(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169683
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】工業用二層織物
(51)【国際特許分類】
D21F 1/10 20060101AFI20221101BHJP
D03D 11/00 20060101ALI20221101BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
D21F1/10
D03D11/00 Z
D03D1/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132412
(22)【出願日】2022-08-23
(62)【分割の表示】P 2018067046の分割
【原出願日】2018-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000229818
【氏名又は名称】日本フイルコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】上田 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】野村 国大
(72)【発明者】
【氏名】江川 徹
(72)【発明者】
【氏名】梁井 英之
【テーマコード(参考)】
4L048
4L055
【Fターム(参考)】
4L048AA37
4L048AB06
4L048AB21
4L048BA01
4L048BA09
4L048CA00
4L048DA39
4L055CE27
4L055CE29
4L055CE31
4L055CE32
4L055FA13
4L055FA30
(57)【要約】
【課題】表面平滑性と裏面側の耐摩耗性と縦方向の耐伸び性と脱水性について性能を損なうことなく、表面裏面織物の高い密着性及び横糸の支持力を向上させる織物を提供する。
【解決手段】工業用二層織物は、裏面縦糸が表面縦糸とバインダー縦糸より太い線径の糸で形成され、裏面側織物において、横方向に順に並んだ裏面縦糸、バインダー縦糸、バインダー縦糸および裏面縦糸のうち隣接する裏面縦糸およびバインダー縦糸が第一組をなして同じ裏面横糸にナックルを形成し、次に隣接するバインダー縦糸および裏面縦糸が第二組をなして同じ裏面横糸にナックルを形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面縦糸と表面横糸とからなる表面側織物と、裏面縦糸と裏面横糸とからなる裏面側織物とをバインダー縦糸によって接合する工業用二層織物であって、
前記表面縦糸と前記裏面縦糸からなる第一の縦糸対と、前記表面側織物と前記裏面側織物とを接合する機能を有する一のバインダー縦糸と他のバインダー縦糸からなる第二の縦糸対を有し、
前記第二の縦糸対を構成する前記一のバインダー縦糸が前記表面側織物上に連続して複数のナックルを形成している箇所において前記他のバインダー縦糸は表面側に現れず、前記他のバインダー縦糸が前記表面側織物上に連続して複数のナックルを形成している箇所において前記一のバインダー縦糸は表面側に現れず相互に補完する構造を有しており、
前記表面縦糸と前記バインダー縦糸は略同線径の糸で形成されており、
前記裏面縦糸が前記表面縦糸と前記バインダー縦糸より太い線径の糸で形成され、
2組の前記第一の縦糸対の間に、2組隣接した前記第二の縦糸対が配置され、それらが繰り返し配置されており、
前記裏面側織物において、横方向に順に並んだ前記裏面縦糸、前記バインダー縦糸、前記バインダー縦糸および前記裏面縦糸のうち隣接する前記裏面縦糸および前記バインダー縦糸が第一組をなして同じ前記裏面横糸にナックルを形成し、次に隣接する前記バインダー縦糸および前記裏面縦糸が第二組をなして同じ前記裏面横糸にナックルを形成することを特徴とする工業用二層織物。
【請求項2】
完全組織において、前記第二の縦糸対を構成する前記一のバインダー縦糸が前記表面側織物上に5回連続して複数のナックルを形成し、前記他のバインダー縦糸が前記表面側織物上に4回連続して複数のナックルを形成することを特徴とする請求項1に記載の工業用二層織物。
