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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169704
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】光熱眼科治療用装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/008 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
A61F9/008 130
A61F9/008 120Z
A61F9/008 120B
A61F9/008 120C
A61F9/008 150
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133757
(22)【出願日】2022-08-25
(62)【分割の表示】P 2019543108の分割
【原出願日】2018-02-06
(31)【優先権主張番号】62/456,829
(32)【優先日】2017-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PA201770679
(32)【優先日】2017-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(71)【出願人】
【識別番号】519285134
【氏名又は名称】ノルレーズ アーペーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(72)【発明者】
【氏名】スコガード、ペーテル
(72)【発明者】
【氏名】ファヴァ、グレッグ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】網膜および緑内障疾患を治療するための、操作しやすく安価でコンパクトで汎用性のある医療用レーザ装置を提供する。
【解決手段】光凝固または光熱刺激のための光熱眼科治療用装置であって、前記装置は、診断機器と、アダプタユニットと、を備え、前記診断機器は、自由空気照明出力経路に沿って照明出力部から標的領域に向かって照明光を放射し、自由空気観察経路に沿って前記標的領域から光を受け取り、前記標的領域の拡大画像を提供するように構成され、前記アダプタユニットは、前記診断機器に着脱自在に取り付け可能なハウジングと、480nmから632nmまでの波長範囲の光熱眼科治療に適した波長の光を放射するように構成された治療用レーザダイオードと、前記ハウジングが前記診断機器に取り付けられたときに、放射された光を治療光ビームとして前記標的領域に向かって導くように構成された1つまたは複数の光学素子と、を備える。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に光凝固または光熱刺激のための光熱眼科治療用装置であって、
診断機器と、
アダプタユニットと、
を備え、
前記診断機器は、自由空気照明出力経路に沿って照明出力部から標的領域に向かって照明光を放射し、自由空気観察経路に沿って前記標的領域から光を受け取り、前記標的領域の拡大画像を提供するように構成され、
前記アダプタユニットは、
-前記診断機器に着脱自在に取り付け可能なハウジングと、
-前記ハウジング内に配置された少なくとも1つの治療用ダイレクトダイオードレーザであって、480nmから632nmまでの波長範囲の光熱眼科治療に適した波長の光を放射するように構成された治療用レーザダイオードを有する治療用ダイレクトダイオードレーザと、
-前記ハウジングが前記診断機器に取り付けられたときに、放射された光を治療光ビームとして前記標的領域に向かって導くように構成された1つまたは複数の光学素子と、
を備え、
前記治療用ダイレクトダイオードレーザは、前記ハウジングが前記診断機器に取り付けられたときに前記観察経路の上方またはそれに沿って配置され、
前記光学素子の少なくとも1つは、前記ハウジングが動作位置で前記診断機器に取り付けられたときに、前記診断機器の前記自由空気観察経路および前記自由空気照明出力経路の少なくとも1つに延びるように構成される装置。
【請求項2】
前記光学素子のうちの1つ以上は、自由空間焦点面に直径50μmから500μmまでのスポットサイズを有するように治療ビームを成形するように構成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記治療用レーザダイオードは、眼科治療に適した波長の光を放射するように構成されたモノリシックのシングルモードまたはマルチモード治療用レーザダイオードである、
請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記1つまたは複数の光学素子は、前記放射された光のビームプロファイルを調節し、前記治療光ビームを前記標的領域に向けて所定の方向に沿って方向付ける、1つ以上のレンズおよび/または1つ以上のビームシェーパおよび/または1つ以上のビームホモジナイザーを備える、
先の請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記アダプタユニットは、
-実質的に直線偏光状態p1でレーザ光を放射するように構成された、眼科治療に適した波長の第1のモノリシックマルチモード治療用レーザダイオードと、
-眼科治療に適した波長であってp1に直交する、実質的に直線偏光状態p2でレーザ光を放射するように構成された第2のモノリシックのシングルモードまたはマルチモード治療用レーザダイオードと、
-前記第1および第2のモノリシックのシングルモードまたはマルチモード治療用レーザダイオードから放射された前記第1および第2のレーザ光を結合して結合レーザ光を生成するように構成された偏光ビームスプリッタと、
-放射された前記第1および第2のレーザ光および/または前記結合レーザ光のビームプロファイルを調整し、前記結合レーザ光を治療光ビームとして前記標的領域に向かう所定の方向に方向付けるための1つまたは複数のレンズ、ビームシェーパ、またはビームホモジナイザーと、
を備える、
先の請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記1つまたは複数の光学素子は、自由空間の前記治療光ビームを前記照明出力経路に方向づけるように構成されたミラーを備える、
先の請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記放射された光は、例えば510nmから580nmまで、例えば510nmから540nmまで、例えば510nmから530nmまで、例えば510nmから525nmまで、例えば520nmまたは532nm、または例えば530nmから580nmまで、例えば532nm、561nmまたは577nmのように、500nmから600nmまでの範囲の波長である、
先の請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記放射された光は、例えば200mWから500mWまで、例えば300mWから1000mWまで、例えば400mWから2000mWまでのように30mWから3000mWまで、30mWから2000mWまでの範囲の出力である、
先の請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
操作者から音声入力を受信し、音声入力をアダプタユニットへの制御信号に変換し、任意選択で、アダプタユニットの動作パラメータを示す可聴信号を出力するように構成された音声入力ユニットを備える、
先の請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記音声入力ユニットは、前記音声入力ユニットと前記アダプタユニットとの間の通信のための無線通信インタフェースを備える、
請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記装置は、治療光のパルスのシーケンスとして前記治療光ビームを放射するように構成され、
前記装置は、治療中に放射されたパルスの数をカウントするように構成され、
前記音声入力ユニットは、前記放射されたパルスの数を示す可聴出力を出力するように構成される、
請求項9または10に記載の装置。
【請求項12】
前記音声入力ユニットは、前記放射された治療光ビームの所望の出力を示す、および/または前記放射された治療光ビームの出力の所望の変化を示す音声出力を受信するように構成され、
前記装置は、前記受信した音声入力に応答して、前記放射された治療光ビームの出力を調整するように構成される、
請求項9から11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
前記装置は、治療光のパルスのシーケンスとして前記治療光ビームを放射するように構成され、
前記音声入力ユニットは、前記放射された治療光ビームの所望のパルス幅および/または繰り返し間隔を示す、および/または前記放射された治療光ビームのパルス幅および/または繰り返し間隔の所望の変化を示す音声出力を受信するように構成され、
前記装置は、前記受信した音声入力に応答して、前記放射された治療光ビームのパルス幅および/または繰り返し間隔を調整するように構成される、
請求項9から12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
前記アダプタユニットは、トノメーターマウントに着脱可能に係合するように構成された取付け要素を備える、
先の請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記アダプタユニットは、動作位置と停止位置との間で移動可能に、前記診断機器に移動可能に取り付け可能である、
先の請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記アダプタユニットは、電力、および任意選択で制御信号を受け取るように構成された有線入力接続のみを備える、
先の請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記アダプタユニットは、好ましくはDC電力を受け取るように構成された、電力を受け取るための入力部を備える、
先の請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記アダプタユニットは、前記治療用ダイオードレーザ、制御回路、および前記1つまたは複数の光学素子を収容する単一のハウジングを備える、
先の請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
AC/DCコンバータおよび/またはバッテリを含む、前記アダプタユニットから分離された電源ユニットを備える、
先の請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記アダプタユニットから分離され、前記アダプタユニットに通信可能に結合されたユーザ端末を備え、
前記ユーザ端末は、ユーザインタフェースを提供し、ユーザコマンドを受信し、受信したユーザコマンドに応答して制御コマンドを前記アダプタユニットに転送するように動作可能である、
先の請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
音声入力を受信し、および/または可聴出力を出力するように構成された通信ユニットを備える、
先の請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
光凝固または光熱刺激などの光熱眼科治療用装置であって、前記装置は、
-光を放射するように構成された少なくとも1つの治療光源と、
-前記放射された光を治療光ビームとして方向付けるように構成された1つ以上の光学素子と、
-前記放射された光の出力を制御するように動作可能な制御装置と、
-音声入力を受信し、および/または可聴出力を出力するように構成された通信ユニットと、
を備える。
【請求項23】
前記装置は、治療光のパルス列として前記治療光ビームを放射するように構成され、
