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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169699
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】中空重合体粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 230/02 20060101AFI20221101BHJP
   C08F 220/18 20060101ALI20221101BHJP
   C08F 2/18 20060101ALI20221101BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
C08F230/02
C08F220/18
C08F2/18
C08F2/44 B
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133439
(22)【出願日】2022-08-24
(62)【分割の表示】P 2020546202の分割
【原出願日】2019-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2018172144
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 良祐
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高い機械的強度を有する中空重合体粒子を提供する。
【解決手段】ビニル系モノマー単位、及びエチレン性不飽和基を有する下記式(1)で示されるリン酸エステル系モノマー単位を含む重合体からなり、体積平均粒子径が0.5~1000μmである、中空重合体粒子とする。

(式中、Rは(メタ)アクリル基又はアリル基、Rは直鎖状又は分岐状のアルキレン基、mは1~30の整数、nは0又は1、vは1~10の整数、xは1又は2である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル系モノマー単位及びリン酸エステル系モノマー単位を含む重合体からなり、体積平均粒子径が0.5~1000μmである、中空重合体粒子。
【請求項2】
前記リン酸エステル系モノマー単位がエチレン性不飽和基を有する、請求項1に記載の中空重合体粒子。
【請求項3】
前記リン酸エステル系モノマー単位は、下記式(1)により表される、請求項1又は2に記載の中空重合体粒子。
【化1】
(式中、Rは(メタ)アクリル基又はアリル基、Rは直鎖状又は分岐状のアルキレン基、mは1~30の整数、nは0又は1、vは1~10の整数、xは1又は2である。)
【請求項4】
ビニル系モノマー単位を含む重合体からなり、
リン元素の含有量が2~200mg/kg、アルカリ土類金属元素の含有量が1~100mg/kgであり、且つ、リン元素の含有量がアルカリ土類金属元素の含有量よりも多く、
体積平均粒子径が0.5~1000μmである、中空重合体粒子。
【請求項5】
比表面積が1~30m/gであり、且つ、嵩比重が0.1~0.4g/cmである、請求項1~4の何れか1項に記載の中空重合体粒子。
【請求項6】
粒子内部が多孔質構造である、請求項1~4の何れか1項に記載の中空重合体粒子。
【請求項7】
粒子内部に孔を1つのみ有する、請求項1~4の何れか1項に記載の中空重合体粒子。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載の中空重合体粒子を含む、樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~7の何れか1項に記載の中空重合体粒子を含む、塗料組成物。
【請求項10】
請求項1~7の何れか1項に記載の中空重合体粒子を含む、化粧料。
【請求項11】
請求項1~7の何れか1項に記載の中空重合体粒子を含む、光拡散フィルム。
【請求項12】
リン酸エステル系モノマー単位をビニル系モノマー単位100質量部に対し0.01~1質量部含むモノマー混合物を非重合性有機化合物及び分散剤の存在下で懸濁重合することを特徴とする、中空重合体粒子の製造方法。
【請求項13】
前記分散剤はアルカリ土類金属のリン酸塩である、請求項12に記載の中空重合体粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空重合体粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内部に空隙を有する重合体粒子は、その空隙を活かし、光拡散剤、艶消し剤、断熱剤、軽量化剤などの機能性部材として開発が進められている。
【0003】
特許文献1には、メソポーラス構造とその表面に形成された外郭からなる中空多孔質性樹脂粒子に関する発明が、記載されている。当該中空多孔質性樹脂粒子は、重合性単量体を水系で懸濁重合する際に、油溶性重合開始剤と水溶性重合開始剤を同時に作用させることにより得られると、記載されている。
【0004】
しかし、かかる中空多孔質性樹脂粒子は、表層部が極めて薄く脆いため、外力が加わると粒子が破壊され、内部が露出するリスクが高い。
【0005】
一方、特許文献2には、内部が多孔質であり、表面に非多孔質の表面層が設けられた、メタクリル系樹脂からなる多孔質樹脂粒子が記載されている。当該多孔質樹脂粒子は、微架橋(0.15%)粒子をアルコール溶媒で膨潤させた後に、水系に滴下することで析出、アルコールを除去させることにより得られるとされている。
【0006】
しかし、かかる多孔質樹脂粒子についても、充分な架橋構造を有しておらず、粒子の強度が不足しているため、外力で粒子が変形し、内部の孔が潰れるおそれがある。また、耐溶剤性も不足しており、水系媒体以外の媒体と共に使用することは難しい。
【0007】
このように、従来の中空多孔質粒子は機械的強度が充分でなく、外力を加えた際に変形及び破壊が生じやすく、外力の加わる状況でその形状を維持することが困難であった。このような機械的強度の充分ではない中空多孔質粒子を、光拡散剤又は艶消し剤として使用し、光学フィルム及び塗料などを製造しても、得られる光学フィルム及び塗料により形成される塗膜は、傷つきやすいものとなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】日本国特開2017-82152号公報
【特許文献2】日本国特開2015-67803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような事情に鑑み、本発明の目的とするところは、高い機械的強度を有する中空重合体粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、所定のモノマー単位を含む重合体からなり、且つ、所定の体積平均粒子径を有する中空粒子とすることにより、機械的強度の高い中空粒子を提供できることを見出した。本発明者は、かかる知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、以下の中空重合体粒子を提供する。
項1.