【請求項3】
完全組織において、前記表面横糸が18本並んで配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の工業用二層織物。
【請求項4】
完全組織において、前記裏面縦糸は前記裏面横糸に対して4つのナックルを形成し、
完全組織において、前記第二の縦糸対は前記裏面横糸に対して4つのナックルを形成することを特徴とする請求項3に記載の工業用二層織物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経糸バインダー縦糸を有する工業用二層織物に関し、特に表面織物と裏面織物との高い密着性及び横糸の支持力を向上させると共に、抄紙に発生する脱水マークを軽減させることができる優れた工業用二層織物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から工業用織物として縦糸と横糸をバインダー糸で製織したものが広く使用されており、例えば製紙用織物や搬送用ベルト、ろ布等があり、それぞれ用途や使用環境に適した織物特性が要求されている。これらの織物のうち、織物の網目を利用して原料の脱水等を行う製紙工程で使用される抄紙用織物での要求は特に厳しい。例えば、紙に織物の脱水マークが転写しにくい表面平滑性に優れた織物、また原料に含まれる余分な水分を十分且つ均一に脱水するための脱水性、過酷な環境下でも好適に使用できる程度の剛性、耐摩耗性を持ち合わせ、更に良好な紙を製造するために必要な条件を長期間持続することのできる織物が要求されている。その他にも繊維支持性、製紙の歩留まりの向上、寸法安定性、走行安定性等が要求されている。さらに近年では抄紙マシンが高速化しているため、それに伴い抄紙用織物への要求も一段と厳しいものとなっている。
【0003】
工業用二層織物の中でも最も要求が厳しい抄紙用織物について説明すれば、現行のほとんどの工業用織物の要求とその解決について理解できる。そこで、以下、抄紙用織物を一例に挙げて説明する。表面側織物と裏面側織物をバインダー縦糸によって接合した工業用二層織物では、抄紙マシンで走行中に表面側織物と裏面側織物との接触箇所で摩耗が生じることが知られていた。特に近年では抄紙マシンの高速化に伴い、内部摩耗の発生が増大
していた。内部摩耗が発生すると、織物の内部における糸の表面が毛羽立つことより、網の通気度が低下してしまい、脱水速度が低下する原因となってしまう。このような内部摩耗を防ぐ方法としては、表面側織物と裏面側織物との密着力を上げる方法が知られている。例えば、表面側織物と裏面側織物との密着力を上げる方法としては、バインダー縦糸の本数を増やす方法がある(特許文献1を参照。)。
例えば、バインダー縦糸の本数を増やし、完全組織における接結比率を上げれば、表面側織物と裏面側織物とを接結する糸が増加するため、密着力が向上することになる。
【0004】
しかし、上述の方法によって、接結比率を上げると、表面側織物において脱水マークが発生しやすくなる。すなわち、バインダー縦糸を含む工業用二層織物は、表面縦糸において表面側織物上にナックルを形成する箇所でナックルを形成せず、裏面縦糸が表面側織物上にナックルを形成する構造が一般的である(特許文献2参照)。
このように表面縦糸のナックルを裏面縦糸で補完している箇所では、表面縦糸が崩しとなっていることから、実質的に縦糸密度が2倍になっている。縦糸密度が増えることから、その部分が脱水阻害箇所になる。そして、このような織物の構造においてバインダー縦糸の本数を増やし接結比率を上げると、脱水阻害箇所が均等に並ぶことになり、その並びの形状によって脱水阻害ラインが形成されことから、抄紙の表面に脱水マークが形成されることになる。
【0005】
ここで、バインダー縦糸による脱水阻害箇所を密集させないため、完全組織における緯糸の本数を増やす方法により、完全組織における縦方向を長く形成する方法が考えられる。このような構造によって、脱水阻害箇所の密度を低下させることができる。一方、このような構造を通常の組織に採用すると、1本のバインダー縦糸が表面側織物上に連続して複数のナックルを形成することになる。そして1本のバインダー縦糸が表面側織物上に連続して複数のナックルを形成する組織の場合は、織物の形状が連続する複数のナックルの中央部を頂点とした山形の形状となることが知られている。例えば、縦糸が横糸の上を通って表面側織物上にナックルを形成している。