前記制御装置は、治療中に放射されたパルスの数をカウントするように構成され、
前記通信ユニットは、前記放射されたパルスの数を示す可聴出力を出力するように構成される、
請求項21または22に記載の装置。
【請求項24】
前記通信ユニットは、前記放射された治療光ビームの所望の出力を示す、および/または前記放射された治療光ビームの出力の所望の変化を示す音声出力を受信するように構成され、
前記制御装置は、前記受信した音声入力に応答して、前記放射された治療光ビームの出力を調整するように構成される、
請求項21から23のいずれかに記載の装置。
【請求項25】
前記通信ユニットは、前記放射された治療光ビームの所望のパルス幅および/または繰り返し間隔を示す、および/または前記放射された治療光ビームのパルス幅および/または繰り返し間隔の所望の変化を示す音声出力を受信するように構成され、
前記制御装置は、前記受信した音声入力に応答して、前記放射された治療光ビームのパルス幅および/または繰り返し間隔を調整するように構成される、
請求項21から24のいずれかに記載の装置。
【請求項26】
診断機器に取り付け可能なアダプタユニットであって、前記診断機器が、自由空気照明出力経路に沿って照明出力部から眼科治療のための標的領域に向かって照明光を放射し、自由空気観察経路に沿って前記標的領域から光を受け取り、前記標的領域の拡大画像を提供するように構成されるアダプタユニットであって、
-前記診断機器に着脱自在に取り付け可能なハウジングと、
-前記ハウジング内に配置された少なくとも1つの治療用ダイレクトダイオードレーザであって、480nmから632nmまでの波長範囲の光熱眼科治療に適した波長の光を放射するように構成された治療用レーザダイオードを有する治療用ダイレクトダイオードレーザと、
-前記ハウジングが前記診断機器に取り付けられたときに、放射された光を治療光ビームとして前記標的領域に向かって導くように構成された1つまたは複数の光学素子と、
を備え、
前記光学素子の少なくとも1つは、前記ハウジングが動作位置で前記診断機器に取り付けられたときに、前記診断機器の前記自由空気観察経路および前記自由空気照明出力経路の少なくとも1つに延びるように構成されるアダプタユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメラニンまたは血液などの患者の眼の組織に対して光の凝固を引き起こすことによる光熱眼科治療のための、特に網膜および緑内障疾患を治療するための光凝固または光熱刺激のための装置、特に、眼科治療のための治療用光を放射するための医療用レーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザは例えば、米国特許第5,147,349号、米国特許出願公開第2011/0098692号および米国特許出願公開第2004/0078029号に記載されているような、眼科手術システムなどの手術のための医療分野で広く使用されている。
【0003】
レーザ源については、例えば米国特許第4,917,486号に記載されているような赤外線レーザダイオードを含む多くの技術が知られている。最近、例えば、米国特許第6,370,168号に記載されているような、光励起半導体レーザが、例えば、光凝固または光熱刺激システムの製造業者によって広く採用されている。このようなシステムは、大規模な医療センター、病院、および個人診療所で使用される。加えて、手術手順を自動化するために様々な技術が今日探求されている(例えば、Becker, B. C., MacLachlan, R. A., Lobes, L. A.,およびRiviere, C. N. (2010)による「Semiautomated intraocular laser surgery using handheld instruments」(Lasers Surg. Med., 42: 264-273. doi: 10.1002/lsm.20897)を参照)。他の研究は、Yang, S., Lobes, L. A., Martel, J. N. and Riviere, C. N. (2015)による「Handheld-automated microsurgical instrumentation for intraocular laser surgery」(Lasers Surg. Med., 47: 658-668. doi: 10.1002/lsm.22383)によって行われている。これらの努力にもかかわらず、治療現場レベルでの光凝固または光熱刺激レーザを含む眼科手術システムの展開は、ほとんど存在しない。
【0004】
光凝固または光熱刺激などの光熱療法は、眼の組織が、選択された明確な標的部位において短時間で十分なエネルギーを吸収することができるように、十分に高い出力を必要とする。
【0005】
米国特許出願公開第2005/267450号は、半導体励起固体レーザを備えた光源ユニットがバヨネット結合によって装置の本体に取り付けられる眼科治療装置を開示している。半導体励起固体レーザからの光ビームは眼科治療装置の本体に入射し、装置の内部光路に導入される。この解決策は外部光ファイバケーブルの必要性を回避するが、装置の本体にレーザ光線を導入するための特殊なインタフェースを有する専用のカスタマイズされた眼科治療装置を必要とする、かなりかさばり、複雑で、高価な解決策である。
【0006】
これに関連して、一般に、操作者の使いやすさを改善した眼科治療用装置を提供することが望ましい。
【0007】
さらに、一般に、費用対効果の高い方法で製造することができる眼科治療用装置を提供することが望ましい。
【0008】
さらに、一般に、コンパクトで汎用性のある解決策を提供することが望ましい。
【0009】
さらに、一般に、既存の解決策の複雑さを低減することが望ましい。
【0010】
さらに、一般に、耐久性のある眼科治療用装置を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0011】
第1の態様によれば、本明細書に開示されるのは、光熱眼科治療、特に光凝固または光熱刺激のための装置、および特に、眼科治療のための治療用レーザ光を放射するための装置である。装置は、診断機器と、前記診断機器と直接物理的に接触する診断機器アダプタユニット(以下、「アダプタユニット」とも称する)とを備える。診断機器は、照明出力部から自由空気(free-air:フリーエア)照明出力経路に沿って、眼科治療のための標的領域に向かって照明光を放射するように構成される。診断機器はさらに、自由空気観察経路に沿って標的領域から光を受け取り、標的領域の拡大された画像を提供するように構成される。アダプタユニットは、
-前記診断機器に着脱自在に取り付け可能なハウジングと、
-ハウジング内に配置された少なくとも1つの治療用ダイレクトダイオードレーザであって、480nmから632nmまでの波長範囲の光熱眼科治療に適した波長の光を放射するように構成された治療用レーザダイオードを有する治療用ダイレクトダイオードレーザと、
-ハウジングが前記診断機器に取り付けられたときに、放射された光を治療光ビームとして標的領域に向かって導くように構成された1つまたは複数の光学素子と、を備え、治療用ダイレクトダイオードレーザは、ハウジングが前記診断機器に取り付けられたときに前記観察経路の上方またはそれに沿って配置され、光学素子の少なくとも1つが、ハウジングが動作位置で前記診断機器に取り付けられたときに、診断機器の自由空気観察経路および自由空気照明出力経路の少なくとも1つに延びるように構成される。
【0012】
本開示はまた、このような眼科治療用装置のためのアダプタユニットにも関する。
【0013】
ダイレクトダイオードレーザの利点は、電力消費が低く、アダプタユニット内に収容でき得るに十分な少ない熱しか発生しないことである。前記または各治療用レーザダイオードはモノリシックデバイス、即ち、480nmから632nmまでの波長で光熱眼科治療に適したレーザ光、特に緑色および/または黄色の可視範囲の光を直接放射するように動作可能な単一の集積回路に一体化された光学システムであり、これにより、コンパクトな設計を提供し、ハウジングをとりわけ軽量且つ小型にすることができる。これにより、ハウジングを診断機器に直接、好ましくは移動可能に取り付けることができる。一般に、治療用ダイレクトダイオードレーザは電力を受けて、電力によって駆動し、治療用光を放射する。ダイレクトダイオードレーザ源を有するアダプタユニットは、半導体励起固体レーザを含むユニットよりも5~10倍少ない冷却しか必要としないことが判明した。さらに、ダイレクトダイオードレーザ源を有するアダプタユニットはかなりコンパクトにすることができ、制御および動作が著しく複雑でない。
【0014】
アダプタユニットが診断機器の観察経路の上方またはそれに沿って診断機器に取り付けられるので、眼科治療用装置のコンパクトな設計が提供され、アダプタユニットは、機器の他の部分と干渉することなく、既存の診断機器に後付けすることができる。さらに、眼科治療用装置は、アダプタユニットと外部治療光源との間の外部光ファイバ連結を必要としない。アダプタユニットは、治療光ビームを診断機器の自由空気照明出力経路および/または自由空気観察経路に導入するので、治療光ビームのどの部分も、診断機器のハウジングまたは内部光路に進入する必要がなく、したがって、アダプタユニットを従来の診断機器に容易に後付けすることができる。
【0015】
一体化された治療用ダイレクトダイオードレーザを有するアダプタユニットは、比較的低い製造コストで製造することができ、既存の診断機器に後付けすることができる。特に、治療光ビームが診断機器の自由空気照明出力経路および/または自由空気観察経路に沿って導入される観察経路の上方またはそれに沿って治療用ダイレクトダイオードレーザを有するアダプタユニットを取り付けることは、アダプタユニットが診断機器の他の構成要素と干渉することなく、且つ診断機器に対する組織的変更を必要とすることなく、アダプタユニットを様々な異なるタイプの診断機器に取り付けることを可能にする。
【0016】
アダプタユニットの実施形態は、観察経路の上またはそれに沿って診断機器に直接取り付けられ、
-光を放射する治療用ダイオードレーザ光源、および
-放射された光を、診断機器からの照明光によって照明される標的領域に治療光ビームとして向かわせる光学素子、
を備える。
【0017】
したがって、操作者は、光ファイバケーブルを介して機器に接続されたスペースを取る遠隔治療光源を操作する必要がないだけでなく、アダプタユニットを従来の現存の診断システムに容易に取り付けることができる。これは、操作者の使いやすさの点で有利である。これのさらなる長所は、遠隔光源および/または光ファイバケーブルへの偶発的な事象による誤りの危険性が低減されること、つまり、より安全で信頼性の高い外科手術である。一般に、本明細書に記載される装置の実施形態の操作者は、内科医、医師、外科医、または同様の保健専門家であり得る。
【0018】
診断機器の実施形態は一般に、照明光源と、照明光源からの光を照明出力経路に沿って標的領域に向けるための1つ以上の光学素子、例えば、1つ以上のレンズおよび/または1つ以上のミラーおよび/または1つ以上のビームスプリッタなどを備える。診断機器は、照明光源から照明出力部への内部照明経路に沿って、診断機器の照明出力部に向かって照明光を導くことができる。内部照明経路は複数の経路セグメント、例えば、照明光ビームを方向転換させるための適切な光学素子間に延在する複数の直線経路セグメントを含むことができる。
【0019】
診断機器の実施形態は1つ以上の光学素子、例えば、1つ以上のレンズおよび/または1つ以上のミラーおよび/または1つ以上のビームスプリッタおよび/または顕微鏡および/またはズーム拡大鏡などをさらに含み、これらは、観察経路に沿って、患者の眼の1つ以上の部分、特に、照明される標的領域の拡大された画像を提供するように構成される。診断機器の光学素子は、照明出力経路および観察経路が標的領域内で交差し、かつ/または標的領域に集束されるように構成されてもよい。特に、診断機器の実施形態は一般に、観察経路に沿って光が受け取られる標的領域の拡大された画像を提供するための、顕微鏡またはズーム拡大鏡などの拡大光学装置を備える。診断機器は、拡大された画像を直接観察するための1つまたは複数の接眼レンズ、または拡大された画像を撮像するためのカメラなどの撮像装置を備えることができる。あるいは、またはさらに、診断機器はそのような接眼レンズおよび/または撮像装置のためのインタフェースを備えてもよい。拡大光学装置は、典型的には診断機器の観察ハウジング内に収容される。いくつかの実施形態では、治療用ダイレクトダイオードレーザが観察ハウジングの上方に、または観察ハウジングと同じ高さに配置され、例えば、観察ハウジングに収容された取付けプラットフォーム、例えば、観察ハウジングの上面に取り付けられる。
