(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016971
(43)【公開日】2022-01-25
(54)【発明の名称】電解水生成装置
(51)【国際特許分類】
C25B 9/00 20210101AFI20220118BHJP
C25B 1/26 20060101ALI20220118BHJP
C02F 1/461 20060101ALI20220118BHJP
B01D 19/00 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
C25B9/00 E
C25B1/26 C
C02F1/461 A
B01D19/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020119991
(22)【出願日】2020-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】516307910
【氏名又は名称】アクアフレックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】澤田 祐一
【テーマコード(参考)】
4D011
4D061
4K021
【Fターム(参考)】
4D011AA08
4D061DA02
4D061DA03
4D061DB07
4D061DB09
4D061EA02
4D061EB04
4D061EB13
4D061EB16
4D061EB20
4D061EB30
4D061EB37
4D061EB39
4D061EB40
4D061ED13
4D061FA20
4D061GA22
4D061GC02
4D061GC12
4D061GC20
4K021AA01
4K021AB07
4K021BA03
4K021BB02
4K021BC03
4K021DB31
4K021DB36
(57)【要約】
【課題】アルカリ水あるいは酸性水を安定的に生成することのできる電解水生成装置を提供する。
【解決手段】電解水生成装置10は、第1電解室12と、第2電解室14と、中央電解室16と、陽イオン交換膜18と、陰イオン交換膜20と、第1電極22及び第2電極24からなる第1の電極対26と、第3電極28及び第4電極30からなる第2の電極対32と、第1の電極対26に電圧を印加する第1の電源PW1と、第2の電極対32に電圧を印加する第2の電源PW2と、を備える。また、電解水生成装置10は、電解質水溶液を貯留する貯留タンク40と、貯留タンク40と中央電解室16との間で電解質水溶液を循環させる循環ポンプ48と、貯留タンク40と中央電解室16との間を循環する電解質水溶液のpHを降下させるpH降下手段90、92、94と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電解室と、
第2電解室と、
前記第1電解室と前記第2電解室の間に配置された中央電解室と、
前記第1電解室と前記中央電解室の間に配置された陽イオン交換膜と、
前記第2電解室と前記中央電解室の間に配置された陰イオン交換膜と、
前記第1電解室に設けられた第1電極及び前記中央電解室に設けられた第2電極からなる第1の電極対と、
前記第2電解室に設けられた第3電極及び前記中央電解室に設けられた第4電極からなる第2の電極対と、
前記第1の電極対に電圧を印加する第1の電源と、
前記第2の電極対に電圧を印加する第2の電源と、
電解質水溶液を貯留する貯留タンクと、
前記貯留タンクと前記中央電解室との間で電解質水溶液を循環させる循環手段と、
前記貯留タンクと前記中央電解室との間を循環する電解質水溶液のpHを降下させるpH降下手段と、
を備えることを特徴とする電解水生成装置。
【請求項2】
前記pH降下手段は、電解質水溶液中に酸性物質を添加する手段である、請求項1に記載の電解水生成装置。
【請求項3】
前記pH降下手段は、電解質水溶液中に炭酸ガスを吹き込む手段である、請求項1に記載の電解水生成装置。
【請求項4】
前記第1電解室と前記第2電解室とを接続する配管を備える、請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の電解水生成装置。
【請求項5】