このような織構造では、糸に発生する応力によって、中央部に位置する横糸を頂点とした山形形状に変形する。又、縦糸が複数の横糸上でロングナックルを形成する場合がある。このような織構造でも、糸に発生する応力によって、中央部に位置する横糸を頂点とした山形形状に変更する。
【0006】
このように山形に突出した部位が均等に並ぶことは、脱水マークに加えて更に織物における表面平滑性を悪化させる原因となる。このような問題点を解決するために、特許文献3に開示された織物が存在する。また、特許文献3に開示させた織物を発展させて、バインダー縦糸の組を2組に隣接して配置する構造も考えられる。
ここで上記の織物については、表面平滑性を維持するために、バインダー縦糸の線径を表面縦糸の線径に合わせる必要がある。上記の織物においてバインダー縦糸は、各1本又は複数本の上下縦糸に隣接して配置され、2本のバインダー縦糸を一組として、交差を繰り返しながら表裏織物組織を補完して織り合わされている。そのため縦方向に一定周期で形成される交差部により脱水経路が閉塞され、他の箇所と脱水スピードに差が生じてしまう。このような作用によって、抄紙に脱水マークが現れることになる。
また、バインダー縦糸を使用する工業用二層織物においては、耐摩耗性対策のために、裏面横糸として太線径の糸が使用されるのが一般的である。そのため裏面経糸も裏面横線と同じ線径の太線径の糸を使用することになる。そのため太線径の糸が2本以上並んだ場合、隣接するバインダー縦糸の交差していない箇所に配置されている裏面側に位置するバインダー縦糸の空間の広い部分と、上下縦糸異線径が配置された太い裏面縦糸の空間の狭い部分とが生じるため、脱水スピードに差異が生じるため、上記の脱水マークの発生がより助長されることになる。
【0007】
すなわち、従来の表面と裏面の織物をバインダー縦糸によって接合した織物は、表面平滑性を保持するため、表面の縦糸及び横糸は共に裏面側を構成する糸に比較して小径の糸を用いることによって、緻密な表面を形成し、かつ、表面に形成されるナックル形状を統一させる必要があった。また、バインダー縦糸は表裏面の双方でナックルを形成することにより表面と裏面を接合し、かつ、表面平滑性を保持するため、バインダー縦糸の線径は表面側の縦糸と同程度にする必要があった。
また織物の剛性及び耐摩耗性を向上させ、縦方向の伸びを抑制するために、裏面側の横糸の線径を大径とする必要がある。又、裏面側の縦糸は大径の裏面側の横糸を織り込むために、大径とする必要があった。又、糸の配列も、表面側の縦糸と裏面側の縦糸を1組とし、その組の間に表面側バインダー縦糸と裏面側バインダー縦糸の組を配置する形式を採用し、裏面側の縦糸と裏面側のバインダーの本数の比率を1:1とするのが一般的であった。そのため、バインダー部の空間と表面側の縦糸と裏面側の縦糸との空間に差が生じてしまい、バインダー縦糸が交差する周期性が大きくなり、脱水マークの発生を助長するという問題点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001-98483号公報
【特許文献2】特開2003-342889号公報
【特許文献3】特開2006-57216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、バインダー縦糸を使用した工業用二層織物において、従来から求められている要求特性である表面平滑性と裏面側の耐摩耗性と縦方向の耐伸び性と脱水性について性能を損なうことなく、表面裏面織物の高い密着性及び横糸の支持力を向上させる織物を提供することを目的とする。