【0020】
いくつかの実施形態では、診断機器がスリットランプまたは手術用顕微鏡であり、すなわち、アダプタユニットはスリットランプアダプタユニットまたは手術用顕微鏡のためのアダプタユニットであってもよい。
【0021】
一般に、スリットランプという用語は、患者の眼の前方部分および/または後方部分の拡大画像を提供するように動作可能な診断器具を指す。これは、様々な拡大画像を提供することができる顕微鏡とみなすことができ、接触または非接触レンズのいずれかを追加することによって、診断または治療を必要とし得る網膜または眼の他の部分の観察を可能にすることができる。「スリットランプ」という名前はスリットランプによって提供される白色光照明を指し、この照明はしばしば、標的領域において照明の「スリット」に機械的に細くされる。このスリット照明は後方散乱、反射を低減し、我慢を強いられる患者により快適である。しかし、本明細書の目的のために、スリットランプという用語は、スリットを含まないそのような装置も指す。
【0022】
照明出力経路は診断機器の照明出力部から標的に向かって延在する、すなわち、照明出力経路という用語は、照明光が診断機器を出る照明出力部と、照明光が標的に入射する位置との間の照明光の自由空気経路を指すことが意図される。照明出力部はレンズ、アパーチャー、ミラー等のような診断機器の光学素子によって、特に、診断機器の照明経路を画定する要素の光学列の最後の光学素子によって定められてもよい。
【0023】
同様に、観察経路は標的領域から診断機器の観察入力部まで延在し、すなわち、観察経路という用語は、標的領域の拡大された画像を提供するために診断機器が標的領域から光を受ける自由空気軸を指すように意図され、観察経路は標的領域から診断機器の観察入力部まで延在する。観察入力部は、レンズ、アパーチャー、ミラー等のような診断機器の光学素子によって、特に、入射光を受ける拡大光学装置の最初の光学素子によって定められてもよい。治療光ビームが標的領域に向けられるアダプタ要素の光学素子(例えば、ダイクロイックミラー)は、標的領域と診断機器の観察入力部との間に配置される。
【0024】
治療用ダイレクトダイオードレーザを含むアダプタユニットの少なくとも一部は観察経路の上方またはそれに沿って配置されるので、アダプタユニットは診断機器の観察入力部の上方またはそれに沿って配置される。ここで、用語「観察経路の上方」は、アダプタユニットが観察経路の真上に位置するか、すなわち、観察経路と垂直に整列しているか、または、観察経路から水平に変位しているかにかかわらず、診断機器が使用されているとき、観察経路よりも高い位置を指すことが意図される。用語「観察経路に沿って」は、観察経路と整列した位置を指すことが意図される。
【0025】
いくつかの実施形態では、治療用ダイレクトダイオードレーザもまた、照明出力経路の上方またはそれに沿って配置される。特に、いくつかの実施形態では、観察経路および照明出力経路が同じ高さであってもよい。一般に、照明出力経路および観察経路は少なくとも標的領域において、すなわち治療される患者の眼の標的組織において、互いに一致(例えば、交差)し得る。照明光および/または観察光学系は、標的領域に集束されてもよい。
【0026】
一般的なタイプの診断用スリットランプは、それぞれ「Zeiss型」または「Haag-Streit型」設計と一般に呼ばれる2つのタイプを含む。両方のタイプのスリットランプにおいて、照明出力経路および観察経路は、典型的には実質的に水平である。「Zeiss型」のスリットランプでは、照明源が照明出力経路の下であって、観察経路よりも低い位置に配置される。したがって、照明光は照明光源から、照明光を照明出力経路に沿って標的領域に向け直す1つまたは複数のミラーなどに向けて上方に方向付けられる。Zeiss型スリットランプは、「下部照明型」スリットランプとも呼ばれる。「Haag-Streit型」スリットランプでは、照明光源が照明出力経路の上方かつ観察経路の上方に配置される。したがって、照明光は照明源から、照明光を照明出力経路に沿って標的領域に向け直す1つまたは複数のミラーなどへ向けて下方に方向付けられる。Haag-Streit型スリットランプは、「上部照明型」スリットランプとも呼ばれる。本明細書に記載されるアダプタユニットの実施形態は両方のタイプに、および任意選択で、他のタイプのスリットランプに後付けされてもよい。
【0027】
手術用顕微鏡はしばしば、下方に向けられた照明出力経路に沿って、患者の背中が上向きに横たわる患者に向かって照明光を出力するように構成される。同様に、手術用顕微鏡はしばしば、上方に向けられた観察経路に沿って、患者の背中が上向きに横たわる患者から光を受け取るように構成される。したがって、観察経路の上方またはそれに沿った位置は、手術用顕微鏡への観察入力部、すなわち、光の入射点の上方またはそれに沿った位置である。
【0028】
一般に、治療用ダイレクトダイオードレーザは、標的領域と、操作者が標的領域の拡大された画像を観察することができる接眼レンズ(または標的領域の拡大された画像を撮像するように構成された撮像装置)との間の光路全体の上方またはそれに沿って配置することができる。特に、治療用ダイレクトダイオードレーザは診断機器の拡大光学装置の上方またはそれに沿って配置されてもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、ハウジングが観察経路に対して移動、例えば、旋回、スライド、または軸旋回させることができるように、診断機器に移動可能に取り付けることができる。いくつかの実施形態では、ハウジングが(アダプタユニットがその動作位置にあるときに治療光ビームが標的領域に向けられるように)動作位置と停止位置との間で選択的に移動可能であってもよい。したがって、診断機器を治療光ビームなしで使用する場合、ハウジングを診断機器から取り外す必要なしに、ハウジングを停止位置に移動させることができる。
【0030】
ハウジングは取付け要素を含むことができ、診断機器は、取付け位置が観察経路の上方またはそれに沿って位置することができる取付け位置に取付けプラットフォームを含むことができる。取付け要素は、ハウジングの着脱可能な取付けのために取付けプラットフォームと係合するように構成されてもよい。したがって、診断機器に取り付けられると、ハウジングの取付け要素は、直接物理的な接触で、またはアダプタ要素を介して、取付けプラットフォームに係合し得る。取付けプラットフォームは、トノメーターマウント、ダブテールマウント、またはハウジングの取付け要素がネジ、スナップコネクタ、ラッチコネクタ、バヨネットコネクタ、または任意の他の適切な種類の協働する取付け部材によって取り付けられ得る任意の他の適切な取付けプラットフォームを備えてもよい。既存する多くのスリットランプは、「トノメーターマウント」と呼ばれる、眼科における診断または治療に必要な様々な外部装置を取り付けるように動作可能な取付けプラットフォームを備える。アダプタユニットが、トノメーターマウントに着脱可能に係合するように構成された取付け要素を備える場合、既存のスリットランプへのアダプタユニットの特に好都合な後付けが容易になる。好ましくは、アダプタユニットがHaag-Streit型およびZeiss型のスリットランプの両方に選択的に後付けされてもよい。
【0031】
アダプタユニットの取付け要素および/またはハウジングは、ハウジング全体、またはハウジングの容積の少なくとも50%、例えば、ハウジングの容積の少なくとも75%、例えば、ハウジングの容積の少なくとも90%など、ハウジングの少なくとも大部分が、ハウジングが診断機器に取り付けられたとき、およびアダプタユニットがその動作位置にあるとき、観察経路の上方に位置するように構成されてもよい。
【0032】
治療用レーザダイオードは、シングルモードまたはマルチモード治療用レーザダイオードであってもよい。治療用レーザダイオードは、眼科治療に適した波長で、すなわち、周波数変換のためのさらなる構成要素、ダイオードによって励起される他のレーザなどを必要とせずに、レーザ光を直接放射するように構成される。これにより、周波数変換器の必要性が回避されるので、ハウジングの寸法およびアダプタユニットの重量をさらに低減することができる。これにより、診断機器の他の構成要素を必要以上に妨害することなく、診断機器の観察経路の上方またはそれに沿ってアダプタユニットを診断機器に取り付けること、特に移動可能に取り付けることが容易になる。特に、小型のハウジングと、観察経路の上方または観察経路に沿った取付け位置での取付けとにより、システムの操作者がスリットランプのベースでもあるテーブルトップなどのシステムの関連部分に自由にアクセスすることが可能になる。さらに、遠隔治療光源のための空間は必要とされない。
【0033】
好ましくは、シングルモードまたはマルチモード治療用レーザダイオードが緑色治療用レーザダイオードであり、好ましくは1000mW以上の最大出力を有する、例えば510nmから540nmまで、例えば510nmから530nmまで、例えば532nmまたは520nmのように500nmから570nmの範囲の光を放射する、緑色治療用レーザダイオードである。現在利用可能なこのような緑色治療用レーザダイオードの例には、日本の日亜化学工業株式会社から入手可能なレーザダイオード「NDG7K75T」およびLasertack GmbHから入手可能なLDM-520-1000-Aレーザダイオードが含まれる。しかしながら、他のダイレクトダイオードレーザ、例えば、570nm~590nmの範囲の黄色域で、例えば577nmのレーザ光を、好ましくは1000mW以上の最大出力で放射するレーザダイオードを使用することもできる。
【0034】
治療光ビームは患者の眼の光熱眼科治療に適した、特に、例えば網膜および緑内障疾患を治療するために、光凝固または光熱刺激などの治療的眼科処置に適した強度および波長を有する。光熱眼科治療に適した波長は一般に、400nmから850nmまでの範囲などの可視および/または近赤外波長を含む。特に、治療光ビームは、例えば500nmから600nmまで、例えば510nmから580nmまで、例えば510nmから540nmまで、例えば510nmから530nmまで、例えば510nmから525nmまで、例えば532nmまたは520nm、または530nmから580nmまで、例えば532nm、561nmまたは577nmのように480nmから632nmまでの範囲の波長を有する。従って、治療用レーザダイオードによって放射される光は、例えば500nmから600nmまで、例えば510nmから580nmまで、例えば510nmから540nmまで、例えば510nmから530nmまで、例えば510nmから525nmまで、例えば520nmまたは532nmの、または例えば530nmから580nmまで、例えば532nm、561nmまたは577nmのように480nmから632nmまでの範囲の波長を有することが好ましい。治療用レーザダイオードの波長は、通常、その中心波長として表される。治療用レーザダイオードは一般に、その中心波長周辺の小さな波長範囲、例えば、その中心波長周辺の+/-3nm内の光を放射することができることが理解されるであろう。
【0035】
いくつかの実施形態では、ダイレクトダイオードレーザが100mW未満の平均出力を有する。他の実施形態では、治療用ダイレクトダイオードレーザが、例えば200mWを超える、例えば300mWを超える、例えば400mWを超えるなどの100mWを超える、および、例えば2000mW未満、例えば1500mW未満、例えば1000mW未満、例えば500mW未満などの3000mW未満の平均出力を有する。他の実施形態では、治療用ダイレクトダイオードレーザが300から1000mWまでの平均出力を有する。したがって、治療用レーザダイオードは、例えば200mWを超える、例えば300mWを超える、例えば400mWを超えるなどの100mWを超える、および、例えば2000mW未満、例えば1500mW未満、例えば1000mW未満、例えば500mW未満などの3000mW未満の平均出力を有することができる。他の実施形態では、治療用レーザダイオードが300から1000mWまでの平均出力を有する。
