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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169700
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】穿刺針及びカテーテル組立体
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/158 20060101AFI20221101BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
A61M5/158 500D
A61M5/32 520
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133483
(22)【出願日】2022-08-24
(62)【分割の表示】P 2020507789の分割
【原出願日】2019-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2018051395
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018152450
(32)【優先日】2018-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018206087
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】上田 武彦
(72)【発明者】
【氏名】長澤 雅彦
(57)【要約】      (修正有)
【課題】刃面長に関わらず、刃先角度を小さくすることが可能な刃面形状を有する穿刺針、及び、穿刺針を備えるカテーテル組立体、を提供する。
【解決手段】本開示に係る穿刺針は、棒状の本体部2の先端部3に刃面4が形成された医療用の穿刺針であって、前記刃面は、前記本体部の中心軸線Oに対して傾斜して延在する第1刃面部5と、前記第1刃面部の裏側に形成され、前記第1刃面部と交差する稜線により針先を一端とする刃縁を形成する第2刃面部と、を備え、前記第1刃面部は、前記第1刃面部が線状に見える前記本体部の側面視において凹形状となる凹形面により構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部の先端部に刃面が形成された医療用の穿刺針であって、
前記刃面は、前記本体部の中心軸線に対して傾斜して延在する部分を少なくとも有する第1刃面部と、前記第1刃面部の裏側に形成され、前記第1刃面部と交差する稜線により針先を一端とする刃縁を形成する第2刃面部と、を備え、
前記刃縁は、直線状の先端側刃縁と、前記先端側刃縁の基端側に位置する直線状の基端側刃縁と、を備え、
前記第1刃面部側から見た前記本体部の正面視において、前記先端側刃縁と前記基端側刃縁とは凹形状を形成している穿刺針。
【請求項2】
前記第1刃面部が線状に見える前記本体部の側面視において、前記先端側刃縁と前記基端側刃縁とは鈍角を形成している、請求項1に記載の穿刺針。
【請求項3】
前記第1刃面部が線状に見える前記本体部の側面視において、前記先端側刃縁は前記本体部の前記中心軸線と平行である、請求項1又は2に記載の穿刺針。
【請求項4】
本体部の先端部に刃面が形成された医療用の穿刺針であって、
前記刃面は、前記本体部の中心軸線に対して傾斜して延在する部分を少なくとも有する第1刃面部と、前記第1刃面部の裏側に形成され、前記第1刃面部と交差する稜線により針先を一端とする刃縁を形成する第2刃面部と、を備え、
前記第1刃面部は、前記針先を含む平面状の先端側刃面部と、前記先端側刃面部よりも前記中心軸線に対して傾斜し、前記先端側刃面部の基端側に位置する平面状の基端側刃面部と、を備え、
前記第2刃面部は、前記先端側刃面部の裏側と、前記基端側刃面部の裏側と、の両方に跨って延在しており、
前記刃縁は、前記第1刃面部の前記先端側刃面部と前記第2刃面部とが互いに交差する稜線により形成される直線状の先端側刃縁と、前記第1刃面部の前記基端側刃面部と前記第2刃面部とが互いに交差する稜線により形成される直線状の基端側刃縁と、を備え、
前記第1刃面部側から見た前記本体部の正面視において、前記先端側刃縁と前記基端側刃縁とは凹形状を形成している穿刺針。
【請求項5】
前記第1刃面部が線状に見える前記本体部の側面視において、前記先端側刃面部は前記本体部の前記中心軸線と平行である、請求項4に記載の穿刺針。
【請求項6】
前記第1刃面部が線状に見える前記本体部の側面視において、前記先端側刃面部と前記基端側刃面部とは鈍角を形成している、請求項4又は5に記載の穿刺針。
【請求項7】
前記刃縁を第1刃縁とした場合に、
前記第1刃面部の裏側に形成され、前記第1刃面部と交差する稜線により前記針先を一端とする第2刃縁を形成する第3刃面部を備え、
前記第2刃面部及び前記第3刃面部は、前記第1刃面部の裏側で互いが交差する稜線により前記針先を一端とする第3刃縁を形成しており、
前記第3刃縁の基端側で、前記本体部の外周面の先端側には、移行部が形成されている、請求項4乃至6のいずれか1つに記載の穿刺針。
【請求項8】
本体部の先端部に刃面が形成された医療用の穿刺針であって、
前記刃面は、前記本体部の中心軸線に対して傾斜して延在する部分を少なくとも有する第1刃面部と、前記第1刃面部の裏側に形成され、前記第1刃面部と交差する稜線により針先を一端とする刃縁を形成する第2刃面部と、を備え、
前記第1刃面部は、前記針先を含む平面状の先端側刃面部と、前記先端側刃面部よりも前記中心軸線に対して傾斜し、前記先端側刃面部の基端側に位置する平面状の基端側刃面部と、を備え、
前記刃縁は、前記第1刃面部の前記先端側刃面部と前記第2刃面部とが互いに交差する稜線により形成される直線状の先端側刃縁と、前記第1刃面部の前記基端側刃面部と前記第2刃面部とが互いに交差する稜線により形成される直線状の基端側刃縁と、を備え、
前記第1刃面部側から見た前記本体部の正面視において、前記先端側刃縁と前記基端側刃縁とは凹形状を形成している、穿刺針。
【請求項9】
前記刃縁を第1刃縁とした場合に、
前記第1刃面部の裏側に形成され、前記第1刃面部と交差する稜線により前記針先を一端とする第2刃縁を形成する第3刃面部を備え、
前記第2刃面部及び前記第3刃面部は、前記第1刃面部の裏側で互いが交差する稜線により前記針先を一端とする第3刃縁を形成しており、
前記第3刃縁の基端側で、前記本体部の外周面の先端側には、湾曲状の移行部が形成されている、請求項8に記載の穿刺針。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1つに記載の穿刺針と、
前記穿刺針が挿通されているカテーテルと、
前記カテーテルを保持するカテーテルハブと、を備えるカテーテル組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は穿刺針及びカテーテル組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、採血針や輸液用の留置針などの医療用の穿刺針としては、穿刺針を人体へ穿刺する際の痛みを軽減するため、穿刺針の長手方向に対して角度の異なる複数の刃面を有する先端部を備えるものが知られている。
【0003】
特許文献1には、このような穿刺針としての注射針が開示されている。特許文献1の注射針は、円筒状の本体の尖端部を、何れか一方から斜めに切除してテーパー状の尖端部を形成した注射針であり、円筒状の本体の外周から接続し且つ本体の軸線方向(長手方向)に対して所定の角度で形成された第1の傾斜面と、この第1の傾斜面に接続し且つ本体の軸線方向に対する角度が第1の傾斜面よりも大きな角度で形成された第2の傾斜面と、この第2の傾斜面に接続し且つ刃先と接続し且つ本体の軸線方向に対する角度が当該第2の傾斜面よりも大きな角度で形成された第3の傾斜面と、を備えている。
【0004】
また、特許文献2においても穿刺針としての皮下注射針が開示されている。特許文献2の皮下注射針は多斜角面の形状の先端を有し、この多斜角面の形状の先端が、主斜角面と、一対の中間斜角面と、一対の先端斜角面と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-262615号公報(米国特許第6517523号公報)
【特許文献2】特開平10-57490号公報(米国特許第5752942号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2の注射針のように、長手方向に対する角度が異なる複数の面を接続した刃面を有する先端部とすることにより、面同士の境界に形成される稜線(ジャンクション)による刺通抵抗を低減し、注射針を人体へ穿刺する際の痛みを軽減することができる。
【0007】
ところで、血管等の脈管内に穿刺する穿刺針の場合、脈管内に刃面全体が入り込み易くなるように、穿刺針の中心軸線方向における刃面の長さ(以下、「刃面長」と記載する。)が短い穿刺針が使用されることが一般的である。このような刃面長が短い穿刺針では、中心軸線方向に対する角度が異なる複数の面を形成して刃面を多面化しても、側面視における刃面の刃先がなす角度(以下、「刃先角度」と記載する。)を小さくすることはできず、刃先角度が比較的大きくなり易い。そのため、刃先の刺通抵抗が大きくなり、刃先を刺通する際の痛みを軽減することが難しいという問題がある。また、刃先の刺通抵抗が大きいと、脈管に穿刺する際に、血管壁等の脈管壁を円滑に刺通することができず、脈管が刃先に押されて逃げてしまうこともある。
【0008】
そこで本開示は、刃面長に関わらず、刃先角度を小さくすることが可能な刃面形状を有する穿刺針、及び、穿刺針を備えるカテーテル組立体、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様としての穿刺針は、棒状の本体部の先端部に刃面が形成された医療用の穿刺針であって、前記刃面は、前記本体部の中心軸線に対して傾斜して延在する第1刃面部と、前記第1刃面部の裏側に形成され、前記第1刃面部と交差する稜線により針先を一端とする刃縁を形成する第2刃面部と、を備え、前記第1刃面部は、前記第1刃面部が線状に見える前記本体部の側面視において凹形状となる凹形面により構成されている。
【0010】
本発明の1つの実施形態として、前記第1刃面部を構成する前記凹形面は、凹形状の湾曲面を含む。
【0011】
本発明の1つの実施形態として、前記第1刃面部を構成する前記凹形面は、平面を含む。
【0012】
本発明の1つの実施形態として、前記刃縁は、前記第1刃面部側から見た前記本体部の正面視において凹形状を形成している。
【0013】
本発明の1つの実施形態として、前記第2刃面部は、前記刃面が形成されている刃面領域の前記中心軸線に平行な中心軸線方向における中間位置よりも基端側まで延在している。
【0014】
本発明の1つの実施形態として、前記側面視において、前記第1刃面部の前記針先の位置での接線は、前記本体部の前記中心軸線と略平行に延在する。
【0015】
本発明の第2の態様としての穿刺針は、棒状の本体部の先端部に刃面が形成された医療用の穿刺針であって、前記刃面は、前記本体部の中心軸線に対して傾斜して延在する第1刃面部と、前記第1刃面部の裏側に形成され、前記第1刃面部と交差する稜線により針先を一端とする刃縁を形成する第2刃面部と、を備え、前記第1刃面部が線状に見える前記本体部の側面視において、前記第1刃面部と前記本体部の中心軸線とが交わる点における、前記第1刃面部の接線は、前記第2刃面部と交差する。
【0016】
本発明の1つの実施形態として、前記第1刃面部を構成する前記凹形面は、凹形状の湾曲面を含む。
【0017】
本発明の1つの実施形態として、前記第1刃面部を構成する前記凹形面は、平面を含む。
【0018】
本発明の1つの実施形態として、前記刃縁は、前記第1刃面部側から見た前記本体部の正面視において凹形状を形成している。
【0019】
本発明の1つの実施形態として、前記第2刃面部は、前記刃面が形成されている刃面領域の前記中心軸線に平行な中心軸線方向における中間位置よりも基端側まで延在している。
【0020】
本発明の1つの実施形態として、前記側面視において、前記第1刃面部の前記針先の位置での接線は、前記本体部の前記中心軸線と略平行に延在する。
【0021】
本発明の1つの実施形態として、刃先角度が12度~42度であり、断面角度が50度~110度である。
【0022】
本発明の1つの実施形態として、刃先角度が15度~40度であり、断面角度が60度~85度である。
【0023】