前記中央電解室内の圧力を調整する圧力調整手段を備える、請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の電解水生成装置。
【請求項6】
電解質水溶液中に含まれる気泡を除去する気泡除去手段を備える、請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載の電解水生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電解水生成装置において生成される電解水には、アルカリ水、弱酸性水、強酸性水等がある。アルカリ水は、脱脂、洗浄、防錆等の効果を有するといわれている。強酸性水は、洗浄、殺菌、アストリンゼント(収れん)等の効果を有するといわれている。弱酸性水は、洗浄、殺菌、漂白、脱臭、アストリンゼント等の効果を有するといわれている。
【0003】
次亜塩素酸は、pHによって状態が変化することが知られている。例えば、pHが2.0~3.5程度の領域では、下記式(1)の反応によって、次亜塩素酸(HClO)の一部が溶存塩素ガス(Cl
2)に変化する。
【化1】
【0004】
pHが8~9程度の領域では、下記式(2)の反応によって、次亜塩素酸(HClO)の一部が次亜塩素酸イオン(ClO
-)と水素イオン(H
+)に解離する。
【化2】
【0005】
pHが5.0~6.5程度の領域では、非解離型の次亜塩素酸(HClO)が高比率(約90%以上)で存在する。
【0006】
水中の次亜塩素酸(HClO)、次亜塩素酸イオン(ClO-)、溶存塩素ガス(Cl2)の中で最も殺菌力が強く安全性が高いのは、次亜塩素酸(HClO)であり、次亜塩素酸の濃度の高いpH5.0~6.5の次亜塩素酸水は、口腔内の洗浄、衣類の洗浄殺菌、漂白、野菜類等の洗浄殺菌、哺乳瓶等の食器の洗浄殺菌、手指の除菌、近年においては歯科用殺菌水(例えば、特許文献1、2)として使用されている。
【0007】
一般的に、電解水生成装置には、陽極と陰極の間に隔膜のない一室型電解槽を用いるものと、陽極と陰極がイオン交換膜等の隔膜で仕切られた二室型電解槽を用いるものと、両方を併用するものとがある。例えば、特許文献3には、一室型の無隔膜電解槽を用いて、所定濃度の塩酸(HCl)水溶液に所定量の食塩(NaCl)を溶解させてなる水溶液を電解して、pH3~7の次亜塩素酸水を生成することのできる電解水生成装置が開示されている。
【0008】
特許文献4には、二室型電解槽を用いた電解水生成装置であって、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の塩化物塩と、メタケイ酸ナトリウム等の水に溶けてアルカリ性を示す化合物とを含む溶液を添加した水を電気分解し、電解槽の陰極側にpH10~12.5の強アルカリ水を生成させるとともに、陽極側にpH3~7.5の次亜塩素酸殺菌水を生成させて、強アルカリ水と次亜塩素酸殺菌水を同時に生成することのできる電解水生成装置が開示されている。
【0009】
特許文献5には、二室型の有隔膜電解槽で水を電解し、得られたアルカリ水と酸性水を一対の排水管から各別に排出し、一室型の無隔膜電解槽で塩化物水溶液を電解して次亜塩素酸を含む水を調整し、この次亜塩素酸を含む水を排出する排出管を、有隔膜電解槽からの排出管に接続して、アルカリ水、酸性水、及び次亜塩素酸水を適宜混合し、pHが3~7程度で次亜塩素酸(HClO)を多く含むソフト殺菌水と、pHが3以下で塩素(Cl2)を多く含むハード殺菌水とを供給する装置が開示されている。
【0010】
特許文献6には、二室型の有隔膜電解槽で、塩化ナトリウム等の塩化物塩を含む水溶液を電解して、陰極側でpH10.5~13.5の強アルカリ水を生成し、陽極側で塩素ガス(Cl2)を含む強酸性水を生成して、この強酸性水を水と混合してpH3~7.5の次亜塩素酸水を調整する、強アルカリ水、強酸性水、次亜塩素酸水の同時生成方法が開示されている。
【0011】
特許文献7には、隔膜によって仕切られた第1電解室、第2電解室、及び中央電解室を備え、それらの電解室内に設けられた第1~第4の電極対の極性を切り替えることによって、弱酸性水、微酸性水、強酸性水、及びアルカリ水を任意に選択して生成することのできる電解水生成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開WO2009/098870