【0036】
いくつかの実施形態において、治療光ビームは、例えば30mWから2000mWまで、例えば200mWから500mWまで、例えば300mWから1000mWまで、例えば400mWから2000mWまでのように30mWから3000mWまでの範囲の出力を有する。装置は治療光ビームの出力が最大出力まで、例えば、少なくとも1W、好ましくは少なくとも1.5W、より好ましくは1.5Wを超える最大出力まで、ユーザ選択可能な出力に調整され得るように、治療光ビームの出力が調整されることを可能にするように構成されることが好ましい。
【0037】
いくつかの実施形態では、アダプタユニットの1つ以上の光学素子はレンズ、ビームシェーパ、または放射光のビームプロファイルを調整するためのビームホモジナイザーから選択される1つ以上の要素を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の光学素子は、特に治療光ビームのビーム経路が観察経路と、好ましくは少なくとも標的領域で照明出力経路と一致する(例えば、交差する)ように、治療光ビームを自由空間内のアダプタユニットの出力部から標的領域に向かって方向付けるように構成される。治療光ビームは、標的領域に集束させることができる。治療光ビームは観察経路と同軸に、平行に、または観察経路に対してある角度で方向付けられてもよい。
【0038】
アダプタユニットの光学素子は、治療光ビームが観察経路と、好ましくは少なくとも標的領域で照明出力経路と一致(例えば交差)するように、アダプタユニットの治療光ビームを標的領域に方向付けるための、例えば光学素子の光学列の最後の素子としてのミラー、例えばダイクロイックミラーなどの光学素子を含むことができる。アダプタユニットは、アダプタユニットが例えばトノメーターマウントを介して診断機器に取り付けられ、少なくともその動作位置にもたらされたときに、ミラーが診断機器の自由空気観察経路および/または自由空気照明経路内に延びるように構成され、すなわち、アダプタユニットのビーム経路は、診断機器のいかなるハウジングおよび内部ビーム経路に入る必要がなく、それによって、アダプタユニットを従来の診断機器に後付けすることができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の光学素子が前記光を均質化するように構成されたビーム成形光学系を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、光学素子が自由空間(すなわち、空気中)焦点面に50μmから500μmまでのスポットサイズ(直径)を有するように治療ビームを成形するように構成され、したがって、選択的かつ効率的な光熱処理を可能にする。1つ以上の光学素子は、例えば50μmから500μmまでの範囲のユーザ操作スポットサイズ選択を可能にするように調整可能であってもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、アダプタユニットが、パルス幅が10μsと1sとの間であるパルスビームとして治療用レーザビームを提供するように構成される。例えば、パルスビームは、10msから1sまでの持続時間/幅を有するパルス包絡線を提供するマイクロパルスの形態であってもよい。マイクロパルスのない他の実施形態では、パルスが10msと1sとの間の幅を有することができる。好ましくは、パルス幅はユーザ選択可能である。好ましくは、連続するパルス間の間隔、すなわち繰り返し間隔もユーザ制御可能である。
【0042】
いくつかの実施形態ではアダプタユニットがモノリシックのシングルモード、またはマルチモード治療用レーザダイオードと、治療用レーザダイオードからのレーザ光を均質化するためのビームホモジナイザーとを備え、治療用レーザダイオードおよびビームホモジナイザーはアダプタユニットにレーザ光を伝送するための光ファイバケーブルを使用することなく、眼科系の診断機器に治療用レーザ光を提供するように構成される。
【0043】
一般に、いくつかの実施形態では、アダプタユニットの光学素子はビームホモジナイザーを含む。いくつかの実施形態では、ビームホモジナイザーは、マイクロレンズアレイまたは準ランダム拡散表面組織である。例えば、Thorlabs Inc.から入手可能な「Engineered Diffuser」またはEdmund Opticsから入手可能なマイクロレンズである。マイクロレンズは、好ましくは精密溶融シリカ基板から作製される。他の実施形態では、ビームホモジナイザーはNewport Corporationから入手可能な「Light Pipe homogenizer」である。
【0044】
一般的に、いくつかの実施形態において、眼科治療用装置は、アダプタが取り付けられた(すなわち、アダプタユニットとしてスリットランプなどの診断機器に取り付けられた)モノリシックのシングルモード、またはマルチモード治療用レーザダイオード光源と、治療用レーザダイオードから患者の眼への眼科治療に適した波長で光をコリメートまたは集束するためのレンズ構成とを備える。この利点は、必要な構成要素が少なく、コンパクトな設計が容易になることである。好ましくは、システムがビームホモジナイザーを含む。好ましくは、装置が外部光ファイバを含まない、または少なくとも遠隔治療光源からアダプタユニットにレーザ光を供給する光ファイバを含まない。
【0045】
いくつかの実施形態では、眼科治療用装置が治療波長と等しいかまたは異なる波長で、操作者のためのパイロット(照準)ビームとして機能するように、(例えば、1mW未満など、5mW未満の平均出力を有する)パイロット光ビームを放射するための、(治療ダイレクトダイオードレーザと比較して)低出力なパイロット光源、例えば、パイロットレーザダイオードをさらに備える。いくつかの実施形態では、パイロット光源がアダプタユニットのハウジング内に収容される。
【0046】
いくつかの実施形態では、アダプタユニットが単一の治療用レーザダイオード、および任意選択でパイロットレーザダイオードなどのパイロット光源を含み、したがって、特に小型で複雑でない機器を提供する。他の実施形態では、アダプタユニットが2つ以上の治療用レーザダイオード(および、任意選択で、パイロットレーザダイオードなどのパイロット光源)を含み、1つ以上の光学素子は、例えば、波長および/または偏光多重化を使用して、2つ以上の治療用レーザダイオードからの光を結合/多重化するように構成される。例えば、この目的のために、1つまたは複数の光学素子は、体積ブラッググレーティング(volume Bragg grating)またはダイクロイックミラーを含むことができる。したがって、コンパクトで多用途のアダプタユニットによって、特に高出力の治療ビームを生成することができる。いくつかの実施形態では、アダプタユニットが眼科治療用装置のより高い出力を得るために多重化される3つ以上の治療用レーザダイオードをさらに含む。
【0047】
例えば、いくつかの実施形態では、アダプタユニットは、
-実質的に直線偏光状態p1でレーザ光を放射するように構成された、眼科治療に適した波長の第1のモノリシックマルチモード治療用レーザダイオード、
-眼科治療に適した波長であってp1に直交する、実質的に直線偏光状態p2でレーザ光を放射するように構成された第2のモノリシックのシングルモードまたはマルチモード治療用レーザダイオード、および
-前記第1および第2のモノリシックのシングルモードまたはマルチモード治療用レーザダイオードから放射されたレーザ光を結合するように構成された偏光ビームスプリッタ、
を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、第2の治療用レーザダイオードが、第1の治療用レーザダイオードに対して90度の角度で第2の治療用レーザダイオードを取り付けることによって、または偏光を回転させるために1つのダイオードの後に半波長板を配置することによって、実質的に直線偏光状態p2がp1に直交するレーザ光を放射するように構成されてもよい。
【0049】
好ましくは、レーザダイオードの各々が、例えば200mWを超える、例えば300mWを超える、例えば400mWを超えるなどの100mWを超える、および例えば2000mW未満、例えば1500mW未満、例えば1000mW未満、例えば500mW未満などの3000mW未満の平均出力で光を放射するように構成される。他の実施形態では、治療用レーザダイオードが300から1000mWまでの平均出力を有する。好ましくは装置がレーザダイオードからの結合された光の出力が調整されることを可能にするように構成され、結合された光は少なくとも1W、好ましくは少なくとも1.5W、より好ましくは1.5W以上、例えば2W以上の最大出力に調整されてもよい。
【0050】
アダプタユニットの様々な性能パラメータ、特に治療光ビームに関連する性能パラメータを制御する能力は、眼科治療用装置のほとんどの実施形態にとって重要な特徴である。これらの性能パラメータは、光出力、ビーム直径、非点収差、楕円率、強度雑音、ビーム品質、波長、スペクトル線幅、サイドモード抑制比、ビーム集束、ビームパルス幅、パルスの繰り返し間隔、ビーム指向方向、またはそれらの組合せのうちの1つまたは複数を含むことができる。用途に応じて、これらのパラメータのいくつかは簡単に安定化されるべきであり、一方、他のパラメータはユーザの要求に応じて、または自動化された手順の一部として調整可能であるべきである。
【0051】
この目的のために、アダプタユニットは例えば、前記ハウジング内に収容される制御回路をさらに備えてもよく、したがって、いくつかの実施形態では、アダプタユニットから離れたユーザ端末から制御コマンドを受信してもよい、一体化されたデバイスを提供する。遠隔ユーザ端末からの制御コマンドは、有線または無線接続を介して通信されてもよい。例えば、制御コマンドは、上述の性能パラメータのうちの1つまたは複数を調整するためのコマンドを示すことができる。制御回路は例えば、レーザ源制御、サブシステム制御、安全監視、および光パルス生成、温度制御のうちの1つまたは複数上のすべてのサブシステムにコマンドを提供するためのオンボードファームウェアを含むことができる、1つまたは複数の制御PCBとして実装することができる。
【0052】
制御回路は例えば、ユーザ端末から受信した制御コマンドに少なくとも部分的に応答して、アダプタユニットの1つ以上の制御可能なパラメータを調整するように動作可能であってもよい。制御回路は、レーザコントローラとも呼ばれる。特に、アダプタユニットの制御可能なパラメータは、例えば、治療用レーザダイオードの1つ以上の注入電流を含むことができる。
【0053】
制御回路は、アダプタユニットの1つ以上の性能パラメータ、例えば、アダプタユニットによって出力される治療光ビームに関して上述した1つ以上の性能パラメータを調整するように、制御可能なパラメータを調整するように動作可能であってもよい。いくつかの性能パラメータは直接調整可能であってもよく、一方、他のパラメータは1つ以上の他の制御可能なパラメータを変更することによって調整されてもよい。制御回路は性能パラメータを、それぞれの所定のまたはユーザ選択された値に、および/または所定のまたはユーザ選択された範囲内に調整するように、および/または性能パラメータのうちの1つまたは複数を最適化するように構成することができる。
【0054】
例えば、制御回路は、治療用レーザダイオード光源の動作電流を制御することによって、放射光の性能パラメータを制御するように構成されてもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、治療用レーザダイオードが1つまたは複数の温度制御素子、例えばペルチェ冷却器などの1つまたは複数の冷却要素に取り付けられ、制御回路は例えば1つまたは複数の温度制御素子への電流を制御することによって、治療用レーザダイオードおよび/または治療用レーザダイオードの近傍の機械要素の温度を制御するように構成される。この目的のために、アダプタユニットは治療用レーザダイオードまたはその近傍の温度を測定するように動作可能な温度センサを備えてもよく、制御回路は温度制御素子への電流を制御するように構成されてもよい。
