代替として、少なくも約10-10M、少
なくとも約10-11M、少なくとも約10-12M、またはそれよりも高い、抗原また
はエピトープに対するKD(KDは特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指す)を有す
る抗体によって示され得る。典型的には、抗原に特異的に結合する抗体は、抗原またはエ
ピトープに対する対照分子より20倍、50倍、100倍、500倍、1000倍、5,
000倍、10,000倍、またはそれを超えて高いKDを有することになる。
【0058】
また、特定の抗原またはエピトープに対する特異的結合は、例えば、対照と比較してエ
ピトープに対して少なくとも20倍、50倍、100倍、500倍、1000倍、5,0
00倍、10,000倍、またはそれを超えて高い抗原またはエピトープに対するKAま
たはKaを有する抗体により示され得る(KAまたはKaは、特定の抗体-抗原相互作用
の会合速度を指す)。
【0059】
II.概要
CD3および腫瘍抗原標的に共会合する二重特異性抗体は、T細胞が標的化腫瘍細胞を
攻撃し、溶解するように再誘導するように設計され、用いられている。例として、CD3
および腫瘍抗原に一価的に会合する、BiTEおよびDART形式が挙げられる。CD3
を標的化する手法がかなり有望であることを示している一方、かかる治療法に共通の副作
用は、有毒なサイトカイン放出症候群をもたらすことが多い、それに関連するサイトカイ
ン産生である。二重特異性抗体の抗CD3結合ドメインがすべてのT細胞に会合すること
から、高いサイトカイン産生性のCD4 T細胞サブセットが動員される。さらに、CD
4 T細胞サブセットは、動員および増殖が潜在的には免疫抑制をもたらし、長期腫瘍抑
制に対する負の影響を有し得るような制御性T細胞を含む。さらに、これらの形式は、F
cドメインを有することなく、患者における極めて短い血清半減期を示す。
【0060】
CD3を標的化する手法がかなり有望であることを示している一方、かかる治療法に共
通の副作用は、有毒なサイトカイン放出症候群をもたらすことが多い、それに関連するサ
イトカイン産生である。二重特異性抗体の抗CD3結合ドメインがすべてのT細胞に会合
することから、高いサイトカイン産生性のCD4 T細胞サブセットが動員される。さら
に、CD4 T細胞サブセットは、動員および増殖が潜在的には免疫抑制をもたらし、長
期腫瘍抑制に対する負の影響を有し得るような制御性T細胞を含む。サイトカイン産生を
低下させ、おそらくはCD4 T細胞の活性化を低下させる可能性がある1つのかかる方
法は、CD3に対する抗CD3ドメインの親和性を低下させることによる。
【0061】
したがって、一部の実施形態では、本発明は、CD3に対する「強力な」または「高親
和性の」結合剤であり(例えば、一例がH1.30_L1.47として表される重および
軽可変ドメインである(任意選択的に、必要に応じて荷電リンカーを含む))、かつCD
38にも結合する、抗CD3抗原結合ドメインを含む抗体構築物を提供する。他の実施形
態では、本発明は、CD3に対する「軽い」または「親和性がより低い」結合剤である抗
CD3抗原結合ドメインを含む抗体構築物を提供する。さらなる実施形態は、CD38に
も結合する、CD3に対する中間のまたは「中程度の」親和性を有する抗CD3抗原結合
ドメインを含む抗体構築物を提供する。
【0062】
本発明の「高い、中程度の、低い」抗CD3配列が種々のヘテロ二量体化形式で使用可
能であることは理解されるべきである。本明細書中の開示の大半でヘテロ二量体の「ボト
ルオープナー」形式が用いられる一方、これらの可変重および可変軽配列、ならびにsc
Fv配列(ならびにこれらの可変重および可変軽配列を含むFab配列)は、他の形式、
例えば国際公開第2014/145806号の図2に表されるもの(それらの図面、形式
および説明文は参照により本明細書中に明示的に援用される)において用いることができ
る。
【0063】
したがって、本発明は、2つの異なる抗原に結合するヘテロ二量体抗体を提供し、例え
ば、抗体は、下記のように、2つの異なる標的抗原、一般に標的腫瘍抗原(TTA)に結
合する点で「二重特異性」である。これらのヘテロ二量体抗体は、これらの標的抗原に、
一価(例えば、可変重鎖および可変軽鎖ドメイン対などの単一の抗原結合ドメインが存在
する)または二価(各々独立して抗原に結合する2つの抗原結合ドメインが存在する)の
いずれかで結合し得る。本発明のヘテロ二量体抗体は、下記に同様に概説されるようなヘ
テロ二量体のホモ二量体からの単純な精製を可能にする「pI変異体」と共役される、下
記により十分に概説されるようなホモ二量体にわたるヘテロ二量体の形成を「歪曲させる
(skew)」アミノ酸置換を有する異なる単量体の使用に基づく。本発明のヘテロ二量
体の二重特異性抗体の場合、本発明は、一般に、ヘテロ二量体タンパク質を産生するため
の、産生細胞内で自己組織化可能である改変されるまたは変異体としてのFcドメインの
使用、およびかかるヘテロ二量体タンパク質を作成しかつ精製するための方法に依存して
いる。
【0064】
III.抗体
本発明は、2つの異なる抗原、例えば、CD3および標的腫瘍抗原、例えばCD20、
CD38およびCD123に結合し、また一般に治療抗体である二重特異性抗体の作製に
関する。下記に考察されるように、用語「抗体」が一般に用いられる。本発明において用
途が見出される抗体は、従来の抗体、ならびに本明細書に記載の抗体誘導体、断片および
模倣物を含む、本明細書に記載のような幾つかの形式を取り得る。
【0065】
従来の抗体の構造単位は、典型的には四量体を含む。各四量体は、典型的には2対の同
一なポリペプチド鎖で構成され、各対は、1つの「軽」鎖(典型的には約25kDaの分
子量を有する)と、1つの「重」鎖(典型的には、約50~70kDaの分子量を有する
)とを有する。ヒトの軽鎖は、κ軽鎖およびλ軽鎖に分類される。本発明は、限定されな
いが、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む幾つかのサブクラスを有す
るIgGクラスを対象とする。したがって、「アイソタイプ」は、本明細書で用いられる
とき、それらの定常領域の化学的および抗原的な特徴によって定義される免疫グロブリン
のサブクラスのうちのいずれかを意味する。治療抗体がまた、アイソタイプおよび/また
はサブクラスのハイブリッドを含み得ることは理解されるべきである。例えば、米国特許
出願公開第2009/0163699号明細書(参照により援用される)に示されるよう
に、本発明は、IgG1/G2ハイブリッドのpIの改変を包含する。
【0066】
各鎖のアミノ末端部分は、一般に当該技術分野および本明細書において「Fvドメイン
」または「Fv領域」と称される、主として抗原認識に関与する約100~110個もし
くはそれを超えるアミノ酸の可変領域を含む。可変領域では、抗原結合部位を形成するた
め、重鎖および軽鎖のVドメインの各々に3つのループが集まる。ループの各々は、相補
性決定領域(以降、「CDR」と称される)と称され、そこではアミノ酸配列における変
動が最も顕著である。「可変」とは、可変領域のある特定のセグメントが、抗体間で配列
が広範囲に異なるという事実を指す。可変領域内の可変性は、均一に分布していない。代
わりに、V領域は、15~30個のアミノ酸のフレームワーク領域(FR)と称される比
較的不変の一続きの領域からなり、それらは、各々9~15アミノ酸長またはそれより長
い「超可変領域」と称される極端な可変性のより短い領域によって分離される。
【0067】
各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端にFR1-CDR1-FR2-C
DR2-FR3-CDR3-FR4の順に整列した、3つの超可変領域(「相補性決定領
域」、「CDR」)と4つのFRとからなる。
【0068】
超可変領域は一般に、軽鎖可変領域内のアミノ酸残基24~34(LCDR1:「L」
は軽鎖を示す)、50~56(LCDR2)、および89~97(LCDR3)あたりと
、重鎖可変領域内の31~35B(HCDR1:「H」は重鎖を示す)、50~65(H
CDR2)、および95~102(HCDR3)あたりのアミノ酸残基(Kabat e
t al.,SEQUENCES OF PROTEINS OF IMMUNOLOG
ICAL INTEREST,5th Ed.Public Health Servi
ce,National Institutes of Health,Bethesd
a,Md.(1991))、ならびに/または超可変ループを形成する残基(例えば、軽
鎖可変領域内の残基26~32(LCDR1)、50~52(LCDR2)、および91
~96(LCDR3)と、重鎖可変領域内の26~32(HCDR1)、53~55(H
CDR2)、および96~101(HCDR3);Chothia and Lesk(
1987)J.Mol.Biol.196:901~917を包含する。本発明の特定の
CDRについては後に記載される。
【0069】
本明細書を通して、Kabatの付番システムが可変ドメイン内の残基(およそ、軽鎖
可変領域の残基1~107、および重鎖可変領域の残基1~113)に言及する場合、ま
たEU付番システムがFc領域の場合、一般に用いられる(例えば、Kabat et
al.、上記(1991))。
【0070】
本発明は、多数の異なるCDRセットを提供する。この場合、「完全CDRセット」は
、3つの可変軽CDRおよび3つの可変重CDR、例えば、vlCDR1、vlCDR2
、vlCDR3、vhCDR1、vhCDR2およびvhCDR3を含む。これらは各々
、より大きい可変軽鎖ドメインまたは可変重鎖ドメインの一部であり得る。さらに、本明
細書でより十分に概説されるように、可変重鎖ドメインおよび可変軽鎖ドメインは、重鎖
および軽鎖が用いられる場合(例えばFabが用いられる場合)、別々のポリペプチド鎖
上、またはscFv配列の場合、単一のポリペプチド鎖上に存在し得る。
【0071】
CDRは、抗原結合、またはより具体的には、抗体のエピトープ結合部位の形成に寄与
する。「エピトープ」は、パラトープとしてとして知られる、抗体分子の可変領域内の特
定の抗原結合部位と相互作用する決定基を指す。エピトープは、アミノ酸または糖側鎖な
どの分子の集団であり、通常、特定の構造特性とともに特定の電荷特性を有する。単一の
抗原が2つ以上のエピトープを有する場合がある。
【0072】
エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基(エピトープの免疫優勢成分とも称さ
れる)と、結合に直接関与していない他のアミノ酸残基、例えば、特異的な抗原結合ペプ
チドによって効果的に遮断されるアミノ酸残基とを含んでもよい。換言すると、アミノ酸
残基は、特異的抗原結合ペプチドのフットプリント内に存在する。
【0073】
エピトープは、立体構造的または線状のいずれであってもよい。立体構造的エピトープ
は、線状ポリペプチド鎖の異なるセグメントからの空間的に並置されたアミノ酸によって
生成される。線状エピトープは、ポリペプチド鎖内の隣接するアミノ酸残基によって生成
されるエピトープである。立体構造的または非立体構造的エピトープは、変性溶媒の存在
下で、前者との結合は失われるが、後者との結合は失われないという点において区別して
もよい。
【0074】
エピトープは、特有の空間的配置において、典型的には少なくとも3つ、より一般的に
は少なくとも5個または8~10個のアミノ酸を含む。同じエピトープを認識する抗体は
、ある抗体が、別の抗体の標的抗原への結合を遮断する能力を示す単純な免疫測定法(例
えば「ビニング」)において確認され得る。
【0075】
各鎖のカルボキシ末端部分は、主としてエフェクター機能に関与する定常領域を画定す
る。Kabatらは、重鎖および軽鎖の可変領域の極めて多数の一次配列を収集した。配
列の保存の程度に基づいて、Kabatらは、個々の一次配列をCDRとフレームワーク
とに分類し、そのリストを作成した(SEQUENCES OF IMMUNOLOGI
CAL INTEREST,5th Ed.,NIH publication,No.
91-3242,E.A.Kabat et al.(全体として参照により援用される
)を参照)。
【0076】
免疫グロブリンのIgGサブクラスには、重鎖において幾つかの免疫グロブリンドメイ
ンが存在する。本明細書中の「免疫グロブリン(Ig)ドメイン」は、明確な三次構造を
有する免疫グロブリンの領域を意味する。本発明において興味深いのは、定常重(CH)
ドメインおよびヒンジドメインを含む重鎖ドメインである。IgG抗体に関連して、Ig
Gアイソタイプは各々、3つのCH領域を有する。したがって、IgGに関連する「CH
」ドメインは以下の通りである:「CH1」は、Kabatに記載されるようなEUイン
デックスによる118~220位を指す。「CH2」は、Kabatに記載されるような
EUインデックスによる237~340位を指し、「CH3」は、Kabatに記載され
るようなEUインデックスによる341~447位を指す。本明細書に示され、また後述
されるように、pI変異体は、後に考察される、CH領域およびヒンジ領域のうちの1つ
以上に存在し得る。
【0077】
本明細書に示される配列がCH1領域、すなわち118位で開始し、指定がある場合を
除いて可変領域が含まれないことは注目されるべきである。例えば、配列番号2の最初ア
ミノ酸は、配列表では「1」位と表されていても、EU付番に従うとCH1領域の118
位に対応する。
【0078】
重鎖の別の種類のIgドメインは、ヒンジ領域である。本明細書中の「ヒンジ」または
「ヒンジ領域」または「抗体ヒンジ領域」または「免疫グロブリンヒンジ領域」は、抗体
の第1の定常ドメインと第2の定常ドメインとの間にアミノ酸を含む柔軟なポリペプチド
を意味する。構造的には、IgGのCH1ドメインはEU位置220で終端し、IgGの
CH2ドメインは残基のEU位置237で開始する。したがって、IgGの場合、抗体ヒ
ンジは、221位(IgG1のD221)~236(IgG1のG236)を含むものと
本明細書で定義され、付番は、Kabatに記載されるようなEUインデックスに基づく
ものとする。一部の実施形態では、例えば、Fc領域に関連して、下側のヒンジが含まれ
、この「下側のヒンジ」は一般に、226位または230位を指す。本明細書に記載され
るように、pI変異体は、ヒンジ領域において作製することもできる。
【0079】
軽鎖は一般に、可変軽鎖ドメイン(軽鎖CDRを含み、可変重鎖ドメインと一緒になっ
てFv領域を形成する)と、定常軽鎖領域(CLまたはCκと称されることが多い)の2
つのドメインを含む。
【0080】
後に概説される、さらなる置換の対象となる別の領域はFc領域である。
【0081】
したがって、本発明は、異なる抗体ドメインを提供する。本明細書に記載され、当該技
術分野で公知の通り、本発明のヘテロ二量体抗体は、重鎖および軽鎖内に異なるドメイン
を含み、それらは同様に重複している可能性がある。これらのドメインは、限定はされな
いが、Fcドメイン、CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、ヒンジドメイ
ン、重定常ドメイン(CH1-ヒンジ-FcドメインまたはCH1-ヒンジ-CH2-C
H3)、可変重鎖ドメイン、可変軽鎖ドメイン、軽定常ドメイン、FAbドメインおよび
scFvドメインを含む。
【0082】
したがって、「Fcドメイン」は、-CH2-CH3ドメイン、任意選択的にヒンジド
メインを含む。重鎖は、可変重鎖ドメインおよび定常ドメインを含み、それはCH2-C
H3を含むCH1-任意選択的なヒンジ-Fcドメインを含む。軽鎖は、可変軽鎖および
軽定常ドメインを含む。
【0083】
本発明の一部の実施形態は、少なくとも1つのscFvドメインを含み、それは天然に
存在しないが、一般にscFvリンカーによって共に連結された可変重鎖ドメインおよび
可変軽鎖ドメインを含む。本明細書で示されるように、組換え技術によって作製される、
従来のペプチド結合を含む、使用可能な幾つかの好適なscFvリンカーが存在する。
【0084】
リンカーペプチドは主に、以下のアミノ酸残基:Gly、Ser、Ala、またはTh
rを含み得る。リンカーペプチドは、2つの分子を、それらが所望される活性を保持する
ように、互いに関して正確な立体構造を想定するような方法で連結するのに十分な長さを
有する必要がある。一実施形態では、リンカーは、約1~50アミノ酸長、好ましくは約
1~30アミノ酸長である。一実施形態では、1~20アミノ酸長のリンカーを用いても
よく、一部の実施形態では約5~約10個のアミノ酸の使用が認められる。有用なリンカ
ーとして、例えば(GS)n、(GSGGS)n、(GGGGS)n、および(GGGS
)nを含む(nは少なくとも1の整数(また一般には3~4)である)グリシン-セリン
ポリマー、、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、および他の柔軟
なリンカーが挙げられる。あるいは、限定はされないが、ポリエチレングリコール(PE
G)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、またはポリエチレングリコー
ルとポリプロピレングリコールの共重合体を含む種々の非タンパク質性ポリマーは、リン
カーとしての用途が見出され得る、すなわちリンカーとしての使用が見出され得る。
【0085】
他のリンカー配列は、CL/CH1ドメインの任意の長さの任意の配列を含んでもよい
が、CL/CH1ドメインのすべての残基ではない(例えばCL/CH1ドメインの最初
の5~12個のアミノ酸残基)。リンカーは、免疫グロブリン軽鎖、例えばCκまたはC
λに由来し得る。リンカーは、例えば、Cγ1、Cγ2、Cγ3、Cγ4、Cα1、Cα
2、Cδ、Cε、およびCμを含む任意のアイソタイプの免疫グロブリン重鎖に由来し得
る。リンカー配列はまた、Ig様タンパク質などの他のタンパク質(例えば、TCR、F
cR、KIR)、ヒンジ領域由来の配列、および他のタンパク質由来の他の天然配列に由
来してもよい。
【0086】
一部の実施形態では、リンカーは、任意の2つのドメイン(本明細書で一緒に概説され
るもの)を連結するのに用いられる「ドメインリンカー」である。任意の好適なリンカー
が使用可能である一方、多数の実施形態では、例えば(GS)n、(GSGGS)n、(
GGGGS)n、および(GGGS)n(nは少なくとも1の整数(また一般には3~4
~5)である)を含むグリシン-セリンポリマーとともに、2つのドメインの、各ドメイ
ンがその生物学的機能を保持することを可能にする十分な長さおよび柔軟性を伴った組換
え付着を可能にする任意のペプチド配列が用いられる。場合により、また「鎖状態」に注
目すると、後に概説される通り、荷電ドメインリンカーは、scFvリンカーの一部の実
施形態で用いられるとき、用いることができる。
【0087】
一部の実施形態では、scFvリンカーは荷電scFvリンカーであり、その多数が図
33に示される。したがって、本発明は、第1および第2の単量体間でのpIにおける分
離を促進するため、荷電scFvリンカーをさらに提供する。すなわち、正または負のい
ずれか(または異なる単量体上でscFvを用いるスキャフォールドの場合には両方)の
荷電scFvリンカーを組み込むことにより、荷電リンカーを含む単量体がFcドメイン