【特許文献2】国際公開WO2007/072697
【特許文献3】特開平4-131184号公報
【特許文献4】特開平9-262587号公報
【特許文献5】特開平6-312189号公報
【特許文献6】特開平10-76270号公報
【特許文献7】特開2015-112570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
例えば特許文献7に開示された電解水生成装置では、中央電解室に循環させている電解質水溶液の濃度及びpHが安定しないため、アルカリ水あるいは酸性水を安定的に生成することが困難であるという問題があった。また、中央電解室に循環させている電解質水溶液中に気泡が発生し、この気泡が電極に付着して電解効率を低下させてしまうという問題があった。
【0014】
そこで、本発明は、アルカリ水あるいは酸性水を安定的に生成することのできる電解水生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の電解水生成装置は、以下の通りである。
(1)第1電解室と、第2電解室と、前記第1電解室と前記第2電解室の間に配置された中央電解室と、前記第1電解室と前記中央電解室の間に配置された陽イオン交換膜と、前記第2電解室と前記中央電解室の間に配置された陰イオン交換膜と、前記第1電解室に設けられた第1電極及び前記中央電解室に設けられた第2電極からなる第1の電極対と、前記第2電解室に設けられた第3電極及び前記中央電解室に設けられた第4電極からなる第2の電極対と、前記第1の電極対に電圧を印加する第1の電源と、前記第2の電極対に電圧を印加する第2の電源と、電解質水溶液を貯留する貯留タンクと、前記貯留タンクと前記中央電解室との間で電解質水溶液を循環させる循環手段と、前記貯留タンクと前記中央電解室との間を循環する電解質水溶液のpHを降下させるpH降下手段と、を備えることを特徴とする電解水生成装置。
【0016】
(2)前記pH降下手段は、電解質水溶液中に酸性物質を添加する手段である、(1)に記載の電解水生成装置。
【0017】
(3)前記pH降下手段は、電解質水溶液中に炭酸ガスを吹き込む手段である、(1)に記載の電解水生成装置。
【0018】
(4)前記第1電解室と前記第2電解室とを接続する配管を備える、(1)から(3)のうちいずれかに記載の電解水生成装置。
【0019】
(5)前記中央電解室内の圧力を調整する圧力調整手段を備える、(1)から(4)のうちいずれかに記載の電解水生成装置。
【0020】
(6)電解質水溶液中に含まれる気泡を除去する気泡除去手段を備える、(1)から(5)のうちいずれかに記載の電解水生成装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、アルカリ水あるいは酸性水を安定的に生成することのできる電解水生成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る電解水生成装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電解水生成装置の概略構成図である。
図1に示すように、電解水生成装置10は、第1電解室12と、第2電解室14と、第1電解室12と第2電解室14の間に配置された中央電解室16を備えている。第1電解室12と中央電解室16の間には、陽イオン交換膜18が配置されている。第2電解室14と中央電解室16の間には、陰イオン交換膜20が配置されている。
【0024】
電解水生成装置10は、第1電解室12に設けられた第1電極22及び中央電解室16に設けられた第2電極24からなる第1の電極対26と、第2電解室14に設けられた第3電極28及び中央電解室16に設けられた第4電極30からなる第2の電極対32とを備えている。第1電極22及び第2電極24は、陽イオン交換膜18を間に挟むように配置されており、第3電極28及び第4電極30は、陰イオン交換膜20を間に挟むように配置されている。
【0025】
電解水生成装置10は、第1の電極対26に電圧を印加する第1の電源PW1と、第2の電極対32に電圧を印加する第2の電源PW2を備えている。
