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特開2022-169693ホットスタンピング用の熱間圧延及びコーティングされた鋼板、ホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品及びこれらを製造するための方法
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  • 特開-ホットスタンピング用の熱間圧延及びコーティングされた鋼板、ホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品及びこれらを製造するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169693
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】ホットスタンピング用の熱間圧延及びコーティングされた鋼板、ホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品及びこれらを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   C21D 9/00 20060101AFI20221101BHJP
   C21D 1/18 20060101ALI20221101BHJP
   C21D 9/46 20060101ALI20221101BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20221101BHJP
   C22C 38/60 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
C21D9/00 A
C21D1/18 C
C21D9/46 U
C22C38/00 301W
C22C38/60
【審査請求】有
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133059
(22)【出願日】2022-08-24
(62)【分割の表示】P 2021096360の分割
【原出願日】2017-11-23
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2016/057100
(32)【優先日】2016-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(71)【出願人】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トマ・アンリオン
(72)【発明者】
【氏名】ロナン・ジャコロ
(72)【発明者】
【氏名】マルタン・ボーベ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ホットスタンピング後のコーティング付着が良好な鋼部品を製造するための方法の提供。
【解決手段】1.8~5mmの厚さで、重量%で0.04%≦C≦0.38%、0.40%≦Mn≦3%、0.005%≦Si≦0.70%、0.005%≦Al≦0.1%、0.001%≦Cr≦2%、0.001%≦Ni≦2%、0.001%≦Ti≦0.2%、Nb≦0.1%、B≦0.010%、0.0005%≦N≦0.010%、0.0001%≦S≦0.05%、0.0001%≦P≦0.1%、Mo≦0.65%、W≦0.30%、Ca≦0.006%を含み、残部が鉄及び不可避不純物からなり、4μmより低い粒界酸化深さ、フェライト・パーライトからなる組織、10~33μmnのAl又はAl合金コーティングを有する熱間圧延鋼板を切断してブランクにし、加熱されたブランクをホットスタンピングし、400℃未満温度に冷却して鋼部品にし、塗装する方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.8mm~5mmの間に含まれる厚さを有する熱間圧延及びコーティングされた鋼板を製造するための方法であって、
- 重量パーセントにより、
0.04%≦C≦0.38%、
0.40%≦Mn≦3%、
0.005%≦Si≦0.70%、
0.005%≦Al≦0.1%、
0.001%≦Cr≦2%、
0.001%≦Ni≦0.1%、
0.001%≦Ti≦0.2%、
Nb≦0.1%、
B≦0.010%、
0.0005%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.05%、
0.0001%≦P≦0.1%、
Mo≦0.65%、
W≦0.30%、
Ca≦0.006%
を含む組成を有し、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、鋼半製品を用意すること、
- 1.8mm~5mmの間に含まれる厚さを有する熱間圧延鋼製品を得るように、840℃~1000℃の間に含まれる最終圧延温度FRTによって前記鋼半製品を熱間圧延すること、次いで、
- 前記熱間圧延鋼製品を巻取り温度Tcoilに冷却し、前記巻取り温度Tcoilで前記熱間圧延鋼製品を巻取って熱間圧延鋼基材を得ること、ここで、前記巻取り温度Tcoilは、
450℃≦Tcoil≦Tcoilmax
(式中、Tcoilmaxは、
【数1】
として表される最高巻取り温度であり、Tcoilmaxは、セルシウス度として表され、fγは、前記巻取り直前の前記熱間圧延鋼製品中のオーステナイト分率を表す。)を満足する、
- 前記熱間圧延鋼基材を酸洗いすること、
- 浴中の連続溶融めっきによってAl又はAl合金を用いて前記熱間圧延鋼基材をコーティングして、熱間圧延鋼板と、前記熱間圧延鋼板の各面上にある10~33μmの間の厚さを有するAl又はAl合金コーティングとを含む熱間圧延及びコーティングされた鋼板を得ること
を含む、方法。
【請求項2】
前記組成が、重量パーセントにより、
0.04%≦C≦0.38%、
0.5%≦Mn≦3%、
0.005%≦Si≦0.5%、
0.005%≦Al≦0.1%、
0.001%≦Cr≦1%、
0.001%≦Ni≦0.1%、
0.001%≦Ti≦0.2%、
Nb≦0.1%、
B≦0.010%、
0.0005%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.05%、
0.0001%≦P≦0.1%、
Mo≦0.10%、
Ca≦0.006%
を含み、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、請求項1に記載の熱間圧延及びコーティングされた鋼板を製造するための方法。
【請求項3】
0.075%≦C≦0.38%である、請求項1又は2に記載の熱間圧延及びコーテイングされた鋼板を製造するための方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の熱間圧延及びコーティングされた鋼板を製造するための方法であって、前記鋼が、重量パーセントにより、
0.040%≦C≦0.100%、
0.80%≦Mn≦2.0%、
0.005%≦Si≦0.30%、
0.010%≦Al≦0.070%、
0.001%≦Cr≦0.10%、
0.001%≦Ni≦0.10%、
0.03%≦Ti≦0.08%、
0.015%≦Nb≦0.1%、
0.0005%≦N≦0.009%、
0.0001%≦S≦0.005%、
0.0001%≦P≦0.030%、
Mo≦0.10%、
Ca≦0.006%
である化学組成を有し、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の熱間圧延及びコーティングされた鋼板を製造するための方法であって、前記鋼が、重量パーセントにより、
0.062%≦C≦0.095%、
1.4%≦Mn≦1.9%、
0.2%≦Si≦0.5%、
0.020%≦Al≦0.070%、
0.02%≦Cr≦0.1%、
ただし、1.5%≦(C+Mn+Si+Cr)≦2.7%であり、
3.4×N≦Ti≦8×N、
0.04%≦Nb≦0.06%、
ただし、0.044%≦(Nb+Ti)≦0.09%であり、
0.0005%≦B≦0.004%、
0.001%≦N≦0.009%、
0.0005%≦S≦0.003%、
0.001%≦P≦0.020%
及び任意選択的に、0.0001%≦Ca≦0.006%
である化学組成を有し、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の熱間圧延及びコーティングされた鋼板を製造するための方法であって、前記鋼が、重量パーセントにより、
0.15%≦C≦0.38%、
0.5%≦Mn≦3%、
0.10%≦Si≦0.5%、
0.005%≦Al≦0.1%、
0.01%≦Cr≦1%、
0.001%≦Ti<0.2%、
0.0005%≦B≦0.010%、
0.0005%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.05%、
0.0001%≦P≦0.1%
である化学組成を有し、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、方法。
【請求項7】
1.8mm~5mmの間に含まれる厚さを有する熱間圧延及びコーティングされた鋼板を製造するための方法であって、
- 重量パーセントにより、
0.24%≦C≦0.38%及び0.40%≦Mn≦3%、又は
0.38%≦C≦0.43%及び0.05%≦Mn≦0.40%のいずれか、
0.10%≦Si≦0.70%、
0.015%≦Al≦0.070%、
0.001%≦Cr≦2%、
0.25%≦Ni≦2%、
0.015%≦Ti≦0.1%、
0%≦Nb≦0.06%、
0.0005%≦B≦0.0040%、
0.003%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.005%、
0.0001%≦P≦0.025%
を含む組成を有し、
チタン含量及び窒素含量は、次の関係:
Ti/N>3.42
を満足し、炭素含量、マンガン含量、クロム含量及びケイ素含量は、次の関係:
【数2】
を満足し、
前記化学組成が任意選択的に、次の元素:
0.05%≦Mo≦0.65%、
0.001%≦W≦0.30%、
0.0005%≦Ca≦0.005%
のいくつかのうちの1つを含み、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、鋼半製品を用意すること、
- 1.8mm~5mmの間に含まれる厚さを有する熱間圧延鋼製品を得るように、840℃~1000℃の間に含まれる最終圧延温度FRTによって前記鋼半製品を熱間圧延すること、次いで、
- 450℃≦Tcoil≦495℃を満足する巻取り温度Tcoilに前記熱間圧延鋼製品を冷却し、前記巻取り温度Tcoilで前記熱間圧延鋼製品を巻取って、熱間圧延鋼基材を得ること、
- 前記熱間圧延鋼基材を酸洗いすること、
- 浴中の連続溶融めっきによってAl又はAl合金を用いて前記熱間圧延鋼基材をコーティングして、熱間圧延鋼板と、前記熱間圧延鋼板の各面上にある10~33μmの間の厚さを有するAl又はAl合金コーティングとを含む熱間圧延及びコーティングされた鋼板を得ること
を含む、方法。
【請求項8】
酸洗いの後でコーティングの前に、前記熱間圧延鋼基材の表面領域における空隙の表面百分率が、30%未満であり、前記表面領域が、前記熱間圧延鋼基材の表面の上側地点を起点にして、この上側地点から15μmの深さに至るまで延伸する領域として規定される、請求項1から7のいずれか一項に記載の熱間圧延及びコーティングされた鋼板を製造するための方法。
【請求項9】
前記熱間圧延鋼板が、4μmより低い粒間酸化の深さを有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の熱間圧延及びコーティングされた鋼板を製造するための方法。
【請求項10】
前記浴が、重量パーセントにより、8%~11%のケイ素及び2%~4%の鉄を含有し、残り部分が、アルミニウム又はアルミニウム合金及び処理に固有の不純物である、請求項1から9のいずれか一項に記載の熱間圧延及びコーティングされた鋼板を製造するための方法。
【請求項11】
前記浴が、重量パーセントにより、2.0%~24.0%の亜鉛、7.1%~12.0%のケイ素、任意選択的に1.1%~8.0%のマグネシウム、及び任意選択的に、各さらなる元素の含量が0.3%未満であるようにPb、Ni、Zr又はHfから選択されるさらなる元素を含有し、残部が、アルミニウム並びに不可避的な不純物及び残留元素であり、Al/Znの比が、2.9超である、請求項1から9のいずれか一項に記載の熱間圧延及びコーティングされた鋼板を製造するための方法。
【請求項12】
前記浴が、重量パーセントにより、4.0%~20.0%の亜鉛、1%~3.5%のケイ素、任意選択的に1.0%~4.0%のマグネシウム、及び任意選択的に、各さらなる元素の含量が0.3%未満であるようにPb、Ni、Zr又はHfから選択されるさらなる元素を含有し、残部が、アルミニウム並びに不可避的な不純物及び残留元素であり、Zn/Siの比が、3.2~8.0の間に含まれる、請求項1から9のいずれか一項に記載の熱間圧延及びコーティングされた鋼板を製造するための方法。
【請求項13】
前記浴が、重量パーセントにより、2.0%~24.0%の亜鉛、1.1%~7.0%のケイ素、ケイ素の量が1.1~4.0%の間である場合において任意選択的に1.1%~8.0%のマグネシウム、及び任意選択的に、各さらなる元素の含量が0.3%未満であるようにPb、Ni、Zr又はHfから選択されるさらなる元素を含有し、残部が、アルミニウム並びに不可避的な不純物及び残留元素であり、Al/Znの比が、2.9超である、請求項1から9のいずれか一項に記載の熱間圧延及びコーティングされた鋼板を製造するための方法。
【請求項14】
Al又はAl合金によって前記熱間圧延鋼板をコーティングした後に、セメンテーション、電着又は音速ジェット式蒸着によって前記Al又はAl合金コーティング上に1.1μm以下の厚さを有するZnコーティングを堆積させる工程をさらに含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の熱間圧延及びコーティングされた鋼板を製造するための方法。
【請求項15】
- 1.8mm~5mmの間に含まれる厚さを有し、当該熱間圧延鋼板の組成が、重量パーセントにより、
0.04%≦C≦0.38%、
0.40%≦Mn≦3%、
0.005%≦Si≦0.70%、
0.005%≦Al≦0.1%、
0.001%≦Cr≦2%、
0.001%≦Ni≦2%、
0.001%≦Ti≦0.2%、
Nb≦0.1%、
B≦0.010%、
0.0005%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.05%、
0.0001%≦P≦0.1%、
Mo≦0.65%、
W≦0.30%、
Ca≦0.006%
を含み、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、熱間圧延鋼板であって、4μm未満の粒間酸化の深さを有する、熱間圧延鋼板、
- 前記熱間圧延鋼板の各面上において10~33μmの間に含まれる厚さを有するAl又はAl合金コーティング
を含む、熱間圧延及びコーティングされた鋼板。
【請求項16】
請求項15に記載の熱間圧延及びコーティングされた鋼板であって、前記鋼が、重量パーセントにより、
0.04%≦C≦0.38%、
0.40%≦Mn≦3%、
0.005%≦Si≦0.70%、
0.005%≦Al≦0.1%、
0.001%≦Cr≦2%、
0.001%≦Ni≦0.1%、
0.001%≦Ti≦0.2%、
Nb≦0.1%、
B≦0.010%、
0.0005%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.05%、
0.0001%≦P≦0.1%、
Mo≦0.65%、
W≦0.30%、
Ca≦0.006%
である化学組成を有し、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、熱間圧延及びコーティングされた鋼板。
【請求項17】
前記組成が、重量パーセントにより、
0.04%≦C≦0.38%、
0.5%≦Mn≦3%、
0.005%≦Si≦0.5%、
0.005%≦Al≦0.1%、
0.001%≦Cr≦1%、
0.001%≦Ni≦0.1%、
0.001%≦Ti≦0.2%、
Nb≦0.1%、
B≦0.010%、
0.0005%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.05%、
0.0001%≦P≦0.1%、
Mo≦0.10%、
Ca≦0.006%
を含み、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、請求項16に記載の熱間圧延及びコーティングされた鋼板。
【請求項18】
0.075%≦C≦0.38%である、請求項15から17のいずれか一項に記載の熱間圧延及びコーティングされた鋼板。
【請求項19】
前記鋼が、重量パーセントにより、
0.040%≦C≦0.100%、
0.80%≦Mn≦2.0%、
0.005%≦Si≦0.30%、
0.010%≦Al≦0.070%、
0.001%≦Cr≦0.10%、
0.001%≦Ni≦0.10%、
0.03%≦Ti≦0.08%、
0.015%≦Nb≦0.1%、
0.0005%≦N≦0.009%、
0.0001%≦S≦0.005%、
0.0001%≦P≦0.030%、
Mo≦0.10%、
Ca≦0.006%
である化学組成を有し、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、請求項15から17のいずれか一項に記載の熱間圧延及びコーティングされた鋼板。
【請求項20】
前記鋼が、重量パーセントにより、
0.062%≦C≦0.095%、
1.4%≦Mn≦1.9%、
0.2%≦Si≦0.5%、
0.020%≦Al≦0.070%、
0.02%≦Cr≦0.1%、
ただし、1.5%≦(C+Mn+Si+Cr)≦2.7%であり、