ビニル系モノマー単位及びリン酸エステル系モノマー単位を含む重合体からなり、体積平均粒子径が0.5~1000μmであることを特徴とする、中空重合体粒子。
項2.
前記リン酸エステル系モノマー単位がエチレン性不飽和基を有する、項1に記載の中空重合体粒子。
項3.
前記リン酸エステル系モノマー単位は、下記式(1)により表される、項1又は2に記載の中空重合体粒子。
【化1】
(式中、Rは(メタ)アクリル基又はアリル基、Rは直鎖状又は分岐状のアルキレン基、mは1~30の整数、nは0又は1、vは1~10の整数、xは1又は2である。)
項4.
ビニル系モノマー単位を含む重合体からなり、
リン元素の含有量が2~200mg/kg、アルカリ土類金属元素の含有量が1~100mg/kgであり、且つ、リン元素の含有量がアルカリ土類金属元素の含有量よりも多く、
体積平均粒子径が0.5~1000μmである、中空重合体粒子。
項5.
比表面積が1~30m/gであり、且つ、嵩比重が0.1~0.4g/cmである、項1~4の何れかに記載の中空重合体粒子。
項6.
粒子内部が多孔質構造である、項1~4の何れかに記載の中空重合体粒子。
項7.
粒子内部に孔を1つのみ有する、項1~4の何れかに記載の中空重合体粒子。
【0012】
項8.
項1~7の何れかに記載の中空重合体粒子を含む、樹脂組成物。
項9.
項1~7の何れかに記載の中空重合体粒子を含む、塗料組成物。
項10.
項1~7の何れかに記載の中空重合体粒子を含む、化粧料。
項11.
項1~7の何れかに記載の中空重合体粒子を含む、光拡散フィルム。
項12.
中空重合体粒子の製造方法であって、
リン酸エステル系モノマー単位をビニル系モノマー単位100質量部に対し0.01~1質量部含むモノマー混合物を非重合性有機化合物及び分散剤の存在下で懸濁重合することを特徴とする、中空重合体粒子の製造方法。
項13.
前記分散剤はアルカリ土類金属のリン酸塩である、項12に記載の中空重合体粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の中空重合体粒子は、高い機械的強度を有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第一の発明:中空重合体粒子)
本発明の中空重合体粒子は、ビニル系モノマー単位及びリン酸エステル系モノマー単位を含む重合体からなり、体積平均粒子径が0.5~1000μmである。
【0015】
本発明の中空重合体粒子は、当該粒子内部に1つの中空構造を有する形態であってもよいし、当該粒子内部が多孔質構造を有していてもよい。また、粒子の形状は、粒子の機械的強度を考慮し、球状とすることが好ましい。
【0016】
中空重合体粒子の体積平均粒子径は、0.5μm以上であり、好ましくは、2μm以上である。中空重合体粒子の体積平均粒子径が0.5μm未満であると、塗膜等に配合する際には所望の光学特性にするためには大量に配合する必要があり経済的でない。一方、中空重合体粒子の体積平均粒子径は、1000μm以下であり、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは50μm以下である。中空重合体粒子の体積平均粒子径が1000μmを超えると、中空体重合粒子が塗膜から脱落してしまう。
【0017】
本明細書において、中空重合体粒子の体積平均粒子径は、コールター法により得ることができる。中空重合体粒子の体積平均粒子径は、コールターMultisizerTM 3(ベックマン・コールター株式会社製測定装置)により測定する。より具体的には、ベックマン・コールター株式会社発行のMultisizerTM 3ユーザーズマニュアルに従って校正されたアパチャーを用いて実施するものとする。なお、測定に用いるアパチャーは、測定する中空重合体粒子の大きさによって、適宜選択する。Current(アパチャー電流)及びGain(ゲイン)は、選択したアパチャーのサイズによって、適宜設定する。例えば、50μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は-800、Gain(ゲイン)は4と設定する。測定用試料としては、中空重合体粒子0.1gを0.1重量%ノニオン性界面活性剤水溶液10m1中にタッチミキサー(ヤマト科学株式会社製、「TOUCHMIXER MT-31」)及び超音波洗浄器(株式会社ヴェルヴォクリーア製、「ULTRASONIC CLEANER VS-150」)を用いて分散させ、分散液としたものを使用する。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、中空重合体粒子を10万個測定した時点で測定を終了する。中空重合体粒子の体積平均粒子径は、10万個の粒子の体積基準の粒度分布における算術平均である。
【0018】
中空重合体粒子の内部は中空構造又は多孔質構造を有する一方、中空重合体粒子の表面は、非多孔質形状であることが好ましい。より具体的には、中空重合体粒子の比表面積が1m/g以上であることが好ましく、1.5m/g以上であることがより好ましい。かかる構成を採用することにより、高い光拡散性を得ることができる。一方、粒子表面の収縮、割れが少ない理由から、中空重合体粒子の比表面積は、30m/g以下であることが好ましく、25m/g以下であることがより好ましい。尚、本明細書において、中空重合体粒子の比表面積は、ISO 9277第1版 JIS Z 8830:2001記載のBET法(窒素吸着法)により測定するものと定義する。