【0026】
電解水生成装置10は、第1の電極対26に流れる電流を調整することのできる第1の電流調整手段34と、第2の電極対32に流れる電流を調整することのできる第2の電流調整手段36を備えている。
【0027】
陽イオン交換膜18は、好ましくは非透水性の陽イオン交換膜であり、ナトリウムイオン等の陽イオンを選択的に透過させる膜によって構成される。陽イオン交換膜18としては、例えば市販の陽イオン交換膜を使用することができる。
【0028】
陰イオン交換膜20は、好ましくは非透水性の陰イオン交換膜であり、塩化物イオン等の陰イオンを選択的に透過させる膜によって構成される。陰イオン交換膜20としては、例えば市販の陰イオン交換膜を使用することができる。
【0029】
第1~第4電極には、公知の電極材料を用いることが可能である。例えば、チタン又はチタン合金からなる基材に、白金、イリジウム、パラジウム及びタンタルからなる群より選ばれる1種又は2種以上の金属を含む膜を被覆した電極を用いることが可能である。電極の形状は特に制限するものではなく、例えば長方形の板状の電極を用いることが可能である。次亜塩素酸の生成効率を考慮した場合、例えばチタン又はチタン合金からなる基材に、白金とイリジウムの混合メッキを被覆した電極を用いることが好ましい。
【0030】
第1の電源PW1及び第2の電源PW2には、公知の直流電源を用いることが可能であり、例えば、定電流又は定電圧スイッチング電源を用いることが可能である。
【0031】
第1の電流調整手段34及び第2の電流調整手段36には、各電極対に流れる電流の大きさを調整することのできる機器であれば、どのような機器を用いることも可能である。
【0032】
図1に示すように、電解水生成装置10は、電解質水溶液を貯留することのできる貯留タンク40を備えている。貯留タンク40に電解質水溶液を補充することによって、アルカリ水あるいは酸性水の生成によって消費された電解質を補充することができる。中央電解室16の上部は、循環用配管42によって貯留タンク40に接続されている。中央電解室16の下部は、返流用配管44によって貯留タンク40に接続されている。
【0033】
貯留タンク40に貯留されている電解質水溶液は、返流用配管44を通って中央電解室16の下部に流入する。中央電解室16の上部から流出した電解質水溶液は、循環用配管42を通って貯留タンク40に流入する。つまり、電解質水溶液は、循環用配管42及び返流用配管44を介して、中央電解室16と貯留タンク40の間を循環する。
【0034】
本実施形態の電解水生成装置10は、中央電解室16と貯留タンク40の間を循環する電解質水溶液のpHを降下させるためのpH降下手段を備えている。
【0035】
pH降下手段は、循環用配管42あるいは返流用配管44を流れる電解質水溶液中に酸性物質を添加する手段であってもよい。電解質水溶液のpHを降下させることのできる酸性物質としては、弱酸性の物質、例えば、炭酸ガス(二酸化炭素)を用いることが好ましい。
【0036】
例えば、pH降下手段は、循環用配管42を流れる電解質水溶液に炭酸ガスを吹き込む手段90であってもよい。あるいは、pH降下手段は、返流用配管44を流れる電解質水溶液に炭酸ガスを吹き込む手段92であってもよい。ガスを吹き込む手段としては、例えばノズルを用いることができる。
【0037】
pH降下手段は、貯留タンク40に貯留されている電解質水溶液に炭酸ガスを供給する手段94であってもよい。炭酸ガスを供給する手段94としては、例えば、貯留タンク40中に炭酸ガスをバブリングによって供給することのできる散気管96を用いることができる。例えば、貯留タンク40中に炭酸ガスを散気管96によって供給した場合、電解質水溶液のpHを、約5分間でpH12.6からpH9.6に降下させることが可能である。
【0038】
電解水生成装置10を長時間連続的に運転した場合、中央電解室16と貯留タンク40の間を循環する電解質水溶液のpHが上昇し、酸性水(次亜塩素酸水)の生成効率が徐々に低下する。そのため、電解水生成装置10を一定時間運転する毎に、pH降下手段によって電解質水溶液のpHを降下させることによって、酸性水(次亜塩素酸水)の生成効率が低下することを防止することができる。
【0039】