本発明の第3の態様としての穿刺針は、中空部を有する本体部の先端部に刃面が形成された医療用の穿刺針であって、前記刃面は、前記本体部の中心軸線に対して傾斜して延在し、前記中空部の先端開口を区画する内縁を備える第1刃面部と、当該刃面の先端側に形成された第2刃面部及び第3刃面部と、を備え、前記第1刃面部は、前記第1刃面部が線状に見える前記本体部の側面視において凹形状となる凹形面により構成され、前記第1刃面部と前記第2刃面部とが交差する稜線により形成される第1刃縁と、前記第1刃面部と前記第3刃面部とが交差する稜線により形成される第2刃縁と有し、前記本体部を中心軸線方向で先端側から見た先端視において、前記第1刃縁は、前記本体部の径方向に凹形状に湾曲し、針先まで延びており、前記第1刃縁と前記第1刃面部の前記内縁との距離が、前記第1刃縁の基端から前記針先に向かって徐々に小さくなっており、前記先端視において、前記第2刃縁は、前記径方向に凹形状に湾曲し、前記針先まで延びており、前記第2刃縁と前記第1刃面部の前記内縁との距離が、前記第2刃縁の基端から前記針先に向かって徐々に小さくなっている。
【0024】
本発明の第4の態様としての穿刺針は、本体部の先端部に刃面が形成された医療用の穿刺針であって、前記刃面は、前記本体部の中心軸線に対して傾斜して延在する部分を少なくとも有する第1刃面部と、前記第1刃面部の裏側に形成され、前記第1刃面部と交差する稜線により針先を一端とする刃縁を形成する第2刃面部と、を備え、前記刃縁は、直線状の先端側刃縁と、前記先端側刃縁の基端側に位置する直線状の基端側刃縁と、を備え、前記第1刃面部側から見た前記本体部の正面視において、前記先端側刃縁と前記基端側刃縁とは凹形状を形成している。
【0025】
本発明の1つの実施形態として、前記第1刃面部が線状に見える前記本体部の側面視において、前記先端側刃縁と前記基端側刃縁とは鈍角を形成している。
【0026】
本発明の1つの実施形態として、前記第1刃面部が線状に見える前記本体部の側面視において、前記先端側刃縁は前記本体部の前記中心軸線と平行である。
【0027】
本発明の第5の態様としての穿刺針は、本体部の先端部に刃面が形成された医療用の穿刺針であって、前記刃面は、前記本体部の中心軸線に対して傾斜して延在する部分を少なくとも有する第1刃面部と、前記第1刃面部の裏側に形成され、前記第1刃面部と交差する稜線により針先を一端とする刃縁を形成する第2刃面部と、を備え、前記第1刃面部は、前記針先を含む平面状の先端側刃面部と、前記先端側刃面部よりも前記中心軸線に対して傾斜し、前記中心軸線前記先端側刃面部の基端側に位置する平面状の基端側刃面部と、を備え、前記第2刃面部は、前記先端側刃面部の裏側と、前記基端側刃面部の裏側と、の両方に跨って延在している。
【0028】
本発明の1つの実施形態として、前記刃縁は、前記第1刃面部の前記先端側刃面部と前記第2刃面部とが互いに交差する稜線により形成される直線状の先端側刃縁と、前記第1刃面部の前記基端側刃面部と前記第2刃面部とが互いに交差する稜線により形成される直線状の基端側刃縁と、を備え、前記第1刃面部側から見た前記本体部の正面視において、前記先端側刃縁と前記基端側刃縁とは凹形状を形成している。
【0029】
本発明の1つの実施形態として、前記第1刃面部が線状に見える前記本体部の側面視において、前記先端側刃面部は前記本体部の前記中心軸線と平行である。
【0030】
本発明の1つの実施形態として、前記第1刃面部が線状に見える前記本体部の側面視において、前記先端側刃面部と前記基端側刃面部とは鈍角を形成している。
【0031】
本発明の1つの実施形態として、前記刃縁を第1刃縁とした場合に、前記第1刃面部の裏側に形成され、前記第1刃面部と交差する稜線により前記針先を一端とする第2刃縁を形成する第3刃面部を備え、前記第2刃面部及び前記第3刃面部は、前記第1刃面部の裏側で互いが交差する稜線により前記針先を一端とする第3刃縁を形成しており、前記第3刃縁の基端側で、前記本体部の外周面の先端側には、移行部が形成されている。
【0032】
本発明の第6の態様としての穿刺針は、本体部の先端部に刃面が形成された医療用の穿刺針であって、前記刃面は、前記本体部の中心軸線に対して傾斜して延在する部分を少なくとも有する第1刃面部と、前記第1刃面部の裏側に形成され、前記第1刃面部と交差する稜線により針先を一端とする刃縁を形成する第2刃面部と、を備え、前記第1刃面部は、前記針先を含む平面状の先端側刃面部と、前記先端側刃面部よりも前記中心軸線に対して傾斜し、前記先端側刃面部の基端側に位置する平面状の基端側刃面部と、を備え、前記刃縁は、前記第1刃面部の前記先端側刃面部と前記第2刃面部とが互いに交差する稜線により形成される直線状の先端側刃縁と、前記第1刃面部の前記基端側刃面部と前記第2刃面部とが互いに交差する稜線により形成される直線状の基端側刃縁と、を備え、前記第1刃面部側から見た前記本体部の正面視において、前記先端側刃縁と前記基端側刃縁とは凹形状を形成している。
【0033】
本発明の1つの実施形態として、前記刃縁を第1刃縁とした場合に、前記第1刃面部の裏側に形成され、前記第1刃面部と交差する稜線により前記針先を一端とする第2刃縁を形成する第3刃面部を備え、前記第2刃面部及び前記第3刃面部は、前記第1刃面部の裏側で互いが交差する稜線により前記針先を一端とする第3刃縁を形成しており、前記第3刃縁の基端側で、前記本体部の外周面の先端側には、湾曲状の移行部が形成されている。
【0034】
本発明の第7の態様としてのカテーテル組立体は、上記穿刺針と、前記穿刺針が挿通されているカテーテルと、前記カテーテルを保持するカテーテルハブと、を備える。
【発明の効果】
【0035】
本開示によれば、刃面長に関わらず、刃先角度を小さくすることが可能な刃面形状を有する穿刺針、及び、穿刺針を備えるカテーテル組立体、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1(a)、(b)、(c)、(d)は、それぞれ一実施形態としての穿刺針の本体部の正面図、側面図、背面図、斜視図である。
図2図2(a)、(b)は、それぞれ図1(a)、(b)に示す穿刺針の本体部における先端部近傍の拡大図である。
図3図1に示す穿刺針の本体部を中心軸線方向で先端側から見た図である。
図4図4(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、それぞれ図2におけるI-I断面図、II-II断面図、III-III断面図、IV-IV断面図、V-V断面図である。
図5図2(b)に示す側面と反対側の第2刃面部側の側面図である。
図6図6(a)、(b)、(c)は、それぞれ一実施形態としての穿刺針の正面図、側面図、背面図である。
図7図6(b)におけるVI-VI断面図である。
図8】第1試験体~第5試験体それぞれについて、針先での刺通抵抗値の1回目~5回目の変化を示すグラフである。
図9】第1試験体~第5試験体それぞれについて、第1刃面部のアゴ部の基端での刺通抵抗値の1回目~5回目の変化を示すグラフである。
図10図1に示す第1刃面部の変形例としての第1刃面部を示す側面図である。
図11図11(a)、(b)、(c)は、それぞれ一実施形態としての穿刺針の正面図、側面図、背面図である。
図12図11(a)におけるVII-VII断面図である。
図13図11に示す穿刺針の第1刃面部の基端側刃面部が線状に見えるように本体部を先端側から見た図である。
図14図11(a)におけるVIII-VIII断面図である。
図15図11(a)におけるIX-IX断面図である。
図16図16(a)、図16(b)は、それぞれ一実施形態としてのカテーテル組立体の外観図、断面図である。
図17図17(a)、図17(b)は、それぞれ図16に示すカテーテル組立体のうちカテーテルを含む外管部材の外観図、断面図である。
図18図18(a)、図18(b)は、それぞれ図16に示すカテーテル組立体のうち、一実施形態としての穿刺針の外観図、断面図である。
図19図19(a)は、図18(a)の穿刺針の本体部の一部を拡大して示す図であり、図19(b)、図19(c)は、それぞれ図19(a)のX-X断面図、XI-XI断面図である。
図20図19に示す穿刺針の報知部の変形例を示す図である。
図21図21(a)、(b)、(c)は、それぞれ一実施形態としての穿刺針の本体部の正面図、側面図、背面図である。
図22図21に示す穿刺針の本体部を中心軸線方向で先端側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本開示に係る医療用の穿刺針及びカテーテル組立体の実施形態について、図1図22を参照して説明する。各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
【0038】
<第1実施形態>
図1は、一実施形態としての穿刺針1の本体部2を示す図である。具体的に、図1(a)は、穿刺針1の本体部2の正面図、図1(b)は、穿刺針1の本体部2の側面図、図1(c)は、穿刺針1の本体部2の背面図を示すものである。図1(d)は、穿刺針1の本体部2の斜視図である。また、図2(a)は、図1(a)に示す穿刺針1の本体部2の一部を拡大した拡大正面図である。図2(b)は、図1(b)に示す穿刺針1の本体部2の一部を拡大した拡大側面図である。
【0039】
図1(a)~図1(d)、図2(a)、図2(b)に示すように、穿刺針1は、棒状の本体部2を備えており、この本体部2の先端部3に刃面4が形成されている。具体的に、本実施形態の本体部2は管体であり、本体部2の中心軸線Oに平行な中心軸線方向Aにおいて連通する中空部10を区画している。
【0040】
より具体的に、本実施形態の本体部2は、中心軸線方向Aと直交する横断面の外形が略円形状となる管体である。
【0041】
図1(a)~図1(d)、図2(a)、図2(b)に示すように、刃面4は複数の刃面部により構成されている。具体的に、本実施形態の刃面4は、正面刃面としての第1刃面部5と、背面刃面としての第2刃面部6及び第3刃面部7と、を備えている。換言すれば、本実施形態の穿刺針1の本体部2は、バックカット加工が施された刃面4を備えている。
【0042】
第1刃面部5は、本体部2の中心軸線Oに対して傾斜し、針先8まで延在している。「針先」とは、中心軸線方向Aにおける穿刺針1の先端、すなわち本体部2の先端を意味すると共に、刃面4の先端である刃先を意味する。したがって、以下、「先端側」とは、穿刺針1の中心軸線方向Aにおける針先側を意味し、「基端側」とは、穿刺針1の中心軸線方向Aにおける針先側とは反対側を意味する。
【0043】
第2刃面部6及び第3刃面部7は、第1刃面部5の裏側に形成されている。第2刃面部6は、第1刃面部5と交差する稜線により針先8を一端とする刃縁23を形成している。第3刃面部7は、第1刃面部5と交差する稜線により針先8を一端とする刃縁24を形成している。第2刃面部6及び第3刃面部7は、第1刃面部5の裏側で、互いが交差する稜線により針先8を一端とする刃縁25を形成している。
【0044】
以下、説明の便宜上、第1刃面部5及び第2刃面部6が交差する稜線により形成される刃縁23を「第1刃縁23」と記載する。また、説明の便宜上、第1刃面部5及び第3刃面部7が交差する稜線により形成される刃縁24を「第2刃縁24」と記載する。更に、説明の便宜上、第2刃面部6及び第3刃面部7が交差する稜線により形成される刃縁25を「第3刃縁25」と記載する。穿刺針1を生体表面から穿刺する際には、第1刃縁23、第2刃縁24及び第3刃縁25が皮膚を切り裂く切れ刃として働き、刺通抵抗を低減する。
【0045】
更に、第2刃面部6及び本体部2の外周面が交差する稜線により形成される刃縁を「第4刃縁26」と記載する。また、第3刃面部7及び本体部2の外周面が交差する稜線により形成される刃縁を「第5刃縁27」と記載する。
【0046】
本実施形態の本体部2の材料としては、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金等の金属材料を使用することができる。
【0047】
また、本実施形態の本体部2は、中心軸線方向Aにおいて、内周面の内径及び外周面の外径が一様な管体であり、中心軸線方向Aにおける基端側の端部は、針基等を介して例えばシリンジなどの医療用器具に接続される。したがって、穿刺針1は、本体部2に接続された針基等を備える構成であってもよい。
【0048】
更に、本実施形態の本体部2では、内周面が中空部10を区画し、内周面の内径及び外周面の外径が中心軸線方向Aにおいて一様な構成であるが、この構成に限られるものではない。例えば、本体部2の内周面の内径及び外周面の外径が、中心軸線方向Aにおいて、先端側に向かって漸減する構成としてもよい。また、例えば、本体部2の外径を、中心軸線方向Aにおいて先端側に向かうにつれて漸減するテーパー形状とし、本体部2の内径を、中心軸線方向Aにおいて一様な構成とすることもできる。更に、中心軸線方向Aにおける本体部2の一部の領域に、中心軸線方向Aにおいて先端側に向かうにつれて内径が漸減する、又は漸増する部位を設けるなど、本体部2の内径及び外径は、穿刺針1の用途等に応じて、各種の構成を採用することが可能である。
【0049】