内でさらなる変化を生じさせることなくpIを変更することが可能である。これらの荷電
リンカーは、標準のリンカーを有する任意のscFv中に置換され得る。さらに、当業者
によって理解されるように、荷電scFvリンカーは、pIにおける所望される変化に基
づき、正確な「鎖」または単量体に対して用いられる。例えば、本明細書で考察されるよ
うに、三重F形式ヘテロ二量体抗体を作製するため、所望される抗原結合ドメインの各々
におけるFv領域の最初のpIが算出され、scFvを作製するために1つが選択され、
またpIに応じて、正または負リンカーのいずれかが選択される。
【0088】
同様に本発明の単量体のpI分離を高めるため、荷電ドメインリンカーも用いることが
でき、したがって、リンカーが用いられる場合の本明細書中の任意の実施形態では、図3
3に含まれるものを用いることができる。
【0089】
一部の実施形態では、抗体は全長である。本明細書中の「全長抗体」は、ヘテロ二量体
化の形成またはホモ二量体からのヘテロ二量体の精製のいずれかを可能にするための、特
にFcドメインにおける、本明細書で概説されるような1つ以上の修飾を含む可変領域お
よび定常領域を含む、抗体の天然の生物学的形態を構成する構造を意味する。全長抗体は
一般に、FabおよびFcドメインを含み、また加えて、一般に図面で示されるように、
scFvなどの余分な抗原結合ドメインを有し得る。
【0090】
一実施形態では、pIを改変するなど、ヘテロ二量体を産生するように改変することが
できる少なくとも1つの定常ドメインを含む限り、抗体は、抗体断片である。使用するこ
とができる他の抗体断片は、pIを改変している本発明のCH1、CH2、CH3、ヒン
ジ、およびCLドメインのうちの1つ以上を有する断片を含む。例えば、Fc融合物は、
別のタンパク質に融合されたFc領域(CH2およびCH3、任意選択的にヒンジ領域を
含む)の融合物である。多くのFc融合体が当該技術分野で公知であり、本発明のヘテロ
二量体化変異体の付加によって改善され得る。本発明の場合、CH1;CH1,CH2お
よびCH3;CH2;CH3;CH2およびCH3;CH1およびCH3を含む抗体融合
物を作製することができ、これらのいずれかまたはすべては、本明細書に記載されるヘテ
ロ二量体化変異体の任意の組み合わせを用いて、任意選択的にヒンジ領域を用いて作製す
ることができる。
【0091】
特に、図1に示される形式は、通常「ヘテロ二量体抗体」と称される抗体であり、タン
パク質がヘテロ二量体Fcドメインに自己組織化された少なくとも2つの関連するFc配
列を有することを意味する。
【0092】
キメラおよびヒト化抗体
一部の実施形態では、抗体は、異なる種からの混合体、例えばキメラ抗体および/また
はヒト化抗体であり得る。一般に、「キメラ抗体」および「ヒト化抗体」の両方は、2つ
以上の種に由来する領域を組み合わせた抗体を指す。例えば、「キメラ抗体」は、従来、
マウス(または場合によりラット)由来の可変領域と、ヒト由来の定常領域とを含む。「
ヒト化抗体」は、一般に、可変ドメインフレームワーク領域を、ヒト抗体に見出される配
列と交換された非ヒト抗体を指す。一般に、ヒト化抗体では、CDRを除く全抗体が、ヒ
ト由来のポリヌクレオチドによってコードされるか、またはそのCDR内を除いて、かか
る抗体と同一である。非ヒト生物に由来する核酸によって一部または全部がコードされる
CDRが、ヒト抗体可変領域のβシートフレームワーク内に移植されて抗体が作出され、
移植されたCDRによってその特異性が決定される。かかる抗体の作出は、例えば、国際
公開第92/11018号、Jones,1986,Nature 321:522-5
25、Verhoeyen et al、1988,Science 239:1534
-1536(すべてが全体として参照により援用される)に記載されている。最初の移植
構築物において失われた親和性を回復するため、選択されたアクセプターフレームワーク
残基の対応するドナー残基への「逆変異」が必要であることが多い(米国特許第5530
101号明細書、米国特許第5585089号明細書、米国特許第5693761号明細
書、米国特許第5693762号明細書、米国特許第6180370号明細書、米国特許
第5859205号明細書、米国特許第5821337号明細書、米国特許第60542
97号明細書、米国特許第6407213号(すべてが全体として参照により援用される
))。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリンの定常領域(典型的にはヒト免疫グ
ロブリンの定常領域)の少なくとも一部を含むことになり、したがって、典型的にはヒト
Fc領域を含むことになる。ヒト化抗体はまた、遺伝子操作された免疫系を有するマウス
を用いて作製され得る。Roque et al.,2004,Biotechnol.
Prog.20:639-654(全体として参照により援用される)。非ヒト抗体をヒ
ト化および再形成するための様々な技術および方法が当該技術分野で周知である(Tsu
rushita&Vasquez,2004,Humanization of Mon
oclonal Antibodies,Molecular Biology of
B Cells,533-545,Elsevier Science(USA)、およ
びその中に引用される参考文献(すべてが全体として参照により援用される)を参照)。
ヒト化方法は、限定はされないが、Jones et al.,1986,Nature
321:522-525;Riechmann et al.,1988;Natur
e 332:323-329;Verhoeyen et al.,1988,Scie
nce,239:1534-1536;Queen et al.,1989,Proc
Natl Acad Sci,USA 86:10029-33;He et al.
,1998,J.Immunol.160:1029-1035;Carter et
al.,1992,Proc Natl Acad Sci USA 89:4285-
9,Presta et al.,1997,Cancer Res.57(20):4
593-9;Gorman et al.,1991,Proc.Natl.Acad.
Sci.USA88:4181-4185;O’Connor et al.,1998
,Protein Eng 11:321-8(すべてが全体として参照により援用され
る)に記載される方法を含む。ヒト化方法、または非ヒト抗体可変領域の免疫原性を低下
させる他の方法は、Roguska et al.,1994,Proc.Natl.A
cad.Sci.USA 91:969-973(全体として参照により援用される)に
記載のような表面再処理方法を含んでもよい。一実施形態では、親抗体は、当該技術分野
で公知のように親和性成熟されている。ヒト化および親和性成熟には、例えば米国特許出
願第11/004,590号明細書に記載されるような構造に基づく方法を用いてもよい
。抗体可変領域をヒト化および/または親和性成熟させるため、限定はされないが、Wu
et al.,1999,J.Mol.Biol.294:151-162;Baca
et al.,1997,J.Biol.Chem.272(16):10678-1
0684;Rosok et al.,1996,J.Biol.Chem.271(3
7):22611-22618;Rader et al.,1998,Proc.Na
tl.Acad.Sci.USA 95:8910-8915;Krauss et a
l.,2003,Protein Engineering 16(10):753-7
59(すべてが全体として参照により援用される)に記載される方法を含む、選択に基づ
く方法を用いてもよい。限定はされないが、米国特許出願第09/810,510号明細
書;Tan et al.,2002,J.Immunol.169:1119-112
5;De Pascalis et al.,2002,J.Immunol.169:
3076-3084(すべてが全体として参照により援用される)に記載される方法を含
む、他のヒト化方法は、CDRの一部分のみの移植を伴う場合がある。
【0093】
IV.ヘテロ二量体抗体
したがって、一部の実施形態では、本発明は、ヘテロ二量体Fcドメインおよびヘテロ
二量体抗体を形成するために自己組織化することになる、2つの異なる重鎖変異体のFc
配列の使用に依存するヘテロ二量体抗体を提供する。
【0094】
本発明は、2つ以上の抗原またはリガンドへの結合を可能にする、例えば二重特異性結
合を可能にするヘテロ二量体抗体を提供するための新規な構築物を対象とする。ヘテロ二
量体抗体構築物は、抗体の重鎖の2つのFcドメイン、例えば集合して「二量体」を構築
する2つの「単量体」の自己集合特性に基づく。下記により十分に考察される通り、ヘテ
ロ二量体抗体は、各単量体のアミノ酸配列を改変することによって作製される。したがっ
て、本発明は一般に、ヘテロ二量体の形成を促進し、かつ/またはホモ二量体に対するヘ
テロ二量体の精製の簡易化を可能にするため、各鎖に対する異なる定常領域におけるアミ
ノ酸変異体に依存する幾つかの方法で抗原に共会合可能なヘテロ二量体抗体の作出を対象
とする。
【0095】
このようにして、本発明は、二重特異性抗体を提供する。抗体技術における継続的な問
題は、一般に、2つの異なる抗原に同時に結合して、異なる抗原を近接させ、新しい機能
性および新しい治療薬をもたらす「二重特異性」抗体への要望である。一般に、これらの
抗体は、各々の重鎖および軽鎖における遺伝子を宿主細胞に含めることによって作製され
る。これにより、一般に、所望のヘテロ二量体(A-B)ならびに2つのホモ二量体(A
-AおよびB-B(軽鎖ヘテロ二量体上の課題を含まない))が形成される。しかしなが
ら、二重特異性抗体の形成における大きい障害は、ホモ二量体抗体からヘテロ二量体抗体
を精製し、かつ/またはヘテロ二量体の形成をホモ二量体の形成に対してバイアスをかけ
る際の困難性である。
【0096】
本発明のヘテロ二量体を作製するのに利用可能な幾つかの機構が存在する。さらに、当
業者によって理解されるように、これらの機構を組み合わせるで、高度なヘテロ二量体化
を確保することができる。したがって、ヘテロ二量体の産生をもたらすアミノ酸変異体は
、「ヘテロ二量体化変異体」と称される。後に考察されるように、ヘテロ二量体化変異体
は、立体変異体(例えば、下記の「ノブとホール(knobs and holes)」
または「歪曲」変異体および下記の「電荷対」変異体)ならびにヘテロ二量体からのホモ
二量体の精製を可能にする「pI変異体」を含み得る。国際公開第2014/14580
6号(その全体が、また「ヘテロ二量体化変異体」に関する考察については以下のように
具体的に、本明細書で参照により援用される)では、ヘテロ二量体化にとって有用な機構
は、「ノブとホール」(「KIH」;ときとして本明細書で「歪曲」変異体(国際公開第
2014/145806号中の考察を参照)、国際公開第2014/145806号に記
載の「静電的操縦」または「電荷対」、国際公開第2014/145806号に記載のp
I変異体、および国際公開第2014/145806号および下記に概説されるような一
般的なさらなるFc変異体を含む。
【0097】
本発明では、ヘテロ二量体抗体の精製を容易化し得る幾つかの基本的機構が存在する一
方、各単量体が異なるpIを有することで、pI変異体の使用に依存することから、A-
A、A-BおよびB-B二量体タンパク質の等電点精製が可能になる。あるいは、一部の
スキャフォールド形式、例えば「三重F」形式もサイズに基づく分離を可能にする。後に
さらに概説される通り、ヘテロ二量体の形成をホモ二量体に対して「歪曲させる」ことも
可能である。したがって、立体的なヘテロ二量体化変異体とpIまたは電荷対変異体との
組み合わせから、本発明における特定用途が見出される。
【0098】
一般に、本発明における特定用途の実施形態は、2つの単量体間のpI差を増加させる
ようにpI変異体と共役させた、ホモ二量体化形成よりもヘテロ二量体化形成を促進する
、歪曲変異体を含む変異体のセットに依存する。
【0099】
加えて、後により十分に概説されるように、ヘテロ二量体抗体の形式に依存して、pI
変異体が単量体の定常および/もしくはFcドメイン内部に含まれ得るか、または荷電リ
ンカー(ドメインリンカーまたはscFvリンカーのいずれか)を用いることができる。
すなわち、三重F形式などのscFvを利用するスキャフォールドは、精製目的で、さら
なるpIブーストを与える荷電scFvリンカー(正または負のいずれか)を含み得る。
当業者によって理解されるように、荷電scFvリンカーのみを伴い、さらなるpI調節
を伴わない幾つかの三重F形式が有用であるが、本発明は特に、単量体の一方もしくは両
方へのpI変異体、および/または同様に荷電ドメインリンカーを提供する。さらに、他
の機能性を意図してさらなるアミノ酸の改変を行うことにより、pIの変化、例えばFc
、FcRnおよびKO変異体も得られる場合がある。
【0100】
ヘテロ二量体タンパク質の精製を可能にする分離機構としてpIを利用する本発明では
、アミノ酸変異体は、単量体ポリペプチドの一方もしくは両方に導入され得る;すなわち
、単量体の一方(本明細書では単純に「単量体A」と称される)のpIを単量体Bから離
れるように改変することができるか、または単量体AのpIを増加させ、単量体BのpI
を低下させて、単量体AおよびBの両方が改変され得る。後により十分に概説されるよう
に、いずれかまたは両方の単量体のpIの変化は、荷電残基を除去もしくは付加すること
によって(例えば、中性アミノ酸が正または負に荷電するアミノ酸残基に、例えばグリシ
ンからグルタミン酸に置き換えられる)、荷電残基を正電荷もしくは負電荷から反対の電
荷に変更することによって(アスパラギン酸からリジンに)、または荷電残基を中性残基
に変更することによって(例えば、電荷の損失:リジンからセリンに)行うことができる
。幾つかのこれらの変異体は図面に示される。
【0101】
このように、本発明のこの実施形態は、ホモ二量体からヘテロ二量体を分離することが
できるように、単量体のうちの少なくとも1つに十分なpIの変化をもたらすことを提供
する。当業者には理解されるように、また後にさらに考察されるように、これは、「野生
型」重鎖定常領域と、pIを増加または低下させるように改変されている変異体領域(w
tA-+BもしくはwtA--B)とを用いることにより、あるいは一方の領域を増加さ
せ、他方の領域を低下させることにより(A+-B-またはA-B+)行うことができる
【0102】
したがって、一般に、本発明の一部の実施形態の成分は、アミノ酸置換(「pI変異体
」または「pI置換」)を一方または両方の単量体に組み込むことにより、二量体タンパ
ク質の(両方ではないにせよ)少なくとも一方の単量体の等電点(pI)を変化させて「
pI抗体」)を形成することを対象とする、抗体の定常領域内のアミノ酸変異体である。
本明細書に示されるように、2つのホモ二量体からのヘテロ二量体の分離は、2つの単量
体のpIが最低pH0.1単位だけ異なる場合に達成することができ、0.2、0.3、
0.4、および0.5またはそれを超える場合にすべて本発明に用途が見出される。
【0103】
当業者によって理解されるように、良好な分離を得るため、各々または両方の単量体に
含まれるpI変異体の数は、一部には、例えば三重F形式における成分の開始pI、目的
のscFvおよびFabの開始pIに依存することになる。すなわち、いずれの単量体を
改変するか、または「方向」(例えば、より正かまたは負か)を決定するため、2つの標
的抗原のFv配列が算出され、そこから決定がなされる。当該技術分野で公知であるよう
に、異なるFvは、本発明において用いられる異なる開始pIを有することになる。一般
に、本明細書で概説されるように、pIは、各単量体の全pI差が少なくとも約0.1l
og(本明細書で概説される通り、0.2~0.5が好ましい)になるように設計される
【0104】
さらに、当業者によって理解され、また本明細書で概説されるように、一部の実施形態
では、ヘテロ二量体は、サイズに基づいてホモ二量体から分離され得る。例えば図1に示
されるように、幾つかの形式が、サイズに基づいて、ヘテロ二量体とホモ二量体の分離を
可能にする。
【0105】
ヘテロ二量体化を達成するため、重鎖の定常領域を用いることによりpI変異体が用い
られる場合、抗体を含む二重特異性タンパク質を設計し、精製するためのよりモジュール
的な手法が提供される。したがって、一部の実施形態では、ヘテロ二量体化変異体(歪曲
および精製ヘテロ二量体化変異体を含む)が可変領域内に含まれないことから、個々の抗
体は各々改変される必要がある。さらに、一部の実施形態では、pI変異体に起因して免
疫原性が生じる可能性は、有意な免疫原性を導入することなくpIが変化するように、p
I変異体を異なるIgGアイソタイプから輸入することによって有意に低下する。したが
って、さらなる解決すべき課題は、高いヒト配列含量、例えば任意の特定の位置での非ヒ
ト残基の最小化または回避を伴う、低いpIの定常ドメインの解明である。
【0106】
このpIを改変することで生じ得る副効用として、血清半減期の延長およびFcRn結
合の増強もある。すなわち、米国特許出願第13/194,904号明細書(その全体が
参照により援用される)に記載のように、(抗体およびFcの融合物中に見出されるもの
を含む)抗体定常ドメインのpIを低下させることにより、インビボでの血清保持の延長
がもたらされ得る。血清半減期を延長するためのこれらのpI変異体はまた、精製のため
のpIの変化を促進する。
【0107】
さらに、ホモ二量体が存在する場合に除去、最小化、および区別のいずれかを行う能力
が重要であることから、ヘテロ二量体化変異体のpI変異体が、二重特異性抗体の分析お
よび品質管理プロセスにおいてさらなる利益をもたらすことは注目されるべきである。同
様に、ヘテロ二量体抗体産生の再現性を確実に試験する能力が重要である。
【0108】
ヘテロ二量体化変異体
本発明は、ヘテロ二量体の形成および/またはホモ二量体からの精製を可能にするヘテ
ロ二量体変異体を利用する、種々の形式でのヘテロ二量体抗体を含むヘテロ二量体タンパ
ク質を提供する。
【0109】
好適な対のヘテロ二量体化歪曲変異体セットが幾つか存在する。これらの変異体は、「
対」の「セット」で存在する。すなわち、対の一方のセットは第1の単量体中に組み込ま
れ、対のもう一方のセットは第2の単量体中に組み込まれる。これらのセットが必ずしも
「ノブインホール(knobs in holes)」変異体として振る舞うことなく、
一方の単量体上の残基と他方の単量体上の残基との間で1対1の対応がある、すなわち、
これらの対のセットがヘテロ二量体の形成を促進し、ホモ二量体の形成を防止する2つの
単量体間の界面を形成することで、生物学的条件下で自発的に形成するヘテロ二量体の百
分率が、予想された50%(25%のホモ二量体A/A:50%のヘテロ二量体A/B:
25%のホモ二量体B/B)ではなく90%を超えることが可能になることは注目される
べきである。
【0110】
立体変異体
一部の実施形態では、ヘテロ二量体の形成は、立体変異体の付加により促進され得る。
すなわち、各重鎖内のアミノ酸を改変することにより、異なる重鎖が会合し、同じFcア
ミノ酸配列を有するホモ二量体を形成するよりもヘテロ二量体構造を形成する可能性が高
い。好適な立体変異体は図29に含まれる。