また本発明は、縦糸とバインダー縦糸の配列を変更することによって、バインダー糸の摩耗を減少させるとともに、均一な脱水により脱水マークの発生を減少させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、表面縦糸と表面横糸とからなる表面側織物と、裏面縦糸と裏面横糸とからなる裏面側織物とをバインダー縦糸によって接合する工業用二層織物であって、表面縦糸と裏面縦糸からなる第一の縦糸対と、表面側織物と裏面側織物とを接合する機能を有する一のバインダー縦糸と他のバインダー縦糸からなる第二の縦糸対を有する。第二の縦糸対を構成する一のバインダー縦糸が表面側織物上に連続して複数のナックルを形成している箇所において他のバインダー縦糸は表面側に現れず、他のバインダー縦糸が表面側織物上に連続して複数のナックルを形成している箇所において一のバインダー縦糸は表面側に現れず相互に補完する構造を有しており、表面縦糸とバインダー縦糸は略同線径の糸で形成されており、裏面縦糸が表面縦糸とバインダー縦糸より太い線径の糸で形成され、2組の第一の縦糸対の間に、2組隣接した第二の縦糸対が配置され、それらが繰り返し配置されており、裏面側織物において、横方向に順に並んだ裏面縦糸、バインダー縦糸、バインダー縦糸および裏面縦糸のうち隣接する裏面縦糸およびバインダー縦糸が第一組をなして同じ裏面横糸にナックルを形成し、次に隣接するバインダー縦糸および裏面縦糸が第二組をなして同じ裏面横糸にナックルを形成する。
【0011】
(削除)
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る工業用二層織物を採用することによって、表面平滑性と裏面側の耐摩耗性と縦方向の耐伸び性と脱水性についての性能を損なうことなく、表面裏面織物の高い密着性及び横糸の支持力を向上させる織物を提供する。
また本発明に係る工業用二層織物を採用することによって、縦糸とバインダー縦糸の配列を変更して、バインダー糸の摩耗を減少させるとともに、均一な脱水となることで脱水マークの発生を減少することができる織物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の工業用二層織物に係る実施形態1の完全組織を示す意匠図である。
【
図2】
図1に示した実施形態1の縦糸対1~4における縦糸方向の断面概念図である。
【
図3】本発明の工業用二層織物に係る実施形態2の完全組織を示す意匠図である。
【
図4】
図3に示した実施形態2の縦糸対1~4における縦糸方向の断面概念図である。
【
図5】本発明の工業用二層織物に係る実施形態3の完全組織を示す意匠図である。
【
図6】
図5に示した実施形態3の縦糸対1~4における縦糸方向の断面概念図である。
【
図7】本発明の工業用二層織物に係る実施形態4の完全組織を示す意匠図である。
【
図8】
図7に示した実施形態4の縦糸対1~4における経糸方向の断面概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る工業用二層織物について詳細に説明する。
本発明に係る工業用二層織物における完全組織は、表面縦糸と表面横糸とからなる表面側織物と、裏面縦糸と裏面横糸とからなる裏面側織物とをバインダー縦糸によって接合されている。本発明に係る工業用二層織物における完全組織は、表面縦糸と裏面縦糸からなる第一の縦糸対と、表面側織物と裏面側織物とを接合する機能を有する2本のバインダー縦糸を隣接して配置する第二の縦糸対から構成されている。
ここで、上記第二の縦糸対を構成する一のバインダー縦糸が表面側織物上に連続して複数のナックルを形成している箇所において他のバインダー縦糸は表面側に現れず、他のバインダー縦糸が一のバインダー縦糸が表面側織物上に連続して複数のナックルを形成している箇所において一のバインダー縦糸は表面側に現れず相互に補完する構造を有している。すなわち、第二の縦糸対は2本のバインダー縦糸によって補完しながら表面側織物上に一の組織を形成している。又、バインダー縦糸は、主に表面側を織り込みながらバインダー糸として機能する、表面側バインダー縦糸と、主に裏面側を織り込みながらバインダー糸として機能する、裏面側バインダー縦糸とに分けて定義される場合がある。
又、表面縦糸とバインダー縦糸は略同線径の糸で形成されている。そして裏面縦糸は、表面縦糸バインダー縦糸より太い線径の糸で形成されていることが特徴となっている。本発明に係る工業用二層織物における完全組織は8シャフト以上を前提とする。