本実施形態では、穿刺針1の本体部2の外径が中心軸線方向Aにおいて一様な構成であり、中心軸線O全体を含む断面で見た場合に、本体部2の外周面は中心軸線方向Aに延在している。従って、第1刃面部5が、中心軸線方向Aに対して傾斜していれば、第1刃面部5の傾斜角度は、本体部2の外周面の傾斜角度よりも大きくなる。但し、穿刺針の本体部を、その外径が中心軸線方向Aにおいて先端側に向かうにつれて漸減又は漸増する構成とする場合には、第1刃面部は、中心軸線方向Aに対して傾斜するのみならず、中心軸線O全体を含む断面での本体部2の外周面に対しても傾斜するように構成する。
【0050】
以下、本体部2の刃面4の各部について詳細について説明する。
【0051】
[第1刃面部5]
第1刃面部5は、針先8を通り中心軸線Oを含む仮想平面に対して対称な形状を有している。また、第1刃面部5は、第1刃面部5の位置での中心軸線方向Aと直交する任意の断面において、上記仮想平面に対して略直交して直線状に延在する。この詳細は、図4(a)~図4(e)を参照して後述する。換言すれば、第1刃面部5は、上記仮想平面と直交する方向からの視点、すなわち側面視(図1(b)、図2(b)参照)で、線状に見える。以下、説明の便宜上、針先8を通り中心軸線Oを含む上記仮想平面を、単に「中心平面X」と記載する。また、第1刃面部5が線状に見える本体部2の側面視(図1(b)、図2(b)参照)を、単に「側面視」と記載する場合がある。
【0052】
第1刃面部5は、側面視(図1(b)、図2(b)参照)において凹形状となる凹形面により構成されている。「凹形面」とは、凹形状の1つの湾曲面に限られず、連続する複数の平面により形成された凹形状の面など、第1刃面部5が線状に見える本体部2の側面視(図1(b)、図2(b)参照)において凹形状となる面であれば特に限定されない。
【0053】
第1刃面部5を上述の凹形面により構成することにより、側面視(図2(b)参照)において第1刃面部5の基端と針先8とを通過する直線L1で表される一平面で構成される第1刃面部とする場合と比較して、側面視(図2(b)参照)において、第1刃面部5の針先8の位置での接線L2が中心軸線方向Aに対してなす角度を、小さくすることができる。そのため、第1刃面部5を上述の凹形面により構成することにより、刃先角度αの小さい穿刺針1が実現し易くなる。ここで言う「刃先角度α」とは、側面視(図2(b)参照)における針先8での角度を意味する。より具体的に、本実施形態の刃先角度αは、側面視(図2(b)参照)において、第1刃面部5の針先8の位置での接線L2と、第1刃面部5の裏側に形成されている第3刃縁25と、が針先8にて交差することで形成される角度を意味している。
【0054】
換言すれば、穿刺針1では、刃面長Hを小さくするために、第1刃面部5の中心軸線Oに対する傾斜角度を大きくしても、それに伴って刃先角度αが大きくならない構成が実現できる。つまり、穿刺針1では、刃面長H及び刃先角度αを共に小さくする構成が実現し易い。「刃面長H」とは、中心軸線方向Aにおける刃面の長さを意味する(図2(a)参照)。
【0055】
したがって、例えば、中心軸線方向Aにおける刃面長Hを、筋肉注射等に主に利用される所謂「レギュラーベベル」(第1刃面部を平面で構成した場合の中心軸線方向Aに対する第1刃面部の傾斜角度が12度となる穿刺針)の刃面長よりも短くし、静脈注射等に主に利用される所謂「ショートベベル」(第1刃面部を平面で構成した場合の中心軸線方向Aに対する第1刃面部の傾斜角度が18度となる刃穿刺針)の刃面長と同程度の刃面長としつつ、刃先角度αを「レギュラーベベル」と同程度又はそれ以下の角度にすることができる。つまり、静脈等の脈管の突き抜けが起こり難い短い刃面長Hを有しつつ、刃面4での刺通抵抗が低減でき脈管の確保が容易な穿刺針1を実現することができる。また、針先8近傍での刺通抵抗が低減できることから、刺通抵抗の変化量を小さくでき、穿刺する際に医療従事者が穿刺方向に加える力の変化量をも小さくすることができる。そのため、穿刺する際に、医療従事者が操作し易い穿刺針1を実現することができる。
【0056】
また、側面視(図2(b)参照)において、第1刃面部5の基端と針先8とを通過する直線L1の中心軸線Oに対する角度は、13度以上、かつ、20度以下の範囲としつつ、刃先角度αを、15度~27度とすることが好ましい。刃先角度αが15度未満の場合には、刃先が薄くなり過ぎるため、製造工程におけるダメージ等により所定の性能を満足できなくなるおそれがあり、製造が難しくなる。また、製造できたとしても強度が不足するおそれがある。27度を超える場合には、所謂ショートベベルの刃先角度αと同等になるため、穿刺時の刺通抵抗が大きくなる。
【0057】
本実施形態では、側面視(図2(b)等参照)において、第1刃面部5の針先8の位置での接線L2は、本体部2の中心軸線Oと略平行に延在する。より具体的に、第1刃面部5の針先8の位置での接線L2は、側面視(図2(b)等参照)において、本体部2の中心軸線Oと平行(中心軸線Oとの角度0度)な構成に限らず、本体部2の中心軸線Oと所定角度(例えば10度)以下で角度をなす構成であってもよい。但し、上述した刃先角度αを小さくする観点では、側面視(図2(b)等参照)において、第1刃面部5の針先8の位置での接線L2を、本体部2の中心軸線Oと平行にすることが好ましい。
【0058】
換言すれば、側面視(図2(b)等参照)において、第1刃面部5の針先8の位置での接線L2は、本体部2の中心軸線Oと略平行にしつつ、刃先が薄くなり過ぎることを抑制するため、刃先角度αを、所定角度(例えば15度)以上とすることが好ましい。つまり、側面視(図2(b)等参照)において、第3刃縁25と中心軸線Oとがなす角度δ(本実施形態では刃先角度αに等しい)を、第1刃面部5の針先8の位置での接線L2と中心軸線Oとがなす角度(本実施形態では0度のため不図示)よりも大きくしている。このようにすることで、刃先角度αが小さく、かつ、所定の強度を満足する刃先を実現することができる。
【0059】
また、側面視(図2(b)等参照)において、第1刃面部5と本体部2の中心軸線Oとが交わる点における、第1刃面部5の接線L3は、第2刃面部6及び第3刃面部7と交差する。図2(b)では、第3刃面部7側の側面視であるため、接線L3は、第3刃面部7と交差している。これに対して、図5は、図2(b)に示す側面と反対側の第2刃面部6側の側面図である。図5に示す側面視では、接線L3は、第2刃面部6と交差している。このように、図2(b)、図5に示すいずれの側面視においても、接線L3は、第2刃面部6及び第3刃面部7の一方と交差している。
【0060】
図3は、本体部2を中心軸線方向Aで先端側から見た図である。図3に示す先端視において、本実施形態の針先8は、本体部2の外周面よりも径方向Bの内側に位置している。針先8は、先端視(図3参照)において、本体部2の外周面よりも、本体部2の周壁の肉厚Nの1/3の距離以上、径方向Bの内側に位置していることが好ましく、本体部2の周壁の肉厚Nの1/2の距離以上、径方向Bの内側に位置していることがより好ましく、本体部2の周壁の肉厚Nの2/3の距離以上、径方向Bの内側に位置していることが特に好ましい。このような構成とすることで、刃先角度αが小さく、かつ、所定の強度を満足する刃先を実現し易くなる。
【0061】
図3に示す先端視において、第1刃縁23は、針先8から径方向Bに凹形状に湾曲している。第2刃縁24は、針先8から径方向Bに凹形状に湾曲している。第1刃縁23はその全長が湾曲して針先8から第1刃縁の基端Pまで延びている。第2刃縁24はその全長が湾曲して針先8から第2刃縁の基端Qまで延びている。第1刃縁23及び第2刃縁24は、中心平面Xを挟んで対称に湾曲している。第1刃縁23及び第2刃縁24の湾曲は針先8に近づくにつれて曲率半径が小さくなっている。基端P又は基端Qにおける第1刃縁23又は第2刃縁24の湾曲の曲率半径は、針先8から基端P又は基端Qの範囲において最も大きい。針先8における第1刃縁23又は第2刃縁24の湾曲の曲率半径は、針先8から基端P又は基端Qの範囲において最も小さい。
【0062】
図3に示す先端視において、第1刃縁23は、第1刃縁23の基端Pから針先8の方向に向かうにつれて第1刃面部5の内縁13との距離が徐々に小さくなっている。図3に示す先端視において、第2刃縁24は、第2刃縁の基端Qから針先8に方向に向かうにつれて第1刃面部5の内縁13との距離が徐々に小さくなっている。図3に示す先端視において、第1刃縁23及び第2刃縁24それぞれと、第1刃面部5の内縁13と、の距離は針先8において最小となっている。この距離は、先端視(図3参照)での第1刃縁23及び第2刃縁24それぞれにおける任意の点Y1から、第1刃面部5の内縁13までの最短距離を意味する。この最短距離となる内縁13上の点Y2は、この点Y2での内縁13の接線L4と、第1刃縁23及び第2刃縁24それぞれにおける任意の点Y1から内縁13上の点Y2に引いた直線と、が直交する位置に定められる。
【0063】
図3に示す先端視において、第1刃縁23は、針先8から第1刃縁23の基端Pの間において第1刃面部5の内縁13と交差及び接しない。図3に示す先端視において、第2刃縁24は、針先8から第2刃縁24の基端Qの間において第1刃面部5の内縁13と交差及び接しない。
【0064】
図3に示す先端視において、第1刃縁23の基端Pから第4刃縁26が湾曲して第3刃縁25の一端まで達している。同様に、図3に示す先端視において、第2刃縁24の基端Qから第5刃縁27が湾曲して第3刃縁25の一端まで達している。図3に示す先端視において、第1刃縁23は第4刃縁26よりもなだらかに湾曲している。同様に、図3に示す先端視において、第2刃縁24は第5刃縁27よりもなだらかに湾曲している。
【0065】
第1刃面部5を構成する凹形面は、凹形状の湾曲面を含む構成であっても、平面を含む構成であってもよい。すなわち、第1刃面部5を構成する凹形面は、例えば、複数の平面を連続させることで形成された凹形状の面であってもよい(図10参照)。また、第1刃面部5を構成する凹形面は、凹形状の湾曲面と、平面と、の両方を含み、凹形状に形成された面であってもよい。但し、第1刃面部5を構成する凹形面は、凹形状の湾曲面を含むことが好ましく、本実施形態のように、凹形状の湾曲面により構成されていることが、より好ましい。本実施形態のように、第1刃面部5を凹形状の湾曲面により構成することで、第1刃面部5内において面同士が交差する稜線で構成される角部が形成されない。そのため、穿刺時の角部による刺通抵抗の増大を防ぐことができる。
【0066】
本実施形態の正面刃面は、第1刃面部5のみで構成されており、第1刃面部5の基端が本体部2の外周面に連続しているが、この構成に限らず、第1刃面部5の基端側に連続する第4刃面部が形成されていてもよい。第4刃面部は、側面視(図1(b)、図2(b)参照)において第1刃面部5と同じように線状に延在する。第4刃面部は、側面視(図1(b)、図2(b)参照)において、中心軸線方向Aに対して傾斜する1つの平面で構成されていてもよく、中心軸線方向Aに対して傾斜する、連続する複数の平面で構成されていてもよい。また、第4刃面部は、側面視(図1(b)、図2(b)参照)において、中心軸線方向Aに対して傾斜する、凸形状の湾曲面であってもよい。但し、第4刃面部は、第1刃面部5の基端と滑らかに連続する凸形状の湾曲面であることが好ましい。このようにすれば、第4刃面部により、第1刃面部5の基端と、本体部2の外周面と、の間を滑らかに連ねることができ、第1刃面部5の基端と本体部2の外周面とが連続する構成と比較して、第1刃面部5の基端と本体部2の外周面との間の位置での穿刺時の刺通抵抗を低減することができる。
【0067】
但し、第4刃面部を設ける場合であっても、中空部10の先端側の一端である先端開口11の基端側は、第1刃面部5により区画されている構成とする。このようにすることで、穿刺時に、先端開口11の基端が皮膚を通過する際に、皮膚を生体内に巻き込むことを抑制することができる。
【0068】
本実施形態の第1刃面部5の内縁13は、中空部10の先端側の一端である先端開口11を区画している。本実施形態において、第1刃面部5の内縁13は、中心軸線方向Aにおいて先端から基端に至るまで、本体部2の先端側から基端側に向かって延在している。より具体的に、本実施形態において、第1刃面部5の内縁13が中心平面Xと交わる2点のうち、本体部2の先端側の点が第1刃面部5の内縁13の先端(図2(a)における点「F」参照)であり、本体部2の基端側の点が第1刃面部5の内縁13の基端(図2(a)における点「R」参照)である。第1刃面部5の内縁13は、先端(図2(a)における点「F」参照)から基端(図2(a)における点「R」参照)に至るまで、常に、本体部2の先端側から基端側に向かって延びており、基端側から先端側に向かうような部分は存在しない。先端開口11は、正面視(図2(a)参照)において、涙滴状である。
【0069】
また、本実施形態の第1刃面部5の外縁14は、針先8を一端とする第1刃縁23及び第2刃縁24と、基端側外縁部15と、により構成されている。第1刃縁23及び第2刃縁24の詳細については後述する。また、第1刃面部5の外縁14は、刃面4が形成されている刃面領域Tを画定している。したがって、刃面4の外縁の中心軸線方向Aにおける最大長さが、上述の刃面長H(図2(a)参照)となる。