【0111】
1つの機構は、一般に、ヘテロ二量体の形成を支持し、ホモ二量体の形成に対抗するよ
うに立体的影響を創出するようなアミノ酸の改変を指して、当該技術分野で「ノブとホー
ル」と称され、任意選択的に用いることができる一方、これは、ときとして米国特許出願
第61/596,846号明細書、Ridgway et al.,Protein E
ngineering 9(7):617(1996);Atwell et al.,
J.Mol.Biol.1997 270:26;米国特許第8,216,805号明細
書(これらのすべては、その全体が本明細書で参照により援用される)に記載のように「
ノブとホール」と称される。同図では、「ノブとホール」に依存する幾つかの「単量体A
-単量体B」対が同定されている。さらに、Merchant et al.,Natu
re Biotech.16:677(1998)に記載のように、これらの「ノブとホ
ール」突然変異は、ヘテロ二量体化への形成を歪曲させるため、ジスルフィド結合と組み
合わせることができる。
【0112】
ヘテロ二量体の作製において用途が見出されるさらなる機構が、Gunasekara
n et al.,J.Biol.Chem.285(25):19637(2010)
(本明細書でその全体が参照により援用される)に記載のように「静電的操縦」と称され
る場合がある。これは本明細書中で「電荷対」と称される場合がある。この実施形態では
、ヘテロ二量体化への形成を歪曲させるため、静電気が用いられる。当業者が理解するよ
うに、これらはまた、pIに対して、したがって精製に対して影響を有する可能性があり
、したがって場合によりpI変異体とも考えることができる。しかし、これらがヘテロ二
量体化を推進するように作製され、精製ツールとして用いられなかったことから、それら
は「立体変異体」に分類される。これらは、限定はされないが、D221R/P228R
/K409R(例えば、これらは「単量体対応セットである)と対のD221E/P22
8E/L368EおよびC220R/E224R/P228R/K409Rと対のC22
0E/P228E/368Eを含む。
【0113】
さらなる単量体A変異体および単量体B変異体は、任意選択的かつ独立的に任意の量で
、他の変異体、例えば本明細書で概説されるpI変異体または米国特許出願公開第201
2/0149876号明細書の図37に示される他の立体変異体(その図面および説明文
および配列番号は参照により本明細書中に明示的に援用される)と組み合わせることがで
きる。
【0114】
一部の実施形態では、本明細書で概説される立体変異体は、任意選択的かつ独立的に、
任意のpI変異体(または他の変異体、例えばFc変異体、FcRn変異体など)ととも
に一方または両方の単量体に組み込むことができ、また独立的かつ任意選択的に含めるか
または本発明のタンパク質から除外することができる。
【0115】
好適な歪曲変異体のリストが図29に見出され、図34は多数の実施形態において特に
有用な対を幾つか示す。多数の実施形態では、限定はされないが、S364K/E357
Q:L368D/K370S;L368D/K370S:S364K;L368E/K3
70S:S364K;T411T/E360E/Q362E:D401K;L368D/
K370S:S364K/E357LおよびK370S:S364K/E357Qを含む
対のセットが特に用いられる。命名法の観点で、「S364K/E357Q:L368D
/K370S」の対は、単量体の一方が二重変異体セットS364K/E357Qを有し
、かつ他方が二重変異体セットL368D/K370Sを有することを意味する。
【0116】
ヘテロ二量体におけるpI(等電点)変異体
一般に、当業者によって理解されるように、pI変異体には2つの一般的なカテゴリー
、すなわちタンパク質のpIを増加させるもの(塩基性変化)およびタンパク質のpIを
低下させるもの(酸性変化)がある。本明細書に記載のように、これらの変異体のあらゆ
る組み合わせを設けることができ、一方の単量体は、野生型、または野生型と有意に異な
るpIを呈しない変異体であってもよく、また他方は、より塩基性またはより酸性のいず
れかであり得る。あるいは、各単量体は変化を受け、より塩基性になるものと、より酸性
になるものがある。
【0117】
pI変異体の好ましい組み合わせが図30に示される。本明細書で概説され、図面に示
されるように、これらの変化はIgG1に対して示されるが、すべてのアイソタイプ、な
らびにアイソタイプハイブリッドがこのように改変され得る。重鎖定常ドメインがIgG
2~4である場合、R133EおよびR133Qも使用可能である。
【0118】
抗体ヘテロ二量体の軽鎖変異体
抗体に基づくヘテロ二量体の場合、例えば少なくとも1つの単量体が重鎖ドメインに加
えて軽鎖を含む場合、pI変異体はまた、軽鎖内で作製され得る。軽鎖のpIを低下させ
るためのアミノ酸置換として、限定はされないが、K126E、K126Q、K145E
、K145Q、N152D、S156E、K169E、S202E、K207Eおよび軽
鎖のC末端でのペプチドDEDEの付加が挙げられる。定常λ軽鎖に基づくこのカテゴリ
ーにおける変化は、R108Q、Q124E、K126Q、N138D、K145Tおよ
びQ199Eでの1つ以上の置換を含む。さらに、軽鎖のpIを増加させることもできる
【0119】
アイソタイプ変異体
さらに、本発明の多くの実施形態は、あるIgGアイソタイプから別のIgGアイソタ
イプへの、特定の位置でのpIアミノ酸の「組み込み」に依存しており、そうすることで
、不要な免疫原性が変異体に導入される可能性を減少させるかまたは排除する。これらの
幾つかが米国特許出願公開第2014/0370013号明細書(本明細書で参照により
援用される)の図21に示される。すなわち、高いエフェクター機能を含む様々な理由の
ために、IgG1は、治療抗体のための一般的なアイソタイプである。しかし、IgG1
の重定常領域は、IgG2の重定常領域よりも高いpIを有する(8.10対7.31)
。IgG1骨格の特定の位置にIgG2残基を導入することにより、結果として得られる
単量体のpIが低下し(または増加し)、加えて血清半減期の延長を呈する。例えば、I
gG1は137位にグリシン(pI5.97)を有し、IgG2はグルタミン酸(pI3
.22)を有する。グルタミン酸を組み込むことは、結果として得られるタンパク質のp
Iに影響を与えることになる。後述するように、幾つかのアミノ酸置換が一般に、変異体
抗体のpIに著しい影響を与えることが要求される。しかし、後に考察されるように、た
とえIgG2分子における変化であっても血清半減期の延長を可能にすることは注目され
るべきである。
【0120】
他の実施形態では、結果として得られるタンパク質の全体的な荷電状態を減少させるた
めに(例えば、より高いpIのアミノ酸をより低いpIのアミノ酸に変更することにより
)、または後にさらに説明されるように、安定性などのための構造に適応できるように、
非アイソタイプのアミノ酸変化を生じさせる。
【0121】
さらに、重定常ドメインおよび軽定常ドメインの両方のpIを改変することにより、ヘ
テロ二量体の各単量体に著しい変化を見ることができる。本明細書で考察されるように、
2つの単量体のpIを少なくとも0.5異ならせることにより、イオン交換クロマトグラ
フィーまたは等電点電気泳動、または等電点に対して感受性がある他の方法による分離が
可能となり得る。
【0122】
pIの計算
各単量体のpIは、変異体重鎖定常ドメインのpIと、変異体重鎖定常ドメインおよび
融合パートナーを含む全単量体のpIとに依存し得る。したがって、一部の実施形態では
、pIの変化は、米国特許出願公開第2014/0370013号明細書の図19におけ
るチャートを用いて、変異体重鎖定常ドメインに基づいて計算される。本明細書で考察さ
れるように、いずれの単量体を改変するかは一般に、Fvおよびスキャフォールド領域に
特有のpIによって決定される。あるいは、各単量体のpIを比較することもできる。
【0123】
より良好なFcRnインビボ結合ももたらすpI変異体
pI変異体が単量体のpIを低下させる場合、それらはインビボでの血清保持を改善す
るというさらなる利益を有し得る。
【0124】
依然として検討中であるが、エンドソーム内、pH6でのFcRnへの結合によりFc
が隔離されることから、Fc領域はインビボでより長い半減期を有すると考えられる(G
hetie and Ward,1997 Immunol Today.18(12)
:592-598,全体として参照により援用される)。次に、エンドソーム区画は、細
胞表面にFcを再利用する。その区画が細胞外空間へ開かれると、約7.4のより高いp
Hにより、Fcの血液への逆放出が誘導される。マウスでは、Dall’ Acquaら
が、pH6およびpH7.4でFcRnへの結合が増強されたFc突然変異体が血清濃度
および野生型Fcと同じ半減期を実際に低下させていることを示した(Dall’Acq
ua et al.2002,J.Immunol.169:5171-5180、全体
として参照により援用される)。pH7.4でのFcRnに対するFcの親和性の増加は
、Fcの血液への逆放出を禁止すると考えられる。したがって、インビボでFcの半減期
を延長することになるFc突然変異は、理想的にはより低いpHでFcRnへの結合を増
強する一方、Fcのより高いpHでの放出までも可能にする。アミノ酸ヒスチジンは、6
.0~7.4のpH範囲内でその荷電状態を変化させる。したがって、Fc/FcRn複
合体中の重要な位置にHis残基を見出すことは意外なことではない。
【0125】
近年、より低い等電点を有する可変領域を有する抗体がまた、より長い血清半減期を有
し得ることが示唆されている(Igawa et al.,2010 PEDS.23(
5):385-392、全体として参照により援用される)。しかし、この機構に対する
理解は依然として乏しい。さらに、可変領域は抗体と抗体との間で異なる。低下したpI
および延長した半減期を有する定常領域変異体であれば、本明細書に記載の通り、抗体の
薬物動態特性を改善するためのよりモジュール的な手法を提供することになる。
【0126】
さらなる機能性のためのさらなるFc変異体
pIアミノ酸変異体に加えて、限定はされないが、1つ以上のFcγR受容体への結合
性の改変、FcRn受容体への結合性の改変などを含む、種々の理由から作製され得る有
用なFcアミノ酸修飾が幾つか存在する。
【0127】
したがって、本発明のタンパク質は、pI変異体および立体変異体を含む、本明細書で
概説される二量体化変異体を含む、アミノ酸修飾を含み得る。変異体の各セットは、独立
的かつ任意選択的に含まれ得るかまたは任意の特定のヘテロ二量体タンパク質から除外さ
れ得る。
【0128】
FcγR変異体
したがって、FcγR受容体の1つ以上への結合を改変するために作製され得る有用な
Fc置換が幾つか存在する。結合の増強および結合の低下をもたらす置換は有用であり得
る。例えば、Fc RIIIaへの結合の増強が一般に、ADCC(抗体依存性細胞傷害
;FcγRを発現する非特異的な細胞傷害性細胞が標的細胞上の結合抗体を認識し、続い
て標的細胞の溶解を引き起こす細胞媒介性反応)の増加をもたらすことは知られている。
同様に、FcγRIIb(阻害性受容体)への結合の低下は、一部の環境下で同様に有利
であり得る。本発明において用途が見出されるアミノ酸置換は、米国特許出願第11/1
24,620号明細書(特に図41)、米国特許出願第11/174,287号明細書、
米国特許出願第11/396,495号明細書、米国特許出願第11/538,406号
明細書(これらのすべては、その全体において、また特にその中で開示された変異体につ
いて、参照により本明細書中に明示的に援用される)において列挙されるものを含む。用
途が見出される特定の変異体として、限定はされないが、236A、239D、239E
、332E、332D、239D/332E、267D、267E、328F、267E
/328F、236A/332E、239D/332E/330Y、239D、332E
/330L、243A、243L、264A、264Vおよび299Tが挙げられる。
【0129】
さらに、米国特許出願第12/341,769号明細書(本明細書でその全体が参照に
より援用される)で具体的に開示される通り、限定はされないが、434S、434A、
428L、308F、259I、428L/434S、259I/308F、436I/
428L、436IもしくはV/434S、436V/428Lおよび259I/308
F/428Lを含む、FcRn受容体への結合の増強および血清半減期の延長において用
途が見出されるさらなるFc置換が存在する。
【0130】
切断変異体
同様に、機能的変異体の別のカテゴリーが、「FcγR切断変異体」または「Fcノッ
クアウト(FcKOまたはKO)」変異体である。これらの実施形態では、一部の治療用
途において、追加的な作用機序を回避するため、1つ以上もしくはすべてのFcγ受容体
(例えば、FcγR1、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIaなど)への
Fcドメインの正常な結合を低下させるかまたは除去することが望ましい。すなわち、例
えば多数の実施形態では、特にCD3に一価的に結合する二重特異性抗体の使用において
、ADCC活性を除去するかまたは有意に低下させるため、FcγRIIIaの結合を切
断することが一般に望ましく、ここでFcドメインの1つは1つ以上のFcγ受容体切断
変異体を含む。これらの切断変異体は図31に示され、各々は独立的かつ任意選択的に含
められ得るかまたは除外され得、好ましい態様では、G236R/L328R、E233
P/L234V/L235A/G236del/S239K、E233P/L234V/
L235A/G236del/S267K、E233P/L234V/L235A/G2
36del/S239K/A327G、E233P/L234V/L235A/G236
del/S267K/A327GおよびE233P/L234V/L235A/G236
delからなる群から選択される切断変異体が用いられる。本明細書で参照される切断変
異体がFcγR結合を切断するが、一般にFcRn結合を切断しないことは注目されるべ
きである。
【0131】
ヘテロ二量体およびFc変異体の組み合わせ
当業者によって理解されるように、列挙された(歪曲および/またはpI変異体を含む
)ヘテロ二量体化変異体のすべては、それらの「鎖状態」または「単量体区画」を保持す
る限り、任意の方法で任意選択的かつ独立的に組み合わせることができる。さらに、これ
らの変異体のすべては、ヘテロ二量体化形式のいずれかに組み合わせることができる。
【0132】
pI変異体の場合、特定用途が見出される実施形態が図面で示される一方、精製を促進
するため、他の組み合わせが、2つの単量体間のpI差を改変する基本的規則に従って作
製され得る。
【0133】
さらに、ヘテロ二量体化変異体(歪曲およびpI)のいずれかは、一般に本明細書で概
説されるように、Fc切断変異体、Fc変異体、FcRn変異体とも独立的かつ任意選択
的に組み合わされる。
【0134】
本発明の有用な形式
当業者によって理解され、後により十分に考察されるように、本発明のヘテロ二量体融
合タンパク質は、一般に図1で示されるように、多種多様な立体配置を取り得る。一部の
図面は「シングルエンド」立体配置を表し、ここでは、分子の一方の「アーム」に対して
1種の特異性が存在し、他方の「アーム」に対して異なる特異性が存在する。他の図面は
「デュアルエンド」立体配置を表し、ここでは分子の「最上部」に少なくとも1種の特異
性が存在し、分子の「底部」に1つ以上の異なる特異性が存在する。したがって、本発明
は、異なる第1の抗原および第2の抗原と共会合する新規な免疫グロブリン組成物を対象
とする。
【0135】
当業者によって理解されるように、本発明のヘテロ二量体形式は、異なる結合価および
二重特異性を有し得る。すなわち、本発明のヘテロ二量体抗体は、二価および二重特異性
であり得、ここで一方の標的腫瘍抗原(例えばCD3)は第1の結合ドメインによって結
合され、他方の標的腫瘍抗原(例えば、CD20、CD19、CD38、CD123など
)は第2の結合ドメインによって結合される。ヘテロ二量体抗体はまた、三価および二重
特異性であり得、ここで第1の抗原は2つの結合ドメインによって結合され、第2の抗原
は第2の結合ドメインによって結合される。本明細書で概説されるように、潜在的な副作
用を低下させるため、CD3が標的抗原の1つである場合、CD3は専ら一価的に結合さ
れることが好ましい。
【0136】
本発明では、抗標的腫瘍抗原(TTA)抗原結合ドメインと組み合わせた抗CD3抗原
結合ドメインが用いられる。当業者によって理解されるように、図面(特に図2~7、お
よび図68を参照)のいずれかに示されるような抗CD3 CDR、抗CD3可変軽鎖ド
メインおよび可変重鎖ドメイン、FabおよびscFvのいずれかの収集物を用いること
ができる。同様に、抗TTA抗原結合ドメインのいずれか、例えば、抗CD38、抗CD
20、抗CD19および抗CD123抗原結合ドメインは、図面のいずれかに示されるよ
うなCDR、可変軽鎖および可変重鎖ドメイン、FabおよびscFvが任意の組み合わ
せで任意選択的かつ独立的に組み合わせて使用できるか否かにかかわらず、用いることが
できる。
【0137】
ボトルオープナー形式
本発明に特定用途が見出される1つのヘテロ二量体スキャフォールドは、図1A、Aお
よびBに示されるような「三重F」または「ボトルオープナー」スキャフォールド形式で
ある。この実施形態では、抗体の一方の重鎖は一本鎖Fv(後に定義されるような「sc
Fv」)を有し、他方の重鎖は可変重鎖および軽鎖を含む「レギュラーな」FAb形式で
ある。この構造は、ボトルオープナーとのおおまかな視覚的類似性があることから、本明
細書で「三重F」形式(scFv-FAb-Fc)または「ボトルオープナー」形式と称
される場合がある(図1を参照)。2つの鎖は、後により十分に説明されるように、ヘテ
ロ二量体抗体の形成を促進する定常領域(例えば、Fcドメイン、CH1ドメインおよび
/またはヒンジ領域)におけるアミノ酸変異体の使用により結合される。
【0138】
本発明の「三重F」形式には幾つかの明らかな利点がある。当該技術分野で公知のよう
に、2つのscFv構築物に依存する抗体類似体は、安定性および凝集の問題を有するこ
とが多く、それらは本発明において「標準的な」重鎖および軽鎖対合の付加によって軽減
され得る。さらに、2つの重鎖および2つの軽鎖に依存する形式に対して、重鎖および軽
鎖の不正確な対合(例えば、重鎖1と軽鎖2との対合など)の場合、課題は存在しない。
【0139】
本明細書で概説される実施形態の多くは一般に、(すべてでないが多くの場合に荷電し
た)scFvリンカーを用いて共有結合された、可変重鎖および可変軽鎖ドメインを含む
scFvを含む、第1の単量体を含むボトルオープナー形式に依存し、この場合、scF
vは第1のFcドメインのN末端に、通常は(本明細書で概説されるように、非荷電また
は荷電のいずれかであり得る)ドメインリンカーを介して共有結合される。ボトルオープ
ナー形式の第2の単量体は重鎖であり、組成物は軽鎖をさらに含む。
【0140】
一般に、多数の好ましい実施形態では、scFvはCD3に結合するドメインであり、
重鎖および軽鎖のFabは他方のTTAに結合する。さらに、本発明のFcドメインは、