【0056】
眼科治療用装置は、レーザ出力パワーをモニタする1つ以上の光検出器をさらに含み得る。この/これらの検出器からのシグナルは、アダプタユニットの出力パワーを制御するために使用され得る。特に、いくつかの実施形態では、アダプタユニットが、好ましくはアダプタユニットのハウジング内に収容された、治療用ダイレクトダイオードレーザから放射された光の一部を受け取り、治療用ダイレクトダイオードレーザの出力パワーをモニタするように動作可能な光検出器、例えば、フォトダイオードを備える。
【0057】
眼科治療用装置は、アダプタユニットに動作電力を提供するための、例えばAC/DCコンバータを含む電源をさらに備えてもよい。電源がアダプタユニットの外部の別個のユニットとして、特に、治療用ダイレクトダイオードレーザを収容するアダプタユニットのハウジングとは別個のハウジング内に設けられる場合、アダプタユニットはアダプタユニットがDC電力のみを受け取るように、いかなるAC構成要素も含む必要はない。いくつかの実施形態では、電源が1つ以上のバッテリ、例えば、充電式バッテリを含む。バッテリ駆動電源はアダプタユニットのハウジングに一体化されるか、または直接的に取り付けられてもよく、または、アダプタユニットから分離され、ワイヤ接続、例えば、電源ケーブルを介してアダプタユニットに電気的に接続されてもよい。いくつかの実施形態では、アダプタユニットは、ユーザがバッテリを選択的に交換できるように、充電式バッテリを取り外し可能に接続することができるレセプタクルを含む。
【0058】
外部ユーザ端末および/または外部電源を設けることにより、アダプタユニットを熱効率のよいプラットフォームとして設計することができる。それとは関係なく、アダプタユニットは、冷却リブなどの能動的および/または受動的冷却手段を備えてもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、アダプタユニットは電力を受け取るための入力部を備える。いくつかの実施形態では、アダプタユニットへの唯一の有線インタフェースは動作電力、好ましくはDC動作電力のための有線接続である。代替の実施形態では、アダプタユニットへの唯一の有線インタフェースは、動作電力のみのための有線接続と、アダプタユニットへの制御信号のための追加インタフェースである。特に、アダプタユニットに光を供給するための光ファイバ接続は必要とされない。
【0060】
ユーザ端末は例えば、アダプタユニットのシャッタを操作することによって、または治療用ダイレクトダイオードレーザへの動作電流をオンにすることによって、患者の眼への治療光ビームの放射を選択的に作動させるように構成されたフットスイッチを含むことができる。フットスイッチは、安全のための冗長接触子を備え得る、有線または無線装置であり得る。フットスイッチはシステムに治療光ビームを標的組織に送達させるように、ユーザによって押されるように動作可能であってもよい。フットスイッチおよびアダプタユニットは、ユーザ端末に通信可能に接続されてもよい。
【0061】
ユーザ端末は、以下のうちの1つまたは複数を備えることができる:
-例えば、1つ以上のPCBとして実装される電力入力部およびAC/DC変換回路;代替的にまたは追加的に、ユーザ端末は、バッテリを備えてもよい。
-ノブおよびディスプレイおよび/またはタッチスクリーンインタフェースを含むことができるユーザインタフェース。ユーザインタフェースは、ユーザが音声コマンドによって、または例えばノブまたはタッチスクリーンインタフェースを介した直接選択によって、所望のパラメータを選択することを可能にする。いくつかの実施形態では、ユーザインタフェースがマイクロフォンまたは他の音声記録デバイスと、話されたコマンドを認識するように構成された音声認識コンポーネントとを備える。ユーザインタフェースは例えば、そのような情報を表示することによって、または可聴音、例えば、ボーカルフィードバックの手段によって、システムの状態に関する情報をユーザにさらに提供することができる。
【0062】
無線通信は、ユーザ端末と制御回路との間の通信のために採用されてもよい。無線通信は、Bluetooth(登録商標)および他の安全な無線通信方法などの既知の規格を使用することができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、眼科治療用装置は、診断機器の動作パラメータを制御するための制御装置を含む。装置は、ユーザが診断機器の動作パラメータを制御することを可能にするユーザインタフェースを提供するための操作コンソールをさらに備えてもよい。アダプタユニットを制御するためのユーザ端末は、診断機器の操作コンソールに統合されてもよいことが理解されるであろう。あるいは、アダプタユニットを制御するためのユーザ端末は診断機器の操作コンソールとは異なる別個の装置であってもよい。特に、いくつかの実施形態では、アダプタユニットと、ユーザ端末と、任意選択で、フットスイッチおよび/または別個の電源とを備え、本明細書で説明する既存の診断機器に動作可能に接続することができるアドオン眼科治療システムを提供することができる。しかし、ユーザ端末および操作コンソールは、例えば、操作者によって選択的に使用され得るか、または少なくともそれぞれのバックアップユーザインタフェースとして動作可能であり得る両方のデバイス上にユーザインタフェースを提供するように、例えば、有線または無線通信インタフェースによって、互いに通信可能に結合され得ることが理解される。
【0064】
眼科治療用装置は音声入力を受信し、および/または可聴出力を出力するように構成された音声入力および/または出力ユニットをさらに備えてもよい。
音声入力および/または出力ユニットは例えば、適切に構成された信号処理ユニットおよび/またはデータ処理ユニットによって具現化される音声認識システムを備えてもよい。音声認識システムは操作者から音声入力を受信し、受信した音声入力を有線または無線通信方式で制御可能なパラメータの設定に変換する。いくつかの実施形態では、音声入力および/または出力システムがアダプタユニットを制御するためにユーザ端末に含まれ、音声コマンドを受信し、受信した音声コマンドをアダプタユニットへの制御コマンドに変換するように動作可能である。いくつかの実施形態では、音声入力および/または出力システムが診断機器およびアダプタユニットの両方に向けられた音声コマンドを処理するように動作可能である。
【0065】
一般に、音声入力は、操作者からの音声コマンドの形態であってもよい。可聴出力は、治療ダイレクトダイオードレーザまたは他の好適な治療光源のパラメータおよび状態を示すことができる。したがって、前記眼科治療用装置を操作する人はアダプタユニットの制御可能なパラメータの音声制御を用いて手術を行うことが可能になり、それによって、操作者は診断機器の接眼レンズから眼を離す必要なく、また手術部位から視覚的焦点を移動させることなく、また器具から手を離すことなく、または操作者が患者の眼に保持することができるレンズから手を移動させることなく、アダプタユニットの動作を制御し、かつ/または手術中に治療光源の性能パラメータをモニタすることが可能になる。これは操作者が手術をより効率的に実行することを可能にし、手術行為は操作者にとって疲れにくく、これは次に、手術の効率および安全を増大させる。
【0066】
本発明者らは、治療ビームの出力および/またはパルス幅および/または繰り返し間隔の調整は治療中に頻繁に調整されなければならないので、これらは音声入力に基づいて制御するのに特に有用なパラメータであることを認識した。
【0067】
また、治療は多くの場合、多数の光パルスのシーケンスとして実行されるので、治療中のパルスの数(例えば、既に印加されたパルスの数、または、目標パルス数まで印加されるべき残りのパルス数)を示す可聴フィードバックが効率的かつ安全な治療のために特に有利であることが理解されている。
【0068】
操作者は、パラメータが操作者の音声コマンドを介して制御されるため、治療光ビーム手術のパラメータを読み取る/確認するために診断機器を介した観察を中断する必要がないので、治療期間が短縮され、効果が向上することがさらに有利である。他の有利な点は、出力パワーおよび/または他のパラメータに関する情報が音声フィードバックによって操作者に提供されることである。
【0069】
いくつかの実施形態では、ユーザ端末が例えば、ユーザ端末がユーザ端末の適切なユーザインタフェースから音声制御オプションを有効/無効にすることを可能にするように、音声制御を使用せずにアダプタユニットの制御を可能にする適切なユーザインタフェースを備える。いくつかの実施形態では、音声コマンドが非音声コマンドに加えて使用されてもよい。
【0070】
音声制御システムは、後続のコマンドに応答するように音声制御システムをトリガする「ウェイクアップ」ワードまたはコマンドに応答することができる。いくつかの実施形態では、音声制御システムが音声コマンドを受信したときに可聴確認応答を提供するように構成される。例えば、アダプタユニットの性能パラメータ(例えば、出力パワー)のパラメータ変更をトリガする音声コマンドの受信に応答して、音声制御システムは、パラメータ変更を可聴的に呼び出すことができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、ユーザ端末が音声認識システムおよび通信デバイスを含む。いくつかの実施形態では、ユーザ端末がディスプレイおよびユーザインタフェースとして動作可能であるように構成されたタブレットコンピュータまたは他の携帯型または適切に小型の処理デバイスとして具現化される。タブレットコンピュータまたは他の処理デバイスは例えば、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、または別の適切な通信技術などを介して無線で、アダプタユニットの制御回路に制御信号を通信するための通信インタフェースをさらに備えることができる。タブレットコンピュータまたは他の処理デバイスは、音声入力および/または音声出力を提供するためのスピーカおよび/またはマイクロフォンをさらに備えることができる。
【0072】
本開示は、上述および後述する眼科治療用装置、対応する装置、システム、方法および/または製品を含む様々な態様に関するものであり、各々は第1の態様に関連して説明された利益および利点の1つまたは複数をもたらし、各々は第1の態様に関連して説明され、および/または添付の請求項に開示された実施形態に対応する1つまたは複数の実施形態を有する。
【0073】
特に、一態様によれば、本開示は光凝固または光熱刺激などの眼科治療用装置に関し、装置は、
-光を放射するように構成された少なくとも1つの治療光源と、
-放射光の出力を制御するように動作可能な制御ユニットと、
-音声入力を受信し、および/または可聴出力を出力するように構成された通信ユニットと、
を備える。
【0074】
一般に、音声入力は、操作者からの音声コマンドの形態であってもよい。可聴出力は、治療光源のパラメータおよび状態を示し得る。したがって、前記装置を操作する人は放射光に関連するパラメータの音声制御を用いて手術を行うことができ、それによって、操作者は診断機器の接眼レンズから眼を離す必要なく、かつ手術部位から視覚的焦点を移動させることなく装置の動作を制御し、かつ/または手術中に治療光源の性能パラメータをモニタすることができる。これは操作者が手術をより効率的に実行することを可能にし、手術行為は操作者にとって疲れにくく、これは次に、手術の効率および安全を増大させる。
【0075】
さらに別の態様によれば、本発明は光凝固または光熱刺激などの眼科治療のための医療用レーザシステムにも関し、レーザシステムは、スリットランプまたは手術用顕微鏡装置と、前記スリットランプまたは手術用顕微鏡装置と直接物理的に接触するアダプタユニットとを備え、前記アダプタユニットは入力部および出力部を有し、前記アダプタユニットは入力部で電力を受け取り、出力部でレーザ光線を放射するように構成され、前記アダプタユニットは、