【0070】
[第2刃面部6及び第3刃面部7]
第2刃面部6及び第3刃面部7それぞれは、平面により構成されている。第2刃面部6及び第3刃面部7は、中心平面Xに対して対称な形状を有している。第2刃面部6と第3刃面部7とは、中心軸線方向Aの針先8側において、互いが交差する稜線により針先8を一端とする上述の第3刃縁25を形成している。本実施形態の第3刃縁25は直線状であり、この第3刃縁25もまた、中心平面X上に延在している。
【0071】
本実施形態の第2刃面部6及び第3刃面部7は、上述したように、中心平面Xに対して対称な形状を有しているが、中心平面Xに対して非対称な形状を有する構成としてもよい。但し、本実施形態のように、中心平面Xに対して対称な形状を有する第2刃面部6及び第3刃面部7とすれば、第1刃縁23及び第2刃縁24についても中心平面Xに対して対称な形状となる。そのため、穿刺時において、中心平面Xを挟む両側で刺通抵抗のばらつきが生じ難く、穿刺針1の直進性を、より高めることができる。
【0072】
第2刃面部6及び第3刃面部7の、中心軸線方向Aに直交する断面での中心平面Xに対する角度については、図4(a)~図4(e)を参照して後述する。
【0073】
また、本実施形態の第2刃面部6は、刃面領域Tの中心軸線方向Aにおける中間位置Mよりも基端側まで延在している。このような構成とすることで、第2刃面部6の面積を広く確保することができるため、穿刺時の直進性を向上させることができる。また、第1刃面部5と第2刃面部6とが交差する稜線により形成される後述の第1刃縁23の長さを、比較的長く確保することができる。
【0074】
更に、本実施形態の第3刃面部7は、刃面領域Tの中心軸線方向Aにおける中間位置Mよりも基端側まで延在している。このような構成とすることで、第3刃面部7の面積を広く確保することができるため、穿刺時の直進性を向上させることができる。また、第1刃面部5と第3刃面部7とが交差する稜線により形成される後述の第2刃縁24の長さを、比較的長く確保することができる。加えて、本体部2の正面視(図1(a)、図2(a)参照)において、針先8の位置での先端角度βを小さくすることができる。
【0075】
このように、第1刃縁23及び第2刃縁24の両方を長く構成することで、第1刃縁23及び第2刃縁24の長さの総和、すなわち、第1刃面部5の外縁14上における、第1刃縁23の基端P(図2(a)参照)から針先8を通って第2刃縁24の基端Q(図2(a)参照)に至る長さを、より長く確保することができる。その結果、穿刺針1の穿刺時に第1刃縁23及び第2刃縁24により皮膚を切り裂くことが可能な切れ刃の幅W(図2(a)参照)を大きく確保できる。切れ刃の幅Wを大きく確保することで、切れ刃が通過した後に皮膚の切り口が強引に押し広げられることを抑制することができる。そのため、穿刺時に患者が感じる痛みを軽減することが可能となる。したがって、刺通抵抗の観点では、切れ刃の幅Wを、本体部2の外径に近づけることが好ましい。
【0076】
但し、第2刃面部6及び第3刃面部7を、刃面領域Tの中心軸線方向Aにおける中間位置Mで、又は、中間位置Mよりも先端側で、終端させる構成としてもよい。このような構成とすることで、第2刃面部6及び第3刃面部7が形成されている位置での針の肉厚が過度に薄くなることを抑制でき、針の強度低下を抑制可能である。更に、肉厚が過度に薄くなることを抑制できるため、製造過程において不良品が発生し難い。
【0077】
また、本実施形態の第1刃縁23は、第1刃面部5側から見た本体部2の正面視(図1(a)、図2(a)参照)において、凹形状を形成している。より具体的に、本実施形態の第1刃縁23は、本体部2の正面視(図1(a)、図2(a)参照)において、凹形曲線を形成している。第1刃縁23をこのような構成とすれば、図2(a)に示すように、本体部2の正面視における針先8の位置での先端角度βを小さくすることができる。これにより、針先8近傍での穿刺時の刺通抵抗を、より小さくすることができる。
【0078】
本実施形態では、第1刃縁23のみならず、第2刃縁24についても、本体部2の正面視(図1(a)、図2(a)参照)において、凹形状を形成している。したがって、図2(a)に示すように、本体部2の正面視における針先8の位置での先端角度βを、第1刃縁23のみが凹形状である場合と比較して、より小さくすることができる。これにより、針先8近傍での穿刺時の刺通抵抗を、より一層小さくすることができる。
【0079】
本実施形態の第1刃縁23及び第2刃縁24は、本体部2の正面視(図1(a)、図2(a)参照)において、凹形曲線を形成しているが、この構成に限らず、複数の直線を連続させることで凹形状が形成されていてもよい。但し、本実施形態のように、本体部2の正面視(図1(a)、図2(a)参照)において凹形曲線を形成する第1刃縁23及び第2刃縁24とすれば、直線同士の繋ぎ目にできる角部が形成されない。そのため、この角部により穿刺時の刺通抵抗が増大することを抑制することができる。
【0080】
次に、中心軸線方向Aと直交する断面での、第1刃面部5、第2刃面部6及び第3刃面部7の中心平面Xに対する角度について説明する。図4(a)、図4(b)、図4(c)、図4(d)、図4(e)は、それぞれ図2におけるI-I断面図、II-II断面図、III-III断面図、IV-IV断面図、V-V断面図である。本実施形態の本体部2は、中心平面Xを挟んで対称の構造を有している。
【0081】
図4(a)は、図2のI-I断面、すなわち、中心軸線方向Aにおいて第3刃縁25が形成されている位置での、中心軸線方向Aと直交する断面である。図4(a)に示すように、図2のI-I断面での第1刃面部5の中心平面Xに対する角度θ1aは90度である。換言すれば、図2のI-I断面において、第1刃面部5は、中心平面Xと直交する方向に直線状に延在している。
【0082】
図4(a)に示すように、第2刃面部6は、図2のI-I断面において、中心平面Xに対して鋭角の角度θ2aで傾斜して延在している。更に、図4(a)において、第3刃面部7についても、中心平面Xに対する鋭角の角度θ3aで傾斜して延在している。上述したように、第2刃面部6及び第3刃面部7は、中心平面Xに対して対称な構成である。したがって、図4(a)において、第2刃面部6の角度θ2aと、第3刃面部7の角度θ3aと、は等しい。
【0083】
図4(a)において、第2刃面部6と第3刃面部7とがなす断面角度Ωaは、中心平面Xに対する第2刃面部6の角度θ2aと、中心平面Xに対する第3刃面部7の角度θ3aと、の和に等しい。
【0084】
図4(b)は、図2のII-II断面、すなわち、中心軸線方向Aにおいて第3刃縁25が形成されていない位置で、かつ、中心軸線方向Aにおいて第2刃面部6及び第3刃面部7が形成されている位置での、中心軸線方向Aと直交する断面である。図4(b)に示すように、図2のII-II断面での第1刃面部5の中心平面Xに対する角度θ1bは90度である。換言すれば、図2のII-II断面において、第1刃面部5は、中心平面Xと直交する方向に直線状に延在している。
【0085】
図4(b)に示すように、第2刃面部6は、図2のII-II断面において、中心平面Xに対して鋭角の角度θ2bで傾斜して延在している。この角度θ2bは、図4(a)の角度θ2aと等しい。更に、図4(b)において、第3刃面部7についても、中心平面Xに対する鋭角の角度θ3bで傾斜して延在している。この角度θ3bは、図4(a)の角度θ3aと等しい。したがって、図4(b)において、第2刃面部6の角度θ2bと、第3刃面部7の角度θ3bと、は等しい。
【0086】
図4(b)において、第2刃面部6と第3刃面部7とがなす断面角度Ωbは、中心平面Xに対する第2刃面部6の角度θ2bと、中心平面Xに対する第3刃面部7の角度θ3bと、の和に等しい。したがって、図4(a)における断面角度Ωaと、図4(b)における断面角度Ωbと、は等しい。
【0087】
図4(c)は、図2のIII-III断面であり、図2のII-II断面よりも本体部2の基端側で、中心軸線方向Aにおいて第3刃縁25が形成されていない位置、かつ、中心軸線方向Aにおいて第2刃面部6及び第3刃面部7が形成されている位置、での中心軸線方向Aと直交する断面である。図4(c)に示すように、図2のIII-III断面での第1刃面部5の中心平面Xに対する角度θ1cは90度である。換言すれば、図2のIII-III断面において、第1刃面部5は、中心平面Xと直交する方向に直線状に延在している。
【0088】
図4(c)に示すように、第2刃面部6は、図2のIII-III断面において、中心平面Xに対して鋭角の角度θ2cで傾斜して延在している。この角度θ2cは、図4(a)、図4(b)の角度θ2a及び角度θ2bそれぞれと等しい。更に、図4(c)において、第3刃面部7についても、中心平面Xに対する鋭角の角度θ3cで傾斜して延在している。この角度θ3cは、図4(a)、図4(b)の角度θ3a及び角度θ3bそれぞれと等しい。したがって、図4(c)において、第2刃面部6の角度θ2cと、第3刃面部7の角度θ3cと、は等しい。
【0089】
図4(c)において、第2刃面部6と第3刃面部7とがなす断面角度Ωcは、中心平面Xに対する第2刃面部6の角度θ2cと、中心平面Xに対する第3刃面部7の角度θ3cと、の和に等しい。したがって、図4(a)、図4(b)における断面角度Ωa及び断面角度Ωbそれぞれと、図4(c)における断面角度Ωcと、は等しい。
【0090】
図4(d)は、図2のIV-IV断面、すなわち、中心軸線方向Aにおいて第2刃面部6及び第3刃面部7が形成されていない位置、かつ、第1刃面部5が形成されている位置、での中心軸線方向Aと直交する断面である。図4(d)に示すように、図2のIV-IV断面での第1刃面部5の中心平面Xに対する角度θ1dは90度である。換言すれば、図2のIV-IV断面において、第1刃面部5は、中心平面Xと直交する方向に直線状に延在している。
【0091】
図4(e)は、図2のV-V断面、すなわち、図2のIV-IV断面よりも本体部2の基端側で、第1刃面部5が形成されている位置、での中心軸線方向Aと直交する断面である。図4(e)に示すように、図2のV-V断面での第1刃面部5の中心平面Xに対する角度θ1eは90度である。換言すれば、図2のV-V断面において、第1刃面部5は、中心平面Xと直交する方向に直線状に延在している。
【0092】
以上のように、第1刃面部5は、第1刃面部5を含む、中心軸線方向Aに直交する任意の断面において、中心平面Xに対して直交して延在している(図4(a)~図4(e)の角度θ1a~角度θ1e参照)。換言すれば、中心軸線方向Aに直交する断面での第1刃面部5の角度θ1は、中心軸線方向Aの位置によらず、一定である。
【0093】
第2刃面部6は、第2刃面部6を含む、中心軸線方向Aに直交する任意の断面において、中心平面Xに対して、等しい角度で傾斜している(図4(a)~図4(c)の角度θ2a~角度θ2c参照)。換言すれば、中心軸線方向Aに直交する断面での第2刃面部6の角度θ2は、中心軸線方向Aの位置によらず、一定である。
【0094】
第3刃面部7は、第3刃面部7を含む、中心軸線方向Aに直交する任意の断面において、中心平面Xに対して、等しい角度で傾斜している(図4(a)~図4(c)の角度θ3a~角度θ3c参照)。換言すれば、中心軸線方向Aに直交する断面での第3刃面部7の角度θ3は、中心軸線方向Aの位置によらず、一定である。
【0095】
したがって、断面角度Ωについても、中心軸線方向Aの位置によらず、一定である(図4(a)~図4(c)の断面角度Ωa~断面角度Ωc参照)。
【0096】
また、中心軸線方向Aに直交する断面での第2刃面部6の角度θ2は、中心軸線方向Aの位置によらず、中心軸線方向Aに直交する断面での第3刃面部7の角度θ3と等しい。
【0097】
<第2実施形態>
次に、別の実施形態の穿刺針を説明する。図6(a)、図6(b)、図6(c)および図7は、第2実施形態としての穿刺針101を示す図である。具体的に、図6(a)、図6(b)、図6(c)それぞれは、穿刺針101の正面図、側面図、背面図である。図7は、図6(b)におけるVI-VI断面図であり、穿刺針101の第3刃縁125の基端の位置における、中心軸線Oと直交する断面を示す断面図である。穿刺針101の刃面104は、第1刃面部105、第2刃面部106及び第3刃面部107を備える。
【0098】
図6及び図7に示すように、穿刺針101は、中空部110を有する本体部102を備えており、この本体部102の先端部103に刃面104が形成されている。第1刃面部105は、針先108を通り中心軸線Oを含む仮想平面である中心平面Xに対して対称な形状を有している。第1刃面部105の内縁113は、中空部110の先端開口111を区画している。
【0099】