3.4×N≦Ti≦8×N
0.04%≦Nb≦0.06%、
ただし、0.044%≦(Nb+Ti)≦0.09%であり、
0.0005%≦B≦0.004%、
0.001%≦N≦0.009%、
0.0005%≦S≦0.003%、
0.001%≦P≦0.020%、
及び任意選択的に、0.0001%≦Ca≦0.006%
である化学組成を有し、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、請求項15から17のいずれか一項に記載の熱間圧延及びコーティングされた鋼板。
【請求項21】
前記鋼が、重量パーセントにより、
0.15%≦C≦0.38%、
0.5%≦Mn≦3%、
0.10%≦Si≦0.5%、
0.005%≦Al≦0.1%、
0.01%≦Cr≦1%、
0.001%≦Ti<0.2%、
0.0005%≦B≦0.010%、
0.0005%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.05%、
0.0001%≦P≦0.1%
である、化学組成を有し、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、請求項15から17のいずれか一項に記載の熱間圧延及びコーティングされた鋼板。
【請求項22】
- 1.8mm~5mmの間に含まれる厚さを有する熱間圧延鋼板であって、その組成が、重量パーセントにより、
0.24%≦C≦0.38%及び0.40%≦Mn≦3%、又は
0.38%≦C≦0.43%及び0.05%≦Mn≦0.40%のいずれか、
0.10%≦Si≦0.70%、
0.015%≦Al≦0.070%、
0.001%≦Cr≦2%、
0.25%≦Ni≦2%、
0.015%≦Ti≦0.1%、
0%≦Nb≦0.06%、
0.0005%≦B≦0.0040%、
0.003%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.005%、
0.0001%≦P≦0.025%
を含み、
チタン含量及び窒素含量は、次の関係:
Ti/N>3.42
を満足し、
炭素含量、マンガン含量、クロム含量及びケイ素含量は、次の関係:
【数3】
を満足し、
前記化学組成が任意選択的に、次の元素:
0.05%≦Mo≦0.65%、
0.001%≦W≦0.30%、
0.0005%≦Ca≦0.005%
のいくつかのうちの1つを含み、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなり、4μm未満の粒間酸化の深さを有する、熱間圧延鋼板、
- 前記熱間圧延鋼板の各面上にある10~33μmの間に含まれる厚さを有するAl又はAl合金コーティング
を含む、熱間圧延及びコーティングされた鋼板。
【請求項23】
前記コーティングが、15μm以下の厚さを有する金属間層を含む、請求項15から22のいずれか一項に記載の熱間圧延及びコーティングされた鋼板。
【請求項24】
前記熱間圧延及びコーティングされた鋼板が、1.1μm以下の厚さを有するZnコーティングを各面上にさらに含む、請求項15から23のいずれか一項に記載の熱間圧延及びコーティングされた鋼板。
【請求項25】
前記熱間圧延鋼板が、フェライト及びパーライトからなる組織を有する、請求項15から24のいずれか一項に記載の熱間圧延及びコーティングされた鋼板。
【請求項26】
- 請求項15から25のいずれか一項に記載の熱間圧延及びコーティングされた鋼板を用意し、又は請求項1から14のいずれか一項に記載の方法を実施し、これにより、熱間圧延及びコーティングされた鋼板を得る工程、
- 前記熱間圧延及びコーティングされた鋼板を切断して、ブランクを得る工程、
- 炉内で前記ブランクを温度Tcに加熱して、加熱されたブランクを得る工程、
- 前記加熱されたブランクをダイに移送し、前記加熱されたブランクを前記ダイの中でホットスタンピングし、これによって、ホットスタンピングされたブランクを得る工程、
- 前記ホットスタンピングされたブランクを400℃未満温度に冷却して、ホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品を得る工程
を含む、ホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品を製造するための方法。
【請求項27】
前記熱間圧延及びコーティングされた鋼板を切断して、前記ブランクを得た後で、前記ブランクが前記温度Tcに加熱される前に、前記ブランクが、重量パーセントにより、
0.04%≦C≦0.38%、
0.40%≦Mn≦3%、
0.005%≦Si≦0.70%、
0.005%≦Al≦0.1%、
0.001%≦Cr≦2%、
0.001%≦Ni≦2%、
0.001%≦Ti≦0.2%、
Nb≦0.1%、
B≦0.010%、
0.0005%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.05%、
0.0001%≦P≦0.1%、
Mo≦0.65%、
W≦0.30%、
Ca≦0.006%
を含む組成を有し、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、鋼から作製された別のブランクに溶接される、請求項26に記載のホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品を製造するための方法。
【請求項28】
前記熱間圧延及びコーティングされた鋼板を切断して、前記ブランクを得た後で、前記ブランクが前記温度Tcに加熱される前に、前記ブランクが、重量パーセントにより、
0.24%≦C≦0.38%及び0.40%≦Mn≦3%、又は
0.38%≦C≦0.43%及び0.05%≦Mn≦0.40%のいずれか、
0.10%≦Si≦0.70%、
0.015%≦Al≦0.070%、
0.001%≦Cr≦2%、
0.25%≦Ni≦2%、
0.015%≦Ti≦0.1%、
0%≦Nb≦0.06%、
0.0005%≦B≦0.0040%、
0.003%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.005%、
0.0001%≦P≦0.025%
を含む組成を有し、
チタン含量及び窒素含量は、次の関係:
Ti/N>3.42
を満足し、
炭素含量、マンガン含量、クロム含量及びケイ素含量は、次の関係:
【数4】
を満足し、
前記化学組成が任意選択的に、次の元素:
0.05%≦Mo≦0.65%、
0.001%≦W≦0.30%、
0.0005%≦Ca≦0.005%
のいくつかのうちの1つを含み、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、鋼から作製された別のブランクに溶接される、請求項26に記載のホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品を製造するための方法。
【請求項29】
1.8mm~5mmの間に含まれる厚さを有する少なくとも1つの部分を含み、3%以下の細孔の表面百分率を有するAl又はAl合金コーティングを含む、ホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品であって、前記部分が、重量パーセントにより、
0.04%≦C≦0.38%、
0.40%≦Mn≦3%、
0.005%≦Si≦0.70%、
0.005%≦Al≦0.1%、
0.001%≦Cr≦2%、
0.001%≦Ni≦2%、
0.001%≦Ti≦0.2%、
Nb≦0.1%、
B≦0.010%、
0.0005%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.05%、
0.0001%≦P≦0.1%、
Mo≦0.65%、
W≦0.30%、
Ca≦0.006%
を含む組成を有する鋼から作製されており、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、ホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品。
【請求項30】
前記部分における前記鋼の組成が、Ni≦0.1%であるような、請求項29に記載のホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品。
【請求項31】
1.8mm~5mmの間に含まれる厚さを有する少なくとも1つの部分を含み、3%以下の細孔の表面百分率を有するAl又はAl合金コーティングを含む、ホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品であって、前記部分が、重量パーセントにより、
0.24%≦C≦0.38%及び0.40%≦Mn≦3%、又は
0.38%≦C≦0.43%及び0.05%≦Mn≦0.40%のいずれか、
0.10%≦Si≦0.70%、
0.015%≦Al≦0.070%、
0.001%≦Cr≦2%、
0.25%≦Ni≦2%、
0.015%≦Ti≦0.1%、
0%≦Nb≦0.06%、
0.0005%≦B≦0.0040%、
0.003%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.005%、
0.0001%≦P≦0.025%
を含む組成を有し、
チタン含量及び窒素含量は、次の関係:
Ti/N>3.42
を満足し、
炭素含量、マンガン含量、クロム含量及びケイ素含量は、次の関係:
【数5】
を満足し、
前記化学組成が任意選択的に、次の元素:
0.05%≦Mo≦0.65%、
0.001%≦W≦0.30%、
0.0005%≦Ca≦0.005%
のいくつかのうちの1つを含み、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、鋼から作製されている、ホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品。
【請求項32】
自動車用のシャーシ若しくはホワイトボディ部品又はサスペンションアームの製造のための、請求項29から31のいずれか一項に記載のホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品、又は請求項26から28のいずれか一項に記載の方法によって製造されたホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品の、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットスタンピング後のコーティング付着が非常に良好である、1.8mm~5mmの間に含まれる厚さを有するホットスタンピング用の熱間圧延及びコーティングされた鋼板と、当該ホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品の少なくとも1つの部分が、1.8mm~5mmの間に含まれる厚さを有し、コーティング付着が非常に良好である、ホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品とに関する。本発明は、1.8mm~5mmの間に含まれる厚さを有するホットスタンピング用の熱間圧延及びコーティングされた鋼板を製造するための方法、及びホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品を製造するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用途における高強度鋼の使用が増えるにつれて、増大した強度と良好な成形性との両方を有する鋼の需要も大きくなっている。重量節減及び安全性要件に関する需要の高まりは、より高い延性及び強度を達成することができる自動車鋼に関する新たな概念を大いに洗練しようとする動機になっている。
【0003】
したがって、様々な強度レベルをもたらすいくつかの系列の鋼が提案されてきた。近年、部品の整形のためのホットスタンピング工程におけるコーティングされた鋼の使用は、特に自動車分野において、重要になってきた。
【0004】
これらの部品からホットスタンピングによって製造された、一般に0.7~2mmの間に含まれる厚さを有する鋼板は、熱間圧延を行い、さらに冷間圧延を行うことによって、得られる。
【0005】
さらに、1.8mm超、さらには3mm超で最大5mmの厚さを有するホットスタンピング用の鋼板の必要性が増している。このような鋼板は例えば、これまでは冷間プレス加工によって製造されてきたシャーシ部品又はサスペンションアームを製造するため、又は、ホットスタンピングされたテーラーロールドブランク(TRB)によって得られる部品を製造することが所望されている。
【0006】
しかしながら、3mm超の厚さを有するホットスタンピング用のコーティングされた鋼板は、冷間圧延によって製造することができない。実際、既存の冷間圧延ラインは、このような冷間圧延鋼板を製造するように適合していない。さらに、1.8mm~5mmの間に含まれる厚さを有する冷間圧延及びコーティングされた鋼板を製造することは、冷間圧延後のアニーリング工程において必要とされる再結晶と適合しない、低い冷間圧延加工率の使用を伴う。したがって、1.8mm~5mmの間に含まれる厚さを有する冷間圧延及びコーティングされた鋼板は、不十分な平坦度を有し、例えば、テーラードブランクの製造中に、ミスアライメントによる欠陥が生じることになる。
【0007】
したがって、熱間圧延によって、厚さが厚い鋼板を製造することが提案されてきた。例えば、JP2010-43323は、1.6mm超の厚さを有する、ホットスタンピング用の熱間圧延鋼板を製造するための方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010-43323号公報
【発明の概要】
【0009】
しかしながら、本発明者らは、熱間圧延によってコーティングされた鋼板を製造するときに、ホットスタンピングにさらに向かうことになる鋼部品の表面上へのコーティングの付着が不満足なものであり、これにより、ホットスタンピング部品への塗装の付着が不十分になることを発見した。塗装の付着は例えば、湿式塗装付着試験によって査定される。
【0010】
さらに、いくつかの特定の場合において、ホットスタンピングの前後におけるコーティングの厚さを厳密に制御することができず、この結果、得られるコーティングの厚さが目標の厚さ範囲内に収まらない。この目標の厚さ範囲は、概して10μm~33μmの間に含まれ、例えば10~20μmの範囲、15~33μmの範囲又は20~33μmの範囲に含まれる。このようにコーティングの厚さが制御されていないと、不十分な溶接性につながる。
【0011】
さらに、下記においてさらに詳細に説明されているように、本発明者らは、酸洗い工程を減速する特定の状況下においては、コーティング付着を改善することができるが、コーティングの厚さの制御は改善されないことを発見した。むしろ、これらの状況下においては、コーティングの厚さの制御がさらに悪化し、この結果として、溶接性もさらに悪化し、ラインの生産性が低下する。
【0012】
したがって、本発明は、熱間圧延及びコーティングされた鋼板のコーティングの厚さを目標範囲、特に10~33μmの間に含まれる範囲に制御することを可能にしながら、ホットスタンピング後のコーティング付着を改善できるようにするものである、1.8mm~5mmの間に含まれる厚さを有する熱間圧延及びコーティングされた鋼板及び当該鋼板を製造するための方法を提供することを目的とする。
【0013】
本発明は、当該ホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品の少なくとも1つの部分が、1.8mm~5mmの間に含まれる厚さを有し、改善されたコーティング付着を有する、ホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品、及び当該ホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品を製造するための方法を提供することも目的とする。最後に、本発明は、酸洗いラインの生産性を低下させない方法を提供することも目的とする。
【0014】
この目的のために、本発明は、1.8mm~5mmの間に含まれる厚さを有する熱間圧延及びコーティングされた鋼板を製造するための方法であって、
- 重量パーセントにより、
0.04%≦C≦0.38%、
0.40%≦Mn≦3%、
0.005%≦Si≦0.70%、
0.005%≦Al≦0.1%、
0.001%≦Cr≦2%、
0.001%≦Ni≦2%、
0.001%≦Ti≦0.2%、
Nb≦0.1%、
B≦0.010%、
0.0005%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.05%、
0.0001%≦P≦0.1%、
Mo≦0.65%、
W≦0.30%、
Ca≦0.006%
を含む組成を有し、
組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、鋼半製品を用意すること、
- 1.8mm~5mmの間に含まれる厚さを有する熱間圧延鋼製品を得るように、最終圧延温度FRTによって半製品を熱間圧延すること、次いで、
- 熱間圧延鋼製品を巻取り温度Tcoilに冷却し、前記巻取り温度Tcoilで熱間圧延鋼製品を巻き取って、熱間圧延鋼基材を得ること、ここで、前記巻取り温度Tcoilは、
450℃≦Tcoil≦Tcoilmax
(式中、Tcoilmaxは、
【0015】
【数1】
として表される最高巻取り温度であり、Tcoilmaxは、セルシウス度として表され、fγは、巻取り直前の熱間圧延鋼製品中のオーステナイト分率を表す。)を満足する、
- 熱間圧延鋼基材を酸洗いすること、
- 浴中の連続溶融めっきによってAl又はAl合金を用いて熱間圧延鋼基材をコーティングして、熱間圧延鋼板と、熱間圧延鋼板の各面上にある10~33μmの間に含まれる厚さを有するAl又はAl合金コーティングとを含む熱間圧延及びコーティングされた鋼板を得ること
を含む、方法に関する。
【0016】