-光線を放射するように構成された可視波長のモノリシックのシングルモード、またはマルチモードレーザダイオードと、
-放射された光線のビームプロファイルを調整し、放射された光線を出力部において所定の方向のレーザ光線に向けるための1つまたは複数のレンズ、ビームシェーパ、またはビームホモジナイザーと、を備え、
前記所定の方向は、眼科治療のための標的領域を照射するための前記スリットランプまたは手術用顕微鏡装置のビーム経路と一致する。
【0076】
本発明はさらに、光凝固または光熱刺激などの眼科治療のための医療用レーザシステムに関し、レーザシステムはスリットランプまたは手術顕微鏡装置と、前記スリットランプまたは手術顕微鏡装置と直接物理的に接触するアダプタユニットとを備え、前記アダプタユニットは入力部および出力部を有し、前記アダプタユニットは入力部で電力を受け取り、出力部でレーザ光線を放射するように構成され、スリットランプアダプタユニットは、
-実質的に直線の偏光状態p1を有する光線を放射するように構成された可視波長の第1のモノリシックマルチモードレーザダイオードと、
-p1に直交する実質的に直線の偏光状態p2を有する光線を放射するように構成された可視波長の第2のモノリシックのシングルモードまたはマルチモードレーザダイオードと、
-前記第1および第2のモノリシックのシングルモードまたはマルチモードレーザダイオードから放射された光線を結合するように構成された偏光ビームスプリッタと、
-放射された光線および/または結合され放射された光線のビームプロファイルを調整し、放射された光線を出力部において所定の方向のレーザ光線に方向付けるための1つまたは複数のレンズ、ビームシェーパまたはビームホモジナイザーと、を備え、
前記所定の方向は、眼科治療のための標的領域を照射するための前記スリットランプ装置のビーム経路と一致する。
【0077】
上述の態様および好ましい実施形態の眼科治療用装置は、糖尿病または緑内障病などの、患者の眼の状態に対処するための操作者による使用に適している。装置は操作者がレーザ手術のような治療光を使用して患者の眼に手術を行うことを可能にし、ここで、クリニックの空間は装置のコンパクトさによって節約される。
【0078】
本開示はさらに、本明細書に開示されるような光熱眼科治療用装置と共に使用するためのアダプタユニットに関する。特に、本開示は診断機器に取り付け可能なアダプタユニットに関し、診断機器は自由空気照明出力経路に沿って照明出力部から照明光を眼科治療のための標的領域に向かって放射し、自由空気観察経路に沿って標的領域から光を受け取り、標的領域の拡大画像を提供するように構成され、アダプタユニットは、
-診断機器に着脱可能に取り付け可能なハウジングと、
-ハウジング内に配置された少なくとも1つの治療用ダイレクトダイオードレーザ源であって、ダイレクトダイオードレーザは、480nmから632nmまでの波長範囲の眼科治療に適した波長の光を放射するように構成された治療用レーザダイオードを有する治療用ダイレクトダイオードレーザと、
-ハウジングが前記診断機器に取り付けられたときに前記自由空気照明出力経路および/または自由空気観察経路の少なくとも一部に沿って治療光ビームとして放射された光を方向付けるように構成された1つまたは複数の光学素子と、を備え、
光学素子の少なくとも1つは、前記ハウジングが動作位置にある前記診断機器に取り付けられたときに前記診断機器の自由空気観察経路および自由空気照明出力経路の少なくとも1つに延在するように構成される。
【0079】
いくつかの実施形態では、ハウジングは、治療用ダイレクトダイオードレーザが観察経路の上方またはそれに沿って配置された状態で、診断機器に取り付け可能である。
【0080】
一般に、アダプタユニットのいくつかの実施形態、すなわち、スリットランプアダプタ、あるいは、手術用顕微鏡用のアダプタは、治療光ビームを患者の眼に方向付ける。アダプタユニットは、治療光ビームとしての光を標的組織においてユーザ選択可能なスポットサイズに集束させるように動作可能な光学列を形成するように構成された治療用ダイレクトダイオードレーザと光学素子とを含む。アダプタユニットは、治療光ビーム、および任意選択で、標的に向かって照準/パイロットビームを反射するが他の可視波長を通過させることができるように動作可能なダイクロイックミラーなどのミラー要素を含むことができる。アダプタユニットは、視軸を通る光フラッシュバックからユーザを保護するように動作可能な1つ以上の眼保護フィルタをさらに備えてもよい。アダプタユニットは、既存の診断用スリットランプおよび手術用顕微鏡に適合するように動作可能な機械的取り付け要素をさらに備えてもよい。アダプタユニットは治療用ダイレクトダイオードレーザの動作を制御し、例えばスポットサイズの選択を容易にするためにユーザ端末と通信するように動作可能な制御回路、例えばPCBをさらに含むことができる。
【0081】
アダプタユニットの実施形態は、少なくとも治療用ダイレクトダイオードレーザと、制御回路と、1つ以上の光学素子とを収容する単一のハウジングを備える単一のユニットとして具現化されてもよい。アダプタユニットの光学素子は、前記ハウジング内に位置されてもよく、および/または前記ハウジングに取り付けられてもよい。特に、単一のハウジングは自由空間内のハウジング内に収容された治療用ダイレクトダイオードレーザからの光を、診断機器の照明出力経路に沿って患者の眼に向かって方向付けるために必要とされる全ての光学素子を(その中に、さもなければそれに取付けて)収容することができる。ハウジングは、アダプタユニットを診断機器に取り付けるための取付け要素をさらに備える、または取り付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1A】眼科治療用装置の例の概略図。
図1B】眼科治療用装置の例の概略図。
図1C】眼科治療用装置の例の概略図。
図2】眼科治療用装置のためのアダプタユニットの光学設計の構成要素のブロック図。
図3】2つの治療用レーザダイオードが使用される、眼科治療用装置のためのアダプタユニットの光学設計の構成要素の別のブロック図。
図4】2つの治療用レーザダイオードが使用される、眼科治療用装置のためのアダプタユニットの光学設計の構成要素の概略図。
図5】ビームの均一性を測定する方法を概略的に示す。
図6】眼科治療用装置の略ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0083】
ここで、本明細書に開示される眼科治療用装置の様々な態様および実施形態を、図面を参照して説明する。
【0084】
図1Aは、本発明の好ましい実施形態による眼科治療用装置を概略的に示す。この図は、モノリシックのシングルモード、またはマルチモード治療用レーザダイオードを備え、トノメーターマウントを介してスリットランプに取り付けられたアダプタユニット100を概略的に示す。スリットランプは顕微鏡またはズーム拡大鏡のような拡大光学装置131を含み、標的領域からの観察経路103に沿った観察入力部132で光を受光するように構成される。スリットランプの中央部分は白色光源101を含み、これは、患者の眼102内の標的領域を照明するために使用される。この白色光は、ミラー104によって、標的領域における診断機器の計算された焦点での操作者の光学観察経路103と一致する照明出力経路111に方向付けられる。同様に、レーザビーム105は、治療ビーム経路に沿って標的領域に向けて方向付けられ、少なくとも標的領域において、観察経路と一致する。
【0085】
図1Bは、本発明の好ましい実施形態による眼科治療用装置を概略的に示す。図1Bの眼科治療用装置は、本明細書に記載されるようなアダプタユニット100の実施形態が取り付けられているスリットランプ装置106を備えるという点で、図1Aの実施形態と同様である。スリットランプ装置は、スリットランプの観察ハウジング119内に収容された、顕微鏡またはズーム拡大鏡などの拡大光学装置131を備える。拡大光学装置は、操作者が観察経路103に沿って患者の眼102の部分の拡大画像を見ることを可能にする。観察経路は、患者の眼102と拡大光学装置の観察入力部132との間に延在する。スリットランプの底部は、患者の眼102を照明するために使用される白色光源101を含む。スリットランプは、光源からの白色光112を、少なくとも標的領域において、操作者の観察経路103と一致する照明出力経路111に方向付けるように動作可能なミラー104を備える。したがって、照明経路はミラー104でスリットランプを出て、ここでは、照明光のためのスリットランプの出力部を画定し、患者の眼102まで延びる。
【0086】
アダプタユニット100は、取付けアーム110または他の取付け要素が取り付けられるハウジング118を備える。スリットランプの観察ハウジング119には、トノメーターマウント109または他の適切な取付けプラットフォームが設けられ、これに取付けアーム110を取り外し可能に接続することができる。この実施形態では、トノメーターマウント109が観察経路103の上方、より具体的には観察ハウジング119の上方に配置される。
【0087】
アダプタユニット100は、モノリシックのシングルモード、またはマルチモード治療用レーザダイオード115と、治療用レーザダイオードを制御するレーザコントローラ114とを備える。アダプタユニットは、1つまたは複数のレンズ、1つまたは複数のビームホモジナイザーなどの1つまたは複数の光学素子116をさらに含む。レーザコントローラ、治療用レーザダイオード、および光学素子は、全てハウジング118内に収容されている。アダプタユニットは、ハウジング118から下方に延びるアーム107に取り付けられたミラー108、例えばダイクロイックミラーをさらに含む。アダプタユニットはトノメーターマウント109に取り付けられ、ミラー108は観察経路103に向かって、またはその中にも延びる。光学素子116はミラーが治療用レーザビームを患者の眼に方向付けるように、レーザビーム105をミラー上に向ける。したがって、レーザビーム105、照明出力経路、および観察経路103はすべて、患者の眼102内の標的組織において一致するように方向付けられる。
【0088】
アダプタユニット100は照明出力経路の上方および観察経路の上方に配置され、これによってミラー108を有するアーム107が観察経路103に向かって、またはその中にも延在するミラーと共に下方に延在し、レーザビーム105が治療用レーザダイオードからミラー108に向かって下方に延在する、すなわちこの例では、治療用レーザダイオード115と、治療用レーザダイオードを収容するハウジング118全体が観察経路103の上方に配置されるように、照明出力経路の上方および観察経路の上方に配置される。
【0089】
したがって、アダプタユニット100はトノメーターマウント109に取り付けられたときに、白色光源を収容するランプハウジング121、拡大光学装置を支持するスタンド122、または操作者がスリットランプを動作させることを可能にする制御素子113などスリットランプ106の構造的要素の、または患者の身体のいかなる部分などの邪魔にならない。
【0090】
さらに、アダプタユニット100は、治療用レーザビーム105を生成するためのハウジング118内の治療用レーザダイオード、レーザコントローラ、光学素子116と、ミラー108とを含む一体化されたユニットである。
【0091】
図1Bの実施形態において、レーザコントローラ114は、レーザコントローラがユーザ端末から制御コマンドを受信し、性能パラメータなどの動作パラメータの値をユーザ端末に送信することを可能にする無線通信回路117を備える。したがって、この実施形態では、アダプタユニットへの唯一の有線インタフェースはレーザコントローラおよび治療用レーザダイオードに電力を供給するための電力ケーブル120である。好ましくは、電力ケーブルが低電圧DC電流をアダプタユニットに供給する。この目的のために、電力ケーブル120は、適切なAC/DC変換器を備え得る適切な外部電源に接続され得る。代替の実施形態では、レーザコントローラへの/からの通信が無線インタフェースではなく有線通信インタフェースであってもよい。そのような実施形態では、アダプタユニットが追加の有線制御接続を備える。代替の実施形態では、アダプタユニットは、バッテリ、例えばハウジング118内に収容されるか、またはハウジング118に取り付けられるバッテリによって、または電力ケーブルを介した遠隔のバッテリ駆動電源ユニットによって電力供給されてもよい。