第1刃面部105は、第1刃面部105の位置での中心軸線方向Aと直交する任意の断面において、中心平面Xに対して略直交して直線状に延在する。換言すれば、第1刃面部105は、中心平面Xと直交する方向からの視点、すなわち側面視(図6(b)参照)で、線状に見える。
【0100】
第1刃面部105は、側面視(図6(b)参照)において凹形状となる凹形面により構成されている。「凹形面」とは、凹形状の1つの湾曲面に限られず、連続する複数の平面により形成された凹形状の面など、第1刃面部105が線状に見える本体部102の側面視(図6(b)参照)において凹形状となる面であれば特に限定されない。図6(a)及び(b)に示されるように、第1刃面部105の凹形面は、第1刃面部105のアゴ部の基端Sを始端として、針先108よりも基端側に位置する終端Uまで延びるなだらかな曲面を含む。第1刃面部105の凹形面の曲面は、図6(b)における第1刃面部105の上方に位置する点(図示せず)を中心とした半径からなる曲率を有している。第1刃面部105の内縁113は、その基端Rから中心平面Xに対して対称にほぼ楕円状に延びて内縁113の先端Fに達している。第1刃面部105の凹形面の曲面の終端Uより先端側は、中心軸線Oと平行な平面として針先108まで延びている。
【0101】
図6(a)に示すように、第1刃面部105側から見た正面視において、針先108から第1刃面部105の凹形面の曲面の終端Uまでの長さD1は、終端Uから内縁113の先端Fの長さD2よりも短い。針先108から内縁113の先端Fの長さD3は、第1刃面部105の内縁113の基端Rから第1刃面部105のアゴ部の基端Sまでの長さD4よりも長い。
【0102】
図6(b)に示すように、側面視において、第1刃面部105と本体部102の中心軸線Oとが交わる点における第1刃面部105の接線L3は、第2刃面部106及び第3刃面部107と交差する。図6(b)は、第3刃面部107側の側面視であり、第1刃面部105と本体部102の中心軸線Oとが交わる点における第1刃面部105の接線L3は、第3刃面部107と交差しているが、第2刃面部106側の側面視においても、接線L3は、第2刃面部106と交差する。側面視において、第1刃面部105と反対側の面は、本体部102の外周面により構成され、中心軸線Oに平行な直線状であり、第3刃縁125の基端まで延びている。
【0103】
図6(b)の側面視において、第1刃面部105を構成する凹形面は、中心軸線方向Aにおいて第2刃面部106及び第3刃面部107と重なっている。第2刃面部106及び第3刃面部107の基端は、第1刃面部105の凹形面の先端から基端の間に位置している。具体的には、第1刃面部105の凹形面はアゴ部の基端Sから針先108にかけて構成されている。第2刃面部106及び第3刃面部107の基端は第1刃面部105のうち曲面の終端Uよりも基端側に位置している。第2刃面部106及び第3刃面部107の基端はアゴ部の基端Sよりも先端側に位置している。図6(b)では、第1刃面部105と第3刃面部107との中心軸線方向Aでの重なりを示しているが、図6(b)と反対側の第2刃面部106側の側面視での、第1刃面部105と第2刃面部106との中心軸線方向Aでの重なり関係も、図6(b)に示す第1刃面部105と第3刃面部107と同様である。
【0104】
図6(c)に示すように、刃面104の先端側には第2刃面部106と第3刃面部107が形成されている。第2刃面部106と第3刃面部107は、第1刃面部105の裏側に形成されている。第2刃面部106は、第1刃面部105と交差する稜線により針先108を一端とする第1刃縁123を形成している。第3刃面部107は、第1刃面部105と交差する稜線により針先108を一端とする第2刃縁124を形成している。第2刃面部106及び第3刃面部107は、互いが交差する稜線により針先108を一端とする第3刃縁125を形成している。第2刃面部106と、本体部102の外周面と、は互いが交差する稜線により第4刃縁126を形成している。第3刃面部107と、本体部102の外周面と、は互いが交差する稜線により第5刃縁127を形成している。
【0105】
図6(c)に示す背面視において、第1刃縁123は、第2刃面部106の径方向Bの外側に形成されている。図6(c)に示す背面視において、第4刃縁126は、第2刃面部106の径方向Bの内側に形成されている。図6(c)に示す背面視において、第1刃縁123と第4刃縁126との間は、第1刃縁123に沿った方向において幅V1で一定な部分を有する。
【0106】
図6(c)に示す背面視において、第2刃縁124は、第3刃面部107の径方向Bの外側に形成されている。図6(c)に示す背面視において、第5刃縁127は、第3刃面部107の径方向Bの内側に形成されている。図6(c)に示す背面視において、第2刃縁124と第5刃縁127との間の幅V2は第2刃縁124に沿った方向において、第2刃縁124に沿った方向において幅V2で一定な部分を有する。
【0107】
図6(c)に示すように、背面視における第3刃縁125の中心軸線方向Aの長さD5は、上述した長さD3よりも短い。背面視における長さD5は、上述した長さD1よりも長い。
【0108】
次に、上述した刃先角度α及び断面角度Ωが異なる5つの穿刺針について行った刺通抵抗試験の概要及び結果について説明する。以下、説明の便宜上、用意した5つの穿刺針を第1試験体~第5試験体と記載する。第1試験体~第5試験体は、いずれも本発明の一実施形態としての穿刺針である。第1試験体としての穿刺針では、刃先角度αが15度であり、断面角度Ωが85度である。第2試験体としての穿刺針では、刃先角度αが20度であり、断面角度Ωが60度である。第3試験体としての穿刺針では、刃先角度αが20度であり、断面角度Ωが85度である。第4試験体としての穿刺針では、刃先角度αが30度であり、断面角度Ωが60度である。第5試験体としての穿刺針では、刃先角度αが40度であり、断面角度Ωが60度である。
【0109】
ここで、第2試験体は、図6図7に示す穿刺針101を用いている。上述したように、穿刺針101の刃面104は、第1刃面部105、第2刃面部106及び第3刃面部107を備える。以下、第1試験体~第5試験体それぞれについて行った刺通抵抗試験の概要について説明する。ここでは、一例として、第1試験体~第5試験体の1つである図6図7に示す第2試験体を用いて、刺通抵抗試験の概要を説明するが、第1試験体、及び、第3試験体~第5試験体でも刺通抵抗試験の概要は同様である。
【0110】
刺通抵抗試験では、穿刺針101を、厚み0.3mmのシート状のウレタンに穿刺して、刺通抵抗を測定する。この試験では、シート状のウレタンとして、シーダム株式会社製の製品名「ハイグレス」(登録商標)の品番DUS605を使用している。穿刺針101のウレタンに対する穿刺角度は90度である。穿刺針101のウレタンに対する穿刺速度は50nm/minである。この試験では、穿刺針101の針先108がウレタンを通過する際の刺通抵抗値[gf]と、穿刺針101の第1刃面部105のアゴ部105aの基端S(アゴ部105aのヒール)がウレタンを通過する際の刺通抵抗値[gf]と、を測定する。穿刺針101の第1刃面部105のアゴ部105aの基端Sは、刃面104において刺通抵抗が最大となる位置である。刺通抵抗の測定には、微小荷重試験機を用いる。この試験では、島津製作所社製のEZ-SXを用いて上述の刺通抵抗を測定した。穿刺針の針先の位置での刺通抵抗については、50gf以下を好ましい範囲、40gf以下をより好ましい範囲、30gf以下を特に好ましい範囲、として評価する。また、穿刺針の第1刃面部のアゴ部の基端の位置での刺通抵抗については、60gf以下を好ましい範囲、55gf以下をより好ましい範囲、50gf以下を特に好ましい範囲、として評価する。
【0111】
また、上述の刺通抵抗試験を、同じ穿刺針101を用いて、5回繰り返して行った。穿刺針101を生体表面から血管内に穿刺する際は、皮膚のみならず、脂肪層、筋肉、血管壁等を刺通する必要がある。つまり、1回の穿刺であっても、針先108が血管内に到達する前の穿刺途中で、複数の異なる性質の部位を刺通していく過程で、穿刺針101に潰れが発生する可能性がある。ここでは、上述の刺通抵抗試験を、同じ穿刺針101を用いて、5回繰り返して行うことにより、穿刺針101の耐久性、より具体的には、針先108が血管内に到達する前の穿刺途中で穿刺針101に潰れが発生する可能性、を評価した。ここでは、5回の穿刺動作による針先の位置での刺通抵抗の変化率が25%以下の場合で、かつ、5回の穿刺動作による第1刃面部のアゴ部の基端の位置での刺通抵抗の変化率が15%以下の場合に、穿刺針の潰れが発生し難い耐久性を保持する穿刺針として評価する。特に、5回の穿刺動作による針先の位置での刺通抵抗の変化率が20%以下の場合で、かつ、5回の穿刺動作による第1刃面部のアゴ部の基端の位置での刺通抵抗の変化率が10%以下の場合に、穿刺針の潰れが発生しない耐久性を保持する穿刺針として評価する。5回の穿刺動作による刺通抵抗の変化率とは、5回分の刺通抵抗値の最大値と最小値との差の、5回分の刺通抵抗値の最小値に対する割合を意味する。
【0112】
以下の[表1]において、第1試験体~第5試験体それぞれについての、上述の刺通抵抗試験の結果を示す。
【0113】
【表1】
【0114】
また、図8は、第1試験体~第5試験体それぞれについて、針先での刺通抵抗値の1回目~5回目の変化を示すグラフである。図9は、第1試験体~第5試験体それぞれについて、第1刃面部のアゴ部の基端(ヒール)での刺通抵抗値の1回目~5回目の変化を示すグラフである。
【0115】
[表1]に示すように、刃先角度α及び断面角度Ωの角度の組み合わせが異なる第1試験体~第5試験体では、針先での刺通抵抗値、及び、アゴ部の基端での刺通抵抗値、が異なることが分かる。[表1]、図8に示すように、第1試験体~第5試験体の針先の位置での1回目の刺通抵抗値は、いずれも50gf以下に抑えられていることがわかる。更に、[表1]、図8に示すように、第1試験体~第4試験体の針先の位置での1回目の刺通抵抗値は、いずれも40gf以下に抑えられていることがわかる。更に、[表1]、図8に示すように、第1試験体~第3試験体の針先の位置での1回目の刺通抵抗値は、いずれも30gf以下に抑えられていることがわかる。このように、第1試験体~第5試験体によれば、針先の位置での刺通抵抗を低減でき、第1試験体~第4試験体によれば、針先の位置での刺通抵抗を更に低減できることがわかる。そして、第1試験体~第3試験体によれば、針先の位置での刺通抵抗を、より一層、低減できることがわかる。
【0116】
[表1]、図9に示すように、第1試験体~第5試験体の第1刃面部のアゴ部の基端の位置での1回目の刺通抵抗値は、いずれも60gf以下に抑えられていることがわかる。また、[表1]、図9に示すように、第1試験体~第5試験体の第1刃面部のアゴ部の基端の位置での1回目の刺通抵抗値は、いずれも55gf以下に抑えられていることがわかる。更に、[表1]、図9に示すように、第1試験体、第2試験体、第4試験体及び第5試験体の第1刃面部のアゴ部の基端の位置での1回目の刺通抵抗値は、いずれも50gf以下に抑えられていることがわかる。このように、第1試験体~第5試験体によれば、第1刃面部のアゴ部の基端の位置での刺通抵抗を大きく低減できることがわかる。そして、第1試験体、第2試験体、第4試験体及び第5試験体によれば、第1刃面部のアゴ部の基端の位置での刺通抵抗を、より一層、低減できることがわかる。
【0117】
以上のことから、刃先角度αは、12度~42度とすることが好ましく、15度~40度とすることがより好ましく、15度~30度とすることが更に好ましい。また、断面角度Ωは、50度~110度とすることが好ましく、60度~85度とすることがより好ましい。
【0118】
以下の[表2]では、第1試験体~第5試験体それぞれについて、5回の穿刺動作による針先の位置での刺通抵抗の変化率と、5回の穿刺動作による第1刃面部のアゴ部の基端の位置での刺通抵抗の変化率と、を示している。
【0119】
【表2】
【0120】
上記[表2]に示すように、第1試験体~第5試験体それぞれの、5回の穿刺動作による針先の位置での刺通抵抗の変化率は、25%よりも小さい。また、第1試験体~第5試験体それぞれの、5回の穿刺動作による第1刃面部のアゴ部の基端の位置での刺通抵抗の変化率は、15%よりも小さい。したがって、第1試験体~第5試験体は、穿刺時に潰れが発生し難い耐久性を保持していると評価できる。
【0121】
更に、上記[表2]に示すように、第2試験体~第5試験体それぞれの、5回の穿刺動作による針先の位置での刺通抵抗の変化率は、20%よりも小さい。また、第1試験体~第4試験体それぞれの、5回の穿刺動作による第1刃面部のアゴ部の基端の位置での刺通抵抗の変化率は、10%よりも小さい。したがって、第2試験体~第4試験体は、穿刺時に潰れが発生しない耐久性を保持していると評価できる。
【0122】
以上より、刃先角度αが20度で、かつ、断面角度Ωが60度、の組み合わせを有する穿刺針、すなわち、図6図7に示す第2試験体としての穿刺針101が、第1試験体~第5試験体の中で、刺通抵抗及び耐久性の観点において最も好ましい例であることがわかる。