また、循環用配管42の途中には、圧力調整バルブ46が設置されている。圧力調整バルブ46によって、中央電解室16内の圧力を第1及び第2電解室12、14より高くなるように調整することができる。中央電解室16内の圧力が第1及び第2電解室12、14より僅かでも低くなった場合、塩素濃度が低下し、濃度およびpHが不安定となるため、電解効率が悪化する。圧力調整バルブ46としては、電解質水溶液の圧力を一定に調整できるバルブであれば、どのような種類のバルブを用いることも可能である。圧力調整バルブ46が、本発明の「圧力調整手段」に対応する。
【0040】
返流用配管44の途中には、中央電解室16と貯留タンク40の間で電解質水溶液を循環させるための循環ポンプ48が設置されている。循環ポンプ48には、どのような種類のポンプを用いてもよいが、例えばチューブポンプを用いることができる。チューブポンプを用いることによって、電解質水溶液を一定の流量で安定的に循環させることができる。循環ポンプ48が、本発明の「循環手段」に対応する。
【0041】
電解水生成装置10の運転開始時において、貯留タンク40の内部には電解質水溶液を充填しておくことが好ましい。電解質水溶液としては、飽和塩化ナトリウム水溶液又は飽和塩化カリウム水溶液を用いることが好ましい。また、電解水生成装置10の運転開始後、一定の時間が経過する毎に貯留タンク40の内部の電解質水溶液を、新しい電解質水溶液(例えば飽和塩化ナトリウム水溶液又は飽和塩化カリウム水溶液)に交換することが好ましい。
【0042】
電解水生成装置10は、第1電解室12に原水を供給するための原水供給配管50を備えている。原水供給配管50の途中には、原水の供給を停止あるいは開始するためのバルブ50aが設置されている。バルブ50aとしては、電磁弁を用いることが好ましい。第1電解室12に供給する原水としては、例えば、水道水、軟水、あるいは純水を用いることができる。
【0043】
原水供給配管50は、第1の流路52と、第2の流路54に分岐している。第1の流路52には、開閉バルブ52aと、流量調整弁52bが設置されている。第2の流路54にも、開閉バルブ54aと、流量調整弁54bが設置されている。開閉バルブ52a、54aには、電磁弁を用いることが好ましい。流量調整弁52b、54bには、手動弁を用いることが好ましい。
【0044】
電解水生成装置10によってアルカリ水を生成する場合には、第1電解室12に供給する原水の流量が少ない方が、洗浄力の高い「高pH値」を有するアルカリ水を安定的に生成することができる。一方、電解水生成装置10によって酸性水を生成する場合には、第1電解室12に供給する原水の流量を多くし、厚生労働省ならびに農林水産省が指定している次亜塩素酸水を生成することができる。このため、電解水生成装置10によってアルカリ水を生成する場合には、2つの開閉バルブ52a、54aのうち一方のバルブを閉じておくことが好ましい。電解水生成装置10によって酸性水を生成する場合には、2つの開閉バルブ52a、54aの両方を開いておくことが好ましい。これにより、アルカリ水から酸性水(あるいは酸性水からアルカリ水)の生成へ運転モードを切り替える際の流量調整を容易に行うことができる。第1の流路52と第2の流路54それぞれの流量調整は、流量調整弁52b、54bによって行うことができる。なお、開閉バルブ52a、54a(例えば電磁弁)の個数は、2個以上であればよく、その個数に特に制限はない。
【0045】
第1の流路52と第2の流路54が合流した後の配管56の途中には、逆止弁58が設置されており、陽イオンあるいは陰イオンを含む水溶液が原水供給配管50に逆流することを防止している。また、配管56の途中にはドレン弁60が設置されており、ドレン弁60を開くことによって配管56内の水を排出することができる。
【0046】
貯留タンク40の内部には、中央電解室16と貯留タンク40との間を循環する電解質水溶液中に発生する気泡を除去するための気泡除去手段70が配置されている。気泡除去手段70としては、例えば、樹脂製のスポンジや無機物質からなるフィルターを用いることができるが、高いpHの電解質水溶液と接触しても容易に変質しないことから、無機物質からなるフィルターを用いることが好ましい。無機物質からなるフィルターとしては、粒状の無機物質を用いることが好ましく、例えば、粒状セラミックスや川砂を用いることが好ましい。また、気泡除去手段70として、セラミック製ブロックを用いることもできる。