又、本発明に係る工業用二層織物における完全組織は、前記第一の縦糸対と第二の縦糸対とが、交互に配置されていることを特徴とする。又、本発明に係る工業用二層織物における完全組織は、第二の縦糸対の両側に第一の縦糸対が配置されていることを特徴としている。
更に、本発明に係る工業用二層織物における完全組織は、表面縦糸と裏面縦糸の比率が1:1であることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る工業用二層織物に使用される糸は用途によって選択すればよいが、例えば、モノフィラメントの他、マルチフィラメント、スパンヤーン、捲縮加工や嵩高加工等を施した一般的にテクスチャードヤーン、バルキーヤーン、ストレッチヤーンと称される加工糸、あるいはこれらを撚り合わせる等して組み合わせた糸が使用できる。また、糸の断面形状も円形だけでなく四角形状や星型等の短形状の糸や楕円形状、中空等の糸が使用できる。また、糸の材質としても、自由に選択でき、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロ、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、綿、ウール、金属等が使用できる。もちろん、共重合体やこれらの材質に目的に応じてさまざまな物質をブレンドさせたり含有させたりした糸を使用しても良い。抄紙用ワイヤーとしては一般的には、表面縦糸、裏面縦糸、バインダー縦糸、表面横糸には剛性があり、寸法安定性に優れるポリエステルモノフィラメントを用いるのが好ましい。又、耐摩耗性が要求される下面側緯糸にはポリエステルモノフィラメントとポリアミドモノフィラメントを交互に配置する等、交織するのが剛性を確保しつつ耐摩耗性を向上できて好ましい。
【0016】
以下、本発明に係る工業用二層織物の実施形態を説明する。以下に示す実施形態は、本発明の一例であって、本発明を限定するものではない。
本発明の工業用二層織物に係る実施形態を図面に則して説明する。
図1~
図8は本発明の工業用二層織物に係る実施形態1~4を示す意匠図である。意匠図とは織物組織の最小の繰り返し単位であって、この完全組織が上下左右につながって織物全体の組織が形成される。意匠図において、縦糸はアラビア数字、例えば1、2、3・・・で示した。本実施形態には、表面縦糸と裏面縦糸からなる第一の縦糸対と、2本のバインダー縦糸を隣接して2組配置した第二の縦糸対がある。横糸はダッシュを付したアラビア数字、例えば1’、2’、3’・・・で示した。
又、×印は表面縦糸が表面横糸の上側に位置していることを示し、○印は裏面縦糸が裏側横糸の下側に位置していることを示し、□印は裏面側バインダー縦糸が裏面横糸の下側に位置していることを示し、▲印は裏面側バインダー縦糸が表面横糸の上側に位置していることを示し、△印は表面側バインダー縦糸が裏側横糸の下側に位置していることを示し、■印は表面側バインダー縦糸が表面横糸の上側に位置していることを示している。表面縦糸と裏面縦糸、及び表面横糸と裏面緯糸は上下に重なって配置されているところがある。意匠図では糸が上下に正確に重なって配置されることになっているが、これは図面の都合上であって実際の織物ではずれて配置されても構わない。
【0017】
実施形態1
図1は本発明の工業用二層織物に係る実施形態1の完全組織を示す意匠図である。実施形態1に係る工業用二層織物の完全組織は、バインダー縦糸を有しない表面縦糸(1,4,5,8,9,12)と裏面縦糸(1,4,5,8,9,12)からなる第一の縦糸対と、接結機能を有する表面側バインダー縦糸(2,3,6,7,10,11)と裏面側バインダー縦糸(2,3,6,7,10,11)を含む第二の経糸対によって構成されている。
第一の縦糸対1は、表面縦糸が表面側織物上に平織組織を形成するように、表面横糸を交互に織り込み、裏面縦糸は
図2の裏面縦糸1に示す如く裏面横糸を織り込み、裏面側織物に1/4-1/3組織を形成している。第一の縦糸対4,5,8,9においても同様の組織を有している。
又、各第一の縦糸対に隣接する位置には、必ず第二の縦糸対が配置されている。例えば、第一の縦糸対1の隣接する位置には、第二の縦糸対の2組(2,3)が配置されている。具体的には、