【0123】
最後に、上述した穿刺針1の製造方法について説明する。穿刺針1の本体部2の刃面4は、管状部材の先端部を、切削、研削、放電(ワイヤー放電含む)加工などで研削することで形成される。具体的に、管状部材の先端部を、切削、研削、放電(ワイヤー放電含む)加工などで研削し、第1刃面部5、第2刃面部6及び第3刃面部7を形成する。これにより、本体部2の刃面4を形成することができる。
【0124】
本開示に係る穿刺針は、上述した実施形態に示す具体的な構成に限定されず、特許請求の範囲の記載を逸脱しない限り、種々の変形、変更が可能である。上述したように、第1刃面部5を構成する凹形面は、凹形状の湾曲面を含む構成であっても、図10に示すような平面を含む構成であってもよい。図10では、複数の平面を連続させることで形成されている凹形面により構成される第1刃面部205を備える穿刺針201を示している。具体的に、図10に示す第1刃面部205は、第1平面205a、第2平面205b、及び、第3平面205c、により構成されている。第1平面205aは、図10に示す側面視で中心軸線Oに対して所定角度で傾斜しており、針先8まで延在している。第2平面205bは、第1平面205aの中心軸線方向Aの基端側に連続している。第2平面205bは、図10に示す側面視で中心軸線Oに対して、第1平面205aよりも大きい所定角度で傾斜している。第3平面205cは、第2平面205bの中心軸線方向Aの基端側に連続している。第3平面205cは、図10に示す側面視で中心軸線Oに対して、第1平面205a及び第2平面205bよりも大きい所定角度で傾斜している。第1刃面部205を構成する平面の数や傾斜角度は、図10に示す構成に限られない。第1刃面部205を構成する平面は、2つとしてもよく、4つ以上としてもよい。
【0125】
図10に示す第1刃面部205であっても、側面視(図10参照)において、第1刃面部205と本体部2の中心軸線Oとが交わる点における、第1刃面部205の接線L3は、第2刃面部6及び第3刃面部7と交差する。ここで、図10に示すように、側面視において、第1刃面部205と本体部2の中心軸線Oとが交わる点が直線上の一点となる場合、すなわち、本体部2の中心軸線Oが第1刃面部205を構成する平面(図10に示す例では第2平面205b)と交わる場合、この平面を表す直線の延長線を接線L3と定義する。
【0126】
上述した第2実施形態において、第1刃面部105の凹形面は、アゴ部の基端Sから終端Uまで延在する曲面と、終端Uから針先108まで延在する平面と、で構成されているが、アゴ部の基端Sから針先108まで延在する曲面により、第1刃面部の凹形面を構成してもよい。
【0127】
更に、本開示に係る穿刺針は、図11図20に示す構成としてもよい。
【0128】
図11図13は、一実施形態としての穿刺針301の本体部302を示す図である。具体的に、図11(a)は、穿刺針301の本体部302の正面図、図11(b)は、穿刺針301の本体部302の側面図、図11(c)は、穿刺針301の本体部302の背面図を示すものである。また、図12は、図11(a)におけるVII-VII断面図である。図13は、図11に示す穿刺針301の第1刃面部305の基端側刃面部305bが線状に見えるように本体部302を先端側から見た図である。
【0129】
図11(a)~図11(c)、図12図13に示すように、穿刺針301は、棒状の本体部302を備えており、この本体部302の先端部303に刃面304が形成されている。具体的に、本実施形態の本体部302は管体であり、本体部302の中心軸線Oに平行な中心軸線方向Aにおいて連通する中空部310を区画している。より具体的に、本実施形態の本体部302は、中心軸線方向Aと直交する横断面の外形が略円形状となる管体である。
【0130】
図11(a)~図11(c)、図12図13に示すように、刃面304は複数の刃面部により構成されている。具体的に、本実施形態の刃面304は、正面刃面としての第1刃面部305と、背面刃面としての第2刃面部306及び第3刃面部307と、を備えている。換言すれば、本実施形態の穿刺針301の本体部302は、バックカット加工が施された刃面304を備えている。
【0131】
第1刃面部305は、本体部302の中心軸線Oに対して傾斜して延在する部分を有する。また、第1刃面部305は、針先308まで延在している。第1刃面部305の詳細は後述する。
【0132】
第2刃面部306及び第3刃面部307は、第1刃面部305の裏側に形成されている。第2刃面部306は、第1刃面部305と交差する稜線により針先308を一端とする第1刃縁323を形成している。第3刃面部307は、第1刃面部305と交差する稜線により針先308を一端とする第2刃縁324を形成している。第2刃面部306及び第3刃面部307は、第1刃面部305の裏側で、互いが交差する稜線により針先308を一端とする第3刃縁325を形成している。図12に示すように、本実施形態の第2刃面部306及び第3刃面部307それぞれは、中心平面Xに対して傾斜する一平面により構成されている。また、図12に示すように、本実施形態の第2刃面部306及び第3刃面部307は、中心平面Xに対して対称な平面である。
【0133】
穿刺針301を生体表面から穿刺する際には、第1刃縁323、第2刃縁324及び第3刃縁325が皮膚を切り裂く切れ刃として働き、刺通抵抗が低減される。第1刃縁323及び第2刃縁324は、第1切れ刃及び第2切れ刃と呼ぶこともできる。
【0134】
更に、第2刃面部306は、本体部302の外周面と交差する稜線により第4刃縁326を形成している。また、第3刃面部307は、本体部302の外周面と交差する稜線により第5刃縁327を形成している。
【0135】
第1刃面部305は、第1刃面部305が線状に見える本体部302の側面視(図11(b)参照)において凹形状となる凹形面により構成されている。また、本実施形態の第1刃面部305を構成する凹形面は、平面を含む。
【0136】
より具体的に、本実施形態の第1刃面部305は、針先308を含む平面状の先端側刃面部305aと、この先端側刃面部305aの基端側に位置する平面状の基端側刃面部305bと、を備える。基端側刃面部305bは、先端側刃面部305aよりも中心軸線O及び中心軸線方向Aに対して傾斜している。また、本実施形態の基端側刃面部305bは、先端側刃面部305aの基端側に連続している。更に、本実施形態の第1刃面部305は、上述の先端側刃面部305a及び基端側刃面部305bのみにより構成されている。このように、本実施形態では、第1刃面部305を構成する凹形面が、先端側刃面部305a及び基端側刃面部305bにより形成されている。
【0137】
図11(a)に示すように、第1刃面部305の内縁313は、中空部310の先端開口311を区画している。第1刃面部305の内縁313は、その基端Rから中心平面Xに対して対称にほぼ楕円状に延びて内縁313の先端Fに達している。第1刃面部305の基端側刃面部305bの終端U2は、先端Fより先端側に位置している。第1刃面部305側から見た正面視において、先端側刃面部305aの基部の幅D9(終端U2の幅)は、中空部310の径D10よりも小さい。針先308から内縁313の先端Fの長さD3は、第1刃面部305の内縁313の基端Rから第1刃面部305のアゴ部の基端Sまでの長さD4よりも長い。
【0138】
本実施形態の第1刃面部305は、連続する2つの平面としての、上述した先端側刃面部305a及び基端側刃面部305b、により構成されているが、この構成に限られない。第1刃面部305は、図10に示す第1刃面部205のように、3つ以上の平面により構成されてもよい。第1刃面部305の上述の先端側刃面部305a及び基端側刃面部305bは、中心軸線方向Aで連続する2つの平面でなくてもよい。つまり、第1刃面部305が中心軸線方向Aに連なる3つ以上の平面で構成されている場合に、基端側刃面部305bは、針先308を含む平面状の先端側刃面部305aと連続する平面でなくてよく、先端側刃面部305aとの間に別の平面(中間刃面部)を挟んで、基端側に連なる平面であってもよい。第1刃面部305を構成する、中心軸線Oに対する傾斜角度が異なる複数の平面のうち、連続する任意の2つの平面が交差して形成される稜線は、中心軸線方向Aと直交する方向に延在している。具体的に、本実施形態では、先端側刃面部305aと基端側刃面部305bとの間の稜線が、中心軸線方向Aと直交して延在している。
【0139】
また、図11(b)に示すように、本実施形態の穿刺針301では、第1刃面部305が線状に見える本体部302の側面視において、先端側刃面部305aは本体部302の中心軸線O及び中心軸線方向Aと平行である。このようにすることで、刃先角度αを小さくすることができる。更に、図11(b)に示すように、本実施形態の穿刺針301では、第1刃面部305が線状に見える本体部302の側面視において、基端側刃面部305bは本体部302の中心軸線O及び中心軸線方向Aに対して傾斜している。
【0140】
更に、図11(b)に示すように、第1刃面部305が線状に見える本体部302の側面視において、先端側刃面部305aと基端側刃面部305bとは鈍角を形成している。
【0141】
以上のように、本実施形態の第1刃面部305は、複数の平面により構成されている。また、本実施形態の第1刃面部305は、第1刃面部305を構成する複数の平面が線状に見える本体部302の側面視(図11(b)参照)において、複数の平面によって凹形面を形成している。
【0142】
図11(b)、図11(c)に示すように、第2刃面部306及び第3刃面部307は、先端側刃面部305aの裏側と、基端側刃面部305bの裏側と、の両方に跨って延在している。
【0143】
このようにすることで、第1刃面部305と第2刃面部306とで形成される第1刃縁323には、直線状の先端側刃縁323aと、この先端側刃縁323aの基端側に位置する直線状の基端側刃縁323bと、が形成されている。また、第1刃面部305と第3刃面部307とで形成される第2刃縁324においても、直線状の先端側刃縁324aと、この先端側刃縁324aの基端側に位置する直線状の基端側刃縁324bと、が形成されている。
【0144】
第1刃縁323の先端側刃縁323aは、第1刃面部305の先端側刃面部305aと第2刃面部306とが互いに交差する稜線により形成されている。第1刃縁323の基端側刃縁323bは、第1刃面部305の基端側刃面部305bと第2刃面部306とが互いに交差する稜線により形成されている。
【0145】
第2刃縁324の先端側刃縁324aは、第1刃面部305の先端側刃面部305aと第3刃面部307とが互いに交差する稜線により形成されている。第2刃縁324の基端側刃縁324bは、第1刃面部305の基端側刃面部305bと第3刃面部307とが互いに交差する稜線により形成されている。
【0146】
ここで、図11(a)に示すように、第1刃面部305側から見た本体部302の正面視において、第1刃縁323は凹形状を形成している。より具体的に、図11(a)に示すように、第1刃面部305側から見た本体部302の正面視において、第1刃縁323の先端側刃縁323a及び基端側刃縁323bは凹形状を形成している。
【0147】
また、図11(a)に示すように、第1刃面部305側から見た本体部302の正面視において、第2刃縁324は凹形状を形成している。より具体的に、図11(a)に示すように、第1刃面部305側から見た本体部302の正面視において、第2刃縁324の先端側刃縁324a及び基端側刃縁324bは凹形状を形成している。
【0148】
このように、本実施形態の穿刺針301では、第2刃面部306及び第3刃面部307それぞれが、第1刃面部305の先端側刃面部305aの裏側と、第1刃面部305の基端側刃面部305bの裏側と、の両方に跨るように形成されている。その結果、本実施形態の穿刺針301では、第1刃縁323及び第2刃縁324それぞれが、正面視(図11(a)参照)において、直線状の先端側刃縁323a、324aと、直線状の基端側刃縁323b、324bと、により凹形状を形成している。そのため、穿刺針301では、第1刃縁323の先端側刃縁323a、第2刃縁324の先端側刃縁324a、及び、第3刃縁325により、針先308近傍での刺通抵抗を低減できる。更に、穿刺針301では、第1刃縁323の基端側刃縁323b及び第2刃縁324の基端側刃縁324bにより、皮膚を大きく切り拡げ易い。そのため、穿刺時に傷口が押し拡げられることで患者が感じる痛みについても軽減できる。
【0149】
本実施形態の第1刃縁323は、連続する2つの直線としての、上述した先端側刃縁323a及び基端側刃縁323b、により構成されているが、この構成に限られない。第1刃縁323は、3つ以上の直線により構成されてもよい。第1刃縁323の上述の先端側刃縁323a及び基端側刃縁323bは、連続する2つの直線でなくてもよい。つまり、第1刃縁323が、延在方向が異なる3つ以上の直線が連なって形成されている場合に、基端側刃縁323bは、針先308を一端とする直線状の先端側刃縁323aと連続する直線でなくてよく、先端側刃縁323aとの間に別の直線(中間刃縁)を挟んで、基端側に連なる直線であってもよい。このような変形例は、第2刃縁324についても同様に適用可能である。