【0019】
また、中空重合体粒子の嵩比重は、強度が高いという理由から、0.1g/cm以上であることが好ましく、0.15g/cm以上であることがより好ましい。一方、中空重合体粒子の嵩比重は、軽量で少量添加で光拡散性を得られるという理由から、0.4g/cm以下であることが好ましく、0.35g/cm以下であることがより好ましい。尚、本明細書において、中空重合体粒子の嵩比重は、JISK5101-12-1(顔料試験方法-第12部:見掛け密度又は見掛け比容-第1節:静置法)に準拠して測定するものと定義される。
【0020】
中空重合体粒子は、ビニル系モノマー単位、及びリン酸エステル系モノマー単位を含む重合体を含んで構成される。
【0021】
使用するビニル系モノマー単位としては、公知のものを広く採用することが可能であり、特に限定はない。具体的には、エチレン性不飽和基を1つ有する単官能ビニル系モノマー単位として、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキル系モノマー単位、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-メトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸ヘプタデカフルオロデシル、スチレン系モノマー単位、及び、酢酸ビニル等が挙げられる。前記(メタ)アクリル酸アルキル系モノマー単位に含まれるアルキル基は、直鎖状であってもよく分枝状であってもよい。前記(メタ)アクリル酸アルキル系単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等のアクリル酸アルキル;メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸イソボルニル、のメタクリル酸アルキル等が挙げられる。また、(メタ)アクリル酸アルキル系単量体に含まれるアルキル基としては、炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることがより好ましい。(メタ)アクリル酸アルキル系単量体に含まれるアルキル基の炭素数が1~8の範囲内であると懸濁重合時の分散液の安定性が優れており、結果として高い機械的強度の中空重合体粒子が得られやすい。
【0022】
前記スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、p-メチルスチレン、α―メチルスチレン等が挙げられる。またエチレン性不飽和基を2つ以上有する多官能ビニル系モノマー単位として、多官能(メタ)アクリル酸エステル系モノマー単位、及び、芳香族ジビニル系モノマー単位等が挙げられる。
【0023】
前記多官能(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、フタル酸ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等が挙げられる。
【0024】
前記芳香族ジビニル系単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0025】
上述したビニル系モノマー単位には、高い機械的強度に加え、耐溶剤性に優れた中空重合体粒子が得られる。という理由から、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、及びジビニルベンゼンといった、多官能ビニル系モノマー単位が含まれることが好ましい。
【0026】
多官能ビニル系モノマー単位の含有量としては、ビニル系モノマー単位全体100質量%中に、5質量%以上含まれることが好ましく、10質量%以上含まれることがより好ましい。多官能ビニル系モノマー単位が5質量%以上含まれることにより、中空構造を形成しやすくなる。一方、多官能ビニル系モノマー単位の含有量は、ビニル系モノマー単位全体100質量%中に、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。多官能ビニル系モノマー単位の含有量が50質量%以下であることにより、得られる中空重合体粒子の表面の収縮が小さく、強度が強くなる。
【0027】
リン酸エステル系モノマー単位は、懸濁重合時に、液滴表面に配向しやすく、無機系分散剤と作用し、粒子表面近傍の硬度を高めることができるという理由で、酸性リン酸エステル系モノマー単位が好ましい。
【0028】
酸性リン酸エステル系モノマー単位は、懸濁重合時に、液滴表面近傍でビニル系モノマーと共重合することで粒子硬度を高められるという理由でエチレン性不飽和基を有する酸性リン酸エステル単量体が好ましい。
【0029】
エチレン性不飽和基を有する酸性リン酸エステル単量体として、より具体的には下記式(1)で表される構造式を有するものが例示される。
【0030】
【化2】
(式中、Rは(メタ)アクリル基又はアリル基、Rは直鎖状又は分岐状のアルキレン基、mは1~30の整数、nは0又は1、vは1~10の整数、xは1又は2である。)
【0031】
より具体的には、下記式(2)で表されるカプロラクトンEO変性リン酸ジメタクリレート(日本化薬株式会社社製、製品名:KAYAMER PM-21)及び下記式(3)で表されるポリオキシプロピレンアリルエーテルリン酸エステル(株式会社ADEKA社製、製品名:アデカリアソープ PP-70)、及び2-メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェートを例示することができる。