【0092】
取付けアーム110は、アダプタユニットが、ミラー108が(図1Bに示されるような)観察経路103に向かって、またはその中にも延在する動作位置と、ミラーがレーザ光線を患者の眼に方向付けない停止位置との間で旋回され得るように、トノメーターマウント109に回転可能に連結され得る。このことは、操作者がスリットランプのハウジング越しに患者に対し遮るもののない視野を有することができるので、いくつかの実施形態において有益であり得る。
【0093】
図1A~Bに示す、照明光112が下から照明出力経路に供給されるスリットランプの実施形態は、「Zeiss型」スリットランプとも呼ばれる。以下、図1Cを参照して、照明光が上から合成照明出力経路に供給される、いわゆる「Haag-Streit型」のスリットランプに基づく実施形態について説明する。
【0094】
図1Cは、本発明の好ましい実施形態による眼科治療用装置を概略的に示す。図1Cの眼科治療用装置は、本明細書に記載のアダプタユニット100の実施形態が付属するスリットランプ装置106を備える点で図1A~Bの実施形態と同様である。スリットランプ装置は、観察ハウジング119内に収容された拡大光学装置(明示せず)、例えば顕微鏡またはズーム拡大鏡を含む。拡大光学装置は、操作者が目と拡大光学装置の観察入力部132との間に延在する観察経路103に沿って、患者の目102の部分の拡大画像を見ることを可能にする。スリットランプはさらに、患者の眼102を照明するために使用される白色光源を含む。スリットランプは、光源からの白色光112を、少なくとも標的領域において操作者の観察経路103と一致する照明出力経路111上に方向付けるように動作可能なミラー104を備える。したがって、照明経路は、本例においては、照明光用のスリットランプの出力部を定め、ミラー104でスリットランプを出て、患者の眼102まで延びる。
【0095】
図1A~Bの実施形態とは対照的に、この実施形態の白色光源は照明出力経路111の上方に配置されたランプハウジング121内に配置され、すなわち、照明光112は、光源からミラー104に下方に方向付けられる。
【0096】
図1A~Bの実施形態のように、アダプタユニット100は、取付けアーム110または他の取付け要素が付属するハウジング118を備える。スリットランプの観察ハウジング119には、トノメーターマウント109または他の適切な取付けプラットフォームが設けられ、これに取付けアーム110を取り外し可能に接続することができる。この実施形態では、トノメーターマウント109が観察経路103の上方、特に観察ハウジング119の上方に配置される。
【0097】
アダプタユニット100は、モノリシックのシングルモード、またはマルチモード治療用レーザダイオード115と、治療用レーザダイオードを制御するレーザコントローラ114とを備える。一般に、この実施形態および他の実施形態では、治療用レーザダイオードが例えば、患者の眼の治療的処置に適した強度および波長でレーザ光を放射する任意の適切なレーザダイオードであってもよい。治療用レーザダイオードは、ダイレクトダイオードレーザであってもよい。適切なレーザダイオードの例は、S. Masui, T. Miyoshi, T. YanamotoおよびS. Nagahamaによる「1 W AllnGaN Based Green Laser Diodes」(2013 Conference on Lasers and Electro-Optics Pacific Rim, (Optical Society of America, 2013), paper WH3_1)に開示されている。別の例は、Shingo Masuiらによる「Recent Improvement in Nitride Lasers」(Gallium Nitride Materials and Devices XII, edited by Jen-Inn Chyi et al., Proc. of SPIE Vol. 10104)に開示されている。
【0098】
アダプタユニットは、1つまたは複数のレンズ、1つまたは複数のビームホモジナイザーなどの1つまたは複数の光学素子116をさらに含む。レーザコントローラ、治療用レーザダイオード、および光学素子116は、全てハウジング118内に収容されている。アダプタユニットは、ハウジング118から下方に延びるアーム107に取り付けられたミラー108をさらに備える。アダプタユニットは、ミラー108が観察経路103に向かって延びるように、トノメーターマウント109に取り付けられる。光学素子116は、レーザビーム105を、図1Bに関連して説明されるように、レーザビームが患者の眼に方向付けられるように、ミラー上に方向付ける。
【0099】
アダプタユニット100は、ミラー108を有するアーム107が、ミラーが観察経路103に向かって、またはその中にも延在する状態で下方に延在するように、またレーザビーム105が治療用レーザダイオードからミラー108に向かって下方に延在するように、照明出力経路の上方および観察経路の上方に配置される。すなわち、この例では治療用レーザダイオード115および治療用レーザダイオードを収容するハウジング118全体が観察経路103の上方に配置される。
【0100】
図1Cに示すように、この実施形態においても、アダプタユニット100は、トノメーターマウントに取り付けられたときに、白色光源を収容するハウジング121、拡大光学装置を支持するスタンド122、または操作者がスリットランプを動作させることを可能にする制御素子113などスリットランプの構造的要素、または患者の身体のいかなる部分の邪魔にならない。さらに、アダプタユニット100は、治療用レーザ光線105を生成するためのハウジング118内の治療用レーザダイオード、レーザ制御装置、光学素子116と、ミラー108とを含む一体化されたユニットである。
【0101】
レーザコントローラ114は無線通信回路117を含み、アダプタユニットへの電力は図1Bに関連して全て説明したように、ケーブル102を介して供給される。また、図1Bのように、取付けアーム110はアダプタユニットが動作位置と停止位置との間で旋回できるように、トノメーターマウント109に回転可能に結合することができる。
【0102】
図2は、治療用レーザダイオードから患者の眼に向かう光路を示す概略ブロック図である。治療用レーザダイオード115からの発散光はコリメータ223によってコリメートされ、治療用レーザダイオードの楕円ビームを捕らえ、このビームを円形に再成形するビーム成形ユニット224に向けられる。ビームのごく一部は、例えばビームスプリッタによって、出力モニタユニット225、例えばフォトダイオードまたは他の種類の光検出器に方向付けられる。モニタされた出力はレーザコントローラに供給されてもよく、レーザコントローラは安定したレーザ動作を保証してもよい。装置は、(明示的には示されていない)機械的シャッタをさらに含むことができる。これは、治療用レーザダイオード(またはアダプタユニット)の放射を制御するために使用することができ、また、さらなる安全性を提供することができる。パイロットビーム源226(例えば、低出力パイロットレーザダイオード)は操作者がレーザビームを容易に照準できるように、ビーム経路に加えることができるパイロットビームを出力する。ズーム部227は、スポットサイズを制御する。それは、ビーム直径を変えることができる拡大鏡を含む。ホモジナイザー228は、光強度が患者の眼の集束スポットにわたって均一に分散されることを確実にする。最後に、ビームダイクロイック108は、レーザ光をスリットランプの光路内に配置することを可能にする。上記の構成要素の全ては単一のハウジング、例えば、図1B図1Cの実施形態のハウジング118内に収容されてもよく、または単一のハウジングに少なくとも取り付けられてもよい。例えば、いくつかの実施形態ではダイクロイックを除く上記のすべての構成要素が単一のハウジング内に収容され、ビームダイクロイックは適切なアームを介してハウジングに取り付けられる。いくつかの実施形態では、上記の要素のすべてが存在するわけではなく、および/または追加の要素が存在することが理解されるであろう。
【0103】
図3は、アダプタユニットの光路を示す図である。図3に示す光路は、図2の光路と同様の要素を含む。図3は、第1および第2の治療用レーザダイオード115Aおよび115Bがそれぞれシステムで使用される好ましい実施形態を示す。それぞれの治療用レーザダイオードの出力は、それぞれコリメータ223Aおよび223Bによってコリメートされ、それぞれビーム成形ユニット224Aおよび224Bによって成形される。コリメートされた円形レーザビームは、ビームコンバイナ329で加算結合される。光路の残りの部分は、図2に関連して説明した通りである。好ましい方法は、第2のダイオードを、放射されたレーザビームによって画定される軸の周りに90度回転させることである。このような回転により、この第2のレーザビームの偏光は、第1のレーザビームに対して垂直である。このような実施形態では、偏光ビームスプリッタ(PBS)がビームコンバイナとしてよく適している。
【0104】
図4は、2つの治療用レーザダイオード115Aおよび115Bがそれぞれ使用される、眼科治療用装置のためのアダプタユニットの光学設計の構成要素の概略図を示す。本図は、偏光ビームスプリッタ(PBS)329で結合された2つの治療用レーザダイオード115A~Bからの放射光を示す。好ましくは、2つの治療用レーザダイオードが実質的に直線偏光され、それらの偏光が互いに直交するように配置/配向される。好ましくは、配置/配向が一方のダイオードを他方のダイオードに対して回転させることによる。PBS素子と組み合わせたこの配置/配向は、90%以上の効率を有するビームの組み合わせを可能にする。好ましくは、システムはまた、例えば、実質的に均一なスポットサイズ(例えば、いわゆるトップハットプロファイル)を提供するために、ズーム/スポットサイズアダプタ227およびホモジナイザー228を備える。さらに、好ましくは、システムが上述のように、それぞれの治療用レーザダイオード115A~Bのビーム経路内にコリメータ223A~Bおよびビーム成形ユニット224A~Bと、パイロットビーム源226(例えば、低出力パイロットレーザダイオード)および出力モニタ225とを備える。好ましくはレーザダイオードが電気的にシャットされ、あるいはシステムが例えば、出力モニタ225とパイロットビーム源226との間に配置されたシャッタを備えてもよい。先の実施例のように、放射されたレーザ光は、適当なミラー(図4には明示されていない)によって標的領域に方向付けられる。
【0105】
一般に、上記の実施形態および他の実施形態では、光学素子がビーム成形および/または均質化のための1つまたは複数の素子を、例えば、別個の素子として、または組み合わされたユニットとして含むことができる。いくつかの実施形態では、ビームシェーパユニットおよび/またはホモジナイザーがディフューザまたはマイクロレンズアレイを含む。ディフューザまたはマイクロレンズアレイは、トップハットビームプロファイルを提供するように動作可能であってもよい。本明細書に開示されるアダプタユニットの実施形態において光学素子として使用されてもよい代替または追加の素子は以下を含む:
-例えば、Ola Willstrandによる「Intensity distribution conversion from Gaussian to Top-Hat in a single-mode fiber connector」(Master’s Thesis, Lund University, Sweden, 25-01-2013)に記載されるような、トップハットビーム成形用の1つ以上のアキシコンおよび/またはパウエルレンズ。アキシコンは、そのアルファ(α)および頂角によって定義される円錐プリズムである。光軸に沿って光源の焦点を合わせるように設計された収束レンズ(例えば、平凸レンズ(PCX)、両凸レンズ(DCX)、または非球面レンズ)とは異なり、アキシコンの設計は、光軸に沿った多数の点からなる線に光源の焦点を合わせる。