一般に、歪曲変異体(例えば、特に有用な歪曲変異体がS364K/E357Q:L36
8D/K370S;L368D/K370S:S364K;L368E/K370S:S
364K;T411T/E360E/Q362E:D401K;L368D/K370S
:S364K/E357LおよびK370S:S364K/E357Qからなる群から選
択される場合の、図29および図34に示されるようなアミノ酸置換のセット)、任意選
択的に切断変異体(図31に示されるものを含む)、任意選択的に荷電scFvリンカー
図33に示されるものを含む)を含み、重鎖はpI変異体(図30に示されるものを含
む)を含む。
【0141】
本発明は、抗CD3 scFv配列が図2図7および図68に示されるような場合の
ボトルオープナー形式を提供する。
【0142】
本発明は、抗CD38配列が図8~10を含む図面に示されるような場合のCD38抗
原結合ドメインを有するボトルオープナー形式を提供する。
【0143】
本発明は、抗CD20配列が図面に示されるような場合のCD20抗原結合ドメインを
有するボトルオープナー形式を提供する。
【0144】
本発明は、抗CD19配列が図面に示されるような場合のCD19抗原結合ドメインを
有するボトルオープナー形式を提供する。
【0145】
本発明は、抗CD123配列が図面に示されるような場合のCD123抗原結合ドメイ
ンを有するボトルオープナー形式を提供する。
【0146】
mAb-Fv形式
本発明に特定用途が見出される1つのヘテロ二量体スキャフォールドは、図1に示され
るmAb-Fv形式である。この実施形態では、同形式は、「余分な」可変重鎖ドメイン
の一方の単量体へのC末端付着および「余分な」可変軽鎖ドメインの他方の単量体へのC
末端付着の使用に依存することにより、第3の抗原結合ドメインを形成し、ここで2つの
単量体のFab部分はTTAに結合し、また「余分な」scFvドメインはCD3に結合
する。
【0147】
この実施形態では、第1の単量体は、第1の可変軽鎖ドメインがドメインリンカーを用
いて第1のFcドメインのC末端に共有結合された、第1の可変重鎖ドメインおよび第1
のFcドメインを含む第1の定常重鎖ドメインを含む、第1の重鎖を含む。第2の単量体
は、第2のFcドメインを含む第2の定常重鎖ドメインの第2の可変重鎖ドメインおよび
ドメインリンカーを用いて第2のFcドメインのC末端に共有結合された第3の可変重鎖
ドメインを含む。2つのC末端に付着された可変ドメインは、CD3に結合するscFv
を形成する。この実施形態では、TTAに結合する2つの同一のFabを形成するため、
重鎖と会合する、可変軽鎖ドメインおよび定常軽鎖ドメインを含む共通軽鎖がさらに用い
られる。本明細書中の実施形態の多くに関して、これらの構築物は、本明細書で所望され
、記載される通り、歪曲変異体、pI変異体、切断変異体、追加的なFc変異体などを含
む。
【0148】
本発明は、抗CD3 scFv配列が図2図7および図68に示されるような場合の
mAb-Fv形式を提供する。
【0149】
本発明は、抗CD38配列が図8~10に示されるようなmAb-Fv形式を提供する
【0150】
本発明は、抗CD20配列が図面で示されるようなCD20抗原結合ドメインを有する
mAb-Fv形式を提供する。
【0151】
本発明は、抗CD19配列が図面で示されるようなCD19抗原結合ドメインを有する
mAb-Fv形式を提供する。
【0152】
本発明は、抗CD123配列が図面で示されるようなCD123抗原結合ドメインを有
するmAb-Fv形式を提供する。
【0153】
本発明は、図31で示されるような切断変異体を含むmAb-Fv形式を提供する。
【0154】
本発明は、図29および34で示されるような歪曲変異体を含むmAb-Fv形式を提
供する。
【0155】
mAb-scFv
本発明に特定用途が見出される1つのヘテロ二量体スキャフォールドは、図1に示され
るmAb-Fv形式である。この実施形態では、同形式は、単量体の一方へのscFvの
C末端付着の使用に依存することにより、第3の抗原結合ドメインを形成し、ここで2つ
の単量体のFab部分はTTAに結合し、また「余分な」scFvドメインはCD3に結
合する。したがって、第1の単量体は、scFv可変軽鎖ドメイン、scFvリンカーお
よびscFv可変重鎖ドメインを含むC末端に共有結合されたscFvを有する、第1の
重鎖(可変重鎖ドメインおよび定常ドメインを含む)を含む。この実施形態では、TTA
に結合する2つの同一のFabを形成するため、重鎖と会合する、可変軽鎖ドメインおよ
び定常軽鎖ドメインを含む共通軽鎖がさらに用いられる。本明細書中の実施形態の多くに
関して、これらの構築物は、本明細書で所望され、記載されるように、歪曲変異体、pI
変異体、切断変異体、追加的なFc変異体などを含む。
【0156】
本発明は、抗CD3 scFv配列が図2図7および図68に示されるような場合の
mAb-Fv形式を提供する。
【0157】
本発明は、抗CD38配列が図8~10に示されるようなmAb-Fv形式を提供する
【0158】
本発明は、抗CD20配列が図面で示されるようなCD20抗原結合ドメインを有する
mAb-Fv形式を提供する。
【0159】
本発明は、抗CD19配列が図面で示されるようなCD19抗原結合ドメインを有する
mAb-Fv形式を提供する。
【0160】
本発明は、抗CD123配列が図面で示されるようなCD123抗原結合ドメインを有
するmAb-Fv形式を提供する。
【0161】
本発明は、図31で示されるような切断変異体を含むmAb-Fv形式を提供する。
【0162】
本発明は、図29および34で示されるような歪曲変異体を含むmAb-Fv形式を提
供する。
【0163】
Central scFv
本発明に特定用途が見出される1つのヘテロ二量体スキャフォールドは、図1に示され
るCentral-scFv形式である。この実施形態では、同形式は、挿入されたsc
Fvドメインの使用に依存することにより、第3の抗原結合ドメインを形成し、ここで2
つの単量体のFab部分はTTAに結合し、また「余分な」scFvドメインはCD3に
結合する。scFvドメインがFcドメインと単量体の一方のCH1-Fv領域との間に
挿入されることで、第3の抗原結合ドメインが提供される。
【0164】
この実施形態では、一方の単量体は、scFv可変軽鎖ドメイン、scFvリンカーお
よびscFv可変重鎖ドメインを含むscFvとともに、第1の可変重鎖ドメイン、CH
1ドメインおよびFcドメインを含む第1の重鎖を含む。scFvは、重定常ドメインの
CH1ドメインのC末端と第1のFcドメインのN末端との間でドメインリンカーを用い
て共有結合される。この実施形態では、TTAに結合する2つの同一のFabを形成する
ため、重鎖と会合する、可変軽鎖ドメインおよび定常軽鎖ドメインを含む共通軽鎖がさら
に用いられる。本明細書中の実施形態の多くに関して、これらの構築物は、本明細書で所
望され、記載されるように、歪曲変異体、pI変異体、切断変異体、追加的なFc変異体
などを含む。
【0165】
本発明は、抗CD3 scFv配列が図2図7および図68に示されるような場合の
Central-scFv形式を提供する。
【0166】
本発明は、抗CD38配列が図8~10に示されるようなCentral-scFv形
式を提供する。
【0167】
本発明は、抗CD20配列が図面で示されるようなCD20抗原結合ドメインを有する
Central-scFv形式を提供する。
【0168】
本発明は、抗CD19配列が図面で示されるようなCD19抗原結合ドメインを有する
Central-scFv形式を提供する。
【0169】
本発明は、抗CD123配列がvで示されるようなCD123抗原結合ドメインを有す
るCentral-scFv形式を提供する。
【0170】
本発明は、図31で示されるような切断変異体を含むCentral-scFv形式を
提供する。
【0171】
本発明は、図29および34で示されるような歪曲変異体を含むCentral-sc
Fv形式を提供する。
【0172】
Central-Fv形式
本発明に特定用途が見出される1つのヘテロ二量体スキャフォールドは、図1に示され
るCentral-Fv形式である。この実施形態では、同形式は、挿入されたscFv
ドメインの使用に依存することにより、第3の抗原結合ドメインを形成し、ここで2つの
単量体のFab部分はTTAに結合し、また「余分な」scFvドメインはCD3に結合
する。scFvドメインは、Fcドメインと単量体のCH1-Fv領域との間に挿入され
ることで、第3の抗原結合ドメインが提供され、ここで各単量体はscFvの成分を有す
る(例えば、一方の単量体は可変重鎖ドメインを含み、他方は可変軽鎖ドメインを含む)
【0173】
この実施形態では、一方の単量体は、第1の可変重鎖ドメイン、CH1ドメインおよび
Fcドメインを含む第1の重鎖ならびに追加的な可変軽鎖ドメインを含む。軽鎖ドメイン
は、重定常ドメインのCH1ドメインのC末端と第1のFcドメインのN末端との間でド
メインリンカーを用いて共有結合される。他方の単量体は、第1の可変重鎖ドメイン、C
H1ドメインおよびFcドメインを含む第1の重鎖ならびに追加的な可変重鎖ドメインを
含む。軽鎖ドメインは、重定常ドメインのCH1ドメインのC末端と第1のFcドメイン
のN末端との間でドメインリンカーを用いて共有結合される。
【0174】
この実施形態では、TTAに結合する2つの同一のFabを形成するため、重鎖と会合
する、可変軽鎖ドメインおよび定常軽鎖ドメインを含む共通軽鎖がさらに用いられる。本
明細書中の実施形態の多くに関して、これらの構築物は、本明細書で所望され、記載され
るように、歪曲変異体、pI変異体、切断変異体、追加的なFc変異体などを含む。
【0175】
本発明は、抗CD3 scFv配列が図2図7および図68に示されるような場合の
Central-Fv形式を提供する。
【0176】
本発明は、抗CD38配列が図8~10に示されるようなCentral-Fv形式を
提供する。
【0177】
本発明は、抗CD20配列が図面で示されるようなCD20抗原結合ドメインを有する
Central-Fv形式を提供する。
【0178】
本発明は、抗CD19配列が図面で示されるようなCD19抗原結合ドメインを有する
Central-Fv形式を提供する。
【0179】
本発明は、抗CD123配列が図面で示されるようなCD123抗原結合ドメインを有
するCentral-Fv形式を提供する。
【0180】
本発明は、図31で示されるような切断変異体を含むCentral-Fv形式を提供
する。
【0181】
本発明は、図29および34で示されるような歪曲変異体を含むCentral-Fv
形式を提供する。
【0182】
単一アームCentral-scFv
本発明に特定用途が見出される1つのヘテロ二量体スキャフォールドは、図1に示され
る単一アームCentral-scFv形式である。この実施形態では、一方の単量体が
Fcドメインのみを含む一方、他方の単量体では挿入されたscFvドメインが用いられ
ることにより、第2の抗原結合ドメインを形成する。この形式では、Fab部分がTTA
に結合しかつscFvがCD3に結合するかまたはその逆のいずれかである。scFvド
メインは、Fcドメインと単量体の一方のCH1-Fv領域との間に挿入される。
【0183】
この実施形態では、一方の単量体は、scFv可変軽鎖ドメイン、scFvリンカーお
よびscFv可変重鎖ドメインを含むscFvとともに、第1の可変重鎖ドメイン、CH
1ドメインおよびFcドメインを含む第1の重鎖を含む。scFvは、重定常ドメインの
CH1ドメインのC末端と第1のFcドメインのN末端との間でドメインリンカーを用い
て共有結合される。第2の単量体はFcドメインを含む。この実施形態では、Fabを形
成するため、重鎖と会合する、可変軽鎖ドメインおよび定常軽鎖ドメインを含む軽鎖がさ
らに用いられる。本明細書中の実施形態の多くに関して、これらの構築物は、本明細書で
所望され、記載されるように、歪曲変異体、pI変異体、切断変異体、追加的なFc変異
体などを含む。
【0184】
本発明は、抗CD3 scFv配列が図2図7および図68に示されるような場合の
単一アームcentral-scFv形式を提供する。
【0185】
本発明は、抗CD38配列が図8~10に示されるような単一アームCentral-
scFv形式を提供する。
【0186】
本発明は、抗CD20配列が図面で示されるようなCD20抗原結合ドメインを有する
単一アームCentral-scFv形式を提供する。
【0187】
本発明は、抗CD19配列が図面で示されるようなCD19抗原結合ドメインを有する
単一アームCentral-scFv形式を提供する。
【0188】
本発明は、抗CD123配列が図面で示されるようなCD123抗原結合ドメインを有
する単一アームCentral-scFv形式を提供する。
【0189】
本発明は、図31で示されるような切断変異体を含む単一アームCentral-sc
Fv形式を提供する。
【0190】
本発明は、図29および34で示されるような歪曲変異体を含む単一アームCentr
al-scFv形式を提供する。
【0191】
二重scFv形式
本発明はまた、当該技術分野で公知でありかつ図1に示されるような二重scFv形式
を提供する。
【0192】
本発明は、抗CD3 scFv配列が図2図7および図68に示されるような場合の
二重scFv形式を提供する。
【0193】
本発明は、抗CD38配列が図8~10に示されるような二重scFv形式を提供する
【0194】
本発明は、抗CD20配列が図面で示されるようなCD20抗原結合ドメインを有する
二重scFv形式を提供する。
【0195】
本発明は、抗CD19配列が図面で示されるようなCD19抗原結合ドメインを有する
二重scFv形式を提供する。
【0196】
本発明は、抗CD123配列が図面で示されるようなCD123抗原結合ドメインを有
する二重scFv形式を提供する。
【0197】
本発明は、図31で示されるような切断変異体を含む二重scFv形式を提供する。
【0198】
本発明は、図29および34で示されるような歪曲変異体を含む二重scFv形式を提
供する。
【0199】
標的抗原
本発明の二重特異性抗体は、2つの異なる抗原結合ドメイン、すなわちCD3に結合す
るもの(一般に一価的)、および標的腫瘍抗原に結合するもの(本明細書中で「TTA」
と称される場合がある)を有する。好適な標的腫瘍抗原として、限定はされないが、CD
20、CD38、CD123;ROR1、ROR2、BCMA;PSMA;SSTR2;
SSTR5、CD19、FLT3、CD33、PSCA、ADAM17、CEA、Her
2、EGFR、EGFR-vIII、CD30、FOLR1、GD-2、CA-IX、T
rop-2、CD70、CD38、メソセリン、EphA2、CD22、CD79b、G
PNMB、CD56、CD138、CD52、CD74、CD30、CD123、RON
、ERBB2、およびEGFRが挙げられる。
【0200】
「三重F」形式は、2つ(もしくは3つ以上)の異なる抗原を標的化する場合に特に有
利である(本明細書で概説されるように、この標的化は、形式に応じて、一価および二価
結合の任意の組み合わせであり得る)。したがって、本明細書中の免疫グロブリンは、好
ましくは、2つの標的抗原に共会合する。各単量体の特異性は、本明細書中のリストから
選択され得る。抗CD3結合ドメインを伴う用途としてさらに有用な二重特異性形式が図
1に示される。
【0201】
本明細書中のヘテロ二量体抗体の特に好適な適用は、各標的抗原に一価的に会合するこ
とが有利または重要である場合の共標的対である。かかる抗原は、例えば、免疫複合体形
成時に活性化される免疫受容体であってもよい。多数の免疫受容体の細胞活性化は単に、
典型的には抗体/抗原免疫複合体によって得られる架橋により、または標的細胞の会合に
対するエフェクター細胞を介して生じる。一部の免疫受容体、例えばT細胞上のCD3シ
グナル伝達受容体では、共会合される標的との会合時のみの活性化は、臨床状況下での非
特異的架橋がサイトカインストームおよび毒性を誘発し得ることから重要である。かかる
活性化は、本明細書中の免疫グロブリンを用いて、治療的にかかる抗原と多価的でなく一
価的に会合することにより、一次標的抗原の微小環境下に限り、単に架橋に応答して生じ
る。異なる結合価を有する2つの異なる抗原を標的化する能力は、本発明の新規かつ有用
な態様である。一価的に共会合することが治療的に有利または必要であり得る場合の標的
抗原の例として、限定はされないが、免疫活性化受容体、例えばCD3、FcγR、TL
R4およびTLR9などのToll様受容体(TLR)、サイトカイン、ケモカイン、サ
イトカイン受容体、およびケモカイン受容体が挙げられる。多数の実施形態では、抗原結
合部位の1つがCD3に結合し、また一部の実施形態では、それはscFv含有単量体で
ある。
【0202】
限定はされないが、サイトカインおよび膜結合因子(膜貫通受容体を含む)などの両方
の可溶性因子を含む、標的抗原の以下のリスト:17-IA、4-1BB、4Dc、6-
ケト-PGF1a、8-イソ-PGF2a、8-オキソ-dG、A1アデノシン受容体、
A33、ACE、ACE-2、アクチビン、アクチビンA、アクチビンAB、アクチビン
B、アクチビンC、アクチビンRIA、アクチビンRIA ALK-2、アクチビンRI
B ALK-4、アクチビンRIIA、アクチビンRIIB、ADAM、ADAM10、
ADAM12、ADAM15、ADAM17/TACE、ADAM8、ADAM9、AD
AMTS、ADAMTS4、ADAMTS5、アドレシン、aFGF、ALCAM、AL
K、ALK-1、ALK-7、α-1-抗トリプシン、α-V/β-1拮抗剤、ANG、
Ang、APAF-1、APE、APJ、APP、APRIL、AR、ARC、ART、
アルテミン、抗Id、ASPARTIC、心房性ナトリウム利尿因子、av/b3インテ
グリン、Axl、b2M、B7-1、B7-2、B7-H、Bリンパ球刺激物質(Bly
S)、BACE、BACE-1、Bad、BAFF、BAFF-R、Bag-1、BAK
、Bax、BCA-1、BCAM、Bcl、BCMA、BDNF、b-ECGF、bFG
F、BID、Bik、BIM、BLC、BL-CAM、BLK、BMP、BMP-2 B
MP-2a、BMP-3オステオゲニン、BMP-4 BMP-2b、BMP-5、BM
P-6 Vgr-1、BMP-7(OP-1)、BMP-8(BMP-8a、OP-2)
、BMPR、BMPR-IA(ALK-3)、BMPR-IB(ALK-6)、BRK-
2、RPK-1、BMPR-II(BRK-3)、BMP、b-NGF、BOK、ボンベ
シン、骨由来神経栄養因子、BPDE、BPDE-DNA、BTC、補体因子3(C3)
、C3a、C4、C5、C5a、C10、CA125、CAD-8、カルシトニン、cA
MP、がん胎児性抗原(CEA)、がん関連抗原、カテプシンA、カテプシンB、カテプ
シンC/DPPI、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンH、カテプシンL、カテプ
シンO、カテプシンS、カテプシンV、カテプシンX/Z/P、CBL、CCI、CCK
2、CCL、CCL1、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15
、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL2、CCL20、CCL2