【0032】
【化3】
(式中、a及びbは、a=1、b=2、又は、a=2、b=1である。)
【0033】
【化4】
(式中、pは1~30の整数である。qは1又は2である。)
【0034】
リン酸エステル系モノマー単位の含有量は、ビニル系モノマー単位100質量部に対して0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましい。リン酸エステル部位を主骨格とするモノマー単位が、ビニル系モノマー単位100質量部に対して0.01質量部以上含まれることにより、中空構造を形成できるという利点がある。一方、リン酸エステル系モノマー単位の含有量は、ビニル系モノマー単位100質量部に対して、1質量部以下であることが好ましく、0.8質量部以下であることがより好ましい。リン酸エステル系モノマー単位が、ビニル系モノマー単位100質量部に対して1質量部以下であることにより、得られる中空重合体粒子が略球状を維持しやすいという利点がある。リン酸エステル系モノマー単位はビニル系モノマー単位と共重合している方が高い強度の中空重合体粒子が得られるので好ましい。
【0035】
その他、中空重合体粒子は、必要に応じ適宜、顔料、酸化防止剤、香料、紫外線防御剤、界面活性剤、防腐剤及び薬効成分等の各種成分を1種以上含んでもよい。
【0036】
(第二の発明:中空重合体粒子)
また、本発明は、ビニル系モノマー単位を含む重合体からなり、リン元素の含有量が2~200mg/kg、アルカリ土類金属元素の含有量が1~100mg/kgであり、且つ、リン元素の含有量がアルカリ土類金属元素の含有量よりも多く、体積平均粒子径が0.5~1000μmである中空重合体粒子に関する発明を包含する。
【0037】
第二の発明の中空重合体粒子の大きさ及び形状に関しては、上記した第一の発明と同一である。また、ビニル系モノマー単位も、第一の発明において上述したものと同一である。
【0038】
第二の発明の中空重合体粒子中におけるリン元素量の含有量は、アルカリ土類金属の含有量よりも多い。これら元素の含有量は、任意の元素分析により測定することが可能であるが、例えば、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP発光分光分析法)により測定することができる。
【0039】
中空重合体粒子におけるリン元素の含有量は2mg/kg以上であり、5mg/kg以上であることが好ましい。リン元素の含有量が2mg/kgに満たない場合、中空重合体粒子における中空構造が形成されにくくなる。一方、中空重合体粒子におけるリン元素の含有量は200mg/kg以下であり、100mg/kg以下であることが好ましい。リン元素の含有量が200mg/kgを超えると、中空重合体粒子の機械的強度が不充分となってしまう。
【0040】
中空重合体粒子におけるアルカリ土類金属元素の含有量は、1mg/kg以上であり、3mg/kg以上であることが好ましい。第二の発明において、リン元素とアルカリ土類金属元素とは、両者の相互作用により中空重合体粒子の表層に緻密な被膜を形成し、中空重合体粒子の機械的強度を顕著に向上させる。したがって、中空重合体粒子におけるアルカリ土類金属元素の含有量が1mg/kgに満たない場合、上記被膜が充分に形成されず、中空重合体粒子の機械的強度が不充分となってしまう。一方、中空重合体粒子におけるアルカリ土類金属元素の含有量は、100mg/kg以下であり、80mg/kg以下であることが好ましい。アルカリ土類金属元素の含有量が100mg/kgを超えると、塗膜を形成した際の塗膜中の中空重合体粒子の分散安定性が悪くなってしまったり、フィルムを形成した際に、フィルムの耐傷付き性が悪くなったりする。
【0041】
中空重合体粒子に含まれるアルカリ土類金属元素の種類としては特に限定されない。ただし、マグネシウム又はカルシウムが好ましい。
【0042】
中空重合体粒子中には、リン酸エステル系モノマー単位が含まれていてもよい。例えば、中空重合体粒子が、前述したビニル系モノマー単位及びリン酸エステル系モノマー単位を含む重合体からなることが、好ましい。リン酸エステルモノマー単位としては、上記した第一の発明と同様のものを挙げることができる。
【0043】
中空重合体粒子の比表面積及び嵩比重に関しては、第一の発明と同様である。
【0044】
第一の発明同様、中空重合体粒子は、必要に応じ適宜、顔料、酸化防止剤、香料、紫外線防御剤、界面活性剤、防腐剤及び薬効成分等の各種成分を1種以上含んでもよい。
【0045】
本第一及び第二の発明の中空重合体粒子は、優れた機械的強度を有しており、樹脂組成物、塗料組成物、化粧料、及び光拡散フィルム等に好適に使用可能である。本発明の中空重合体粒子を使用して得られる樹脂組成物により形成される樹脂、塗料組成物により形成される塗膜、及び光拡散フィルムは耐傷つき性に優れるという顕著な効果を有する。
【0046】
(第三の発明:中空重合体粒子の製造方法)
また、本発明は、中空重合体粒子の製造方法に関する発明を包含する。本発明の中空重合体粒子の製造方法は、非重合性有機化合物と重合性モノマーの混合物を懸濁重合する工程を有し、前記重合性モノマーは、ビニル系モノマー単位100質量部に対し、リン酸エステル部位を有する重合性モノマー単位を0.01~1質量部含むことを特徴とする。