-空間光変調器、すなわち、空間的に変化させるある種の変調を光ビームに課す光学素子であって、例えば、カスタムなビーム成形および眼内のレーザ設定の表示のために動作可能である。
-1つまたは複数の変形可能なミラー、すなわち、その表面を変形させることができる、例えば、カスタムビーム成形のために動作可能なミラー。
-1つまたは複数のデジタル光処理デバイス、すなわち、デジタルマイクロミラーデバイスを使用する、例えば、ビームの特定の部分のオン/オフ切り替えのために動作可能であり、眼上でのカスタムビームプロファイルを可能にする、光学マイクロ電気機械技術に基づくデバイス。
-1つ以上のアパーチャー、例えば、眼への開口平面の再画像化と組み合わされて動作可能である。
-アナモルフィックプリズムペア。
【0106】
代替的にまたは追加的に、本明細書に開示されるアダプタユニットのいくつかの実施形態は、いわゆるドーナツ型ビームプロファイルへのビーム成形を実行するように動作可能であってもよい。このための方法およびデバイスはアキシコンおよび渦リターダ(例えば、Thorlabs Inc.から入手可能な、ゼロオーダ、1/2波長光渦リターダ)を含む。渦リターダは、より低いコストでの実施を可能にすることができる。
【0107】
図5は、均質性がどのように定義され得るかを示す。患者の眼の焦点と同様のビーム焦点541が形成され、強度プロファイル542がレーザビームプロファイラを用いて測定される。ここで、スポット541を横切る強度変化が矢印543によって示される方向に沿って測定されるプロファイル分析を行うことができる。均一性HはH=(1-2(A-B)/(A+B))*100%として定義することができ、ここで、Aは強度プロファイルの最大値であり、Bは強度プロファイルの最小値である。好ましくは、ホモジナイザーが50%を超える、例えば75%を超える、例えば90%を超えるHを有する均質性を提供するように適合される。あるいは、均一性が強度プロファイルの二乗平均平方根(RMS)として定義されてもよい。
【0108】
図6は、本明細書に開示される眼科治療用装置の概略ブロック図を示す。
【0109】
眼科治療用装置は診断機器906と、本明細書に記載される、例えば図1A~Cのいずれかに示されるように、診断機器に取り付けられたアダプタユニット100とを備える。
【0110】
システムは、アダプタユニット100と無線通信するユーザ端末951と、アダプタユニット100に電気的に結合された電源ユニット952とをさらに備える。電源ユニットはDC動作電力をアダプタユニットに供給し、ユーザ端末はユーザインタフェースを操作者に提供し、制御コマンドをアダプタユニットに通信する。電源ユニットは電池式であってもよいし、外部電力、例えばAC電力を受け取るように構成されていてもよい。また、電源ユニット952はアダプタユニット100のハウジング内に組み込まれてもよく、またはアダプタユニット100のハウジングに直接取り付けられてもよく、例えば、アダプタユニット100は交換可能な、例えば、再充電可能なバッテリを備えてもよい。ユーザ端末は、アダプタユニットから性能パラメータなどの動作パラメータの値をさらに受信することができる。電源ユニットおよびユーザ端末は、別個のユニットとして、または単一の制御装置として具現化されてもよい。本明細書で説明するように、ユーザ端末は、アダプタユニットの性能パラメータのハンズフリー制御を可能にする音声インタフェースを提供することができる。この目的のために、ユーザ端末は、マイクロフォン953と、ラウドスピーカ954と、音声認識システムを実施する処理ユニット955とを含むことができる。好ましくは、音声認識システムが遠隔ホストと通信する必要なく動作する内蔵システムである。しかし、代替実施形態では、音声認識システムは、音声認識プロセスの少なくとも一部を遠隔ホストシステムによって実行される分散システムであってもよい。代替的にまたは追加的に、ユーザ端末は、ノブ、スイッチ、ディスプレイ、タッチスクリーン等のような1つ以上の他のユーザインタフェースデバイス960を備えてもよい。ユーザ端末は、フットスイッチ956をさらに備えてもよく、またはフットスイッチ956に結合されてもよい。
【0111】
診断機器は、例えば、別個のユニットとして、または単一の統合されたユニットとして具現化された電源959、制御装置957、および、オペレーティングコンソール958を備える。アダプタユニットを制御するためのユーザ端末951は、診断機器のオペレーティングコンソールに統合されてもよく、またはオペレーティングコンソールから分離されてもよい。同様に、電源ユニット952および電源ユニット959は、別個のユニットとして、または単一の統合された電源として具現化されてもよい。
【0112】
上記の詳細な説明は、様々な要素および特徴を含む、本明細書で開示される様々な態様の特定の実施形態を参照する。特に、光凝固または光熱刺激などの眼科治療のための医療用レーザシステムの実施形態が説明されてきた。記載された実施形態は、レーザ、制御電子機器、ならびに、外部無線ユーザインタフェースによって制御され、可視および/または近赤外スペクトルなどの眼科治療に適した波長で治療用レーザ光を放射するビーム操作および方向付けの光学系を包含する、観察軸の上に、または、観察軸に沿って取り付けられたモノリシックケーシングの実施形態を備える。
【0113】
また、光凝固または光熱刺激などの眼科手術のための医療用レーザシステムの実施形態は、スリットランプまたは手術用顕微鏡装置と、前記スリットランプまたは手術用顕微鏡装置と直接物理的に接触するアダプタユニットとを備え、前記アダプタユニットが入力部および出力部を有し、前記アダプタユニットは入力部で電力を受け取り、出力部でレーザ光線を放射するように構成された医療用レーザシステムであって、前記アダプタユニットは、
-光線を放射するように構成された可視波長のモノリシックのシングルモード、またはマルチモードレーザダイオードと、
-放射された光線のビームプロファイルを調整し、放射された光線を出力部において所定の方向のレーザ放射に方向付けるための1つまたは複数のレンズ、ビームシェーパ、またはビームホモジナイザーと、
を備え、前記所定の方向は、眼科手術のために標的領域を照射するための前記スリットランプまたは手術用顕微鏡装置のビーム経路と一致する、と説明されてきた。
【0114】
さらに、光凝固または光熱刺激などの眼科手術のための医療用レーザシステムの実施形態は可視波長で光線を放射するように構成されたレーザ装置を備えることが説明されており、レーザ装置は源光線を放射するように構成されたレーザ源を備え、レーザ源は以下を備える:
-モノリシックのシングルモードまたはマルチモードレーザダイオード;
-前記源光線を均質化するように構成されたビーム成形光学系;
-源光線のパワーを制御する制御装置;
-(操作者からの口頭または音声入力のような)言語入力を受信し、(源光線のパワーを大きく読み出すような)可聴信号を出力し、ユーザインタフェースと制御電子機器との間の無線通信をするように構成された通信ユニットであって、前記医療用装置を操作する人間が、レーザパラメータの音声制御を用いて外科手術を行うことを可能にする、通信ユニット。
【0115】
他の実施形態は、代替または追加の要素または特徴を含み得ることが理解されるであろう。例えば、上記の実施形態では、治療光源はレーザダイオードを含む。他の実施形態は、他のタイプの治療光源で具現化されてもよいことが理解されるであろう。
【0116】
いくつかの方法を列挙する請求項において、これらの手段のいくつかは、ハードウエアの1つの同じ要素、構成要素、またはアイテムによって具現化することができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているか、または異なる実施形態に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。
【0117】
用語「備える/備えている」は本明細書で使用される場合、述べられた特徴、要素、ステップ、または構成要素の存在を明示すると解釈されるが、1つまたは複数の他の特徴、要素、ステップ、構成要素、またはそれらの群の存在または追加を排除しないことを強調すべきである。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-08-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断機器に装着可能なアダプタユニットであって
記診断機器は、自由空気照明出力経路に沿って照明出力部から眼科治療のための標的領域に向かって照明光を放射し、自由空気観察経路に沿って前記標的領域から光を受け取り、前記標的領域の拡大画像を提供するように構成され、
前記アダプタユニットは、
-前記診断機器に着脱自在に取り付け可能なハウジングと、
-前記ハウジング内に配置された少なくとも1つの治療用ダイレクトダイオードレーザであって、480nmから632nmまでの波長範囲の眼科治療に適した波長で光を放射するように構成された治療用レーザダイオードを有する治療用ダイレクトダイオードレーザと、
-前記ハウジングが前記診断機器に取り付けられたときに、放射された光を治療光ビームとして前記自由空気照明出力経路および/または前記自由空気観察経路の少なくとも一部に沿って導くように構成された1つまたは複数の光学素子と、
を備え
記光学素子の少なくとも1つは、前記ハウジングが動作位置で前記診断機器に取り付けられたときに、前記診断機器の前記自由空気観察経路および前記自由空気照明出力経路の少なくとも1つに延びるように構成され、
前記光学素子の少なくとも1つは、前記ハウジングが前記診断機器に取り付けられたときに、動作位置において、前記診断機器の自由空気観察経路および自由空気照明出力経路の少なくとも一方において下向きに延びるように構成されたアームに取り付けられて、治療用レーザービームを前記標的領域に向けて反射するダイクロイックミラーである、
アダプタユニット
【請求項2】
前記光学素子のうちの1つ以上は、自由空間焦点面に直径50μmから500μmまでのスポットサイズを有するように治療ビームを成形するように構成される、
請求項1に記載のアダプタユニット
【請求項3】
前記治療用レーザダイオードは、眼科治療に適した波長の光を放射するように構成されたモノリシックのシングルモードまたはマルチモード治療用レーザダイオードである、
請求項1または2に記載のアダプタユニット
【請求項4】
前記1つまたは複数の光学素子は、前記放射された光のビームプロファイルを調節し、前記治療光ビームを前記標的領域に向けて所定の方向に沿って方向付ける、1つ以上のレンズおよび/または1つ以上のビームシェーパおよび/または1つ以上のビームホモジナイザーを備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載のアダプタユニット
【請求項5】
前記放射された光は、500nmから600nmまでの範囲の波長である、
請求項1から4のいずれかに記載のアダプタユニット
【請求項6】
前記放射された光は、30mWから3000mWまでの範囲の出力である、
請求項1から5のいずれかに記載のアダプタユニット
【請求項7】
前記アダプタユニットは、トノメーターマウントに着脱可能に係合するように構成された取付け要素を備える、
請求項1から6のいずれか一項に記載のアダプタユニット
【請求項8】
前記アダプタユニットは、動作位置と停止位置との間で移動可能に、前記診断機器に移動可能に取り付け可能である、
請求項1から7のいずれか一項に記載のアダプタユニット
【請求項9】
光凝固または光熱刺激による光熱眼科治療用装置であって、診断機器と、請求項1から8のいずれか一項に記載のアダプタユニットと、を備え、
前記診断機器は、
前記自由空気照明出力経路に沿って照明出力から標的領域に向けて照明光を放射し、自由空気観察経路に沿って前記標的領域からの光を受光し、前記標的領域の拡大画像を提供するように構成されている、
装置。
【請求項10】
前記アダプタユニットから分離され、前記アダプタユニットに通信可能に結合されたユーザ端末を備え、
前記ユーザ端末は、ユーザインタフェースを提供し、ユーザコマンドを受信し、受信したユーザコマンドに応答して制御コマンドを前記アダプタユニットに転送するように動作可能である、
請求項9に記載の装置