1、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CC
L28、CCL3、CCL4、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9/1
0、CCR、CCR1、CCR10、CCR10、CCR2、CCR3、CCR4、CC
R5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CD1、CD2、CD3、CD3E、
CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD10、CD11a、CD11b、CD1
1c、CD13、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20、CD
21、CD22、CD23、CD25、CD27L、CD28、CD29、CD30、C
D30L、CD32、CD33(p67タンパク質)、CD34、CD38、CD40、
CD40L、CD44、CD45、CD46、CD49a、CD52、CD54、CD5
5、CD56、CD61、CD64、CD66e、CD74、CD80(B7-1)、C
D89、CD95、CD123、CD137、CD138、CD140a、CD146、
CD147、CD148、CD152、CD164、CEACAM5、CFTR、cGM
P、CINC、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)毒素、ウ
ェルシュ菌(Clostridium perfringens)毒素、CKb8-1、
CLC、CMV、CMV UL、CNTF、CNTN-1、COX、C-Ret、CRG
-2、CT-1、CTACK、CTGF、CTLA-4、CX3CL1、CX3CR1、
CXCL、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6
、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、
CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCR、CXCR1、C
XCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、サイトケラチン腫瘍関連
抗原、DAN、DCC、DcR3、DC-SIGN、崩壊促進因子、des(1-3)-
IGF-I(脳IGF-1)、Dhh、ジゴキシン、DNAM-1、デオキシリボヌクレ
アーゼ、Dpp、DPPIV/CD26、Dtk、ECAD、EDA、EDA-A1、E
DA-A2、EDAR、EGF、EGFR(ErbB-1)、EMA、EMMPRIN、
ENA、エンドセリン受容体、エンケファリナーゼ、eNOS、Eot、エオタキシン1
、EpCAM、エフリンB2/EphB4、EPO、ERCC、E-セレクチン、ET-
1、第IIa因子、第VII因子、第VIIIc因子、第IX因子、線維芽細胞活性化タ
ンパク質(FAP)、Fas、FcR1、FEN-1、フェリチン、FGF、FGF-1
9、FGF-2、FGF3、FGF-8、FGFR、FGFR-3、フィブリン、FL、
FLIP、Flt-3、Flt-4、卵胞刺激ホルモン、フラクタルカイン、FZD1、
FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、
FZD10、G250、Gas 6、GCP-2、GCSF、GD2、GD3、GDF、
GDF-1、GDF-3(Vgr-2)、GDF-5(BMP-14、CDMP-1)、
GDF-6(BMP-13、CDMP-2)、GDF-7(BMP-12、CDMP-3
)、GDF-8(ミオスタチン)、GDF-9、GDF-15(MIC-1)、GDNF
、GDNF、GFAP、GFRa-1、GFR-α1、GFR-α2、GFR-α3、G
ITR、グルカゴン、Glut 4、糖タンパク質IIb/IIIa(GPIIb/II
Ia)、GM-CSF、gp130、gp72、GRO、成長ホルモン放出因子、ハプテ
ン(NP-capまたはNIP-cap)、HB-EGF、HCC、HCMV gBエン
ベロープ糖タンパク質、HCMV)gHエンベロープ糖タンパク質、HCMV UL、造
血成長因子(HGF)、Hep B gp120、ヘパラナーゼ、Her2、Her2/
neu(ErbB-2)、Her3(ErbB-3)、Her4(ErbB-4)、単純
ヘルペスウイルス(HSV)gB糖タンパク質、HSV gD糖タンパク質、HGFA、
高分子量メラノーマ関連抗原(HMW-MAA)、HIV gp120、HIV III
B gp120 V3ループ、HLA、HLA-DR、HM1.24、HMFG PEM
、HRG、Hrk、ヒト心臓ミオシン、ヒトサイトメガロウイルス(human cyt
omegalovirus)(HCMV)、ヒト成長ホルモン(HGH)、HVEM、I
-309、IAP、ICAM、ICAM-1、ICAM-3、ICE、ICOS、IFN
g、Ig、IgA受容体、IgE、IGF、IGF結合タンパク質、IGF-1R、IG
FBP、IGF-I、IGF-II、IL、IL-1、IL-1R、IL-2、IL-2
R、IL-4、IL-4R、IL-5、IL-5R、IL-6、IL-6R、IL-8、
IL-9、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-18、IL-18
R、IL-23、インターフェロン(INF)-α、INF-β、INF-γ、インヒビ
ン、iNOS、インスリンA鎖、インスリンB鎖、インスリン様成長因子1、インテグリ
ンα2、インテグリンα3、インテグリンα4、インテグリンα4/β1、インテグリン
α4/β7、インテグリンα5(αV)、インテグリンα5/β1、インテグリンα5/
β3、インテグリンα6、インテグリンβ1、インテグリンβ2、インターフェロンγ、
IP-10、I-TAC、JE、カリクレイン2、カリクレイン5、カリクレイン6、、
カリクレイン11、カリクレイン12、カリクレイン14、カリクレイン15、カリクレ
インL1、カリクレインL2、カリクレインL3、カリクレインL4、KC、KDR、ケ
ラチノサイト成長因子(KGF)、ラミニン5、LAMP、LAP、LAP(TGF-1
)、潜在型TGF-1、潜在型TGF-1 bp1、LBP、LDGF、LECT2、L
efty、ルイスY抗原、ルイスY関連抗原、LFA-1、LFA-3、Lfo、LIF
、LIGHT、リポタンパク質、LIX、LKN、Lptn、L-セレクチン、LT-a
、LT-b、LTB4、LTBP-1、肺界面活性剤、黄体形成ホルモン、リンホトキシ
ンβ受容体、Mac-1、MAdCAM、MAG、MAP2、MARC、MCAM、MC
AM、MCK-2、MCP、M-CSF、MDC、Mer、METALLOPROTEA
SES、MGDF受容体、MGMT、MHC(HLA-DR)、MIF、MIG、MIP
、MIP-1-α、MK、MMAC1、MMP、MMP-1、MMP-10、MMP-1
1、MMP-12、MMP-13、MMP-14、MMP-15、MMP-2、MMP-
24、MMP-3、MMP-7、MMP-8、MMP-9、MPIF、Mpo、MSK、
MSP、ムチン(Muc1)、MUC18、ミュラー管抑制因子、Mug、MuSK、N
AIP、NAP、NCAD、N-カドヘリン、NCA90、NCAM、NCAM、ネプリ
ライシン、ニューロトロフィン-3、-4、もしくは-6、ニュールツリン、神経細胞成
長因子(NGF)、NGFR、NGF-β、nNOS、NO、NOS、Npn、NRG-
3、NT、NTN、OB、OGG1、OPG、OPN、OSM、OX40L、OX40R
、p150、p95、PADPr、副甲状腺ホルモン、PARC、PARP、PBR、P
BSF、PCAD、P-カドヘリン、PCNA、PDGF、PDGF、PDK-1、PE
CAM、PEM、PF4、PGE、PGF、PGI2、PGJ2、PIN、PLA2、胎
盤アルカリホスファターゼ(PLAP)、PlGF、PLP、PP14、プロインスリン
、プロレラキシン、プロテインC、PS、PSA、PSCA、前立腺特異膜抗原(PSM
A)、PTEN、PTHrp、Ptk、PTN、R51、RANK、RANKL、RAN
TES、RANTES、レラキシンA鎖、レラキシンB鎖、レニン、呼吸器多核体ウイル
ス(respiratory syncytial virus)(RSV)F、RSV
Fgp、Ret、リウマトイド因子、RLIP76、RPA2、RSK、S100、S
CF/KL、SDF-1、SERINE、血清アルブミン、sFRP-3、Shh、SI
GIRR、SK-1、SLAM、SLPI、SMAC、SMDF、SMOH、SOD、S
PARC、Stat、STEAP、STEAP-II、TACE、TACI、TAG-7
2(腫瘍関連糖タンパク質-72)、TARC、TCA-3、T細胞受容体(例えば、T
細胞受容体α/β)、TdT、TECK、TEM1、TEM5、TEM7、TEM8、T
ERT、精巣PLAP様アルカリホスファターゼ、TfR、TGF、TGF-α、TGF
-β、TGF-β Pan特異的、TGF-β RI(ALK-5)、TGF-β RI
I、TGF-β RIIb、TGF-β RIII、TGF-β1、TGF-β2、TG
F-β3、TGF-β4、TGF-β5、トロンビン、胸腺Ck-1、甲状腺刺激ホルモ
ン、Tie、TIMP、TIQ、組織因子、TMEFF2、Tmpo、TMPRSS2、
TNF、TNF-α、TNF-αβ、TNF-β2、TNFc、TNF-RI、TNF-
RII、TNFRSF10A(TRAIL R1 Apo-2、DR4)、TNFRSF
10B(TRAIL R2 DR5、KILLER、TRICK-2A、TRICK-B
)、TNFRSF10C(TRAIL R3 DcR1、LIT、TRID)、TNFR
SF10D(TRAIL R4 DcR2、TRUNDD)、TNFRSF11A(RA
NK ODF R、TRANCER)、TNFRSF11B(OPG OCIF、TR1
)、TNFRSF12(TWEAK R FN14)、TNFRSF13B(TACI)


TNFRSF13C(BAFF R)、TNFRSF14(HVEM ATAR、Hve
A、LIGHT R、TR2)、TNFRSF16(NGFR p75NTR)、TNF
RSF17(BCMA)、TNFRSF18(GITR AITR)、TNFRSF19
(TROY TAJ、TRADE)、TNFRSF19L(RELT)、TNFRSF1
A(TNF RI CD120a、p55-60)、TNFRSF1B(TNF RII
CD120b、p75-80)、TNFRSF26(TNFRH3)、TNFRSF3
(LTbR TNF RIII、TNFCR)、TNFRSF4(OX40 ACT35
、TXGP1 R)、TNFRSF5(CD40 p50)、TNFRSF6(Fas
Apo-1、APT1、CD95)、TNFRSF6B(DcR3 M68、TR6)、
TNFRSF7(CD27)、TNFRSF8(CD30)、TNFRSF9(4-1B
B CD137、ILA)、TNFRSF21(DR6)、TNFRSF22(DcTR
AIL R2 TNFRH2)、TNFRST23(DcTRAIL R1TNFRH1
)、TNFRSF25(DR3 Apo-3、LARD、TR-3、TRAMP、WSL
-1)、TNFSF10(TRAIL Apo-2リガンド、TL2)、TNFSF11
(TRANCE/RANKリガンドODF、OPGリガンド)、TNFSF12(TWE
AK Apo-3リガンド、DR3リガンド)、TNFSF13(APRIL TALL
2)、TNFSF13B(BAFF BLYS、TALL1、THANK、TNFSF2
0)、TNFSF14(LIGHT HVEMリガンド、LTg)、TNFSF15(T
L1A/VEGI)、TNFSF18(GITRリガンドAITRリガンド、TL6)、
TNFSF1A(TNF-aコネクチン、DIF、TNFSF2)、TNFSF1B(T
NF-b LTa、TNFSF1)、TNFSF3(LTb TNFC、p33)、TN
FSF4(OX40リガンドgp34、TXGP1)、TNFSF5(CD40リガンド
CD154、gp39、HIGM1、IMD3、TRAP)、TNFSF6(Fasリ
ガンドApo-1リガンド、APT1リガンド)、TNFSF7(CD27リガンド C
D70)、TNFSF8(CD30リガンド CD153)、TNFSF9(4-1BB
リガンド CD137リガンド)、TP-1、t-PA、Tpo、TRAIL、TRAI
L R、TRAIL-R1、TRAIL-R2、TRANCE、トランスフェリング受容
体、TRF、Trk、TROP-2、TSG、TSLP、腫瘍関連抗原CA125、腫瘍
関連抗原発現ルイスY関連炭水化物、TWEAK、TXB2、Ung、uPAR、uPA
R-1、ウロキナーゼ、VCAM、VCAM-1、VECAD、VE-カドヘリン、VE
-カドヘリン-2、VEFGR-1(flt-1)、VEGF、VEGFR、VEGFR
-3(flt-4)、VEGI、VIM、ウイルス抗原、VLA、VLA-1、VLA-
4、VNRインテグリン、ヴォン・ヴィレブランド因子、WIF-1、WNT1、WNT
2、WNT2B/13、WNT3、WNT3A、WNT4、WNT5A、WNT5B、W
NT6、WNT7A、WNT7B、WNT8A、WNT8B、WNT9A、WNT9A、
WNT9B、WNT10A、WNT10B、WNT11、WNT16、XCL1、XCL
2、XCR1、XCR1、XEDAR、XIAP、XPD、ならびにホルモンおよび成長
因子に対する受容体に属するタンパク質、サブユニット、ドメイン、モチーフ、および/
またはエピトープを含む実質的に任意の抗原は、本明細書中の免疫グロブリンによって標
的化してもよい。
【0203】
本発明の免疫グロブリンによって特異的に標的化され得る例示的な抗原として、限定は
されないが、CD20、CD19、Her2、EGFR、EpCAM、CD3、FcγR
IIIa(CD16)、FcγRIIa(CD32a)、FcγRIIb(CD32b)
、FcγRI(CD64)、TLR4およびTLR9などのToll様受容体(TLR)
、IL-2、IL-5、IL-13、IL-12、IL-23、およびTNFαなどのサ
イトカイン、IL-2Rなどのサイトカイン受容体、ケモカイン、ケモカイン受容体、V
EGFおよびHGFなどの成長因子などが挙げられる。本発明の二重特異性抗体を形成す
るため、これらの抗原の任意の組み合わせに対する抗体を作製可能である、すなわち、こ
れらの抗原の各々は、本発明に従う二重特異性抗体から任意選択的かつ独立的に含めるか
または除外することができる。
【0204】
二重特異性抗体における特に好ましい組み合わせは、CD3に対する抗原結合ドメイン
、ならびにCD19、CD20、CD38およびCD123に結合するドメインから選択
される抗原結合ドメインであり、それらの配列は図面で示される。
【0205】
本発明の核酸
本発明は、本発明の二重特異性抗体をコードする核酸組成物をさらに提供する。当業者
によって理解されるように、核酸組成物は、ヘテロ二量体タンパク質の形式およびスキャ
フォールドに依存することになる。したがって、例えば形式が、例えば三重F形式(例え
ば、FcドメインおよびscFvを含む第1のアミノ酸単量体、重鎖および軽鎖を含む第
2のアミノ酸単量体)として3つのアミノ酸配列を必要とする場合、発現のため、3つの
核酸配列が1つ以上の発現ベクターに組み込まれ得る。同様に、一部の形式(例えば、図
1に開示されるような二重scFv形式)では2つの核酸のみが必要であり、さらにそれ
らは1つもしくは2つの発現ベクターに挿入され得る。
【0206】
当該技術分野で公知であるように、本発明の成分をコードする核酸は、当該技術分野で
公知の、本発明のヘテロ二量体抗体を産生するために用いられる宿主細胞に応じた発現ベ
クターに組み込まれ得る。一般に、核酸は、幾つもの調節エレメント(プロモーター、複
製起点、選択可能なマーカー、リボソーム結合部位、誘導因子など)に作動可能に連結さ
れる。発現ベクターは、染色体外または組み込みベクターであり得る。
【0207】
次に、本発明の核酸および/または発現ベクターは、多数の実施形態で用途が見出され
る、哺乳類細胞(例えばCHO細胞)とともに、哺乳類、細菌、酵母、昆虫および/また
は真菌細胞を含む、当該技術分野で周知であるような幾つもの異なるタイプの宿主細胞に
形質転換される。
【0208】
一部の実施形態では、各単量体をコードする核酸および軽鎖をコードする任意選択的な
核酸は各々、形式に応じて適用可能である場合、一般に異なるまたは同じプロモーターの
制御下で単一の発現ベクター内に含まれる。本発明における特定用途の実施形態では、こ
れらの2つもしくは3つの核酸の各々は、異なる発現ベクター上に含まれる。本明細書お
よび米国特許出願62/025,931号明細書(本明細書で参照により援用される)に
示されるように、ヘテロ二量体の形成を駆動するため、異なるベクター比を用いることが
できる。すなわち、意外にも、タンパク質が第1の単量体:第2の単量体:軽鎖(ヘテロ
二量体抗体を含む3つのポリペプチドを有する本明細書中の多数の実施形態の場合)を1
:1:2の比で含む一方、これらは最良の結果をもたらす比ではない。エラー!参照元が
見出されないを参照のこと。
【0209】
本発明のヘテロ二量体抗体は、当該技術分野で周知のように、発現ベクターを含む宿主
細胞を培養することにより作製される。産生されると、イオン交換クロマトグラフィース
テップを含む従来の抗体精製ステップが実施される。本明細書で考察のように、少なくと
も0.5異なる2つの単量体のpIを有することで、イオン交換クロモトグラフィーまた
は等電点電気泳動、または等電点に感受性がある他の方法による分離が可能であり得る。
すなわち、各単量体の等電点(pI)を、各単量体が異なるpIを有し、かつヘテロ二量
体も異なるpIを有するように変更するpI置換を含めることにより、「三重F」ヘテロ
二量体の等電点精製が容易になる(例えば、陰イオン交換カラム、陽イオン交換カラム)
。これらの置換はまた、精製後の任意の汚染性の二重scFv-FcおよびmAbホモ二
量体の測定および監視を援助する(例えば、IEFゲル、cIEF、および分析用IEX
カラム)。
【0210】
治療
本発明の組成物は、作製されると、幾つかの適用において用途が見出される。CD20
、CD38およびCD123はすべて、多数の造血器腫瘍および様々な造血器腫瘍由来の
細胞株において制御されず、そのため、本発明のヘテロ二量体抗体は、がん、例えば限定
はされないがすべてのB細胞リンパ腫および白血病、例えば限定はされないが、非ホジキ
ンリンパ腫(NHL)、バーキットリンパ腫(BL)、多発性骨髄腫(MM)、B慢性リ
ンパ性白血病(B-CLL)、BおよびT急性リンパ性白血病(ALL)、T細胞リンパ
腫(TCL)、急性骨髄性白血病(AML)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、ホジキン
リンパ腫(HL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫、および慢性骨
髄性白血病(CML)の治療に用途が見出される。
【0211】
したがって、本発明のヘテロ二量体組成物は、これらのがんの治療において用途が見出
される。
【0212】
インビボ投与用の抗体組成物
本発明に従って用いられる抗体の製剤は、貯蔵のため、凍結乾燥製剤または水溶液の形