【0047】
貯留タンク40の内部は仕切壁72によって2つの部屋(第1の部屋74及び第2の部屋76)に仕切られている。このうち第1の部屋74には、気泡除去手段70が配置されている。仕切壁72の下部はメッシュ状で通水可能となっており、気泡除去手段70によって気泡が除去された後の電解質水溶液は、第1の部屋74から第2の部屋76へ流入することが可能となっている。第2の部屋76へ流入した電解質水溶液は、循環ポンプ48によって中央電解室16に送液される。第2の部屋76にはフロートスイッチ73が設置されており、第2の部屋76の水位が所定値以下となった場合には電解用電源PW1,PW2及び循環ポンプ48が停止し、第2の部屋76の水位が所定値を超えた場合には電解用電源PW1,PW2及び循環ポンプ48が起動するようになっている。
【0048】
また、第1の部屋74の下部には、貯留タンク40に貯留されている電解質水溶液中に炭酸ガスをバブリングによって供給するための散気管96が設置されている。散気管96としては、例えば、パイプに多数の孔を設けた構造のものや、パイプにメッシュを取り付けた構造のものを使用することができる。また、例えば、微細な気泡を形成することのできる多孔質セラミック製の散気管を用いることもできる。
【0049】
貯留タンク40の下部には、電解質水溶液を排出するためのドレン弁71が設置されている。電解水生成装置10を所定時間運転した後に電解質水溶液を交換する際には、ドレン弁71を開いて貯留タンク40内の電解質水溶液をすべて排出することが好ましい。その後、新しい電解質水溶液(例えば飽和塩化ナトリウム水溶液又は飽和塩化カリウム水溶液)を貯留タンク40に充填することが好ましい。
【0050】
図1に示すように、第1電解室12と第2電解室14は配管78によって接続されており、第1電解室12で生成された電解水は、配管78を通って第2電解室14に流入することが可能となっている。したがって、第1電解室12で生成された電解水は、第2電解室14で生成された電解水と混合した後、第2電解室14の上部に設けられた電解水排出配管80を通って外部に排出される。電解水排出配管80の途中にはpH測定器82が設置されており、電解水排出配管80から排出される電解水(アルカリ水又は酸性水)のpHを測定することが可能となっている。
【0051】
第1及び第2の電源PW1、PW2、並びに、第1及び第2の電流調整手段34、36は、これらを制御するための制御手段(図示せず)に電気的に接続されていてもよい。制御手段としては、例えば、シーケンス制御回路を備えた制御盤やパーソナルコンピュータ等を使用することができる。
【0052】
次に、上記のように構成された電解水生成装置10の運転方法について詳しく説明する。なお、以下の説明では、第1電極22が陰極であり、第2電極24が陽極であり、第3電極28が陽極であり、第4電極30が陰極である例について説明する。また、運転開始時において、貯留タンク40には飽和塩化ナトリウム水溶液が充填されている例について説明する。ただし、本発明は、以下の例に限定されない。
【0053】
電解水生成装置10によって電解水を生成するために、まず、原水供給配管50から第1電解室12に原水を導入する。また、循環ポンプ48を起動することによって、貯留タンク40及び中央電解室16の間で電解質水溶液(飽和塩化ナトリウム水溶液)を循環させる。そして、第1及び第2の電極対26、32に電圧を印加することによって、各電解室内の水の電気分解を開始する。これにより、第2電解室14の上部の電解水排出配管80からは、酸性水(微酸性水又は弱酸性水)、又は、アルカリ水が取り出される。
【0054】
第1電解室12、第2電解室14、及び中央電解室16では、各電極の極性に応じて、例えば以下の反応が発生する。
(陰極での反応)
水素の生成 2H2O + 2e- → H2 + 2OH-
アルカリ水の生成 Na+ + OH- ⇔ NaOH
(陽極での反応)
酸素の生成 2H2O → O2 + 4H+ + 4e- (酸性水の生成)
塩素の生成 2Cl- → Cl2 + 2e-