【0150】
図11(b)に示すように、本実施形態の穿刺針301では、第1刃面部305が線状に見える本体部302の側面視において、第1刃縁323の先端側刃縁323a、及び、第2刃縁324の先端側刃縁324aは、本体部302の中心軸線O及び中心軸線方向Aと平行である。このようにすることで、刃先角度αを小さくすることができる。更に、図11(b)に示すように、本実施形態の穿刺針301では、第1刃面部305が線状に見える本体部302の側面視において、第1刃縁323の基端側刃縁323b、及び、第2刃縁324の基端側刃縁324b、は本体部302の中心軸線O及び中心軸線方向Aに対して傾斜している。
【0151】
更に、図11(b)に示すように、第1刃面部305が線状に見える本体部302の側面視において、第2刃縁324の先端側刃縁324a及び基端側刃縁324bは鈍角を形成している。図11(b)は、第3刃面部307側の側面視であるが、図11(b)とは反対側の第2刃面部306側の側面視において、第1刃縁323の先端側刃縁323a及び基端側刃縁323bも同様の構成を有する。すなわち、第1刃面部305が線状に見える本体部302の側面視(図11(b)とは反対側の側面視)において、第1刃縁323の先端側刃縁323a及び基端側刃縁323bは鈍角を形成している。
【0152】
また、第1刃面部305のうち先端側刃面部305aの基端側に連続する平面状の刃面部(本実施形態では基端側刃面部305b)が線状に見えるように本体部302を先端側から見た場合(図13参照)、針先308を含む一部は、線状に見える平面状の刃面部(本実施形態では基端側刃面部305b)に対して一方側に突出している。換言すれば、図13に示す平面視において、針先308は、線状に見える平面状の刃面部(本実施形態では基端側刃面部305b)から延在する、第1刃縁323の先端側刃縁323aと、第2刃縁324の先端側刃縁324aと、の交点である頂点に位置している。更に、図13に示す平面視において、第3刃縁325についても、針先308まで延在している。すなわち、図13に示す平面視において、針先308は、第1刃縁323の先端側刃縁323a、第2刃縁324の先端側刃縁324a、及び、第3刃縁325、の交点により形成される頂点に位置している。
【0153】
図14は、図11(a)におけるVIII-VIII断面図である。具体的に、図14は、第1刃縁323の直線状の先端側刃縁323aに直交する断面である。また、図15は、図11(a)におけるIX-IX断面図である。具体的に、図15は、第1刃縁323の直線状の基端側刃縁323bに直交する断面である。
【0154】
図14では、第1刃縁323の先端側刃縁323aに直交する断面において、第1刃面部305の先端側刃面部305aと、第2刃面部306と、がなす角度を「第1角度γ1」で示している。また、図15では、第1刃縁323の基端側刃縁323bに直交する断面において、第1刃面部305の基端側刃面部305bと、第2刃面部306と、がなす角度を「第2角度γ2」で示している。図14図15に示すように、第1角度γ1及び第2角度γ2はいずれも鋭角である。また、第1角度γ1は、第2角度γ2よりも小さい。
【0155】
図14図15では、第1刃縁323の先端側刃縁323aの位置での第1角度γ1と、第1刃縁323の基端側刃縁323bの位置での第2角度γ2と、の大小関係のみを示しているが、第2刃縁324について同様の角度を対比しても、同様の大小関係が成立する。
【0156】
更に、図11(b)に示すように、第1刃面部305が線状に見える本体部302の側面視において、第1刃面部305と本体部302の中心軸線とが交わる点における、第1刃面部305の接線L3は、第3刃面部307と交差している。図11(b)では第3刃面部307側の側面を示すが、第2刃面部306側の側面であっても同様である。すなわち、図11(b)に示す側面視と反対側の側面視において、接線L3は、第2刃面部306と交差している。
【0157】
次に、穿刺針の2つの実施例を用いて行った刺通抵抗試験の概要及び結果について説明する。2つの実施例は、図6図7に示す穿刺針101の一実施例(以下、「実施例1」と記載する。)、及び、図11図15に示す穿刺針301の一実施例(以下、「実施例2」と記載する。)である。実施例1及び2の刃先角度αは20度である(図6(b)、図11(b)参照)。実施例1の断面角度Ωは60度である(図7参照)。また、実施例2の断面角度Ωは75度である(図12参照)。更に、実施例2の第1刃面部305の基端側刃面部305bの中心軸線方向Aに対する傾斜角度は16.6度である。実施例1及び実施例2それぞれの刃面長は同一である。具体的に、刃面長は1.7mmである。
【0158】
この刺通抵抗試験では、上述した実施例1及び実施例2の2種類の穿刺針それぞれについて、5本ずつ試験体を作成し、合計10本の穿刺針の刺通抵抗を測定した。この刺通抵抗試験では、各穿刺針を、厚み0.5mmのシリコーンシートに穿刺して、刺通抵抗を測定する。この試験で使用したシリコーンシートは、タイガースポリマー製のシリコーンゴムシートである。穿刺針のシリコーンシートに対する穿刺角度は30度である。この試験では、各穿刺針の針先がシリコーンシートを通過する際の刺通抵抗値[gf]と、各穿刺針の刃面のアゴ部の基端(アゴ部のヒール)がシリコーンシートを通過する際の刺通抵抗値[gf]と、を測定する。この試験のその他の各種条件については、[表1]で結果を示した上述の刺通抵抗試験と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0159】
以下の[表3]では、刺通抵抗試験の結果が示されている。
【0160】
【表3】
【0161】
[表3]に示すように、実施例1及び実施例2の穿刺針によれば、針先の刺通抵抗、及び、アゴ部の基端での刺通抵抗、の両方を小さくすることができることがわかる。また、[表3]に示すように、実施例2の穿刺針によれば、実施例1の穿刺針よりも、針先の刺通抵抗、及び、アゴ部の基端での刺通抵抗、の両方を小さくできる。特に、アゴ部の基端での刺通抵抗については、実施例1の穿刺針よりも、実施例2の穿刺針の方が、低減効果が大きい。この理由は、実施例2の穿刺針では、実施例1の穿刺針と比較して、第1刃面部のアゴ部の基端での中心軸線方向に対する傾斜角度を小さくできるためである。したがって、第1刃面部のアゴ部の基端での刺通抵抗の点では、図6図7に示す穿刺針101よりも、図11図15に示す穿刺針301が好ましい。
【0162】
次に、カテーテルセット500と、このカテーテルセット500から組み立てられる一実施形態としてのカテーテル組立体500aと、について図16図20を参照して説明する。
【0163】
図16(a)、図16(b)は、それぞれカテーテル組立体500aの外観図、断面図である。図16(a)、図16(b)に示すように、カテーテル組立体500aは、内管部材としての穿刺針401と、外管部材450と、を備えている。ここでは、穿刺針401及び外管部材450を備える構成を「カテーテルセット500」と記載する。また、カテーテルセット500のうち、穿刺針401及び外管部材450が組み立てられた状態を「カテーテル組立体500a」と記載する。
【0164】
図16(a)、図16(b)に示すように、穿刺針401は、本体部402と、針基としての針ハブ430と、を備えている。
【0165】
図16(a)、図16(b)に示すように、外管部材450は、穿刺針401が挿通されているカテーテル451と、このカテーテル451を保持するカテーテルハブ452と、を備えている。より具体的に、カテーテル451には、穿刺針401の本体部402が挿通されている。
【0166】
図17(a)、図17(b)は、それぞれ外管部材450の外観図、断面図である。図18(a)、図18(b)は、それぞれ穿刺針401の外観図、断面図である。図19(a)は、図18(a)の穿刺針401の本体部402の一部を拡大して示す図である。図19(b)、図19(c)は、それぞれ図19(a)のX-X断面図、XI-XI断面図である。
【0167】
図17に示すように、外管部材450のカテーテルハブ452は、カテーテル451の基端部を保持している。また、カテーテルハブ452の基端には、穿刺針401を受け入れる受け入れ開口453が形成されている。穿刺針401の本体部402は、カテーテルハブ452の受け入れ開口453を通じて、カテーテル451内へと挿通される。穿刺針401は、本体部402の針先408が、カテーテル451の先端よりも突出するまで、カテーテル451内に挿通される。
【0168】
図18に示すように、穿刺針401は、先端部403に刃面404が形成された本体部402と、この本体部402の基端部を保持する針ハブ430と、を備えている。外管部材450のカテーテルハブ452の受け入れ開口453を通じて、穿刺針401の本体部402をカテーテル451内に挿通する際に、針ハブ430の先端部も、カテーテルハブ452の受け入れ開口453内に挿入される。そして、穿刺針401の本体部402の針先408が、カテーテル451の先端よりも突出する所定位置まで挿通されると、針ハブ430が、カテーテルハブ452により係止される。これにより、図16に示すように、穿刺針401及び外管部材450が組み立てられて一体化され、カテーテル組立体500aが形成される。
【0169】
図19に示すように、穿刺針401の本体部402の先端部403には刃面404が形成されている。刃面404は、図11に示す刃面304と同様、第1刃面部405、第2刃面部及び第3刃面部を備える。刃面404の第2刃面部及び第3刃面部の形状は、図11に示す第2刃面部306及び第3刃面部307の形状と同じである。第1刃面部405の先端側刃面部405aの形状は、図11に示す第1刃面部305の先端側刃面部305aの形状と同じである。第1刃面部405の基端側刃面部405bの形状は、図11に示す第1刃面部305の基端側刃面部305bの形状と異なる。第1刃面部405の基端側刃面部405bのアゴ部には、本体部402の外周面に形成されている溝402aにより切欠き405b1が区画されている。この点以外については、第1刃面部405の基端側刃面部405bは、図11に示す基端側刃面部305bと同様である。
【0170】
但し、穿刺針401の刃面404の第1刃面部405は、図1図6に示すように曲面を含む構成であってもよい。更に、穿刺針401の刃面404の第1刃面部405は、図10に示すように3つ以上の傾斜角度の異なる平面を含む構成であってもよい。
【0171】
カテーテル組立体500aの穿刺針401は、逆血を外部に報知可能な報知部を備える。上述したように、穿刺針401の本体部402の外周面には、中心軸線方向Aに延在する溝402aが形成されている。穿刺針401の報知部は、この溝402aにより構成されている。図19に示すように、溝402aは、刃面404の上述の切欠き405b1から、中心軸線方向Aで基端側に向かって延在し、本体部402の所定の位置で終端している。溝402aは、外管部材450と穿刺針401とを組立てた状態で、カテーテル451の最先端よりも先端側からはじまり、カテーテル451の最先端よりも基端側で終端となるような長さと位置に設定される。そのため、穿刺針401の先端部403で血管が確保された際に、溝402aを利用して外部から逆血を視認できる。すなわち、溝402aにより、カテーテル451の内面と穿刺針401の本体部402の外面との間の空間に血液が流入する。カテーテル451が透明又は半透明であるため流入した血液がカテーテル外面から目視できる。このように逆血(フラッシュバック)の視認ができる。
【0172】
穿刺針401の報知部は、上述した溝402aに限られない。図20は、図19に示す報知部の変形例を示す図である。図20に示す穿刺針401の報知部は、側孔402bにより構成されている。逆血は、矢印Cの流れのように穿刺針401の本体部402の内部から、側孔402bを介して、カテーテル451の内面と穿刺針401の本体部402の外面との間の空間に流入する。これにより、カテーテル外部から逆血が視認可能である。更に、穿刺針401の報知部は、逆血を外部に報知可能な構成であれば、上述した溝402a(図19参照)や側孔402b(図20参照)以外の構成であってもよい。
【0173】
本開示に係るカテーテル組立体は、上述した実施形態に示す具体的な構成に限定されず、特許請求の範囲の記載を逸脱しない限り、種々の変形、変更が可能である。例えば、上述したカテーテル組立体500aの針ハブ430及びカテーテルハブ452の外形は略円柱状であるが、多角柱状の外形であってもよい。
【0174】