一実施形態によれば、Ni含量は、最大で0.1%である。
【0017】
この実施形態において、組成は、重量パーセントにより、
0.04%≦C≦0.38%、
0.40%≦Mn≦3%、
0.005%≦Si≦0.70%、
0.005%≦Al≦0.1%、
0.001%≦Cr≦2%、
0.001%≦Ni≦0.1%、
0.001%≦Ti≦0.2%、
Nb≦0.1%、
B≦0.010%、
0.0005%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.05%、
0.0001%≦P≦0.1%、
Mo≦0.65%、
W≦0.30%、
Ca≦0.006%
を含み、
組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる。
【0018】
好ましくは、組成は、重量パーセントにより、
0.04%≦C≦0.38%、
0.5%≦Mn≦3%、
0.005%≦Si≦0.5%、
0.005%≦Al≦0.1%、
0.001%≦Cr≦1%、
0.001%≦Ni≦0.1%、
0.001%≦Ti≦0.2%、
Nb≦0.1%、
B≦0.010%、
0.0005%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.05%、
0.0001%≦P≦0.1%、
Mo≦0.10%、
Ca≦0.006%
を含み、
組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる。
【0019】
好ましくは、最終圧延温度FRTは、840℃~1000℃の間に含まれる。
【0020】
一実施形態によれば、組成は、0.075%≦C≦0.38%であるような組成である。
【0021】
特定の実施形態によれば、鋼は、重量パーセントにより、
0.040%≦C≦0.100%、
0.80%≦Mn≦2.0%、
0.005%≦Si≦0.30%、
0.010%≦Al≦0.070%、
0.001%≦Cr≦0.10%、
0.001%≦Ni≦0.10%、
0.03%≦Ti≦0.08%、
0.015%≦Nb≦0.1%、
0.0005%≦N≦0.009%、
0.0001%≦S≦0.005%、
0.0001%≦P≦0.030%、
Mo≦0.10%、
Ca≦0.006%
である化学組成を有し、
組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる。
【0022】
別の特定の実施形態によれば、鋼は、重量パーセントにより、
0.062%≦C≦0.095%、
1.4%≦Mn≦1.9%、
0.2%≦Si≦0.5%、
0.020%≦Al≦0.070%、
0.02%≦Cr≦0.1%、
ただし、1.5%≦(C+Mn+Si+Cr)≦2.7%であり、
3.4×N≦Ti≦8×N、
0.04%≦Nb≦0.06%、
ただし、0.044%≦(Nb+Ti)≦0.09%であり、
0.0005%≦B≦0.004%、
0.001%≦N≦0.009%、
0.0005%≦S≦0.003%、
0.001%≦P≦0.020%、
及び任意選択的に、0.0001%≦Ca≦0.006%
である化学組成を有し、
組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる。
【0023】
別の特定の実施形態によれば、鋼は、重量パーセントにより、
0.15%≦C≦0.38%、
0.5%≦Mn≦3%、
0.10%≦Si≦0.5%、
0.005%≦Al≦0.1%、
0.01%≦Cr≦1%、
0.001%≦Ti<0.2%、
0.0005%≦B≦0.010%、
0.0005%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.05%、
0.0001%≦P≦0.1%
である化学組成を有し、
組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる。
【0024】
別の特定の実施形態によれば、鋼は、重量パーセントにより、
0.24%≦C≦0.38%、
0.40%≦Mn≦3%、
0.10%≦Si≦0.70%、
0.015%≦Al≦0.070%、
0.001%≦Cr≦2%、
0.25%≦Ni≦2%、
0.015%≦Ti≦0.1%、
0%≦Nb≦0.06%、
0.0005%≦B≦0.0040%、
0.003%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.005%、
0.0001%≦P≦0.025%
であり、
チタン含量及び窒素含量は、次の関係:
Ti/N>3.42
を満足し、
炭素含量、マンガン含量、クロム含量及びケイ素含量は、次の関係:
【0025】
【数2】
を満足し、
当該化学組成が任意選択的に、次の元素:
0.05%≦Mo≦0.65%、
0.001%≦W≦0.30%、
0.0005%≦Ca≦0.005%
のいくつかのうちの1つを含み、
当該組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、組成を有する。
【0026】
好ましくは、酸洗いの後で、コーティングの前に、熱間圧延鋼基材の表面領域中の空隙の表面百分率は、30%未満であり、表面領域は、熱間圧延鋼基材の表面の上側地点を起点にして、この上側地点から15μmの深さに至るまでに延伸する領域として規定されている。
【0027】
好ましくは、熱間圧延鋼板は、4μmより低い粒界酸化(以下、「粒間酸化」ともいう。)の深さを有する。
【0028】
一実施形態によれば、浴は、重量パーセントにより、8%~11%のケイ素及び2%~4%の鉄を含有し、残り部分が、アルミニウム又はアルミニウム合金及び処理に固有の不純物である。
【0029】
別の実施形態によれば、浴は、重量パーセントにより、0.1%~10%のマグネシウムと、0.1%~20%のアルミニウムとを含有し、残り部分が、Zn又はZn合金、Si、Sb、Pb、Ti、Ca、Mn、Sn、La、Ce、Cr、Ni、Zr及び/又はBi等の任意選択的な追加用の元素並びに処理に固有の不純物である。
【0030】
別の実施形態によれば、浴は、重量パーセントにより、2.0%~24.0%の亜鉛、7.1%~12.0%のケイ素、任意選択的に1.1%~8.0%のマグネシウム、及び任意選択的に、各追加用の元素の含量が0.3%未満であるようにPb、Ni、Zr又Hfから選択される追加用の元素を含有し、残部が、アルミニウム及び不可避的な不純物及び残留元素であり、Al/Znの比が、2.9超である。
【0031】
別の実施形態によれば、浴は、重量パーセントにより、4.0%~20.0%の亜鉛、1%~3.5%のケイ素、任意選択的に1.0%~4.0%のマグネシウム、及び任意選択的に、各さらなる元素の含量が0.3%未満であるようにPb、Ni、Zr又はHfから選択されるさらなる元素を含有し、残部が、アルミニウム並びに不可避的な不純物及び残留元素であり、Zn/Siの比が、3.2~8.0の間である。
【0032】
別の実施形態によれば、浴は、重量パーセントにより、2.0%~24.0%の亜鉛、1.1%~7.0%のケイ素、ケイ素の量が1.1~4.0%の間である場合において任意選択的に1.1%~8.0%のマグネシウム、及び任意選択的に、各さらなる元素の含量が0.3%未満であるようにPb、Ni、Zr又はHfから選択されるさらなる元素を含有し、残部が、アルミニウム並びに不可避的な不純物及び残留元素であり、Al/Znの比が、2.9超である。
【0033】
一実施形態によれば、本方法は、Al又はAl合金によって熱間圧延鋼板をコーティングした後に、セメンテーション、電着又は音速ジェット式蒸着(sonic jet vapor deposition)によってAl又はAl合金コーティング上に1.1μm以下の厚さを有するZnコーティングを堆積させる工程をさらに含む。
【0034】
好ましくは、酸洗いは、15~65秒の間に含まれる時間にわたって、HCl浴中で実施される。
【0035】
一実施形態において、熱間圧延鋼板は、フェライト及びパーライトから構成される組織を有する。
【0036】
本発明は、1.8mm~5mmの間に含まれる厚さを有する熱間圧延及びコーティングされた鋼板を製造するための方法であって、
- 重量パーセントにより、
0.24%≦C≦0.38%及び0.40%≦Mn≦3%、又は
0.38%≦C≦0.43%及び0.05%≦Mn≦0.40%のいずれか、
0.10%≦Si≦0.70%、
0.015%≦Al≦0.070%、
0.001%≦Cr≦2%、
0.25%≦Ni≦2%、
0.015%≦Ti≦0.1%、
0%≦Nb≦0.06%、
0.0005%≦B≦0.0040%、
0.003%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.005%、
0.0001%≦P≦0.025%
を含む組成を有し、
チタン含量及び窒素含量は、次の関係:
Ti/N>3.42、
を満足し、
炭素含量、マンガン含量、クロム含量及びケイ素含量は、次の関係:
【0037】
【数3】
を満足し、
前記化学組成が任意選択的に、次の元素:
0.05%≦Mo≦0.65%、
0.001%≦W≦0.30%、
0.0005%≦Ca≦0.005%
のいくつかのうちの1つを含み、
当該組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、鋼半製品を用意すること、
- 1.8mm~5mmの間に含まれる厚さを有する熱間圧延鋼製品を得るように、840℃~1000℃の間に含まれる最終圧延温度FRTによって鋼半製品を熱間圧延すること、
- 450℃≦Tcoil≦495℃を満足する巻取り温度Tcoilに熱間圧延鋼製品を冷却し、前記巻取り温度Tcoilで熱間圧延鋼製品を巻き取って、熱間圧延鋼基材を得ること、
- 熱間圧延鋼基材を酸洗いすること、
- 浴中の連続溶融めっきによってAl又はAl合金を用いて熱間圧延鋼基材をコーティングして、熱間圧延鋼板と、熱間圧延鋼板の各面上にある10~33μmの間の厚さを有するAl又はAl合金コーティングとを含む熱間圧延及びコーティングされた鋼板を得ること
を含む、方法にも関する。
【0038】
好ましくは、酸洗いの後で、コーティングの前に、熱間圧延鋼基材の表面領域中の空隙の表面百分率は、30%未満であり、表面領域は、熱間圧延鋼基材の表面の上側地点を起点にして、この上側地点から15μmの深さに至るまでに延伸する領域として規定されている。
【0039】
好ましくは、熱間圧延鋼板は、4μmより低い粒間酸化の深さを有する。
【0040】
一実施形態において、熱間圧延鋼板は、フェライト及びパーライトから構成される組織を有する。
【0041】
本発明は、
- 1.8mm~5mmの間に含まれる厚さを有し、当該熱間圧延鋼板の組成が、重量パーセントにより、
0.04%≦C≦0.38%、
0.40%≦Mn≦3%、
0.005%≦Si≦0.70%、
0.005%≦Al≦0.1%、
0.001%≦Cr≦2%、
0.001%≦Ni≦2%、
0.001%≦Ti≦0.2%、
Nb≦0.1%、
B≦0.010%、
0.0005%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.05%、
0.0001%≦P≦0.1%、
Mo≦0.65%、
W≦0.30%、
Ca≦0.006%
を含み、
組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、熱間圧延鋼板であって、4μm未満の粒間酸化の深さを有する、熱間圧延鋼板と、
- 熱間圧延鋼板の各面上にある10~33μmの間に含まれる厚さを有するAl又はAl合金コーティングと
を含む、熱間圧延及びコーティングされた鋼板にも関する。
【0042】
一実施形態によれば、組成は、Ni≦0.1%であるような組成である。
【0043】
この実施形態において、組成は好ましくは、重量パーセントにより、
0.04%≦C≦0.38%、
0.5%≦Mn≦3%、
0.005%≦Si≦0.5%、
0.005%≦Al≦0.1%、
0.001%≦Cr≦1%、
0.001%≦Ni≦0.1%、
0.001%≦Ti≦0.2%、
Nb≦0.1%、
B≦0.010%、
0.0005%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.05%、
0.0001%≦P≦0.1%、
Mo≦0.10%、
Ca≦0.006%
を含み、
組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる。
【0044】
一実施形態によれば、組成は、0.075%≦C≦0.38%であるような組成である。
【0045】
特定の実施形態によれば、鋼は、重量パーセントにより、
0.040%≦C≦0.100%、
0.80%≦Mn≦2.0%、
0.005%≦Si≦0.30%、
0.010%≦Al≦0.070%、
0.001%≦Cr≦0.10%、
0.001%≦Ni≦0.10%、
0.03%≦Ti≦0.08%、
0.015%≦Nb≦0.1%、
0.0005%≦N≦0.009%、
0.0001%≦S≦0.005%、
0.0001%≦P≦0.030%、
Mo≦0.10%、
Ca≦0.006%
である化学組成を有し、
組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる。
【0046】
別の特定の実施形態によれば、鋼は、重量パーセントにより、
0.062%≦C≦0.095%、
1.4%≦Mn≦1.9%、
0.2%≦Si≦0.5%、
0.020%≦Al≦0.070%、
0.02%≦Cr≦0.1%、
ただし、1.5%≦(C+Mn+Si+Cr)≦2.7%であり、
3.4×N≦Ti≦8×N
0.04%≦Nb≦0.06%、
ただし、0.044%≦(Nb+Ti)≦0.09%であり、
0.0005%≦B≦0.004%、
0.001%≦N≦0.009%、
0.0005%≦S≦0.003%、
0.001%≦P≦0.020%、
及び任意選択的に、0.0001%≦Ca≦0.006%
である化学組成を有し、
組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる。
【0047】
別の特定の実施形態によれば、鋼は、重量パーセントにより、
0.15%≦C≦0.38%、
0.5%≦Mn≦3%、
0.10%≦Si≦0.5%、
0.005%≦Al≦0.1%、
0.01%≦Cr≦1%、
0.001%≦Ti<0.2%、
0.0005%≦B≦0.010%、
0.0005%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.05%、
0.0001%≦P≦0.1%
である化学組成を有し、
組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる。
【0048】
別の特定の実施形態によれば、鋼は、重量パーセントにより、
0.24%≦C≦0.38%、
0.40%≦Mn≦3%、
0.10%≦Si≦0.70%、
0.015%≦Al≦0.070%
0.001%≦Cr≦2%、
0.25%≦Ni≦2%、
0.015%≦Ti≦0.1%、
0%≦Nb≦0.06%、
0.0005%≦B≦0.0040%、
0.003%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.005%
0.0001%≦P≦0.025%
である化学組成を有し、
チタン含量及び窒素含量は、次の関係:
Ti/N>3.42
を満足し、
炭素含量、マンガン含量、クロム含量及びケイ素含量は、次の関係:
【0049】
【数4】
を満足し、
前記化学組成が任意選択的に、次の元素:
0.05%≦Mo≦0.65%、
0.001%≦W≦0.30%、
0.0005%≦Ca≦0.005%
のいくつかのうちの1つを含み、
組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる。
【0050】
好ましくは、コーティングは、最大で15μm、すなわち、15μm以下の厚さを有する金属間化合物層(以下、「金属間層」ともいう。)を含む。
【0051】
一実施形態によれば、熱間圧延及びコーティングされた鋼板は、1.1μm以下の厚さを有するZnコーティングを各面上にさらに含む。
【0052】
一実施形態において、熱間圧延鋼板は、フェライト-パーライト組織、すなわち、フェライト及びパーライトからなる組織を有する。
【0053】
本発明は、
- 1.8mm~5mmの間に含まれる厚さを有し、当該熱間圧延鋼板の組成が、重量パーセントにより、
0.24%≦C≦0.38%及び0.40%≦Mn≦3%、又は
0.38%≦C≦0.43%及び0.05%≦Mn≦0.40%のいずれか、
0.10%≦Si≦0.70%、
0.015%≦Al≦0.070%、
0.001%≦Cr≦2%、
0.25%≦Ni≦2%、
0.015%≦Ti≦0.1%、
0%≦Nb≦0.06%、
0.0005%≦B≦0.0040%、
0.003%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.005%、
0.0001%≦P≦0.025%
を含み、
チタン含量及び窒素含量は、次の関係:
Ti/N>3.42
を満足し、
炭素含量、マンガン含量、クロム含量及びケイ素含量は、次の関係:
【0054】
【数5】
を満足し、
前記化学組成が任意選択的に、次の元素:
0.05%≦Mo≦0.65%、
0.001%≦W≦0.30%
0.0005%≦Ca≦0.005%
のいくつかのうちの1つを含み、
- 前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、熱間圧延鋼板であって、4μm未満の粒間酸化の深さを有する、熱間圧延鋼板と、
- 熱間圧延鋼板の各面上にある10~33μmの間に含まれる厚さを有するAl又はAl合金コーティングと
を含む、熱間圧延及びコーティングされた鋼板にも関する。
【0055】
好ましくは、コーティングは、最大で15μm、すなわち、15μm以下の厚さを有する金属間層を有する。
【0056】
一実施形態によれば、熱間圧延及びコーティングされた鋼板は、1.1μm以下の厚さを有するZnコーティングを各面上にさらに含む。