態で、所望される純度を有する抗体を任意選択的な薬学的に許容できる担体、賦形剤もし
くは安定剤と混合することによって調製される(Remington’s Pharma
ceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed
.[1980])。許容できる担体、賦形剤、または安定剤は、用いられる用量および濃
度でレシピエントに対して非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸など
の緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;保存料(例えば、オクタデ
シルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム
、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;メチルもしく
はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキ
サノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポ
リペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;ポ
リビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒス
チジン、アルギニン、もしくはリジンなどのアミノ酸;単糖、二糖、および他の糖類、例
えばグルコース、マンノース、もしくはデキストリン;EDTAなどのキレート剤;スク
ロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトールなどの糖類;ナトリウムなど
の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);および/またはツイー
ン(商標)、プルロニック(商標)もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非
イオン性界面活性剤を含む。
【0213】
本明細書中の製剤はまた、治療中の特定の徴候に対して必要に応じて2つ以上の活性化
合物、好ましくは互いに有害作用を及ぼさない相補的活性を有するものを含有してもよい
。例えば、他の特異性を有する抗体を提供することが望ましい場合がある。あるいは、ま
たはさらに、本組成物は、細胞毒性薬、サイトカイン、成長阻害剤および/または小分子
拮抗剤を含んでもよい。かかる分子は、意図される目的に対して有効な量で好適に共存す
る。
【0214】
活性成分はまた、コロイド状薬剤送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロス
フェア、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルショ
ンで、例えばコアセルベーション技術または界面重合により調製されたマイクロカプセル
、例えば各々、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセルおよびポ
リ-(メチルメタクリル酸)マイクロカプセルに封入してもよい。かかる技術は、Rem
ington’s Pharmaceutical Sciences 16th ed
ition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0215】
インビボ投与として用いられるべき製剤は、滅菌またはほぼ滅菌されるべきである。こ
れは滅菌濾過膜を介する濾過により、容易に達成される。
【0216】
徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の適例として抗体を含有する固体疎水性ポリ
マーの半透性マトリックスが挙げられ、マトリックスは、成型物、例えば、フィルム、ま
たはマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの例として、ポリエステル、ハ
イドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、もしくはポリ(
ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号明細書)、L-グル
タミン酸およびγ-エチル-L-グルタミン酸の共重合体、非分解性エチレン-酢酸ビニ
ル、分解性乳酸-グリコール酸共重合体、例えばリュープロンデポー(商標)(乳酸-グ
リコール酸共重合体および酢酸リュープロリドからなる注射用マイクロスフェア)、およ
びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン-酢酸ビニルおよび乳
酸-グリコール酸などのポリマーが100日超にわたる分子の放出を可能にする一方、特
定のハイドロゲルはタンパク質をより短い期間放出する。
【0217】
被包された抗体は、体内で長期間残存するとき、37℃で水分に曝される結果として変
性または凝集し得、生物学的活性の低下および免疫原性におけるあり得る変化をもたらす
。安定化のため、関与する機構に依存した合理的戦略が考案され得る。例えば、凝集機構
がチオ-ジスルフィド交換を通じた分子間S--S結合の形成であることが発見される場
合、安定化は、スルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥化し、水分含量を制
御し、適切な添加剤を用い、また特定のポリマーマトリックス組成物を開発することによ
り、達成され得る。
【0218】
投与様式
本発明の抗体および化学療法剤は、公知の方法、例えばボーラスとしての静脈内投与に
従い、または長期間にわたる持続注入により、筋肉内、腹腔内、大脳脊髄内、皮下、関節
内、滑液嚢内、くも膜下腔内、経口、局所、または吸入経路により、被験者に投与される
。抗体の静脈内または皮下投与が好ましい。
【0219】
治療様式
本発明の方法では、疾患もしくは状態に対して正の治療応答を提供するような治療法が
用いられる。「正の治療応答」は、疾患もしくは状態における改善、および/または疾患
もしくは状態に関連した症状における改善が意図される。例えば、正の治療応答であれば
、疾患における以下の改善、すなわち、(1)腫瘍性細胞数の減少;(2)腫瘍性細胞死
の増加;(3)腫瘍性細胞生存の阻害;(5)腫瘍成長の阻害(すなわち、ある程度の緩
徐化、好ましくは停止);(6)患者生存率の増加;および(7)疾患もしくは状態に関
連した1つ以上の症状からの部分的緩和のうちの1つ以上を指すことになる。
【0220】
任意の所与の疾患もしくは状態における正の治療応答は、その疾患もしくは状態に特異
的な標準化された応答判定基準によって判定され得る。腫瘍応答は、磁気共鳴画像法(M
RI)スキャン、X線撮影イメージング、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、骨ス
キャンイメージング、内視鏡検査、ならびに骨髄吸引(BMA)を含む腫瘍生検サンプリ
ングおよび循環中の腫瘍細胞の計数などのスクリーニング技術を用いて、腫瘍形態学上の
変化(すなわち、全腫瘍負荷量、腫瘍サイズなど)について評価され得る。
【0221】
これらの正の治療応答に加えて、治療を受けている被験者は、疾患に関連した症状にお
ける改善の有益な効果を経験し得る。
【0222】
疾患における改善は、完全寛解として特徴付けてもよい。「完全寛解」は、骨髄腫の症
例における、任意の過去の異常なX線撮影試験、骨髄、および脳脊髄液(CSF)または
異常なモノクローナルタンパク質の正常化とともに、臨床的に検出可能な疾患が存在しな
いことが意図される。
【0223】
かかる応答は、本発明の方法に従う治療後、少なくとも4~8週間、またはときとして
6~8週間持続し得る。あるいは、疾患における改善は、部分寛解であるものとして分類
してもよい。「部分寛解」は、4~8週間、または6~8週間持続し得る、新しい病変の
不在下での、あらゆる測定可能な腫瘍負荷量(すなわち、被験者中に存在する悪性細胞の
数、または測定される大量の腫瘤または異常なモノクローナルタンパク質の量)における
少なくとも約50%の低下が意図される。
【0224】
本発明に従う治療は、用いられる薬剤の「治療有効量」を含む。「治療有効量」は、所
望される治療結果を得るための用量および必要な期間での有効な量を指す。
【0225】
治療有効量は、個人の病態、年齢、性別、および体重などの要素、ならびに薬剤が個人
において所望される応答を誘起する能力に従って変化し得る。治療有効量はまた、抗体ま
たは抗体部分の任意の有毒または有害な効果を治療的に有益な効果が上回る場合のもので
ある。
【0226】
腫瘍治療における「治療有効量」はまた、疾患の進行を安定化させるその能力により測
定してもよい。がんを阻害する化合物の能力は、ヒト腫瘍における有効性を予測する動物
モデル系において評価してもよい。
【0227】
あるいは、組成物のこの特性は、細胞成長を阻害するかまたはアポトーシスを誘導する
化合物の能力を熟練施術者に公知のインビトロアッセイにより試験することによって評価
してもよい。治療化合物の治療有効量は、腫瘍サイズを減少させ得るか、または代わりに
被験者における症状を寛解させ得る。当業者であれば、被験者のサイズ、被験者の症状の
重症度、および選択される特定組成物または投与経路などの要素に基づいてかかる量を決
定できることになる。
【0228】
投与計画は、所望される最適応答(例えば治療応答)をもたらすように調整される。例
えば、治療状況の緊急事態で示されるように、単回ボーラスを投与してもよく、数回の分
割用量を経時的に投与してもよく、またはその用量は比例的に減少または増加させてもよ
い。非経口組成物は、投与の容易性および用量の均一性のため、用量単位形態で調合して
もよい。用量単位形態は、本明細書で用いられるとき、治療されるべき被験者に対して単
位用量として適した物理的に分かれた単位を指し、各単位は、必要とされる薬学的担体と
の関連で所望される治療効果をもたらすように算出される所定量の活性化合物を含有する
【0229】
本発明の用量単位形態に対する仕様は、(a)活性化合物の固有の特性および達成され
るべき特定の治療効果、ならびに(b)個体における感受性の治療のため、かかる活性化
合物を調合するうえでの当該技術分野での固有の制限によって指定され、それらに直接的
に依存する。
【0230】
本発明で用いられる二重特異性抗体における効果的用量および投与計画は、治療される
べき疾患または状態に依存し、当業者によって決定してもよい。
【0231】
本発明で用いられる二重特異性抗体の治療有効量における例示的な非限定的範囲は、約
0.1~100mg/kg、例えば約0.1~50mg/kg、例えば約0.1~20m
g/kg、例えば約0.1~10mg/kg、例えば約0.5、例えば約0.3、約1、
または約3mg/kgである。別の実施形態では、抗体は、1mg/kg以上の用量、例
えば1~20mg/kgの用量、例えば5~20mg/kgの用量、例えば8mg/kg
の用量で投与される。
【0232】
当該技術分野における通常の技能を有する医療従事者は、必要とされる医薬組成物の有
効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師または獣医師であれば、医薬
組成物中に用いられる薬剤の投与を所望される治療効果を得るために必要とされるレベル
より低いレベルで開始し、所望される効果が得られるまで用量を漸増させることができる
【0233】
一実施形態では、二重特異性抗体は、10~500mg/kg、例えば200~400
mg/kgの週用量で注入により投与される。かかる投与は、例えば1~8回、例えば3
~5回、反復してもよい。投与は、2~24時間、例えば2~12時間の期間にわたり、
持続注入により実施してもよい。
【0234】
一実施形態では、二重特異性抗体は、毒性を含む副作用の低減が必要である場合、例え
ば24時間を超えるような長期間にわたっての緩徐な持続注入により投与される。
【0235】
一実施形態では、二重特異性抗体は、250mg~2000mg、例えば300mg、
500mg、700mg、1000mg、1500mgもしくは2000mgなどの週用
量で最大で8回、例えば4~6回投与される。投与は、2~24時間、例えば2~12時
間の期間にわたる持続注入により実施してもよい。かかるレジメンは、例えば6か月もし
くは12か月後、必要に応じて1回以上反復してもよい。用量は、投与時、血液中の本発
明の化合物の量を、例えば生物学的試料を採取し、二重特異性抗体の抗原結合領域を標的
化する抗イディオタイプ抗体を用いることにより測定することによって決定または調節し
てもよい。
【0236】
さらなる実施形態では、二重特異性抗体は、2~12週間、例えば3~10週間、例え
ば4~8週間、毎週1回投与される。
【0237】
一実施形態では、二重特異性抗体は、例えば6か月以上の期間にわたって週に1回のよ
うな維持治療により投与される。
【0238】
一実施形態では、二重特異性抗体は、二重特異性抗体の1回の注入と、その後の放射性
同位元素に複合させた二重特異性抗体の注入とを含むレジメンにより投与される。レジメ
ンは、例えば7~9日後、反復してもよい。
【0239】
非限定例として、本発明に従う治療は、単回または24、12、8、6、4、もしくは
2時間ごとの分割用量、または任意の組み合わせを用いて、1日あたり約0.1~100
mg/kg、例えば、0.5、0.9、1.0、1.1、1.5、2、3、4、5、6、
7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、2
1、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60
、70、80、90もしくは100mg/kgの量での抗体の一日量として、治療の開始
後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16
、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、
30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、もしくは40日目に少
なくとも1回、または代わりに、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、1
2、13、14、15、16、17、18、19もしくは20週目に少なくとも1回、ま
たはそれらの任意の組み合わせとして提供してもよい。
【0240】
一部の実施形態では、その二重特異性抗体分子は、1つ以上の追加的な治療薬、例えば
化学療法剤と併用される。DNA損傷化学療法剤の非限定例として、トポイソメラーゼI
阻害剤(例えば、イリノテカン、トポテカン、カンプトテシンおよびそれらの類似体もし
くは代謝産物、およびドキソルビシン);トポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エトポ
シド、テニポシド、およびダウノルビシン);アルキル化剤(例えば、メルファラン、ク
ロラムブシル、ブスルファン、チオテパ、イホスファミド、カルムスチン、ロムスチン、
セムスチン、ストレプトゾシン、デカルバジン、メトトレキサート、マイトマイシンC、
およびシクロホスファミド);DNA干渉物質(例えば、シスプラチン、オキサリプラチ
ン、およびカルボプラチン);DNA干渉物質および遊離ラジカル発生剤、例えばブレオ
マイシン;およびヌクレオシドミメティック(例えば、5-フルオロウラシル、カペシチ
ビン、ゲムシタビン、フルダラビン、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、ペ
ントスタチン、およびヒドロキシ尿素)が挙げられる。
【0241】
細胞複製を破壊する化学療法剤として、パクリタキセル、ドセタキセル、および関連類
似体;ビンクリスチン、ビンブラスチン、および関連類似体;サリドマイド、レナリドミ
ド、および関連類似体(例えば、CC-5013およびCC-4047);タンパク質チ
ロシンキナーゼ阻害剤(例えば、メシル酸イマチニブおよびゲフィチニブ);プロテアソ
ーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ);IκBキナーゼの阻害剤を含むNF-κB阻害剤
;がんにおいて過剰発現されるタンパク質に結合し、それにより細胞複製を下方制御する
抗体(例えば、トラスツズマブ、リツキシマブ、セツキシマブ、およびベバシズマブ);
およびがんにおいて上方制御、過剰発現または活性化されることが公知のタンパク質また
は酵素の他の阻害剤(それらの阻害により細胞複製が下方制御される)が挙げられる。
【0242】
一部の実施形態では、本発明の抗体は、ベルケイド(登録商標)(ボルテゾミブ)での
治療前、治療と同時、または治療後に用いることができる。
【0243】
すべての引用される参考文献は、それらの全体が参照により本明細書中に明示的に援用
される。
【0244】
本発明の特定の実施形態が例示目的で説明されているが、詳細の極めて多数の変形形態
が、添付の特許請求の範囲に記載されるような本発明から逸脱することなくなされ得るこ
とは当業者によって理解されるであろう。
【実施例0245】
本発明を例示するため、実施例が以下に提供される。これらの実施例は、本発明を任意
の特定の適用または動作理論に限定することを意味しない。本発明で考察されるあらゆる
定常領域位置についての付番は、KabatなどのEUインデックスに従う(Kabat
et al.,1991,Sequences of Proteins of Im
munological Interest,5th Ed.,United Stat
es Public Health Service,National Instit
utes of Health,Bethesda、全体として参照により援用される)
。抗体に関する当業者は、この慣習が免疫グロブリン配列の特定領域内での非連続的な付
番からなり、免疫グロブリンファミリー中の保存された位置に対する規準化された参照を
可能にすることを理解するであろう。したがって、EUインデックスによって定義される
ような任意の所与の免疫グロブリンの位置は、その連続的配列に必ずしも対応しないこと
になる。
【0246】
一般および特定の科学技術は、米国特許出願公開第2015/0307629号明細書
、米国特許出願公開第2014/0288275号明細書および国際公開第2014/1
45806号(これらのすべては、その全体および特にその中に概説される技術が、参照
により明示的に援用される)に概説されている。
【0247】
実施例
実施例1:代替形式
二重特異体の産生
抗CD38×抗CD3二重特異体の模式図を図1に示す。抗CD38×抗CD3二重特
異体の代替形式としてのアミノ酸配列を図39図43に列挙する。二重特異性の発現に
とって必要とされる3本の鎖をコードするDNAを、遺伝子合成(Blue Heron
Biotechnology,Bothell,Wash.)により作製し、標準の分
子生物学技術を用いて発現ベクターpTT5にサブクローニングした。部位特異的変異誘
発(QuikChange,Stratagene,Cedar Creek,Tex.