【0047】
ビニル系モノマー単位、及びリン酸エステル部位を主骨格とするモノマー単位に関しては、上記のものと同様のモノマー単位を使用することができる。
【0048】
ビニル系モノマー単位、及びリン酸エステル部位を有する重合性モノマー単位の混合物は、非重合性有機化合物の存在下で、懸濁重合する。
【0049】
非重合性有機化合物は、いわゆる溶剤としての働きを有すると共に、中空重合体粒子の内部に中空構造又は多孔質構造が形成されることにも寄与する。
【0050】
かかる非重合性有機化合物としては、重合工程が実施される温度領域において液体として存在しているという理由から、沸点が30℃以上200℃以下の有機溶剤を使用することが好ましい。より具体的には、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n―ヘプタン等の飽和の脂肪族炭化水素類、トルエン、ベンゼン等芳香族化合物、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル系化合物、及びハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン等のフッ素系化合物からなる群より選択される1種以上を使用することができる。
【0051】
非重合性有機化合物の使用量としては、上記したビニル系モノマー単位、及びリン酸エステル部位を有する重合性モノマー単位の混合物100質量部に対して、10~250質量部であることが好ましい。非重合性有機化合物が10質量部以上であることにより、中空重合体粒子内部の中空構造又は多孔質構造を、より確実に形成することができる。一方、非重合性有機化合物が250質量部以下であることにより、得られる中空重合体粒子の充分な強度を確保することができる。
【0052】
使用するモノマー単位の重合反応を促進するために、ラジカル重合開始剤を使用することも好ましい。かかるラジカル重合開始剤としては、公知のものを広く採用することが可能であり、特に限定はない。
【0053】
ラジカル重合開始剤としては、より具体的には、2,2´-アゾビス2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2‘-アゾビスイソブチロニトリル等の油溶性アゾ化合物、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、プロピルパーオキシジカーボネート、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等の油溶性過酸化物が挙げられる。
【0054】
これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、又は2種類以上組み合わせて用いることができる。重合開始剤の添加量としては、重合性モノマーの重合を円滑に開始できるという理由から、重合性モノマー100質量部に対して0.01~10質量部とすることが好ましく、0.01~5質量部とすることがより好ましい。
【0055】
その他、懸濁液には、必要に応じて分散剤、分散助剤、界面活性剤、pH調整剤、水溶性重合禁止剤、及び酸化防止剤からなる群より選択される1種以上を加えることも好ましい。
【0056】
分散剤としては、公知の分散剤を広く使用することが可能であり、特に限定はない。ただし、強度の高い中空重合体粒子が得られるという理由から、無機系の分散剤を使用することが好ましい。より具体的には、ピロリン酸マグネシウム、炭酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、炭酸バリウム等のような水に難溶性の塩類、シリカ、酸化ジルコニウム等の無機分散剤、タルク、ベントナイト、珪酸、珪藻土、粘度等の無機高分子物質等を用いることが出来る。これらは一種単独で使用してもよいし、複数種を併用してもよい。
【0057】
分散剤としては上記した中でも、アルカリ土類金属のピロリン酸塩又はリン酸塩を使用することにより、金属イオンがリン酸エステル系モノマーにおけるリン酸エステル部と相互作用して表層に緻密な被膜が形成され、その結果、強度の高い中空重合体粒子が得ることができる。また、アルカリ土類金属としてはマグネシウム又はカルシウムを好適に採用することができる。
【0058】
分散剤の添加量としては、重合性モノマー溶液の油滴の安定性を確保し、粒子径の揃った中空重合体粒子が得られるという理由から、重合性モノマー合計量100質量%中に0.1~5質量%とすることが好ましく、0.5~3質量%とすることがより好ましい。
【0059】
また、粒子径がさらに揃った中空重合体粒子を得るためには、マイクロフルイダイザー、ナノマイザー等のような、液滴同士の衝突や機壁への衝突力を利用した高圧型分散機等を用いて液滴を分散させて懸濁重合を行えばよい。
【0060】