【0057】
一実施形態において、熱間圧延鋼は、フェライト-パーライト組織、すなわち、フェライト及びパーライトからなる組織を有する。
【0058】
本発明は、
- 本発明による熱間圧延及びコーティングされた鋼板、又は、本発明による方法によって製造された熱間圧延及びコーティングされた鋼板を用意する工程、
- 熱間圧延及びコーティングされた鋼板を切断して、ブランクを得る工程、
- 炉内でブランクを温度Tcに加熱して、加熱されたブランクを得る工程、
- 加熱されたブランクをダイに移送し、加熱されたブランクをダイの中でホットスタンピングし、これによって、ホットスタンピングされたブランクを得る工程、
- ホットスタンピングされたブランクを400℃未満温度に冷却して、ホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品を得る工程、
を含む、ホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品を製造するための方法にも関する。
【0059】
一実施形態によれば、熱間圧延及びコーティングされた鋼板を切断して、ブランクを得る後で、ブランクが温度Tcに加熱される前に、ブランクが、重量パーセントにより、
0.04%≦C≦0.38%、
0.40%≦Mn≦3%、
0.005%≦Si≦0.70%、
0.005%≦Al≦0.1%、
0.001%≦Cr≦2%、
0.001%≦Ni≦2%、
0.001%≦Ti≦0.2%、
Nb≦0.1%、
B≦0.010%、
0.0005%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.05%、
0.0001%≦P≦0.1%、
Mo≦0.65%、
W≦0.30%、
Ca≦0.006%
を含む組成を有し、
組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、鋼から作製された別のブランクに溶接される。
【0060】
好ましくは、前記他のブランクは、Ni≦0.1%であるような組成を有する。
【0061】
別の実施形態によれば、熱間圧延及びコーティングされた鋼板を切断して、ブランクを得る後で、ブランクが温度Tcに加熱される前に、ブランクが、重量パーセントにより、
0.24%≦C≦0.38%及び0.40%≦Mn≦3%、又は
0.38%≦C≦0.43%及び0.05%≦Mn≦0.40%のいずれか、
0.10%≦Si≦0.70%、
0.015%≦Al≦0.070%、
0.001%≦Cr≦2%、
0.25%≦Ni≦2%、
0.015%≦Ti≦0.1%、
0%≦Nb≦0.06%、
0.0005%≦B≦0.0040%、
0.003%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.005%
0.0001%≦P≦0.025%
を含む組成を有し、
チタン含量及び窒素含量は、次の関係:
Ti/N>3.42
を満足し、
炭素含量、マンガン含量、クロム含量及びケイ素含量は、次の関係:
【0062】
【数6】
を満足し、
化学組成が任意選択的に、次の元素:
0.05%≦Mo≦0.65%、
0.001%≦W≦0.30%、
0.0005%≦Ca≦0.005%
のいくつかのうちの1つを含み、
組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、鋼から作製された別のブランクに溶接される。
【0063】
本発明は、1.8mm~5mmの間に含まれる厚さを有する少なくとも1つの部分を含み、3%以下の細孔の表面百分率を有するAl又はAl合金コーティングを含む、ホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品にも関する。
【0064】
一実施形態によれば、前記部分は、重量パーセントにより、
0.04%≦C≦0.38%、
0.40%≦Mn≦3%、
0.005%≦Si≦0.70%、
0.005%≦Al≦0.1%、
0.001%≦Cr≦2%、
0.001%≦Ni≦2%、
0.001%≦Ti≦0.2%、
Nb≦0.1%、
B≦0.010%、
0.0005%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.05%、
0.0001%≦P≦0.1%、
Mo≦0.65%、
W≦0.30%、
Ca≦0.006%
を含む組成を有し、
組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、鋼から作製されている。
【0065】
一実施形態によれば、前記部分中の鋼の組成は、Ni≦0.1%であるような組成である。
【0066】
別の実施形態によれば、前記部分は、重量パーセントにより、
0.24%≦C≦0.38%及び0.40%≦Mn≦3%、又は
0.38%≦C≦0.43%及び0.05%≦Mn≦0.40%のいずれか、
0.10%≦Si≦0.70%、
0.015%≦Al≦0.070%、
0.001%≦Cr≦2%、
0.25%≦Ni≦2%、
0.015%≦Ti≦0.1%、
0%≦Nb≦0.06%、
0.0005%≦B≦0.0040%、
0.003%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.005%、
0.0001%≦P≦0.025%
を含む組成を有し、
チタン含量及び窒素含量は、次の関係:
Ti/N>3.42
を満足し、
炭素含量、マンガン含量、クロム含量及びケイ素含量は、次の関係:
【0067】
【数7】
を満足し、
化学組成が任意選択的に、次の元素:
0.05%≦Mo≦0.65%、
0.001%≦W≦0.30%、
0.0005%≦Ca≦0.005%
のいくつかのうちの1つを含み、
組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、鋼から作製されている。
【0068】
本発明は、自動車用のシャーシ若しくはホワイトボディ部品又はサスペンションアームの製造のための、本発明によるホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品、又は、本発明による方法によって製造されたホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品の使用にも関する。
【0069】
次に、添付の図面を参照しながら、限定を導入することがない例によって、本発明を詳述及び例示する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】ホットスタンピング後のコーティング付着の査定を示している、熱間圧延及びコーティングされた鋼部品の断面の図である。
図2】熱間圧延鋼基材の表面における空隙の表面百分率の判定を示す、コーティング及びホットスタンピングの前の熱間圧延鋼基材の断面の図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
熱間圧延鋼製品、基材、板材又は部品に関して、熱間圧延鋼製品、基材、板材又は部品は、熱間圧延されるが冷間圧延されないと理解しなければならない。
【0072】
本発明は、さらに冷間圧延されることがなかった、熱間圧延鋼板に関する。
【0073】
熱間圧延された板材又は基材は、次の特徴という観点において、冷間圧延された板材又は基材とは異なる。一般に、熱間圧延工程及び冷間圧延工程が、マトリックスと第2相粒子(酸化物、硫化物、窒化物、炭化物...)との間のレオロジー的挙動の差異のために、第2相粒子の周囲にある程度の損傷を発生させる。冷間圧延の場合、空隙は、セメンタイト、カーバイド又はパーライトの周囲で核形成し、成長することができる。さらに、粒子は、断片化することができる。この損傷は、イオンビーム研磨によって切断及び調製された板材において、観察され得る。この技法は、最終的な空隙を部分的に又は完全に充填することができる、機械的研磨のときの金属の流れに起因した人工物をなくすものである。最終的な空隙の存在についてのさらなる観察が、走査型電子顕微鏡法によって実施される。オーステナイト域において圧延された熱間圧延鋼板に比較したとき、セメンタイト粒子の周囲又は内部に観察された局所的な損傷は、これらの粒子が熱間圧延工程では存在しないため、冷間圧延に特定して原因を帰することができる。したがって、圧延鋼板においてセメンタイト、カーバイド又はパーライトの内部又は周囲に観察された損傷は、鋼板が冷間圧延されたことを示すものである。
【0074】
さらには、下記において、熱間圧延鋼基材は、任意のコーティング工程前に本製造方法を実施するときに製造される、熱間圧延鋼製品を表し、熱間圧延及びコーティングされた鋼板は、コーティング工程を含む製造方法から生じた製品を表す。したがって、熱間圧延及びコーティングされた鋼板は、熱間圧延鋼基材のコーティングから生じるものであり、鋼製品及び鋼製品の各面上にあるコーティングを含む。
【0075】
コーティング前の熱間圧延鋼基材から、熱間圧延及びコーティングされた鋼板の鋼製品(すなわち、コーティングを除く)を区別するために、熱間圧延及びコーティングされた鋼板製の鋼製品は、下記において、「熱間圧延鋼板」と呼ぶ。
【0076】
熱間圧延鋼基材は一般に、加熱され、目標の厚さに熱間圧延され、巻取り温度Tcoilに冷却され、巻取り温度Tcoilで巻き取られ、スケールを取り除くように酸洗いされた、鋼半製品から製造される。
【0077】
次いで、熱間圧延鋼基材をコーティングして、熱間圧延及びコーティングされた鋼板を製作することができ、熱間圧延及びコーティングされた鋼板は、切断され、炉内で加熱され、ホットスタンピングされ、所望の組織を得るために室温に冷却されるように仕向けられる。
【0078】
本発明者らは、ホットスタンピングにさらに向かうことになるコーティングの付着の不足に関する課題を調査してきたが、この付着の不足が大抵の場合、巻取り中に巻き(コイル)の芯及び長手方向の軸領域に位置する板材の部分に起きることを発見した。
【0079】
本発明者らは、この現象をさらに調査し、ホットスタンピング後のコーティングの付着の不足が、巻取り中に起きる粒間酸化に起因することを発見した。
【0080】
特に、巻取り直前に、鋼は、オーステナイトを含む。巻取り後には、このオーステナイトの部分がフェライト及びパーライトに変態して、熱を発生させる。発生した熱により、巻き取られた鋼基材、特に巻きの芯及び軸領域の温度上昇が起きる。
【0081】
巻きの芯は、基材の長手方向に沿って、基材の全長の30%のところに位置する第1の端部から、基材の全長の70%のところに位置する第2の端部まで延伸する、基材(又は板材)の部分として規定されている。さらには、軸領域は、基材の全幅の60%に等しい幅を有する、基材の中央部にある長手方向の軸を中心とする領域として規定されている。
【0082】
芯及び軸領域においては、巻取り中、巻き取り線どうしが接触しており、酸素の分圧は、鉄よりも容易に酸化される元素、特にケイ素、マンガン又はクロムのみが酸化されるような分圧である。
【0083】
1気圧における鉄-酸素相図は、高温で形成される酸化鉄、すなわち、ウスタイト(FeO)が、570℃より低い温度において安定でなく、熱力学的平衡のとき、ヘマタイト(Fe)及びマグネタイト(Fe)という他の2種の相に変態することを示している。逆に、巻取り中の巻きのいくつかの部品、特に巻きの芯及び軸領域における温度上昇が、温度が570℃を超えることになる温度上昇である場合、ヘマタイト及びマグネタイトがウスタイトに変態するが、この分解の生成物のうちの1つが、酸素である。
【0084】
この反応から生じた酸素は、鋼基材の表面に存在する鉄よりも容易に酸化される元素、特にケイ素、マンガン、クロム及びアルミニウムと化合する。
【0085】
これらの酸化物は、マトリックス中に均一に拡散するのではなく、粒界に自然に形成する。この結果、酸化は、粒界においてより著しい。この酸化は、下記において、粒間酸化と呼ぶ。
【0086】
したがって、巻取りが終了したときに、巻きは、表面から特定の深さに至るまで、粒間酸化を含み、この粒間酸化は、17マイクロメートルという高いものであり得る。
【0087】
本発明者らは、熱間圧延鋼基材における顕著な粒間酸化、及びこの結果としての熱間圧延鋼板における顕著な粒間酸化により、ホットスタンピング後のコーティングの付着が不十分になることを発見した。実際、コーティングの後で、ホットスタンピングするために板材を加熱したときには、炭素がコーティングに向かって拡散していき、粒間酸化物、特に酸化マンガン及び酸化ケイ素に出くわす。この炭素の拡散は、SiOとCとの間の反応、MnOとCとの反応及びMnSiOとCとの間の反応を起こして、酸化炭素を形成する。これらの酸化炭素は、最終的にコーティングが固化するまで移動及び溶解するが、これらの酸化炭素が集まって空洞を形成したときには、コーティング中に細孔が生じ、この結果、コーティング付着が不十分になる。
【0088】
コーティング付着に及ぼす粒間酸化の影響は、冷間圧延鋼板とは対照的に、巻取りにさらに向かうことになる冷間圧延を施されていない熱間圧延鋼板に特有である。実際、このような冷間圧延板の製造中において、冷間圧延の前に、基材の表面に存在し得る粒間酸化は、冷間圧延中において板材全体としては、厚さが減じる。この結果、ホットスタンピング前の冷間圧延された板材の粒間酸化の深さは、熱間圧延鋼板の粒間酸化の深さに比較して大幅に減じる。
【0089】
粒間酸化は、例えばHCl浴中で375秒の時間にわたって鋼基材を徹底的に酸洗いすることによって、コーティング前に低減し、又はなくすことさえもできる。
【0090】
しかしながら、徹底的な酸洗いは、工業的な処理に適合しない非常に低いライン速度を必要とする。
【0091】
さらに、この徹底的な酸洗いにより、非常に重要な、発展した表面(developed surface)が鋼基材の表面に生じる。発展した表面は、コーティング中に浴と接触する鋼基材の表面の全領域をいう。
【0092】
この重要な発展した表面により、浴中での溶融めっきコーティング中に鋼表面から鉄がより激しく溶解し、金属間層が成長し、これにより、最終的には、鋼板に隣接する限定的な単一のコーティング領域に限定されず、コーティングの表面にまで到達する。この結果、コーティングの厚さは、目標の厚さ範囲内に制御することができない。金属間層は、ある規定の化学量論に従って金属元素から構成されており、原子が特定の位置を占有する結晶構造を有する、固体状化合物から作製されている。
【0093】
したがって、本発明者らは、巻取り中の粒間酸化を抑制又は限定することにより、目標範囲、特に10~33μmの間へのコーティングの厚さの制御を可能にする一方で、工業的な酸洗いラインにおける良好な生産性を保ちながら、1.8mm~5mmの間に含まれる厚さを有し、ホットスタンピング後のコーティング付着が改善された、熱間圧延及びコーティングされた鋼板を製造できることを見出した。
【0094】
鋼の組成は、鋼をホットスタンピングして、500Mpa以上又は1000Mpa以上又は1350Mpa以上又は1680Mpa以上の引張強度を有する部品を製作することができるような組成である。
【0095】
本発明の第1の態様による鋼の組成が、下に開示される。
【0096】
鋼の化学組成に関しては、炭素は、マルテンサイトの硬度に及ぼす効果のため、ホットスタンピング後に得られる硬化能及び引張強度に関して、重要な役割を担う。
【0097】
0.04%の含量未満のときには、任意の冷却条件下におけるスタンピング後に500Mpa超の引張強度を得ることができない。0.38%超の場合、この第1の態様による組成の他の元素と組み合わさって、ホットスタンピング後のコーティングの付着が、満足なものではない。理論に束縛されるものではないが、0.38%より高いC含量は、ホットスタンピング前の板材の加熱中に顕著な酸化炭素の形成が起き、コーティング付着への粒間酸化の悪影響を悪化させる可能性がある。さらに、0.38%超のときには、鋼の耐遅れ割れ性及び靱性が低下する。
【0098】
C含量は、鋼板のホットスタンピングによって製造された、ホットスタンピング部品の所望の引張強度TSに依存する。特に、炭素含量が0.06%~0.38重量%の範囲である場合、完全オーステナイト化及びスタンピングの後にマルテンサイト焼入れを行うことによって製造されたホットスタンピング部品の引張強度TSは、事実上、炭素含量にのみ依存し、式:
TS(MPa)=3220(C%)+908
(式中、C%は、重量パーセントによる炭素含量を表す。)による炭素含量に関連付けられている。
【0099】
一実施形態によれば、C含量は、0.75%以上である。
【0100】
脱酸素を行う役割以外にも、マンガンは、特にマンガンの含量が少なくとも0.40%であり、C含量が最大で0.38%である場合において、焼入れ性に重要な効果を及ぼす。3%超の場合、Mnによるオーステナイトの安定化は、顕著すぎるものであり、これにより、しま状組織の形成が著しくなりすぎる。一実施形態によれば、Mn含量は、2.0%以下である。
【0101】
ケイ素は、液体状の鋼の脱酸素を促し、鋼の硬化に寄与するために、少なくとも0.005%の含量で添加される。しかしながら、ケイ素の含量は、酸化ケイ素の過剰な形成を回避するために限定しなければならない。さらには、ケイ素含量は、顕著すぎるオーステナイトの安定化を回避するために限定しなければならない。したがって、ケイ素含量は、0.70%以下、例えば0.5%以下である。好ましくは、Si含量は、少なくとも0.10%である。
【0102】
アルミニウムが、脱酸素剤として添加されてもよく、Al含量は、0.1%以下で0.005%より高く、一般に0.010%以上である。好ましくは、Al含量は、0.070%以下である。
【0103】
任意選択的に、鋼組成は、鋼の焼入れ性を増大させるために、クロム、タングステン及び/又はホウ素を含む。
【0104】
特に、Crは、鋼の焼入れ性を増大させ、ホットスタンピング後に所望の引張強度TSの達成に寄与するために、添加されてもよい。Crが添加される場合、Crの含量は、0.01%以上で最大2%である。自由裁量によるCrの添加が実施されない場合、Cr含量は、0.001%という低いものであってよい。