)または追加的な遺伝子合成およびサブクローニングのいずれかを用いて置換を導入した
。発現のため、HEK293E細胞にDNAを遺伝子導入し、得られたタンパク質を、プ
ロテインA親和性(GE Healthcare)および陽イオン交換クロマトグラフィ
ーを用いて上清から精製した。プロテインAアフィニティー精製後の収率を図35に示す
。陽イオン交換クロマトグラフィー精製を、50mM MESの洗浄/平衡化緩衝液(p
H6.0)および50mM MESの溶出緩衝液(pH6.0+1M NaCl直線勾配
)を有するHiTrap SP HPカラム(GE Healthcare)を用いて実
施した(クロマトグラムについては図36を参照)。
【0248】
再誘導されたT細胞細胞傷害性
抗CD38×抗CD3二重特異体を、CD38+RPMI8266骨髄腫細胞株の再誘
導されたT細胞細胞傷害性(RTCC)についてインビトロで特徴付けた。10kのRP
MI8266細胞を、500kのヒトPBMCとともに24時間インキュベートした。R
TCCを、図示のようにLDH蛍光により測定した(図37を参照)。
【0249】
実施例2
再誘導されたT細胞細胞傷害性
抗CD38×抗CD3 Fab-scFv-Fc二重特異体を、CD38+RPMI8
266骨髄腫細胞株の再誘導されたT細胞細胞傷害性(RTCC)についてインビトロで
特徴付けた。40kのRPMI8266細胞を、400kのヒトPBMCとともに96時
間インキュベートした。RTCCを、図示のようにフローサイトメトリーにより測定した
図44を参照)。CD69、Ki-67、およびPI-9のCD4+およびCD8+T
細胞発現についてもフローサイトメトリーにより特徴付けたが、それを図45に示す。
【0250】
抗腫瘍活性のマウスモデル
-23日目、NOD重症複合免疫不全γ(NSG)マウス5匹からなる4つの群の各々
に、5×10のRPMI8226TrS腫瘍細胞(多発性骨髄腫、ルシフェラーゼを発
現する)を静脈内尾静脈注射により移植した。0日目、マウスの腹腔内に10×10
ヒトPBMCを移植した。0日目のPBMCの移植後、被験物を毎週(0、7日目)、図
4に表示される用量レベルで腹腔内注射により投与する。試験設計を図46にさらにまと
める。腫瘍成長を、インビボイメージングシステム(IVIS(登録商標))を用いて全
フラックス/マウスを測定することにより監視した。XmAb13551およびXmAb
15426の両方は、実質的な抗腫瘍効果を示した(図47および図48を参照)。
【0251】
カニクイザルにおける試験
カニクイザルに抗CD38×抗CD3二重特異体を単回用量で与えた。抗RSV×抗C
D3二重特異性対照も含めた。用量レベルは、(3つの独立試験において)20μg/k
gのXmAb13551(n=2)、0.5mg/kgのXmAb15426(n=3)
、3mg/kgのXmAb14702(n=3)、または3mg/kgのXmAb132
45(抗RSV×抗CD3対照、n=3)であった。抗CD38×抗CD3二重特異体は
、末梢血中のCD38+細胞を迅速に枯渇させた(図49を参照)。抗CD38×抗CD
3二重特異体は、CD69の発現による測定の通り、T細胞活性化をもたらした(図50
を参照)。IL-6の血清レベルも測定した(図51を参照)。XmAb13551と比
べて、XmAb15426がCD38+細胞の枯渇の持続時間延長とT細胞活性化および
IL-6産生のレベル低下とを有したことは注目すべきである。
【0252】
XmAb15426およびXmAb14702は各々、0.5mg/kgおよび3mg
/kgの単回用量で試験した。両方の抗体は、これらのより高用量で良好な耐容性を示し
、治療したサル由来の血清中で認められた中等度レベルのIL6に一致した。さらに、中
程度のCD3親和性を有するXmAb15426は、0.5mg/kgでCD38+細胞
を、2、5もしくは20μg/kgで投与した元の高親和性のXmAb13551と比べ
てより効果的に枯渇させた。XmAb15426による枯渇は、先行試験における最高用
量のXmAb13551と比べてより持続的であった(各々、7日対2日)。特に、標的
細胞の枯渇はXmAb15426においてより著しかったが、T細胞活性化(CD69、
CD25およびPD1誘導)は、20μg/kgのXmAb13551群よりもさらに2
5倍高く投与したXmAb15426で治療したサルにおいて大幅により低かった。極め
て低いCD3親和性を有するXmAb14702は、CD38+細胞およびT細胞活性化
に対する効果をほとんど有しなかった。
【0253】
これらの結果によると、CD3親和性を減弱させることによりT細胞活性化を調節する
ことは、T細胞に会合する二重特異性抗体の治療ウインドウを改善するための有望な方法
であることが示される。この方法は、CD38などの標的との抗原のシンククリアランス
(sink clearance)を克服するため、耐容性を改善し、より高用量の投与
を可能にすることにより、標的化されたT細胞免疫療法に適している抗原のセットを拡大
する可能性を有する。発明者は、CD3に対する親和性を低減することにより、XmAb
15426がCD38+細胞を効果的に枯渇させる一方、その高親和性対応物であるXm
Ab13551と同等の用量で認められるCRS効果を最小化することを示している。
また、本発明は以下を提供する。
[1]
a)第1の単量体であって、
i)第1の重鎖であって、
1)第1の可変重鎖ドメイン;
2)第1のFcドメインを含む第1の定常重鎖;ならびに
3)scFv可変軽鎖ドメイン、scFvリンカーおよびscFv可変重鎖ドメイ
ンを含み、ドメインリンカーを用いて前記FcドメインのC末端に共有結合されたscF
v、
を含む第1の重鎖
含む第1の単量体と;
b)第2の可変重鎖ドメイン、および、第2のFcドメインを含む第2の定常重鎖、を
含む、第2の重鎖を含む第2の単量体と;
c)可変軽鎖ドメインおよび定常軽鎖ドメインを含む共通軽鎖と
を含み、
前記第1および前記第2のFcドメインは、S364K/E357Q:L368D/K
370S;L368D/K370S:S364K;L368E/K370S:S364K
;T411T/E360E/Q362E:D401K;L368D/K370S:S36
4K/E357LおよびK370S:S364K/E357Qからなる群から選択される
アミノ酸置換のセットを有し、
前記第1の可変重鎖ドメインおよび前記可変軽鎖ドメインは第1の標的腫瘍抗原(TT
A)に結合し、
前記第2の可変重鎖ドメインおよび前記可変軽鎖ドメインは前記第1のTTAに結合し
、かつ
前記scFvはヒトCD3(配列番号XX)に結合する、
ヘテロ二量体抗体。
[2]
前記scFvが、配列番号XX(scFv13551)、配列番号XX(scFv15
426)、配列番号XX(scFv13423)および配列番号XX(scFv1470
2)からなる群から選択されるポリペプチド配列を有する、[1]に記載のヘテロ二量体
抗体。
[3]
前記第1の可変重鎖ドメインおよび前記可変軽鎖ドメインが、CD19、CD20およ
びCD123からなる群から選択されるTTAに結合する、[1]または[2]に記載の
ヘテロ二量体抗体。
[4]
a)第1の単量体であって、
i)第1の重鎖であって、
1)第1の可変重鎖ドメイン;
2)第1のFcドメインを含む第1の定常重鎖ドメイン;および
3)ドメインリンカーを用いて前記第1のFcドメインのC末端に共有結合された
第1の可変軽鎖ドメイン
を含む第1の重鎖
を含む第1の単量体と;
b)第2の単量体であって、
i)第2の可変重鎖ドメイン;
ii)第2のFcドメインを含む第2の定常重鎖ドメイン;および
iii)前記第2の可変重鎖ドメインがドメインリンカーを用いて前記第2のFcド
メインのC末端に共有結合されている、第3の可変重鎖ドメイン
を含む第2の単量体と;
c)可変軽鎖ドメインおよび定常軽鎖ドメインを含む共通軽鎖と
を含み、
前記第1および前記第2のFcドメインは、S364K/E357Q:L368D/K
370S;L368D/K370S:S364K;L368E/K370S:S364K
;T411T/E360E/Q362E:D401K;L368D/K370S:S36
4K/E357LおよびK370S:S364K/E357Qからなる群から選択される
アミノ酸置換のセットを有し、
前記第1の可変重鎖ドメインおよび前記可変軽鎖ドメインは第1のTTAに結合し、
前記第2の可変重鎖ドメインおよび前記可変軽鎖ドメインは前記TTAに結合し、かつ
前記第2の可変軽鎖ドメインおよび前記第3の可変重鎖ドメインはCD3に結合する、
ヘテロ二量体抗体。
[5]
前記scFvが、配列番号XX(scFv13551)、配列番号XX(scFv15
426)、配列番号XX(scFv13423)および配列番号XX(scFv1470
2)からなる群から選択されるポリペプチド配列を有する、[4]に記載のヘテロ二量体
抗体。
[6]
前記第1の可変重鎖ドメインおよび前記可変軽鎖ドメインが、CD19、CD20およ
びCD123からなる群から選択されるTTAに結合する、[4]または[5]に記載の
ヘテロ二量体抗体。
[7]
a)第1の単量体であって、
i)第1の重鎖であって、
1)第1の可変重鎖ドメイン;
2)第1のCH1ドメインおよび第1のFcドメインを含む第1の定常重鎖;なら
びに
3)scFv可変軽鎖ドメイン、scFvリンカーおよびscFv可変重鎖ドメイ
ンを含み、ドメインリンカーを用いて前記CH1ドメインのC末端と前記第1のFcドメ
インのN末端との間で共有結合されたscFv
を含む第1の重鎖
を含む第1の単量体と;
b)第2の可変重鎖ドメイン、および第2のFcドメインを含む第2の定常重鎖を含む
、第2の重鎖を含む第2の単量体と;
c)可変軽鎖ドメインおよび定常軽鎖ドメインを含む共通軽鎖と
を含み、
前記第1および前記第2のFcドメインは、S364K/E357Q:L368D/K
370S;L368D/K370S:S364K;L368E/K370S:S364K
;T411T/E360E/Q362E:D401K;L368D/K370S:S36
4K/E357LおよびK370S:S364K/E357Qからなる群から選択される
アミノ酸置換のセットを有し、
前記第1の可変重鎖ドメインおよび前記可変軽鎖ドメインは第1のTTAに結合し、
前記第2の可変重鎖ドメインおよび前記可変軽鎖ドメインは前記TTAに結合し、かつ
前記scFvはヒトCD3に結合する、
ヘテロ二量体抗体。
[8]
前記scFvが、配列番号XX(scFv13551)、配列番号XX(scFv15
426)、配列番号XX(scFv13423)および配列番号XX(scFv1470
2)からなる群から選択されるポリペプチド配列を有する、[7]に記載のヘテロ二量体
抗体。
[9]
前記第1の可変重鎖ドメインおよび前記可変軽鎖ドメインが、CD19、CD20およ
びCD123からなる群から選択されるTTAに結合する、[7]または[8]に記載の
ヘテロ二量体抗体。
[10]
a)第1の単量体であって、
i)第1の重鎖であって、
1)第1の可変重鎖ドメイン;
2)第1のFcドメインを含む第1の定常重鎖ドメイン;および
3)前記第2の可変軽鎖ドメインがドメインリンカーを用いて前記第1の定常重鎖
ドメインのCH1ドメインのC末端と前記第1のFcドメインのN末端との間で共有結合
されている、第1の可変軽鎖ドメイン
を含む第1の重鎖
を含む第1の単量体と;
b)第2の単量体であって、
i)第2の可変重鎖ドメイン;
ii)第2のFcドメインを含む第2の定常重鎖ドメイン;および
iii)前記第2の可変重鎖ドメインがドメインリンカーを用いて前記第2のFcド
メインのC末端に共有結合されている、第3の可変重鎖ドメイン
を含む第2の単量体と;
c)可変軽鎖ドメインおよび定常軽鎖ドメインを含む共通軽鎖と
を含み、
前記第1および前記第2のFcドメインは、S364K/E357Q:L368D/K
370S;L368D/K370S:S364K;L368E/K370S:S364K
;T411T/E360E/Q362E:D401K;L368D/K370S:S36
4K/E357LおよびK370S:S364K/E357Qからなる群から選択される
アミノ酸置換のセットを有し、
前記第1の可変重鎖ドメインおよび前記可変軽鎖ドメインは第1のTTAに結合し、
前記第2の可変重鎖ドメインおよび前記可変軽鎖ドメインは前記TTAに結合し、かつ
前記第2の可変軽鎖ドメインおよび前記第3の可変重鎖ドメインはヒトCD3に結合す
る、
ヘテロ二量体抗体。
[11]
前記scFvが、配列番号XX(scFv13551)、配列番号XX(scFv15
426)、配列番号XX(scFv13423)および配列番号XX(scFv1470
2)からなる群から選択されるポリペプチド配列を有する、[10]に記載のヘテロ二量
体抗体。
[12]
前記第1の可変重鎖ドメインおよび前記可変軽鎖ドメインが、CD19、CD20およ
びCD123からなる群から選択されるTTAに結合する、[10]または[11]に記
載のヘテロ二量体抗体。
[13]
a)第1の単量体であって、
i)第1の重鎖であって、
1)第1の可変重鎖ドメイン;
2)第1のCH1ドメインおよび第1のFcドメインを含む第1の定常重鎖;なら
びに
3)scFv可変軽鎖ドメイン、scFvリンカーおよびscFv可変重鎖ドメイ
ンを含み、ドメインリンカーを用いて前記CH1ドメインのC末端と前記第1のFcドメ
インのN末端との間で共有結合されたscFv
を含む第1の重鎖を含む第1の単量体と;
b)第2のFcドメインを含む第2の単量体と;
c)可変軽鎖ドメインおよび定常軽鎖ドメインを含む軽鎖と
を含み、
前記第1および前記第2のFcドメインは、S364K/E357Q:L368D/K
370S;L368D/K370S:S364K;L368E/K370S:S364K
;T411T/E360E/Q362E:D401K;L368D/K370S:S36
4K/E357LおよびK370S:S364K/E357Qからなる群から選択される
アミノ酸置換のセットを有し、
前記第1の可変重鎖ドメインおよび前記可変軽鎖ドメインは第1の抗原に結合し、
前記scFvは第2の抗原に結合する、
ヘテロ二量体抗体。
[14]
前記scFvが、配列番号XX(scFv13551)、配列番号XX(scFv15
426)、配列番号XX(scFv13423)および配列番号XX(scFv1470
2)からなる群から選択されるポリペプチド配列を有する、[13]に記載のヘテロ二量
体抗体。
[15]
前記第1の可変重鎖ドメインおよび前記可変軽鎖ドメインが、CD19、CD20およ
びCD123からなる群から選択されるTTAに結合する、[13]または[14]に記
載のヘテロ二量体抗体。
[16]
a)配列GSSTGAVTTSNYAN(配列番号XX)を有するvlCDR1、配列
GTNKRAP(配列番号XX)を有するvlCDR2、および配列ALWYSNHWV
(配列番号XX)を有するvlCDR3を含む可変軽鎖ドメインと;
b)配列TYAMN(配列番号XX)を有するvhCDR1、配列RIRSKANNY
ATYYADSVKG(配列番号XX)を有するvhCDR2、および配列HGNFGD
SYVSWFAY(配列番号XX)を有するvhCDR3を含む可変重鎖ドメインと
を含む抗CD3抗体結合ドメイン。
[17]
scFvである、[16]に記載の抗CD3抗体結合ドメイン。
[18]
前記可変軽鎖ドメインが配列L1.47(配列番号XX)を有し、かつ前記可変重鎖ド
メインが配列H1.32(配列番号XX)を有する、[16]または[17]に記載の抗
CD3抗体結合ドメイン。
[19]
前記scFvが配列H1.32_L1.47(配列番号XX)を有する、[18]に記
載の抗CD3抗体結合ドメイン。