重合温度は、30~105℃の範囲内であることが好ましい。この重合温度を保持する時間は、0.1~20時間の範囲内が好ましい。重合完了後、非重合性有機化合物を粒子内に含んだ、中空重合体粒子を含む懸濁液が得られる。この懸濁液を蒸留して非重合性有機化合物を除去する。さらに、前記懸濁液中の分散安定剤を酸等で溶解、除去したのち、中空重合体粒子を濾過分離して水性媒体を除去し、水又は溶剤で洗浄した後、乾燥することにより、中空重合体粒子を単離することが好ましい。または、重合完了後、懸濁液を蒸留することなく、分散安定剤の除去、洗浄をした後、乾燥することで非重合性有機化合物を除去することで中空重合体粒子を単離することも出来る。このようにして得られた本発明の中空重合体粒子は、高い機械強度を有するため、光学フィルムや光学シート、照明カバー等の光拡散剤、塗料、インク等の艶消し剤、塗料、シートの断熱剤、樹脂や成型品等の軽量化剤用の粒子として好適に使用することができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【実施例0062】
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0063】
〔中空重合体粒子の体積平均粒子径の測定方法〕
中空重合体粒子の測定は、以下のようにしてコールター法により行った。
中空重合体粒子の体積平均粒子径は、コールターMultisizerTM 3(ベックマン・コールター株式会社製測定装置)により測定する。測定は、ベックマン・コールター株式会社発行のMultisizerTM 3ユーザーズマニュアルに従って校正されたアパチャーを用いて実施するものとする。
なお、測定に用いるアパチャーは、測定する中空重合体粒子の大きさによって、適宜選択する。Current(アパチャー電流)及びGain(ゲイン)は、選択したアパチャーのサイズによって、適宜設定する。例えば、50μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は-800、Gain(ゲイン)は4と設定する。測定用試料としては、中空重合体粒子0.1gを0.1重量%ノニオン性界面活性剤水溶液10m1中にタッチミキサー(ヤマト科学株式会社製、「TOUCHMIXER MT-31」)及び超音波洗浄器(株式会社ヴェルヴォクリーア製、「ULTRASONIC CLEANER VS-150」)を用いて分散させ、分散液としたものを使用する。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、中空重合体粒子を10万個測定した時点で測定を終了する。中空重合体粒子の体積平均粒子径は、10万個の粒子の体積基準の粒度分布における算術平均である。
【0064】
(比表面積)
中空重合体粒子の比表面積は、ISO 9277第1版 JIS Z 8830:2001記載のBET法(窒素吸着法)により測定した。対象となる中空重合体粒子について、株式会社島津製作所社製の自動比表面積/細孔分布測定装置TristarIIを用いてBET窒素吸着等温線を測定し、窒素吸着量からBET多点法を用いて比表面積を算出した。
【0065】
加熱ガスパージによる前処理を実施した後、吸着質として窒素を用い、吸着質断面積0.162nm2の条件下で定容量法を用いて測定を行った。なお、前記前処理は、具体的には、樹脂粒子が入った容器を65℃で加熱しながら、窒素パージを20分行い、室温放冷した後、その容器を65℃で加熱しながら、前記容器内の圧力が0.05mmHg以下になるまで真空脱気を行うことにより、行った。
【0066】
(嵩比重)
中空重合体粒子の嵩比重は、JISK5101-12-1(顔料試験方法-第12部:見掛け密度又は見掛け比容-第1節:静置法)に準拠して測定した。
【0067】
(実施例1)
メチルメタクリレート105質量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート45質量部、酸性リン酸エステル基を有する重合性モノマーとしての「KAYAMER(登録商標)PM-21」(日本化薬社製)0.3質量部と、重合開始剤としてのAVN(日本ファインケム社製)0.45質量部、非重合性有機化合物として酢酸エチル75質量部とシクロヘキサン75質量部とを混合して油相を調整した。また、水性媒体としての脱イオン水900質量部と、分散剤としての、複分解法により生成させたピロリン酸マグネシウム23質量部とを混合して、水相を調整した。
次に、上記油相を上記水相中にTK-ホモミキサー(プライミクス社製)を用い、8000rpmにて5分間分散させておよそ8μmの分散液を得た。その後、撹拌機及び温度計を備えた重合器にこの分散液を入れ、重合器の内部温度を55℃に昇温して上記懸濁液の撹拌を5時間続けた後、重合器の内部温度を70℃に昇温(二次昇温)し、上記懸濁液を70℃で2時間撹拌することによって、懸濁重合反応を完了させた。
上記懸濁液を冷却した後、この懸濁液に含まれている分散剤(ピロリン酸マグネシウム)を塩酸によって分解した。その後、懸濁液を濾過により脱水して固形分を分離し、十分な水により固形分を洗浄した。その後、70℃で24時間真空乾燥することで非重合性有機化合物を除去し、球状の重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子径は8.0μmであった。得られた重合体粒子はSEM観察によると、内部が多孔質状の形状であった。嵩比重は0.33g/ml、また得られた粒子をジェットミルにて0.4MPaの圧力で処理した前後の比表面積を測定したところ、8.2m/g、23.2m/gであった。
【0068】
(実施例2)
スチレン54質量部、エチレングリコールジメタクリレート36質量部、シクロヘキサン105質量部、酢酸エチル105質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして重合体粒子を得た。
【0069】
(実施例3)