図21は、本開示に係る穿刺針の一実施形態としての穿刺針501の本体部502を示す図である。具体的に、図21(a)は、穿刺針501の本体部502の正面図、図21(b)は、穿刺針501の本体部502の側面図、図21(c)は、穿刺針501の本体部502の背面図である。図22は、穿刺針501の本体部502を中心軸線方向で先端側から見た図を示すものである。
【0175】
図21(a)~図21(c)、図22に示すように、穿刺針501は、棒状の本体部502を備えており、この本体部502の先端部503に刃面504が形成されている。具体的に、本実施形態の本体部502は管体であり、本体部502の中心軸線Oに平行な中心軸線方向Aにおいて連通する中空部510を区画している。より具体的に、本実施形態の本体部502は、中心軸線方向Aと直交する横断面の外形が略円形状となる管体である。
【0176】
図21(a)~図21(c)、図22に示すように、刃面504は複数の刃面部により構成されている。具体的に、本実施形態の刃面504は、正面刃面としての第1刃面部505と、背面刃面としての第2刃面部506及び第3刃面部507と、を備えている。換言すれば、本実施形態の穿刺針501の本体部502は、バックカット加工が施された刃面504を備えている。
【0177】
第1刃面部505は、本体部502の中心軸線Oに対して傾斜して延在する部分を有する。また、第1刃面部505は、針先508まで延在している。本実施形態の第1刃面部505は、針先308を含む平面状の先端側刃面部505aと、この先端側刃面部505aの基端側に位置する平面状の基端側刃面部505bと、を備える。
【0178】
第2刃面部506及び第3刃面部507は、第1刃面部505の裏側に形成されている。第2刃面部506は、第1刃面部505と交差する稜線により針先508を一端とする第1刃縁523を形成している。第3刃面部507は、第1刃面部505と交差する稜線により針先508を一端とする第2刃縁524を形成している。第2刃面部506及び第3刃面部507は、第1刃面部505の裏側で、互いが交差する稜線により針先508を一端とする第3刃縁525を形成している。
【0179】
図22に示すように、本実施形態の第2刃面部506及び第3刃面部507それぞれは、中心平面Xに対して傾斜する一平面により構成されている。また、図22に示すように、本実施形態の第2刃面部506及び第3刃面部507は、中心平面Xに対して対称な平面である。
【0180】
更に、第2刃面部506は、本体部502の外周面502aと交差する稜線により第4刃縁526を形成している。また、第3刃面部507は、本体部502の外周面502aと交差する稜線により第5刃縁527を形成している。
【0181】
ここで、本実施形態の穿刺針501は、上述した穿刺針301(図11等参照)と比較して、第1刃面部505の裏側に移行部530を備える点で構成が相違しており、その他の構成は共通している。したがって、以下、この移行部530について詳細に説明し、穿刺針501のうち上述した穿刺針301(図11等参照)と共通する構成については説明を省略する。
【0182】
図21(b)に示すように、第3刃縁525の基端側で、本体部502の外周面502aの先端側には、移行部530が形成されている。移行部530は、直線状の第3刃縁525から連続して基端側に延びている。移行部530は、側面視(図21(b)参照)で、径方向外側に向かって凸状に湾曲している。移行部530の基端側は、本体部502の外周面502aと連続している。本体部502の中心軸線方向Aにおいて、移行部530の基端は、第1刃面部505の基端側刃面部505bの終端U2と同じ位置、又は、終端U2よりも先端側に位置している。
【0183】
図21(c)に示すように、移行部530は第4刃縁526と第5刃縁527の間に形成された面である。より具体的に、移行部530は、第4刃縁526と第5刃縁527の間に形成された曲面である。移行部530は、背面視(図21(c)参照)において、二等辺三角形状である。
【0184】
図22に示すように、移行部530は、第3刃縁525の基端に連続している。移行部530を設けることで、穿刺針501を血管に穿刺する場合、血管後壁への接触抵抗が軽減され、血管への影響が抑制される。
【産業上の利用可能性】
【0185】
本開示は穿刺針に関する。
【符号の説明】
【0186】
1、101、201、301、401、501:穿刺針
2、102、302、402、502:本体部
3、103、303、403、503:先端部
4、104、304、404、504:刃面
5、105、205、305、405、505:第1刃面部
6、106、306、506:第2刃面部
7、107、307、507:第3刃面部
8、108、308、408、508:針先
10、110、310、510:中空部
11、111、311:先端開口
13、113、313:第1刃面部の内縁
14:第1刃面部の外縁
15:基端側外縁部
23、123、323、523:第1刃縁
24、124、324、524:第2刃縁
25、125、325、525:第3刃縁
26、126、326、526:第4刃縁
27、127、327、527:第5刃縁
105a:第1刃面部のアゴ部
205a:第1平面
205b:第2平面
205c:第3平面
305a、405a、505a:先端側刃面部
305b、405b、505b:基端側刃面部
323a:第1刃縁の先端側刃縁
323b:第1刃縁の基端側刃縁
324a:第2刃縁の先端側刃縁
324b:第2刃縁の基端側刃縁
402a:溝
402b:側孔
405b1:切欠き
430:針ハブ
450:外管部材
451:カテーテル
452:カテーテルハブ
453:受け入れ開口
500:カテーテルセット
500a:カテーテル組立体
502a:本体部の外周面
A:本体部の中心軸線方向
B:本体部の径方向
C:逆血の流れ
F:第1刃面部の内縁の先端
H:刃面長
L1:側面視において第1刃面部の基端と針先とを通過する直線
L2:側面視における第1刃面部の針先の位置での接線
L3:側面視において第1刃面部と本体部の中心軸線とが交わる点における第1刃面部の接線
L4:先端視における第1刃面部の内縁の接線
D1:針先から第1刃面部の凹形面の曲面の終端までの長さ
D2:第1刃面部の凹形面の曲面の終端から内縁の先端の長さ
D3:針先から内縁の先端の長さ
D4:第1刃面部の内縁の基端から第1刃面部のアゴ部の基端までの長さ
D5:背面視における第3刃縁の中心軸線の方向の長さ
D9:先端側刃面部の基部の幅
D10:中空部の径
M:刃面領域の中心軸線方向Aにおける中間位置
N:本体部の周壁の肉厚
O:中心軸線
P:第1刃縁の基端
Q:第2刃縁の基端
R:第1刃面部の内縁の基端
S:第1刃面部のアゴ部の基端
T:刃面領域
U:第1刃面部の凹形面の曲面の終端
U2:第1刃面部の基端側刃面部の終端
V1:背面視における第1刃縁と第4刃縁との間の幅
V2:背面視における第2刃縁と第5刃縁との間の幅
W:切れ刃の幅
X:中心平面
Y1:第1刃縁上の点、第2刃縁上の点
Y2:第1刃面部の内縁上の点
Ω:第2刃面部と第3刃面部とがなす断面角度
α:刃先角度
β:先端角度
γ1:第1角度
γ2:第2角度
δ:側面視において、第3刃縁と中心軸線とがなす角度
θ1:中心軸線方向に直交する断面における第1刃面部の中心平面に対する角度
θ2:中心軸線方向に直交する断面における第2刃面部の中心平面に対する角度
θ3:中心軸線方向に直交する断面における第3刃面部の中心平面に対する角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【手続補正書】
【提出日】2022-08-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を区画する本体部の先端部に刃面が形成された医療用の穿刺針であって、
前記刃面は、前記本体部の中心軸線に対して傾斜して延在し、前記中空部の先端開口を区画する内縁を備える第1刃面部と、前記第1刃面部の裏側に形成され、前記第1刃面部と交差する稜線により針先を一端とする刃縁を形成する第2刃面部と、を備え、
前記第1刃面部は、前記第1刃面部が線状に見える前記本体部の側面視において凹形状となる凹形面により構成されており、
前記第2刃面部は、前記刃面が形成されている刃面領域の前記中心軸線に平行な中心軸線方向における中間位置よりも基端側まで延在しており、
前記第2刃面部の前記中心軸線方向における長さは、前記第1刃面部の前記中心軸線方向における長さより短く、
前記第1刃面部は、前記針先まで延在している、穿刺針。
【請求項2】
前記第1刃面部を構成する前記凹形面は、凹形状の湾曲面を含む、請求項1に記載の穿刺針。
【請求項3】
前記第1刃面部を構成する前記凹形面は、平面を含む、請求項1又は2に記載の穿刺針。
【請求項4】
前記刃縁は、前記第1刃面部側から見た前記本体部の正面視において凹形状を形成している、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の穿刺針。
【請求項5】
前記本体部を前記中心軸線方向で先端側から見た先端視において、前記第2刃面部は、前記中空部に重ならない位置に設けられている、請求項1乃至4のいずれか1つに記載の穿刺針。
【請求項6】
前記側面視において、前記第1刃面部の前記針先の位置での接線は、前記本体部の前記中心軸線と略平行に延在する、請求項1乃至5のいずれか1つに記載の穿刺針。
【請求項7】
中空部を区画する本体部の先端部に刃面が形成された医療用の穿刺針であって、
前記刃面は、前記本体部の中心軸線に対して傾斜して延在し、前記中空部の先端開口を区画する内縁を備える第1刃面部と、前記第1刃面部の裏側に形成され、前記第1刃面部と交差する稜線により針先を一端とする刃縁を形成する第2刃面部と、を備え、
前記第1刃面部が線状に見える前記本体部の側面視において、前記第1刃面部と前記本体部の中心軸線とが交わる点における、前記第1刃面部の接線は、前記第2刃面部と交差しており、
前記第2刃面部は、前記刃面が形成されている刃面領域の前記中心軸線に平行な中心軸線方向における中間位置よりも基端側まで延在しており、
前記第2刃面部の前記中心軸線方向における長さは、前記第1刃面部の前記中心軸線方向における長さより短く、
前記第1刃面部は、前記針先まで延在している、穿刺針。
【請求項8】
前記第1刃面部を構成する前記凹形面は、凹形状の湾曲面を含む、請求項7に記載の穿刺針。
【請求項9】
前記第1刃面部を構成する前記凹形面は、平面を含む請求項7又は8に記載の穿刺針。
【請求項10】
前記刃縁は、前記第1刃面部側から見た前記本体部の正面視において凹形状を形成している、請求項7乃至9のいずれか1つに記載の穿刺針。
【請求項11】
前記本体部を前記中心軸線方向で先端側から見た先端視において、前記第2刃面部は、前記中空部に重ならない位置に設けられている、請求項7乃至10のいずれか1つに記載の穿刺針。
【請求項12】
前記側面視において、前記第1刃面部の前記針先の位置での接線は、前記本体部の前記中心軸線と略平行に延在する、請求項7乃至11のいずれか1つに記載の穿刺針。
【請求項13】
刃先角度が12度~42度であり、断面角度が50度~110度である請求項7乃至12のいずれか1つに記載の穿刺針。
【請求項14】
刃先角度が15度~40度であり、断面角度が60度~85度である請求項7乃至12のいずれか1つに記載の穿刺針。
【請求項15】
中空部を区画する本体部の先端部に刃面が形成された医療用の穿刺針であって、
前記刃面は、前記本体部の中心軸線に対して傾斜して延在し、前記中空部の先端開口を区画する内縁を備える第1刃面部と、当該刃面の先端側に形成された第2刃面部及び第3刃面部と、を備え、
前記第1刃面部は、前記第1刃面部が線状に見える前記本体部の側面視において凹形状となる凹形面により構成され、
前記第1刃面部と前記第2刃面部とが交差する稜線により形成される第1刃縁と、前記第1刃面部と前記第3刃面部とが交差する稜線により形成される第2刃縁と有し、
前記本体部を中心軸線方向で先端側から見た先端視において、前記第1刃縁は、前記本体部の径方向に凹形状に湾曲し、針先まで延びており、前記第1刃縁と前記第1刃面部の前記内縁との距離が、前記第1刃縁の基端から前記針先に向かって徐々に小さくなっており、
前記先端視において、前記第2刃縁は、前記径方向に凹形状に湾曲し、前記針先まで延びており、前記第2刃縁と前記第1刃面部の前記内縁との距離が、前記第2刃縁の基端から前記針先に向かって徐々に小さくなっており、
前記第2刃面部は、前記刃面が形成されている刃面領域の前記中心軸線方向における中間位置よりも基端側まで延在しており、
前記第2刃面部の前記中心軸線方向における長さは、前記第1刃面部の前記中心軸線方向における長さより短く、
前記第1刃面部は、前記針先まで延在している、穿刺針。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか1つに記載の穿刺針と、
前記穿刺針が挿通されているカテーテルと、
前記カテーテルを保持するカテーテルハブと、を備えるカテーテル組立体。