[20]
[19]に記載のscFvをコードする核酸組成物。
[21]
[20]に記載の核酸組成物を含む発現ベクター。
[22]
[21]に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
[23]
a)配列GSSTGAVTTSNYAN(配列番号XX)を有するvlCDR1、配列
GTNKRAP(配列番号XX)を有するvlCDR2、および配列ALWYSNHWV
(配列番号XX)を有するvlCDR3を含む可変軽鎖ドメインと;
b)配列TYAMN(配列番号XX)を有するvhCDR1、配列RIRSKYNNYATYYADSVKG(配
列番号XX)を有するvhCDR2、および配列HGNFGDEYVSWFAY(配列番号XX)を有す
るvhCDR3を含む可変重鎖ドメインと
を含む抗CD3抗体結合ドメイン。
[24]
scFvである、[23]に記載の抗CD3抗体結合ドメイン。
[25]
前記可変軽鎖ドメインが配列L1.47(配列番号XX)を有し、かつ前記可変重鎖ド
メインが配列H1.89(配列番号XX)を有する、[23]または[24]に記載の抗
CD3抗体結合ドメイン。
[26]
前記scFvが配列H1.89_L1.47(配列番号XX)を有する、[23]に記
載の抗CD3抗体結合ドメイン。
[27]
[26]に記載のscFvをコードする核酸組成物。
[28]
[27]に記載の核酸組成物を含む発現ベクター。
[29]
[28]に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
[30]
a)配列GSSTGAVTTSNYAN(配列番号XX)を有するvlCDR1、配列
GTNKRAP(配列番号XX)を有するvlCDR2、および配列ALWYSNHWV
(配列番号XX)を有するvlCDR3を含む可変軽鎖ドメインと;
b)配列TYAMN(配列番号XX)を有するvhCDR1、配列RIRSKYNNY
ATYYADSVKG(配列番号XX)を有するvhCDR2、および配列HGNFGDPYVSWF
AY(配列番号XX)を有するvhCDR3を含む可変重鎖ドメインと
を含む抗CD3抗体結合ドメイン。
[31]
scFvである、[30]に記載の抗CD3抗体結合ドメイン。
[32]
前記可変軽鎖ドメインが配列L1.47(配列番号XX)を有し、かつ前記可変重鎖ド
メインが配列H1.90(配列番号XX)を有する、[30]または[31]に記載の抗
CD3抗体結合ドメイン。
[33]
前記scFvが配列H1.90_L1.47(配列番号XX)を有する、[30]に記
載の抗CD3抗体結合ドメイン。
[34]
[33]に記載のscFvをコードする核酸組成物。
[35]
[34]に記載の核酸組成物を含む発現ベクター。
[36]
[35]に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
[37]
a)配列GSSTGAVTTSNYAN(配列番号XX)を有するvlCDR1、配列GTNKRAP(配列
番号XX)を有するvlCDR2、および配列ALWYSNHWV(配列番号XX)を有するvl
CDR3を含む可変軽鎖ドメインと;
b)配列TYAMN(配列番号XX)を有するvhCDR1、配列RIRSKYNNY
ATYYADSVKG(配列番号XX)を有するvhCDR2、および配列HGNFGDSYVSWF
DY(配列番号XX)を有するvhCDR3を含む可変重鎖ドメインと
を含む抗CD3抗体結合ドメイン。
[38]
scFvである、[37]に記載の抗CD3抗体結合ドメイン。
[39]
前記可変軽鎖ドメインが配列L1.47(配列番号XX)を有し、かつ前記可変重鎖ド
メインが配列H1.33(配列番号XX)を有する、[37]または[38]に記載の抗
CD3抗体結合ドメイン。
[40]
前記scFvが配列H1.33_L1.47(配列番号XX)を有する、[38]に記
載の抗CD3抗体結合ドメイン。
[41]
[38]に記載のscFvをコードする核酸組成物。
[42]
[41]に記載の核酸組成物を含む発現ベクター。
[43]
[42]に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
[44]
a)配列GSSTGAVTTSNYAN(配列番号XX)を有するvlCDR1、配列
GTNKRAP(配列番号XX)を有するvlCDR2、および配列ALWYSNHWV
(配列番号XX)を有するvlCDR3を含む可変軽鎖ドメインと;
b)配列TYAMS(配列番号XX)を有するvhCDR1、配列RIRSKYNNY
ATYYADSVKG(配列番号XX)を有するvhCDR2、および配列HGNFGD
SYVSWFAY(配列番号XX)を有するvhCDR3を含む可変重鎖ドメインと
を含む抗CD3抗体結合ドメイン。
[45]
scFvである、[44]に記載の抗CD3抗体結合ドメイン。
[46]
前記可変軽鎖ドメインが配列L1.47(配列番号XX)を有し、かつ前記可変重鎖ド
メインが配列H1.31(配列番号XX)を有する、[44]または[45]に記載の抗
CD3抗体結合ドメイン。
[47]
前記scFvが配列H1.31_L1.47(配列番号XX)を有する、[46]に記
載の抗CD3抗体結合ドメイン。
[48]
[47]に記載のscFvをコードする核酸組成物。
[49]
[48]に記載の核酸組成物を含む発現ベクター。
[50]
[49]に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
[51]
a)第1の単量体であって、
i)第1のFcドメイン;ならびに
ii)scFv可変軽鎖ドメイン、scFvリンカーおよびscFv可変重鎖ドメイ
ンを含み、ドメインリンカーを用いて前記FcドメインのN末端に共有結合された抗CD
3 scFv
を含む第1の単量体と;
b)第2の単量体であって、
i)重鎖可変ドメイン;および
ii)第2のFcドメインを含む重鎖定常ドメイン
を含む重鎖を含む第2の単量体と;
c)可変軽鎖ドメインおよび可変軽定常ドメインを含む軽鎖と
を含み、
前記抗CD3 scFvは、抗CD3H1.32_L1.47(配列番号XX)、抗C
D3H1.89_L1.47(配列番号XX)、抗CD3H1.90_L1.47(配列
番号XX)および抗CD3H1.33_L1.47(配列番号XX)からなる群から選択
され、かつ
前記重可変ドメインおよび前記軽可変ドメインはTTAに結合する、
ヘテロ二量体抗体。
[52]
前記TTAがCD19、CD20およびCD123からなる群から選択される、[51
]に記載のヘテロ二量体抗体。
[53]
a)配列RASWSVSYIH(配列番号XX)を有するvlCDR1、配列ATSN
LAS(配列番号XX)を有するvlCDR2、および配列QQWTHNPPT(配列番
号XX)を有するvlCDR3を含む可変軽鎖ドメインと;
b)配列SYNMH(配列番号XX)を有するvhCDR1、配列AIYPGNGAT
SYSQKFQG(配列番号XX)を有するvhCDR2、および配列SYYMGGDW
YFDV(配列番号XX)を有するvhCDR3を含む可変重鎖ドメインと
を含む抗CD20抗体結合ドメイン。
[54]
前記可変軽鎖ドメインが配列C2B8L1.113(配列番号XX)を有し、かつ前記
可変重鎖ドメインが配列C2B8H1.202(配列番号XX)を有する、[53]に記
載の抗CD20抗体結合ドメイン。
[55]
[53]に記載の結合ドメインをコードする核酸組成物。
[56]
[55]に記載の核酸組成物を含む発現ベクター。
[57]
[56]に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
[58]
a)配列RASSSVSYIH(配列番号XX)を有するvlCDR1、配列ATSN
LAS(配列番号XX)を有するvlCDR2、および配列QQWTSNPPT(配列番
号XX)を有するvlCDR3を含む可変軽鎖ドメインと;
b)配列SYNMH(配列番号XX)を有するvhCDR1、配列AIYPGNGDT
SYNQKFQG(配列番号XX)を有するvhCDR2、および配列STYYGGDW
YFNV(配列番号XX)を有するvhCDR3を含む可変重鎖ドメインと
を含む抗CD20抗体結合ドメイン。
[59]
前記可変軽鎖ドメインが配列C2B8L1(配列番号XX)を有し、かつ前記可変重鎖
ドメインが配列C2B8H1(配列番号XX)を有する、[58]に記載の抗CD20抗
体結合ドメイン。
[60]
[58]に記載の結合ドメインをコードする核酸組成物。
[61]
[60]に記載の核酸組成物を含む発現ベクター。
[62]
[61]に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
[63]
a)第1の単量体であって、
i)第1のFcドメイン;ならびに
ii)scFv可変軽鎖ドメイン、scFvリンカーおよびscFv可変重鎖ドメイ
ンを含み、ドメインリンカーを用いて前記FcドメインのN末端に共有結合された抗CD
3 scFvを含む第1の単量体と;
b)第2の単量体であって、
i)重鎖可変ドメイン;および
ii)第2のFcドメインを含む重鎖定常ドメイン
を含む重鎖を含む第2の単量体と;
c)可変軽鎖ドメインおよび可変軽定常ドメインを含む軽鎖と
を含み、
前記可変軽鎖ドメインは、配列RASSSVSYIH(配列番号XX)を有するvlC
DR1、配列ATSNLAS(配列番号XX)を有するvlCDR2、および配列QQW
TSNPPT(配列番号XX)を有するvlCDR3を含み、かつ
前記可変重鎖ドメインは、配列SYNMH(配列番号XX)を有するvhCDR1、配
列AIYPGNGDTSYNQKFQG(配列番号XX)を有するvhCDR2、および
配列STYYGGDWYFNV(配列番号XX)を有するvhCDR3を含む、
ヘテロ二量体抗体。
[64]
a)第1の単量体であって、
i)第1のFcドメイン;ならびに
ii)scFv可変軽鎖ドメイン、scFvリンカーおよびscFv可変重鎖ドメイ
ンを含み、ドメインリンカーを用いて前記FcドメインのN末端に共有結合された抗CD
3 scFv
を含む第1の単量体と;
b)第2の単量体であって、
i)重鎖可変ドメイン;および
ii)第2のFcドメインを含む重鎖定常ドメイン
を含む重鎖を含む第2の単量体と;
c)可変軽鎖ドメインおよび可変軽定常ドメインを含む軽鎖と
を含み、
前記可変軽鎖ドメインは、配列RASSSVSYIH(配列番号XX)を有するvlC
DR1、配列ATSNLAS(配列番号XX)を有するvlCDR2、および配列QQW
TSNPPT(配列番号XX)を有するvlCDR3を含み、かつ
前記可変重鎖ドメインは、配列SYNMH(配列番号XX)を有するvhCDR1、配
列AIYPGNGDTSYNQKFQG(配列番号XX)を有するvhCDR2、および
配列STYYGGDWYFNV(配列番号XX)を有するvhCDR3を含む、
ヘテロ二量体抗体。
[65]
a)第1の単量体であって、
i)第1のFcドメイン;ならびに
ii)scFv可変軽鎖ドメイン、scFvリンカーおよびscFv可変重鎖ドメイ
ンを含み、ドメインリンカーを用いて前記FcドメインのN末端に共有結合された抗CD
3 scFv
を含む第1の単量体と;
b)第2の単量体であって、
i)重鎖可変ドメイン;および
ii)第2のFcドメインを含む重鎖定常ドメイン
を含む重鎖を含む第2の単量体と;
c)可変軽鎖ドメインおよび可変軽定常ドメインを含む軽鎖と
を含み、
前記可変軽鎖ドメインは、配列KSSQSLLNTGNQKNYLT(配列番号XX)
を有するvlCDR1、配列WASTRES(配列番号XX)を有するvlCDR2、お
よび配列QNDYSYPYT(配列番号XX)を有するvlCDR3を含み、かつ 前記
可変重鎖ドメインは、配列DYYMK(配列番号XX)を有するvhCDR1、配列DI
IPSNGATFYNQKFKG(配列番号XX)を有するvhCDR2、および配列S
HLLRASWFAY(配列番号XX)を有するvhCDR3を含む、
ヘテロ二量体抗体。
[66]
XENP15049、XENP15051;XENP15050、XENP13676
、XENP14696、XENP15629、XENP15053、XENP15630
、XENP15631、XENP15632、XENP15633、XENP15634
、XENP15635、XENP15636、XENP15638、XENP15639
、XENP13677、XENP14388、XENP14389、XENP14390
、XENP14391、XENP14392、XENP14393、XENP16366
、XENP16367、XENP16368、XENP16369、XENP16370
、XENP16371、XENP16372、XENP16373、XENP16375
、XENP16376およびXENP16377からなる群から選択されるヘテロ二量体
抗体。
[67]
XENP15049、XENP15051;XENP15050、XENP13676
、XENP14696、XENP15629、XENP15053、XENP15630
、XENP15631、XENP15632、XENP15633、XENP15634
、XENP15635、XENP15636、XENP15638、XENP15639
、XENP13677、XENP14388、XENP14389、XENP14390
、XENP14391、XENP14392、XENP14393、XENP16366
、XENP16367、XENP16368、XENP16369、XENP16370
、XENP16371、XENP16372、XENP16373、XENP16375
、XENP16376およびXENP16377からなる群から選択されるヘテロ二量体
抗体をコードする3つの核酸を含む核酸組成物。
[68]
発現ベクター組成物であって、それぞれ核酸を含有する3つの発現ベクターを含み、そ
れにより、前記3つの発現ベクターは、XENP15049、XENP15051;XE
NP15050、XENP13676、XENP14696、XENP15629、XE
NP15053、XENP15630、XENP15631、XENP15632、XE
NP15633、XENP15634、XENP15635、XENP15636、XE
NP15638、XENP15639、XENP13677、XENP14388、XE
NP14389、XENP14390、XENP14391、XENP14392、XE
NP14393、XENP16366、XENP16367、XENP16368、XE
NP16369、XENP16370、XENP16371、XENP16372、XE
NP16373、XENP16375、XENP16376およびXENP16377か
らなる群から選択されるヘテロ二量体抗体をコードする、発現ベクター組成物。
[69]
[67]に記載の核酸組成物を含む宿主細胞。
[70]
[68]に記載の発現ベクター組成物を含む宿主細胞。
[71]
[66]に記載のヘテロ二量体抗体を作製する方法であって、[69]または[70]
に記載の宿主細胞を前記抗体が発現される条件下で培養するステップと、前記抗体を回収
するステップとを含む、方法。
[72]
がんを治療する方法であって、[66]に記載のヘテロ二量体抗体を、それを必要とす
る患者に投与するステップを含む、方法。
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【配列表】
2022169664000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-09-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書または図面に記載の発明