メチルメタクリレート135質量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート15質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして重合体粒子を得た。
【0070】
(実施例4)
イソブチルメタクリレート105質量部、エチレングリコールジメタクリレート45質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして重合体粒子を得た。
【0071】
(実施例5)
スチレン105質量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート45質量部、酸性リン酸エステル基を有する重合性モノマーとしての「アデカリアソープPP-70」(ADEKA社製)0.8質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして重合体粒子を得た。
【0072】
(実施例6)
非重合性有機化合物をシクロヘキサン150質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして重合体粒子を得た。得られた粒子は内部に孔が1つだけの存在する粒子であった。
【0073】
(実施例7)
実施例1において、調整した油相を、水相に分散させる際にTK-ホモミキサーの回転数を2500rpmに変更し、およそ35μmの分散液を得た。その後の重合工程以降は、実施例1と同様にして重合体粒子を得た。
【0074】
(実施例8)
メチルメタクリレート65質量部、エチレングリコールジメタクリレート85質量部、酸性リン酸エステル基を有する重合性モノマー「KAYAMER(登録商標)PM-21」0.3質量部と、重合開始剤としてのAVN 0.75質量部、非重合性有機化合物として酢酸エチル75質量部とシクロヘキサン75質量部とを混合して油相を調整した。また、水性媒体としての脱イオン水900質量部と、分散剤としての、第三リン酸カルシウム90質量部とを混合して、水相を調整した。
上記以外は実施例1と同様にして重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子径は8.0μmであった。得られた重合体粒子はSEM観察によると、内部が多孔質状の形状であった。嵩比重は0.32g/ml、また得られた粒子をジェットミルにて0.4MPaの圧力で処理した前後の比表面積を測定したところ、7.2m/g、10.2m/gであった。
【0075】
(比較例1)
酸性リン酸エステル基を有する重合性モノマーとしてのKAYMER PM-21を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、重合体粒子を得た。得られた粒子は、多孔質状の粒子であった。
【0076】
(比較例2)
スチレン105質量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート45質量部、油溶性重合開始剤としてのAVN(日本ファインケム社製)1.5質量部、非重合性有機化合物としてシクロヘキサン150質量部とを混合して油相を調整した。また、水性媒体としての脱イオン水900質量部と、界面活性剤としての、ラウリル硫酸ナトリウム1質量部、水溶性重合開始剤としてのVA-057(和光純薬社製)2.3質量部を混合して水相を調整した。
次に、上記油相を上記水相中にTK-ホモミキサー(プライミクス社製)を用い、8000rpmにて5分間分散させておよそ8μmの分散液を得た。その後、撹拌機及び温度計を備えた重合器にこの分散液を入れ、重合器の内部温度を60℃に昇温して上記懸濁液の撹拌を5時間続けた後、重合器の内部温度を70℃に昇温(二次昇温)し、上記懸濁液を70℃で2時間撹拌することによって、懸濁重合反応を完了させた。
上記懸濁液を冷却した後、懸濁液を濾過により脱水して固形分を分離し、十分な水により固形分を洗浄した。その後、70℃で24時間真空乾燥することで非重合性有機化合物を除去し、重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子径は8.0μmであった。得られた重合体粒子はSEM観察によると、内部が多孔質状の形状であった。
【0077】
(機械的強度評価試験)
得られた各実施例及び比較例の中空重合体粒子を、ジェットミル(カレントジェットCJ-10 日清エンジニアリング社製)で圧力0.4MPa、供給量5g/minで通過させた。
【0078】
(リン元素及びアルカリ土類金属元素測定)
リン元素含有量、アルカリ土類金属元素含有量はマルチタイプICP発光分光分析装置(株式会社島津製作所製、「ICPE-9000」)を用いて、測定した。中空重合体粒子約1.0gを精秤し、精秤した中空重合体粒子を、電気炉(株式会社いすず製のマッフル炉STR-15K)を用いて450℃で3時間加熱することにより、灰化させた。灰化した中空重合体粒子を濃塩酸2mlに溶解させ、蒸留水にて50mlにメスアップして測定試料とした。その後、測定試料について、下記測定条件にて、上記マルチタイプICP発光分光分析装置による測定を実施し、各元素(Na、Ca、Mg、Fe、Cr、P)の波長のピーク強度を得た。次いで、得られた各元素(Na、Ca、Mg、Fe、Cr、P)の波長のピーク強度から、下記検量線作成方法により作成した定量用の検量線に基づき、測定試料中の各元素(Na、Ca、Mg、Fe、Cr、P)の濃度(μg/ml)を算出した。そして、算出した各元素(Na、Ca、Mg、Fe、Cr、P)の濃度Tc(μg/ml)と、上記の精秤した中空重合体粒子の重量W(g)とを以下の式に代入し、中空重合体粒子中の各元素量を算出した。