図2に示す如く、第二の縦糸対2,3のうち表面側バインダー縦糸2は、表面横糸1’の下と、表面横糸2’,4’の上を通った後、裏面横糸7’,11’の下を通って、更に表面横糸14’,16’,18’の上を通ってナックルを形成し、第二の縦糸対2・3のうち裏面側バインダー縦糸2は、裏面横糸1’の上と、裏面横糸2’の下を通った後、表面横糸6’,8’,10’,12’の上を通り、更に裏面横糸16’の下を通って、表面側織物と裏面側織物を接結している。
【0018】
又、第一の縦糸対4に隣接する位置にも、第二の縦糸対2,3が配置されることとなる。第一の縦糸対における表面縦糸4は、表面側織物上に平織を形成している。第二の縦糸対2,3のうち表面側バインダー縦糸3は、表面横糸1’,3’,5’,7’の上を通った後、裏面横糸10’,14’の下を通り、表面横糸17’の上を通ってナックルを形成し、第二の縦糸対2,3のうち裏面側バインダー縦糸3は、裏面横糸1’と5’の下を通った後、表面横糸9’,11’,13’,15’の上を通って、表面側織物と裏面側織物を接結している。
又、第一の縦糸対5に隣接する位置には、第二の縦糸対6,7が配置されており、第一の縦糸対8に隣接する位置にも、第二の縦糸対6,7が配置されている。又、第一の縦糸対9に隣接する位置には、第二の縦糸対10,11が配置されており、第一の縦糸対12に隣接する位置にも、第二の縦糸対10,11が配置されている。
このような構造を採用することによって、大径の裏面縦糸の隣には必ず小径のバインダー縦糸が配置されることになるため、均一な脱水スピードを担保することが可能となるため、脱水マークの発生を減少することができるという効果が発生する。裏面側の耐摩耗性と縦方向の耐伸び性という性能も担保することができ、表面側織物と裏面側織物の密着性を高めることもできる。
【0019】
実施形態2
図3は本発明の工業用二層織物に係る実施形態2の完全組織を示す意匠図である。実施形態2に係る工業用二層織物の完全組織は、バインダー縦糸を有しない表面縦糸(1,4,5,8,9,12)と裏面縦糸(1,4,5,8,9,12)からなる第一の縦糸対と、接結機能を有する表面側バインダー縦糸(2,3,6,7,10,11)と裏面側バインダー縦糸(2,3,6,7,10,11)を含む第二の経糸対によって構成されている。
第一の縦糸対1は、表面縦糸が表面側織物上に平織組織を形成するように、表面横糸を交互に織り込み、裏面縦糸は
図4の裏面縦糸1に示す如く裏面横糸を織り込み、裏面側織物に1/4-1/3組織を形成している。第一の縦糸対4,5,8,9,12においても同様の組織を有している。
又、各第一の縦糸対に隣接する位置には、必ず第二の縦糸対が配置されている。例えば、第一の縦糸対1の隣接する位置には、第二の縦糸対2,3が配置されている。具体的には、
図4に示す如く、第二の縦糸対2,3のうち表面側バインダー縦糸2は、表面横糸1’の下と、表面横糸2’,4’の上を通った後、裏面横糸7’の下を通って、更に表面横糸10’,12’,14’,16’,18’の上を通ってナックルを形成し、第二の縦糸対2,3のうち裏面側バインダー縦糸2は、裏面横糸1’の上と、裏面横糸2’の下を通った後、表面横糸6’,8’の上を通り、更に裏面横糸11’,16’の下を通って、表面側織物と裏面側織物を接結している。
【0020】
又、第一の縦糸対4に隣接する位置にも、第二の縦糸対2,3が配置されることとなる。第一の縦糸対における表面縦糸4は、表面側織物上に平織を形成している。第二の縦糸対2,3のうち表面側バインダー縦糸3は、表面横糸1’,3’,5’,7’,9’,11’の上を通った後、裏面横糸14’の下を通り、表面横糸17’の上を通ってナックルを形成し、第二の縦糸対2,3のうち裏面側バインダー縦糸3は、裏面横糸1’と5’と10’の下を通った後、表面横糸13’,15’の上を通って、表面側織物と裏面側織物を接結している。
又、第一の縦糸対5に隣接する位置には、第二の縦糸対6,7が配置されており、第一の縦糸対8に隣接する位置にも、第二の縦糸対6,7が配置されている。又、第一の縦糸対9に隣接する位置には、第二の縦糸対10,11が配置されており、第一の縦糸対12に隣接する位置にも、第二の縦糸対10,11が配置されている。