【0105】
Wを添加して、炭化タングステンの形成によって鋼の焼入れ性及び硬化能を増大させてもよい。Wが添加される場合、Wの含量は、0.001%以上で0.30%以下である。
【0106】
Bが添加される場合、Bの含量は、0.0002%より高く、好ましくは0.0005%以上で最大0.010%である。B含量は、好ましくは、0.005%以下である。
【0107】
任意選択的に、最大0.1%のニオブ及び/又は最大0.2%のチタンが、析出硬化を起こすために添加される。
【0108】
Nbが添加される場合、Nbの含量は、好ましくは、少なくとも0.01%である。特に、Nb含量が0.01%~0.1%の間に含まれる場合、硬化作用のある微細な炭窒化物Nb(CN)沈殿物が、熱間圧延の間に、オーステナイト又はフェライト中に形成する。Nb含量は、好ましくは、0.06%以下である。さらに好ましくは、Nb含量は、0.03%~0.05%の間に含まれる。
【0109】
Tiが添加される場合、Tiの含量は好ましくは、少なくとも0.015%で最大0.2%である。Ti含量が0.015%~0.2%の間に含まれる場合、非常に高い温度における析出がTiNの形態で起き、次いでより温度において、微細なTiCの形態でオーステナイト中に起きて、硬化が起きる。さらに、ホウ素に加えてチタンも添加される場合、チタンは、ホウ素と窒素との化合を防止し、窒素は、チタンと化合する。したがって、チタン含量は、好ましくは、3.42Nより高い。しかしながら、Ti含量は、粗大なTiN析出物の析出を回避するために、0.2%以下、好ましくは0.1%以下のままにすべきである。自由裁量によるTiの添加が実施されない場合、Tiは、少なくとも0.001%の含量の不純物として存在する。
【0110】
モリブデンは、最大で0.65%の含量で添加されてもよい。Moが添加される場合、Moの含量は、好ましくは少なくとも0.05%、例えば0.10%以下である。Moは好ましくは、高温において非常に安定であり、加熱したときのオーステナイトグレーンの成長を限定する、共沈殿物を形成するために、Nb及びTiと一緒に添加される。最適な効果は、Mo含量が0.15%~0.25%の間に含まれる場合に得られる。
【0111】
ニッケルは、0.001%という低さであることと、0.1%以下であることとが可能な含量において、不純物として存在する。
【0112】
硫黄、リン及び窒素は一般に、鋼組成中に不純物として存在する。
【0113】
窒素含量は、少なくとも0.0005%である。窒素含量は、粗大なTiN析出物の析出を防止するために、最大でも0.010%でなければならない。
【0114】
量が過剰である場合、硫黄及びリンは延性を低下させる。したがって、硫黄及びリンの含量は、それぞれ0.05%及び0.1%に限定される。
【0115】
好ましくは、S含量は、最大で0.03%である。非常に低いS含量、すなわち、0.0001%より低いS含量の達成は、非常にコストがかかるものであり、いかなる利益もない。したがって、S含量は一般に、0.0001%以上である。
【0116】
好ましくは、リン含量は、最大で0.05%、さらに好ましくは最大で0.025%である。非常に低いP含量、すなわち、0.0001%より低いP含量の達成は、非常にコストがかかるものである。したがって、P含量は一般に、0.0001%以上である。
【0117】
鋼は、MnS球状化による曲げ角度の改善効果を有するカルシウムを用いて実施される、硫化物の球状化のための処理を施されてもよい。したがって、鋼組成は、少なくとも0.0001%で最大0.006%のCaを含んでもよい。
【0118】
鋼の組成の残部は、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる。
【0119】
第1の実施形態によれば、鋼は、重量パーセントにより、
0.040%≦C≦0.100%、
0.80%≦Mn≦2.0%、
0.005%≦Si≦0.30%、
0.010%≦Al≦0.070%、
0.001%≦Cr≦0.10%、
0.001%≦Ni≦0.10%、
0.03%≦Ti≦0.08%、
0.015%≦Nb≦0.1%、
0.0005%≦N≦0.009%、
0.0001%≦S≦0.005%、
0.0001%≦P≦0.030%、
Mo≦0.10%、
Ca≦0.006%
である化学組成を有し、
組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる。
【0120】
この組成を用いた場合、ホットスタンピング後に少なくとも500Mpaの引張強度を有する鋼部品を製造することができる。
【0121】
第2の実施形態によれば、鋼は、重量パーセントにより、
0.062%≦C≦0.095%、
1.4%≦Mn≦1.9%、
0.2%≦Si≦0.5%、
0.020%≦Al≦0.070%、
0.02%≦Cr≦0.1%、
ただし、1.5%≦(C+Mn+Si+Cr)≦2.7%であり、
3.4×N≦Ti≦8×N、
0.04%≦Nb≦0.06%、
ただし、0.044%≦(Nb+Ti)≦0.09%であり、
0.0005%≦B≦0.004%、
0.001%≦N≦0.009%、
0.0001%≦S≦0.003%、
0.0001%≦P≦0.020%
及び任意選択的に、0.0001%≦Ca≦0.006%
である化学組成を有し、
組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる。
【0122】
この組成を用いた場合、ホットスタンピング後に少なくとも1000Mpaの引張強度を有する鋼部品を製造することができる。
【0123】
第3の実施形態によれば、鋼は、重量パーセントにより、
0.15%≦C≦0.38%、
0.5%≦Mn≦3%、
0.10%≦Si≦0.5%、
0.005%≦Al≦0.1%、
0.01%≦Cr≦1%、
0.001%≦Ti<0.2%、
0.0005%≦B≦0.08%
0.0005%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.05%、
0.0001%≦P≦0.1%
である化学組成を有し、
組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる。
【0124】
この組成を用いた場合、ホットスタンピング後に少なくとも1350Mpaの引張強度を有する鋼部品を製造することができる。
【0125】
本発明の第2の態様による鋼の組成が、下に開示される。
【0126】
C含量は、Mn含量が0.40%~3%の間に含まれる場合、0.24%~0.38%の間に含まれる。炭素は、マルテンサイトの硬度に及ぼす効果のため、ホットスタンピング後に得られる硬化能及び引張強度に関して、重要な役割を担う。少なくとも0.24%の含量は、コストがかかる元素の添加なして、ホットスタンピング後に少なくとも1800Mpaの引張強度TSの達成を可能にする。0.38%超の場合において、Mn含量が0.40%~3%の間に含まれるとき、鋼の耐遅れ割れ性及び靱性が低下する。C含量は好ましくは、Mn含量が0.40%~3%の間に含まれる場合、0.32%~0.36%の間に含まれる。
【0127】
0.38%~0.43%の間に含まれるように高められたC含量は、Mn含量を0.05%~0.40%の間に含まれる範囲に低下させた場合に使用することができる。したがって、ひずみ下における耐腐食性の改善を達成しながらも、Mn含量の低下がC含量の増大によって補償される。
【0128】
脱酸素を行う役割以外にも、マンガンは、焼入れ性に重要な効果を及ぼす。
【0129】
C含量が0.24%~0.38%の間に含まれる場合、Mn含量は、少なくとも0.40%で3%以下でなければならない。所望の強度レベル(この実施形態においては、少なくとも1800MPAの引張強度TS)を得るために十分なほど冷却したときの、オーステナイトからマルテンサイトへの変態開始温度であるMs温度を達成するためには、少なくとも0.40%のMn含量が必要である。
【0130】
3%超の場合、Mnによるオーステナイトの安定化は、顕著すぎるものであり、これにより、しま状組織の形成が著しくなりすぎる。Mn含量は、好ましくは、2.0%以下である。
【0131】
代替形態において、C含量が0.38%~0.43%の間に含まれる範囲に高められた場合、Mn含量は、0.05%~0.40%の間に含まれる範囲に低下させることができる。Mn含量を低下させることにより、ひずみ下におけるより高い耐腐食性を得ることができる。
【0132】
Mn及びCの含量は好ましくは、Cr含量と一緒に規定される。
【0133】
C含量が0.32%~0.36%の間に含まれる場合、0.40%~0.80%の間に含まれるMn含量及び0.05%~1.20%の間に含まれるCr含量により、高い耐遅れ割れ性を達成することができる。
【0134】
C含量が0.24%~0.38%の間に含まれる場合において、Mn含量が1.50%~3%の間に含まれるとき、スポット溶接性は、特に満足なものである。
【0135】
C含量が0.38%~0.43%の間に含まれる場合において、Mn含量が0.05%~0.40%の間、好ましくは0.09%~0.11%の間に含まれるとき、ひずみ下における耐腐食性が大幅に増大する。
【0136】
これらの組成範囲は、約320℃~370℃の間に含まれるMs温度への到達を可能にし、これにより、ホットスタンピング部品の非常に高い強度が保証される。
【0137】
ケイ素は、0.10%~0.70重量%の間に含まれる含量で添加される。少なくとも0.10%の含量はさらなる硬化を起こし、液体状の鋼の脱酸素を促す。しかしながら、ケイ素の含量は、酸化ケイ素の過剰な形成を回避するために限定しなければならない。さらには、ケイ素含量は、顕著すぎるオーステナイトの安定化を回避するために限定しなければならない。したがって、ケイ素含量は、0.70%以下である。
【0138】
C含量が0.24%~0.38%の間に含まれる場合、Si含量は、鋼がマルテンサイト変態後にダイの中に維持されているせいで起きる可能性があるフレッシュマルテンサイトの焼戻しを回避するために、好ましくは少なくとも0.50%である。
【0139】
アルミニウムが、脱酸素剤として添加されてもよく、Al含量は、0.070%以下で0.015%以上である。0.070%超の場合、粗大なアルミネートが加工操作中に生成されて、延性を低下させる可能性がある。好ましくは、Al含量は、0.020%~0.060%の間に含まれるように、より低い。
【0140】
任意選択的に、鋼組成は、鋼の焼入れ性を増大させるために、クロム及び/又はタングステンを含む。
【0141】
クロムは鋼の焼入れ性を増大させ、ホットスタンピング後の所望の引張強度TSの達成に寄与する。Crが添加される場合、Crの含量は、0.01%以上で最大2%である。自由裁量によるCrの添加が実施されない場合、Cr含量は、0.001%という低いものであってよい。
【0142】
C含量が0.24%~0.38%の間に含まれる場合、Cr含量は、好ましくは、0.30%~0.50%の間に含まれる。Mn含量が1.50%~3%の間に含まれる場合、Crの添加は任意選択的なものであり、Mnの添加によって達成される焼入れ性は、十分なものである。
【0143】
C含量が0.38%~0.43%の間に含まれる場合、0.5%より高い、好ましくは0.950%~1.050%の間に含まれるCr含量が、ひずみ下における耐腐食性を増大させるために好ましい。
【0144】
上記に規定の条件に加えて、C含量、Mn含量、Cr含量及びSi含量は、次の条件も満足しなければならない。
【0145】
【数8】
【0146】
この条件下において、部品がダイの中に維持されているために起きる可能性があるマルテンサイトの焼戻しから生じた自己焼戻しマルテンサイトの割合が非常に限定され、この結果、非常に高いフレッシュマルテンサイトの割合により、少なくとも1800Mpaの引張強度を達成することができる。
【0147】
Wを添加して、炭化タングステンの形成によって鋼の焼入れ性及び硬化能を増大させてもよい。Wが添加される場合、Wの含量は、0.001%以上で0.30%以下である。
【0148】
Bは、0.0005%超で最大0.0040%の含量で添加される。Bは、焼入れ性を増大させる。粒界において拡散することにより、Bは、Pの粒間凝離を防止する。
【0149】
任意選択的に、最大0.06%のニオブ及び/又は最大0.1%のチタンが、析出硬化を起こすために添加される。
【0150】
Nbが添加される場合、Nbの含量は、好ましくは、少なくとも0.01%である。特に、Nb含量が0.01%~0.06%の間に含まれる場合、硬化作用のある微細な炭窒化物Nb(CN)沈殿物が、熱間圧延の間に、オーステナイト又はフェライト中に形成する。この結果、Nbは、スタンピング前の加熱中のオーステナイトグレーンの成長を限定する。しかしながら、Nb含量は、0.06%以下である。実際、0.06%超の場合、圧延荷重が大きくなりすぎる可能性がある。好ましくは、Nb含量は、0.03%~0.05%の間に含まれる。
【0151】
Tiは、少なくとも0.015%、最大0.1%の含量で添加される。Ti含量が0.015%~0.1%の間に含まれる場合、非常に高い温度における析出がTiNの形態で起き、次いでより低い温度において、微細なTiCの形態でオーステナイト中に起きて、硬化が起きる。さらに、チタンは、ホウ素と窒素との化合を防止し、窒素は、チタンと化合する。したがって、チタン含量は、3.42Nより高い。しかしながら、Ti含量は、粗大なTiN析出物の析出を回避するために、0.1%以下のままにすべきである。好ましくは、Ti含量は、スタンピング前の加熱中のオーステナイトグレーンの成長を限定する微細な窒化物を生成するために、0.020%~0.040%の間に含まれる。
【0152】
モリブデンは、最大で0.65%の含量で添加されてもよい。Moが添加される場合、Moの含量は、好ましくは、少なくとも0.05%である。Moは好ましくは、高温において非常に安定であり、加熱したときのオーステナイトグレーンの成長を限定する、共沈殿物を形成するために、Nb及びTiと一緒に添加される。最適な効果は、Mo含量が0.15%~0.25%の間に含まれる場合に得られる。
【0153】
ニッケルは、鋼の耐遅れ破壊性を増大させるために、0.25%~2%の間に含まれる含量で添加される。
【0154】
窒素含量は、上記に説明したように、TiN、Nb(CN)及び/又は(Ti、Nb)(CN)の析出を達成して、オーステナイトグレーンの成長を限定するために、少なくとも0.003%である。窒素含量は、粗大なTiN析出物の析出を防止するために、最大でも0.010%でなければならない。
【0155】
量が過剰である場合、硫黄及びリンは延性を低下させる。したがって、硫黄及びリンの含量は、それぞれ0.005%及び0.025%に限定される。
【0156】
S含量は、硫化物の析出を限定するために、最大で0.005%である。非常に低いS含量、すなわち、0.0001%より低いS含量の達成は、非常にコストがかかるものであり、いかなる利益もない。したがって、S含量は一般に、0.0001%以上である。
【0157】
リン含量は、最大で0.025%であり、この結果、オーステナイト粒界におけるPの凝離を限定する。非常に低いP含量、すなわち、0.0001%より低いP含量の達成は、非常にコストがかかるものである。したがって、P含量は一般に、0.0001%以上である。
【0158】
鋼は、MnS球状化による曲げ角度の改善効果を有するカルシウムを用いて実施される、硫化物の球状化のための処理を施されてもよい。したがって、鋼組成は、少なくとも0.0005%で最大0.005%のCaを含んでもよい。
【0159】
鋼の組成の残部は、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる。
【0160】
上記に説明したように、本発明者らは、熱間圧延及びコーティングされた鋼板のホットスタンピングによって製造された鋼部品のコーティングの付着の不足は、特定の厚さにわたって、ホットスタンピング前の熱間圧延及びコーティングされた鋼板の表面上に存在する粒間酸化から発生することを発見した。
【0161】
最初に、本発明者らは、コーティングの満足な付着を保証するという目的でホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品が満たさなければならない判断基準を希求した。
【0162】
本発明者らは、コーティング中の細孔の表面百分率の判定によって、コーティング付着に関する品質を査定できることを見出した。
【0163】
コーティング中の細孔の表面百分率は、ホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品を対象にして判定され、すなわち、ホットスタンピング及び室温への冷却の後に判定される。
【0164】
コーティング中の細孔の表面百分率は、倍率1000倍の光学顕微鏡下で試料の5つの異なる断面を観察することによって、判定される。各断面は、典型的な様式によりコーティングを特徴付けるように選択される、長さlrefを有する。長さlrefは、150μmとして選択される。
【0165】
図1に提示のように、各断面を対象にして、この断面のコーティング中の細孔の表面百分率を判定するための画像分析の手段、例えばOlympus Stream Essentials(R)によって、画像分析が実施される。上記目的のために、コーティングの上側境界及び下側境界B及びBが特定されている。特に、上側境界は、周囲の環境との界面において、コーティングの外形に沿っており、下側境界は、コーティングから鋼材料を隔てている。次いで、下側境界と上側境界との間にあり、細孔Pを含む、コーティングによって占有される全領域が判定され、下側境界と上側境界との間に位置する細孔によって占有される表面が査定される(図1にある灰色の領域)。次いで、着目する断面のコーティング中の細孔の表面百分率は、細孔によって占有される表面とコーティングによって占有される全表面との比(に100を掛けたもの)として算定される。
【0166】
最後に、コーティング中の細孔の表面百分率は、このようにして得られた5つの値の平均として判定される。