元素量=(Tc(μg/ml)/W(g))×50(ml)
<測定条件>
測定波長:Na(589.592nm)、Ca(317.933nm)、Mg(285.213nm)、Fe(238.204nm)、Cr(205.552nm)、P(177.499nm)
観測方向:軸方向
高周波出力:1.20kW
キャリアー流量:0.7L/min
プラズマ流量:10.0L/min
補助流量:0.6L/min
露光時間:30秒
<検量線作成方法>
検量線用標準液(米国SPEX社製、「XSTC-13(汎用混合標準溶液)」、31元素混合(ベース5%HNO3)-各約10mg/l)を蒸留水で段階的に希釈調製して、0ppm(ブランク)、0.2ppm、1ppm、2.5ppm、及び5ppmの濃度の標準液をそれそれ調製した。各濃度の標準液について、上記測定条件にて上記マルチタイプICP発光分光分析装置による測定を実施し、各元素(Na、Ca、Mg、Fe、Cr)の波長のピーク強度を得た。各元素(Na、Ca、Mg、Fe、Cr)について、濃度とピーク強度をプロットし、最小二乗法による近似線(直線あるいは二次曲線)を求め、求めた近似線を定量用の検量線とした。
【0079】
下記表1に示すとおり、各比較例の中空重合体粒子は、ジェットミル処理を施すことにより粒子が崩壊して内部の多孔質構造が露出し、ジェットミル処理前と比較して比表面積が顕著に増加した。これに対して各実施例の中空重合体粒子はジェットミル処理を施した後の比表面積の増加が抑制される傾向にあることが確認された。
【0080】
【表1】
【0081】
(実施例9)
実施例2で得られた中空重合体粒子7.5質量部と、アクリル樹脂(DIC社製、製品名アクリディックA811)30質量部、架橋剤(DIC社製、製品名VM-D)10質量部、溶剤として酢酸ブチル50質量部とを攪拌脱泡装置を用いて、3分間混合し、1分間脱泡することによって、光拡散性樹脂組成物を得た。
得られた光拡散性樹脂組成物を、クリアランス50μmのブレードをセットした塗工装置を用いて、厚さ125μmのPETフィルム上に塗布した後、70℃で10分乾燥することによって光拡散フィルムAを得た。
【0082】
(比較例3)
比較例2得られた中空重合体粒子を用いたこと以外は、実施例9と同様にして、光拡散フィルムBを得た。
【0083】
(傷つき性評価試験)
得られた光拡散フィルムの塗工面を、摩擦堅牢度試験機を用いて布で20回往復研磨し、研磨後の光拡散フィルムの傷付き具合を目視で観察した。線傷、及び塗膜の剥れがないものを○、線傷、塗膜の剥れが確認された場合は×とした。
【0084】
(ヘイズ、全光線透過率測定試験)
光拡散フィルムの全光線透過率は、JISK7361-1にしたがって測定し、ヘイズ(ヘーズ)は、JISK7136にしたがって測定した。具体的には、光拡散フィルムの全光線透過率及びヘイズは、日本電色工業株式会社から市販されているヘイズメーター(NDH2000)を用いて測定した。
【0085】
下記表2に示すとおり、比較例3のフィルムでは耐傷つき性の評価において、好ましい結果が得られなかった。一方で、実施例9のフィルムでは、良好な耐傷つき性の評価結果を得られた。
【0086】
【表2】
【手続補正書】
【提出日】2022-09-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル系モノマー単位及びリン酸エステル系モノマー単位を含む重合体からなり、体積平均粒子径が0.5~1000μmであり、比表面積が1~30m /gである、中空重合体粒子。
【請求項2】
前記リン酸エステル系モノマー単位がエチレン性不飽和基を有する、請求項1に記載の中空重合体粒子。
【請求項3】
前記リン酸エステル系モノマー単位は、下記式(1)により表される、請求項1又は2に記載の中空重合体粒子。
【化1】
(式中、Rは(メタ)アクリル基又はアリル基、Rは直鎖状又は分岐状のアルキレン基、mは1~30の整数、nは0又は1、vは1~10の整数、xは1又は2である。)
【請求項4】
比重が0.1~0.4g/cmである、請求項1~の何れか1項に記載の中空重合体粒子。
【請求項5】
粒子内部に孔を1つのみ有する、請求項1~の何れか1項に記載の中空重合体粒子。
【請求項6】
請求項1~の何れか1項に記載の中空重合体粒子を含む、樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~の何れか1項に記載の中空重合体粒子を含む、塗料組成物。
【請求項8】
請求項1~の何れか1項に記載の中空重合体粒子を含む、化粧料。
【請求項9】
請求項1~の何れか1項に記載の中空重合体粒子を含む、光拡散フィルム。
【請求項10】
リン酸エステル系モノマー単位をビニル系モノマー単位100質量部に対し0.01~1質量部含むモノマー混合物を
飽和脂肪族炭化水素類、芳香族化合物、酢酸エステル系化合物及びフッ素系化合物からなる群より選択される少なくとも一種の非重合性有機化合物並びに分散剤の存在下で懸濁重合することを特徴とする、中空重合体粒子の製造方法。
【請求項11】
前記分散剤はアルカリ土類金属のリン酸塩である、請求項10に記載の中空重合体粒子の製造方法。