このような構造を採用することによって、大径の裏面縦糸の隣には必ず小径のバインダー縦糸が配置されることになるため、均一な脱水スピードを担保することが可能となるため、脱水マークの発生を減少することができるという効果が発生する。裏面側の耐摩耗性と縦方向の耐伸び性という性能も担保することができ、表面側織物と裏面側織物の密着性を高めることもできる。
【0021】
実施形態3
図5は本発明の工業用二層織物に係る実施形態3の完全組織を示す意匠図である。実施形態3に係る工業用二層織物の完全組織は、バインダー縦糸を有しない表面縦糸(1,4,5,8)と裏面縦糸(1,4,5,8)からなる第一の縦糸対と、接結機能を有する表面側バインダー縦糸(2,3,6,7)と裏面側バインダー縦糸(2,3,6,7)を含む第二の経糸対によって構成されている。
第一の縦糸対1は、表面縦糸が表面側織物上に平織組織を形成するように、表面横糸を交互に織り込み、裏面縦糸は
図6の裏面縦糸1に示す如く裏面横糸を織り込み、裏面側織物に1/4-1/4-1/5組織を形成している。第一の縦糸対4,5,8においても同様の組織を有している。
又、各第一の縦糸対に隣接する位置には、必ず第二の縦糸対が配置されている。例えば、第一の縦糸対1の隣接する位置には、第二の縦糸対2,3が配置されている。具体的には、
図6に示す如く、第二の縦糸対2,3のうち表面側バインダー縦糸2は、表面横糸2’,4’,6’,8’の上を通った後、裏面横糸11’の下を通った後、表面横糸16’の上を通って、更に、第二の縦糸対2,3のうち裏面側バインダー縦糸2は、裏面横糸1’,6’の下を通った後、表面横糸10’,12’,14’の上を通って、表面側織物と裏面側織物を接結している。
【0022】
又、第一の縦糸対4に隣接する位置にも、第二の縦糸対2,3が配置されることとなる。第二の縦糸対における表面側バインダー縦糸3は、表面横糸1’,3’の上を通った後、裏面横糸7’の下を通った後、表面横糸13’,15’の上を通り、第二の経糸対3のうち裏面側バインダー縦糸3は、裏面横糸2’の下を通った後、表面横糸5’,7’,9’,11’の上を通った後、裏面横糸13’の下を通って、表面側織物と裏面側織物を接結している。又、第一の縦糸対5に隣接する位置には、第二の縦糸対6,7が配置されており、第一の縦糸対8に隣接する位置にも、第二の縦糸対6,7が配置されている。
このような構造を採用することによって、大径の裏面縦糸の隣には必ず小径のバインダー縦糸が配置されることになるため、均一な脱水スピードを担保することが可能となるため、脱水マークの発生を減少することができるという効果が発生する。裏面側の耐摩耗性と縦方向の耐伸び性という性能も担保することができ、表面側織物と裏面側織物の密着性を高めることもできる。
【0023】
実施形態4
図7は本発明の工業用二層織物に係る実施形態4の完全組織を示す意匠図である。実施形態4に係る工業用二層織物の完全組織は、バインダー縦糸を有しない表面縦糸1,4,5,8と裏面縦糸1,4,5,8からなる第一の縦糸対と、接結機能を有する表面側バインダー縦糸2,3,6,7と裏面側バインダー縦糸2,3,6,7を含む第二の経糸対によって構成されている。
第一の縦糸対1は、表面縦糸が表面側織物上に2/2組織を形成するように、表面横糸を織り込み、裏面縦糸は
図8の裏面縦糸1に示す如く裏面横糸を織り込み、裏面側織物に1/4-1/4-1/5組織を形成している。第一の縦糸対5においても同様の組織を有している。又、第一の縦糸対4は、表面縦糸が表面側織物上に平織組織を形成するように、表面横糸を交互に織り込み、裏面縦糸は
図8の裏面縦糸4に示す如く裏面横糸を織り込み、裏面側織物に1/4-1/4-1/5組織を形成している。第一の縦糸対8においても同様の組織を有している。
又、各第一の縦糸対に隣接する位置には、必ず第二の縦糸対が配置されている。例えば、第一の縦糸対1の隣接する位置には、第二の縦糸対2,3が配置されている。具体的には、
図8に示す如く、第二の縦糸対2,3のうち表面側バインダー縦糸2は、表面横糸2’,4’,6’,8’の上を通った後、裏面横糸11’の下を通った後、表面横糸16’の上を通って、更に、第二の縦糸対2,3のうち裏面側バインダー縦糸2は、裏面横糸1’,6’の下を通った後、表面横糸10’,12’,14’の上を通って、表面側織物と裏面側織物を接結している。