【0167】
コーティング付着は、コーティング中の細孔の表面百分率が3%以下である場合、満足なものだと考えられる。対照的に、コーティング中の細孔の表面百分率が3%より高い場合、コーティング付着は、不満足なものだと考えられる。
【0168】
さらに、本発明者らは、コーティングの厚さを目標範囲、特に10~33μmの範囲、例えば20~33μmの間の又は10~20μmの間の範囲内に制御できるようにすることと、スタンピングの後に、コーティングの付着が満足であることを確実にすることとを確実にするという目的で、熱間圧延鋼基材及び熱間圧延鋼板のそれぞれによって満足しなければならない、2つの判断基準を特定した。
【0169】
第1の判断基準は、酸洗いの後でコーティングの前における熱間圧延鋼基材の表面状態に関連付けられている。
【0170】
特に、上記に説明したように、コーティング直前の熱間圧延鋼基材の発展した表面は、浴中での溶融めっきの間に、鋼表面から鉄が激しく溶解し、制御されていない金属間層の成長が制御を受けなくなり、この結果、目標範囲へのコーティング厚さの制御が不可能になることがないように、制御しなければならない。
【0171】
実際、熱間圧延鋼基材の粒間酸化は、徹底的な酸洗いによって低減することができ、これにより、熱間圧延鋼板の粒間酸化の低減が可能になる。しかしながら、この徹底的な酸洗いのため、基材は、コーティング厚さの制御と適合しない表面状態(すなわち、発展した表面)を有するであろう。
【0172】
本発明者らは、コーティング厚さが目標範囲に含まれる、すなわち、10~33μmの間に含まれることを確実にするためには、コーティング中に形成される金属間層の厚さが、15μmより低いままでなければならないこと、及び、15μmの金属間層の厚さを得るためには、あらゆる酸洗いの後でコーティングの前に、熱間圧延鋼基材の表面領域中の空隙の表面百分率が、30%より低くなければならないことを見出した。ここで、金属間層の厚さは、熱間圧延及びコーティングされた鋼板のコーティングの金属間層の厚さを表す。
【0173】
空隙の表面百分率に関する判断基準は特には、巻取り中に巻きの芯及び軸領域に位置する熱間圧延鋼基材の領域において、満たさなければならない。
【0174】
図2に提示のように、表面領域は、熱間圧延鋼基材の表面の上側地点を起点にして、この上側地点から15μmの深さに至るまでに延伸する領域として、規定される。表面領域中の空隙の表面百分率は、各断面が150μmの長さlrefを有する、熱間圧延鋼基材を代表する5つの明瞭な断面から判定される。断面は好ましくは、巻きの芯及び軸領域から収集された試料から取得される。各断面上において、試料表面領域は、上面が、断面の表面プロファイルに属するより高い2つの点Pt1とPt2とをつなげており、下面が、上側から15μm離れている、長方形領域として、画像分析、例えばOlympus Stream Essentials(R)によって判定される。したがって、各試料表面領域は、150μmの長さlref及び15μmの深さを有する。
【0175】
各断面に関しては、鋼ではない試料表面領域の領域を特定し、これらの領域の全表面を判定する。次いで、試料表面領域中の空隙の表面百分率は、鋼ではない領域の全表面と試料表面領域の全表面との比に100を掛けたものとして判定される。最後に、熱間圧延及び酸洗いされた鋼基材の空隙の表面百分率は、このようにして得られた5つの値の平均として判定される。
【0176】
第2の判断基準は、熱間圧延鋼板、すなわち、コーティング後の鋼製品の粒間酸化の最大深さである。実際、本発明者らは、ホットスタンピング後に満足なコーティング付着を得るためには、熱間圧延鋼板の粒間酸化の深さが4μm未満でなければならないことを発見した。
【0177】
この判断基準は特に、巻取り中に、巻きの芯及び軸領域に位置する熱間圧延及びコーティングされた鋼板の領域において満たさなければならない。
【0178】
粒間酸化の深さは、熱間圧延及びコーティングされた鋼板を対象にして判定され、すなわち、コーティング後に判定される。
【0179】
粒間酸化の深さは、熱間圧延鋼板の表面から(すなわち、コーティングと熱間圧延鋼板との界面から)、この表面に対して直交する方向で、熱間圧延鋼板の内部に向かう、熱間圧延鋼板の領域の厚さとして、規定されており、この熱間圧延鋼板の領域において、粒間酸化が観察される。
【0180】
特に、粒間酸化は、倍率1000倍の光学顕微鏡を用いて、巻きの芯及び軸領域から収集された試料から採った、それぞれが150μmの長さlrefを有する5つの異なる断面を対象にして、観察される。各断面において、粒間酸化の最大深さが測定される。最後に、粒間酸化の深さが、このようにして得られた5つの値の平均として決定される。
【0181】
したがって、コーティングの後に、コーティング厚さを目標範囲内に制御できることと、ホットスタンピングの後に、コーティング付着が満足であること、すなわち、コーティング中の細孔の表面百分率が3%以下であることとを確実にするためには、次の2つの条件を満たさなければならない:
- 酸洗いの後でコーティングの前に、熱間圧延鋼基材の表面領域中の空隙の表面百分率が、30%より低くなければならない、及び、
- 酸洗い及びコーティングの後の熱間圧延鋼板の粒間酸化の深さが、4μmより低くなければならないこと。
【0182】
熱間圧延鋼製品は、鋼半製品を得るように上記組成を有する鋼をキャスティングし、1150℃~1300℃の間に含まれる温度Treheatで鋼半製品を再加熱し、再加熱された鋼半製品を最終圧延温度FRTで熱間圧延して、熱間圧延鋼製品を得ることによって、製造することができる。温度Treheatは、例えば、1150℃~1240℃の間に含まれる。
【0183】
最終圧延温度FRTは一般に、840℃~1000℃の間に含まれる。
【0184】
熱間圧延による薄肉化は、熱間圧延鋼製品が1.8mm~5mmの間に含まれる厚さ、例えば3mm~5mmの間に含まれる厚さを有するように適合されている。
【0185】
次いで、熱間圧延鋼製品をランアウトテーブル上で冷却して、巻取り温度Tcoilに到達させ、巻きとって、熱間圧延鋼基材を得る。
【0186】
巻取り温度Tcoilは、粒間酸化を回避する又は少なくとも限定するように選択される。
【0187】
特に、巻取り温度Tcoilは、熱間圧延鋼基材の粒間酸化の深さが5μm未満であるように選択される。実際、熱間圧延鋼基材の粒間酸化の深さが5μm未満である場合、コーティングの後の熱間圧延鋼板の粒間酸化の深さが4μm未満のままになる。さらに好ましくは、巻取り温度Tcoilは、粒間酸化が起きないように選択される。
【0188】
第1の態様による鋼組成を用いた場合、本発明者らは、4μm未満の熱間圧延鋼板の粒間酸化の深さを得るためには、巻取り温度Tcoilが、fγと表される巻取り直前のオーステナイト分率に依存する最高巻取り温度Tcoilmaxより低くなければならないことを見出した。
【0189】
実際、巻取り直前における高いオーステナイト分率fγは、特に巻取り中の板材の巻き及び軸領域において、巻取り中のオーステナイトをかなり変態させ、これによって、顕著な温度上昇を起こす。対照的に、巻取り直前のオーステナイト分率fγが低い場合、オーステナイトの変態が巻取り中に起きず、又はほとんど起きず、この結果、板材の温度上昇が抑制される。
【0190】
この結果、最高巻取り温度Tcoilmaxは、巻取り直前のオーステナイト分率fγの減少関数である。
【0191】
本発明者らは、4μm未満の熱間圧延鋼板中の粒間酸化の深さを得るためには、最高巻取り温度Tcoilmaxが、
【0192】
【数9】
(式中、Tcoilmaxは、セルシウス度として表され、fγは、0(0%のオーステナイトに対応する)~1(100%のオーステナイトに対応する)の間に含まれる巻取り直前の鋼中のオーステナイト分率を表す。)として表されることを発見した。したがって、最高巻取り温度Tcoilmaxは、510℃~650℃の間に含まれる。
【0193】
したがって、巻取り温度Tcoilは、
【0194】
【数10】
を満足しなければならない。
【0195】
巻取り直前の鋼中のオーステナイト分率fγは、電磁気による(EM)非接触非破壊方式の技法を用いて、鋼板の磁性特性を検出するための装置を使用することによって、判定することができる。
【0196】
この技法の原理は、文献「Online electromagnetic monitoring of austenite transformation in hot strip rolling and its application to process optimization」,A.V.Marmulevら、Revue de Metallurgie 110,pp.205-213(2013)において記述されているが、常磁性であるオーステナイトの磁性特性と、強磁性相であるフェライト、パーライト、ベーナイト及びマルテンサイトの磁性特性との差異に基づく。
【0197】
オーステナイト分率fγを判定するための装置は、例えば、US2003/0038630A1に開示されている。
【0198】
巻取り直前のオーステナイト分率fγは、鋼組成に依存し、特に、C含量、最終圧延温度FRT、及び、最終圧延温度FRTと巻取り温度Tcoilとの間の冷却工程に依存する。
【0199】
特に、鋼のC含量が高いほど、巻取り直前の鋼板中のオーステナイト分率fγが高くなる。したがって、他のすべてのパラメータが等しいとき、C含量が高いほど、最高巻取り温度Tcoilmaxが低くなる。特に、鋼のC含量が0.075%以上である場合、基材中のオーステナイト分率が0.5より高いままであり、この結果、巻取り温度Tcoilmaxが580℃より低い。
【0200】
最高巻取り温度Tcoilmaxは、最終圧延温度FRTが固定された所与のライン上において、所与の組成及び厚さを有する鋼を対象にして、最終圧延温度FRTからの冷却の間に、鋼製品中のオーステナイト分率を判定することと、冷却の間に、基材の温度Tを650-140fγ’(T)の値に比較することとによって、判定することが可能であり、fγ’(T)は、冷却中の温度Tにおける基材のオーステナイト分率である。
【0201】
最高巻取り温度Tcoilmaxは、T=650-140fγ’(T)である温度である。
【0202】
一般に、巻取り温度は、好ましくは580℃より低く、さらに好ましくは570℃より低い。
【0203】
しかしながら、巻取り温度は、低い巻取り温度に起因するであろう望ましくない鋼の機械的特性の増大を回避するために、450℃より高いままにすべきである。
【0204】
これらの条件下において、熱間圧延鋼基材中の粒間酸化が限定され、この結果、コーティング後の熱間圧延鋼板の粒間酸化の深さが4μmより低くなる。
【0205】
第2の態様による鋼組成を用いた場合、本発明者らは、4μm未満の熱間圧延鋼板の粒間酸化の深さを得るためには、巻取り温度Tcoilが、第1の態様による組成に比較してさらに制限されなければならず、495℃以下の値に設定しなければならないことを見出した。
【0206】
コーティング付着とコーティング厚さとを同時に確実に目標範囲に収めるための、上記において与えられた規則は、依然として有効である。しかしながら、0.25%以上のNiの存在のため、これらの規則は、酸洗いラインにおける良好な生産性をも同時にもたらすほどには十分でない。実際、本発明者らは、0.25%超のNiの存在は、ホットストリップミルにおけるスケールの粘着力を高めることを発見した。表面への粘着力が非常に強いこのようなスケールの存在は、板材のコーティング適性を損なう。このスケールは、徹底的な酸洗いによって除去され得るが、この徹底的な酸洗いは、酸洗いラインの生産性を大きく低下させるであろう。本発明者らは、巻取り温度をTcoilmax=495℃以下に低下することにより、ホットストリップミルにおいてランアウトテーブル上に形成されるスケール量の低減を促すことができることを見出した。したがって、スケールと鋼との界面に形成される金属ニッケルが低減され、これにより、最終的には、酸洗いラインにおけるスケールの破砕及び酸洗いが促進され、この結果、この酸洗いラインにおける生産性がより高められた方法が提供される。
【0207】
巻取りの後、熱間圧延鋼基材は、酸洗いされる。粒間酸化の深さが限定されているため、酸洗い条件は、ホットスタンピング後のコーティングの付着又はコーティングの厚さに影響しない。
【0208】
特に、軽い酸洗いが実施される場合であっても、酸洗い前の粒間酸化の深さが浅いため、酸洗い及びコーティングの後の熱間圧延鋼板中の粒間酸化の深さは、熱間整形前の加熱中に酸化炭素がほとんど形成されず、又は全く形成されず、ホットスタンピング後のコーティング付着が損なわれないように、いかなる場合においても4μmより低い。
【0209】
さらには、徹底的な酸洗いが実施される場合であっても、酸洗い前の粒間酸化の深さが浅いため、酸洗い後の熱間圧延鋼基材の表面領域中の空隙の表面百分率は、30%より低いままになる。したがって、鋼表面からの激しい鉄の溶解及び制御されてない金属間層の成長は、浴中での鋼板の溶融めっきコーティング中に起きず、コーティングの厚さは、目標の厚さに制御することができる。
【0210】
酸洗いは例えば、15~65秒の間に含まれる時間にわたって、HCl浴中で実施される。
【0211】
したがって、このようにして得られた酸洗いされた熱間圧延鋼基材は、本明細書の上記において規定された第1の判断基準を満足し、すなわち、30%より低い表面領域中の空隙の表面百分率を有する。さらには、熱間圧延及び酸洗いされた鋼板は、粒間酸化を有さず、又はほとんど有さず、これにより、上記に規定の第2の判断基準を満足することができ、すなわち、コーティング後の熱間圧延鋼板中において4μmより低い粒間酸化の深さを得ることができる。
【0212】
酸洗いの後、熱間圧延及び酸洗いされた鋼基材は、板材の表面を一時的に保護するために、油を塗ることもできるし、又は有機フィルム、例えばEasyfilm(R)HPEを装着することもできる。
【0213】
次いで、熱間圧延及び酸洗いされた鋼基材は、熱間圧延及びコーティングされた鋼板を得るように、浴中でAl又はAl合金によって継続的に溶融めっきコーティングされる。
【0214】
例えば、コーティングは、Al-Siコーティングであってよい。Al-Siコーティングのための一般的な浴は一般に、基本的な組成として重量パーセントにより、8%~11%のケイ素と、2%~4%の鉄とを含有し、残り部分が、アルミニウム又はアルミニウム合金及び処理に固有の不純物である。アルミニウムと一緒に存在する合金元素は、それぞれ15~30ppmの間のストロンチウム及び/又はカルシウムを含む。
【0215】
別の例として、コーティングは、Zn-Al-Mgコーティングであってもよい。Zn-Al-Mgコーティングのための典型的な浴は、重量パーセントにより、0.1%~10%の間のマグネシウムと、0.1%~20%の間のアルミニウムとを含有し、残り部分が、Zn又はZn合金、Si、Sb、Pb、Ti、Ca、Mn、Sn、La、Ce、Cr、Ni、Zr及び/又はBi等の任意選択的な追加用の元素並びに処理に固有の不純物である。
【0216】
例えば、浴は、0.5%~8%の間のアルミニウムと、0.3%~3.3%の間のマグネシウムとを含有し、残り部分が、Zn又はZn合金、Si、Sb、Pb、Ti、Ca、Mn、Sn、La、Ce、Cr、Ni、Zr及び/又はBi等の任意選択的な追加用の元素並びに処理に固有の不純物である。
【0217】
別の例として、コーティングは、Al-Zn-Si-Mgコーティングである。
【0218】
Al-Zn-Si-Mgコーティングのための浴の第1の例は、重量パーセントにより、2.0%~24.0%の亜鉛、7.1%~12.0%のケイ素、任意選択的に1.1%~8.0%のマグネシウム、及び任意選択的に、各さらなる元素の含量が0.3%未満であるようにPb、Ni、Zr又はHfから選択されるさらなる元素を含有し、残部が、アルミニウム並びに不可避的な不純物及び残留元素であり、Al/Znの比が、2.9超である。
【0219】
Al-Zn-Si-Mgコーティングのための浴の第2の例は、重量パーセントにより、4.0%~20.0%の亜鉛、1%~3.5%のケイ素、任意選択的に1.0%~4.0%のマグネシウム、及び任意選択的に、各さらなる元素の含量が0.3%未満であるようにPb、Ni、Zr又はHfから選択されるさらなる元素を含有し、残部が、アルミニウム並びに不可避的な不純物及び残留元素であり、Zn/Siの比が、3.2~8.0の間に含まれる。
【0220】
Al-Zn-Si-Mgコーティングのための浴の第3の例は、重量パーセントにより、2.0%~24.0%の亜鉛、1.1%~7.0%のケイ素、ケイ素の量が1.1~4.0%の間である場合において任意選択的に1.1%~8.0%のマグネシウム、及び任意選択的に、各さらなる元素の含量が0.3%未満であるようにPb、Ni、Zr又はHfから選択されるさらなる元素を含有し、残部が、アルミニウム並びに不可避的な不純物及び残留元素であり、Al/Znの比が、2.9超である。
【0221】
溶融めっきによるコーティングの堆積後、コーティングされた鋼板は通常、コーティングされた鋼板の両面上に気体を噴出するノズルを用いて拭われ、次いで、コーティングされた鋼板が冷却される。
【0222】
このようにして得られた熱間圧延及びコーティングされた鋼板は、熱間圧延鋼板と、熱間圧延鋼板の各面上にあるAl又はAl合金コーティングとを含む。
【0223】
熱間圧延鋼板は一般に、フェライト-パーライト組織、すなわち、フェライト及びパーライトからなる組織を有する。
【0224】
熱間圧延鋼板の各面上におけるAl又はAl合金コーティングの厚さは、10μm~33μmの間に含まれる。
【0225】
第1の実施形態によれば、コーティングの厚さは、20μm~33μmの間の範囲に含まれるように制御される。
【0226】
第2の実施形態によれば、コーティングの厚さは、10μm~20μmの間の範囲に含まれるように制御される。
【0227】
第3の実施形態によれば、コーティングの厚さは、15μm~25μmの間の範囲であるように制御される。
【0228】