次亜塩素酸の生成 Cl2 + H2O → HCl + HClO
【0055】
第1の電極対26に流れる電流の大きさを第1の電流調整手段34によって調整し、第2の電極対32に流れる電流の大きさを第2の電流調整手段36によって調整すれば、任意のpHを有する電解水(酸性水あるいはアルカリ水)を電解水排出配管80から取り出すことができる。例えば、第2の電極対32に流れる電流を、第1の電極対26に流れる電流よりも大きくなるように調整すれば、電解水排出配管80から微酸性水あるいは弱酸性水を取り出すことができる。また、第1の電極対26にのみ電圧を印加すれば、電解水排出配管80からアルカリ水を取り出すことができる。
【0056】
このように、本実施形態の電解水生成装置10によれば、微酸性水、弱酸性水、あるいはアルカリ水を任意に選択して生成することができるため、極めて利便性の高い電解水生成装置を実現することができる。
【0057】
本実施形態の電解水生成装置10によれば、電解質水溶液を中央電解室16に循環させることで電解水を生成することができる。このとき、第1電解室12及び第2電解室14には電解質水溶液を循環させる必要がないため、電解質(例えば塩化ナトリウム)を含まない電解水(酸性水あるいはアルカリ水)を生成することが可能である。したがって、本実施形態の電解水生成装置10によれば、塩分が全く含まれない電解次亜塩素酸水を生成することが可能である。
【0058】
本実施形態の電解水生成装置10によれば、例えば食塩(塩化ナトリウム)を含まない殺菌水を得ることが可能である。このような食塩を含まない殺菌水は、塩害が生じる恐れがある機械や建造物の洗浄や、食材、調理器具、手指などの殺菌に用いることが可能であり、極めて有用である。特に、このような食塩を含まない殺菌水は、野菜栽培の農薬を減少させる目的で使用できるため、極めて有用である。
【0059】
本実施形態の電解水生成装置10によれば、中央電解室16に循環させている電解質水溶液中に発生した水素ガス等からなる気泡を、気泡除去手段70によって除去することが可能である。これにより、電極対の表面に気泡が付着して電解効率が低下することを防止することが可能であり、一定のpHおよび次亜塩素酸水を有する電解水を安定して生成することが可能である。
【0060】
本実施形態の電解水生成装置10によれば、中央電解室16内の圧力を圧力調整バルブ46によって調整することが可能である。これにより、一定のpHおよび次亜塩素酸水を有する電解水を安定して生成することが可能である。
【0061】
従来の電解水生成装置は、電解側に電解質水溶液(例えば塩水)を供給する構造を有しているため、生成した電解水に電解質水溶液が含まれてしまう。この場合、電解水の生成に理論上必要な量よりも多くの量の電解質を消費してしまうため、ランニングコストが高くなるという問題があった。
これに対し、本実施形態の電解水生成装置10は、中央電解室16に電解質水溶液を循環させる構造を有しているため、イオン交換膜を透過した電解質が消費されることで電解水が生成される。このため、生成した電解水に電解質水溶液が含まれてしまうことがなく、従来の電解水生成装置よりもランニングコストを軽減することが可能である。
【0062】
電解水生成装置10で次亜塩素酸水を連続的に生成した場合、中央電解室16と貯留タンク40の間を循環する電解質水溶液のpHが上昇するため、酸性水(次亜塩素酸水)の生成効率が徐々に低下するという問題がある。
本実施形態の電解水生成装置10によれば、pH降下手段によって、中央電解室16と貯留タンク40の間を循環する電解質水溶液のpHを降下させることができる。このため、電解水生成装置10で次亜塩素酸水を長時間連続的に生成した場合でも、次亜塩素酸水の生成効率が徐々に低下することを防止することができる。
【符号の説明】
【0063】
10 電解水生成装置
12 第1電解室
14 第2電解室
16 中央電解室
18 陽イオン交換膜
20 陰イオン交換膜
22 第1電極
24 第2電極
26 第1の電極対
28 第3電極
30 第4電極
32 第2の電極対
40 貯留タンク
42 循環用配管
44 返流用配管
46 圧力調整バルブ
48 循環ポンプ
50 原水供給配管
70 気泡除去手段
78 配管
80 電解水排出配管
90、92、94 pH降下手段