【0024】
又、第一の縦糸対4に隣接する位置にも、第二の縦糸対2,3が配置されることとなる。第二の縦糸対における表面側バインダー縦糸3は、表面横糸1’,2’の上を通った後、裏面横糸5’,10’の下を通った後、表面横糸13’,14’の上を通り、第二の縦糸対2,3のうち裏面側バインダー縦糸3は、表面横糸5’,6’の上を通り、表面横糸7’,8’の下を通り、表面横糸9’,10’の上を通った後、裏面横糸15’の下を通って、表面側織物と裏面側織物を接結している。又、第一の縦糸対5に隣接する位置には、第二の縦糸対6,7が配置されており、第一の縦糸対8に隣接する位置にも、第二の縦糸対6,7が配置されている。
このような構造を採用することによって、大径の裏面縦糸の隣には必ず小径のバインダー縦糸が配置されることになるため、均一な脱水スピードを担保することが可能となるため、脱水マークの発生を減少することができるという効果が発生する。裏面側の耐摩耗性と縦方向の耐伸び性という性能も担保することができ、表面側織物と裏面側織物の密着性を高めることもできる。
【0025】
(1)表面縦糸と表面横糸とからなる表面側織物と、裏面縦糸と裏面横糸とからなる裏面側織物とをバインダー縦糸によって接合する工業用二層織物における完全組織において、表面縦糸と裏面縦糸からなる第一の縦糸対と、表面側織物と裏面側織物とを接合する機能を有する表面側バインダー縦糸と裏面側バインダー縦糸からなる第二の縦糸対を有し、当該第二の縦糸対を構成する一のバインダー縦糸が表面側織物上に連続して複数のナックルを形成している箇所において他のバインダー縦糸は表面側に現れず、他のバインダー縦糸が一のバインダー縦糸が表面側織物上に連続して複数のナックルを形成している箇所において一のバインダー縦糸は表面側に現れず相互に補完する構造を有しており、表面縦糸とバインダー縦糸は略同線径の糸で形成されており、裏面縦糸が表面縦糸バインダー縦糸より太い線径の糸で形成されていることを特徴とする工業用二層織物である。
本発明は上記構成を採用することによって、織物の剛性及び耐摩耗性を向上させることができる。すなわち本発明に係る工業用二層織物は、裏面側の縦糸の線径が表面側の縦糸の線径よりも大径であるため、かかる大径の縦糸と織り合わせる裏面側の横糸の径も太くできるためである。
【0026】
(2)前記第一の縦糸対との間に、第二の縦糸対が配置されていることを特徴とする上記(1)に記載された工業用二層織物である。
本発明は、上記構成を採用することによって、縦糸とバインダー縦糸の配列を変更して、バインダー糸の摩耗を減少させることができる。
(3)前記工業用二層織物において、表面縦糸と裏面縦糸の比率が1:1であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載された工業用二層織物である。
(4)前記第二の縦糸対が2組隣接して配置され、更に、第二の縦糸対の両側に第一の縦糸対が配置されており、それが繰り返し配置されていることを特徴とする上記(2)又は(3)に記載された工業用二層織物である。
かかる構成は、第二の縦糸対を並べて2組配置している。すなわち合計4本のバインダー縦糸が配置されている。この第二の縦糸対の両側に第一の縦糸対が配置されている点に特徴を有する。ようするに2組の第二の縦糸対の両側に第一の縦糸対が配置されており、このような4組の縦糸対を繰り返しして配置したところに本発明の特徴がある。
本発明は上記構成を採用することによって、脱水マークの発生を助長するという問題点を解決した。すなわち本発明は、第一の縦糸対に隣接する位置に、バインダー部を有する第二の縦糸対を2組配置し、そのパターンが繰り返されることによって、一本の裏面縦糸の隣に必ず一本以上の径の小さいバインダー糸が隣接するため、脱水経路の閉鎖を抑制することで、均一な脱水となり、脱水マークの発生を減少させることができる。
(5)前記表面縦糸、表面横糸、裏面縦糸、裏面横糸又はバインダー縦糸の断面形状が、円形、星形、四角形状、楕円形状である上記(1)乃至(4)のいずれか一に記載された工業用二層織物である。
【符号の説明】
【0027】
1~12 縦糸
1’~18’ 緯糸