コーティングの後、熱間圧延鋼板中の粒間酸化の深さは、酸洗いのため、4μm未満、一般に3μmより低いままである。この深さは、熱間圧延鋼板の表面(すなわち、コーティングから熱間圧延鋼板を隔てる表面)から鋼板の内部に向かって延びる。
【0229】
さらに、コーティング前の熱間圧延鋼基材の表面領域中の空隙の表面百分率が浅いため、酸洗いの後であっても、コーティングの厚さは、熱間圧延及びコーティングされた鋼板の各面上と、熱間圧延及びコーティングされた鋼板の各面上にあるあらゆる場所とにおいて、目標の厚さ範囲、特に10μm~33μmの間の厚さ範囲に含まれる。
【0230】
熱間圧延及びコーティングされた鋼板は、ホットスタンピングされるように仕向けられる。
【0231】
上記目的のために、熱間圧延及びコーティングされた鋼板を切断して、ブランクを得る。任意選択的に、このブランクを第2のブランクに溶接し、これによって、本発明による熱間圧延及びコーティングされた鋼板から切り出された第1のブランク、及び、第2のブランクを含むテーラードブランク(TWB)を得てもよい。第2のブランクは、本発明による熱間圧延及びコーティングされた鋼板から得ることもでき、又は、冷間圧延及びコーティングされた鋼板から切り出されたブランクであってもよい。特に、1.8mm~5mmの間に含まれる厚さを有する第1のブランクは、異なる厚さを有し、及び/又は異なる組成を有する鋼から作製された、第2のブランクに溶接されてもよい。第2のブランクは好ましくは、重量パーセントにより、
0.04%≦C≦0.38%、
0.40%≦Mn≦3%、
0.005%≦Si≦0.70%、
0.005%≦Al≦0.1%、
0.001%≦Cr≦2%、
0.001%≦Ni≦2%、
0.001%≦Ti≦0.2%、
Nb≦0.1%、
B≦0.010%、
0.0005%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.05%、
0.0001%≦P≦0.1%、
Mo≦0.65%、
W≦0.30%、
Ca≦0.006%
を含む組成を有し、
組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、鋼から作製されている。
【0232】
第2のブランクは、重量パーセントにより、
0.24%≦C≦0.38%及び0.40%≦Mn≦3%、又は
0.38%≦C≦0.43%及び0.05%≦Mn≦0.40%のいずれか、
0.10%≦Si≦0.70%、
0.015%≦Al≦0.070%、
0.001%≦Cr≦2%、
0.25%≦Ni≦2%、
0.015%≦Ti≦0.1%、
0%≦Nb≦0.06%、
0.0005%≦B≦0.0040%、
0.003%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.005%、
0.0001%≦P≦0.025%
を含む組成を有し、
チタン含量及び窒素含量は、次の関係:
Ti/N>3.42
を満足し、
炭素含量、マンガン含量、クロム含量及びケイ素含量は、次の関係:
【0233】
【数11】
を満足し、
化学組成が任意選択的に、次の元素:
0.05%≦Mo≦0.65%、
0.001%≦W≦0.30%、
0.0005%≦Ca≦0.005%
のいくつかのうちの1つを含み、
組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、鋼から作製されていてもよい。
【0234】
単純化のために、「ブランク」という用語は下記において、本発明による熱間圧延及びコーティングされた鋼板から得られたブランク、又は、このブランクを含むテーラードブランクを表すために使用される。
【0235】
次いで、ブランクをホットスタンピング前に炉内で熱処理に供し、ホットスタンピングして、ホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品を得る。
【0236】
特に、ブランクは炉内において、オーステナイトへの少なくとも部分的な変態を鋼基材中に起こすことを可能にする温度Tcに加熱される。この温度は、例えば860℃~950℃の間に含まれ、一般に880℃~950℃の間に含まれ、この結果、加熱されたブランクが得られる。
【0237】
次いで、加熱されたブランクを炉から取り出し、炉からダイに移送するが、ここで、加熱されたブランクが、所望の部品の幾何形状を得るという目的で、熱間変形(ホットスタンピング)を受けて、ホットスタンピングされたブランクが得られる。ホットスタンピングされたブランクは、好ましくは10℃/秒を超える、さらに好ましくは30℃/秒を超える冷却速度Vrにおいて、400℃に冷却され、これにより、ホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品が得られる。
【0238】
このようにして得られたホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品は、非常に満足なコーティング付着を有する。
【0239】
特に、ホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品のコーティング中の細孔の表面百分率は、3%以下である。
【0240】
さらに、例えば噴霧による塗装の後、塗装付着は、非常に満足である。塗装付着は特には、規格ISO2409:2007に従った湿式塗装付着試験の実施によって査定することができる。塗装付着は、湿式塗装付着試験の結果が2以下である場合に良好だと考えられ、湿式塗装付着試験の結果が2より高い場合に不十分だと考えられる。
【実施例0241】
重量パーセントにより表1に開示の組成を有する半製品をキャスティングすることによって、熱間圧延及びコーティングされた鋼板を製造した。
【0242】
【表1】
【0243】
表1において鋼A、B及びEに関して報告されたNi含量は、残留物(又は不純物)としてのNiの存在に対応する。
【0244】
最終圧延温度FRTによって、厚さthになるまで半製品を熱間圧延した。
【0245】
熱間圧延鋼製品を巻取り温度Tcoilに冷却し、巻取り温度Tcoilで巻取って、熱間圧延鋼基材を得た。
【0246】
次いで、時間tpicklingにわたって、HCl浴中で熱間圧延鋼基材を酸洗いした。酸洗いの後、熱間圧延鋼基材の芯及び軸領域から試料を採取し、各試料を対象にして、表面領域中の空隙の表面百分率を、本明細書の上記において記述された手順に従って判定した。
【0247】
次いで、熱間圧延鋼基材を溶融めっきコーティングした。表2は、試料を溶融めっきするために使用された浴組成を示している。板材の各面上にある20~33μmの間に含まれるコーティング厚さを、目標とした。
【0248】
【表2】
【0249】
溶融めっきコーティングの後、熱間圧延及びコーティングされた板材のうちのいくつかには、電着によって、Al合金コーティング上に0.7μmのZnを堆積させた。
【0250】
コーティングの後、試料を板材の芯及び軸領域から採取し、各試料を対象にして、本明細書の上記において記述された手順に従って粒間酸化の深さを判定した。さらに、コーティングの厚さ及び金属間層の厚さを判定した。
【0251】
このようにして得られた熱間圧延及びコーティングされた鋼板を切断して、ブランクを得た。熱間圧延及びコーティングされた鋼板の芯及び軸領域から切り出したブランクを、時間tにわたって炉内で920℃の温度に加熱した。この時間tは、目標温度への加熱段階及びこの温度での保持段階を含む。次いで、加熱されたブランクをダイに移送し、ホットスタンピングし、室温に冷却した。
【0252】
それぞれのホットスタンピングされ、コーティングされた部品から試料を採取し、上記手順に従ってコーティング中の細孔の表面百分率を判定することによってコーティング付着を査定した。さらに、コーティング厚さを測定した。
【0253】
最後に、20μmの電着塗装を各部品の片面に装着し、部品への塗装の付着を、規格ISO2409:2007に従った湿式塗装付着試験によって査定した。塗装付着は、この試験の結果が2以下だった場合に良好だと考え、又はこの試験の結果が2より高かった場合に不十分だと考えた。
【0254】
これらのすべての例において、板材の幅は、1mに等しかった。
【0255】
各部品に関する製造条件(鋼の組成、熱間圧延後の厚さth、最終圧延温度FRT、巻取り直前のオーステナイト分率fγ及び最高巻取り温度Tcoilmax、巻取り温度Tcoil、酸洗い時間tpickling及び加熱時間t)が、表3に示されている。
【0256】
【表3】
この表中に、下線を引いた値は、本発明によるものではない。
【0257】
熱間圧延された鋼基材、板材又は部品のそれぞれを対象にして測定された特性(熱間圧延鋼基材の表面領域中の空隙の表面百分率SVSS、熱間圧延鋼板の粒間酸化の深さDIO、コーティング厚さC、金属間層の厚さIM、及びホットスタンピング部品のコーティング中の細孔の表面百分率SPcoating、及び良好又は不十分という塗装付着の品質)が、表4に示されている。
【0258】
【表4】
表4において、ndは「検出なし」を意味し、NAは「該当なし」を意味する。
【0259】
試料1~4、19、22、23、25及び27は、本発明によらない巻取り温度を用いて製造された。特に、試料1~4、19、22、23、25及び27は、最高巻取り温度Tcoilmaxより高い温度で巻取り、酸洗い前の粒間酸化の深さを高くした。
【0260】
試料1~3、19、22、23、25及び27は、通常の条件下において、すなわち、15~65秒の間に含まれる時間にわたって、酸洗いされた。巻取り温度及び酸洗いの条件の結果として、試料1~3、19、22、23、25及び27の(コーティング後に測定された)鋼板の粒間酸化の深さは、4μm以上であり、すなわち、許容される酸化の最大深さより高い。
【0261】
したがって、ホットスタンピングの後、3%超であるときのコーティング中の細孔の表面百分率、及び塗装付着は不十分である。
【0262】
さらに、0.417%のNiを含む鋼Eから作製された例23を、531℃の温度で巻取った。この結果、表面への粘着力が強い大量のスケールが、酸洗い前及び酸洗い後の板材上に存在した。このスケールの除去は、徹底的な酸洗いの実施を必要としたであろうが、この徹底的な酸洗いの実施は、酸洗いラインの生産性を大幅に低下させたであろう。
【0263】
531℃より低いが495℃より高い巻取り温度の使用によって、同様の結果を得ることができた。試料4を375秒の時間にわたって徹底的に酸洗いした。巻取り温度及び酸洗いの条件の結果として、熱間圧延鋼板がコーティングの後に粒間酸化を含まない場合であっても、コーティング前の鋼基材の表面領域における空隙の表面百分率は、非常に高かった(37.1%)。この結果、制御されていない金属間層中の成長が、溶融めっきコーティング中に起き、この結果、コーティング厚さは、20~33μmの範囲に制御することができず、試料4の場合のコーティング厚さは、37.6μmであった。
【0264】
対照的に、試料5は、試料4と同じ時間にわたって徹底的に酸洗いされたが、試料4とは異なり、本発明による巻取り温度を用いて製造した。したがって、酸洗いの前には、熱間圧延鋼基材が粒間酸化を含まず、又はほとんど含んでおらず、この結果、試料4とは著しく異なり、酸洗いの後には、鋼基材の表面領域中の空隙の表面百分率が低かった(5%)。この結果、コーティング厚さを20~33μmの範囲内に制御することができた。したがって、試料4と試料5との比較は、本発明による製造条件が、コーティング厚さの制御を可能にしながら、ホットスタンピング後の改善されたコーティング付着及び非常に良好な塗装付着を達成できることを示している。
【0265】
さらには、徹底的に(試料5)又はわずかに(試料6)酸洗いされた試料5と試料6との比較は、巻取り温度が本発明によって選択される条件下において、酸洗いの徹底度がコーティング付着に影響せず、コーティング厚さの制御に影響しないことを示している。
【0266】
これらの結果は、本発明の方法において、ホットスタンピング後のコーティング付着を損なうことなく、酸洗いの徹底度を低減できることを示している。したがって、本発明の方法は、徹底的な酸洗いを必要としない。したがって、本発明の方法は、熱間圧延及びコーティングされた鋼板のコーティングの厚さを目標範囲、特に10~33μmの間に含まれる範囲に制御することを可能にしながら、酸洗いラインの生産性低下を伴うことなく、1.8mm~5mmの間に含まれる厚さを有し、ホットスタンピング後のコーティング付着が改善された、熱間圧延及びコーティングされた鋼板の製造を可能にする。
【0267】
試料5~18、20、21、24、26、28及び29は、熱間圧延及びコーティングされた鋼板が本発明による方法によって製造された場合、熱間圧延鋼板が粒間酸化を含まず、又はほとんど含まず、この結果、ホットスタンピング部品のコーティング中の細孔の表面百分率SPcoatingが低く、塗装付着が良好であることを示している。さらに、酸洗い前の粒間酸化の深さが浅く、この結果、コーティング前の鋼基材の表面領域中の空隙の表面百分率が低い。この結果、コーティング厚さは、20~33μmの範囲で制御することができる。
【0268】
特に、試料24は、本発明の第2の態様による組成を有する鋼Dから作製されている。巻取り温度は、495℃以下だった。巻取り温度の結果として、熱間圧延鋼板は、粒間酸化を含まず、又はほとんど含まず、ホットスタンピング部品SPcoatingのコーティング中の細孔の表面百分率が低く、塗装付着が良好である。さらに、酸洗い前の粒間酸化の深さが浅く、この結果、コーティング前の鋼基材の表面領域中の空隙の表面百分率が低い。この結果、コーティング厚さは、20~33μmの範囲で制御することができる。さらに、酸洗い時間は、酸洗いラインにおける高い生産性を達成するように短縮され得る。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-08-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットスタンピングされ、コーティングされ且つ塗装された鋼部品を製造するための方法であって、以下の工程:
- 熱間圧延され且つコーティングされた鋼板を用意する工程であって、前記鋼板が、
● 1.8mm~5mmの間に含まれる厚さを有し、その組成が、重量パーセントにより、
0.04%≦C≦0.38%、
0.40%≦Mn≦3%、
0.005%≦Si≦0.70%、
0.005%≦Al≦0.1%、
0.001%≦Cr≦2%、
0.001%≦Ni≦2%、
0.001%≦Ti≦0.2%、
Nb≦0.1%、
B≦0.010%、
0.0005%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.05%、
0.0001%≦P≦0.1%、
Mo≦0.65%、
W≦0.30%、
Ca≦0.006%
を含み、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、熱間圧延された鋼板を含み、
前記熱間圧延された鋼板が、4μmより低い粒界酸化の深さを有し、前記熱間圧延された鋼板が、フェライト及びパーライトからなる組織を有し、
前記粒界酸化の深さは、そこに粒界酸化が観察される、前記熱間圧延された鋼板の表面から、この表面に対して直交する方向で、前記熱間圧延された鋼板の内部に向かう、前記熱間圧延された鋼板の領域の厚さとして規定され、
前記粒界酸化が、倍率1000倍の光学顕微鏡を用いて、巻きの芯及び軸領域から収集された試料から採った、それぞれが150μmの長さlrefを有する5つの異なる断面を対象にして観察され、各断面において、粒界酸化の最大深さが測定され、その結果、粒界酸化の深さが、得られた前記5つの値の平均値として規定され、
● 前記熱間圧延された鋼板の各面上に、10~33μmnの間に含まれる厚さを有するAl又はAl合金コーティングを有する、工程、
- 前記熱間圧延及びコーティングされた鋼板を切断して、ブランクを得る工程、
- 炉内で前記ブランクを温度Tcに加熱して、加熱されたブランクを得る工程、
- 前記加熱されたブランクをダイに移送し、前記加熱されたブランクを前記ダイの中でホットスタンピングし、これによって、ホットスタンピングされたブランクを得る工程、
- 前記ホットスタンピングされたブランクを400℃未満温度に冷却して、ホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品を得る工程、
- 前記ホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品を塗装する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記熱間圧延された鋼板が、重量パーセントにより、以下の化学組成:
0.04%≦C≦0.38%、
0.40%≦Mn≦3%、
0.005%≦Si≦0.70%、
0.005%≦Al≦0.1%、
0.001%≦Cr≦2%、
0.001%≦Ni≦0.1%、
0.001%≦Ti≦0.2%、
Nb≦0.1%、
B≦0.010%、
0.0005%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.05%、
0.0001%≦P≦0.1%、
Mo≦0.65%、
W≦0.30%、
Ca≦0.006%
を有し、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、請求項1に記載のホットスタンピングされ、コーティングされ且つ塗装された鋼部品を製造するための方法。
【請求項3】
前記組成が、重量パーセントにより、
0.04%≦C≦0.38%、
0.5%≦Mn≦3%、
0.005%≦Si≦0.5%、
0.005%≦Al≦0.1%、
0.001%≦Cr≦1%、
0.001%≦Ni≦0.1%、
0.001%≦Ti<0.2%、
Nb≦0.1%、
B≦0.010%、
0.0005%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.05%、
0.0001%≦P≦0.1%、
Mo≦0.10%、
Ca≦0.006%
を含み、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、請求項1に記載のホットスタンピングされ、コーティングされ且つ塗装された鋼部品を製造するための方法。
【請求項4】
0.075%≦C≦0.38%である、請求項1に記載のホットスタンピングされ、コーティングされ且つ塗装された鋼部品の製造方法。
【請求項5】
前記熱間圧延された鋼板が、重量%で、以下の化学組成:
0.04%≦C≦0.100%、
0.80%≦Mn≦2.0%、
0.005%≦Si≦0.30%、
0.010%≦Al≦0.070%、
0.001%≦Cr≦0.10%、
0.001%≦Ni≦0.10%、
0.03%≦Ti≦0.08%、
0.015%≦Nb≦0.1%、
0.0005≦N≦0.009%、
0.0001%≦S≦0.005%、
0.0001%≦P≦0.030%、
Mo≦0.10%、
Ca≦0.006%
を有し、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、請求項1に記載のホットスタンピングされ、コーティングされ且つ塗装された鋼部品の製造方法。
【請求項6】
前記熱間圧延鋼板が、重量%で、以下の化学組成:
0.062%≦C≦0.095%、
1.4%≦Mn≦1.9%、
0.2%≦Si≦0.5%、
0.020%≦Al≦0.070%、
0.02%≦Cr≦0.1%、
ただし、1.5%≦(C+Mn+Si+Cr)≦2.7%であり、
0.001%≦Ni≦0.1%、
3.4×N≦Ti≦8×N
0.04%≦Nb≦0.06%、
ただし、0.044%≦(Nb+Ti)≦0.09%であり、
0.0005%≦B≦0.004%、
0.001%≦N≦0.009%、
0.0005%≦S≦0.003%、
0.001%≦P≦0.020%、
及び任意選択的に、0.0001%≦Ca≦0.006%
を有し、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、請求項1に記載のホットスタンピングされ、コーティングされ且つ塗装された鋼部品の製造方法。
【請求項7】
前記熱間圧延鋼板が、重量%で、以下の化学組成:
0.15%≦C≦0.38%、
0.5%≦Mn≦3%、
0.10%≦Si≦0.5%、
0.005%≦Al≦0.1%、
0.01%≦Cr≦1%、
0.001%≦Ni≦0.1%、
0.001≦Ti<0.2%
0.0005%≦B≦0.010、
0.0005%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.05%、
0.001%≦P≦0.1%
を有し、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、請求項1に記載のホットスタンピングされ、コーティングされ且つ塗装された鋼部品の製造方法。
【請求項8】
前記コーティングが、15μm以下の厚さを有する金属間化合物層を有する、請求項1に記載のホットスタンピングされ、コーティングされ且つ塗装された鋼部品の製造方法。
【請求項9】
前記熱間圧延され且つコーティングされた鋼板が、各側に、1.1μm以下の厚さを有するZnコーティングを更に含む、請求項1に記載のホットスタンピングされ、コーティングされ且つ塗装された鋼部品の製造方法。
【請求項10】
前記熱間圧延され且つコーティングされた鋼板を切断し、前記ブランクを得る後で、且つ前記ブランクを温度Tcに加熱する前に、前記ブランクが、重量%で、以下の鋼:
0.04%≦C≦0.38%、
0.40%≦Mn≦3%、
0.005%≦Si≦0.70%、
0.005%≦Al≦0.1%、
0.001%≦Cr≦2%、
0.001%≦Ni≦2%、
0.001%≦Ti<0.2%、
Nb≦0.1%、
B≦0.010%、
0.0005≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.050%、
0.0001%≦P≦0.1%、
Mo≦0.65%、
W≦0.30%、
Ca≦0.006%
を含む組成を有し、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなるもの、から作製された別のブランクに溶接される、請求項1~9のいずれか一項に記載のホットスタンピングされ、コーティングされ且つ塗装された鋼部品の製造方法。
【請求項11】
前記熱間圧延され且つコーティングされた鋼板を切断し、前記ブランクを得る後で、且つ前記ブランクを温度Tcに加熱する前に、前記ブランクが、重量%で、以下の鋼:
0.24%≦C≦0.38%及び0.40%≦Mn≦3%、又は
0.38%≦C≦0.43%及び0.05%≦Mn≦0.40%のいずれか、
0.10%≦Si≦0.70%、
0.015%≦Al≦0.070%、
0.001%≦Cr≦2%、
0.25%≦Ni≦2%、
0.015%≦Ti≦0.1%、
0%≦Nb≦0.06%、
0.0005%≦B≦0.0040%、
0.003%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.005%、
0.0001%≦P≦0.025%
を含む組成を有し、
前記チタン含量及び窒素含量は、次の関係:
Ti/N>3.42
を満足し、前記炭素含量、マンガン含量、クロム含量及びケイ素含量は、次の関係:
【数1】
を満足し、
前記化学組成が任意選択的に、次の元素:
0.05%≦Mo≦0.65%、
0.001%≦W≦0.30%、
0.0005%≦Ca≦0.005%
の1つ又はいくつかを含み、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなるもの、から作製された別のブランクに溶接される、請求項1~9のいずれか一項に記載のホットスタンピングされ、コーティングされ且つ塗装された鋼部品の製造方法。
【請求項12】
ホットスタンピングされ、コーティングされ且つ塗装された鋼部品を製造するための方法であって、以下の工程:
- 熱間圧延され且つコーティングされた鋼板を用意する工程であって、前記鋼板が、
● 1.8mm~5mmの間に含まれる厚さを有し、その組成が、重量パーセントにより、
0.24%≦C≦0.38%及び0.40%≦Mn≦3%、又は
0.38%≦C≦0.43%及び0.05%≦Mn≦0.40%のいずれか、
0.10%≦Si≦0.70%、
0.015%≦Al≦0.070%、
0.001%≦Cr≦2%、
0.25%≦Ni≦2%、
0.015%≦Ti≦0.1%、
0%≦Nb≦0.06%、
0.0005%≦B≦0.0040%、
0.003%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.005%、
0.0001%≦P≦0.025%
を含み、
前記チタン含量及び前記窒素含量は、次の関係:
Ti/N>3.42
を満足し、前記炭素含量、前記マンガン含量、前記クロム含量及び前記ケイ素含量は、次の関係:
【数2】
を満足し、
前記化学組成が任意選択的に、次の元素:
0.05%≦Mo≦0.65%、
0.001%≦W≦0.30%、
0.0005%≦Ca≦0.005%
の1つ又はいくつかを含み、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、熱間圧延された鋼板を含み、
前記熱間圧延された鋼板が、4μmより低い粒界酸化の深さを有し、前記熱間圧延された鋼板が、フェライト及びパーライトからなる組織を有し、
前記粒界酸化の深さは、そこに粒界酸化が観察される、前記熱間圧延された鋼板の表面から、この表面に対して直交する方向で、前記熱間圧延された鋼板の内部に向かう、前記熱間圧延された鋼板の領域の厚さとして規定され、
前記粒界酸化が、倍率1000倍の光学顕微鏡を用いて、巻きの芯及び軸領域から収集された試料から採った、それぞれが150μmの長さlrefを有する5つの異なる断面を対象にして観察され、各断面において、粒界酸化の最大深さが測定され、その結果、粒界酸化の深さが、得られた前記5つの値の平均値として規定され、
● 前記熱間圧延された鋼板の各面上に、10~33μmnの間に含まれる厚さを有するAl又はAl合金コーティングを有する、工程、
- 前記熱間圧延及びコーティングされた鋼板を切断して、ブランクを得る工程、
- 炉内で前記ブランクを温度Tcに加熱して、加熱されたブランクを得る工程、
- 前記加熱されたブランクをダイに移送し、前記加熱されたブランクを前記ダイの中でホットスタンピングし、これによって、ホットスタンピングされたブランクを得る工程、
- 前記ホットスタンピングされたブランクを400℃未満温度に冷却して、ホットスタンピングされコーティングされた鋼部品を得る工程、
- 前記ホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品を塗装する工程
を含む、方法。
【請求項13】
前記熱間圧延され且つコーティングされた鋼板を切断し、前記ブランクを得る後で、且つ前記ブランクを温度Tcに加熱する前に、前記ブランクが、重量%で、以下の鋼:
0.04%≦C≦0.38%、
0.40%≦Mn≦3%、
0.005%≦Si≦0.70%、
0.005%≦Al≦0.1%、
0.001%≦Cr≦2%、
0.001%≦Ni≦2%、
0.001%≦Ti<0.2%、
Nb≦0.1%、
B≦0.010%、
0.0005≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.050%、
0.0001%≦P≦0.1%、
Mo≦0.65%、
W≦0.30%、
Ca≦0.006%を含む組成を有し、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなるもの、から作製された別のブランクに溶接される、請求項12に記載のホットスタンピングされ、コーティングされ且つ塗装された鋼部品の製造方法。
【請求項14】
前記熱間圧延され且つコーティングされた鋼板を切断し、前記ブランクを得る後で、且つ前記ブランクを温度Tcに加熱する前に、前記ブランクが、重量%で、以下の鋼:
0.24%≦C≦0.38%及び0.40%≦Mn≦3%、又は
0.38%≦C≦0.43%及び0.05%≦Mn≦0.40%のいずれか、
0.10%≦Si≦0.70%、
0.015%≦Al≦0.070%、
0.001%≦Cr≦2%、
0.25%≦Ni≦2%、
0.015%≦Ti≦0.1%、
0%≦Nb≦0.06%、
0.0005%≦B≦0.0040%、
0.003%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.005%、
0.0001%≦P≦0.025%
を含む組成を有し、
前記チタン含量及び前記窒素含量は、次の関係:
Ti/N>3.42
を満足し、前記炭素含量、前記マンガン含量、前記クロム含量及び前記ケイ素含量は、次の関係:
【数3】
を満足し、
前記化学組成が任意選択的に、次の元素:
0.05%≦Mo≦0.65%、
0.001%≦W≦0.30%、
0.0005%≦Ca≦0.005%
の1つ又はいくつかを含み、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなるもの、から作製された別のブランクに溶接される、請求項12に記載のホットスタンピングされ、コーティングされ且つ塗装された鋼部品の製造方法。
【請求項15】
1.8mm~5mmの間に含まれる厚さを有する少なくとも1つの部分を含む、ホットスタンピングされ、コーティングされ且つ塗装された鋼部品であって、前記ホットスタンピングされ、コーティングされ且つ塗装された鋼部品が、Al又はAl合金コーティングを含み、前記部分が、重量パーセントにより、以下の組成:
0.04%≦C≦0.38%、
0.40%≦Mn≦3%、
0.005%≦Si≦0.70%、
0.005%≦Al≦0.1%、
0.001%≦Cr≦2%、
0.001%≦Ni≦2%、
0.001%≦Ti≦0.2%、
Nb≦0.1%、
B≦0.010%、
0.0005%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.05%、
0.0001%≦P≦0.1%、
Mo≦0.65%、
W≦0.30%、
Ca≦0.006%
を含み、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、鋼から作製されており、
前記ホットスタンピングされコーティングされ且つ塗装された鋼部品を、ISO規格2409:2007に従う湿式塗装付着試験に供したとき、前記湿式塗装付着試験の結果は、2以下である、鋼部品。
【請求項16】
前記部分における前記鋼の組成が、Ni≦0.1%であるような、請求項15に記載のホットスタンピングされ、コーティングされ且つ塗装された鋼部品。
【請求項17】
前記組成が、重量%で、
0.04%≦C≦0.38%、
0.40%≦Mn≦3%、
0.005%≦Si≦0.5%、
0.005%≦Al≦0.1%、
0.001%≦Cr≦1%、
0.001%≦Ni≦0.1%、
0.001%≦Ti≦0.2%、
Nb≦0.1%、
B≦0.010%、
0.0005%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.05%、
0.0001%≦P≦0.1%、
Mo≦0.10%、
Ca≦0.006%
を含み、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、請求項15に記載のホットスタンピングされ、コーティングされ且つ塗装された鋼部品。
【請求項18】
0.075≦C≦0,38である、請求項15に記載のホットスタンピングされ、コーティングされ且つ塗装された鋼部品。
【請求項19】
前記組成が、
0.04%≦C≦0.100%、
0.80%≦Mn≦2.0%、
0.005%≦Si≦0.30%、
0.010%≦Al≦0.070%、
0.001%≦Cr≦0.10%、
0.001%≦Ni≦0.10%、
0.03%≦Ti<0.08%、
0.015%≦Nb≦0.1%、
0.0005≦N≦0.009%、
0.0001%≦S≦0.050%、
0.0001%≦P≦0.030%、
Mo≦0.10%、
Ca≦0.006%
を含み、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、請求項15に記載のホットスタンピングされ、コーティングされ且つ塗装された鋼部品。
【請求項20】
前記組成が、
0.062%≦C≦0.095%、
1.4%≦Mn≦1.9%、
0.2%≦Si≦0.5%、
0.020%≦Al≦0.070%、
0.02%≦Cr≦0.1%、
ただし、1.5%≦(C+Mn+Si+Cr)≦2.7%であり、
0.001%≦Ni≦0.1%、
3.4×N≦Ti≦8×N
0.04%≦Nb≦0.06%、
ただし、0.044%≦(Nb+Ti)≦0.09%であり、
0.0005%≦B≦0.004%、
0.001%≦N≦0.009%、
0.0005%≦S≦0.003%、
0.001%≦P≦0.020%、
及び任意選択的に、0.0001%≦Ca≦0.006%
を含み、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、請求項15に記載のホットスタンピングされ、コーティングされ且つ塗装された鋼部品。
【請求項21】
前記組成が、
0.15%≦C≦0.38%、
0.5%≦Mn≦3%、
0.10%≦Si≦0.5%、
0.005%≦Al≦0.1%、
0.01%≦Cr≦1%、
0.001%≦Ni≦0.1%、
0.001≦Ti<0.2%
0.0005%≦B≦0.010%、
0.0005%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.05%、
0.001%≦P≦0.1%
を含み、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、請求項15に記載のホットスタンピングされ、コーティングされ且つ塗装された鋼部品。
【請求項22】
前記コーティングが、3%以下の細孔の表面百分率を有する、請求項15~21のいずれか一項に記載のホットスタンピングされ、コーティングされ且つ塗装された鋼部品。
【請求項23】
1.8mm~5mmの間に含まれる厚さを有する少なくとも1つの部分を含むホットスタンピングされ、コーティングされ且つ塗装された鋼部品であって、前記ホットスタンピングされ、コーティングされた鋼部品は、Al又はAl合金コーティングを含み、前記部分が、重量パーセントにより、以下の組成:
0.24%≦C≦0.38%及び0.40%≦Mn≦3%、又は
0.38%≦C≦0.43%及び0.05%≦Mn≦0.40%のいずれか、
0.10%≦Si≦0.70%、
0.015%≦Al≦0.070%、
0.001%≦Cr≦2%、
0.25%≦Ni≦2%、
0.015%≦Ti≦0.1%、
0%≦Nb≦0.06%、
0.0005%≦B≦0.0040%、
0.003%≦N≦0.010%、
0.0001%≦S≦0.005%、
0.0001%≦P≦0.025%
を含み、
前記チタン含量及び前記窒素含量は、次の関係:
Ti/N>3.42
を満足し、
前記炭素含量、前記マンガン含量、前記クロム含量及び前記ケイ素含量は、次の関係:
【数4】
を満足し、
前記化学組成が任意選択的に、次の元素:
0.05%≦Mo≦0.65%、
0.001%≦W≦0.30%、
0.0005%≦Ca≦0.005%
の1つ又はいくつかを含み、
前記組成の残部が、鉄及び製錬から生じる不可避的な不純物からなる、鋼から作製されており、
前記ホットスタンピングされコーティングされ且つ塗装された鋼部品を、ISO規格2409:2007に従う湿式塗装付着試験に供したとき、前記湿式塗装付着試験の結果は、2以下である、ホットスタンピングされ、コーティングされ且つ塗装された鋼部品。
【請求項24】
前記コーティングが、3%以下の細孔の表面百分率を有する、請求項23に記載のホットスタンピングされ、コーティングされ且つ塗装された鋼部品。
【請求項25】
自動車用のシャーシ若しくはホワイトボディ部品又はサスペンションアームの製造のための、請求項15から24のいずれか一項に記載のホットスタンピングされ、コーティングされ且つ塗装された鋼部品の、使用。